(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-04
(45)【発行日】2025-08-13
(54)【発明の名称】計測デバイス
(51)【国際特許分類】
G01W 1/10 20060101AFI20250805BHJP
G01W 1/00 20060101ALI20250805BHJP
G06Q 50/02 20240101ALN20250805BHJP
【FI】
G01W1/10 D
G01W1/00 Z
G06Q50/02
(21)【出願番号】P 2023085800
(22)【出願日】2023-05-24
【審査請求日】2024-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】501186173
【氏名又は名称】国立研究開発法人森林研究・整備機構
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】南光 一樹
(72)【発明者】
【氏名】江波戸 宗大
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108983317(CN,A)
【文献】国際公開第2020/193372(WO,A1)
【文献】特開2007-233941(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112422929(CN,A)
【文献】特開2005-085059(JP,A)
【文献】特開2019-095937(JP,A)
【文献】特開2020-191887(JP,A)
【文献】米国特許第05394748(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第04020345(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01W 1/00 - 1/18 、
G06Q10/00 -10/30 、30/00 -30/08 、
50/00 -50/20 、50/26 -99/00 、
G16Z99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測デバイスの容器本体に設けられ、地中から上部に延在する支持部に着脱自在に結合可能な結合部と、
地上の状況を計測する第1センサにより計測された環境データと前記地中の状況を計測する第2センサにより計測された環境データとを外部に送信する通信部、前記第1センサと前記第2センサと前記通信部とに電力を供給する電源部、および少なくとも前記通信部を制御する制御部を含む機器を内部に収容する収容部と、
前記機器を前記収容部から出し入れ可能な開口部を開閉させるための蓋部と、を備え、
前記第1センサは、温度センサ、湿度センサ、気圧センサ、風力センサ、降雨センサ、日射量センサ、匂い検知センサ、カメラセンサ、画像判別センサ、赤外線センサ、近赤外線センサ、水温センサ、水位センサ、および位置センサのうち、少なくとも1つを含み、
前記第2センサは、地温センサ、土壌成分センサ、地下水温センサ、および地下水位センサのうち、少なくとも1つを含み、
前記制御部は、前記電源部の電力残量が少なくなるほど、前記環境データの送信周期が基準周期よりも長くなるように調整
し、
前記支持部は、硬質ポリ塩化ビニル管または単管パイプであり、
前記結合部は、前記硬質ポリ塩化ビニル管または前記単管パイプの開口部の内径よりも小さい外径部分を、前記開口部に挿入して嵌合させることで前記計測デバイスの容器本体が前記支持部に支持される形状を有し、
前記結合部は、前記硬質ポリ塩化ビニル管または前記単管パイプの開口部に挿入された部分に、前記第2センサによる計測データを前記通信部へ送信するケーブルを通し、回転による開閉機構によって口径を調整可能な開口部を有する、
計測デバイス。
【請求項2】
前記収容部は、内部の上方および下方のスペース以外のスペースに前記機器を収容するための仕切部材と内部空間の区切りを示すマークとが設けられている、
請求項1に記載の計測デバイス。
【請求項3】
前記機器の状態に応じた情報を外部に通知する通知部を更に備える、
請求項1に記載の計測デバイス。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1センサまたは前記第2センサで異常が生じていることを検知した場合に、異常が生じていることを示す色または音を前記通知部に出力させる、
請求項
3に記載の計測デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、山地や耕地等の環境において、洪水や斜面崩壊の予兆を把握したり、農地での灌水管理、収量予測等を行うため、土壌、気象、水に関する環境データを多地点でリアルタイムに手軽に把握し、近い将来の環境の状況予測を行うシステムが必要とされている。これに関連して、従来では、温度、気圧、土壌の水分量等の環境データを取得したい地点に設置する計測デバイスに関する技術が知られている(例えば、非特許文献1および特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】メータージャパン株式会社,“ZL6シリーズ データロガー”,[online],[令和5年3月17日検索],インターネット<URL:https://www.metergroup.co.jp/product/e_Datalogger_ZL6.html>
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の計測デバイスは、全体的にデバイス自体の価格が高く、様々な環境に複数設置する場合にはコストが高くなる可能性があった。更に、従来の計測デバイスは、設置位置や高さに制限があったり、ある程度の重さを有するため、強度の高い専用の支柱で倒れないように深く埋設する必要があるため、計測デバイスの設置や交換時の負担が大きくなる場合があった。また、計測デバイスは、地中や地上に設置されるため防水や防湿対策が重要になるが、従来技術では適切な対策がなされておらず設備交換による作業コストが大きくなる場合があった。
【0006】
本発明の態様は、このような事情を考慮してなされたものであり、より低コストで環境データを取得することができる計測デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る計測デバイスは、以下の構成を採用した。
【0008】
本発明の第1の態様である計測デバイスは、地中から上部に延在する支持部に着脱自在に結合可能な結合部と、地上の状況を計測する第1センサ、前記第1センサと前記地中の状況を計測する第2センサとにより計測された環境データを外部に送信する通信部、前記第1センサと前記第2センサと前記通信部とに電力を供給する電源部、および少なくとも前記通信部を制御する制御部を含む機器を内部に収容する収容部と、前記機器を前記収容部から出し入れ可能な開口部を開閉させるための蓋部と、を備える、計測デバイスである。
【0009】
本発明の第2の態様である計測デバイスは、更に、前記支持部は、硬質ポリ塩化ビニル管または単管パイプであり、前記結合部は、前記硬質ポリ塩化ビニル管または前記単管パイプの開口部に挿入することで前記支持部に支持される形状を有するものである。
【0010】
本発明の第3の態様である計測デバイスは、更に、前記結合部は、前記第2センサによる計測データを前記通信部へ送信するケーブルを通す開口部を有するものである。
【0011】
本発明の第4の態様である計測デバイスは、更に、前記収容部は、内部の上方および下方のスペース以外のスペースに前記機器を収容するものである。
【0012】
本発明の第5の態様である計測デバイスは、更に、前記機器の状態に応じた情報を外部に通知する通知部を備えるものである。
【0013】
本発明の第6の態様である計測デバイスは、更に、前記制御部は、前記電源部の電力残量に応じて前記環境データの送信周期を調整するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の態様によれば、より低コストで環境データを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態の計測デバイスが適用される情報提供システム1の構成図である。
【
図2】計測デバイス200の構成の一例を示す図である。
【
図3】計測デバイス200の形状について説明するための図である。
【
図4】開口部BO1、BO2の開閉機構について説明するための図である。
【
図5】容器本体の変形例について説明するための図である。
【
図6】通知部を備える計測デバイス200Aの一例を示す図である。
【
図7】実施形態における発電機構の一例を示す図である。
【
図8】第1実施例における計測デバイス200の設置例について説明するための図である。
【
図9】第2実施例における計測デバイス200の設置例について説明するための図である。
【
図10】第3実施例における計測デバイス200の設置例について説明するための図である。
【
図11】第4実施例における計測デバイス200の設置例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の計測デバイスの実施形態について説明する。
【0017】
[システム構成]
まず、実施形態の計測デバイスが適用される情報提供システム1について説明する。
図1は、実施形態の計測デバイスが適用される情報提供システム1の構成図である。
図1に示す情報提供システム1は、例えば、情報提供サーバ100と、複数の計測デバイス200-11~200-36と、端末装置300とを備える。以下、複数の計測デバイス200-11~200-36のそれぞれを区別して説明する場合を除き、単に「計測デバイス200」と称してまとめて説明する。情報提供サーバ100と、計測デバイス200とは、例えば、ネットワークNWを介して互いに通信可能である。ネットワークNWは、例えば、インターネット、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、電話回線、公衆回線、専用回線、プロバイダ装置、無線基地局等を含む。また、ネットワークNWは、ルーターやゲートウェイ装置、その他の中継装置を含んでもよい。また、
図1の例において、計測デバイス200のそれぞれは、中継装置として他の計測デバイス200と通信を行ってもよい。
【0018】
情報提供サーバ100は、ネットワークNWを介して、所定エリアAR1~AR3に設置された計測デバイス200によって計測された環境データを取得し、取得した環境データや他の情報等に基づいて、計測デバイス200が設置されたエリア(多地点)に対応する対象エリアにおける環境状態を解析する。上記対象エリアは、所定エリアAR1~AR3の全エリアでもよく一部のエリアでもよい。また、情報提供サーバ100は、解析結果等に基づいて、将来の環境変化の予測等を行う。
【0019】
例えば、情報提供サーバ100は、対象エリアにおける土壌状態を含む環境状態を解析する。土壌状態には、例えば、土壌水分量、土壌pH、酸化還元電位、地下水位、地下水温、土壌水分の移動方向等のうち少なくとも一つが含まれる。また、環境状態には、地上(空中)の状態や、対象エリアで生育している農作物や森林等の植物の状態が含まれてもよい。これらの情報を解析するにあたり、環境データだけでなく、外部装置等から取得した情報(例えば、将来の気象情報)や、地図情報等から得られる情報(例えば、土壌硬度情報や地層情報)等が含まれてよい。例えば、情報提供サーバ100は、土壌水分量(より具体的には、土壌体積含水率)が閾値未満である場合に、農作物等に対する水が不足していると解析したり、潅水が必要であると解析する。また、情報提供サーバ100は、土壌水分量が上限値を越える場合に、洪水や土砂崩れ(斜面崩壊)等の災害が発生する可能性がある(または発生している)ことを予測する。
【0020】
また、情報提供サーバ100は、時系列の環境状態を解析したり、時系列の解析結果に基づいて対象エリアにおける将来(所定時間後)の環境状態を予測する。例えば、情報提供サーバ100は、環境データと、対象エリアの地形と、対象エリアの土壌硬度情報とに基づいて、対象エリアにおける潅水の要否およびタイミングを予測する。また、情報提供サーバ100は、過去または将来の気象情報に基づいて対象エリアの将来の土壌水分量の変化度合を予測してもよい。また、情報提供サーバ100は、環境データと、対象エリアの地形と、対象エリアの土壌硬度情報とに基づいて、対象エリアにおける将来(所定時間後)の災害(例えば、土砂崩れ等の斜面崩壊、洪水、日照り)の発生を予測してもよい。また、情報提供サーバ100は、対象エリアにおける土壌水分の移動方向を予測し、予測した結果に基づいて土壌改良を提案するための情報を生成してもよい。
【0021】
また、情報提供サーバ100は、解析結果や予測結果等に基づいて、管理者等の利用者に提供する情報(例えば、画像や音声)を生成し、生成した情報を端末装置300や情報提供サーバ100の表示部等に出力する。なお、情報提供サーバ100は、例えば、計測デバイス200や端末装置300とネットワークNWを介して互いに通信し、各種データを送受信するクラウドサーバとして機能してもよい。
【0022】
計測デバイス200は、周囲の環境データを計測する。環境データには、例えば、地上(空中)、地中、水中の状態や、対象エリアで生育している農作物や森林等の植物の状態が含まれてもよい。例えば、環境データには、周囲の温度(気温、地温、水温)、湿度、気圧、土壌水分(地下水分)、地下水位、降水量等の各種情報が含まれる。また、環境データには、日射量、風向、風速、ダスト・花粉・PM2.5の量、ガスや匂い・臭いの検知(例えば、農耕地や森林における動植物(昆虫、微生物も含む)から揮散した物質の匂いや臭い、農耕地に散布した堆肥の臭い等)、赤外線カメラや定点カメラの画像の情報が含まれてよい。計測デバイス200は、上述した環境データの情報を計測するための各種センサを備える。各種センサは、地上の所定の高さ(1箇所でもよく、複数箇所でもよい)に設けられていてもよく、地中の所定の深さ(1箇所でもよく複数箇所でもよい)に設けられていてもよく、地上と地中の両方に設けられていてもよい。
【0023】
更に、計測デバイス200は、所定周期で計測した環境データを、ネットワークNWを介して情報提供サーバ100に送信するための通信部や、デバイス内の各機器に電力を供給するバッテリ(蓄電部)や電池等の電源部を備える。バッテリが設けられる場合、計測デバイス200には、太陽光、風力、電磁波などからの環境発電(エナジーハーベスティング)で得た電力をバッテリに蓄積するための機構が設けられてもよい。また、環境データには、計測デバイス200内のバッテリの電力量に関する情報が含まれてよい。また、計測デバイス200は、位置情報(緯度経度)を取得する位置センサが設けられていてもよい。位置センサは、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)によって緯度経度を検知できるセンサである。計測デバイス200の詳細については後述する。
【0024】
実施形態の情報提供システム1では、例えば、地形やエリアの状態情報(例えば、水田、畑地、牧草地、道路、建造物、山、川、海等の地物情報)に応じて異なる数(設置密度)または種類の計測デバイス200が設置される。また、上記の設置密度や種類については、予め情報提供サーバ100等により管理される。
図1の例において、エリアAR1は森林エリア、エリアAR2は牧草地エリア、エリアAR3は水田エリアを示している。エリアAR1には、例えば、土壌成分、地温、降水量、気温、日射、地下水温、地下水位等のうち少なくとも1つが計測可能な計測デバイス200-11~200-13が設置される。エリアAR2には、例えば、土壌成分、土壌pH(土壌の酸性・アルカリ性の強さを示す指標値)、降水量、気温、温度等のうち少なくとも1つが計測可能な計測デバイス200-21~200-25が設置される。エリアAR3には、例えば、葉色・植物体の色(肥料不足や病虫害による変化を検知するため)、土壌pH、酸化還元電位、日射、気温、水温、水位等のうち少なくとも1つが計測可能な計測デバイス200-31~200-36が設置される。これらの計測デバイス200は、それぞれが同じ環境データを計測できなくてもよく、複数の計測デバイス200によって上述した各種環境データが計測できればよい。
【0025】
端末装置300は、例えば、タブレット端末やスマートフォンでもよく、汎用のPC(Personal Computer)やサーバ装置等であってもよい。端末装置300は、例えば、ネットワークNWを介して外部と通信する通信部や、画像(動画像を含む)等を表示する表示部、音声を出力する音声出力部、利用者による操作入力を受け付ける受付部等を備える。端末装置300は、ネットワークNWを介して情報提供サーバ100にアクセスし、情報提供サーバ100が計測デバイス200から収集した環境データや、環境データに基づく解析結果や将来の環境変化の予測結果等の情報を取得する。例えば、端末装置300は、情報提供サーバ100で一元管理された環境データや、環境データの解析結果や環境状態の予測結果等をウェブ上で可視化することができる。このように、ウェブベースのシステム形態も適用できるため、端末装置300に専用ソフトウェアを有する必要がなく、利用者の利便性を向上させることができる。なお、情報提供システム1において、端末装置300は、複数設けられてもよい。
【0026】
[計測デバイス]
次に、実施形態の計測デバイス200の詳細について具体的に説明する。
図2は、計測デバイス200の構成の一例を示す図である。計測デバイス200は、容器本体202と、蓋部204とを備える。また、計測デバイス200は、上記構成に加えて支持部(土台部)206を備えていてもよい。容器本体202は、「収容部」の一例である。
【0027】
容器本体202は、例えば円筒に形成されており、上面および下面に開口部(後述)が設けられている。また、容器本体202の上端側および下端側には、切欠部(後述)や結合部202aが設けられている。容器本体202の上端側は、着脱自在な蓋部204との嵌合や係合、螺合等によって上面開口部の開閉が可能となる。また、容器本体202は、下端側を支持部206の上端と嵌合、係合、または螺合することによって固定(接合)可能となり、支持部206により着脱自在に支持される。支持部206は、下部を地中UGに埋設させることで、対象地点に固定され、上端で接続された容器本体202を支持する。なお、計測デバイス200は、支持部206を有していない構成であってもよい。その場合、計測デバイス200の支持部206以外の部分は、他の部材(例えば、建物の柱や柵)に取り付けられる。
【0028】
容器本体202および蓋部204は、例えばポリ塩化ビニル等の合成樹脂であり、より具体的には、アクリロニトリル・スチレン・アクリレート(ASA)樹脂等であるが、他の材質であってもよい。また、支持部206は、例えば硬質ポリ塩化ビニル管や単管パイプであるが、他の材質であってもよい。容器本体202および蓋部204は、例えば、3Dプリンタ等を用いて造形されてもよく、射出成形されてもよい。
【0029】
また、容器本体202および支持部206は、円筒に形成されることで周囲の風等の影響を軽減できる。また、容器本体202と支持部206とは結合部202aにより着脱自在な構成であるため、作業員等による交換作業が容易となり、更に容器本体202の交換時にも支持部206はそのまま(設置したまま)利用できるため、一体型デバイスと比較して設備コストを削減することができる。
【0030】
図2の例において、計測デバイス200の内部には、例えば、バッテリ210と、通信部220と、制御部230と、第1センサ240と、第2センサ250とを含む機器が収容されている。なお、計測デバイス200は、第1センサ240と第2センサ250の何れかの一方が収容されていなくてもよい。また、計測デバイス200の内部には、第1センサ240および第2センサ250からの情報を一時的に記憶したり、プログラムや制御情報(ログ情報等)を記憶するメモリ(記憶部)260が収容されていてもよい。これらの構成(機器)は、計測デバイス200が備える構成である。また、これらの構成は、ケーブル等により接続されている。制御部230は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、制御部230は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置等に装着されることで計測デバイス200の記憶装置にインストールされてもよい。上記記憶装置は、例えば、メモリ260である。バッテリ210は、「電源部」の一例である。
【0031】
バッテリ210は、通信部220や制御部230、第1センサ240、第2センサ250、メモリ260に電力を供給する。バッテリ210は、例えば、リチウムイオン電池等の二次電池やコンデンサであるが、これに限定されない。また、バッテリ210は、計測デバイス200にソーラーパネル等のエナジーハーベスタが設けられている場合に、エナジーハーベスタによって得た電力を蓄電してもよい。
【0032】
通信部220は、ネットワークNWを介して情報提供サーバ100と通信を行ったり、例えば、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、その他の近距離無線通信の通信規格に基づいて他の計測デバイスと互いに無線通信してもよい。例えば、通信部220は、制御部230の制御により、第1センサ240と第2センサ250とにより計測された環境データを無線通信等により外部に送信する。
【0033】
制御部230は、計測デバイス200の各機器全体を制御する。制御部230は、第1センサ240および第2センサ250により計測された環境データをメモリ260に一時的に記憶させたり、通信部220を介して所定周期で情報提供サーバ100に送信するための制御等を行う。また、制御部230は、環境データを送信させる場合に、環境データに計測デバイスの識別情報(デバイスID)やセンサの識別情報、内部時計に基づく時刻情報、位置センサから取得した位置情報等を付与してもよい。また、制御部230は、メモリ260に記憶された情報を所定のタイミング(例えば、情報提供サーバ100への送信が完了したタイミング)で消去してもよい。
【0034】
第1センサ240は、主に地上の環境データを計測するためのセンサであり、例えば、温度センサや湿度センサ、気圧センサ、風力センサ、降雨センサ、日射量センサ、匂い検知センサ、カメラセンサ、画像判別センサ、赤外線・近赤外線センサ、水温センサ、水位センサ等のうち少なくとも1つが含まれる。また、第1センサ240には、位置センサが含まれてよい。第2センサ250は、地中UGの環境データを計測するためのセンサであり、例えば地温センサや土壌成分(例えば、土壌水分、土壌pH、酸化還元電位)センサ、地下水温センサ、地下水位センサ等のうち少なくとも1つが含まれる。第1センサ240は、地上の環境データを計測したい1または複数の高さに設けられてもよく、第2センサ250は、地中UGや水中の環境データを計測する1または複数の深さに設けられてよい。
【0035】
なお、計測デバイス200内部に設置される機器の一部または全部は、蓋部204を開けた状態で、容器本体202の上面開口部から挿入されることで設置される。また、容器本体202側に設置されるバッテリ210、通信部220、制御部230、第1センサ240、およびメモリ260は、本体内部の上方と下方に所定のスペースFS1、FS2が設けられるように配置される。つまり、容器本体202に収容される機器は、上方と下方のそれぞれのスペースFS1、FS2には配置せず、スペースFS1、FS2以外のスペースに収容される。スペースFS1、FS2を設けることにより、容器内部の湿気等の影響による機器の劣化を抑制することができ、機器の稼働率の向上させることができる。
【0036】
ここで、実施形態においては、計測デバイス200は、地形や地物の種類に応じて、設置密度や種類を異ならせる。例えば、計測デバイス200は、地形が斜面(水平に対する地面の傾斜が所定角度以上)である場合と平坦(水平に対する地面の傾斜が所定角度未満)である場合とで設置密度または種類を異ならせる。地形が斜面である場合には、水位や地下水分の変化が早く斜面上方から下方への水移動が生じるため、水の移動状況を把握するために計測デバイス200の数を平坦エリアよりも多くする。また、地形が平坦の場合は、斜面よりも日照時間が長いため、気温や地温を計測できるセンサを用いる。また、地物が水田である場合には、地下水位を計測するセンサに代えて(または加えて)、水田の水位も計測するセンサを備える。また、異なる地形の組み合わせ(例えば、斜面の下にある平坦)等は、水害等の被害が多いことが推測されるため、他の平坦部よりも計測デバイス200の設置密度を狭くする(設置数を多くする)。このように、エリアの地形や地物の種類に応じて計測デバイス200の設置密度や種類を計測することでより適切な環境データを取得することができる。
【0037】
[計測デバイスの形状]
次に、実施形態の計測デバイス200の形状について図を用いて具体的に説明する。
図3は、計測デバイス200の形状について説明するための図である。
図3の例では、容器本体202と、蓋部204と、支持部206とが、取り外された様子を示している。
【0038】
図3の例において、計測デバイス200の容器本体202の下部には、結合部202aが設けられている。結合部202aは、容器本体202内の機器を収容する収容部と一体に形成されてもよく、別体に形成して収容部に接合されていてもよい。結合部202aは、支持部206の開口部OP1から支持部206内(空洞部)に挿入されることで容器本体202と支持部206とが嵌合する形状である。例えば、結合部202aの外径D1は、結合部202aの外面が支持部206の内面と接触するように、支持部206の内径D2よりも僅かに小さく形成される。
【0039】
また、
図3の例に示すように、容器本体202(結合部202a以外の部分)の外径D3を結合部202aの外径D1よりも大きくすることで、結合部202aを支持部206の開口部OP1から挿入した後、結合部202aの高さH1まで挿入した時点で凹凸により支持部206の上面(上端)で容器本体202が支持される。なお、高さH1は、高くするほど支持部206の内面との接触面積が大きくなるため着脱時の摩擦力が大きくなり、結合度合が大きくなる。したがって、計測デバイス200を設置する環境に応じて高さH1が異なる容器本体202を用いてもよい。例えば、計測デバイス200を地形が斜面(水平に対する地面の傾斜が所定角度以上)の場所に設置する場合には、平坦(水平に対する地面の傾斜が所定角度未満)の場所に設置する場合に比して、高さH1が高い容器本体を用いる。更に、水田等の水が多い地点に設置する場合には、接合部分から内部に水が進入しにくくするため、他の場所に設置するよりも高さH1が高い容器本体202を使用する。なお、結合部202aの外面には、支持部206の内面と係合したり、螺合するための形状が形成されていてもよい。
【0040】
上述した結合部202aの構成により、作業員等は、支持部206と容器本体202とを容易に着脱することができるため、交換時等の作業コストを削減することができる。
【0041】
また、容器本体202の上部には、バッテリ210や通信部220、制御部230、第1センサ240、メモリ260等の機器を容器内部に出し入れするための上面開口部UOが設けられている。また、計測デバイス200には、この上面開口部UOを開閉するための蓋部204が設けられている。蓋部204の内径D4は、容器本体202の外径D3よりも大きく、蓋部204の内側面部には、突起部204bが設けられている。また、容器本体202の上部側には、突起部204bの位置および数に応じた切欠部(または溝部)202bが設けられている。なお、
図3の例では、2つの突起部204b-1、204b-2と、それに対応する2つの切欠部202b-1、202b-2とが設けられているが、数や形状については
図3の例に限定されない。
【0042】
また、蓋部204により上面開口部UOに蓋をして閉める場合、容器本体202の上部側に設けられた切欠部202b-1および202b-2に突起部204b-1および204b-2が挿入されるように蓋部204を下方に移動させ、切欠部202b-1および202b-2の形状に合わせて回転等の移動を加えることで、蓋部204が容器本体202の上部で係止される。なお、
図3の例とは逆に、容器本体202に突起部が設けられ蓋部204に切欠部(または溝部)が設けられてもよい。上述した構成により、上面開口部UOを蓋部204で覆って固定することができ、上面を確実に閉じることができる。また蓋部204を開ける場合には、蓋部204を閉めるときの動作と逆の動作が行われることで、蓋部204を容器本体202から取り外して上面開口部UOを開けることができる。
【0043】
なお、実施形態において、蓋部204には、容器本体202の上面と接触する部分にゴム製のシーリング部材が設けられてもよい。また、シーリング部材は、容器本体202の上面側に設けられていてもよく、蓋部204と容器本体202の両方に設けられてもよい。これにより、気密性や防水性をより向上させることができ、本体内部に収容された機器の劣化を抑制することができる。
【0044】
また、実施形態において、容器本内202に収容される機器は、スペースFS1およびFS2に配置されないようにするため、内部に仕切部材PPが設けられていてもよく、空間の区切りを示すマークMK等が設けられていてもよい。なお、仕切部材PPは、環境データ等を通信したり、電力を供給するためのケーブルが通過できるように、例えば、メッシュ状に形成されていたり、一部に開口部が設けられている。また、空間の区切りを示すマーカMKは、所定の色で描画されていてもよく、溝や突起が形成されていてもよい。また、スペースFS1、FS2には、機器が設置できないようにクッション部材や防水(防湿)部材等が設置されてもよい。これにより、スペースFS1、FS2に機器が設置されることを抑制することができ、容器内部の湿気等の影響による機器の劣化を抑制することができる。
【0045】
また、
図3の例において、容器本体202の底面(結合部202aの底面)には、第2センサ250に電力を供給したり、第2センサ250からの計測データを取得するためのケーブルを通過させる開口部BOが設けられている。
図3の例では、円形の二つの開口部BO1、BO2が設けられているが、数や形状、大きさ、位置については
図3の例に限定されない。また、開口部BOには、開閉可能な開閉機構が設けられていてもよい。
【0046】
図4は、開口部BO1、BO2の開閉機構について説明するための図である。
図4の例では、容器本体202(結合部202a)の下部付近を示している。
図4の例では、開口部BO1、BO2のそれぞれに、開閉機構202c-1、202c-2が設けられている。開閉機構202c-1、202c-2は、例えば、螺合または係合等によって開口部BO1、BO2に設置される。また、開閉機構202c-1、202c-2は、中心軸を基準に所定方向に回転させることで、開閉機構202c-1、202c-2に設けられた開口部BO1#、BO2#を開閉させる。例えば、開閉機構202c-1、202c-2を右回転させることで開口部BO1#、BO2#の口径を小さくし、左回転させることで開口部BO1#、BO2#の口径を大きくする。
【0047】
図3に示すような開閉機構202c-1、202c-2を設けることで、外部から容器本体202内への水の進入を抑制することができる。また、ケーブルを通した後に開口部BO1#、BO2#の口径を小さくする操作を行うことで、ケーブルを固定することができると共に、気密性を向上させることができる。
【0048】
[変形例]
実施形態において、容器本体202は、円筒形状に限定されず、例えば下方に向かって外径が小さくなるように、少なくとも一部をテーパ上に形成してもよい。
図5は、容器本体の変形例について説明するための図である。
図5の例では、容器本体202dの上部から下部に向かって外径が小さくなるように(
図3の例では、外径D10から徐々に外径D11となるように)、テーパ状に形成されている。なお、外径D11は、支持部206の内径D3よりも小さくし、外径D10は内径D3よりも大きくする。これにより、容器本体202dを支持部206の開口部OPに挿入して結合する場合に、下部の径が小さいため挿入し易くなり、設置負担を軽減することができる。更に外径D10が支持部206の内径D3より大きいため、容器本体202eの全てが支持部206の空洞に入ってしまうことを防止できると共に、確実に固定(支持)させることができる。また、容器本体202は、多角形状に形成されていてもよい。
【0049】
また、実施形態において、計測デバイス200は、上述した
図2に示す機器に加えて、収容された機器の状態を外部に通知する通知部が設けられていてもよい。
図6は、通知部を備える計測デバイス200Aの一例を示す図である。計測デバイス200Aは、例えば、
図2に示す計測デバイス200の構成に加えて、通知部270-1、270-2が設けられている。通知部270-1は、例えば、外部(周囲)に向けて所定の色を発光するLED(Light Emitting Diode)等の発光部である。また、通知部270-2は、所定の音声(例えば、報知音)を外部(周囲)に出力するスピーカ等である。
【0050】
例えば、制御部230は、バッテリ210の電力残量に応じた色を通知部270-1に出力させる(発光部を点灯または点滅させる)。また、制御部230は、第1センサ240や第2センサ250で異常が生じていることを検知した場合に、異常が生じていることを示す色を通知部270-1に出力させる。また、制御部230は、第1センサ240や第2センサ250から取得した情報に基づき異常が生じていると判定した場合に、異常が生じていることを示す音を通知部270-2に出力させてもよい。なお、音の出力する場合には、外部環境に応じて音量や音の種類、音を出力する周期等が調整されてもよい。また、通知部270は、計測デバイス200Aの識別情報(デバイスID)を通知してもよい。
【0051】
これにより、例えば、計測デバイス200の交換や修理等のメンテナンスを行う作業員に、計測デバイス200の状況等をより正確に把握させることができる。これにより、メンテナンス作業を効率的に行うことができ、作業コストを削減することができる。なお、通知部270-1、270-2の設置位置、数、形状等については、
図6の例に限定されない。なお、制御部230は、異常が生じていると判定した場合に、通信部220から異常を示す情報を計測デバイス200の位置情報と共に情報提供サーバ100や端末装置300等に送信してもよい。
【0052】
また、実施形態において、計測デバイス200には、発電機構が設けられていてもよい。
図7は、実施形態における発電機構の一例を示す図である。
図7の例では、計測デバイス200の蓋部204の上面にソーラーパネル280が設けられている。ソーラーパネル280は、「発電部」の一例である。ソーラーパネル280は、外部から太陽光によるエネルギーを取得し、取得したエネルギーによって発電した電力をバッテリ210に供給して蓄電させる。例えば、計測デバイス200は、田畑や水田等の日光を受けやすい位置に設置される可能性が高い。そのため、太陽光を受けやすい位置に設置される計測デバイス200にソーラーパネル280等の発電部を設けることで、稼働率を向上させることができると共に、電池交換等のメンテナンス回数も削減することができるため、作業コストや運用コストを抑制することができる。
【0053】
なお、ソーラーパネル280は、蓋部204の上面に代えて(または加えて)、側面に設置されてもよく、容器本体202に設置されてもよい。
【0054】
なお、制御部230は、環境データを情報提供サーバ100に送信する場合に、バッテリ210の電力残量に応じて環境データの送信周期を調整してもよい。例えば、制御部230は、電力残量が閾値以下となった場合に、送信周期を通常の周期(基準周期)よりも長くする。また、制御部230は、電力残量が少なくなるほど、送信周期を長くしてもよい。これにより、電力消費量を抑制することができ、計測デバイス200を長時間稼働させることができる。また、制御部230は、送信周期を長くした後、計測デバイス200に設けられたソーラーパネル280等により電力残量が増加した場合には、増加した電力残量に応じて送信周期を短くしてもよい。これにより、稼働率を向上させたまま、より多くの環境データを取得することができる。
【0055】
[計測デバイスの設置例]
次に、計測デバイス200の設置例について図を用いて説明する。なお、以下では、設置の実施例を幾つかに分けて説明するが、後述する例に限定されるものではない。
【0056】
(第1実施例)
図8は、第1実施例における計測デバイス200の設置例について説明するための図である。第1実施例は、牛(家畜の一例)の放牧(飼育)エリア400に計測デバイス200を設置した例を示している。具体的には、放牧エリア400の領域を区切る柵410に一以上の計測デバイス200aが所定間隔で取り付けられ、牛舎420の柱に一以上の計測デバイス200bが所定間隔で取り付けられている。なお、放牧エリア400には、堆肥舎が設置されていてもよく、堆肥舎にも牛舎420と同様に柱等に一以上の計測デバイス200bが設けられていてよい。なお、計測デバイス200bは、同じ柱の異なる高さに計測デバイス200b1、200b2を有する。また、牛舎420には、一以上の細霧器422、スプリンクラー424、電動ファン426等が設けられている。
【0057】
計測デバイス200aには、例えば、臭いセンサや風向センサが設けられ、所定周期で周辺の臭い(臭度)や風向(風量を含んでもよい)が計測される。計測デバイス200b1、200b2は、それぞれ臭いセンサや温度センサが設けられ、所定周期で周辺の臭い(臭度)や温度が計測される。
【0058】
情報提供サーバ100は、計測デバイス200a、200b1、200b2により得られる情報(環境データ)を取得して、放牧エリア400における環境状態を解析する。また、情報提供サーバ100は、放牧エリア400における環境状態の空間分布を示す画像を生成してユーザに提供することができる。例えば、情報提供サーバ100は、第1実施例の計測デバイス200a、200bの環境データを用いて解析された放牧エリア400における臭い・風向の空間分布を示す画像や、牛舎付近の温度の空間分布を示す画像を生成してユーザに提供することができる。また、情報提供サーバ100は、放牧エリア400に設けられる各種装置(細霧器422、スプリンクラー424、電動ファン426等)の稼働状況を取得している場合に、稼働状況を示す画像を生成してユーザに提供してもよい。
【0059】
第1実施例によれば、計測デバイス200a、200bにより計測された環境データを用いることで、放牧エリア400の周囲への配慮や牛の健康、暑熱対策等に配慮して、より適切な環境を実現できる。
【0060】
(第2実施例)
図9は、第2実施例における計測デバイス200の設置例について説明するための図である。第2実施例は、渓流(沢)エリア500に計測デバイス200を設置した例を示している。具体的には、渓流部分に所定間隔で一以上の計測デバイス200cが設置され、渓流の左右に所定間隔で一以上の計測デバイス200dが設置されている。計測デバイス200cには、例えば、水位センサおよび濁度センサが設けられ、所定周期で設置地点の水位および濁度が計測される。計測デバイス200dには、例えば、土壌水分センサが異なる高さで2箇所設けられ(深さ2水準)、所定周期で設置地点の土壌水分が計測される。
【0061】
情報提供サーバ100は、計測デバイス200c、200dにより得られる情報(環境データ)を取得して、渓流エリア500における環境状態を解析し、環境状態の空間分布を示す画像を生成してユーザに提供する。例えば、情報提供サーバ100は、計測デバイス200c、200dの設置位置に対応させて、計測デバイス200dから得られる情報から解析された土壌水分MAP(浅い場合と深い場合)と、計測デバイス200cの設置位置に応じて計測デバイス200cから得られる情報から解析された水位と濁度の変化を示す情報(水位・濁度MAP)とを生成してユーザに提供する。
【0062】
第2実施例によれば、計測デバイス200c、200dにより計測された環境データを用いることで、雷雨等による土砂崩れがあった場合の土壌水分や水位、濁度の空間分布をより正確にユーザに把握させることができる。そのため、災害に備えた適切な準備や対策を取ることができる。
【0063】
(第3実施例)
図10は、第3実施例における計測デバイス200の設置例について説明するための図である。第3実施例は、用水路エリア600に計測デバイス200eを設置した例を示している。
図10の例では、雨水や河川610等からの水が流れる用水路620に所定間隔で一以上の計測デバイス200eが設置されている。また、計測デバイス200eは、河川610からの取水位置621付近に設けられてよい。計測デバイス200eには、例えば、水位センサや流速センサが設けられ、所定周期で設置地点の水位および流速が計測される。なお、水位は、例えば、用水路620の上限から下方向への距離であってもよい。
【0064】
情報提供サーバ100は、計測デバイス200eにより得られる情報(環境データ)を取得して、用水路エリア600における環境状態(例えば、水位と流速とを用いた水量の状態)を解析し、環境状態の空間分布(例えば、水位分布や流速分布、水量分布)を示す画像を生成してユーザに提供する。
【0065】
第3実施例によれば、計測デバイス200eにより計測された環境データを用いることで、用水路620の漏水箇所や道路630の冠水箇所、用水の足りない箇所を瞬時に把握させることができる。したがって、例えば、大雨等の時にユーザが用水路620まで見に行かなくても河川610や用水の氾濫具合を経時的に把握でき、道路630の冠水状況等からより適切な避難ルートを決定することができる。また、第3実施例によれば、川から取水する場合において、用水路620の水位に応じてポンプの稼働状況等を調整することができる。したがって、電気代や人件費等を節約することができる。
【0066】
(第4実施例)
図11は、第4実施例における計測デバイス200の設置例について説明するための図である。第4実施例では、水田エリア700内に一以上の計測デバイス200fを所定間隔で設置し、更に水口および水尻付近に計測デバイス200gを設置した例を示している。計測デバイス200fには、例えば、水位センサや水温センサが設けられ、所定周期で設置地点の水位および水温が計測される。また、計測デバイス200gには、例えば、水位センサや流量センサが設けられ、所定周期で設置地点の水位および流量が計測される。
【0067】
情報提供サーバ100は、計測デバイス200f、200gにより得られる情報(環境データ)を取得して、水田エリア700における環境状態を解析し、環境状態の空間分布を示す画像を生成してユーザに提供できる。例えば、第4実施例では、水田エリア700内の水位分布や水温分布をユーザに提供できる。
【0068】
第4実施例によれば、計測デバイス200f、200gにより計測された環境データを用いることで、水田エリア700の適切な管理を実現できる。したがって、例えば、水温が高過ぎると生育不良や不稔となるため、水口から水を少しずつ水田エリア700内に入れて温度を下げることができる。この場合、水口付近に設けられた計測デバイス200gにより計測された水位や水量に基づいて水田エリア700に入れる水の量を制御できる。また、第4実施例によれば、水田エリア700の漏水で水位が下がり過ぎるのを検知したり、水田エリア700のどの位置で破損したときに水位がどの位置でどのように変わっていくのかを特定したり、予測したりすることができる。
【0069】
なお、上述した第1実施例から第4実施例のそれぞれは、他の実施例の一部または全部と組み合わせてもよい。上述したように、計測する環境に応じて計測デバイス200に搭載するセンサの種類を選択することができるため、必要な情報を適切に取得することができ、より正確な環境の解析や予測を行うことができる。
【0070】
上述した実施形態によれば、計測デバイス200において、地中から上部に延在する支持部206に着脱自在に結合可能な結合部202aと、地上の状況を計測する第1センサ240、第1センサ240と地中の状況を計測する第2センサ250とにより計測された環境データを外部に送信する通信部220、第1センサ240と第2センサ250と通信部220とに電力を供給するバッテリ210(電源部の一例)、および少なくとも通信部220を制御する制御部230を含む機器を内部に収容する容器本体202(収容部の一例)と、機器を容器本体202から出し入れ可能な開口部を開閉させるための蓋部204とを備えることにより、より低コストで環境データを取得することができる。
【0071】
実施形態によれば、様々な環境に応じた計測デバイス200を短時間で設置できたり、交換できるため、より低コスト化を実現できる。また、実施形態によれば、センサの種類を変えることで、様々な環境に応じた計測デバイス200が設置されるため、土壌、気象、水等に関する様々な環境データを多地点でリアルタイムに手軽に把握することができ、これらの情報を用いてより適切に土壌状態の解析や近未来の予測を行うことができる。また、実施形態によれば、機器やケーブルが計測デバイス200内に収納されるため、水滴等の影響による劣化を抑制できると共に野生動物等による故障も抑制できる。
【0072】
また、実施形態によれば、センサやバッテリなどの配線が計測デバイス200内に収まっているために、野生動物による食い千切りや周囲の木や枝等によるひっかかりで物理的に断線する危険性が少なく、また、紫外線による配線皮膜の劣化もないことから、野外設置でも保全管理が軽減される。
【0073】
また、実施形態によれば、計測デバイス200の鉛直方向にセンサや配線が集中していて、センサや配線の収納位置および埋設位置を特定できる。そのため、センサ交換等の作業もピンポイントで省力的に行える。また、農耕地に設置した場合に計測デバイス200付近での農業機械による農作業でもセンサや配線を引っかけて切断するなどの過ちが発生しない。
【0074】
また、実施形態によれば、安価に多数の環境データを収集して、いつでもどこでもデータを見ることができるため、大規模経営だけでなく、施設栽培や家庭菜園レベルまで幅広く活用することができる。実施形態の計測デバイス200を活用することにより、管理する区域全体(圃場、施設)を万遍なく監視することが可能となる。例えば、有機農業は、管理に多大な労力と時間を要することが知られているが、実施形態の計測デバイス200を設置することで、ピンポイントで異常を発見して、初期段階で対応可能になるため、有機農業において、特に大きな効果が得られることが期待できる。本実施形態に係る技術は、例えば、所定エリアの環境モニタリングや、圃場管理、施設管理、農作物栽培、土地の有効利用の検討等、農業や林業等の分野で広く活用できる。
【0075】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0076】
1…情報提供システム、100…情報提供サーバ、200…計測デバイス、210…バッテリ、220…通信部、230…制御部、240…第1センサ、250…第2センサ、260…メモリ、270…通知部、280…ソーラーパネル、300…端末装置