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特許7723734低κ誘電体膜を堆積するためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-05
(45)【発行日】2025-08-14
(54)【発明の名称】低κ誘電体膜を堆積するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20250806BHJP
   C23C 16/22 20060101ALI20250806BHJP
   H01L 21/31 20060101ALN20250806BHJP
【FI】
H01L21/316 X
C23C16/22
H01L21/31 C
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2023517293
(86)(22)【出願日】2021-09-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-04
(86)【国際出願番号】 US2021049509
(87)【国際公開番号】W WO2022060613
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2024-08-30
(31)【優先権主張番号】17/021,035
(32)【優先日】2020-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シエ, ボー
(72)【発明者】
【氏名】シオン, ルイトン
(72)【発明者】
【氏名】ンゴ, シュアー
(72)【発明者】
【氏名】ジム, カン エス.
(72)【発明者】
【氏名】リュウ, イーチュン
(72)【発明者】
【氏名】シア, リーチュン
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0052115(US,A1)
【文献】特表2014-503991(JP,A)
【文献】特開2007-221039(JP,A)
【文献】特開平10-284486(JP,A)
【文献】特開2019-081951(JP,A)
【文献】特開2000-106394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
C23C 16/22
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体処理方法であって、
少なくとも1つのビニル基を含むケイ素含有前駆体を含む堆積前駆体を半導体処理チャンバの基板処理領域に流入させることと、
前記基板処理領域内で、前記堆積前駆体から堆積プラズマを生成することと、
前記堆積プラズマのプラズマ放出物から基板上にケイ素炭素含有材料を堆積させることであって、堆積されたままの前記ケイ素炭素含有材料は、3.0以下の誘電率によって特徴付けられる、前記ケイ素及び炭素含有材料を堆積させることと、
を含み、
前記ケイ素-炭素含有材料が、2.5原子%を超えるメチル基の含有量及び3GPa以上の硬度によって特徴付けられる、
半導体処理方法。
【請求項2】
前記ケイ素含有前駆体が、式1、
(式中、R、R、及びRは、C~Cアルキル基、又はC~Cアルコキシ基を含むことができ、且つ
式中、R、R、及びRのうち少なくとも1つはアルコキシ基である)
によって特徴付けられる、請求項1に記載の半導体処理方法。
【請求項3】
前記ケイ素含有前駆体がビニルメチルジメトキシシランを含む、請求項1に記載の半導体処理方法。
【請求項4】
前記堆積前駆体が分子酸素(O)をさらに含む、請求項1に記載の半導体処理方法。
【請求項5】
前記ケイ素含有前駆体に対する前記分子酸素の流量比が、2:1以上である、請求項4に記載の半導体処理方法。
【請求項6】
前記ケイ素及び炭素含有材料が、5GPa以上のヤング率によって特徴付けられる、請求項1に記載の半導体処理方法。
【請求項7】
半導体処理方法であって、
ケイ素-炭素酸素含有前駆体を含む堆積前駆体を半導体処理チャンバの基板処理領域に流入させることと、
前記基板処理領域内で前記堆積前駆体から堆積プラズマを生成することであって、前記半導体処理チャンバは、前記堆積プラズマの生成の間、400℃以上の温度によって特徴付けられる、前記堆積プラズマを生成することと、
前記堆積プラズマのプラズマ放出物から基板上にケイ素-炭素酸素含有材料を堆積させることであって、堆積されたままの前記ケイ素-炭素酸素含有材料は、3.0以下の誘電率によって特徴付けられる、前記ケイ素-炭素酸素含有材料を堆積させることと、
を含み、
堆積されたままの前記ケイ素-炭素-酸素含有材料が、3GPa以上の硬度によって特徴付けられる、
半導体処理方法。
【請求項8】
前記半導体処理チャンバが、前記堆積プラズマの生成の間、450℃以下の温度によって特徴付けられる、請求項に記載の半導体処理方法。
【請求項9】
前記堆積前駆体が分子酸素(O)をさらに含み、前記分子酸素は、前記半導体処理チャンバ内への150sccm以下の流量を有する、請求項に記載の半導体処理方法。
【請求項10】
前記ケイ素-炭素酸素含有前駆体が少なくとも1つのビニル基を含む、請求項に記載の半導体処理方法。
【請求項11】
堆積されたままの前記ケイ素-炭素酸素含有材料が、25原子%以上の炭素量によって特徴付けられる、請求項に記載の半導体処理方法。
【請求項12】
堆積されたままの前記ケイ素-炭素酸素含有材料が、5GPa以上のヤング率によって特徴付けられる、請求項に記載の半導体処理方法。
【請求項13】
半導体処理方法であって、
ケイ素含有前駆体及び分子酸素(O)を含む堆積前駆体を半導体処理チャンバの基板処理領域に流入させることであって、前記ケイ素含有前駆体は2000mgm以下の前記半導体処理チャンバ内への流量を有し、前記分子酸素は120sccm以上の流量を有する、前記堆積前駆体を半導体処理チャンバの基板処理領域に流入させることと、
前記基板処理領域内で、前記堆積前駆体から堆積プラズマを生成することと、
前記堆積プラズマのプラズマ放出物から基板上にケイ素-炭素酸素含有材料を堆積させることであって、堆積されたままの前記ケイ素-炭素酸素含有材料は、3.0以下の誘電率によって特徴付けられる、前記ケイ素-炭素酸素含有材料を堆積させることと、
を含み、
堆積されたままの前記ケイ素-炭素-酸素含有材料が、3GPa以上の硬度によって特徴付けられる、
半導体処理方法。
【請求項14】
前記堆積前駆体が、ヘリウム又は窒素(N)を含む少なくとも1つのキャリアガスをさらに含む、請求項1に記載の半導体処理方法。
【請求項15】
前記ケイ素含有前駆体に対する前記分子酸素の流量比が、2:1以上である、請求項1に記載の半導体処理方法。
【請求項16】
前記ケイ素含有前駆体が少なくとも1つのビニル基を含む、請求項1に記載の半導体処理方法。
【請求項17】
前記ケイ素-炭素酸素含有材料が、2.5原子%を超えるメチル含有量、又は25原子%以上の炭素の量によって特徴付けられる、請求項1に記載の半導体処理方法。
【請求項18】
堆積されたままの前記ケイ素-炭素酸素含有材料が、5GPa以上のヤング率によって特徴付けられる、請求項1に記載の半導体処理方法。
【請求項19】
半導体処理方法であって、
ケイ素-炭素-酸素含有前駆体を含む堆積前駆体を半導体処理チャンバの基板処理領域に流入させることと、
前記基板処理領域内で前記堆積前駆体から堆積プラズマを生成することであって、前記半導体処理チャンバは、前記堆積プラズマの生成の間、425℃以上の温度によって特徴付けられる、前記堆積プラズマを生成することと、
前記堆積プラズマのプラズマ放出物から基板上にケイ素-炭素-酸素含有材料を堆積させることであって、堆積されたままの前記ケイ素-炭素-酸素含有材料は、3.0以下の誘電率によって特徴付けられる、前記ケイ素-炭素-酸素含有材料を堆積させることと、
を含む、半導体処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2020年9月15日に出願され、「SYSTEMS AND METHODS FOR DEPOSITING LOW-K DIELECTRIC FILMS」と題された米国非仮出願第17/021,035号の利益及び優先権を主張し、その内容はすべての目的に関し、その全体を参照によりここに援用するものとする。
技術分野
[0002]本技術は、堆積プロセス及びチャンバに関する。より詳細には、本技術は、UV処理を利用しない可能性のある低κ膜の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背景
[0003]集積回路は、基板表面に複雑にパターン化された材料層を生成するプロセスによって可能となる。基板上にパターン化された材料を製造するには、材料を形成及び除去するための制御された方法が必要である。材料の特性は、デバイスの動作方法に影響を与える可能性があり、また膜同士の相対的な除去方法にも影響を与える可能性がある。プラズマ強化堆積は、特定の特徴を有する膜を生成することができる。形成される多くの膜は、適切な特性を提供するために、膜の材料特性を調整又は強化するための追加の処理を必要とする。
【0003】
[0004]したがって、高品質のデバイス及び構造を製造するために使用できる改善されたシステム及び方法が必要である。これら及び他のニーズは、現在の技術によって対処される。
【発明の概要】
【0004】
[0005]本技術の実施形態は、二酸化ケイ素(κ=3.9)と比べて誘電率が低い(すなわち、低κ)誘電体膜を形成するための半導体処理方法を含む。誘電体膜の実施形態は、誘電率(すなわちκ値)が3.0以下である炭素含有酸化ケイ素膜を含む。処理方法の実施形態では、これらの低κの炭素含有誘電体膜は、バックエンドオブライン(BEOL)半導体製造プロセスにおいて、金属線とコンタクト間の電気絶縁誘電体層として形成することができる。これらの炭素含有酸化ケイ素膜の低いκ値は、低κ膜によって分離された金属線とコンタクトでの信号伝播のRC遅延、クロストークノイズ、及び電力損失を低減する可能性がある。
【0005】
[0006]半導体処理方法の実施形態は、堆積前駆体を半導体処理チャンバの基板処理領域に流入することを含むことができる。堆積前駆体は、少なくとも1つのビニル基を有するケイ素含有前駆体を含むことができる。これらの方法は、堆積前駆体から基板処理領域内に堆積プラズマを生成することをさらに含むことができる。誘電率(κ値)が約3.0以下であることを特徴とするケイ素及び炭素含有材料を、堆積プラズマのプラズマ流から基板上に堆積することができる。
【0006】
[0007]追加の実施形態では、ケイ素含有前駆体は、式1、
(式中、R、R、及びRは、C~Cアルキル基、又はC~Cアルコキシ基を含んでいてもよく、R、R、及びRの少なくとも1つは、アルコキシ基であり、R、R、及びRのうちの少なくとも1つはアルコキシ基である。)
によって特徴付けることができる。
【0007】
[0008]さらなる実施形態では、ケイ素含有前駆体は、ビニルメチルジメトキシシランを含んでもよい。いくつかの実施形態では、堆積前駆体は分子酸素をさらに含んでもよい。実施形態では、分子酸素とケイ素含有前駆体との流量比は、約2:1以上であることができる。さらなる実施形態では、ケイ素及び炭素含有材料は、2.5原子%を超えるメチルの組み込みによって特徴付けることができる。さらに別の実施形態では、ケイ素及び炭素含有材料は、約5GPa以上のヤング率によって特徴付けることができる。さらに別の実施形態では、ケイ素及び炭素含有材料は、約3GPa以上の硬度によって特徴付けられることができる。
【0008】
[0009]本技術の実施形態は、低κ誘電体膜を形成するための追加の方法を含むことができる。方法の実施形態は、堆積前駆体を半導体処理チャンバの基板処理領域に流入することを含むことができる。実施形態では、堆積前駆体は、ケイ素-炭素及び酸素含有前駆体を含むことができる。この方法の実施形態は、基板処理領域内で堆積前駆体から堆積プラズマを生成することをさらに含むことができる。半導体処理チャンバは、堆積プラズマの生成中の約400℃以上の温度によって特徴付けることができる。堆積プラズマからのプラズマ放出物は、基板上にケイ素-炭素及び酸素含有材料を堆積することができる。いくつかの実施形態では、堆積されたままのケイ素-炭素及び酸素含有材料は、約3.0以下の誘電率(κ値)によって特徴付けることができる。
【0009】
[0010]追加の実施形態では、半導体処理チャンバは、堆積プラズマの生成中の約420℃以上の温度によって特徴付けることができる。さらなる実施形態では、堆積前駆体は分子酸素(O)をさらに含むことができ、分子酸素は、半導体処理チャンバ内への約150sccm未満の流量によって特徴付けることができる。さらなる実施形態では、ケイ素-炭素及び酸素含有前駆体は、少なくとも1つのビニル基を含み得る。さらに追加の実施形態では、堆積されたままのケイ素-炭素及び酸素含有材料は、約25原子%以上の炭素量によって特徴付けることができる。さらに追加の実施形態では、ケイ素-炭素及び酸素含有材料は、約5GPa以上のヤング率によって特徴付けることができ、約3GPa以上の硬度によってさらに特徴付けることができる。
【0010】
[0011]本技術の実施形態は、低κ誘電体膜を形成するためのさらに別の方法を含むことができる。方法の実施形態は、堆積前駆体を半導体処理チャンバの基板処理領域に流入することを含むことができる。堆積前駆体は、ケイ素含有前駆体及び分子酸素(O)を含むことができる。いくつかの実施形態では、ケイ素含有前駆体は半導体処理チャンバへの、約2000mgm以下の流量によって特徴付けることができ、Oは、約120sccm以下の流量によって特徴付けることができる。この方法は、基板処理領域内で堆積前駆体から堆積プラズマを生成することをさらに含むことができる。方法は、堆積プラズマのプラズマ流から基板上にケイ素-炭素及び酸素含有材料を堆積することをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、堆積されたままのケイ素-炭素及び酸素含有材料は、約3.0以下の誘電率によって特徴付けることができる。
【0011】
[0012]追加の実施形態では、分子酸素のケイ素含有前駆体に対する流量比は、約2:1以上であることができる。さらなる実施形態では、堆積前駆体は、少なくとも1つのキャリアガスをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、キャリアガスは、ヘリウム又は窒素(N)のうちの少なくとも1つを含むことができる。さらに追加の実施形態では、堆積されたままのケイ素-炭素及び酸素含有材料は、2.5原子%を超えるメチルの組み込み、及び約25原子%を超える炭素量によって特徴付けることができる。さらに追加の実施形態では、ケイ素-炭素及び酸素含有材料は、約5GPa以上のヤング率によって特徴付けることができ、約3GPa以上の硬度によってさらに特徴付けることができる。
【0012】
[0013]このような技術は、従来の処理方法よりも多くの利点を提供する可能性がある。例えば、ビニル基を有する部分などの不飽和炭素-炭素結合を有する有機部分を含むケイ素含有前駆体を利用すると、堆積されたままの低κ材料のSi-C架橋を増加させることができる。このSi-C架橋量の増加により、ヤング率及び硬度のような機械的特性を低下させることなく、材料中の炭素レベルを増加させることが可能となる。これらの低κ膜中の炭素のレベルの増加は、膜の機械的安定性を同時に低下させることなく、膜の誘電率(κ値)を約3.0以下に低下させる。本技術の実施形態はまた、低κ材料の堆積が420℃以上の温度で実施することができる処理方法も含む。堆積温度の上昇は、低κ材料のSi-C架橋の量も増加させる。さらに、本技術の実施形態は、ケイ素含有前駆体を、約120sccm以上の流量で半導体処理チャンバに供給される分子酸素と組み合わせる堆積前駆体を含むことができる。酸素流量の増加は、堆積されたままの材料に組み込まれるメチル基の量を低減することによって、低κ材料のSi-C及びSi-O架橋を増加させる可能性もある。本技術のなおさらなる実施形態では、堆積されたままの低κ材料は、処理方法に追加の時間と複雑さを追加する堆積後の紫外線処理を経ることなく、低いκ値と高い機械的安定性によって特徴付けることができる。これら及び他の実施形態は、それらの利点及び特徴の多くとともに、以下の説明及び添付の図と併せてより詳細に説明される。
【0013】
[0014]開示された技術の性質及び利点のさらなる理解は、明細書及び図面の残りの部分を参照することによって実現され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】[0015]本技術のいくつかの実施形態による例示的な処理システムの平面図を示す。
図2】[0016]本技術のいくつかの実施形態による例示的なプラズマシステムの概略断面図を示す。
図3】[0017]本技術のいくつかの実施形態による半導体処理の例示的な方法の操作を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0018]図のいくつかは回路図として含まれている。これらの図は説明を目的としたものであり、特に縮尺であると述べられていない限り、縮尺であると見なされるべきではないことを理解されたい。さらに、概略図として、図は理解を助けるために提供されており、現実的な表現と比較してすべての側面又は情報を含むとは限らず、説明のために誇張された資料を含む場合がある。
【0016】
[0019]添付の図では、同様の構成要素及び/又は特徴部には同じ参照ラベルが付いている場合がある。さらに、同種の様々な構成要素は、類似の構成要素を区別する文字で参照符号をたどることによって区別され得る。本明細書で第1の参照符号のみが使用される場合、説明は、文字に関係なく、同じ第1の参照符号を有する類似の構成要素の任意の1つに適用可能である。
【0017】
[0020]バックエンドオブライン(BEOL)半導体プロセスでは、低κ膜は、集積回路のメタライゼーション層の製造において複数の機能を果たし得る。これらの機能には、他の構造の中でも、相互接続ライン、コンタクト孔、及びビアなどの導電性金属含有構造の間に電気絶縁性低κ膜の組み込みkを含み得る。また、金属構造の形成に続く低κ膜の部分的な除去も含むことができる。BEOL 処理における一般的な除去プロセスの1つは、化学的エッチングと物理的研磨を組み合わせて基板表面から低κ材料を除去する化学機械研磨(CMP)である。
【0018】
[0021]BEOLプロセスで使用される低κ膜は、ドープされていない酸化ケイ素に比べて低い誘電率(κ値)を有し、金属含有構造の形成中及びCMPによる除去中の破砕に耐える高い機械的安定性を備えている必要がある。残念なことに、これらの品質は、ケイ素-炭素及び酸素を含む材料で作られた低κ膜では張力状態にあることが多い。多くの場合、材料中の炭素量が多いと、より低いヤング率とより低い硬度によって特徴付けられるように、フィルムの他の機械的特性の中でも、κ値が低下して、フィルムの機械的安定性が低下する可能性がある。
【0019】
[0022]低κ膜の機械的安定性を改善する1つのアプローチは、堆積されたままの膜を紫外光で処理すること(すなわち、UV処理/硬化操作)である。残念なことに、これらのUV処理操作では、多くの場合、低κ膜堆積操作全体に時間と複雑さを加える、基板を低κ膜堆積チャンバからUV処理チャンバに移動することを含むことが多々ある。多くの場合、UV光は低κ材料を数オングストロームの深さまでしか透過できず、完全に処理された低κ膜は、数十から数百オングストロームの厚さの低κ膜を完成させるために、堆積チャンバと処理チャンバとの間で基板を数回往復させる必要がある。複数の堆積及び処理操作により、半導体製造プロセスにおけるウエハのスループットが大幅に低下する可能性がある。
【0020】
[0023]本技術は、良好な機械的安定性を有する低κ膜を形成する半導体処理方法の実施形態を含めることによって、これらの問題を克服することができる。実施形態では、これらの低κ膜は、高いヤング率(例えば、約5GPa以上)及び高い硬度(例えば、約3GPa以上)によって特徴付けることができる。特定の酸素対炭素比によって特徴付けられる特定の前駆体を用いて高温で堆積を行うことにより、減少した誘電率を維持するために必要な炭素部分の比率を維持しながら、低κ膜内のケイ素-炭素架橋及びケイ素及び酸化物の結合が増加する可能性がある。これにより、誘電率が低下するにつれて、モジュラス、硬度、及び膜の機械的安定性の他の特性が低下するという自然な傾向を克服する可能性がある一方で、処理中に必要な操作の数を低減もする。特に、本技術は、硬度を改善するために膜を後処理するためのUV露光、プラズマ処理、又は他の処理操作を含む堆積後の後続の処理を利用しなくてもよい。
【0021】
[0024]残りの開示は、開示された技術を利用する特定の堆積処理を型どおり特定しているが、システム及び方法は、他の堆積及び洗浄チャンバ、並びに記載されたチャンバで起こり得るプロセスに等しく適用可能であることは容易に理解されよう。したがって、この技術は、これらの特定の堆積処理又はチャンバのみで使用するために制限されていると見なされるべきではない。本開示では、本技術の実施形態による追加の詳細を説明する前に、本技術の実施形態による堆積プロセスを実行するために使用され得る1つの可能なシステム及びチャンバを論じる。
【0022】
[0025]図1は、実施形態による堆積、エッチング、焼成、及び硬化チャンバの処理システム100の一実施形態の平面図を示す。図では、一対の前部開口統合ポッド102は、ロボットアーム104によって受け取られ、基板処理チャンバ108a~fの1つに配置され、タンデムセクション109a~cに位置決めされる前に低圧保持領域106に配置される様々なサイズの基板を供給する。第2のロボットアーム110を使用して、保持領域106から基板処理チャンバ108a~fへ基板ウエハを搬送し、戻すことができる。各基板処理チャンバ108a~fは、プラズマ強化化学気相堆積、原子層堆積、物理的気相堆積、エッチング、前洗浄、脱ガス、配向、及びアニーリング、アッシングなどを含むその他の基板プロセスに加えて、多数の基板処理操作を実行するよう装備することができる。
【0023】
[0026]基板処理チャンバ108a~fは、基板上の誘電体又は他の膜を堆積、アニーリング、硬化及び/又はエッチングするための1つ又は複数のシステム構成要素を含むことができる。1つの構成では、2対の処理チャンバ、例えば108c~d及び108e~fは、基板上に誘電体材料を堆積するのに使用することができ、第3の対の処理チャンバ、例えば108a~bは、堆積された誘電体をエッチングするのに使用することができる。別の構成では、チャンバの3つの対すべて、例えば108a~fは、基板上に交互誘電体膜のスタックを堆積するように構成することができる。記載されたプロセスの任意の1つ又は複数は、異なる実施形態に示される製造システムから分離されたチャンバ内で実行され得る。誘電体膜のための堆積、エッチング、アニーリング、及び硬化チャンバの追加の構成が、システム100によって企図されることを理解されたい。
【0024】
[0027]図2は、本技術のいくつかの実施形態による例示的なプラズマシステム200の概略断面図を示す。プラズマシステム200は、上述のタンデムセクション109のうちの1つ又は複数に適合することができる一対の処理チャンバ108を示すことができ、これは本技術の実施形態による蓋スタック構成要素を含むことができ、以下でさらに説明することができる。プラズマシステム200は、一般に、一対の処理領域220A及び220Bを画定する側壁212、底壁216、及び内部側壁201を有するチャンバ本体202を含むことができる。処理領域220A~220Bの各々は、同様に構成することができ、同一の構成要素を含むことができる。
【0025】
[0028]例えば、処理領域220Bは、その構成要素が処理領域220Aに含まれてもよく、プラズマシステム200の底壁216に形成された通路222を通って処理領域に配置されたペデスタル228を含んでもよい。ペデスタル228は、本体部分などのペデスタルの露出面上で基板229を支持するように適合されたヒータを提供することができる。ペデスタル228は、所望の処理温度で基板温度を加熱及び制御することができる、例えば抵抗加熱素子などの加熱素子232を含むことができる。ペデスタル228はまた、ランプアセンブリなどの遠隔加熱要素又は任意の他の加熱装置によって加熱されてもよい。
【0026】
[0029]ペデスタル228の本体は、フランジ233によってステム226に結合することができる。ステム226は、ペデスタル228を電源コンセント又は電源ボックス203と電気的に結合することができる。電源ボックス203は、処理領域220B内のペデスタル228の上昇及び移動を制御する駆動システムを含むことができる。ステム226はまた、ペデスタル228に電力を供給するための電力インターフェースを含んでもよい。電源ボックス203は、熱電対インターフェースなどの電力及び温度インジケータ用のインターフェースを含むこともできる。ステム226は、電源ボックス203と取り外し可能に結合するように適合されたベースアセンブリ238を含み得る。電源ボックス203の上に円周リング235が示されている。いくつかの実施形態では、円周リング235は、ベースアセンブリ238と電源ボックス203の上面との間の機械的インターフェースを提供するように構成された機械的ストップ又はランドとして適合されたショルダーであってもよい。
【0027】
[0030]ロッド230は、処理領域220Bの底壁216に形成された通路224を通って含まれてもよく、ペデスタル228の本体を通って配置された基板リフトピン261を位置決めするのに利用することもできる。基板リフトピン261は、基板229をペデスタルから選択的に離して、基板移送ポート260を通して基板229を処理領域220Bに出し入れするために利用されるロボットとの基板229の交換を容易にすることができる。
【0028】
[0031]チャンバ蓋204は、チャンバ本体202の頂部と結合され得る。蓋204は、それに連結された1つ又は複数の前駆体分配システム208を収容することができる。前駆体分配システム208は、デュアルチャネルシャワーヘッド218を介して処理領域220B内に反応物及び洗浄前駆体を送達することができる前駆体入口通路240を含むことができる。デュアルチャネルシャワーヘッド218は、フェースプレート246の中間に配置されたブロッカプレート244を有する環状ベースプレート248を含むことができる。無線周波数(「RF」)源265は、デュアルチャネルシャワーヘッド218と結合することができ、これは、デュアルチャネルシャワーヘッド218のフェースプレート246とペデスタル228との間のプラズマ領域の生成を促進するために、デュアルチャネルシャワーヘッド218に電力を供給することができる。デュアルチャネルシャワーヘッド218及び/又はフェースプレート246は、前駆体分配システム208から処理領域220A及び/又は220Bへの前駆体の流れを可能にする1つ又は複数の開口部を含み得る。いくつかの実施形態では、開口部は、直線形状の開口部及び円錐形状の開口部のうちの少なくとも1つを含み得る。いくつかの実施形態では、RF源は、ペデスタル228などのチャンバ本体202の他の部分と結合して、プラズマ生成を容易にすることができる。蓋204にRF電力が伝導するのを防止するために、蓋204とデュアルチャネルシャワーヘッド218との間に誘電アイソレータ258を配置することができる。シャドウリング206は、ペデスタル228と係合するペデスタル228の周囲に配置することができる。
【0029】
[0032]操作中に環状ベースプレート248を冷却するために、任意選択の冷却チャネル247を前駆体分配システム208の環状ベースプレート248に形成することができる。ベースプレート248を所定の温度に維持できるように、水、エチレングリコール、ガスなどの熱伝達流体を冷却チャネル247を通して循環させることができる。処理領域220B内の処理環境への側壁201、212の露出を防止するために、チャンバ本体202の側壁201、212に近接して処理領域220B内にライナーアセンブリ227を配置することができる。ライナーアセンブリ227は、処理領域220Bからガス及び副産物を排出し、処理領域220B内の圧力を制御するように構成されたポンピングシステム264に結合され得る円周ポンピングキャビティ225を含み得る。ライナーアセンブリ227上に複数の排気ポート231を形成することができる。排気ポート231は、システム200内での処理を促進する方法で、処理領域220Bから円周ポンピングキャビティ225へのガスの流れを可能にするように構成され得る。
【0030】
[0033]図3は、本技術のいくつかの実施形態による半導体処理の例示的な方法300の操作を示す。本方法は、上述の処理システム200、並びにプラズマ堆積が実行され得る任意の他のチャンバを含む、様々な処理チャンバで実行され得る。方法300は、本技術による方法のいくつかの実施形態に具体的に関連付けられてもされなくてもよい、いくつかの任意の操作を含み得る。
【0031】
[0034]方法300は、高い機械的安定性を有する堆積されたままの、低κ膜を形成するためのプラズマ強化化学気相堆積(PECVD)処理操作を含むことができる。従来の方法とは対照的に、これらの堆積されたままの、低κ膜は、膜の機械的安定性を高めるためのUV硬化などの堆積後処理を必要としない。いくつかの実施形態では、本方法は、方法300の開始前に、任意選択の操作を含むことができるか、又は本方法は、機械的に安定な低κ材料の堆積後に追加の操作を含むことができる。追加の実施形態では、方法300は、図3に示すように、操作305で、堆積前駆体を半導体処理チャンバの基板処理領域に流入することを含むことができる。実施形態では、基板は、堆積前駆体がチャンバ内に流入する際に、半導体処理チャンバの基板処理領域内に存在し得る。
【0032】
[0035]いくつかの実施形態では、堆積前駆体は、少なくとも1つのビニル基(すなわち、-CH=CH基)を有するケイ素含有前駆体を含むことができる。追加の実施形態では、ケイ素含有前駆体は、少なくとも2つのビニル基を有し得る。さらに追加の実施形態では、ケイ素含有前駆体は、式1、
(式中、R、R、及びRは、C~Cアルキル基、又はC~Cアルコキシ基を含んでいてもよく、R、R、及びRの少なくとも1つは、アルコキシ基であり、R、R、及びRのうちの少なくとも1つはアルコキシ基である。)
によって特徴付けることができる。さらなる実施形態では、ケイ素含有前駆体はビニル基含有ビニルメチルジメトキシシランであってよく、これは、以下の構造式で表すことができる。
ビニルメチルジメトキシシラン
【0033】
[0036]さらなる実施形態では、ケイ素含有前駆体は、Si-O結合及びSi-C結合を有する前駆体を含むことができ、線状、分岐状ケイ素含有前駆体、環状ケイ素含有前駆体、又は任意の数の追加のケイ素含有前駆体を含むことができる。いくつかの実施形態では、ケイ素含有前駆体は、ケイ素に対する炭素及び/又は酸素の特定のモル比によって特徴付けることができる。例えば、いくつかの実施形態では、ケイ素に対する炭素又は酸素の比は、約1以上であるか、又は約1.5以上、約2以上、約2.5以上、約3以上、約3.5以上、約4以上、又はそれを超える比であってよい。ケイ素に対する炭素又は酸素の量を増加させることにより、膜内への残留部分又は分子の追加の取り込みを増加させることができる。これにより、材料特性が向上するだけでなく、以下でさらに説明するように誘電率が低下する可能性がある。
【0034】
[0037]さらなる実施形態では、ケイ素含有前駆体は、ケイ素-酸素及び炭素含有前駆体を含むことができる。実施形態では、ケイ素-酸素及び炭素含有前駆体は、約4:1以下、約3:1以下、約2:1以下、約4:3以下、又はそれを下回る炭素対酸素比によって特徴付けることができる。実施形態では、ケイ素-酸素及び炭素含有前駆体によって提供される堆積されたままの低κ膜中の酸素量の増加は、膜の機械的安定性を増加させる可能性がある。追加の実施形態では、ケイ素-酸素及び炭素含有前駆体によって提供される酸素の量は、膜の誘電率(κ値)の低い値を維持するように、低κ膜内の炭素の量に対してバランスを取ることができる。
【0035】
[0038]追加の実施形態では、ケイ素含有前駆体は、中心ケイ素原子と、中心ケイ素に結合した少なくとも1つのメチル基及び少なくとも1つのメトキシ基とを有する、ケイ素-酸素及び炭素含有前駆体を含み得る。実施形態では、これらのメチル-メトキシシロキサン前駆体は、DMDMOS、TMMOS、及びMTMOSを含むことができる。さらなる実施形態では、ケイ素含有前駆体は、少なくとも1つのケイ素原子、少なくとも1つのケイ素とアルキル基との結合、及び少なくとも1つのケイ素とアルコキシ基との結合を含むことができる。追加の実施形態では、ケイ素含有前駆体は、単一のケイ素原子、並びに両方ともケイ素原子に結合しているアルキル基及びアルコキシ基を含み得る。さらに追加の実施形態では、ケイ素含有前駆体は、2つ以上のケイ素原子を含み得る。さらなる実施形態では、ケイ素含有前駆体は、1つ又は複数のメチル基に加えて、あるいはその代わりに、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、及び/又はヘキシル基などのアルキル基を有することができる。さらなる実施形態では、ケイ素含有前駆体は、1つ又は複数のメトキシ基に加えて、あるいはその代わりに、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、及び/又はヘキソキシ基などのアルコキシ基を有してもよい。実施形態では、ケイ素含有前駆体は、1つ又は複数のジメチルジメトキシシラン、ビス(メチルジメトキシシリル)メタン、メチルトリメトキシシラン、イソブチルメチルジメトキシシラン、テトラメチル-1,3-ジメトキシジシロキサン、トリメチルメトキシシラン、ジエトキシメチルシラン、オクタメトキシシクロテトラシロキサン、イソブチルトリメトキシシラン、1,3-ジメチル-1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン、1,2-ビス(メチルジメトキシシリル)エタン、プロピルメチルジメトキシシラン、及び1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラメトキシシクロテトラシロキサンを含むことができる。
【0036】
[0039]ケイ素含有前駆体の追加の実施形態は、式2、
式2において
は、-CH、-CHCH、-CHCHCH、-CHCHCHCH、-CHCHCHCHCH、又は-CHCHCHCHCHCHのようなC-Cアルキル基を含み、
は、-CH、-CHCH、-CHCHCH、-CHCHCHCH、-CHCHCHCHCH、又は-CHCHCHCHCHCHのようなC-Cアルキル基を含み、
は、-OCH、-CH、-H、-(CHCH、-O(CHCH、-CH=CH,-CH-CH-(CHCH、又は-CH-CH(CHを含み、式中、n=1~5であり、
は、-OCH、-CH3、-H、-(CHCH、-O(CHCH、-CH=CH、-CH-CH-(CHCH、又は-CH-CH(CHを含み、式中、n=1~5である。
【0037】
[0040]いくつかの実施形態では、堆積前駆体は、分子酸素(O)をさらに含むことができる。実施形態では、ケイ素含有前駆体の流量に対するOの流量は、特にヤング率や硬度などの膜特性に反映されるように、低誘電率(κ値)と高い機械的安定性の両方を備えた、堆積されたままの低κ膜の形成を支援する流量比で維持することができる。実施形態では、ケイ素含有前駆体に対するOの流量比は、約2:1以上、約2.5:1以上、約3:1以上、約3.5:1以上、約4:1以上、約4.5:1以上、 約5:1以上、又はそれを超える比であってよい。
【0038】
[0041]さらなる実施形態では、堆積前駆体は、ヘリウム及び窒素(N)などの1つ又は複数のキャリアガスも含むことができる。1つ又は複数のキャリアガスは他の堆積前駆体と共に供給されてもよいが、キャリアガスは、反応せずに堆積されたままの低κ膜の一部を形成するのに反応しない不活性ガスと見なすことができる。
【0039】
[0042]追加の実施形態では、ケイ素含有前駆体の流量は、毎分約2000ミリグラム(mgm)以上、約2100mgm以上、約2250mgm以上、約2500mgm以上、約2750mgm以上、約2900mgm以上、約3000mgm以上、又はそれを超える流量であることができる。さらなる実施形態では、Oの流量は、約120sccm以上、約130sccm以上、約140sccm以上、約150sccm以上、約200sccm以上、約250sccm以上、約300sccm以上、約350sccm以上、約400sccm以上、約450sccm以上、約500sccm以上、又はそれを超える流量であることができる。一層さらなる実施形態において、1つ又は複数のキャリアガスの流量は、1000sccm以上、2000sccm以上、3000sccm以上、3000sccm以上、4000sccm以上、5000sccm以上、又はそれを超える流量であることができる。またさらなる実施形態では、組み合わせた堆積前駆体の流量は、1150sccm以上、約1500sccm以上、約2000sccm以上、約3000sccm以上、約4000sccm以上、約5000sccm以上、又はそれを超える流量であることができる。
【0040】
[0043]いくつかの実施形態では、ケイ素含有前駆体に対するOの流量が過剰になると、堆積されたままの低κ膜の誘電率が異常に大きくなる可能性があることが観察されている。これらの例における過剰なO流量は、膜中の酸素と水素との間の反応数を増加させ、ヒドロキシル(-OH)基を生成する可能性があると考えられている。多くの実施形態では、ケイ素-酸素及び炭素を含む低κ膜の誘電率は、膜中のヒドロキシル基の量に非常に敏感である可能性がある。膜中のヒドロキシル基の量の比較的小さな増加(例えば、約1原子%以下の増加)は、膜の誘電率の比較的大きな増加(例えば、約10%以上の増加)を引き起こす可能性がある。いくつかの実施形態では、O流量は、約200sccm以下、約180sccm以下、約160sccm以下、約150sccm以下、又はそれを下回る流量であることができる。
【0041】
[0044]追加の実施形態では、半導体処理チャンバの基板処理領域に流入させる堆積前駆体は、チャンバ内の圧力を変化させる可能性がある。実施形態では、低κ膜の形成中、半導体基板チャンバ圧力は、約1Torr以上、約2Torr以上、約3Torr以上、約4Torr以上、約5Torr以上、約6Torr以上、約7Torr以上、約8Torr以上、約9Torr以上、約10Torr以上、又はそれを超える圧力によって特徴付けることができる。
【0042】
[0045]方法300の実施形態は、操作310で堆積前駆体から堆積プラズマを生成することをさらに含むことができる。実施形態では、堆積プラズマは、半導体処理チャンバの基板処理領域内でプラズマを生成するために面板にRF電力を供給することなどによって、処理領域内で堆積前駆体から生成され得る。堆積プラズマは、前述の周波数のいずれかで生成することができ、15MHz未満の周波数(例えば、13.56MHz)で生成することができる。より高い周波数が使用されてもよいが、いくつかの実施形態では、より低い周波数のプラズマ生成は、より高いプラズマ周波数操作とは異なり、処理中の炭素の除去を容易にすることができる。
【0043】
[0046]方法300の実施形態は、操作315で基板上に低κ膜を堆積することをさらに含んでもよい。実施形態では、基板は半導体処理チャンバの基板処理領域に存在し、処理領域にも存在する堆積プラズマによって生成された堆積プラズマ放出物から低κ膜が形成される。いくつかの実施形態において、堆積中、基板は、400℃以上、約405℃以上、約410℃以上、約415℃以上、約420℃以上、約425℃以上、約430℃以上、約435℃以上、約440℃以上、約445℃以上、約450℃以上、又はそれを超える温度によって特徴付けることができる。実施形態では、基板の温度は、堆積されたままの低κ膜のSi-C架橋の量を増加させるように設定することができる。高められたSi-C架橋は、低κ膜の機械的安定性を高めることができる。実施形態では、堆積されたままの低κ膜は、高温でのヤング率の増加と硬度の増加によって特徴付けることができる。一方、過度に高い温度は、堆積中の低κ膜中の炭素を揮発させ、膜からガスを放出させる可能性がある。過度に高い温度では、膜中の炭素レベルを低下させるために、かなりの量の炭素が炭素酸化物(例えば、CO、CO)及び揮発性有機化合物(例えば、-CH、CH)として低κ膜から除去される可能性がある。減少した炭素レベルは、膜の誘電率(κ値)を、3.0以上、約3.1以上、約3.2以上、約3.3以上、約3.4以上、約3.5以上、又はそれを超えるレベルまで増加させる可能性がある。いくつかの実施形態では、低κ膜の堆積中、基板は、約450℃以下の温度によって特徴付けることができる。
【0044】
[0047]いくつかの実施形態では、低κ膜の堆積速度は500Å/分を超えることができ、約700Å/分以上、約1,000Å/分以上、約1,200Å/分以上、約1,400Å/分以上、約1,600Å/分以上、約1,800Å/分以上、約2,000Å/分以上の速度で堆積することができる。十分な厚さ(例えば、約1000Å未満)に堆積した後、次いで、多くの従来のプロセスでは、基板を第2のチャンバに移送して、UV処理やその他の堆積後処理などの処理を実行することができる。これにより、スループットが低下する可能性があり、そして処理を実行するために追加のチャンバ又はツールが必要になるため、生産コストが増加する可能性がある。しかしながら、本技術は、UV処理などの追加の処理なしで、堆積されたときの十分な材料特性によって特徴付けられ得る炭素ドープされた酸化ケイ素を含む材料を生成し得る。本技術の実施形態は、堆積後の追加の処理を包含し得るが、膜の堆積時の特性は、従来の技術を超える範囲の改善を含み得る。
【0045】
[0048]上で説明したように、本技術の処理方法は、低誘電率及び高い機械的安定性を有する低κ膜を形成する堆積前駆体及び処理条件を利用する実施形態を含む。処理方法300の実施形態では、堆積されたままの低κ膜は、約3.0以下、約2.9以下、約2.8以下、約2.7以下、約2.6以下、又はそれを下回る誘電率を有するケイ素-炭素及び酸素含有膜として形成することができる。膜の低い誘電率は、膜中の炭素の量に少なくとも部分的に起因する可能性がある。実施形態では、堆積されたままの低κ膜の原子百分率としての炭素の量は、約25原子%以上、約26原子%以上、約27原子%以上、約28原子%以上、約29原子%以上、約30原子%以上、又はそれを超える量であることができる。
【0046】
[0049]約25原子%以上の炭素を含む低κ膜は、通常、従来の堆積方法で形成した場合、機械的安定性が低くなる。本技術の処理方法は、高炭素レベルでの高い機械的安定性を特徴とする堆積直後の低κ膜を生成する実施形態を含む。実施形態では、堆積されたままの低κ膜は、約5GPa以上のヤング率によって特徴付けることができ、約7.5GPa以上、約10GPa以上、約15GPa以上約16GPa以上、約17GPa以上、約18GPa以上、約19GPa以上、約20GPa以上、又はそれを超えるヤング率によって特徴付けることができる。さらなる実施形態では、堆積されたままの低κ膜は、約3GPa以上の硬度によって特徴付けることができ、約3.5GPa以上、約4GPa以上、約4.5GPa以上、約5GPa以上、約5.5GPa以上、約6GPa以上、約6.5GPa以上、約7GPa以上、約7.5GPa以上、約8GPa以上、約10GPa以上、又はそれを超える硬度によって特徴付けることができる。
【0047】
[0050]いくつかの実施形態では、低κ膜の誘電率(κ値)の低下と機械的安定性の向上は、膜中の炭素全体の一部としてのメチル基のレベルの増加と相関している可能性がある。実施形態では、メチル基の増加したレベルは、少なくとも1つのビニル基も含むケイ素含有堆積前駆体に部分的に起因する可能性がある。ビニル基は堆積温度で容易に水素化されてメチル基を形成する。堆積されたままの低κ膜は、低κ膜の酸化ケイ素(SiO)基に対するメチル基(-CH)の原子(すなわち、分子)の、これらの基に起因する赤外線吸収ピークの面積によって測定された百分率によって特徴付けることができる。実施形態では、メチル基(-CH)の原子百分率は、2.5原子%以上、2.75原子%以上、約3原子%超、3.25原子%以上、3.75原子%以上、4原子%以上、又はそれを超える原子百分率であることができる。
【0048】
[0051]上述のように、低誘電率及び高機械的安定性を有する低κ膜を形成する本技術の実施形態の能力は、部分的に膜中のSi-C架橋の量に起因し得る。実施形態では、少なくとも2つのケイ素原子に結合してSi-C-Si架橋結合を形成する炭素原子の百分率は、0.03原子%以上、約0.06原子%以上、約0.09原子%以上、約0.12重量%以上、約0.15原子%以上、約0.18原子%以上、約0.21原子%以上、約0.24原子%以上、又はそれを超える百分率であることができる。本技術のこれら及び他の実施形態は、より低い誘電率、より高いヤング率、及びより高い硬度を有する、ケイ素-炭素及び酸素含有プラズマ放出物から堆積されたままの低κ膜を形成する、従来のプラズマ堆積法で生成でき、UV硬化などの追加の処理操作を必要としない経路を提供する。
【0049】
[0052]前述の説明では、説明の目的で、本技術の様々な実施形態の理解を提供するために多くの詳細が示されている。しかしながら、当業者には、これらの詳細のうちの一部がなくても、あるいは、追加の詳細があれば、特定の実施形態を実施できることが明らかであろう。
【0050】
[0053]いくつかの実施形態を開示したが、当業者は、実施形態の趣旨から逸脱することなく、様々な修正、代替構造、及び等価物を使用できることが認識されるであろう。さらに、本技術を不必要にあいまいにすることを避けるために、いくつかの周知のプロセス及び要素については説明しなかった。したがって、上記の説明は、本技術の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
【0051】
[0054]値の範囲が提示される場合、文脈上明らかに別段の指示がない限り、その範囲の上限と下限の間の各介在値はまた、下限の単位の最小単位まで具体的に開示されることが理解される。記載された範囲の任意の記載値又は記載されていない介在値の間の任意の狭い範囲、そしてその記載範囲のその他任意の記載された又は介在する値も包含される。これらの小さい範囲の上限と下限は、個別に範囲に含めることも除外することもでき、いずれか、どちらでもない、又は両方の制限がより狭い範囲に含まれている各範囲も本技術に含まれ、指定された範囲で特に除外された制限が適用される。記載された範囲に制限の一方又は両方が含まれる場合、含まれる制限のいずれか又は両方を除く範囲も含まれる。
【0052】
[0055]本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈上別途明示しない限り複数の指示物を含む。したがって、例えば、「材料」への言及は、複数のそのような材料を含み、「前駆体」への言及は、当業者に知られている1つ又は複数の前駆体及びその等価物への言及などを含む。
【0053】
[0056]また、「含む(comprise(s))」、「含んでいる(comprising)」、「含有する(contain(s))」、「含有している(containing)」、「含む(include(s))」、及び「含んでいる(including)」という用語は、本明細書及び特許請求の範囲で使用された場合、記載された特徴、整数、構成要素、又はステップの存在を特定することを意図しているが、一又は複数のその他の特徴、整数、構成要素、工程、動作、又はグループの存在又は追加を除外するものではない。
図1
図2
図3