(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-06
(45)【発行日】2025-08-15
(54)【発明の名称】基板処理装置及び成膜基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20250807BHJP
C23C 16/458 20060101ALI20250807BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/458
(21)【出願番号】P 2021087398
(22)【出願日】2021-05-25
【審査請求日】2024-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000190105
【氏名又は名称】信越エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【氏名又は名称】伊藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100154391
【氏名又は名称】鈴木 康義
(72)【発明者】
【氏名】内山 一栄
(72)【発明者】
【氏名】大谷 義和
(72)【発明者】
【氏名】堀越 彰雄
(72)【発明者】
【氏名】久保田 芳宏
(72)【発明者】
【氏名】川合 信
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-120723(JP,A)
【文献】特開平08-102486(JP,A)
【文献】特開2004-179600(JP,A)
【文献】特開平08-100265(JP,A)
【文献】特開平08-055851(JP,A)
【文献】特開平04-102313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C23C 16/458
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器、
前記反応容器内に設置され、複数の基板を載せ置いて保持する基板保持部、及び
隣接する基板同士の間隔を保ちながら、前記基板保持部と前記複数の基板を接触及び離間させる基板保持部上下機構、
を備える基板処理装置であって、
前記基板保持部上下機構は、前記複数の基板を載せて押し上げる基板移動部であり、
前記基板保持部は、軸線を中心とする円周に沿って並べられた複数の基板接触部を備え、
前記基板処理装置は、前記基板保持部を前記軸線を中心に回転させる基板保持部回転機構、及び
前記基板移動部を上下動させる駆動機構をさらに備え、
前記駆動機構は、前記基板保持部が1回転する度に、前記基板移動部を、1回もしくは複数回、上下動させることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記反応容器は、ガス導入口及びガス排出口を備えることを特徴とする請求項
1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記基板を加熱するための加熱装置をさらに備えることを特徴とする請求項1
又は2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記反応容器を減圧するポンプをさらに備えることを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
反応容器内の基板保持部に複数の基板を載せ置いて保持し、
隣接する基板同士の間隔を保ちながら、前記基板保持部と前記複数の基板を接触及び離間させることにより前記複数の基板を上下させ、
前記複数の基板を、軸線を中心とする円周に沿って並べられた複数の基板接触部に載せ置き、基板の中心を前記軸線に揃えて整列させ、
前記軸線を中心に前記基板保持部を回転させ、
前記基板保持部が1回転する度に、前記基板を、1回もしくは複数回、上下動させることを特徴とする成膜基板の製造方法。
【請求項6】
前記反応容器に、反応ガスを導入し、前記基板の表面に成膜することを特徴とする請求項
5に記載の成膜基板の製造方法。
【請求項7】
前記反応容器を減圧にして前記膜を減圧気相成長させることを特徴とする請求項
5又は
6に記載の成膜基板の製造方法。
【請求項8】
前記基板接触部と前記基板とは前記基板の外周端部から20mm以下の範囲で接することを特徴とする請求項
5~
7のいずれか1項に記載の成膜基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は種々の膜材で各種基板の一部もしくは全体を均一に成膜するための基板処理装置に関したものであり、特には複数の基板を多段の基板保持部に載せ置いて隣接する基板同士の間隔を保ちながら、複数の基板を1枚毎に成膜する装置及び、その装置を用いた成膜基板の製造方法に関するものである。より詳細には、Si、SiC、GaN、GaAs、AlN等の半導体基板、LT、LN等の強誘電体基板や石英、Si3N4、AlN、コランダム等のセラミックスなどの各種基板の一部、もしくは全体をSiO2、Si3N4、SiC、非晶質Si、ポリSi、単結晶Siなどの各種膜材で成膜する際、均一成膜ができなかったり、基板と基板保持部との接する膜の薄い部分、あるいは成膜されない部分のいわゆる「治具痕」が発生したり、基板と治具との固着が発生したりすることを抑制できる基板処理装置、さらにはその装置を用いた成膜基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の工業製品、なかんずく半導体関連製品は各種基板をベース基板として、その一部もしくは全体を種々の機能を持つ膜材で成膜し、各種の機能製品が作られている。そのため、各種の成膜を行う基板処理装置が使われる。これらの成膜は基板処理装置内でベース基板上に各種の原料ガスを供給し、化学反応を起こして成膜する。装置は通常、1軸の回転機構を持ち、その軸線が水平方向に延びるように基板を載置する横型、あるいはその軸線が鉛直方向に延びるように基板を載置する縦型などの各種様式が存在する。
いずれの様式においても、成膜の最重要項目は通常、膜質の均質性と膜厚の均一性である。膜質の均質性と膜厚の均一性は、一般的に基板周辺に、いかに均質・均等な各種原料ガスの供給と混合、分散ができるかに掛かっている。この均質・均等な原料ガスの供給と混合、分散には成膜基板の回転が最も効果的である。
しかしながら、横型ではウエハー状基板を基板保持部に保持したまま、回転を加えることは難かしく、あえて実施しようとすれば、せいぜい基板端面を強く挟み保持しつつ、回転する方法などである。一方、縦型では基板保持部に基板を載置した状態で、基板保持部に付随する回転機構で基板保持部全体を回転する等である。しかし、そのような場合でも、横型では端面を強く挟み保持した部分や縦型では基板保持部に基板を載置した治具に接する部分は、デッド・スペースとなり、いずれにおいても均質・均等な原料ガスの供給と混合、分散は難しく、時に原料ガスが行き届かず、成膜されないか、あるいは、されても極めて薄い、いわゆる、「治具痕」が生じたり、あるいはその逆に強く挟み保持した部分や治具に接した部分周辺では、原料ガスの局部的に濃い部分が生じ、それらの部分が異常に厚く成膜され、基板と基板保持部とが「固着」したりする等のトラブルが発生することが多い。これらは基板と基板保持部との接触部分が存在する限り、避けられない現象とされていた。この基板の「治具痕」あるいは固着などにより、商品価値が下がったり、あるいはそれらの周辺や時には基板の全部が治具に貼り付いたりして使えないこともあり、製造上、特に量産上で大きな問題となっている。
【0003】
これらの問題を解決すべく、これまで、先行の種々の改善方法が提案されているが、未だ完全に解決できていない。
特許文献1は高周波コイルに依る電磁力を用い、基材を浮上させ、基材全面に均一成膜を行う方法であるが、浮上の電磁力は比較的小さく、設備が大掛かりで、消費電力も大きく、極めて効率が悪い。
特許文献2は支持台に熱分解炭素あるいはSiCの蒸着膜でミクロな凹凸を形成し、基材と支持台との間に反応ガスを侵入させ、基材と支持台との接する部分にも蒸着膜を形成させることが提案されているが、やはり接する部分は完全に蒸着されず、一部は蒸着膜がない部分も生じるという難点がある。
特許文献3は基板中央部に貫通孔を有する単数若しくは複数の基材を芯棒で懸架し、連続的に移動することにより、均質な成膜を形成するものである。したがって、本法は貫通孔は必須であり、種々の成膜が多用される半導体用基板には貫通孔がないため、適用できず、形状が限られた極めて限定的な方法である。
特許文献4は単数の基材の全面をCVDコーテングするため、基材裏面に0.5mm位の尖頭を有する黒鉛等の支持部材で基材を保持し、間歇的にハンマー等で衝撃を加えることにより、多少とも接触部を変位させつつ、成膜する方法である。しかしながら、極細い尖頭で基材を保持するため、成膜が進むとともに間歇的な衝撃により、尖頭が段々と摩耗し、接触部分が拡大したり、折角、綺麗に成膜した所を傷付けたり、あるいは基材が途中で落下したりして、成膜品の特性を落としたり、商品価値を下げたり、あるいは成膜を中断させたりのトラブルが頻発しやすい等の欠点がある。
上記のような実情に鑑み、結局、現状の成膜では止むなく成膜を途中、一時中断し、一括、反応温度を下げて冷却した後、基板の置き治具と基板との接触部分、いわゆる「当たり部分」を1枚毎、手で置き変えた後に、必要に応じて成膜する雰囲気を真空引きして、再度、加熱し恒温を確認後、成膜を再スタートする操作を何度も繰り返すことなどの非効率な成膜作業が未だになされている。これらの操作は極めて煩雑で多くの労力やエネルギーを消費し、極めて効率が悪く、その上、多くの時間を要し、成膜コストを大幅上昇させる原因ともなっている。また、この様な操作を繰り返すことにより成膜する基板へのゴミの影響も発生しやすくなり、クリーン環境を維持するのに多くの手間がかかる。しかも、この作業は基板が単数や、少量の複数ならば未だ対応可能だが、大量に複数仕込む量産では、対応困難であり、多くの機能性製品の実用化への大きな隘路となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭50-33184号公報
【文献】特開昭61-124572号公報
【文献】特開昭63-134663号公報
【文献】特開平8-100265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明者らは上記問題の解決と量産性を主眼として(1)複数の基板を、(2)多段の基板保持部に載置し、(3)同時に成膜する、装置とその成膜方法を確立すべく、鋭意検討した結果、本発明に到達したものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記の目的を達成するために以下の成膜装置を提供するものである。さらにはこの成膜装置を用いて「治具痕」あるいは固着などのトラブルを解消した成膜方法を併せて確立したものである。即ち、
[1]反応容器、前記反応容器内に設置され、複数の基板を載せ置いて保持する基板保持部、及び隣接する基板同士の間隔を保ちながら、前記基板保持部と前記複数の基板を接触及び離間させる基板保持部上下機構、を備えることを特徴とする基板処理装置。
[2]前記基板保持部上下機構は、前記複数の基板を載せて押し上げる基板移動部であることを特徴とする上記[1]に記載の基板処理装置。
[3]前記基板移動部を上下動させる駆動機構を備えることを特徴とする上記[2]に記載の基板処理装置。
[4]前記基板保持部及び前記基板保持部上下機構の少なくとも1つの部材を振動させる振動素子をさらに備えることを特徴とする上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の基板処理装置。
[5]前記振動素子は、10kHz以上の周波数の振動を発生する超音波振動素子であることを特徴とする上記[4]に記載の基板処理装置。
[6]前記反応容器は、ガス導入口及びガス排出口を備えることを特徴とする上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の基板処理装置。
[7]前記基板を加熱するための加熱装置をさらに備えることを特徴とする上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の基板処理装置。
[8]前記反応容器を減圧するポンプをさらに備えることを特徴とする上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の基板処理装置。
[9]前記基板保持部は、軸線を中心とする円周に沿って並べられた複数の基板接触部を備えることを特徴とする上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の基板処理装置。
[10]前記軸線が鉛直方向に延びていることを特徴とする上記[9]に記載の基板処理装置。
[11]前記基板保持部を前記軸線を中心に回転させる基板保持部回転機構をさらに備えることを特徴とする上記[9]又は[10]に記載の基板処理装置。
[12]前記軸線が水平方向に延びていることを特徴とする上記[9]に記載の基板処理装置。
[13]反応容器内の基板保持部に複数の基板を載せ置いて保持し、
隣接する基板同士の間隔を保ちながら、前記基板保持部と前記複数の基板を接触及び離間させることにより前記複数の基板を上下させることを特徴とする成膜基板の製造方法。
[14]前記反応容器に、反応ガスを導入し、前記基板の表面に成膜することを特徴とする上記[13]に記載の成膜基板の製造方法。
[15]前記反応容器を減圧にして前記膜を減圧気相成長させることを特徴とする上記[13]又は[14]に記載の成膜基板の製造方法。
[16]前記複数の基板を、軸線を中心とする円周に沿って並べられた複数の基板接触部に載せ置き、基板の中心を前記軸線に揃えて整列させることを特徴とする上記[13]~[15]のいずれか1つに記載の成膜基板の製造方法。
[17]前記基板接触部と前記基板とは前記基板の外周端部から20mm以下の範囲で接することを特徴とする上記[16]に記載の成膜基板の製造方法。
[18]前記軸線が鉛直方向に延びていることを特徴とする上記[16]又は[17]に記載の成膜基板の製造方法。
[19]前記軸線を中心に前記基板保持部を回転させることを特徴とする上記[16]~[18]のいずれか1つに記載の成膜基板の製造方法。
[20]前記軸線が水平方向に延びている事を特徴とする上記[16]又は[17]に記載の成膜基板の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、成膜した基板の無成膜部分をなくしたり、成膜した基板の「治具痕」を軽減したり、あるいは基板と基板保持部との固着などのトラブルを解消したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態の基板処理装置を説明するための図であり、基板移動部で基板を保持している状態の図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態の基板処理装置を説明するための図であり、基板保持部で基板を保持している状態の図である。
【
図5】
図5は、基板保持部と基板移動部とを組み合わせた状態を示す概略図である。
【
図6】
図6(a)は、本発明の第1の実施形態の基板処理装置における基板移動部で基板を保持している状態の側面図であり、
図6(b)は、本発明の第1の実施形態の基板処理装置における基板移動部で基板を保持している状態の上面図である。
【
図7】
図7(a)は、本発明の第1の実施形態の基板処理装置における基板接触部で基板を保持している状態の側面図であり、
図7(b)は、本発明の第1の実施形態の基板処理装置における基板接触部で基板を保持している状態の上面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第1の実施形態の基板処理装置を説明するための図であり、昇降ベースの配置図例である。
【
図9】
図9は、本発明の第1の実施形態の基板処理装置の変形例を説明するための図であり、回転機構2つある場合の図である。
【
図10】
図10は、本発明の第2の実施形態の基板処理装置を説明するための図であり、
図10(a)は基板保持部で基板を保持している状態の図であり、
図10(b)は基板移動部で基板を保持している状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施形態]
(基板処理装置)
図1~7を参照して、本発明の第1の実施形態の基板処理装置を説明する。
図1及び
図2に示すように、本発明の第1の実施形態の基板処理装置1Aは、反応容器10、反応容器10内に設置され、複数の基板20を載せ置いて保持する基板保持部30及び隣接する基板同士の間隔を保ちながら、基板保持部30と複数の基板20を接触及び離間させる基板保持部上下機構40を備える。基板保持部上下機構40は、複数の基板20を載せて押し上げる基板移動部40であることが好ましい。
【0010】
図3に示すように、基板保持部30は、軸線Zを中心とする円周に沿って並べられた複数の基板接触部31を備える。軸線Zは鉛直方向に延びている。また、
図4に示すように、基板移動部40も、軸線Zを中心とする円周に沿って並べられた複数の基板接触部41を備える。
図5に示すように、基板保持部30の円板部33における凹部34と基板移動部40の支柱43とは係合している。これにより、基板保持部30を、軸線Zを中心に回転させると、基板移動部40は軸線Zを中心に回転する。なお、
図5において、図を見やすくするために、基板保持部30の基板接触部31及び基板移動部40の基板接触部41を省略する。
【0011】
図1及び
図2に示すように、基板処理装置1Aは、基板保持部30を軸線Zを中心に回転させる基板保持部回転機構70をさらに備える。
【0012】
図1及び
図2に示すように、基板保持部上下機構40は、複数の基板20を載せて押し上げる基板移動部40であることが好ましい。
【0013】
図1及び
図2に示すように、基板処理装置1Aは、基板移動部40を上下動させる駆動機構50を備える。
【0014】
図1及び
図2に示すように、反応容器10は、ガス導入口11及びガス排出口12を備える。
【0015】
図1及び
図2に示すように、基板処理装置1Aは、基板20を加熱するための加熱装置60をさらに備える。
【0016】
基板処理装置1Aは、反応容器10を減圧する不図示のポンプをさらに備える。
【0017】
基板処理装置1Aは、基板保持部30及び基板保持部上下機構40の少なくとも1つの部材を振動させる不図示の振動素子をさらに備える。振動素子は、10kHz以上の周波数の振動を発生する超音波振動素子であることが好ましい。
【0018】
(成膜基板の製造方法)
本発明の第1の実施形態の成膜基板の製造方法は、反応容器10内の基板保持部30に複数の基板20を載せ置いて保持し、隣接する基板同士の間隔を保ちながら、基板保持部30と複数の基板20を接触及び離間させることにより複数の基板を上下させることを特徴とする。
【0019】
本発明の第1の実施形態の成膜基板の製造方法では、反応容器10に、反応ガスを導入し、基板の表面に成膜する。
【0020】
本発明の第1の実施形態の成膜基板の製造方法では、反応容器10を減圧にして膜を減圧気相成長させる。
【0021】
本発明の第1の実施形態の成膜基板の製造方法では、複数の基板20を、軸線Zを中心とする円周に沿って並べられた複数の基板接触部31に載せ置き、基板20の中心を軸線Zに揃えて整列させる。基板保持部回転機構70を駆動させることにより軸線Zは鉛直方向に延びている。軸線Zを中心に基板保持部30を回転させる。
【0022】
基板接触部31と基板20とは基板20の外周端部から20mm以下の範囲で接する。
【0023】
以下にφ8インチAlNセラミックス基板(厚み725μm)上にGaNエピ用基板を作製する際の前段階の成膜を例に挙げて、本発明の第1の実施形態の基板処理装置1A及び成膜基板の製造方法を具体的に説明する。AlNセラミックス基板はGaNと熱膨張率が近いため、ベース基板として選ばれ、後述の封止後、種基板を貼り合わせて、GaNエピ用基板を作製することが行われている。しかし、ベース基板のセラミックスは、純度が低く、そのまま、使用するとセラミックス中の金属不純物が拡散し、その後のエピ膜に悪影響を与える。そこで、この防止策として、AlNセラミックス基板をSiO2やSi3N4等の種々の膜で全体を包み込み、完全に封止することが必要不可欠となっている。
【0024】
図1及び
図2に示すように、基板処理装置1Aは、ガス導入口11及びガス排出口12を有する反応容器10、不図示のポンプ、最大1300℃まで加熱できる加熱装置60、並びに8枚の基板20を載せることができる基板保持部30及び基板移動部40を備える。基板保持部30は、基板保持部回転機構70で10rpmの回転速度で回転している。一方、基板移動部40は基板保持部30と連動して回転する。そして、上下部材50(駆動機構50)は、基板移動部40に上下動を与える。具体的には、
図8に示すように、駆動機構50である上下部材50は、凸部51で基板移動部40を押し上げて、基板移動部40に複数の基板20を載せるようにすることができ(
図1及び
図6参照)、平坦部52で基板移動部40を下げて、基板保持部30に複数の基板20を載せるようにすることができる(
図2及び
図7参照)。なお、上下部材50は、凸部51及び平坦部52を有していても、ベアリング90により、回転可能としている。
【0025】
<基板のセット>
予め、反応容器10内部は、加熱装置60により反応プロセスとなる温度の近傍まで加熱しておく。加熱装置60は、反応容器10の外側に反応容器10を囲うように配置されており、不図示の制御部からの指令によって反応容器10内が一定の温度になるように制御される。
【0026】
断熱材80、基板保持部30、基板移動部40、及び駆動機構50を含む基板設置部を、反応容器10から上下方向に相対的に切り離せるようにする。これにより、反応容器10から基板設置部を外すことにより、基板保持部30に基板投入手段(図示せず)をアクセスできる状態にする。なお、基板投入手段を用いず、手動での基板20を基板保持部30に投入することも可能である。また、基板セット時には反応容器10と基板設置部とを上下方向に相対的に切り離ししたが、横方向への切り離しや、扉開閉による方法や、ゲート弁の開閉による方法など、他の手段も可能である。なお、基板設置部のベースは断熱材80に限らず、金属フランジやセラミックスフランジなどほかの素材でもよい。
【0027】
不図示基板投入手段により、複数の基板20を、隣接する基板同士の間隔を保ちながら基板保持部30の基板接触部31である保持爪部31に載置する。なお、保持爪部31と基板20とは基板20の外周端部から20mm以下の範囲で接することが好ましい。また、基板保持部30の保持爪部31に載せる以外にも、基板移動部40の基板接触部41である移動爪部41に載せることも可能である。なお、保持爪部41と基板20とは基板20の外周端部から20mm以下の範囲で接することが好ましい。また、基板20の載置は、爪状のものでなくても可能である。さらに、基板20の載置位置も板状基板の裏面端部に限られたものではない。
【0028】
載置完了後、基板設置部を反応容器10に向けて、上下方向に相対的に挿入設置し、反応容器シール部(図示せず)により、反応容器10の内部と外部の気体通過遮断をする。
【0029】
反応容器10内の基板20の温度が上昇し、目的の温度にするとともに、反応容器内を不図示のポンプにより真空排気し、反応容器内の真空度をプロセスの真空度まで到達させる。不図示のポンプには、例えば、ドライポンプ、回転ポンプ、ターボ分子ポンプなどが挙げられる。反応容器10の真空排気は、ポンプを用いて、弁による開閉を通じて行われる。なお、ポンプは上記のもの単独によらず、これらを併用したり、クライオポンプを用いたりするなど他の手段でもよい。
【0030】
加熱装置60は、反応容器10の外側に反応容器10を囲うように配置するものに限られない。例えば、加熱装置60は、赤外線により加熱する加熱装置やマイクロ波により加熱する加熱装置であってもよい。
【0031】
なお、反応プロセスは真空及び加熱は必須ではない。他の常圧プロセスや常温プロセスでも可能である。加圧及び加熱の順番は、上記以外の手順でも可能である。
【0032】
<成膜プロセス>
上述したように、上下部材50(駆動機構50)は、凸部51で基板移動部40を押し上げて、基板移動部40に複数の基板20を載せるようにすることができ、平坦部52で基板移動部40を下げて、基板保持部30に複数の基板20を載せるようにすることができる。このような上下動を行う方式としては、上下部材50とベアリング90を使用した方式でなくても、カムやシリンダーや上下動モーターなどを用いた上下機構でもよい。また、ベアリング90は球状のものでなくてもよい。また、ベアリング90を設置場所に固定しなくてもよい。
【0033】
<基板支持部の交番動作の実施>
基板保持部30が軸線Zを中心に回転運動するにように連通された基板保持部回転機構70により基板保持部30を回転させる。
【0034】
基板移動部40は基板保持部30に対して、軸線Zを中心とする回転運動に対しては連動するように、基板移動部40の支柱43は基板保持部30の円板部33の凹部34と係合されており(
図5~
図7参照)、上下運動に対しては相対的に往復可動するように設置されている。なお、
図9に示すように、基板保持部30が基板保持部回転機構70により回転し、基板移動部40は基板移動部回転機構70Aと回転伝達機構71Aとにより回転するようにしてもよい。
【0035】
基板移動部40における軸線方向の一端面である基板移動部底板50は、上下部材50(駆動機構50)として機能する。基板移動部底板50には、軸線Zを中心とした円周状に沿って、回転運動をさせる際の一部期間に基板移動部40が軸線Zの上下方向に発生するような、凸部51及び平坦部52が設けられている(
図8参照)。基板移動部底板50と対向して基板設置部のベースとなる断熱材80に、設置場所が固定で回転自在にそれ自体が回転する球状のベアリング90が設置されている。
【0036】
基板移動部40と、それに回転連動するように係合された基板保持部30が、基板保持部回転機構70により回転運動をする間に、ベアリング90に接する基板移動部底板50の部位として凸部51が存在する部分と平坦部52が存在する部分とが交番的に発生し、それに伴って基板移動部40は基板保持部30に対して相対的に上下動作を繰り返す。
図8(b)では、基板移動部底板50の凸部51及び平坦部52が、基板移動部40が上昇時間と下降時間が同じ時間になるように設定されているが、それに限らず上昇時間の方が下降時間より長く設定したり、短く設定したりすることも(
図8(c)参照)、凸部51及び平坦部52の配置によって自由に変更することが可能である。また、上下動の高さや配置する数も凸部51の設定によって変更することが可能である。
【0037】
基板移動部40が下降している時間には、
図7に示すように基板20は基板保持部30の保持爪部31の上に載せ置かれているが、基板移動部40が上昇している時間には、
図6に示すように、基板20は基板移動部40の移動爪部41に載せ替えられ、これらの時間が基板移動部底板50の凸部51及び平坦部52の配置による基板移動部40の上下動作に応じて交番的に繰り返し行われる。
【0038】
<反応プロセス(成膜)>
上記のように、反応容器10内を目的の真空度と温度にし、基板移動部40は基板保持部30を回転運動させながら基板移動部40を上下動させている状態で、プロセスガスを反応容器10内に導入する。
【0039】
プロセスガスの導入は、ガス導入口11から、反応容器内全体に行き渡るように導入され、ガス排出口12から排出される。導入されるガスの量と排出されるガスの量のバランスをとることによって、反応容器内のプロセス圧力を目的の値になるように調整される。
【0040】
プロセスガスは、真空中での高温状態でイオンやラジカルなどの前駆体に形成され、その一部が複数載せ置かれた基板20の表面に付着することで成膜される。
【0041】
この時、瞬間的には基板20を載置している保持爪部31または移動爪部41の基板接触部分で前駆体が基板表面に到達できず、その部分では接触している期間では成膜に寄与できない。しかし、基板保持部回転機構70により基板保持部30と基板移動部40が回転動作することに伴って、基板移動部40が基板保持部30より相対的に上下動作することで、基板20を接触する保持爪部31と移動爪部41とで交番的に入れ替わり、接触していない方の爪と基板との間では反応ガスの前駆体が進入することができるため、成膜に寄与することができる。
【0042】
プロセスガスの導入中に常時同じ場所で爪部の上に載置されている従来方式では、基板の爪部との接触部で成膜が行われなかったが、本発明の第1の実施形態の基板処理装置1Aでは基板20の接触部が保持爪部31と移動爪部41とで交番的に入れ替わるため、その周期に応じて基板全体にわたり成膜することが可能となる。
【0043】
また、成膜プロセス中に基板保持部30や基板移動部40に振動を与えることも可能である。図示はしないが、基板保持部30や基板移動部40のどちらか、または両方に超音波の振動を与えることにより、保持爪部30や移動爪部40が基板を支持している間に、僅かながら爪部31,41と基板20との間に隙間を形成できることから、プロセスガスの前駆体が成膜への反応に寄与することが可能となる。そのため、基板20の表面に形成する膜の均一性を高めることができる。
【0044】
ガス導入口11は断熱材80の開口部だけとは限らず、導入管などを通じて反応容器10の高さ方向の中間部や上部から導入でもよい。また、反応容器10を二重構造にすることによってその隙間からガスを導入する方法でもよい。
【0045】
また、第1の実施形態の基板処理装置1Aでは、基板移動部40を上下動作させることによって、基板20を保持する保持爪部31と移動爪部41とを交番的に入れ替えたが、基板保持部30を上下動させたり、基板移動部40と基板保持部30の両方を上下動させたりしてもよい。
【0046】
また、基板移動部40と基板保持部30の2つの治具による交番的な動きではなく、複数の基板保持部30としたり、複数の基板移動部40を配置して、3つ以上の爪部を交番的に基板に接触させたりすることも可能である。この場合には、1つの爪部で保持する時間的な比率が減少するため、接触することによる前駆体が寄与しない時間の比率の影響が少なくなり、より均一な膜を基板表面に形成することが可能となる。
【0047】
振動の発生源は超音波振動子に限らず、希釈ガスの導入による振動やバイブレーターなどの物理的な振動によるものでもよい。
【0048】
(第1の実施形態の変形例)
基板移動部と同様に、基板保持部も上下動作するようにしてもよい。例えば、基板保持部に載置した基板に、上昇してきた基板移動部の移動爪部が接触した瞬間に基板移動部の上昇を止める。そして、基板保持部を下降させる。所定の時間経過後、基板保持部を上昇させ、基板移動部に載置した基板に、上昇してきた基板保持部の保持爪部が接触した瞬間に基板保持部の上昇を止める。そして、基板移動部を下降させる。この動作を繰り返しても、基板は上下せず、同じ高さで保持される。これにより、基板を同じ高さに保持した状態で基板を成膜することができる。この場合、隣接する基板同士の間隔を保ちながら、基板保持部と基板を接触及び離間させる基板保持部上下機構は、基板保持部及び基板移動部の組み合わせにより実現される。
【0049】
[第2の実施形態]
以下、本発明の第2の実施形態の基板処理装置及び成膜基板の製造方法を説明する。本発明の第2の実施形態の基板処理装置及び成膜基板の製造方法の説明は、本発明の第1の実施形態の基板処理装置及び成膜基板の製造方法と異なる点を主に説明する。
【0050】
(基板処理装置)
本発明の第1の実施形態の基板処理装置1A及び成膜基板の製造方法では、軸線Zが鉛直方向に延びていた。しかし、
図10に示すように、本発明の第2の実施形態の基板処理装置1B及び成膜基板の製造方法では、軸線Yは水平方向に延びている。
【0051】
本発明の第2の実施形態の基板処理装置1Bは横型炉の例であり、
図10に示すように、本発明の第2の実施形態の基板処理装置1Bでは、基板20の保持状態が本発明の第1の実施形態の基板処理装置1Aと異なる。反応容器10に原料ガス導入口11及びガス排出口12、不図示のポンプ及び8枚の複数基板20を具備し、
図10に示すように、下部回転軸100の偏心カム110で基板保持部30、及び基板移動部40を、それぞれ交互(交番)に載置、保持しつつ、3rpmの回転をしている。回転軸100の偏心カム110は回転軸と連動する駆動機構であり、基板移動部40を交互に動かすものである。偏心カム110により、基板保持部30、及び基板移動部40を、
図10に示すように交互に駆動する。各基板保持部30は8枚の基板20を交互に載せ、偏心カム110の上下動で、基板保持部30が切り替わる。
【0052】
第2の実施形態の基板処理装置1Bは、第1の実施形態の基板処理装置1Aと比較して、炉の構成が横型となっており、基板接触部が爪部によるものではなく基板保持部30や基板移動部40の支柱32,42によって基板が支持されている。
【0053】
また、第1の実施形態の基板処理装置1Aでは、基板支持部の交番動作が基板保持部30や基板移動部40の回転で上下部材50のベアリング90との当たり位置を上下させることにより、相対的な上下動作を行って基板20の支持を保持爪部31と移動爪部41とで交番的に入れ替えていたが、第2の実施形態の基板処理装置1Bでは、基板保持部30の上下動位置は固定とし、駆動機構70Bによる回転軸の回転動作によって偏心カム110を用いて基板移動部40を交番的に上下動させている。
【0054】
このことによって、基板20を支持する基板保持部30や基板移動部40の支柱32,42が交番的に入れ替わり、第1の実施形態の基板処理装置1Aと同様な効果がある。
【0055】
第2の実施形態の基板処理装置1Bは、では、基板移動部40と基板保持部30の基板20との接触箇所を交番的に入れ替えたが、基板移動部40と基板保持部30の2つの治具による交番的な動きではなく、複数の基板保持部としたり、複数の基板移動部を配置したりして、3つ以上の接触箇所を交番的に入れ替えることも可能である。この場合には、1つの接触箇所で保持する時間的な比率が減少するため、接触することによる前駆体が寄与しない時間の比率の影響が少なくなり、より均一な膜を基板表面に形成することが可能となる。
【0056】
また、第2の実施形態の基板処理装置1Bには加熱装置を付けていないが、第1の実施形態の基板処理装置1Aと同様に加熱装置を付けることも可能である。
【0057】
本発明の第1の実施形態の基板処理装置1A及び本発明の第2の実施形態の基板処理装置1Bは、本発明の基板処理装置の一例である。したがって、本発明の基板処理装置は、本発明の第1の実施形態の基板処理装置1A及び本発明の第2の実施形態の基板処理装置1Bに限定されない。
【0058】
本発明の第1の実施形態の成膜基板の製造方法及び本発明の第2の実施形態の成膜基板の製造方法は、本発明の成膜基板の製造方法の一例である。したがって、本発明の成膜基板の製造方法は、本発明の成膜基板の製造方法及び本発明の第2の実施形態の成膜基板の製造方法に限定されない。
【符号の説明】
【0059】
1A,1B 基板処理装置
10 反応容器
20 基板
30 基板保持部
31 基板接触部(保持爪部)
32,42,43 支柱
33 円板部
34 凹部
40 基板保持部上下機構(基板移動部)
41 基板接触部(移動爪部)
50 駆動機構(上下部材,基板移動部底板)
51 凸部
52 平坦部
60 加熱装置
70 基板保持部回転機構
70A 基板移動部回転機構
71,71A 回転シール
72A 回転伝達機構
80 断熱材
90 ベアリング
100 下部回転軸
110 偏心カム
120 軸受け