(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-18
(45)【発行日】2025-08-26
(54)【発明の名称】化学強化ガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 21/00 20060101AFI20250819BHJP
C03C 10/04 20060101ALI20250819BHJP
C03C 10/12 20060101ALI20250819BHJP
C03C 3/083 20060101ALI20250819BHJP
C03C 3/085 20060101ALI20250819BHJP
C03C 3/087 20060101ALI20250819BHJP
C03C 3/091 20060101ALI20250819BHJP
C03C 3/093 20060101ALI20250819BHJP
C03C 3/095 20060101ALI20250819BHJP
C03C 3/097 20060101ALI20250819BHJP
【FI】
C03C21/00 101
C03C10/04
C03C10/12
C03C3/083
C03C3/085
C03C3/087
C03C3/091
C03C3/093
C03C3/095
C03C3/097
(21)【出願番号】P 2022543885
(86)(22)【出願日】2021-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2021029356
(87)【国際公開番号】W WO2022039056
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2024-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2020138625
(32)【優先日】2020-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】古田 仁美
(72)【発明者】
【氏名】李 清
(72)【発明者】
【氏名】澤村 茂輝
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 周作
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/047710(WO,A1)
【文献】特開2014-139113(JP,A)
【文献】特開2016-053204(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104420(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/029890(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/022035(WO,A1)
【文献】特開2017-048090(JP,A)
【文献】国際公開第2018/221379(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 21/00
C03C 10/04
C03C 10/12
C03C 3/083
C03C 3/085
C03C 3/087
C03C 3/091
C03C 3/093
C03C 3/095
C03C 3/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の化学強化ガラスであって、
厚さ0.70mm換算のヘーズが1.0%以下であり、
少なくとも一方の主面において、
表面凹凸の尖度Rkuとビッカース硬度Hvとの比(Rku/Hv)×1000が1以上4.4以下であ
り、
母組成が、酸化物基準のモル百分率表示で、
Li
2
Oを15%以上含有し、
結晶化ガラスである、化学強化ガラス。
【請求項2】
板状の化学強化ガラスであって、
少なくとも一方の主面において、
表面凹凸の高さ頻度分布が正規分布関数2つ以上でフィッティングされ
、
少なくとも一方の主面において、
表面凹凸の尖度Rkuとビッカース硬度Hvとの比(Rku/Hv)×1000が1以上4.4以下であり、
母組成が、酸化物基準のモル百分率表示で、
Li
2
Oを15%以上含有し、
SiO
2
-Al
2
O
3
-Li
2
O系結晶を含有する、
結晶化ガラスである、化学強化ガラス。
【請求項3】
SiO
2-Al
2O
3-Li
2O系結晶を含有する、
請求項1に記載の化学強化ガラス。
【請求項4】
LiAlSi
2O
6、Li
2Si
2O
5およびAl
6O
13Si
2からなる群から選ばれる1以上の結晶を含有する、
請求項1または2に記載の化学強化ガラス。
【請求項5】
母組成が、酸化物基準のモル百分率表示で、
SiO
2を40~80%、
Al
2O
3を3~30%、
P
2O
5を0~5%、
B
2O
3を0~10%、
Li
2Oを
15~40%、
Na
2Oを0~10%、
K
2Oを0~5%、
MgOを0~5%、
CaOを0~5%、
SrOを0~5%、
BaOを0~5%、
ZrO
2を1~5%、
SnO
2を0~4%、
Y
2O
3を0~4%含有する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の化学強化ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学強化ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末等のディスプレイ装置の保護ならびに美観を高める目的で、化学強化ガラスからなるカバーガラスが用いられている。
【0003】
スマートフォン等に用いられるタッチパネルは、使用時に人間の指が触れるため、指紋等による汚れが付着しやすく、防汚性が求められている。併せて、タッチパネルには指で操作する際の操作性も求められている。
たとえば、特許文献1には、防汚性と指滑り性を向上するコーティングとして含フッ素有機ケイ素化合物を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、含フッ素有機ケイ素化合物等のコーティング膜は剥離する場合があり、カバーガラスとかかるコーティング膜との膜密着性の向上が求められている。
【0006】
上記の事情に鑑み、本発明は、コーティング膜との膜密着性に優れる化学強化ガラスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、コーティング膜の剥離を防止するためにガラス表面に適度な凹凸を形成することが有効であることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、板状の化学強化ガラスであって、
厚さ0.70mm換算のヘーズが1.0%以下であり、
少なくとも一方の主面において、
表面凹凸の尖度Rkuとビッカース硬度Hvとの比(Rku/Hv)×1000が1以上4.4以下である、化学強化ガラスを提供する。
【0009】
本発明の化学強化ガラスは、板状の化学強化ガラスであって、
少なくとも一方の主面において、
表面凹凸の高さ頻度分布が正規分布関数2つ以上でフィッティングされる、化学強化ガラスを提供する。
【0010】
本発明の化学強化ガラスは、結晶化ガラスであることが好ましい。
【0011】
本発明の化学強化ガラスは、SiO2-Al2O3-Li2O系結晶を含有することが好ましい。
【0012】
本発明の化学強化ガラスは、LiAlSi2O6、Li2Si2O5およびAl6O13Si2からなる群から選ばれる1以上の結晶を含有することが好ましい。
【0013】
本発明の化学強化ガラスは、母組成が、酸化物基準のモル百分率表示で、
SiO2を40~80%、
Al2O3を3~30%、
P2O5を0~5%、
B2O3を0~10%、
Li2Oを5~40%、
Na2Oを0~10%、
K2Oを0~5%、
MgOを0~5%、
CaOを0~5%、
SrOを0~5%、
BaOを0~5%、
ZrO2を1~5%、
SnO2を0~4%、
Y2O3を0~4%含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ガラス形成時にガラスの表面凹凸が適切に制御されていることにより、コーティング膜との膜密着性が良好な化学強化ガラスが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、例1の化学強化ガラスの高さ頻度分布を示す図である。
【
図2】
図2は、例2の化学強化ガラスの高さ頻度分布を示す図である。
【
図3】
図3は、例1および例2の化学強化ガラスについて、防汚層の剥離耐性試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。特段の定めがない限り、以下本明細書において「~」は、同様の意味で使用される。
【0017】
本明細書において、「化学強化ガラス」は、化学強化処理を施した後のガラスを指し、「化学強化用ガラス」は、化学強化処理を施す前のガラスを指す。
本明細書において、「化学強化ガラスの母組成」とは、化学強化用ガラスのガラス組成である。化学強化ガラスにおいては、極端なイオン交換処理がされた場合を除いて、板厚tの1/2の深さにおけるガラス組成は、化学強化ガラスの母組成と同じである。
【0018】
本明細書において、ガラス組成は、特に断らない限り酸化物基準のモル百分率表示で表し、モル%を単に「%」と表記する。
また、本明細書において「実質的に含有しない」とは、原材料等に含まれる不純物レベル以下である、つまり意図的に含有させたものではないことをいう。具体的には、たとえば0.1モル%未満である。
【0019】
本明細書において「応力プロファイル」はガラス表面からの深さを変数として圧縮応力値を表したものをいう。また、「圧縮応力層深さ(DOL)」は、圧縮応力値(CS)がゼロとなる深さである。「内部引張応力値(CT)」は、ガラスの板厚tの1/2の深さにおける引張応力値をいう。本明細書において引張応力値は負の圧縮応力値として表される。
【0020】
本明細書における応力プロファイルは、散乱光光弾性応力計(たとえば有限会社折原製作所製SLP-1000)を用いて測定できる。散乱光光弾性応力計は、表面散乱の影響を受けて、試料表面付近の測定精度が低下する場合がある。しかし、例えばガラス中のリチウムイオンと外部のナトリウムイオンとのイオン交換のみによって圧縮応力が生じている場合には、深さの関数で表した圧縮応力値が相補誤差関数に従うので、内部の応力値を測定することで、表面の応力値を知ることができる。深さの関数で表した圧縮応力値が相補誤差関数に従わない場合等は、表面部分を別の方法(たとえば表面応力計で測定する方法)によって測定する。
【0021】
<化学強化ガラス>
本発明の化学強化ガラス(以下、「本化学強化ガラス」とも称する。)は、板状が好ましい。すなわち本化学強化ガラスは、第一の主面と、それに対向する第二の主面と、それぞれに接する端部とを有することが好ましい。本化学強化ガラスは例えば、第一の主面と第二の主面とが平行な平板状であるが、第一の主面と第二の主面とは平行でなくてもよく、また、一方または両方の主面の一部または全部が曲面であってもよい。本化学強化ガラスは、ヘーズが1.0%以下であり、少なくとも一方の主面において、表面凹凸の尖度Rkuとビッカース硬度Hvとの比(Rku/Hv)×1000が1以上4.4以下である。
【0022】
本化学強化ガラスの厚さ(t)は、例えば2mm以下であり、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1mm以下、さらに好ましくは0.9mm以下、特に好ましくは0.8mm以下、最も好ましくは0.7mm以下である。また、充分な強度を得るために、厚さは、例えば0.1mm以上であり、好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.4mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上、特に好ましくは0.6mm以上である。
【0023】
本化学強化ガラスにおいて、表面凹凸の尖度Rkuとは、ガラス表面の凹凸の高さ頻度分布の尖り具合を表す。Rku=3であると表面凹凸は正規分布を示し、Rku<3であると表面凹凸の高さ頻度分布がつぶれているような形状になり、Rku>3であると高さ分布が尖った形状となる。
【0024】
同じ条件でガラスの研磨を行う場合、ガラスの硬さと研磨後のガラス表面の粗さは相関があることが知られている。したがって、本化学強化ガラスの表面凹凸は単位硬さ辺りのRkuによって評価できる。
【0025】
すなわち、本化学強化ガラスの少なくとも一方の主面において、表面凹凸の尖度Rkuとビッカース硬度Hvとの比(Rku/Hv)×1000は、1以上4.4以下である。(Rku/Hv)×1000が4.4以下であることで、ガラスの硬さに対してRkuが比較的小さく、過剰にとがった形状とならなくなる。高さ頻度分布がある程度つぶれている形状であれば、表面凹凸の特定高さへの頻度の偏りが比較的小さくなる。これにより、表面凹凸において平坦な領域が比較的少なくなり、表面凹凸が複数パターンの凹凸形状を含むか、または不規則な凹凸形状を含んで構成されやすくなり、特定の凹凸形状の繰り返しのみから構成されにくい傾向となる。本化学強化ガラスは、このような表面凹凸を有することでガラス表面の表面積を大きくでき、コーティング膜との膜密着性に優れると考えられる。(Rku/Hv)×1000は4以下がより好ましく、3.8以下がさらに好ましく、3.6以下が特に好ましい。
【0026】
また、同様の観点から、(Rku/Hv)×1000は、1以上である。高さ頻度分布がつぶれ過ぎている形状であれば、表面凹凸の特定高さへの頻度の偏りが過剰に小さくなりやすい。その場合、様々な凹凸度が含まれる状態になり、例えば大きなうねりに極微小な凹凸があるような状態になるため、表面凹凸において平坦な領域がかえって大きくなり、ガラス表面の表面積は比較的小さくなる傾向がある。(Rku/Hv)×1000を1以上とすることで、前記のように、表面凹凸が複数パターンの凹凸形状を含むか、または不規則な凹凸形状を含んで構成されやすくなるので、表面積を大きくできる。(Rku/Hv)×1000は1.5以上がより好ましく、2以上がさらに好ましく、2.5以上が特に好ましい。
【0027】
また、本化学強化ガラスの少なくとも一方の主面において、表面凹凸の高さ頻度分布は、正規分布関数2つ以上でフィッティングされることが好ましい。
図1は、実施例における例1の化学強化ガラスの高さ頻度分布を示す図であり、高さ頻度分布が正規分布関数2つでフィッティングされる場合の例である。また、
図2は、例2の化学強化ガラスの高さ頻度分布を示す図であり、高さ頻度分布が正規分布関数1つでフィッティングされる場合の例である。
【0028】
すなわち、表面凹凸の高さ頻度分布が、正規分布関数2つ以上でフィッティングされることで、表面凹凸の高さ頻度分布が正規分布関数1つでフィッティングされる場合よりも高さ頻度分布のばらつきが大きくなりやすく、表面凹凸における特定高さへの頻度の偏りが適度に小さくなりやすい。これにより、本化学強化ガラスの膜密着性が向上しやすくなると考えられる。
【0029】
本化学強化ガラスにおけるRkuは膜密着性向上の観点から、4.4以下が好ましく、4以下がより好ましく、3.8以下がさらに好ましく、3.6以下が特に好ましい。またRkuの下限も、膜密着性向上の観点からは1.0以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.0以上がさらに好ましく、2.5以上が特に好ましい。
Rkuは、例えば原子間力顕微鏡(AFM)を用いて表面凹凸を測定し、JISB0601(2001年)に準拠して算出できる。
【0030】
本化学強化ガラスの算術平均粗さRaは、膜密着性向上の観点から0.05nm以上が好ましく、0.1nm以上がより好ましい。また、Raは見た目の美観の観点から10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、1nm以下がさらに好ましい。算術平均粗さRaは、JISB0601(2001年)に準拠して測定できる。
【0031】
なお本化学強化ガラスが膜密着性に優れるとは、次の方法で測定される防汚層の剥離耐性に優れることをいう。防汚層の剥離耐性は、ガラス表面に防汚層を形成した後、「消しゴム摩擦摩耗」を施してから水滴の接触角を測定する方法で評価できる。消しゴム摩擦後の水接触角が大きいほど、防汚層の機能が保たれており、剥離耐性が優れているといえる。
【0032】
防汚層の剥離耐性は、具体的には例えば以下の方法で消しゴム摩擦摩耗した後に水滴の接触角を測定して評価できる。
(消しゴム摩擦摩耗)
直径6mmの円筒形の消しゴムを摩耗試験器に取り付け、荷重1kgf、ストローク幅40mm、速度40rpm、25℃50%RHの条件で防汚層の表面を7500回摩耗させる。
(水接触角測定)
消しゴム摩擦後の表面に、約1μLの純水の水滴を着滴させ、接触角計を用いて、水に対する接触角を測定する。摩擦摩耗後の水接触角が大きいほど、防汚層の耐久性が優れるといえる。具体的には例えば、摩耗前の水接触角と摩耗後の水接触角の差は60°以下が好ましく、50°以下がより好ましく、40°以下がさらに好ましい。
【0033】
(化学強化特性)
本化学強化ガラスは、表面圧縮応力値CS0が400MPa以上であることが好ましく、450MPa以上がより好ましく、さらに好ましくは500MPa以上、よりさらに好ましくは550MPa以上、特に好ましくは600MPa以上、さらに特に好ましくは700MPa以上、最も好ましくは800MPa以上である。
【0034】
表面圧縮応力値は大きいほど強度は高くなるが、表面圧縮応力値が大きすぎると化学強化ガラス内部に大きな引張応力が生じ、破壊に至る恐れがあるため1200MPa以下が好ましく、1100MPa以下がより好ましい。
【0035】
本化学強化ガラスの応力プロファイルにおいて、表面からの深さ50μmにおける圧縮応力値CS50は50MPa以上が好ましく、より好ましくは100MPa以上、さらに好ましくは150MPa以上、特に好ましくは200MPa以上である。CS50が大きいことで化学強化ガラスが落下する等によって傷ついた時に割れにくくなる。
【0036】
本化学強化ガラスの内部引張応力値CTは150MPa以下が好ましく、130MPa以下がより好ましく、100MPa以下がさらに好ましい。CTが小さいことで破砕が生じにくい。内部引張応力値CTは50MPa以上が好ましく、より好ましくは60MPa以上であり、さらに好ましくは70MPa以上である。CTが上記値以上であることで、表面付近の圧縮応力が大きくなり、強度が高くなる。
【0037】
本化学強化ガラスの圧縮応力層深さDOLは、厚さtに対して大きすぎるとCTの増加を招くので0.2t以下が好ましく、より好ましくは0.19t以下、さらに好ましくは0.18t以下である。また、強度を向上する点から、DOLは0.06t以上が好ましく、より好ましくは0.08t以上、さらに好ましくは0.10t以上、特に好ましくは0.12t以上である。具体的には、例えば、DOLは180μm以下が好ましく、160μm以下がより好ましい。また、DOLは60μm以上が好ましく、80μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。
【0038】
本化学強化ガラスは、結晶化ガラスであることが好ましい。本化学強化ガラスが結晶化ガラスであることで、硬度が大きくなりやすく、また破壊靭性が向上し、傷が伸びにくくなるため、好ましい。
【0039】
本化学強化ガラスは、ケイ酸リチウム結晶、アルミノケイ酸リチウム結晶、アルミノケイ酸結晶またはリン酸リチウム結晶のいずれか1種以上を含有することが好ましい。化学強化特性を向上させる観点、すなわち本化学強化ガラスの強度を向上させる観点からはアルミノケイ酸リチウム結晶、すなわちSiO2-Al2O3-Li2O系結晶を含有することがより好ましい。
【0040】
アルミノケイ酸リチウム結晶としては、例えばペタライト結晶、βスポジュメン結晶(LiAlSi2O6)またはβ石英固溶体が好ましい。ケイ酸リチウム結晶としては、例えばメタケイ酸リチウム結晶または、二ケイ酸リチウム結晶(Li2Si2O5)が好ましい。リン酸リチウム結晶としては例えばオルトリン酸リチウム結晶が好ましい。アルミノケイ酸結晶としては例えばムライト(Al6O13Si2)が好ましい。
【0041】
結晶化ガラスは、非晶質ガラスを加熱処理して結晶化することで得られる。結晶化ガラスのガラス組成は、非晶質ガラスの組成と同じである。
【0042】
本化学強化ガラスは可視光透過率(拡散透過光も含めた全光線可視光透過率)が、厚さが0.70mmに換算した場合に、好ましくは85%以上であることにより、携帯ディスプレイのカバーガラスに用いた場合に、ディスプレイの画面が見えやすい。可視光透過率は88%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。可視光透過率は、高い程好ましいが、通常、93%以下である。なお、通常の非晶質ガラスの可視光透過率は90%程度以上である。
結晶化ガラスの厚さが0.70mmではない場合は、ランベルト・ベールの法則(Lambert-Beer law)を用いて、測定された透過率から0.70mmの場合の透過率を計算できる。
板厚t[mm]の本ガラスの、全光線可視光透過率が100×T[%]、片面の表面反射率が100×R[%]であった場合、ランベルト・ベールの法則(Lambert-Beer law)を援用することにより、定数αを用いて、T=(1-R)2×exp(-αt)の関係がある。
ここからαをR、T、tで表し、t=0.70mmとすれば、Rは板厚によって変化しないので、0.70mm換算の全光線可視光透過率T0.7はT0.7=100×T0.7/t/(1-R)^(1.4/t-2)[%]と計算できる。ただしX^YはXYを表す。
表面反射率は、屈折率からの計算で求めてもよいし、実際に測定してもよい。
また、板厚tが0.70mmよりも大きいガラスの場合は、研磨やエッチングなどで板厚を0.70mmに調整して、実際に測定してもよい。なお化学強化ガラスにおいて、化学強化前後での可視光透過率はおおむね同等であり、研磨等により表面のイオン交換された層が取り除かれた場合でも透過率は大きく変化しない。
【0043】
また、本化学強化ガラスの厚さ0.70mmに換算した場合のヘーズ値は、1.0%以下である。ヘーズ値が1.0%以下であることで、例えば携帯ディスプレイのカバーガラスに用いた場合に、ディスプレイの画面が見えやすい。
ヘーズ値は0.4%以下が好ましく、0.3%以下がより好ましく、0.2%以下がさらに好ましく、0.15%以下が特に好ましい。ヘーズ値は小さい程好ましいが、ヘーズ値を小さくするために結晶化率を下げたり、結晶粒径を小さくしたりすると、機械的強度が低下する。機械的強度を高くするためには、厚さ0.70mmの場合のヘーズ値は0.02%以上が好ましく、0.03%以上がより好ましい。ヘーズ値はJIS K7136(2000年)にしたがい測定される値である。
【0044】
なお、板厚t[mm]の結晶化ガラスの全光線可視光透過率が100×T[%]、ヘーズ値が100×H[%]の場合、ランベルト・ベールの法則を援用することにより、上述した定数αを使って、
dH/dt∝exp(-αt)×(1-H)
と表せる。
すなわち、ヘーズ値は、板厚が増すごとに内部直線透過率に比例した分増えると考えられるので、0.70mmの場合のヘーズ値H0.7は、以下の式で求められる。ただし、「X^Y」は「XY」を表す。
H0.7=100×[1-(1-H)^{((1-R)2-T0.7)/((1-R)2-T)}][%]
また、板厚tが0.70mmよりも大きいガラスの場合は、研磨やエッチングなどで板厚を0.70mmに調整して、実際に測定してもよい。
【0045】
本化学強化ガラスを携帯ディスプレイのカバーガラスに用いる場合、プラスチックと異なる質感・高級感を持つことが好ましい。そのため、本化学強化ガラスの屈折率は波長590nmにて1.52以上が好ましく、1.55以上がより好ましく、1.57以上がさらに好ましい。
【0046】
本化学強化ガラスが結晶化ガラスである場合の結晶化率は、機械的強度を高くするために、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、15%以上がさらに好ましく、20%以上が特に好ましい。透明性を高くするために、結晶化率は70%以下が好ましく、60%以下がより好ましく、50%以下が特に好ましい。結晶化率が小さいことは、加熱して曲げ成形等しやすい点でも優れている。
【0047】
結晶化率は、X線回折強度からリートベルト法で算出できる。リートベルト法については、日本結晶学会「結晶解析ハンドブック」編集委員会編、「結晶解析ハンドブック」(協立出版 1999年刊、p492~499)に記載されている。
【0048】
結晶化ガラスの析出結晶の平均粒径は、80nm以下が好ましく、60nm以下がより好ましく、50nm以下がさらに好ましく、40nm以下が特に好ましく、30nm以下がもっとも好ましい。析出結晶の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)像から求められる。析出結晶の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)像から推定できる。
【0049】
本化学強化ガラスの50℃~350℃における平均熱膨張係数は、90×10-7/℃以上が好ましく、より好ましくは100×10-7/℃以上、さらに好ましくは110×10-7/℃以上、特に好ましくは120×10-7/℃以上、最も好ましくは130×10-7/℃以上である。
【0050】
熱膨張係数が大き過ぎると化学強化の過程で熱膨張率差により割れが発生する可能性がある。そのため、熱膨張係数は好ましくは160×10―7/℃以下、より好ましくは150×10-7/℃以下、さらに好ましくは140×10-7/℃以下である。
【0051】
本化学強化ガラスは、耐摩耗性を大きくするために、ビッカース硬度Hvは600以上が好ましく、700以上がより好ましく、730以上がさらに好ましく、750以上が特に好ましく、780以上が最も好ましい。本化学強化ガラスが結晶化ガラスであれば、結晶を含むので硬度が大きくなりやすい。そのために傷つきにくく、耐摩耗性にも優れやすい。
【0052】
硬度が高過ぎると加工しにくくなるため、本化学強化ガラスのビッカース硬度Hvは、1100以下が好ましく、1050以下がより好ましく、1000以下がさらに好ましい。
なお本明細書において、ビッカース硬度Hvは、JIS R1610:2003に規定されるビッカース硬さ(Hv0.1)をいう。
【0053】
本化学強化ガラスのヤング率が高いという事はガラスを構成する元素の結合強度が高いという事であり、ガラスを分断するために大きな力が必要になる事を意味している。ヤング率は、好ましくは85GPa以上、より好ましくは90GPa以上、さらに好ましくは95GPa以上、特に好ましくは100GPa以上である。また同じたわみ量の時に引張応力が大きくなり、割れやすくなることを抑制する観点からは、ヤング率は130GPa以下が好ましく、125GPa以下がより好ましく、120GPa以下がさらに好ましい。
【0054】
本化学強化ガラスの破壊靱性値は、好ましくは0.8MPa・m1/2以上、より好ましくは0.85MPa・m1/2以上、さらに好ましくは0.9MPa・m1/2以上であると、割れた際に破片が飛散しにくいので好ましい。
【0055】
(組成)
本化学強化ガラスは、リチウムアルミノシリケートガラスであることが好ましい。すなわち、本化学強化ガラスに用いられる化学強化用ガラスはリチウムアルミノシリケートガラスであることが好ましい。
【0056】
具体的には本化学強化ガラスの母組成は、SiO2を40%以上、Al2O3を3%以上、Li2Oを5%以上含有することが好ましい。リチウムアルミノシリケートガラスは、最もイオン半径の小さいアルカリイオンであるリチウムイオンを含有しているので、種々の溶融塩を用いてイオン交換する化学強化処理によって、好ましい応力プロファイルを有する化学強化ガラスが得られる。
【0057】
本化学強化ガラスの母組成は、酸化物基準のモル百分率表示で、
SiO2を40~80%、
Al2O3を3~30%、
P2O5を0~5%、
B2O3を0~10%、
Li2Oを5~40%、
Na2Oを0~10%、
K2Oを0~5%、
MgOを0~5%、
CaOを0~5%、
SrOを0~5%、
BaOを0~5%、
ZrO2を1~5%、
SnO2を0~4%、
Y2O3を0~4%含有することがより好ましい。
なお化学強化ガラスにおいては、極端なイオン交換処理がされた場合を除いて、板厚tの1/2の深さにおけるガラス組成は、化学強化ガラスの母組成と同じである。
以下、このガラス組成について説明する。
【0058】
SiO2はガラスのネットワークを構成する成分である。また、SiO2は化学的耐久性を上げる成分であり、ガラス表面に傷がついた時のクラックの発生を低減させる成分である。
SiO2の含有量は、化学的耐久性を向上させるために、40%以上が好ましく、45%以上がより好ましく、50%以上がさらに好ましく、55%以上がよりさらに好ましく、60%以上が特に好ましい。ガラス製造時の溶融性をよくするためには、SiO2の含有量は80%以下が好ましく、75%以下がより好ましく、72%以下がさらに好ましく、70%以下が特に好ましい。
【0059】
Al2O3は化学強化の際のイオン交換性能を向上させ、強化後の表面圧縮応力を大きくする観点から有効な成分である。
Al2O3の含有量は、化学的耐久性を向上するために、また化学強化特性を向上するために1%以上が好ましく、3%以上がより好ましく、4%以上がさらに好ましく、5%以上が特に好ましい。一方、Al2O3の含有量が多すぎると溶融中に結晶が成長しやすくなる場合がある。失透欠点による歩留まり低下を防止するため、また結晶化ガラスのヘーズ値を小さくするためにはAl2O3の含有量は、30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、15%以下がさらに好ましく、10%以下が特に好ましい。
【0060】
SiO2とAl2O3とは、いずれもガラスの構造を安定させる成分であり、脆性を低くするためには合計の含有量は好ましくは43%以上であり、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは55%以上、特に好ましくは60%以上である。
SiO2とAl2O3とは、いずれもガラスの溶融温度を高くする傾向がある。そこで、溶融しやすくするためには、その合計の含有量は好ましくは95%以下であり、より好ましくは90%以下、さらに好ましくは87%以下、よりさらに好ましくは85%以下、特に好ましくは82%以下である。
【0061】
Li2Oは、イオン交換により表面圧縮応力を形成させる成分であり、ガラスの溶融性を向上させる成分である。化学強化ガラスがLi2Oを含有することにより、ガラス表面のLiイオンをNaイオンにイオン交換し、さらにNaイオンをKイオンにイオン交換する方法で、表面圧縮応力および圧縮応力層がともに大きな応力プロファイルが得られる。
【0062】
化学強化時の表面圧縮応力を大きくするために、Li2Oの含有量は5%以上が好ましく、7%以上がより好ましく、10%以上がさらに好ましく、15%以上が特に好ましい。
一方、Li2Oの含有量が多すぎるとガラス成型時の結晶成長速度が大きくなり、失透欠点による歩留まり低下の問題が大きくなる場合がある。ガラス製造工程での失透を抑制するためには、Li2Oの含有量は、40%以下が好ましく、より好ましくは35%以下、さらに好ましくは30%以下、よりさらに好ましくは25%以下、特に好ましくは22%以下、最も好ましくは18%以下である。
【0063】
Na2OおよびK2Oは、いずれも必須ではないが、ガラスの溶融性を向上させ、ガラスの結晶成長速度を小さくする成分であり、イオン交換性能を向上させるために含有することが好ましい。
【0064】
Na2Oは、カリウム塩を用いる化学強化処理において表面圧縮応力層を形成させる成分であり、またガラスの溶融性を向上させ得る成分である。その効果を得るために、Na2Oの含有量は、1%以上が好ましく、より好ましくは2%以上、さらに好ましくは3%以上、よりさらに好ましくは3.5%以上である。一方、Na2Oの含有量が多すぎると化学強化によって、表面から比較的深い部分の圧縮応力を高くしにくくなるので、含有量は10%以下が好ましく、8%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましく、3%以下が特に好ましい。
【0065】
K2Oは、ガラス製造工程での失透を抑制する等の目的で含有させてもよい。K2Oを含有させる場合の含有量は、0.1%以上が好ましく、より好ましくは0.15%以上、特に好ましくは0.2%以上である。失透をより防止するためには0.5%以上が好ましく、1.2%以上がより好ましい。一方、Kを多く含むことで脆性や、強化時の逆交換によって表層応力の低下の要因となることから、K2Oの含有量は5%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下がよりさらに好ましく、0.5%以下が特に好ましい。
【0066】
Na2OおよびK2Oの含有量の合計([Na2O]+[K2O])はガラスの溶融性を高くするために好ましくは3%以上、より好ましくは3.5%以上、さらに好ましくは4%以上、特に好ましくは4.5%以上である。([Na2O]+[K2O])が多すぎると表面圧縮応力値の低下が生じやすいため、([Na2O]+[K2O])は好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは8%以下、特に好ましくは6%以下である。
【0067】
MgOは、必須ではないが、溶解時の粘性を下げる等のために含有してもよい。MgOを含有させる場合の含有量は、好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上、さらに好ましくは3%以上である。一方、MgOの含有量が多すぎると化学強化処理時に圧縮応力層を大きくしにくくなる。MgOの含有量は好ましくは5%以下であり、より好ましくは4%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、特に好ましくは2%以下である。
【0068】
CaOは、必須ではないが、ガラスの溶融性を向上させる成分であり、含有させてもよい。CaOを含有させる場合の含有量は、好ましくは0.1%以上であり、より好ましくは0.15%以上であり、さらに好ましくは0.5%以上である。一方、CaOの含有量が過剰であると化学強化処理時に圧縮応力値を大きくしにくくなる。CaOの含有量は好ましくは5%以下であり、より好ましくは3%以下であり、さらに好ましくは1%以下であり、典型的には0.5%以下である。
【0069】
SrOは、必須ではないが、化学強化用ガラスの溶融性を向上する成分であり、またガラスの屈折率を向上させる成分である。SrOは、結晶化後に残留するガラス相の屈折率と析出結晶の屈折率とを近づけることによって結晶化ガラスの透過率を向上できるため含有してもよい。SrOを含有する場合の含有量は、好ましくは0.1%以上であり、より好ましくは0.2%以上であり、さらに好ましくは0.5%以上であり、特に好ましくは1%以上である。一方、SrO含有量が多すぎるとイオン交換速度が低下するため5%以下が好ましく、2.5%以下がより好ましく、1.8%以下がさらに好ましい。
【0070】
BaOは、必須ではないが、化学強化用ガラスの溶融性を向上する成分であり、またガラスの屈折率を向上させる成分である。BaOは、結晶化後に残留するガラス相の屈折率と析出結晶の屈折率とを近づけることによって結晶化ガラスの透過率を向上できるため含有してもよい。BaOを含有する場合の含有量は、好ましくは0.1%以上であり、より好ましくは0.2%以上であり、さらに好ましくは0.5%以上であり、特に好ましくは1%以上である。一方、BaO含有量が多すぎるとイオン交換速度が低下するため5%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、1.5%以下がより好ましい。
【0071】
ZnOはガラスの溶融性を向上させる成分であり、またガラスの屈折率を向上させる成分である。ZnOは、結晶化後に残留するガラス相の屈折率と析出結晶の屈折率とを近づけることによって結晶化ガラスの透過率を向上できるため含有してもよい。ZnOを含有する場合の含有量は、好ましくは0.2%以上であり、より好ましくは0.5%以上である。ガラスの耐候性を高くするためには、ZnOの含有量は8%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましい。
【0072】
ZnO、SrOおよびBaOは化学強化特性を悪化させる傾向があるので、化学強化しやすくするためには、ZnO、SrOおよびBaOの合計の含有量[ZnO]+[SrO]+[BaO]は、1%未満が好ましく、0.5%以下がより好ましい。これらは、実質的に含有しないことがさらに好ましい。
【0073】
ZrO2は含有させなくともよいが、化学強化ガラスの表面圧縮応力を増大させる観点から含有することが好ましい。また、ZrO2は、結晶化処理に際して、結晶核を構成し得る成分である。ZrO2の含有量は、好ましくは0.5%以上、より好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは2%以上である。一方、ZrO2の含有量が多すぎると失透欠点が発生しやすくなり、化学強化処理時に圧縮応力値を大きくしにくくなる。ZrO2の含有量は好ましくは5%以下であり、より好ましくは4%以下であり、さらに好ましくは3%以下である。
【0074】
破壊靭性値を大きくするためには、Y2O3、La2O3およびZrO2のいずれか1種以上を合計で0.2%以上含有することが好ましい。Y2O3、La2O3およびZrO2の合計の含有量は、0.5%以上が好ましく、1.0%以上がより好ましく、1.5%以上がさらに好ましい。また、液相温度を下げ、失透を抑制するためには、これらの合計の含有量は6%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、4%以下がさらに好ましい。
【0075】
失透温度を下げ、失透を抑制するためには、Y2O3およびLa2O3の合計がZrO2の含有量より大きいことが好ましく、Y2O3の含有量がZrO2の含有量より大きいことがより好ましい。
【0076】
Y2O3は必須ではないが、化学強化ガラスの表面圧縮応力を増大させつつ、結晶成長速度を小さくするために、含有することが好ましい。Y2O3の含有量は、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.2%以上、さらに好ましくは0.5%以上、特に好ましくは1%以上である。一方、多すぎると化学強化処理時に圧縮応力層を大きくしにくくなる。Y2O3の含有量は好ましくは10%以下であり、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは4%以下、よりさらに好ましくは3%以下、特に好ましくは2%以下、さらに特に好ましくは1.5%以下である。
【0077】
La2O3は、必須ではないが、Y2O3と同様の理由で含有できる。La2O3は、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.2%以上、さらに好ましくは0.5%以上、特に好ましくは0.8%以上である。一方、多すぎると化学強化処理時に圧縮応力層を大きくしにくくなるので好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは2%以下、特に好ましくは1.5%以下である。
【0078】
TiO2は、必須ではないが、ガラスのソラリゼーションを抑制する成分であり、含有させてもよい。またTiO2は結晶化処理に際して、結晶核を構成し得る成分である。TiO2を含有させる場合の含有量は、好ましくは0.02%以上であり、より好ましくは0.03%以上、さらに好ましくは0.04%以上であり、特に好ましくは0.05%以上であり、典型的には0.06%以上である。一方、TiO2の含有量が2%超であると失透が発生しやすくなり、化学強化ガラスの品質が低下する恐れがある。TiO2の含有量は2%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、さらに好ましくは0.5%以下、よりさらに好ましくは0.25%以下である。
【0079】
B2O3は必須ではないが、ガラスの脆性を小さくし耐クラック性を向上させる目的で、または、ガラスの溶融性を向上させる目的で含有してもよい。B2O3を含有させる場合の含有量は、好ましくは0.5%以上、好ましくは1%以上、さらに好ましくは2%以上である。一方、B2O3の含有量が多すぎると耐酸性が悪化しやすいためB2O3の含有量は10%以下が好ましい。B2O3の含有量は、より好ましくは6%以下、さらに好ましくは4%以下、特に好ましくは2%以下である。B2O3は、溶融時に脈理が発生する問題を防止する観点から実質的に含有しないことがより好ましい。
【0080】
P2O5は必須ではないが、化学強化時の圧縮応力層を大きくする目的で含有してもよい。P2O5を含有させる場合の含有量は、好ましくは0.5%以上、好ましくは1%以上、さらに好ましくは2%以上である。一方、耐酸性を高くする観点からP2O5の含有量は5%以下が好ましく、4%以下がより好ましく、さらに好ましくは3%以下である。溶融時に脈理が発生することを防止する観点から、実質的に含有しないことがより好ましい。
【0081】
B2O3とP2O5の含有量の合計は0~10%が好ましく、1%以上がより好ましく、2%以上がさらに好ましい。B2O3とP2O5の含有量の合計は6%以下がより好ましく、4%以下がさらに好ましい。
【0082】
SnO2は結晶核の生成を促進する作用があり、含有しても良い。SnO2は必須ではないが、含有する場合、好ましくは0.5%以上であり、より好ましくは1%以上、さらに好ましくは1.5%以上、特に好ましくは2%以上である。一方、溶融時の失透を抑制するために、SnO2の含有量は4%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましい。
【0083】
Nb2O5、Ta2O5、Gd2O3及びCeO2は、いずれも必須ではないが、ガラスのソラリゼーションを抑制する成分であり、溶融性を改善する成分である。そのため、Nb2O5、Ta2O5、Gd2O3及びCeO2から選択される1種以上を含有させてもよい。これらの成分を含有させる場合の合計の含有量は、好ましくは0.03%以上、より好ましくは0.1%以上、さらに好ましくは0.5%以上、特に好ましくは0.8%以上、典型的には1%以上である。一方、これらの合計の含有量が多すぎると化学強化処理時に圧縮応力値を大きくしにくくなることから、好ましくは3%以下であり、より好ましくは2%以下であり、さらに好ましくは1%以下であり、特に好ましくは0.5%以下である。
【0084】
Fe2O3は熱線を吸収するのでガラスの溶解性を向上させる効果があり、大型の溶解窯を用いてガラスを大量生産する場合には、含有することが好ましい。その場合の含有量は酸化物基準の重量%において、好ましくは0.002%以上、より好ましくは0.005%以上、さらに好ましくは0.007%以上、特に好ましくは0.01%以上である。一方、Fe2O3は過剰に含有すると着色が生じるので、その含有量はガラスの透明性を高める観点から、酸化物基準の重量%において、0.3%以下が好ましく、より好ましくは0.04%以下、さらに好ましくは0.025%以下、特に好ましくは0.015%以下である。
【0085】
なお、ここではガラス中の鉄酸化物をすべてFe2O3として説明したが、実際には、酸化状態のFe(III)と還元状態のFe(II)が混在しているのが普通である。このうちFe(III)は黄色の着色を生じ、Fe(II)は青色の着色を生じ、両者のバランスでガラスに緑色の着色が生じる。
【0086】
さらに、所望の化学強化特性の達成を阻害しない範囲において着色成分を添加してもよい。着色成分としては、例えば、Co3O4、MnO2、NiO、CuO、Cr2O3、V2O5、Bi2O3、SeO2、CeO2、Er2O3、Nd2O3等が好適なものとして挙げられる。
【0087】
着色成分の含有量は、酸化物基準のモル百分率表示で、合計で5%以下が好ましい。5%を超えるとガラスが失透しやすくなる場合がある。着色成分の含有量は好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下である。ガラスの透過率を高くしたい場合は、これらの成分は実質的に含有しないことが好ましい。
【0088】
ガラスの溶融の際の清澄剤等として、SO3、塩化物、フッ化物などを適宜含有してもよい。As2O3は含有しないことが好ましい。Sb2O3を含有する場合は、0.3%以下が好ましく、0.1%以下がより好ましく、含有しないことが最も好ましい。
【0089】
<化学強化ガラスの製造方法>
本発明の化学強化ガラスは、化学強化用ガラスを化学強化処理して得られる。本化学強化ガラスが結晶化ガラスである場合には、非晶質ガラスを加熱処理して結晶化ガラスである化学強化用ガラスを得、得られた結晶化ガラスを化学強化処理して製造する。
【0090】
(化学強化用ガラスの製造)
化学強化用ガラスは、例えば、以下の方法で製造できる。
【0091】
好ましい組成のガラスが得られるようにガラス原料を調合し、ガラス溶融窯で加熱溶融する。その後、バブリング、撹拌、清澄剤の添加等により溶融ガラスを均質化し、公知の成形法により所定の厚さのガラス板に成形し、徐冷する。または、溶融ガラスをブロック状に成形して、徐冷した後に切断する方法で板状に成形してもよい。
【0092】
板状ガラスの成形法としては、例えば、フロート法、プレス法、フュージョン法及びダウンドロー法が挙げられる。特に、大型のガラス板を製造する場合は、フロート法が好ましい。また、フロート法以外の連続成形法、例えば、フュージョン法及びダウンドロー法も好ましい。
【0093】
(結晶化処理)
化学強化用ガラスが結晶化ガラスである場合は、上記の手順で得られたガラスを加熱処理することで結晶化ガラスを得る。なお、結晶化処理は後述の研磨処理等の後に行ってもよい。
【0094】
加熱処理は、室温から第一の処理温度まで昇温して一定時間保持した後、第一の処理温度より高温である第二の処理温度に一定時間保持する2段階~3段の加熱処理によることが好ましい。
【0095】
2段階の加熱処理による場合、第一の処理温度は、そのガラス組成において結晶核生成速度が大きくなる温度域が好ましく、第二の処理温度は、そのガラス組成において結晶成長速度が大きくなる温度域が好ましい。また、第一の処理温度での保持時間は、充分な数の結晶核が生成するように長く保持することが好ましい。多数の結晶核が生成することで、各結晶の大きさが小さくなり、透明性の高い結晶化ガラスが得られる。
また、2結晶系の結晶化ガラスを得る場合には、その分熱処理の保持時間を増やすことが好ましい場合がある。
【0096】
第一の処理温度は、例えば450℃~700℃であり、第二の処理温度は、例えば600℃~800℃であり、第一処理温度で1時間~6時間保持した後、第二処理温度で1時間~6時間保持する。
【0097】
(研磨処理)
上記手順で得られたガラスまたは結晶化ガラスを必要に応じて研削及び研磨処理して、化学強化用ガラスを形成する。本化学強化ガラスの凹凸形状は、化学強化用ガラスの研磨条件を調節することで制御できる。すなわち、化学強化用ガラスの研磨処理方法は、化学強化後に(Rku/Hv)×1000が1以上4.4以下となる凹凸形状が得られるものであればよい。
【0098】
(Rku/Hv)×1000が1以上4.4以下となる具体的な研磨条件としては、研磨するガラスに合わせて適宜調節できる。表面凹凸を制御するためには、例えば研磨砥粒の平均粒子径や研磨パッドの材質等を調整することが好ましい。例えば研磨砥粒の平均粒子径は適度なRkuを得る観点から500nm以上が好ましく、800nm以上がより好ましい。また、平均粒子径は美しい鏡面が得られる点から3000nm以下が好ましく、2000nm以下がより好ましい。ここで、平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法を用いた体積分布に基づいて測定されるメジアン径を示す。
【0099】
例えば研磨砥粒を2種類以上混合して表面凹凸を制御することも好ましい方法である。
【0100】
また、研磨パッドの種類も特に限定されないが、例えば不織布製などの、適度に研磨砥粒を保持できるパッドが好ましい。
【0101】
さらに、異なるパッドを用いる等、複数の条件で2段階以上の研磨を行うことも好ましい。2段階以上の研磨の例としては、例えば、1段目に一般的な研磨工程と同様の条件で研磨を行い、2段目には1段目と異なるパッドを用いて、所望の凹凸形状を得るために短時間の研磨を行うことが挙げられる。
【0102】
同じ条件でガラスの研磨を行う場合、ガラスの硬さと研磨後のガラス表面の粗さは相関があることが知られている。そのため、硬さの異なるガラスでは同じ研磨条件であっても異なる表面凹凸が得られる傾向がある。
【0103】
所望の凹凸形状を得られるように研磨した後、洗浄および乾燥工程を経て化学強化用ガラスが得られる。
【0104】
なお化学強化ガラスを所定の形状及びサイズに切断したり、面取り加工を行ったりする場合、化学強化処理を施す前に、切断や面取り加工を行えば、その後の化学強化処理によって端面にも圧縮応力層が形成されるため、好ましい。
【0105】
(化学強化処理)
上記の方法で得られた化学強化用ガラスを化学強化処理することで、本化学強化ガラスが得られる。
【0106】
化学強化処理は、公知の方法によって行える。化学強化処理においては、大きなイオン半径の金属イオンを含む金属塩(例えば、硝酸カリウム)の融液に、浸漬などによってガラス板を接触させる。これにより、ガラス板中の小さなイオン半径の金属イオンが大きなイオン半径の金属イオンと置換される。ここで、小さなイオン半径の金属イオンは、典型的には、NaイオンまたはLiイオンである。大きなイオン半径の金属イオンは、典型的には、KイオンまたはNaイオンであり、具体的には、Naイオンに対してはKイオン、Liイオンに対してはNaイオンまたはKイオンである。
【0107】
化学強化処理(イオン交換処理)は、例えば、360~600℃に加熱された硝酸カリウム等の溶融塩中に、ガラス板を0.1~500時間浸漬することによって行える。なお、溶融塩の加熱温度としては、375~500℃が好ましく、また、溶融塩中へのガラス板の浸漬時間は、0.3~200時間が好ましい。
【0108】
化学強化処理を行うための溶融塩としては、例えば、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、塩化物などが挙げられる。このうち硝酸塩としては、例えば、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸セシウム、硝酸銀などが挙げられる。硫酸塩としては、例えば、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸セシウム、硫酸銀などが挙げられる。炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。塩化物としては、例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化セシウム、塩化銀などが挙げられる。これらの溶融塩は単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0109】
本発明において、化学強化処理の処理条件は、ガラスの特性・組成や溶融塩の種類、ならびに、最終的に得られる化学強化ガラスに所望される表面圧縮応力や圧縮応力層の深さ等の化学強化特性などを考慮して、適切な条件を選択すればよい。
【0110】
また、本発明においては、化学強化処理を一回のみ行ってもよく、あるいは2以上の異なる条件で複数回の化学強化処理(多段強化)を行ってもよい。ここで、例えば、1段階目の化学強化処理として、DOLが大きくCSが相対的に小さくなる条件で化学強化処理を行う。その後に、2段階目の化学強化処理として、DOLが小さくCSが相対的に高くなる条件で化学強化処理を行うと、化学強化ガラスの最表面のCSを高めつつ、内部引張応力面積(St)を抑制でき、内部引張応力(CT)を低く抑えられる。
【0111】
本化学強化ガラスは、防汚層等のコーティング膜との膜密着性に優れるので、携帯電話、スマートフォン、携帯情報端末(PDA)、タブレット端末等のモバイル機器等に用いられるカバーガラスとして、特に有用である。さらに、携帯を目的としない、テレビ(TV)、パーソナルコンピュータ(PC)、タッチパネル等のディスプレイ装置のカバーガラス、エレベータ壁面、家屋やビル等の建築物の壁面(全面ディスプレイ)、窓ガラス等の建築用資材、テーブルトップ、自動車や飛行機等の内装等やそれらのカバーガラスとして、また曲げ加工や成形により板状でない曲面形状を有する筺体等の用途にも有用である。
【実施例】
【0112】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。例1は本化学強化ガラスの実施例であり、例2は比較例である。
【0113】
(化学強化用ガラスの作製)
表1に酸化物基準のモル百分率表示で記載したガラス組成となるように、ガラス原料を調合し、化学強化用ガラスを作製した。
ガラス原料としては、酸化物、水酸化物、炭酸塩等の一般的なガラス原料を適宜選択し、ガラスとして900gとなるように秤量した。
混合したガラス原料を白金坩堝に入れ、1700℃で溶融し、脱泡した。そのガラスをカーボンボード上に流して、ガラスブロックを得た。
例1のガラスはガラスブロックの状態において、昇温速度5℃/分、1段目:550℃で2時間、2段目:720℃で2時間の条件で結晶化処理を行った。
その後、例1、例2のガラスを以下に示す条件で研磨加工し、板厚0.70mmの板状ガラスを得た。
研磨機:浜井産業株式会社製 小型研磨機4BF
研磨材:平均粒子径1μm程度の酸化セリウムを研磨砥粒として含むスラリー(三井金属鉱業株式会社製)
研磨パッド:不織布(フジボウ愛媛株式会社製)
【0114】
(化学強化処理)
得られた化学強化用ガラスを化学強化して、化学強化ガラスを得た。化学強化は次に示す条件で行った。
例1:NaNO3 99.7質量%+LiNO3 0.3質量%、450℃の溶融塩に2.4時間浸漬した。
例2:(1段目)NaNO3 100質量%、410℃の溶融塩に2時間浸漬した。
(2段目)KNO3 99質量%+NaNO3 1質量%、440℃の溶融塩に1時間浸漬した。
【0115】
【0116】
次に、得られた化学強化ガラスについて、以下の評価を行った。
【0117】
(ヘーズ値)
ヘーズメーター(スガ試験機株式会社製;HZ-V3)を用いて、C光源でのヘーズ値[単位:%]を測定した。例1、例2の化学強化ガラスのヘーズ値は、いずれもおよそ0.10%であった。
【0118】
(尖度Rku)
化学強化ガラスのガラス表面を、原子間力顕微鏡(AFM、製品名:Dimension ICON(Bruker社製))を用いて撮影した。カンチレバーは、メーカー指定の標準品を用いた。撮影は、スキャンエリア5μm×5μmに対し、ダイナミック・フォース・モードを用いて、スキャンスピード1Hzで行った(解像度:256×256)。撮影画像を画像解析ソフト(ソフト名:Image Metrology社製 SPIP)を用いて、傾き補正を全体面補正、3次関数として、粗さパラメータに変換し、JISB0601(2001年)に準拠して化学強化ガラスの表面凹凸の尖度Rkuを算出した。
【0119】
(ビッカース硬度)
島津マイクロビッカース硬度計(株式会社島津製作所製;HMV-2)を用い、荷重100gfで15秒間圧子を圧入して測定した。
【0120】
各化学強化ガラスのRku、Hvならびに(Rku/Hv)×1000の値を表2に示す。
【0121】
(防汚層の剥離耐性)
次に、化学強化ガラス表面の(5cm×5cm)の範囲に、以下の手順で防汚層を形成し、消しゴム摩擦摩耗をおこなった後、水接触角を測定した。評価結果について、表2および
図3に示す。
【0122】
((防汚層の形成))
水洗いしたガラス板をさらにプラズマ洗浄してから、フッ素を含有する有機化合物(ダイキン工業株式会社製 UD-509)を、抵抗加熱による真空蒸着法を用いて蒸着した。成膜時の真空チャンバー内の圧力は3.0×10-3Paとし、蒸着出力は318.5kA/m2で300sec間蒸着した。得られた防汚層の厚さは15nmであった。
【0123】
((消しゴム摩擦摩耗試験))
平面摩耗試験器(3連式)(株式会社大栄科学精器製作所製、装置名:PA-300A)を用いて、荷重1kgf、ストローク幅40mm、速度40rpm、25℃50%RHの条件で防汚層の表面を直径6mmの消しゴム(WOOJIN社製 ピンクペンシル)により7500回摩耗させた。その後、防汚層表面の水接触角を測定した。
【0124】
((水接触角測定))
防汚層の表面上に、約1μLの純水の水滴を着滴させ、接触角計を用いて、水の接触角を測定した。6回以上試験を行い、測定値の平均値を水接触角(°)として表2に示す。
【0125】
【0126】
実施例である例1の化学強化ガラスは、(Rku/Hv)×1000の値が4.4以下であり、表面凹凸が適切に制御されたガラスであるため、消しゴム摩擦摩耗後も水接触角が大きく、膜密着性に優れる結果が得られた。一方で、比較例である例2のガラスは、(Rku/Hv)×1000の値が4.4よりも大きかったため、消しゴム摩擦摩耗後の水接触角が小さくなり、膜密着性に劣る結果となった。
【0127】
本発明を詳細にまた特定の実施形態を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は、2020年8月19日出願の日本特許出願(特願2020-138625)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。