(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-20
(45)【発行日】2025-08-28
(54)【発明の名称】触媒の生成のための方法、そこからの触媒、及びエチレン性不飽和カルボン酸若しくはエステルの生成のための方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/04 20060101AFI20250821BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20250821BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20250821BHJP
C07C 57/04 20060101ALI20250821BHJP
C07C 69/54 20060101ALI20250821BHJP
C07C 67/343 20060101ALI20250821BHJP
C07C 51/09 20060101ALI20250821BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20250821BHJP
【FI】
B01J23/04 Z
B01J37/08
B01J37/02 101D
C07C57/04
C07C69/54 Z
C07C67/343
C07C51/09
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021554664
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(86)【国際出願番号】 GB2020050644
(87)【国際公開番号】W WO2020183193
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-03-10
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】カレン、アダム
(72)【発明者】
【氏名】二宮 航
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-514799(JP,A)
【文献】特表2015-533846(JP,A)
【文献】特表平10-503798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C07C 1/00-409/44
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和カルボン酸またはそのエステルの製造用のか焼されていない触媒中間体であって、修飾剤金属で修飾されたか焼されていない多孔質シリカ担体を含み、ここで、前記修飾剤金属は、
ジルコニウム、ハフニウム又はチタンから選択され、ここで、前記修飾剤金属は、前記か焼されていない修飾されたシリカ担体上に吸着された単核若しくは複核の修飾剤金属部分及び触媒金属中に存在しており、前記触媒金属がアルカリ金属である、か焼されていない触媒中間体。
【請求項2】
多孔質修飾剤金属酸化物-シリカの共ゲル担体を含む、請求項
1に記載のか焼されていない触媒中間体。
【請求項3】
前記か焼されていない中間体が、か焼を経た、請求項
1又は2に記載の中間体に基づく触媒。
【請求項4】
前記シリカ担体が、ヒドロゲル又はキセロゲルである、請求項
1又は2に記載の触媒中間体。
【請求項5】
前記修飾剤金属が、前記シリカ担体表面上に吸着されている吸着質である、請求項
1、2、4のいずれか一項に記載の触媒中間体。
【請求項6】
前記修飾剤金属が、前記シリカ担体表面上に化学吸着又は物理吸着されている、請求項
5に記載の触媒中間体。
【請求項7】
前記触媒金属が、セシウム、カリウム又はルビジウムから選択される、請求項
1、2、4-6のいずれか一項に記載の触媒中間体。
【請求項8】
吸着され又は共ゲル化された修飾剤金属カチオンが、それに続く処理ステップの間のそのオリゴマー化を実質的に防止するように互いに十分に離間している、請求項
1、2、4-7のいずれか一項に記載の触媒中間体。
【請求項9】
前記修飾されたシリカ担体のシリカ成分が、前記修飾された担体の80~99.9重量%を形成し得る、請求項
1、2、4-8のいずれか一項に記載の触媒中間体。
【請求項10】
前記シリカ担体が、2~1000nmの平均孔径を有する、請求項
1、2、4-9のいずれか一項に記載の触媒中間体。
【請求項11】
前記触媒金属が、前記触媒の前記修飾されたシリカ担体表面上に吸着された吸着質である、請求項
1、2、4-10のいずれか一項に記載の触媒中間体。
【請求項12】
前記触媒金属が、前記修飾されたシリカ担体表面上に化学吸着または物理吸着されている、請求項
11に記載の触媒中間体。
【請求項13】
前記触媒金属が、前記触媒中の少なくとも1mol/100(ケイ素+修飾剤金属)molのレベルで触媒中に存在する、請求項
1、2、4-12のいずれか一項に記載の触媒中間体。
【請求項14】
前記触媒中の前記触媒金属:修飾剤金属のモル比が、少なくとも1.4若しくは1.5:1である、請求項
1、2、4-13のいずれか一項に記載の触媒中間体。
【請求項15】
前記触媒金属が、0.5~7.0mol/mol修飾剤金属の範囲で存在する、請求項
1、2、4-14のいずれか一項に記載の触媒中間体。
【請求項16】
前記触媒中の触媒金属のレベルが、前記触媒中の1~10mol/100(ケイ素+修飾剤金属)molの範囲内である、請求項
1、2、4-15のいずれか一項に記載の触媒中間体。
【請求項17】
修飾剤金属のレベルが、0.067×10
-2~7.3×10
-2mol/molシリカである、請求項
1、2、4-16のいずれか一項に記載の触媒中間体。
【請求項18】
前記か焼ステップが、少なくとも450℃の温度にて行われる、請求項
3に記載の触媒。
【請求項19】
前記シリカ担体が、ヒドロゲル又はキセロゲルである、請求項
3又は18に記載の触媒。
【請求項20】
前記修飾剤金属が、前記シリカ担体表面上に吸着されている吸着質である、請求項
3、18、19のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項21】
前記修飾剤金属が、前記シリカ担体表面上に化学吸着又は物理吸着されている、請求項
20に記載の触媒。
【請求項22】
前記修飾剤金属が、ジルコニウム、ハフニウム又はチタンから選択される、請求項
3、18-21のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項23】
前記触媒金属が、セシウム、カリウム又はルビジウムから選択される、請求項
3、18-22のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項24】
吸着され又は共ゲル化された修飾剤金属カチオンが、それに続く処理ステップの間のそのオリゴマー化を実質的に防止するように互いに十分に離間している、請求項
3、18-23のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項25】
前記修飾されたシリカ担体のシリカ成分が、前記修飾された担体の80~99.9重量%を形成し得る、請求項
3、18-24のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項26】
前記シリカ担体が、2~1000nmの平均孔径を有する、請求項
3、18-25のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項27】
前記触媒金属が、前記触媒の前記修飾されたシリカ担体表面上に吸着された吸着質である、請求項
3、18-26のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項28】
前記触媒金属が、前記修飾されたシリカ担体表面上に化学吸着または物理吸着されている、請求項
27に記載の触媒。
【請求項29】
前記触媒金属が、前記触媒中の少なくとも1mol/100(ケイ素+修飾剤金属)molのレベルで触媒中に存在する、請求項
3、18-28のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項30】
前記触媒中の前記触媒金属:修飾剤金属のモル比が、少なくとも1.4若しくは1.5:1である、請求項
3、18-29のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項31】
前記触媒金属が、0.5~7.0mol/mol修飾剤金属の範囲で存在する、請求項
3、18-30のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項32】
前記触媒中の触媒金属のレベルが、前記触媒中の1~10mol/100(ケイ素+修飾剤金属)molの範囲内である、請求項
3、18-31のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項33】
修飾剤金属のレベルが、0.067×10
-2~7.3×10
-2mol/molシリカである、請求項
3、18-32のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項34】
エチレン性不飽和カルボン酸若しくはエステルを生成する方法であって、触媒の存在下で、及び任意選択でアルコールの存在下で、ホルムアルデヒド又はその適切な源とカルボン酸若しくはエステルとを接触させるステップを含み、ここで、前記触媒は、請求項
3、18-33のいずれか一項に記載されたものである、方法。
【請求項35】
エチレン性不飽和カルボン酸若しくはエステルが、α、βエチレン性不飽和カルボン酸若しくはエステルである、請求項
34に記載の方法。
【請求項36】
エチレン性不飽和カルボン酸若しくはエステルが、プロピオン酸メチル又はプロピオン酸である、請求項
34又は35に記載の方法。
【請求項37】
エチレン性不飽和酸若しくはエステルを調製する方法であって、請求項
3、18-33のいずれか一項に記載されている触媒の存在下で、及び任意選択でアルカノールの存在下で、式R
1-CH
2-COOR
3のアルカン酸若しくはエステルと、下記で定義するような式(I)のホルムアルデヒド又はホルムアルデヒドの適切な源
【化1】
(式中、R
5は、メチルであり、R
6は、Hであり;
Xは、Oであり;
mは、1であり;
nは、1~20の任意の値である)、又はこれらの任意の混合物とを接触させることを含み;式中、R
1は、水素、又は1~12個の炭素原子を有するアルキル基であり、R
3はまた、独立に、水素、又は1~12個の炭素原子を有するアルキル基である、方法。
【請求項38】
式R
1-CH
2-COOR
3の前記アルカン酸若しくはエステルが、プロピオン酸メチル又はプロピオン酸である、請求項
37に記載の方法。
【請求項39】
任意選択のアルカノールがメタノールであり、エチレン性不飽和カルボン酸若しくはエステルがメタクリル酸メチル又はメタクリル酸である、請求項
37又は38に記載の方法。
【請求項40】
前記部分が、前記シリカ担体の表面に亘り均一に分布している、請求項
1、2、4-17のいずれか一項に記載の触媒中間体。
【請求項41】
前記部分が、前記シリカ担体の表面に亘り均一に分布している、請求項
3、18-33のいずれか一項に記載の触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、修飾されたシリカ触媒を生成するための方法、その触媒、並びにこのような触媒の存在下でのカルボン酸若しくはエステルとホルムアルデヒド又はその源、例えば、ジメトキシメタンとの縮合による、特に、このような触媒の存在下でのプロピオン酸又はそのアルキルエステル、例えば、プロピオン酸メチルとホルムアルデヒド又はその源との縮合による、エチレン性不飽和カルボン酸若しくはエステル、特に、α、β不飽和カルボン酸若しくはエステル、より特定すると、アクリル酸若しくはエステル、例えば、(アルク)アクリル酸又はアルキル(アルク)アクリレート、特に、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸アルキル、例えば、メタクリル酸(MAA)及びメタクリル酸メチル(MMA)の生成のための方法に関する。したがって、本発明は特に、MAA及びMMAの生成に関する。本発明の触媒は、特定の修飾剤金属によって独自に修飾された修飾されたシリカ担体、及び触媒金属を組み込む。
【背景技術】
【0002】
上記のように、不飽和酸若しくはエステルは、カルボン酸若しくはエステルの反応によって作製し得、適切なカルボン酸若しくはエステルは、式R3-CH2-COOR4のアルカン酸(若しくはエステル)であり、式中、R3及びR4は、それぞれ独立に、アクリル化合物の当技術分野において公知の適切な置換基、例えば、水素又はアルキル基、特に、例えば、1~4個の炭素原子を含有する低級アルキル基である。このように、例えば、MAA若しくはそのアルキルエステル、特に、MMAは、反応順序1による、プロピオン酸、又は対応するアルキルエステル、例えば、プロピオン酸メチルと、メチレン源としてのホルムアルデヒドとの触媒反応によって作製し得る。
順序1
R3-CH2-COOR4+HCHO------->R3-CH(CH2OH)-COOR4
及び
R3-CH(CH2OH)-COOR4------>R3-C(:CH2)-COOR4+H2O
反応順序1の一例は、反応順序2である。
順序2
CH3-CH2-COOR4+HCHO------->CH3-CH(CH2OH)-COOR4
CH3-CH(CH2OH)-COOR4------>CH3-C(:CH2)-COOR4+H2O
【0003】
上記の反応順序は典型的には、酸/塩基触媒を使用して、温度を上げた状態で、通常、250~400℃の範囲でもたらされる。所望の生成物がエステルである場合、反応は典型的には、エステルの加水分解によって対応する酸の形成を最小化するために、関連性のあるアルコールの存在下でもたらされる。また便宜のため、メタノールを伴うホルムアルデヒドの錯体の形態でホルムアルデヒドを導入することが望ましいことが多い。したがって、MMAの生成のために、触媒に供給される反応混合物は一般に、プロピオン酸メチル(MEP)、メタノール、ホルムアルデヒド及び水からなる。
【0004】
MMAについての公知の製造方法は、ホルムアルデヒドを使用したMMAへのMEPの触媒変換である。このための公知の触媒は、担体、例えば、シリカを組み込んでいるセシウム触媒である。
【0005】
国際公開第99/52628号パンフレットは、修飾剤であるニトレート、オキシニトレート及び酸化物、例えば、硝酸ジルコニウム、それに続く炭酸セシウムの組込み及びか焼を使用した、メソポーラスゲルシリカからの、修飾剤金属(ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ジルコニウム及びハフニウム)が含浸された触媒の調製について開示している。ジルコニウム、又はジルコニウム及び酢酸アルミニウム溶液を酢酸セシウム溶液と混合し、シリカ担体上へと一緒に吸着させる。
【0006】
米国特許第6887822号明細書は、触媒金属による処理の後で、ヒドロゲルシリカ表面をか焼するオプションについて教示している。しかし、これは、修飾剤金属の吸着の問題、及びこのように修飾された表面をどのように処理するかについて取り組んでいない。代わりに、ジルコニアは、共ゲル化によって導入される。この文献は、シリカキセロゲルビーズ含浸が排除され、ヒドロゲルビーズのみが例示され、明らかに非常により強いビーズがもたらされることを教示している。
【0007】
未公開国際出願PCT/GB2018/052606号明細書は、シリカ担体上へのジルコニウム及びハフニウムの金属有機錯体の吸着、それに続く、触媒金属、例えば、セシウムの吸着について開示している。一般に、修飾剤が錯体として加えられる修飾剤金属吸着の後のか焼ステップ、及びアルカリ金属吸着の後の任意選択のか焼ステップが特に教示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に、修飾剤金属によるシリカ担体の処理の後、さらなる処理の前に金属を「固定」するか焼ステップが予想される。これは、有機基が修飾剤金属に付着され、除去する必要があるとき、特に、あてはまる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によって生成された触媒は、メチレン源、例えば、ホルムアルデヒドとカルボン酸又はアルキルエステル、例えば、MEPとの縮合における高レベルの選択性を実現することを本発明者らは今や発見した。
【0010】
またさらに、本発明の触媒生成の方法が使用されるとき、触媒表面焼結の速度が遅延することが見出され、縮合反応の間にその上で触媒反応が起こる表面積の喪失が低減することを本発明者らは見出した。
【0011】
したがって、本発明の触媒は、いくつかの利点、例えば、高レベルの選択性及び/又は触媒表面の焼結の低減を実現する、対応する酸若しくはエステルとメチレン源、例えば、ホルムアルデヒドとの縮合による、α、βエチレン性不飽和カルボン酸若しくはエステルの生成のための著しく効率的な触媒である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1の態様によると、
a)か焼されていない金属修飾された多孔質シリカ担体を提供するステップであって、修飾剤金属は、B、Mg、Al、Zr、Hf及びTiの1つ若しくは複数から選択され、修飾剤金属は、単核若しくは複核の修飾剤金属部分中に存在するステップと;
b)修飾されたシリカ担体から溶媒又は液体キャリアを任意選択で除去するステップと、
c)修飾されたシリカ担体を任意選択で乾燥させるステップと、
d)か焼されていない金属修飾されたシリカ担体を触媒金属で処理して、金属修飾されたシリカ担体上への触媒金属の吸着をもたらすステップと、
e)ステップd)の含浸されたシリカ担体をか焼するステップと
を含む、触媒を生成するための方法を提供する。
【0013】
有利なことには、定義したようなか焼されていない修飾されたシリカ担体を触媒金属によって処理し、それに続くか焼によって、改善された選択性及び焼結に対する耐性の増加は、カルボン酸若しくはエステルとホルムアルデヒド又はその源との縮合による、エチレン性不飽和カルボン酸若しくはエステルの触媒生成において見出される。
【0014】
本発明において、修飾剤金属部分の核性を制御することは、シリカ上の隣接する修飾剤金属部分の近接性を制御するため、驚いたことに有利であることが見出された。
【0015】
本発明の第2の態様によると、修飾剤金属で修飾されたか焼されていない多孔質シリカ担体を含む、か焼されていない触媒中間体を提供し、ここで、修飾剤金属は、B、Mg、Al、Zr、Hf及びTiの1つ若しくは複数から選択され、ここで、前記修飾剤金属は、前記か焼されていない修飾されたシリカ担体上に吸着された単核若しくは複核の修飾剤金属部分及び触媒金属中に存在する。
【0016】
第1又は第2の態様のシリカは、修飾剤金属酸化物及びシリカの共ゲルとして、又はシリカ表面上に吸着された修飾剤金属を有する修飾されたシリカとして、提供し得る。
【0017】
驚いたことに、本発明の触媒は、改善された選択性及び焼結に対する耐性の増加を実現する。
【0018】
驚いたことに、か焼の温度を増加させることは、さらなる改善された選択性を実現することが見出されてきた。
【0019】
本発明の第3の態様によると、本発明の第1又はさらなる態様の方法によって得られる触媒を提供する。
【0020】
本発明の第4の態様によると、本発明の第1又はさらなる態様の方法によって得ることができる触媒を提供する。
【0021】
本発明のさらなる態様によると、特許請求の範囲による触媒のための修飾されたシリカ担体を生成する方法を提供する。
【0022】
修飾剤金属錯体
典型的には、修飾剤金属が吸着質として加えられるとき、これは単核若しくは複核の修飾剤金属化合物として加えてもよい。典型的には、化合物は錯体であり、化合物の配位圏中の配位子は一般に、吸着の前及び/又は後の、修飾剤金属のさらなるオリゴマー化、及び/又は錯体の核性におけるかなりの増加を防止するのに十分なサイズのものである。一般に、二量体への核性の増加は許容し得る。典型的には、修飾剤金属錯体は、1個若しくは複数の有機多座キレート配位子を有する有機錯体、又は代わりに、核性を安定化するのに有効な立体的にかさ高い単座配位子を有する錯体である。
【0023】
典型的には、か焼の前又は後の前記修飾剤金属の少なくとも25%は、単核若しくは複核の修飾剤部分の形態で担体上に存在する。したがって、典型的には、前記修飾剤金属の少なくとも25%は、単核若しくは複核の金属化合物に由来する修飾剤金属部分の形態で担体上に存在する。
【0024】
典型的には、単核若しくは複核の修飾剤金属は、溶液中の単核若しくは複核の修飾剤金属化合物としてシリカ担体と接触して、担体上への前記修飾剤金属の吸着がもたらされる。
【0025】
典型的には、修飾剤金属化合物は、単核若しくは複核、より好ましくは、単核である。
【0026】
担体、例えば、ヒドロゲル担体に亘り分散している2個超の金属原子の修飾剤金属のクラスターは、対応する酸若しくはエステルとメチレン源、例えば、ホルムアルデヒドとの縮合による、α、βエチレン性不飽和カルボン酸若しくはエステルの生成のための反応選択性を減少させることが驚いたことに見出された。このような大きなクラスターはまた、単核若しくは複核部分と比べて、修飾されたシリカ粒子の焼結を増加させ、それによって、表面積を低減させ、これは、活性が許容しがたく低くなる前に、強度を低下させ、且つ触媒の寿命を低減させることが驚いたことに見出されてきた。さらに、選択性は、修飾剤金属のクラスターの性質によってより低いことが多い。
【0027】
有利なことには、本発明の上記の態様の修飾されたシリカ中に組み込まれた修飾剤金属の少なくともある割合が、修飾されたシリカ形成の開始において、単核若しくは複核修飾剤金属カチオン源に由来するとき、α、βエチレン性不飽和カルボン酸若しくはエステルの生成の間に、反応選択性の改善及び/又は触媒表面の焼結の速度の低減が見出されてきた。
【0028】
典型的には、修飾剤金属は、ジルコニウム、ハフニウム及びチタンから選択される。
【0029】
典型的には、金属化合物は、2種若しくはそれより多いキレート配位子、好ましくは、2個、3個若しくは4個のキレート配位子を含む錯体である。本明細書においてキレート配位子は、二座、三座、四座若しくは多座であり得る。しかし、化合物が、シリカ表面上の修飾剤金属を本明細書に示したように効果的に離間するのにまた有効であるかさ高い単座配位子を含むことはまた可能である。
【0030】
典型的には、金属錯体は、四配位、五配位、六配位、七配位、又は八配位である。
【0031】
有利なことには、金属化合物の配位圏中の配位子のサイズ、例えば、キレート配位子のサイズは、単純な対イオン、例えば、ニトレート、アセテート又はオキシニトレートを有する同じ修飾剤金属より、修飾剤金属がより分散していることをもたらす。より小さな金属塩吸着は、熱処理又はか焼に続いて修飾剤金属のクラスター化をもたらし、これによって、触媒の選択性が低下し、触媒の焼結耐性が低下することが見出されてきた。
【0032】
一般に本明細書において、修飾剤金属は、触媒のシリカ担体表面上に吸着される吸着質である。吸着質は、その化合物としてシリカ担体表面上へと化学吸着又は物理吸着し得、典型的には、これは、その上に化学吸着されている。
【0033】
本明細書において適切なキレート配位子は、修飾剤金属原子と5員若しくは6員環を形成することができる酸素若しくは窒素原子を含有する孤立電子対を有する分子から任意選択で選択される不安定でない配位子であり得る。例は、ジオン、ジイミン、ジアミン、ジオール、ジカルボン酸若しくはその誘導体、例えば、エステル、又は2個の異なるこのような官能基を有する分子を含み、いずれの場合でも、2個若しくは3個の原子によって分離したそれぞれのN又はO及びN又はO原子を伴い、それによって、5員若しくは6員環が形成される。例は、ペンタン-2,4-ジオン、1~4個の炭素原子を含有する脂肪族アルコールを有する3-オキソブタン酸のエステル、例えば、エチル3-オキソブタノエート、プロピル3-オキソブタノエート、イソプロピル3-オキソブタノエート、n-ブチル3-オキソブタノエート、t-ブチル3-オキソブタノエート、ヘプタン-3,5-ジオン、2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ジアミノエタン、エタノールアミン、1,2-ジアミノ-1,1,2,2-テトラカルボキシレート、2,3-ジヒドロキシ-1,4-ブタンジオエート、2,4-ジヒドロキシ-1,5-ペンタンジオエート、1,2-ジヒドロキシルベンゼン-3-5-ジスルホネートの塩、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロ三酢酸、N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、N-ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、N,N-ジヒドロキシエチルグリシン、シュウ酸及びその塩を含む。ペンタン-2,4-ジオン、ヘプタン-3,5-ジオン、2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン、エチル3-オキソブタノエート及びt-ブチル3-オキソブタノエートが最も好ましい。例えば、全部で10個未満の炭素及び/又はヘテロ原子を有するより小さな二座キレート配位子は、小さな錯体が形成されることを可能とし、これは、より大きな配位子と比較して、より高い濃度がシリカの表面上に堆積することを可能とすることができる。したがって、本明細書において単核若しくは複核修飾剤金属カチオン源は、このようなより小さなキレート配位子、好ましくは、少なくとも1個のこのような配位子を有する修飾剤金属の錯体の形態でよい。このような化合物は、不安定な配位子、例えば、アルコール溶媒中の溶媒配位子、アルコキシド配位子、例えば、エトキシド又はプロポキシドなどを含み得る。
【0034】
キレート配位子は典型的には、不安定でない配位子である。不安定でない配位子とは、修飾剤金属に配位され、且つシリカ表面上への修飾剤金属の吸着によって除去されない配位子を意味する。したがって、不安定でない配位子は典型的には、修飾剤金属によるシリカ表面の処理の前に溶液中で修飾剤金属に配位される。疑義を避けるために、不安定でない配位子は典型的には、修飾剤金属の吸着に続いて、シリカ表面の適切な処理によって除去される。
【0035】
キレート配位子のサイズは、シリカ表面上で修飾剤金属原子を離間し、触媒生成の間のこれらの組合せを防止するように選択される。
【0036】
代わりに、(金属錯体のオリゴマー化を防止するため)かさ高い単座配位子を有する修飾剤金属錯体を使用することができる。前記錯体中に使用される典型的な配位子には、これらに限定されないが、適切な有機基を有するアルコキシド、例えば、tert-ブトキシド又は2,6ジtert-ブチルフェノキシド、適切な有機基を有するアミド、例えば、ジアルキルアミド(メチル、エチル並びに高級直鎖状及び分岐状アルキル基、並びにビス(トリメチルシリルアミド)錯体、並びに適切な有機基を有するアルキル配位子、例えば、2,2-ジメチルプロピル(ネオペンチル)配位子が含まれる。
【0037】
典型的には、シリカ担体は、単離されたシラノール基を有し、シリカ担体と修飾剤金属種とを接触させることによって、修飾剤金属は、前記シラノール基との反応によってシリカ担体の表面上へと吸着される。
【0038】
好ましくは、吸着された又は共ゲル化された修飾剤金属カチオンは、それに続く処理ステップ、例えば、触媒金属の含浸、又は任意選択で、それに続くか焼の間のそのオリゴマー化、より好ましくは、隣接する修飾剤金属カチオンとのその二量体化、三量体化又はオリゴマー化を実質的に防止するように修飾剤金属化合物によって互いに十分に離間している。
【0039】
典型的には、接触ステップにおけるシリカ担体と接触する前記修飾剤金属種の少なくとも25%、より典型的には、少なくとも30%、例えば、少なくとも35%、より好ましくは、少なくとも40%、例えば、少なくとも45%、最も適切には、少なくとも50%、例えば、少なくとも55%、例えば、少なくとも60%若しくは65%、最も好ましくは、少なくとも70%、例えば、少なくとも75%若しくは80%、より典型的には、少なくとも85%、最も典型的には、少なくとも90%、特に、少なくとも95%は、単核及び/又は複核種である。
【0040】
本発明の第5の態様によると、
a)単離されたシラノール基を有する多孔質シリカ担体を提供するステップと;
b)修飾剤金属が前記単離されたシラノール基との反応によってシリカ担体の表面上へと吸着されるように、前記多孔質シリカ担体を単核若しくは複核の修飾剤金属化合物で処理するステップであって、吸着された修飾剤金属原子は、か焼の前及び/又は後に隣接する修飾剤金属原子とのそのオリゴマー化を実質的に防止するように互いに十分に離間しており、より好ましくは、その隣接する修飾剤金属原子とのその二量体化若しくは三量体化を実質的に防止するように互いに十分に離間しており、ここで、修飾剤金属は、B、Mg、Al、Zr、Hf及びTiから選択されるステップと;
c)修飾されたシリカ担体から溶媒又は液体キャリアを任意選択で除去するステップと、
d)修飾されたシリカ担体を任意選択で乾燥させるステップと、
e)か焼されていない修飾されたシリカ担体を触媒であるアルカリ金属で処理して、修飾されたシリカ担体上への触媒であるアルカリ金属の吸着をもたらすステップと;
f)ステップe)の含浸されたシリカ担体をか焼するステップと
を含む、本明細書における又は他の態様のいずれかによる触媒を生成する方法を提供する。
【0041】
好ましくは、修飾剤金属原子の離間は、修飾剤金属化合物のサイズによってもたらされる。
【0042】
典型的には、シリカ担体は、nm2当たり<2.5個の基のレベルで単離されたシラノール基(-SiOH)を含む。
【0043】
好ましくは、本明細書において修飾剤金属は、化合物が担体と接触したとき溶液中にあり、担体上への吸着がもたらされるように、前記修飾剤金属の化合物の溶液である。
【0044】
典型的には、前記溶液のための溶媒は、水又は水以外である。
【0045】
典型的には、溶媒は、有機溶媒、例えば、トルエン又はヘプタンであり、さらに、溶媒は、脂肪族又は芳香族溶媒でよい。またさらに、溶媒は、塩素化溶媒、例えば、ジクロロメタンでよい。より典型的には、溶媒は、典型的には、C1~C6アルカノール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール及びヘキサノール、より典型的には、メタノール、エタノール又はプロパノールから選択される、脂肪族アルコールである。
【0046】
修飾剤金属吸着の前のシリカ担体上の単離されたシラノール基濃度は好ましくは、か焼又は当業者には公知のような他の適切な方法によって制御される。シラノールの同定の方法は、例えば、L T Zhuravlev、“Colloids and Surfaces:Physicochemical and Engineering Aspects,vol.173,pp.1-38,2000”を含み、これは、シリカ表面上で共存することができるシラノールの4つの異なる形態:単離されたシラノール、ジェミナルシラノール、ビシナルシラノール、及び内部シラノールについて記載している。単離されたシラノール基が最も好ましい。これらは、3730~3750cm-1での狭い吸収ピークとして赤外分光法によって同定することができ、一方、他のシラノールは、3460~3715cm-1の広範なピークを示す(“The Surface Properties of Silicas,Edited by Andre P Legrand,John Wiley and Sons,1998(ISBN 0-471-95332-6)pp.147-234を参照されたい)。
【0047】
本明細書において態様のいずれかによる修飾されたシリカ担体は、nm2当たり<2.5個の基のレベルで単離されたシラノール基(-SiOH)を含み得る。典型的には、修飾された担体は、nm2当たり>0.1個及び<2.5個の基のレベルで、より好ましくは、0.2~2.2個のレベルで、最も好ましくは、nm2当たり0.4~2.0個の基のレベルで単離されたシラノール基(-SiOH)を含む。
【0048】
またさらに、本発明は、本明細書における任意の態様による方法、触媒又は触媒中間体に及び、ここで、担体は、担体上に存在し、且つnm2当たり<2.5個の部分のレベルで存在する前記修飾剤金属部分を含む。
【0049】
典型的には、担体は、nm2当たり>0.025個及び<2.5個の基のレベルで、より好ましくは、0.05~1.5個のレベルで、最も好ましくは、nm2当たり0.1~1.0個の部分のレベルで前記修飾剤金属部分を含む。
【0050】
好ましくは単離されたシラノール基の濃度は、修飾剤金属の最大数を決定し、シラノール部位の分布は一般に均一であるために、効果的に決定することができる。本発明による修飾されたシリカ担体の生成のための単離されたシラノール濃度は、nm2当たり2.5個未満の基、より典型的には、nm2当たり2.5個未満の基、最も典型的には、nm2当たり1.5個未満の基、特に、nm2当たり0.8個未満の基であり得る。修飾されたシリカ担体の生成のためのシラノール濃度についての適切な範囲は、nm2当たり0.1~4.6個のシラノール基、より好ましくは、nm2当たり0.15~2.5個のシラノール基、最も好ましくは、nm2当たり0.2~1.0個のシラノール基であり得る。
【0051】
修飾剤金属錯体の濃度は、修飾剤金属と金属の相互作用をもたらす担体の表面上の二重層などのかなりの形成を防止するレベルで設定すべきである。さらに、単離されたシラノール部位から離れる修飾剤金属の弱い吸着をもたらし得る最初の単層中のギャップを満たすことは、隣接する強力に吸着された修飾剤金属との相互作用を防止するためにまた回避すべきである。本発明の修飾剤金属についての典型的な濃度範囲は、本明細書に示した通りであり得る。
【0052】
典型的には、修飾剤金属錯体中の修飾剤金属の少なくとも30%、例えば、少なくとも35%、より好ましくは、少なくとも40%、例えば、少なくとも45%、最も適切には、少なくとも50%、例えば、少なくとも55%、例えば、少なくとも60%若しくは65%、最も好ましくは、少なくとも70%、例えば、少なくとも75%若しくは80%、より典型的には、少なくとも85%、最も典型的には、少なくとも90%、特に、少なくとも95%は、その錯体が担体と接触して、担体上への前記錯体の吸着がもたらされるとき、単核及び/又は複核修飾剤金属化合物である。
【0053】
本明細書において特定したレベルで単離されたシラノール基を提供する、シリカを処理する適切な方法は、か焼による。しかし、他の技術、例えば、水温処理又は化学的脱水がまた可能である。米国特許第5583085号明細書は、アミン塩基の存在下での炭酸ジメチル又は二炭酸エチレンによるシリカの化学的脱水について教示している。米国特許第4357451号明細書及び米国特許第4308172号明細書は、SOCl2による塩素化、それに続く、乾燥雰囲気中でのH2又はROHそれに続く酸素による脱塩素による化学的脱水について教示している。化学的脱水は、最小で0.7/nm2に対して熱処理によってシラノールの100%までの除去を実現し得る。このように、場合によって、化学的脱水は、シラノール基の制御についてのより多くの範囲を提供し得る。
【0054】
単離されたシラノールという用語(単一のシラノールとしてもまた公知である)は、当技術分野で周知であり、ビシナルシラノール又はジェミナルシラノール又は内部シラノールからの群と区別される。単離されたシラノールの出現率を決定するための適切な方法は、表面感受性赤外分光法及び1H NMR又は31Si NMRを含む。
【0055】
好ましくは、シリカ担体は、修飾剤金属による処理の前に乾燥又はか焼される。
【0056】
シリカ
典型的には、修飾されたシリカ担体は、キセロゲルである。ゲルはまた、ヒドロゲル又はエーロゲルであり得る。
【0057】
ゲルはまた、シリカ-修飾剤金属酸化物の共ゲルであり得る。シリカゲルは、例えば、本明細書において記述するゲル生成の当業者には公知の様々な技術のいずれかによって形成し得る。この場合、修飾剤金属酸化物はまた、シリカのマトリックス及びその表面に亘り分布し得る。しかし、典型的には、修飾されたシリカゲルは、適切な吸着反応によって生成される。関連性のある単核若しくは複核の修飾剤金属部分を有する修飾されたシリカゲルを形成させる、シリカゲル、例えば、シリカキセロゲルへの関連性のある修飾剤金属化合物の吸着は、適切な技術である。
【0058】
シリカは、修飾剤金属吸着質による処理の前に、ゲルの形態であり得る。ゲルは、修飾の開始においてヒドロゲル、キセロゲル又はエーロゲルの形態であり得る。典型的には、シリカ担体は、ヒドロゲル又はキセロゲル、最も好ましくは、キセロゲルである。
【0059】
記述したように、シリカゲルを調製する方法は当技術分野で周知であり、いくつかのこのような方法は、The Chemistry of Silica:Solubility,Polymerisation,Colloid and Surface Properties and Biochemistry of Silica,by Ralph K Iler,1979,John Wiley and Sons Inc.,ISBN 0-471-02404-X及びその中の参考文献において記載されている。
【0060】
修飾されたシリカ担体のシリカ成分は典型的には、修飾された担体の80~99.9重量%、より典型的には、85~99.8重量%、最も典型的には、その90~99.7重量%を形成し得る。
【0061】
多孔質シリカ担体は典型的には、2~1000nm、より好ましくは、3~500nm、最も好ましくは、5~250nmの平均孔径を伴うメソポーラスからマクロポーラスの一連の孔径を有する。マクロ孔径(50nm超)は、NIST標準を使用した水銀圧入ポロシメトリーによって決定することができ、一方、77Kでの液体窒素を使用したBarrett-Joyner-Halenda(BJH)分析法を使用して、メソ細孔(2~50nm)の孔径を決定する。平均孔径は、孔径分布に対する細孔容積の細孔容積加重平均である。
【0062】
驚いたことに、キセロゲルの共ゲル化によって修飾されたシリカ担体を調製し、次いで、本発明の第1の態様のステップb)~e)を行うことによってまた、改善された選択性及び増改した焼結耐性を有する触媒がもたらされることがまた見出されてきた。
【0063】
またさらに、本発明の第6の態様によると、本発明の第2の態様による中間体を含む触媒を提供し、ここで、前記か焼されていない中間体はか焼されてきた。
【0064】
触媒金属
一般に本明細書において、触媒であるアルカリ金属は、触媒の修飾されたシリカ担体表面上に吸着される吸着質である。吸着質は、修飾されたシリカ担体表面上へと化学吸着又は物理吸着し得、典型的には、これは、その上に化学吸着される。
【0065】
本明細書において触媒金属は、修飾剤金属以外の金属である。好ましくは、触媒金属は、1種若しくは複数のアルカリ金属から選択し得る。典型的には、触媒であるアルカリ金属は、セシウム、カリウム又はルビジウム、より好ましくは、セシウムから選択し得る。
【0066】
適切には、触媒金属、例えば、セシウムは、少なくとも1mol/100(ケイ素+修飾剤金属)mol、より好ましくは、少なくとも1.5mol/100(ケイ素+修飾剤金属)mol、最も好ましくは、少なくとも2mol/100(ケイ素+修飾剤金属)molのレベルで触媒中に存在し得る。触媒金属のレベルは、触媒中の10mol/100(ケイ素+修飾剤金属)molまで、より好ましくは、触媒中の7.5mol/100(ケイ素+修飾剤金属)molまで、最も好ましくは、5mol/100(ケイ素+修飾剤金属)molまでであり得る。
【0067】
好ましくは、触媒中の触媒金属のレベルは、触媒中の1~10mol/100(ケイ素+修飾剤金属)mol、より好ましくは、2~8mol/100(ケイ素+修飾剤金属)mol、最も好ましくは、2.5~6mol/100(ケイ素+修飾剤金属)molの範囲内である。
【0068】
代わりに、触媒は、触媒中の1~22重量%、より好ましくは、4~18重量%、最も好ましくは、5~13重量%の範囲の触媒金属の重量%を有し得る。これらの量は、全てのアルカリ金属、特に、セシウムに適用される。
【0069】
したがって、触媒中の触媒金属:修飾剤金属のモル比は典型的には、少なくとも1.4若しくは1.5:1であり、好ましくは、これは1.4~5:1、例えば、1.5~4.0:1、特に、1.5~3.6:1の範囲であり、典型的には、これに関しては、触媒金属は、セシウムである。一般に、本明細書において、触媒金属は、修飾剤金属を中和する必要があるものを上回る。
【0070】
好ましくは、触媒金属は、0.5~7.0mol/mol修飾剤金属、より好ましくは、1.0~6.0mol/mol、最も好ましくは、1.5~5.0mol/mol修飾剤金属の範囲で存在する。
【0071】
か焼
本発明の触媒金属は、修飾されたシリカ担体に任意の適切な手段によって加え得ることを当業者は理解する。触媒金属は、担体上への触媒金属化合物の堆積の後に、担体上へのか焼によって固定される。か焼のプロセスは、当業者には周知である。
【0072】
触媒の好ましいか焼において、温度は、少なくとも450℃、より好ましくは、少なくとも475℃、最も好ましくは、少なくとも500℃、特に、少なくとも600℃、より特に、700℃超である。典型的には、か焼温度は、400~1000℃、より典型的には、500~900℃、最も典型的には、600~850℃の範囲である。
【0073】
か焼雰囲気は典型的には、いくらかの酸素を含有すべきであるが、不活性雰囲気又は真空中で、適切には、1~30%の酸素、最も適切には、2~20%の酸素であり得る。か焼時間は、典型的には、0.01~100時間、適切には、0.5~40時間、最も適切には、1~24時間であり得る。
【0074】
一般的方法
任意の適切な手段によって触媒金属を修飾されたシリカに加えてもよいことを当業者は理解する。典型的には、修飾されたシリカ触媒を生成するために、修飾されたシリカを、触媒金属と接触させる。
【0075】
典型的には、触媒を生成するために、修飾されたシリカ担体を、触媒金属の100%水溶液、又は触媒金属及び塩基の塩の形態の、触媒金属、例えば、セシウムを含有する酸性、中性若しくはアルカリ性の水溶液と接触させる。代わりに、担体を、有機溶媒中の触媒金属塩の水混和性溶液と接触させることができる。好ましい溶媒は、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノール、好ましくは、メタノールである。最も好ましい溶媒は、メタノールである。最も好ましくは、触媒金属は、メタノール中の塩溶液として加える。低レベルの水、典型的には、20容量%までを、溶液中に含有することができる。
【0076】
典型的には、触媒生成プロセスのこの段階の間の温度、接触時間及びpHの条件は、例えば、触媒金属による、修飾されたシリカ担体の含浸を可能とし、修飾されたシリカ担持触媒を形成するものである。
【0077】
このステップのための温度の典型的な条件は、5~95℃、より典型的には、10~80℃、最も典型的には、20~70℃である。このステップについての温度は、少なくとも5℃、より典型的には、少なくとも10℃、最も典型的には、少なくとも20℃であり得る。
【0078】
このステップのための修飾された担体及び触媒金属含有溶液の間の典型的な接触時間は、0.05~48時間、より典型的には、0.1~24時間、最も典型的には、0.5~18時間であり得る。接触時間は、少なくとも0.05時間、より典型的には、少なくとも0.1時間、最も典型的には、少なくとも0.5時間であり得る。
【0079】
このステップのための触媒金属塩溶液の濃度は、触媒金属化合物の溶解限度、修飾されたシリカ担体の多孔度、担体上の触媒金属の望ましい充填、並びに担体を含浸するのに使用される液体の量、触媒金属化合物のpH及び選択を含めた添加の方法を含めた多数の要因によって決まる。溶液中の濃度は、実験によって最良に決定される。
【0080】
触媒金属の組込みのための触媒金属の適切な塩は一般に、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、炭酸水素塩、塩化物、硝酸塩、水酸化物及び炭酸塩、より典型的には、水酸化物、酢酸塩又は炭酸塩、最も典型的には、水酸化物及び/又は炭酸塩からなる群の1つ若しくは複数から選択し得る。pHは、金属化合物を有するアンモニアを添加することによって、又は全ての場合において、単独で、組み合わせて、若しくは適当なカルボン酸と一緒に、適当な触媒金属化合物、例えば、ギ酸塩、炭酸塩、酢酸塩若しくは水酸化物、より好ましくは、水酸化物若しくは炭酸塩を使用することによって、含浸の間に制御することができる。好ましい範囲内のpHの制御は、満足できる吸着がもたらされるのに含浸の終わりにおいて最も重要である。最も典型的には、これらの塩は、塩のアルカリ性溶液を使用して組み込み得る。塩がそれ自体アルカリ性でない場合、適切な塩基、例えば、水酸化アンモニウムを加え得る。水酸化物塩は性質が塩基性であるため、特定の触媒金属、例えば、セシウムの水酸化物塩を有する上記の塩の1つ若しくは複数の混合物を好都合に調製し得る。
【0081】
触媒活性金属の添加は、上記の方法によって行うことができるか、或いは例えば、水若しくは水以外の溶媒、例えば、アルコール、適切には、メタノール、エタノール、プロパノール若しくはイソプロパノールを使用した、又は単に十分な溶液をキセロゲル担体に加えて、キセロゲル担体の細孔を満たす初期湿潤法を使用した、触媒担体、例えば、キセロゲル担体を含浸するのに使用される任意の他の通常の方法によってでよい。この場合、より低い濃度の過剰な溶液を提供するよりむしろ、標的量の触媒活性金属をキセロゲル担体材料に導入するために、触媒活性金属の濃度を計算し得る。触媒活性金属の添加は、当技術分野において公知の任意の好ましい方法論を利用し得る。
【0082】
か焼の前の修飾されたシリカの乾燥は、20~200℃、より典型的には、30~180℃、最も典型的には、40~150℃の温度範囲で起こり得る。か焼の前の修飾されたシリカの乾燥は、0.001~1.01バールの範囲の大気圧又は亜大気圧で起こり得る。修飾されたシリカの乾燥はまた、固定層又は流動層において不活性ガス流下でもたらし得る。乾燥時間は、0.1~24時間、より典型的には、0.5~12時間、最も典型的には、1~6時間の範囲であり得る。
【0083】
より低い温度での減圧乾燥、又は不活性ガスによる流動層乾燥は、適切な技術である。
【0084】
一般的特性
最終の触媒中の修飾剤金属及び触媒金属吸着質は一般に、金属酸化物部分である。
【0085】
修飾剤金属
典型的には、修飾剤金属は、焼結を低減させ、且つ触媒の選択性を改善させる有効量で修飾されたシリカ担体中に存在する。典型的には、修飾されたシリカ担体中の修飾剤金属の少なくとも30%、例えば、少なくとも35%、より好ましくは、少なくとも40%、例えば、少なくとも45%、最も適切には、少なくとも50%、例えば、少なくとも55%、例えば、少なくとも60%若しくは65%、最も好ましくは、少なくとも70%、例えば、少なくとも75%若しくは80%、より典型的には、少なくとも85%、最も典型的には、少なくとも90%、特に、少なくとも95%は、このようなレベルで修飾されたシリカ形成の開始において、単核若しくは複核の金属部分中であるか、又は1種若しくは複数のキレート配位子を有する単核若しくは複核の修飾剤金属錯体に由来する。
【0086】
典型的には、修飾剤金属は、担体表面に亘り均一に分布している。
【0087】
好ましくは、修飾されたシリカ又は触媒中に存在する修飾剤金属のレベルは、7.6×10-2mol/molシリカまで、より好ましくは、5.9×10-2mol/molシリカまで、最も好ましくは、3.5×10-2mol/molシリカまでであり得る。典型的には、このような金属のレベルは、0.067×10-2~7.3×10-2mol/molシリカ、より好ましくは、0.13×10-2~5.7×10-2mol/molシリカ、最も好ましくは、0.2×10-2~3.5×10-2mol/molシリカである。典型的には、存在する修飾剤金属のレベルは、少なくとも0.1×10-2mol/molシリカ、より好ましくは、少なくとも0.15×10-2mol/molシリカ、最も好ましくは、少なくとも0.25×10-2mol/molシリカである。
【0088】
好ましくは、修飾剤金属の%w/wレベルは、金属によって決まるが、修飾されたシリカ担体の20%w/wまで、より好ましくは、16%w/wまで、最も好ましくは、11%w/wまでであり得る。典型的には、修飾剤金属のレベルは、修飾されたシリカ担体の0.02~20%w/w、より好ましくは、0.1~15%w/w、最も好ましくは、0.15~10%w/wである。典型的には、修飾剤金属のレベルは、修飾されたシリカ担体の少なくとも0.02%w/w、例えば、0.25%w/w、例えば、0.4%w/w、より典型的には、少なくとも0.5%w/w、最も典型的には、少なくとも0.75%w/wである。
【0089】
触媒
典型的には、本発明の触媒は、任意の適切な形態であり得る。典型的な実施形態は、別個の粒子の形態である。典型的には、使用において、触媒は、触媒の固定層の形態である。代わりに、触媒は、触媒の流動層の形態であり得る。さらなる代替物は、モノリシック反応器である。
【0090】
触媒が固定層の形態で使用される場合、担持触媒は、典型的には、範囲1~10mmの最大及び最小寸法を有し、より好ましくは、2mm超、例えば、2.5mm若しくは3mm超の平均寸法を伴う、顆粒、凝集体又は形状化された単位、例えば、ペレット成形、又は押出によって調製される球、円筒、環、サドル、星、ポリローブへと形成されることが望ましい。触媒はまた、他の形態、例えば、示したのと同じ寸法の粉末又は小さなビーズにおいて効率的である。触媒が流動層の形態で使用される場合、触媒粒子が、10~500μm、好ましくは、20~200μm、最も好ましくは、20~100μmの範囲の最大及び最小寸法を有することが望ましい。
【0091】
触媒粒子の平均細孔容積は、0.1cm3/g未満であり得るが、一般に、流体、例えば、水の取込みによって測定すると、0.1~5cm3/gの範囲である。しかし、非常に低い多孔度を有するマイクロポーラス触媒は、これらが触媒に亘る試薬の移動を阻害し得るため最も好ましくなく、より好ましい平均細孔容積は、0.2~2.0cm3/gである。細孔容積は代わりに、77Kでの窒素吸着及び水銀ポロシメトリーの組合せによって測定することができる。Micromeritics TriStar表面積及び多孔度分析器を使用して、表面積測定の場合のように細孔容積を決定し、同じ標準を用いる。
【0092】
触媒プロセス
本発明の第7の態様によると、触媒の存在下で、及び任意選択でアルコールの存在下で、ホルムアルデヒド又はその適切な源とカルボン酸若しくはエステルとを接触させるステップを含む、エチレン性不飽和カルボン酸若しくはエステル、典型的には、α、βエチレン性不飽和カルボン酸若しくはエステルを生成する方法を提供し、ここで、触媒は、本明細書において定義した本発明の他の態様のいずれかによる。
【0093】
有利なことには、本明細書に定義されているような修飾されたシリカを含み、且つ触媒金属を含有する触媒は、触媒表面の焼結の低減、改善された選択性を有し、且つ高い触媒表面積を実現する、対応する酸若しくはエステルとメチレン源、例えば、ホルムアルデヒドとの縮合による、α、βエチレン性不飽和カルボン酸若しくはエステルの生成のための著しく効率的な触媒であることがまた見出されてきた。修飾されたシリカ担体が触媒金属による処理の前にか焼されていないとき、特に、増進された特性が見出される。さらに、吸着によって担体上への修飾剤金属を組み込む特定の金属錯体の使用は、単核若しくは複核の修飾剤金属部分のより分散した分布を実現する。
【0094】
用語「その適切な源」とは、本明細書においてホルムアルデヒドに関して、遊離ホルムアルデヒドが、反応条件下で源からin situで形成し得るか、又は源が反応条件下で遊離ホルムアルデヒドの同等物として作用し得、例えば、源がホルムアルデヒドと同じ反応中間体を形成し得、その結果、同等の反応が起こることを意味する。
【0095】
ホルムアルデヒドの適切な源は、式(I)
【化1】
の化合物でよく、式中、R
5及びR
6は、C
1~C
12炭化水素又はHから独立に選択され、Xは、Oであり、nは、1~100の整数であり、mは、1である。
【0096】
典型的には、R5及びR6は、本明細書に定義されているようなC1~C12アルキル、アルケニル若しくはアリール、又はH、より適切には、C1~C10アルキル、又はH、最も適切には、C1~C6アルキル又はH、特に、メチル又はHから独立に選択される。典型的には、nは、1~10、より適切には、1~5、特に、1~3の整数である。
【0097】
しかし、トリオキサンを含めたホルムアルデヒドの他の源を使用し得る。
【0098】
したがって、ホルムアルデヒドの適切な源はまた、ホルムアルデヒドの源を提供し得る任意の平衡組成物を含む。このような例は、これらに限定されないが、ジメトキシメタン、トリオキサン、ポリオキシメチレンR1-O-(CH2-O)i-R2(式中、R1及び/又はR2は、アルキル基又は水素であり、i=1~100である)、パラホルムアルデヒド、ホルマリン(ホルムアルデヒド、メタノール、水)、並びに他の平衡組成物、例えば、ホルムアルデヒド、メタノール及びプロピオン酸メチルの混合物を含む。
【0099】
ポリオキシメチレンは、ホルムアルデヒド及びメタノールの高級ホルマール又はヘミホルマールCH3-O-(CH2-O)i-CH3(「ホルマール-i」)又はCH3-O-(CH2-O)i-H(「ヘミホルマール-i」)(式中、i=1~100であり、適切には、1~5、特に、1~3である)、或いは少なくとも1個の非メチル末端基を有する他のポリオキシメチレンである。したがって、ホルムアルデヒドの源はまた、式R31-O-(CH2-O-)iR32のポリオキシメチレンであり得、式中、R31及びR32は、同じ又は異なる基でよく、少なくとも1つは、C1~C10アルキル基から選択され、例えば、R31=イソブチルであり、R32=メチルである。
【0100】
一般に、ホルムアルデヒドの適切な源は、ジメトキシメタン、ホルムアルデヒド及びメタノールの低級ヘミホルマールCH3-O-(CH2-O)i-H(式中、i=1~3である)、ホルマリン、又はホルムアルデヒド、メタノール及びプロピオン酸メチルを含む混合物から選択される。
【0101】
典型的には、ホルマリンという用語は、25~65重量%:0.01~25重量%:25~70重量%の比のホルムアルデヒド:メタノール:水の混合物を意味する。より典型的には、ホルマリンという用語は、30~60重量%:0.03~20重量%:35~60重量%の比のホルムアルデヒド:メタノール:水の混合物を意味する。最も典型的には、ホルマリンという用語は、35~55重量%:0.05~18重量%:42~53重量%の比のホルムアルデヒド:メタノール:水の混合物を意味する。
【0102】
典型的には、ホルムアルデヒド、メタノール及びプロピオン酸メチルを含む混合物は、5重量%未満の水を含有する。より適切には、ホルムアルデヒド、メタノール及びプロピオン酸メチルを含む混合物は、1重量%未満の水を含有する。最も適切には、ホルムアルデヒド、メタノール及びプロピオン酸メチルを含む混合物は、0.1~0.5重量%の水を含有する。
【0103】
本発明の第8の態様によると、本発明の任意の態様による触媒の存在下で、及び任意選択でアルカノールの存在下で、式R
1-CH
2-COOR
3のアルカン酸若しくはエステルと、下記で定義するような式(I)のホルムアルデヒド又はホルムアルデヒドの適切な源
【化2】
(式中、R5は、メチルであり、R6は、Hであり;
Xは、Oであり;
mは、1であり;
nは、1~20の任意の値である)、又はこれらの任意の混合物とを接触させることを含む、エチレン性不飽和酸若しくはエステルを調製するための方法を提供し;
式中、R1は、水素、又は1~12個、より適切には、1~8個、最も適切には、1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり、R3はまた、独立に、水素、又は1~12個、より適切には、1~8個、最も適切には、1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり得る。
【0104】
したがって、本発明による触媒を生成することは、エチレン性不飽和カルボン酸を形成させる、メチレン源、例えば、ホルムアルデヒドとカルボン酸又はアルキルエステル、例えば、プロピオン酸メチルとの縮合のための選択性において驚くべき改善を可能とすることを本発明者は発見した。さらに、縮合反応の間の触媒表面の焼結の速度は、相当に及び驚くほど低減する。
【0105】
したがって、そのために本発明の触媒が特に有利であることが見出されてきた1つの特定の方法は、MMAを生成する、メタノールの存在下でのホルムアルデヒドとプロピオン酸メチルとの縮合である。
【0106】
MMAの生成の場合、触媒は典型的には、ホルムアルデヒド、メタノール及びプロピオン酸メチルを含む混合物と接触する。
【0107】
本発明の第7又は第8の態様の方法は、アクリル酸及びアルクアクリル酸並びにそれらのアルキルエステル、並びにまたメチレン置換ラクトンの生成に特に適している。適切なメチレン置換ラクトンは、それぞれ、バレロラクトン及びブチロラクトンからの2-メチレンバレロラクトン及び2-メチレンブチロラクトンを含む。適切な(アルク)アクリル酸及びそれらのエステルは、典型的には、触媒の存在下でのその対応するアルカン酸若しくはエステルとメチレン源、例えば、ホルムアルデヒドとの反応からの、適切には、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル又はアクリル酸ブチル、より適切には、それぞれ、プロパン酸又はプロピオン酸メチルからのメタクリル酸又は特に、メタクリル酸メチル(MMA)の生成からの、(C0~8アルク)アクリル酸又はアルキル(C0~8アルク)アクリレートである。したがって、メタクリル酸メチル又はメタクリル酸の生成において、式R1-CH2-COOR3の好ましいエステル若しくは酸は、それぞれ、プロピオン酸メチル若しくはプロピオン酸であり、好ましいアルカノールは、したがって、メタノールである。しかし、他のエチレン性不飽和酸若しくはエステルの生成において、好ましいアルカノール若しくは酸は異なることが理解されよう。
【0108】
本発明の反応は、バッチ反応、セミバッチ反応又は連続的反応であり得る。
【0109】
本発明の第7又は第8の態様の方法における温度及びゲージ圧の典型的な条件は、100℃~400℃、より好ましくは、200℃~375℃、最も好ましくは、275℃~360℃;及び/又は、0.001MPa~1MPa、より好ましくは、0.03MPa~0.5MPa、最も好ましくは、0.03MPa~0.3MPaである。触媒の存在下での反応物についての典型的な滞留時間は、0.1~300秒、より好ましくは、1~100秒、最も好ましくは、2~50秒、特に、3~30秒である。
【0110】
本発明における生成物の生成のプロセスにおいて使用される触媒の量は、必ずしも重大ではなく、その中において触媒が用いられるこのプロセスの実用性によって決定される。しかし、触媒の量は一般に、生成物の最適な選択性及び収率、並びに操作の許容される温度をもたらすために選択される。それにも関わらず、触媒の最小量は、反応物の効率的な触媒表面の接触をもたらすように十分であるべきであることを当業者は認識する。さらに、反応物に対する触媒の量への上限は実際には存在しないが、実際にはこれは必要とされる接触時間及び/又は経済上の考慮がまた支配し得ることを当業者は認識する。
【0111】
本発明の第7又は第8の態様の方法における試薬の相対量は、広範な限度内で変化することができるが、一般に、ホルムアルデヒド又はその適切な源とカルボン酸若しくはエステルのモル比は、20:1~1:20、より適切には、5:1~1:15の範囲内である。最も好ましい比は、ホルムアルデヒドの形態、及びホルムアルデヒドがホルムアルデヒド種から遊離する触媒の能力によって決まる。このように、高度に反応性のホルムアルデヒド物質(ここで、R31O-(CH2-O)iR32中のR31及びR32の1つ又は両方は、Hである)は、相対的に低い比を必要とし、典型的には、この場合、ホルムアルデヒド又はその適切な源とカルボン酸若しくはエステルのモル比は、1:1~1:9の範囲内である。R31及びR32のどちらも、Hでない場合、例えば、CH3O-CH2-OCH3、又はトリオキサンにおけるように、より高い、典型的には、6:1~1:3が、最も好ましい。
【0112】
上記のように、ホルムアルデヒドの源によって、水がまた反応混合物中に存在し得る。ホルムアルデヒドの源によって、触媒作用の前にそこからの水のいくらか又は全てを除去することが必要であり得る。ホルムアルデヒドの源中のそれより低いレベルの水を維持することは、触媒効率及び/又はそれに続く生成物の精製に有利であり得る。反応器中の10モル%未満、より適切には、5モル%未満、最も適切には、2モル%未満での水が好ましい。
【0113】
アルコールと酸若しくはエステルのモル比は典型的には、20:1~1:20、好ましくは、10:1~1:10、最も好ましくは、5:1~1:5、例えば、1:1.5の範囲内である。しかし、最も好ましい比は、反応物中の触媒に供給される水の量、及び反応によって生成される量によって決まり、それゆえ、反応におけるアルコールと水全体の好ましいモル比は、少なくとも1:1、より好ましくは、少なくとも2:1である。
【0114】
第7又は第8の態様の試薬は、独立に又は従前の混合の後に反応器に供給し得、反応の方法は、連続的又はバッチであり得る。しかし、典型的には、連続的方法が使用される。
【0115】
典型的には、本発明の第7又は第8の態様の方法は、反応物が気相中にあるときに行われる。
【0116】
またさらなる態様において、本発明は、本明細書における関連性のある態様のいずれかによる触媒を最初に生成するステップを含む、本明細書における関連性のある態様のいずれかによるエチレン性不飽和カルボン酸若しくはエステルを生成する方法に及ぶ。
【0117】
定義
か焼されていない修飾されたシリカ担体とは、修飾ステップの後で、及び触媒金属による処理の前に、シリカ担体がか焼されていない(例えば、275℃又は325℃又は375℃又は425℃超での処理による)ことを意味し、修飾剤金属による修飾の前に、最初のシリカ担体は、か焼されていないことを必ずしも意味しない。同様に、か焼されていない触媒中間体とは、修飾されたシリカ担体が、その修飾以来か焼されていないことを意味し、最初の修飾されていないシリカ担体が、修飾剤金属による修飾の前にか焼されていないことを必ずしも意味しない。
【0118】
用語「含浸された」とは、本明細書において使用するように、溶液を作製するために溶媒に溶解した触媒金属の添加を含み、これは、溶液が前記キセロゲル又はエーロゲル内の空隙中へと取り込まれるように、キセロゲル又はエーロゲルに加えられる。この用語はまた、ヒドロゲル液体を適切な溶媒で置き換え、溶媒中の溶液として触媒金属を加え、拡散によるヒドロゲル中への物質移動をもたらすことに及ぶ。
【0119】
シリカ担体は、担体形成の当業者には公知の様々な技術のいずれかによって、単核及び/又は複核の修飾剤金属によって処理し得る。シリカ担体は、修飾剤金属をシリカ担体に亘り分散するための様式で、単核若しくは複核の修飾剤金属と接触し得る。典型的には、修飾剤金属は、シリカ担体の表面に亘り均一に分布し得る。好ましくは、修飾剤金属は、吸着によってシリカ担体に亘り分散している。
【0120】
用語「吸着」などは、修飾剤金属又は触媒金属に関して本明細書において使用するように、シリカ担体とのその相互作用による、任意選択で物理吸着による、しかし典型的には、化学吸着による、シリカ担体表面上へのその組込みを意味する。典型的には、シリカ担体への修飾剤の添加は、シリカ担体上へと金属カチオン源を吸着させ、金属錯体残基を形成し、担体を乾燥させ、金属錯体を金属酸化物部分へと変換させるステップが関与する。典型的にはしたがって、接触したシリカ担体に亘り修飾剤金属のランダムな分布が存在する。
【0121】
疑義を避けるために、全部で1個の金属原子を有する修飾剤金属部分は、単核であると考えられる。シリカネットワークにおいて、修飾剤金属部分は、シリカネットワークと会合しており、したがって、単核若しくは複核部分という用語は、修飾剤金属及びその直接取り巻く原子への言及であり、ネットワークのケイ素原子、又はネットワークと会合しているが、それにも関わらず別々の一般に会合していない部分の一部を形成する他の修飾剤金属原子への言及ではないことを認識されたい。
【0122】
本発明による修飾されたシリカ担体中の修飾剤金属及び修飾剤金属酸化物部分は、修飾剤金属に関し、ケイ素又はシリカには関しない。同様に、本明細書において修飾剤金属は、触媒金属と同じ金属ではない。
【0123】
特に逆の記載がない限り、修飾剤若しくは触媒金属又は触媒中の修飾剤若しくは触媒金属の量は、修飾剤若しくは触媒金属イオンに関し、取り巻く原子には関しない。
【0124】
触媒中の触媒金属のレベルは、モル、重量%又は別の方法であろうと、適当な試料採取及びこのような試料の平均をとることによって決定し得る。典型的には、特定の触媒バッチの5~10の試料を採取し、アルカリ金属レベルは、例えば、XRF、原子吸光分析、中性子活性化分析、イオン結合プラズマ質量分析法(ICPMS)分析又はイオン結合プラズマ原子発光分光器(ICPAES)によって決定及び平均する。
【0125】
触媒/担体中の特定のタイプの金属酸化物のレベルは、XRF、原子吸光分析、中性子活性化分析又はイオン結合プラズマ質量分析法(ICPMS)分析によって決定される。
【0126】
本発明の任意の態様による修飾されたシリカ担持触媒の典型的な平均表面積は、Micromeritics Tristar3000表面積及び多孔度分析器を使用したB.E.T.多点法によって測定するように、20~600m2/g、より好ましくは、30~450m2/g、最も好ましくは、35~350m2/gの範囲内である。機器の性能をチェックするために使用した参照材料は、30.6m2/g(+/-0.75m2/g)の表面積、品番004-16833-00を有するMicromeriticsによって供給されたカーボンブラック粉末であり得る。
【0127】
用語「アルキル」は、本明細書において使用されるとき、他に特定しない限り、C1~C12アルキルを意味し、メチル、エチル、エテニル、プロピル、プロペニルブチル、ブテニル、ペンチル、ペンテニル、ヘキシル、ヘキセニル及びヘプチル基を含み、典型的には、アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシル、より典型的には、メチルから選択される。他に特定しない限り、アルキル基は、十分な数の炭素原子が存在するとき、直鎖状又は分岐状、環状、非環状又は部分的環状/非環状であり得、非置換であるか、ハロ、シアノ、ニトロ、-OR19、-OC(O)R20、-C(O)R21、-C(O)OR22、-NR23R24、-C(O)NR25R26、-SR29、-C(O)SR30、-C(S)NR27R28、非置換若しくは置換アリール、又は非置換若しくは置換Hetから選択される1個若しくは複数の置換基で置換若しくは終端し得、式中、R19~R30は、ここで及び一般に本明細書においてそれぞれ独立に、水素、ハロ、非置換若しくは置換アリール、又は非置換若しくは置換アルキルを表すか、或いは、R21の場合は、ハロ、ニトロ、シアノ及びアミノを表し、且つ/又は1個若しくは複数(典型的には、4個未満)の酸素、硫黄、ケイ素原子によって、又はsilano若しくはジアルキルシルコン基、又はこれらの混合物によって中断されている。典型的には、アルキル基は、非置換、典型的には、直鎖状であり、典型的には、飽和している。
【0128】
用語「アルケニル」は、その中の少なくとも1個の炭素-炭素結合が不飽和であることを除いては、上記の「アルキル」として理解すべきであり、したがって、この用語は、C2~C12アルケニル基に関する。
【0129】
用語「アルク」などは、それとは反対の情報の非存在下で、「C0アルク」はアルキルで置換されていないことを意味することを除いて、「アルキル」の上記の定義に従うとみなすべきである。
【0130】
用語「アリール」は、本明細書において使用されるとき、5~10員、典型的には、5~8員の炭素環式芳香族又は偽芳香族基、例えば、フェニル、シクロペンタジエニル及びインデニルアニオン及びナフチルを含み、これらの基は、非置換であるか、或いは非置換若しくは置換アリール、アルキル(この基は、本明細書に定義されているように、それ自体が非置換であるか、又は置換若しくは終端し得る)、Het(この基は、本明細書に定義されているように、それ自体が非置換であるか、又は置換若しくは終端し得る)、ハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR23R24、C(O)NR25R26、SR29、C(O)SR30又はC(S)NR27R28(式中、R19~R30は、それぞれ独立に、水素、非置換若しくは置換アリール又はアルキル(このアルキル基は、本明細書に定義されているように、それ自体が非置換であるか、又は置換若しくは終端し得る)を表すか、或いは、R21の場合は、ハロ、ニトロ、シアノ又はアミノを表す)から選択される1個若しくは複数の置換基で置換されていてもよい。
【0131】
用語「ハロ」は、本明細書において使用されるとき、クロロ、ブロモ、ヨード又はフルオロ基、典型的には、クロロ又はフルオロを意味する。
【0132】
用語「Het」は、本明細書において使用されるとき、4~12員、典型的には、4~10員環系を含み、これらの環は、窒素、酸素、硫黄及びこれらの混合物から選択される1個若しくは複数のヘテロ原子を含有し、これらの環は、二重結合を含有しないか、1個若しくは複数の二重結合を含有するか、又は性質が非芳香族、部分的に芳香族若しくは全体的に芳香族であり得る。環系は、単環式、二環式又は縮合であり得る。本明細書において同定される各「Het」基は、非置換であるか、或いはハロ、シアノ、ニトロ、オキソ、アルキル(このアルキル基は、本明細書に定義されているように、それ自体が非置換であるか、又は置換若しくは終端し得る)、-OR19、-OC(O)R20、-C(O)R21、-C(O)OR22、-N(R23)R24、-C(O)N(R25)R26、-SR29、-C(O)SR30又は-C(S)N(R27)R28(式中、R19~R30は、それぞれ独立に、水素、非置換若しくは置換アリール又はアルキル(このアルキル基は、本明細書に定義されているように、それ自体が非置換であるか、又は置換若しくは終端し得る)を表すか、或いは、R21の場合は、ハロ、ニトロ、アミノ又はシアノを表す)から選択される1個若しくは複数の置換基で置換されていてもよい。このように、用語「Het」は、任意選択で置換されているアゼチジニル、ピロリジニル、イミダゾリル、インドリル、フラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、オキサトリアゾリル、チアトリアゾリル、ピリダジニル、モルホリニル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリニル、イソキノリニル、ピペリジニル、ピラゾリル及びピペラジニルなどの基を含む。Hetにおける置換は、Het環の炭素原子、又は適切な場合には、ヘテロ原子の1つ若しくは複数においてでよい。
【0133】
「Het」基はまた、Nオキシドの形態であり得る。
【0134】
本発明の第7及び第8の態様の触媒反応における使用のための適切な任意選択のアルコールは、本明細書に定義されているようなアルキル、アリール、Het、ハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR23R24、C(O)NR25R26、C(S)NR27R28、SR29又はC(O)SR30から選択される1個若しくは複数の置換基で任意選択で置換し得る、アリールアルコールを含めたC1~C30アルカノールから選択し得る。高度に好ましいアルカノールは、C1~C8アルカノール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソ-プロパノール、イソ-ブタノール、t-ブチルアルコール、フェノール、n-ブタノール及びクロロカプリルアルコール、特に、メタノールである。モノアルカノールが最も好ましいが、典型的には、ジオクタオール、例えば、ジオール、トリオール、テトラオール及び糖から選択されるポリアルカノールをまた利用し得る。典型的には、このようなポリアルカノールは、1,2-エタンジオール、1,3-プロパンジオール、グリセロール、1,2,4ブタントリオール、2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、1,2,6トリヒドロキシヘキサン、ペンタエリスリトール、1,1,1トリ(ヒドロキシメチル)エタン、ナンノース、ソルベース、ガラクトース及び他の糖から選択される。好ましい糖は、スクロース、フルクトース及びグルコースを含む。特に好ましいアルカノールは、メタノール及びエタノールである。最も好ましいアルカノールは、メタノールである。アルコールの量は、重大ではない。一般に、エステル化される基質の量を超える量が使用される。このように、アルコールは、また反応溶媒としての役割を果たし得るが、必要に応じて、別々又はさらなる溶媒をまた使用し得る。
【0135】
用語「ゲル」は、本明細書において使用するように、また当業者には公知であるが、疑わしい場合には、その中を流体が分散している固体ネットワークと見なし得る。一般に、ゲルは、その中で流体が分散しているポリマーネットワークである。共ゲルは、複数の最初の化合物/部分がポリマーネットワーク、通常、シリカ及び金属酸化物又は塩中に組み込まれることを示すために使用される用語である。したがって、本明細書において共ゲル化は、共ゲルの形成を意味する。
【0136】
このように、ゲルは、固定しているゾルである。ヒドロゲルは、このように、流体が水である本明細書に定義されているようなゲルである。キセロゲルは、乾燥されて、流体が除去されたゲルである。エーロゲルは、流体が気体によって置き換えられており、したがって、キセロゲルと同じに縮む傾向がないゲルである。
【0137】
開始という用語は本明細書において、修飾されたシリカの形成の始まりを意味する。
【0138】
用語「部分」は、修飾剤金属に関して本明細書において使用するように、修飾された担体上の修飾剤金属の形態を言及するために使用される。吸着された修飾剤金属は一般にネットワークの一部を形成するが、修飾剤金属は、金属錯体又はオキシドとしてであろうと、及び後者の場合は、か焼の前又は後であろうと、シリカ基質上の別個の残基の形態である。単核という用語は、単一の金属中心を有することを意味し、シリカ上の部分の場合、単核残基の形態を有することを意味する。複核は、それに合うように解釈すべきである。
【0139】
修飾剤金属の%は、このような原子の総数当たりの金属原子の数を指すため、本明細書において単位を有さない。部分は、非単核若しくは複核クラスターの形態をとり得るが、これらのクラスターはまた修飾剤金属原子で構成されていることを認識されたい。
【0140】
用語「表面」は、シリカ担体に関して本明細書において使用するように、他に断りのない限り、シリカの細孔内、より特定すると、そのマクロ細孔及びメソ細孔内のシリカの表面を含む。
【0141】
本発明の実施形態は、添付の実施例を参照することによりこれから定義する。
【実施例】
【0142】
実験
シリカ担体の説明
実施例1(調製的)
Fuji Silysia CARiACT Q10シリカを、160℃にて16時間実験室オーブン中で乾燥させ、その後、これをオーブンから取り出し、デシケーター中に貯蔵した密封したフラスコ中で室温へと冷却した。このシリカは、窒素吸着/脱離等温線分析(Micromeritics Tristar II)によって決定するように、333m2/gの表面積、1.0ml/gの細孔容積、及び10nmの平均細孔直径を有した。このシリカは、2.0~4.0mmの直径範囲の球状のシリカビーズから主に構成される。
【0143】
シリカ担体のZr修飾
実施例2(2.7重量%のZr、比較例)
1.671gのZr(acac)4(97%、Sigma Aldrich)を、20mlのMeOH(99%、Sigma Aldrich)に溶解した。別々のフラスコ中で、実施例1からの10gのシリカを秤量した。次いで、秤量したシリカを、撹拌しながらZr(acac)4溶液に加えた。シリカの細孔容積が溶媒によって完全に占有され、効果的にスラリーを形成するまで撹拌を続けた。細孔を満たすことが完了すると、Zr-修飾されたシリカを、定期的に撹拌をしながら密封したフラスコ中で16時間静置した。この時間の後に、多孔質外溶液を濾過によって除去した。これに続いて乾燥ステップを行い、ここで、多孔質内の有機溶媒を、湿ったZr-修飾されたシリカ上を室温にて窒素ガス流を通過させることによって除去した。代わりに、多孔質内の溶媒は、ロータリーエバポレーター上で減圧にて除去した。溶媒の全てが除去されると、Zr-修飾されたシリカ担体を、5℃/分の加熱勾配速度及び5時間の最終保持を伴う空気の流れ下で500℃にて加熱炉中でか焼した。冷却によって、これは、89%のZr使用効率を伴ってZrグラフト化シリカ担体を生じさせた。Zr-修飾された担体上のZr充填(重量%)は、粉末エネルギー分散型X線蛍光分析(Oxford Instruments X-Supreme8000)によって決定した。
【0144】
実施例3(2.7重量%のZr)
乾燥ステップが完了した後、110~120℃での実験室オーブンセットにおけるさらなる16時間の乾燥ステップを行ったことを除いては、実施例2において記載したような担体修飾を行った。さらに、500℃での高温か焼ステップは行わなかった。これは、89%のZr使用効率を伴ってZrグラフト化シリカ担体を生じさせた。(注:Zr充填は、Zrグラフト化材料の試料の500℃での酸化的か焼の後で決定した)。
【0145】
修飾された担体のCs修飾
実施例4(11.3重量%のCs、2.4重量%のZr、比較例)
1.80gのCsOH・H2O(99.5%、Sigma Aldrich)をグローブボックスにおいて量り分け、20mlの9:1v/vのMeOH:H2O溶媒混合物に溶解した。実施例2からの10gの修飾されたシリカを、撹拌しながらCsOH溶液に加えた。撹拌をさらに15分間続け、その後、試料を定期的に撹拌しながら密封したフラスコ中に16時間静置した。この時間の後で、多孔質外溶液を濾過によって除去した。これに続いて乾燥ステップを行い、ここで、多孔質内の溶媒を、湿ったCs/Zr-修飾されたシリカ上で室温にて窒素ガス流を通過させることによって除去した。代わりに、多孔質内の溶媒は、ロータリーエバポレーター上で減圧にて除去した。これに続いて、触媒ビーズを110~120℃にて乾燥炉中に入れ、16時間乾燥させた。冷却によって、これは、90%のCs使用効率を伴ってCs/Zr/SiO2触媒を生じさせた。触媒上のCs充填(重量%)は、粉末エネルギー分散型X線蛍光分析(Oxford Instruments X-Supreme8000)によって決定した。
【0146】
実施例5(11.0重量%のCs、2.4重量%のZr、比較例)
触媒は、1.75gのCsOH・H2Oを使用したことを除いては実施例4において記載したように調製した。さらに、120℃での乾燥ステップの後に、5℃/分の加熱勾配速度及び5時間の最終保持を伴う空気の流れ下で触媒を加熱炉中で700℃にてか焼した。冷却によって、これは、Cs/Zr/SiO2触媒を生じさせた。
【0147】
実施例6(11.3重量%のCs、2.4重量%のZr)
触媒は、10.5gの実施例3からのシリカを使用したことを除いては実施例4において記載したように調製した。さらに、120℃での乾燥ステップの後に、5℃/分の加熱勾配速度及び5時間の最終保持を伴う空気の流れ下で触媒を加熱炉中で700℃にてか焼した。冷却によって、これは、Cs/Zr/SiO2触媒を生じさせた。
【0148】
実施例7(10.6重量%のCs、2.4重量%のZr)
触媒は、10.5gの実施例3からのシリカを使用し、9:1v/vのMeOH:H2Oの代わりに水を溶媒として使用したことを除いては、実施例4において記載したように調製した。さらに、120℃での乾燥ステップの後に、5℃/分の加熱勾配速度及び5時間の最終保持を伴う空気の流れ下で触媒を加熱炉中で400℃にてか焼した。冷却によって、これは、Cs/Zr/SiO2触媒を生じさせた。
【0149】
実施例8(10.6重量%のCs、2.4重量%のZr)
触媒は、最終のか焼を600℃にて行ったことを除いては、実施例7において記載したように調製した。
【0150】
実施例9(10.6重量%のCs、2.4重量%のZr)
触媒は、最終のか焼を700℃にて行ったことを除いては、実施例7において記載したように調製した。
【0151】
実施例10(触媒性能試験)
実施例4~実施例9からの触媒を、実験室規模のマイクロリアクター中のプロピオン酸メチル及びホルムアルデヒドの反応について試験した。このために、3gの触媒を、10mmのチューブ内径を有する固定床反応器中に充填した。反応器を330℃に加熱し、0.032ml/分でGilsonポンプによって供給された気化器からの、70重量%のプロピオン酸メチル、20重量%のメタノール、6重量%の水及び4重量%のホルムアルデヒドからなる気化した流れを供給することによって事前調整を行った。この事前調整を一晩続けた。事前調整の後、75.6重量%のプロピオン酸メチル、18.1重量%のメタノール、5.7重量%のホルムアルデヒド及び0.6重量%の水からなる供給流を、330℃にて設定した気化器へとGilsonポンプによってポンピングし、その後、触媒を含有する330℃に設定した加熱した反応器に供給した。反応器出口蒸気を冷却し、変化する蒸気/触媒の接触時間での変換を得るために、5つの異なる液体供給速度(0.64~0.032ml/分)で集めた試料と共に凝縮した。液体供給物及び凝縮した反応器前液体生成物を、DB1701カラムを有するShimadzu2010ガスクロマトグラフによって分析した。試料の組成を、それぞれのクロマトグラムから決定し、変化する接触時間における収率及び選択性を決定した。活性は、供給されたプロピオン酸メチル上で12%MMA+MAA収率を得るのに必要とされる接触時間(秒)の逆数として定義し、MMA+MAA収率グラフに対する接触時間への内挿によって決定した。次いで、この内挿した接触時間を使用して、12%MMA+MAA収率においてMMA+MAA選択性を得た。
【0152】
【0153】
実施例11(触媒安定性の決定)
最初の触媒安定性は、実施例5による700℃でのか焼処理の後に、表面積(窒素吸着/脱離等温線分析、Micromeritics Tristar II)の測定によってアセスメントした。これは、触媒に与えられた表面安定化をアセスメントする手段を提供した。
【0154】
【0155】
実施例12(加速エイジング試験)
触媒焼結耐性を、加速エイジング試験においてアセスメントした。このために、1gの触媒を、U字管ステンレス鋼反応器中に充填し、オーブン中に充填した。オーブンを385℃に加熱し、窒素流(10ml/分)を92℃に加熱した水を含有する飽和気化器に通過させた。これは、0.75バールの水分圧を有する供給流が385℃に加熱した触媒の上を通過することを確実にした。定期的に、触媒試料の表面積を、窒素吸着/脱離等温線分析(Micromeritics Tristar II)を使用してex-situで決定した。
【0156】
【0157】
本明細書と関連して本明細書と同時に又は前に出願し、本明細書と共に公衆の便覧のために開かれている、全ての論文及び文献に対して注意が向けられ、全てのこのような論文及び文献の内容は、参照により本明細書中に組み込まれている。
【0158】
(任意の添付の特許請求の範囲、要約及び図面を含めた)本明細書において開示されているフィーチャの全て、及び/又はこのように開示された任意の方法若しくはプロセスのステップの全ては、このようなフィーチャ及び/又はステップの少なくともいくつかが相互排他的である組合せを除いて、任意の組合せで合わせ得る。
【0159】
(任意の添付の特許請求の範囲、要約及び図面を含めた)本明細書において開示した各フィーチャは、明示的に逆の記載がない限り、同じ、同等又は同様の目的を果たす代替のフィーチャによって置き換え得る。このように、明示的に逆の記載がない限り、開示されている各フィーチャは、同等又は同様のフィーチャの一般的系列の単に一例である。
【0160】
本発明は、上記の実施形態の詳細に制限されない。本発明は、(任意の添付の特許請求の範囲、要約及び図面を含めた)本明細書において開示されている好ましい、典型的、若しくは任意選択の発明のフィーチャの任意の新規なもの、又は任意の新規な組合せに、或いはこのように開示されている任意の方法又はプロセスの好ましい、典型的な若しくは任意選択の発明のステップの任意の新規なもの、又は任意の新規な組合せに及ぶ。