IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日産化学工業株式会社の特許一覧

特許7730456剥離剤組成物、積層体、積層体の製造方法、及び半導体基板の製造方法
<>
  • 特許-剥離剤組成物、積層体、積層体の製造方法、及び半導体基板の製造方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-20
(45)【発行日】2025-08-28
(54)【発明の名称】剥離剤組成物、積層体、積層体の製造方法、及び半導体基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20250821BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20250821BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20250821BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20250821BHJP
   C09J 183/07 20060101ALI20250821BHJP
【FI】
H01L21/304 622J
B32B27/00 101
C09J7/30
C09J201/00
C09J183/07
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021045689
(22)【出願日】2021-03-19
(65)【公開番号】P2022144612
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2024-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100207240
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 喜弘
(72)【発明者】
【氏名】柳井 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】新城 徹也
(72)【発明者】
【氏名】臼井 友輝
(72)【発明者】
【氏名】奥野 貴久
【審査官】柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/212008(WO,A1)
【文献】特開2011-132524(JP,A)
【文献】特開2018-122578(JP,A)
【文献】特開2016-072612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B32B 27/00
C09J 7/30
C09J 201/00
C09J 183/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、
半導体基板と、
前記支持基板及び前記半導体基板の間に介在し、前記半導体基板に接する剥離層と、
前記支持基板及び前記剥離層の間に介在する接着層と、
を有する積層体であって、
前記剥離層が、重量平均分子量が22,000~68,000のポリオルガノシロキサンを含有する剥離剤組成物から形成される層である、積層体。
【請求項2】
前記ポリオルガノシロキサンが、ポリジメチルシロキサンである、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記接着層が、接着剤組成物から形成される層である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記接着剤組成物が、硬化する成分(A)を含有する請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記成分(A)が、ヒドロシリル化反応によって硬化する成分である請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
前記成分(A)が、
ケイ素原子に結合した炭素数2~40のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサン(a1)と、
Si-H基を有するポリオルガノシロキサン(a2)と、
白金族金属系触媒(A2)と、
を含有する、請求項4又は5に記載の積層体。
【請求項7】
前記剥離層及び前記接着層の間に介在する無機材料層を有する、請求項1~6のいずれかに記載の積層体。
【請求項8】
前記無機材料層が、有機ケイ素化合物をプラズマ重合して得られる層である、請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
前記半導体基板が280℃以上に加熱される処理に用いられる、請求項1~8のいずれかに記載の積層体。
【請求項10】
請求項1~8のいずれかに記載の積層体における前記半導体基板が加工される工程と、
前記支持基板と加工された前記半導体基板とが離される工程と、
を含む、半導体基板の製造方法。
【請求項11】
前記加工される工程が、前記半導体基板の前記剥離層が接する面と反対側の面が研磨され、前記半導体基板が薄くされる処理を含む、請求項10に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項12】
前記加工される工程が、前記半導体基板が280℃以上に加熱される処理を含む、請求項10又は11に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項13】
請求項1~9のいずれかに記載の積層体を製造する、積層体の製造方法であって、
前記接着層を与える接着剤塗布層が形成される工程と、
前記支持基板及び前記半導体基板が前記剥離層及び前記接着剤塗布層を介在して接した状態で、前記接着剤塗布層が加熱され、前記接着層が形成される工程と、
を含む、積層体の製造方法。
【請求項14】
支持基板と、半導体基板と、前記支持基板及び前記半導体基板の間に介在し、前記半導体基板に接する剥離層と、前記支持基板及び前記剥離層の間に介在する接着層と、を有する積層体の前記剥離層であり、且つ前記積層体の前記半導体基板が加工される際に、280℃以上に加熱される前記半導体基板に接する前記剥離層の形成に用いられる剥離剤組成物であって、
重量平均分子量が22,000~68,000のポリオルガノシロキサンを含有する、剥離剤組成物。
【請求項15】
前記ポリオルガノシロキサンが、ポリジメチルシロキサンである、請求項14に記載の剥離剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離剤組成物、積層体、積層体の製造方法、及び半導体基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来2次元的な平面方向に集積してきた半導体ウエハーは、より一層の集積化を目的に平面を更に3次元方向にも集積(積層)する半導体集積技術が求められている。この3次元積層はシリコン貫通電極(TSV:through silicon via)によって結線しながら多層に集積していく技術である。多層に集積する際に、集積されるそれぞれのウエハーは形成された回路面とは反対側(即ち、裏面)を研磨によって薄化し、薄化された半導体ウエハーを積層する。
薄化前の半導体ウエハー(ここでは単にウエハーとも呼ぶ)は、研磨装置で研磨するために支持体に接着される。
その際の接着は研磨後に容易に剥離されなければならないため、仮接着と呼ばれる。この仮接着は支持体から容易に取り外されなければならず、取り外しに大きな力を加えると薄化された半導体ウエハーは、切断されたり変形することがあり、その様なことが生じない様に、容易に取り外される。しかし、半導体ウエハーの裏面研磨時に研磨応力によって外れたりずれたりすることは好ましくない。従って、仮接着に求められる性能は研磨時の応力に耐え、研磨後に容易に取り外されることである。
例えば研磨時の平面方向に対して高い応力(強い接着力)を持ち、取り外し時の縦方向に対して低い応力(弱い接着力)を有する性能が求められる。
【0003】
この様な接着プロセスとして、半導体ウエハーであるウエハー(1)と支持体である支持層(6)との間に、ウエハー(1)側から、シリコーン油層と、プラズマポリマー層である分離層(4)と、部分的に硬化された又は硬化性エラストマー材料の層(5)とを有し、エラストマー材料が完全に硬化された後の支持層システムと分離層(4)との間の接着結合がウエハー(1)と分離層(4)との間の接着結合より大きい、ウエハー支持構造体が提案されている(例えば、特許文献1の実施例参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5335443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
薄化後のウエハーは支持体と分離される前に200℃を超える温度に加熱されることがある。加熱温度はウエハーに施される処理によって異なり、場合によっては280℃以上の高温になることがある。
しかし、半導体基板であるウエハーが高温に加熱された際には、その後に半導体基板と支持基板とをそれらの間に介在する剥離層を利用して分離させようとしても、分離に要する力は加熱温度が低い場合よりも強い力が必要になり、場合によっては、薄化後の半導体基板が割れてしまうほどに強い力が必要になることを、本発明者らは知見した。
【0006】
そこで、本発明は、半導体基板が高温に曝された後でも、半導体基板と支持基板との仮接着時には剥離せず、半導体基板と支持基板とを剥離しようとしたときには容易に剥離することができる積層体、当該積層体を用いた半導体基板の製造方法、当該積層体の製造方法、及び当該積層体に用いる剥離剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記の課題を解決する為、鋭意検討を行った結果、前記の課題を解決できることを見出し、以下の要旨を有する本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1] 支持基板と、
半導体基板と、
前記支持基板及び前記半導体基板の間に介在し、前記半導体基板に接する剥離層と、
前記支持基板及び前記剥離層の間に介在する接着層と、
を有する積層体であって、
前記剥離層が、重量平均分子量が22,000~68,000のポリオルガノシロキサンを含有する剥離剤組成物から形成される層である、積層体。
[2] 前記ポリオルガノシロキサンが、ポリジメチルシロキサンである、[1]に記載の積層体。
[3] 前記接着層が、接着剤組成物から形成される層である、[1]又は[2]に記載の積層体。
[4] 前記接着剤組成物が、硬化する成分(A)を含有する[3]に記載の積層体。
[5] 前記成分(A)が、ヒドロシリル化反応によって硬化する成分である[4]に記載の積層体。
[6] 前記成分(A)が、
ケイ素原子に結合した炭素数2~40のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサン(a1)と、
Si-H基を有するポリオルガノシロキサン(a2)と、
白金族金属系触媒(A2)と、
を含有する、[4]又は[5]に記載の積層体。
[7] 前記剥離層及び前記接着層の間に介在する無機材料層を有する、[1]~[6]のいずれかに記載の積層体。
[8] 前記無機材料層が、有機ケイ素化合物をプラズマ重合して得られる層である、[7]に記載の積層体。
[9] 前記半導体基板が280℃以上に加熱される処理に用いられる、[1]~[8]のいずれかに記載の積層体。
[10] [1]~[8]のいずれかに記載の積層体における前記半導体基板が加工される工程と、
前記支持基板と加工された前記半導体基板とが離される工程と、
を含む、半導体基板の製造方法。
[11] 前記加工される工程が、前記半導体基板の前記剥離層が接する面と反対側の面が研磨され、前記半導体基板が薄くされる処理を含む、[10]に記載の半導体基板の製造方法。
[12] 前記加工される工程が、前記半導体基板が280℃以上に加熱される処理を含む、[10]又は[11]に記載の半導体基板の製造方法。
[13] [1]~[9]のいずれかに記載の積層体を製造する、積層体の製造方法であって、
前記接着層を与える接着剤塗布層が形成される工程と、
前記支持基板及び前記半導体基板が前記剥離層及び前記接着剤塗布層を介在して接した状態で、前記接着剤塗布層が加熱され、前記接着層が形成される工程と、
を含む、積層体の製造方法。
[14] 280℃以上に加熱される半導体基板に接する剥離層の形成に用いられる剥離剤組成物であって、
重量平均分子量が22,000~68,000のポリオルガノシロキサンを含有する、剥離剤組成物。
[15] 前記ポリオルガノシロキサンが、ポリジメチルシロキサンである、[14]に記載の剥離剤組成物。
[16] 支持基板と、前記半導体基板と、前記支持基板及び前記半導体基板の間に介在し、前記半導体基板に接する前記剥離層と、前記支持基板及び前記剥離層の間に介在する接着層と、を有する積層体の前記剥離層であり、且つ前記積層体の前記半導体基板が加工される際に、280℃以上に加熱される前記半導体基板に接する前記剥離層の形成に用いられる、[14]又は[15]に記載の剥離剤組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半導体基板が高温に曝された後でも、半導体基板と支持基板との仮接着時には剥離せず、半導体基板と支持基板とを剥離しようとしたときには容易に剥離することができる積層体、当該積層体を用いた半導体基板の製造方法、当該積層体の製造方法、及び当該積層体に用いる剥離剤組成物することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】積層体の一例の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(積層体)
本発明の積層体は、支持基板と、半導体基板と、剥離層と、接着層とを有し、必要に応じて、無機材料層を有する。
剥離層は、支持基板及び半導体基板の間に介在し、半導体基板に接する。
接着層は、支持基板及び剥離層の間に介在する。
【0012】
<支持基板>
支持基板としては、半導体基板が加工される際に、半導体基板を支持できる部材であれば、特に限定されないが、例えば、ガラス製支持基板、シリコン製支持基板などが挙げられる。
【0013】
支持基板の形状としては、特に限定されないが、例えば、円盤状が挙げられる。なお、円盤状の支持基板は、その面の形状が完全な円形である必要はなく、例えば、支持基板の外周は、オリエンテーション・フラットと呼ばれる直線部を有していてもよいし、ノッチと呼ばれる切込みを有していてもよい。
円盤状の支持基板の厚さは、半導体基板の大きさなどに応じて適宜定めればよく、特に限定されないが、例えば、500~1,000μmである。
円盤状の支持基板の直径は、半導体基板の大きさなどに応じて適宜定めればよく、特に限定されないが、例えば、100~1,000mmである。
【0014】
支持基板の一例は、直径300mm、厚さ700μmm程度のガラスウエハーやシリコンウエハーである。
【0015】
<半導体基板>
半導体基板全体を構成する主な材質としては、この種の用途に用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、シリコン、シリコンカーバイド、化合物半導体などが挙げられる。
半導体基板の形状は、特に限定されないが、例えば、円盤状である。なお、円盤状の半導体基板は、その面の形状が完全な円形である必要はなく、例えば、半導体基板の外周は、オリエンテーション・フラットと呼ばれる直線部を有していてもよいし、ノッチと呼ばれる切込みを有していてもよい。
円盤状の半導体基板の厚さとしては、半導体基板の使用目的などに応じて適宜定めればよく、特に限定されないが、例えば、500~1,000μmである。
円盤状の半導体基板の直径としては、半導体基板の使用目的などに応じて適宜定めればよく、特に限定されないが、例えば、100~1,000mmである。
【0016】
半導体基板は、バンプを有していてもよい。バンプとは、突起状の端子である。
積層体において、半導体基板がバンプを有する場合、半導体基板は、支持基板側にバンプを有する。
半導体基板において、バンプは、通常、回路が形成された面上に形成されている。回路は、単層であってもよし、多層であってもよい。回路の形状としては特に制限されない。
半導体基板において、バンプを有する面と反対側の面(裏面)は、加工に供される面である。
半導体基板が有するバンプの材質、大きさ、形状、構造、密度としては、特に限定されない。
バンプとしては、例えば、ボールバンプ、印刷バンプ、スタッドバンプ、めっきバンプなどが挙げられる。
通常、バンプ高さ1~200μm程度、バンプ径1~200μm、バンプピッチ1~500μmという条件からバンプの高さ、径及びピッチは適宜決定される。
バンプの材質としては、例えば、低融点はんだ、高融点はんだ、スズ、インジウム、金、銀、銅などが挙げられる。バンプは、単一の成分のみで構成されていてもよいし、複数の成分から構成されていてもよい。より具体的には、SnAgバンプ、SnBiバンプ、Snバンプ、AuSnバンプ等のSnを主体とした合金めっき等が挙げられる。
また、バンプは、これらの成分の少なくともいずれかからなる金属層を含む積層構造を有してもよい。
【0017】
半導体基板の一例は、直径300mm、厚さ770μm程度のシリコンウエハーである。
【0018】
<剥離層>
剥離層は、支持基板及び半導体基板の間に介在し、半導体基板に接する。
剥離層は、剥離剤組成物から形成される層である。
【0019】
<<剥離剤組成物>>
剥離剤組成物は、重量平均分子量が22,000~68,000のポリオルガノシロキサンを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
すなわち、剥離剤組成物が含むポリオルガノシロキサンの重量平均分子量は、22,000~68,000である。
なお、剥離層はポリオルガノシロキサンのみから構成されていてもよいし、その他の成分を含有していてもよい。例えば、剥離剤組成物がポリオルガノシロキサン及び揮発成分のみから構成される場合、通常、剥離層を形成する際の加熱によって揮発成分が揮発するため、当該剥離剤組成物から形成される剥離層はポリオルガノシロキサンのみを含有する。
【0020】
剥離剤組成物に含有されるポリオルガノシロキサンの重量平均分子量が22,000以上であることによって、積層体の半導体基板を加工する際などに半導体基板が高温(例えば、280℃以上)に曝された後でも、積層体の半導体基板と支持基板とを剥離装置等によって剥離しようとした際に容易に剥離することができる。他方、剥離剤組成物が含有するポリオルガノシロキサンの重量平均分子量が68,000以下であることによって、積層体の半導体基板を加工する際などに半導体基板が高温に曝された後でも、半導体基板と支持基板との仮接着状態を維持でき、積層体の半導体基板と支持基板とを剥離装置等によって剥離しようとするまでは、半導体基板と支持基板とが剥離しにくい状態を維持できる。
剥離剤組成物に含有されるポリオルガノシロキサンの重量平均分子量が22,000未満であると、積層体の半導体基板を加工する際などに半導体基板が高温に曝された後、積層体の半導体基板と支持基板とを剥離装置等によって剥離しようとした際に容易に剥離することができず、場合によっては支持基板から半導体基板を剥がそうとすると半導体基板が割れることもある。剥離剤組成物に含有されるポリオルガノシロキサンの重量平均分子量が68,000を超えると、積層体の半導体基板を加工する際などに半導体基板が高温に曝された後の剥離層の接着力が弱く、半導体基板と支持基板との仮接着が必要な時でも剥離が起こってしまう。
【0021】
ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量は本発明の効果を再現性よく実現する観点から、25,000~65,000が好ましく、30,000~60,000がより好ましい。
【0022】
ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量及び数平均分子量は、例えば、GPC装置(東ソー(株)製 HLC-8320GPC)及びGPCカラム(東ソー(株)TSKgel SuperMultiporeHZ-N、TSKgel SuperMultiporeHZ-H)を用い、カラム温度を40℃とし、溶離液(溶出溶媒)としてテトラヒドロフランを用い、流量(流速)を0.35mL/分とし、標準試料としてポリスチレン(Shodex社製)を用いて、測定できる。
【0023】
ポリオルガノシロキサンの分散度(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))としては、特に限定されないが、1.50~20.0が好ましく、2.00~15.0がより好ましい。
【0024】
なお、本発明において、後述する揮発性シリコーン油は、ポリオルガノシロキサンには含まれない。
【0025】
ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン、メチル基含有ポリオルガノシロキサン、フェニル基含有ポリオルガノシロキサン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
また、ポリオルガノシロキサンとしては、ポリジメチルシロキサンが挙げられる。当該ポリジメチルシロキサンは変性されていてもよい。そのため、ポリジメチルシロキサンとしては、例えば、エポキシ基含有ポリジメチルシロキサン、無変性のポリジメチルシロキサン、フェニル基含有ポリジメチルシロキサン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、R1112SiO2/2で表されるシロキサン単位(D10単位)を含むものが挙げられる。
【0028】
11は、ケイ素原子に結合する基であり、アルキル基を表し、R12は、ケイ素原子に結合する基であり、エポキシ基又はエポキシ基を含む有機基を表す。
アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよいが、直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が好ましく、その炭素数は、特に限定されるものではないが、通常1~40であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、より一層好ましくは10以下である。
エポキシ基を含む有機基におけるエポキシ基は、その他の環と縮合せずに、独立したエポキシ基であってもよく、1,2-エポキシシクロヘキシル基のように、その他の環と縮合環を形成しているエポキシ基であってもよい。
エポキシ基を含む有機基の具体例としては、3-グリシドキシプロピル、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明において、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの好ましい一例としては、エポキシ基含有ポリジメチルシロキサンを挙げることができるが、これに限定されない。
【0029】
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンは、上述のシロキサン単位(D10単位)を含むものであるが、D10単位以外に、Q単位、M単位及び/又はT単位を含んでもよい。
本発明の好ましい態様においては、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、D10単位のみからなるポリオルガノシロキサン、D10単位とQ単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とQ単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とQ単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
【0030】
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンは、エポキシ価が0.1~5であるエポキシ基含有ポリジメチルシロキサンが好ましい。
【0031】
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、式(E1)~(E3)で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
【化1】
(m及びnは、各繰り返し単位の数を示し、正の整数である。)
【0033】
【化2】
(m及びnは、各繰り返し単位の数を示し、正の整数であり、Rは、炭素数1~10のアルキレン基である。)
【0034】
【化3】
(m、n及びoは、各繰り返し単位の数を示し、正の整数であり、Rは、炭素数1~10のアルキレン基である。)
【0035】
メチル基含有ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、R210220SiO2/2で表されるシロキサン単位(D200単位)を含むもの、好ましくはR2121SiO2/2で表されるシロキサン単位(D20単位)を含むものが挙げられる。
【0036】
210及びR220は、ケイ素原子に結合する基であり、それぞれ独立して、アルキル基を表すが、少なくとも一方はメチル基であり、アルキル基の具体例としては、上述の例示を挙げることができる。
21は、ケイ素原子に結合する基であり、アルキル基を表し、アルキル基の具体例としては、上述の例示を挙げることができる。中でも、R21としては、メチル基が好ましい。
本発明において、メチル基含有ポリオルガノシロキサンの好ましい一例としては、ポリジメチルシロキサンを挙げることができるが、これに限定されない。
【0037】
メチル基含有ポリオルガノシロキサンは、上述のシロキサン単位(D200単位又はD20単位)を含むものであるが、D200単位及びD20単位以外に、Q単位、M単位及び/又はT単位を含んでもよい。
【0038】
本発明のある態様においては、メチル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、D200単位のみからなるポリオルガノシロキサン、D200単位とQ単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とQ単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とQ単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサンが挙げられる。
【0039】
本発明の好ましい態様においては、メチル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、D20単位のみからなるポリオルガノシロキサン、D20単位とQ単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とQ単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とQ単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサンが挙げられる。
【0040】
メチル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、式(M1)で表されるものが挙げられるが、これに限定されない。
【0041】
【化4】
(nは、繰り返し単位の数を示し、4以上の正の整数である。)
【0042】
式(M1)で表されるメチル基含有ポリオルガノシロキサンは、ポリジメチルシロキサンであるが、ポリジメチルシロキサンのバルク中に、末端や繰り返し単位の途中に-Si(CH基や-Si(CH-O-基以外のその他の基が微量不純構造として含まれるポリジメチルシロキサンが存在することは否定されない。
【0043】
フェニル基含有ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、R3132SiO2/2で表されるシロキサン単位(D30単位)を含むものが挙げられる。
【0044】
31は、ケイ素原子に結合する基であり、フェニル基又はアルキル基を表し、R32は、ケイ素原子に結合する基であり、フェニル基を表し、アルキル基の具体例としては、上述の例示を挙げることができるが、メチル基が好ましい。
【0045】
フェニル基含有ポリオルガノシロキサンは、上述のシロキサン単位(D30単位)を含むものであるが、D30単位以外に、Q単位、M単位及び/又はT単位を含んでもよい。
【0046】
本発明の好ましい態様においては、フェニル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、D30単位のみからなるポリオルガノシロキサン、D30単位とQ単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とQ単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とQ単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサンが挙げられる。
【0047】
フェニル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、式(P1)又は(P2)で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
【化5】
(m5及びn5は、各繰り返し単位の数を示し、正の整数である。)
【0049】
【化6】
(m6及びn6は、各繰り返し単位の数を示し、正の整数である。)
【0050】
ポリオルガノシロキサンは、市販品であってもよいし、合成したものであってもよい。
ポリオルガノシロキサンの市販品としては、例えば、ワッカーケミ社製の商品名AK 50、AK 350、AK 1000、AK 10000、AK 1000000などが挙げられる。
【0051】
市販品のポリオルガノシロキサンは、その重量平均分子量が所望の値であるときは、そのまま1種単独で用いてもよい。また、例えば、剥離層においてポリオルガノシロキサンの重量平均分子量が所望の値になるように、重量平均分子量の異なる2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
また、合成したポリオルガノシロキサンも、その重量平均分子量が所望の値であるときは、そのまま1種単独で用いてもよい。また、例えば、剥離層においてポリオルガノシロキサンの重量平均分子量が所望の値になるように、それぞれ別に合成した、重量平均分子量の異なる2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
更に、市販品と合成したものとを組み合わせて用いてもよい。
【0052】
剥離剤組成物は、溶媒を含んでいてもよい。
このような溶媒としては、例えば、ポリオルガノシロキサンを良好に溶解できる限り特に限定されるものではないが、そのような良溶媒の具体例としては、ヘキサン、へプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、イソドデカン等の直鎖状又は分岐鎖状脂肪族飽和炭化水素等の直鎖状又は分岐鎖状脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、イソプロピルシクロヘキサン、p-メンタン等の環状脂肪族飽和炭化水素、リモネン等の環状脂肪族不飽和炭化水素等の環状脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メシチレン、1,2,4-トリメチルベンゼン、クメン、1,4-ジイソプロピルベンゼン、p-シメン等の芳香族炭化水素;MIBK(メチルイソブチルケトン)、エチルメチルケトン、アセトン、ジイソブチルケトン、2-オクタノン、2-ノナノン、5-ノナノン等のジアルキルケトン、シクロヘキサノン等のシクロアルキルケトン等の脂肪族飽和炭化水素ケトン、イソホロン等のアルケニルケトン等の脂肪族不飽和炭化水素ケトン等のケトン;ジエチルエーテル、ジ(n-プロピル)エーテル、ジ(n-ブチル)エーテル、ジ(n-ペンチル)エーテル等のジアルキルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状アルキルエーテル等のエーテル;ジエチルスルフィド、ジ(n-プロピル)スルフィド、ジ(n-ブチル)スルフィド等のジアルキルスルフィド等のスルフィド;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド;アセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリル等のニトリル;プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコールモノアリールエーテル等のグリコールモノ炭化水素エーテル;シクロヘキサノール等の環状アルキルアルコール等のアルキルアルコール、ジアセトンアルコール、ベンジルアルコール、2-フェノキシエタノール、2-ベンジルオキシエタノール、3-フェノキシベンジルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等のアルキルアルコール以外のモノアルコール;エチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル(プロピルカルビトール)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルカルビトール、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールモノアルキルエーテル等、2-フェノキシエタノール等のグリコールモノアリールエーテル等のグリコールモノエーテル;エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテ等のグリコールジアルキルエーテル等のグリコールジエーテル;ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールモノアルキルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネート;酢酸ブチル、酢酸ペンチル等のエステル等が挙げられる。
また、溶媒としては、揮発性シリコーン油を用いてもよい。本発明において揮発性シリコーン油とは、以下のケイ素数2~5の化合物を指す。
ヘキサメチルジシロキサン、ヘプタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、及びペンタメチルシクロペンタシロキサン
これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0053】
また、剥離剤組成物は、ポリオルガノシロキサンが析出しない限りにおいて、粘度や表面張力の調整等の目的として、良溶媒とともに、1種又は2種以上の貧溶媒を含んでいてもよく、その具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール等の多価アルコール;メタノール、エタノール、プロパノール等の直鎖状又は分岐鎖状アルキルモノアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール等のグリコール等が挙げられる。
【0054】
剥離剤組成物が溶媒を含む場合、溶媒の量は、組成物全体に対し、通常70質量%~99.9質量%とすることができ、それ故、ポリオルガノシロキサンの量は、組成物全体に対し、0.1質量~30質量%となる。
【0055】
剥離剤組成物は、本発明の効果が損なわれない範囲で、ポリオルガノシロキサンと溶媒以外の他の成分を含んでいてもよいが、均一性に優れる膜を再現性よく得る観点、組成物の調製の煩雑化回避の観点等から、剥離剤組成物は、ポリオルガノシロキサン及び溶媒のみを含むことが好ましい。
【0056】
剥離剤組成物は、例えば、ポリオルガノシロキサンと、溶媒とを混合することで製造できる。
その混合順序は特に限定されるものではないが、容易にかつ再現性よく剥離剤組成物を製造できる方法の一例としては、ポリオルガノシロキサンを一度に溶媒に溶解させる方法や、ポリオルガノシロキサンの一部を溶媒に溶解させ、残りを溶媒に別途溶解させ、得られた各溶液を混合する方法が挙げられるが、これらに限定されない。剥離剤組成物を調製する際、成分が分解したり変質したりしない範囲で、適宜加熱してもよい。
【0057】
本発明においては、異物を除去する目的で、剥離剤組成物を製造する途中で又は全ての成分を混合した後に、用いる溶媒や溶液等をフィルター等を用いてろ過してもよい。
【0058】
上記説明した剥離剤組成物も、本発明の対象であり、関連する諸条件(好適な条件、製造条件等)は、上述の通りである。本発明の剥離剤組成物を用いることで、例えば半導体素子の製造に用いることができる剥離層として好適な膜を再現性よく製造することができる。
【0059】
剥離剤組成物は、例えば、280℃以上に加熱される半導体基板に接する剥離層の形成に用いられる。
また、剥離剤組成物は、例えば、支持基板と、半導体基板と、支持基板及び半導体基板の間に介在し、半導体基板に接する剥離層と、支持基板及び剥離層の間に介在する接着層と、を有する積層体の剥離層であり、且つ積層体の半導体基板が加工される際に、280℃以上に加熱される半導体基板に接する剥離層の形成に用いられる。
【0060】
剥離層におけるポリオルガノシロキサンの含有量としては、特に制限されるものではないが、95質量%以上が好ましく、99質量%以上がより好ましく、100質量%であることが最も好ましい。なお、剥離層におけるポリオルガノシロキサンの含有量が100質量%とは、ポリオルガノシロキサンとして意図的に含められた成分のみから剥離層が構成されることを意味するが、この場合において、ポリオルガノシロキサンを溶解させるために用いた溶媒や、バルクのポリオルガノシロキサンに含まれる不純物等の存在までもが否定されるものではない。
【0061】
本発明の積層体が備える剥離層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常10~500nmであり、膜強度を保つ観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは80nm以上、より一層好ましくは100nm以上であり、厚膜に起因する不均一性を回避する観点から、好ましくは400nm以下、より好ましくは350nm以下、より一層好ましくは300nm以下、更に好ましくは250nm以下である。
【0062】
<接着層>
接着層は、支持基板及び剥離層の間に介在する。
接着層は、通常、支持基板に接する。
【0063】
接着層としては、特に限定されないが、接着剤組成物から形成される層であることが好ましい。
【0064】
<<接着剤組成物>>
接着剤組成物としては、例えば、ポリシロキサン系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリスチレン系接着剤、ポリイミド接着剤、フェノール樹脂系接着剤等が挙げられるが、これらに限定されない。
これらの中でも、半導体基板等の加工時は好適な接着能を示し、加工の後は好適に剥離可能であり、更に耐熱性にも優れるため、接着剤組成物としては、ポリシロキサン系接着剤が好ましい。
また、接着剤組成物は、熱硬化性接着剤であってもよいし、熱可塑性接着剤であってもよい。
【0065】
好ましい態様においては、接着剤組成物は、ポリオルガノシロキサンを含有する。
また、他の好ましい態様においては、熱硬化性接着剤組成物は、ヒドロシリル化反応によって硬化する成分を含む。
本発明で用いる熱硬化性接着剤組成物のより具体的な実施態様として、例えば、下記<<第一の実施態様>>から<<第三の実施態様>>を挙げることができる。
また、本発明で用いる熱可塑性接着剤組成物のより具体的な実施態様としては、例えば、<<第四の実施態様>>を挙げることができる。
【0066】
<<第一の実施態様>>
好ましい実施態様として、本発明で用いる接着剤組成物は、ポリオルガノシロキサンを含有する。
例えば、本発明で用いる接着剤組成物は、接着剤成分となる硬化する成分(A)を含有する。本発明で用いる接着剤組成物は、接着剤成分となる硬化する成分(A)と、硬化反応を起こさない成分(B)とを含有してもよい。ここで、硬化反応を起こさない成分(B)としては、例えば、ポリオルガノシロキサンが挙げられる。なお、本発明において「硬化反応を起こさない」とは、あらゆる硬化反応を起こさないことを意味するのではなく、硬化する成分(A)に生じる硬化反応を起こさないことを意味する。
他の好ましい態様においては、成分(A)は、ヒドロシリル化反応によって硬化する成分であってもよいし、ヒドロシリル化反応によって硬化するポリオルガノシロキサン成分(A’)であってもよい。
他の好ましい態様においては、成分(A)は、例えば、成分(A’)の一例としての、ケイ素原子に結合した炭素数2~40のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサン(a1)と、Si-H基を有するポリオルガノシロキサン(a2)と、白金族金属系触媒(A2)と、を含有する。ここで、炭素数2~40のアルケニル基は置換されていてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられる。
他の好ましい態様においては、ヒドロシリル化反応によって硬化するポリオルガノシロキサン成分(A’)は、SiOで表されるシロキサン単位(Q単位)、RSiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)、RSiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)及びRSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の単位を含むポリシロキサン(A1)と、白金族金属系触媒(A2)とを含み、ポリシロキサン(A1)は、SiOで表されるシロキサン単位(Q’単位)、R’R’R’SiO1/2で表されるシロキサン単位(M’単位)、R’R’SiO2/2で表されるシロキサン単位(D’単位)及びR’SiO3/2で表されるシロキサン単位(T’単位)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の単位を含むとともに、M’単位、D’単位及びT’単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むポリオルガノシロキサン(a1’)と、SiOで表されるシロキサン単位(Q”単位)、R”R”R”SiO1/2で表されるシロキサン単位(M”単位)、R”R”SiO2/2で表されるシロキサン単位(D”単位)及びR”SiO3/2で表されるシロキサン単位(T”単位)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の単位を含むとともに、M”単位、D”単位及びT”単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むポリオルガノシロキサン(a2’)とを含む。
なお、(a1’)は、(a1)の一例であり、(a2’)は、(a2)の一例である。
【0067】
~Rは、ケイ素原子に結合する基又は原子であり、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基又は水素原子を表す。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられる。
【0068】
’~R’は、ケイ素原子に結合する基であり、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアルケニル基を表すが、R’~R’の少なくとも1つは、置換されていてもよいアルケニル基である。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられる。
【0069】
”~R”は、ケイ素原子に結合する基又は原子であり、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル基又は水素原子を表すが、R”~R”の少なくとも1つは、水素原子である。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられる。
【0070】
アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよいが、直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が好ましく、その炭素数は、特に限定されるものではないが、通常1~40であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、より一層好ましくは10以下である。
【0071】
置換されていてもよい直鎖状又は分岐鎖状アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、ターシャリーブチル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基、1-エチル-2-メチル-n-プロピル基等が挙げられるが、これらに限定されず、その炭素数は、通常1~14であり、好ましくは1~10、より好ましくは1~6である。中でもメチル基が特に好ましい。
【0072】
置換されていてもよい環状アルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基等のシクロアルキル基、ビシクロブチル基、ビシクロペンチル基、ビシクロヘキシル基、ビシクロヘプチル基、ビシクロオクチル基、ビシクロノニル基、ビシクロデシル基等のビシクロアルキル基等が挙げられるが、これらに限定されず、その炭素数は、通常3~14であり、好ましくは4~10、より好ましくは5~6である。
【0073】
アルケニル基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、その炭素数は、特に限定されるものではないが、通常2~40であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、より一層好ましくは10以下である。
【0074】
置換されていてもよい直鎖状又は分岐鎖状アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基等が挙げられるが、これらに限定されず、その炭素数は、通常2~14であり、好ましくは2~10、より好ましくは1~6である。中でも、エテニル基、2-プロペニル基が特に好ましい。
置換されていてもよい環状アルケニル基の具体例としては、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等が挙げられるが、これらに限定されず、その炭素数は、通常4~14であり、好ましくは5~10、より好ましくは5~6である。
【0075】
上述の通り、ポリシロキサン(A1)は、ポリオルガノシロキサン(a1’)とポリオルガノシロキサン(a2’)を含むが、ポリオルガノシロキサン(a1’)に含まれるアルケニル基と、ポリオルガノシロキサン(a2’)に含まれる水素原子(Si-H基)とが白金族金属系触媒(A2)によるヒドロシリル化反応によって架橋構造を形成し硬化する。その結果、硬化膜が形成される。
【0076】
ポリオルガノシロキサン(a1’)は、Q’単位、M’単位、D’単位及びT’単位からなる群から選ばれる1種又は2種以上の単位を含むとともに、M’単位、D’単位及びT’単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものである。ポリオルガノシロキサン(a1’)としては、このような条件を満たすポリオルガノシロキサンを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0077】
Q’単位、M’単位、D’単位及びT’単位からなる群から選ばれる2種以上の好ましい組み合わせとしては、(Q’単位とM’単位)、(D’単位とM’単位)、(T’単位とM’単位)、(Q’単位とT’単位とM’単位)、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
また、ポリオルガノシロキサン(a1’)に包含されるポリオルガノシロキサンが2種以上含まれる場合、(Q’単位とM’単位)と(D’単位とM’単位)との組み合わせ、(T’単位とM’単位)と(D’単位とM’単位)との組み合わせ、(Q’単位とT’単位とM’単位)と(T’単位とM’単位)との組み合わせが好ましいが、これらに限定されない。
【0079】
ポリオルガノシロキサン(a2’)は、Q”単位、M”単位、D”単位及びT”単位からなる群から選ばれる1種又は2種以上の単位を含むとともに、M”単位、D”単位及びT”単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものである。ポリオルガノシロキサン(a2’)としては、このような条件を満たすポリオルガノシロキサンを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0080】
Q”単位、M”単位、D”単位及びT”単位からなる群から選ばれる2種以上の好ましい組み合わせとしては、(M”単位とD”単位)、(Q”単位とM”単位)、(Q”単位とT”単位とM”単位)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
ポリオルガノシロキサン(a1’)は、そのケイ素原子にアルキル基及び/又はアルケニル基が結合したシロキサン単位で構成されるものであるが、R’~R’で表される全置換基中におけるアルケニル基の割合は、好ましくは0.1~50.0モル%、より好ましくは0.5~30.0モル%であり、残りのR’~R’はアルキル基とすることができる。
【0082】
ポリオルガノシロキサン(a2’)は、そのケイ素原子にアルキル基及び/又は水素原子が結合したシロキサン単位で構成されるものであるが、R”~R”で表される全ての置換基及び置換原子中における水素原子の割合は、好ましくは0.1~50.0モル%、より好ましくは10.0~40.0モル%であり、残りのR”~R”はアルキル基とすることができる。
【0083】
成分(A)が(a1)と(a2)とを含む場合、本発明の好ましい態様においては、ポリオルガノシロキサン(a1)に含まれるアルケニル基とポリオルガノシロキサン(a2)に含まれるSi-H結合を構成する水素原子とのモル比は、1.0:0.5~1.0:0.66の範囲である。
【0084】
ポリオルガノシロキサン(a1)、ポリオルガノシロキサン(a2)等のポリシロキサンの重量平均分子量は、特に限定されないが、それぞれ、通常500~1,000,000であり、本発明の効果を再現性よく実現する観点から、好ましくは5,000~50,000である。
なお、本発明において、ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量及び数平均分子量並びに分散度は、例えば、GPC装置(東ソー(株)製 HLC-8320GPC)及びGPCカラム(東ソー(株)TSKgel SuperMultiporeHZ-N, TSKgel SuperMultiporeHZ-H)を用い、カラム温度を40℃とし、溶離液(溶出溶媒)としてテトラヒドロフランを用い、流量(流速)を0.35mL/分とし、標準試料としてポリスチレン(Shodex社製)を用いて、測定することができる。
【0085】
ポリオルガノシロキサン(a1)及びポリオルガノシロキサン(a2)の粘度は、特に限定されないが、それぞれ、通常10~1000000(mPa・s)であり、本発明の効果を再現性よく実現する観点から、好ましくは50~10000(mPa・s)である。なお、ポリオルガノシロキサン(a1)及びポリオルガノシロキサン(a2)の粘度は、25℃においてE型回転粘度計で測定した値である。
【0086】
ポリオルガノシロキサン(a1)とポリオルガノシロキサン(a2)は、ヒドロシリル化反応によって、互いに反応して膜となる。従って、その硬化のメカニズムは、例えばシラノール基を介したそれとは異なり、それ故、いずれのシロキサンも、シラノール基や、アルキルオキシ基のような加水分解によってシラノール基を形成する官能基を含む必要は無い。
【0087】
本発明の好ましい態様においては、接着剤組成物は、ポリオルガノシロキサン成分(A’)とともに、白金族金属系触媒(A2)を含む。
このような白金系の金属触媒は、ポリオルガノシロキサン(a1)のアルケニル基とポリオルガノシロキサン(a2)のSi-H基とのヒドロシリル化反応を促進するための触媒である。
【0088】
白金系の金属触媒の具体例としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒が挙げられるが、これらに限定されない。
白金とオレフィン類との錯体としては、例えばジビニルテトラメチルジシロキサンと白金との錯体が挙げられるが、これに限定されない。
白金族金属系触媒(A2)の量は、特に限定されないが、通常、ポリオルガノシロキサン(a1)及びポリオルガノシロキサン(a2)の合計量に対して、1.0~50.0ppmの範囲である。
【0089】
ポリオルガノシロキサン成分(A’)は、ヒドロシリル化反応の進行を抑制する目的で、重合抑制剤(A3)を含んでもよい。
重合抑制剤は、ヒドロシリル化反応の進行を抑制できる限り特に限定されるものではなく、その具体例としては、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、1,1-ジフェニル-2-プロピオン-1-オール等のアルキニルアルコール等が挙げられる。
重合抑制剤の量は、特に限定されないが、ポリオルガノシロキサン(a1)及びポリオルガノシロキサン(a2)の合計量に対して、通常、その効果を得る観点から1000.0ppm以上であり、ヒドロシリル化反応の過度な抑制を防止する観点から10000.0ppm以下である。
【0090】
本発明で用いる接着剤組成物の一例は、硬化する成分(A)とともに剥離剤成分となる硬化反応を起こさない成分(B)を含んでもよい。このような成分(B)を接着剤組成物に含めることで、得られる接着層を再現性よく好適に剥離することができるようになる。
このような成分(B)として、典型的には、ポリオルガノシロキサンが挙げられ、その具体例としては、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン、メチル基含有ポリオルガノシロキサン、フェニル基含有ポリオルガノシロキサン等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、成分(B)としては、ポリジメチルシロキサンが挙げられる。当該ポリジメチルシロキサンは変性されていてもよい。変性されていてもよいポリジメチルシロキサンとしては、例えば、エポキシ基含有ポリジメチルシロキサン、無変性のポリジメチルシロキサン、フェニル基含有ポリジメチルシロキサン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
成分(B)であるポリオルガノシロキサンの好ましい例としては、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン、メチル基含有ポリオルガノシロキサン、フェニル基含有ポリオルガノシロキサン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
成分(B)であるポリオルガノシロキサンの重量平均分子量は、特に限定されないものの、通常100,000~2,000,000であり、本発明の効果を再現性よく実現する観点から、好ましくは200,000~1,200,000、より好ましくは300,000~900,000である。また、その分散度は、特に限定されないものの、通常1.0~10.0であり、好適な剥離を再現性よく実現する観点等から、好ましくは1.5~5.0、より好ましくは2.0~3.0である。なお、重量平均分子量及び分散度は、剥離剤組成物が含むポリオルガノシロキサンに関する上述の方法で測定することができる。
成分(B)であるポリオルガノシロキサンの粘度は、特に限定されないが、通常1,000~2,000,000mm/sである。なお、成分(B)であるポリオルガノシロキサンの粘度の値は、動粘度で示され、センチストークス(cSt)=mm/sである。粘度(mPa・s)を密度(g/cm)で割って求めることもできる。すなわち、その値は、25℃で測定したE型回転粘度計で測定した粘度と密度から求めることができ、動粘度(mm/s)=粘度(mPa・s)/密度(g/cm)という式から算出することができる。
【0093】
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、R1112SiO2/2で表されるシロキサン単位(D10単位)を含むものが挙げられる。
【0094】
11は、ケイ素原子に結合する基であり、アルキル基を表し、R12は、ケイ素原子に結合する基であり、エポキシ基又はエポキシ基を含む有機基を表し、アルキル基の具体例としては、上述の例示を挙げることができる。
エポキシ基を含む有機基におけるエポキシ基は、その他の環と縮合せずに、独立したエポキシ基であってもよく、1,2-エポキシシクロヘキシル基のように、その他の環と縮合環を形成しているエポキシ基であってもよい。
エポキシ基を含む有機基の具体例としては、3-グリシドキシプロピル、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明において、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの好ましい一例としては、エポキシ基含有ポリジメチルシロキサンを挙げることができるが、これに限定されない。
【0095】
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンは、上述のシロキサン単位(D10単位)を含むものであるが、D10単位以外に、Q単位、M単位及び/又はT単位を含んでもよい。
本発明の好ましい態様においては、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、D10単位のみからなるポリオルガノシロキサン、D10単位とQ単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とQ単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とQ単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
【0096】
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンは、エポキシ価が0.1~5であるエポキシ基含有ポリジメチルシロキサンが好ましい。また、その重量平均分子量は、特に限定されないものの、通常1,500~500,000であり、組成物中での析出抑制の観点から、好ましくは100,000以下である。
【0097】
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、式(E1)~(E3)で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
【化7】
(m及びnは、各繰り返し単位の数を示し、正の整数である。)
【0099】
【化8】
(m及びnは、各繰り返し単位の数を示し、正の整数であり、Rは、炭素数1~10のアルキレン基である。)
【0100】
【化9】
(m、n及びoは、各繰り返し単位の数を示し、正の整数であり、Rは、炭素数1~10のアルキレン基である。)
【0101】
メチル基含有ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、R210220SiO2/2で表されるシロキサン単位(D200単位)を含むもの、好ましくはR2121SiO2/2で表されるシロキサン単位(D20単位)を含むものが挙げられる。
【0102】
210及びR220は、ケイ素原子に結合する基であり、それぞれ独立して、アルキル基を表すが、少なくとも一方はメチル基であり、アルキル基の具体例としては、上述の例示を挙げることができる。
21は、ケイ素原子に結合する基であり、アルキル基を表し、アルキル基の具体例としては、上述の例示を挙げることができる。中でも、R21としては、メチル基が好ましい。
本発明において、メチル基含有ポリオルガノシロキサンの好ましい一例としては、ポリジメチルシロキサンを挙げることができるが、これに限定されない。
【0103】
メチル基含有ポリオルガノシロキサンは、上述のシロキサン単位(D200単位又はD20単位)を含むものであるが、D200単位及びD20単位以外に、Q単位、M単位及び/又はT単位を含んでもよい。
【0104】
本発明のある態様においては、メチル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、D200単位のみからなるポリオルガノシロキサン、D200単位とQ単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とQ単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とQ単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサンが挙げられる。
【0105】
本発明の好ましい態様においては、メチル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、D20単位のみからなるポリオルガノシロキサン、D20単位とQ単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とQ単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とQ単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサンが挙げられる。
【0106】
メチル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、式(M1)で表されるものが挙げられるが、これに限定されない。
【0107】
【化10】
(nは、繰り返し単位の数を示し、正の整数である。)
【0108】
フェニル基含有ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、R3132SiO2/2で表されるシロキサン単位(D30単位)を含むものが挙げられる。
【0109】
31は、ケイ素原子に結合する基であり、フェニル基又はアルキル基を表し、R32は、ケイ素原子に結合する基であり、フェニル基を表し、アルキル基の具体例としては、上述の例示を挙げることができるが、メチル基が好ましい。
【0110】
フェニル基含有ポリオルガノシロキサンは、上述のシロキサン単位(D30単位)を含むものであるが、D30単位以外に、Q単位、M単位及び/又はT単位を含んでもよい。
【0111】
本発明の好ましい態様においては、フェニル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、D30単位のみからなるポリオルガノシロキサン、D30単位とQ単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とQ単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とQ単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサンが挙げられる。
【0112】
フェニル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、式(P1)又は(P2)で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0113】
【化11】
(m5及びn5は、各繰り返し単位の数を示し、正の整数である。)
【0114】
【化12】
(m6及びn6は、各繰り返し単位の数を示し、正の整数である。)
【0115】
ある態様においては、本発明で用いる接着剤組成物は、硬化する成分(A)とともに、硬化反応を起こさない成分(B)を含み、より好ましい態様においては、成分(B)として、ポリオルガノシロキサンが含まれる。
【0116】
本発明で用いる接着剤組成物の一例は、成分(A)と成分(B)とを、任意の比率で含むことができるが、接着性と剥離性のバランスを考慮すると、成分(A)と成分(B)との比率は、質量比〔(A):(B)〕で、好ましくは99.995:0.005~30:70、より好ましくは99.9:0.1~75:25である。
すなわち、ヒドロシリル化反応によって硬化するポリオルガノシロキサン成分(A’)が含まれる場合、成分(A’)と成分(B)との比率は、質量比〔(A’):(B)〕で、好ましくは99.995:0.005~30:70、より好ましくは99.9:0.1~75:25である。
【0117】
本発明で用いる接着剤組成物の粘度は、特に限定されないが、25℃で、通常500~20,000mPa・sであり、好ましくは1,000~1,0000mPa・sである。
【0118】
<<第二の実施態様>>
好ましい実施態様として、本発明で用いる接着剤組成物は、例えば、以下に記載の硬化性接着剤材料、又は該硬化性接着剤材料と剥離添加剤とを含有する。
硬化性接着剤材料としては、例えば、ポリアリーレンオリゴマー、環状オレフィンオリゴマー、アリールシクロブテンオリゴマー、ビニル芳香族オリゴマー、及びこれらの混合物から選択される。
剥離添加剤としては、例えば、ポリエーテル化合物が挙げられる。
ポリエーテル化合物が、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ及びこれらの混合物からなる群から選択される末端基を含むことが好ましい。
ポリエーテル化合物が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(1,3-プロパンジオール)、ポリブチレングリコール、ポリ(テトラヒドロフラン)、エチレングリコール-プロピレングリコールコポリマー、及びこれらの混合物から選択されることが好ましい。
剥離添加剤が、ポリアルキレンオキシドホモポリマー及びポリアルキレンオキシドコポリマーからなる群から選択されることが好ましい。
第二の実施態様の接着剤組成物としては、例えば、特開2014-150239号公報に記載の一時的結合組成物を用いることができる。
第二の実施態様の接着剤組成物について、以下さらに詳しく説明する。
【0119】
本発明で用いる接着剤組成物は、硬化性接着剤材料及び剥離添加剤、及び場合により有機溶媒を含む。通常、硬化性接着剤材料は、硬化される場合に>1GPaのモジュラスを有する。例示的な硬化性接着剤材料としては、これらに限定されないが、ポリアリーレンオリゴマー、環状オレフィンオリゴマー、アリールシクロブテンオリゴマー、ビニル芳香族オリゴマー、及びこれらの混合物が挙げられる。硬化性接着剤材料は、追加の疎水性を提供するために何らかの好適な部分、例えばフッ素含有基で置換されてもよいが、これはこうした部分が硬化した接着剤材料の機械的特性に悪影響を与えない場合に限られる。好ましくは、硬化性接着剤材料は、ポリアリーレンオリゴマー、環状オレフィンオリゴマー、アリールシクロブテンオリゴマー、ビニル芳香族オリゴマー、及びこれらの混合物から選択され、より好ましくはアリールシクロブテンオリゴマー、ビニル芳香族オリゴマー又はこれらの混合物の1つ以上から選択される。異なる硬化性接着剤材料の混合物が本発明に使用される場合、こうした材料は、硬化工程中、互いに硬化するように選択される。異なる硬化性材料の混合物が使用される場合、こうした硬化性材料は、99:1~1:99、好ましくは95:5~5:95、より好ましくは90:10~10:90、さらにより好ましくは75:25~25:75の質量比で使用される。
【0120】
種々広範なポリアリーレンオリゴマーが本発明に使用されうる。本明細書に使用される場合、「ポリアリーレン」という用語は、ポリアリーレンエーテルを含む。好適なポリアリーレンオリゴマーは、前駆体、例えば以下の式のエチニル芳香族化合物から合成されてもよい:
【0121】
【化13】
式中、各Arは、芳香族基又は不活性置換された芳香族基であり;各Rは、独立に、水素、アルキル、アリール又は不活性置換されたアルキルもしくはアリール基であり;Lは、共有結合、又は1つのArを少なくとも1つの他のArに連結する基であり;n及びmは、少なくとも2の整数であり;並びに、qは、少なくとも1の整数である。そういうものとして、エチニル芳香族化合物は、通常、4つ以上のエチニル基を有する(例えば、テトラエチニル芳香族化合物)。
【0122】
第二の実施態様の接着剤組成物としての一時的結合組成物に使用される好適なポリアリーレンオリゴマーは、重合単位として以下を含むポリマーを含んでいてもよい:
【0123】
【化14】
式中、Ar’は、反応生成物の(C≡C)n-Ar又はAr-(C≡C)m部分の残基であり、R、L、n及びmは前記で定義された通りである。本発明に有用なポリアリーレンコポリマーとしては、重合単位として以下の式を有するモノマーを含む:
【0124】
【化15】
式中、Ar’及びRは前記で定義される通りである。
【0125】
例示的なポリアリーレンとしては、Ar-L-Arが:ビフェニル;2,2-ジフェニルプロパン;9,9’-ジフェニルフルオレン;2,2-ジフェニルヘキサフルオロプロパン;ジフェニルスルフィド;オキシジフェニレン;ジフェニルエーテル;ビス(フェニレン)ジフェニルシラン;ビス(フェニレン)ホスフィンオキシド;ビス(フェニレン)ベンゼン;ビス(フェニレン)ナフタレン;ビス(フェニレン)アントラセン;チオジフェニレン;1,1,1-トリフェニレンエタン;1,3,5-トリフェニレンベンゼン;1,3,5-(2-フェニレン-2-プロピル)ベンゼン;1,1,1-トリフェニレンメタン;1,1,2,2-テトラフェニレン-1,2-ジフェニルエタン;ビス(1,1-ジフェニレンエチル)ベンゼン;2,2’-ジフェニレン-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン;1,1-ジフェニレン-1-フェニルエタン;ナフタレン;アントラセン;又はビス(フェニレン)ナフタセン;より好ましくはビフェニレン;ナフチレン;p,p’-(2,2-ジフェニレンプロパン)(又はC-C(CH-C-);p,p’-(2,2-ジフェニレン-1,1,1,3,3,3ヘキサフルオロプロペン)及び(-C-C(CF-C-)であるものが挙げられるが、これらに限定されない。有用なビスフェニル誘導体としては、2,2-ジフェニルプロパン;9,9’-ジフェニルフルオレン;2,2-ジフェニルヘキサフルオロプロパン;ジフェニルスルフィド;ジフェニルエーテル;ビス(フェニレン)ジフェニルシラン;ビス(フェニレン)ホスフィンオキシド;ビス(フェニレン)ベンゼン;ビス(フェニレン)ナフタレン;ビス(フェニレン)アントラセン;又はビス(フェニレン)ナフタセンが挙げられる。
【0126】
ポリアリーレン前駆体モノマーは、当分野において公知の種々の方法、例えば(a)溶媒中、ポリフェノール(好ましくはビスフェノール)を選択的にハロゲン化、好ましくは臭素化する工程(ここでは各フェノール性環が、フェノール性ヒドロキシル基に対してオルトの2つの位置のうち1つにおいて1つのハロゲンでハロゲン化されている)、(b)得られたポリ(オルト-ハロフェノール)上のフェノール性ヒドロキシルを、好ましくは溶媒中で、末端エチニル化合物と反応性であり、それらによって置き換えられるスルホネートエステルのような脱離基(例えば、トリフルオメタンスルホニルハライド又はトリフルオロメタンスルホン酸無水物から調製されたトリフルオロメタンスルホネートエステル)に変換する工程、及び(c)アリールエチニル化触媒、好ましくはパラジウム触媒及び酸受容体の存在下で、エチニル含有化合物又はエチニルシントンと工程(b)の反応生成物を反応させて、ハロゲン及びトリフルオロメチルスルホネートを同時にエチニル含有基(例えば、アセチレン、フェニルアセチレン、置換されたフェニルアセチレン又は置換されたアセチレン)で置き換える工程によって調製されてもよい。この合成のさらなる説明は、国際公開第WO97/10193号(Babb)に提供される。
【0127】
式(I)のエチニル芳香族モノマーは、式(II)又は(III)のいずれかのポリマーを調製するのに有用である。エチニル芳香族モノマーの重合は、十分当業者の能力の範囲内である。重合の具体的な条件は、重合される具体的なエチニル芳香族モノマー(1種又は複数種)及び得られるポリマーの所望の特性を含む種々の因子に依存するが、重合の一般的な条件は、国際公開第WO97/10193号(Babb)に詳述される。
【0128】
本発明に使用するのに特に好適なポリアリーリレンとしては、SiLK(商標)半導体誘電体(マサチューセッツ州マルボロのダウエレクトロニックマテリアルズから入手可能)として販売されるものが挙げられる。他の特に好適なポリアリーレンとしては、国際公開第00/31183号、同第98/11149号、同第97/10193号、同第91/09081号、欧州特許出願公開第755957号、及び米国特許第5,115,082号;同第5,155,175号;同第5,179,188号;同第5,874,516号;及び同第6,093,636号に開示されるものが挙げられる。
【0129】
好適な環状オレフィン材料は、ポリ(環状オレフィン)であり、これは熱可塑性であってもよく、好ましくは2000~200,000ダルトン、より好ましくは5000~100,000ダルトン、さらにより好ましくは2000~50,000ダルトンの重量平均分子量(Mw)を有していてもよい。好ましいポリ(環状オレフィン)は、少なくとも100℃、より好ましくは少なくとも140℃の軟化温度(3,000PaSでの溶融粘度)を有する。好適なポリ(環状オレフィン)はまた、好ましくは少なくとも60℃、より好ましくは60~200℃、最も好ましくは75~160℃のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0130】
好ましいポリ(環状オレフィン)は、環状オレフィン及び非環状オレフィンの反復モノマー、又は環状オレフィンに基づく開環ポリマーを含んでなる。本発明に使用するのに好適な環状オレフィンは、ノルボルネン系オレフィン、テトラシクロドデセン系オレフィン、ジシクロペンタジエン系オレフィン、Diels-Alderポリマー、例えばフラン及びマレイミドから誘導されるもの、及びこれらの誘導体から選択される。誘導体としては、アルキル(好ましくはC-C20アルキル、より好ましくはC-C10アルキル)、アルキリデン(好ましくはC-C20アルキリデン、より好ましくはC-C10アルキリデン)、アラルキル(好ましくはC-C30アラルキル、より好ましくはC-C18アラルキル)、シクロアルキル(好ましくはC-C30シクロアルキル、より好ましくはC-C18シクロアルキル)、エーテル、アセチル、芳香族、エステル、ヒドロキシ、アルコキシ、シアノ、アミド、イミド、及びシリル-置換された誘導体が挙げられる。本発明に使用するための特に好ましい環状オレフィンとしては、以下のもの及びこれらの組み合わせから選択されるものが挙げられ、
【0131】
【化16】
【0132】
【化17】
式中、各R及びRは、独立に、H及びアルキル基(好ましくはC-C20アルキル、より好ましくはC-C10アルキル)から選択され、並びに各Rは、独立に、H、置換された及び置換されていないアリール基(好ましくはC-C18アリール)、アルキル基(好ましくはC-C20アルキル、より好ましくはC-C10アルキル)、シクロアルキル基(好ましくはC-C30シクロアルキル基、より好ましくはC-C18シクロアルキル基)、アラルキル基(好ましくはC-C30アラルキル、より好ましくはC-C18アラルキル基、例えばベンジル、フェネチル、フェニルプロピルなど)、エステル基、エーテル基、アセチル基、アルコール(好ましくはC-C10アルコール)、アルデヒド基、ケトン、ニトリル、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0133】
好ましい非環状オレフィンは、分岐及び非分岐C-C20アルケン(好ましくはC-C10アルケン)から選択される。より好ましくは、非環状オレフィンは、構造(RC=C(Rを有し、ここで各Rは、独立に、H及びアルキル基(好ましくはC-C20アルキル、より好ましくはC-C10アルキル)から選択される。本発明に使用するのに特に好ましい非環状オレフィンとしては、エテン、プロペン及びブテンから選択されるものが挙げられ、エテンが最も好ましい。
【0134】
環状オレフィンコポリマーを製造する方法は当分野において公知である。例えば、環状オレフィンコポリマーは、環状モノマーと非環状モノマーとの連鎖重合によって製造できる。ノルボルネンがこうした条件下でエテンと反応する場合、交互ノルボルナンジイル及びエチレン単位を含有するエテン-ノルボルネンコポリマーが得られる。この方法によって製造されるコポリマーの例としては、TOPAS(商標)(Topas Advanced Polymersによって製造)及びAPEL(商標)(三井化学株式会社によって製造)ブランドの下で入手可能なものが挙げられる。これらのコポリマーを製造するための好適な方法は、米国特許第6,008,298号に開示されている。シクロオレフィンコポリマーはまた、種々の環状モノマーの開環メタセシス重合と、その後の水素化によって製造できる。このタイプの重合から得られるポリマーは、エテン及び環状オレフィンモノマーのコポリマー(例えばエチレン及びシクロペンタン-1,3-ジイルの交互単位)として概念的に考えられることができる。この開環方法によって製造されるコポリマーの例としては、ZEONOR(商標)(Zeon Chemicalsより)及びARTON(商標)(JSR株式会社製)ブランドの下で提供されるものが挙げられる。この開環方法によってこれらのコポリマーを製造する好適な方法は、米国特許第5,191,026号に開示されている。
【0135】
本発明の硬化性接着剤材料として有用なアリールシクロブテンオリゴマーは当分野において周知である。好適なアリールシクロブテンオリゴマーとしては、以下の式を有するものが挙げられるが、これらに限定されない:
【0136】
【化18】
式中、Bはn価の連結基であり;Arは多価アリール基であり、シクロブテン環の炭素原子は、Arの同じ芳香族環上の隣の炭素原子に結合し;mは1以上の整数であり;nは1以上の整数であり;並びに、Rは、一価の基である。好ましくは多価アリール基Arは、1~3個の芳香族炭素環式又はヘテロ芳香族環で構成されてもよい。アリール基は単一芳香族環、より好ましくはフェニル環を含むのが好ましい。アリール基は、場合により、(C-C)アルキル、トリ(C-C)アルキルシリル、(C-C)アルコキシ及びハロから選択される1~3個の基、好ましくは(C-C)アルキル、トリ(C-C)アルキルシリル、(C-C)アルコキシ及びクロロの1つ以上、より好ましくは(C-C)アルキル、トリ(C-C)アルキルシリル及び(C-C)アルコキシの1つ以上で置換される。アリール基は置換されていないのが好ましい。n=1又は2が好ましく、より好ましくはn=1である。m=1~4が好ましく、より好ましくはm=2~4、さらにより好ましくはm=2である。好ましくはRは、H及び(C-C)アルキル、より好ましくはH及び(C-C)アルキルから選択される。好ましくはBは、1つ以上の炭素-炭素二重結合(エチレン性不飽和)を含む。好適な一価B基は、好ましくは式-[C(R10)=CR11]xZを有し、ここでR10及びR11は、独立に、水素、(C-C)アルキル、及びアリールから選択され;Zは、水素、(C-C)アルキル、アリール、シロキサニル、-CO12から選択され;各R12は、独立に、H、(C-C)アルキル、アリール、アラルキル、及びアルカリールから選択され;並びに、x=1又は2である。好ましくは、R10及びR11は、独立に、H、(C-C)アルキル、及びアリールから選択され、より好ましくはH及び(C-C)アルキルから選択される。R12は、(C-C)アルキル、アリール及びアラルキルであるのが好ましい。Zは、好ましくはシロキシルである。好ましいシロキシル基は、式-[Si(R13-O]p-Si(R13-を有し、ここで各R13は、独立に、H、(C-C)アルキル、アリール、アラルキル、及びアルカリールから選択され;pは1以上の整数である。R13は、(C-C)アルキル、アリール及びアラルキルから選択される。好適なアラルキル基としては、ベンジル、フェネチル及びフェニルプロピルが挙げられる。
【0137】
好ましくは、アリールシクロブテンオリゴマーは、以下の式の1種以上のオリゴマーを含む:
【0138】
【化19】
式中、各Rは、独立に、H及び(C-C)アルキルから選択され、好ましくはH及び(C-C)アルキルから選択され;各Rは、独立に、(C-C)アルキル、トリ(C-C)アルキルシリル、(C-C)アルコキシ及びハロから選択され;各Rは、独立に、二価のエチレン性不飽和有機基であり;各Rは、独立に、H、(C-C)アルキル、アラルキル及びフェニルから選択され;pは1以上の整数であり;並びにqは0~3の整数である。各Rは、好ましくは独立に、H及び(C-C)アルキルから選択され、より好ましくは各RはHである。各R7は、独立に、(C-C)アルキル、トリ(C-C)アルキルシリル、(C-C)アルコキシ及びクロロから選択されるのが好ましく、より好ましくは(C-C)アルキル、トリ(C-C)アルキルシリル及び(C-C)アルコキシから選択される。好ましくは各Rは、独立に、(C-C)アルケニルから選択され、より好ましくは各Rは-CH=CH-である。各Rは、好ましくは(C-C)アルキルから選択され、より好ましくは各Rはメチルである。好ましくはp=1~5、より好ましくはp=1~3であり、さらにより好ましくはp=1である。q=0であるのが好ましい。特に好ましいアリールシクロブテンオリゴマー、1,3-ビス(2-ビシクロ[4.2.0]オクタ-1,3,5-トリエン-3-イルエテニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(「DVS-bisBCB」)は、以下の式を有する。
【0139】
【化20】
【0140】
アリールシクロブテンオリゴマーは、いずれかの好適な手段、例えば米国特許第4,812,588号;同第5,136,069号;同第5,138,081号及び国際公開WO94/25903号に記載されるものによって調製されてもよい。好適なアリールシクロブテンオリゴマーはまた、ダウエレクトロニックマテリアルズから入手可能なCYCLOTENE(商標)ブランドの下で市販されている。アリールシクロブテンオリゴマーは、そのままで使用されてもよく、又は何らかの好適な手段によってさらに精製されてもよい。
【0141】
硬化されうるビニル芳香族オリゴマーが本発明で硬化性接着剤材料として使用されうる。こうしたビニル芳香族オリゴマーは、通常、1種以上の反応性エチレン性不飽和コモノマーとビニル芳香族モノマーとのオリゴマーである。好ましくはビニル芳香族モノマーは、1つのビニル基を含有する。好適なビニル芳香族モノマーは、非置換ビニル芳香族モノマー、及び置換されたビニル芳香族モノマーであって、ここでは1つ以上の水素は、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、ハロ及びアミノからなる群から選択される置換基で置き換えられている。例示的なビニル芳香族モノマーとしては、これらに限定されないが、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ビニルアニソール、ビニルジメトキシベンゼン、ビニルアニリン、ハロスチレン、例えばフルオロスチレン、α-メチルスチレン、β-メトキシスチレン、エチルビニルベンゼン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルピロール、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましいビニル芳香族モノマーは、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ビニルアニソール、エチルビニルベンゼン及びこれらの混合物である。好ましい反応性コモノマーは、ビニル芳香族オリゴマーを形成するために使用されるオレフィン(又はエチレン性不飽和)部分に加えて、反応性部分、すなわち、ビニル芳香族オリゴマーの形成の後でのさらなる重合(又は架橋)の可能な部分、例えばアリル部分又はビニル基を含むものである。こうした反応性コモノマーは、好適には、ビニル芳香族モノマーとのオリゴマー化の後で、Diels-Alder反応によってさらに重合できる何らかの非対称ジエン又はトリエンであってもよい。より好ましくは、反応性コモノマーは、ビニル芳香族オリゴマーを形成するために使用されるエチレン性不飽和に加えてアリル部分を含み、さらにより好ましくはこのエチレン性不飽和に加えてアリルエステル部分を含む。ビニル芳香族オリゴマーを形成するのに有用な例示的な反応性コモノマーとしては、ビニルシクロヘキセン、ビニルエーテル、非対称ジエン又はトリエン、例えばテルペンモノマー、ジシクロペンタジエン、ジアリルマレエート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、アリルシンナメート、ジアリルフマレート、アリルチグレート、ジビニルベンゼン、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい反応性コモノマーは、ジアリルマレエート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、アリルシンナメート、ジアリルフマレート及びこれらの混合物であり、より好ましくはジアリルマレエート、アリルメタクリレート、及びこれらの混合物である。例示的なテルペンモノマーとしては、これらに限定されないが、リモネン、ジペンテン、ミルセンなどが挙げられる。1種以上の第二のコモノマーはまた、ビニル芳香族オリゴマーを形成するために使用されてもよいことは当業者に理解されるであろう。こうした第二のコモノマーは、エチレン性不飽和であるが、反応性部分を含有しない。例示的な第二のコモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、(C1-C10)アルキル(メタ)アクリレート、芳香族(メタ)アクリレート、置換されたエチレンモノマー、及びポリ(アルキレンオキシド)モノマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0142】
こうしたビニル芳香族オリゴマーにおけるビニル芳香族モノマー:コモノマーのモル比は、好ましくは99:1~1:99であり、より好ましくは95:5~5:95であり、さらにより好ましくは90:10~10:90である。こうしたビニル芳香族オリゴマーは、いずれかの好適な方法によって調製されてもよく、例えば当分野において公知の方法のいずれかによって調製されてもよい。通常、ビニル芳香族オリゴマーは、ビニル芳香族モノマー及びコモノマーのフリーラジカル重合によって調製される。好ましいビニル芳香族オリゴマーは、こうしたオリゴマーをさらに硬化できる未反応アリル部分を含む。
【0143】
一時的結合組成物において剥離添加剤として種々広範な材料が使用されてもよいが、ただしこうした材料は貯蔵及び使用の条件下で、接着剤材料と反応せず、及び接着剤材料を硬化させるために使用される条件下で非硬化性である。加えて、剥離添加剤は、一時的結合組成物と適合性であるべきであり、すなわち剥離添加剤は、接着剤材料、及び一時的結合組成物に使用される何らかの他の構成成分、例えば有機溶媒に対して、分散性、混和性又はそうでなければ実質的に適合性でなければならない。有機溶媒(又は混合溶媒系)が一時的結合組成物に使用される場合、剥離添加剤及び硬化性接着剤材料はこうした溶媒に可溶性でなければならない。本発明において剥離添加剤は、それらが使用条件下で実質的に蒸発しないように十分不揮発性であり、すなわちそれらは実質的に、堆積工程、例えばスピンコーティング、又は有機溶媒を除去するためにもしくは接着剤材料を硬化させるために使用されるいずれかの後続の加熱工程の際に蒸発しない。一時的結合組成物のフィルム又は層が、例えばスピンコーティングによってキャストされる場合、多くの(又はすべての)溶媒が蒸発する。剥離添加剤は、使用されるどの有機溶媒にも可溶性であるが、硬化性接着剤材料中に完全には可溶性でないのが好ましい。剥離添加剤は、硬化した接着剤材料より優位に親水性である。理論に拘束されないが、接着剤材料の硬化時に、剥離添加剤相が分離し、優先的にウエハのアクティブ表面(キャリア表面に比べて親水性の高い表面)の方に移動すると考えられる。剥離添加剤における適切な親水性部分の使用は、一時的結合組成物における剥離添加剤の完全な分散、又は好ましくは溶解を可能にし、及び親水性の高い表面に向かう剥離添加剤の移動を伴って接着剤材料の硬化中に剥離添加剤の相分離を可能にする。硬化中に接着剤材料から相分離しないどの材料も、本発明に従う剥離添加剤としては機能しない。
【0144】
一般に、剥離添加剤は、1つ以上の相対的に親水性の部分、例えば1つ以上の酸素、窒素、リン、及び硫黄を含有する部分を含有するであろう。好適な剥離添加剤としては、これらに限定されないが:エーテル、エステル、カルボキシレート、アルコール、チオエーテル、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスフェートエステル、スルホネートエステル、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、剥離添加剤は、1つ以上の極性末端基を含有し、これは酸素、窒素及び硫黄の1つ以上、好ましくは酸素を含有する。例示的な極性末端基としては、アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、カルボキシレート、アルコキシカルボニル、メルカプト、アルキルチオ、一級アミン、二級アミン、及び三級アミンが挙げられ、好ましい末端基は、(C-C)アルコキシ、(C-C10)アリールオキシ、ヒドロキシ、カルボキシレート、(C-C)アルコキシカルボニル、メルカプト、(C-C)アルキルチオ、アミノ、(C-C)アルキルアミノ、及びジ(C-C)アルキルアミノから選択され、より好ましくは(C-C)アルコキシ、(C-C10)アリールオキシ、ヒドロキシ、カルボキシレート、及び(C1-C6)アルコキシカルボニルから選択され、さらにより好ましくは(C-C)アルコキシ、ヒドロキシ、カルボキシレート、及び(C-C)アルコキシカルボニルから選択される。特に好ましい極性末端基は、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、カルボキシル、及びアセトキシから選択される。好ましくは剥離添加剤は、シリコンを含まない。
【0145】
好適な剥離添加剤は、≦10,000ダルトン、好ましくは≦7500ダルトン、より好ましくは≦7000ダルトンの数平均分子量(Mn)を有する。剥離添加剤は、使用条件の間、剥離添加剤が実質的に不揮発性になる(すなわち<5%、好ましくは<3%、より好ましくは≦1%の剥離添加剤が使用中に揮発する)のに十分な最小分子量(Mn)を有する。好ましくは剥離添加剤は、≧500ダルトンのMnを有する。好ましい範囲のMnは、500~10,000ダルトン、より好ましくは500~7500ダルトン、さらにより好ましくは500~7000ダルトンである。剥離添加剤は、線状ポリマー;分岐状ポリマー、例えば樹状ポリマー、星状ポリマーなど;ポリマー粒子などであってもよいが、剥離添加剤は、線状ポリマー又はポリマー粒子であるのが好ましく、より好ましくは線状ポリマーである。理論に拘束されないが、線状ポリマーは、分岐ポリマーに比較して、親水性のウエハ表面に向かって硬化接着剤材料相を通って良好に移動できると考えられる。
【0146】
ポリエーテルは、好ましい剥離添加剤である。ポリエーテル化合物としては、アルキレンオキシドホモポリマー及びアルキレンオキシドコポリマーが挙げられ、こうしたコポリマーはランダム又はブロックであってもよい。ポリアルキレンオキシド剥離添加剤は、種々の極性末端基を有していてもよく、好ましくはこうした極性末端基は、ヒドロキシ、(C-C)アルコキシ、及び(C-C)アルコキシカルボニル、より好ましくはヒドロキシ、(C-C)アルコキシ、及びアセトキシである。好ましいポリエーテル化合物は、ポリグリコール(又はポリアルキレンオキシド)、例えばポリ(C-C)アルキレンオキシド化合物であり、これは単一種のアルキレンオキシド繰り返し単位、又は2種以上の異なるアルキレンオキシド繰り返し単位を含んでいてもよい。好ましいポリエーテル化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(1,3-プロパンジオール)、ポリ(テトラヒドロフラン)、エチレンオキシド-プロピレンオキシドコポリマー、エチレンオキシド-ブチレンオキシドコポリマー、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、剥離添加剤がブチレンオキシドを繰り返し単位として含む場合、それは、1種以上の異なるアルキレンオキシド繰り返し単位とのコポリマーである。剥離添加剤の混合物が本発明の一時的結合組成物に使用されてもよいことを当業者は理解するであろう。好適な剥離添加剤としては、製品名PLURONIC(登録商標)、TETRONIC及びPOLYTHF(BASF、Ludwigshafen、ドイツから入手可能)、製品名FORTEGRA(ザダウケミカルカンパニー、ミシガン州、ミッドランド)、及び製品名TERATHANE(Invista,Wichita、カンザス州から入手可能)の下で販売されるポリエーテルが挙げられ、これらはすべてさらなる精製なしに使用されうる。
【0147】
1種以上の有機溶媒が、一時的結合組成物に使用さるのが好ましい。硬化性接着剤材料及び剥離添加剤を溶解又は分散、好ましくは溶解するどの溶媒又は溶媒の混合物も一時的結合組成物に好適に使用されうる。例示的な有機溶媒としては、これらに限定されないが:芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、及びメシチレン;アルコール、例えば2-メチル-1-ブタノール、4-メチル-2-ペンタノール及びメチルイソブチルカルビノール;エステル、例えばエチルラクテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、及びメチル2-ヒドロキシイソブチレート;ラクトン、例えばガンマ-ブチロラクトン;ラクタム、例えばN-メチルピロリジノン;エーテル、例えばプロピレングリコールメチルエーテル及びジプロピレングリコールジメチルエーテル異性体(PROGLYDE(商標)DMMとしてザダウケミカルカンパニーから市販されている);ケトン、例えばシクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノン;並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0148】
<<第三の実施態様>>
好ましい実施態様として、本発明で用いる接着剤組成物は、例えば、以下に記載の熱硬化性重合体を含有する。
第三の実施態様の接着剤組成物としては、例えば、特許6528747号公報に記載の熱硬化性重合体を用いることができる。
熱硬化性重合体としては、特に限定されないが、好ましい例として、下記式(3)で表される繰り返し単位及び必要に応じて下記式(4)で表される繰り返し単位からなる、重量平均分子量が3,000~500,000のシロキサン結合含有重合体(以下、シリコーンAともいう。)が挙げられる。
【0149】
【化21】
[式中、R~Rは、それぞれ独立に、炭素数1~8の1価炭化水素基を表す。また、mは1~100の整数を表す。A及びBは、0<A<1、0<B<1、かつA+B=1を満たす正数である。T及びTは、下記式(5)で表される2価の有機基である。
【0150】
【化22】
(式中、Aは、単結合、又は下記式
【0151】
【化23】
で表される基から選ばれる2価の有機基である。R10及びR11は、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基又はアルコキシ基である。hは、それぞれ独立に、0、1又は2である。)]
【0152】
~Rで表される1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基等が挙げられる。mは、好ましくは3~60、より好ましくは8~40の整数である。また、Aは、0.3~0.8が好ましく、Bは、0.2~0.7が好ましく、A/Bが0.1~20を満たすことが好ましく、0.5~5を満たすことがより好ましい。
【0153】
また、熱硬化性重合体の好ましい例として、下記式(6)で表される繰り返し単位及び必要に応じて下記式(7)で表される繰り返し単位からなる、重量平均分子量が3,000~500,000のシロキサン結合含有重合体(以下、シリコーンBともいう。)も挙げられる。
【0154】
【化24】
[式中、R12~R15は、それぞれ独立に、炭素数1~8の1価炭化水素基を表す。pは、1~100の整数を表す。C及びDは、0<C≦1、0≦D<1、かつC+D=1を満たす正数である。T及びTは、下記式(8)で表される2価の有機基である。
【0155】
【化25】
(式中、Aは、単結合、又は下記式
【0156】
【化26】
で表される基から選ばれる2価の有機基である。R16及びR17は、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基又はアルコキシ基である。kは、それぞれ独立に、0、1又は2である。)]
【0157】
この場合、R11~R14で表される1価炭化水素基としては、R~Rで表されるものとして例示したものと同じものが挙げられる。pは、好ましくは3~60、より好ましくは8~40の整数である。また、Cは、好ましくは0.3~1であり、Dは、好ましくは0~0.7であり、C+D=1である。
【0158】
第三の実施態様の接着剤組成物としての熱硬化性重合体を用いて形成される接着層は、シリコーンA又はシリコーンBを主成分とする熱硬化性樹脂組成物の硬化物の層であることが好ましい。シリコーンAとシリコーンBとは併用することができる。その場合の割合(重合比)は、好ましくはシリコーンA:シリコーンB=0.1:99.9~99.9:0.1、より好ましくはシリコーンA:シリコーンB=20:80~80:20である。
【0159】
シリコーンAを主成分とする熱硬化性樹脂組成物は、その熱硬化のために、ホルマリン又はホルマリン-アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物及び1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれる1種以上の架橋剤を含む。
【0160】
一方、シリコーンBを主成分とする熱硬化性樹脂組成物は、その熱硬化のために、1分子中に平均して2個以上のフェノール基を有するフェノール化合物及び1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれる1種以上の架橋剤を含む。
【0161】
また、シリコーンAとシリコーンBとを含む熱硬化性樹脂組成物は、その熱硬化のために、1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれる1種以上の架橋剤を含む。
【0162】
前記アミノ縮合物としては、メラミン樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。ホルマリン又はホルマリン-アルコールにより変性されたメラミン樹脂としては、変性メラミンモノマー(例えば、トリメトキシメチルモノメチロールメラミン)、又はこの多量体(例えば、二量体、三量体等のオリゴマー)を公知の方法に従ってホルムアルデヒドと所望の分子量になるまで付加縮合重合させて得られたものが挙げられる。なお、これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0163】
ホルマリン又はホルマリン-アルコールにより変性された尿素樹脂としては、メトキシメチル化尿素縮合物、エトキシメチル化尿素縮合物、プロポキシメチル化尿素縮合物等が挙げられる。なお、これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。ホルマリン又はホルマリン-アルコールにより変性された尿素樹脂は、例えば公知の方法に従って所望の分子量の尿素縮合物をホルマリンでメチロール化して変性し、又はこれを更にアルコールでアルコキシ化して変性することで調製することができる。
【0164】
また、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物としては、例えば、(2-ヒドロキシ-5-メチル)-1,3-ベンゼンジメタノール、2,2',6,6'-テトラメトキシメチルビスフェノールA等が挙げられる。なお、これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0165】
1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物としては、特に限定されないが、2官能、3官能又は4官能以上の多官能エポキシ樹脂、例えば、日本化薬(株)製のEOCN-1020(下記式参照)、EOCN-102S、XD-1000、NC-2000-L、EPPN-201、GAN、NC6000や、下記式で表されるもの等が挙げられる。
【0166】
【化27】
【0167】
1分子中に平均して2個以上のフェノール基を有するフェノール化合物としては、m-又はp-系クレゾールノボラック樹脂(例えば、旭有機材工業(株)製EP-6030G)、3官能フェノール化合物(例えば、本州化学工業(株)製Tris-P-PA)、4官能性フェノール化合物(例えば、旭有機材工業(株)製TEP-TPA)等が挙げられる。
【0168】
熱硬化性樹脂組成物中の架橋剤の配合量は、熱硬化性重合体100質量部に対し、好ましくは0.1~50質量部、より好ましくは0.2~30質量部、更に好ましくは1~20質量部である。架橋剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0169】
また、熱硬化性樹脂組成物には、酸無水物等の硬化触媒を、熱硬化性重合体100質量部に対し、10質量部以下配合してもよい。
【0170】
<<第四の実施態様>>
好ましい実施態様として、本発明で用いる接着剤組成物は、例えば、以下に記載の熱可塑性組成物である。
第四の実施態様の接着剤組成物としては、例えば、特許5788173号公報に記載の接合用組成物層を形成するための熱可塑性組成物(以下、「接合用組成物」という)を用いることができる。
接合用組成物としては、特に限定されないが、好ましい例として、溶媒系に分散または溶解し、イミド、アミドイミド及びアミドイミド-シロキサンのポリマー及びオリゴマーからなる群から選択される化合物を含む。
化合物は、例えば、下記式(I)及び下記式(II)の少なくともいずれかの繰り返し単位を有するポリマー及びオリゴマーからなる群から選択される。
式(I):
【化28】
[式中、Rは、
【化29】
(式中、Rは、アルキル置換フェニル、
からなる群から選択される。)からなる群から選択される。]
【0171】
式(II):
【化30】
(式中、Zは、シロキサン、及びエーテル橋かけを有する部分からなる群から選択される。)
【0172】
好ましいアルキル置換フェニルは、C-Cアルキル置換フェニルである。アルキル置換フェニルの特に好ましい例としては、
【化31】
からなる群から選択されるものが挙げられる。
【0173】
式(I)中、Xは、フェニルスルホン、(好ましくはC-C60、より好ましくはC-C30、さらに好ましくはC-C24の)芳香族化合物、(好ましくはC-C15、より好ましくはC-C10、さらに好ましくはC-Cの)脂肪族化合物、及び(好ましくはC-C60、より好ましくはC-C20、さらに好ましくはC-C12の)脂環式化合物からなる群から選択される。
【0174】
一実施形態において、Xは上述の芳香族基であっても、脂肪族基であっても、脂環式基であってもよい。他の実施形態では、Xは(Zに関して論じるような)エーテル橋かけを有する芳香族基、又はメタ位に連結基及び/又は-NH基を有する芳香族基を含み得る。
【0175】
特に好ましいX基は、(上述したような)アルキル置換フェニル、イソプロピリデンジフェニル、及びヘキサフルオロイソプロピリデンからなる群から選択される。
【0176】
式(II)中、Zがシロキサンの実施形態では、好ましいシロキサンは、式:
【化32】
[式中、各Rは個々に、水素、(好ましくはC-C10、より好ましくはC-Cの)アルキル、及びフェニルからなる群から選択され、
mは1~6であり、
pは1~50、好ましくは1~20、より好ましくは1~10である。]で表される。
【0177】
式(II)中、Zのエーテル橋かけを有する好ましい部分は、
【化33】
からなる群の中から選択される。
【0178】
式(I)の実施形態又は式(II)の実施形態において、ポリマー又はオリゴマーがさらに末端封止基を有することが好ましい。好ましい末端封止基は、芳香族モノアミン、脂肪族モノアミン、脂環式モノアミン及び無水フタル酸からなる群から選択される化合物に由来する。特に好ましい末端封止基は、(好ましくはC-C15、より好ましくはC-C10、さらに好ましくはC-Cの)アルキル、
【化34】
[式中、Rは、(好ましくはC-C15、より好ましくはC-C10、さらに好ましくはC-Cの)アルキルであり、Rは、(好ましくはC-C12、より好ましくはC-Cの)脂環式基であり、
kは0~20、好ましくは0~10、より好ましくは0~5である。]からなる群から選択される基を有する。
【0179】
接合用組成物は、例えば、化合物を溶媒系に分散または溶解したものである。この化合物はポリマーであってもオリゴマーであってもよく、組成物中の膜構成成分総質量を100質量%として、好ましくは約1質量%~約70質量%、より好ましくは約5質量%~約50質量%、さらに好ましくは約15質量%~約40質量%のレベルで組成物中に存在する。
【0180】
ポリマーまたはオリゴマー化合物は熱可塑性であり、好ましくは約3000ダルトン~約300000ダルトン、より好ましくは約6000ダルトン~約50000ダルトンの重量平均分子量を有する。好ましい化合物は、(溶融粘度3000Pa・sで)好ましくは少なくとも約150℃、より好ましくは少なくとも約200℃、さらに好ましくは約200℃~約250℃の軟化温度を有する。
【0181】
好ましい化合物は、N-メチル-2-ピロリドン、キシレン、ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、及びこれらの混合物のような媒中、室温で約1~24時間放置すると、少なくとも約95質量%、好ましくは少なくとも約98質量%、さらに好ましくは約100質量%が溶解する。
【0182】
接合用組成物は、接合用組成物の総質量を100質量%として、少なくとも約30質量%の溶媒系、好ましくは約50質量%~約90質量%の溶媒系、より好ましくは約60質量%~約90質量%の溶媒系、さらに好ましくは約70質量%~約90質量%の溶媒系を有する。溶媒系は、約100~250℃、好ましくは120~220℃の沸点を有するべきである。
【0183】
好適な溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン、キシレン、ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、及びこれらの混合物からなる群の中から選択されるものが挙げられる。
【0184】
接合用組成物中の膜構成成分量は、組成物の総質量を100質量%として、少なくとも約10質量%、好ましくは約10質量%~約40質量%、より好ましくは約10質量%~約30質量%とすべきである。
【0185】
本発明で用いる接着剤組成物は、粘度の調整等を目的に、溶媒を含んでいてもよく、その具体例としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0186】
より具体的には、溶媒としては、ヘキサン、へプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、イソドデカン、メンタン、リモネン、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン、MIBK(メチルイソブチルケトン)、酢酸ブチル、ジイソブチルケトン、2-オクタノン、2-ノナノン、5-ノナノン等が挙げられるが、これらに限定されない。このような溶媒は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0187】
本発明で用いる接着剤組成物が溶媒を含む場合、その含有量は、所望の組成物の粘度、採用する塗布方法、作製する膜の厚み等を勘案して適宜設定されるものではあるが、組成物全体に対して、10~90質量%程度の範囲である。
【0188】
本発明で用いる接着剤組成物の粘度は、特に限定されないが、25℃で、通常500~20,000mPa・sであり、好ましくは1,000~10,000mPa・sである。本発明で用いる接着剤組成物の粘度は、用いる塗布方法、所望の膜厚等の各種要素を考慮して、用いる溶媒の種類やそれらの比率、膜構成成分濃度等を変更することで調整可能である。なお、本発明において、膜構成成分とは、組成物に含まれる溶媒以外の成分を意味する。
【0189】
本発明で用いる接着剤組成物の一例は、成分(A)と、用いる場合には成分(B)及び溶媒とを混合することで製造できる。
その混合順序は特に限定されるものではないが、容易にかつ再現性よく接着剤組成物を製造できる方法の一例としては、例えば、成分(A)と成分(B)を溶媒に溶解させる方法や、成分(A)と成分(B)の一部を溶媒に溶解させ、残りを溶媒に溶解させ、得られた溶液を混合する方法が挙げられるが、これらに限定されない。なお、接着剤組成物を調製する際、成分が分解したり変質したりしない範囲で、適宜加熱してもよい。
本発明においては、異物を除去する目的で、接着剤組成物を製造する途中で又は全ての成分を混合した後に、用いる溶媒や溶液等をフィルター等を用いてろ過してもよい。
【0190】
本発明の積層体が備える接着層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常5~500μmであり、膜強度を保つ観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、より一層好ましくは30μm以上であり、厚膜に起因する不均一性を回避する観点から、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、より一層好ましくは120μm以下、更に好ましくは70μm以下である。
【0191】
<無機材料層>
積層体は、無機材料層を有していてもよい。
無機材料層は、通常、剥離層及び接着層の間に介在する。無機材料層によって、剥離層と接着層とが混ざることが抑制される。
【0192】
無機材料層としては、無機材料からなる層であれば、特に限定されず、例えば、ケイ素、ホウ素、チタン、ジルコニウム、及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素の酸化物、窒化物、炭化物等の化合物及びそれらの混合物から形成される層などが挙げられる。
好ましくは、無機材料層は、有機ケイ素化合物をプラズマ重合して得られる層である。
【0193】
無機材料層は、例えば、化学蒸着法(CVD(Chemical Vapor Deposition))によって形成される。化学蒸着法によって、例えば、プラズマ重合コーティングが行われる。
プラズマ重合コーティングに用いられる材料としては、例えば、有機ケイ素化合物が挙げられる。例えば、剥離層又は接着層上に有機ケイ素化合物のプラズマ重合コーティングを行うことによって、有機ケイ素化合物を含む原料ガスを分解させて、剥離層又は接着層上にSi-O結合を含む薄膜である無機材料層を形成できる。
有機ケイ素化合物を含む原料ガスには、OやNOなどの酸素を含有する気体を配合することが好ましい。また、アルゴンやヘリウムなどの希ガスをキャリアガスとして原料ガスに配合してもよい。原料ガスを分解する方法の好ましい一例においては、プラズマ発生装置を用いて、適切な圧力条件下、発生させたプラズマによって原料ガスを分解させる。なお、プラズマを用いて原料ガスを分解させて膜(層)を形成させる技術を一般に、プラズマ重合法ということがある。
【0194】
有機ケイ素化合物としては、例えば、シロキサン化合物、ジシラザン化合物、シラン化合物などが挙げられる。
シロキサン化合物としては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、ペンタメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3-テトラフェニル-1,3-ジメチルジシロキサン、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、1,1,1,3,5,7,7,7-オクタメチルテトラシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、1,1,5,5-テトラフェニル-1,3,3,5-テトラメチルトリシロキサン等の鎖状シロキサン;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン等の環状シロキサンなどが挙げられる。
ジシラザン化合物としては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、1,1,3,3,5,5,7,7-オクタメチルシクロテトラシラザンなどが挙げられる。
シラン化合物としては、例えば、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、テトラメチルシラン、トリメトキシシラン、トリエチルシラン、トリクロロメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、クロロトリメチルシラン、テトラメトキシシラン、トリメトキシメチルシラン、エチルトリメトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、テトラエトキシシラン、トリエトキシメチルシラン、トリエトキシエチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、ジエトキシメチルシラン、エトキシジメチルシラン、アセトキシトリメチルシラン、アリルオキシトリメチルシラン、アリルトリメチルシラン、ブトキシトリメチルシラン、ブチルトリメトキシシラン、ジアセトキシジメチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、エトキシジメチルビニルシラン、ジフェニルシランジオール、トリアセトキシメチルシラン、トリアセトキシエチルシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、トリエトキシオクチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、トリメチルフェニルシラン、プロポキシトリメチルシラン、トリエトキシプロピルシラン、テトラアセトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラプロポキシシラン、トリアセトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、トリフェニルシラノール、トリメチルビニルシラン、トリス(2-メトキシエトキシ)ビニルシランなどが挙げられる。
【0195】
無機材料層の厚さとしては、特に限定されないが、通常1~1,000nmであり、好ましくは100~500nmである。
【0196】
以下に図を用いて積層体の一例を説明する。
図1は積層体の一例の概略断面図である。
図1の積層体は、半導体基板1と、剥離層2と、無機材料層3と、接着層4と、支持基板5とをこの順で有する。
剥離層2は、半導体基板1に接している。
接着層4は、支持基板5及び剥離層2の間に介在する。接着層4は、支持基板5と無機材料層3に接している。
無機材料層3は、剥離層2及び接着層4の間に介在する。無機材料層3は、剥離層2と接着層4に接している。
図1の積層体は、剥離層2と接着層4とに接する無機材料層3を有するが、本発明の積層体においては、無機材料層3は用いられなくてもよく、また、無機材料層3は、剥離層2と接着層4の一方としか接していなくてもよく、いずれとも接していなくてもよい。また、図1の積層体は、支持基板5と無機材料層3とに接する接着層4を有するが、本発明の積層体においては、接着層4は、支持基板5と無機材料層3の一方としか接していなくてもよく、いずれとも接していなくてもよい。
【0197】
本発明の積層体は、例えば、以下の本発明の積層体の製造方法によって好適に製造される。
【0198】
(積層体の製造方法)
本発明の積層体の製造方法は、例えば、剥離層形成工程と、接着剤塗布層形成工程と、接着層形成工程とを含み、更に必要に応じて、無機材料層形成工程、貼り合せ工程などのその他の工程を含む。
【0199】
<剥離層形成工程>
剥離層形成工程は、剥離層が形成される工程である。
用いる剥離剤組成物が溶媒を含まない場合、例えば、半導体基板上に、剥離剤組成物を塗布することによって、剥離層は形成されるが、層を軟化させて基板への密着性を向上させる等の目的で、必要があれば、層を形成する過程で加熱をしてもよい。
用いる剥離剤組成物が溶媒を含む場合、例えば、半導体基板上に、剥離剤組成物を塗布して剥離剤塗布層を形成し、剥離剤塗布層を加熱して溶媒を除去することによって、剥離層は形成されるが、スピンによる成膜に伴って溶媒も除去される等の事情で、必要がなければ、層を形成する過程で加熱をしなくてもよい。
塗布方法としては、特に限定されるものではないが、通常、スピンコート法である。
加熱温度は、溶媒の沸点や加熱の目的に応じて適宜決定されるものではあるが、通常50~250℃であり、加熱時間は、加熱温度に応じて適宜決定されるものではあるが、通常30秒~1時間である。
加熱は、例えば、オーブンやホットプレートを用いて行うことができる。
【0200】
<無機材料層形成工程>
無機材料層形成工程は、無機材料層が形成される工程であれば、特に限定されないが、例えば、上述の無機材料層の説明において挙げた無機材料層の形成方法を含む工程が挙げられる。
【0201】
<接着剤塗布層形成工程>
接着剤塗布層形成工程としては、接着剤塗布層が形成される工程であれば特に制限されず、例えば、剥離層上、無機材料層上又は支持基板上に、接着剤組成物を塗布した後に、加熱(前加熱処理)して、未硬化又は未完全硬化の接着層である接着剤塗布層が形成される方法を含む工程が挙げられる。このようにして、接着剤塗布層が、例えば、剥離層若しくは無機材料層上に、又は支持基板上に、形成される。
【0202】
塗布方法は、特に限定されるものではないが、通常、スピンコート法である。なお、別途スピンコート法等で塗布膜を形成し、シート状の塗布膜を、接着剤塗布層として貼付する方法を採用し得る。
接着剤塗布層の厚さは、積層体中の接着層の厚さ等を考慮して、適宜決定される。
接着剤組成物が溶媒を含む場合、通常、塗布した接着剤組成物を加熱する。
塗布した接着剤組成物の加熱温度は、接着剤組成物が含む接着剤成分の種類や量、溶媒が含まれるか否か、用いる溶媒の沸点、所望の接着層の厚さ等に応じて異なるため一概に規定できないが、通常80~150℃、その加熱時間は、通常30秒~5分である。
加熱は、ホットプレート、オーブン等を用いて行うことができる。
【0203】
<接着層形成工程>
接着層形成工程としては、接着剤塗布層が加熱され、接着層が形成される工程であれば、特に限定されない(後加熱処理)。
例えば、剥離層及び接着剤塗布層が形成された半導体基板と支持基板とを用いて、2つの層(剥離層及び接着剤塗布層)を挟み込むように2つの基板(半導体基板及び支持基板)を配することによって、支持基板と接着剤塗布層が接するようにした後、加熱処理を施せばよい。または、例えば、剥離層が形成された半導体基板と、接着剤塗布層が形成された支持基板とを用いて、2つの層(剥離層及び接着剤塗布層)を挟み込むように2つの基板(半導体基板及び支持基板)を配することによって、剥離層と接着剤塗布層が接するようにした後、加熱処理を施せばよい。
例えば、剥離層、無機材料層及び接着剤塗布層が形成された半導体基板と支持基板とを用いて、3つの層(剥離層、無機材料層及び接着剤塗布層)を挟み込むように2つの基板(半導体基板及び支持基板)を配することによって、支持基板と接着剤塗布層が接するようにした後、加熱処理を施せばよい。または、例えば、剥離層及び無機材料層が形成された半導体基板と、接着剤塗布層が形成された支持基板とを用いて、3つの層(剥離層、無機材料層及び接着剤塗布層)を挟み込むように2つの基板(半導体基板及び支持基板)を配することによって、無機材料層と接着剤塗布層が接するようにした後、加熱処理を施せばよい。
加熱の温度及び時間としては、接着剤塗布層が接着層に転化される温度及び時間であれば、特に限定されない。
加熱の温度としては、十分な硬化速度を実現する観点等から、好ましくは120℃以上であり、積層体を構成する各層(支持基板及び半導体基板を含む)の変質を防ぐ観点等から、好ましくは260℃以下である。
加熱の時間としては、積層体を構成する各層(支持基板及び半導体基板を含む)の好適な接合を実現する観点から、好ましくは1分以上であり、より好ましくは5分以上であり、過度の加熱による各層への悪影響等を抑制又は回避する観点から、好ましくは180分以下であり、より好ましくは120分以下である。
加熱は、ホットプレート、オーブン等を用いて行うことができる。
加熱は、段階的に行ってもよい。
【0204】
<貼り合せ工程>
接着剤塗布層形成工程と接着層形成工程の間には、半導体基板と支持基板との貼り合せを十分なものとするために、貼り合せ工程を行うことが好ましい。
貼り合せ工程としては、基板と層の貼り合わせができ、かつ基板や層に損傷を与えない限り特に限定されるものではないが、典型的には、支持基板及び半導体基板の厚さ方向に荷重が掛け得られる工程であり、より好ましくは、減圧下で支持基板及び半導体基板の厚さ方向に荷重が掛け得られる工程である。
荷重は、基板と層の貼り合わせができ、かつ基板や層に損傷を与えない限り特に限定されるものではないが、例えば、10~1,000Nである。
減圧度は、基板と層の貼り合わせができ、かつ基板や層に損傷を与えない限り特に限定されるものではないが、例えば、10~10,000Paである。
【0205】
(半導体基板の製造方法)
本発明の半導体基板の製造方法は、加工工程と、剥離工程と、除去工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0206】
<加工工程>
加工工程としては、本発明の積層体における半導体基板が加工される工程であれば、特に限定されないが、例えば、研磨処理、貫通電極形成処理などを含む。
【0207】
<<研磨処理>>
研磨処理としては、例えば、半導体基板のバンプが存在する面と反対側の面を研磨し、半導体基板を薄くする処理であれば、特に限定されないが、例えば、研磨剤や砥石を用いた物理的研磨などが挙げられる。
研磨処理は、半導体基板の研磨に使用されている一般的な研磨装置を用いて行うことができる。
研磨処理によって、半導体基板の厚さが減り、所望の厚さに薄化した半導体基板が得られる。薄化した半導体基板の厚みとしては、特に限定されないが、例えば、30~300μmであってもよいし、30~100μmであってもよい。
【0208】
<<貫通電極形成工程>>
研磨された半導体基板には、複数の薄化された半導体基板を積層した際に薄化された半導体基板間の導通を実現するための貫通電極が形成される場合がある。
そのため、半導体基板の製造方法は、研磨処理の後であって剥離工程の前に、研磨された半導体基板に貫通電極が形成される貫通電極形成処理を含んでいてもよい。
半導体基板に貫通電極を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、貫通孔を形成し、形成された貫通孔に導電性材料を充填することなどが挙げられる。
貫通孔の形成は、例えば、フォトリソグラフィーによって行われる。
貫通孔への導電性材料の充填は、例えば、めっき技術によって行われる。
【0209】
<剥離工程>
剥離工程は、加工工程の後に、支持基板と加工された半導体基板とが離される工程である限り特に限定されない。
例えば、鋭部を有する機材(いわゆるディボンダー)で機械的に剥離する方法が挙げられる。具体的には、例えば、半導体基板と支持基板との間に鋭部を挿入した後、半導体基板と支持基板とを分離する。通常、剥離層と半導体基板又は無機材料層との界面で剥離が起こる。
【0210】
<除去工程>
除去工程としては、剥離工程の後に、剥離層が除去される工程であれば、特に限定されないが、例えば、溶解除去が挙げられる。また、除去テープ等を用いて除去を実施してもよい。なお、剥離工程の後に、半導体基板上に剥離層を介して接着層の残渣がある場合には、除去工程では、その残渣も除去される。
洗浄剤組成物を用いる場合、例えば、剥離層付き半導体基板を洗浄剤組成物に浸漬したり、洗浄剤組成物を吹き付けたりすることができる。
【0211】
本発明で用いる洗浄剤組成物の好適な一例としては、第四級アンモニウム塩と、溶媒とを含む洗浄剤組成物が挙げられる。
第四級アンモニウム塩は、第四級アンモニウムカチオンと、アニオンとから構成されるものであって、この種の用途に用いられるものであれば特に限定されるものではない。
このような第四級アンモニウムカチオンとしては、典型的には、テトラ(炭化水素)アンモニウムカチオンが挙げられる。一方、それと対を成すアニオンとしては、水酸化物イオン(OH);フッ素イオン(F)、塩素イオン(Cl)、臭素イオン(Br)、ヨウ素イオン(I)等のハロゲンイオン;テトラフルオロホウ酸イオン(BF );ヘキサフルオロリン酸イオン(PF )等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0212】
本発明においては、第四級アンモニウム塩は、好ましくは含ハロゲン第四級アンモニウム塩であり、より好ましくは含フッ素第四級アンモニウム塩である。
第四級アンモニウム塩中、ハロゲン原子は、カチオンに含まれていても、アニオンに含まれていてもよいが、好ましくはアニオンに含まれる。
【0213】
好ましい一態様においては、含フッ素第四級アンモニウム塩は、フッ化テトラ(炭化水素)アンモニウムである。
フッ化テトラ(炭化水素)アンモニウムにおける炭化水素基の具体例としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基等が挙げられる。
より好ましい一態様においては、フッ化テトラ(炭化水素)アンモニウムは、フッ化テトラアルキルアンモニウムを含む。
フッ化テトラアルキルアンモニウムの具体例としては、フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラエチルアンモニウム、フッ化テトラプロピルアンモニウム、フッ化テトラブチルアンモニウム(テトラブチルアンモニウムフルオリドともいう)等が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、フッ化テトラブチルアンモニウムが好ましい。
【0214】
フッ化テトラ(炭化水素)アンモニウム等の第四級アンモニウム塩は、水和物を用いてもよい。また、フッ化テトラ(炭化水素)アンモニウム等の第四級アンモニウム塩は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
第四級アンモニウム塩の量は、洗浄剤組成物に含まれる溶媒に溶解する限り特に制限されるものではないが、洗浄剤組成物に対して、通常0.1~30質量%である。
【0215】
本発明で用いる洗浄剤組成物が含む溶媒は、この種の用途に用いられ、かつ、前記第四級アンモニウム塩等の塩を溶解するものであれば特に限定されるものではないが、優れた洗浄性を有する洗浄剤組成物を再現性よく得る観点、第四級アンモニウム塩等の塩を良好に溶解させて、均一性に優れる洗浄剤組成物を得る観点等から、好ましくは、本発明で用いる洗浄剤組成物は、1種又は2種以上のアミド系溶媒を含む。
【0216】
アミド系溶媒の好適な一例としては、式(Z)で表される酸アミド誘導体が挙げられる。
【化35】
【0217】
式中、Rは、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基を表し、エチル基が好ましい。R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基を表す。炭素数1~4のアルキル基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基等が挙げられる。これらのうち、R及びRとしては、メチル基又はエチル基が好ましい。
【0218】
式(Z)で表される酸アミド誘導体としては、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジエチルプロピオンアミド、N-エチル-N-メチルプロピオンアミド、N,N-ジメチル酪酸アミド、N,N-ジエチル酪酸アミド、N-エチル-N-メチル酪酸アミド、N,N-ジメチルイソ酪酸アミド、N,N-ジエチルイソ酪酸アミド、N-エチル-N-メチルイソ酪酸アミド等が挙げられる。これらのうち、特にN,N-ジメチルプロピオンアミドが好ましい。
【0219】
式(Z)で表される酸アミド誘導体は、対応するカルボン酸エステルとアミンの置換反応によって合成してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0220】
好ましいアミド系溶媒の他の一例としては、式(Y)で表されるラクタム化合物が挙げられる。
【化36】
【0221】
前記式(Y)において、炭素数1~6のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基等が挙げられ、炭素数1~6のアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0222】
前記式(Y)で表されるラクタム化合物の具体例としては、α-ラクタム化合物、β-ラクタム化合物、γ-ラクタム化合物、δ-ラクタム化合物等を挙げることができ、これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0223】
本発明の好ましい一態様においては、前記式(Y)で表されるラクタム化合物は、1-アルキル-2-ピロリドン(N-アルキル-γ-ブチロラクタム)を含み、より好ましい一態様においては、N-メチルピロリドン(NMP)又はN-エチルピロリドン(NEP)を含み、より一層好ましい一態様においては、N-メチルピロリドン(NMP)を含む。
【0224】
本発明で用いる洗浄剤組成物は、上述のアミド化合物とは異なる、1種又は2種以上のその他の有機溶媒を含んでもよい。
このようなその他の有機溶媒は、この種の用途に用いられるものであって、上述のアミド化合物と相溶性がある有機溶媒であれば特に限定されるものではない。
好ましいその他の溶媒としては、アルキレングリコールジアルキルエーテル、芳香族炭化水素化合物が、環状構造含有エーテル化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
上述のアミド化合物とは異なるその他の有機溶媒の量は、洗浄剤組成物に含まれる第四級アンモニウム塩が析出又は分離せず、かつ、上述のアミド化合物と均一に混ざり合う限りにおいて、通常、洗浄剤組成物に含まれる溶媒中95質量%以下で適宜決定される。
なお、本発明で用いる洗浄剤組成物は、溶媒として、水を含んでもよいが、基板の腐食等を回避する観点等から、通常、有機溶媒のみが、溶媒として意図して用いられる。なお、この場合において、塩の水和水や、有機溶媒に含まれる微量含まれる水が、洗浄剤組成物に含まれてしまうことまでもが、否定される訳ではない。本発明で用いる洗浄剤組成物の含水量は、通常5質量%以下である。
【実施例
【0225】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、使用した装置は以下のとおりである。
【0226】
(1)撹拌機:(株)シンキー製 自転公転ミキサー ARE-500
(2)真空貼り合わせ装置:ズースマイクロテック(株)製、XBS300
(3)マニュアル剥離装置:ズースマイクロテック(株)製、マニュアルデボンダー
(4)真空加熱装置:アユミ工業(株)製、VJ-300-S
【0227】
[分子量の測定]
ポリジメチルシロキサンの重量平均分子量及び数平均分子量、は、GPC装置(東ソー(株)製 HLC―8320GPC)及びGPCカラム(東ソー(株)TSKgel SuperMultiporeHZ-N、TSKgel SuperMultiporeHZ-H)を用い、カラム温度を40℃とし、溶離液(溶出溶媒)としてテトラヒドロフランを用い、流量(流速)を0.35mL/分とし、標準試料としてポリスチレン(Shodex社製)を用いて、測定した。
【0228】
[1]接着剤組成物の調製
[調製例1]
自転公転ミキサー専用600mL撹拌容器に、ポリシロキサン骨格とビニル基とを含有するMQ樹脂(ワッカーケミ社製)80g、粘度100mPa・sのSiH基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)2.52g、粘度70mPa・sのSiH基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)5.89g、及び1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ワッカーケミ社製)0.22gを入れ、撹拌機で5分間撹拌し混合物(I)を得た。
白金触媒(ワッカーケミ社製)0.147gと粘度1,000mPa・sのビニル基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)5.81gを撹拌機で5分間撹拌して混合物(II)を得た。
混合物(I)全量に、混合物(II)3.96gを加え、撹拌機で5分間撹拌し混合物(III)を得た。最後に、得られた混合物(III)をナイロンフィルター300メッシュでろ過し、接着剤組成物を得た。
【0229】
[2]剥離剤組成物の調製
[調製例2-1]
250mL撹拌容器に、重量平均分子量が7120及び分散度(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1.41のポリジメチルシロキサンであるポリオルガノシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK 50)1.81gとヘキサメチルジシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK 0.65)98.19gを入れ、撹拌機で5分間撹拌した。最後に、得られた混合物を0.2μmのPTFEフィルターでろ過し、剥離剤組成物を得た。
【0230】
[調製例2-2]
250mL撹拌容器に、重量平均分子量が21110及び分散度が1.72のポリジメチルシロキサンであるポリオルガノシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK 350)1.80gとヘキサメチルジシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK 0.65)98.2gを入れ、撹拌機で5分間撹拌した。最後に、得られた混合物を0.2μmのPTFEフィルターでろ過し、剥離剤組成物を得た。
【0231】
[調製例2-3]
250mL撹拌容器に、重量平均分子量が34550及び分散度が2.24のポリジメチルシロキサンであるポリオルガノシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK 1000)1.81gとヘキサメチルジシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK 0.65)98.19gを入れ、撹拌機で5分間撹拌した。最後に、得られた混合物を0.2μmのPTFEフィルターでろ過し、剥離剤組成物を得た。
【0232】
[調製例2-4]
250mL撹拌容器に、重量平均分子量が69980及び分散度が3.66のポリジメチルシロキサンであるポリオルガノシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK 10000)1.70gとヘキサメチルジシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK 0.65)98.3gを入れ、撹拌機で5分間撹拌した。最後に、得られた混合物を0.2μmのPTFEフィルターでろ過し、剥離剤組成物を得た。
【0233】
[調製例2-5]
250mL撹拌容器に、重量平均分子量が171860及び分散度が2.18のポリジメチルシロキサンであるポリオルガノシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK 1000000)1.34gとヘキサメチルジシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK 0.65)98.66gを入れ、撹拌機で5分間撹拌した。最後に、得られた混合物を0.2μmのPTFEフィルターでろ過し、剥離剤組成物を得た。
【0234】
[調製例2-6]
250mL撹拌容器に重量平均分子量が21110及び分散度が1.72のポリジメチルシロキサンであるポリオルガノシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK 350)1.17gと重量平均分子量が34550及び分散度が2.24のポリジメチルシロキサンであるポリオルガノシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK 1000)0.52gとヘキサメチルジシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK 0.65)98.33gを入れ、撹拌機で5分間撹拌した。最後に、得られた混合物を0.2μmのPTFEフィルターでろ過し、剥離剤組成物を得た。
なお、重量平均分子量が21110及び分散度が1.72のポリジメチルシロキサンであるポリオルガノシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK 350)1.17gと重量平均分子量が34550及び分散度が2.24のポリジメチルシロキサンであるポリオルガノシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK 1000)0.52gとの混合物におけるポリジメチルシロキサンの重量平均分子量は、25100であった。また分散度は4.04であった。
【0235】
[調製例2-7]
250mL撹拌容器に、重量平均分子量が21110及び分散度が1.72のポリジメチルシロキサンであるポリオルガノシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK 350)0.50gと重量平均分子量が34550及び分散度が2.24のポリジメチルシロキサンであるポリオルガノシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK 1000)1.38gとヘキサメチルジシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK 0.65)98.32gを入れ、撹拌機で5分間撹拌した。最後に、得られた混合物を0.2μmのPTFEフィルターでろ過し、剥離剤組成物を得た。
なお、重量平均分子量が21110及び分散度が1.72のポリジメチルシロキサンであるポリオルガノシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK 350)0.50gと重量平均分子量が34550及び分散度が2.24のポリジメチルシロキサンであるポリオルガノシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK 1000)1.38gとの混合物におけるポリジメチルシロキサンの重量平均分子量は、29270であった。また分散度は4.94であった。
【0236】
[調製例2-8]
250mL撹拌容器に、重量平均分子量が34550及び分散度が2.24のポリジメチルシロキサンであるポリオルガノシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK 1000)1.33gと重量平均分子量が69980及び分散度が3.66のポリジメチルシロキサンであるポリオルガノシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK 10000)0.57gとヘキサメチルジシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK 0.65)98.10gを入れ、撹拌機で5分間撹拌した。最後に、得られた混合物を0.2μmのPTFEフィルターでろ過し、剥離剤組成物を得た。
なお、重量平均分子量が34550及び分散度が2.24のポリジメチルシロキサンであるポリオルガノシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK 1000)1.33gと重量平均分子量が69980及び分散度が3.66のポリジメチルシロキサンであるポリオルガノシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK 10000)0.57gとの混合物におけるポリジメチルシロキサンの重量平均分子量は、49350であった。また分散度は8.37であった。
【0237】
[調製例2-9]
250mL撹拌容器に、重量平均分子量が34550及び分散度が2.24のポリジメチルシロキサンであるポリオルガノシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK 1000)0.55gと重量平均分子量が69980及び分散度が3.66のポリジメチルシロキサンであるポリオルガノシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK 10000)1.28gとヘキサメチルジシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK 0.65)98.17gを入れ、撹拌機で5分間撹拌した。最後に、得られた混合物を0.2μmのPTFEフィルターでろ過し、剥離剤組成物を得た。
なお、重量平均分子量が34550及び分散度が2.24のポリジメチルシロキサンであるポリオルガノシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK 1000)0.55gと重量平均分子量が69980及び分散度が3.66のポリジメチルシロキサンであるポリオルガノシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK 10000)1.28gとの混合物におけるポリジメチルシロキサンの重量平均分子量は、68740であった。また分散度は12.5であった。
【0238】
[3] 評価用積層体の作製
(比較例1)
調製例2-1で得られた剥離剤組成物を半導体基板である12インチのシリコンウエハーに、最終的に得られる積層体中の膜厚が170nmとなるようにスピンコートし、剥離層を形成した。
次いで無機材料層であるプラズマポリマー層を最終的に得られる積層体中の膜厚が160nmとなるように剥離層の上に形成した。プラズマポリマー層の形成は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法によって行った。具体的には、CVDは、40W、65mTorr、ヘキサメチルジシロキサン流量15sccmの条件で実施した。
次いで、調製例1で得られた接着剤組成物を最終的に得られる積層体中の膜厚が60μmとなるようにスピンコートし、プラズマポリマー層の上に接着剤塗布層を形成した。
そして貼り合わせ装置を用いて半導体基板であるシリコンウエハーと支持基板である12インチのガラスウエハーを、剥離層、プラズマポリマー層及び接着剤塗布層を挟み込むように貼り合わせた後、半導体基板を下にして、ホットプレート上で170℃7分間及び190℃7分間の加熱処理を順次することにより積層体を作製した。なお、貼り合わせは、温度23℃、減圧度1,000Paで行った。
【0239】
(実施例1~4)
調製例2-1で得られた剥離剤組成物の代わりに、それぞれ、調製例2-3、2-6~2-8で得られた剥離剤組成物を用いた以外は、比較例1と同様の方法で積層体を作製した。
【0240】
(比較例2~5)
調製例2-1で得られた剥離剤組成物の代わりに、それぞれ、調製例2-2、2-4、2-5、2-9で得られた剥離剤組成物を用いた以外は、比較例1と同様の方法で積層体を作製した。
【0241】
[積層体の高温処理]
真空加熱装置を用いて、作製した積層体に加熱処理を施した。処理は次の手順で行った。
300℃に設定した加熱ステージ上に積層体の半導体基板を下にして置き、10分間加熱した。なお、加熱は窒素雰囲気下で実施した。
処理後の各積層体の半導体基板の状況を支持基板であるガラスウエハー越しに光学顕微鏡を用いて、観察し、ボイド及びデラミネーションの有無を目視で確認した。また観察後、マニュアル剥離装置を用いて、積層体の半導体基板と支持基板との間に鋭利な機材を入れ、半導体基板と支持基板とを好適にマニュアルで分離できるか否かを確認した。この際、剥離可否の評価結果として、基板に強い負荷がかかっていると感じる程度の力をかけずに、剥離層と無機材料層との界面にて、マニュアルで半導体基板と支持基板とを分離できた場合を「可能」と、それ以外の場合を「不可」と評価した。なお、評価結果が「不可」の場合、更に力をかけて剥離しようとしたときに、それでもなお基板同士を全く分離できない事態や、基板は強引に分離できたが基板にひびが入る事態等が発生した。
ここで、ボイドとは、積層体の基板と層の間、2つの層の間又は層中に気泡がある状態を意味し、望ましくない気泡があるこのような状態では、半導体基板の十分な保護を期待することができない。デラミネーションとは、半導体基板から剥離層が部分的に剥離している状態を意味し、この状態では、半導体基板の十分な保護を期待することができない。
結果を下記表1に示す。
【0242】
【表1】
【0243】
表に示される通り、ポリオルガノシロキサン(ポリジメチルシロキサン)を含む剥離剤組成物から得られた膜を剥離層として備える積層体であっても、その重量平均分子量が本発明の所定の範囲外のとき(比較例1~5)は、高温(300℃)での加熱処理をした場合、加熱処理時にデラミネーションの抑制ができないか、又は加熱処理時にデラミネーションが発生しなくとも加熱処理後に剥離が不可能であったが、その重量平均分子量が本発明の所定の範囲内のとき(実施例1~4)は、高温(300℃)での加熱処理時のデラミネーションを抑制することができ、加えて加熱処理後に剥離可能であった。
剥離の可否の点で、比較例2は比較例1よりも良好であり、比較例2のポリオルガノシロキサンの重量平均分子量よりももう少し重量平均分子量が大きいポリオルガノシロキサン(例えば、重量平均分子量が22,000のポリオルガノシロキサン)を用いると、剥離が可能になると考えられる。
デラミネーションの程度の点で、比較例3及び5は比較例4よりも良好であり、比較例5のポリオルガノシロキサンの重量平均分子量よりももう少し重量平均分子量が小さいポリオルガノシロキサン(例えば、重量平均分子量が68,000のポリオルガノシロキサン)を用いると、デラミネーションが生じないようになると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0244】
本発明によれば、本発明の積層体は、半導体基板が高温に曝された後でも、半導体基板と支持基板との仮接着時には剥離せず、半導体基板と支持基板とを剥離しようとしたときには容易に剥離することができる、加工された半導体基板の製造に有用である。
【符号の説明】
【0245】
1 半導体基板
2 剥離層
3 無機材料層
4 接着層
5 支持基板

図1