(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-20
(45)【発行日】2025-08-28
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 41/06 20120101AFI20250821BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20250821BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20250821BHJP
【FI】
B24B41/06 A
H01L21/78 F
B24B27/06 J
(21)【出願番号】P 2022016976
(22)【出願日】2022-02-07
【審査請求日】2024-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】福岡 武臣
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-093530(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106032036(CN,A)
【文献】特開2018-195729(JP,A)
【文献】特開2017-084950(JP,A)
【文献】特開2019-111628(JP,A)
【文献】特開平07-328992(JP,A)
【文献】特開2018-039058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 41/06
H01L 21/301
B24B 27/06
B23Q 7/04、 7/10
B23B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物に切削加工を施す切削手段と、を備える切削装置であって、
該チャックテーブルと該切削手段とを相対的にX軸方向に加工送りするX軸送り手段と、該チャックテーブルと該切削手段とをX軸方向に直交するY軸方向に相対的に割り出し送りするY軸送り手段と、該チャックテーブルと該切削手段とをX軸方向およびY軸方向に直交するZ軸方向に相対的に切り込み送りするZ軸送り手段と、被加工物が載置される載置テーブルと、該載置テーブルに載置された被加工物を保持しY軸方向およびZ軸方向に移動して該チャックテーブルまで搬送する搬送手段とを備え、
該載置テーブルは、切削加工前の被加工物が載置される第一のテーブルと、X軸方向において該第一のテーブルに隣接して配設され切削加工後の被加工物が載置される第二のテーブルとを含み、
該第一のテーブルと該第二のテーブルとをZ軸方向に昇降させる昇降手段と、該第一のテーブルと該第二のテーブルとをX軸方向に移動させて該搬送手段の搬送経路に位置づける位置づけ手段とを備える切削装置。
【請求項2】
該第一のテーブルおよび該第二のテーブルには、被加工物を重ねて載置できるように被加工物の外周を支持する支持部が配設されている請求項1記載の切削装置。
【請求項3】
該搬送手段は、被加工物を保持する保持パッドと、一端が該保持パッドに連結され他端が該切削手段に連結されたアームとを備え、該Y軸送り手段および該Z軸送り手段によってY軸方向およびZ軸方向に該保持パッドを移動させる請求項1記載の切削装置。
【請求項4】
該アームの一端と該保持パッドとは着脱自在に連結され、該保持パッドが置かれる保持パッドテーブルを備える請求項3記載の切削装置。
【請求項5】
被加工物は、矩形の板状物である請求項1記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状の被加工物を保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持された被加工物に切削加工を施す切削手段とを備える切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、切削装置によって個々のデバイスチップに分割され、分割された各デバイスチップは携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
また、セラミックス基板、フェライト基板等も切削装置によってチップに分割される(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に開示されている切削装置は、板状の被加工物を保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持された被加工物に切削加工を施す切削手段と、被加工物が載置される載置領域と、切削加工後の被加工物を搬出する搬出ユニットと、載置領域からチャックテーブルまで切削加工前の被加工物を搬送すると共に、チャックテーブルから搬出ユニットまで切削加工後の被加工物を搬送する搬送パッドを有する搬送手段と、から概ね構成されている。
【0005】
この切削装置においては、切削手段を移動させる移動手段によって搬送パッドが移動するようになっているため、搬送パッドを移動させるためだけの専用の移動手段が設けられていない。したがって、上記切削装置は、シンプルな構成であるにもかかわらず、切削加工に加え、被加工物の搬送を自動的に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に開示されている切削装置においては、切削加工前の被加工物が載置される領域が切削装置の正面に設けられ、切削加工後の被加工物が搬出される領域が切削装置の側面に設けられているため、作業性が悪いという問題がある。
【0008】
また、オペレータは、被加工物を一枚ずつ載置領域に載置しなければならず、煩に耐えないという問題もある。
【0009】
本発明の課題は、作業性が良好な切削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発によれば、上記課題を解決する以下の切削装置が提供される。すなわち、
「板状の被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物に切削加工を施す切削手段と、を備える切削装置であって、
該チャックテーブルと該切削手段とを相対的にX軸方向に加工送りするX軸送り手段と、該チャックテーブルと該切削手段とをX軸方向に直交するY軸方向に相対的に割り出し送りするY軸送り手段と、該チャックテーブルと該切削手段とをX軸方向およびY軸方向に直交するZ軸方向に相対的に切り込み送りするZ軸送り手段と、被加工物が載置される載置テーブルと、該載置テーブルに載置された被加工物を保持しY軸方向およびZ軸方向に移動して該チャックテーブルまで搬送する搬送手段とを備え、
該載置テーブルは、切削加工前の被加工物が載置される第一のテーブルと、X軸方向において該第一のテーブルに隣接して配設され切削加工後の被加工物が載置される第二のテーブルとを含み、
該第一のテーブルと該第二のテーブルとをZ軸方向に昇降させる昇降手段と、該第一のテーブルと該第二のテーブルとをX軸方向に移動させて該搬送手段の搬送経路に位置づける位置づけ手段とを備える切削装置」が提供される。
【0011】
好ましくは、該第一のテーブルおよび該第二のテーブルには、被加工物を重ねて載置できるように被加工物の外周を支持する支持部が配設されている。
【0012】
該搬送手段は、被加工物を保持する保持パッドと、一端が該保持パッドに連結され他端が該切削手段に連結されたアームとを備え、該Y軸送り手段および該Z軸送り手段によってY軸方向およびZ軸方向に該保持パッドを移動させるのが望ましい。
【0013】
該アームの一端と該保持パッドとは着脱自在に連結され、該保持パッドが置かれる保持パッドテーブルを備えるのが好適である。被加工物は、矩形の板状物でよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の切削装置は、
板状の被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物に切削加工を施す切削手段と、を備える切削装置であって、
該チャックテーブルと該切削手段とを相対的にX軸方向に加工送りするX軸送り手段と、該チャックテーブルと該切削手段とをX軸方向に直交するY軸方向に相対的に割り出し送りするY軸送り手段と、該チャックテーブルと該切削手段とをX軸方向およびY軸方向に直交するZ軸方向に相対的に切り込み送りするZ軸送り手段と、被加工物が載置される載置テーブルと、該載置テーブルに載置された被加工物を保持しY軸方向およびZ軸方向に移動して該チャックテーブルまで搬送する搬送手段とを備え、
該載置テーブルは、切削加工前の被加工物が載置される第一のテーブルと、X軸方向において該第一のテーブルに隣接して配設され切削加工後の被加工物が載置される第二のテーブルとを含み、
該第一のテーブルと該第二のテーブルとをZ軸方向に昇降させる昇降手段と、該第一のテーブルと該第二のテーブルとをX軸方向に移動させて該搬送手段の搬送経路に位置づける位置づけ手段とを備えるので、オペレータは、切削加工前の被加工物を第一の載置テーブルに載置してから移動することなく、切削加工後の被加工物を第二の載置テーブルから回収することができ、作業性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に従って構成された切削装置の斜視図。
【
図2】
図1に示すチャックテーブルおよび載置テーブルの斜視図。
【
図5】切削加工前の被加工物が載っている第一のテーブルと、チャックテーブルとを保持パッドの搬送経路に位置づけた状態を示す概略平面図。
【
図6】第一のテーブルからチャックテーブルに切削加工前の被加工物を搬送した状態を示す概略平面図。
【
図7】被加工物に切削加工を施している状態を示す概略平面図。
【
図8】切削加工後の被加工物を保持しているチャックテーブルと、第二のテーブルとを保持パッドの搬送経路に位置づけた状態を示す概略平面図。
【
図9】チャックテーブルから第二のテーブルに切削加工後の被加工物を搬送した状態を示す概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に従って構成された切削装置の好適実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
(切削装置2)
図1に示すとおり、切削装置2は、板状の被加工物Wを保持するチャックテーブル4と、チャックテーブル4に保持された被加工物Wに切削加工を施す切削手段6と、を備える。
【0018】
(チャックテーブル4)
図1と共に
図2を参照して説明すると、切削装置2は、X軸方向に移動自在に基台8の上面に支持されたX軸可動板10と、X軸可動板10の上面に固定された支柱12とを備えている。そして、上記チャックテーブル4は、支柱12の上端に回転自在に装着されている。また、チャックテーブル4の下方には、カバー板14が配置されている。
【0019】
なお、X軸方向は
図1に矢印Xで示す方向である。また、
図1に矢印Yで示すY軸方向はX軸方向に直交する方向であり、
図1に矢印Zで示すZ軸方向はX軸方向およびY軸方向に直交する上下方向である。X軸方向およびY軸方向が規定するXY平面は実質上水平である。
【0020】
チャックテーブル4の上端部分には、吸引手段(図示していない。)に接続された多孔質の吸着チャック16が配置されている。そして、チャックテーブル4においては、吸引手段で吸着チャック16の上面に吸引力を生成することにより、吸着チャック16の上面に載せられた被加工物Wを吸引保持する。また、チャックテーブル4は、支柱12に内蔵されたチャックテーブル用モータ(図示していない。)によって、Z軸方向を軸心として回転される。
【0021】
(切削手段6)
図3に示すとおり、基台8の上面には、切削手段6を支持する支持壁18が設けられている。切削手段6は、Y軸方向に移動自在に支持壁18に支持されたY軸可動部材20と、Z軸方向に昇降自在にY軸可動部材20に支持されたZ軸可動部材22と、Z軸可動部材22に固定されたスピンドルハウジング24とを含む。
【0022】
スピンドルハウジング24には、Y軸方向を軸心として回転自在にスピンドル26が支持されており、スピンドル26の先端には、被加工物Wを切削する環状の切削ブレード28が固定されている。また、スピンドルハウジング24には、スピンドル26を回転させるモータ(図示していない。)と、切削加工を施すべき領域を検出するための撮像手段30とが設けられている。
【0023】
図1に示すとおり、切削装置2は、さらに、チャックテーブル4と切削手段6とを相対的にX軸方向に加工送りするX軸送り手段32と、チャックテーブル4と切削手段6とをY軸方向に相対的に割り出し送りするY軸送り手段34と、チャックテーブル4と切削手段6とをZ軸方向に相対的に切り込み送りするZ軸送り手段36と、被加工物Wが載置される載置テーブル38と、載置テーブル38に載置された被加工物Wを保持しY軸方向およびZ軸方向に移動してチャックテーブル4まで搬送する搬送手段40と、を備える。
【0024】
(X軸送り手段32)
図2に示すとおり、X軸送り手段32は、X軸可動板10に連結されX軸方向に延びるボールねじ42と、ボールねじ42を回転させるモータ44とを有する。X軸送り手段32は、ボールねじ42よりモータ44の回転運動を直線運動に変換してX軸可動板10に伝達し、基台8の案内レール8aに沿ってX軸可動板10をX軸方向に移動させる。これによって、切削手段6に対してチャックテーブル4がX軸方向に加工送りされる。
【0025】
(Y軸送り手段34)
図3を参照して説明すると、Y軸送り手段34は、Y軸可動部材20に連結されY軸方向に延びるボールねじ46と、ボールねじ46を回転させるモータ48とを有する。Y軸送り手段34は、ボールねじ46によりモータ48の回転運動を直線運動に変換してY軸可動部材20に伝達し、支持壁18の案内レール18aに沿ってY軸可動部材20をY軸方向に移動させる。これによって、チャックテーブル4に対して切削手段6がY軸方向に割り出し送りされる。
【0026】
(Z軸送り手段36)
Z軸送り手段36は、Z軸可動部材22に連結されZ軸方向に延びるボールねじ50と、ボールねじ50を回転させるモータ52とを有する。Z軸送り手段36は、ボールねじ50によりモータ52の回転運動を直線運動に変換してZ軸可動部材22に伝達し、Y軸可動部材20の案内レール20aに沿ってZ軸可動部材22をZ軸方向に移動させる。これによって、チャックテーブル4に対して切削手段6がZ軸方向に切り込み送りされる。
【0027】
(載置テーブル38)
図2に示すとおり、載置テーブル38は、切削加工前の被加工物Wが載置される第一のテーブル54と、X軸方向において第一のテーブル54に隣接して配設され切削加工後の被加工物Wが載置される第二のテーブル56とを含む。図示の実施形態では、第一・第二のテーブル54、56は、一体として形成されている。
【0028】
第一のテーブル54および第二のテーブル56には、被加工物Wを重ねて載置できるように被加工物Wの外周を支持する支持部58が配設されている。支持部58は、第一・第二のテーブル54、56の上面四隅から上方に延びている。
【0029】
(搬送手段40)
図4を参照して説明すると、搬送手段40は、被加工物Wを保持する保持パッド60と、一端が保持パッド60に連結され他端が切削手段6に連結されたアーム62とを備える。
【0030】
保持パッド60の下端部分には、吸引手段に接続される多孔質の吸着チャック(図示していない。)が配置されている。また、
図4に示すとおり、保持パッド60の上面には、上方に延び次いで実質上水平に延びる連結片64が付設されている。図示していないが、連結片64の端部には、角錐台状の凹部が下向きに形成されており、凹部には、吸着チャックにつながる吸引孔(図示していない。)が形成されている。
【0031】
図示の実施形態のアーム62の一端は、保持パッド60に着脱自在に連結されている。
図4において拡大して示すとおり、アーム62の一端には、連結片64の凹部に対応する角錐台状の凸部66が上向きに形成されている。凸部66の上端には、連結片64の吸引孔に対応する吸引孔68が形成されており、吸引孔68は吸引手段に接続されている。
【0032】
そして、連結片64の凹部とアーム62の凸部66とが嵌り合うことによって、保持パッド60とアーム62とが連結される。なお、保持パッド60とアーム62とが連結し保持パッド60が上昇された際に、保持パッド60が実質上水平となるように連結片64の位置が調整されている。また、保持パッド60とアーム62とが連結した状態で吸引手段が作動すると、アーム62の吸引孔68および連結片64の吸引孔を介して、保持パッド60の下面に吸引力が生成されると共に、保持パッド60とアーム62とがより強固に連結される。
【0033】
図示の実施形態では、基台8の上面には、保持パッドテーブル70が設置されており、保持パッド60とアーム62とが連結されていないときは、保持パッドテーブル70に保持パッド60が置かれるようになっている。
【0034】
アーム62の他端は、切削手段6のZ軸可動部材22に連結されている。このため、アーム62に連結されている保持パッド60は、切削手段6と共に、Y軸送り手段34およびZ軸送り手段36によってY軸方向およびZ軸方向に移動される。すなわち、切削装置2においては、保持パッド60を移動させるためだけの専用の移動手段が不要であるので、構成が複雑化せず、装置の大型化やコスト増加が抑制されている。
【0035】
搬送手段40においては、吸引手段によって保持パッド60の吸着チャックの下面に吸引力を生成し、保持パッド60の下面で被加工物Wを吸引保持する。また、搬送手段40は、Y軸送り手段34およびZ軸送り手段36によって、吸引保持した被加工物WをY軸方向およびZ軸方向に搬送する。なお、搬送手段40のY軸方向の搬送経路を
図4に符号Rで示す。
【0036】
図1および
図2に示すとおり、切削装置2は、さらに、第一のテーブル54と第二のテーブル56とをZ軸方向に昇降させる昇降手段72(
図2参照)と、第一のテーブル54と第二のテーブル56とをX軸方向に移動させて搬送手段40の搬送経路Rに位置づける位置づけ手段74とを備えている。
【0037】
(昇降手段72)
昇降手段72は、第一・第二のテーブル54、56の下部に連結された昇降部材76と、昇降部材76を昇降させる昇降機構(図示していない。)とを有する。この昇降機構は、昇降部材76に連結されZ軸方向に延びるボールねじと、このボールねじを回転させるモータとを有する構成でよい。
【0038】
(位置づけ手段74)
位置づけ手段74は、昇降部材76を介して第一・第二のテーブル54、56に連結されたX軸可動部材78と、X軸可動部材78をX軸方向に移動させるX軸移動機構(図示していない。)とを有する。このX軸移動機構は、X軸可動部材78に連結されX軸方向に延びるボールねじと、このボールねじを回転させるモータとを有する構成でもよく、あるいは、エアシリンダから構成されていてもよい。
【0039】
位置づけ手段74は、X軸移動機構を作動してX軸可動部材78を基台8の案内溝8bに沿って移動させることにより、第一・第二のテーブル54、56をX軸方向に移動させて搬送手段40の搬送経路Rに位置づけるようになっている。
【0040】
(被加工物W)
図示の被加工物Wは、矩形の板状物であり、たとえばセラミックス等から形成され得る。被加工物Wの表面は、格子状の分割予定ライン(図示していない。)によって複数の矩形領域に区画されている。また、被加工物Wの裏面には、ダイシングテープTが貼り付けられている。
【0041】
(切削方法)
次に、切削装置2を用いて、被加工物Wを切削する方法について説明する。
【0042】
(載置工程)
まず、載置テーブル38の第一のテーブル54に被加工物Wを載置する載置工程を実施する。上述したとおり、図示の実施形態の切削装置2においては、第一・第二のテーブル54、56に被加工物Wの外周を支持する支持部58が配設されているので、オペレータは、複数枚の被加工物Wを第一のテーブル54に重ねて載置することができる。なお、第一のテーブル54に被加工物Wを載置する際は、ダイシングテープTが貼り付けられている裏面を下に向ける。
【0043】
(第一の搬送工程)
載置工程を実施した後、第一のテーブル54からチャックテーブル4に被加工物Wを搬送する第一の搬送工程を実施する。
【0044】
第一の搬送工程では、まず、Y軸送り手段34およびZ軸送り手段36によって搬送手段40のアーム62を移動させ、保持パッドテーブル70に置かれている保持パッド60の凹部にアーム62の凸部66を嵌め込み、アーム62の一端に保持パッド60を連結させる。
【0045】
次いで、X軸送り手段32でチャックテーブル4をX軸方向に移動させ、
図5に示すとおり、搬送手段40の搬送経路Rにチャックテーブル4を位置づける。また、位置づけ手段74によって載置テーブル38をX軸方向に移動させ、第一のテーブル54も搬送経路Rに位置づける。
【0046】
チャックテーブル4および第一のテーブル54を搬送経路Rに位置づけたら、Y軸送り手段34およびZ軸送り手段36によって保持パッド60を移動させ、第一のテーブル54に載置されている被加工物Wの上方に保持パッド60を位置づける。次いで、支持部58との干渉を避けつつ保持パッド60を下降させ、被加工物Wの上面に保持パッド60の下面を接触させる。次いで、保持パッド60の下面に吸引力を生成し、被加工物Wを保持パッド60で吸引保持する。
【0047】
次いで、Z軸送り手段36によって保持パッド60を上昇させ支持部58から被加工物Wを搬出し、そして、
図6に示すとおり、Y軸送り手段34およびZ軸送り手段36によって保持パッド60で吸引保持した被加工物Wをチャックテーブル4に搬送し、チャックテーブル4の上面に吸引力を生成すると共に、保持パッド60の吸引力を解除して、保持パッド60からチャックテーブル4に被加工物Wを受け渡す。
【0048】
次いで、Y軸送り手段34およびZ軸送り手段36を作動させ、保持パッド60を保持パッドテーブル70の上面に置くと共に、保持パッド60とアーム62との連結を解除する。これによって、被加工物Wを切削手段6で接触する際に、保持パッド60と切削装置2の他の部材とが干渉してしまうのが防止される。
【0049】
(切削工程)
第一の搬送工程を実施した後、切削手段6の切削ブレード28によって被加工物Wの分割予定ラインを切削して、被加工物Wを個々のチップに分割する切削工程を実施する。
【0050】
切削工程では、まず、チャックテーブル4を移動させ、撮像手段30の下方に被加工物Wを位置づける。次いで、被加工物Wを撮像手段30で撮像し、撮像手段30で撮像した被加工物Wの画像に基づいて、分割予定ラインをX軸方向に整合させる。また、X軸方向に整合させた分割予定ラインの上方に切削ブレード28を位置づける。
【0051】
次いで、高速回転させた切削ブレード28の刃先を被加工物Wの表面から裏面に至るまで切り込ませると共に、切削ブレード28の刃先を切り込ませる部分に切削水を供給しながら、チャックテーブル4をX軸方向に加工送りする。これによって、被加工物Wを完全に分割する深さの分割溝80(
図7参照)を分割予定ラインに沿って形成することができる。
【0052】
そして、
図7に示すとおり、分割予定ラインのY軸方向の間隔の分だけ、チャックテーブル4に対して切削ブレード28をY軸方向に割り出し送りしながら、分割溝80の形成を繰り返す。このようにして、X軸方向に整合させた分割予定ラインのすべてに沿って分割溝80を形成する。
【0053】
また、チャックテーブル4を90度回転させた上で、割り出し送りしながら分割溝80の形成を繰り返し、先に分割溝80を形成した分割予定ラインと直交する分割予定ラインのすべてに沿って分割溝80を形成する(
図8参照)。これによって、被加工物Wを個々のチップに分割することができる。
【0054】
なお、分割溝80を形成する際は、ダイシングテープTを完全には切断しないようにする。これにより、チップに分割した後も、ダイシングテープTによって切削加工前の被加工物Wの形態を保つことができる。
【0055】
(第二の搬送工程)
切削工程を実施した後、チャックテーブル4から第二のテーブル56に被加工物Wを搬送する第二の搬送工程を実施する。
【0056】
第二の搬送工程では、まず、Y軸送り手段34およびZ軸送り手段36によって搬送手段40のアーム62を移動させ、保持パッドテーブル70に置かれている保持パッド60の凹部にアーム62の凸部66を嵌め込み、アーム62の一端に保持パッド60を連結させる。
【0057】
次いで、
図8に示すとおり、搬送手段40の搬送経路Rにチャックテーブル4を位置づける。また、位置づけ手段74によって第二のテーブル56も搬送経路Rに位置づける。
【0058】
チャックテーブル4および第二のテーブル56を搬送経路Rに位置づけたら、Y軸送り手段34およびZ軸送り手段36によって保持パッド60を移動させ、チャックテーブル4に吸引保持されている切削加工後の被加工物Wの上面に保持パッド60の下面を接触させる。次いで、保持パッド60の下面に吸引力を生成し、被加工物Wを保持パッド60で吸引保持する。また、チャックテーブル4の吸引力を解除する。
【0059】
次いで、Y軸送り手段34およびZ軸送り手段36によって保持パッド60を移動させ、
図9に示すとおり、保持パッド60で吸引保持した被加工物Wを第二のテーブル56に搬送する。そして、保持パッド60の吸引力を解除して、保持パッド60から第二のテーブル56に切削加工後の被加工物Wを受け渡す。
【0060】
なお、切削加工後の被加工物WはダイシングテープTで支持されているものの腰がなくへたっているので、被加工物Wを搬出するためのトレーを第二のテーブル56に載置しておくことが好ましい。
【0061】
以上のとおり、切削装置2においては、切削加工前の被加工物Wが載置される第一のテーブル54と、切削加工後の被加工物Wが載置される第二のテーブル56とがX軸方向において隣接して配設されている。したがって、オペレータは、切削加工前の被加工物Wを第一の載置テーブル54に載置してから移動することなく、切削加工後の被加工物Wを第二の載置テーブル56から回収することができるので、作業性が良好である。
【0062】
また、図示の実施形態の第一・第二のテーブル54、56には、被加工物Wの外周を支持する支持部58が配設されているので、オペレータは、複数枚の被加工物Wを第一のテーブル54に重ねて載置することができる。このため、切削装置2においては、切削加工前の被加工物を一枚ずつ載置領域に載置しなければならず煩に耐えないという問題が解消されている。
【符号の説明】
【0063】
2:切削装置
4:チャックテーブル
6:切削手段
32:X軸送り手段
34:Y軸送り手段
36:Z軸送り手段
38:載置テーブル
40:搬送手段
54:第一のテーブル
56:第二のテーブル
58:支持部
60:保持パッド
62:アーム
72:昇降手段
74:位置づけ手段
W:被加工物