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特許7732142改善された冷却特性を有する極低温サンプルの調製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-25
(45)【発行日】2025-09-02
(54)【発明の名称】改善された冷却特性を有する極低温サンプルの調製方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/42 20060101AFI20250826BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20250826BHJP
【FI】
G01N1/42
G01N1/28 F
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022052739
(22)【出願日】2022-03-29
(65)【公開番号】P2022159113
(43)【公開日】2022-10-17
【審査請求日】2024-04-03
(31)【優先権主張番号】21166358.8
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】マールテン クイユペール
(72)【発明者】
【氏名】エルヴェ-ウィリアム レミジー
(72)【発明者】
【氏名】マティユス ペトルス ウィルヘルムス ファン デン ボーガールト
(72)【発明者】
【氏名】エイドリアン コー
(72)【発明者】
【氏名】イヴァンカ スペー
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン ハゼンベルク
(72)【発明者】
【氏名】マリウス ファン デル ドーズ
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0255313(US,A1)
【文献】特開2019-105635(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107525710(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0069119(US,A1)
【文献】特開昭52-090619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 1/00 - 9/00 、
G01N 1/00 - 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温流体のサンプルを調製する方法であって、前記サンプルが、極低温流体を使用する急冷却に供され、前記方法が、
のサンプルキャリア上にサンプルを提供するステップと、
-極低温流体を輸送するための2つの導管を提供するステップであって、前記2つの導管の各々の各端部は先端に向けて広がったフレア状に形成されており、前記2つの導管の一端同士が、を介して互いに対向するように配置されている、ステップと、
-前記間隙に前記サンプルを有する前記サンプルキャリアを載置するステップと、
-前記導管の前記一端の各々から極低温流体が同時にフラッシュするように、前記導管の他端の各々から極低温流体をポンプ圧送又はピストン作用により前記導管に流入させるステップであって、それによって2つの対向する側からの極低温流体に前記サンプルを急激に浸漬する、送り出すステップと、を含み、
前記導管の前記一端の少なくとも一方にノズルプレートを設け、前記ノズルプレートは少なくとも2つのノズル開口部を備え、方法。
【請求項2】
前記ノズルプレートが、前記ノズルプレートの中央部分配置された中央ノズルと、前記中央ノズルの周辺に配置された少なくとも1つの周辺ノズルと、を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記中央ノズルおよび前記周辺ノズルが、一のサイズである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ノズルプレートは、前記中央ノズルの周りに均一に配置された少なくとも6つの周辺ノズルをえる、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも2つのノズル開口部は同一の形状を有し、前記ノズルプレートの中心軸を介して対称的に配置されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記中央ノズルが、前記少なくとも1つの周辺ノズルと比較して、より小さいサイズを有する請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記導管の前記一端の他方に前記ノズルプレートをさらに設け、前記ノズルプレートは前記少なくとも2つのノズル開口部を備え、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
-前記導管が、プランジャ内に配置され、前記導管の前記他端が、前記プランジャの下側に入口開口を有し、前記間隙が、前記プランジャの上側のスロットとして設けられ、
-前記プランジャの下に極低温流体の槽が設けられ、
-前記サンプルが、前記プランジャに下向きの圧力を加えるツールを用いて前記スロットに挿入され、それによって前記プランジャを前記槽内の極低温流体に少なくとも部分的に浸漬し、かつ前記槽における極低温流体を前記入口開口に流入させて前記導管の前記一端を介して出す、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記2つの導管の両方らの前記フラッシュが、時に開始するが、前記2つの導管の一方からの前記フラッシュが、所与の時間間隔の後に終了されるように、前記2つの導管の一方の他端を閉じる遮蔽が前記他端に接続される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
-前記プランジャ、少なくとも1つのシール要素によって囲まれており、前記少なくとも1つのシール要素は前記槽内の極低温流体の表面レベルに提供され得、前記プランジャに接続されて前記プランジャと共に移動することができ、
-前記プランジャ少なくとも1つのさらなるシール要素によって囲まれ、前記さらなるシール要素は、前記少なくとも1つのシール要素から離れて、前記槽内の極低温流体に接しない位置に位置決めされ、前記プランジャに接続されて前記プランジャと共に移動することができ、
前記少なくとも1つのシール要素と前記少なくとも1つのさらなるシール要素との間にはチャネルが形成され、
前記プランジャ内には、前記間隙と前記チャネルとを連通させることができ、前記2つの導管から分離されている、さらなるチャネルを設け、
記プランジャを前記槽内の極低温流体に浸漬した後に、前記チャネルと前記さらなるチャネルを介して前間隙から低温流体を除去する請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
極低温流体のサンプルを調製するための装置であって、それによって、前記サンプルが、極低温流体を使用する急冷却に供され、前記装置が、
-極低温流体を輸送するための一対の導管であって、前記一対の導管の各々の各端部は先端に向けて広がったフレア状に形成されており、前記導管の一端同士が隙を介して互いに対向するように配置されており、前記間隙には平面のサンプルキャリア設けられており、前記サンプルキャリア内にサンプルが受容され得る、一対の導管と、
-前記導管の前記一端の各々から極低温流体が同時にフラッシュするように前記導管の他端の各々から極低温流体をポンプ圧送又はピストン作用により流入させ前記サンプルを2つの対向する側からの極低温流体に漬するためのフラッシュ機構と、を備え、
前記導管の前記一端の少なくとも一方にノズルプレートを備え、前記ノズルプレートは少なくとも2つのノズル開口部を備える、装置。
【請求項12】
求項2~のうちの1項記載の方法で使用されるように構成された前記ノズルプレートを有する、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
-前記導管が、プランジャ内に配置されており、前記導管の前記他端が、前記プランジャの下側に入口開口を有し、前記間隙が、前記プランジャの上側のスロットとして設けられており
-前記プランジャの下に極低温流体の槽が設けられており
-前記サンプルが、前記プランジャに下向きの圧力を加えるツールを用いて前記スロットに挿入され、それによって前記プランジャを前記槽内の極低温流体に少なくとも部分的に浸漬し、かつ前記槽における極低温流体を前記入口開口に流入させて前記導管の前記一端を介して出す、請求項11または12に記載の装置。
【請求項14】
求項8~10のうちの1項記載の方法で使用されるように構成された前記プランジャを有する、請求項13に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
概要
本発明は、極低温サンプルを調製する方法に関し、サンプルは、極低温剤を使用する急冷却に供され、かつ方法は、実質的に平面のサンプルキャリア上にサンプルを提供するステップと、それぞれが極低温流体を輸送するための2つの導管を提供するステップであって、導管の各々が、マウスピースに開いており、マウスピースが、介在する間隙にわたって互いに対向するように配置されている、極低温流体を輸送するための2つの導管を提供するステップと、サンプルキャリアを間隙に載置して、マウスピースから同時にフラッシュするように導管を通して極低温流体をポンプ圧送して、それによって2つの対向する側からの極低温流体にサンプルを急激に浸漬するステップと、を含む。
【0002】
本発明はさらに、このような方法を実行する装置に関する。
【背景技術】
【0003】
用語「極低温剤」は、極低温の温度、すなわち-150℃以下の極低温での液体を指すと解釈されるべきである。そのような極低温剤の例には、液体エタン、液体プロパン、液体酸素、およびこれらの混合物が含まれる。
【0004】
荷電粒子顕微鏡法は、特に電子顕微鏡法の形式で顕微鏡物体を撮像するための周知の、かつますます重要な技術である。歴史的に、基本的な種類の電子顕微鏡は、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、および走査透過型電子顕微鏡(STEM)のような多くの周知の装置類に進化してきており、さらには、例えば、イオンビームミリングまたはイオンビーム誘導蒸着(IBID)のような支援作用を可能にする「machining(機械加工)」集束イオンビーム(FIB)をさらに用いた、いわゆる「dual-beam(デュアルビーム)」ツール(例えば、FIB-SEM)のような様々な補助装置類に進化してきている。より具体的には、
-SEMにおいて、走査型電子ビームによるサンプルの照射は、二次電子、後方散乱電子、X線およびフォトルミネッセンス(赤外線、可視および/または紫外光子)の形態でサンプルからの「補助」放射線の発散を促進し、例えば、発散放射線の束の1つ以上の成分が検出され、画像蓄積の目的で使用される。
-TEMにおいて、サンプルに照射するのに使用される電子ビームは、サンプルに浸透するのに十分高いエネルギーであるように選択され(このため、SEMサンプルの場合よりも概して薄い)、サンプルから発散された透過電子の束を使用して画像を生成することができる。このようなTEMが走査モードで動作される(したがって、STEMになる)と、照射電子ビームの走査運動中にその画像が蓄積される。
【0005】
照射ビームとしての電子の使用の代替として、荷電粒子顕微鏡法は、荷電粒子の他の種を使用して実行することもできる。この点に関して、「荷電粒子」という句は、例えば電子、正イオン(例えば、GaイオンまたはHeイオン)、負イオン、陽子、および陽電子を含むものとして広く解釈されるべきである。
【0006】
撮像、および(局所的な)表面改質(例えば、ミリング、エッチング、蒸着など)の実行に加えて、荷電粒子顕微鏡はまた、分光法の実行、回折図の検査など他の機能を有し得ることに留意されたい。
【0007】
すべての場合において、荷電粒子顕微鏡(CPM)は、少なくとも以下の構成要素を備える。
-ショットキー電子源またはイオンガンのような放射線源。
-ソースからの「生の」放射線ビームを操作し、その上に、このような集束、収差軽減、(開口部で)クロッピング、フィルタリング、などのような特定の操作を実行するのに役立つ照明装置。それは、全般的に、1つ以上の(荷電粒子)レンズを備え、他のタイプの(粒子)光学構成要素も備えることができる。所望される場合、照明装置は、その出力ビームが調査されるサンプルにわたって走査運動を実行するように起動されることができる偏向器システムを備えることができる。
-調査中のサンプルを保持して配置することができる(例えば、傾け、回転させた)サンプルホルダ。所望される場合、このホルダを移動させて、サンプルに対してビームの走査運動を行うことができる。概して、このようなサンプルホルダは、機械的ステージのような位置決めシステムに接続される。ホルダは、所与の(高温または低温)温度範囲内でサンプルを維持するための手段を備え得、本発明の具体的な状況では、典型的に、サンプルを極低温の温度で維持するための手段を備える。
性質において単一または複合/分散型であり得、検出される放射線に応じて、多くの異なる形態を採ることができる検出器(照射されたサンプルから発散される放射線を検出するため)。例としては、フォトダイオード、CMOS検出器、CCD検出器、光起電力セル、X線検出器(シリコンドリフト検出器およびSi(Li)検出器など)などが挙げられる。概して、CPMは、いくつかの異なるタイプの検出器を備え得、検出器の選択は、異なる状況において導き出すことができる。
【0008】
透過型顕微鏡(例えば、(S)TEMなど)の場合、CPMは、以下を備える。
-検出/撮像デバイス、分光装置(例えば、EELSモジュール;EELS=電子エネルギー損失分光法)などのような分析装置上にサンプル(平面)を透過してそれらを方向付ける(合焦させる)荷電粒子を本質的に取り込む撮像システム。上記で言及した照明装置と同様に、撮像システムはまた、収差緩和、クロッピング、フィルタリング、などのような他の機能を実行することができ、それは概して、一つ以上の荷電粒子レンズおよび/または他のタイプの光学粒子構成要素を備える。
【0009】
以下では、本発明は、例により、電子顕微鏡の具体的な状況でたびたび説明される。しかしながら、そのような簡略化は、明瞭性/例示目的のためにのみ意図されており、限定として解釈されるべきではない。
【0010】
水性液体(水、電解質、細胞液、血漿など)の本体内で保存および観察される必要がある生物試料(細胞、細胞成分、単細胞生物など)は、以下のことから、CPMでの検査に対して重大な課題を提示することができる。
-CPMの(擬似)真空環境に導入された水性液体は、ガスの発散/沸騰を開始し、したがって試料を劣化させる傾向がある。
-これを防止するために、サンプル(試料+水性液体)をまず真空中に導入する前に凍結させることができる。
-しかしながら、(鋭い)氷晶の形成によって引き起こされる試料の損傷を防止するために、このような凍結は、著しい氷結晶化なしにサンプルガラス化(非晶質、ガラス様相への凝固)を達成する目的で、一般に非常に急速に行われなければならない。
【0011】
このようなガラス化を容易にするために、またTEMのような透過型CPMで試料を検査することができるようにするためには、サンプルは比較的薄く(シート状)されるべきであるが、それでもそのエッジでそれを支持することができるはずである(使用された支持手段がビームの透過に大きな影響を与えないように)。この目的のために、典型的に、格子状のホルダ(いわゆるTEM Autogrid(登録商標)など)で作製されており、その中に穿孔された膜(いわゆる「穴の開いた炭素膜」)が広げられており、その穿孔に、少量のサンプルが(表面張力効果によって)保持することができる場合に使用する。例えば、図1を参照されたい。
【0012】
上記冒頭の段落に記載された方法は、本出願と同じ発明者/譲受人を有し、参照により本明細書に組み込まれている、US2017/0169991A1(EP3179229A1としても発行)およびUS2019/0180974A1(EP3495798A1としても発行)から周知である。前記文献に記載された技術は、それ以前の従来技術と比較して大幅な改善をもたらした。
【0013】
本発明の目的は、ガラス化によって極低温サンプルを調製する改善された方法を提供することである。特に、本発明の目的は、そのような方法が、従来技術と比較してより一貫した結果、ならびにサンプル全体にわたってより一貫した結果を生成するべきであることである。
【0014】
これらおよび他の目的は、請求項1に定義の極低温サンプルを調製する方法で達成される。この方法では、サンプルは、極低温剤を使用する急冷却に供される。この方法は、実質的に平面のサンプルキャリア上にサンプルを提供するステップと、極低温流体を輸送するための2つの導管を提供するステップであって、導管の各々がマウスピースの中に開いており、マウスピースが、介在する間隙にわたって互いに向き合うように配置されている、ステップと、サンプルを有するサンプルキャリアを間隙に載置するステップと、を含む。本明細書に定義されるように、方法は、マウスピースから同時にフラッシュするように導管を介して極低温流体をポンプ圧送するステップを含み、それにより、2つの対向する側からの極低温流体にサンプルを急激に浸漬する。
【0015】
この方法によれば、マウスピースのうちの少なくとも1つは、少なくとも2つのノズル開口部を備える。ノズル開口部は、液体極低温剤をサンプルキャリアの少なくとも片側により均一に分配するように配置されている。ノズル開口部は、フラッシング中に実質的に平面のサンプルキャリアをより均一に冷却することを可能にする。少なくとも2つのノズル開口部を提供することにより、少なくとも2つのノズル開口部から発散するジェットがサンプルキャリアの2つの別個の部分を一度に冷却することができるので、サンプルキャリアの表面全体をより均一に冷却することが可能である。これにより、サンプルキャリアの2つの異なる部分を同時にガラス化することができ、サンプルキャリアの大部分よりもサンプル品質の向上をもたらす。
【0016】
2つのノズル開口部により、例えば、サンプルキャリアの周辺部分が、サンプルキャリアの中心部分と少なくとも同時に冷却されることが可能である。これは、サンプルのガラス化がサンプルキャリアの周辺部分とサンプルキャリアの中心部分で実質的に同時に起こることを可能にするので有利である。これは、実質的に平面のサンプルキャリアの取り扱いを改善するためにサンプルキャリアが機械的輪郭で事前に組み立てられている場合に特に当てはまる。このような機械的輪郭は、それ自体、例えばいわゆるクリップリング(AutoGridとも呼ばれる)の形で周知である。そのような機械的輪郭は、通常、実質的に平面のサンプルキャリアと比較して、比較的大きな寸法(したがって、比較的大きな質量)を有する。質量が比較的大きいため、極低温冷却によるフラッシング中に機械的輪郭が多くの熱を保持する。これにより、機械的輪郭と比較して比較的低温のサンプルキャリアが生じ得、実際には、機械的輪郭からサンプルキャリアへの熱伝達が発生し得る。これを防止するために、本明細書に記載の本発明は、フラッシング中に実質的に平面のサンプルキャリアを均一に冷却するための少なくとも2つのノズル開口部を提供する。これにより、サンプルの改善されたガラス化が得られ、本明細書で定義される目的が達成される。
【0017】
EP3475681B1は、極低温条件下で撮像するためのサンプルを調製する方法を開示し、液体冷却剤のジェットが、サンプルが最初にサンプルキャリアの中心で、そしてそこからサンプルキャリアの端に向かってガラス化されるように使用されることに留意されたい。しかしながら、このアプローチは、サンプルキャリアの周囲部分を少なくともサンプルキャリアの中心部分と同時に冷却することを可能にしないので、理想的ではないことが見出された。これにより、全体的なサンプル品質が低下する可能性があり得る。対照的に、本明細書に記載の本発明は、フラッシング中に実質的に平面のサンプルキャリアを均一に冷却するための少なくとも2つのノズル開口部を提供する。これにより、サンプルのガラス化がサンプルキャリア全体にわたってより均一に起こり得、ノズル開口部は、サンプルキャリアの中心部分と同時に少なくともサンプルキャリアの周辺部分を冷却するように配置され得る。追加的に、機械的輪郭からサンプルキャリアへの熱流束に対抗するために少なくとも2つのノズルを使用することができ、その結果、機械的輪郭が使用される場合でさえ、サンプルはより均一に冷却およびガラス化される。
【発明の概要】
【0018】
有利な実施形態について以下に説明する。
【0019】
一実施形態では、少なくとも2つのノズル開口部が、実質的に平面のサンプルキャリアの中央部分を冷却するように配置された中央ノズルと、実質的に平面のサンプルキャリアの周辺部分を冷却するように配置された少なくとも周辺ノズルと、を備える。このようにして、サンプルキャリアの周辺は、少なくともサンプルキャリアの中央部分と同時に冷却されることができる。サンプルキャリアの周辺は、サンプルキャリアの中央部よりも時間的に早く冷却されると考えられる。これは、機械的輪郭が使用される場合に有利である。中央ノズルと少なくとも周辺ノズルを使用することにより、周辺部分を中央部分より少し早く冷却することで、機械的輪郭からサンプルキャリアの周辺部分への前述の熱伝達に対抗することが可能である。これは、サンプルキャリア上のサンプルのより均一な冷却とガラス化に役立つ。
【0020】
一実施形態では、少なくとも2つのノズル開口部が、実質的に平面のサンプルキャリア上に極低温流体の実質的に同一のフラッシュを提供するために配置される。フラッシュは、温度、冷却剤、流速、流動時間、流圧、流速、総流量、および流量サイズの1つ以上に関して実質的に同一である可能性がある。
【0021】
別の実施形態では、少なくとも2つのノズル開口部が、実質的に平面のサンプルキャリア上に極低温流体の実質的に不均等なフラッシュを提供するために配置される。
【0022】
一実施形態では、中央ノズルが、少なくとも1つの周辺ノズルと比較して、極低温流体のより低いフラッシュを確立するために配置される。
【0023】
一実施形態では、中央ノズルおよび周辺ノズルは、サイズが実質的に同一である。このように、ノズルの各々によるサンプルキャリアの影響を受ける領域は実質的に同じである。別の実施形態では、中央ノズルは、少なくとも1つの周辺ノズルと比較して、より小さな寸法を有する。これにより、周辺ノズルをもう少し冷却できるため、サンプルキャリア上のサンプル全体をより均一に冷却およびガラス化することができる。
【0024】
マウスピースの少なくとも1つは、複数の周辺ノズルを備えると考えられる。特に、2つ、3つ、4つ、または5つの周辺ノズルを備えた実施形態は、サンプルキャリア全体のより均一な冷却を提供する。周辺ノズルは、マウスピースの周囲に均等に配置することができ、特に中央ノズルの周りに均等に配置することができる。
【0025】
一実施形態では、ノズルプレートは、少なくとも6つの周辺ノズルを備える。6つの周辺ノズルは、中央ノズルの周りに均等に配置することができる。この配置では、極低温流体でのフラッシング中のサンプルキャリア全体にわたるより均一な温度分布に関して優れた結果を提供することが見出された。各ノズルは、与えられた時間にサンプルキャリアのより局所的な冷却を可能にする。周辺ノズルは、実質的に同じサイズであり得る。中央のノズルは、周辺のノズルと同じサイズであるか、または中央のノズルは、周辺のノズルと比較してわずかに小さい場合がある。
【0026】
本明細書で定義されるように、マウスピースの1つは、少なくとも2つのノズル開口部を備える。2つのマウスピースのうちの他方の1つもまた、少なくとも2つのノズル開口部を備えると考えられる。これらの少なくとも2つのノズル開口部は、これ以降、「さらなるノズル開口部」とも称される。ノズル開口部は、サンプルキャリアの第1の側のより均一な冷却を提供し、さらなるノズル開口部は、サンプルキャリアの反対側のより均一な冷却を提供する。ノズル開口部およびさらなるノズル開口部を提供することにより、少なくとも2つのノズル開口部によって前述したのと同様の方法で、サンプルキャリアの両側でより均一な冷却が可能である。より均一な冷却が提供され得、ここで、冷却は、サンプルキャリアの両側で等しくあり得、または冷却は、サンプルキャリアの両側で実質的に異なり得る。
【0027】
一実施形態では、さらなるノズル開口部は、単一の中央ノズル開口部と、中央ノズル開口部の周りに均等に分布して提供される6つの周辺ノズル開口部と、を備える。この実施形態では、2つのマウスピースを同様に具現化することができ、すなわち、それぞれが中央のノズル開口部および6つの周辺ノズル開口部を有し、各ノズル開口部は実質的に同じ寸法を有する。
【0028】
単一のマウスピースのノズル開口部は、対応する導管に直接接続することができるので、単一の導管を使用して、利用可能なノズル開口部に極低温液体を輸送することができる。しかしながら、各ノズル開口部は、それ自身の導管を備えると考えられる。特定のノズル開口部に極低温流体を提供する方法は、それ自体、当業者に知られている。一実施形態では、マウスピースは、単一の導管を覆うノズルプレートとして形成することができ、ノズル開口部は、ノズルプレートに設けられる。これにより、単一の導管で、ノズルプレートのすべてのノズル開口部に所望の極低温流体を供給することができる。
【0029】
この方法によれば、第1のマウスピースからの極低温流体のフラッシュは、第1のマウスピースからの極低温流体のフラッシュが第2のマウスピースから加えられたものと異なるように、所与の時間間隔の後に低減される。これは、サンプルの裏側の冷却(マウスピースの一方の側)および前側(マウスピースの対向する)に関して、意図的な非対称/視差を生成する。
【0030】
別の実施形態では、第1のマウスピースから適用される極低温流体のフラッシュは、所与の時間間隔の後に変更され、その結果、時間間隔の後の第1のマウスピースからの極低温流体のフラッシュは、時間間隔の前の第1のマウスピースからの極低温流体のフラッシュとは異なる。一実施形態では、ノズルの1つからのフラッシュは変更されるが、ノズルの別の1つからのフラッシュは同じままである。これにより、例えば、周囲のノズルからのフラッシュを一定に保ちながら、中央のノズル開口部からのフラッシュを低減または排除することができる。これは、サンプルキャリアで提供されるサンプルを保護するのに役立ち得る。
【0031】
別の実施形態では、第1のマウスピースから適用される極低温流体のフラッシュは、第2のマウスピースから適用される極低温流体のフラッシュと実質的に同一である。
【0032】
完全性を期すために、マウスピースからフラッシュされる極低温流体は、液体または(乾燥した)気体/蒸気であってもよく、マウスピースごとに同じであっても異なっていてもよく、全般的に、液体は、とりわけ、液体の熱容量がより大きく、貯蔵およびポンプ圧送が比較的容易であることから、気相流体よりも好ましい傾向があることが認識されるべきである。所望される場合、少なくとも2つのノズル開口部のうちの1つ以上は、例えば層流および/または特定の流れのパターンを達成するために、メッシュ(ふるい)または他の形態の流路細分割を含み得ることにも留意するべきである。上で示唆したように、このメッシュは両方のマウスピースで同じである必要はない。
【0033】
実施形態では、低減は、所与の時間間隔の後に、第1のマウスピースからのフラッシュを終了するステップを含む。したがって、一方側は、反対側と比較してより長い期間冷却される。
【0034】
本発明による設定では、極低温流体は、例えば、一つ以上の(電気)ポンプを用いて使用導管を通してポンプ圧送することができ、これらは必要に応じてオン/オフに切り替えることができ、および/またはバルブシステムを使用して自由に導管内の流れを開閉することができる。そのような構成は、例えば、本発明の(一実施形態による)導管の一方における流速および/または流動時間が、他方の導管における流量および/または流動時間と異なることを可能にする。
【0035】
代替的な実施形態では、導管がプランジャ内に配置され、それによって、各導管が、プランジャの下側に入口開口を有し、間隙が、プランジャの上面でスロットとして提供され、極低温流体の槽が、プランジャの下に提供され、サンプルが、プランジャに下向きの圧力を加えるツールを使用してスロットに挿入され、それによって、プランジャを少なくとも部分的に沈め、槽での極低温流体を入口開口に流入させ、マウスピースを介して出させる、「手動ポンプ圧送」設定からなる。
【0036】
このような構成は、ピストンに使用されるのと同様の流体変位機構(ピストンプランジャがピストンヘッドの役割を果たす(オーバーフロー導管を備え、極低温槽がピストンチューブに含まれる)と同様のもの)を効果的に利用する。これは、前述のUS2017/0169991A1で説明されている構成に類似している。前述のUS2019/0180974に記載されている変更も組み込むことができる。これらの変更により、マウスピースの各々から極低温流体の異なるフラッシュの生成を可能とする。これを達成する1つの方法は、所与の時間間隔の後に、第1のマウスピースに接続された導管のうちの第1の導管を閉じるために遮蔽を使用することである。このような遅らされた遮蔽を行うための好都合な方法は、プランジャが、槽に沈められ、第1の開口が、第1の導管に接続され、槽の表面の下に選択された距離dにおいて、配設された蓋(カバー、ブランキング部材)と係合し、蓋が、第1の開口を閉じたままにするために、プランジャと共移動する。そのようなシナリオは、例えば、図3A~3Cに示されている。プランジャが垂直速度vで沈められた場合、プランジャのフラッシング/押し下げが開始された後、所与の時間t=d/v(例えば40~60ミリ秒などの、例えば10~100ミリ秒の範囲)で遮蔽を係合させるようにdを選択することができる。遮蔽自体は、例えば、
-例えば、採用された極低温剤槽で本質的に浮力のあることを具現化、および/または人為的に「浮力」させることが、例えばバネ機構を用いて上方に付勢することによって行われる。このようにして、プランジャがそこから外れるとき(上/戻し「ストローク」で)、遮蔽は上方に戻る(デフォルト/初期位置に戻る)。
-ガイド/レールに取り付けて、モーションを垂直パスに拘束する。
-調節可能なストッパを使用して、一定のレベル(深さd)以上に上昇するのを抑制する。
【0037】
以前の段落で説明したように、本実施形態では、以下のことに留意するべきである。
-問題の「ツール」は、例えば、ピンセットまたはペンチであってもよく、これを使用して試料片の端部を把持することができる。そのようなツールは、例えば、ツール(スロットの)の挿入運動を、プランジャの共移動(下方へ)に変換するために、プランジャの頂部(またはその上の何らかの構造体)と係合する突起、バーまたは局所拡大部のような特徴を含み得る。
-プランジャは、最初に(浅く)極低温剤槽に浮かび得るか、または代替的に、槽の上にぶら下がり得る。
図3A~3Cでの描写は、サンプル平面が垂直に配向され、極低温流体がマウスピースから水平にフラッシュされるシナリオを描いているが、必ずしもそうである必要はない。代わりに、例えば、サンプル平面が水平に配向され、マウスピースがその上下に配置され、極低温流体がマウスピースから垂直にフラッシュされる構成を構築することができる。両方のシナリオでは、両方の導管の(累積)長さを実質的に等しくして、プランジャが好適に沈められたとき両方のマウスピースから極低温流体が実質的に同期して配給されるようにすることが望ましい。
-プランジャは、極低温の温度での使用に適合する(例えば、脆性の点で)限り、様々な材料で作ることができる。例としては、例えば、ステンレス鋼、チタンおよび(特定の)セラミックスが挙げられる。
【0038】
上記のようなグリッド/膜、または、例えば、フレーク/ウェーハ片のような対向して位置された主表面を有する実質的に平面のサンプルの場合、本発明を適用するときには、以下の考察が(拘束力のない)指針を提供する。
-マウスピースの各々に、末端/極限/円周周囲を関連付けることができる。これは、典型的に、円形であるが、これは、必ずしもそうである必要はない。
-これらの周囲は、理想的には共通軸の中心に配置される。
-中央のノズル開口部を使用する場合、この中央のノズル開口部は、この共通軸と整列され得る。
-この共通軸は(ほぼ)垂直/直交角度で(平面)サンプルの平面と交差する。共通軸は理想的にはサンプルの幾何学的中心/質量中心/重心を通過する。
-公称では、サンプルは、マウスピースから等距離になるように配置される(または、グリッドに広げられた膜を含むサンプルの場合、膜がマウスピースから等距離になるように)。サンプル/膜が特定のマウスピースに近い場合、例えば、以下のようにして、サンプルの前側と裏側のフラッシングを同時に開始することができる。
-特定のマウスピースに接続された導管への低温流体のポンプ圧送をわずかに遅延させるか、または/さらに
-特定のマウスピースに接続された導管を、他のマウスピースに接続されている導管よりわずかに長くする。
【0039】
サンプルが沈められる極低温剤槽に関しては、使用される極低温剤に関連して様々な選択肢がある。例えば、様々な実施者が液体エタン/プロパン混合物を用いることを報告している。本発明の特定の実施形態では、槽中の極低温流体は-160℃~-183℃の範囲の温度で液体エタン(他の構成成分の実質的な量なし)を含む。プランジ冷却でサンプルをガラス化するとき、「より冷たい方がよい」という規則に従う傾向がある。しかしながら、約-183℃未満の温度では、液体エタンが非常に粘性になり、サンプルホルダに付着するなどしてプランジングプロセスを妨げる可能性があることが観察されてきた。したがって、このレベルを超える温度(例えば、-175℃)が全般的に好ましい。
【0040】
試料の良好ガラス化を達成するために、本発明のマウスピースから極低温流体への曝露は、比較的急激、つまり、「フラッシュ」という用語でなければならない。マウスピースの少なくとも1つに2つのノズル開口部を使用すると、サンプルキャリア全体の増大した領域で極低温流体が急激に露出するのに役立つ。マウスピースからの極低温流体への曝露がより漸進的/拡張的である場合、サンプルが(少なくとも部分的に)結晶形態に凍結して非晶質化するよりもむしろ危険であり、これは本発明の状況においては望ましくない。ノズル開口部は、サンプルの(グリッド/膜)厚さ、使用される極低温流体の温度、マウスピースのノズル開口部によって生成される圧力/流れのパターンなどの様々な要因に依存して所望の流れを確立するために調整/最適化することができる。限定されない例として、少なくとも2つのノズル開口部からの途切れないフラッシュは、例えば5~200ミリ秒の範囲の公称持続時間を有し得、グリッド上にホーリー膜を含むサンプルの場合、ホーリー膜中の水性フィルムのガラス化を生成することに加えて、グリッドから十分な程度に残留熱が除去されることを保証して、グリッドからの熱漏れによる膜の望ましくない「再加熱」を防止する、または機械的支持部からの熱漏れによるサンプルキャリアの望ましくない「再加熱」を防止する。ガラス化が起こった後、水性フィルムの温度は望ましくない結晶性氷の形成を防止するために約-145℃未満に維持されることが好ましい。当業者は、本発明の所与の実施形態に関連する構成およびパラメータに合わせたフラッシュ持続時間を選択することができるであろう。
【0041】
一実施形態では、両方のマウスピースからのフラッシュは実質的に同時に開始するが、第1のマウスピースからのフラッシュは、所与の時間間隔の後に終了する。さらなる実施形態では、遮蔽を使用して、ある時間間隔の後に、第1のマウスピースに接続された導管の第1を閉じることができる。
【0042】
一実施形態では、プランジャが、槽に沈められ、第1の開口が、第1の導管に接続され、槽の表面の下に選択された距離において、配設された蓋と係合し、蓋が、第1の開口を閉じたままにするためにプランジャと共移動する。
【0043】
一実施形態では、プランジャが、プランジャに下向きの圧力が加えられたときに極低温流体が漏れるのを防止するために、少なくとも1つのシール要素によって囲まれている。プランジャは、少なくとも2つのシールで囲まれ得る。第2のシール要素は、プランジャが開始位置に向かって戻されたときに排出チャネルを開くために配置され得る。
【0044】
一実施形態では、サンプルのツールがプランジャを下向きに押し始めた瞬間に導管が極低温流体で満たされることを確実にするために、プランジャの下の槽に過圧を提供することができる。
【0045】
一態様によれば、本明細書で定義される方法を実行するための装置が提供される。装置は、請求項13に従って定義される。極低温流体サンプルを調製するための装置であって、それによって、サンプルが、極低温流体を使用する急冷却に供され、装置が、
極低温流体を輸送するための一対の導管であって、導管の各々がマウスピースの中に開いており、マウスピースが、介在する間隙を介して互いに対向するように配置され、間隙において、実質的に平面のサンプルキャリア上に設けられたサンプルが受容され得る、一対の導管と、
マウスピースから同時にフラッシュするように導管を介して極低温流体をポンプ圧送し、2つの対向する側からの極低温流体にサンプルを急激に浸漬するためのポンプ圧送機構と、を備える。
【0046】
本明細書で定義されるように、装置は、マウスピースの少なくとも1つが、フラッシング中に実質的に平面のサンプルキャリアを均一に冷却するための少なくとも2つのノズル開口部を備えることを特徴とする。そのような装置の利点は、この方法によってこれまでに解明されてきた。
【0047】
さらなる実施形態は、従属請求項の対象である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
ここで、本発明は、例示的な実施形態および添付の概略図を基にして詳細に明らかにされるだろう。
図1A】ガラス化手順に使用される一般的なサンプル構造(の特定の実施形態)を示す図である。
図1B】ガラス化手順に使用される一般的なサンプル構造(の特定の実施形態)を示す図である。
図2】従来技術のガラス化手順を適用することによって生じる可能性があるサンプルの損傷を示す図である。
図3A】(本発明の方法を定義するための)本発明による装置の実施形態の態様の縦断面図をレンダリングした図である。
図3B】(本発明の方法を定義するための)本発明による装置の実施形態の態様の縦断面図をレンダリングした図である。
図3C】(本発明の方法を定義するための)本発明による装置の実施形態の態様の縦断面図をレンダリングした図である。
図4】本発明での使用に適している荷電粒子顕微鏡の縦断面図を描画した図である。
図5A】本明細書で定義される少なくとも2つのノズル開口部を有するマウスピースの実施形態を概略的に示す図である。
図5B】本明細書で定義される少なくとも2つのノズル開口部を有するマウスピースの実施形態を概略的に示す図である。
図5C】本明細書で定義される少なくとも2つのノズル開口部を有するマウスピースの実施形態を概略的に示す図である。
図5D】本明細書で定義される少なくとも2つのノズル開口部を有するマウスピースの実施形態を概略的に示す図である。
図5E】本明細書で定義される少なくとも2つのノズル開口部を有するマウスピースの実施形態を概略的に示す図である。
図5F】本明細書で定義される少なくとも2つのノズル開口部を有するマウスピースの実施形態を概略的に示す図である。
図6】本明細書に記載の方法および装置を使用してガラス化されたサンプルを示す図である。
図7】本発明による装置のさらなる実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
対応する部分は、対応する参照記号を使用して示すことができる。概して、図は縮尺通りではないことに留意するべきである。
【0050】
背景の例
図1Aは、本発明と併せて使用することができ、サンプルSの特定の実施形態の態様の詳細(拡大)概観をレンダリングしている。この特定のタイプのサンプルSは、たびたび「グリッド」Gと称されるものを含む。これは、ワイヤの円形リング21a(例えば、CuまたはNiを含む)を含み、リングの直径は、典型的には約3mm程度であり、ワイヤの直径は、典型的には、約20~100μm程度である。リング21a内には、(この場合は)直交格子パターンを形成するように配置された直線状のワイヤ部分21bが取り付けられており、(ほぼ正方形の)開口(開口/孔/窓)23のマトリックス状配列を画定する。図1Aの中間部分は、図の上部の、直径B-B’に沿った横断面図を示す。これは、グリッドGが、互いに実質的に平行に対向する第1(S1)面および第2(S2)「面」を有する実質的に平坦な(板状の)形状を有することを示している。ここに示すように、膜25は、第1の面S1に広げられている(任意選択的に、例えば接着剤または溶融接着を用いてワイヤ21bに固定されている)。この膜25は、例えば、ナイロンまたはグラフェンのような炭素質材料を含み、典型的には約0.3nm~数百nmの範囲の厚さ(Y方向)を有する。膜25は、図の下部の詳細図にはっきりと見える穿孔27の分布を含んでいる。これらの穿孔27は、典型的には、約1.2~3.5μmの範囲(例えば、約2μm)の直径(X-Z平面に平行)を有する。本質的に、グリッドGは、膜25のための足場として働き、膜25は、穿孔27の支持構造として作用する(「孔のある炭素支持体」と呼ばれることもある)。最終的な「サンプル」または「標本」が、表面張力効果によって適所(特に)に留まりながら、所与の各穿孔27にわたって広げられている水性液体の薄膜29の形態で(その中に懸濁された1つ以上の検査標本を含む)、提供され、かつ支持される穿孔27内にある。図1A(グリッドG+穿孔膜25、27)に描写されるような、かつ上で説明されるような構造が、例えば、米国カリフォルニア州レディングのTed Pella,Inc.により市販されている。さらに、例えば、(様々な)予め製造された孔のある炭素フィルム(穿孔膜25、27に対応する)を、例えば、Quantifoil Micro Tools GmbH、Jena、Germanyのような会社から購入することも可能である。とりわけ、本発明の状況において、図示の構造は、「裏側」Sbおよび「前側」Sfを有するとみなすことができる。
【0051】
技術文献に十分に記載され、当業者に知られている方法を使用して、水性液体のフィルム29を膜25の様々な穿孔27に提供することができる。そのような既知の方法の1つでは、1枚の吸水紙(図示せず)を膜25の外側/下側表面に押し付け、次に問題の水性液体で湿らせ、続いて膜25を除去する(例えば、剥がす)と、(大部分の)開口27に水性液体の(ミニ)フィルム29を付与させられ、これは、表面張力効果によってそれらの中に広げられている。このタイプの方法は、例えば、J.Dubochet et al.in Journal of Microscopy,vol.128,pt 3,December 1982,pp.219-237,,による、凍結水と水溶液の電子顕微鏡の記事に記載されているが、ここではこれ以上の注目を受けないであろう。US9,772,265(本願と同一の発明者/譲受人であり、本明細書中に参考として援用される)に記載された代替的な方法も参照される。
【0052】
次に図1Bに目を向けると、取り扱いを改善するための機械的輪郭31を有するEMグリッドサンプルSの例が示されている。ここで、図1Aに記載されているグリッドSは、実質的に円形であり、L字型の断面積を有する第1の輪郭体31に囲まれている。この第1の輪郭体31は、クリップリング31とも称され、当業者に知られている。グリッドSは、機械的輪郭31の窪み内に、機械的輪郭31の窪み面に当接して提供される。c字形クリップ33(cクリップ33とも称される)の形態の固定要素33は、グリッドSを機械的輪郭31の窪み内の所定の位置にしっかりと保持する。調査されるサンプル/標本を含む水性液体の薄膜29が、グリッドSの裏側または前側に提供される(ここでは誇張された様式で示されており、図面は原寸に比例していない)。
【0053】
ここで図2を参照すると、これは、前述のUS2017/0169991A1に記載された方法を用いてガラス化した後の、図1Aおよび1Bに示したようなタイプの特定のサンプルを示す(サンプルの裏側および前側に同じフラッシュを適用する)。薄い灰色の四角/セルはガラス化手順が成功しても損傷を受けていないが、白い四角/セルは膜の破損/層間剥離が発生した場所で(多かれ少なかれ)損傷している。暗い/まだらの正方形/セルは、ガラス化が起こった場所に対応するが、(多かれ少なかれ)氷が厚すぎる。現在の状況では、正方形/セルの約25%が最適下限であることがわかる。上記のように、試料(電流の図では明白ではない)をより詳細に調べることにより、損傷した四角形/セルは、主に裏側から前側に向かう方向性で分離されていることが明らかになる。対照的に、図6は、本明細書に記載の装置を使用する、本明細書に記載の方法を使用してガラス化した後の、図1Aおよび1Bに示されるようなタイプの特定のサンプルを示す。ほとんどの正方形/セルは白であり、したがって損傷を受けていないことがわかる。わずかなセルだけが暗い/まだらのスポットを示し、かなり少ない正方形が損傷している。
【0054】
実施形態1
図3A~3Cは、本発明に係る方法および装置の実施形態の態様を表示している。図3Aから始めると、これは極低温流体を輸送するための一対の導管31a,31bを示している。これらの導管31a、31bの各々は、2つの極限のオリフィスを有し、これらは(それぞれ)
-極低温流体が導管31a、31bに入ることができる(下部の)入口オリフィス37a、37bと、
-導管31a、31bから極低温流体が出ることができる(上部の)マウスピース(出口オリフィス)33a、33bとである。これらのマウスピース33a、33bは、介在する間隙35を介して互いに対向している。マウスピース33a、33bは、ノズルプレート39aを備えており、ノズルプレート39a、39bの各々は、少なくとも2つのノズル開口部を備える。これらのノズル開口部およびその可能な実施形態は、図5A~5Dによって説明され得る。
【0055】
以下のことに留意するべきである。
便宜上、種々の構成要素31a、31b、33a、33b、35、37a、37bは、ここではそれらを所定の位置に保持するためのマトリックス/構造体として働くことができる本体P内にあるものとして示されており、例えば、本体Pは、金属、セラミックまたはエポキシのプラグ/ブロックであり、これらの様々な構成要素は、例えば、鋳造、成形、機械加工または3D印刷によって作成されている。しかしながら、必ずしもそうである必要はなく、様々な構成要素が代わりに(準)自立構造であってもよい。
オリフィス37a、37b;33a、33bは、ここではフレア状に描かれているが、必ずしもそうである必要はない。
-間隙35は、均一な幅のものとして示されているが、代替的に、例えば、先細りであってもよい。初期のフラッシュの同期と対称性を改善するためには、理想的には比較的狭く(Y方向に)するべきである。
【0056】
また、図3Aには、例えば、図1Bに示される機械的輪郭31のように、サンプルSをその縁に沿って把持することによって、サンプルSを把持および操作するために使用できるツールT(ピンセット、はさみ、プライヤ、クランプ、ロボットアームなど)が示されている。このツールTを使用して、サンプルSを間隙35内およびマウスピース33a、33bの間に位置決めすることができる。
【0057】
既に上述したように、入口オリフィス37a、37bに極低温流体を供給するための1つの方法は、好適な管材/配管を用いて(電気)極低温剤ポンプ(および関連付けられた極低温剤リザーバ)にそれらオリフィスを接続することであり、1つは間隙35(に位置されているサンプルS)を極低温流体でフラッシュする/にシャワーを浴びせるために、極低温剤を導管31a、31bを介してマウスピース33a、33bの外にポンプ圧送することができる。しかしながら、本実施形態では、代わりに、導管31a、31bを介して極低温流体を移動させるための(手動の)ピストン作用が使用される。この目的のために、本体Pは、下側Pu(入口オリフィス37a、37bが配置される)と上側Pt(間隙35にアクセスすることが可能である)とを有するプランジャとして具現化される。このプランジャPは、例えば、極低温剤7の容器(管、器)5内に(部分的に)沈められ/浸され得、プランジャの下面Puが表面9の下を移動するにつれて、極低温剤7は、入口オリフィス37a、37bを通り、導管31a、31bを通ってマウスピース33a、33bから(漸進的に)押し出される(図3A-3B-3Cは、この動きの一部を示す)。図3Aでは、ツールTの挿入/プランジ手順の開始の前に、導管31a、31bが、例えば、以前のプランジング反復からの事前サイフォンおよび/または毛細管作用の結果として、極低温剤7でプライミング/事前充填されているのを留意されたい。このようにして、サンプルSの挿入された位置に近接して極低温剤が供給され、瞬時に発散される準備ができて、サンプルSの両側からの非同期フラッシュの危険性を低下させる。
【0058】
所望のプランジャ運動を生成するために、図示された構成はツールTを使用してプランジャPに下向きの力を加えるが、必ずしもそうである必要はなく、代わりに他の手段によってプランジャPを下向きに押すことができる。図3Bおよび図3Cに示すように、ツールTは、プランジャPの上面Ptの互恵的な領域/部分P’と係合する突起/ラグT’を有し、ツールTへの下向きの力がプランジャPに下向きの運動量を伝達することを可能にするものであり、これについては図3B、3Cの例示的な下向き矢印T”を参照されたい。さらに、突起T’は(そのように所望される場合)、サンプルSが間隙35内の最適な深さ(理想的にはマウスピース33a、33bの間で実質的に対称的)に確実に挿入されることを確実にするために利用されことができ、および間隙35内のサンプルSの正しい横方向の位置決めを提供するために使用されることもできる(再び、理想的には、マウスピース33a、33bから等距離にある(ガラス質のフィルム)を有する)。
【0059】
ここに示すような構成の非限定的な例では、以下の例示的な(および近似的な)値が適用され得る。
-試料Sは、直径3mmおよび厚さ0.4mmの平面グリッドを含む。
-マウスピース33a、33bの直径:3~4mm。
-導管31a、31bの直径:2.5mm。
-マウスピース31a、31bの分離/間隙35の幅:1mm。
-マウスピース31a、31bからの流速:約5~15m/S。
【0060】
当業者は、所与の状況の要求に自身の値を適合させることができるであろう。
【0061】
図3A~3Dに示される実施形態では、図示した装置は、(左)マウスピース33aから供給される極低温流体のフラッシュが、(右)マウスピース33bから供給されるフラッシュと異なるように、より具体的には、マウスピース33aからのフラッシュの持続時間がマウスピース33bからのフラッシュの持続時間よりも短い持続時間をもたらすように、構成されている。この目的のために、所与の時間間隔の経過後に、((左)マウスピース33aに接続されている)(左)導管31aを閉じる遮蔽機構(41、43、45)が使用される。より具体的には、この遮蔽機構は、以下を備える。
-極低温剤槽の表面9の下の選択された公称距離dに配置された蓋(カバー/ブランカー)41。
レール/ガイド43は、Z軸に実質的に平行な蓋41の動きを許容し、ガイドする。この目的のために、蓋43は、レール43と協働して、2つの相対運動を可能にする開口43’(または、例えば、クラスプまたはランナーのような他の好適な構造)を備えることができる。
-一定の点(深さd)を越えて蓋41が上方に移動するのを防止する調節可能な止め具(例えば、ねじ止めされた滑り止めカラーなど)。
上述したように、蓋41は、極低温流体7中で自然に浮遊する(例えば、中空であるため)ことができ、および/または例えばバネ、ピストンまたは磁気配置を用いて上方に付勢することができる。このようにして、蓋41は、プランジャPと係合したときに下方に共移動することができるが、プランジャPがそこから外れると上方に戻る/ゆっくり上方に引き戻される。個々の図を特に参照して、
図3Bでは、このような係合はまだ起こっていない。プランジャPは、極低温剤7を通って下方に移動し、(より多くの)極低温剤を導管31a、31bに強制的に導入する。関連する圧力ヘッドは、図3Aに示すように、マウスピース31a、31bの間の空間を満たす斜線の領域によって両マウスピース31a、31bから極低温流体をフラッシュさせる。
図3Cでは、プランジャPが蓋41と係合しており、プランジャPと蓋41が下方に共移動している(矢印47参照)。そのサイズ/位置決めのために、蓋41は、左の入口オリフィス37aと係合し、それをブロッキング/キャッピングし、極低温剤の流れを防止し、他方では、このようにして右入口オリフィス37bが妨害されることはない。その結果、左マウスピース33aからの極低温剤のフラッシュは止まるが、右マウスピース33bからのフラッシュは継続する。ハッチングされた領域(フラッシュ)は、今や右マウスピース33bから来るだけであることに留意されたい。
【0062】
上述したように、フラッシングの開始後、予め選択された時間間隔で左マウスピース33aからフラッシュのこの終了を引き起こすように、当業者は、dおよび/またはプランジャPの下方速度を選択することができる。この時間間隔は、例えば、10~200ミリ秒程度であってもよい。
【0063】
図3A~3Cに示されるような遮蔽機構41の使用は、完全に任意選択的であることに留意されたい。サンプルSの両側で均等にフラッシュすることも考えられる。
【0064】
図7に概略的に示されているように、シール要素91は、極低温剤槽の表面レベル9に提供され得る。シール要素は、プランジャPに接続され得、それと共に移動することができる。このようにして、プランジャを有する極低温流体槽は、閉じたピストンを形成することができる。シール91は、例えば、1つのテフロン(登録商標)-Oリングの形で提供することができる。このOリング(LN2温度でタイト)は、噴霧および水しぶきを防止する。Oリングは、ノズルからのより制御されたエタンの流れを確保することもでき、この流れは、プラグの直径/ノズルの開口時間の比率とプラグの下向きの速度によってのみ決定される。
【0065】
図7にも示されているように、さらなるシール要素93を設けることができる。このさらなるシール要素93は、第1のシール要素91の上に設けられる。さらなるシール要素93は、ピストンPに接続され、それと共に移動可能である。このシール要素93は、Oリングでもあり得、このさらなるOリングは、プランジャPの下向きの作用の後に液体エタンの放出を可能にし、特にプラグを上向きの位置にリセットする場合は、下向きに押すときにエタンが漏れるのを防止する。示される実施形態では、プランジャは、介在する間隙35によって形成されるチャネルに接続される2つのさらなるチャネル38a、38b(これらのチャネルは、2つの導管から分離されている)を備える。極低温流体の槽は、1つ以上の排出口83aを備える。少なくとも2つのシール要素91、93はプランジャPと移動可能に接続され、垂直距離が2つのシール91、93の間に存在するので、プランジャPと極低温槽との間に相対位置があり、シール要素91、93は、さらなるチャネル38a、38bをそれぞれの排出口83a、83bに接続するフローチャネル81a、81bを決定する。これは、例えば、プランジャPが極低温流体で満たされ、プランジャが上方に移動する場合に役立つ。プランジャが図7に示される位置にあるとき、介在する間隙35に存在する極低温流体は、システムから容易に除去され得る。プランジャがさらに上方に動かされると、第1のシール要素91は、排出出口83aを再び閉じる。プランジャがさらに下向きに動かされると、排出口83a、83bへの流路もまた閉じられる。
【0066】
本明細書に記載のプランジャデバイスは、ジェット凍結デバイスとして効果的に使用できることに留意されたい。本明細書に記載のプランジャデバイスのさらなる利点の1つは、極低温槽内のプランジャの沈められた位置において、本明細書に記載のデバイスをプランジ凍結デバイスとしても使用することが可能になることである。この目的のために、ツールは、プランジャ凍結を確立するためにプランジャデバイスに単に入ることができる。代替的な実施形態では、極低温槽は、プランジャ導管を通る強制流を確立するためのポンプ圧送デバイスを備え得、その結果、プランジャを実際に槽に移動させることなくジェット凍結が起こり得る。
【0067】
実施形態2
図4は、本発明に従って調製されたサンプルを検査するために使用することができるCPMの実施形態の高度に概略的な図であり、より具体的には、この場合は、TEM/STEMである、透過型顕微鏡Mの実施形態を示す(本発明の状況において、例えば、それは同じように有効にイオン系顕微鏡とすることができる)。図において、真空筐体V内で、電子源2(例えば、ショットキー型エミッタなど)は、電子光学照明装置4を横切る電子ビームCを生成し、試料Sの選択された部分の上にそれらを集中/集束するのに役立つ(例えば、(局所的に)薄化/平坦化されていてもよい)。この照明装置4は、電子光学軸C’を有し、かつ様々な静電/磁気レンズ、(走査)偏向器D、(例えばスティグメータのような)補正器などを概して備え、典型的には、凝縮器システムも備えることができる(アイテム4の全体は、「凝縮器システム」と称されることもある)。
【0068】
標本Sは、位置決めシステム/ステージAによって多自由度に位置決め可能な標本ホルダH上に保持され、例えば、試料ホルダHは、XY平面内で(とりわけ)移動することができるフィンガを含み得る(描かれているデカルト座標系を参照すると、典型的に、Zに平行な動きと、(少なくとも)X/Yを中心とした傾斜も可能である)。このような移動は、軸C’に沿って(Z方向に)移動する電子ビームによって試料Sの異なる部分が照射/撮像/検査されることを可能にする(および/またはビーム走査の代替として走査運動が実行される)。冷却デバイスH’は、試料ホルダHと緊密に熱接触しており、冷却デバイスH’を、例えば、極低温で維持することができ、例えば極低温冷却剤のバットを使用して所望の極低温を達成し維持する。
【0069】
軸C’に沿って移動する(集束された)電子ビームCは、(例えば)2次電子、後方散乱電子、X線および光学放射線(陰極ルミネセンス)を含む様々なタイプの「刺激」放射線が試料Sから発散するように試料Sと相互作用する。所望される場合、これらの放射タイプのうちの1つ以上は、例えば、シンチレータ/光電子増倍管またはEDX(エネルギー分散型X線分光)モジュールを組み合わせた分析デバイス6を用いて検出することができ、そのような場合には、SEMと基本的に同じ原理を用いて画像を構築することができる。しかしながら、代替的にまたは補足的に、試料Sを横切り(通過し)、試料から出て(発散し)、さらに軸C’に沿って(実質的にはある程度の偏向/散乱ではあるが)伝搬し続ける電子を考慮することができる。そのような透過電子束は、概して、様々な静電/磁気レンズ、偏向器、補正器(スティグメータのような)などを備える撮像システム(組み合わされた対物/投影レンズ)8に入射する。通常の(非走査)TEMモードでは、この撮像システム8は、所望される場合、軸線C’の途中から外れるように、後退され得る/引き出され得る(矢印10’で模式的に示すように)蛍光スクリーン10上に透過電子束を集束させることができる。試料Sの(一部の)画像(または回折図)が、撮像システム8によってスクリーン10上に形成され、これは、筐体Vの壁の好適な部分に位置する視認ポート12を通じて視認され得る。スクリーン10の後退機構は、例えば、機械的/電気的であり得、ここでは図示されていない。
【0070】
スクリーン10上の画像を視認することの代替として、撮像システム8から出射する電子束の収束の深さが普通、極めて大きい(例えば、約1メートルのオーダ)という事実を代わりに利用することができる。その結果、様々な他の以下のタイプの分析装置をスクリーン10の下流で使用することができる。
-TEMカメラ14。カメラ14では、電子束は、コントローラEによって処理され、フラットパネルディスプレイなどの表示デバイス(図示せず)に表示される静止画像(または回折図)を形成することができる。必要でない場合、カメラ14は、軸C’の方向から外に出るように(矢印14’によって概略的に示されるように)後退する/引き出すことができる。
-STEM撮像装置(カメラ)16。撮像装置16からの出力は、試料S上のビームCの(X、Y)走査位置の関数として記録されることができ、さらにX、Yの関数として撮像装置16からの出力の「マップ」である画像が構築されることができる。撮像装置16は、例えば、カメラ14に特徴的に存在する画素のマトリックスとは異なり、例えば、20mmの直径を有する単一画素を備えることができる。さらに、撮像装置16は概して、カメラ14(例えば、102の画像/秒)よりもはるかに高い取得レート(例えば、106のポイント/秒)を有する。再び、必要でない場合、撮像装置16は、(矢印16’によって概略的に示されるように)軸C’の方向から外れるように後退/引き出すことができる(ドーナツ型の環状暗視野撮像装置16の場合、そのような後退は必要ではないが、例えば、このような撮像装置では、撮像装置が使用されていないときに中央の穴がビームの通過を可能にする)。
-カメラ14または撮像装置16を使用する撮像の代替として、例えば、EELSモジュール(EELS=電子エネルギー損失分光法)であってもよい分光装置18を起動することも可能である。
【0071】
アイテム14、16および18の順序/場所は厳密ではなく、多くの可能な変形が考えられることに留意するべきである。例えば、分光装置18は、撮像システム8に一体化することもできる。
【0072】
コントローラ(コンピュータプロセッサ)Eは、制御線(バス)E’を介して図示された様々な構成要素に接続されていることに留意されたい。このコントローラEは、動作の同期、設定値の提供、信号の処理、計算の実行、および表示デバイス(図示せず)上のメッセージ/情報の表示などの様々な機能を提供することができる。言うまでもなく、(概略的に描かれた)コントローラEは、(部分的に)筐体Vの内側または外側にあってもよく、所望される際、単一または複合構造を有してもよい。当業者であれば、筐体Vの内部が厳密な真空に維持される必要がないこと、例えば、いわゆる「環境的TEM/STEM」においては、所与の気体のバックグラウンド雰囲気が、筐体V内に意図的に導入/維持されることを理解するであろう。当業者であれば、実際には、可能であれば、使用される電子ビームが通過する小さなチューブ(例えば、直径1cm程度)の形態を採るが、ソース2、試料ホルダH、スクリーン10、カメラ14、撮像装置16、分光装置18などの構造を収容するために広がるように、軸C’を密接に取り囲むように、筐体Vの容積を制限することが有利な場合があることを理解するであろう。
【0073】
図4に示された試料Sは、例えば、本発明によるガラス化手順を受けた試料であり得る。このような試料は、冷却装置H’のおかげで、CPMM内にある間(および輸送/保管されている間に)極低温に維持することができる。この目的のために、例えば、以下のような実施形態を採用することができる。
冷却デバイスH’は、ホルダHに密接に(例えば銅棒および/またはブレードを介して)熱的に接続され、極低温剤で満たされ得るデュワー/フラスコを備える。
-複合構造体H+H’は、CPMMに挿入/から除去することができ、それにより、位置決めシステムAの受信機部分に着座されることができる/によってクランプされることができる。
【0074】
例えば、米国特許出願第US2012/0112064A1号に記載されている構成および当技術分野で当業者にそれ自体が知られている同様の構成を参照されたい。
【0075】
さらなる実施形態
次に、図5A~5Dに目を向けると、本明細書で定義されるようなノズル開口部の実施形態が説明される。
【0076】
図5Aは、マウスピース39aの一実施形態を示し、マウスピースは、単一の中央ノズル開口部111を備えたノズルプレート101と、中央ノズル開口部111の周りに均等に分散されて配置された合計6つの周辺ノズル開口部121~126と、を備える。この実施形態では、すべてのノズル開口部111、121~126の直径が実質的に等しいことに留意されたい。追加的に、実質的に等しいサイズの合計7つのノズル開口部を有するこの実施形態は、マウスピース39aの総面積を最も効果的に使用して、サンプルの表面全体に冷却力を均等に分散させ、その結果、サンプルキャリアの周辺部分が、サンプルキャリアの中央部分と同時に少なくとも冷却される。これにより、既知の手法と比較して、サンプルのガラス化が改善される。
【0077】
図5Bは、マウスピース39aの一実施形態を示し、マウスピースは、2つのノズル開口部、すなわち、中央ノズル開口部211、および単一の周辺ノズル開口部221を備えたノズルプレート201を備える。ノズルプレート201は、中央部分203および周辺部分202も有し、これらの部分は、中央ノズルプレート203がその位置を維持することを可能にするために、機械的スタッド231~234によって接続されている。スタッド231~234は、実際には単一の開口部が存在する場合でも、単一の周辺ノズルを4つのサブ開口部221a~221dに効果的に細分する。
【0078】
図5Cは、単一の中央ノズル開口部311および中央ノズル開口部311の周りに均等に分散して提供される合計5つの周辺ノズルとの、合計6つのノズル開口部311、321~325を有するマウスピース39aの一実施形態を示す。周辺ノズル開口部321~325は、中央ノズル311と比較して寸法が大きい。このようにして、サンプルキャリアの周辺部分は、少なくともサンプルキャリアの中央部分と同時に冷却される。
【0079】
本明細書で定義されるように、サンプルキャリアの中央部分および周辺部分は、以下のように定義され得ることに留意されたい。中央部分は円の全半径の約1/3に相当する最も内側の部分と一致し、周辺部は円の全半径の約2/3に対応する最も外側の部分と一致する。これは、図5Aで最も明確に見ることができ、中央のノズル開口部111(任意の半径rを有する)がマウスピース101の中央部分を占め、周辺のノズル開口部121~126(これも同じ任意の半径rを有する)がマウスピース101の周辺部分を占める。したがって、マウスピース101の全半径は、任意の半径rの約3倍に対応する(中央のノズル開口部111の半径の1倍、および周辺のノズル開口部121の半径の2倍)。実施形態では、中央部分は20%大きくても小さくてもよく、これは、中心半径が20%大きくても小さくてもよいことを意味する。
【0080】
図5Dは、合計5つのノズル開口部411、421~424を備えた実施形態を示しており、中央のノズル開口部411は円形であり、周辺のノズル開口部421~424は楕円形である。したがって、ここで、中央のノズルは、周辺のノズルと比較して異なる形状を有する。
【0081】
図5Eは、合計3つの楕円形ノズル511~513を含むノズルプレート501を備えたマウスピース39aの一実施形態を示している。したがって、この実施形態では、中央のノズル開口部は存在しない。
【0082】
図5Fは、中央のノズル開口部がない別の実施形態を示している。ここで、合計2つのノズル開口部611、612がノズルプレート601に設けられ、少なくとも2つのノズル開口部611、612を有するマウスピース39aを定義する。
【0083】
図5A~5Fに示される実施形態を参照すると、少なくとも2つのノズル開口部は、いくつかの異なる方法で具現化され得ることに留意されたい。少なくとも2つのノズルは、図5A~5Fに示される実施形態のうちの1つ以上、またはそれらの組み合わせに従って具現化され得る。特に、
-合計2つ以上のノズルが存在する場合があり得る。
-合計で最大7つのノズルが存在する場合があり得るが、追加のノズルも考えられる。
-少なくとも1つの中央ノズルが存在する場合があり得るが、1つ以上の追加の中央ノズルも考えられ得る。
-1つ以上の周辺ノズルが存在する場合があり得るが、特に最大6つ、またはそれ以上の周辺ノズルも考えられ得る。
-ノズルは、対応する形状または相互に異なる形状を持つ場合があり得るが、原則として、対応する形状はより予測可能な結果を提供する。
-ノズルは、原則として任意の好適な幾何学的形状を有し得るが、丸いノズルが、より予測可能な結果を提供する。
【0084】
本明細書に記載されるように、2つのマウスピースのうちの他の1つは、2つのノズル開口部も備え得る。これらの少なくとも2つのさらなるノズルは、図5A~5Fに示される実施形態のうちの1つ以上、またはそれらの組み合わせに従って具現化され得る。第1のマウスピースは、第2のマウスピースと正確にまたは実質的に等しくてもよい。代替的に、第1のマウスピースは、第2のマウスピースとは異なる形で具現化される。
【0085】
所望の保護は、添付の特許請求の範囲によって付与される。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6
図7