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特許7736352果菜類の栽培棚、栽培システム、及び栽培方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-01
(45)【発行日】2025-09-09
(54)【発明の名称】果菜類の栽培棚、栽培システム、及び栽培方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/12 20060101AFI20250902BHJP
【FI】
A01G9/12 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024191530
(22)【出願日】2024-10-31
【審査請求日】2025-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2024041873
(32)【優先日】2024-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100211199
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】米田 有希
(72)【発明者】
【氏名】添野 和雄
(72)【発明者】
【氏名】矢野 孝喜
(72)【発明者】
【氏名】村上 健二
(72)【発明者】
【氏名】冨永 裕二
(72)【発明者】
【氏名】高尾 二郎
(72)【発明者】
【氏名】内野 達哉
(72)【発明者】
【氏名】大谷 恭史
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 輝昌
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-115793(JP,A)
【文献】特開2014-087268(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0192458(US,A1)
【文献】英国特許出願公開第01276994(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00-9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って果菜類の複数の株が植え付けられた培地部と、
前記培地部を支持する保持部と並行に前記第1方向に沿って延びる棒状部材である延在部と、
前記延在部よりも上方に配置された誘引部材と、
前記株から伸びる茎の上部を前記誘引部材に固定する固定部と、
前記延在部に取り付けられると共に前記第1方向に交差する方向であって鉛直方向を除く方向である第2方向に伸びる複数の誘引用支柱と、を備え、
前記株から伸びる茎は、少なくとも1つの前記誘引用支柱の下側に接触し該誘引用支柱を支点として斜め上方に伸びている、果菜類の栽培棚。
【請求項2】
前記誘引用支柱は、前記延在部に取り付けられた状態において、前記延在部に取り付けられた部分を支点に上下動可能に構成されている、請求項1記載の果菜類の栽培棚。
【請求項3】
前記誘引用支柱は、前記延在部から着脱可能に構成されている、請求項1記載の果菜類の栽培棚。
【請求項4】
前記果菜類は、キュウリである、請求項1記載の果菜類の栽培棚。
【請求項5】
前記誘引用支柱の下部を通過する前記茎を受ける茎受け部を更に備え、
前記茎受け部は、
前記茎を下方から支持する茎支持部と、前記茎支持部に連続して設けられると共に前記茎支持部から前記茎が離脱することを防止する茎こぼれ防止部と、を有し、
前記茎こぼれ防止部が前記茎支持部の先端から上方に延びた状態とされた、前記茎の支持を主目的とする第1状態と、前記茎こぼれ防止部が前記茎支持部の先端から上方に延びた状態以外とされた、前記茎の支持を主目的としない第2状態とで、位置及び形状の少なくともいずれかを変更可能に構成されている、請求項1記載の果菜類の栽培棚。
【請求項6】
前記茎支持部及び前記茎こぼれ防止部は、互いに交差する方向に延びており、
前記第1状態において、前記茎支持部は前記第2方向に延びており、前記茎こぼれ防止部は前記茎支持部に連続する箇所から上方に向かって延びている、請求項5記載の果菜類の栽培棚。
【請求項7】
前記第2状態において、前記茎支持部は前記第2方向に延びており、前記茎こぼれ防止部は前記茎支持部に連続する箇所から下方に向かって延びている、請求項6記載の果菜類の栽培棚。
【請求項8】
前記第2状態において、前記茎支持部は、前記第1方向に延びている、請求項6記載の果菜類の栽培棚。
【請求項9】
前記延在部に交差するように上下方向に延びる一又は複数の支柱をさらに備え、
前記茎受け部は、前記茎支持部における前記茎こぼれ防止部に連続する部分と反対側の端部に設けられた取付部を更に有し、
前記取付部は、前記延在部、前記支柱、及び前記誘引用支柱の少なくともいずれかに取り付けられている、請求項5記載の果菜類の栽培棚。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項記載の果菜類の栽培棚と、
前記果菜類の果実及び茎を区別して認識すると共に、該果実を収穫するロボットと、を備える栽培システム。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項記載の果菜類の栽培棚を用いた栽培方法であって、
前記複数の誘引用支柱は、前記第1方向に沿って所定の間隔で複数設けられており、
株から伸びる茎についてその伸長度合いから固定位置の変更が必要であるか否かを判断する第1ステップと、
固定位置の変更が必要である場合に、前記固定部による茎の上部の固定位置を株から離れる方向に移動させる第2ステップと、
前記第2ステップにおける前記固定部の位置変更に応じて、前記支点になる前記誘引用支柱を、現状よりも株から離れる方向に設けられた前記誘引用支柱に変更する第3ステップと、を含む、栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、果菜類の栽培棚、栽培システム、及び栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トマトやキュウリ等の着果する果菜類の栽培方法として、成長点を摘心して成長範囲を限定しながら収穫を行う摘心栽培の他、成長点を維持したまま伸びた茎を成長に合わせて継続的に誘引しつつ収穫を行う、つる下ろし栽培がある(例えば、特許文献1参照)。つる下ろし栽培の方法としては、垂直方向に茎を誘引する垂直誘引、及び、斜め方向に茎を誘引する斜め誘引が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6590998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した斜め誘引を行った場合には、果実と茎とが分離し果実を認識し易くなるので、収穫の容易性が向上する。一方で、上述した垂直誘引の場合には茎を所定の方向に誘引するために茎を固定するクリップが1つ(上方の1つ)でよいのに対して、斜め誘引の場合には茎を下方に垂らすだけでなく所定の斜め方向に伸ばす必要があるため茎を固定するクリップが上方及び下方の2つ以上必要になり、クリップ留めの作業が煩雑になるという問題がある。特に、茎の伸長が早い果菜類の栽培においては、高頻度に(例えば毎日)少なくとも2つのクリップの位置変更を行う必要があり、作業負担が増加することが考えられる。
【0005】
本開示は上記実情に鑑みてなされたものであり、作業負担を軽減することができる、果菜類の栽培棚及び栽培方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る果菜類の栽培棚は、第1方向に沿って果菜類の複数の株が植え付けられた培地部と、第1方向に沿って伸びる延在部と、延在部よりも上方に配置された誘引部材と、株から伸びる茎の上部を誘引部材に固定する固定部と、延在部に取り付けられると共に第1方向に交差する第2方向に伸びる複数の誘引用支柱と、を備え、株から伸びる茎は、少なくとも1つの誘引用支柱の下部を通過して該誘引用支柱を支点として斜め上方に伸びている。
【0007】
本発明の一態様に係る果菜類の栽培棚では、株から伸びる茎が斜め上方に誘引される斜め誘引において、茎が誘引用支柱の下部を通過して該誘引用支柱を支点として斜め上方に伸び、茎の上部が固定部により誘引部材に固定されている。このような構成によれば、斜め誘引において、茎の下部が誘引用支柱をくぐることにより位置が固定されているので、茎の下部におけるクリップ等での固定が不要になる。すなわち、本発明の一態様に係る果菜類の栽培棚では、従来、上下の2点で位置決めのための固定が必要であった斜め誘引において、茎上部の1点のみの固定とすることができ、作業負担を軽減することができる。例えば、茎の成長に合わせて上部の固定部の位置を変更する場合、茎の下部においては、固定部の位置の変更に併せてくぐらせる誘引用支柱を変更するのみで位置が固定されるので、茎の下部においてもクリップ等の固定位置を変更する場合と比較して、作業負担を大きく軽減することができる。
【0008】
誘引用支柱は、延在部に取り付けられた状態において、延在部に取り付けられた部分を支点に上下動可能に構成されていてもよい。このような構成によれば、例えば茎の固定状態を解除する場合には誘引用支柱を上方に移動させて円滑に茎を移動させると共に、茎を適切に固定したい場合には誘引用支柱を下方に移動させて茎を強固に固定する等が可能になる。すなわち、誘引用支柱が上下動可能とされることにより、作業負担をより軽減することができる。
【0009】
誘引用支柱は、延在部から着脱可能に構成されていてもよい。このような構成によれば、必要な場合にのみ誘引用支柱を設けることが可能になり、作業負担をより軽減することがえきる。
【0010】
上記栽培棚において栽培される果菜類は、キュウリであってもよい。キュウリは、1日当たりの茎の伸長度合いが大きく(例えば、「加藤香織,高橋登. (2005). キュウリつる下ろし栽培における整枝法」や「羽石重忠,石原良行. (2006). トマト促成栽培におけるハイワイヤー整枝法の特性」に開示された内容を考慮すると、ハウス促成栽培環境で比較してトマトの1.9倍程度であり)、茎を固定する構成を日々移動させる必要がある。この点、本発明の一態様に係る構成では、斜め誘引において、茎の下部については茎をくぐらせる誘引用支柱を変更するのみで茎の位置固定が行われるため、頻繁に発生する茎の固定位置の変更に係る作業負担を軽減することができる。すなわち、本発明の一態様に係る構成によれば、茎の伸長度合いが大きいキュウリの収穫に係る作業負担を好適に軽減することができる。
【0011】
本発明の一態様に係る栽培システムは、上述した果菜類の栽培棚と、果菜類の果実及び茎を区別して認識すると共に、該果実を収穫するロボットと、を備える。このような栽培システムによれば、果実及び茎を区別し果実を適切に収穫するロボットを用いて、作業負担をより軽減することができる。また、このような栽培システムでは、上述した栽培棚が採用されて斜め誘引においても作業負担を軽減することができているので、果実及び茎が互いに離間して区別しやすくなる斜め誘引(ロボットにより高精度に収穫が可能になる斜め誘引)を積極的に採用することができ、作業効率を向上させることができる。
【0012】
本発明の一態様に係る栽培方法は、上述した果菜類の栽培棚を用いた栽培方法であって、複数の誘引用支柱は、第1方向に沿って所定の間隔で複数設けられており、株から伸びる茎についてその伸長度合いから固定位置の変更が必要であるか否かを判断する第1ステップと、固定位置の変更が必要である場合に、固定部による茎の上部の固定位置を株から離れる方向に移動させる第2ステップと、第2ステップにおける固定部の位置変更に応じて、支点になる誘引用支柱を、現状よりも株から離れる方向に設けられた誘引用支柱に変更する第3ステップと、を含む。本発明の一態様に係る栽培方法では、茎の伸長度合いに応じて固定部による固定位置が変更される共に、固定部による固定位置の変更に応じて茎の支点(斜め上方への延伸の支点)になる誘引用支柱が変更される。このような構成によれば、茎の伸長度合いに応じて固定位置を変更する際において、茎の下部については単に茎をくぐらせる誘引用支柱を変更するという簡易な作業により固定位置を変更することができるので、作業負担を大きく軽減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、作業負担を軽減することができる、果菜類の栽培棚、栽培システム、及び栽培方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本実施形態に係る果菜類の栽培棚を模式的に示す図である。
図2図2は、垂直誘引と斜め誘引との相違点を説明する図である。
図3図3は、キュウリの収量調査の結果を示すグラフである。
図4図4は、キュウリ収穫ロボットを用いた収穫を説明する図である。
図5図5は、変形例に係る茎受け部について説明する図である。
図6図6は、変形例に係る茎受け部について説明する図である。
図7図7は、変形例に係る茎受け部について説明する図である。
図8図8は、変形例に係る茎受け部について説明する図である。
図9図9は、変形例に係る茎受け部について説明する図である。
図10図10は、変形例に係る茎受け部について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。図面の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る果菜類の栽培棚1を模式的に示す図である。ここでは、果菜類がキュウリである例を説明するが、これに限定されず、果菜類はその他の野菜等であってもよい。栽培棚1は、つる下ろし栽培によりキュウリを栽培する。つる下ろし栽培とは、成長点を維持したまま伸びた茎を成長に合わせて継続的に誘引しつつ収穫を行う栽培方法である。つる下ろし栽培の種類として、垂直誘引及び斜め誘引がある。
【0017】
図2は、垂直誘引と斜め誘引との相違点を説明する図である。図2に示される茎801は垂直誘引により誘引されている。垂直誘引では、株105から伸びる茎801の上部がクリップ561(固定部)により誘引ワイヤ51(誘引部材)に固定されている。茎801は、上部のみが固定され、重力により下方に垂れ下がっている。茎801には複数の葉802及び複数の果実803が側生している。図2に示されるように、垂直誘引においては、茎801及び果実803がいずれも重力によって鉛直下方に伸びるため互いに分離されにくい。このため、果実803の収穫作業時においては、茎801と果実803とを区別して認識しづらくなり、作業性が低下するおそれがある。なお、垂直誘引の態様としては、図2に示されるように、誘引ワイヤ51から垂直に垂らされた誘引紐580に株106から伸びる茎901がクリップ562によって固定される態様であってもよい。茎901には複数の葉902及び複数の果実903が側生している。
【0018】
斜め誘引では、株107から伸びる茎1001の上部がクリップ563により誘引ワイヤ51に固定されている。茎1001は、上部に加えて、下部がクリップ661により延在部33に固定されている。延在部33は、株107よりも下方において誘引ワイヤ51と略平行に伸びる部分である。茎1001は、クリップ661により延在部33に固定された部分を基点として斜め上方に伸び、上部がクリップ563により誘引ワイヤ51に固定されている。茎1001には複数の葉1002及び複数の果実1003が側生している。図2に示されるように、斜め誘引においては、果実1003が重力によって鉛直下方に伸びるのに対して、クリップ563及びクリップ661に固定された茎1001が斜め方向に伸びるので、果実1003が茎1001から分離されやすい。このため、果実1003の収穫作業時においては、茎1001と果実1003とを区別して認識し易くなり、作業性が向上する。また、斜め誘引においては収穫位置(果実の位置)が下がるため、背の低い作業者であっても容易に収穫を行うことができる。さらに、斜め誘引においては、垂直誘引よりも茎1001が長くなるため葉数を増やすことができ、収量が増える。図3は、キュウリの収量調査の結果を示すグラフである。図3に示される収量調査では、1株当たりの10日間の総収量(kg)について、垂直誘引よりも斜め誘引が有利であることがわかった。図3に示される例では、1株あたりの総収量は、垂直誘引で0.85kg、斜め誘引で1.05kgとなっている。なお、斜め誘引の態様としても、誘引ワイヤ51から垂直に垂らされた誘引紐(不図示)に茎がクリップ固定される構成が採用されてもよい(図2においては誘引ワイヤ51に茎が直接クリップ固定される態様のみを図示)。
【0019】
このように、垂直誘引と比較して有利な効果がある斜め誘引であるが、クリップ留めを少なくとも上下2点で行う必要があることから、茎の固定に係る作業負担が大きくなるという課題がある。すなわち、垂直誘引の場合には茎801を固定するクリップが1つ(上方のクリップ561のみ)でよいのに対して、斜め誘引の場合には茎901を下方に垂らすだけでなく所定の斜め方向に伸ばす必要があるため茎901を固定するクリップが少なくとも上方及び下方の2つ(上方のクリップ562及び下方のクリップ661)必要になり、クリップ留めの作業が煩雑になるという問題がある。特に、茎の伸長が早いキュウリ等の果菜類の栽培においては、高頻度に(例えば毎日)少なくとも2つのクリップ562,661の位置変更を行う必要があり、作業負担が増加することが考えられる。
【0020】
本実施形態に係る栽培棚1は、垂直誘引よりも有利な効果が多い斜め誘引を採用しつつ、斜め誘引の課題である茎の固定に係る作業負担を軽減することを実現するものである。以下、図1に戻り、栽培棚1の詳細について説明する。図1に示される栽培棚1では、誘引ワイヤ51上でクリップ561により茎を固定している。なお、図1においては茎受け等の構成を省略している。
【0021】
図1に示されるように、果菜類(ここではキュウリ)の栽培棚1は、支柱11,12,13,14と、取付部21,22と、設置部31,32と、延在部33,34と、保持部35,36と、培地41,42(培地部)と、誘引ワイヤ51,52(誘引部材)と、クリップ61,62(固定部)と、誘引用支柱71,72,73,74,75,76,77,78と、を備えている。
【0022】
支柱11,12,13,14は、鉛直方向に伸びる部分である。支柱11,13は、第1方向において対向している。支柱12,14は、第1方向において対向している。支柱11,12は、第1方向に直交する方向において対向している。支柱13,14は、第1方向に直交する方向において対向している。支柱11,12,13,14は、例えば栽培棚1の四隅において鉛直方向に伸びている。
【0023】
設置部31は、支柱11,13間に架け渡されるように第1方向に沿って伸びている。設置部32は、支柱13,14間に架け渡されるように第1方向に沿って伸びている。設置部31,32は、設置面に設置されている。取付部21は、支柱11,12間に架け渡されるように設置部31,32よりも上方において第1方向に直交する方向に伸びている。取付部21は、支柱11,12に固定されている。取付部22は、支柱13,14間に架け渡されるように設置部31,32よりも上方において第1方向に直交する方向に伸びている。取付部22は、支柱13,14に固定されている。
【0024】
延在部33は、取付部21,22上において支柱11,13間に架け渡されるように第1方向に沿って伸びている。延在部33は、例えば、支柱11,13及び取付部21,22に固定されている。延在部34は、取付部21,22上において支柱12,14間に架け渡されるように第1方向に沿って伸びている。延在部34は、例えば、支柱12,14及び取付部21,22に固定されている。保持部35,36は、延在部33,34に挟まれた位置において取付部21,22間に架け渡されるように第1方向に沿って伸びている。保持部35,36は、例えば取付部21,22に固定されている。
【0025】
誘引ワイヤ51は、延在部33よりも上方、詳細には支柱11,13の上方に配置され、第1方向に沿って伸びている。誘引ワイヤ52は、延在部34よりも上方、詳細には支柱12,14の上方に配置され、第1方向に沿って伸びている。誘引ワイヤ51,52は、クリップにより茎の上部を固定するための部材である(詳細は後述)。なお、誘引ワイヤ(誘引部材)は、茎の上部をクリップ留めできるものであれば必ずしも第1方向に伸びるものでなくてもよく、第1方向に交差する様々な方向(例えば垂直方向)に伸びるものであってもよい。なお、誘引部材は、上述した誘引ワイヤ51,52により構成されていてもよいし、誘引ワイヤと誘引ワイヤから垂直に垂れる誘引紐とにより構成されていてもよいし、誘引紐のみにより構成されてもよい。
【0026】
誘引用支柱71,72,73,74は、延在部33に取り付けられると共に、第1方向に交差する第2方向に伸びる。ここでの第2方向とは、第1方向に直交する方向であってもよいし、直交以外の第1方向に交差する方向であってもよく、延在部33から見て外方(培地41,42が設けられた側の反対方向)である。誘引用支柱71,72,73,74は、第1方向に沿って所定の間隔で設けられている。誘引用支柱75,76,77,78は、延在部34に取り付けられると共に、第1方向に交差する第2方向に伸びる。ここでの第2方向とは、第1方向に直交する方向であってもよいし、直交以外の第1方向に交差する方向であってもよく、延在部34から見て外方(培地41,42が設けられた側の反対方向)である。誘引用支柱75,76,77,78は、第1方向に沿って所定の間隔で設けられている。誘引用支柱71,72,73,74,75,76,77,78は、例えば地面に水平に延びている。誘引用支柱71,72,73,74,75,76,77,78は、延在部33(又は延在部34)に取り付けられた状態において、延在部33(又は延在部34)に取り付けられた部分を支点に上下動可能に構成されている。誘引用支柱71,72,73,74,75,76,77,78は、延在部33(又は延在部34)から着脱可能に構成されていてもよい。
【0027】
培地41,42は、第1方向に沿ってキュウリの複数の株が植え付けられた培地部である。培地41,42は、第1方向に沿って互いに連続して設けられている。培地41には、第1方向に沿って2つの株101,102が植え付けられている。培地42には、第1方向に沿って2つの株103,104が植え付けられている。すなわち、第1方向に沿って、株101,102,103,104がこの順番で設けられている。
【0028】
株101,102,103,104からは、例えばそれぞれ3~5本程度の茎が伸びている(3~5本仕立て)。ここでは一例として、株101から伸びる2本の茎201,401、及び、株103から伸びる2本の茎301,501について説明する。図1中では省略しているが、実際には株102,104からも同様に茎が伸びている。
【0029】
茎201は、株101から伸びて、誘引用支柱71,72の下部を通過して(誘引用支柱71,72をくぐり)、誘引用支柱72を支点として斜め上方に伸びている。この場合、誘引用支柱72は、茎201の一部分を係止している状態である。茎201の上部については、固定部であるクリップ62により誘引ワイヤ51に固定されている。茎201には、複数の葉202及び複数の果実203が側生している。
【0030】
茎301は、株103から伸びて、栽培棚1を左回りに周回しながら誘引され、誘引用支柱71の下部を通過して(誘引用支柱71をくぐり)、誘引用支柱71を支点として斜め上方に伸びている。この場合、誘引用支柱71は、茎301の一部分を係止している状態である。茎301の上部については、固定部であるクリップ61により誘引ワイヤ51に固定されている。茎301には、複数の葉302及び複数の果実303が側生している。なお、茎301は左回りではなく右回りで誘引されていてもよい。
【0031】
茎401は、株101から伸びて、誘引用支柱71,71,73,74の下部を通過して(誘引用支柱71,72,73,74をくぐり)、更に伸びている。茎501は、株103から伸びて、誘引用支柱78の下部を通過して(誘引用支柱78をくぐり)、誘引用支柱78を支点として斜め上方に伸びている。この場合、誘引用支柱78は、茎501の一部分を係止している状態である。茎501の上部については、固定部であるクリップ63により誘引ワイヤ52に固定されている。
【0032】
このような茎201,301,401の斜め上方に伸びる角度は、互いに同程度とされていてもよい。例えば、茎201を係止している誘引用支柱72とクリップ62との第1方向における離間距離、茎301を係止している誘引用支柱71とクリップ61との第1方向における離間距離、及び、茎401を係止している誘引用支柱76とクリップ63との第1方向における離間距離を互いに一致させることにより、茎201,301,401の角度が互いに同程度とされる。この場合、茎201,301,401の支点からクリップまでの距離も、互いに同程度となる。
【0033】
そして、茎が伸びてきた際には、茎上部のクリップの位置を株から離れる方向に移動させると共に、茎下部を係止する誘引用支柱を株から離れる方向のものに変更する。例えば、茎301が伸びてきた際には、クリップ61の位置が株101から離れる方向に移動させられ、具体的には現在クリップ62が位置する位置に移動させられる。そして、クリップ61の位置変更に応じて、支点になる誘引用支柱が、株から離れる方向に一つずれた誘引用支柱72に変更される。この場合、実際には、茎201に係るクリップ62等の位置変更が先行して行われており、クリップ62の位置が株101から離れる方向に移動させられると共に、支点になる誘引用支柱が、株から離れる方向に一つずれた誘引用支柱73に変更される。このような移動が行われる際、第1方向におけるクリップの移動距離が、隣り合う誘引用支柱の間隔(第1方向における離間距離)と同程度とされることにより、クリップ等の位置変更前後において、斜め誘引の角度を一定にすることができる。
【0034】
次に、このような栽培棚1を用いたキュウリの栽培方法における、斜め誘引時の茎の移動作業について、その手順を説明する。以下で説明する手順は、例えば毎日或いは数日に一度の頻度で行われてもよい。以下では、茎301に対する作業を例に説明する。
【0035】
最初に、株101から伸びる茎301について、その伸長度合いから固定位置の変更が必要であるか否かが作業者により判断される(第1ステップ)。
【0036】
第1ステップにおいて、固定位置の変更が必要であると判断された場合、クリップ61による茎301の上部の固定位置を株101から離れる方向に移動させる(第2ステップ)。なお、実際には、株101から離れた茎から順番に作業が行われることが好ましく、図1の例では茎201の移動が先に行われる。
【0037】
第2ステップにおけるクリップ61の位置変更に応じて、支点になる誘引用支柱が、現状の誘引用支柱72よりも株101から離れる方向に設けられた誘引用支柱73に変更される(第3ステップ)。この場合、第2ステップにおけるクリップ61の移動距離は、誘引用支柱72,73間の離間距離と同程度とされる。これにより、固定位置の変更前後において、斜め誘引の角度(茎301の角度)を一定とすることができる。このように、斜め誘引の角度を一定に保つ上で、クリップの位置と支点になる誘引用支柱との組み合わせが重要になるため、例えば、互いに対応するクリップの位置(誘引ワイヤ51,52上の位置)と誘引用支柱とに、同じ色のカラーテープを貼り付けて、位置変更の作業性を向上させてもよい。
【0038】
なお、ここまでで説明した栽培棚1は、果実を収穫するロボットと共に利用されてもよい。すなわち、本実施形態に係る栽培システムは、上述した栽培棚1と、図4に示されるようなロボット1000とを備えていてもよい。ロボット1000は、例えばキュウリ収穫用のロボットである。ロボット1000は、キュウリの果実及び茎を区別して認識すると共に、そのハンド等により該果実を収穫する。
【0039】
最後に、本実施形態に係る構成の作用効果を説明する。
【0040】
本実施形態に係る果菜類の栽培棚1は、第1方向に沿って果菜類の複数の株が植え付けられた培地41,42と、第1方向に沿って伸びる延在部33,34と、延在部33,34よりも上方に配置され、第1方向に沿って伸びる誘引ワイヤ51,52と、株101から伸びる茎201,301,401の上部を誘引ワイヤ51,52に固定するクリップ61,62,63と、延在部33,34に取り付けられると共に第1方向に交差する第2方向に伸びる複数の誘引用支柱71,72,73,74,75,76,77,78と、を備え、株101から伸びる茎201,301,401は、少なくとも1つの誘引用支柱の下部を通過して該誘引用支柱を支点として斜め上方に伸びている。
【0041】
このような栽培棚1では、株101から伸びる茎(例えば茎301)が斜め上方に誘引される斜め誘引において、茎301が誘引用支柱71の下部を通過して該誘引用支柱71を支点として斜め上方に伸び、茎301の上部がクリップ61により誘引ワイヤ51に固定されている。このような構成によれば、斜め誘引において、茎301の下部が誘引用支柱71をくぐることにより位置が固定されているので、茎301の下部におけるクリップ等での固定が不要になる。すなわち、本実施形態に係る果菜類の栽培棚1では、従来、上下の2点で位置決めのための固定が必要であった斜め誘引において、茎上部の1点のみの固定とすることができ、作業負担を軽減することができる。例えば、茎の成長に合わせて上部のクリップの位置を変更する場合、茎の下部においては、クリップ(例えばクリップ61)の位置の変更に併せてくぐらせる誘引用支柱を変更(例えば誘引用支柱71から誘引用支柱72に変更)するのみで位置が固定されるので、茎の下部においてもクリップ等の固定位置を変更する場合と比較して、作業負担を大きく軽減することができる。
【0042】
例えばキュウリ促進栽培における栽培管理の主な作業として、収穫、誘引、整枝(摘葉、つる切り等)がある。垂直誘引のように一点で茎を固定する場合であっても、誘引作業は収穫作業に次いで時間がかかる作業である。このように時間がかかる誘引作業において、斜め誘引にして従来のように二点で茎を固定(クリップ等で固定)する場合には、一点で茎を固定する場合の倍以上の作業時間となるおそれがある。この点、上述したように斜め誘引においても一点で茎を固定する構成を採用することにより、栽培管理における作業負担への寄与度が高い誘引作業を効率化し、作業負担を大きく軽減することができる。
【0043】
誘引用支柱71,72,73,74,75,76,77,78は、延在部33,34に取り付けられた状態において、延在部33,34に取り付けられた部分を支点に上下動可能に構成されていてもよい。このような構成によれば、例えば茎の固定状態を解除する場合には誘引用支柱を上方に移動させて円滑に茎を移動させると共に、茎を適切に(しっかりと)固定したい場合には誘引用支柱を下方に移動させて茎を強固に固定する等が可能になる。すなわち、誘引用支柱が上下動可能とされることにより、作業負担をより軽減することができる。
【0044】
誘引用支柱71,72,73,74,75,76,77,78は、延在部33,34から着脱可能に構成されていてもよい。このような構成によれば、必要な場合にのみ誘引用支柱を設けることが可能になり、作業負担をより軽減することがえきる。
【0045】
上記栽培棚1において栽培される果菜類は、キュウリであってもよい。キュウリは、1日当たりの茎の伸長度合いが大きく(例えばトマトの1.9倍程度であり)、茎を固定する構成を日々移動させる必要がある。この点、本実施形態に係る構成では、斜め誘引において、茎の下部については茎をくぐらせる誘引用支柱を変更するのみで茎の位置固定が行われるため、頻繁に発生する茎の固定位置の変更に係る作業負担を軽減することができる。すなわち、本実施形態に係る構成によれば、茎の伸長度合いが大きいキュウリの収穫に係る作業負担を好適に軽減することができる。
【0046】
本実施形態に係る栽培システムは、上述した果菜類の栽培棚1と、果菜類の果実及び茎を区別して認識すると共に、該果実を収穫するロボット1000(図4参照)と、を備える。このような栽培システムによれば、果実及び茎を区別し果実を適切に収穫するロボット1000を用いて、作業負担をより軽減することができる。また、このような栽培システムでは、上述した栽培棚1が採用されて斜め誘引においても作業負担を軽減することができているので、果実及び茎が互いに離間して区別しやすくなる斜め誘引(ロボット1000により高精度に収穫が可能になる斜め誘引)を積極的に採用することができ、作業効率を向上させることができる。なお、斜め誘引が採用された場合に総収量が向上することは、図3等を参照して説明したとおりである。
【0047】
本実施形態に係る栽培方法は、上述した果菜類の栽培棚1を用いた栽培方法であって、複数の誘引用支柱は、第1方向に沿って所定の間隔で複数設けられており、株から伸びる茎についてその伸長度合いから固定位置の変更が必要であるか否かを判断する第1ステップと、固定位置の変更が必要である場合に、クリップによる茎の上部の固定位置を株から離れる方向に移動させる第2ステップと、第2ステップにおけるクリップの位置変更に応じて、支点になる誘引用支柱を、現状よりも株から離れる方向に設けられた誘引用支柱に変更する第3ステップと、を含む。本実施形態に係る栽培方法では、茎の伸長度合いに応じてクリップによる固定位置が変更される共に、クリップによる固定位置の変更に応じて茎の支点(斜め上方への延伸の基点)になる誘引用支柱が変更される。このような構成によれば、茎の伸長度合いに応じて固定位置を変更する際において、茎の下部については単に茎をくぐらせる誘引用支柱を変更するという簡易な作業により固定位置を変更することができるので、作業負担を大きく軽減することができる。
【0048】
本発明は上記実施形態に限定されない。図5図10は、変形例に係る構成、具体的には茎受け部について説明する図である。本発明の栽培棚は、実施形態にて説明した各構成に加えて、茎受け部1100(図5図8参照)又は茎受け部1200(図9及び図10参照)を更に備えていてもよい。なお、図5図8においては、説明の便宜上、誘引用支柱の図示を省略している。
【0049】
図5(a)~図5(d)に示されるように、茎受け部1100は、誘引用支柱の下部を通過する茎201を受ける(支持する)構成である。図5(a)に示されるように、茎受け部1100は、第1方向に沿って所定の間隔で複数設けられている。図5(a)に示される例では、延在部33に交差するように上下方向に延びる支柱1500が第1方向に沿って所定の間隔で複数設けられており、各支柱1500に茎受け部1100が設けられている。図6は、茎受け部1100の分解図である。図5(a)及び図6に示されるように、茎受け部1100は、茎支持部1101と、茎こぼれ防止部1102と、連結部1103と、取付部1104と、を有している。茎支持部1101及び茎こぼれ防止部1102は、互いに交差する方向に延びている。茎受け部1100は、茎201の支持を主目的とする第1状態(図5(a)及び図5(b)参照)と、茎201の支持を主目的としない第2状態(図5(c)及び図5(d)参照)とで、位置及び形状の少なくともいずれかを変更可能に構成されている。第2状態は、例えば、斜め誘引における作業(斜め上方に茎201を引き上げる作業等)を行うことを主目的とする状態である。第1状態において茎201の支持を行う茎受け部1100は、第2状態において斜め誘引における作業が行いやすくなるように、位置及び形状が変化させられる(詳細は後述)。
【0050】
茎支持部1101は、茎201を下方から支持する円筒状の部分である。茎支持部1101は、第1状態において、第2方向に延びている。茎支持部1101は、第2状態において、図5(d)に示されるように第1方向に延びていてもよい。このように、茎支持部1101が第1方向に延びている状態においては、茎支持部1101が第2方向に突出していないので、斜め誘引における作業が行いやすくなっている。
【0051】
茎こぼれ防止部1102は、図6に示されるように連結部1103を介して茎支持部1101に連続して設けられると共に、茎支持部1101に対して交差する方向に延びており、茎支持部1101から茎201が離脱することを防止する構成である。茎こぼれ防止部1102は、第1状態において、茎支持部1101に連続する箇所(詳細には連結部1103を介して茎支持部1101に連続する箇所)から上方に向かって延びている。このように茎こぼれ防止部1102が設けられることにより、茎支持部1101に支持された茎201が茎支持部1101から離脱することを防止することができる。また、茎こぼれ防止部1102は、図5(b)に示される第1状態から、連結部1103を支点として回転することにより、図5(c)に示される第2状態では、下方に向かって延びた状態となる。なお、図5(c)に示される第2状態では、茎支持部1101は第2方向に延びている。このように、茎こぼれ防止部1102が下方に延びている状態においては、斜め誘引における作業が行いやすくなっている。
【0052】
取付部1104は、図6に示されるように茎支持部1101における茎こぼれ防止部1102に連続する部分と反対側の端部に設けられており、図5(a)~図5(d)及び図7(a)~図7(b)に示される例では支柱1500に取り付けられている。なお、取付部1104は、延在部33(又は延在部34)に取り付けられるものであってもよいし(図8(a)等)、誘引用支柱71(又は誘引用支柱72,73,74,75,76,77,78)に取り付けられるものであってもよい(図10(a)等)。図7(b)に示されるように、取付部1104は、支柱1500における様々な高さに取り付け可能とされており、また、延在部33(又は延在部34)の様々な位置に取り付け可能とされている。
【0053】
(茎受け部の状態に応じた態様)
以下では、茎受け部の状態(第1状態,第2状態)に応じた態様について、様々なバリエーションを説明する。図5(a)~図5(d)に示される例では、取付部1104が支柱1500に取り付けられており、第1状態において茎支持部1101が第2方向に延び、茎こぼれ防止部1102が上方に延びている(図5(a)及び図5(b))。また、第2状態において、茎支持部1101が第2方向に延びたまま茎こぼれ防止部1102が下方に延びるように回転してもよいし(図5(c)参照)、茎支持部1101が第1方向に折りたたまれるように回転してもよい(図5(d)参照)。この場合、図5(c)に示される茎こぼれ防止部1102の回転は連結部1103を支点とした回転であり、図5(d)に示される茎支持部1101の回転は取付部1104を支点とした回転である。また、第2状態となる際に、茎こぼれ防止部1102の一部又は全てが取り外されることにより、斜め誘引における作業が行いやすくされてもよい。例えば、取付部1104から、それよりも先端側の各構成(茎支持部1101等)が取り外されることにより、斜め誘引における作業が行いやすくされてもよい。
【0054】
図8(a)~図8(d)に示される例では、取付部1104が延在部33に取り付けられており、第1状態において茎支持部1101が第2方向に延び茎こぼれ防止部1102が上方に延びた状態(図8(a)参照)から、第2状態において茎支持部1101が取付部1104を支点として下方に延びるように回転してもよい(図8(b)参照)。また、第2状態において、図8(b)に示される状態から更に、茎こぼれ防止部1102が連結部1103を支点として第1方向に延びるように回転してもよい(図8(c)参照)。また、第1状態において茎支持部1101が第2方向に延び茎こぼれ防止部1102が上方に延びた状態(図8(a)参照)から、第2状態において茎こぼれ防止部1102が連結部1103を支点として下方に延びるように回転してもよい(図8(d)参照)。
【0055】
また、図9(a)~図9(c)及び図10(a)~図10(f)に示されるように、上述した茎受け部1100に代えて、茎受け部1200が用いられてもよい。茎受け部1200は、茎受け部1100と同様の茎支持部1101と、茎こぼれ防止部1102と、連結部1103と、取付部1104と、を有すると共に、茎支持部1101と取付部1104との間に、延長部1205及び連結部1206を更に有している。延長部1205は、連結部1206を介して茎支持部1101に連続している。また、延長部1205における茎支持部1101に連続する箇所の反対側の端部には取付部1104が設けられている。
【0056】
このような茎受け部1200が用いられた構成において、図9(a)に示される例では、取付部1104が延在部33に取り付けられており、第1状態において、延長部1205が下方に延び、茎支持部1101が第2方向に延び、茎こぼれ防止部1102が上方に延びている。この状態から、第2状態では、茎こぼれ防止部1102が連結部1103を支点として下方に延びるように回転してもよいし(図9(b)参照)、茎支持部1101が連結部1206を支点として第1方向に延びるように(折りたたまれるように)回転してもよい(図9(c)参照)。
【0057】
図10(a)に示される例では、取付部1104が誘引用支柱71に取り付けられており、第1状態において、延長部1205が下方に延び、茎支持部1101が第2方向に延び、茎こぼれ防止部1102が上方に延びている。なお、延長部1205の長さは、図10(b)に示されるように適宜調整されてもよい。第2状態では、茎支持部1101が連結部1206を支点として第1方向に延びるように(折りたたまれるように)回転してもよいし(図10(c)又は図10(e)参照)、茎こぼれ防止部1102が連結部1103を支点たおして下方に延びるように回転してもよい(図10(d)参照)。なお、図10(f)に示されるように、第2状態では、茎支持部1101が連結部1206から取り外されることにより、斜め誘引における作業が行いやすくされてもよい。
【0058】
以上説明したように、果菜類の栽培棚は、誘引用支柱の下部を通過する茎201を受ける茎受け部1100を更に備え、茎受け部1100は、茎201を下方から支持する茎支持部1101と、茎支持部1101に連続して設けられると共に茎支持部1101から茎201が離脱することを防止する茎こぼれ防止部1102と、を有し、茎201の支持を主目的とする第1状態と、茎201の支持を主目的としない第2状態とで、位置及び形状の少なくともいずれかを変更可能に構成されていてもよい。なお、第2状態は、例えば、生育初期や栽培終了時等の茎受けを必要としない時期の状態であってもよい。このように、第1状態及び第2状態で位置及び形状の少なくともいずれかが変更可能とされた茎受け部1100を用いることにより、茎受け部1100によって茎2101の支持を適切に行いながら、例えば斜め誘引における作業を行う場合には茎受け部1100の位置又は形状をそれに適したものとすることができ、茎201の支持性能及び斜め誘引の作業性を両立することができる。
【0059】
茎支持部1101及び茎こぼれ防止部1102は、互いに交差する方向に延びており、第1状態において、茎支持部1101は第2方向に延びており、茎こぼれ防止部1102は茎支持部1101に連続する箇所から上方に向かって延びていてもよい。このような構成によれば、茎支持部1101によって茎201を適切に支持した状態で茎こぼれ防止部1102によって茎201の茎支持部1101からの離脱を適切に抑制することができる。
【0060】
第2状態において、茎支持部1101は第2方向に延びており、茎こぼれ防止部1102は茎支持部1101に連続する箇所から下方に向かって延びていてもよい。第2状態において茎こぼれ防止部1102が下方に延びるようにセットされることにより、斜め誘引における作業性を向上させることができる。
【0061】
第2状態において、茎支持部1101は、第1方向に延びていてもよい。これにより、茎支持部1101が第2方向に突出していない状態となるので、斜め誘引の作業性を向上させることができる。
【0062】
茎受け部1100は、茎支持部1101における茎こぼれ防止部1102に連続する部分と反対側の端部に設けられた取付部1104を更に有し、取付部1104は、延在部33、支柱1500、及び誘引用支柱の少なくともいずれかに取り付けられていてもよい。このように、種々の構成に取付部1104が取り付けられることにより、茎受け部1100の配置自由度を高めることができる。
【符号の説明】
【0063】
1…栽培棚、33,34…延在部、41,42…培地(培地部)、51,52…誘引ワイヤ(誘引部材)、71,72,73,74,75,76,77,78…誘引用支柱、101,102,103,104…株、201,301,401…茎、1000…ロボット、1100,1200…茎受け部、1101…茎支持部、1102…茎こぼれ防止部、1104…取付部、1500…支柱。
【要約】
【課題】作業負担を軽減することができる、果菜類の栽培棚及び栽培方法を提供すること。
【解決手段】果菜類の栽培棚1は、第1方向に沿って果菜類の複数の株が植え付けられた培地41,42と、第1方向に沿って伸びる延在部33,34と、延在部33,34よりも上方に配置され、第1方向に沿って伸びる誘引ワイヤ51,52と、株101から伸びる茎201,301,401の上部を誘引ワイヤ51,52に固定するクリップ61,62,63と、延在部33,34に取り付けられると共に第1方向に交差する第2方向に伸びる複数の誘引用支柱71,72,73,74,75,76,77,78と、を備え、株101から伸びる茎201,301,401は、少なくとも1つの誘引用支柱の下部を通過して該誘引用支柱を支点として斜め上方に伸びている。
【選択図】図1
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