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  • 特許-吸水性樹脂粒子を製造する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-04
(45)【発行日】2025-09-12
(54)【発明の名称】吸水性樹脂粒子を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20250905BHJP
【FI】
C08J3/12 A CEY
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022539534
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(86)【国際出願番号】 JP2021027923
(87)【国際公開番号】W WO2022025122
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2024-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2020130389
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】岡澤 志保
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-112474(JP,A)
【文献】特開2014-098172(JP,A)
【文献】国際公開第2011/136301(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/126793(WO,A1)
【文献】特開2007-284675(JP,A)
【文献】特開平11-302306(JP,A)
【文献】特表2008-535963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00- 3/28
C08F 2/00- 2/60
C08F 6/00-246/00
C08F 301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体粒子を含む吸水性樹脂粒子を製造する方法であって、当該方法が、
反応容器に収容された、単量体及び水を含む反応液中での重合反応によって、水及び重合体を含む含水ゲル状重合体を形成する工程と、
前記含水ゲル状重合体から水を除去することにより、前記重合体を含む乾燥物を形成する工程と、
前記乾燥物を粉砕することにより、重合体粒子の粉体を形成する工程と、
を含み、
前記単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記反応容器が、一定の方向に沿って延在し互いに対向する2つの側壁面と、前記2つの側壁面とともに凹部を形成している底面とを有し、
前記2つの側壁面の延在方向に垂直な、前記反応液の液面内の直線上に5つの測定点を直列に配置したときに、前記5つの測定点それぞれにおいて前記反応液の温度が前記重合反応の間に到達する最高温度のうちの最大値Tmaxが前記5つの測定点のうちいずれかにおいて示された時点において、前記5つの測定点それぞれにおける前記反応液の温度の標準偏差が12~30であり、Tmaxが80~100℃であり、
前記5つの測定点が、前記2つの側壁面それぞれから1cmの位置の2つの測定点、及び、該2つの測定点の間を4等分する位置の3つの測定点から構成され、
前記5つの測定点それぞれにおける前記反応液の温度が、それぞれの測定点の直下の位置の前記底面上で測定される、方法。
【請求項2】
前記5つの測定点が配置される方向における前記反応液の液面の幅が10~500cmである、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吸水性樹脂粒子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サニタリー用品等の吸収性物品に用いることのできる吸水性樹脂粒子が、反応容器に収容された反応液中での単量体の重合反応によって塊状の含水ゲル状重合体を形成することと、含水ゲル状重合体を乾燥することによって得られる、重合体を含む固形の乾燥物を粉砕することとを含む方法によって製造されることがある(例えば特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-228604号公報
【文献】特開2006-160866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
重合体を含む乾燥物を粉砕することによって形成される粉体は微粉を含むが、一般に、目開き180μmの篩を通過するような微粉は、そのままでは製品として利用し難いことが多い。そのため、製造の歩留まり向上のためには、粉砕によって得られる粉体において、微粉の割合が出来るだけ小さいことが望ましい。
【0005】
本開示の一側面は、重合体を含む乾燥物を粉砕することを含む方法によって吸水性樹脂粒子を製造する場合において、粉砕によって形成される粉体における微粉の割合を低下させる方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面は、重合体粒子を含む吸水性樹脂粒子を製造する方法を提供する。本開示の一側面に係る方法は、反応容器に収容された単量体及び水を含む反応液中での重合反応によって、水及び重合体を含む含水ゲル状重合体を形成する工程と、前記含水ゲル状重合体から水を除去することにより、重合体を含む乾燥物を得る工程と、前記乾燥物を粉砕することにより、重合体粒子の粉体を形成する工程とを含む。
【0007】
前記反応容器が、一定の方向に沿って延在し互いに対向する2つの側壁面と、前記2つの側壁面とともに凹部を形成している底面とを有する。前記2つの側壁面の延在方向に垂直な、前記反応液の液面内の直線上に5つの測定点を直列に配置したときに、前記5つの測定点それぞれにおいて前記反応液の温度が前記重合反応の間に到達する最高温度のうち最大値Tmaxが前記5つの測定点のうちいずれかにおいて示された時点において、前記5つの測定点それぞれにおける前記反応液の温度の標準偏差が12~30であり、Tmaxが80~100℃である。前記5つの測定点は、前記2つの側壁面それぞれから1cmの位置の2つの測定点、及び、該2つの測定点の間を4等分する位置の3つの測定点から構成される。前記5つの測定点それぞれにおける前記反応液の温度は、それぞれの測定点の直下の位置の前記底面上で測定される。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一側面によれば、重合体を含む乾燥物を粉砕することを含む方法によって吸水性樹脂粒子を製造する場合において、粉砕によって形成される粉体における微粉の割合を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】反応液中での重合反応によって含水ゲル状重合体を形成する工程において、反応液の液面内に配置される測定点の例を示す模式上面図である。
図2】反応液中での重合反応によって含水ゲル状重合体を形成する工程において、反応液の液面内に配置される測定点の例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は以下の例示に限定されるものではない。
【0011】
本明細書において「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの両方を意味する。「アクリレート」及び「メタクリレート」も同様に「(メタ)アクリレート」と表記する。他の類似の用語も同様である。「(ポリ)」とは、「ポリ」の接頭語がある場合及びない場合の双方を意味するものとする。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。本明細書に例示する材料は、1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0012】
吸水性樹脂粒子を製造する方法の一実施形態は、単量体及び水を含む反応液中での重合反応によって、水及び重合体を含む含水ゲル状重合体を形成する工程と、含水ゲル状重合体から水を除去することにより、重合体を含む乾燥物を形成する工程と、乾燥物を粉砕することにより、吸水性樹脂粒子の粉体を形成する工程とを含む。
【0013】
重合反応は、底面、及び底面の端部から延びた2つの側壁面を有する反応容器に収容された反応液中で、反応液の液面上に配置された5つの測定点において測定される反応液の温度のばらつきがある程度大きくなるような条件で行われる。
【0014】
図1は、単量体及び水を含む反応液中での重合反応によって含水ゲル状重合体を形成する工程において、反応液の液面内に配置される測定点の例を示す模式上面図であり、図2図1の断面図である。図1及び図2に示される、反応液1が収容された反応容器10は、同じ一定の方向Xに沿って延在し、互いに対向する2つの側壁面11,12と、2つの側壁面11,12の延在方向Xに垂直な方向に沿って延在し、互いに対向する2つの側壁面13,14と、これら側壁面とともに、反応液1を収容する凹部を形成している底面15とを有する。側壁面11,12,13,14は、底面15に対して垂直であってもよく、傾斜していてもよい。
【0015】
対向する2つ側壁面11,12の延在方向Xに垂直な、反応液1の液面1S内の直線2上に、5つの測定点P1,P2,P3,P4及びP5がこの順で直列に配置される。5つの測定点は、2つの側壁面11,12それぞれから1cmの位置の2つの測定点P1,P5と、2つの測定点P1,P5の間を4等分する位置の3つの測定点P2,P3,P4とから構成される。側壁面11,12と測定点P1,P2との間隔W0が1cmである。測定点P1と測定点P2との間隔W12、測定点P2と測定点P3との間隔W23、測定点P3と測定点P4との間隔W34、及び、測定点P4と測定点P5との間隔W45が同じである。測定点P3は、2つの側壁面11、12の間の中央に位置する。
【0016】
重合反応の間、5つの測定点P1,P2,P3,P4及びP5それぞれにおける反応液の温度T1,T2,T3,T4及びT5が、それぞれの測定点の直下の位置P10,P20,P30,P40及びP50の底面15上において測定される。両端の測定点P1,P5の直下の位置に傾斜した側壁面11,12がある場合、両端の測定点P1,P5の直下の位置の側壁面11,12上において温度T1,T5測定される。反応液1の温度が測定される底面15上の位置は、底面15(又は側壁面11,12)から反応液1の深さ方向において0.5cm以内の位置であることができる。
【0017】
5つの測定点P1,P2,P3,P4及びP5それぞれにおいて示される反応液1の温度T1,T2,T3,T4及びT5は、重合反応の進行に伴って上昇して最高温度に到達し、その後低下する。それぞれの測定点における反応液1の温度T1,T2,T3,T4及びT5が重合反応において到達する最高温度のうち最大値Tmaxが5つの測定点P1,P2,P3,P4及びP5のうちいずれかにおいて示された時点において、5つの測定点P1,P2,P3,P4及びP5それぞれにおいて示される反応液の温度T1,T2,T3,T4及びT5の標準偏差(以下「温度偏差」ということがある。)が12~30である。例えば、測定点P3における反応液1の温度T3が重合反応の間に到達する最高温度が、それぞれの測定点における反応液1の温度T1,T2,T3,T4及びT5が重合反応の間に到達する最高温度のうち最大値Tmaxである場合、測定点P3における反応液1の温度T3がTmaxに到達した時点における温度T1,T2,T3,T4及びT5から算出される温度偏差が、12~30である。
【0018】
反応液の温度偏差が12~30のようにある程度大きいと、重合反応の均一性が低下することにより、重合体を含む乾燥物が柔らかくなる傾向があり、その結果、粉砕における微粉の発生が抑制されると考えられる。重合体粒子の粉体における微粉の割合の更なる低減の観点から、反応液の温度偏差が、12以上で25以下、23以下又は20以下であってもよく、13以上で30以下、25以下、23以下又は20以下であってもよい。
【0019】
反応液1の温度T1,T2,T3,T4及びT5が重合反応において到達する最高温度のうちの最大値Tmaxは80~100℃である。Tmaxが80℃以上であることによって、反応液1の全体がゲル化するまで重合反応が十分に進行し易い。重合反応の開始による反応液の温度が上昇し始めてから、又は、後述される開裂促進剤液の投入が終了した時点から、温度T1,T2,T3,T4及びT5のうちいずれかがTmaxに到達するまでの時間は、例えば1~20分であってもよい。
【0020】
5つの測定点P1,P2,P3,P4及びP5が配置される方向(直線2の方向)における反応液1の液面1Sの幅は、10~500cm、10~300cm、10~100cm又は10~80cmであってもよい。
【0021】
図1に示される反応容器10の場合、側壁面11,12の幅は、側壁面13,14の幅よりも短い。温度偏差を決定するための5つの測定点が、側壁面13,14に垂直な方向の直線上に配置されてもよい。図1の実施形態のように反応容器が対向する2つの側壁面を2組有する場合、2組のうち一方又は両方の2つの側壁面の間にわたって配置された5つの測定点において測定される反応液の温度偏差が、12~30であることができる。
【0022】
反応容器を側壁面11,12の延在方向に沿って移動させながら、重合反応を進行させてもよい。その場合、反応容器の移動方向における任意の位置で、反応容器の移動方向に対して垂直な方向の直線上に直列に配置された5つの測定点における反応液の温度偏差が12~30であってもよい。
【0023】
後述のように重合反応を低温で開始するための開裂促進剤を含む開裂促進剤液を反応液1に投入することによって重合反応が開始される場合、測定点P1,P2,P3,P4及びP5が配置される直線2が、液面1S内の開裂促進剤液が投入される位置又はその近傍を通る直線であってもよい。例えば、直線2が、液面1S内の開裂促進剤液が投入される位置から1cm以内の領域を通る直線であってもよい。
【0024】
開裂促進剤液が、液面1S内の1つの位置に向けて投入されてもよいし、液面1S内の2以上の位置に分けて同時に投入されてもよい。開裂促進剤液が同時に投入される位置の数が少ないと、温度偏差が大きくなる傾向、及び、Tmaxが大きくなる傾向がある。長尺の反応容器、又はエンドレスベルト上に設けられた反応容器を用い、反応容器を移動させて反応溶液の液面内における投入位置を変えながら、順次、開裂促進剤液を2回以上投入してもよい。その場合、1回の開裂促進剤液の投入ごとに、開裂促進剤液が投入された位置又はその近傍を通る直線上に5つの測定点を配置し、それぞれの5つの測定点において測定される反応液の温度偏差が12~30の範囲に維持されるように、重合反応の条件が調整される。
【0025】
開裂促進剤液は、その全量が例えば5~120秒の時間をかけて反応液1に投入される。開裂促進剤液を反応液1に投入するために要する時間が長いと、反応液の温度偏差が大きくなる傾向がある。
【0026】
開裂促進剤液が投入される前の反応液1の温度は、Tmaxが80~100℃となるように調整され、例えば0~40℃、又は10~30℃であってもよい。反応液1中の溶存酸素量が、例えば0.1ppm以下であってもよい。
【0027】
重合反応の間、反応液1を攪拌してもよい。攪拌の強度が小さいと、5つの測定点において測定される反応液の温度の標準偏差が大きくなる傾向がある。例えば反応容器10の底面15上に配置された攪拌子3によって反応液1を攪拌する場合、攪拌子3の回転数及び/又は数が小さいと、反応液1の温度偏差が大きくなる傾向がある。攪拌子の回転数及び数は、攪拌子の種類、反応液1の量等に応じて、温度偏差が12~30となるように調整することができる。例えば、1つの反応容器に設置される攪拌子の数は1~3個であってもよく、攪拌子の回転数が50~300rpmであってもよい。
【0028】
重合反応の時間は、重合反応が十分に進行して含水ゲル状重合体が形成されるように調整される。反応溶液の温度が低下し始めた後、反応容器10を50~80℃に保温することにより、重合反応を完結させてもよい。
【0029】
反応容器10は、特に制限されないが、例えばステンレス製、セラミックス製、合成樹脂製又はスチール製の容器であってもよい。反応容器10がベルトコンベア上に設けられていてもよい。反応容器10内の反応液1の深さは、例えば10~50mm、10~40mm、又は15~35mmであってもよい。
【0030】
重合反応前の反応液1は、水及び水に溶解した単量体を含む単量体水溶液であることができる。重合反応の進行にともなって、反応液1は増粘し、続いてゲル化して、含水ゲル重合体を形成する。通常、重合反応の進行にともなって反応液1は流動性を失うが、本明細書では、反応液1が流動性を失った後の混合物のことも、便宜上反応液と称することがある。
【0031】
反応液1における単量体の濃度は、反応液1の質量を基準として、例えば20~50質量%、又は20~40質量%であってもよい。
【0032】
単量体は、重合体粒子及び吸水性樹脂粒子に吸水性を付与する重合体を重合によって形成する化合物である。重合体が架橋重合体であってもよい。単量体はエチレン性不飽和単量体であってもよい。
【0033】
エチレン性不飽和単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸及びその塩、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及びその塩、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、並びにジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでいてもよい。エチレン性不飽和単量体がアミノ基を含有する場合には、当該アミノ基は4級化されていてもよい。単量体が、アクリル酸及びその塩、メタクリル酸及びその塩、アクリルアミド、メタクリルアミド並びにN,N-ジメチルアクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物、アクリル酸及びその塩、メタクリル酸及びその塩、並びにアクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物、又は、アクリル酸及びその塩、並びにメタクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでいてもよい。
【0034】
反応液1が、エチレン性不飽和単量体以外の単量体を含んでいてもよい。エチレン性不飽和単量体(特に、(メタ)アクリル酸及びその塩)の割合が、反応液中の単量体全量に対し70~100モル%、80~100モル%又は90~100モル%であってもよい。エチレン性不飽和単量体のうち、(メタ)アクリル酸及びその塩の占める割合が、70~100モル%、80~100モル%又は90~100モル%であってもよい。
【0035】
反応液1は、開始剤(特に、ラジカル重合開始剤)を更に含んでもよい。開始剤は、過硫酸塩、アゾ化合物、有機過酸化物又はこれらの組み合わせを含んでもよい。開始剤の量が、単量体1モルに対して0.01~15ミリモルであってもよい。2種以上の開始剤が用いられる場合、それぞれの開始剤の量が、単量体1モルに対して0.01~15ミリモルであってもよい。
【0036】
過硫酸塩の例としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、及び過硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0037】
アゾ化合物の例としては、2,2’-アゾビス[2-(N-フェニルアミジノ)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[N-(4-クロロフェニル)アミジノ]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[N-(4-ヒドロキシフェニル)アミジノ]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(N-ベンジルアミジノ)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(N-アリルアミジノ)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[N-(2-ヒドロキシエチル)アミジノ]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物、及び2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]が挙げられる。大きなCRC(無加圧下吸水倍率)を示す重合体粒子の形成の観点から、ラジカル重合開始剤が、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物、及び2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩から選ばれる少なくとも1種のアゾ化合物を含んでもよい。
【0038】
有機過酸化物の例としては、メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、及びt-ブチルパーオキシピバレートが挙げられる。
【0039】
反応液1が、開始剤及び開裂促進剤を含んでもよい。開裂促進剤は、開始剤によって重合反応が開始する温度を低下させる化合物である。重合反応が低温で開始すると、より優れた吸水性能を有する吸水性樹脂粒子が得られ易い。開裂促進剤は、例えば、還元剤、酸化剤又はこれらの組み合わせであることができる。開裂促進剤のうち一部又は全部を、単量体、開始剤及び水を含む反応液に対して後から投入し、それにより重合反応を開始させてもよい。開裂促進剤の量は、例えば、開始剤1モルに対して0.01~1.0モルであってもよい。
【0040】
開裂促進剤として用いられる還元剤は、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第1鉄、及びL-アスコルビン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であってもよい。開裂促進剤として用いられる酸化剤は、例えば、過酸化水素、過ホウ酸ナトリウム、過リン酸、過リン酸塩、及び過マンガン酸カリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であってもよい。
【0041】
2種以上の開裂促進剤を用いる場合、それらを別々に反応液に投入してもよい。例えば、単量体、開始剤及び水を含む反応液に対して、還元剤(例えばL-アスコルビン酸)を含む開裂促進剤液、及び酸化剤(例えば過酸化水素)を含む開裂促進剤液を順次投入することによって、重合反応を開始させてもよい。あるいは、単量体、開始剤及び水を含む反応液に対して、還元剤(例えばL-アスコルビン酸)を含む開裂促進剤液を投入することによって、重合反応を開始させてもよい。開裂促進剤液は、開裂促進剤及び水を含む水溶液であってもよい。
【0042】
反応液1が連鎖移動剤を更に含んでもよい。連鎖移動剤は、例えば次亜リン酸、亜リン酸又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0043】
反応液1が内部架橋剤を含んでもよい。その場合、内部架橋剤によって架橋された架橋重合体を含む含水ゲル状重合体が形成される。内部架橋剤の量は、単量体1モルに対して0.002~0.04ミリモルであってもよい。
【0044】
内部架橋剤は、反応性官能基(例えば重合性不飽和基)を2個以上有する化合物であってもよい。内部架橋剤は、反応性官能基として(メタ)アクリル基、アリル基、エポキシ基、又はアミノ基を有する化合物を含んでもよい。(メタ)アクリル基を有する化合物の例としては、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びN,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミドが挙げられる。アリル基を有する化合物の例としては、トリアリルアミンが挙げられる。エポキシ基を有する化合物の例としては、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンポリグリシジルエーテル及びエピクロロヒドリンが挙げられる。アミノ基を有する化合物の例としては、トリエチレンテトラミン、エチレンジアミン、及びヘキサメチレンジアミンが挙げられる。
【0045】
重合反応によって形成された塊状の含水ゲル状重合体が反応容器10から取り出される。含水ゲル状重合体から水を除去することにより重合体を含む乾燥物を得る工程の前に、含水ゲル状重合体を粗砕することによってある程度小さいサイズの構造体を含む粗砕物を形成してもよい。粗砕物を形成することにより、水を効率的に除去することができる。粗砕物を構成する構造体は、例えば、細長い構造体、粒状の構造体(粒子)、又はこれらの組み合わせであることができる。粗砕物は、直径10mm又は7mmの円形孔を通過可能な形状を有する複数の構造体を含んでいてもよい。細長い構造体は、曲がっていてもよく、その最大幅が10mm以下であれば、直径10mmの円形孔を通過可能な形状を有するといえる。粒状の構造体(粒子)は不定形であってもよく、向きを変えながら直径10mmの円形孔を通過可能な形状を有していてもよい。含水ゲル状重合体を粗砕する粗砕装置の例としては、ニーダー(例えば、加圧式ニーダー、双腕型ニーダー)、ミートチョッパー、カッターミル、及びファーマミルが挙げられる。
【0046】
含水ゲル状重合体又はその粗砕物の乾燥により、含水ゲル状重合体中の水の大部分が除去される。乾燥により得られる、重合体を含む乾燥物の含水率が、例えば20質量%以下、10質量%以下、又は5質量%以下であってもよく、0質量%以上であってもよい。ここでの乾燥物の含水率は、水を含む乾燥物の全体質量を基準とする、重合体粒子における水分量の割合を意味する。通常、測定に供する水を含む乾燥物を200℃で2時間加熱したときに、加熱前後での乾燥物の質量の差を、測定に供した乾燥物における水分量とみなすことができる。乾燥の方法は、例えば自然乾燥、加熱乾燥、送風乾燥、凍結乾燥又はこれらの組み合わせのような一般的な方法であってよい。常圧下又は減圧下で粗砕物を乾燥してもよい。常圧下の乾燥のための加熱温度が、70~250℃、又は80~200℃であってもよい。
【0047】
重合体を含む乾燥物を粉砕する方法は特に限定されない。例えば、遠心粉砕機、ローラーミル、スタンプミル、ジェットミル、高速回転粉砕機、及び容器駆動型ミル等の粉砕機を用いて乾燥物を粉砕することができる。
【0048】
粉砕により得られた重合体粒子の粉体を分級してもよい。分級は、粒子群(粉体)を、粒度分布の異なる2以上の粒子群に分ける操作のことを意味する。分級後の重合体粒子の粉体の一部を再度、粉砕及び分級してもよい。
【0049】
分級の方法は、特に限定されないが、例えば、スクリーン分級、又は風力分級であってもよい。スクリーン分級は、スクリーンを振動させることによって、スクリーン上の粒子を、スクリーンの網目を通過する粒子と通過しない粒子とに分級する方法である。スクリーン分級は、例えば振動篩、ロータリシフタ、円筒撹拌篩、ブロワシフタ、又はロータップ式振とう器を用いて行うことができる。風力分級は、空気の流れを利用して粒子を分級する方法である。
【0050】
粉砕、及び必要により分級を経て得られる重合体粒子の中位粒子径が、例えば200~500μmであってもよい。後述の表面架橋剤溶液と混合される前の重合体粒子の中位粒子径が、例えば200~500μmであってもよい。分級によって得られた、中位粒子径の異なる2以上の粉体を混ぜ合わせることによって、粒度分布を調整してもよい。
【0051】
重合体粒子を表面架橋剤によって表面架橋してもよい。表面架橋により、重合体粒子の表面近傍の重合体が表面架橋剤によって架橋される。例えば、重合体粒子の粉体と表面架橋剤溶液との混合物を加熱することにより、重合体粒子を表面架橋することができる。経過時間tを選択するための上述の溶解分は、表面架橋される前の重合体粒子を用いて測定される。
【0052】
表面架橋剤溶液は、水、及び水に溶解した表面架橋剤を含有する溶液であることができる。表面架橋剤溶液に含まれる溶媒は、実質的に水のみであってもよい。水以外の溶媒の割合が、表面架橋剤溶液の質量を基準として、10質量%以下、5質量%以下、又は1質量%以下であってもよい。
【0053】
表面架橋剤の例としては、エチレンカーボネート等のアルキレンカーボネート化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、及びポリグリセリン等のポリオール化合物;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、及び(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、及びα-メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4-トリレンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;3-メチル-3-オキセタンメタノール、3-エチル-3-オキセタンメタノール、3-ブチル-3-オキセタンメタノール、3-メチル-3-オキセタンエタノール、3-エチル-3-オキセタンエタノール、及び3-ブチル-3-オキセタンエタノール等のオキセタン化合物;1,2-エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;ビス[N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物が挙げられる。これらの表面架橋剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。表面架橋剤が、アルキレンカーボネート化合物、ポリオール化合物、又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。表面架橋剤におけるアルキレンカーボネート化合物の比率が、表面架橋剤の総質量を基準として50~100質量%、60~100質量%、70~100質量%、80~100質量%、又は90~100質量%であってもよい。
【0054】
吸水性樹脂粒子の加圧下の吸水性能等の観点から、表面架橋剤の量は、重合体粒子中の重合体を構成する単量体単位1モル当たり、0.001~0.10モル、0.005~0.05、又は0.01~0.02モルであってもよい。
【0055】
表面架橋のための加熱温度及び加熱時間は、表面架橋剤の種類等を考慮して、架橋反応が適切に進行するように調整される。例えば、表面架橋のための加熱温度が80~200℃であってもよい。表面架橋のための加熱時間は、例えば5~90分であってもよい。
【0056】
表面架橋された重合体粒子は、必要により更に乾燥してもよいし、分級してもよい。重合体粒子をそのまま吸水性樹脂粒子として用いてもよいし、例えば重合体粒子の表面に無機粒子を付着させてもよい。すなわち、吸水性樹脂粒子が、重合体粒子、及び重合体粒子の表面に付着した無機粒子を含んでもよい。無機粒子の例としては、非晶質シリカ等のシリカ粒子が挙げられる。
【0057】
製造された吸水性樹脂粒子は、例えば、おむつ等の吸収性物品を構成する吸収体を形成するために用いられる。
【実施例
【0058】
本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0059】
1.架橋重合体粒子
(実施例1)
単量体水溶液の調製
2Lのセパラブルフラスコに325.9g(4.52モル)のアクリル酸を入れた。セパラブルフラスコ内のアクリル酸に、攪拌しながらイオン交換水280.4gを加えた。次いで、約3℃の氷水浴下で283.2gの48質量%水酸化ナトリウム水溶液を滴下することにより、部分的に中和されたアクリル酸を単量体として含む、単量体濃度45質量%の単量体水溶液を調製した。
【0060】
重合反応
単量体水溶液888.10gと、イオン交換水150.04gと、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=約9、内部架橋剤、日油株式会社、ブレンマーADE-400A)0.930gと、濃度5質量%の2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(富士フイルム和光純薬工業株式会社製:V-50)水溶液6.47gとを2Lの手付きビーカーに順次投入し、ビーカー内の混合液を攪拌した。
【0061】
内寸法25cm×19cmの長方形の底面と、底面の周囲に設けられた4つの側壁面とを有し、内寸法28cm×22cmの長方形の開口部を有する、フッ素樹脂でコーティングされた高さ5cmのステンレスバットを反応容器として用いた。反応容器にビーカー内の混合液を入れ、反応容器内の混合液を2個の攪拌子(直径8mm、長さ45mm、リングなし)で攪拌することにより、均一な反応液を形成させた。その後、反応容器上部をポリエチレンフィルムでシールした。
【0062】
反応液の液面の幅は、反応容器の長手方向において26cmであり、反応液の深さは1.7cmであった。反応液の液面内で反応容器の長手方向に垂直な直線上に、反応容器の長手方向において対向する2つの側壁面から1cmの位置の2点P1,P5、及びそれら2点の間を4等分する3点P2,P3,P4の合計5つの測定点を定めた。測定点P1,P2,P3,P4,P5それぞれの位置において、温度計(CT-320WP 株式会社カスタム製)を反応容器の底面まで到達するように反応液内に垂直に挿入した。5つの測定点は、反応容器の短手方向における中央において、反応容器の長手方向に沿って直線的に並んでいた。2個の攪拌子は測定点P1とP2との間、及び、測定点P4とP5との間に設置した。
【0063】
反応容器内の反応液の温度を25℃に調整し、窒素置換により、反応液中の溶存酸素量を0.1ppm以下に調整した。次いで、反応液に、注射器(テルモ株式会社製、10mL容ディスポシリンジ、テルモ株式会社製の注射針)を用いて濃度0.5質量%のL-アスコルビン酸水溶液3.40gを入れ、反応液を充分に攪拌した。反応液を100rpmで攪拌しながら、中央の測定点P3近傍に向けて、注射器(テルモ株式会社製、10mL容ディスポシリンジ、テルモ株式会社製の注射針)を用いて0.35質量%の過酸化水素水溶液3.70gを4秒かけて滴下した。
【0064】
過酸化水素水溶液の滴下と同時に重合反応が開始した。重合反応の進行にともなって反応液の粘度が増加した後、反応液がゲル化して、水及び架橋重合体を含む含水ゲル状重合体が形成された。5つの温度計が示す温度は、それぞれ、重合反応の進行にともなって最高温度に到達した後、低下した。過酸化水素水溶液の滴下終了から3分の時点で、測定点P3の温度計が、5つの温度計それぞれが重合反応中に示した最高温度のうちの最大値99℃を示した。測定点P3の温度計が最高温度99℃を示した時点において5つの温度計が示した温度を記録し、それら5つの温度の標準偏差(温度偏差)を算出した。過酸化水素水溶液の滴下終了から6分経過後、含水ゲル重合体が入った反応容器を75℃の水浴に浸し、その状態で含水ゲル状重合体を20分間保温して重合反応を完結させた。
【0065】
粗砕及び乾燥
反応容器から取り出された塊状の含水ゲル状重合体を、5cm幅に裁断した。裁断した含水ゲル重合体をミートチョッパー(喜連ローヤル株式会社製、型番:12VR-750SDX)に順次投入して室温で粗砕した。ミートチョッパーの出口に位置するプレートの円形の吐出孔の直径は6.4mmであった。粗砕された含水ゲル状重合体を目開き0.8cm×0.8cmの金網上に広げて配置し、熱風乾燥機(ADVANTEC社製、FV-320)を用いて180℃で30分間の加熱により乾燥して、架橋重合体を含む乾燥物を得た。
【0066】
粉砕
乾燥物を、遠心粉砕機(Retsch社製、ZM200、スクリーン口径:1mm、6000rpm)によって粉砕して、重合体粒子の粉体を得た。
【0067】
(実施例2)
0.35質量%の過酸化水素水溶液を滴下する際の攪拌子の回転数を300rpmに変更したこと、0.35質量%の過酸化水素水溶液3.70gを63秒かけて滴下したこと以外は実施例1と同様の手順により、重合体粒子の粉体を得た。過酸化水素水溶液の滴下終了から3分の時点で、測定点P2の温度計が、5つの温度計それぞれが重合反応中に示した最高温度のうちの最大値80℃を示した。測定点P2の温度計が最高温度80℃を示した時点において5つの温度計が示した温度を記録し、それら5つの温度の標準偏差(温度偏差)を算出した。
【0068】
(実施例3)
実施例1と同様にして調整した単量体水溶液630.55gと、イオン交換水68.30gと、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=約9、内部架橋剤、日油株式会社、ブレンマーADE-400A)0.660gと、濃度2質量%の過硫酸カリウム水溶液1.44gと、濃度5質量%の2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(富士フイルム和光純薬工業株式会社製:V-50)水溶液4.02gとを1Lの手付きビーカーに順次投入して、ビーカー内の混合液を攪拌した。
【0069】
内寸法16cm×20cmの長方形の底面と、底面の周囲に設けられた4つの側壁面とを有し、内寸法19cm×23cmの長方形の開口部を有する、フッ素樹脂コーティングされた高さ3cmのステンレスバットを反応容器として用いた。反応容器にビーカー内の混合液を入れ、反応容器内の混合液を2個の攪拌子(直径8mm、長さ30mm、リングなし)で攪拌することにより、均一な反応液を形成させた。その後、反応容器の上部をポリエチレンフィルムでシールした。
【0070】
反応液の液面の幅は、反応容器の短手方向において18cmであり、反応液の深さは1.6cmであった。反応液の液面内で反応容器の長手方向に垂直な直線上に、反応容器の短手方向において対向する2つの側壁面から1cmの位置の2点P1,P5、及びそれら2点の間を4等分する3点P2,P3,P4の合計5つの測定点を定めた。測定点P1,P2,P3,P4,P5それぞれの位置において、温度計(CT-320WP 株式会社カスタム製)を反応容器の底面まで到達するように反応液内に垂直に挿入した。5つの測定点は、反応容器の短手方向における中央において、反応容器の短手方向に沿って直線的に並んでいた。2つの攪拌子は測定点P1とP2との間、及び、測定点P4とP5との間に設置した。
【0071】
反応容器内の反応液の温度を25℃に調整し、窒素置換により、反応液中の溶存酸素量を0.1ppm以下に調整した。次いで、100rpmで攪拌しながら、中央の測定点P3近傍に向けて、注射器(テルモ株式会社製、10mL容ディスポシリンジ、テルモ株式会社製の注射針)を用いて、濃度0.5質量%のL-アスコルビン酸水溶液2.41g、及び0.35質量%の過酸化水素水溶液2.62gをそれぞれ3秒かけて順次滴下した。
【0072】
過酸化水素水溶液の滴下と同時に重合反応が開始した。重合反応の進行にともなって反応液の粘度が増加した後、反応液がゲル化して、水及び架橋重合体を含む含水ゲル状重合体が形成された。過酸化水素水溶液の滴下終了から5分の時点で、測定点P3の温度が、5つの温度計それぞれが重合反応中に示した最高温度のうちの最大値95℃を示した。測定点P3の温度計が最高温度95℃を示した時点における5つの温度計が示した温度を記録し、それら5つの温度の標準偏差(温度偏差)を算出した。過酸化水素水溶液の滴下終了から8分経過後、含水ゲル状重合体が入った反応容器を75℃の水浴に浸し、その状態で含水ゲル状重合体を20分間保温して重合反応を完結させた。
【0073】
形成された含水ゲル状重合体から、実施例1と同様の粗砕、乾燥及び粉砕によって重合体粒子の粉体を得た。
【0074】
(比較例1)
0.35質量%の過酸化水素水溶液を滴下する際の攪拌子の回転数を300rpmに変更したこと以外は実施例1と同様の手順により、重合体粒子を得た。過酸化水素水溶液の滴下終了から3分の時点で、測定点P3の温度計が、5つの温度計それぞれが重合反応中に示した最高温度のうちの最大値98℃を示した。測定点P3の温度計が最高温度98℃を示した時点において5つの温度計が示した温度を記録し、それら5つの温度の標準偏差(温度偏差)を算出した。
【0075】
(比較例2)
0.35質量%の過酸化水素水溶液を滴下する際の攪拌子の回転数を500rpmに変更したこと以外は実施例1と同様の手順により、重合体粒子を得た。過酸化水素水溶液の滴下終了から2分の時点で、測定点P4の温度計が、5つの温度計それぞれが重合反応中に示した最高温度のうちの最大値94℃を示した。測定点P4の温度計が最高温度94℃を示した時点において5つの温度計が示した温度を記録し、それら5つの温度の標準偏差(温度偏差)を算出した。
【0076】
(比較例3)
0.35質量%の過酸化水素水溶液を滴下する方法を、5つの測定点それぞれの近傍に向けて、5本の注射器(テルモ株式会社製、10mL容ディスポシリンジ、テルモ株式会社製の注射針)を用いて、0.35質量%の過酸化水素水溶液を各注射器から0.74gずつ、1秒かけて一斉に滴下する方法に変更したこと以外は実施例1と同様の手順により重合反応を行った。過酸化水素水溶液の滴下終了から3分の時点で、測定点P5の温度計が、5つの温度計それぞれが重合反応中に示した最高温度のうちの最大値63℃を示した。測定点P5の温度計が最高温度63℃を示した時点において5つの温度計が示した温度を記録し、それら5つの温度の標準偏差(温度偏差)を算出した。反応液の一部がゲル化せず液状部分が残ったため、塊状の含水ゲル状重合体を取得することができなかった。
【0077】
2.180~850μmの粒径比率
受け皿の上に、目開き850μm、500μm、425μm、300μm、250μm、180μm及び106μmのJIS標準篩を上からの順に組み合わせた。最上部の目開き850μmの篩に、架橋重合体粒子の粉体10gを投入し、連続全自動音波振動式ふるい分け測定器(ロボットシフター RPS-205、株式会社セイシン企業製)を用いて、粉体を分級した。分級後、各篩上に残存した重合体粒子の質量を測定し、下記式によって、180~850μmの粒径比率[%]を算出した。
180~850μmの粒径比率[%]=(目開き500μm、425μm、300μm、250μm及び180μmの篩上に残存した架橋重合体粒子の合計質量[g])/(測定に用いた架橋重合体粒子の質量[g])×100
【0078】
表1に粒度分布及びそれから求められた粒径比率を示す。表中、「850μm on」は目開き850μm上に残存した架橋重合体粒子の、測定に用いた架橋重合体粒子の質量に対する割合を意味する。これは「500μm on」等でも同様である。「pass」は目開き106μmの篩を通過した架橋重合体粒子の、測定に用いた架橋重合体粒子の質量に対する割合を意味する。
【0079】
【表1】
【符号の説明】
【0080】
1…反応液、10…反応容器、1S…液面、11,12,13,14…側壁面、15…底面、P1,P2,P3,P4,P5…測定点、P10,P20,P30,P40,P50…反応液の温度が測定される位置、X…側壁面の延在方向。
図1
図2