(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-08
(45)【発行日】2025-09-17
(54)【発明の名称】断層撮影画像化装置を使用して標本を調査する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/046 20180101AFI20250909BHJP
【FI】
G01N23/046
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021159622
(22)【出願日】2021-09-29
【審査請求日】2024-06-26
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー エム.キングストン
(72)【発明者】
【氏名】シェーン ジェイ.ラザム
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン ピー.シェッパード
(72)【発明者】
【氏名】グレン アール.マイヤーズ
(72)【発明者】
【氏名】トロンド カルステン ヴァルスロット
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-524460(JP,A)
【文献】特開2006-239390(JP,A)
【文献】欧州特許第03133554(EP,B1)
【文献】特開2017-096923(JP,A)
【文献】欧州特許第03133555(EP,B1)
【文献】特開2006-141999(JP,A)
【文献】特開2001-161678(JP,A)
【文献】特開平09-164132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/046
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断層撮影画像化を使用して標本(S)を調査する方法であって、
-標本(S)および源(Sx)を提供する
ステップと、
-放射線のビーム(B)を前記源(Sx)から前記標本(S)に向ける
ステップと、
-前記標本(S)を透過した放射線束を検出する
ステップと、
-前記標本(S)に対する前記源(Sx)の相対運動を提供するために、前記標本(S)および前記源(Sx)のうちの少なくとも1つを移動させる
ステップと、
-前記標本を取り囲
む仮想参照面(Sr)
および前記仮想参照面(Sr)の中心軸と交差する一連の異なる視軸(Vi)に沿って前記標本(S)を画像化する
ステップであって、
前記仮想参照面(Sr)は、円筒座標系(R、θ、Z)に関連付けられており、円柱軸である長手方向軸(L)から半径(Rsr)を有する円筒面であり、前記移動させるステップおよび
前記画像化するステップ
の組み合わせが、前記仮想参照面(Sr)上にサンプリング形状(Gs)を生成する、画像化する
ステップと、を含み、
移動させるステップおよび画像化するステップが、前記サンプリング形状(Gs)が、複数の離間した線分(Ls)を含むように調整され
、
前記移動させるステップが、長手方向(Z)および接線方向(θ)の組み合わせられた移動を含み、
連続して離間した線分(Ls)が前記長手方向(Z)に連続性を示す、方法。
【請求項2】
前記複数の離間した線分(Ls)が、第1の線分(Ls1)および前記第1の線分(Ls1)から離間した第2の線分(Ls2)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の離間した線分(Ls)のうちの少なくとも1つを連続的に画像化するステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の離間した線分(Ls)の間で画像化を中止するステップを含む、請求項1~3
いずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプリング形状(Gs)が、前記離間した線分(Ls)のアレイ(AL)を含む、請求項1~4
いずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記アレイ(AL)が、離間した線分(Ls)の規則的なグリッドからなる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
連続して離間した線分(Ls)が、前記接線方向
(θ)に不連続性を示す、請求項
1~6いずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記不連続性が、
30~90°
または45~75°の間の
前記接線方向
(θ)の回転に対応する、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
単一の線分(Ls)について、前記長手方向
(Z)の前記移動が、全試料高さの1~5%の範囲である、請求項
1~8いずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
単一の線分(Ls)について、前記接線方向
(θ)の前記移動が、5~25°の範囲である、請求項
1~9いずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
断層撮影画像化装置であって、
-
標本
(S)を保持するための標本ホルダと、
-前記標本(S)に向けることができる放射線のビーム(B)を発生させるための源(Sx)と、
-前記源(Sx)から前記標本(S)を透過した放射線束を検出するための検出器(D)と、
-前記標本(S)に対する源(Sx)の相対運動を発生させるためのステージ装置(A)であって、これにより、前記源および検出器(D)が、前記標本(S)を取り囲む仮想参照面(Sr)
および前記仮想参照面(Sr)の中心軸と交差する一連の異なる視軸(Vi)に沿って前記標本(S)を画像化することを可能にし、それによってサンプリング形状(Gs)を生成
し、前記仮想参照面(Sr)は、円筒座標系(R、θ、Z)に関連付けられており、円柱軸である長手方向軸(L)から半径(Rsr)を有する円筒面である、ステージ装置(A)と、
-前記断層撮影画像化装置の動作を制御するためのコントローラと、を備え、
前記断層撮影画像化装置が、請求項1~
10のいずれか一項に記載の方法を実行するように設けられていることを特徴とする、断層撮影画像化装置。
【請求項12】
請求項
11に記載の断層撮影画像化装置を備える、荷電粒子顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
概要
本発明は、断層撮影画像化装置を使用して標本を調査する方法であって、標本および源が提供され、該源からの該放射線のビームが該標本に向けられる方法に関する。
【0002】
本発明はまた、そのような方法を実行する際に使用することができる断層撮影画像化装置、およびそのような断層撮影画像化装置を備えた荷電粒子顕微鏡に関する。
【0003】
上記の断層撮影(コンピュータ断層撮影(CT)とも呼ばれる)では、源および(直径的に対向している)検出器を使用して、異なる視線(視軸)に沿って標本を観察し、様々な観点からの標本の;透過的な観察を取得する。次に、これらは、標本(の内部)(の一部)の再構成された「ボリューム画像」を作り出す数学的手順への入力として使用される。ここで示唆されている一連の異なる視線を実現するために、例えば、以下のことを行うことを選択できる。
(a)源および検出器を静止状態に保ち、それらに対して標本を移動させる。
(b)標本を静止状態に保ち、それに対して源を移動させる。この場合、次のいずれかを選択できる。
-検出器を源と同期して移動させる、または、
-検出器を、源が想定する異なる位置に対応するように位置を一致させた副検出器の(静的)アレイとして実現する。
【0004】
源または標本が移動したかどうかに関わらず、(例えば)標本中心の座標系または参照フレームを使用してそれらの相対運動を記述することができる。標本を横切る放射線のビームは、例えば、実質的に2D検出器の円錐状である(したがって、いわゆるコーンビーム断層撮影を生成する)、または実質的に1D検出器用のディスクのセグメントに類似している(したがって、いわゆるファンビーム断層撮影を生成する)ものとして見なすことができる。ここで示唆されている関連付けられた視軸は、(源から標本を通して検出器までの)ビームが伝搬する光軸に対応しているものと見なされ、それは基本的にそのビームの中心光線の位置に対応する。十分な試料浸透を達成するために、使用される放射線は一般にX線を含む。
【0005】
ここで言及される断層撮影画像化は、スタンドアロンの装置を使用して実行することができるが、これは、例えば、標本(例えば、ヒトまたは動物)が巨視的である医療画像化用途の従来の場合である。スタンドアロンCTツールは、いわゆる「マイクロCT」を実行するためにも使用でき、このツールでは、マイクロフォーカス源を使用して、地質学/岩石学、生物学(組織または薬理学)研究などにおいて顕微鏡標本を画像化する。さらなる高解像度を目指して、いわゆる「ナノCT」機器も開発された。これらはスタンドアロンツールとしても実現され得るが、例えば、荷電粒子顕微鏡(CPM)のアドオンモジュールとして実現することもできる。その場合、CPMの荷電粒子ビームを使用して金属ターゲットを照射し、所望の断層撮影を実行するために使用される制動放射X線の製造を引き起こすことができる。所望の断層撮影を実行するための荷電粒子の使用も考えられる。本開示は、X線断層撮影に限定されず、電子断層撮影などの他のタイプの断層撮影も含む。
【0006】
ここでCPMの文脈で言及されているように、「荷電粒子」という句は、以下を包含するものとして広く解釈されるべきであることに留意されたい。
-例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)、スキャン型電子顕微鏡(SEM)、およびスキャン型透過電子顕微鏡(STEM)の場合のような電子。
-正(例えば、GaまたはHeイオン)または負であってもよい、イオン。そのようなイオンビームは、画像化の目的で使用できるが、集束イオンビーム(FIB)ミリング、イオンビーム誘起堆積(IBID)、イオンビーム誘起エッチング(IBIE)の場合など、表面改質の目的でもよく使用される。
-例えば、陽子や陽電子などの他の荷電粒子。
【0007】
画像化および/または表面改質に加えて、CPM内の荷電粒子ビームは、分光法の実行および/または回折図の検査などの他の機能も持つ可能性があることにも注意する必要がある。
【0008】
異なる視線を達成するために使用される標本と源との間の相対運動に関して、従来は以下が使用されている。
-源が標本の周りの平面軌道をたどり、画像がこの軌道に沿って比較的高いサンプリングレートで(つまり、準連続的に)キャプチャされる円形スキャン。このタイプのスキャンは、例えば、人間の歯列のコーンビームCTスキャンを行うときなどに標本の比較的薄い「スライス」のみを画像化する必要がある状況で適用できる。
-源が標本の(長手方向)軸の周りのコイル状(スパイラル)の経路をたどり、画像がこの経路に沿って比較的高いサンプリングレートで(つまり、準連続的に)再びキャプチャされるヘリカルスキャン。このタイプのスキャンは、例えば、人間の脊柱(の一部分)のCTスキャンを行う場合など、標本の比較的細長い部分を画像化する必要がある状況で適用できる。これは通常、(源などの)円運動と(標本などの)同時並進運動を組み合わせることによって実現される。
-従来の曲線スキャン軌跡(今言及した円形/スパイラルスキャンパスなど)の代替として、例えば、欧州特許第EP 3 133 554 B1に記載されているような格子状のデータ取得軌跡を利用することもできる。
【0009】
これらのような先行技術の技術はこれまで許容できる結果を生み出してきたが、現在の発明者は、従来のアプローチに対する革新的な代替物を提供するために広範囲に取り組んできた。この努力の結果は、本発明の主題である。
【0010】
革新的な断層撮影画像技術を提供することが本発明の目的であり、より具体的には、同じレベルの取得データを維持しながら、より速い取得時間を提供することが本発明の目的である。
【0011】
これらおよび他の目的は、請求項1に定義された方法で達成される。この方法によれば、標本および源が提供され、放射線のビーム該源から該標本に向けられる。該標本を透過した放射線束が検出される。標本に対する源の相対運動を提供するために、該標本および該源のうちの少なくとも1つが移動される。したがって、標本は、標本を取り囲み、実質的にその中心にある仮想参照面と交差する一連の異なる視軸画像化されてもよい。該各視軸の各々の入射交点は、この基準面と見なされてもよく、このようにして、該一連の視軸に対応するそのような交点のセットが生成されてもよい。組み合わせられた移動させるステップおよび画像化するステップは、該仮想参照面上にサンプリング形状を生成する。実際のサンプリング形状は、一連の視軸に対応する交点のセットを含む。
【0012】
本明細書で定義されるように、移動および画像化のステップは、前記サンプリング形状が、複数の離間した線分を含むように調整される。これに関して、本明細書で定義される単一の線分は、(仮想)線分が関連付けられた交点のセットによって作成されるように、互いに隣接して置かれた複数の交点によって形成される。単一の線分内の交点は、連続的な相対運動、例えば連続的な検出器の運動を使用できるように、互いに比較的近くに位置決めされている。例えば、隣接する交点は、単一の交点の直径の1~3倍の間にある中心間距離を有し、仮想線分を効果的に形成してもよい。あるいは、単一の線分内の交点は、部分的に重なり合い、すなわち、交点は単一の交点の直径の1倍未満である中心間距離を有し、真の線分を効果的に形成してもよい。仮想線分および真の線分は、連続的な相対運動を使用することを可能にする。
【0013】
隣接する線分間の距離は比較的大きく、すなわち、隣接する線分は、単一の線分内の交点間の距離よりも少なくとも実質的に大きい距離を有する。隣り合う線分間の距離は、単一の線分の長さの半分以上、例えば、2つの線分の長さよりも大きい、例えば、5つを超える線分の長さのオーダーであり得る。より大きな線分間距離も考えられる。
【0014】
線分は、複数の交点を含み、単一の線分内の交点の数は、3~30の間、より好ましくは5~20の間、例えば10または15などであってもよい。
【0015】
複数の分離したセグメントを使用することにより、例えばコーンビーム断層撮影で使用することができる、新規で発明的なタイプのスキャン軌跡が提供される。各線分内で、ビュー間の間隔(つまり、交点間の間隔)は、連続的な相対運動、例えば連続的な検出器の運動を可能にするのに十分に小さい。実施形態では、データの充足性を最大化するように、視線方向の2D空間上にセグメントを均一に分散させることによって、画像品質に対するセグメント間のギャップの影響を最小限に抑えることができる。本明細書で定義される軌跡は、連続的な軌跡で可能な速度に近い速度でのスキャンを可能にすると同時に、格子サンプリング(点ごとの)軌跡と同様に、可能なビューの空間のはるかに完全なカバレッジを提供する。
【0016】
例えばEP 3 133 554 B1で説明されているように、従来のスペース充填軌跡(SFT)は、運動中のスキャン時間の90%を浪費する。本明細書に開示されるマルチセグメント軌跡は、より少ない、より大きなステップを踏むことによってこれを50%に減らす。本明細書に開示される軌跡でフルスキャンを取得する時間は、らせん軌跡と比較して、15分~3分短縮され、取得されたデータは減少しない。各セグメントがN個の画像(つまり、N個の交点)を含む場合、次いでSFTと比較すると、運動の発生頻度はN分の1になり、セグメント間隔は、空間s上の加速度制限された運動が
【数1】
に対応するため、
【数2】
だけ増加する。これは組み合わさって、
【数3】
の運動時間に変化が生じる。通常のNが10の場合、これにより、SFTと比較して運動時間が6分の1に短縮される。実際には、運動時間の5分の1~10分の1の短縮が得られる。したがって、上記から、取得されたデータを減少させることなく、より高速な取得が可能であり、これにより、本明細書で定義された目的が達成される。
【0017】
有利な実施形態は、従属請求項の対象であり、以下で論じられる。
【0018】
一実施形態では、この方法は、該複数の離間した線分のうちの少なくとも1つを連続的に画像化するステップを含む。
【0019】
一実施形態では、この方法は、該複数の離間した線分の間の画像化を中止するステップを含む。
【0020】
一実施形態では、サンプリング形状は、該離間した線分のアレイを含む。離間した線分は、アレイが離間した線分の規則的なグリッドからなるように選択し、かつ配置することができる。
【0021】
一実施形態では、移動させるステップは、長手方向(z)方向および接線方向(θ)方向の組み合わせられた移動を含む。
【0022】
一実施形態では、連続して離間した線分は、該長手方向に連続性を示す。
【0023】
一実施形態では、連続して離間した線分は、該接線方向に不連続性を示す。
【0024】
一実施形態では、該不連続性は、約30~90°、およびより好ましくは45~75°の間の接線方向の回転に対応する。
【0025】
一実施形態では、単一の線分について、該長手方向の該移動は、全試料高さの1~5%の範囲である。
【0026】
一実施形態では、単一の線分(Ls)について、該接線方向の該移動は、5~25°の範囲である。
【0027】
一態様によれば、断層撮影画像化装置であって、
-標本ホルダであって、標本を保持するための標本ホルダと、
-標本に向けることができる放射線ビームを生成するための源と、
-源から標本(S)を透過した放射線束を検出するための検出器と、
-標本に対する源の相対運動を発生させるためのステージ装置であって、これにより、源検出器が、標本を取り囲み、実質的にその中心にある仮想参照面と交差する一連の異なる視軸に沿って標本を画像化することを可能にし、それによってサンプリング形状を生成する、ステージ装置と、
-該断層撮影画像化装置の動作を制御するためのコントローラと、を備える、断層撮影画像化装置が提供される。
【0028】
本明細書で定義される断層撮影画像化装置は、本明細書で定義される方法を実行するように設けられている。
【0029】
一態様によれば、本明細書に定義された断層撮影画像化装置を備える荷電粒子顕微鏡が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
ここで、本発明は、例示的な実施形態および添付の概略図を基にして詳細に明らかにされるだろう。
【0031】
【
図1】断層撮影画像化を受けている標本の斜視図をレンダリングし、本発明の特定の(参照)幾何学的側面を説明するのに役立つ。
【
図2】従来のヘリカルスキャンに対応する、従来技術の断層撮影軌跡の概略図をレンダリングする。
【
図3】従来のマトリクススキャンに対応する、従来技術の断層撮影軌跡の概略図をレンダリングする。
【
図4a】本明細書で定義された方法によるスキャン軌跡の概略図を示す。
【
図4b】本明細書で定義された方法によるスキャン軌跡の概略図を示す。
【
図5】特定のタイプのCPMの縦断面立面図をレンダリングし、CTモジュールを使用して本発明の実施形態を実施することができる。
【
図6】
図2に示すようなCPMでの使用に適したCTモジュールを示している。
【0032】
図1は、断層撮影画像化を受けている標本Sの斜視図をレンダリングし、本発明の特定の(参照)幾何学的側面を説明するのに役立つ。この図では、細長い標本S(例えば、巨視的、ミクロンスケール、またはナノメートルスケールであってもよい)は、関連付けられた長手方向軸Lを有する。放射源Sxは、軸Viに沿って伝播する放射線(通常はX線)のビームBを作り出し、これは、視軸または視線と見なすことができる。ここに示すように、Viは長手方向軸Lに実質的に垂直である。標本Sの一部分を通過すると、ビームBは(直径方向に対向する)検出器Dに衝突する。検出器Dは、例えばシリコンドリフト検出器(SDD)、シリコンリチウム(Si(Li))検出器、ピクセル化された検出器、または他の適切な検出器であってもよい。ビームBは、検出器Dが源Sxに「提示する」有効形状に応じて、(例えば)円錐形または扇形であると見なすことができる。検出器Dは、標本Sの該部分の電子画像を形成し、これは、電子メモリに記憶することができる。次に、この手順が一連の異なる視軸Viに対して繰り返され、標本Sを異なる視線に沿って見ることができ、その後、この方法で取得された様々な画像は、断層像を作り出すための数学的再構成手順への入力として使用される。様々な視軸Viは、例えば、所定の方法で源Sx/検出器Dおよび/または標本Sの並進/回転運動を作り出すことによって、源Sxと標本Sとの間の相対運動を作り出すステージ装置を使用することによって達成される。そのようなステージ装置は、例えば、1つ以上のリニアモータ、圧電アクチュエータ、ステッピングモータ、ボイスコイルモータ、空気圧/油圧アクチュエータなどを備えてもよく、所与のセットアップの必要性に適合するように当業者によって容易に調整され得る。ここに示される特定の実施形態では、ステージ装置Aは、源Sx/検出器Dに対して標本Sを並進移動/回転させることができる。
【0033】
この図には、仮想参照面Srも示されている。この場合、円柱軸は長手方向軸Lと一致する。この参照面Srの半径はRsrで、軸Lからの源Sxの距離Rsx以下になるように選択される。視軸Viは、交点Piでこの参照面Srと交差する。視軸ViはLに沿って直線的に突き出る可能性があり、投影された視軸Vi’は、表面Srの下端にある仮想ディスク状の終端表面Stを横切る。基準面Srに関連付けられているのは円筒座標系(R、θ、Z)である。上記の一連の視軸Viに対応する交点Piのセット{Pi}は、上記の円形またはらせん状のスキャン経路などの「データ取得軌跡」、または例えば、前述の特許出願EP 3 133 554 B1に記載された格子状の軌跡を表すと見なすことができる。
【0034】
図2~4Bでは、基準面Srは、関連付けられた平面デカルト座標系(Y、Z)を備えた平坦な面Sr’を形成するように広げられている(Lの周りでほどかれている)。これにより、Y=θRをとることができる。
【0035】
最初に
図2に目を向けると、これは従来のヘリカルスキャンに対応する従来技術の状況を示しており、従来技術では、源Sxが軸Lに対するらせん経路を描き(つまり、同時にLの周りで軌道を描き、それをLに平行に変位させる)、画像が間隔の狭い一連の視軸Viに沿って、準連続的に(つまり、高いサンプリングレートで)キャプチャされる。得られた基準面Srのらせん経路を広げると、
図2のような結果が得られ、間隔の狭い交点Piの列が(曲線)線形路Cに沿って置かれる(図の右上にある分解部分図は、連続する点Piの間隔が狭いことを示している)。らせん経路の迎え角は、同じY座標を持つ画像化された点間のz方向で測定された距離M”を定義する。この状況では、均一性/等方性が極端に不足していることに留意されたい。距離M’’が比較的大きいため、路C(方向性が高い)に沿って点が集中し、介在する領域C’には点がまったくない。
【0036】
図3は、EP 3 133 554 B1に記載されている、源Sxおよび標本Sの相対運動、ならびに付随するサンプリング(画像キャプチャ)周波数/間隔が、実質的に均一な分散で表面Sr’(の少なくとも一部)上に「面積的に」置かれた点Piの2次元格子(マトリクス、ネット)Mになるように選択されている状況を示している。この格子Mに関連付けられているのは、格子Mの繰り返しの基本的な「ビルディングブロック」と見なすことができるユニットセルM’である。隣り合う点Piは、Y方向に距離Δo、およびZ方向に距離Δzを有する。このサンプリング軌跡は、可能な源位置のz-シータ空間の周りに均等に分散された視角からなる高度に最適化された「スペース充填」スキャン軌跡を導入した。これにより、優れたデータが作り出され、計画外の運動の事後補正により、削減されたデータ量からサブミクロンの解像度の超鮮明な画像および高品質の画像が得られる。ただし、スペース充填軌跡では、各視角間で大きな運動(通常は5度)が必要になるため、高速スキャンはステージの加速によって制限される。これにより、スキャン時間が大幅に遅れる可能性がある。一例として、合計15分の画像化時間の場合、ステージを後続のすべての画像化位置に移動させるために、合計約12分が必要とされ得る。
【0037】
次に、
図4Aおよび4Bに目を向けると、本開示に沿ったスキャン軌跡の実施形態が示されている。
【0038】
図4Aは、仮想参照面Sr’が、複数の離間した線分Lsを含むサンプリング形状Gsを含むことを示している。ここでは、互いに離間した合計5つの線分Ls1~Ls5が提供されている。線分Ls1~Ls5の各々は、いくつかの交点Piを含む。したがって、個々の線分Ls1~Ls5は、複数の交点Piを含む。線分には、必要に応じて、合計10~20の交点Pi、またはそれ以上を含めることができる。線分Ls5の挿入図「A」に示されるように、隣り合う交点Piは、交点Piが接続され、真の線分Ls5が交点Piによって形成されるように、いくらかの重なり合いを示すことができる。一方、線分Ls5の挿入図「B」に示されるように、交点Piはまた、互いに離れて配置され得る。このようにして、仮想線分が形成される。オプション「B」では、交点Pi間の距離は、単一の交点の直径の1~3倍のオーダーであり、仮想線分を効果的に形成し、また、比較的短い距離だけ互いに離間し得、距離は交点Piの直径のオーダーである。
【0039】
図4aに示されるように、第2の線分Ls2は、第1の線分Ls1からY方向(接線方向)に距離Δoだけ、および、Z方向(長手方向)に距離Δzだけ離間している。このようにして、線分Lsのアレイを形成することができる。
図4Aに示されている画像化軌跡は、取得されたデータの量を維持しながら、比較的高速である。
【0040】
ここで
図4Bに目を向けると、本明細書で定義されるように、らせんHスキャン軌跡、点マトリクスPスキャン軌跡、および線分Lsスキャン軌跡の間の比較が示されている。ここで、線分Lsのスキャン軌跡は、基準面Sr’の広い面積をカバーすることができることが分かる。線分を使用することにより、移動および画像化が同時に発生する可能性があるため、マトリクスPスキャン軌跡と比較して速度が向上する。
【0041】
図4Bに示されるサンプリング形状Gsは、離間した線分LsのアレイALを効果的に含む。示されているアレイは、離間した線分Lsの多かれ少なかれ規則的なグリッドを含むが、非規則的なグリッドも考えられる。線分は、長手(z)方向と接線(θ)方向の両方に延びる。線分は接線方向のみ、または長手方向のみに延びると考えられる。ただし、接線方向と長手方向の両方に延びることにより、試料カバレッジが増加する。ここに開示されているスキャン軌跡は、SFTの主な利点を維持するために、z-シータ空間全体にセグメントを比較的均一に分散させながら、各セグメント内の複数の間隔の狭いビューを収集することによってデータ収集効率を向上させる(最小限の運動を必要とする)。
【0042】
図4Bから、第1の線分Ls1の上端のz座標が、第2の線分Ls2の下端のz座標と一致していることが分かる。したがって、連続して離間した線分(Ls)は、該長手方向のz方向に連続性を示す。第1の線分Ls1と第2の線分Ls2の間で、接線座標のジャンプが発生する。したがって、連続して離間した線分(Ls1~Ls2)は、該接線方向に不連続性を示す。事実上、
図4Bに示されるようなスキャン軌跡は、線分の画像化中の長手方向および接線方向の運動を含み、第1の線分Ls1から第2の線分Ls2への移動中の接線方向の運動のみを含む。これにより、必要な移動の量が減り、試料を画像化できる速度が上がる。
【0043】
接線方向の不連続性は、約30~90°、およびより好ましくは45~75°の間の接線方向の回転に対応し得る。単一の線分(Ls)について、該長手方向の該移動は、試料の全高の1~5%の範囲であり得る。単一の線分(Ls)について、該接線方向の該移動は、5~25°の範囲である。標本の画像化に使用される線分の総数は、5~100の範囲であり得る。
図4Bに示す実施形態では、線分の数は約35である。数値が大きいほど、試料カバレッジが大きくなる。
【0044】
図5は、本発明に関連して使用され得るCPM1の実施形態の高度に概略的な図であり、より具体的には、STEMの一実施形態を示しているが、本発明の文脈では、同じように有効に、例えばイオン系顕微鏡、または例えば、TEMとすることもできる。顕微鏡1は、粒子光学軸5’に沿って伝播する荷電粒子のビーム5(この場合、電子ビーム)を作り出す粒子光学カラム/照明器3を備える。粒子光学カラム3は、標本13を保持する/位置決めするための標本ホルダ9および関連付けられたステージ/アクチュエータ11を備える真空チャンバ7に取り付けられている。真空チャンバ7は、真空ポンプ(図示せず)を使用して排気される。電圧源15を用いて、標本ホルダ9、または少なくとも標本13は、必要に応じて、地面に対して所定電位にバイアス(浮遊)され得る。
【0045】
粒子光学カラム3は、電子源17(ショットキーエミッタなど)、電子ビーム5を標本13に集束させるための(静電/磁気)レンズ19、21(一般に、ここでの概略図よりも構造が複雑)、およびビーム5のビーム偏向/スキャンを実行するための偏向ユニット23を備える。ビーム5が標本13に衝突する/スキャンされると、後方散乱電子、二次電子、X線およびカソードルミネッセンス(赤外線、可視および/または紫外線光子)などの様々なタイプの「誘導」放射の放出を引き起こす。次に、これらの放射線タイプのうちの1つ以上を、1つ以上の検出器を使用して検出/記録でき、これらの検出器は、通常、検出器出力の「マップ」(または「マトリクス」)を標本上のスキャン位置の機能として整理することによって、画像、スペクトル、回折図を形成し得る。この図は、そのような2つの検出器25、27を示しており、これらは、例えば、次のように実現できる。
-検出器25は、例えば、電子検出器(固体光電子増倍管など)、X線検出器(SDDまたはSi(Li)センサなど)、または光検出器(フォトダイオードなど)であり得る。
-検出器27は、セグメント化電子検出器であり、中央開口部29(ビーム5の通過を可能にする)の周りに配設された複数の独立した検出セグメント(例えば、四分円)を備える。そのような検出器は、例えば、標本13から出てくる出力(二次または後方散乱の)電子束(の角度依存性)を調査するために使用され得る。
【0046】
これらは単なる例であり、当業者は、他の検出器のタイプ、数、および形状/構成が可能であることを理解するであろう。
【0047】
顕微鏡1は、とりわけ、レンズ19および21、偏向ユニット23、ならびに検出器25、27を制御し、検出器25、27から収集された情報を表示ユニット33(フラットパネルディスプレイなど)に表示するためのコントローラ/コンピュータ処理ユニット31をさらに備え、そのような制御は、制御ライン(バス)31’を介して行われる。コントローラ31(または別のコントローラ)をさらに使用して、組み合わせ、積分、減算、偽色付け、エッジ強調、および当業者に知られている他の処理などの様々な数学的処理を実行することができる。さらに、(例えば、粒子分析に使用されるような)自動認識プロセスが、そのような処理に含まれてもよい。
【0048】
真空ポート7’も記されるが、これは、真空チャンバ7の内部へ/からアイテム(構成要素、標本)を取り込む/取り除くように開くことができ、またはそれに加えて、例えば、補助デバイス/モジュールが取り付けられ得る(図示せず)。顕微鏡1は、必要に応じて、複数のそのようなポート7’を備えてもよい。
【0049】
本発明の文脈において、顕微鏡1はまた、
図6に示されるように、in situ CTモジュール7”を備えることができる。この図では、CPMの標本ホルダ9は、電子ビーム5がそれに衝突するように(アクチュエータ11を使用して)位置決めされ、したがって制動放射X線を様々な方向に作り出す金属ターゲット13’を備えている。この図は、ターゲット13’(有効な源Sx)からモジュール7”に片側に伝播するそのようなX線のビームBを示しており、それらは標本Sを通過し、検出器Dに衝突する。
図1と比較されたい。標本Sは、標本Sが源Sxに対して位置決め/移動(通常は並進移動および回転)されることを可能にするステージ装置Aに取り付けられている。
【0050】
そのようなCTモジュール7”は、真空エンクロージャ7内に恒久的に存在し得る(ab initio)か、または、例えば、予備の真空ポート7上/内に(CPM1の製造後)取り付けることができるアドオンモジュールであり得る。