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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-10
(45)【発行日】2025-09-19
(54)【発明の名称】形状測定機及びその校正方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/20 20060101AFI20250911BHJP
   G01B 5/00 20060101ALI20250911BHJP
   G01B 5/20 20060101ALI20250911BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20250911BHJP
【FI】
G01B21/20 C
G01B21/20 D
G01B5/00 P
G01B5/20 C
G01B5/20 R
G01B11/24 A
G01B11/24 R
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021147654
(22)【出願日】2021-09-10
(65)【公開番号】P2023040576
(43)【公開日】2023-03-23
【審査請求日】2024-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】森井 秀樹
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0049186(US,A1)
【文献】特開2011-085402(JP,A)
【文献】特開2021-131244(JP,A)
【文献】特開2018-036130(JP,A)
【文献】特開2011-174779(JP,A)
【文献】特開2010-019671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/00 - 21/32
G01B 5/00 - 5/30
G01B 11/00 - 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1測定面及び第2測定面を有する又は設定可能な校正用標準器が保持されるステージと、
回転軸を中心に前記ステージを回転させるステージ回転機構と、
第1の方向に沿う変位を検出可能なプローブと、
前記ステージの表面の画像を撮影可能なステージ撮影カメラと、
前記プローブを前記第1の方向に移動させる第1直動機構と、
前記プローブ及び前記ステージ撮影カメラが取り付けられており、前記プローブ及び前記ステージ撮影カメラを、前記第1の方向に垂直な第2の方向に沿って移動させる第2直動機構と、
前記ステージ撮影カメラを前記第2の方向に沿う少なくとも2点に移動させ、前記少なくとも2点における前記校正用標準器の前記第1測定面を検出し、前記第1測定面の検出結果に基づいて前記ステージ回転機構を制御して、前記第1測定面を前記第2の方向に平行にする制御部と、
前記ステージとともに回転可能に設けられた回転カメラとを備え、
前記制御部は、前記ステージを移動させて、前記第1測定面を前記回転軸に一致させ、前記回転カメラにより撮影した前記プローブの画像に基づいて、前記プローブの中心軸を検出し、前記プローブの中心軸を前記ステージの回転軸に一致させ、前記プローブの中心軸を前記ステージの回転軸に一致させた後、前記第1の方向に沿って、前記プローブの半径と最小ワーキングディスタンスとの和以上の距離だけ前記校正用標準器から前記プローブを離れさせた後、前記プローブが前記第1測定面に対向する位置に前記プローブを下降させる、形状測定機。
【請求項2】
第1測定面及び第2測定面を有する又は設定可能な校正用標準器をステージに保持するステップと、
プローブが変位を検出可能な方向である第1の方向に垂直な第2の方向に沿って、前記ステージの表面の画像を撮影可能なステージ撮影カメラを少なくとも2点に移動させ、前記少なくとも2点における前記校正用標準器の前記第1測定面を検出するステップと、
前記第1測定面の検出結果に基づいてステージ回転機構を制御して、前記第1測定面を前記第2の方向に平行にするステップと、
前記ステージを移動させて、前記第1測定面を前記ステージの回転軸に一致させるステップと、
前記ステージとともに回転可能に設けられた回転カメラにより撮影した前記プローブの画像に基づいて、前記プローブの中心軸を検出し、前記プローブの中心軸を前記ステージの回転軸に一致させるステップと、
前記プローブの中心軸を前記ステージの回転軸に一致させた後、前記第1の方向に沿って、前記プローブの半径と最小ワーキングディスタンスとの和以上の距離だけ前記校正用標準器から前記プローブを離れさせた後、前記プローブが前記第1測定面に対向する位置に前記プローブを下降させるステップと、
を備える形状測定機の校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は形状測定機及びその校正方法に係り、特にワークの形状を測定するための形状測定機の校正に用いる形状測定機及びその校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プローブとワークとを回転軸を中心に相対的に回転させることにより、ワークの形状(真円度等)を測定する形状測定機が知られている。例えば、特許文献1には、回転テーブル上に載置された円筒形状のワークの中心孔の内面及び側面の形状を非接触で測定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-014656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような形状測定機では、非接触式の光学センサを備えたプローブを用いて校正用標準器の形状を測定し、プローブの出力信号と実際の校正された変位量とを関連付ける倍率校正という作業を行う必要がある(例えば、日本産業規格(Japanese Industrial Standards)JIS B7451:1997附属書2参照)。
【0005】
倍率校正を行う際には、顕微鏡等を用いてプローブの先端位置及びその近傍を目視で確認しながら、校正用標準器とプローブとの相対位置を調整する。この際、オペレータの操作ミス等により、校正用標準器にプローブが接触(衝突)してプローブが破損するおそれがある。
【0006】
さらに、目視による位置確認を要するため、校正作業を自動化することが困難であり、校正作業の精度がオペレータの技量に依存するという問題がある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、形状測定機の校正(倍率校正)における校正用標準器へのプローブの接触を防止し、校正作業の自動化を実現可能な形状測定機及びその校正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る形状測定機は、第1測定面及び第2測定面を有する又は設定可能な校正用標準器が保持されるステージと、回転軸を中心にステージを回転させるステージ回転機構と、第1の方向に沿う変位を検出可能なプローブと、ステージの表面の画像を撮影可能なステージ撮影カメラと、プローブを第1の方向に移動させる第1直動機構と、プローブ及びステージ撮影カメラが取り付けられており、プローブ及びステージ撮影カメラを、第1の方向に垂直な第2の方向に沿って移動させる第2直動機構と、ステージ撮影カメラを第2の方向に沿う少なくとも2点に移動させ、少なくとも2点における校正用標準器の第1測定面を検出し、第1測定面の検出結果に基づいてステージ回転機構を制御して、第1測定面を第2の方向に平行にする制御部とを備える。
【0009】
本発明の第2の態様に係る形状測定機は、第1の態様において、制御部は、ステージを移動させて、第1測定面を回転軸に一致させる。
【0010】
本発明の第3の態様に係る形状測定機は、第1又は第2の態様において、ステージとともに回転可能に設けられた回転カメラを備え、制御部は、回転カメラにより撮影したプローブの画像に基づいて、プローブの中心軸を検出し、プローブの中心軸をステージの回転軸に一致させる。
【0011】
本発明の第4の態様に係る形状測定機は、第1から第3の態様のいずれかにおいて、制御部は、プローブの中心軸をステージの回転軸に一致させた後、第1の方向に沿って、プローブの半径と最小ワーキングディスタンスとの和以上の距離だけ校正用標準器からプローブを離れさせた後、プローブが第1測定面に対向する位置にプローブを下降させる。
【0012】
本発明の第5の態様に係る形状測定機の校正方法は、第1測定面及び第2測定面を有する又は設定可能な校正用標準器をステージに保持するステップと、プローブが変位を検出可能な方向である第1の方向に垂直な第2の方向に沿って、ステージの表面の画像を撮影可能なステージ撮影カメラを少なくとも2点に移動させ、少なくとも2点における校正用標準器の第1測定面を検出するステップと、第1測定面の検出結果に基づいてステージ回転機構を制御して、第1測定面を第2の方向に平行にするステップとを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、校正用標準器へのプローブの接触を防止し、校正作業の自動化を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る形状測定機を示す正面図である。
図2図2は、本発明の第1の実施形態に係る形状測定機の制御系を示すブロック図である。
図3図3は、本発明の第1の実施形態に係る形状測定機の校正方法を説明するための平面図(上面図)である。
図4図4は、本発明の第1の実施形態に係る形状測定機の校正方法を示すフローチャートである。
図5図5は、校正用標準器の位置決め工程を示すフローチャートである。
図6図6は、校正用標準器の基準面の傾きθの算出手順を説明するための平面図である。
図7図7は、校正用標準器の基準面の傾きθの算出手順を説明するための平面図である。
図8図8は、校正用標準器の位置調整を説明するための平面図である。
図9図9は、第1カメラによるプローブの撮影位置の一例を示した図である。
図10図10は、各撮影位置におけるカメラの撮影画像の一例を示した説明図である。
図11図11は、第1撮影画像と第3撮影画像との合成画像を示した図である。
図12図12は、第2撮影画像と第4撮影画像との合成画像を示した図である。
図13図13は、校正用標準器とプローブの相対位置決め工程を説明するための図である。
図14図14は、倍率校正工程を説明するための図である(ブロックゲージ)。
図15図15は、倍率校正工程を説明するための図である(ネジ式の倍率校正器)。
図16図16は、倍率校正誤差を説明するための図である。
図17図17は、本発明の第2の実施形態に係る校正用標準器の位置決め工程を説明するための図である。
図18図18は、本発明の第2の実施形態に係る校正用標準器の位置決め工程を説明するための図である。
図19図19は、本発明の第2の実施形態に係る校正用標準器の位置決め工程を示すフローチャートである。
図20図20は、本発明の第3の実施形態に係る校正用標準器の位置決め工程を示すフローチャートである。
図21図21は、Yベクトルの登録工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に従って本発明に係る形状測定機及びその校正方法の実施の形態について説明する。
【0016】
[第1の実施形態]
(形状測定機)
まず、形状測定機の概略構成について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る形状測定機を示す正面図である。
【0017】
図1に示す形状測定機10は、ワークWの外形及び円筒状のワークに形成された細穴の内面形状(真円度等)を測定可能な装置である。ワークに形成された細穴は、例えば、ワークの中心軸に沿って形成された貫通穴であり、細穴の内径は、極小径(例えば、内径が500μm以下)である。図1において、XYZ方向は互いに直交しており、X方向は水平方向、Y方向はX方向に直交する水平方向、Z方向は鉛直方向である。
【0018】
図1に示すように、形状測定機10は、本体ベース12、ステージ回転機構14、ステージ18、コラム20、キャリッジ22、第1アーム24X、第2アーム24Y、変位検出器26、検出器駆動機構28及び制御装置50を備える。
【0019】
ステージ回転機構(高精度回転機構)14は、ワークWを回転軸C周りに回転させるための回転機構であり、後述するステージ18をZ方向に平行な回転軸Cを中心に高精度に回転させるものである。ステージ回転機構14は、本体ベース12上に回転可能に設けられた回転体16を備えており、回転体16の上面にステージ18が支持されている。ステージ回転機構14は、回転軸Cを中心に回転体16を高精度に回転させるモータ(不図示)と、回転体16の回転角度を検出するエンコーダ(不図示)とを備える。
【0020】
ステージ18は、ワークWを載置するものである。ステージ18は、ワークWを直接支持固定するものであってもよいし、ワーク設置治具(不図示)を介してワークWを支持固定するものであってもよい。
【0021】
ステージ18は、回転体16の支持面(上面)に支持されており、回転体16と一体となって回転軸Cを中心に回転可能に構成される。これにより、ステージ18に支持固定されたワークWは、ステージ18と一体となって回転軸Cを中心に回転可能である。なお、回転体16は「ステージ回転機構」の一例である。
【0022】
ステージ18は、直動機構と、傾斜機構(チルチング機構)とを備えている(いずれも不図示)。直動機構は、不図示のモータの駆動によりステージ18をX方向及びY方向に移動させて、回転軸Cに直交するXY平面(水平面)におけるステージ18の位置を調整させる。傾斜機構は、不図示のモータの駆動によりステージ18をX方向及びY方向の周りに回転させて、XY平面に対するステージ18の傾きを調整する。
【0023】
本体ベース12上には、Z方向に平行に延びるコラム(支柱)20が立設される。コラム20は、下端部が本体ベース12の上面に固定される。
【0024】
キャリッジ22は、Z方向に移動可能にコラム20に支持される。キャリッジ22は、不図示のモータの駆動によりZ方向に移動可能に構成される。
【0025】
第1アーム24Xは、X方向に移動可能にキャリッジ22により支持される。第2アーム24Yは、Y方向に移動可能に第1アーム24Xにより支持される。第1アーム24X及び第2アーム24Yは、第1直動機構70X及び第2直動機構70Y(図2参照)によりそれぞれ水平方向(XY方向)に移動可能に構成される。第1直動機構70X及び第2直動機構70Yは、それぞれ第1アーム24X及び第2アーム24Yを水平方向に移動させるための駆動源(モータ等)を備えている。
【0026】
第1アーム24X及びコラム20の側面には、それぞれX方向及びZ方向に沿ってスケールが設けられている。制御装置50(制御部の一例)は、このスケールの目盛を不図示のセンサを用いて読み取ることにより、プローブ30のZX方向の位置を検出可能となっている。
【0027】
変位検出器26は、検出器駆動機構28を介して第2アーム24Yに支持される。変位検出器26はプローブ30を有する。プローブ30は、ワークの表面(外表面又はワークに形成された穴の内面)の形状を検出するものである。本実施形態に係るプローブ30は、ワークの表面に接触することなく、ワークの表面形状を検出可能な非接触式のプローブである。
【0028】
非接触式のプローブ30の種類は、ワークの表面に接触することなく、その表面形状を検出することができるものであれば特に限定されない。非接触式のプローブとしては、例えば、レーザー干渉計、白色干渉計、SD-OCT(Spectral Domain-Optical Coherence Tomography)又はSS-OCT(Swept Source-Optical Coherence Tomography)等の各種手法が適用されたプローブを用いることができる。
【0029】
なお、以下の説明では、非接触式のプローブの例について説明するが、プローブ30の種類は、非接触式のものに限定されない。プローブ30は、その先端部をワークの表面に接触させてワークの表面形状を検出可能な接触式のプローブであってもよい。接触式のプローブは、ワークの表面に接触可能な接触子を有し、ワークの表面に接触させたときの接触子の変位を検出することにより内面形状を検出するものである。接触式のプローブとしては、例えば、LVDT(Linear Variable Differential Transformer)、干渉計、光三角測量方式、薄膜歪み測定等の各種手法が適用されたプローブを用いることができる。また、接触式のプローブとしては、共振周波数で接触式プローブの接触子を加振しておき、接触によって共振点が変化することを利用する方式を適用してもよい。
【0030】
検出器駆動機構28は、第2アーム24Yと変位検出器26との間に介在して設けられている。検出器駆動機構28は、直動機構と、傾斜機構とを備えている(いずれも不図示)。直動機構は、不図示のモータの駆動により変位検出器26をX方向及びY方向に移動させて、回転軸Cに直交するXY平面(水平面)におけるプローブ30の位置を調整させる。傾斜機構は、不図示のモータの駆動により変位検出器26をX方向及びY方向の周りに回転させて、XY平面に対するプローブ30の傾きを調整する。したがって、検出器駆動機構28(直動機構及び傾斜機構)によってプローブ30の水平方向(X方向及びY方向)の位置及び傾斜を調整することにより、プローブ30と回転軸Cとの相対的な位置合わせ(プローブアライメント)を行うことが可能となる。
【0031】
また、検出器駆動機構28は、回転軸(プローブ回転軸)AXの周りに回転させるための駆動源(例えば、モータ等)を備えている。検出器駆動機構28は、「プローブ回転機構」の一例である。
【0032】
図1に示すように、ステージ18の表面には、カメラ支持部18Aが固定されており、カメラ支持部18Aには、第1カメラCAM1が取り付けられている。第1カメラCAM1は、ステージ18の回転に伴い回転可能となっており、ステージ18の表面に載置されたワーク等を撮影可能となっている。なお、図1では、第1カメラCAM1は、ステージ18上に設けられているが、本発明はこれに限定されない。例えば、回転軸C周りに回転可能であれば、ステージ18から離れて設けられていてもよい。
【0033】
また、第2アーム24Yには、第2カメラCAM2が固定されており、第2カメラCAM2は、第2アーム24YとともにY方向に直動移動可能となっており、ステージ18の表面に載置されたワーク等を上方から撮影可能となっている。
【0034】
第1カメラCAM1及び第2カメラCAM2は、それぞれ回転カメラ及びステージ撮影カメラの一例である。第1カメラCAM1及び第2カメラCAM2としては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラ等を用いることができる。
【0035】
形状測定機10の校正を行う場合には、図1に示すように、ステージ18の表面に保持部18B(例えば、クランプ機構又は把持機構を含む。)を固定し、校正用標準器(倍率校正器。例えば、ブロックゲージ等。以下、マスタM1という。)をこの保持部18Bに保持する。そして、第1カメラCAM1及び第2カメラCAM2は、ステージ18に保持されたマスタM1の撮影を行い、マスタM1の姿勢を調整した後にマスタM1の測定を行う。なお、本実施形態に係る校正方法については後述する。
【0036】
(形状測定機の制御系)
図2は、本発明の第1の実施形態に係る形状測定機の制御系を示すブロック図である。
【0037】
制御装置50は、形状測定機10の各部の動作(ワークの表面形状の測定動作や後述するプローブアライメント動作などを含む)を制御する。制御装置50は、例えば、パーソナルコンピュータ又はマイクロコンピュータ等の汎用のコンピュータによって実現される。制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ストレージデバイス(例えば、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等)及び入出力インターフェース等を備えている。制御装置50では、ストレージデバイスに記憶されている制御プログラム等の各種プログラムがRAMに展開され、RAMに展開されたプログラムがCPUによって実行されることにより、形状測定機10内の各部の機能が実現され、入出力インターフェースを介して各種の演算処理又は制御処理が実行される。
【0038】
制御装置50には、ユーザからの操作入力を受け付ける操作部52(例えば、キーボード及びマウス等)と、操作UI(User Interface)及び検出結果を表示するための表示部54とが設けられている。
【0039】
図2に示すように、制御装置50は、変位演算部56及び駆動制御部58を備えている。
【0040】
変位演算部56は、変位検出器26が検出したワークの表面の変位の検出結果に基づいてワークの変位を算出し、ワークの表面の形状(例えば、ワークの外形又は穴の真円度等)を測定する。
【0041】
駆動制御部58は、第1直動機構70X、第2直動機構70Y、検出器駆動機構28及びステージ回転機構14を制御して、ワークとプローブ30の相対位置を調整する。
【0042】
(倍率校正方法)
次に、形状測定機10における倍率校正方法の概要について説明する。図3は、形状測定機10の校正方法を説明するための平面図(上面図)である。
【0043】
図3に示すように、マスタM1は、耐久性のある材料で作成されており、長方形断面で、相互に平行な2つの測定面(第1測定面R1及び第2測定面R2)を有するブロックゲージである(例えば、国際標準化機構(International Organization for Standardization)ISO3650:1998、JIS B7506:2004参照)。マスタM1の第1測定面R1及び第2測定面R2の段差量G1は、校正済みの既知の値である。以下、第1測定面R1及び第2測定面R2をそれぞれ基準面R1及び測定面R2と記載する場合がある。なお、以下の説明では、第1測定面R1を基準面とする例について説明するが、本発明はこれに限定されず、第2測定面R2を基準面とすることも可能である。
【0044】
なお、本実施形態では、2つの測定面(第1測定面R1及び第2測定面R2)を有するマスタM1を用いる例について説明するが、本発明はこれに限定されない。例えば、3つ以上の測定面を有するブロックゲージを用いてもよいし、基準面に対して測定面をスライド移動可能な校正用標準器(ネジ式の倍率校正器等。例えば、JIS B7451:1997参照)を用いてもよい。すなわち、本実施形態に係る校正用標準器は、少なくとも2つの測定面を有するか又は設定可能なものであればよい。
【0045】
形状測定機10の倍率校正を行う場合、まず、マスタM1が、ステージ18の保持部18Bに保持される。そして、ステージ回転機構14等を制御して、マスタM1の基準面R1がY方向に平行になるように、マスタM1の姿勢が調整される。
【0046】
次に、第2直動機構70Yを制御して、プローブ30のY方向位置を調整しながら、プローブ30により、マスタM1の2つの測定面R1及びR2に対してそれぞれ測定光B1を出射し、マスタM1からの反射光を検出してマスタM1の形状測定を行う。そして、マスタM1からの反射光の検出結果と、マスタM1の既知の段差量dとを用いて倍率校正を行う。
【0047】
次に、本実施形態に係る倍率校正方法の詳細について、図4以降を参照して説明する。図4は、形状測定機10の校正方法を示すフローチャートである。
【0048】
まず、マスタM1がステージ18の保持部18Bに保持される。そして、第2アーム24Yに取り付けられた第2カメラCAM2により撮影したステージ18の表面及びマスタM1の画像を用いて、マスタM1の設置位置及び設置角度の位置決めを行う(ステップS10)。
【0049】
次に、ステージ18上に取り付けられた第1カメラCAM1により撮影したプローブ30の画像を用いて、プローブ30の位置及び角度がステージ回転機構14の回転軸に一致するように位置決めを行う(ステップS12)。
【0050】
次に、プローブ30とマスタM1との間の距離が、プローブ30のワーキングディスタンスの範囲内となるように、マスタM1とプローブ30の相対位置を調整する(ステップS14)。ここで、プローブ30のワーキングディスタンスとは、プローブ30によって測定可能な距離の範囲である。例えば、非接触式(例えば、ToF(Time-of-Flight)方式)のプローブの場合、ワーキングディスタンスは、測定光の到達距離、反射光の検出精度及び外乱光の影響等に依存する。一方、接触式のプローブの場合、ワーキングディスタンスは、プローブの先端部の可動範囲に依存する。
【0051】
次に、第2直動機構70Yを制御して、マスタM1に対してプローブ30のY方向位置を調整しながら、プローブ30により、マスタM1の2つの測定面R1及びR2に対してそれぞれ測定光B1を出射し、マスタM1からの反射光を検出してマスタM1の形状測定を行う。そして、マスタM1からの反射光の検出結果と、マスタM1の既知の段差量dとを用いて倍率校正を行う(ステップS16)。
【0052】
以下、図4に示したフローチャートの各工程について詳しく説明する。
【0053】
(校正用標準器の位置決め)
次に、マスタM1の位置決め工程(ステップS10)について説明する。図5は、マスタM1の位置決め工程を示すフローチャートである。
【0054】
図5に示す例では、まず、マスタM1の角度調整を行い(ステップS100~S108)、その次にマスタM1の位置調整を行う(ステップS110)。具体的には、以下のようにして各工程を行う。
【0055】
まず、第2カメラCAM2を用いて、マスタM1がステージ18の保持部18Bに保持されたマスタM1の基準面R1の画像PI1を撮影する(ステップS100)。次に、第2直動機構70Yにより第2カメラCAM2をY方向に移動させて(ステップS102)、第2カメラCAM2を用いて、移動後のマスタM1の基準面R1の画像PI2を撮影する(ステップS104)。
【0056】
次に、画像PI1及びPI2とY方向移動量から、Y方向に対する基準面R1の傾きθを算出し(ステップS106)、ステージ回転機構14によりステージ18を角度θ回転させて、マスタM1の基準面R1をY方向に平行にする(ステップS108)。
【0057】
図6及び図7は、Y方向に対する基準面R1の傾きθの算出手順を説明するための平面図である。
【0058】
図6及び図7では、ステップS102のY方向移動の軌跡をベクトルYにより示している。Y方向移動前後のマスタM1の基準面R1の位置をそれぞれR1(Y1)及びR2(Y2)とする。
【0059】
図7に示すように、XY座標系に対して傾いた2次元直交座標系としてAB座標系を設定すると、Y方向移動前後の基準面R1(Y1)及びR2(Y2)に沿う直線をそれぞれ下記の式(1)及び(2)により表すことができる。
【0060】
R1(Y1): A=a×B+b …(1)
R1(Y2): A=a×B+b …(2)
図7に示すように、ベクトルYの長さ(Y方向移動量)をY、B方向に対する基準面R1の傾きをθ、B方向に対するY方向の傾きをθとすると、幾何学的な関係から下記の式(3)~(7)が得られる。
【0061】
θ=θ+θ …(3)
a=tanθ …(4)
=Ysinθ …(5)
=Ycosθ×a …(6)
+L=(b-b) …(7)
上記関係式から、Y方向に対する基準面R1の傾きθを既知の変数a、b、b及びYを用いて計算することができる。
【0062】
簡単のため、微小角近似を用いると、式(5)~式(7)から下記の式(8)が得られる。
【0063】
Yθ+Y×(1-(1/2)θ )×a=(b-b) …(8)
式(8)を変形すると、下記の式(9)が得られる。
【0064】
(a/2)θ -θ+(b-b)/Y-a=0 …(9)
上記の2次方程式(9)を解いて、式(4)とともに式(1)に代入することにより、Y方向に対する基準面R1の傾きθを計算することができる。
【0065】
上記のようにして求めた角度θだけマスタM1を回転させることにより、マスタM1の基準面R1をY方向に平行にすることができる(ステップS108)。
【0066】
次に、ステージ18の直動機構を用いてマスタM1の位置調整を行って、ステージ18の回転軸C(回転中心)と基準面R1とを一致させる(ステップS110)。
【0067】
ステップS110では、あらかじめステージ18の回転軸Cの位置を求めておく。次に、第2カメラCAM2の焦点位置をマスタM1の基準面R1に合わせる。そして、図8の(a)及び(b)に示すように、ステージ18の直動機構により、マスタM1の基準面R1をあらかじめ求めた回転軸Cに一致するように(位置R1(2))、マスタM1の位置を調整する。
【0068】
なお、ステップS110では、第2カメラCAM2によりマスタM1の基準面R1の上下の端部を検出して、ステージ18の傾斜機構により、マスタM1のチルティングを行うようにしてもよい。
【0069】
本実施形態に係るマスタM1の位置決め工程によれば、マスタM1の位置決め工程によりマスタM1を、倍率校正に使用する基準面R1が第2直動機構70Yの移動軸(Y方向)と平行になるように設置することができ、かつ、基準面R1をステージ18の回転軸Cと一致するように設置することができる。
【0070】
(プローブの位置決め)
次に、プローブ30の位置決め工程(ステップS12)について説明する。プローブ30の位置決め工程では、ステージ18に設置された第1カメラCAM1を用いて、プローブ30のプローブ回転軸AXをステージ18の回転軸Cと一致させる。
【0071】
図9は、第1カメラCAM1によるプローブ30の撮影位置の一例を示した図である。図9に示す例では、回転軸Cを中心とする第1カメラCAM1の回転軌道K上において互いに90度ずつずれた4つの撮影位置P1~P4で、第1カメラCAM1によるプローブ30の撮影が行われる。
【0072】
本実施形態において、4つの撮影位置P1~P4から第1カメラCAM1によりプローブ30を撮影する方向はX方向またはY方向であり、検出器駆動機構28においてプローブ30を直動又は傾斜させる制御方向(移動軸方向)と同一方向となっている。すなわち、第1撮影位置P1と第3撮影位置P3は第1方向(Y方向)において互いに対向する位置同士である。また、第2撮影位置P2と第4撮影位置P4は第2方向(X方向)において互いに対向する位置同士である。
【0073】
図10は、各撮影位置P1~P4において第1カメラCAM1により撮影された撮影画像の一例を示した図である。なお、図10において、第1撮影画像100A~第4撮影画像100Dは第1撮影位置P1~第4撮影位置P4でそれぞれ撮影された撮影画像である。
【0074】
プローブ30と回転軸Cとの相対ずれが存在する場合、例えば、図10に示すように、各撮影位置P1~P4で第1カメラCAM1により撮影された撮影画像100A~100Dにおいて、撮影位置(すなわち、第1カメラCAM1によるプローブ30の撮影方向)の違いに応じて、プローブ30の姿勢(位置及び傾き)が異なる。
【0075】
例えば、第1方向(Y方向)において互いに対向する2つの撮影位置(第1撮影位置P1及び第3撮影位置P3)のうち、一方の撮影位置(第1撮影位置P1)から撮影した第1撮影画像100Aでは、プローブ30Aは第2方向(X方向)の一方側に傾いているのに対して、他方の撮影位置(第3撮影位置P3)から撮影した第3撮影画像100Cでは、プローブ30Cは第2方向(X方向)の他方側に傾いている。また、第2方向(X方向)の位置についても互いに反対側に向かってずれている。
【0076】
第2方向(X方向)において互いに対向する2つの撮影位置(第2撮影位置P2及び第4撮影位置P4)においてそれぞれ第2撮影画像100Bと第4撮影画像100Dについても同様であり、プローブ30B、30Dの位置及び傾きが互いに反対側にずれている。
【0077】
図11は、第1方向(Y方向)において互いに対向する2つの撮影位置(第1撮影位置P1及び第3撮影位置P3)から撮影した第1撮影画像100Aと第3撮影画像100Cとを合成した第1合成画像102Aを示した図である。
【0078】
図11に示すように、第1撮影画像100Aと第3撮影画像100Cとを合成した第1合成画像102Aにおいて、第1撮影画像100Aにおけるプローブ30Aの中心軸(第1プローブ中心軸)L1と、第3撮影画像100Cにおけるプローブ30Cの中心軸(第3プローブ中心軸)L3との間の第1中線ML1が、XZ平面内における回転軸Cの位置(すなわち、第1方向(Y方向)からプローブ30を見た場合の回転軸Cの位置)を示している。なお、第1中線ML1とは、第1合成画像102Aにおいて、第1プローブ中心軸L1及び第3プローブ中心軸L3の横方向(X方向)の中央を縦方向(Z方向)に通る直線をいう。換言すれば、第1合成画像102Aにおいて、第1プローブ中心軸L1と第3プローブ中心軸L3との間を左右(X方向)に2等分する直線を第1中線ML1という。
【0079】
第1合成画像102Aにおける第1中線ML1は、回転軸Cの位置を示している。すなわち、第1中線ML1は、第1合成画像102A(XZ平面内)においてプローブ30の移動目標となる線を示しており、プローブ30が第1中線ML1に一致するようにプローブ30の姿勢(位置Dx及び傾きα)を調整することで、XZ平面内における回転軸Cとプローブ30との相対ずれをなくすことが可能となる。
【0080】
図12は、第2方向(X方向)において互いに対向する2つの撮影位置(第2撮影位置P2及び第4撮影位置P4)から撮影した第2撮影画像100Bと第4撮影画像100Dとを合成した合成画像102Bを示した図である。
【0081】
図12に示すように、第2撮影画像100Bと第4撮影画像100Dとを合成した第2合成画像102Bにおいて、第2撮影画像100Bにおけるプローブ30Bの中心軸(第2プローブ中心軸)L2と、第4撮影画像100Dにおけるプローブ30Dの中心軸(第4プローブ中心軸)L4との間の第2中線ML2が、YZ平面内における回転軸Cの位置(すなわち、第2方向(X方向)からプローブ30を見た場合の回転軸Cの位置)を示している。なお、第2中線ML2とは、第2合成画像102Bにおいて、第2プローブ中心軸L2及び第4プローブ中心軸L4の横方向(X方向)の中央を縦方向(Z方向)に通る直線をいう。換言すれば、第2合成画像102Bにおいて、第2プローブ中心軸L2と第4プローブ中心軸L4との間を左右(X方向)に2等分する直線を第2中線ML2という。
【0082】
第2合成画像102Bにおける第2中線ML2は、回転軸Cの位置を示している。すなわち、第2中線ML2は、第2合成画像102B(YZ平面内)においてプローブ30の移動目標となる線を示しており、プローブ30が第2中線ML2に一致するようにプローブ30の姿勢(位置Dy及び傾きβ)を調整することで、YZ平面内における回転軸Cとプローブ30との相対ずれをなくすことが可能となる。
【0083】
したがって、回転軸Cを中心とする第1カメラCAM1の回転軌道K上において互いに90度ずつずれた4つの撮影位置P1~P4において第1カメラCAM1が撮影した撮影画像に基づき、上述した2つの中線ML1、ML2を算出することで、プローブ30の移動目標となる回転軸C(回転中心)を検出することができ、回転軸Cとプローブ30との相対ずれを各方向(X方向及びY方向)独立して調整することが可能となる。
【0084】
本実施形態におけるプローブ30の位置決めでは、制御装置50は、図11に示した第1合成画像102Aにおいて、2つのプローブ30のうちいずれか一方のプローブを基準プローブ(本例では第1撮影画像100Aにおけるプローブ30A)とした場合、第1中線ML1に対して基準プローブのプローブ中心軸を平行とするための傾斜角(Y方向を中心とする回転角)を傾斜移動量αとして検出する。また、制御装置50は、基準プローブのプローブ中心軸を傾斜移動量αだけ傾斜させて第1中線ML1と平行にした場合に、基準プローブのプローブ中心軸を第1中線ML1に一致させるために必要なX方向の移動距離を直動移動量Dxとして検出する。なお、直動移動量Dxは、検出器駆動機構28におけるX方向の移動軸に沿った方向の距離に相当する(図11参照)。
【0085】
また、制御装置50は、図12に示した第2合成画像102Bにおいて、2つのプローブ30のうちいずれか一方のプローブを基準プローブ(本例では第2撮影画像100Bにおけるプローブ30B)とした場合、第2中線ML2に対して基準プローブのプローブ中心軸を平行とするための傾斜角(X方向を中心とする回転角)を傾斜移動量βとして検出する。また、制御装置50は、基準プローブのプローブ中心軸を傾斜移動量βだけ傾斜させて第2中線ML2と平行にした場合に、基準プローブのプローブ中心軸を第2中線ML2に一致させるために必要なY方向の移動距離を直動移動量Dyとして検出する。なお、直動移動量Dyは、検出器駆動機構28におけるY方向の移動軸に沿った方向の距離に相当する(図12参照)。
【0086】
なお、制御装置50は、エッジ抽出等の公知の画像処理により、各合成画像102A、102Bから、プローブ中心軸C1~C4、中線ML1、ML2、直動移動量Dx、Dy、傾斜移動量α、βを算出することが可能である。
【0087】
このようにして、制御装置50が、各撮影位置で第1カメラCAM1が撮影した撮影画像に基づき、プローブ30と回転軸Cとの相対ずれを各方向独立して検出すると、駆動制御部58が、制御装置50が検出した結果に基づき、検出器駆動機構28を制御する。具体的には、駆動制御部58は、検出器駆動機構28を制御して、プローブ30を、X方向に直動移動量Dxだけ移動させると共にY方向に直動移動量Dyだけ移動させ、かつ、X方向を中心に傾斜移動量βだけ傾斜させると共にY方向を中心に傾斜移動量αだけ傾斜させる。なお、検出器駆動機構28を移動又は傾斜させる方向(向き)は、図11及び図12に示した合成画像102A、102Bにおいて、どのプローブを基準プローブとするかに応じて定められる。
【0088】
以上にようにして、駆動制御部58が、制御装置50が検出した結果に基づき、検出器駆動機構28を制御してプローブ30の姿勢を変化させると、三次元空間内においてプローブ30と回転軸Cとの相対ずれがなくなる。以上により、プローブ30の基本アライメントが完了する。
【0089】
なお、第1カメラCAM1の撮影位置は、必ずしも上記の態様に限定されるものではない。例えば、第1カメラCAM1の回転軌道K上の少なくとも3つの撮影位置から第1カメラCAM1によりプローブ30を撮影するものであってもよい。また、第1カメラCAM1の撮影方向が検出器駆動機構28の制御方向(X方向及びY方向)と一致している態様を示したが、必ずしもこの態様に限定されず、例えば、第1カメラCAM1の撮影方向が検出器駆動機構28の制御方向とは異なる方向であってもよい。
【0090】
本実施形態に係るプローブ30の位置決め工程によれば、プローブ30のプローブ回転軸AXがステージ18の回転軸Cと一致するようにアライメントすることができる。また、本実施形態では、プローブ30のアライメント精度が第1カメラCAM1の設置精度に依存しないので、低コストで高精度なプローブアライメントが可能になる。
【0091】
(校正用標準器とプローブとの相対位置決め)
次に、マスタM1とプローブ30の相対位置決め工程(ステップS14)について説明する。図13は、マスタM1とプローブ30の相対位置決め工程を説明するための図である。
【0092】
図13の(a)に示すように、マスタM1の位置決め工程(ステップS10)により、マスタM1の基準面R1とステージ18の回転軸Cとが一致しており、プローブ30の位置決め工程(ステップS12)により、プローブ30のプローブ回転軸AXがステージ18の回転軸Cと一致している(位置30a)。
【0093】
マスタM1とプローブ30の相対位置決め工程(ステップS14)では、まず、図13の(b)に示すように、第1直動機構70Xにより、ステージ18の回転軸Cに対してマスタM1の反対側(-X側)にプローブ30を移動させる(位置30b)。ここで、プローブ30のX方向移動量Dは、プローブ30の半径をr、プローブ30の最小ワーキングディスタンスをWDとすると、D≧r+WDとなる。
【0094】
ここで、プローブ30の最小ワーキングディスタンスとは、プローブ30によって測定可能な距離の範囲の最小値である。例えば、非接触式のプローブの場合、ワーキングディスタンスは、測定光の出射開口から、測定光により検出可能なマスタM1表面までの最短距離である。一方、接触式のプローブの場合、検出ストロークの中心位置(中立位置)にあるときのプローブの先端部(測定子)の位置から、測定子により検出可能なマスタM1表面までの最短距離である。
【0095】
次に、図13の(c)に示すように、プローブ30の測定光B1の出射開口の高さがマスタM1の基準面R1及び測定面R2の上端よりも低く、かつ、下端よりも高い校正測定位置30cにプローブ30を下降させる。すなわち、プローブ30をY方向に移動することにより、プローブ30の測定光B1の出射開口が基準面R1及び測定面R2に対向可能となる位置となるように、プローブ30を下降させる。これにより、プローブ30が、マスタM1の基準面R1及び測定面R2を測定可能な位置に移動される。
【0096】
(倍率校正)
次に、倍率校正工程(ステップS16)について説明する。図14は、倍率校正工程を説明するための図(平面図及び正面図)である。
【0097】
図14に示すように、倍率校正工程(ステップS16)では、第2直動機構70Yを制御して、プローブ30のY方向位置を調整して、マスタM1の基準面R1及び測定面R2に対してそれぞれ測定光B1を出射し、マスタM1からの反射光を検出してマスタM1の形状測定を行う。そして、マスタM1からの反射光の検出結果と、マスタM1の既知の段差量dとを用いて倍率校正を行う。
【0098】
なお、図14では、マスタM1としてブロックゲージを用いた例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図15に示すように、ネジ式の倍率校正器M2(以下、マスタという。)を用いることも可能である。
【0099】
図15に示すマスタM2では、不図示のネジにより測定面が移動可能となっており、ネジの操作による測定面の移動量G2が校正されている。なお、図15では、基準面の位置を2つ(R21及びR22)のみ図示している。ここで、基準面の位置R21及びR22は、第1測定面及び第2測定面の一例である。
【0100】
本実施形態によれば、プローブ30を校正測定位置30cに移動するときの各工程における移動量を計算で求めることができるので、プローブ30がマスタ(M1、M2)に接触することを回避することができる。また、校正作業の精度がオペレータの技量に依存しない。
【0101】
さらに、本実施形態によれば、各工程が第1カメラCAM1及び第2カメラCAM2により撮影した画像の画像処理と、形状測定機10の装置構成又は画像処理により計算された移動量の動作で構成されているため、目視による確認等が不要となり、校正作業の自動化が可能になる。
【0102】
また、本実施形態では、倍率校正時において、マスタ(M1、M2)の測定面(基準面R1、測定面R2、R21及びR22)がY方向(第2の方向)と平行になっている。そして、プローブ30からの測定光B1を測定面に対して垂直に(X方向、第1の方向から)入射させることができるので、より高精度の倍率校正を行うことが可能になる。
【0103】
ここで、倍率校正の精度について、ブロックゲージの場合を例にとって説明する。図16に示すように、倍率校正時において、マスタM1の基準面R1がY方向に対して角度θ傾いている場合、プローブ30のY方向移動量をLとすると、プローブ30により測定される段差量G1(F)は下記の式(10)により表される。
【0104】
G1(F)=G1/cosθ+Lsinθ …(10)
このとき、倍率校正の誤差は下記の式(11)により表される。
【0105】
G1/G1(F)=1/{1/cosθ+(L/G1)sinθ} …(11)
式(11)に示すように、マスタM1の基準面R1がY方向に対して傾いている場合、G1<G1(F)となるため、実際の変位量よりも校正後の値が小さくなってしまう。また、式(11)に示すように、測定条件によって変化するY方向移動量Lが校正誤差に含まれるため、誤差量が安定しない。
【0106】
これに対して、本実施形態では、倍率校正時において、マスタM1の基準面R1及び測定面R2がY方向と平行になっているので、より高精度の倍率校正を行うことが可能になる。
【0107】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。以下の説明において、第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0108】
本実施形態は、マスタM1の位置決め工程(ステップS10)において、マスタM1の角度調整と位置調整を一度に調整可能とするものである。
【0109】
図17及び図18は、マスタM1の位置決め工程を説明するための図である。本実施形態では、マスタM1の位置決め工程(ステップS10)において、ステージ18の回転軸C(回転中心)の位置(移動前の位置C(Y1))をあらかじめ算出済みとする。
【0110】
マスタM1をステージ18に保持した状態で、第2カメラCAM2をY方向に移動させた場合、第2カメラCAM2の視野内における移動方向(図7におけるB方向に対するY方向の傾きθ)を求めることができる。Y方向移動量Yは指定移動量であるため、既知であるとすると、第2カメラCAM2の視野内におけるY方向移動量(ベクトルY)を算出することができる。
【0111】
よって、図17に示すように、Y方向移動前のマスタM1の基準面R1の位置R1(Y1)と、ステージ18の回転軸Cの位置C(Y1)から、Y方向移動後の第2カメラCAM2の視野内におけるマスタM1の基準面R1の位置R1(Y2)と、ステージ18の回転軸Cの位置C(Y2)を算出することができる。
【0112】
次に、図18に示すように、マスタM1の基準面R1が、Y方向移動後のステージ18の回転軸Cの位置C(Y2)に重なるように、マスタM1の位置の移動量(N)を調整する。すなわち、図18に示すように、Y方向移動後のステージ18の回転軸Cの位置C(Y2)からマスタM1の基準面R1の位置R1(Y2)に下ろした垂線ベクトルであるNベクトルを算出する。そして、ステージ18の直動機構を動作させて、マスタM1をNベクトルに従って移動させると、マスタM1の基準面R1をステージ18の回転軸Cの位置C(Y2)と一致させることができる。
【0113】
次に、ステージ回転機構14により、マスタM1を角度θ回転させることにより、マスタM1の基準面R1をY方向と平行にすることができる。
【0114】
図19は、本発明の第2の実施形態に係るマスタM1の位置決め工程を示すフローチャートである。
【0115】
まず、第2カメラCAM2の視野内におけるステージ18の回転軸C(回転中心)をあらかじめ算出しておく(ステップS130)。ステップS130では、ステージ18の回転軸Cは、例えば、ステージ18上に既知形状(例えば、円形又は矩形等)のワークを設置してステージ18を回転させ、第2カメラCAM2により撮影した画像を処理することにより検出することができる。なお、回転軸Cの算出方法は上記の例に限定されない。
【0116】
次に、第2カメラCAM2を用いて、マスタM1がステージ18の保持部18Bに保持されたマスタM1の基準面R1の画像PI1を撮影する(ステップS132)。そして、第2直動機構70Yにより第2カメラCAM2をY方向に移動させて(ステップS134)、第2カメラCAM2を用いて、移動後のマスタM1の基準面R1の画像PI2を撮影する(ステップS136)。
【0117】
次に、画像PI1及びPI2とY方向移動量から、Y方向に対する基準面R1の傾きθを算出する(ステップS138)。なお、ステップS138における傾きθの算出手順は、第1の実施形態と同様であるため説明を省略する(図6及び図7参照)。そして、ステップS134におけるY方向移動量Yと角度θからYベクトルを算出する(ステップS140)。
【0118】
次に、Y方向移動前の回転軸Cの位置C(Y1)とYベクトルから、Y方向移動後の回転軸Cの位置C(Y2)を算出する(ステップS142)。そして、Y方向移動後の回転軸Cの位置C(Y2)と画像PI2からNベクトルを算出する(ステップS144)。
【0119】
次に、Nベクトルに沿ってマスタM1を移動させ(ステップS146)、マスタM1を角度θ回転させて、マスタM1の基準面R1をY方向に平行にする(ステップS148)。
【0120】
本実施形態によれば、マスタM1の角度調整と位置調整を一度に調整可能であるため、マスタM1の基準面R1の位置決めに要する工数を減らすことができる。
【0121】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。以下の説明において、第1又は第2の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0122】
本実施形態は、ステージ18の回転軸C(回転中心)の算出(第2の実施形態におけるステップS130)の前後において、Y方向移動を行ってYベクトルを算出して登録するようにしたものである。
【0123】
図20は、本発明の第3の実施形態に係るマスタM1の位置決め工程を示すフローチャートである。
【0124】
まず、Yベクトルの登録を行う(ステップS160)。ステップS160では、まず、図21に示すように、ステージ18上に既知形状S1を第2カメラCAM2の視野内に収まるように設置する。ここで、既知形状S1とは、例えば、円形の穴形状、点、レチクル等の基準座標を高精度に求められる形状が望ましい。
【0125】
次に、第2カメラCAM2により、既知形状S1の画像を取得し、既知形状S1の基準位置の座標(基準座標C1(Y1))を計算する。図21では、既知形状S1の例として円形の穴形状を用いており、基準座標として円形の穴の中心の位置座標を用いている。
【0126】
次に、あらかじめ定められた距離だけ、第2カメラCAM2のY方向移動を行い、第2カメラCAM2により既知形状S1の画像を取得し、既知形状S1の基準位置の座標(基準座標C1(Y2))を計算する。
【0127】
次に、制御装置50は、Y方向移動の前後の基準座標C1(Y1)及びC1(Y2)からYベクトルを算出して登録(保存)する。
【0128】
次に、第2カメラCAM2の視野内におけるステージ18の回転軸C(回転中心)をあらかじめ算出する(ステップS162)。なお、ステージ18の回転軸C(回転中心)の算出手順は、第2の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0129】
次に、第2カメラCAM2を用いて、マスタM1がステージ18の保持部18Bに保持されたマスタM1の基準面R1の画像PI1を撮影する(ステップS164)。そして、第2直動機構70Yにより第2カメラCAM2をY方向に移動させて(ステップS166)、第2カメラCAM2を用いて、移動後のマスタM1の基準面R1の画像PI2を撮影する(ステップS168)。ここで、ステップS168におけるY方向移動距離は、ステップS160のYベクトルの事前登録時におけるY方向移動距離と等しい(図21参照)。
【0130】
次に、画像PI1及びPI2とY方向移動量から、Y方向に対する基準面R1の傾きθを算出する(ステップS170)。なお、ステップS138における傾きθの算出手順は、第1の実施形態と同様であるため説明を省略する(図6及び図7参照)。
【0131】
次に、マスタM1の角度調整と位置調整とを実施する。後述のステップS172からS178は、図19のステップS172からS178とそれぞれ同様である。
【0132】
次に、Y方向移動前の回転軸Cの位置C(Y1)とYベクトルから、Y方向移動後の回転軸Cの位置C(Y2)を算出する(ステップS172)。そして、Y方向移動後の回転軸Cの位置C(Y2)と画像PI2からNベクトルを算出する(ステップS174)。
【0133】
次に、Nベクトルに沿ってマスタM1を移動させ(ステップS176)、マスタM1を角度θ回転させて、マスタM1の基準面R1をY方向に平行にする(ステップS178)。
【0134】
本実施形態によれば、第2の実施形態と同様に、マスタM1の角度調整と位置調整を一度に調整可能であるため、マスタM1の基準面R1の位置決めに要する工数を減らすことができる。
【0135】
さらに、本実施形態では、円等の既知形状は、基準座標を高精度に算出可能な形状を持っており、また、実際に第2カメラCAM2の視野内でY方向移動した距離を求めるので、Yベクトルを精度よく算出することができる。
【符号の説明】
【0136】
10…形状測定機、12…本体ベース、14…ステージ回転機構、16…回転体、18…ステージ、20…コラム、22…キャリッジ、24X…第1アーム、24Y…第2アーム、26…変位検出器、28…検出器駆動機構、30…プローブ、32…カメラ、34…カメラ用ブラケット、50…制御装置、52…操作部、54…表示部、56…変位演算部、58…駆動制御部、60…撮影制御部、70X…第1直動機構、70Y…第2直動機構、CAM1…第1カメラ、CAM2…第2カメラ、M1~M2…校正用標準器(マスタ)
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