(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-10
(45)【発行日】2025-09-19
(54)【発明の名称】レーザ加工装置、レーザ加工方法、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/382 20140101AFI20250911BHJP
B23K 26/067 20060101ALI20250911BHJP
B23K 26/066 20140101ALI20250911BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20250911BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20250911BHJP
【FI】
B23K26/382
B23K26/067
B23K26/066
B23K26/064 Z
G03F7/20 505
(21)【出願番号】P 2023532991
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 JP2021025819
(87)【国際公開番号】W WO2023281708
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2024-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】川筋 康文
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-068270(JP,A)
【文献】特開2007-268600(JP,A)
【文献】特開2020-062657(JP,A)
【文献】特開2016-215245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/382
B23K 26/067
B23K 26/066
B23K 26/064
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物に照射される複数のレーザ光のそれぞれの照射位置に孔を形成するレーザ加工装置であって、
入射するレーザ光を前記複数のレーザ光に分割して出射する回折光学素子と、
前記回折光学素子から前記複数のレーザ光が入射し、印加される電圧の周波数に応じて出射する前記複数のレーザ光の光路を前記複数のレーザ光の照射方向に垂直な第1方向に沿って変化させる第1音響光学素子と、
前記第1音響光学素子に所望の周波数の電圧を印加する第1電圧印加回路と、
前記第1音響光学素子から出射する前記複数のレーザ光を集光して前記被加工物に照射する集光光学系と、
前記集光光学系から出射する前記複数のレーザ光が透過するアパーチャと、
前記第1電圧印加回路を制御して、前記第1音響光学素子に印加される電圧の周波数を調節するプロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、前記第1電圧印加回路を制御して、前記アパーチャを透過する前記複数のレーザ光の数が所望の数となるよう前記第1音響光学素子に印加される電圧の周波数を調節する
レーザ加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工装置であって、
前記レーザ光はパルスレーザ光である。
【請求項3】
請求項1に記載のレーザ加工装置であって、
前記アパーチャと前記被加工物との間に配置された転写光学系を更に備え、
前記集光光学系から出射する前記複数のレーザ光は、前記転写光学系を介して、前記被加工物に照射される。
【請求項4】
請求項1に記載のレーザ加工装置であって、
前記被加工物は絶縁性の無機材料から成る。
【請求項5】
被加工物に照射される複数のレーザ光のそれぞれの照射位置に孔を形成するレーザ加工装置であって、
入射するレーザ光を前記複数のレーザ光に分割して出射する回折光学素子と、
前記回折光学素子から前記複数のレーザ光が入射し、印加される電圧の周波数に応じて出射する前記複数のレーザ光の光路を前記複数のレーザ光の照射方向に垂直な第1方向に沿って変化させる第1音響光学素子と、
前記第1音響光学素子に所望の周波数の電圧を印加する第1電圧印加回路と、
前記第1音響光学素子から前記複数のレーザ光が入射し、印加される電圧の周波数に応じて出射する前記複数のレーザ光の光路を前記複数のレーザ光の照射方向及び前記第1方向に直交する第2方向に沿って変化させる第2音響光学素子と、
前記第2音響光学素子に所望の周波数の電圧を印加する第2電圧印加回路と、
前記第2音響光学素子から出射する前記複数のレーザ光を集光して前記被加工物に照射する集光光学系と、
前記第1電圧印加回路及び前記第2電圧印加回路を制御して、前記第1音響光学素子及び前記
第2音響光学素子に印加されるそれぞれの電圧の周波数を調節するプロセッサと、
前記集光光学系から出射する前記複数のレーザ光が透過し、前記第1方向に延在する一対の辺と前記第2方向に延在する一対の辺とから成る四角形状のアパーチャと、
を備え、
前記回折光学素子は、前記複数のレーザ光を前記第1方向に複数配列されると共に前記第2方向に複数配列される正方格子状に出射し、
前記プロセッサは、前記第1電圧印加回路及び前記第2電圧印加回路を制御して、前記アパーチャを透過する前記複数のレーザ光のうち前記第1方向に配列される数及び前記第2方向に配列される数がそれぞれ所望の数となるよう、前記第1音響光学素子及び前記第2音響光学素子に印加される電圧の周波数をそれぞれ調節する
レーザ加工装置。
【請求項6】
請求項5に記載のレーザ加工装置であって、
前記第1音響光学素子と前記第2音響光学素子との間にλ/2波長板が配置され、
前記第1音響光学素子からの前記レーザ光は前記λ/2波長板を介して前記第2音響光学素子に入射する。
【請求項7】
請求項5に記載のレーザ加工装置であって、
前記被加工物が配置され、前記第1方向及び前記第2方向に移動可能なテーブルを更に備え、
前記プロセッサは、前記第1電圧印加回路及び前記第2電圧印加回路を制御して、前記被加工物の位置に応じて、前記アパーチャを透過する前記複数のレーザ光の数が変化するよう、前記第1音響光学素子及び前記第2音響光学素子に印加される電圧の周波数をそれぞれ調節する。
【請求項8】
被加工物に照射される複数のレーザ光のそれぞれの照射位置に孔を形成するレーザ加工装置であって、
入射するレーザ光を前記複数のレーザ光に分割して出射する回折光学素子と、
前記回折光学素子から前記複数のレーザ光が入射し、印加される電圧の周波数に応じて出射する前記複数のレーザ光の光路を前記複数のレーザ光の照射方向に垂直な第1方向に沿って変化させる第1音響光学素子と、
前記第1音響光学素子に所望の周波数の電圧を印加する第1電圧印加回路と、
前記第1音響光学素子から出射する前記複数のレーザ光を集光して前記被加工物に照射する集光光学系と、
前記被加工物が配置され、前記第1方向に移動するテーブルと、
前記集光光学系から出射する前記複数のレーザ光が透過し、前記第1方向に延在する一対の辺と前記複数のレーザ光の照射方向及び前記第1方向に直交する第2方向に延在する一対の辺とから成る四角形状のアパーチャと、
前記第1電圧印加回路を制御して、前記第1音響光学素子に印加される電圧の周波数を調節するプロセッサと、
を備え、
前記回折光学素子は、前記複数のレーザ光を前記第1方向に複数配列されると共に前記第2方向に複数配列される正方格子状に出射し、
前記プロセッサは、前記テーブルを前記第1方向に移動させながら、前記第1電圧印加回路を制御して、前記アパーチャ内において前記複数のレーザ光の前記被加工物におけるそれぞれの照射位置が変化しないよう、前記テーブルの移動に同期して前記第1電圧印加回路から前記第1音響光学素子に印加される電圧の周波数を変化させる
レーザ加工装置。
【請求項9】
被加工物に照射される複数のレーザ光のそれぞれの照射位置に孔を形成するレーザ加工方法であって、
回折光学素子にレーザ光を入射させて前記複数のレーザ光に分割して出射させる回折工程と、
前記回折光学素子からの前記複数のレーザ光を第1音響光学素子に入射させると共に、前記第1音響光学素子に所望の周波数の電圧を印加して、前記第1音響光学素子から出射する前記複数のレーザ光の光路を印加される電圧の周波数に応じて前記複数のレーザ光の照射方向に垂直な第1方向に沿って変化させる第1光路変化工程と、
前記第1音響光学素子からの前記複数のレーザ光を第2音響光学素子に入射させると共に、前記第2音響光学素子に所望の周波数の電圧を印加して、前記第2音響光学素子から出射する前記複数のレーザ光の光路を印加される電圧の周波数に応じて前記複数のレーザ光の照射方向及び前記第1方向に直交する第2方向に沿って変化させる第2光路変化工程と、
前記第2音響光学素子から出射する前記複数のレーザ光を集光する集光工程と、
前記集光工程で集光される前記複数のレーザ光を、前記第1方向に延在する一対の辺と前記第2方向に延在する一対の辺とから成る四角形状のアパーチャを透過させるアパーチャ透過工程と、
集光され前記アパーチャを透過した前記複数のレーザ光を前記被加工物に照射する照射工程と、
を備え、
前記回折工程では、前記回折光学素子から前記複数のレーザ光を前記第1方向に複数配列されると共に前記第2方向に複数配列される正方格子状に出射させ、
前記第1光路変化工程及び前記第2光路変化工程では、前記アパーチャを透過する前記複数のレーザ光のうち前記第1方向に配列される数及び前記第2方向に配列される数がそれぞれ所望の数となるよう、前記第1音響光学素子及び前記第2音響光学素子に印加される電圧の周波数をそれぞれ調節する
レーザ加工方法。
【請求項10】
請求項9に記載のレーザ加工方法であって、
前記被加工物が配置されるテーブルを前記第1方向及び前記第2方向に移動するテーブル移動工程を更に備え、
前記第1光路変化工程及び前記第2光路変化工程では、前記被加工物の位置に応じて、前記アパーチャを透過する前記複数のレーザ光の数が変化するよう、前記第1音響光学素子及び前記第2音響光学素子に印加される電圧の周波数をそれぞれ調節する。
【請求項11】
被加工物に照射される複数のレーザ光のそれぞれの照射位置に孔を形成するレーザ加工方法であって、
回折光学素子にレーザ光を入射させて前記複数のレーザ光に分割して出射させる回折工程と、
前記回折光学素子からの前記複数のレーザ光を第1音響光学素子に入射させると共に、前記第1音響光学素子に所望の周波数の電圧を印加して、前記第1音響光学素子から出射する前記複数のレーザ光の光路を印加される電圧の周波数に応じて前記複数のレーザ光の照射方向に垂直な第1方向に沿って変化させる第1光路変化工程と、
前記第1音響光学素子から出射する前記複数のレーザ光を集光する集光工程と、
前記集光工程で集光される前記複数のレーザ光を、前記第1方向に延在する一対の辺と前記複数のレーザ光の照射方向及び前記第1方向に直交する第2方向に延在する一対の辺とから成る四角形状のアパーチャを透過させるアパーチャ透過工程と、
集光され前記アパーチャを透過した前記複数のレーザ光を前記被加工物に照射する照射工程と、
前記被加工物が配置されたテーブルを前記第1方向に移動させるテーブル移動工程と、
を備え、
前記回折工程では、前記回折光学素子から前記複数のレーザ光を前記第1方向に複数配列されると共に前記第2方向に複数配列される正方格子状に出射させ、
前記第1光路変化工程では、前記テーブルを移動させながら、前記アパーチャ内において前記複数のレーザ光の前記被加工物におけるそれぞれの照射位置が変化しないよう、前記テーブルの移動に同期して前記第1音響光学素子に印加する電圧の周波数を変化させる
レーザ加工方法。
【請求項12】
インターポーザと集積回路チップとを結合させて互いに電気的に接続する第1結合工程と、
インターポーザと回路基板とを結合させて互いに電気的に接続する第2結合工程と、
を備え、
前記インターポーザは、複数の貫通孔が形成された絶縁性の基板と、当該複数の貫通孔内に設けられる導電体とを含み、
前記複数の貫通孔は、絶縁性の基板に照射される複数のレーザ光のそれぞれの照射位置に孔を形成するレーザ加工方法により形成され、
前記レーザ加工方法は、
回折光学素子にレーザ光を入射させて前記複数のレーザ光に分割して出射させる回折工程と、
前記回折光学素子からの前記複数のレーザ光を第1音響光学素子に入射させると共に、前記第1音響光学素子に所望の周波数の電圧を印加して、前記第1音響光学素子から出射する前記複数のレーザ光の光路を印加される電圧の周波数に応じて前記複数のレーザ光の照射方向に垂直な第1方向に沿って変化させる第1光路変化工程と、
前記第1音響光学素子から出射する前記複数のレーザ光を集光する集光工程と、
前記集光工程で集光される前記複数のレーザ光を、アパーチャを透過させるアパーチャ透過工程と、
集光され前記アパーチャを透過した前記複数のレーザ光を前記基板に照射する照射工程と、
を備え、
前記第1光路変化工程では、前記アパーチャを透過する前記複数のレーザ光の数が所望の数となるよう前記第1音響光学素子に印加される電圧の周波数を調節する
電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ加工装置、レーザ加工方法、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体露光装置においては、半導体集積回路の微細化及び高集積化につれて、解像力の向上が要請されている。このため、露光用光源から放出される光の短波長化が進められている。例えば、露光用のガスレーザ装置としては、波長約248.0nmのレーザ光を出力するKrFエキシマレーザ装置、ならびに波長約193.4nmのレーザ光を出力するArFエキシマレーザ装置が用いられる。
【0003】
KrFエキシマレーザ装置及びArFエキシマレーザ装置の自然発振光のスペクトル線幅は、350pm~400pmと広い。そのため、KrF及びArFレーザ光のような紫外線を透過する材料で投影レンズを構成すると、色収差が発生してしまう場合がある。その結果、解像力が低下し得る。そこで、ガスレーザ装置から出力されるレーザ光のスペクトル線幅を、色収差が無視できる程度となるまで狭帯域化する必要がある。そのため、ガスレーザ装置のレーザ共振器内には、スペクトル線幅を狭帯域化するために、狭帯域化素子(エタロンやグレーティング等)を含む狭帯域化モジュール(Line Narrowing Module:LNM)が備えられる場合がある。以下では、スペクトル線幅が狭帯域化されるガスレーザ装置を狭帯域化ガスレーザ装置という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【概要】
【0005】
本開示の一態様によるレーザ加工装置は、被加工物に照射される複数のレーザ光のそれぞれの照射位置に孔を形成するレーザ加工装置であって、入射するレーザ光を複数のレーザ光に分割して出射する回折光学素子と、回折光学素子から複数のレーザ光が入射し、印加される電圧の周波数に応じて出射する複数のレーザ光の光路を複数のレーザ光の照射方向に垂直な第1方向に沿って変化させる第1音響光学素子と、第1音響光学素子に所望の周波数の電圧を印加する第1電圧印加回路と、第1音響光学素子から出射する複数のレーザ光を集光して被加工物に照射する集光光学系と、第1電圧印加回路を制御して、第1音響光学素子に印加される電圧の周波数を調節するプロセッサと、を備えてもよい。
【0006】
また、本開示の一態様によるレーザ加工方法は、被加工物に照射される複数のレーザ光のそれぞれの照射位置に孔を形成するレーザ加工方法であって、回折光学素子にレーザ光を入射させて複数のレーザ光に分割して出射させる回折工程と、回折光学素子からの複数のレーザ光を第1音響光学素子に入射させると共に、第1音響光学素子に所望の周波数の電圧を印加して、第1音響光学素子から出射する複数のレーザ光の光路を印加される電圧の周波数に応じて複数のレーザ光の照射方向に垂直な第1方向に沿って変化させる第1光路変化工程と、第1音響光学素子から出射する複数のレーザ光を集光する集光工程と、集光された複数のレーザ光を被加工物に照射する照射工程と、を備えてもよい。
【0007】
本開示の一態様による電子デバイスの製造方法は、インターポーザと集積回路チップとを結合させて互いに電気的に接続する第1結合工程と、インターポーザと回路基板とを結合させて互いに電気的に接続する第2結合工程と、を備え、インターポーザは、複数の貫通孔が形成された絶縁性の基板と、当該複数の貫通孔内に設けられる導電体とを含み、複数の貫通孔は、絶縁性の基板に照射される複数のレーザ光のそれぞれの照射位置に孔を形成するレーザ加工方法により形成され、レーザ加工方法は、回折光学素子にレーザ光を入射させて複数のレーザ光に分割して出射させる回折工程と、回折光学素子からの複数のレーザ光を第1音響光学素子に入射させると共に、第1音響光学素子に所望の周波数の電圧を印加して、第1音響光学素子から出射する複数のレーザ光の光路を印加される電圧の周波数に応じて複数のレーザ光の照射方向に垂直な第1方向に沿って変化させる第1光路変化工程と、第1音響光学素子から出射する複数のレーザ光を集光する集光工程と、集光された複数のレーザ光を基板に照射する照射工程と、を備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【
図1】
図1は、電子デバイスの概略構成例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、電子デバイスの製造方法を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、比較例におけるレーザ加工装置の概略構成例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、実施形態1におけるレーザ加工装置の概略構成例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、複数のレーザ光がアパーチャに入射する一例の様子を示す図である。
【
図6】
図6は、複数のレーザ光がアパーチャに入射する他の一例の様子を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態1におけるレーザ加工方法の工程を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施形態2におけるレーザ加工装置の概略構成例を示す模式図である。
【
図9】
図9は、実施形態3におけるレーザ加工の様子を示す図である。
【
図10】
図10は、
図9で示すレーザ加工より後におけるレーザ加工の様子を示す図である。
【実施形態】
【0009】
1.電子デバイスの製造方法の説明
2.比較例のレーザ加工システム及びレーザ加工方法の説明
2.1 構成
2.2 動作
2.3 課題
3.実施形態1のレーザ加工システム及びレーザ加工方法の説明
3.1 構成
3.2 動作
3.3 作用・効果
4.実施形態2のレーザ加工システム及びレーザ加工方法の説明
4.1 構成
4.2 動作
4.3 作用・効果
5.実施形態3のレーザ加工システム及びレーザ加工方法の説明
5.1 動作
5.2 作用・効果
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。
以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
1.電子デバイスの製造方法の説明
図1は、電子デバイス500の概略構成例を示す模式図である。
図1に示す電子デバイス500は、集積回路チップ501と、インターポーザ502と、回路基板503と、を備える。集積回路チップ501は、例えばシリコン基板に集積回路が形成されているチップ状の集積回路基板である。集積回路チップ501には、集積回路に電気的に接続される複数のバンプ501Bが設けられている。インターポーザ502は、複数の貫通孔が形成された絶縁性の基板を備え、それぞれの貫通孔内に当該基板の表裏を電気的に接続する導電体が設けられている。インターポーザ502の一方の面には集積回路チップ501に設けられるバンプ501Bに接続される複数のランドが形成されており、それぞれのランドは貫通孔内の導電体のいずれかと電気的に接続されている。インターポーザ502の他方の面上には、複数のバンプ502Bが設けられており、それぞれのバンプ502Bは、貫通孔内の導電体のいずれかと電気的に接続されている。回路基板503の一方の面には、それぞれのバンプ502Bと接続する複数のランドが形成されている。また、回路基板503は、これらランドと電気的に接続される複数の端子を備える。
【0012】
図2は、電子デバイス500の製造方法を示すフローチャートである。
図2に示すように、本説明における電子デバイス500の製造方法は、第1結合工程SP1と第2結合工程SP2と、を備える。第1結合工程SP1では、集積回路チップ501とインターポーザ502とを結合させる。具体的には、集積回路チップ501のそれぞれのバンプ501Bをインターポーザ502のそれぞれのランド上に配置して、バンプ501Bとランドとを電気的に接続する。こうして、集積回路チップ501とインターポーザ502とが電気的に接続される。第2結合工程SP2では、インターポーザ502と回路基板503とを結合させる。具体的には、インターポーザ502のそれぞれのバンプ502Bを回路基板503のそれぞれのランド上に配置して、バンプ502Bとランドとを電気的に接続する。こうして、集積回路チップ501は、インターポーザ502を介して回路基板503に電気的に接続される。以上の工程を経て、電子デバイス500が製造される。
【0013】
2.比較例のレーザ加工システム及びレーザ加工方法の説明
2.1 構成
比較例のレーザ加工システム及びレーザ加工方法について説明する。なお、本開示の比較例とは、出願人のみによって知られていると出願人が認識している形態であって、出願人が自認している公知例ではない。
【0014】
図3は、本例のレーザ加工システム10の全体の概略構成例を示す模式図である。本例のレーザ加工システム10は、ガスレーザ装置100と、レーザ加工装置300と、ガスレーザ装置100及びレーザ加工装置300を接続する光路管POとを主な構成として含む。以下では、被加工物20に入射するレーザ光の光軸方向と平行な方向をZ方向、Z方向に直交している方向をX方向、X方向及びZ方向に直交している方向をY方向として説明する。Z方向は、被加工物20の高さ方向でもある。
【0015】
本例のガスレーザ装置100は、アルゴン(Ar)、フッ素(F2)、及びネオン(Ne)を含む混合ガスを使用するArFエキシマレーザ装置である。このガスレーザ装置100は、中心波長が約193.4nmのレーザ光を出射する。なお、ガスレーザ装置100は、ArFエキシマレーザ装置以外のガスレーザ装置であってもよく、例えば、クリプトン(Kr)、F2、及びNeを含む混合ガスを使用するKrFエキシマレーザ装置であってもよい。この場合、ガスレーザ装置100は、中心波長が約248.0nmのレーザ光を出射する。レーザ媒質であるAr、F2、及びNeを含む混合ガスやレーザ媒質であるKr、F2、及びNeを含む混合ガスは、レーザガスと呼ばれる場合がある。
【0016】
ガスレーザ装置100は、筐体110と、筐体110の内部空間に配置されるレーザ発振器130、モニタモジュール150、シャッタ170、及びレーザプロセッサ190とを主な構成として含む。
【0017】
レーザ発振器130は、レーザチャンバ131と、充電器141と、パルスパワーモジュール143と、リアミラー145と、出力結合ミラー147とを含んでいる。
図1では、レーザ光の進行方向に略垂直な方向からみたレーザチャンバ131の内部構成が示されている。
【0018】
レーザチャンバ131は、上記レーザガス中のレーザ媒質の励起によって光が発生する内部空間を含む。レーザガスは、不図示のレーザガス供給源から不図示の配管を介してレーザチャンバ131の内部空間に供給される。レーザ媒質の励起によって発生する上記光は、後述するウインドウ139a,139bに進行する。
【0019】
レーザチャンバ131の内部空間には、一対の電極133a,133bが、互いに対向して、長手方向が上記光の進行方向に沿うように配置されている。電極133a,133bは、グロー放電によりレーザ媒質を励起するための放電電極である。本例では、電極133aがカソードであり、電極133bがアノードである。
【0020】
電極133aは、電気絶縁部135によって支持されている。電気絶縁部135は、レーザチャンバ131に形成されている開口を塞いでいる。電気絶縁部135には導電部が埋め込まれており、導電部はパルスパワーモジュール143から供給される高電圧を電極133aに印加する。電極133bは、リターンプレート137に支持されている。リターンプレート137は、不図示の配線でレーザチャンバ131の内面と接続されている。
【0021】
充電器141は、パルスパワーモジュール143の中の不図示の充電コンデンサを所定の電圧で充電する直流電源装置である。パルスパワーモジュール143は、レーザプロセッサ190によって制御されるスイッチ143aを含んでいる。スイッチ143aがOFFからONになると、パルスパワーモジュール143は、充電器141に保持されていた電気エネルギーからパルス状の高電圧を生成し、この高電圧を電極133aと電極133bとの間に印加する。
【0022】
電極133aと電極133bとの間に高電圧が印加されると、電極133aと電極133bとの間に放電が起こる。この放電のエネルギーにより、レーザチャンバ131内のレーザ媒質が励起される。励起されたレーザ媒質が基底状態に移行するとき光を放出する。
【0023】
レーザチャンバ131には、ウインドウ139a,139bが設けられている。ウインドウ139aはレーザチャンバ131におけるレーザ光の進行方向における一端側に位置し、ウインドウ139bは当該進行方向における他端側に位置して、電極133aと電極133bとの間の空間を挟み込んでいる。後述のように発振するレーザ光は、ウインドウ139a,139bを介してレーザチャンバ131の外部に出射する。上記のようにパルスパワーモジュール143によりパルス状の高電圧が電極133aと電極133bとの間に印加されるため、このレーザ光はパルスレーザ光である。
【0024】
リアミラー145は、レーザチャンバ131の一端側に接続されている筐体145aの内部空間に配置され、ウインドウ139aから出射するレーザ光を反射してレーザチャンバ131の内部空間に戻す。出力結合ミラー147は、レーザチャンバ131の他端側に接続されている光路管147aの内部空間に配置され、ウインドウ139bから出射するレーザ光の一部を透過させ、他の一部を反射してレーザチャンバ131の内部空間に戻す。こうしてリアミラー145と出力結合ミラー147とでファブリペロー型のレーザ共振器が構成され、レーザチャンバ131はレーザ共振器の光路上に配置される。
【0025】
モニタモジュール150は、出力結合ミラー147から出射するレーザ光の光路上に配置されている。モニタモジュール150は、筐体151と、ビームスプリッタ153と、光センサ155とを含む。筐体151には開口が形成されており、この開口を介して、筐体151の内部空間は光路管147aの内部空間と連通している。筐体151の内部空間には、ビームスプリッタ153及び光センサ155が配置されている。
【0026】
ビームスプリッタ153は、出力結合ミラー147から出射したレーザ光を高い透過率でシャッタ170に向けて透過させると共に、レーザ光の一部を光センサ155の受光面に向けて反射する。光センサ155は、受光面に入射したレーザ光のエネルギーEを計測する。光センサ155は、レーザプロセッサ190に電気的に接続されており、計測したエネルギーEを示す信号をレーザプロセッサ190に出力する。
【0027】
本開示のレーザプロセッサ190は、制御プログラムが記憶された記憶装置190aと、制御プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)190bとを含む処理装置である。レーザプロセッサ190は、本開示に含まれる各種処理を実行するために特別に構成又はプログラムされている。また、レーザプロセッサ190は、ガスレーザ装置100全体を制御する。
【0028】
レーザプロセッサ190は、モニタモジュール150の光センサ155からエネルギーEを示す信号を受信する。また、レーザプロセッサ190は、レーザ加工装置300のレーザ加工プロセッサ310との間で各種信号を送受信する。例えば、レーザプロセッサ190は、レーザ加工プロセッサ310から、後述する発光トリガTr、及び、後述する目標エネルギーEt等を示す信号を受信する。レーザプロセッサ190は、光センサ155及びレーザ加工プロセッサ310から受信したエネルギーE及び目標エネルギーEtを基に充電器141の充電電圧を制御する。充電器141の充電電圧を制御することにより、レーザ光のエネルギーが制御される。また、レーザプロセッサ190は、パルスパワーモジュール143にスイッチ143aのON又はOFFの指令信号を送信する。また、レーザプロセッサ190は、シャッタ170の開閉を制御する。
【0029】
シャッタ170は、モニタモジュール150の筐体151に接続されている光路管171の内部空間において、ビームスプリッタ153を透過したレーザ光の光路に配置される。筐体151の光路管147aが接続される側とは反対側には光路管171が接続されており、光路管171の内部空間は、筐体151に形成された開口を介して、筐体151の内部空間と連通している。また、光路管171は、筐体110に形成されている開口を介して光路管POに連通している。
【0030】
シャッタ170は、レーザプロセッサ190に電気的に接続されている。レーザプロセッサ190は、モニタモジュール150から受信するエネルギーEとレーザ加工プロセッサ310から受信する目標エネルギーEtとの差ΔEが許容範囲内となるまではシャッタ170を閉じる。また、レーザプロセッサ190は、レーザ加工プロセッサ310から発光トリガTrを示す信号を受信するとシャッタ170を開ける。なお、レーザプロセッサ190は、差ΔEが許容範囲内となったら、発光トリガTrの受信準備が完了したことを知らせる受信準備完了信号をレーザ加工プロセッサ310に送信する。発光トリガTrは、レーザ光の所定の繰り返し周波数f及び所定のパルス数Pで規定され、レーザ加工プロセッサ310がレーザ発振器130をレーザ発振させるタイミング信号であり、外部トリガである。レーザ光の繰り返し周波数fは、例えば、1kHz以上10kHz以下である。
【0031】
光路管171及び光路管147aの内部空間や、筐体151及び筐体145aの内部空間には、パージガスが充填されている。パージガスには、高純度窒素等の不活性ガスが含まれる。パージガスは、不図示のパージガス供給源から、不図示の配管を通じて光路管171及び光路管147aの内部空間や、筐体151及び筐体145aの内部空間に供給される。
【0032】
なお、ガスレーザ装置100の筐体110の内部空間には、レーザチャンバ131の内部空間から排気されるレーザガスを排気するための不図示の排気装置が配置されている。排気装置は、レーザチャンバ131の内部空間から排気されるガスに対してハロゲンフィルタによってF2ガスを除去する処理等をして、ガスレーザ装置100の筐体110にガスを放出する。
【0033】
シャッタ170が開いている期間にレーザ光がシャッタ170を透過して、ガスレーザ装置100の光路管171からレーザ光Lbが出射する。
【0034】
レーザ加工装置300は、レーザ加工プロセッサ310と、光学システム330と、ステージ350と、筐体355と、フレーム357とを主な構成として含む。光学システム330及びステージ350は、筐体355の内部空間に配置されている。筐体355は、フレーム357に固定されている。筐体355には光路管POが接続されており、筐体355に形成された開口を介して、筐体355の内部空間が光路管POの内部空間と連通している。
【0035】
レーザ加工プロセッサ310は、制御プログラムが記憶された記憶装置310aと、制御プログラムを実行するCPU310bとを含む処理装置である。レーザ加工プロセッサ310は、本開示に含まれる各種処理を実行するために特別に構成又はプログラムされている。レーザ加工プロセッサ310は、レーザ加工装置300全体を制御する。
【0036】
光学システム330は、高反射ミラー331a,331b,331cと、アッテネータ332と、フライアイレンズ333と、コンデンサレンズ334と、マスク335と、投影光学系336とを備えている。光学システム330の各構成は、それぞれ不図示のホルダに固定されており、筐体355内において所定の位置に配置されている。
【0037】
高反射ミラー331a,331b,331cは、例えば、合成石英やフッ化カルシウムで形成された透明基板の表面に、レーザ光Lbを高反射する反射膜がコートされて成る。高反射ミラー331aは、ガスレーザ装置100から入射するレーザ光Lbをアッテネータ332に向けて反射する。高反射ミラー331bは、アッテネータ332からのレーザ光Lbを高反射ミラー331cに向けて反射する。高反射ミラー331cは、高反射ミラー331bからのレーザ光Lbをフライアイレンズ333に向けて反射する。
【0038】
アッテネータ332は、高反射ミラー331aと高反射ミラー331bとの間の光路上に配置されている。アッテネータ332は、例えば、回転ステージ332a,332bと、回転ステージ332a,332bに固定される部分反射ミラー332c,332dとを含む。それぞれの回転ステージ332a,332bは、レーザ加工プロセッサ310に電気的に接続されており、レーザ加工プロセッサ310からの制御信号によってY軸周りに回転する。回転ステージ332a,332bがそれぞれ回転すると、部分反射ミラー332c,332dもそれぞれ回転する。部分反射ミラー332c,332dは、部分反射ミラー332c,332dの透過率が部分反射ミラー332c,332dへのレーザ光Lbの入射角によって変化する光学素子である。Y軸周りにおける部分反射ミラー332c,332dの回転角は、レーザ光Lbの入射角が互いに一致し、且つ部分反射ミラー332c,332dの透過率が所望の透過率となるように、回転ステージ332a,332bの回転によって調整される。これにより、高反射ミラー331aからのレーザ光Lbは、所望のエネルギーに減光されてアッテネータ332を通過する。
【0039】
フライアイレンズ333は、複数のレンズが例えばハニカム状に並列して成るレンズであり、インテグレータレンズとも呼ばれる。フライアイレンズ333は、フライアイレンズ333の出射側の焦点面とコンデンサレンズ334の入射面側の焦点面とが一致するように配置され、コンデンサレンズ334に入射するレーザ光Lbのエネルギー密度が均一となるように光を出射する。
【0040】
コンデンサレンズ334は、フライアイレンズ333から出射するレーザ光Lbを集光するレンズであり、コンデンサレンズ334の出射側の焦点面がマスク335上となるように配置されている。
【0041】
マスク335は、例えば、レーザ光Lbの一部が透過する複数の透過孔が形成され、レーザ光Lbの他の一部を遮光する板状の部材である。本例では、透過孔は複数の円形の孔から成る。レーザ光Lbが複数の透過孔を透過することで、レーザ光Lbは複数のレーザ光Lvに分割されて、被加工部位に転写パターンが形成される。転写パターンが被加工物20に転写されることで、当該転写パターンに応じた貫通孔が被加工物20に形成される。
【0042】
投影光学系336は、例えばコリメータレンズ336aと集光レンズ336bとを備える。コリメータレンズ336aは、マスク335からの複数のレーザ光Lvを平行光として出射する。集光レンズ336bは、コリメータレンズ336aからの複数のレーザ光Lvを転写パターンが被加工物20の表面側から所定の深さΔZsfに位置する結像位置にて結像するように被加工物20に集光する。投影光学系336の倍率は、例えば、1/10~1/5である。
【0043】
ステージ350は、筐体355の底面に配置され、テーブル351を備える。また、ステージ350は、レーザ加工プロセッサ310からの制御信号により、テーブル351をX方向、Y方向、及びZ方向に移動させることができ、この移動によってテーブル351の位置を調整することができる。
【0044】
テーブル351は、被加工物20を支持する。テーブル351の主面は、Z軸に対して概ね直交しXY平面に概ね沿っている。従って、被加工物20の表面及び裏面は、Z軸に概ね直交していると共に、XY平面に概ね沿って位置している。以上の構成によって、ステージ350は、光学システム330から出射する複数のレーザ光Lvが被加工物20の所望の位置を照射するように、テーブル351を介して被加工物20を移動させて、被加工物20の位置を調整することができる。
【0045】
被加工物20は、複数のレーザ光Lvの照射によってレーザ加工が行われる対象物である。被加工物20としては、例えば、
図1で説明したインターポーザ502となる絶縁性の基板を挙げることができる。この絶縁性の基板の材料として、例えば、シリコン、ガラス等の無機材料や、ポリイミド等の樹脂、及びガラスエポキシ等の無機材料と有機材料とのコンポジット材料を挙げることができる。
【0046】
筐体355の内部空間には、レーザ加工システム10の稼働中、不活性ガスが常時流れている。この不活性ガスは、例えば窒素(N2)である。筐体355には、不活性ガスを筐体355に吸入する不図示の吸入ポートと、筐体355から不活性ガスを外部に排出する不図示の排出ポートとが設けられている。吸入ポート及び排出ポートには、不図示の吸気管や排出管が接続されている。吸入ポートには、不活性ガスを供給する不図示のガス供給源が接続されている。吸入ポートから供給される不活性ガスは、筐体355と連通する光路管POにも流れる。
【0047】
2.2 動作
次に、比較例のレーザ加工システムの動作及びレーザ加工方法について説明する。
【0048】
ガスレーザ装置100において、ガスレーザ装置100がレーザ光Lbを出射する前の状態において、光路管147a,171,POの内部空間や、筐体145a,151の内部空間には、不図示のパージガス供給源からパージガスが充填される。また、レーザチャンバ131の内部空間には、不図示のレーザガス供給源からレーザガスが供給される。また、レーザ加工装置300において、筐体355の内部空間には、窒素ガス等の不活性ガスが流れている。
【0049】
レーザ加工装置300では、被加工物20がテーブル351上に支持される。レーザ加工プロセッサ310は、被加工部位を形成するために複数のレーザ光Lvを照射する照射位置の座標X、座標Y、及び座標Zをステージ350に設定する。照射位置は、上記の転写パターンが形成される被加工物20の被加工部位である。従って、ステージ350は、照射位置が被加工物20の所望の位置となるようテーブル351を移動する。
【0050】
テーブル351が移動した後、レーザ加工プロセッサ310は、被加工物20に照射される複数のレーザ光Lvがレーザ加工に必要な所望のフルーエンスFmとなるように、ガスレーザ装置100及び光学システム330のアッテネータ332の透過率Tmを制御する。
【0051】
レーザプロセッサ190は、シャッタ170を閉じて、充電器141を作動させる。また、レーザプロセッサ190は、パルスパワーモジュール143のスイッチ143aをONする。これにより、パルスパワーモジュール143は、充電器141に保持されていた電気エネルギーから電極133aと電極133bとの間にパルス状の高電圧を印加する。この高電圧により、電極133aと電極133bとの間に放電が起き、電極133aと電極133bとの間のレーザガスに含まれるレーザ媒質は励起状態とされて、レーザ媒質が基底状態に戻る際に光を放出する。この光によりリアミラー145と出力結合ミラー147との間で光が共振し、レーザチャンバ131の内部空間における放電空間を通過するたびに増幅され、レーザ発振が起こる。レーザ光の一部は、出力結合ミラー147を透過して、ビームスプリッタ153に伝搬する。
【0052】
ビームスプリッタ153に進行したレーザ光のうちの一部は、ビームスプリッタ153で反射され、光センサ155で受光される。光センサ155は、受光したレーザ光のエネルギーEを計測し、エネルギーEを示す信号をレーザプロセッサ190に出力する。レーザプロセッサ190は、エネルギーEが所定の範囲内となった後、レーザ光の発光トリガTrの受信準備が完了したことを知らせる受信準備完了信号をレーザ加工プロセッサ310に送信する。
【0053】
その後、レーザ加工プロセッサ310は、発光トリガTrをレーザプロセッサ190に送信する。その結果、レーザプロセッサ190がシャッタ170を開け、シャッタ170を通過したレーザ光は、ガスレーザ装置100から出射して、レーザ加工装置300に入射する。このレーザ光Lbは、例えば、中心波長193.4nmのパルスレーザ光である。
【0054】
レーザ加工装置300に入射したレーザ光Lbは、高反射ミラー331a、アッテネータ332、高反射ミラー331b,331c、フライアイレンズ333、コンデンサレンズ334を介して、マスク335に照射される。このときレーザ光Lbはマスク335上にケーラ照明される。マスク335では、レーザ光Lbのうち、一部のレーザ光がマスクパターンを透過して複数のレーザ光Lvとなり、他の一部のレーザ光は遮蔽される。マスク335を透過した複数のレーザ光Lvは、投影光学系336のコリメータレンズ336aで平行光とされ、集光レンズ336bで被加工物20の上記結像位置にて結像する。
【0055】
複数のレーザ光Lvは、レーザ加工に必要な繰り返し周波数f及びパルス数Pで規定される発光トリガTrに従って、被加工物20に照射される。被加工物20の表面付近では、レーザ光Lvの照射によりアブレーションが発生し、欠陥が生じる。これにより、被加工物20に被加工部位が加工され、孔が形成される。本例では、被加工物20に複数の貫通孔が形成されるまで加工が行われる。
【0056】
被加工物20の一部において被加工部位が加工された後に、被加工物20の他の一部において別の被加工部位が加工される場合、レーザ加工プロセッサ310は、別の被加工部位に複数のレーザ光Lvを照射するため、新たな照射位置の座標X、座標Yをステージ350に設定する。ステージ350は、新たに設定された照射位置に複数のレーザ光Lvが照射されるように被加工物20と共にテーブル351を移動させる。その後、当該座標において、被加工物20にレーザ加工が行われる。別の被加工部位が形成されない場合は、レーザ加工は終了する。このような手順が、すべての被加工部位に対するレーザ加工が終了するまで繰り返される。
【0057】
2.3 課題
比較例のレーザ加工装置300では、上記のようにマスク335によりレーザ光Lbの一部が遮光される。このためレーザ光Lbの利用効率が低く、スループットが低かった。
【0058】
そこで、以下の実施形態では、エネルギー効率を改善し得るレーザ加工装置及びレーザ加工方法が例示される。
【0059】
3.実施形態1のレーザ加工システム及びレーザ加工方法の説明
次に、実施形態1のレーザ加工システム及びレーザ加工方法について説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0060】
3.1 構成
図4は、本実施形態のレーザ加工システム10の全体の概略構成例を示す模式図である。本実施形態のレーザ加工システム10では、光学システム330の構成が比較例における光学システム330の構成と異なる。本実施形態の光学システム330は、高反射ミラー331a,331b,331cと、アッテネータ332と、回折光学素子(DOE)341と、音響光学素子モジュール342と、集光光学系343と、アパーチャ344とを備えている。光学システム330の各構成は、それぞれ不図示のホルダに固定されており、筐体355内において所定の位置に配置されている。
【0061】
回折光学素子341は、高反射ミラー331cから入射するレーザ光Lbを回折して、複数のレーザ光Lvに分割して出射する。
図5は、複数のレーザ光Lvがアパーチャ344に入射する一例の様子を示す図である。回折光学素子341から出射する複数のレーザ光Lvのパターンは、
図5に示される複数のレーザ光Lvのパターンと同様である。
図5で示される例では、回折光学素子341は、複数のレーザ光LvをX方向に複数配列されると共にY方向に複数配列される正方格子状のマトリックスパターンとする。この例の正方格子は、5×5のパターンである。X方向は、複数のレーザ光Lvの照射方向に垂直な第1方向であり、Y方向は、複数のレーザ光Lvの照射方向及び第1方向に直交する第2方向である。
【0062】
音響光学素子モジュール342は、第1音響光学素子342aと、λ/2波長板342cと、第2音響光学素子342bと、第1電圧印加回路342dと、第2電圧印加回路342eと、を含む。
【0063】
第1電圧印加回路342dは、第1音響光学素子342aに所望の周波数の電圧を印加し、第2電圧印加回路342eは、第2音響光学素子342bに所望の周波数の電圧を印加する。また、第1電圧印加回路342d及び第2電圧印加回路342eは、レーザ加工プロセッサ310に電気的に接続されており、レーザ加工プロセッサ310からの信号により、第1音響光学素子342a及び第2音響光学素子342bに印加する電圧の大きさや、当該電圧の周波数を変化させることができる。
【0064】
第1音響光学素子342aには、回折光学素子341から出射する複数のレーザ光Lvが入射する。音響光学素子は、周期的な電圧が印加されると、光弾性効果により生じる屈折率の周期的な変化によるグレーティングにより出射する光の光路を変化させる。この光路の変化量は、印加される電圧の周波数により変化する。第1音響光学素子342aは、印加される電圧の周波数に応じて、出射する複数のレーザ光Lvの光路を第1方向に沿って変化させる。また、第2音響光学素子342bには、第1音響光学素子342aから出射する複数のレーザ光Lvが入射する。第2音響光学素子342bは、印加される電圧の周波数に応じて、複数のレーザ光Lvの光路を第2方向に沿って変化させる。第1音響光学素子342aが複数のレーザ光Lvの光路を第1方向に沿って変化させる変化量、及び、第2音響光学素子342bが当該光路を第2方向に沿って変化させる変化量は、それぞれ例えば0.01度から1.0度である。
【0065】
第1音響光学素子342aと第2音響光学素子342bとの間には、λ/2波長板342cが配置されている。従って、第1音響光学素子342aから出射するレーザ光Lvは、λ/2波長板342cを介して第2音響光学素子342bに入射する。λ/2波長板342cは、入射するレーザ光Lvの2つの偏光方向を90度回転させる。従って、第1音響光学素子342aに入射するレーザ光Lvの直線偏光の偏光方向と第1方向との関係と、第2音響光学素子342bに入射するレーザ光Lvの直線偏光の偏光方向と第2方向との関係と、を揃えることができる。従って、第1音響光学素子342aの特性と第2音響光学素子342bの特性とが同じであれば、第1音響光学素子342aと第2音響光学素子342bとに同様の周波数の電圧を印加する場合、第1音響光学素子342aから出射する複数のレーザ光Lvの第1方向への変化の仕方と、第2音響光学素子342bから出射する複数のレーザ光Lvの第2方向への変化の仕方とを揃えることができる。
【0066】
本実施形態の集光光学系343は、集光レンズ343aを備える。集光レンズ343aは、入射側の焦点面が概ね第2音響光学素子342bの出射面に位置し、出射側の焦点面が概ね被加工物20から所定の深さに位置するように配置されている。この所定の深さは、例えば、比較例における結像位置と同様である。
【0067】
アパーチャ344は、被加工物20と集光光学系343との間に配置されている。本例のアパーチャ344は、枠部材344aに形成されている開口であり、当該開口は、第1方向に延在する一対の辺と第2方向に延在する一対の辺とから成る四角形状である。
図5で示される例では、回折光学素子341で分割された複数のレーザ光Lvの全てがアパーチャ344を透過している。本例では、アパーチャ344を透過した複数のレーザ光Lvが、被加工物20に照射される。
【0068】
図6は、複数のレーザ光Lvがアパーチャ344に入射する他の一例の様子を示す図である。
図6の例では、複数のレーザ光Lvのうち一部のレーザ光Lvがアパーチャ344を透過し、他の一部のレーザ光Lvはアパーチャ344を透過せずに枠部材344aで遮蔽されている。
図6の例では、音響光学素子モジュール342を透過した複数のレーザ光Lvが、X方向とY方向とにシフトしている。具体的には、
図5に示す複数のレーザ光Lvが音響光学素子モジュール342を透過する場合と比べて、第1音響光学素子342aを透過する複数のレーザ光Lvの光路が第1方向に沿ったX方向に変化され、第2音響光学素子342bを透過する複数のレーザ光Lvの光路が第2方向に沿ったY方向に変化されている。この場合、第1電圧印加回路342dから第1音響光学素子342aに印加される電圧の周波数、及び、第2電圧印加回路342eから第2音響光学素子342bに印加される電圧の周波数は、
図5の状態におけるそれぞれの電圧の周波数と異なる。このシフト量は、レーザ加工プロセッサ310により定められる。つまり、レーザ加工プロセッサ310は、第1電圧印加回路342d及び第2電圧印加回路342eを制御して、アパーチャ344を透過する複数のレーザ光Lvのうち第1方向に配列される数及び第2方向に配列される数がそれぞれ所望の数となるよう、第1音響光学素子342a及び第2音響光学素子342bに印加される電圧の周波数をそれぞれ調節する。
【0069】
なお、レーザ加工プロセッサ310は、第1電圧印加回路342d及び第2電圧印加回路342eを制御して、被加工物20の位置に応じてアパーチャ344を透過する複数のレーザ光Lvの数が変化するよう、第1音響光学素子342a及び第2音響光学素子342bに印加される電圧の周波数をそれぞれ調節してもよい。例えば、被加工物20の加工位置がある特定の位置の場合、レーザ加工プロセッサ310は、
図5で示すように複数のレーザ光Lvがアパーチャ344を透過するように第1電圧印加回路342d及び第2電圧印加回路342eを制御する。また、テーブル351が移動して、被加工物20の加工位置が他の特定の位置の場合、レーザ加工プロセッサ310は、
図6で示すように複数のレーザ光Lvのうち一部のレーザ光Lvがアパーチャ344を透過し、他のレーザ光Lvがアパーチャ344を透過しないよう第1電圧印加回路342d及び第2電圧印加回路342eを制御する。このように、レーザ加工プロセッサ310は、第1電圧印加回路342d及び第2電圧印加回路342eを制御して、被加工物20の位置に応じて、アパーチャ344を透過する複数のレーザ光Lvの数が変化するよう、第1音響光学素子342a及び第2音響光学素子342bに印加される電圧の周波数をそれぞれ調節することができる。
【0070】
3.2 動作
次に、本実施形態におけるレーザ加工システム10の動作及びレーザ加工方法について説明する。
図7は、本実施形態におけるレーザ加工方法の工程を示すフローチャートである。
図7に示すように、本実施形態のレーザ加工方法は、テーブル移動工程SP11と、レーザ光出射工程SP12と、回折工程SP13と、第1光路変化工程SP14と、第2光路変化工程SP15と、集光工程SP16と、アパーチャ透過工程SP17と、照射工程SP18と、を含む。
【0071】
(テーブル移動工程SP11)
本工程は、被加工物20の所望の位置に複数のレーザ光Lvを照射するためにステージ350のテーブル351を移動する工程である。本工程において、レーザ加工プロセッサ310は、被加工物20の所望の位置が被加工部位となるよう、複数のレーザ光Lvを照射する照射位置の座標X、座標Y、座標Zをステージ350に設定する。この設定がなされると、ステージ350は、設定された照射位置に複数のレーザ光Lvが照射されるよう被加工物20を乗せたテーブル351を移動させる。テーブル351の移動が完了すると、ステージ350は、その旨を示す信号をレーザ加工プロセッサ310に送信する。こうして、テーブル移動工程SP11が完了する。
【0072】
(レーザ光出射工程SP12)
レーザ加工プロセッサ310は、テーブル351の移動が完了した旨の信号を受信すると、比較例での説明と同様にして、ガスレーザ装置100を制御する。このとき、レーザ加工プロセッサ310は、被加工物20における複数のレーザ光Lvを照射する照射位置の座標X、座標Y、座標Zに応じて、アパーチャ344を透過する複数のレーザ光LvのうちX方向である第1方向に配列される数及びY方向である第2方向に配列される数がそれぞれ所望の数となるようにする。具体的には、レーザ加工プロセッサ310は、第1電圧印加回路342d及び第2電圧印加回路342eを制御して、第1音響光学素子342a及び第2音響光学素子342bに印加される電圧の周波数をそれぞれ調節する。従って、ガスレーザ装置100からレーザ光Lbが出射する際には、第1音響光学素子342a及び第2音響光学素子342bに所望の周波数の電圧が印加される。またレーザ加工プロセッサ310は、アッテネータ332の透過率が所望の透過率となるように、比較例と同様にしてアッテネータ332を調節する。こうして、ガスレーザ装置100からレーザ光Lbが出射する準備が整った後、ガスレーザ装置100はレーザ光Lbを出射する。このレーザ光Lbはパルスレーザ光である。
【0073】
(回折工程SP13)
本工程は、回折光学素子341にレーザ光Lbを入射させて複数のレーザ光Lvに分割して出射させる工程である。レーザ光出射工程SP12でガスレーザ装置100から出射するレーザ光Lbは、高反射ミラー331a、アッテネータ332、高反射ミラー331b,331cの順に伝搬する。高反射ミラー331cで反射されるレーザ光Lbは、回折光学素子341に入射する。回折光学素子341に入射するレーザ光Lbは、回折光学素子341の回折パターンに従って、複数のレーザ光Lvに分割されて、回折光学素子341から出射する。このとき、回折光学素子341から出射する複数のレーザ光Lvのパターンは、
図5に示すマトリックスパターンである。
【0074】
(第1光路変化工程SP14)
本工程は、回折光学素子341からの複数のレーザ光Lvを第1音響光学素子342aに入射させ、第1音響光学素子342aから出射する複数のレーザ光Lvの光路を第1方向に沿って変化させる工程である。上記のようにガスレーザ装置100からレーザ光Lbが出射する時点で、第1音響光学素子342aには、所望の周波数の電圧が印加されている。従って、第1音響光学素子342aに入射する複数のレーザ光Lvは、この電圧の周波数に応じて光路が第1方向に沿って変化して、第1音響光学素子342aから出射する。
【0075】
(第2光路変化工程SP15)
本工程は、第1音響光学素子342aからの複数のレーザ光Lvを第2音響光学素子342bに入射させ、第2音響光学素子342bから出射する複数のレーザ光Lvの光路を第2方向に沿って変化させる工程である。なお、本工程の前に、第1音響光学素子342aから出射する複数のレーザ光Lvは、λ/2波長板342cを透過して、偏光方向が90度回転される。従って、第1音響光学素子342aから出射する複数のレーザ光Lvにおける第1方向に沿った直線偏光は、第2音響光学素子342bに入射する際に第2方向に沿った直線偏光となる。上記のようにガスレーザ装置100からレーザ光Lbが出射する時点で、第2音響光学素子342bには、所望の周波数の電圧が印加されている。従って、第2音響光学素子342bに入射する複数のレーザ光Lvは、この電圧の周波数に応じて光路が第2方向に沿って変化して、第2音響光学素子342bから出射する。
【0076】
なお、
図5に示すように、複数のレーザ光Lvの全てがアパーチャ344を透過する場合であっても、第1電圧印加回路342d及び第2電圧印加回路342eに所望の周波数の電圧が印加されることが好ましい。従って、この場合であっても、第1音響光学素子342a及び第2音響光学素子342bにおいて、光路が変化される。このように所望の周波数の電圧が印加されることで、当該電圧の周波数を微調整することにより、アパーチャ344を透過して被加工物20に照射される複数のレーザ光Lvの照射位置の微調整が容易となる。つまり、被加工物20に複数のレーザ光Lvが照射される際には、常に、第1電圧印加回路342d及び第2電圧印加回路342eに所望の周波数の電圧が印加され、第1音響光学素子342a及び第2音響光学素子342bにおいて、光路が変化されることが好ましい。
【0077】
(集光工程SP16)
本工程は、複数のレーザ光Lvを集光する工程である。第1音響光学素子342aから出射する複数のレーザ光Lvは、λ/2波長板342c及び第2音響光学素子342bを介して、集光光学系343に入射する。本実施形態の集光光学系343は集光レンズ343aから成るため、第2音響光学素子342bからの複数のレーザ光Lvは、集光レンズ343aを透過する。集光レンズ343aを透過する複数のレーザ光Lvは、集光レンズ343aの開口数に応じて集光する。
【0078】
(アパーチャ透過工程SP17)
本工程は、集光工程SP16で集光される複数のレーザ光Lvをアパーチャ344を透過させる工程である。全てのレーザ光Lvがアパーチャ344を透過するよう第1電圧印加回路342d及び第2電圧印加回路342eが制御される場合には、
図5に示すように、アパーチャ344内に全てのレーザ光Lvが入射して、アパーチャ344を透過する。一方、一部のレーザ光Lvがアパーチャ344を透過し、他の一部のレーザ光Lvがアパーチャ344を透過しない場合には、例えば、
図6に示すように、一部のレーザ光Lvのみがアパーチャ344に入射してアパーチャ344を透過し、他の一部のレーザ光Lvは、枠部材344aで遮蔽される。この場合、レーザ加工プロセッサ310は、第1光路変化工程SP14及び第2光路変化工程SP15では、アパーチャ344を透過する複数のレーザ光Lvのうち第1方向に配列される数及び第2方向に配列される数がそれぞれ所望の数となるよう、第1音響光学素子342a及び第2音響光学素子342bに印加される電圧の周波数をそれぞれ調節する。
【0079】
(照射工程SP18)
本工程は、集光工程SP16で集光された複数のレーザ光Lvを被加工物20に照射する工程である。集光工程SP16で集光された複数のレーザ光Lvは、それぞれのレーザ光Lvのスポット径が小さくなると共に、レーザ光Lv間の距離が小さくなる。このように集光された複数のレーザ光Lvが被加工物20に照射される。照射されるレーザ光Lvは、レーザ光Lbがパルスレーザ光であるためパルスレーザ光である。それぞれの照射位置において、被加工物20がアブレーションされて孔が形成される。被加工物20がインターポーザ502となる基板である場合には、この孔が貫通孔となるまで本工程が行われ、その後、貫通孔の内部に導電体が配置される。なお、被加工物20に形成される孔は、貫通孔に限定されない。
【0080】
照射工程SP18が完了すると、他の被加工部位が存在する場合には、テーブル移動工程SP11に戻り、他の被加工部位が存在しない場合には、レーザ加工を終了する。なお、ある被加工部位に上記レーザ加工方法により孔を形成する場合には、例えば、
図5に示すように全てのレーザ光Lvがアパーチャ344を透過して被加工物20に照射され、他の被加工部位に移動した際には、
図6に示すように一部のレーザ光Lvがアパーチャ344を透過して被加工物20に照射され、他の一部のレーザ光Lvが枠部材344aで遮蔽されてもよい。この場合、レーザ加工プロセッサ310は、第1電圧印加回路342d及び第2電圧印加回路342eを制御して、被加工物20の位置に応じて、アパーチャ344を透過する複数のレーザ光Lvの数が変化するよう、第1音響光学素子342a及び第2音響光学素子342bに印加される電圧の周波数をそれぞれ調節する。
【0081】
3.3 作用・効果
以上説明したように、本実施形態のレーザ加工装置300は、被加工物20に照射される複数のレーザ光Lvのそれぞれの照射位置に孔を形成するレーザ加工装置であって、入射するレーザ光Lbを複数のレーザ光Lvに分割して出射する回折光学素子341と、回折光学素子341から複数のレーザ光Lvが入射し、印加される電圧の周波数に応じて出射する複数のレーザ光Lvの光路を複数のレーザ光Lvの照射方向に垂直な第1方向に沿って変化させる第1音響光学素子342aと、第1音響光学素子342aに所望の周波数の電圧を印加する第1電圧印加回路342dと、第1音響光学素子342aから出射する複数のレーザ光Lvを集光して被加工物20に照射する集光光学系343と、第1電圧印加回路342dを制御して、第1音響光学素子342aに印加される電圧の周波数を調節するレーザ加工プロセッサ310と、を備える。
【0082】
また、本実施形態のレーザ加工方法は、被加工物20に照射される複数のレーザ光Lvのそれぞれの照射位置に孔を形成するレーザ加工方法であって、回折光学素子341にレーザ光Lbを入射させて複数のレーザ光Lvに分割して出射させる回折工程SP13と、回折光学素子341からの複数のレーザ光Lvを第1音響光学素子342aに入射させると共に、第1音響光学素子342aに所望の周波数の電圧を印加して、第1音響光学素子342aから出射する複数のレーザ光Lvの光路を印加される電圧の周波数に応じて複数のレーザ光Lvの照射方向に垂直な第1方向に沿って変化させる第1光路変化工程SP14と、第1音響光学素子342aから出射する複数のレーザ光Lvを集光する集光工程SP16と、集光された複数のレーザ光Lvを被加工物20に照射する照射工程SP18と、を備える。
【0083】
このようなレーザ加工装置300及びレーザ加工方法によれば、回折光学素子341によりレーザ光Lbを複数のレーザ光Lvに分割するため、比較例のようにマスク335を用いてレーザ光Lbを複数のレーザ光Lvに分割する場合と比べて遮蔽されるレーザ光が少ない。従って、本実施形態のレーザ加工装置300によれば、エネルギー効率を改善し得る。また、テーブル351を移動せずとも、第1音響光学素子342aに印加される電圧の周波数を調節することで、レーザ光Lvの照射位置を調節することができる。このため、レーザ光Lvの照射位置の調節を短時間に行い得る。
【0084】
また、本実施形態のレーザ光Lbはパルスレーザ光である。このため、被加工物20に照射される複数のレーザ光Lvのエネルギーの尖塔値を高め得、孔を効率よく形成し得る。なお、レーザ光Lbは連続光であっても良い。
【0085】
また、本実施形態のレーザ加工装置300は、第1音響光学素子342aからの複数のレーザ光Lvが入射し、印加される電圧の周波数に応じて出射する複数のレーザ光Lvの光路を複数のレーザ光Lvの照射方向及び第1方向に直交する第2方向に沿って変化させる第2音響光学素子342bと、第2音響光学素子342bに所望の周波数の電圧を印加する第2電圧印加回路342eと、を更に備える。そして、レーザ加工プロセッサ310は、第2電圧印加回路342eを制御して、第2音響光学素子342bに印加される電圧の周波数を調節し、第1音響光学素子342aから出射する複数のレーザ光Lvは第2音響光学素子342bを介して集光光学系343に入射する。また、本実施形態のレーザ加工方法は、第1音響光学素子342aからの複数のレーザ光Lvを第2音響光学素子342bに入射させると共に、第2音響光学素子342bに所望の周波数の電圧を印加して、第2音響光学素子342bから出射する複数のレーザ光Lvの光路を印加される電圧の周波数に応じて複数のレーザ光Lvの照射方向及び第1方向に直交する第2方向に沿って変化させる第2光路変化工程SP15を更に備え、集光工程SP16では、第1音響光学素子342aから第2音響光学素子342bを介して出射する複数のレーザ光Lvを集光する。
【0086】
このように複数のレーザ光Lvの光路を第2方向に沿って変化させる第2音響光学素子342bを含むことで、複数のレーザ光Lvの被加工物20への照射位置を第1方向と第2方向とを含む2次元に変化させることができる。なお、複数のレーザ光Lvの被加工物20への照射位置を2次元に変化させず1次元で変化させる場合には、レーザ加工装置300は第2音響光学素子342b及び第2電圧印加回路342eを備えなくてもよく、レーザ加工方法は第2光路変化工程SP15を備えなくてもよい。
【0087】
更に、本実施形態のレーザ加工装置300は、第1音響光学素子342aと第2音響光学素子342bとの間にλ/2波長板342cが配置され、第1音響光学素子342aからのレーザ光Lvはλ/2波長板342cを介して第2音響光学素子342bに入射する。このため、第1音響光学素子342aに入射するレーザ光Lvの第1方向に対する直線偏光の偏光方向と、第2音響光学素子342bに入射するレーザ光Lvの第2方向に対する直線偏光の偏光方向とを揃えることができる。従って、第1音響光学素子342aに印加する電圧の周波数に対する複数のレーザ光Lvの光路の変化の度合いと、第2音響光学素子342bに印加する電圧の周波数に対する複数のレーザ光Lvの光路の変化の度合いとを揃えやすくすることができ、レーザ光Lvの光路の第1方向及び第2方向への変化のコントロールを容易にし得る。なお、第2音響光学素子342bが設けられる場合であっても、λ/2波長板342cは必須の構成ではない。
【0088】
また本実施形態のレーザ加工装置300は、集光光学系343から出射する複数のレーザ光Lvが透過し、第1方向に延在する一対の辺と第2方向に延在する一対の辺とから成る四角形状のアパーチャ344を更に備え、回折光学素子341は、複数のレーザ光Lvを第1方向に複数配列されると共に第2方向に複数配列される正方格子状に出射し、レーザ加工プロセッサ310は、第1電圧印加回路342d及び第2電圧印加回路342eを制御して、アパーチャ344を透過する複数のレーザ光Lvのうち第1方向に配列される数及び第2方向に配列される数がそれぞれ所望の数となるよう、第1音響光学素子342a及び第2音響光学素子342bに印加される電圧の周波数をそれぞれ調節する。また、本実施形態のレーザ加工方法は、集光工程SP16で集光される複数のレーザ光Lvを、第1方向に延在する一対の辺と第2方向に延在する一対の辺とから成る四角形状のアパーチャ344を透過させるアパーチャ透過工程SP17を更に備える。回折工程SP13では、回折光学素子341から複数のレーザ光Lvを第1方向に複数配列されると共に第2方向に複数配列される正方格子状に出射させ、第1光路変化工程SP14及び第2光路変化工程SP15では、アパーチャ344を透過する複数のレーザ光Lvのうち第1方向に配列される数及び第2方向に配列される数がそれぞれ所望の数となるよう、第1音響光学素子342a及び第2音響光学素子342bに印加される電圧の周波数をそれぞれ調節する。
【0089】
このようなレーザ加工装置300及びレーザ加工方法によれば、マトリックス状に整列された孔を形成することができる。また、アパーチャ344を移動させずとも、アパーチャ344を透過するレーザ光Lvの第1方向の数や第2方向の数を調節することができ、短時間にアパーチャ344を透過するレーザ光Lvの数を変化させ得る。なお、常に複数のレーザ光Lvの全てを被加工物20に照射する場合は、アパーチャ344が無くてもよい。この場合、例えば、5×5の正方格子状に複数のレーザ光Lvを被加工物20に照射して複数の孔を形成した後、第1方向に複数のレーザ光Lvの光路を変化させて、形成された複数の孔と隣り合うように再び5×5の正方格子状に複数の孔を形成することで、5×10の孔を形成し得る。
【0090】
なお、アパーチャ344の形状は四角形でなくてもよい。例えば、アパーチャ344の形状は三角形等や円形であってもよい。アパーチャ344の形状が三角形である場合、回折光学素子341から出射する複数のレーザ光Lvは三角格子状に配列されることが、アパーチャ344を透過するレーザ光Lvの数をコントロールしやすい観点から好ましい。このようにアパーチャ344が四角形以外の場合であっても、レーザ加工プロセッサ310は、第1電圧印加回路342dを制御して、アパーチャ344を透過する複数のレーザ光Lvの数が所望の数となるよう第1音響光学素子342aに印加される電圧の周波数を調節する。なお、この場合、レーザ加工プロセッサ310は、更に、第2電圧印加回路342eを制御して、アパーチャ344を透過する複数のレーザ光Lvの数が所望の数となるよう第2音響光学素子342bに印加される電圧の周波数を調節してもよい。
【0091】
また、本実施形態のレーザ加工装置300は、被加工物20が配置され、第1方向及び第2方向に移動可能なテーブル351を備え、レーザ加工プロセッサ310は、第1電圧印加回路342d及び第2電圧印加回路342eを制御して、被加工物20の位置に応じて、アパーチャ344を透過する複数のレーザ光Lvの数が変化するよう、第1音響光学素子342a及び第2音響光学素子342bに印加される電圧の周波数をそれぞれ調節する。また、本実施形態のレーザ加工方法は、被加工物20が配置されるテーブル351を第1方向及び第2方向に移動するテーブル移動工程SP11を更に備え、第1光路変化工程SP14及び第2光路変化工程SP15では、被加工物20の位置に応じて、アパーチャ344を透過する複数のレーザ光Lvの数が変化するよう、第1音響光学素子342a及び第2音響光学素子342bに印加される電圧の周波数をそれぞれ調節する。
【0092】
比較例の場合、マスク335を交換しない限り、被加工物20に照射される複数のレーザ光Lvの数を変えることはできない。しかし、本実施形態のレーザ加工装置300及びレーザ加工方法によれば、アパーチャ344の位置を移動させなくてもアパーチャ344を透過するレーザ光Lvの数をコントロールできるため、被加工物20に照射される複数のレーザ光Lvの数を短時間に変えることができる。
【0093】
4.実施形態2のレーザ加工システム及びレーザ加工方法の説明
次に、実施形態2のレーザ加工システム10及びレーザ加工方法について説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0094】
4.1 構成
図8は、本実施形態におけるレーザ加工装置300の概略構成例を示す模式図である。本実施形態のレーザ加工装置300は、アパーチャ344と被加工物20との間に転写光学系345が配置される点において、実施形態1のレーザ加工装置300と異なる。
図8の例では、転写光学系345は、転写用レンズ345aから成る。本実施形態では、集光光学系343の焦点面がアパーチャ344に位置する。また、転写光学系345は、入射側の焦点面がアパーチャ344に位置し、出射側の焦点面が概ね被加工物20から所定の深さに位置するように配置されている。
【0095】
4.2 動作
次に、本実施形態におけるレーザ加工システム10の動作及びレーザ加工方法について説明する。本実施形態では、集光光学系343から出射してアパーチャ344を透過した複数のレーザ光Lvは、転写光学系345の転写用レンズ345aの入射面に集光し、転写用レンズ345aを透過する。転写用レンズ345aを透過する複数のレーザ光Lvは、転写された状態で被加工物20に照射される。従って、本実施形態のレーザ加工方法は、
図7に示すフローチャートにおいて、アパーチャ透過工程SP17と照射工程SP18との間に、転写工程が入ると理解することができる。
【0096】
4.3 作用・効果
本実施形態のレーザ加工装置300及びレーザ加工方法では、アパーチャ344と被加工物20との間に配置された転写光学系345を備え、集光光学系343から出射する複数のレーザ光Lvは、転写光学系345を介して、被加工物20に照射される。このため、被加工物20とアパーチャ344との距離を確保することができ、アパーチャ344が被加工物20に近づきすぎることにより不具合が生じることを抑制し得る。
【0097】
5.実施形態3のレーザ加工システム及びレーザ加工方法の説明
次に、実施形態3のレーザ加工システム10及びレーザ加工方法について説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。なお、本実施形態におけるレーザ加工システム10の概略構成は実施形態1又は実施形態2のレーザ加工システム10と同様である。
【0098】
5.1 動作
図9は、本実施形態におけるレーザ加工の様子を示す図である。なお、
図9では、アパーチャ344が示されているが、枠部材344aは省略されている。
図9では、
図5で示すレーザ加工の様子と同様にして、アパーチャ344を全てのレーザ光Lvが透過している。ただし、それぞれのレーザ光Lvのアパーチャ344に対する位置が
図5で示すそれぞれのレーザ光Lvのアパーチャ344に対する位置よりも-X方向にずれている。
【0099】
図10は、
図9で示すレーザ加工より後におけるレーザ加工の様子を示す図である。理解の容易のために、
図9、
図10において被加工物20の特定の位置を示すバツ印を記す。
図9、
図10に示すように、バツ印は
図9に示す状態よりも
図10に示す状態の方がX方向にずれている。つまり、本実施形態では、それぞれのレーザ光Lvがアパーチャ344を透過して被加工物20に照射される期間においても、レーザ加工プロセッサ310は、ステージ350を制御して、テーブル351を移動させている。本例では、テーブル351を第1方向であるX方向に移動させている。
【0100】
また、
図10では、
図9で示すレーザ加工の様子よりもそれぞれのレーザ光Lvのアパーチャ344の透過位置がX方向にずれている。このずれ方は、
図9と
図10とのバツ印のずれ方と同じであり、
図9で示すバツ印とそれぞれのレーザ光Lvの照射位置との相対的位置関係は、
図9で示す当該相対的位置関係と同様である。つまり、本実施形態では、被加工物20の移動に伴い、複数のレーザ光Lvの被加工物20におけるそれぞれの照射位置が変化しないよう、複数のレーザ光Lvの照射位置を移動させている。このように複数のレーザ光Lvの照射位置を移動させるため、レーザ加工プロセッサ310は、テーブル351の移動中に第1電圧印加回路342dを制御して、第1音響光学素子342aに印加する電圧の周波数を変化させる。この周波数の変化により、第1音響光学素子342aから出射する複数のレーザ光Lvの光路は、周波数の変化分だけ第1方向に変化する。このような動作のため、本実施形態では、
図7に示すフローチャートのレーザ光出射工程SP12から照射工程SP18の間、テーブル移動工程SP11が行われている。
【0101】
なお、
図9、
図10に示すように、被加工部位がマトリックス状に広がり、アパーチャ344を一度に透過する複数のレーザ光Lvの範囲を超えている場合がある。この場合、最もX方向側のレーザ光Lvがアパーチャ344を透過することができなくなる寸前に、レーザ加工プロセッサ310は、第1電圧印加回路342dを制御して、第1音響光学素子342aに印加する電圧の周波数を変化させ、レーザ光Lvの1列分だけ-X方向に複数のレーザ光Lvを移動させる。このため、アパーチャ344に対する複数のレーザ光Lvの透過位置は再び
図9に示す状態となる。この間も被加工物20は、X方向に移動し続ける。
【0102】
なお、上記のようにレーザ光Lvはパルスレーザ光であり、被加工物20におけるそれぞれの照射位置に複数回のパルスレーザ光が照射されることが、効率よく被加工物20を加工する観点から好ましい。また、パルスレーザ光が出射する期間と次にパルスレーザ光が出射する期間との間において、上記のように複数のレーザ光Lvをレーザ光Lvの1列分だけ-X方向に移動させることが好ましい。
【0103】
5.2 作用・効果
本実施形態のレーザ加工装置300においては、レーザ加工プロセッサ310が、テーブル351を第1方向に移動させながら、第1電圧印加回路342dを制御して、複数のレーザ光Lvの被加工物20におけるそれぞれの照射位置が変化しないよう、テーブル351の移動に同期して第1電圧印加回路342dから第1音響光学素子342aに印加される電圧の周波数を変化させる。また、本実施形態のレーザ加工方法は、第1光路変化工程SP14では、テーブル351を移動させながら、複数のレーザ光Lvの被加工物20におけるそれぞれの照射位置が変化しないよう、テーブル351の移動に同期して第1音響光学素子342aに印加する電圧の周波数を変化させる。
【0104】
このようなレーザ加工装置300及びレーザ加工方法によれば、被加工物20を止めなくても、広範囲に孔を形成することができる。例えば、比較例において、広範囲に孔を形成する場合、テーブル351を移動させた後に停止させてからレーザ加工を行い、このレーザ加工がおこなわれた部位と異なる部位にレーザ加工を行う場合、再びテーブル351を移動させた後に停止させてからレーザ加工を行う必要がある。このようにテーブル351の移動と停止とを繰り返すたびに時間を要する。しかし、本実施形態のレーザ加工装置300及びレーザ加工方法によれば、比較例の場合と比べて、テーブル351の停止を減らすことができ、広範囲に孔をあける場合のレーザ加工時間を短縮することができる。
【0105】
なお、本実施形態では、被加工物20を第2方向に移動していない。従って、本実施形態のレーザ加工装置300は、第2音響光学素子342b及び第2電圧印加回路342eを備えていなくてもよく、本実施形態のレーザ加工方法は、第2光路変化工程SP15を備えていなくてもよい。
【0106】
また、本実施形態のレーザ加工装置300及びレーザ加工方法では、第1電圧印加回路342dを制御し、被加工物20におけるそれぞれの照射位置に複数回のパルスレーザ光が照射されるよう、第1電圧印加回路342dから第1音響光学素子342aに印加される電圧の周波数が変化される。従って、パルスレーザ光が1回のみ被加工物20に照射される場合よりも効率よく被加工物20を加工し得る。なお、レーザ光Lvの1列分だけ-X方向に複数のレーザ光Lvが移動し、次にレーザ光Lvの1列分だけ-X方向に複数のレーザ光Lvが移動する間に複数回のパルスレーザ光が照射されることがより好ましい。
【0107】
また、本実施形態のレーザ加工装置300及びレーザ加工方法では、回折光学素子341は、複数のレーザ光Lvを第1方向及び第2方向にそれぞれ複数配列される正方格子状に出射し、アパーチャ344内において複数のレーザ光Lvの被加工物20におけるそれぞれの照射位置が変化しないよう、テーブル351の移動に同期して第1電圧印加回路342dから第1音響光学素子342aに印加される電圧の周波数が変化される。従って、アパーチャ344を備えない場合と比べて、被加工物20に不要な光が入射されて意図しない加工がなされることを抑制し得る。
【0108】
なお、本実施形態のレーザ加工装置300は、アパーチャ344を備えていなくてもよく、本実施形態のレーザ加工方法は、アパーチャ透過工程SP17を備えていなくてもよい。レーザ加工装置300がアパーチャ344を備えない場合、ある特定の距離だけ被加工物20が移動したら、レーザ加工プロセッサ310は、第1音響光学素子342aに印加する電圧の周波数を変化させ、レーザ光Lvの1列分だけ-X方向に複数のレーザ光Lvを移動させる。
【0109】
以上本発明について、実施形態を例に説明をしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、複数のレーザ光Lvの数やパターンは上記実施形態に限定されない。また、レーザ加工装置300に入射するレーザ光Lbはガスレーザ装置100からのレーザ光に限定されず、例えば、固体レーザ装置からのレーザ光であってもよい。また、被加工物20は、インターポーザ502となる基板に限定されず他の部材であってもよい。
【0110】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。従って、請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかである。また、本開示の実施形態を組み合わせて使用することも当業者には明らかである。
本明細書及び請求の範囲全体で使用される用語は、明記が無い限り「限定的でない」用語と解釈されるべきである。たとえば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、不定冠詞「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきである。さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。