(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-16
(45)【発行日】2025-09-25
(54)【発明の名称】ハロゲン化リチウム化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01D 15/04 20060101AFI20250917BHJP
【FI】
C01D15/04
(21)【出願番号】P 2022526960
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 JP2021019234
(87)【国際公開番号】W WO2021241405
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2020092746
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井関 勇介
(72)【発明者】
【氏名】中川 貴史
(72)【発明者】
【氏名】岩井 豊彦
【審査官】三村 潤一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/159665(WO,A1)
【文献】特開2003-073454(JP,A)
【文献】特表2005-502165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01D 15/04
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫化リチウムと、臭素及びヨウ素の少なくとも一方のハロゲン分子と、
第二の溶媒と、を混合すること、さらに第一の溶媒
を添加して混合すること、及び
前記第一の溶媒
及び前記第二の溶媒を除去すること、
を含み、
前記第一の溶媒が前記ハロゲン分子のハロゲン元素を含むハロゲン化リチウムを溶解する溶媒であ
り、前記第一の溶媒の前記ハロゲン化リチウムの溶解度(20℃)が1g/L以上であり、
前記第二の溶媒が前記ハロゲン分子のハロゲン元素を含むハロゲン化リチウムを溶解しない溶媒であり、前記第二の溶媒の前記ハロゲン化リチウムの溶解度(20℃)が1g/L未満である、
ハロゲン化リチウム化合物の製造方法。
【請求項2】
前記第二の溶媒は、臭化リチウム及びヨウ化リチウムの溶解度
(20℃)が1g/L未満のものである請求項
1に記載のハロゲン化リチウム化合物の製造方法。
【請求項3】
前記第二の溶媒が、芳香族炭化水素及び脂肪族炭化水素から選ばれる少なくとも一種である請求項
1又は2に記載のハロゲン化リチウム化合物の製造方法。
【請求項4】
前記第二の溶媒が、沸点が150℃以下のものである請求項
1~3のいずれか1項に記載のハロゲン化リチウム化合物の製造方法。
【請求項5】
さらに、第三の溶媒を用いて、硫黄分子を洗浄し、除去することを含み、前記第二の溶媒と前記第三の溶媒とが同一である、請求項
1~4のいずれか1項に記載のハロゲン化リチウム化合物の製造方法。
【請求項6】
さらに、硫黄分子を洗浄し、除去することを含む請求項
1~5のいずれか1項に記載のハロゲン化リチウム化合物の製造方法。
【請求項7】
前記洗浄し、除去することにおいて、第三の溶媒を用いる請求項
6に記載のハロゲン化リチウム化合物の製造方法。
【請求項8】
前記第三の溶媒の除去をろ過及び減圧下の加熱から選ばれる少なくとも一種の処理により行う請求項
5又は7に記載のハロゲン化リチウム化合物の製造方法。
【請求項9】
前記第三の溶媒が、硫黄分子の溶解度
(25℃)が0.1g/L以上のものである請求項
7又は8に記載のハロゲン化リチウム化合物の製造方法。
【請求項10】
前記第三の溶媒が、芳香族炭化水素及び脂肪族炭化水素から選ばれる少なくとも一種である請求項
7~9のいずれか1項に記載のハロゲン化リチウム化合物の製造方法。
【請求項11】
前記ハロゲン化リチウム化合物が、ハロゲン化リチウム錯体を含む、請求項
1~10のいずれか1項に記載のハロゲン化リチウム化合物の製造方法。
【請求項12】
前記第一の溶媒は、臭化リチウム及びヨウ化リチウムの溶解度
(20℃)が1g/L以上のものである請求項
1~11のいずれか1項に記載のハロゲン化リチウム化合物の製造方法。
【請求項13】
前記第一の溶媒が、エステル基、エーテル基及びアミノ基から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する非プロトン溶媒である請求項
1~12のいずれか1項に記載のハロゲン化リチウム化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化リチウム化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年におけるパソコン、ビデオカメラ、及び携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。従来、このような用途に用いられる電池において可燃性の有機溶媒を含む電解液が用いられていたが、電池を全固体化することで、電池内に可燃性の有機溶媒を用いず、安全装置の簡素化が図れ、製造コスト、生産性に優れることから、電解液を固体電解質層に換えた電池の開発が行われている。
【0003】
固体電解質層に用いられる固体電解質として、従来から硫化物固体電解質が知られており、例えば硫化リチウムと硫化リンとを反応させて硫化物ガラスを製造し、この硫化物ガラスに熱処理を施すことで、高いイオン伝導度を有するガラスセラミクス電解質が得られることが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、より高いイオン伝導度の要請に伴い、ハロゲン原子を含む硫化物固体電解質として、ハロゲン化リチウムを用いた製造方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
ハロゲン原子を含む硫化物固体電解質の製造に原料として用いられるハロゲン化リチウムは、合成過程で水溶液の原料を使用する、あるいは水中で反応させることから、水和物として製造されることが一般的である(例えば、特許文献3及び4参照)。ハロゲン化リチウムが水分を含んでいると硫化物固体電解質のイオン伝導度が低くなるおそれがあるため、ハロゲン化リチウムから水分を除去する必要があり、有機溶媒と共沸、乾燥させて除去する方法(例えば、特許文献4参照)、また減圧化で加温することにより水分を除去する方法(例えば、特許文献5及び6参照)等が検討されている。しかし、いずれにしても、ハロゲン化リチウム水和物からの水分の除去は容易ではない。
【0005】
そのため、水分の除去を行うことなく、無水物のハロゲン化リチウム等のハロゲン化リチウムを製造する方法についての検討が行われている。例えば、硫化アルカリ金属が溶解しにくい芳香族炭化水素等の溶媒中で、粉砕機を用いながら硫化リチウムとハロゲン分子とを反応させる方法が開示されている(例えば、特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-228570号公報
【文献】特開2013-201110号公報
【文献】特開2013-103851号公報
【文献】特開2013-256416号公報
【文献】特開2014-65637号公報
【文献】特開2014-65638号公報
【文献】国際公開第2017/159665号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、水分を直接除去する工程を伴わずに水分量が少ないハロゲン化リチウム化合物、中でも臭化リチウム、ヨウ化リチウムを、高い反応効率で、また工業的にも有利に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るハロゲン化リチウム化合物の製造方法は、
硫化リチウムと、臭素及びヨウ素の少なくとも一方のハロゲン分子と、第一の溶媒と、を混合すること、及び
前記溶媒を除去すること、
を含み、
前記第一の溶媒が前記ハロゲン分子のハロゲン元素を含むハロゲン化リチウムを溶解する溶媒である、
ハロゲン化リチウム化合物の製造方法、である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水分を直接除去する工程を伴わずに水分量が少ないハロゲン化リチウム化合物、中でも臭化リチウム及びヨウ化リチウムを、高い反応効率で、また工業的にも有利に製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1で用いた硫化リチウム、及び実施例1で得られたヨウ化リチウムのX線回折スペクトルである。
【
図2】実施例2で得られたハロゲン化リチウム錯体及びヨウ化リチウムのX線回折スペクトルである。
【
図3】実施例3で得られた臭化リチウム及びヨウ化リチウムのX線回折スペクトルである。
【
図4】実施例4で得られたヨウ化リチウム錯体及びヨウ化リチウムのX線回折スペクトルである。
【
図5】実施例5で得られたヨウ化リチウムのX線回折スペクトルである。
【
図6】比較例1で得られた試料のSEM(走査型電子顕微鏡)画像である。
【
図7】比較例1で得られた試料を構成する硫黄元素のEDS画像である。
【
図8】比較例1で得られた試料を構成するヨウ素元素のEDS画像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と称することがある。)について説明する。なお、本明細書において、「以上」、「以下」、「~」の数値範囲に係る上限及び下限の数値は任意に組み合わせできる数値であり、また実施例の数値を上限及び下限の数値として用いることもできる。
【0012】
(本発明に至るために本発明者が得た知見)
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、下記の事項を見出し、本発明を完成するに至った。
特許文献7の段落〔0013〕に記載されるように、硫化アルカリ金属とハロゲン分子とを反応させる際に、粉砕機を用いて硫化アルカリ金属を粉砕する手法を採用することで、硫化アルカリ金属の表面が削られ、ハロゲン分子は反応しやすくなることが知られている。一方で当該手法は、反応促進のためには粉砕機を使用することを前提としているため、粉砕機を使用しない場合は、反応が著しく滞ってしまう。この事象について本発明者らが鋭意調査したところ、その原因が、硫化アルカリ金属とハロゲン分子とが一次的に反応した反応物であるハロゲン化リチウムが硫化アルカリ金属表面上に析出してしまうことによるものであることが判明した。
【0013】
そこで、本発明者らは、粉砕機を使用しない、又は極力使用することを低減させる手法として、生成したハロゲン化リチウムを溶媒に溶解させることにより、硫化リチウムの新生面を露出させ、ハロゲン分子との反応を促進させることができるのではないかと考え、溶媒種の変更を検討した。
使用する溶媒に求められる性状としては、硫化アルカリ金属表面上におけるハロゲン化リチウムの析出を低減させるため、ハロゲン化リチウム、特に臭化リチウム、ヨウ化リチウムを溶解させる性状が重要である。一方、臭化リチウム及びヨウ化リチウムを溶解することのできる溶媒は、固体であるヨウ素を溶解しにくいことが経験的に分かっているため、特にヨウ素を溶解する溶媒を用いることを検討した。
以上の検討に基づき、溶媒としてハロゲン化リチウムを溶解する溶媒を選択し、当該溶媒下において硫化リチウム及びハロゲン分子を混合させることで、粉砕機を使用しなくとも硫化リチウム及びハロゲン分子の反応が滞ることなく進むことを見出すに至った。
【0014】
〔ハロゲン化リチウム化合物の製造方法〕
本実施形態の第一の態様に係るハロゲン化リチウム化合物の製造方法は、
硫化リチウムと、臭素及びヨウ素の少なくとも一方のハロゲン分子と、第一の溶媒と、を混合すること、及び
前記第一の溶媒を除去すること、
を含み、
前記第一の溶媒が前記ハロゲン分子のハロゲン元素を含むハロゲン化リチウムを溶解する溶媒である、
ハロゲン化リチウム化合物の製造方法である。
【0015】
上記特許文献7には、硫化アルカリ金属が溶解しにくい芳香族炭化水素等の溶媒中で、硫化リチウムとハロゲン分子とを反応させることで、水分の除去を行うことなく、無水物のハロゲン化リチウム等のハロゲン化リチウムを製造できる。この点で、上記の特許文献3~6に記載の従来法に比べて、容易にハロゲン化リチウムを製造することが可能となる。しかし、既述のように、粉砕機を用いることを前提としており、量産性に乏しいことから工業的に有利な方法とはいえない。これに加えて、粉砕機を用いない場合はハロゲン化リチウムが硫化アルカリ金属表面上に析出し、反応が著しく滞ってしまうという問題があった。
【0016】
第一の態様によれば、溶媒として、原料として使用するハロゲン分子に対応したハロゲン化リチウムを溶解する溶媒を採用することにより、硫化リチウムとハロゲン分子との反応により得られ、その結果、硫化リチウム表面に析出するハロゲン化リチウムを溶媒に溶解させることにより、硫化リチウムの表面におけるハロゲン化リチウムの析出を抑制し、常に新生面が露出した硫化リチウムとハロゲン分子との反応を生じさせて当該反応を促進させることを可能とした。また、当該反応の促進により、硫化リチウムとハロゲン分子との反応を、粉砕せず、混合するだけで進行させることができるため、粉砕が不要となり、工業的に有利な製造方法となる。
【0017】
また、第一の態様において、原料として用いるハロゲン分子のハロゲン元素と、第一の溶媒が溶解し得るハロゲン化リチウムにおけるハロゲン元素と、得られるハロゲン化リチウム化合物におけるハロゲン元素とは、各々対応するものである、すなわち同じ元素である。
ハロゲン分子として臭素を用いる場合は、第一の溶媒が溶解し得るハロゲン化リチウムは臭化リチウムであり、得られるハロゲン化リチウム化合物は臭化リチウム化合物である。ハロゲン分子としてヨウ素を用いる場合も、臭素分子と同様である。また、ハロゲン分子として臭素及びヨウ素原子を用いる場合、第一の溶媒が溶解するハロゲン化リチウムは臭化リチウム及びヨウ化リチウムであり、得られるハロゲン化リチウム化合物は臭化リチウム化合物及びヨウ化リチウム化合物となる。
【0018】
本実施形態の第二の態様に係るハロゲン化リチウム化合物の製造方法は、
硫化リチウムと、ハロゲン分子と、第二の溶媒と、を混合すること、
さらに前記第一の溶媒を添加して混合すること、及び
前記第二の溶媒を除去すること、
を含み、前記第二の溶媒が前記ハロゲン分子のハロゲン元素を含むハロゲン化リチウムを溶解しない溶媒である、
ハロゲン化リチウム化合物の製造方法である。
第二の態様は、第一の態様において、第一の溶媒を用いる前に、第二の溶媒を用いて硫化リチウムと、ハロゲン分子とを混合し、次いで第一の溶媒を添加して混合すること、そして第二の溶媒を除去することが主な特徴となる。第一の態様と同様に、ハロゲン分子のハロゲン元素、第二の溶媒が溶解しないハロゲン化リチウムのハロゲン元素及び得られるハロゲン化リチウム化合物のハロゲン元素は同じ種である。
【0019】
第二の態様によれば、第一の溶媒を用いる前に第二の溶媒を用いることで、第一の溶媒に溶解しにくいハロゲン分子、特にヨウ素の反応性を向上させることが可能となる。第一の溶媒がヨウ素を微量でも溶解するものであれば、第二の溶媒を用いる必要性はない。しかし、既述のように、ハロゲン化リチウムを溶解しやすい溶媒は、同時にハロゲン分子、特にヨウ素を溶解しにくい性状を有するという経験的な知見がある。これは、換言すれば、ハロゲン化リチウムを溶解しない溶媒は、同時にハロゲン分子、特にヨウ素を溶解する性状を有するものである、といえる。そして、ハロゲン分子、特にヨウ素を溶解する第二の溶媒を用いることで、反応性が低い固体の原料であるヨウ素を用いても、硫化リチウムとの反応が進行しやすく、反応効率を向上させることが可能となる。
以上の知見を考慮し、ハロゲン分子、特にヨウ素の反応性を向上させて、反応効率を向上させるという点で、第二の溶媒を用いることは有利な効果を見出すことができる。また、第二の溶媒を用いることで、原料として用いる硫化リチウム、ハロゲン分子の分散性を高めたところに第一の溶媒を添加することで、反応性を向上し得るという副次的な効果も得られる。
【0020】
溶媒の除去について、第二の態様では、第二の溶媒が除去されることとなるが、第一の態様では第一の溶媒が除去されることから、結果的には、本実施形態の製造方法で用いられる溶媒は全て除去されることとなる。
【0021】
本実施形態の第三の態様に係るハロゲン化リチウム化合物の製造方法は、
ハロゲン化リチウム化合物が、ハロゲン化リチウム錯体を含む、
ハロゲン化リチウム化合物の製造方法である。
当該ハロゲン化リチウム錯体は、ハロゲン化リチウム、すなわち臭化リチウム又はヨウ化リチウムのみならず、それらが溶媒と錯体形成したものである。第一の溶媒は、ハロゲン化リチウムを溶解するという性状を有するものであり、当該性状を有する溶媒として、後述するようにその分子中に窒素原子等のヘテロ原子を有するものが好ましく用いられる。この場合、ヘテロ原子はハロゲン化リチウムを構成する原子、特にリチウム原子と配位(結合)した錯体(「ハロゲン化リチウム錯体」とも称される。)を形成し得ることを規定したものである。
第三の態様における、ハロゲン化リチウム錯体を含むことは、このような第一の溶媒を用いることで、硫化リチウムとハロゲン分子との反応における当該ハロゲン分子の寄与を向上させることを意味しており、当該反応を促進させて、残留するハロゲン分子をより低減することができるため、反応効率が向上し、高い反応効率が得られることとなる。
【0022】
本実施形態の第四の態様に係るハロゲン化リチウム化合物の製造方法は、
第一の溶媒は、臭化リチウム及びヨウ化リチウムの溶解度が1g/L以上のものである、
ハロゲン化リチウム化合物の製造方法である。ハロゲン化リチウムを溶解しないという性状が、臭化リチウム、ヨウ化リチウムのハロゲン化リチウムの溶解度が1g/L以上であることを具体的に規定するものである。
第一の溶媒がこのような性状を有することで、硫化リチウムの表面におけるハロゲン化リチウムの析出を抑制し、常に新生面が露出した硫化リチウムとハロゲン分子との反応を生じさせて当該反応を促進させることが可能となるため、反応効率が向上する。
【0023】
本実施形態の第五の態様に係るハロゲン化リチウム化合物の製造方法は、
第二の溶媒は、臭化リチウム及びヨウ化リチウムの溶解度が1g/L未満のものである、
ハロゲン化リチウム化合物の製造方法である。ハロゲン化リチウムを溶解するという性状が、臭化リチウム、ヨウ化リチウムのハロゲン化リチウムの溶解度が1g/L未満であることを具体的に規定するものである。
第二の溶媒がこのような性状を有することで、既述の第一の溶媒に溶解しにくいハロゲン分子、特にヨウ素の反応性を向上させるという効果が得られやすくなる。そしてその結果、硫化リチウムとハロゲン分子との反応は促進し、反応効率が向上する。
【0024】
本実施形態の第六の態様に係るハロゲン化リチウム化合物の製造方法は、
さらに、硫黄分子を洗浄し、除去することを含む、
ハロゲン化リチウム化合物の製造方法である。硫化リチウムとハロゲン分子との反応により、ハロゲン化リチウムとともに、硫黄分子が副生する。第六の態様によれば、当該副生した硫黄分子を、洗浄し、除去することで、純度の高いハロゲン化リチウム化合物を製造することが可能となる。
【0025】
本実施形態の第七の態様に係るハロゲン化リチウム化合物の製造方法は、
前記洗浄し、除去することにおいて、第三の溶媒を用いる、
ハロゲン化リチウム化合物の製造方法である。
そして、第八の態様に係るハロゲン化リチウム化合物の製造方法は、
前記第三の溶媒の除去をろ過及び減圧下の加熱から選ばれる少なくとも一種の処理により行う、
ハロゲン化リチウム化合物の製造方法である。
硫黄分子を洗浄し、除去することは、第三の溶媒を用いた洗浄により行うことができ、洗浄に用いた第三の溶媒の除去はろ過等の処理により行うことができ、いずれも容易な方法であるため、副生成物である硫黄分子を容易に除去することが可能である。
【0026】
本実施形態の第九の態様に係るハロゲン化リチウム化合物の製造方法は、
前記第一の溶媒が、エステル基、エーテル基及びアミノ基から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する非プロトン溶媒である、
ハロゲン化リチウム化合物の製造方法である。既述のように、第一の溶媒として、窒素原子、酸素原子等のヘテロ原子を含む溶媒、より具体的にはこれらのヘテロ原子を含む官能基を有する非プロトン溶媒を採用することで、ハロゲン化リチウム錯体を形成させ得る。そして、硫化リチウムとハロゲン分子との反応における当該ハロゲン分子の寄与を向上させることで、当該反応を促進させて、残留するハロゲン分子をより低減することができるため、反応効率が向上し、高い反応効率が得られることとなる。
【0027】
本実施形態の第十の態様に係るハロゲン化リチウム化合物の製造方法は、
前記第二の溶媒が、芳香族炭化水素及び脂肪族炭化水素の少なくとも一種である、
ハロゲン化リチウム化合物の製造方法であり、また第十一の態様に係るハロゲン化リチウム化合物の製造方法は、
前記第二の溶媒が、沸点が150℃以下のものである、
ハロゲン化リチウム化合物の製造方法である。
第二の溶媒は、既述のように、第一の溶媒に溶解しにくいハロゲン分子、特にヨウ素の反応性を向上させるという効果が得られやすく、当該効果が発現しやすいものとして芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、また沸点が150℃以上のものが有利となる。このような第二の溶媒を採用することで、硫化リチウムとハロゲン分子との反応は促進し、反応効率が向上する。
【0028】
本実施形態の第十二の態様に係るハロゲン化リチウム化合物の製造方法は、
前記第三の溶媒が、硫黄分子の溶解度が0.1g/L以上のものである、
ハロゲン化リチウム化合物の製造方法であり、また第十三の態様に係るハロゲン化リチウム化合物の製造方法は、
前記芳香族炭化水素及び脂肪族炭化水素の少なくとも一方である、
ハロゲン化リチウム化合物の製造方法である。
第三の溶媒は、硫化リチウムとハロゲン分子との反応において副生する硫黄分子を洗浄し、除去するために用いられるものであり、上記溶解度を有するもの、具体的には芳香族炭化水素、脂肪族炭化水等を採用することで、良好な洗浄し、除去する効果が得られ、容易に製品純度の高いハロゲン化リチウムが得られる。
【0029】
本実施形態の第十四の態様に係るハロゲン化リチウム化合物の製造方法は、
前記第二の溶媒と前記第三の溶媒とが同一である、
ハロゲン化リチウム化合物の製造方法である。
第二の溶媒と第三の溶媒は、上記第十の態様及び第十三の態様のように、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素が好ましく用いられる。同じ種類の溶媒を用いることは、異なる種類の溶媒を用いるよりも処理が容易であり、また生産管理上も効率的である。
【0030】
以下、本実施形態の製造方法について、上記の実施態様に即しながら、より詳細に説明する。
【0031】
(硫化リチウム)
本実施形態の製造方法で用いられる硫化リチウムは、通常粒子状のものであり、市販品であってもよいし、また公知の方法により製造したものを用いることもできる。硫化リチウムは、硫化アルカリ金属の一つであるが、硫化物固体電解質のイオン伝導度は軽いアルカリ金属を用いることで向上する傾向がある。そのため、硫化リチウムを原料として用いる本実施形態の製造方法により得られるハロゲン化リチウムは、アルカリ金属の中でも軽い金属であり、イオン伝導度の向上の点で有効な化合物である。
硫化リチウムを得る為の公知の方法としては、例えば、炭化水素系有機溶媒中で水酸化リチウムと硫化水素とを70℃~300℃で反応させて、水硫化リチウムを生成し、次いでこの反応液を脱硫化水素化することにより硫化リチウムを合成する方法(特開2010-163356号公報)、また水酸化リチウムと硫化水素を130°C以上445°C以下で反応させて硫化リチウムを合成する方法(特開平9-278423号公報)等が挙げられる。
【0032】
本実施形態の製造方法で用いられる硫化リチウムの平均粒径(D50)は、好ましくは10μm以上2000μm以下、より好ましくは30μm以上1500μm以下、更に好ましくは50μm以上1000μm以下である。本明細書において、平均粒径(D50)は、粒子径分布積算曲線を描いた時に粒子径の最も小さい粒子から順次積算して全体の50%に達するところの粒子径であり、体積分布は、例えば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定することができる平均粒径のことである。
【0033】
硫化リチウムは、得られるハロゲン化リチウム中の水分量、さらにはハロゲン化リチウムを硫化物固体電解質の原料として用いる場合は、当該固体電解質中の水分量を低減し、水によるイオン伝導度の低下、電池性能の低下を抑制する観点から、不純物として含まれる水分量が少ないことが好ましい。硫化リチウムに含まれる水分量は、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。また下限としては、少なければ少ないほど好ましいため特に制限はないが、通常0.1質量%程度である。本明細書において、硫化リチウム中の水分量は、カールフィッシャー水分計を用いて、気化法、280℃の条件で測定した値とする。
【0034】
(ハロゲン分子)
本実施形態の製造方法で用いられるハロゲン分子は、臭素及びヨウ素の少なくとも一方であり、下記一般式(1)に示される分子のことである。
X2・・・(1)
(一般式(1)中、Xは、臭素元素及びヨウ素元素である。)
【0035】
ハロゲン分子としては、一般的にはフッ素(F2)、塩素(Cl2)、臭素(Br2)及びヨウ素(I2)が好ましく挙げられるが、中でも臭素(Br2)及びヨウ素(I2)が対象となる。本実施形態の製造方法において、ハロゲン分子は、一種単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。すなわち、臭素を単独で、ヨウ素を単独で用いることもできる、臭素とヨウ素とを併用してもよい。なお、本実施形態の製造方法において、ハロゲン分子として臭素及びヨウ素の少なくとも一方を対象とするものであるが、他のハロゲン分子であるフッ素、塩素に適用することも可能である。
【0036】
本実施形態の製造方法において、硫化リチウムとハロゲン分子とは、下記反応式(2)に示される反応式により反応する。よって、ハロゲン分子の使用量は、硫化リチウム1モルに対して、同モル量とすればよく、複数種のハロゲン分子を用いる場合は、当該複数種のハロゲン分子の合計モル数が同モル量となるようにすればよい。
【0037】
Li2S+X2→2LiX+S (2)
(式(2)中、X2は臭素及びヨウ素のハロゲン分子である。)
【0038】
既述のように、また上記反応式(2)に示されるように、硫化リチウムとハロゲン分子との反応によりハロゲン化リチウムは生成するが、ハロゲン化リチウムは硫化リチウムの表面に析出するように生成するため、硫化リチウムの更なる反応が進行しにくくなる。本実施形態の製造方法によれば、ハロゲン化リチウムを溶解する第一の溶媒を用いるため、硫化リチウムの表面にハロゲン化リチウムが析出せず、常に新生面が露出するため、当該反応が促進することとなる。
【0039】
また上記反応式(2)に示されるように、副生成物として硫黄が生成する。ハロゲン化リチウムは、特許文献3及び4等の方法の他、例えば水酸化リチウムとハロゲン化水素との反応により得ることもできるが、副生成物として水が生成する。
原料として、入手しやすく量産化に対応できる、硫化リチウム及びハロゲン分子を選択することにより、副生成物として水が得られることがなく、工業化への対応も可能となる。これらの点で、硫化リチウムとハロゲン分子との組合せは、極めて有用である。
【0040】
(第一の溶媒)
本実施形態の製造方法で用いられる第一の溶媒は、ハロゲン化リチウムを溶解する溶媒である。ハロゲン化リチウムは、硫化リチウムとともに使用するハロゲン分子の種類に応じてかわるものであり、具体的には、臭化リチウム、ヨウ化リチウムが含まれ得る。すなわち、第一の溶媒は、これらのハロゲン化リチウムを溶解する、という性状を有するものである。
第一の溶媒としては、上記の臭化リチウム及びヨウ化リチウムのハロゲン化リチウムを溶解できるものであれば特に制限はなく、その溶解度(20℃)として、好ましくは1g/L以上、より好ましくは3g/L以上、更に好ましくは5g/L以上の性状を有するものが挙げられる。ハロゲン化リチウムの溶解度が上記範囲内であれば、硫化リチウムとハロゲン分子との反応により生成するハロゲン化リチウムが硫化リチウムの表面に析出することなく速やかに第一の溶媒に溶解するため、当該析出をより抑制することができる。また、溶解度の上限としては特に制限はなく、通常1000g/L以下程度である。
【0041】
本明細書において、ハロゲン化リチウムの溶解度は以下の方法により測定されるものである。溶媒に、ハロゲン化リチウムを加え、20℃で十分に混合した。溶媒に溶解できなかったハロゲン化リチウムが溶液中に存在することを目視した。次いで、得られた溶液について、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置を用いて、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法を行った。これにより得られた溶液中のリチウム、すなわち溶媒中に溶解しているリチウムの含有量を測定し、ハロゲン化リチウムの溶解度(g/L)を算出した。
【0042】
このような第一の溶媒としては、錯化剤が好ましく挙げられる。錯化剤とは、本実施形態の製造方法において用いられる硫化リチウム、ハロゲン分子、またこれらの反応により得られるハロゲン化リチウムに含まれるリチウム原子、硫黄原子、及びハロゲン原子、とりわけリチウム原子と配位(結合)した、錯体(「ハロゲン化リチウム錯体」とも称される。)を形成し得るものである。錯化剤としては、このような性能を有するものであれば特に制限なく用いることができ、特にリチウム原子との親和性が高い原子、例えば窒素原子、酸素原子、塩素原子等のヘテロ原子を含む化合物が好ましく、これらのヘテロ原子を含む基を有する化合物がより好ましく挙げられる。
第一の溶媒として錯化剤を用いることで、硫化リチウムとハロゲン分子との反応を促進させて、残留するハロゲン分子をより低減することができるため、反応効率が向上し、高い反応効率が得られる。また、第一の溶媒として錯化剤を用いることで、硫化リチウムとハロゲン原子との反応により得られるハロゲン化リチウムが溶媒中で錯体として溶解し、溶媒を除去することにより、得られるハロゲン化リチウムが多孔質化することとなり、その結果、より高いイオン伝導度を有する硫化物固体電解質が得られやすくなる。
【0043】
本実施形態の製造方法において、第一の溶媒として錯化剤を用いる場合、混合すること及び溶媒を除去することにより得られるものは、上記配位(結合)により生じる、ハロゲン化リチウムと錯化剤とから構成される錯体であり、厳密にはハロゲン化リチウムとはいえない。すなわち、本実施形態の製造方法により得られるハロゲン化リチウム化合物は、ハロゲン化リチウムだけでなく、ハロゲン化リチウム錯体、また複数種のハロゲン分子を用いた場合には、当該複数種のハロゲン分子に起因するハロゲン原子を同時に含むハロゲン化リチウム複合体とも称されるものも含まれ得る。そして、そのいずれもが、硫化物固体電解質の原料として好適に用いられることから、本実施形態の製造方法により得られるハロゲン化リチウム化合物は、ハロゲン化リチウム、ハロゲン化リチウム錯体、ハロゲン化リチウム複合体のいずれであってもよい。
【0044】
ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子がより好ましく、これらのヘテロ原子を含む基として、窒素原子を含む基としてはアミノ基、アミド基、ニトロ基、ニトリル基が好ましく、アミノ基がより好ましい。また、酸素原子を含む基としては、エステル基、エーテル基が好ましく、エステル基がより好ましい。よって、本実施形態の製造方法において、第一の溶媒として特に好ましく用いられる溶媒は、錯化剤、特にエステル基、エーテル基及びアミノ基から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する非プロトン溶媒である。
【0045】
アミノ基を有する錯化剤としては、例えば、脂肪族アミン、脂環式アミン、複素環式アミン、芳香族アミン等のアミン化合物が挙げられ、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0046】
脂肪族アミンとしては、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン等の脂肪族一級ジアミン;N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチルジアミノプロパン、N,N’-ジエチルジアミノプロパン等の脂肪族二級ジアミン;N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノメタン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノプロパン、N,N,N’,N’-テトラエチルジアミノプロパン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノブタン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノペンタン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノヘキサン等の脂肪族三級ジアミン;などの脂肪族ジアミンが代表的に好ましく挙げられる。ここで、本明細書における例示において、例えばジアミノブタンであれば、特に断りがない限り、1,2-ジアミノブタン、1,3-ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン等のアミノ基の位置に関する異性体の他、ブタンについては直鎖状、分岐状の異性体等の、全ての異性体が含まれるものとする。
【0047】
脂肪族アミンの炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、上限として好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは7以下である。また、脂肪族アミン中の脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは2以上であり、上限として好ましくは6以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3以下である。
【0048】
脂環式アミンとしては、シクロプロパンジアミン、シクロヘキサンジアミン等の脂環式一級ジアミン;ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環式二級ジアミン;N,N,N’,N’-テトラメチル-シクロヘキサンジアミン、ビス(エチルメチルアミノ)シクロヘキサン等の脂環式三級ジアミン;などの脂環式ジアミンが代表的に好ましく挙げられ、また、複素環式アミンとしては、イソホロンジアミン等の複素環式一級ジアミン;ピペラジン、ジピペリジルプロパン等の複素環式二級ジアミン;N,N-ジメチルピペラジン、ビスメチルピペリジルプロパン等の複素環式三級ジアミン;などの複素環式ジアミンが代表的に好ましく挙げられる。
脂環式アミン、複素環式アミンの炭素数は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、上限として好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。
【0049】
また、芳香族アミンとしては、フェニルジアミン、トリレンジアミン、ナフタレンジアミン等の芳香族一級ジアミン;N-メチルフェニレンジアミン、N,N’-ジメチルフェニレンジアミン、N,N’-ビスメチルフェニルフェニレンジアミン、N,N’-ジメチルナフタレンジアミン、N-ナフチルエチレンジアミン等の芳香族二級ジアミン;N,N-ジメチルフェニレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルフェニレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’-テトラメチルナフタレンジアミン等の芳香族三級ジアミン;などの芳香族ジアミンが代表的に好ましく挙げられる。
芳香族アミンの炭素数は、好ましくは6以上、より好ましくは7以上、更に好ましくは8以上であり、上限として好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
【0050】
本実施形態で用いられるアミン化合物は、アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、水酸基、シアノ基等の置換基、ハロゲン原子により置換されたものであってもよい。
なお、具体例としてジアミンを例示したが、本実施形態で用いられ得るアミン化合物としては、ジアミンに限らないことは言うまでもなく、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルジメチルアミン、上記脂肪族ジアミン等の各種ジアミンに対応する脂肪族モノアミン;またピペリジン、メチルピペリジン、テトラメチルピペリジン等のピペリジン化合物;ピリジン、ピコリン等のピリジン化合物;モルホリン、メチルモルホリン、チオモルホリン等のモルホリン化合物;イミダゾール、メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;上記脂環式ジアミンに対応するモノアミン等の脂環式モノアミン;上記複素環式ジアミンに対応する複素環式モノアミン;上記芳香族ジアミンに対応する芳香族モノアミン等のモノアミンの他、例えば、ジエチレントリアミン、N,N’,N’’-トリメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、N,N’-ビス[(ジメチルアミノ)エチル]-N,N’-ジメチルエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のアミノ基を3つ以上有するポリアミンも用いることができる。
【0051】
上記の中でも、硫化リチウムとハロゲン分子との反応を促進させて反応効率を向上させて、かつ速やかにハロゲン化リチウムを溶解し、硫化リチウムの表面における析出を抑制する観点から、アミノ基として第三級アミノ基を有する三級アミンであることが好ましく、二つの第三級アミノ基を有する三級ジアミンであることがより好ましく、二つの第三級アミノ基を両末端に有する三級ジアミンが更に好ましく、第三級アミノ基を両末端に有する脂肪族三級ジアミンがより更に好ましい。上記のアミン化合物において、三級アミノ基を両末端に有する脂肪族三級ジアミンとしては、テトラメチルエチレンジアミン、テトラエチルエチレンジアミン、テトラメチルジアミノプロパン、テトラエチルジアミノプロパンが好ましく、入手の容易性等も考慮すると、テトラメチルエチレンジアミン(「TMEDA」とも称される。)、テトラメチルジアミノプロパン(「TMPDA」とも称される。)が好ましい。
【0052】
また、特に例示はしないが、ヘテロ原子として窒素原子を含む、アミノ基以外の基、例えばアミド基、ニトロ基、ニトリル基等の基を有する化合物も、アミノ基を含む化合物と同様の効果が得られる。
【0053】
次に、酸素原子を含む基として既述したエーテル基を有する錯化剤としては、例えば、脂肪族エーテル、脂環式エーテル、複素環式エーテル、芳香族エーテル等のエーテル化合物が挙げられ、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0054】
脂肪族エーテルとしては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル等のモノエーテル;ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシメタン、ジエトキシエタン等のジエーテル;ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、トリエチレンオキサイドグリコールジメチルエーテル(トリグリム)等のエーテル基を3つ以上有するポリエーテル;またジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の水酸基を含有するエーテル等も挙げられる。
脂肪族エーテルの炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上であり、上限として好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは6以下である。
また、脂肪族エーテル中の脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは1以上であり、上限として好ましくは6以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3以下である。
【0055】
脂環式エーテルとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジメトキシテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジオキサン、ジオキソラン等が挙げられ、また、複素環式エーテルとしては、フラン、ベンゾフラン、ベンゾピラン、ジオキセン、ジオキシン、モルホリン、メトキシインドール、ヒドロキシメチルジメトキシピリジン等が挙げられる。
脂環式エーテル、複素環式エーテルの炭素数は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、上限として好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。
【0056】
また、芳香族エーテルとしては、メチルフェニルエーテル(アニソール)、エチルフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、ジフェニルエーテル、ベンジルフェニルエーテル、ナフチルエーテル等が挙げられる。
芳香族エーテルの炭素数は、好ましくは7以上、より好ましくは8以上であり、上限として好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
【0057】
本実施形態で用いられるエーテル化合物は、アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、水酸基、シアノ基等の置換基、ハロゲン原子により置換されたものであってもよい。
【0058】
本実施形態で用いられるエーテル化合物は、硫化リチウムとハロゲン分子との反応を促進させることで反応効率を向上させて、また速やかにハロゲン化リチウムを溶解し、硫化リチウムの表面における析出を抑制する観点から、脂肪族エーテルが好ましく、ジメトキシエタン、テトラヒドロフランがより好ましい。
【0059】
また、酸素原子を含む基として既述したエステル基を有する錯化剤としては、例えば、脂肪族エステル、脂環式エステル、複素環式エステル、芳香族エステル等のエステル化合物が挙げられ、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0060】
脂肪族エステルとしては、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸トリエチル等の蟻酸エステル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等の酢酸エステル;プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル等のプロピオン酸エステル、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル等のシュウ酸エステル;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル等のマロン酸エステル;コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル等のコハク酸エステルが挙げられる。
脂肪族エステルの炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上であり、上限として好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは7以下である。また、脂肪族エステル中の脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、上限として好ましくは6以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3以下である。
【0061】
脂環式エステルとしては、シクロヘキサンカルボン酸メチル、シクロヘキサンカルボン酸エチル、シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルシクロヘキサンジカルボン酸ジブチル、シクロヘキセンジカルボン酸ジブチル等が挙げられ、また、複素環式エステルとしては、ピリジンカルボン酸メチル、ピリジンカルボン酸エチル、ピリジンカルボン酸プロピル、ピリミジンカルボン酸メチル、ピリミジンカルボン酸エチル、またアセトラクトン、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類等が挙げられる。
脂環式エステル、複素環式エステルの炭素数は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、上限として好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。
【0062】
芳香族エステルとしては、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル等の安息香酸エステル;ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等のフタル酸エステル;トリメチルトリメリテート、トリエチルトリメリテート、トリプロピルトリメリテート、トリブチルトリメリテート、トリオクチルトリメリテート等のトリメリット酸エステル等が挙げられる。
芳香族エステルの炭素数は、好ましくは8以上、より好ましくは9以上であり、上限として好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
【0063】
本実施形態で用いられるエステル化合物は、アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、水酸基、シアノ基等の置換基、ハロゲン元素により置換されたものであってもよい。
【0064】
本実施形態で用いられるエステル化合物は、硫化リチウムとハロゲン分子との反応を促進させることで反応効率を向上させて、また速やかにハロゲン化リチウムを溶解し、硫化リチウムの表面における析出を抑制する観点から、脂肪族エステルが好ましく、酢酸エステルがより好ましく、特に酢酸エチルが好ましい。
【0065】
第一の溶媒として好ましく用いられる錯化剤として列記したものは、当該錯化剤のヘテロ原子と硫化リチウムのリチウム原子とが配位(結合)したハロゲン化リチウム錯体を基本的には形成する。中には当該錯体を形成しないものもあり、ヘテロ原子である酸素原子をエステル基として有するものは、錯体を形成しにくい傾向を有するが、当該錯体を形成しなくても反応効率の向上効果が阻害されることはない。ハロゲン化リチウムを溶解する性状を有しており、またハロゲン分子、特にヨウ素を溶解する性状を有することから、残留するハロゲン分子を低減できるため、反応効率は向上するからである。
【0066】
本実施形態の製造方法において、第一の溶媒の使用量は、硫化リチウムとハロゲン分子との合計量1kgに対して、好ましくは100mL以上、より好ましくは200mL以上、更に好ましくは250mL以上、より更に好ましくは300mL以上であり、上限として好ましくは3000mL以下、より好ましくは2500mL以下、更に好ましくは2000mL以下、より更に好ましくは1550mL以下である。第一の溶媒の使用量が上記範囲内であると、速やかにハロゲン化リチウムを溶解し、硫化リチウムの表面における析出を抑制しやすくなる。
【0067】
(混合すること)
本実施形態の製造方法においては、上記硫化リチウムと、ハロゲン分子と、ハロゲン化リチウムを溶解する第一の溶媒と、を混合することを含む。混合することにより、硫化リチウムとハロゲン分子との反応によりハロゲン化リチウムが得られ、かつ得られたハロゲン化リチウムは硫化リチウムの表面に析出することなく第一の溶媒に溶解するため、硫化リチウムは常に新生面がハロゲン分子と触れることで、反応が促進される。
【0068】
硫化リチウムと、ハロゲン分子と、ハロゲン化リチウムを溶解する第一の溶媒と、を混合する際、混合方法に特段の制限はなく、これらを混合できる装置に、硫化リチウム、ハロゲン分子及び第一の溶媒を投入して混合すればよい。
ここで、ハロゲン分子は、例えば常温常圧下において、フッ素及び塩素は気体、臭素は液体となり、ヨウ素は固体であるため、ハロゲン分子の状態に応じた方法で供給し、混合すればよい。例えばハロゲン分子が液体の場合は、第一の溶媒とともに槽内に供給すればよく、ハロゲン分子が気体の場合は、錯化剤に硫化リチウムを加えたものに吹き込むように供給すればよいし、ハロゲン分子が固体の場合は、硫化リチウムとともに槽内に供給すればよい。
【0069】
本実施形態の製造方法においては、硫化リチウムとハロゲン分子と第一の溶媒とを混合することを含むことを特徴としており、ボールミル、ビーズミル等の媒体式粉砕機等の、一般に粉砕機と称される機器を用いなくても(粉砕を行わなくても)、ハロゲン化リチウムを効率よく製造できる。本実施形態の製造方法において、「混合」は、固体原料である硫化リチウム、ハロゲン分子(ヨウ素)の「粉砕」までは生じない程度に、撹拌等の処理により行われるものであることを意味する。なお、錯体を得るための混合時間を短縮したり、微粉化したりするために、原料を粉砕機によって粉砕してもよいが、工業化の観点からは、粉砕機を用いない、すなわち粉砕を行わないことが好ましい。本実施形態の製造方法は、粉砕を行わなくても、ハロゲン化リチウムを製造できることが一つの特長ともいえる。
【0070】
硫化リチウムとハロゲン分子と第一の溶媒とを混合する装置としては、規模に応じて適宜選定すればよく、例えば小規模であれば撹拌子入りのシュレンクといった機器を用いればよいし、また中規模から大規模であれば槽内に撹拌翼を備える機械撹拌式混合機を用いればよい。
機械撹拌式混合機は、高速撹拌型混合機、双腕型混合機等が挙げられ、原料と錯化剤との混合物中の原料の均一性を高め、より高いイオン伝導度を得る観点から、高速撹拌型混合機が好ましく用いられる。また、高速撹拌型混合機としては、垂直軸回転型混合機、水平軸回転型混合機等が挙げられ、どちらのタイプの混合機を用いてもよい。
【0071】
機械撹拌式混合機において用いられる撹拌翼の形状としては、ブレード型、アーム型、アンカー型、パドル型、フルゾーン型、リボン型、多段ブレード型、二連アーム型、ショベル型、二軸羽型、フラット羽根型、C型羽根型等が挙げられ、効率よく硫化リチウムとハロゲン分子との反応を進行させ、得られたハロゲン化リチウムを速やかに溶解し、硫化リチウムの表面における析出を抑制しやすくする観点から、ショベル型、フラット羽根型、C型羽根型、アンカー型、パドル型、フルゾーン型等が好ましく、アンカー型、パドル型、フルゾーン型がより好ましい。
【0072】
混合の際の温度条件としては、特に制限はなく、例えば通常-30~100℃、好ましくは5~50℃、より好ましくは10~30℃、更に好ましくは室温(23℃)程度(例えば室温±5℃程度)である。また混合時間は、通常0.1~500時間、硫化リチウムとハロゲン原子との反応を効率的かつ十分に進行させる観点から、好ましくは0.5~100時間、より好ましくは1~50時間、更に好ましくは2~25時間、より更に好ましくは3~10時間である。
【0073】
(第二の溶媒)
本実施形態の製造方法において、上記の第一の溶媒に加えて、当該第一の溶媒以外の溶媒として、ハロゲン化リチウムを溶解しない第二の溶媒を用いることができる。既述のように、第一の溶媒はハロゲン化リチウムを溶解するという性状を有するともに、経験的にハロゲン分子、特にヨウ素を溶解しいくいという性状を有している。これに対して、第二の溶媒は、ハロゲン化リチウムを溶解しないという性状を有するとともに、ハロゲン分子、特にヨウ素を溶解しやすいという性状を有する。そのため、第二の溶媒は、第一の溶媒に溶解しにくいヨウ素の反応性を向上させるために好ましく用いられるもの、といえる。そして、第一の溶媒を用いる前に、第二の溶媒を用いることで、硫化リチウムとハロゲン分子、特にヨウ素との反応を促進させることができるので、反応効率の向上を図ることができる。ハロゲン分子として臭素を用いる場合、臭素は常温において液体であり、第二の溶媒を用いることなく分散させることが可能であるため、第二の溶媒は必ずしも必要ではない。よって、第二の溶媒は、ハロゲン分子としてヨウ素を用いる場合に特に有効である。
【0074】
第二の溶媒は、ハロゲン化リチウムを溶解しない性状を有する溶媒であり、ハロゲン化リチウムを溶解しないものであれば特に制限はなく、その溶解度(20℃)として、好ましくは1g/L未満、より好ましくは0.5g/L以下、更に好ましくは0.1g/L以下、より更に好ましくは0.07g/L以下の性状を有するものが挙げられる。
ハロゲン化リチウムの溶解度が上記範囲内であれば、硫化リチウム及びハロゲン分子の分散状態を向上させながら、硫化リチウムとハロゲン分子との反応により生成するハロゲン化リチウムが硫化リチウムの表面に析出することなく、速やかに第一の溶媒に溶解するため、当該析出をより抑制することができる。また、下限としては特に制限はなく、通常0.01mg/L以上である。
【0075】
また、第二の溶媒は、ハロゲン分子、特にヨウ素を溶解する溶媒であることが好ましい。その溶解度(25℃)として、好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上である。また、上限についての制限はないが、例えば60質量%以下、55質量%以下、10質量%以下の溶解度を例示することができる。第二の溶媒のヨウ素の溶解度が上記範囲内であると、上記の第二の溶媒を用いる効果を効率的に得ることが可能であり、他のハロゲン分子として臭素を用いても同様の効果が得られる。
【0076】
本明細書において、ハロゲン分子の溶解度は以下の方法により測定されるものである。
ヨウ素(2g)を溶媒3mLに加えて、25℃で20分撹拌した。上澄み液0.1gを秤量し、その上澄み液にチオ硫酸ナトリウム水溶液(10質量%、Na2S2O3)1gを加え、1分程度振とうして溶液の着色が消えたのを確認した。上記溶液のヨウ素濃度をICP発光分光分析法(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法)で定量し、ヨウ素の溶解度を算出した。
【0077】
このような性状を有する第二の溶媒としては、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒;炭素原子とヘテロ原子を含む溶媒、等の炭素原子を含む溶媒が好ましく挙げられる。
【0078】
脂肪族炭化水素としては、例えば、ヘキサン、ペンタン、2-エチルヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等が挙げられ、脂環族炭化水素としては、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等が挙げられ、芳香族炭化水素溶しては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、tert-ブチルベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ニトロベンゼン等が挙げられ、また、炭素原子とヘテロ原子を含む溶媒としては、二硫化炭素、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
第二の溶媒は、上記の中から一種を単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0079】
これらの中でも、速やかにハロゲン化リチウムを溶解し、硫化リチウムの表面における析出を抑制する観点から、炭化水素溶媒が好ましく、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素がより好ましく、芳香族炭化水素としてはトルエンが好ましい。
また、脂肪族炭化水素としては、炭素数が2以上8以下のものが好ましく、3以上7以下のものがより好ましく、4以上6以下のものが更に好ましい。また脂環族炭化水素が好ましく、環状部分の炭素数として、3以上8以下が好ましく、4以上7以下がより好ましく、4以上6以下が更に好ましく、特に6であることが好ましい。脂環族炭化水素としては、特にシクロヘキサンが好ましい。
【0080】
上記第二の溶媒は、その沸点が150℃以下のものが好ましく、140℃以下のものがより好ましく、下限としては特に制限はないが、90℃以上のものであればよい。沸点が上記範囲内であると、第二の溶媒は適度な粘度を有するものとなり、硫化リチウム及びハロゲン分子の良好な分散状態が得られる。
【0081】
上記の第二の溶媒は、ハロゲン化リチウムを溶解しないという性状を有する溶媒であるが、当該性状とともに、硫黄分子を溶解しやすいという性状も併せ持つ溶媒である。本実施形態の製造方法において、硫化リチウムとハロゲン分子とは、上記反応式(2)に示される反応式により反応し、ハロゲン化リチウムとともに、副生成物として硫黄分子が生成することとなる。すなわち、硫化リチウムと、ハロゲン分子と、第一の溶媒、さらに第二の溶媒を混合して得られる混合物には、硫黄分子も含まれることとなり、ハロゲン化リチウムを得るには、副生成物である硫黄分子の除去が必要となる。第二の溶媒は、硫黄分子を溶解させる性状を有することから、後述する溶媒を除去することで第二の溶媒を除去することにより、当該溶媒に溶解した硫黄分子も除去し得る。このことから、後述する溶媒を除去することで、硫黄分子の洗浄による除去の効果も期待できる。なお、得られるハロゲン化リチウム化合物の品質を向上させる観点からは、後述するように、硫黄分子は洗浄して除去することが好ましい。
【0082】
第二の溶媒が、硫黄分子を溶解しやすいという性状について、具体的には、硫黄の溶解度(25℃)として、好ましくは1g/L以上のもの、より好ましくは0.3g/L以上のもの、更に好ましくは0.5g/L以上のもの、特に好ましくは10g/L以上のものが用いられる。また、硫黄の溶解度の上限に特に制限はないが、例えば、600g/L以下、550g/L以下、100g/L以下である。本明細書において、硫黄の溶解度の測定は、以下のようにして測定した値である。
(硫黄の溶解度の測定)
硫黄10gに対して溶媒50mlを加え、オイルバスで25℃に調温し、二時間撹拌した。その後、ガラスフィルターを付けたキャヌラー(輸送管)を用いて上澄み液を分離した。分離した上澄み液を真空引きして、乾燥硫黄を得た。乾燥硫黄の質量と、該乾燥硫黄が溶解していた溶媒の質量とから、硫黄の溶解度(質量%)を算出した。
【0083】
第二の溶媒を用いる場合は、硫化リチウムと、ハロゲン分子と、第二の溶媒と、を混合すること、さらに第一の溶媒を添加して混合すること、すなわち第一の溶媒を用いる混合の前に、硫化リチウムとハロゲン分子とを、第二の溶媒中で混合したところに、第一の溶媒を添加して、硫化リチウムとハロゲン分子と、第一の溶媒と第二の溶媒とを混合することが好ましい。第一の溶媒を用いて混合する前に、第二の溶媒中で硫化リチウムとハロゲン分子とを混合することで、ハロゲン分子、特にヨウ素が第二の溶媒に溶解されて反応性が向上するため、硫化リチウムとハロゲン分子との反応が促進し、反応効率が向上する。また、予め第二の溶媒中で硫化リチウム及びハロゲン分子の分散性が向上することで、第一の溶媒として錯化剤を用いた場合はハロゲン化リチウム錯体が形成しやすくなり、既述のように、残留するハロゲン分子をより低減することができるため、反応効率が向上し、高い反応効率が得られることとなる。
【0084】
第二の溶媒における硫化リチウムとハロゲン分子との混合時間は、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上、さらに好ましくは1.5時間以上であり、上限として好ましくは4時間以下、より好ましくは3時間以下、更に好ましくは2.5時間以下である。第二の溶媒における混合時間が上記範囲内であると、硫化リチウム及びハロゲン分子の分散状態を向上させながら、硫化リチウムの表面におけるハロゲン化リチウムの析出を抑制することができる。
【0085】
第二の溶媒を用いる場合、第二の溶媒の使用量は、硫化リチウムとハロゲン分子との合計量1kgに対して、好ましくは2000mL以上、より好ましくは3500mL以上、更に好ましくは5000mL以上、より更に好ましくは6000mL以上であり、上限として好ましくは10000mL以下、より好ましくは9000mL以下、更に好ましくは8000mL以下、より更に好ましくは7500mL以下である。第二の溶媒の使用量が上記範囲内であると、硫化リチウム及びハロゲン分子の分散状態を向上させながら、硫化リチウムの表面におけるハロゲン化リチウムの析出を抑制することができる。
【0086】
(溶媒を除去すること)
本実施形態の製造方法は、溶媒を除去することを含む。溶媒を除去することで、ハロゲン化リチウム化合物が得られる。溶媒を除去することには、硫化リチウム、ハロゲン分子、第一の溶媒及び必要に応じて用いられる第二の溶媒を混合した混合物から液体として存在する溶媒を除去すること、及び第一の溶媒が取り込まれたハロゲン化リチウム錯体から当該第一の溶媒を除去すること、も含まれる。溶媒を除去することを、上記いずれの形態の除去とするかは、溶媒を除去する手法により調整することが可能であり、前者の除去を行う場合はろ過、デカンテーション等の固液分離などの手法を採用し、後者の除去を行う場合は乾燥による手法を採用すればよい。これらの手法については後述する。
【0087】
ハロゲン化リチウム化合物は、既述のようにハロゲン化リチウム、ハロゲン化リチウム錯体、複数種のハロゲン原子を含むハロゲン化リチウム複合体等が含まれ得る。より詳細には、第一の溶媒として錯化剤を用いる場合、ハロゲン化リチウム化合物はハロゲン化リチウムとともにハロゲン化リチウム錯体を含み、複数種のハロゲン分子を用いる場合には、ハロゲン化リチウムとともに複数種のハロゲン原子を含むハロゲン化リチウム複合体を含み、第一の溶媒として錯化剤を用い、かつ複数種のハロゲン分子を用いる場合は、ハロゲン化リチウム化合物はハロゲン化リチウムとともにハロゲン化リチウム錯体及びハロゲン化リチウム複合体を含み得ることとなる。
よって、例えば第一の溶媒として錯化剤を用い、かつ複数種のハロゲン分子を用いる場合、ろ過により溶媒を除去すると、ハロゲン化リチウム、ハロゲン化リチウム錯体及びハロゲン化リチウム複合体が得られることとなり、乾燥により溶媒を除去すると、ハロゲン化リチウム及びハロゲン化リチウム複合体が得られることとなる。
【0088】
溶媒を除去することにより除去されるものに着目すると、第一の溶媒のみを用いる場合は、第一の溶媒が除去され、第一の溶媒と第二の溶媒とを併用する場合は、第一の溶媒及び第二の溶媒が除去されることになる。また既述のように、第二の溶媒を用いる場合、第二の溶媒は副生成物である硫黄分子を溶解し得ることから、溶媒を除去することにより、あわせて硫黄分子を除去することも可能となる。
【0089】
後述するように、第三の溶媒を用いてハロゲン化リチウム化合物及び硫黄分子を洗浄する場合は、当該第三の溶媒も溶媒を除去することにより除去される溶媒となり、第二の溶媒と同様に、あわせて硫黄分子を除去することも可能となる。この場合、溶媒を除去することは、上記混合することの後に一回行い、洗浄した後に再度行う、すなわち二回行ってもよい。この点についても、洗浄することについての説明の際に詳説する。
【0090】
溶媒を除去する方法としては、既述のようにろ過、乾燥等が好ましく挙げられ、これらを組み合わせて行ってもよい。
ろ過は、液体として存在する溶媒の除去に採用される方法であり、例えばガラスフィルター等を用いて行えばよく、ガラスフィルターとしては、例えばポアサイズが10~200μm程度、好ましくは20~150μmのものを用いるとよい。
【0091】
乾燥は、液体として存在する溶媒の除去とともに、ハロゲン化リチウム錯体に取り込まれた第一の溶媒(錯化剤)を除去し得る方法である。
乾燥は、減圧による乾燥、加熱による乾燥等により行うことができ、例えば減圧下で乾燥した後に、次いで加熱による乾燥を行うこともできるし、また減圧下の加熱による乾燥を行うこともできる。乾燥により溶媒を除去すると、溶媒は揮発等により除去されることとなるため、ハロゲン化リチウム化合物にハロゲン化リチウム錯体が含まれる場合、当該錯体内から第一の溶媒が揮発して除去され、ハロゲン化リチウムとなる。よって、第一の溶媒を用いた場合であって、ハロゲン化リチウム錯体をハロゲン化リチウムにしたい場合には、乾燥により溶媒を除去すればよい。
【0092】
乾燥は、既述のようにハロゲン化リチウム錯体に取り込まれた第一の溶媒を除去し得る方法ではあるが、当該取り込まれた第一の溶媒を除去しない程度に加熱の温度を調整することで、ハロゲン化リチウム錯体をそのままとしておくことも可能であるし、これを更に当該第一の溶媒を除去する程度の温度条件で加熱による乾燥を行うことにより、ハロゲン化リチウム錯体より当該第一の溶媒を除去し、ハロゲン化リチウムとすることも可能である。加熱による乾燥において、加熱温度は所望に応じて調整できる。
【0093】
減圧による乾燥は、例えば真空ポンプ等を用いて行うことができ、乾燥時間短縮の観点から真空下において乾燥することが好ましい。
乾燥を加熱により行う場合、第一の溶媒、必要に応じて使用する第二の溶媒、第三の溶媒の種類に応じた温度で行うことができ、例えばこれらの溶媒の沸点以上の温度で行うことができる。この場合、減圧の度合いにもよるため一概にはいえないが、加熱の温度としては、通常5~100℃、好ましくは10~85℃、より好ましくは15~70℃、より更に好ましくは20~60℃である。
【0094】
また、乾燥する方法として、固液分離による方法も好ましく挙げられる。固液分離は、例えばデカンテーションにより、また遠心分離機等を用いて行うことができる。
デカンテーションを行う場合は、具体的には、硫化リチウム、ハロゲン分子、第一の溶媒及び必要に応じて用いられる第二の溶媒を混合した混合物、また必要に応じて採用される洗浄において用いられる第三の溶媒を含む混合物を容器に移し、固体が沈殿した後に、上澄みとなる第一の溶媒、第二の溶媒、第三の溶媒を除去することで行い得る。
【0095】
(硫黄分子を洗浄し、除去すること)
本実施形態の製造方法は、さらに硫黄分子を洗浄し、除去することを含んでもよい。本実施形態では、上記反応式(2)に示されるように、硫化リチウムとハロゲン分子との反応により、硫黄分子が副生するため、これを除去することで、純度の高いハロゲン化リチウム化合物を製造することが可能となる。
第二の溶媒を用いた場合は、当該第二の溶媒には通常、硫黄分子が溶解していることから、当該第二の溶媒を除去することにより硫黄分子を除去が可能であるため、硫黄分子を洗浄し、除去することは、溶媒を除去することにより実質的に行われているといえる。第二の溶媒を用いない場合、また第二の溶媒を用いた場合であっても、硫黄分子をさらに除去して、より純度の高いハロゲン化リチウム化合物を得る観点から、上記の溶媒の除去とは別に、洗浄し、除去することを行うことが好ましい。
【0096】
洗浄することは、上記の溶媒を除去することを行った後に行ってもよいし、溶媒を除去することを行う前に行ってもよいが、より効率的に硫黄分子を除去する観点から、溶媒を除去することを行った後に行うこと、すなわち、前記混合することにより得られる、ハロゲン化リチウム化合物、硫黄分子、第一の溶媒及び必要に応じて用いられる第二の溶媒を含む混合物から、第一の溶媒及び第二の溶媒を除去して得られる、ハロゲン化リチウム化合物及び硫黄分子を含む混合物に対して行うことが好ましい。
【0097】
洗浄する方法としては、第三の溶媒を用いた洗浄が容易であるため好ましく、第三の溶媒としては、硫黄分子の除去が容易であることから、硫黄分子を溶解し得る溶媒が好ましい。硫黄分子を溶解し得る溶媒としては、硫黄の溶解度(20℃)として、好ましくは0.1g/L以上のもの、より好ましくは0.3g/L以上のもの、更に好ましくは0.5g/L以上のもの、特に好ましくは1g/L以上、上限に特に制限はないが、600g/L以下、550g/L以下、100g/L以下であるものが挙げられる。すなわち、第三の溶媒としては、上記の第二の溶媒として例示した溶媒の中から適宜選択して採用することができ、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒;炭素原子とヘテロ原子を含む溶媒、等の炭素原子を含む溶媒が挙げられ、炭化水素溶媒が好ましく、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素がより好ましく、芳香族炭化水素が更に好ましく、特にトルエンが好ましいことも、第二の溶媒と同様である。よって、第二の溶媒と第三の溶媒とは同一(同じ種類)のものを用いることが好ましい。
【0098】
ハロゲン化リチウムと硫黄分子との混合物の洗浄は、第三の溶媒を用いて洗浄を行う場合、例えば上記混合による硫化リチウム、ハロゲン分子、第一の溶媒及び必要に応じて用いられる第二の溶媒を混合した混合物から溶媒を除去して得られる、反応物のハロゲン化リチウム化合物と副生成物の硫黄分子との混合物に、第三の溶媒に加え、固体であるハロゲン化リチウム化合物が沈殿した後、上澄みとなる溶媒を廃棄する、上記のデカンテーションと同様の処理により行えばよく、また上記処理は繰り返して行ってもよい。
【0099】
洗浄することを、溶媒を除去することを行った後に行う場合であって、洗浄することを第三の溶媒を用いて行った場合は、洗浄することを行った後、更に溶媒を除去することを行うことが好ましい。これにより、第三の溶媒の除去とともに硫黄分子の除去もできるため、ハロゲン化リチウム化合物中の硫黄分子の含有量をより低減することができる。この場合の溶媒の除去は、上記の溶媒の除去における方法の中から適宜選択して行えばよい。
このように、本実施形態の製造方法においては、溶媒を除去することを二回行ってもよい。この場合、一回目の溶媒の除去は、上記混合により得られるハロゲン化リチウム化合物、硫黄分子、第一の溶媒及び必要に応じて用いられる第二の溶媒を含む混合物より、第一の溶媒及び第二の溶媒の除去とともに、第二の溶媒に含まれる硫黄分子を除去することとなり、二回目の溶媒の除去は、第三の溶媒を用いて洗浄した後の、ハロゲン化リチウム化合物、硫黄分子及び第三の溶媒を含む混合物より、第三の溶媒の除去とともに、第三の溶媒に含まれる硫黄分子を除去することとなる。
【0100】
本実施形態の製造方法により得られるハロゲン化リチウム化合物は、既述のように、ハロゲン化リチウムの他、ハロゲン化リチウム錯体、ハロゲン化リチウム複合体を含むものである。これらのハロゲン化リチウム化合物は、いずれも水分の除去を行わないにもかかわらず、水の含有量が少ない、品質の高いものであるため、硫化物固体電解質の原料として好適に用いられる。
本実施形態の製造方法により得られるハロゲン化リチウム化合物に含まれる水分量は、1質量%以下、さらには0.5質量%以下、0.3質量%以下である。また下限は、通常0.01質量%程度である。本明細書において、ハロゲン化リチウム化合物の水分量は、硫化リチウム中の水分量と同様に、カールフィッシャー水分計を用いて、気化法、280℃の条件で測定した値とする。
【0101】
本実施形態の製造方法により得られるハロゲン化リチウム化合物は、既述のように多孔質性を有するものであり、BET法により測定される比表面積は1.0m2/g以上、さらには5.0m2/g以上、10.0m2/g以上である。また上限としては通常80.0m2/g以下程度である。本明細書において、比表面積は、BET法(気体吸着法)により測定される値であり、気体として窒素を用いてもよいし(窒素法)、クリプトンを用いてもよく(クリプトン法)、比表面積の大きさに応じて適宜選択して測定される。比表面積は、例えば、ガス吸着量測定装置(例えば、AUTOSORB6(シスメックス(株)製)等)等の市販の装置を用いて測定することができる。
【0102】
(硫化物固体電解質の製造方法)
本実施形態の製造方法により得られるハロゲン化リチウム化合物は、既述のように硫化物固体電解質の原料として好適に使用される。硫化物固体電解質は、例えば本実施形態の製造方法により得られるハロゲン化リチウム化合物と、ハロゲン化リチウム以外のリチウム化合物と、リン化合物と、を反応させることを含む製造方法により得られる。ハロゲン化リチウム化合物と、ハロゲン化リチウム以外のリチウム化合物と、リン化合物と、を反応させることを含む製造方法は公知の方法であり、具体的な処理、操作等については公知の方法に従い行えばよい。
【0103】
ハロゲン化リチウム化合物は、使用するハロゲン分子に応じて、フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム等が挙げられ、臭化リチウム、ヨウ化リチウムが好ましい。
ハロゲン化リチウム化合物以外のリチウム化合物としては、例えば硫化リチウム(Li2S)、酸化リチウム(Li2O)、炭酸リチウム(Li2CO3)等が好ましく挙げられ、中でも、イオン伝導度の観点から、硫化リチウムが好ましい。
【0104】
リン化合物としては、例えば三硫化二リン(P2S3)、五硫化二リン(P2S5)等の硫化リン、リン酸ナトリウム(Na3PO4)、リン酸リチウム(Li3PO4)等のリン酸化合物などが好ましく挙げられる。中でも、硫化リンが好ましく、五硫化二リン(P2S5)がより好ましい。五硫化二リン(P2S5)等のリン化合物は、工業的に製造され、販売されているものであれば、特に限定なく使用することができる。これらのリン化合物は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0105】
また、ハロゲン化リチウム化合物以外のハロゲン原子を含むものとして、ハロゲン分子、すなわち、フッ素(F2)、塩素(Cl2)、臭素(Br2)、ヨウ素(I2)、好ましくは塩素(Cl2)、臭素(Br2)、ヨウ素(I2)、より好ましくは臭素(Br2)、ヨウ素(I2)を用いることもできる。
【0106】
上記の中でも、硫化リチウム、五硫化二リン及びハロゲン化リチウム化合物、硫化リチウム、五硫化二リン、ハロゲン化リチウム化合物及びハロゲン分子の組合せが好ましい。
【0107】
原料として、硫化リチウム、五硫化二リン及びハロゲン化リチウムを用いる場合、硫化リチウム及び五硫化二リンの合計に対する硫化リチウムの割合は、より高い化学的安定性及びより高いイオン伝導度を得る観点から、70~80mol%が好ましく、72~78mol%がより好ましく、74~78mol%が更に好ましい。
また、ハロゲン化リチウムとして、臭化リチウムとヨウ化リチウムとを組み合わせて用いる場合、イオン伝導度を向上させる観点から、臭化リチウム及びヨウ化リチウムの合計に対する臭化リチウムの割合は、1~99mol%が好ましく、20~90mol%がより好ましく、40~80mol%が更に好ましく、50~70mol%が特に好ましい。
【0108】
ハロゲン化リチウムとして、臭化リチウムとヨウ化リチウムとを組み合わせて用いる場合、イオン伝導度を向上させる観点から、臭化リチウム及びヨウ化リチウムの合計に対する臭化リチウムの割合は、1~99mol%が好ましく、20~90mol%がより好ましく、40~80mol%が更に好ましく、50~70mol%が特に好ましい。
【0109】
硫化リチウムと五硫化二リンとハロゲン単体とハロゲン化リチウムとを用いる場合、これらの合計量に対するハロゲン単体の含有量(αmol%)、及びハロゲン化リチウムの含有量(βmol%)は、下記数式(2)を満たすことが好ましく、下記数式(3)を満たすことがより好ましく、下記数式(4)を満たすことが更に好ましく、下記数式(5)を満たすことが更により好ましい。
2≦2α+β≦100…(2)
4≦2α+β≦80 …(3)
6≦2α+β≦50 …(4)
6≦2α+β≦30 …(5)
【0110】
ハロゲン化リチウム化合物と、ハロゲン化リチウム以外のリチウム化合物と、リン化合物と、を反応させることにおいて、当該反応は、これらの原料を混合、撹拌、粉砕等の処理により行うことができる。例えば、混合、撹拌の処理をする場合は、本実施形態の製造方法における混合することにおいて用いられる機械撹拌式混合機を使用すればよいし、また粉砕の処理をする場合は、ボールミル、ビーズミル等の媒体式粉砕機等の、一般に粉砕機と称される機器を使用すればよい。
【0111】
また、混合、撹拌により反応させる場合、上記の第一の溶媒の好ましいものとして例示した錯化剤を、必要に応じて各種溶媒(例えば、上記の第二の溶媒として例示した溶媒等)、ハロゲン化リチウム化合物、ハロゲン化リチウム以外のリチウム化合物及びリン化合物の原料とともに撹拌(混合)すると、粉砕せずに固体電解質を得られる点で好ましい。この場合、撹拌(混合)すると、原料と錯化剤とにより構成される電解質前駆体と、液体の錯化剤及び溶媒を含むスラリーが得られ、これを乾燥することで液体の錯化剤、溶媒を除去し、さらに加熱することで硫化物固体電解質が得られる。
上記乾燥は、本実施形態の製造方法における乾燥を行い得る手法のいずれかにより行うことができ、加熱による乾燥を行う際の温度条件等は、使用する溶媒が本実施形態の製造方法で用いる溶媒と同じものを用いることとなるため、本実施形態の製造方法における加熱による乾燥の条件と同じである。
【0112】
上記方法により得られる硫化物固体電解質は、リチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素を含んでおり、基本的には非晶性硫化物固体電解質である。本明細書において、非晶性硫化物固体電解質とは、X線回折測定におけるX線回折パターンにおいて、材料由来のピーク以外のピークが実質的に観測されないハローパターンであるもののことであり、固体電解質の原料由来のピークの有無は問わないものである。
本実施形態の製造方法により得られるハロゲン化リチウム化合物を用いて得られる非晶性硫化物固体電解質として代表的なものとしては、例えば、Li2S-P2S5-LiI、Li2S-P2S5-LiCl、Li2S-P2S5-LiBr、Li2S-P2S5-LiI-LiBr等の、硫化リチウムと硫化リンとハロゲン化リチウムとから構成される固体電解質;更に酸素元素、珪素元素等の他の元素を含む、例えば、Li2S-P2S5-Li2O-LiI、Li2S-SiS2-P2S5-LiI等の固体電解質が好ましく挙げられる。より高いイオン伝導度を得る観点から、Li2S-P2S5-LiI、Li2S-P2S5-LiCl、Li2S-P2S5-LiBr、Li2S-P2S5-LiI-LiBr等の、硫化リチウムと硫化リンとハロゲン化リチウムとから構成される固体電解質が好ましい。
非晶性固体電解質を構成する元素の種類は、例えば、ICP発光分光分析装置により確認することができる。
【0113】
また、上記の非晶性硫化物固体電解質は、更に加熱をすることにより、結晶性硫化物固体電解質とすることができる。本明細書において、結晶性固体電解質とは、X線回折測定におけるX線回折パターンにおいて、固体電解質由来のピークが観測される固体電解質であって、これらにおいての固体電解質の原料由来のピークの有無は問わないものである。すなわち、結晶性固体電解質は、固体電解質に由来する結晶構造を含み、その一部が該固体電解質に由来する結晶構造であっても、その全部が該固体電解質に由来する結晶構造であってもよい。そして、結晶性固体電解質は、上記のようなX線回折パターンを有していれば、その一部に非晶性固体電解質が含まれていてもよい。したがって、結晶性固体電解質には、非晶質固体電解質を結晶化温度以上に加熱して得られる、いわゆるガラスセラミックスが含まれる。
【0114】
加熱温度は、非晶性硫化物固体電解質の構造に応じて適宜選択することができるため一概にいうことはできないが、例えば、示差熱分析装置(DTA装置)を用いて、10℃/分の昇温条件で示差熱分析(DTA)を行い、最も低温側で観測される発熱ピークのピークトップの温度を起点に、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上の範囲とすればよく、上限としては特に制限はないが、40℃以下程度とすればよい。具体的には、通常、130℃以上が好ましく、135℃以上がより好ましく、140℃以上が更に好ましく、上限としては特に制限はないが、好ましくは300℃以下、より好ましくは280℃以下、更に好ましくは250℃以下である。
【0115】
加熱時間は、所望の結晶性硫化物固体電解質が得られる時間であれば特に限定されるものではないが、1分間以上が好ましく、10分以上がより好ましく、30分以上が更に好ましく、1時間以上がより更に好ましい。また、加熱時間の上限は特に制限されるものではないが、24時間以下が好ましく、10時間以下がより好ましく、5時間以下が更に好ましく、3時間以下がより更に好ましい。
【0116】
また、加熱は、不活性ガス雰囲気(例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気)、または減圧雰囲気(特に真空中)で行なうことが好ましい。結晶性固体電解質の劣化(例えば、酸化)を防止できるからである。加熱の方法は、特に制限されるものではないが、例えば、ホットプレート、真空加熱装置、アルゴンガス雰囲気炉、焼成炉を用いる方法等を挙げることができる。また、工業的には、加熱手段と送り機構を有する横型乾燥機、横型振動流動乾燥機等を用いることもでき、加熱する処理量に応じて選択すればよい。
【0117】
本実施形態の製造方法により得られるハロゲン化リチウム化合物を用いて得られる結晶性硫化物固体電解質としては、Li3PS4結晶構造、Li4P2S6結晶構造、Li7PS6結晶構造、Li7P3S11結晶構造、2θ=20.2°近傍及び23.6°近傍にピークを有する結晶構造(例えば、特開2013-16423号公報)等の結晶構造を有する硫化物固体電解質が挙げられる。
【0118】
また、Li4-xGe1-xPxS4系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型結晶構造(Kannoら、Journal of The Electrochemical Society,148(7)A742-746(2001)参照)、Li4-xGe1-xPxS4系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型と類似の結晶構造(Solid State Ionics,177(2006),2721-2725参照)等も挙げられる。イオン伝導度の観点から、チオリシコンリージョンII型結晶構造であることが好ましい。ここで、「チオリシコンリージョンII型結晶構造」は、Li4-xGe1-xPxS4系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型結晶構造、Li4-xGe1-xPxS4系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型と類似の結晶構造のいずれかであることを示す。
【0119】
このようにして得られた硫化物固体電解質は、水分を含まないハロゲン化リチウム化合物を原料として得られるものであることから、水分が少なく、イオン伝導度が高く、優れた電池性能を有するものとなる。よって、本実施形態の製造方法により得られるハロゲン化リチウム化合物を用いて得られる硫化物固体電解質は、Liイオン伝導性を必要とする任意の用途に用いることができ、とりわけ、電池に好適に用いられる。硫化物固体電解質は、正極層に用いてもよく、負極層に用いてもよく、電解質層に用いてもよい。なお、各層は、公知の方法により製造することができる。
また上記電池は、正極層、電解質層及び負極層の他に集電体を使用することが好ましく、集電体は公知のものを用いることができる。例えば、Au、Pt、Al、Ti、又は、Cu等のように、硫化物固体電解質と反応するものをAu等で被覆した層が使用できる。
【実施例】
【0120】
次に実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0121】
(製造例:硫化リチウム(Li2S)の製造)
非水溶性媒体としてトルエン(住友商事株式会社製)を脱水処理し、カールフィッシャー水分計にて測定し水分量が100ppmとなったものを窒素気流下で303.8kgを500Lステンレス製反応釜に加え、続いて無水水酸化リチウム33.8kg(本荘ケミカル株式会社製)を投入し、ツインスター撹拌翼131rpmで撹拌しながら、95℃に保持した。
スラリー中に硫化水素(住友精化株式会社製)を100L/分の供給速度で吹き込みながら104℃まで昇温した。反応釜からは、水とトルエンの共沸ガスが連続的に排出された。この共沸ガスを、系外のコンデンサで凝縮させることにより脱水した。この間、留出するトルエンと同量のトルエンを連続的に供給し、反応液レベルを一定に保持した。
凝縮液中の水分量は徐々に減少し、硫化水素導入後24時間で水の留出は認められなくなった。尚、反応の間は、トルエン中に固体が分散して撹拌された状態であり、トルエンから分層した水分は無かった。
この後、硫化水素を窒素に切り替え100L/分で1時間流通した。
【0122】
(実施例1)
撹拌子入りシュレンク(容量:100mL)に、窒素雰囲気下で硫化リチウム(Li
2S)0.50g(10.9mmol)を導入した。第二の溶媒としてトルエン20mLを加えて、撹拌子を回転させた後、ハロゲン分子としてヨウ素2.76g(10.9mmol)を加えて、第二の溶媒中で硫化リチウムとヨウ素との混合を2時間行い、第一の溶媒として脱水処理を施した酢酸エチル4mLを添加し、さらに2時間の混合を行った。目視にて上澄み中にヨウ素による着色がないことを確認した後、真空下で溶媒として用いたトルエン及び酢酸エチルを除去し、さらに100℃で加熱による乾燥を2時間行った。乾燥後、トルエン50mLを加え、10分間撹拌した。撹拌後、静置して固形分を沈降させ、上澄み40mLを除去した。このデカンテーションを3回繰り返し行った。デカンテーション後、真空下100℃で加熱による乾燥を2時間行い、粉末を得た。
得られた粉末について、以下の方法により粉末X線回折(XRD)測定を行った。またこれと同じ方法により、原料として使用した硫化リチウムについてもXRD測定を行った。これらのXRD測定の結果を、
図1に示す。
図1に示されるように、得られた粉末は、硫化リチウムのピークは消失し、ヨウ化リチウムに起因するピークを有するものであり、ヨウ化リチウムの粉末であることが確認された。
【0123】
本明細書において、粉末X線回折(XRD)測定は以下のようにして実施した。
実施例及び比較例で得られた粉末を、直径20mm、深さ0.2mmの溝に充填し、ガラスで均して試料とした。この試料を、XRD用カプトンフィルムで密閉し、空気に触れさせずに、以下の条件で測定した。
測定装置:D2 PHASER、ブルカー(株)製
管電圧:30kV
管電流:10mA
X線波長:Cu-Kα線(1.5418Å)
光学系:集中法
スリット構成:ソーラースリット4°、発散スリット1mm、Kβフィルター(Ni板)使用
検出器:半導体検出器
測定範囲:2θ=10-60deg
ステップ幅、スキャンスピード:0.05deg、0.05deg/秒
【0124】
(実施例2)
撹拌子入りシュレンク(容量:100mL)に、窒素雰囲気下で硫化リチウム(Li
2S)0.50g(10.9mmol)を導入した。第二の溶媒としてトルエン20mLを加えて、撹拌子を回転させた後、ハロゲン分子としてヨウ素2.76g(10.9mmol)を加えて、第二の溶媒中で硫化リチウムとヨウ素との混合を2時間行い、第一の溶媒としてテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)4mLを添加し、さらに2時間の混合を行った。混合の後、真空下で溶媒として用いたトルエン及びテトラメチルエチレンジアミンを除去した後、さらに100℃で加熱による乾燥を2時間行い、粉末を得た。
得られた粉末について、実施例1と同様の方法により粉末X線回折(XRD)測定を行った。当該粉末のXRD測定の結果を、
図2に示す。当該粉末は、硫化リチウムのピークは消失しているものの、実施例1のヨウ化リチウムのピークとは異なるピークが発生しており、硫化リチウムでもなく、ヨウ化リチウムでもない、すなわちヨウ化リチウムとテトラメチルエチレンジアミンとによるヨウ化リチウム錯体であると考えられる。
さらに、当該粉末について、200℃で2時間の加熱による乾燥を行った。当該乾燥により得られた粉末について、実施例1と同様の方法により粉末X線回折(XRD)測定を行った。当該粉末のXRD測定の結果を、
図2に示す。当該粉末は、実施例1で得られた粉末、すなわちヨウ化リチウムと同じピークを有しており、ヨウ化リチウムであることが確認された。
【0125】
(実施例3)
撹拌子入りシュレンク(容量:100mL)に、窒素雰囲気下で硫化リチウム(Li
2S)0.50g(10.9mmol)を導入した。第二の溶媒としてトルエン20mLを加えて、撹拌子を回転させた後、ハロゲン分子として臭素0.87g(5.44mmol)、ヨウ素1.38g(5.44mmol)を加えて、第二の溶媒中で硫化リチウムと臭素とヨウ素との混合を2時間行い、第一の溶媒として脱水処理を施した酢酸エチル4mLを添加し、さらに2時間の混合を行った。混合の後、真空下で溶媒として用いたトルエン及び酢酸エチルを除去した後、さらに100℃で加熱による乾燥を2時間行い、粉末を得た。
得られた粉末について、実施例1と同様の方法により粉末X線回折(XRD)測定を行った。
図3に示されるように、得られた粉末は、硫化リチウムのピークは消失し、臭化リチウム及びヨウ化リチウムに起因するピークを有するものであり、臭化リチウム及びヨウ化リチウムの粉末であることが確認された。
【0126】
(実施例4)
撹拌子入りシュレンク(容量:100mL)に、窒素雰囲気下で硫化リチウム(Li
2S)0.50g(10.9mmol)を導入した。第二の溶媒としてトルエン20mLを加えて、撹拌子を回転させた後、ハロゲン分子としてヨウ素2.76g(10.9mmol)を加えて、第二の溶媒中で硫化リチウムとヨウ素との混合を2時間行い、第一の溶媒として脱水処理を施したテトラヒドロフラン(THF)4mLを添加し、さらに2時間の混合を行った。混合の後、真空下室温(23℃)で溶媒として用いたトルエン及びテトラヒドロフランを除去した後、粉末を得た。
得られた粉末について、実施例1と同様の方法により粉末X線回折(XRD)測定を行った。当該粉末のXRD測定の結果を、
図4に示す。当該粉末は、硫化リチウムのピークは消失しているものの、実施例1のヨウ化リチウムのピークとは異なるピークが発生しており、硫化リチウムでもなく、ヨウ化リチウムでもない、すなわちヨウ化リチウムとテトラヒドロフランによるヨウ化リチウム錯体であると考えられる。
さらに、当該粉末について、100℃で2時間の加熱による乾燥を行った。当該乾燥により得られた粉末について、実施例1と同様の方法により粉末X線回折(XRD)測定を行った。当該粉末のXRD測定の結果を、
図4に示す。当該粉末は、実施例1で得られた粉末、すなわちヨウ化リチウムと同じピークを有しており、ヨウ化リチウムであることが確認された。
【0127】
(実施例5)
撹拌子入りシュレンク(容量:100mL)に、窒素雰囲気下で硫化リチウム(Li
2S)0.50g(10.9mmol)を導入した。第二の溶媒としてシクロヘキサン20mLを加えて、撹拌子を回転させた後、ハロゲン分子としてヨウ素2.76g(10.9mmol)を加えて、第二の溶媒中で硫化リチウムとヨウ素との混合を2時間行い、第一の溶媒として脱水処理を施したテトラヒドロフラン(THF)4mLを添加し、さらに2時間の混合を行った。混合の後、真空下室温(23℃)で溶媒として用いたトルエン及びテトラヒドロフランを除去した後、粉末を得た。
さらに、当該粉末について、100℃で2時間の加熱による乾燥を行った。当該乾燥により得られた粉末について、実施例1と同様の方法により粉末X線回折(XRD)測定を行った。当該粉末のXRD測定の結果を、
図5に示す。当該粉末は、実施例1で得られた粉末、すなわちヨウ化リチウムと同じピークを有しており、ヨウ化リチウムであることが確認された。
【0128】
(比較例1)
撹拌子入りシュレンク(容量:100mL)に、窒素雰囲気下で硫化リチウム(Li2S)0.50g(10.9mmol)を導入した。第二の溶媒としてトルエン20mLを加えて、撹拌子を回転させた後、ハロゲン分子としてヨウ素2.76g(10.9mmol)を加えて、第二の溶媒中で硫化リチウムとヨウ素との混合を50時間行った。混合の後、放置して粉末が沈殿した後、上澄み液を抜き取り、チオ硫酸ナトリウム水溶液で処理した後、ICP分析(誘導結合プラズマ発光分光分析)による組成分析を行ったところ、ヨウ素は原料として使用した2.76g中、28%のヨウ素が未反応で残留することが確認された。
【0129】
比較例1で得られた試料について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影し、これをエネルギー分散型X線分光装置(EDS装置)による元素分析を行った。走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影したSEM画像を
図6に示す。
図6によれば、硫化リチウム(図中、Li
2Sと示されるより濃い領域部分)の周辺にヨウ化リチウム(図中、LiIと示されるより薄い領域部分)が生成している様子が分かる。このように、比較例1の方法では未反応の硫化リチウムが残存してしまうことが確認された。
また試料中の硫黄元素及びヨウ素元素についての、エネルギー分散型X線分光装置(EDS装置)による元素分析の結果のEDS画像を、各々
図7及び8に示す。EDS画像の結果からも、硫黄元素は硫化リチウムが存在する領域部分に存在し、ヨウ素元素はヨウ化リチウムが存在する領域部分に存在しており、硫黄元素が未反応の硫化リチウムに起因して残存していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明の製造方法によれば、水分を直接除去する工程を伴わずに水分量が少ないハロゲン化リチウム化合物、中でも臭化リチウム及びヨウ化リチウムを、高い反応効率で、また工業的にも有利に製造することができる。得られたハロゲン化リチウム化合物は、水分量が少ないことから、硫化物固体電解質の原料として好適に用いることができる。