(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-19
(45)【発行日】2025-09-30
(54)【発明の名称】光学素子用のポリアミド組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20250922BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20250922BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20250922BHJP
G03B 17/00 20210101ALI20250922BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20250922BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K3/013
C08K7/02
G03B17/00
G03B30/00
(21)【出願番号】P 2022562071
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(86)【国際出願番号】 EP2021058319
(87)【国際公開番号】W WO2021204600
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2024-03-27
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/083965
(32)【優先日】2020-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】チェン,リン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ヤオ タオ
(72)【発明者】
【氏名】パラップヴェーティル サランガダラン,スレシュ
(72)【発明者】
【氏名】ルー,ハン
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-070811(JP,A)
【文献】特開2013-213081(JP,A)
【文献】特開2019-026670(JP,A)
【文献】特表2015-503014(JP,A)
【文献】米国特許第12252615(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
G03B 17/00、30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
30質量%~70質量%のポリアミド混合物、及び30質量%~70質量%のフィラー混合物を含むポリアミド組成物であって、これら質量%が前記ポリアミド組成物の総質量に基づくものであり、
前記ポリアミド混合物には、成分(A)として半結晶性半芳香族ポリアミド、及び成分(B)として非晶質ポリアミドが含まれ、質量比(A)/(B)が1:1より大きく、前記フィラー混合物には、成分(C)として
100μm以下の平均長さを有する針状フィラー、及び成分(D)として板状フィラーが含まれ、質量比(C)/(D)が1:1より大き
く、
針状フィラー(C)の長さと直径のアスペクト比が、2:1に等しいかそれより大きく、
板状フィラー(D)のアスペクト比ECD/Tが、30:1に等しいかそれより大きく、ECDが前記板状フィラーの円相当径を表し、Tが前記板状フィラーの最大厚さを表し、
前記非晶質ポリアミドが、PA MACM6、PA PACM6、PA PACM10及びPA IPD6、PA6I、PA8I、PA6I/6T、PA10I/10T、PA PACMI、PA PACMT、PA MACMT、PA MACMI、PA IPDT、PA IPDI、PA DT/DI、PA DT及びPA DI、及びPA MXD6/MXDIからなる群から選択される、
ポリアミド組成物。
【請求項2】
前記半結晶性半芳香族ポリアミドが、ジカルボン酸及びジアミン、及び0~20モル%のアミノ酸及び/又はラクタムから誘導される繰り返し単位を含み、これらモル%は前記半結晶性半芳香族ポリアミドを構成する全モノマーに基づき、
前記ジカルボン酸が、芳香族ジカルボン酸(a-1)、又は芳香族ジカルボン酸(a-1)と、脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸を含む他のジカルボン酸(a-2)との組み合わせであり、芳香族ジカルボン酸(a-1)が60~100モル%の量であり、他のジカルボン酸(a-2)が0~40モル%の量であり、これらモル%は前記半結晶性半芳香族ポリアミドを構成する前記ジカルボン酸の総モルに基づき、
前記ジアミンが、脂肪族ジアミン(b-1)、又は脂肪族ジアミン(b-1)と芳香族ジアミン(b-2)との組み合わせであり、脂肪族ジアミン(b-1)が80~100モル%の量であり、芳香族ジアミン(b-2)が0~20モル%の量であり、これらモル%は前記半結晶性半芳香族ポリアミドを構成するジアミンの総モルに基づき、
又は前記ジカルボン酸が、脂肪族ジカルボン酸、又は脂肪族ジカルボン酸と脂環式ジカルボン酸との組み合わせであり、前記脂肪族ジカルボン酸が80~100モル%の量であり、前記脂環式ジカルボン酸が0~20モル%の量であり、これらモル%は前記半結晶性半芳香族ポリアミドを構成する前記ジカルボン酸の総モルに基づき、前記ジアミンが、芳香族ジアミン、芳香族ジアミンと脂肪族ジアミンとの組み合わせであり、前記芳香族ジアミンが80~100モル%の量であり、前記脂肪族ジアミンが0~20モル%の量であり、これらモル%は前記半結晶性半芳香族ポリアミドを構成する前記ジアミンの総モルに基づくものである、
請求項1に記載のポリアミド組成物。
【請求項3】
芳香族ジカルボン酸(a-1)が、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、又はそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択され、他のジカルボン酸(a-2)が、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸からなる群から選択され、
脂肪族ジアミン(b-1)が、直鎖脂肪族ジアミン(b-1a)、又は直鎖脂肪族ジアミンと分岐脂肪族ジアミン(b-1b)との組合せであり、
直鎖脂肪族ジアミン(b-1a)が、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン及び1,12-ドデカンジアミンからなる群から選択され、
分岐脂肪族ジアミン(b-1b)が、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、3-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン及び2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミンからなる群から選択される、請求項
2に記載のポリアミド組成物。
【請求項4】
芳香族ジカルボン酸(a-1)に10~40モル%のイソフタル酸、及び60~90モル%の、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びビフェニルジカルボン酸からなる群から選択される、少なくとも1つのジカルボン酸が含まれ、他のジカルボン酸(a-2)が、前記半結晶性半芳香族ポリアミドを構成する前記ジカルボン酸の総モルに基づいて0~10モル%の量であり、
前記ジアミンに90~100モル%の脂肪族ジアミン(b-1)、又は脂肪族ジアミンと0~10モル%の芳香族ジアミン(b-2)との組み合わせが含まれ、これらモル%は前記半結晶性半芳香族ポリアミドを構成する前記ジアミンの総モルに基づくものである、
請求項
2又は3に記載のポリアミド組成物。
【請求項5】
発泡剤を含むものを除く、請求項1から4のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【請求項6】
半結晶性半芳香族ポリアミド(A)が、30質量%~65質量
%の量であり、本発明の非晶質ポリアミド(B)が、5質量%~40質量
%の量であり、これら質量%はポリアミド組成物の総質量に基づくものである、請求項1から5のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【請求項7】
成分(A)/成分(B)の質量比が、2:1に等しいかそれより大き
い、請求項1から6のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【請求項8】
針状フィラー(C)の長さと直径のアスペクト比が
、2:1~5000:
1である、請求項1から7のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【請求項9】
針状フィラー(C)が
、10μm~100μmの平均長さを有する、請求項1から8のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【請求項10】
板状フィラー(D)のアスペクト比ECD/Tが、1000:1に等しいかそれより
小さい、請求項1から9のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【請求項11】
板状フィラー(D)が、その最大厚
さが0.001μm~100μ
mである平均サイズを有する、請求項1から10のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【請求項12】
前記板状フィラーが、少なくと
も10μ
mの平均円相当径を有する、請求項1から11のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【請求項13】
成分(C)/成分(D)の質量比が、1.5:1に等しいかそれより大き
い、請求項1から12のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【請求項14】
前記針状フィラー及び前記板状フィラー以外の全成分を押出機に供給し、前記針状フィラー及び前記板状フィラーを下流の供給装置を介して供給し、全成分を押出してペレット化することを含む、請求項1から12のいずれか1項に記載のポリアミド組成物の製造方法。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか1項に記載のポリアミド組成物から製造されたカメラモジュール、レンズアセンブリ、レンズユニット、カメラモジュールアセンブリ及び光学素子用の部品。
【請求項16】
カメラモジュール、レンズアセンブリ、レンズユニット、カメラモジュールアセンブリ及び光学素子における、請求項1から
13のいずれか1項に記載のポリアミド組成物の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラモジュール用の材料に関するものである。より具体的には、本発明は、カメラモジュール、レンズアセンブリ、レンズユニット、カメラモジュールアセンブリ、及び光学素子のあらゆるプラスチック部品に使用されるポリアミド組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂成形組成物は、その設計の柔軟性とコストの競争力から、消費者向け電子機器用途における構造化部品、例えばハウジング、フレーム及びカバーとして、広く使用されている。
【0003】
しかし、さらに高度でより特殊な要求がある特殊な分野、例えば光学関連の構成要素では、通常、要求されるあらゆる特性をプラスチックがバランスよく満たすことは容易ではない。カメラモジュールは、電子装置、例えば携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等に搭載されている。カメラモジュールのいくつかの部品、例えば鏡筒部(レンズが配置される部分)、マウントホルダー部(中に鏡筒が取り付けられ、基板に固定される部分)、及びモジュール基板は、コスト及び質量を削減し、表面実装技術(「SMT」)を実現するために、プラスチック材料で製造することができる。
【0004】
過去10年間、ポリアミド(PA)又は液晶ポリマー(LCP)のような結晶性ポリマーは、薄壁の精密な成形に対するその優れた流動性が理由で、このカメラモジュールに最良のプラスチックの解決策として徐々に発展している。しかし、従来の液晶ポリマー組成物については、LCP組成物で構成された粒子が、鏡筒(マウントホルダー及び鏡筒の両方が互いに摩耗する部分)及び表面(両方ともプラスチック部品)から、鏡筒部がネジ式に動く際に剥離する。カメラモジュールの製造又は使用中に筒又はホルダーの破片が発生すると、破片はイメージセンサー表面又はレンズ表面に付着し、これによって画像欠陥(黒キズ又は斑点)の大きな原因のひとつとなる。
【0005】
EP0856536B1には、このカメラモジュール用途に対して良好な耐熱性及び流動性を備えたフィラー強化LCPが記載されているが、LCP分子の面配向効果に起因する粉塵粒子の問題は解決されない。
【0006】
JP5399136B2では、PA9Tベースの溶液の粉塵粒子問題を解決するため、フィラーとして粉砕ガラス繊維を使用しているが、材料寸法安定性、特に反り制御は、依然として実用上は懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】EP0856536B1
【文献】JP5399136B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
長期使用中に正確な撮像を実現し、且つ高画質を保つために、カメラモジュールのプラスチック部品には、基本的な機構とは別に、優れた寸法安定性、低粉塵及び反り制御が必要である。しかし、現在までのところ、上記の特性バランスに関して、どちらの解決策にも依然としてそれぞれの欠点がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要及び利点
上記の先行技術に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、30質量%~70質量%のポリアミド混合物、30質量%~70質量%のフィラー混合物、及び0~10質量%の添加剤(E)を含むポリアミド組成物を提供することであり、これら質量%はポリアミド組成物の総質量に基づく。ポリアミド混合物には、成分(A)として半結晶性半芳香族ポリアミド、及び成分(B)として非晶質ポリアミドが含まれ、質量比(A)/(B)は1:1より大きく、フィラー混合物には、成分(C)として150μm以下の平均長さを有する針状フィラー及び成分(D)として板状フィラーが含まれ、質量比(C)/(D)は1:1より大きい。
【0010】
用語「a」、「an」及び「the」は、用語「少なくとも1つ」と交換可能に使用される。語句「…の少なくとも1つ」及び「…の少なくとも1つを含む」にリストが続く場合、リスト内の項目のいずれか1つ、及びリスト内の項目の2つ以上の任意の組み合わせを指す。あらゆる数値範囲は、特に明記されない限り、その端点と、端点間の非整数値とを含む。
【0011】
針状フィラーの平均長さ及び平均外径、板状フィラーの円相当径及び厚さは、走査型電子顕微鏡(「SEM」)により、グラフ中のフィラーのサイズ(100~120カウント)を直接測定することによって測定し、算術平均により計算する。
【0012】
本発明は、カメラモジュール、レンズアセンブリ、レンズユニット、カメラモジュールアセンブリ及び光学素子用の部品を提供する。
【0013】
本発明は、ポリアミド組成物を調製する方法を提供する。
【0014】
本発明は、カメラモジュール、レンズアセンブリ、レンズユニット、カメラモジュールアセンブリ及び光学素子におけるポリアミド組成物の使用方法を提供する。
【0015】
本発明のポリアミド組成物は、良好な平坦性及びより少ない粉塵粒子という利点を提供し、それと同時に機械的性質を維持する。このような利点により、ポリアミド組成物は、光学素子用途に特に適したものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
開示するのは、30質量%~70質量%のポリアミド混合物、30質量%~70質量%のフィラー混合物、及び0~10質量%の添加剤(E)を含むポリアミド組成物であり、これら質量%はポリアミド組成物の総質量に基づく。ポリアミド混合物には、成分(A)として半結晶性半芳香族ポリアミド、及び成分(B)として非晶質ポリアミドが含まれ、質量比(A)/(B)は1:1より大きく、フィラー混合物には、成分(C)として150μm以下の平均長さを有する針状フィラー及び成分(D)として板状フィラーが含まれ、質量比(C)/(D)は1:1より大きい。
【0017】
用語、半結晶性ポリアミドとは、本明細書において、少なくとも5J/gの融解エンタルピーを有する融解ピークの存在によって示される結晶性ドメインを有するポリアミドと理解される。用語、半芳香族ポリアミドとは、本明細書において、芳香族基を含有する少なくとも1つのモノマーと、少なくとも1つの脂肪族又は脂環式モノマーとを含むモノマーから誘導されるポリアミドと理解される。
【0018】
本発明における半結晶性半芳香族ポリアミドは、ジカルボン酸、ジアミン、及び任意にアミノ酸及び/又はラクタムのような他のモノマーから、例えば少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸を含むジカルボン酸及び少なくとも1つの脂肪族ジアミンを含むジアミンから、又は少なくとも1つの脂肪族又は脂環式ジカルボン酸を含むジカルボン酸及び少なくとも1つの芳香族ジアミンを含むジアミンから誘導される繰り返し単位を含む。
【0019】
他のモノマーは、好ましくは、0~20モル%、好ましくは0~15モル%、より好ましくは0~10モル%の量であり、これらモル%は半結晶性半芳香族ポリアミドを構成する全モノマーに基づく。
【0020】
本発明の好ましい実施形態において、半結晶性半芳香族ポリアミドは、ジカルボン酸及びジアミン、及び0~20モル%のアミノ酸及び/又はラクタムから誘導される繰り返し単位を含み、これらモル%は半結晶性半芳香族ポリアミドを構成する全モノマーに基づき、
ジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸(a-1)、又は芳香族ジカルボン酸(a-1)と、脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸を含む他のジカルボン酸(a-2)との組み合わせである。芳香族ジカルボン酸(a-1)は、好ましくは60~100モル%の量であり、他のジカルボン酸(a-2)は、好ましくは0~40モル%の量であり、これらモル%は半結晶性半芳香族ポリアミドを構成するジカルボン酸の総モルに基づき、
ジアミンは脂肪族ジアミン(b-1)、又は脂肪族ジアミン(b-1)と芳香族ジアミン(b-2)との組み合わせである。脂肪族ジアミン(b-1)は、好ましくは80~100モル%の量であり、芳香族ジアミン(b-2)は、好ましくは0~20モル%の量であり、これらモル%は半結晶性半芳香族ポリアミドを構成するジアミンの総モルに基づく。
【0021】
本発明の好ましい実施形態において、半結晶性半芳香族ポリアミドは、ジカルボン酸及びジアミン、及び0~20モル%のアミノ酸及び/又はラクタムから誘導される繰り返し単位を含み、これらモル%は半結晶性半芳香族ポリアミドを構成する全モノマーに基づき、
ジカルボン酸は、脂肪族ジカルボン酸、又は脂肪族ジカルボン酸と脂環式ジカルボン酸との組み合わせである。脂肪族ジカルボン酸は、好ましくは80~100モル%の量であり、脂環式ジカルボン酸は、好ましくは0~20モル%の量であり、これらモル%は半結晶性半芳香族ポリアミドを構成するジカルボン酸の総モルに基づき、
ジアミンは、芳香族ジアミン、芳香族ジアミンと脂肪族ジアミンとの組み合わせである。芳香族ジアミンは、好ましくは80~100モル%の量であり、脂肪族ジアミンは、好ましくは0~20モル%の量であり、これらモル%は半結晶性半芳香族ポリアミドを構成するジアミンの総モルに基づく。
【0022】
本発明における芳香族ジカルボン酸は、好ましくは、8~20個の炭素原子、より好ましくは8~14個の炭素原子を含み、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及び/又はジフェニルジカルボン酸が挙げられる。
【0023】
本発明における脂肪族ジカルボン酸は、好ましくは、4~36個の炭素原子、より好ましくは6~36個の炭素原子、最も好ましくは6~18個の炭素原子又は36個の炭素原子を含む。脂肪族ジカルボン酸の例は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸及び/又は36個の炭素原子を有するダイマー酸であり、より好ましくはアジピン酸、セバシン酸及び/又はドデカン二酸である。
【0024】
本発明における脂環式ジカルボン酸は、好ましくは、4~20の炭素数、より好ましくは8~20の炭素数を含み、より好ましくはシクロヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルメタン、ビス(メチルシクロヘキシル)からなる群から選択される1つの炭素主鎖を含み、最も好ましくは、シス-及びトランス-シクロペンタン-1,3-ジカルボン酸、シス-及びトランス-シクロペンタン-1,4-ジカルボン酸、シス-及びトランス-シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、シス-及びトランス-シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シス-及びトランス-シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸からなる群から選択される。
【0025】
本発明における脂肪族ジアミンは、直鎖脂肪族ジアミン又は分岐脂肪族ジアミンであってよく、好ましくは直鎖脂肪族ジアミンである。脂肪族ジアミンは、好ましくは、4~36個、より好ましくは6~22個の炭素原子又は36個の炭素原子、最も好ましくは6~12個の炭素原子を含む。直鎖脂肪族ジアミンの例は、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,13-トリデカンジアミン、1,14-テトラデカンジアミン、1,16-ヘキサデカンジアミン、1,18-オクタデカンジアミン、1,20-エイコサンジアミン及び/又は1,22-ドコサンジアミンであり、好ましくは1,6-ヘキサンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン及び/又は1,12-ドデカンジアミンであり、より好ましくは1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン及び/又は1,12-ドデカンジアミンである。分岐脂肪族ジアミンの例は、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、3-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、5-メチル-1,9-ノナンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン及び/又は2,4-ジメチルオクタンジアミンであり、好ましくは2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、3-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン及び/又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミンである。
【0026】
本発明における芳香族ジアミンは、好ましくは、m-キシリレンジアミン(MXD)、p-キシリレンジアミン(PXD)、ビス(4-アミノフェニル)メタン、3-メチルベンジジン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサン、1,2-ジアミノベンゼン、1,3-ジアミノベンゼン、1,4-ジアミノベンゼン、1,2-ジアミノナフタレン、1,3-ジアミノナフタレン、1,4-ジアミノナフタレン、2,3-ジアミノトルエン、N,N’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジアミン、ビス(4-メチルアミノフェニル)メタン、及び2,2’-ビス(4-メチルアミノフェニル)プロパンからなる群から選択され、より好ましくはMXD及び/又はPXDである。
【0027】
半結晶性半芳香族ポリアミドの例は、ポリアミドMXD6、ポリアミドPXD6、ポリアミドMXD9、ポリアミドPXD9、ポリアミドMXD10及び/又はポリアミドPXD10である。
【0028】
本発明における好適なアミノ酸は、好ましくは、4~12個の炭素原子を含む。アミノ酸の例は、4-アミノブタン酸、6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、8-アミノオクタン酸、10-アミノデカン酸、11-アミノウンデカン酸及び/又は12-アミノドデカン酸である。
【0029】
本発明における好適なラクタムは、好ましくは、4~12個の炭素原子、より好ましくは6~12個の炭素原子を含む。ラクタムの例は、2-ピロリドン(γ-ブチロラクタム)、2-ピペリドン(δ-バレロラクタム)、ε-カプロラクタム、カプリルラクタム、デカネラクタム、ウンデカノラクタム、エナントラクタム及び/又はラウリルラクタムであり、好ましくはε-カプロラクタム及び/又はウンデカノラクタムである。
【0030】
好ましい一実施形態では、半結晶性半芳香族ポリアミドは、ジカルボン酸及びジアミンから誘導される繰り返し単位を含み、
ジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸(a-1)、又は芳香族ジカルボン酸(a-1)と他のジカルボン酸(a-2)との組み合わせであり、芳香族ジカルボン酸(a-1)は、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、又はそれらの少なくとも2つの組み合わせであり、好ましくはテレフタル酸又はテレフタル酸とナフタレンジカルボン酸との組み合わせであり、他のジカルボン酸(a-2)は、脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸であり、芳香族ジカルボン酸(a-1)は、好ましくは、60~100モル%、より好ましくは80~100モル%、さらに好ましくは90~100モル%、最も好ましくは95~100モル%の量であり、これらモル%は半結晶性半芳香族ポリアミドを構成するジカルボン酸の総モルに基づき、他のジカルボン酸(a-2)は、好ましくは、0~40モル%、より好ましくは0~20モル%、さらに好ましくは0~10モル%の量であり、最も好ましくは5モル%以下であり、これらモル%は半結晶性半芳香族ポリアミドを構成するジカルボン酸の総モルに基づき、
ジアミンは、脂肪族ジアミン(b-1)、又は脂肪族ジアミンと芳香族ジアミンとの組合せ(b-2)である。脂肪族ジアミン(b-1)は、好ましくは、80~100モル%、より好ましくは90~100モル%、最も好ましくは95~100モル%の量であり、これらモル%は半結晶性半芳香族ポリアミドを構成するジアミンの総モルに基づき、芳香族ジアミン(b-2)は、好ましくは、0~20モル%、より好ましくは0~10モル%、最も好ましくは0~5モル%の量であり、これらモル%は半結晶性半芳香族ポリアミドを構成するジアミンの総モルに基づく。
【0031】
好ましい一実施形態では、半結晶性半芳香族ポリアミドは、芳香族ジカルボン酸(a-1)の少なくとも1つ、及び0~10モル%、より好ましくは0~5モル%の他のジカルボン酸(a-2)、及びジアミンから誘導される繰り返し単位を含み、
芳香族ジカルボン酸(a-1)には、10~40モル%、より好ましくは15~30モル%、最も好ましくは20~30モル%のイソフタル酸、及び60~90モル%、より好ましくは70~85モル%、最も好ましくは70~80モル%の、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びビフェニルジカルボン酸からなる群から選択される、好ましくはテレフタル酸、又はテレフタル酸とナフタレンジカルボン酸との組合せである少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸が含まれ、他のジカルボン酸(a-2)は、脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸であり、
ジアミンは、脂肪族ジアミン(b-1)、又は脂肪族ジアミンと芳香族ジアミン(b-2)との組み合わせである。脂肪族ジアミン(b-1)は、好ましくは、90~100モル%、より好ましくは95~100モル%の量であり、芳香族ジアミン(b-2)は、好ましくは0~10モル%、より好ましくは0~5モル%の量であり、これらモル%はジアミンの総モルに基づく。
【0032】
より好ましい一実施形態において、他のジカルボン酸(a-2)の脂肪族ジカルボン酸は、好ましくはアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、及びオクタデカン二酸であり、より好ましくはアジピン酸、セバシン酸及び/又はドデカン二酸である。
【0033】
より好ましい一実施形態では、脂肪族ジアミン(b-1)は、直鎖脂肪族ジアミン(b-1a)、又は直鎖脂肪族ジアミンと分岐脂肪族ジアミン(b-1b)との組合せである。直鎖脂肪族ジアミン(b-1a)は、好ましくは、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン及び1,12-ドデカンジアミンからなる群から選択される。分岐脂肪族ジアミン(b-1b)は、好ましくは、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、3-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン及び2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミンからなる群から選択される。
【0034】
本発明におけるポリアミドは、ポリアミドコポリマー、又は2つ以上のポリアミドとそのコポリマーとのブレンドを含んでよい。
【0035】
半結晶性半芳香族ポリアミドは、好適には、以下の表記で表される:
-Rは、直鎖脂肪族ジアミンの1つ以上を表し、
-Bは、分岐脂肪族ジアミンの1つ以上を表し、
-Tは、テレフタル酸を表し、
-Iは、イソフタル酸を表し、
-Aは、芳香族ジアミンの1つ以上を表し、
-Yは、脂肪族ジカルボン酸の1つ以上を表し、
-Vは、ラクタムの1つ以上を表す。
【0036】
好適な半結晶性半芳香族ポリアミドは、PA RT、PA RT/RI、PA RT/BT、PA RT/BT/RI/BIで表され、以下の成分:
-60~100モル%の(T)、0~40モル%の(I)、好ましくは60~85モル%の(T)、15~40モル%の(I)、さらに好ましくは65~80モル%の(T)、20~35モル%の(I)(モル%は(T)+(I)の総モルに基づく)、及び
-80~100モル%の(R)、好ましくは90~100モル%の(R)、0~20モル%の(B)、好ましくは0~10モル%の(B)(モル%は(R)+(B)の総モルに基づく)を含み、Rは好ましくは、9~36の炭素数、より好ましくは9~18の炭素数を有する直鎖脂肪族ポリアミドである。これらのポリアミドの例には、PA4T/4I、PA4T/6I、PA5T/5I、PA6T、PA6T/6I、PA6T/8T、PA6T/10T、PA6T/10I、PA9T、PA10T、PA12T、PA10T/10I、PA6T/9T、PA6T/12T、PA4T/6T/DT、PA4T/10T/DT、PA4T/4I/6T/6I/DT/DI、PA6T/12T/6I/12I PA6T/10T/6I、PA4T/6T/4I/6I、PA5T/6T/5I/6I、PA5T/4T/5I/4I、PA4T/10T/5I/10I、PA4T/6T/DT、PA4T/10T/DT又はPA4T/4I/6T/6I/DT/DIが含まれ、好ましくはPA6T、PA9T、PA10T、PA6T/6I、PA6T/10T、PA6T/12T、PA6T/10T/6I、PA6T/DT及び/又はPA6T/DT/6I/DIである。ここで、Dは、2-メチルペンタ-メチレンジアミン又は3-メチル-1,5-ペンタンジミン、又はそれらの混合物である。
【0037】
好ましい一実施形態では、PA6T/6Iは、(T)+(I)の総モルに基づいて65~80モル%の(T)、20~35モル%の(I)を含む。
【0038】
好ましい一実施形態では、PA6T/10Tは、(T)+(I)の総モルに基づいて10~60モル%の(6T)、40~90モル%の(10T)、好ましくは10~40モル%の(6T)、60~90モル%の(10T)を含む。
【0039】
好ましい一実施形態では、PA6T/10T/6Iは、(T)+(I)の総モルに基づいて60~90モル%の(6T)、5~40モル%の(6I)、及び5~45モル%の(10T)を含む。
【0040】
好適な半結晶性半芳香族ポリアミドは、PA RT/RY、PA RT/V、PA RT/RI/RY又はPA RT/RI/Vで表され、以下の成分:
-60~100モル%の(T)、0~40モル%の(I)、0~12モル%の(V)、好ましくは0~5モル%の(V)、0~80モル%の(Y)、好ましくは0~60モル%の(Y)、より好ましくは0~40モル%の(Y)(モル%は(T)+(I)+(V)+(Y)の総モルに基づく)を含み、Rは好ましくは、9~36の炭素数、より好ましくは9~18の炭素数を有する直鎖脂肪族ポリアミドである。これらのポリアミドの例には、PA6T/6、PA6T/6I/6、PA6T/66、PA5T/510、PA4T/410、PA6T/610、PA6T/612、PA6T/1012、PA9T/612、PA9T/1012、PA10T/106、PA10T/612、PA10T/1012、PA6T/6I/66、PA6T/10T/6、PA10T/12、PA10T/11及びPA6T/6I/12が含まれ、好ましくはPA6T/6、PA6T/610、PA6T/10T/6及び/又はPA6T/612である。
【0041】
好ましい一実施形態では、PA RT/RYは、60~100モル%の(T)、0~40モル%の(Y)を含み、Rは、1,6-ヘキサンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミンであり、Yはドデカン二酸である。
【0042】
好ましい一実施形態では、PA6T/10T/6は、(T)+(I)+カプロラクタムの総モルに基づいて60~85モル%の(6T)、15~40モル%の(10T)、及び5~15モル%のカプロラクタムを含む。
【0043】
本発明における半結晶性半芳香族ポリアミドは、255℃~340℃、好ましくは285℃~330℃、最も好ましくは305℃~315℃の融点(Tm)を有する。融点とは、示差走査熱量測定(DSC)曲線で吸熱ピークに対応する温度と定義され、ポリアミドを10℃/分の加熱速度でDSCを用いて加熱することにより得られる。
【0044】
本発明における半結晶性半芳香族ポリアミドは、好ましくは、96質量%H2SO4中でISO307-2007法に従って測定して、60~120ml/gの粘度数を有する。
【0045】
好ましい一実施形態では、半結晶性半芳香族ポリアミドには、ポリアミドMXD6、ポリアミド12T、ポリアミド10T、ポリアミド9T、ポリアミド6T/66、ポリアミド6T/DT、ポリアミド66/6T/6L、ポリアミド6T/6、ポリアミド6T/6Iコポリマー等が含まれる。
【0046】
用語、非晶質ポリアミドとは、本明細書において、融解ピークの欠如又は5J/g未満の融解エンタルピーを有する融解ピークの存在によって示される結晶性ドメインを有しないか又は本質的にそうであるポリアミドと理解される。融解エンタルピーは、ポリアミドの質量に対して表される。
【0047】
本発明の非晶質ポリアミドには、非晶質脂肪族ポリアミド及び/又は非晶質半芳香族ポリアミドが含まれる。
【0048】
好ましい一実施形態では、非晶質脂肪族ポリアミドは、脂環式ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸を含む。脂環式ジアミンは、好ましくは、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)エタン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)ブタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM又はMACM)、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン(PACM)、2,2-(4,4’-ジアミノジシクロヘキシル)-プロパン(PACP)、イソホロンジアミン(IPD)、ビス-(アミノメチル)-シクロヘキサン(BAC)、ビス-(4-アミノ-3-エチル-シクロヘキシル)-メタン(EACM)及びビス-(4-アミン-3,5-ジメチル-シクロヘキシル)-メタン(TMACM)からなる群から選択され、より好ましくはPACM、MACM及び/又はIPDである。非晶質脂肪族ポリアミドはPA CYで表され、Cは、脂環式ジカルボン酸の1つ以上を表す。非晶質脂肪族ポリアミドの例は、PA MACM6、PA PACM6、PA MACM12、PA PACM10、PA PACM12及びPA IPD6であり、好ましくはPA MACM12及び/又はPA PACM12である。
【0049】
好ましい一実施形態では、非晶質半芳香族ポリアミドは、脂環式ジアミン及び芳香族ジカルボン酸を含む。脂環式ジアミンは、好ましくは、PACM、MACM及び/又はIPDから選択される。芳香族ジカルボン酸は、好ましくは、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸から選択される。
【0050】
好ましい一実施形態では、非晶質半芳香族ポリアミドは、ジアミン及び少なくとも50モル%のイソフタル酸を含み、好ましくは60~100モル%のイソフタル酸及び0~40モル%のテレフタル酸を含み、これらモル%はジカルボン酸の総モルに基づく。非晶質半芳香族ポリアミドは、PA RI、PA RI/RT、PA BI/BT、PA CT、PA BT、PA CI、PA BIで表され、I/Tのモル比は、少なくとも50/50を超え、好ましくは80:20~60:40である。非晶質半芳香族ポリアミドの例は、PA6I、PA8I、PA6I/6T、PA10I/10T、PA PACMI、PA PACMT、PA MACMT、PA MACMI、PA IPDT、PA IPDI、PA DT/DI、PA DT及びPA DIであり、好ましくはPA6I/6T、PA12I/12Tである。
【0051】
好ましい一実施形態では、非晶質半芳香族ポリアミドは、芳香族ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸を含み、そして任意に0~20モル%のイソフタル酸を含む。非晶質半芳香族ポリアミドは、PA AY、PA AY/AIで表される。非晶質半芳香族ポリアミドの例は、PA MXD6/MXDIであり、MXD6は80~100モル%、好ましくは85~95モル%の量であり、これらモル%はMXD6及びMXDIの総モルに基づく。
【0052】
本発明における非晶質ポリアミドは、好ましくは、96質量%のH2SO4中でISO307-2007法に従って測定して、60~150ml/gの粘度数を有する。
【0053】
本発明における非晶質ポリアミドは、好ましくは、20℃で0.5質量%のm-クレゾールで測定して、1.3~2.0の範囲、好ましくは1.4~1.8の範囲、特に1.45~1.75の範囲の溶液粘度ηrelを有する。
【0054】
本発明における半結晶性半芳香族ポリアミド(A)は、好ましくは、30質量%~65質量%、より好ましくは40質量%~60質量%の量であり、本発明における非晶質ポリアミド(B)は、好ましくは、5質量%~40質量%、より好ましくは10質量%~30質量%の量であり、これら質量%はポリアミド組成物の総質量に基づく。
【0055】
成分(A)/成分(B)の質量比は、1:1より大きく、好ましくは2:1に等しいかそれより大きく、より好ましくは3:1~2:1の範囲であり、最も好ましくは3:1~2.5:1の範囲である。
【0056】
本発明における針状フィラー(C)は、好ましくは、10μm~150μm、より好ましくは10μm~100μm、最も好ましくは10μm~75μmの平均長さを有する。針状フィラーのアスペクト比(長さ/直径)は、好ましくは2:1に等しいかそれより大きく、より好ましくは2:1~5000:1、さらに好ましくは3:1~100:1、最も好ましくは4:1~30:1、又は4:1~18:1である。アスペクト比(長さ/直径)とは、断面の平均長さと平均外径の比である。断面の形状は限定されず、例えば、楕円形、円形、長方形である。
【0057】
本発明における針状フィラー(C)は、好ましくは、ガラス繊維、ウォラストナイト、炭素繊維、金属繊維、鉱物繊維、カリウムチタネート、アルミニウムボレートからなる群から選択され、より好ましくはガラス繊維、チョップドガラス繊維、粉砕ガラス繊維、カリウムチタネート及び/又はウォラストナイトである。好ましくは、ガラス繊維は、Eガラス繊維、Aガラス繊維、Dガラス繊維、ARガラス繊維、Cガラス繊維、Sガラス繊維とすることができる。ガラス繊維の断面は、円形又は非円形とすることができ、好ましくは円形である。
【0058】
針状フィラーは、好ましくは、シランカップリング剤、例えばビニルシランベースのカップリング剤、アクリルシランベースのカップリング剤、エポキシシランベースのカップリング剤、及びアミノシランベースのカップリング剤、好ましくはアミノシランベースのカップリング剤で、表面処理されている。シランカップリング剤は、サイズ剤中に分散されていてもよい。サイズ剤の例は、アクリル化合物、アクリル/マレイン酸誘導体変性化合物、エポキシ化合物、ウレタン化合物、ウレタン/マレイン酸誘導体変性化合物、及びウレタン/アミン変性化合物である。
【0059】
本発明における板状フィラー(D)は、一般に、積み重ねられた板、血小板形、シート、葉形、粉末又はフレークの形態である。アスペクト比(ECD/T)は、一般に1:1に等しいかそれより大きく、好ましくは30:1に等しいかそれより大きく、より好ましくは100:1に等しいかそれより大きく、最も好ましくは200:1に等しいかそれより大きい。アスペクト比(ECD/T)は、一般に1000:1に等しいかそれより小さく、好ましくは800:1に等しいかそれより小さく、より好ましくは600:1に等しいかそれより小さく、最も好ましくは500:1に等しいかそれより小さい。ECDは、板状フィラーの円相当径を表す。Tは、板状フィラーの最大の厚さを表す。アスペクト比及び円相当径は、走査型電子顕微鏡(「SEM」)画像を用いて測定することができる。円相当径は、板状フィラーの板面積と同じ面積を有する円の直径と定義することができる。
【0060】
本発明の好ましい一実施形態では、、板状フィラー(D)は、1:1~500:1、好ましくは100:1~500:1、最も好ましくは200:1~400:1のアスペクト比(ECD/T)を有する。
【0061】
本発明の好ましい一実施形態では、板状フィラー(D)は、その最大厚さ又は寸法が0.001μm~100μm、好ましくは0.001μm~50μm、最も好ましくは0.001μm~10μm、又は0.001μm~5μmである平均サイズを有する。
【0062】
ある実施形態では、板状フィラーは、少なくとも約10μm、典型的には10μm~900μm、好ましくは20μm~500μm、最も好ましくは20μm~300μm、又は30μm~200μmの平均円相当径を有してよい。
【0063】
本発明の一実施形態では、板状フィラーのアスペクト比(ECD/T)は、1:1~300:1であり、板状フィラーの平均円相当径は、20μm~300μmである。
【0064】
本発明における板状フィラー(D)は、好ましくは、タルク、マイカ、シリケート、石英、二酸化チタン、ウォラストナイト、カオリン、マグネシウムカーボネート、マグネシウムヒドロキシド、チョーク、石灰石、長石、バリウムスルフェート、固体又は中空ガラスビーズ、すりガラス、ガラスフレーク、及び耐久性磁気材料、例えば磁化可能な金属化合物、及び/又はそれらの合金又は混合物からなる群から選択される。
【0065】
本発明における半結晶性半芳香族ポリアミド(A)は、好ましくは、30質量%~60質量%、より好ましくは30質量%~50質量%の量であり、本発明における非晶質ポリアミド(B)は、好ましくは、10質量%~30質量%、より好ましくは10質量%~20質量%の量であり、これら質量%はポリアミド組成物の総質量に基づく。
【0066】
成分(C)/成分(D)の質量比は、好ましくは1.5:1に等しいかそれより大きく、より好ましくは2:1~4:1の範囲である。
【0067】
ポリアミド組成物は、種々の従来の添加剤(E)を含んでもよいが、添加剤及びその量が、本発明における組成物の所望の特性に著しく悪影響を及ぼさないことが条件である。添加剤として、潤滑剤、表面効果添加剤、酸化防止剤、着色剤、顔料、安定剤(熱、UV、放射線又は加水分解安定剤)、流動性改良剤、可塑剤、離型剤、ドリップ防止剤、紫外線吸収剤、核剤、帯電防止剤、エラストマー改良剤、離型剤及び/又は抗菌剤が含まれる。
【0068】
潤滑剤は特に限定されず、例えば、10~40個の炭素原子を有する脂肪酸のエステル、アミド、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩(例えば、Caステアレート、Znステアレート、Mgベヘネート、Mgステアレート)、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エステルワックス、EVAワックス、酸化ポリエチレンワックス、脂肪アルコール、脂肪酸、モンタンワックス、ペンタエリスリチルテトラステアレート(PETS)及びシリコーンワックスである。好ましい潤滑剤は、エチレンビス(ステアラミド)である。
【0069】
潤滑剤は、好ましくは、約0質量%~3質量%、より好ましくは約0.01質量%~2質量%、又は0.2質量%~1質量%、又は0.2質量%~0.8質量%の量で存在し、これら質量%はポリアミド組成物の総質量量に基づく。
【0070】
酸化防止剤は特に限定されず、例えば、芳香族アミンベースの酸化防止剤、ヒンダードフェノールベースの酸化防止剤、ホスファイトベースの酸化防止剤、金属塩及びヨージドである。
【0071】
芳香族アミンベースの酸化防止剤の例は、ポリ(1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチル-キノリン)、ビス(4-オクチルフェニル)アミン、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(メチルフェニル)-1,4-ベンゼンジアミン及びヒドラジン誘導体である。
【0072】
ヒンダードフェノールベースの酸化防止剤の例は、ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)-アルファ-[3-[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]-1-オキソプロピル]-オメガ-[3-[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]-1-オキソプロポキシ]、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、オクチル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナメート、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸C7~C9-分岐アルキルエステルである。そして好ましくは、固体のヒンダードフェノールベースの酸化防止剤は、2,4-ビス[(ドデシルチオ)メチル]-o-クレゾール、4,4’-ブチリデンビス-(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸オクタデシルエステル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]からなる群「B-S」から選択される1つ以上である。
【0073】
ホスファイトベースの酸化防止剤の例は、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(Irgafos(登録商標)168、BASF SE社、CAS31570-04-4)、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト(Ultranox(登録商標)626、Chemtura社、CAS26741-53-7)、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト(ADK Stab PEP-36、Adeka社、CAS80693-00-1)、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト(Doverphos(登録商標)S-9228、Dover Chemical Corporation社、CAS154862-43-8)、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト(Irgafos(登録商標)TNPP、BASF SE社、CAS26523-78-4)、(2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール)-2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールホスファイト(Ultranox(登録商標)641、Chemtura社、CAS161717-32-4)、及びHostanox(登録商標)P-EPQである。
【0074】
市販の酸化防止剤の例は、銅塩とヨージドの組み合わせ、例えば、Brueggemann-Gruppe社のBrueggolen(登録商標)H3350、又はPolyAd Services社のPolyad(登録商標)PB201である。
【0075】
酸化防止剤は、好ましくは、約0質量%~2質量%、より好ましくは約0.01質量%~1質量%、及び最も好ましくは約0.1質量%~0.8質量%の量で存在し、これら質量%はそれぞれポリアミド組成物の総質量量に基づく。
【0076】
着色剤は特に限定されず、例えば、カーボンブラック、酸化鉄、二酸化チタン、ウルトラマリンブルー、亜鉛スルフィド、フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ニグロシン及びアントラキノンである。
【0077】
着色剤は、好ましくは、約0質量%~5質量%、より好ましくは約0.01質量%~3質量%、及び最も好ましくは約0.1質量%~2質量%の量で存在し、これら質量%はポリアミド組成物の総質量量に基づく。
【0078】
安定剤は、好ましくは、約0質量%~2質量%、より好ましくは約0.01質量%~1質量%、及び最も好ましくは約0.01質量%~0.5質量%の量で存在し、これら質量%はそれぞれポリアミド組成物の総質量量に基づく。
【0079】
好適な核剤の例は、ナトリウムフェニルホスフィネート又はカルシウムフェニルホスフィネート、アルミナ(CAS番号1344-28-1)、タルク、シリコンダイオキシド、アジピン酸、及びジフェニル酢酸である。
【0080】
好適な可塑剤の例は、ジオクチルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ヒドロカーボンオイル、及びN-(n-ブチル)ベンゼンスルホンアミドである。
【0081】
本発明におけるあらゆるの添加剤の量は、好ましくは、10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、及び最も好ましくは2質量%以下であり、これら質量%はポリアミド組成物の総質量量に基づく。
【0082】
好ましい実施形態では、ポリアミド組成物は、以下を含む:
成分(A)として、30質量%~60質量%の、好ましくは、PA9T、PA10T、PA11T、PA12T、PA13T、PA14T PA6T/8T、PA10T/6T、PA10T/610、PA6T/610、PA5T/510及び/又はPA4T/410からなる群から選択される、好ましくはPA9T、PA10T、PA11T、PA10T/6T、PA10T/610及び/又はPA5T/510である、半結晶性半芳香族ポリアミド、
成分(B)として、10質量%~30質量%の、好ましくは、PA6I/6T及びPA12I/12Tからなる群から選択される非晶質ポリアミド、
成分(C)として、20質量%~40質量%の、10μm~100μmの平均長さを有する針状フィラー、
成分(D)として、5質量%~20質量%の、その最大厚さ又は寸法が0.001μm~50μmである平均サイズを有する板状フィラー、
成分(E)として、0~5質量%の添加剤(これら質量%はすべてポリアミド組成物の総質量に基づく)。
【0083】
好ましい実施形態では、ポリアミド組成物は、以下を含む:
成分(A)として、30質量%~60質量%の、PA9T、PA10T、PA11T、PA12T、PA13T、PA14T、PA6T/8T、PA10T/6T、PA10T/610、PA6T/610、PA5T/510及び/又はPA4T/410からなる群から選択される、好ましくはPA9T、PA10T、PA11T、PA10T/6T PA10T/610及び/又はPA5T/510である、半結晶性半芳香族ポリアミド、
成分(B)として、10質量%~30質量%の、PA6I/6T、PA12I/12Tからなる群から選択される非晶質ポリアミド、
成分(C)として、20質量%~40質量%の、10μm~100μmの平均長さを有し、そしてアスペクト比(長さ/直径)が3:1~100:1である、針状フィラー、
成分(D)として、5質量%~20質量%の、最大厚さ又は寸法が0.001μm~50μmである平均サイズを有し、そして平均円相当径が20μm~300μmである、板状フィラー、
成分(E)として、0~5質量%の添加剤(これら質量%はすべてポリアミド組成物の総質量に基づく)。
【0084】
本発明は、ポリアミド組成物の調製方法も開示するものであり、この方法は、針状フィラー及び板状フィラー以外の全成分を押出機に供給し、針状フィラー及び板状フィラーを下流の供給装置を介して供給し、全成分を押出してペレット化することを含む。押出は、好ましくは、320℃、好ましくは280℃~320℃の温度下で行う。ポリアミド組成物は、ペレットの形態で得られる。
【0085】
本発明は、本発明におけるポリアミド組成物から製造されたカメラモジュール、レンズアセンブリ、レンズユニット、カメラモジュールアセンブリ及び光学素子用の部品も開示するものである。
【0086】
本発明は、カメラモジュール、レンズアセンブリ、レンズユニット、カメラモジュールアセンブリ及び光学素子におけるポリアミド組成物の使用方法も提供するものである。
【実施例】
【0087】
以下に、本発明を実施例を参照して詳述するが、これらは本発明の範囲を限定するものとして解釈されてはならない。実施例及び比較例において、物理的特性の測定及び評価は、以下の記載のように行った。
【0088】
A:PA9T、Kuraray Co.,Ltd.社(ISO307,1157,1628による粘度数79cm3/g、数平均モル質量分子量(Mn)9600g/モル)
B:PA6I/6T、Zytel(登録商標)HTN301、Dupont Co.,Ltd社(固有粘度1.19g/cm3、ISO1183による)
C1:ウォラストナイトCaSiO3、Nyglos 4w、Imery Co.Ltd社、平均繊維長63μm及び平均直径7μm
C2:ガラス繊維、HP3660、PPG Industries Inc.社、平均直径10μm及び平均長さ4.5mm
D1:ガラスフレーク、MEG160FYX(6145)、Nippon Sheet Glass Co.,Ltd社、平均円相当径160μm及び厚さ0.7μm
D2:マイカKMg3(Si3Al)O10(FOH)2、325-HK、Imery Co.,Ltd社、平均粒子径30μm
E1:酸化防止剤AO1098、BNX1098、Mayzo Inc社
E2:潤滑剤、N,N’-エチレンジ(ステアラミド)、Croda Trading(Shanghai)Co.,Ltd社
E3:カーボンブラック、Orion Engineered Carbons社。
【0089】
実施例1~2(E1、E2)及び比較例1~7(C1~C7)
実施例及び比較例の配合を、以下の表1に示す。フィラーを除く原料をTurbula T50A高速攪拌機で混合し、Coperion ZSK26MC二軸押出機に投入し、フィラーは下流のサイドフィーダーで供給して良好な形状及びアスペクト比を保ち、320℃の温度下で溶融押出し、ペレット化して、ペレット状のポリアミド組成物を得た。
【0090】
乾燥したペレットを、射出成形機KM130CX、Krauss Maffei社、を用いて、型締力130Tで300℃~330℃の溶融温度で加工し、試験片を得た。
【0091】
厚さ4mmの試料の破断引張強さ、破断引張係数及び引張伸びを、ISO527-1-2012に従って測定した。試験片は、ISO527-1-2012に記載されているタイプ1のものを使用した。
【0092】
HDTは、ISO75-2-2013の方法Aに従い、0.45MPaで試験した。
【0093】
シャルピーノッチ付き衝撃強度及びシャルピーノッチなし衝撃強度は、ISO179-1-2010に従い、エッジワイズ衝撃で試験した。シャルピーノッチなし試験用の試験片は、80×10×4mm(長さ×幅×厚さ)の寸法のタイプ1試験片を使用した。シャルピーノッチ付き試験用の試験片は、ノッチ付きタイプAのタイプ1試験片を使用した。すべての試験片は、23℃及び相対湿度50%で、16時間コンディショニングを行った。試験は、コンディショニングと同じ雰囲気下で実施した。
【0094】
流動長は、スパイラルランナー付きのスパイラルフローツールを使用して測定した。スパイラルランナーの断面は、厚さ2mm及び幅5.5mmであり、ランナーに沿って数字及び細分化されたセンチメートルの印がついていた。試験材料を320℃で溶融し、次に溶融物を、500バールの圧力及び140℃でスパイラルランナーに注入した。スパイラルランナーは、スパイラルランナーの中央にあるスプルーから充填され、そして圧力及び温度は、溶融が停止するまで維持され、スパイラルメルトのちょうど先端にある印の数字が流動長を示す。
【0095】
材料の平坦性(反り)性能は、同じ条件で成形された円形ディスク(直径=82mm、厚さ=0.75mm)の目視チェックによって評価し、良及び不良の2つの評価で評価した。
【0096】
材料の粉塵粒子は、Rion KS-42D液体粒子カウンターで測定した。具体的な方法は、成形したプラスチック部分(厚さ0.75mm、直径82mmの円形ディスク)を、まず洗剤と脱イオン水ですすぎ、窒素で乾燥させた。次に、プラスチック部分を500mlの脱イオン水に浸し、そして超音波洗浄機で5分間、200W出力で洗浄した。その後、脱イオン水をすぐに粒子カウンターに送り込み、粉塵粒子の濃度をカウントした。粒子の検出範囲は10μm~100μmに設定した。
【0097】
【0098】
表1より、本発明の実施例は、良好な流動性、引張特性、衝撃特性を保ち、そして粉塵粒子及び反りの減少に傑出した効果を有し、カメラモジュール、光学素子等に特に適用可能であることが分かる。