(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-19
(45)【発行日】2025-09-30
(54)【発明の名称】基板処理方法及び基板処理システム
(51)【国際特許分類】
   H01L  21/027       20060101AFI20250922BHJP        
   G03F   7/40        20060101ALI20250922BHJP        
【FI】
H01L21/30 569E 
G03F7/40 
(21)【出願番号】P 2024129764
(22)【出願日】2024-08-06
(62)【分割の表示】P 2020208980の分割
【原出願日】2020-12-17
【審査請求日】2024-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【氏名又は名称】金本  哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【氏名又は名称】萩原  康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【氏名又は名称】扇田  尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【氏名又は名称】齊藤  隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【氏名又は名称】三根  卓也
(72)【発明者】
【氏名】亀井  佑矢
【審査官】田中  秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-059918(JP,A)      
【文献】特開2017-147328(JP,A)      
【文献】特開2015-053459(JP,A)      
【文献】国際公開第2017/130870(WO,A1)    
【文献】国際公開第2020/210660(WO,A1)    
【文献】国際公開第2014/088017(WO,A1)    
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L    21/027
G03F      7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の処理方法であって、
金属含有塗布膜が所定のパターンに露光された前記基板を現像する工程と、
現像後に前記基板を洗浄する工程と、
洗浄された前記基板に波長が190~400nmの紫外線を照射する工程と、
前記紫外線を照射する工程の後に、前記基板に有機溶剤を含むパターン洗浄液を供給する工程と、を備え
、
            
            前記現像する工程で前記基板に有機溶剤を含む現像液を供給し、
            
            前記洗浄する工程で前記基板に有機溶剤を含む洗浄液を供給し、
            
            前記洗浄液は、前記現像液より前記金属含有塗布膜の溶解性が小さく、
            
            前記パターン洗浄液は、前記洗浄液より前記金属含有塗布膜の溶解性が大きい、基板処理方法。
【請求項2】
前記紫外線の照射中または照射後に前記基板を加熱する工程を備え、
前記基板を加熱する工程の後に、前記パターン洗浄液を供給する工程を行う、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記現像液と前記洗浄液の少なくともいずれか一方は、2種類以上の有機溶剤の混合液である、請求項
1又は2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記現像液は、2-ヘプタノンである、請求項
1又は2に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記洗浄液は、メチルイソブチルカルビノール又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである、請求項
4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記現像液は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと酢酸の混合液である、請求項
1又は2に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記洗浄液は、2-ヘプタノン、メチルイソブチルカルビノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとプロピレングリコールモノメチルエーテルの混合液、n-ブチルアセテートの群から選択されるいずれかの処理液である、請求項
6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記パターン洗浄液は、アルカリ性の処理液又は有機酸を含む処理液である、請求項1~
7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
基板の処理を行う基板処理システムであって、
前記基板を現像する現像部と、
前記基板を洗浄する洗浄部と、
前記現像部及び前記洗浄部の動作を制御する制御部と、
前記基板に波長が190~400nmの紫外線を照射する紫外線照射部と、
前記基板にパターン洗浄液を供給するパターン洗浄液供給部と、を備え、
前記制御部は、
金属含有塗布膜が所定のパターンに露光された前記基板を現像する工程と、
現像後に前記基板を洗浄する工程と、
洗浄された前記基板に波長が190~400nmの紫外線を照射する工程と、
前記紫外線を照射する工程の後に、前記基板に有機溶剤を含むパターン洗浄液を供給する工程と、を行うように構成され
、
            
            前記制御部は、前記現像する工程で前記基板に有機溶剤を含む現像液を供給し、前記洗浄する工程で前記基板に有機溶剤を含む洗浄液を供給する制御を実行し、
            
            前記洗浄液は、前記現像液より前記金属含有塗布膜の溶解性が小さく、
            
            前記パターン洗浄液は、前記洗浄液より前記金属含有塗布膜の溶解性が大きい、基板処理システム。
【請求項10】
前記基板を加熱する加熱部を備え、
前記制御部は、前記紫外線の照射中または照射後に前記基板を加熱する工程を行い、前記基板を加熱する工程の後に、前記パターン洗浄液を供給する工程を行うように構成された、請求項
9に記載の基板処理システム。
【請求項11】
前記現像液と前記洗浄液の少なくともいずれか一方は、2種類以上の有機溶剤の混合液である、請求項
9又は10に記載の基板処理システム。
【請求項12】
前記現像液は、2-ヘプタノンである、請求項
9又は10に記載の基板処理システム。
【請求項13】
前記洗浄液は、メチルイソブチルカルビノール又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである、請求項
12に記載の基板処理システム。
【請求項14】
前記現像液は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと酢酸の混合液である、請求項
9又は10に記載の基板処理システム。
【請求項15】
前記洗浄液は、2-ヘプタノン、メチルイソブチルカルビノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとプロピレングリコールモノメチルエーテルの混合液、n-ブチルアセテートの群から選択されるいずれかの処理液である、請求項
14に記載の基板処理システム。
【請求項16】
前記パターン洗浄液は、アルカリ性の処理液又は有機酸を含む処理液である、請求項
9~
15のいずれか一項に記載の基板処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本開示は、基板処理方法及び基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
  特許文献1は、基板の表面に金属を含有するレジストを塗布してレジスト膜を形成し、当該レジスト膜を露光する工程と、前記基板の表面に現像液を供給して前記レジスト膜を現像する現像工程と、前記現像工程の前において、前記レジスト膜が形成されていない基板の周縁部であって、少なくとも周端面及び裏面側周縁部に前記現像液に接することを防ぐ第1の保護膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする塗布、現像方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
  本開示にかかる技術は、金属含有塗布膜の現像処理時に生じる基板表面の残渣物の量を低減させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
  本開示の一態様は、基板の処理方法であって、金属含有塗布膜が所定のパターンに露光された前記基板を現像する工程と、現像後に前記基板を洗浄する工程と、洗浄された前記基板に波長が190~400nmの紫外線を照射する工程と、前記紫外線を照射する工程の後に、前記基板に有機溶剤を含むパターン洗浄液を供給する工程と、を備え、前記現像する工程で前記基板に有機溶剤を含む現像液を供給し、前記洗浄する工程で前記基板に有機溶剤を含む洗浄液を供給し、前記洗浄液は、前記現像液より前記金属含有塗布膜の溶解性が小さく、前記パターン洗浄液は、前記洗浄液より前記金属含有塗布膜の溶解性が大きい。
【発明の効果】
【0006】
  本開示によれば、金属含有塗布膜の現像処理時に生じる基板表面の残渣物の量を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
            【
図1】実施の形態にかかる基板処理システムの構成の概略を模式的に示す平面図である。
 
            【
図2】
図1の基板処理システムの構成の概略を模式的に示す正面図である。
 
            【
図3】
図1の基板処理システムの構成の概略を模式的に示す背面図である。
 
            【
図4】実施の形態にかかる現像液供給装置の構成の概略を模式的に示す側面断面図である。
 
            【
図5】実施の形態にかかる洗浄液供給装置の構成の概略を模式的に示す側面断面図である。
 
            【
図6】実施の形態にかかる熱処理装置の構成の概略を模式的に示す側面断面図である。
 
            【
図7】実施の形態にかかる紫外線照射装置の構成の概略を模式的に示す側面断面図である。
 
            【
図8】実施の形態にかかる基板処理方法における基板上の金属含有塗布膜の状態を示す説明図である。
 
            【
図9】露光部と未露光部の金属含有塗布膜の状態を示す説明図である。
 
          
【発明を実施するための形態】
【0008】
  半導体装置の製造プロセスにおいては、半導体ウェハ(以下、「ウェハ」と記載する)へのレジスト塗布によるレジスト膜の形成と、レジスト膜の露光と、露光後のレジスト膜の現像によるレジストパターンの形成からなるフォトリソグラフィ工程が行われる。近年は、そのフォトリソグラフィ工程において、より微細なレジストパターンを形成するために金属を含有するレジスト液を用いることが検討されている。
【0009】
  しかしながら、所定のパターンに露光された金属含有レジスト膜の現像処理においては、現像液で十分に溶解されなかったレジスト溶解物がウェハ上に残渣物として残存しやすく、このような残渣物が、その後のエッチング工程におけるパターン欠陥の原因となっていた。特に、金属含有レジスト膜は、未露光部においても露光部との境界で金属原子と酸素原子の重合反応が少しずつ進行しやすく、この重合反応部が現像液に対して難溶であるために、ウェハ上に残渣物が残存しやすい。従来の現像方法では、そのような残渣物を除去することが困難であったことから、金属含有レジスト液を用いた半導体の量産化が困難であった。
【0010】
  そこで、本開示にかかる技術は、金属含有塗布膜の現像処理時に生じる基板表面の残渣物の量を低減させる。
【0011】
  以下、本実施形態にかかる基板処理方法及びその基板処理方法を実施するための基板処理システムについて、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
  図1は、本実施形態にかかる基板処理システムの構成の概略を模式的に示す平面図である。また
図2及び
図3は、基板処理システム1の内部構成の概略を模式的に示す、正面図と背面図である。
 
【0013】
  基板処理システム1は、
図1に示すように、基板としての複数枚のウェハWを収容したカセットCが搬入出されるカセットステーション10と、ウェハWに所定の処理を施す複数の各種処理装置を備えた処理ステーション11と、を有する。そして、基板処理システム1は、カセットステーション10と、処理ステーション11と、処理ステーション11に隣接する露光装置12との間でウェハWの受け渡しを行うインターフェイスステーション13と、を一体に接続した構成を有している。
 
【0014】
  カセットステーション10には、カセット載置台20が設けられている。カセット載置台20には、基板処理システム1の外部に対してカセットCを搬入出する際に、カセットCを載置するカセット載置板21が複数設けられている。
【0015】
  カセットステーション10には、
図1のX方向に延びる搬送路22上を移動自在なウェハ搬送装置23が設けられている。ウェハ搬送装置23は、上下方向及び鉛直軸周り(θ方向)にも移動自在であり、各カセット載置板21上のカセットCと、後述する処理ステーション11の第3のブロックG3の受け渡し装置との間でウェハWを搬送できる。
 
【0016】
  処理ステーション11には、各種装置を備えた複数例えば4つのブロックG1、G2、G3、G4が設けられている。例えば処理ステーション11の正面側(
図1のX方向負方向側)には、第1のブロックG1が設けられ、処理ステーション11の背面側(
図1のX方向正方向側)には、第2のブロックG2が設けられている。また、処理ステーション11のカセットステーション10側(
図1のY方向負方向側)には、第3のブロックG3が設けられ、処理ステーション11のインターフェイスステーション13側(
図1のY方向正方向側)には、第4のブロックG4が設けられている。
 
【0017】
  第1のブロックG1には、
図2に示すように複数の液処理装置、例えば現像液供給装置30、レジスト塗布装置31、洗浄液供給装置32が設けられている。現像液供給装置30は、ウェハWの現像処理を行う。レジスト塗布装置31は、ウェハWに金属含有処理液として金属(例えばSn)を含有するレジスト液を供給して金属含有塗布膜として金属含有レジスト膜を形成する。洗浄液供給装置32は、ウェハWに有機溶剤を含む洗浄液を供給してウェハWを洗浄する。これら現像液供給装置30、レジスト塗布装置31、洗浄液供給装置32の数や配置は、任意に選択できる。
 
【0018】
  これら現像液供給装置30、レジスト塗布装置31、洗浄液供給装置32では、例えばウェハW上に所定の処理液、塗布液を用いたスピンコーティングが行われる。スピンコーティングでは、例えばノズルからウェハW上に処理液や塗布液を吐出すると共に、ウェハWを回転させて、処理液や塗布液をウェハWの表面に拡散させる。
【0019】
  第2のブロックG2には、
図3に示すように、熱処理装置40、周辺露光装置41、紫外線照射装置42が上下方向と水平方向に並べて設けられている。熱処理装置40は、ウェハWの加熱や冷却といった熱処理を行う。周辺露光装置41は、ウェハWの外周部を露光する。紫外線照射装置42は、ウェハWに紫外線を照射する。これら熱処理装置40、周辺露光装置41、紫外線照射装置42の数や配置は、任意に選択できる。
 
【0020】
  例えば第3のブロックG3には、複数の受け渡し装置50、51、52、53、54、55、56が下から順に設けられている。また、第4のブロックG4には、複数の受け渡し装置60、61、62が下から順に設けられている。
【0021】
  図1及び
図3に示すように第1のブロックG1~第4のブロックG4に囲まれた領域には、ウェハ搬送領域Dが形成されている。ウェハ搬送領域Dには、ウェハ搬送装置70が配置されている。
 
【0022】
  ウェハ搬送装置70はそれぞれ、例えばY方向、X方向、θ方向及び上下方向に移動自在な搬送アーム70aを有している。ウェハ搬送装置70は、上下に複数台配置されており、各ウェハ搬送装置70は、ウェハ搬送領域D内を移動し、例えば各ブロックG1~G4の同程度の高さの所定の装置にウェハWを搬送できる。
【0023】
  また、ウェハ搬送領域Dには、第3のブロックG3と第4のブロックG4との間で直線的にウェハWを搬送するシャトル搬送装置80が設けられている。
【0024】
  シャトル搬送装置80は、例えば
図3のY方向に直線的に移動自在になっている。シャトル搬送装置80は、ウェハWを支持した状態でY方向に移動し、第3のブロックG3の受け渡し装置52と第4のブロックG4の受け渡し装置62との間でウェハWを搬送できる。
 
【0025】
  図1に示すように第3のブロックG3のX方向正方向側の隣には、ウェハ搬送装置90が設けられている。ウェハ搬送装置90は、例えばX方向、θ方向及び上下方向に移動自在な搬送アーム90aを有している。ウェハ搬送装置90は、ウェハWを支持した状態で上下に移動して、第3のブロックG3内の各受け渡し装置にウェハWを搬送できる。
 
【0026】
  インターフェイスステーション13には、ウェハ搬送装置100と受け渡し装置101が設けられている。ウェハ搬送装置100は、例えばY方向、θ方向及び上下方向に移動自在な搬送アーム100aを有している。ウェハ搬送装置100は、例えば搬送アーム100aにウェハWを支持して、第4のブロックG4内の各受け渡し装置、受け渡し装置101及び露光装置12との間でウェハWを搬送できる。
【0027】
  以上の基板処理システム1には、制御部200が設けられている。制御部200は、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータにより構成され、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、基板処理システム1における各種処理を制御するプログラムが格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、当該記憶媒体Hから制御部200にインストールされたものであってもよい。プログラムの一部または全ては専用ハードウェア(回路基板)で実現してもよい。記憶媒体Hは一時的記憶媒体か非一時的記憶媒体かを問わない。
【0028】
  次に、本実施形態にかかる基板処理方法を実施するための各種装置について、個別具体的に説明する。
【0029】
<現像液供給装置>
  図4は、本実施形態にかかる現像液供給装置30の構成の概略を模式的に示す側面断面図である。現像液供給装置30は、処理容器110を有し、処理容器110の側面には、ウェハWの搬入出口(図示せず)が形成されている。処理容器110内には、基板保持部としてのスピンチャック111を有している。スピンチャック111は、基板としてのウェハWを水平に保持する。スピンチャック111は、昇降自在な回転部112と接続され、回転部112はモータなどによって構成される回転駆動部113と接続されている。したがって回転駆動部113の駆動によって保持したウェハWは回転可能である。
 
【0030】
  処理容器110の天井部には、フィルタ装置114が設けられ、清浄化された空気のダウンフローが給気部115を介して処理容器110内に形成される。
【0031】
  スピンチャック111の外側には、カップ116が配置されており、飛散する現像液、洗浄液、並びにこれらのミストが周囲に飛散することが防止される。カップ116の底部には、排液管117と排気管118が設けられている。排気管118は、排気ポンプなどの排気装置119に通じている。
【0032】
  処理容器110内には、ウェハWの表面に向けて現像液を吐出する、現像液供給部としての現像液ノズル120が配置されている。現像液ノズル120は、例えばアームなどのノズル支持部121に設けられており、ノズル支持部121は駆動機構(図示せず)によって、図中の破線で示した往復矢印Aのように昇降自在であり、また破線で示した往復矢印Bのように水平移動自在である。現像液ノズル120には、供給管122を介して現像液供給源123から現像液が供給される。
【0033】
  また、処理容器110内には、ウェハWの表面に向けて洗浄液を吐出する、洗浄液供給部としての洗浄液ノズル130が配置されている。洗浄液ノズル130は、例えばアームなどのノズル支持部131に設けられており、ノズル支持部131は駆動機構(図示せず)によって、図中の破線で示した往復矢印Cのように昇降自在であり、また破線で示した往復矢印Dのように水平移動自在である。洗浄液ノズル130には、供給管132を介して洗浄液供給源133から洗浄液が供給される。
【0034】
  本実施形態における現像液供給装置30によれば、ウェハWを回転させながら、ウェハWの中心に現像液又は洗浄液を供給することでウェハW全体に現像液又は洗浄液を拡散させることができる。ただし、現像液又は洗浄液の供給方法は、ウェハWの表面に現像液又は洗浄液を供給することが可能な方法であれば特に限定されないことから、現像液供給装置30の構成は本実施形態で説明された構成に限定されない。装置構成は例えばパドル現像やスプレー現像など、採用する現像方法によって適宜変更される。
【0035】
<洗浄液供給装置>
  図5は、本実施形態にかかる洗浄液供給装置32の構成の概略を模式的に示す側面断面図である。洗浄液供給装置32は、筐体140を有し、筐体140の側面には、ウェハWの搬入出口(図示せず)が形成されている。筐体140内には、基板保持部としてのスピンチャック141を有している。スピンチャック141は、基板としてのウェハWを水平に保持する。スピンチャック141は、昇降自在な回転部142と接続され、回転部142はモータなどによって構成される回転駆動部143と接続されている。したがって回転駆動部143の駆動によって保持したウェハWは回転可能である。
 
【0036】
  筐体140の天井部には、フィルタ装置144が設けられ、清浄化された空気のダウンフローが給気部145を介して筐体140内に形成される。
【0037】
  スピンチャック141の外側には、カップ146が配置されており、飛散する洗浄液、並びにこれらのミストが周囲に飛散することが防止される。カップ146の底部には、排液管147と排気管148が設けられている。排気管148は、排気ポンプなどの排気装置149に通じている。
【0038】
  筐体140内には、ウェハWの表面に向けて洗浄液(後述のパターン洗浄液)を吐出する、洗浄液供給部としての洗浄液ノズル150が配置されている。洗浄液ノズル150は、例えばアームなどのノズル支持部151に設けられており、ノズル支持部151は駆動機構(図示せず)によって、図中の破線で示した往復矢印Eのように昇降自在であり、また破線で示した往復矢印Fのように水平移動自在である。洗浄液ノズル150には、供給管152を介して洗浄液供給源153から洗浄液が供給される。
【0039】
  本実施形態における洗浄液供給装置32によれば、ウェハWを回転させながら、ウェハWの中心に洗浄液を供給することでウェハW全体に洗浄液を拡散させることができる。ただし、洗浄液の供給方法は、ウェハWの表面に洗浄液を供給することが可能な方法であれば特に限定されないことから、洗浄液供給装置32の構成は本実施形態で説明された構成に限定されない。
【0040】
<熱処理装置>
  図6は、本実施形態にかかる熱処理装置40の構成の概略を模式的に示す側面断面図である。熱処理装置40は、処理容器160を有し、処理容器160の側面には、ウェハWの搬入出口(図示せず)が形成されている。また、処理容器160内には、ウェハWを載置する基板保持部としての載置台161が設けられている。載置台161内には、ウェハWの加熱部としてのヒータ162が設けられている。載置台161には、貫通孔163が複数個所に形成されている。これら貫通孔163内を昇降する昇降ピン164aが、昇降ピン支持部164に設けられている。昇降ピン支持部164は昇降機構165によって上下に昇降する。
 
【0041】
  なお、熱処理装置40は本実施形態で説明された構成に限定されず、ウェハWを加熱することが可能な構成を有していればよい。
【0042】
<紫外線照射装置>
  図7は、本実施形態にかかる紫外線照射装置42の構成の概略を模式的に示す側面断面図である。紫外線照射装置42は、筐体170を有し、筐体170の側面には、ウェハWの搬入出口(図示せず)が形成されている。また、筐体170内には、ウェハWを載置する基板保持部としての載置台171が設けられている。載置台171には、貫通孔172が複数個所に形成されている。これら貫通孔172内を昇降する昇降ピン173aが、昇降ピン支持部173に設けられている。昇降ピン支持部173は昇降機構174によって上下に昇降する。
 
【0043】
  載置台171の上方には、載置台171に載置されたウェハWの表面に紫外線を照射する、紫外線照射部としてのUVランプ175が配置されている。本実施形態におけるUVランプ175は、波長が190~400nmの紫外線を放射状に照射する。なお、紫外線照射装置42は本実施形態で説明された構成に限定されず、ウェハWに対して波長が190~400nmの紫外線を照射することが可能な構成を有していればよい。例えば紫外線照射装置42としては波長が248nmのKrF露光装置が使用される。
【0044】
  本実施形態にかかる基板処理システム1は以上のように構成されている。次に、この基板処理システム1におけるウェハWの基板処理方法について説明する。
【0045】
  ウェハWの現像処理を行うにあたり、まずレジスト塗布装置31において、ウェハWの表面に金属含有レジスト膜Rが形成される(
図8(a))。
 
【0046】
  その後、ウェハWが周辺露光装置41における周辺露光処理、露光装置12における露光処理、熱処理装置40におけるPEB処理を経て、ウェハWの表面には、露光されていないレジスト膜R
1と、露光されたレジスト膜R
2が存在した状態となる(
図8(b))。このとき、露光部のレジスト膜R
2は、全体としては重合反応が進行した状態にあり、未露光部のレジスト膜R
1は、全体としては重合反応が進行していない状態にある。
 
【0047】
  なお、レジスト膜Rの露光処理時には、露光機の特性上、
図9のように露光強度が周期的に変化するような状態で露光が行われる。詳述すると、未露光部のレジスト膜R
1の水平方向における中央部では、重合反応が進行しない程度に露光強度が小さい一方で、露光部のレジスト膜R
2との境界近傍においては、露光強度が中央部よりも大きい。このため、露光部のレジスト膜R
2との境界近傍における未露光部のレジスト膜R
1では、未露光部であるものの重合反応が進行した領域A
1が存在する。
 
【0048】
  また、露光部のレジスト膜R2の水平方向における中央部では、重合反応が十分に進行する程度に露光強度が大きい一方で、未露光部のレジスト膜R1との境界近傍においては、露光強度が中央部よりも小さい。このため、未露光部のレジスト膜R1との境界近傍における露光部のレジスト膜R2では、当該露光部のレジスト膜R2の中央部よりも重合反応が進行していない領域A2が存在する。
【0049】
  続いて、所定のパターンに露光されたウェハWは現像液供給装置30に搬送され、ウェハWの表面に現像液が供給される。ここで供給される現像液には有機溶剤が含まれている。これにより、ウェハWの表面に形成されている未露光部のレジスト膜R
1が溶解する(
図8(c))。有機溶剤を含む現像液は、露光部のレジスト膜R
2が溶解しない処理液であれば、処理液の種類は特に限定されない。また、現像液は2種類以上の有機溶剤の混合液であってもよい。例えば2-ヘプタノンや、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)と酢酸の混合液等が現像液として採用され得る。
 
【0050】
  現像液に溶解したレジストの多くは、現像液の排液と共にウェハWの表面から除去されるが、ウェハWの表面には、現像液に対して完全には溶解していないレジスト溶解物が残渣物として残存する場合がある。特に、
図8(b)に示す未露光部のレジスト膜R
1には重合反応が進行した領域A
1が存在しており、この領域A
1では、未露光部のレジスト膜R
1における他の領域と比較して有機溶剤に対して溶解しにくい状態にある。このため、当該領域A
1においてはレジスト膜R
1が完全に溶解せずにウェハWの表面にレジスト溶解物が残存しやすい。
 
【0051】
  次に、レジスト溶解物が残存するウェハWに洗浄液が供給される。ここで供給される洗浄液には、現像液と同様に有機溶剤が含まれている。このため、レジスト溶解物と洗浄液が接触することにより、レジスト溶解物が溶解し始める。そして、洗浄液に対して完全に溶解したレジスト溶解物は、洗浄液の廃液と共にウェハWの表面から除去される(
図8(d))。これにより、ウェハWの表面に残渣物として残存するレジスト溶解物の量を減少する。
 
【0052】
  上記のようなウェハWに洗浄液を供給する工程においては、パターンの溶解を回避するために、洗浄液として、現像液より金属含有レジスト膜Rの溶解性が小さい処理液が使用される。ここで、現像液又は洗浄液が有する「金属含有レジスト膜Rの溶解性」とは、現像液又は洗浄液に対する金属含有レジスト膜Rの溶解のしやすさを示す指標である。例えば2種類の処理液をレジスト膜Rに対してそれぞれ同量供給した際に、2種類の処理液のうち、単位時間あたりのレジスト膜Rの溶解量(体積の減少量)が小さい処理液が、相対的に金属含有レジスト膜Rの溶解性が小さい処理液である。
【0053】
  一般的に、現像液は露光部のレジスト膜R2が溶解しない程度の溶解性を有するが、このような現像液よりも溶解性が大きい洗浄液を使用すると、露光部のレジスト膜R2が溶解してパターン形状の崩壊が懸念される。また、露光部のレジスト膜R2に存在する領域A2では、露光部のレジスト膜R2における他の領域と比較して重合反応が進行していないために、領域A2は有機溶剤に対して溶解しやすい状態にある。このため、レジスト膜Rの溶解性が洗浄液と現像液で同一であると、領域A2が僅かに溶解し、パターン形状の崩壊を招くことが懸念される。したがって、洗浄液として、現像液よりレジスト膜Rの溶解性が小さい処理液を使用することで、パターンを崩壊させずにウェハWの表面に残存するレジスト溶解物を溶解させることができる。
【0054】
  有機溶剤を含む洗浄液は、現像液よりレジスト膜Rの溶解性が小さい処理液であれば、処理液の種類は特に限定されない。また、洗浄液は2種類以上の有機溶剤の混合液であってもよい。例えば、現像液が2-ヘプタノンである場合は、MIBC(メチルイソブチルカルビノール)やPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)などの処理液が洗浄液として採用され得る。また例えば、現像液がPGMEAと酢酸の混合液である場合は、2-ヘプタノンや、MIBC、PGMEA、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、PGMEAとPGMEの混合液、nBA(n-ブチルアセテート)などの処理液が洗浄液として採用され得る。なお、本実施形態においては、現像液供給装置30に洗浄液ノズル130が設けられているために現像液の供給に続く洗浄液の供給が現像液供給装置30で実施されるが、例えばウェハWを洗浄液供給装置32に搬送して洗浄液の供給が実施されてもよい。
【0055】
  本実施形態にかかる基板処理方法によれば、以上のウェハWに現像液を供給する工程と、ウェハWに洗浄液を供給する工程を行うことで、ウェハWの表面に残渣物として残存するレジスト溶解物の量を低減させてウェハW上に所定のレジストパターンを形成することができる。
【0056】
  金属含有レジスト液や現像液、洗浄液等の種類や処理条件によっては、
図8(d)に示すウェハWに洗浄液を供給する工程が完了した段階でウェハWの表面に残存するレジスト溶解物が、要求される品質を満たす程度に除去されることもある。その場合には、
図8(d)に示すウェハWに洗浄液を供給する工程で、レジストパターンを形成する一連の現像工程は完了する。
 
【0057】
  一方、ウェハWに洗浄液を供給する工程後に、ウェハWの表面に残存する残渣物の量をさらに低減させるためには、必要に応じて以下の工程が実施される。
【0058】
  まず、洗浄液で洗浄されたウェハWが紫外線照射装置42に搬送され、ウェハWの表面に、波長が190~400nmの紫外線が照射される。本工程では、例えば波長が248nmのKrF露光が実施される。紫外線の照射時にはマスクは使用されず、ウェハW全体に一様に紫外線が照射される。これにより、露光部のレジスト膜R
2全体の露光反応がさらに進行し、レジスト膜R
2の中で相対的に露光反応が進行していなかった領域A
2においても他の領域と同様に露光反応が進む(
図8(e))。なお、紫外線の波長が190nm未満である場合は、紫外線の照射によりレジスト膜R
2のC-O結合が切断される反応が生じるが、レジスト膜R
2の露光反応は生じない。また、本実施形態においては、紫外線の照射が紫外線照射装置42で実施されているが、例えば露光装置12で実施されてもよい。
 
【0059】
  次に、紫外線が照射されたウェハWが熱処理装置40に搬送されて加熱される。これにより、膜全体が十分に露光されたレジスト膜R
2の重合反応がさらに促進され、レジスト膜R
2が硬化することによって強固なレジスト膜R
3に変質する(
図8(f))。なお、本実施形態においては、紫外線照射後のウェハWの加熱が熱処理装置40で実施されているが、例えば紫外線照射装置42がウェハWの加熱機構を有している場合は、紫外線照射装置でウェハWが加熱されてもよい。また、同一のモジュールで紫外線の照射とウェハWの加熱が可能である場合は、ウェハWの加熱は紫外線の照射中に実施されてもよいし、紫外線の照射後に実施されてもよい。
 
【0060】
  次に、加熱されたウェハWが洗浄液供給装置32に搬送されてウェハWの表面に洗浄液が供給される。なお、ここで供給される「洗浄液」は、
図8(d)に示す工程で供給される洗浄液と便宜上、区別するために、以降の説明では「パターン洗浄液」と記載する。パターン洗浄液には有機溶剤が含まれており、ウェハWの表面に残存するレジスト溶解物とパターン洗浄液が接触することで、レジスト溶解物が溶解する(
図8(g))。
 
【0061】
  そして、紫外線照射と加熱処理を経て硬化したレジスト膜R
3は有機溶剤に対して溶解しにくいことから、パターン洗浄液として、紫外線の照射前に使用された洗浄液よりもレジスト膜Rの溶解性が大きい処理液を使用することも可能である。このため、
図8(d)に示すウェハWの洗浄工程では除去しきれなかったレジスト溶解物を溶解させることができる。パターン洗浄液に溶解したレジスト溶解物は、パターン洗浄液の排液と共にウェハWの表面から除去される。これにより、ウェハWの表面に残渣物として残存するレジスト溶解物の量をさらに低減させることができる。
 
【0062】
  有機溶剤を含むパターン洗浄液は、硬化したレジスト膜R3が溶解しない処理液であれば特に限定されない。また、パターン洗浄液は2種類以上の有機溶剤の混合液であってもよい。例えばTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)を含む処理液などのアルカリ性の処理液がパターン洗浄液として採用され得る。一例として、質量パーセント濃度が2.38%のTMAH水溶液がパターン洗浄液として採用され得る。また、例えば酢酸、ギ酸、クエン酸などの有機酸を含む処理液がパターン洗浄液として採用され得る。また、硬化したレジスト膜R3は、紫外線照射前のレジスト膜R2よりも有機溶剤に対して溶解しにくいため、パターン洗浄液として、現像液よりレジスト膜Rの溶解性が大きい処理液を選択することも可能である。
【0063】
  なお、本実施形態においては、パターン洗浄液の供給が洗浄液供給装置32で実施されているが、現像液供給装置30がパターン洗浄液の供給機能を有している場合は、ウェハWへのパターン洗浄液の供給が現像液供給装置30で実施されてもよい。
【0064】
  パターン洗浄液による洗浄が終了したウェハWに対しては、純水による洗浄と乾燥が実施されて一連の現像工程が完了する。
【0065】
  以上のように、現像液供給後のウェハWに対し、波長が190~400nmの紫外線を照射し、次いでウェハWを加熱し、その後にウェハWにパターン洗浄液を供給することによって、ウェハWの表面に残渣物として残存するレジスト溶解物の量をさらに低減させることができる。
【0066】
  今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0067】
  なお、本開示にかかる基板の処理方法は、半導体ウェハ以外の処理対象基板、例えばFPD(フラットパネルディスプレイ)基板の処理方法にも適用できる。
【符号の説明】
【0068】
1        基板処理システム
30      現像液供給装置
32      洗浄液供給装置
200    制御部
R        金属含有レジスト膜
W        ウェハ