(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-22
(45)【発行日】2025-10-01
(54)【発明の名称】研削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 55/06 20060101AFI20250924BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20250924BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20250924BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20250924BHJP
【FI】
B24B55/06
B24B7/04 A
B24B41/06 L
H01L21/304 631
H01L21/304 622P
(21)【出願番号】P 2022005079
(22)【出願日】2022-01-17
【審査請求日】2024-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 晋也
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-079853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 55/00-57/04;
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポーラス部材の保持面によって板状物を吸引保持するチャックテーブルと、該保持面が吸引保持した板状物を研削砥石で研削する研削機構と、板状物を保持し該保持面に搬入する搬入機構と、板状物を保持し該保持面から搬出する搬出機構と、制御部と、を備える研削装置であって、
該搬出機構または該搬入機構によって保持された板状物の下面を洗浄する下面洗浄機構をさらに備え、
該制御部は、
該保持面に板状物を吸引保持させることと、
該搬出機構または該搬入機構によって、該保持面が吸引保持している該板状物を保持することと、
該板状物が覆った状態の該保持面から、水とエアとを混合させた二流体を噴出させることと、
該保持面から該二流体を噴出させた後、該保持面から離間させた該板状物の下面を、該下面洗浄機構によって洗浄し、再び該保持面を該板状物で覆い、該保持面から該二流体を噴出させることと、
を制御し、
該保持面から噴出した二流体が、該保持面と該板状物との間を該保持面の直径方向に外側に流れ、該ポーラス部材および該保持面から研削屑を除去する、
研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
研削装置では、チャックテーブルのポーラス部材の保持面が吸引保持した板状物を、研削砥石で研削して、研削屑を排出している。そのため、保持面は、吸引保持した板状物の外周部分から、研削屑を吸引している。また、吸引された研削屑は、保持面の外周部分で吸引され、保持面の外周部分に留まり、保持面の外周部分の吸引力を低下させ、板状物の外周部分の厚みを薄くする。
【0003】
このような保持面の吸引力の低下を防止するために、保持面を研削するセルフグラインドを定期的に実施して、保持面の外周部分の研削屑を除去している。しかし、セルフグラインドによって保持面を研削する際に発生した研削屑が、ポーラス部材内に進入し、セルフグラインド後に、保持面によって保持された板状物の下面と保持面との間に研削屑が介在することがある。このため、板状物に部分的に厚みが薄くなるところが発生したり、板状物に十字クラックが発生したりすることがある。
【0004】
そのため、特許文献1に開示の技術では、保持面を覆う面積のカバーを備え、カバーが保持面を覆った状態で、保持面から水とエアとの二流体を噴出させ、保持面および保持面を構成するポーラス部材から研削屑を除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の技術では、保持面を覆うカバーと、カバーを移動させる移動機構を備えているので、装置が大きくなってしまう。
【0007】
したがって、本発明の目的は、装置を大きくすることなく、保持面および保持面を構成するポーラス部材から研削屑を排出することにより、保持面と板状物の下面との間に研削屑が介在することを抑制し、板状物を均一な厚みに研削することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の研削装置(本研削装置)は、ポーラス部材の保持面によって板状物を吸引保持するチャックテーブルと、該保持面が吸引保持した板状物を研削砥石で研削する研削機構と、板状物を保持し該保持面に搬入する搬入機構と、板状物を保持し該保持面から搬出する搬出機構と、制御部と、を備える研削装置であって、該搬出機構または該搬入機構によって保持された板状物の下面を洗浄する下面洗浄機構をさらに備え、該制御部は、該保持面に板状物を吸引保持させることと、該搬出機構または該搬入機構によって、該保持面が吸引保持している該板状物を保持することと、該板状物が覆った状態の該保持面から、水とエアとを混合させた二流体を噴出させることと、該保持面から該二流体を噴出させた後、該保持面から離間させた該板状物の下面を、該下面洗浄機構によって洗浄し、再び該保持面を該板状物で覆い、該保持面から該二流体を噴出させることと、を制御し、該保持面から噴出した二流体が、該保持面と該板状物との間を該保持面の直径方向に外側に流れ、該ポーラス部材および該保持面から研削屑を除去する。
【発明の効果】
【0009】
本研削装置では、板状物によって保持面を覆った状態で、ポーラス部材に二流体を流すことにより、保持面からポーラス部材内に進入した研削屑をポーラス部材および保持面から排出することができる。このため、研削機構による研削の際、保持面と被加工物との間に研削屑が介在することを抑制することができるので、被加工物を均一な厚みに研削することが可能である。
【0010】
また、本研削装置では、ポーラス部材および保持面から研削屑を排出するために、既存の構成である搬出機構あるいは搬入機構を用いている。したがって、研削屑の排出のために追加される構成を少なくできるので、本研削装置の大型化を回避しながら、研削屑の排出を実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】第1保持工程および第2保持工程を示す説明図である。
【
図5】搬出機構のパッドの変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すように、本実施形態にかかる研削装置1は、被加工物の一例であるウェーハ100を研削するための装置である。ウェーハ100は、たとえば円形の板状ワークであり、表面101および裏面102を有している。ウェーハ100の裏面102は、研削加工が施される被加工面となる。また、ウェーハ100は、ポーラス部材21および保持面22の研削屑を除去する際に用いられる板状物としても機能する。
【0013】
研削装置1は、第1の装置ベース10と、第1の装置ベース10の後方(+Y方向側)に配置された第2の装置ベース11とを有している。
【0014】
第1の装置ベース10の-Y方向側には、第1のカセットステージ160および第2のカセットステージ162が設けられている。第1のカセットステージ160には、加工前のウェーハ100が収容される第1のカセット161が載置されている。第2のカセットステージ162には、加工後のウェーハ100が収容される第2のカセット163が載置されている。
【0015】
第1のカセット161および第2のカセット163は、内部に複数の棚を備えており、各棚に一枚ずつウェーハ100が収容されている。すなわち、第1のカセット161および第2のカセット163は、複数のウェーハ100を棚状に収容する。
【0016】
第1のカセット161および第2のカセット163の開口(図示せず)は、+Y方向側を向いている。これらの開口の+Y方向側には、ロボット155が配設されている。ロボット155は、ウェーハ100を保持する保持面を備えている。ロボット155は、加工後のウェーハ100を第2のカセット163に搬入(収納)する。また、ロボット155は、第1のカセット161から加工前のウェーハ100を取り出して、仮置き機構152の仮置きテーブル154に載置する。
【0017】
仮置き機構152は、第1のカセット161から取り出されたウェーハ100を仮置きするために用いられ、ロボット155に隣接する位置に設けられている。仮置き機構152は、仮置きテーブル154、および、位置合わせ部材153を有している。位置合わせ部材153は、仮置きテーブル154を囲むように外側に配置される複数の位置合わせピンと、位置合わせピンを仮置きテーブル154の径方向に移動させるスライダとを備えている。位置合わせ部材153では、位置合わせピンが仮置きテーブル154の径方向に中央に向かって移動されることにより、複数の位置合わせピンを結ぶ円が縮径される。これにより、仮置きテーブル154に載置されたウェーハ100が、仮置きテーブル154の中心とウェーハ100の中心とが一致した所定の位置に位置合わせ(センタリング)される。
【0018】
仮置き機構152に隣接する位置には、搬入機構170が設けられている。搬入機構170は、仮置き機構152に仮置きされたウェーハ100を保持し、チャックテーブル20の保持面22に搬入して載置する。
【0019】
チャックテーブル20は、ウェーハ100を保持する保持部材の一例であり、ウェーハ100を吸引保持する保持面22を備えている。保持面22は、吸引源47(
図2参照)に連通されて、ウェーハ100を吸引保持することが可能である。チャックテーブル20は、保持面22によってウェーハ100を吸引保持した状態で、保持面22の中心を通りZ軸方向に延在する中心軸を中心として、回転可能である。
【0020】
本実施形態では、第2の装置ベース11上に配設されたターンテーブル6の上面に、2つのチャックテーブル20が、ターンテーブル6の中心を中心とする円上に配設されている。ターンテーブル6の中心には、ターンテーブル6を自転させるための図示しない回転軸が配設されている。ターンテーブル6は、この回転軸によって、Z軸方向に延びる軸心を中心に自転することができる。ターンテーブル6が自転することで、2つのチャックテーブル20が公転する。これにより、チャックテーブル20を、仮置き機構152の近傍、および、研削機構70の下方に位置付けることができる。
【0021】
また、第2の装置ベース11の+Y方向側には、コラム15が立設されている。コラム15の前面には、ウェーハ100を研削する研削機構70、および、研削送り機構60が設けられている。
【0022】
研削送り機構60は、チャックテーブル20と研削機構70の研削砥石77とを、保持面22に垂直なZ軸方向(研削送り方向)に相対的に移動させる。本実施形態では、研削送り機構60は、チャックテーブル20に対して、研削砥石77をZ軸方向に移動させるように構成されている。
【0023】
研削送り機構60は、Z軸方向に平行な一対のZ軸ガイドレール61、このZ軸ガイドレール61上をスライドするZ軸移動テーブル63、Z軸ガイドレール61と平行なZ軸ボールネジ62、Z軸モータ64、および、Z軸移動テーブル63に取り付けられたホルダ66を備えている。ホルダ66は、研削機構70を支持している。
【0024】
Z軸移動テーブル63は、Z軸ガイドレール61にスライド可能に設置されている。Z軸移動テーブル63には、図示しないナット部が固定されている。このナット部には、Z軸ボールネジ62が螺合されている。Z軸モータ64は、Z軸ボールネジ62の一端部に連結されている。
【0025】
研削送り機構60では、Z軸モータ64がZ軸ボールネジ62を回転させることにより、Z軸移動テーブル63が、Z軸ガイドレール61に沿って、Z軸方向に移動する。これにより、Z軸移動テーブル63に取り付けられたホルダ66、および、ホルダ66に支持された研削機構70も、Z軸移動テーブル63とともにZ軸方向に移動する。
【0026】
研削機構70は、チャックテーブル20の保持面22が吸引保持したウェーハ100を研削砥石77によって研削する。研削機構70は、ホルダ66に固定されたスピンドルハウジング71、スピンドルハウジング71に回転可能に保持されたスピンドル72、スピンドル72を回転駆動するスピンドルモータ73、スピンドル72の下端に取り付けられたホイールマウント74、および、ホイールマウント74に支持された研削ホイール75を備えている。
【0027】
スピンドルハウジング71は、Z軸方向に延びるようにホルダ66に保持されている。スピンドル72は、チャックテーブル20の保持面22と直交するようにZ軸方向に延び、スピンドルハウジング71に回転可能に支持されている。
【0028】
スピンドルモータ73は、スピンドル72の上端側に連結されている。このスピンドルモータ73により、スピンドル72は、Z軸方向に延びる回転軸を中心として回転する。
【0029】
ホイールマウント74は、円板状に形成されており、スピンドル72の下端(先端)に固定されている。ホイールマウント74は、研削ホイール75を支持している。
【0030】
研削ホイール75は、外径がホイールマウント74の外径と略同径を有するように形成されている。研削ホイール75は、金属材料から形成された円環状のホイール基台76を含む。ホイール基台76の下面には、全周にわたって、環状に配列された複数の研削砥石77が固定されている。研削砥石77は、その中心を軸に、スピンドル72とともにスピンドルモータ73によって回転され、チャックテーブル20に保持されたウェーハ100の裏面102を研削する。
【0031】
研削後のウェーハ100は、搬出機構172によって搬出される。搬出機構172は、チャックテーブル20の保持面22に保持されたウェーハ100を保持し、保持面22から搬出する。搬出機構172は、保持面22から搬出したウェーハ100を、枚葉式のスピンナ洗浄機構156のスピンナテーブル157に搬送する。なお、搬出機構172の構成については後述する。
【0032】
スピンナ洗浄機構156は、ウェーハ100を洗浄するスピンナ洗浄ユニットである。スピンナ洗浄機構156は、ウェーハ100を保持するスピンナテーブル157、および、スピンナテーブル157に向けて洗浄水および乾燥エアを噴射するノズル158を備えている。
【0033】
スピンナ洗浄機構156では、ウェーハ100を保持したスピンナテーブル157が回転するとともに、ウェーハ100に向けて洗浄水が噴射されて、ウェーハ100がスピンナ洗浄される。その後、ウェーハ100に乾燥エアが吹き付けられて、ウェーハ100が乾燥される。
【0034】
スピンナ洗浄機構156によって洗浄されたウェーハ100は、ロボット155により、第2のカセットステージ162上の第2のカセット163に搬入される。
【0035】
また、ターンテーブル6とスピンナ洗浄機構156との間には、下面洗浄機構180が配設されている。下面洗浄機構180は、搬出機構172によってチャックテーブル20からスピンナ洗浄機構156に搬送されるウェーハ100の下面である表面101を洗浄するために用いられる。すなわち、下面洗浄機構180は、搬出機構172が保持したウェーハ100の表面101を洗浄する。
【0036】
ここで、チャックテーブル20の構成について説明する。
図2に示すように、チャックテーブル20は、ウェーハ100を保持するための円形板状のテーブルである。チャックテーブル20は、円形板状のポーラス部材21、および、ポーラス部材21を支持する枠体23を備えている。ポーラス部材21は、吸引源47に連通されることが可能である。吸引源47からの吸引力が、ポーラス部材21の上面である保持面22に伝達されることで、チャックテーブル20は、ポーラス部材21の保持面22によってウェーハ100を吸引保持することができる。
【0037】
また、チャックテーブル20は、回転機構30によって回転可能となっている。回転機構30は、たとえばプーリ機構であり、駆動源となるモータ31、モータ31のシャフトに取り付けられた主動プーリ32、主動プーリ32に対して無端ベルト33を介して接続されている従動プーリ34、および、従動プーリ34を支持する回転軸35を備えている。
【0038】
回転軸35は、チャックテーブル20の下面における保持面22の中心の直下に接続されており、チャックテーブル20の保持面22に対して垂直に延在している。モータ31が主動プーリ32を回転駆動することで、主動プーリ32の回転に伴って無端ベルト33が回動する。無端ベルト33が回動することで、従動プーリ34および回転軸35が回転する。これにより、チャックテーブル20が、保持面22の中心を軸に回転される。
【0039】
また、研削装置1は、流体流通機構40を備えている。流体流通機構40は、チャックテーブル20の保持面22に対して、流体であるエアあるいは水を供給する、あるいは、保持面22に吸引力を付与するための機構である。
【0040】
流体流通機構40は、吸引溝403、吸引溝403に連通されている吸引流路470、回転軸35に接続するロータリージョイント460、および、吸引流路470に連通されている吸引配管471を備えている。
【0041】
吸引溝403は、ポーラス部材21の下面に接するように、チャックテーブル20における枠体23の凹部の底面に設けられている。吸引溝403は、チャックテーブル20の中心を中心として、同心円状に形成されている。
【0042】
吸引流路470は、吸引溝403の底面から、枠体23、回転軸35およびロータリージョイント460を通過するように延びている。
【0043】
吸引流路470は、ロータリージョイント460の外部で、吸引配管471に接続されている。吸引配管471の一端側は、吸引流路470に連通されている。吸引配管471の他端側には、吸引源47が接続されている。この吸引源47は、たとえば、エジェクター機構あるいは真空発生装置等を備え、チャックテーブル20のポーラス部材21に連通されて、その上面である保持面22に吸引力を与えるために用いられる。
【0044】
また、吸引配管471には、吸引源47から吸引流路470側に向かって順に、吸引開閉弁475および吸引流量調整部473が配設されている。吸引開閉弁475は、吸引配管471と吸引源47との連通状態を切り換える。吸引流量調整部473は、たとえば比例制御弁であり、吸引開閉弁475が開いているときに、内部のオリフィス径を変更して、吸引源47からポーラス部材21の保持面22に伝達される吸引力を調整するために用いられる。
なお、吸引流量調整部473は、手動でオリフィス径を調整するニードルバルブ、ゲートバルブでもよい。
【0045】
さらに、吸引配管471には、エア配管481が連通されている。エア配管481は、チャックテーブル20の保持面22とエア供給源48とを連通するための配管である。
【0046】
エア配管481の一端側は、吸引配管471を介して、吸引流路470に連通されている。エア配管481の他端側には、エア供給源48が接続されている。エア供給源48は、コンプレッサー等を備え、チャックテーブル20の保持面22にエアを供給するために用いられる。
【0047】
また、エア配管481には、エア供給源48から吸引流路470側に向かって順に、エア供給開閉弁485およびエア調整部483が配設されている。エア供給開閉弁485は、エア配管481とエア供給源48との連通状態を切り換える。エア調整部483は、たとえば比例制御弁であり、エア供給開閉弁485が開いているときに、内部のオリフィス径を変更して、エア供給源48から保持面22に送られるエアの流量を調整するために用いられる。
なお、エア調整部483は、手動でオリフィス径を調整するニードルバルブ、ゲートバルブでもよい。
【0048】
また、エア配管481には、圧力センサ487が設けられている。圧力センサ487は、このエア配管481の圧力値を検出することにより、保持面22の吸引力を検知する。
【0049】
また、エア配管481には、水配管491が連通されている。水配管491は、チャックテーブル20の保持面22と水供給源49とを連通するための配管である。
【0050】
水配管491の一端側は、エア配管481および吸引配管471を介して、吸引流路470に連通されている。水配管491の他端側には、水供給源49が接続されている。水供給源49は、ポンプ等を備え、チャックテーブル20の保持面22に水を供給するために用いられる。
【0051】
また、水配管491には、水供給源49から吸引流路470側に向かって順に、水供給開閉弁495および水調整部493が配設されている。水供給開閉弁495は、水配管491と水供給源49との連通状態を切り換える。水調整部493は、たとえば比例制御弁であり、水供給開閉弁495が開いているときに、内部のオリフィス径を変更して、水供給源49から保持面22に送られる水の流量を調整するために用いられる。
なお、水調整部493は、手動でオリフィス径を調整するニードルバルブ、ゲートバルブでもよい。
【0052】
次に、搬入機構170および搬出機構172の構成について説明する。なお、本実施形態では、搬入機構170と搬出機構172とは、互いに同一の構成を有している。このため、以下では、搬出機構172の構成について説明する。
【0053】
搬出機構172は、
図2に示すように、円板状のパッド80、および、パッド80を上下自在に吊持するアーム81を備えている。アーム81の一方の端部は、第1の装置ベース10(
図1参照)からZ軸方向に延びる回動柱部82の上端に連結されている。なお、回動柱部82は、回動柱部82をアーム81とともに回動させるモータ94、および、回動柱部82をアーム81とともに上下方向に移動させる上下移動機構95に接続されている。
【0054】
アーム81の他方の端部には、支柱83を介して、円板部材84が連結されている。円板部材84には、複数(たとえば3つ)の貫通孔85が、円周上に等間隔に貫通形成されている。そして、貫通孔85には、パッド80に連結されたボルト86が挿入されている。
【0055】
ボルト86は、貫通孔85よりも僅かに小さな径を有する軸部87と、軸部87の上端に形成された頭部88とを備えている。
軸部87は、貫通孔85を貫通して遊嵌されている。軸部87の下端は、パッド80の枠体91の上面に連結されている。頭部88は、貫通孔85よりも大径に形成されており、ボルト86の下降範囲を制限している。
また、ボルト86は、軸部87の周囲に、衝撃吸収部材としてのスプリング860を有している。スプリング860の上端は円板部材84の下面に接触している一方、スプリング860の下端は、パッド80の枠体91の上面に接触している。スプリング860は、円板部材84とパッド80とを、互いに遠ざかる方向に付勢している。
【0056】
アーム81は、このような構成の円板部材84およびボルト86を介して、パッド80に加えられる衝撃を吸収しながら、パッド80を吊持することが可能となっている。
【0057】
円板状のパッド80は、たとえば、ウェーハ100の面積よりもわずかに大きい面積を有しており、ポーラス材からなるパッド保持部90と、パッド保持部90を支持する枠体91とを備えている。パッド保持部90の下面は、ウェーハ100の上面である裏面102を吸引保持するパッド保持面92となっている。
【0058】
また、搬出機構172は、吸引路89を備えている。吸引路89は、アーム81、支柱83、円板部材84、およびパッド80の枠体91を貫通するように延びており、その下端が、パッド保持部90の上面に接続されている。また、吸引路89の上端は、吸引源99に接続されている。
【0059】
したがって、搬出機構172では、チャックテーブル20の保持面22に保持されているウェーハ100にパッド保持面92が接触している状態で、吸引源99を吸引路89に連通させることにより、吸引源99の吸引力がパッド保持面92に伝達されて、パッド保持面92によってウェーハ100を吸引保持することが可能となる。
【0060】
そして、モータ94および上下移動機構95によって回動柱部82およびアーム81を旋回および昇降させることにより、ウェーハ100を保持しているパッド80を旋回および昇降させて、ウェーハ100をチャックテーブル20から搬出することができる。
【0061】
また、研削装置1は、
図1に示すように、その内部に、研削装置1の制御のための制御部7を有している。制御部7は、制御プログラムに従って演算処理を行うCPU、および、メモリ等の記憶媒体等を備えている。制御部7は、各種の処理を実行し、研削装置1の各構成要素を統括制御する。
【0062】
たとえば、制御部7は、研削装置1の上述した各部材を制御して、ウェーハ100に対する研削処理を実行する。
【0063】
また、制御部7は、チャックテーブル20におけるポーラス部材21の表面である保持面22の吸引力の低下を防止するために、研削機構70の研削砥石77によって保持面22を研削するセルフグラインドを定期的に実施して、保持面22の外周部分の研削屑を除去する。
なお、保持面22を研削する際に、保持面22から流体を噴出させても、噴出させなくてもどちらでもよい。
【0064】
なお、このセルフグラインドでは、保持面22の研削によって発生したポーラス部材21が研削された屑と、保持面22の外周部分に留まったウェーハ100を研削した時の研削屑と、保持面22を研削する研削砥石77から脱落した砥粒とを含む研削屑が、ポーラス部材21の内部に進入することがある。そこで、制御部7は、ポーラス部材21および保持面22の研削屑を除去するための洗浄処理を実施する。
以下に、本実施形態における洗浄処理について説明する。
【0065】
[第1保持工程]
洗浄処理では、制御部7は、まず、ロボット155によって第1のカセット161から加工前のウェーハ100を取り出して、仮置き機構152の仮置きテーブル154に載置し、ウェーハ100を、所定の位置に位置合わせする。
【0066】
さらに、制御部7は、搬入機構170を制御して、仮置き機構152上のウェーハ100を保持する。すなわち、制御部7は、
図2に示した搬入機構170のモータ94および上下移動機構95によってパッド80を旋回および昇降させることにより、仮置き機構152上のウェーハ100に、パッド保持面92を接触させる。この状態で、吸引源99を吸引路89に連通させることにより、搬入機構170が、パッド80のパッド保持面92によってウェーハ100を吸引保持する。
【0067】
その後、制御部7は、搬入機構170のパッド80を旋回および昇降させることにより、仮置き機構152の近傍に位置しているチャックテーブル20の保持面22にウェーハ100を載置し、パッド80をチャックテーブル20から退避させる。これにより、
図2に示すように、保持面22は、ウェーハ100によって覆われた状態となる。
【0068】
その後、制御部7は、
図2に示した吸引開閉弁475を開けるとともに、吸引流量調整部473のオリフィス径を調整して、チャックテーブル20のポーラス部材21を吸引源47に連通させる。これにより、チャックテーブル20の保持面22が、ウェーハ100を吸引保持する。なお、吸引流量調整部473のオリフィス径は、全開であってもよい。
【0069】
[第2保持工程]
次に、制御部7は、搬出機構172によって、保持面22が吸引保持しているウェーハ100を保持する。すなわち、制御部7は、搬出機構172のモータ94および上下移動機構95によってパッド80を旋回および昇降させることにより、チャックテーブル20の保持面22に保持されているウェーハ100に、パッド保持面92を接触させる。この状態で、吸引源99を吸引路89に連通させることにより、搬出機構172が、パッド80のパッド保持面92によってウェーハ100を吸引保持する。
【0070】
これにより、ウェーハ100は、
図2に示すように、チャックテーブル20の保持面22を覆った状態で、搬出機構172によって保持される。その後、制御部7は、吸引開閉弁475を閉じることによって、チャックテーブル20の保持面22によるウェーハ100の吸引保持を停止する。
【0071】
[流体噴出工程]
次に、制御部7は、ウェーハ100が覆った状態の保持面22から、水とエアとを混合させた混合流体である二流体を噴出させる。これにより、保持面22から噴出した二流体が、保持面22とウェーハ100との間を保持面22の直径方向に外側に流れ、チャックテーブル20のポーラス部材21および保持面22から研削屑を除去する。
【0072】
すなわち、制御部7は、エア供給開閉弁485および水供給開閉弁495を開けるとともに、エア調整部483のオリフィス径および水調整部493のオリフィス径を調整して、チャックテーブル20のポーラス部材21を、エア供給源48および水供給源49に連通させる。これにより、制御部7は、
図3において矢印501に示すように、ポーラス部材21に、所定量のエアおよび水の二流体を供給する。
なお、エア調整部483のオリフィス径および水調整部493のオリフィス径は、全開であってもよい。
【0073】
ポーラス部材21に供給された二流体は、ポーラス部材21内を下から上に向けて流れて、ポーラス部材21内の研削屑とともに保持面22から外部に噴出する。これにより、
図3に示すように、保持面22を覆った状態で搬出機構172によって保持されているウェーハ100が、矢印503によって示すように、二流体200によって、スプリング860の付勢力に抗して、パッド80とともに保持面22から浮き上がる。そして、保持面22とウェーハ100との隙間から、研削屑を含む二流体200が、保持面22の径方向外側に流れ出る。
なお、この際、
図3に示すように、パッド80の上昇とともにスプリング860が収縮し、ボルト86の頭部88が、円板部材84の上面から浮き上がる。
【0074】
二流体200の噴出開始から所定時間が経過した後、制御部7は、エア供給開閉弁485および水供給開閉弁495を閉じて、二流体200の噴出を停止する。その後、制御部7は、ウェーハ100を保持している搬出機構172のパッド80を旋回および昇降させることにより、ウェーハ100を保持面22から離間させる。
【0075】
以上のように、本実施形態では、ウェーハ100によって保持面22を覆った状態で、ポーラス部材21の下方から保持面22に向けて二流体200を流すことにより、保持面22からポーラス部材21に進入した研削屑を、ポーラス部材21および保持面22から排出することができる。このため、研削機構70によってウェーハ100を研削する際、保持面22とウェーハ100との間に研削屑が介在することを抑制することができるので、ウェーハ100を均一な厚みに研削することが可能である。
【0076】
また、本実施形態では、ポーラス部材21から研削屑を排出するために、被加工物であるウェーハ100、および、既存の構成である搬出機構172を用いている。したがって、ポーラス部材21および保持面22からの研削屑の排出のために追加される構成を少なくできるので、研削装置1の大型化を回避しながら、研削屑の排出を実施することが可能である。
【0077】
なお、流体噴出工程において、保持面22がウェーハ100によって覆われていない状態で、ポーラス部材21に二流体200を供給すると、二流体200は、ポーラス部材21における通過しやすい部分だけを通過して、保持面22からが噴出する。このため、ポーラス部材21の全域から研削屑を排出することが困難である。
【0078】
これに関し、本実施形態では、搬出機構172によって保持されているウェーハ100によって保持面22を覆った状態で、ポーラス部材21に二流体200を供給している。これにより、保持面22に圧力がかかった状態で、二流体200を保持面22から噴出させることができるので、保持面22の全面から二流体200を噴出させることができる。したがって、ポーラス部材21内の略全域から、研削屑を排出することが可能となる。
【0079】
なお、制御部7は、保持面22から二流体200を噴出させた後、保持面22から離間させたウェーハ100の下面である表面101を、
図1に示した下面洗浄機構180によって洗浄し、再び保持面22をウェーハ100で覆い、保持面22から二流体200を噴出させて、ポーラス部材21および保持面22から研削屑を除去してもよい。
【0080】
この場合、制御部7は、流体噴出工程の後、以下の下面洗浄工程を実施する。
【0081】
[下面洗浄工程]
制御部7は、ウェーハ100を保持している搬出機構172のパッド80を旋回および昇降させることにより、ウェーハ100を保持面22から離間させて、
図4に示すように、下面洗浄機構180の直上に配置する。
【0082】
下面洗浄機構180は、スポンジローラ181、スポンジローラ181内に挿入されてスポンジローラ181を保持している中空のシャフト182、および、シャフト182を回転自在に支持するベース部材183を備えている。シャフト182は、継手184を介して水源185に接続されており、水源185から供給される水を、シャフト182の表面に設けられている穴を通してスポンジローラ181に供給することが可能となっている。
【0083】
そして、制御部7は、
図4に示すように、下面洗浄機構180におけるスポンジローラ181にウェーハ100の表面101が接するように、ウェーハ100を保持している搬出機構172のパッド80の位置を調整する。さらに、制御部7は、下面洗浄機構180のスポンジローラ181に水を供給しながら、
図4に矢印505によって示すように、下面洗浄機構180に対して、ウェーハ100を保持しているパッド80を水平方向に旋回移動させる。これにより、水を含んでいるスポンジローラ181がウェーハ100の表面101に回転しながら接触して、表面101が洗浄される。
【0084】
ウェーハ100の表面101の全面が洗浄された後、制御部7は、下面洗浄工程を終了し、搬出機構172のパッド80を旋回および昇降させて、ウェーハ100によってチャックテーブル20の保持面22を覆う。そして、制御部7は、上述した流体噴出工程を再び実施して、ポーラス部材21および保持面22から研削屑を除去する。
【0085】
この構成では、ポーラス部材21および保持面22からの研削屑の除去を、ウェーハ100の下面である表面101を洗浄しながら繰り返し実施することができる。したがって、ポーラス部材21および保持面22から、研削屑を良好に除去することが可能となる。
【0086】
また、上述の実施形態では、
図2に示すように、搬出機構172におけるパッド80の面積が、ウェーハ100の面積よりもわずかに大きい。これに代えて、
図5に示すように、パッド80は、ウェーハ100の面積よりも小さい面積を有していてもよい。
【0087】
この構成では、パッド80は、ウェーハ100の外周部分を保持していない。このため、流体噴出工程において二流体200がチャックテーブル20の保持面22から噴出したときに、保持面22とウェーハ100の外周部分との間に隙間が生じやすくなる。したがって、保持面22とウェーハ100との隙間から、研削屑を含む二流体200が保持面22の径方向外側に排出されやすくなるので、ポーラス部材21および保持面22から研削屑を良好に除去することが可能となる。
【0088】
また、上述の実施形態では、流体噴出工程の際にチャックテーブル20の保持面22を覆う板状物として、ウェーハ100が用いられている。これに関し、保持面22を覆う板状物として、ダミーウェーハあるいは板状プレートが用いられてもよい。ダミーウェーハは、たとえば、研削装置1による研削加工の対象ではないウェーハである。また、板状プレートは、たとえば、ポーラス部材21の洗浄のためのプレートである。この場合、ダミーウェーハあるいは板状プレートは、予め第1のカセット161内に収容されており、第1保持工程において、ロボット155によって取り出されて、チャックテーブル20の保持面22に吸引保持される。
【0089】
また、上述の実施形態では、制御部7は、搬出機構172によって保持されているウェーハ100によってチャックテーブル20の保持面22を覆った状態で、流体噴出工程を実施している。これに代えて、制御部7は、搬入機構170によって保持されているウェーハ100によってチャックテーブル20の保持面22を覆った状態で、流体噴出工程を実施してもよい。この場合、第2保持工程では、搬入機構170が、保持面22に吸引保持されているウェーハ100を保持する。また、この場合、下面洗浄機構180は、搬入機構170の近傍に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1:研削装置、6:ターンテーブル、7:制御部、10:第1の装置ベース、
11:第2の装置ベース、15:コラム、20:チャックテーブル、
21:ポーラス部材、22:保持面、23:枠体、30:回転機構、31:モータ、
32:主動プーリ、33:無端ベルト、34:従動プーリ、35:回転軸、
40:流体流通機構、47:吸引源、48:エア供給源、49:水供給源、
60:研削送り機構、61:Z軸ガイドレール、62:Z軸ボールネジ、
63:Z軸移動テーブル、64:Z軸モータ、66:ホルダ、
70:研削機構、71:スピンドルハウジング、72:スピンドル、
73:スピンドルモータ、74:ホイールマウント、75:研削ホイール、
76:ホイール基台、77:研削砥石、
80:パッド、81:アーム、82:回動柱部、83:支柱、84:円板部材、
85:貫通孔、86:ボルト、87:軸部、88:頭部、89:吸引路、
90:パッド保持部、91:枠体、92:パッド保持面、94:モータ、
95:上下移動機構、99:吸引源、100:ウェーハ、101:表面、102:裏面、
152:仮置き機構、153:位置合わせ部材、154:仮置きテーブル、
155:ロボット、
156:スピンナ洗浄機構、157:スピンナテーブル、158:ノズル、
160:第1のカセットステージ、161:第1のカセット、
162:第2のカセットステージ、163:第2のカセット、
170:搬入機構、172:搬出機構、
180:下面洗浄機構、181:スポンジローラ、182:シャフト、
183:ベース部材、184:継手、185:水源、200:二流体、403:吸引溝、
460:ロータリージョイント、470:吸引流路、471:吸引配管、
473:吸引流量調整部、475:吸引開閉弁、481:エア配管、
483:エア調整部、485:エア供給開閉弁、487:圧力センサ、
491:水配管、493:水調整部、495:水供給開閉弁、860:スプリング