(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-03
(45)【発行日】2025-10-14
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/514 20060101AFI20251006BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20251006BHJP
A61F 13/532 20060101ALI20251006BHJP
A61F 13/51 20060101ALI20251006BHJP
【FI】
A61F13/514 210
A61F13/49 312Z
A61F13/49 410
A61F13/532 200
A61F13/51
(21)【出願番号】P 2022554112
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2021036272
(87)【国際公開番号】W WO2022071518
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2024-08-26
(31)【優先権主張番号】202011062112.1
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202011057915.8
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202011057367.9
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 祐介
(72)【発明者】
【氏名】王 茵▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼ 凌霜
(72)【発明者】
【氏名】姚 旭光
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/130404(WO,A1)
【文献】特開2019-170557(JP,A)
【文献】特開2016-022021(JP,A)
【文献】国際公開第2016/056093(WO,A1)
【文献】特開2015-100412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液吸収性の吸収性コアと、前記吸収性コアよりも非肌側に設けられた通気性フィルムと、を備えた吸収性本体を有する吸収性物品であって、
前記通気性フィルムよりも非肌側に親水性不織布を有し、
前記吸収性本体の厚さ方向に見たときに、前記吸収性コアと前記通気性フィルムと前記親水性不織布とが少なくとも一部で重複しており、
前記吸収性コアを備えた吸収性本体を有し、
前記吸収性本体の長手方向の一方側に接合された前側胴回り部と、前記長手方向の他方側に接合された後側胴回り部とを備えた外装部材を有し、
前記吸収性本体を前記長手方向の所定位置にて二つ折りにして、前記前側胴回り部及び前記後側胴回り部の左右方向両側部同士を互いに連結する一対のサイド接合部を有し、
前記外装部材の少なくとも一部に、親水性不織布が設けられており、
前記外装部材は、肌側シートと、前記肌側シートの非肌側に隣接するように積層された非肌側シートと、前記肌側シートと前記非肌側シートとの前記厚さ方向の間に設けられた糸ゴムとを有し、
前記非肌側シートは前記親水性不織布であり、
前記前側胴回り部の前記非肌側シートと、前記後側胴回り部の前記非肌側シートとは、非連続であり、
前記肌側シートは、前記糸ゴムに肌側から最も近接するシートであり、
前記非肌側シートは、前記糸ゴムに非肌側から最も近接するシートであり、
前記非肌側シートは、前記外装部材の最も非肌側の面を有し、
前記吸収性コアを前記厚さ方向に貫通するスリット部を有し、
前記厚さ方向に見たときに、前記スリット部と前記通気性フィルムと前記親水性不織布とが重複する部分を有している、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品であって、
前記外装部材は、左右方向に伸縮する弾性部材としての前記糸ゴムを有し、
前記吸収性コアの前記左右方向の中央部における前記弾性部材の応力は、前記吸収性コアの前記左右方向の両側部における前記弾性部材の応力よりも小さい、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
請求項1または2に記載の吸収性物品であって、
前記外装部材は、前記親水性不織布よりも肌側に、前記親水性不織布よりも親水性が低い疎水性不織布を有している、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の吸収性物品であって、
前記親水性不織布は、前記外装部材の最も非肌側に設けられている、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の吸収性物品であって、
左右方向を有し、
前記親水性不織布の前記左右方向における幅は、前記通気性フィルムの前記左右方向における幅よりも大きく、
前記通気性フィルムの前記左右方向における幅は、前記吸収性コアの前記左右方向における幅以上である、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の吸収性物品であって、
前記厚さ方向に見たときに、前記吸収性コアと前記親水性不織布とが重複している部分と、前記吸収性コアと前記親水性不織布とが重複していない部分とを有する、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の吸収性物品であって、
前記通気性フィルムの透湿度が、1000g/m2・24h以上、3500g/m2・24h以下である、ことを特徴とする吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液吸収性の吸収性コアを備えた使い捨ておむつ等の吸収性物品が一般的である。このような吸収性物品の一例として、吸収性コアの非肌側に通気性フィルムを設け、吸収性コアによって吸収された尿等の水分を、液体として漏出させることなく、水蒸気として通気性フィルムを透過させて、おむつの外側(非肌側)に蒸散させる技術が知られている。例えば、特許文献1には、吸収コア56(吸収要素50)と、吸収コア56の非肌側に配置され、不透液性かつ透湿性を有する液不透過性シート70と、液不透過性シート70非肌側に配置され、製品外面に露出する股間部外装シート12を有するパンツ型使い捨ておむつが開示されている。
【0003】
また、従来、親水性油剤を含ませることによって親水性を高めた親水性不織布を用いたパンツ型おむつが知られている。例えば、特許文献2には、おむつ1の外装体3を構成する外装シート4として、疎水性合成繊維を親水化剤で処理する等の手段によって親水化された繊維を有する親水性不織布を用いた使い捨ておむつに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-253285号公報
【文献】特開2017-113186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、以下の第1~第3課題のうち少なくとも1つである。
【0006】
第1の課題は、従来の吸収性物品では、特許文献1に開示されているように、通常、通気性フィルム(液不透過性シート70)の非肌側に、製品の外装を構成する外装シート部材(股間部外装シート12)を設けられている。そして、外装シート部材は、メルトブロー不織布、ポイントボンド不織布、エアスルー不織布等、疎水性の不織布によって構成されることが一般的である。
【0007】
しかしながら、通気性フィルムの非肌側に疎水性の外装シート部材が設けられていると、吸収性コアによって吸収された尿等の水分を吸収性物品の外側に効率的に蒸散させることが難くなる場合がある。例えば、吸収性コアから通気性フィルムを透過して肌側から非肌側に移動する水蒸気が、疎水性の外装シート部材によって、それ以上非肌側へ移動することを阻害され、外装シート部材と通気性フィルムとの間に水分が滞留しやすくなる場合がある。この場合、水分が、吸収性物品の外側に排出されずに内側に残留することにより、蒸れや肌トラブルの原因となって着用者に不快感を生じさせるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、吸収性コアによって吸収された水分を、外側に排出しやすい吸収性物品を提供することにある。
【0009】
第2の課題は、特許文献2のような親水性不織布を用いたおむつにおいて、排泄の有無を検知してユーザー(介護者や保護者等)に知らせるために、排泄物中に含まれる水分と接触することで何らかの反応(例えば呈色反応)を呈するインジケータを設けることが検討されている。しかしながら、そのようなインジケータを設けた場合、親水性不織布によって吸収された汗等の水分にインジケータが反応してしまう場合がある。つまり、インジケータが排泄物以外を誤検出してしまい、排泄の有無を正確に検知することが困難になるおそれがある。
【0010】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、親水性不織布を用いた吸収性物品において、インジケータの誤検出を抑制することにある。
【0011】
第3の課題は、使い捨ておむつの外装体の表面に、所謂、後処理テープや前後表示テープ等の貼付物が、接着剤を用いて貼付される場合がある。しかしながら、特許文献2のようなおむつでは、親水性不織布を親水化するための油剤(親水化剤)の影響によって、外装体の表面から貼付物が剥がれやすくなるおそれがある。また、おむつの使用後に後処理テープ(貼付物)を展開するために引っ張った際に、親水性不織布を構成する繊維同士の結合が切れてしまい、不織布の一部が破れて貼付物が外装体から剥がれてしまうおそれがある。
【0012】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、親水性不織布を用いた吸収性物品の外装体に貼付された貼付物を剥がれ難くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記第1の課題を達成するための主たる発明は、
液吸収性の吸収性コアと、前記吸収性コアよりも非肌側に設けられた通気性フィルムと、を備えた吸収性本体を有する吸収性物品であって、
前記通気性フィルムよりも非肌側に親水性不織布を有し、
前記吸収性本体の厚さ方向に見たときに、前記吸収性コアと前記通気性フィルムと前記親水性不織布とが少なくとも一部で重複しており、
前記吸収性コアを備えた吸収性本体を有し、
前記吸収性本体の長手方向の一方側に接合された前側胴回り部と、前記長手方向の他方側に接合された後側胴回り部とを備えた外装部材を有し、
前記吸収性本体を前記長手方向の所定位置にて二つ折りにして、前記前側胴回り部及び前記後側胴回り部の左右方向両側部同士を互いに連結する一対のサイド接合部を有し、
前記外装部材の少なくとも一部に、親水性不織布が設けられており、
前記外装部材は、肌側シートと、前記肌側シートの非肌側に隣接するように積層された非肌側シートと、前記肌側シートと前記非肌側シートとの前記厚さ方向の間に設けられた糸ゴムとを有し、
前記非肌側シートは前記親水性不織布であり、
前記前側胴回り部の前記非肌側シートと、前記後側胴回り部の前記非肌側シートとは、非連続であり、
前記肌側シートは、前記糸ゴムに肌側から最も近接するシートであり、
前記非肌側シートは、前記糸ゴムに非肌側から最も近接するシートであり、
前記非肌側シートは、前記外装部材の最も非肌側の面を有し、
前記吸収性コアを前記厚さ方向に貫通するスリット部を有し、
前記厚さ方向に見たときに、前記スリット部と前記通気性フィルムと前記親水性不織布とが重複する部分を有している、ことを特徴とする吸収性物品。
である。
【0014】
上記第2の課題を達成するための主たる発明は、液吸収性の吸収性コアと、前記吸収性コアよりも非肌側に設けられた液不透過性フィルムと、を備えた吸収性本体と、前記吸収性本体よりも非肌側に設けられた外装部材と、排泄液と接触することにより所定の反応を呈するインジケータと、を有する吸収性物品であって、前記外装部材を構成するシート部材のうち少なくとも1枚は、親水性不織布であり、厚さ方向に見たときに、前記親水性不織布と前記液不透過性フィルムとが少なくとも一部で重複しており、前記親水性不織布は、前記液不透過性フィルムよりも前記厚さ方向の非肌側に配置され、前記インジケータは、前記液不透過性フィルムよりも前記厚さ方向の肌側に配置されている、ことを特徴とする吸収性物品である。
【0015】
上記第3の課題を達成するための主たる発明は、液吸収性の吸収性本体と、前記吸収性本体よりも非肌側に設けられた外装部材と、を有する吸収性物品であって、前記外装部材は、親水性油剤を含んだ親水性不織布を非肌側に有しており、前記親水性不織布の前記非肌側の面に、接着剤によって貼付された貼付物を有し、前記親水性不織布は、前記貼付物の縦方向及び横方向における寸法のうち小さい方の寸法よりも繊維長が長い繊維を有している、ことを特徴とする吸収性物品である。
【0016】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0017】
第1の課題に対する本発明の効果は、吸収性コアによって吸収された水分を、外側に排出しやすい吸収性物品を提供することができる。
【0018】
第2の課題に対する本発明の効果は、親水性不織布を用いた吸収性物品において、インジケータの誤検出を抑制することができる。
【0019】
第3の課題に対する本発明の効果は、親水性不織布を用いた吸収性物品の外装体に貼付された貼付物を剥がれ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】展開且つ伸長状態のおむつ1の平面図である。
【
図4】
図4Aは、吸収性本体10の平面図であり、
図4Bは、吸収性本体10の概略断面図である。
【
図5】5A~
図5Cは、
図3の領域Bにおいて、吸収性本体10から水分が排出されるメカニズムについて説明する図である。
【
図6】
図6Aは、パンツ型形状のおむつ1を伸長状態として前後方向の前側から見たときの状態について示す概略平面図である。
図6Bは、パンツ型形状のおむつ1を伸長状態として前後方向の後側から見たときの状態について示す概略平面図である。
【
図8】
図8A及び
図8Bは、溶着部60を用いて胴回り弾性部材35を前側胴回り部30に取り付ける方法について説明する図である。
【
図12】展開且つ伸長状態のおむつ1001の平面図である。
【
図15】おむつ1001において、水分を吸収・蒸散する際の基本原理について説明する図である。
【
図16】
図16A及び
図16Bは、インジケータ1070の配置と、おむつ1001における水分の移動との関係について説明する図である。
【
図17】インジケータ1070の配置の一変形例について表す概略断面図である。
【
図21】展開且つ伸長状態のおむつ2001の平面図である。
【
図24】後側胴回り部2040の非肌側面に設けられた後処理テープ2080について表す断面模式図である。
【
図25】
図25Aは、後処理テープ2080を展開した状態のおむつ2001を背側から見た概略斜視図である。
図25Bは、
図25Aの状態のおむつ2001を丸めて廃棄処理状態にした様子を示す概略斜視図である。
【
図26】
図26A及び
図26Bは、おむつ2001の後処理操作において後処理テープ2080が離脱する要因について説明する図である。
【
図27】おむつ2001の非肌側シート2042(親水性不織布)を構成する繊維と後処理テープ2080との関係について説明する図である。
【
図28】後処理テープ2080の変形例について表す断面模式図である。
【
図29】
図29A及び
図29Bは、後処理操作を行う際に、変形例の後処理テープ2080に作用する力について説明する図である。
【
図30】後処理テープ2080が貼付されている部分における非肌側シート2042の表面の状態について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
液吸収性の吸収性コアと、前記吸収性コアよりも非肌側に設けられた通気性フィルムと、を備えた吸収性本体を有する吸収性物品であって、前記通気性フィルムよりも非肌側に親水性不織布を有し、前記吸収性本体の厚さ方向に見たときに、前記吸収性コアと前記通気性フィルムと前記親水性不織布とが少なくとも一部で重複している、ことを特徴とする吸収性物品。
【0022】
このような吸収性物品によれば、吸収性コアと通気性フィルムと親水性不織布とが厚さ方向に重ねられた領域において、親水性の高い親水性不織布によって、厚さ方向の非肌側へ水分が移行しやすくなる。すなわち、非肌側への水分の移行が促進され、おむつの内側から外側に水分を排出しやすくすることができる。
【0023】
かかる吸収性物品であって、前記吸収性コアを備えた吸収性本体を有し、前記吸収性本体の長手方向の一方側に接合された前側胴回り部と、前記長手方向の他方側に接合された後側胴回り部とを備えた外装部材を有し、前記吸収性本体を前記長手方向の所定位置にて二つ折りにして、前記前側胴回り部及び前記後が胴回り部の左右方向両側部同士を互いに連結する一対のサイド接合部を有し、前記外装部材の少なくとも一部に、親水性不織布が設けられている、ことが望ましい。
【0024】
このような吸収性物品によれば、吸収性本体と、その非肌側に配置される前側胴回り部及び後側胴回り部(外装部材)とからなる、所謂3ピースタイプのパンツ型吸収性物品において、吸収性コアと通気性フィルムと親水性不織布とが厚さ方向に重複する部分で肌側から非肌側への水分の移行が促進され、吸収性物品の内側から外側に水分を排出しやすくすることができる。
【0025】
かかる吸収性物品であって、前記吸収性コアを備えた吸収性本体を有し、前記吸収性本体の非肌側に設けられ、前記吸収性本体の長手方向の一方側から他方側に連続するように一体的に構成された外装部材を有し、前記吸収性本体を前記長手方向の所定位置にて二つ折りにして、前記外装部材の前記長手方向の前記一方側における左右方向の両側部と、前記外装部材の前記長手方向の前記他方側における左右方向の両側部とを互いに連結する一対のサイド接合部を有し、前記外装部材の少なくとも一部に、親水性不織布が設けられている、ことが望ましい。
【0026】
このような吸収性物品によれば、吸収性本体と、その非肌側に配置された一体的な外装部材とからなる、所謂2ピースタイプのパンツ型吸収性物品において、吸収性コアと通気性フィルムと親水性不織布とが厚さ方向に重複する部分で肌側から非肌側への水分の移行が促進され、吸収性物品の内側から外側に水分を排出しやすくすることができる。
【0027】
かかる吸収性物品であって、前記厚さ方向に見たときに、前記サイド接合部の下端よりも上側の領域で前記吸収性コアと前記通気性フィルムと前記親水性不織布とが重複している部分の面積よりも、前記サイド接合部の下端よりも下側の領域で前記吸収性コアと前記通気性フィルムと前記親水性不織布とが重複している部分の面積の方が大きい、ことが望ましい。
【0028】
このような吸収性物品によれば、着用者の股下に位置する領域(股下領域)において、吸収性コアと親水性不織布とが重複する領域の面積を広くすることができる。したがって、股下領域の広い範囲で、吸収性コア(肌側)で吸収された尿等の水分を親水性不織布側(非肌側)に移行させやすくすることができる。これにより、着用者の股下部において不快感を生じ難くすることができる。
【0029】
かかる吸収性物品であって、前記厚さ方向に見たときに、前記通気性フィルムの全体が前記親水性不織布と重複している、ことが望ましい。
【0030】
このような吸収性物品によれば、吸収性コアに吸収された尿等のうち、水蒸気として通気性フィルムを肌側から非肌側に透過した水分は、該通気性フィルムの全領域において非肌側に設けられている親水性不織布に移行しやすくなる。これにより、厚さ方向の肌側から非肌側へ水分の移動がより促進されやすくなり、吸収性物品の内側に水分を残留し難くすることができる。
【0031】
かかる吸収性物品であって、前記外装部材は、左右方向に伸縮する弾性部材を有し、前記吸収性コアの前記左右方向の中央部における前記弾性部材の応力は、前記吸収性コアの前記左右方向の両側部における前記弾性部材の応力よりも小さい、ことが望ましい。
【0032】
このような吸収性物品によれば、吸収性コアの左右方向中央部には、弾性部材による収縮力が作用し難く、吸収性本体や外装部材が平面形状を維持しやすい。したがって、当該中央部ではシート部材同士の厚さ方向における積層構造が維持されやすく、水分の厚さ方向への移動が阻害され難くなる。これにより、肌側の吸収性コアによって吸収された尿等の水分を、非肌側の親水性不織布へ移行させることで、吸収性コアの外側に水分を排出させやすくすることができる。
【0033】
かかる吸収性物品であって、前記吸収性コアを備えた吸収性本体を有し、前記吸収性本体の非肌側に設けられ、前記吸収性本体の長手方向の一方側から他方側に連続するように一体的に構成された外装部材を有し、前記外装部材の前記長手方向における一方側の端部に、一対のファスニングテープを有し、前記外装部材の少なくとも一部に、親水性不織布が設けられている、ことが望ましい。
【0034】
このような吸収性物品によれば、吸収性本体と、その非肌側に配置された外装部材とを有し、外装部材に設けられた一対のファスニングテープを用いて、吸収性物品を着用者の身体に装着する、所謂テープタイプの吸収性物品において、吸収性コアと通気性フィルムと親水性不織布とが厚さ方向に重複する部分で肌側から非肌側への水分の移行が促進され、吸収性物品の内側から外側に水分を排出しやすくすることができる。
【0035】
かかる吸収性物品であって、前記外装部材は、前記親水性不織布よりも肌側に、前記親水性不織布よりも親水性が低い疎水性不織布を有している、ことが望ましい。
【0036】
このような吸収性物品によれば、外装部材において、疎水性不織布と親水性不織布との間に生じる親水勾配によって、疎水性不織布側から親水性不織布側へと水分が移行しやすくなる。すなわち、肌側から非肌側への水分の移行がスムーズに行われやすくなる。したがって、尿等の水分を吸収性物品の外側に排出しやすくすることができる。
【0037】
かかる吸収性物品であって、前記親水性不織布は、前記外装部材の最も非肌側に設けられている、ことが望ましい。
【0038】
このような吸収性物品によれば、外装部材の最も非肌側に配置された親水性不織布が大気との界面となるので、吸収性コアから移行して親水性不織布中に含まれている水分を大気に蒸散させやすくすることができる。これにより、吸収性物品の外側に水分をより排出しやすくなり、着用者に不快感を生じ難くさせることができる。
【0039】
かかる吸収性物品であって、左右方向を有し、前記親水性不織布の前記左右方向における幅は、前記通気性フィルムの前記左右方向における幅よりも大きく、前記通気性フィルムの前記左右方向における幅は、前記吸収性コアの前記左右方向における幅以上である、ことが望ましい。
【0040】
このような吸収性物品によれば、吸収性コアの左右方向の全体から通気性フィルムを透過して水分(水蒸気)を非肌側に移動させることが可能となる。また、通気性フィルムを透過して水分は、非肌側の親水性不織布によって吸収されやすくなる。したがって、吸収性物品の内側(肌側)から外側(非肌側)に、より効率的に水分を排出することができる。
【0041】
かかる吸収性物品であって、前記厚さ方向に見たときに、前記吸収性コアと前記親水性不織布とが重複している部分と、前記吸収性コアと前記親水性不織布とが重複していない部分とを有する、ことが望ましい。
【0042】
このような吸収性物品によれば、吸収性コアと親水性不織布とが重複している部分では、尿等の水分を吸収性物品の外側に効率よく排出することができる。一方、吸収性コアと親水性不織布とが重複していない部分では、着用者の汗等の水分を親水性不織布側へと移行させ、吸収性物品の外側に排出することができる。したがって、吸収性物品着用時における蒸れ等の問題をより生じ難くすることができる。
【0043】
かかる吸収性物品であって、前記吸収性コアを前記厚さ方向に貫通するスリット部を有し、前記厚さ方向に見たときに、前記スリット部と前記通気性フィルムと前記親水性不織布とが重複する部分を有している、ことが望ましい。
【0044】
このような吸収性物品によれば、尿等の水分が溜まり易い吸収性コアのスリット部の非肌側に通気性フィルム及び親水性不織布が設けられているため、該スリット部に溜まった水分を肌側から非肌側へ移行させ、外部に蒸散させやすくすることができる。したがって、スリット部を設けることにより吸収性コアを着用者の身体形状に沿って変形させやすくすると共に、蒸れを抑制して着用者に不快感を生じ難くすることができる。
【0045】
かかる吸収性物品であって、前記通気性フィルムの透湿度が、1000g/m2・24h以上、3500g/m2・24h以下である、ことが望ましい。
【0046】
このような吸収性物品によれば、透湿度が1000g/m2・24h以上であれば、水蒸気が通気性フィルムを透過しやすく、吸収性物品の内側(肌側)から外側(非肌側)に水分を蒸散させやすくすることができる。一方、透湿度が3500g/m2・24h以下であれば、通気性フィルムが水蒸気を過度に透過させてしまうことが抑制され、外側(非肌側)に設けられた親水性不織布によって水分が過剰に吸収されることを抑制できる。したがって、吸収性物品の着用時において、適度な量の水分を排出しつつ、外側の親水性不織布が湿ってしまうことが抑制され、着用者に不快感を生じさせ難くすることができる。
【0047】
また、液吸収性の吸収性コアと、前記吸収性コアよりも非肌側に設けられた液不透過性フィルムと、を備えた吸収性本体と、前記吸収性本体よりも非肌側に設けられた外装部材と、排泄液と接触することにより所定の反応を呈するインジケータと、を有する吸収性物品であって、前記外装部材を構成するシート部材のうち少なくとも1枚は、親水性不織布であり、厚さ方向に見たときに、前記親水性不織布と前記液不透過性フィルムとが少なくとも一部で重複しており、前記親水性不織布は、前記液不透過性フィルムよりも前記厚さ方向の非肌側に配置され、前記インジケータは、前記液不透過性フィルムよりも前記厚さ方向の肌側に配置されている、ことを特徴とする吸収性物品が明らかとなる。
【0048】
このような吸収性物品によれば、外装部材を構成する親水性不織布によって汗等の水分が吸収された場合に、該親水性不織布とインジケータとの間に設けられた液不透過性フィルムにおいて、親水性不織布(非肌側)からインジケータ(肌側)へ水分の移動が遮断される。すなわち、親水性不織布によって吸収された汗等による水分がインジケータと接触し難くなる。これにより、インジケータが排泄液以外の液体を誤検出してしまうことを抑制できる。
【0049】
かかる吸収性物品であって、前記外装部材は、前側胴回り部と後側胴回り部とを有し、前記吸収性本体の長手方向の一方側に前記前側胴回り部が接合され、前記長手方向の他方側に前記後側胴回り部が接合されており、前記吸収性本体を前記長手方向の所定位置にて二つ折りにした状態で、前記前側胴回り部及び前記後が胴回り部の左右方向両側部同士が互いに連結されており、前記前側胴回り部及び前記後側胴回り部の少なくとも一方の非肌側に、前記親水性不織布が配置されている、ことが望ましい。
【0050】
このような吸収性物品によれば、吸収性本体と、その非肌側に配置される前側胴回り部及び後側胴回り部(外装部材)とからなる、所謂3ピースタイプのパンツ型吸収性物品において、親水性不織布(非肌側)で吸収された汗等の水分が、インジケータ側(肌側)に移動して、インジケータと接触してしまうことを抑制できる。したがって、3ピースタイプのパンツ型おむつにおいて、インジケータの誤検出を抑制することができる。
【0051】
かかる吸収性物品であって、前記前側胴回り部及び前記後側胴回り部の少なくとも一方において、前記厚さ方向に見たときに、前記親水性不織布と前記インジケータとが重複する部分を有している、ことが望ましい。
【0052】
このような吸収性物品によれば、3ピースタイプのパンツ型おむつにおいて外装部材と重複する部分を有する程度にインジケータを広い範囲に亘って配置しつつも、外装部材に吸収された汗等の水分がインジケータによって誤検出されてしまうことを抑制できる。
【0053】
かかる吸収性物品であって、前記後側胴回り部において、前記厚さ方向に見たときに、前記親水性不織布と前記インジケータとが重複する部分を有している、ことが望ましい。
【0054】
このような吸収性物品によれば、後側胴回り部の親水性不織布によって吸収された汗等の水分がインジケータに接触してしまうことを抑制できる。したがって、着用者が汗をかきやすい背側において、インジケータの誤検出を効果的に抑制することができる。
【0055】
かかる吸収性物品であって、前記厚さ方向に見たときに、前記インジケータと前記親水性不織布とが重複する領域において、前記インジケータよりも非肌側に積層されているシート部材の枚数は、前記インジケータと前記親水性不織布とが重複しない領域において、前記インジケータよりも非肌側に積層されているシート部材の枚数よりも多い、ことが望ましい。
【0056】
このような吸収性物品によれば、インジケータが親水性不織布と重複している領域において、非肌側のシート部材の積層枚数が多いほど、非肌側の親水性不織布に含まれる水分が肌側に移動し難くなり、インジケータによる誤検出を抑制し易くなる。また、インジケータと親水性不織布とが重複しない領域におけるシート部材の積層枚数が少ないほど、吸収性物品の柔軟性が高まり、着用時におけるフィット性を向上させることができる。
【0057】
かかる吸収性物品であって、前記外装部材は、前記吸収性本体の長手方向の一方側から他方側に連続するように一体的に構成されており、前記吸収性本体を前記長手方向の所定位置にて二つ折りにした状態で、前記外装部材の前記長手方向の前記一方側における左右方向の両側部と、前記外装部材の前記長手方向の前記他方側における左右方向の両側部と、が互いに連結されており、前記外装部材の非肌側の少なくとも一部に、前記親水性不織布が配置されている、ことが望ましい。
【0058】
このような吸収性物品によれば、吸収性本体と、その非肌側に配置された一体的な外装部材とからなる、所謂2ピースタイプや簡易3ピースタイプのパンツ型吸収性物品において、親水性不織布(非肌側)で吸収された汗等の水分が、インジケータ側(肌側)に移動して、インジケータと接触してしまうことを抑制できる。したがって、2ピースタイプ等のパンツ型おむつにおいて、インジケータの誤検出を抑制することができる。
【0059】
かかる吸収性物品であって、前記外装部材は、前記吸収性本体の長手方向の一方側から他方側に連続するように一体的に構成されており、前記外装部材の長手方向の一方側の端部に、前記外装部材の長手方向の他方側の端部に係合させるための一対のファスニングテープを有し、前記外装部材の非肌側の少なくとも一部に、前記親水性不織布が配置されている、ことが望ましい。
【0060】
このような吸収性物品によれば、吸収性本体と、その非肌側に配置された外装部材とを有し、外装部材に設けられた一対のファスニングテープを用いて、吸収性物品を着用者の身体に装着する、所謂テープタイプの吸収性物品において、親水性不織布(非肌側)で吸収された汗等の水分が、インジケータ側(肌側)に移動して、インジケータと接触してしまうことを抑制できる。したがって、テープタイプのパンツ型おむつにおいて、インジケータの誤検出を抑制することができる。
【0061】
かかる吸収性物品であって、前記外装部材の少なくとも一部において、前記厚さ方向に見たときに、前記親水性不織布と前記インジケータとが重複する部分を有している、ことが望ましい。
【0062】
このような吸収性物品によれば、インジケータを広い範囲に亘って配置しつつも、外装部材に吸収された汗等の水分がインジケータによって誤検出されてしまうことを抑制できる。すなわち、排泄物検出範囲を広く確保しつつ、汗等の水分に起因する誤検出を抑制し易くすることができる。
【0063】
かかる吸収性物品であって、前記外装部材の長手方向における中央位置よりも後側において、前記厚さ方向に見たときに、前記親水性不織布と前記インジケータとが重複する部分を有している、ことが望ましい。
【0064】
このような吸収性物品によれば、外装部材の後側(後側胴回り部)の親水性不織布によって吸収された汗等の水分がインジケータに接触してしまうことを抑制できる。したがって、着用者が汗をかきやすい背側において、インジケータの誤検出を効果的に抑制することができる。
【0065】
かかる吸収性物品であって、前記厚さ方向に見たときに、前記インジケータの全体が前記親水性不織布と重複する部分を有している、ことが望ましい。
【0066】
このような吸収性物品によれば、インジケータの全領域について、親水性不織布に含まれる水分と接触し難くすることができる。したがって、インジケータを広い範囲に配置することで排泄物の検出範囲を広げつつ、誤検出をより生じ難くすることが可能となる。
【0067】
かかる吸収性物品であって、前記液不透過性フィルムと前記親水性不織布との前記厚さ方向の間の少なくとも一部に、前記親水性不織布よりも親水性の低い疎水性不織布を有している、ことが望ましい。
【0068】
このような吸収性物品によれば、液不透過性フィルムと親水性不織布との厚さ方向の間に疎水性不織布が介在していることにより、親水性不織布に含まれる水分が、液不透過性フィルム側(肌側)へ移動することがより抑制されやすくなる。したがって、インジケータによる誤検出をより抑制しやすくすることができる。
【0069】
かかる吸収性物品であって、前記外装部材は、前記親水性不織布よりも肌側に前記疎水性不織布を有している、ことが望ましい。
【0070】
このような吸収性物品によれば、疎水性不織布を構成する高密度の繊維によって毛細管現象が発生し、着用者の肌から汗等の水分を吸収しやすい。そして、疎水性不織布に吸収された水分は、親水性の大きさ違いに基づいて肌側の親水性不織布へ移行しやすくなる。このように、汗等の水分を、非肌側へ移行させ易くすることで、肌側のインジケータで誤検出が生じることを抑制することができる。
【0071】
かかる吸収性物品であって、前記親水性不織布は、前記外装部材の最も非肌側に配置されている、ことが望ましい。
【0072】
このような吸収性物品によれば、親水性不織布が大気との界面となるので、該親水性不織中に含まれる汗等の水分を、吸収性物品の外側に効率よく蒸散させることができる。したがって、インジケータによる誤検出を生じ難くすることができる。
【0073】
かかる吸収性物品であって、前記疎水性不織布は、平均繊維長が100mm以上の繊維を含んでいる、ことが望ましい。
【0074】
このような吸収性物品によれば、平均繊維長が100mm以上の長繊維を含んだ疎水性不織布を用いることにより、当該疎水性繊維の平面方向に水分が拡散しやすくなり、疎水性繊維の厚さ方向に水分が移動し難くなる。これにより、水分が疎水性繊維を厚さ方向に透過して、液不透過性フィルムへ移動することが抑制され、インジケータによる誤検出を抑制しやすくすることができる。
【0075】
かかる吸収性物品であって、前記外装部材には、左右方向に伸縮する弾性部材が設けられており、前記厚さ方向に見たときに、前記インジケータと重複する部分における前記弾性部材の応力は、前記インジケータと重複しない部分における前記弾性部材の応力よりも小さい、ことが望ましい。
【0076】
このような吸収性物品によれば、インジケータと重複する部分において弾性部材の応力を小さくし、当該部分に収縮力が作用し難くなるようにすることで、水分を含んだ親水性不織布がインジケータ側(肌側)に押し付けられることを抑制できる。これにより、インジケータの誤検出を生じ難くすることができる。
【0077】
かかる吸収性物品であって、前記厚さ方向に見たときに、前記インジケータと前記外装部材とが重複する領域において、前記親水性不織布と前記液不透過性フィルムとの前記厚さ方向の間に、接着剤の層が設けられている、ことが望ましい。
【0078】
このような吸収性物品によれば、親水性不織布とインジケータとの厚さ方向の間に接着剤の層が設けられていることにより、当該接着の層によって厚さ方向への水分の移動が妨げられやすくなる。すなわち、親水性不織布に含まれる汗等の水分が厚さ方向の肌側に移動してインジケータと接触してしまうことが抑制される。これにより、インジケータによる誤検出をより抑制し易くすることができる。
【0079】
かかる吸収性物品であって、前記接着剤の層は、少なくとも、前記外装部材と前記吸収性本体とを接合する第1接着層と、前記液不透過性フィルムと前記液不透過性フィルムの非肌側に隣接するシート部材とを接合する第2接着層とを有し、前記厚さ方向に見たときに、前記第1接着層と前記第2接着層とが重複する部分を有する、ことが望ましい。
【0080】
このような吸収性物品によれば、第1接着層と第2接着層とが重複している部分では単位体積当たりの接着剤の量が大きくなることから、当該重複部分では、水分の厚さ方向への移動がより抑制されやすくなる。したがって、親水性不織布に含まれる汗等の水分が厚さ方向の肌側に移動してインジケータと接触してしまうことが抑制され、インジケータによる誤検出をさらに抑制し易くすることができる。
【0081】
また、液吸収性の吸収性本体と、前記吸収性本体よりも非肌側に設けられた外装部材と、を有する吸収性物品であって、前記外装部材は、親水性油剤を含んだ親水性不織布を非肌側に有しており、前記親水性不織布の前記非肌側の面に、接着剤によって貼付された貼付物を有し、前記親水性不織布は、前記貼付物の縦方向及び横方向における寸法のうち小さい方の寸法よりも繊維長が長い繊維を有している、ことを特徴とする吸収性物品が明らかとなる。
【0082】
このような吸収性物品によれば、親水性不織布を構成している繊維の繊維長が貼付物の最小幅よりも長いことにより、当該貼付物の最小幅よりも広い範囲で繊維同士の絡まり(交絡点)が形成されやすくなり、繊維同士の結合が強くなる。したがって、親水性不織布から貼付物を剥がす力が作用した場合であっても、貼付物が貼付されている部分において、親水性不織布が破れにくくなる。これにより、貼付物を剥がれ難くすることができる。
【0083】
かかる吸収性物品であって、前記縦方向は、前記親水性不織布に対して前記貼付物が引っ張られる方向であり、前記繊維は、前記貼付物の前記横方向を跨ぐように配置されている、ことが望ましい。
【0084】
このような吸収性物品によれば、貼付物の横方向両端よりも外側の領域において繊維同士が絡み合いやすく結合力が強くなるため、貼付物の縦方向に沿って当該貼付物を引っ張る力が作用した場合であっても、親水性不織布がより破れ難くなる。これにより、貼付物の離脱をより抑制し易くすることができる。
【0085】
かかる吸収性物品であって、前記親水性不織布は複数の前記繊維を有しており、前記貼付物の前記横方向を跨ぐように配置されている前記繊維の数は、前記貼付物の前記縦方向を跨ぐように配置されている前記繊維の数よりも多い、ことが望ましい。
【0086】
このような吸収性物品によれば、親水性不織布を構成する複数の繊維のうち、貼付物が引っ張られる方向と直交する方向(横方向)に当該貼付物を跨ぐ繊維の数が多いほど、親水性不織布が破れにくくなる。すなわち、親水性不織布を構成する繊維の結合力が、貼付物を引っ張る力に抗しやすくなる。これにより、貼付物をより剥がれ難くすることできる。
【0087】
かかる吸収性物品であって、前記親水性不織布は、前記親水性不織布を厚さ方向に圧搾する複数の圧搾部を有している、ことが望ましい。
【0088】
このような吸収性物品によれば、複数の圧搾部が設けられていることにより、親水性不織布の強度を高めることができる。これにより、貼付物を引っ張る力が作用した場合であっても親水性不織布が破れにくくなり、貼付物が剥がれてしまうことを抑制し易くすることができる。
【0089】
かかる吸収性物品であって、前記繊維長は、隣り合う2つの前記圧搾部の間隔の最小値よりも長い、ことが望ましい。
【0090】
このような吸収性物品によれば、圧搾部の間隔が繊維長よりも短ければ、圧搾部が繊維と重複して形成されやすくなる。すなわち、繊維自体が圧搾される可能性が高くなる。繊維が圧搾された部分では、繊維と他の繊維とが圧着することによって、繊維同士の結合力が強くなり、親水性不織布がより破れにくくなる。これにより、貼付物をより剥がれ難くすることができる。
【0091】
かかる吸収性物品であって、前記外装部材の厚さ方向に見たときに、前記貼付物と前記親水性不織布とが重複している領域に、前記圧搾部が少なくとも一つ配置されている、ことが望ましい。
【0092】
このような吸収性物品によれば、親水性不織布のうち圧搾部が配置されている部分の強度が高くなり、親水性不織が破れにくくなる。したがって、親水性不織布のうち圧搾搾部が配置されることで強度が高められている領域に貼付物が貼付されることにより、貼付物が剥がれてしまうことをより抑制し易くすることができる。
【0093】
かかる吸収性物品であって、前記貼付物の前記縦方向及び前記横方向における寸法のうち小さい方の寸法は、隣り合う2つの前記圧搾部の間隔の最小値よりも大きい、ことが望ましい。
【0094】
このような吸収性物品によれば、貼付物の最小幅が圧搾部の間隔よりも大きければ、当該貼付物の幅方向(短手方向)において、2以上の圧搾部が配置される可能性が高くなる。したがって、親水性不織布における繊維同士の結合がより強まり、貼付物が貼付されている部分において親水性不織布が破れにくくなる。これにより、貼付物をより剥がれ難くすることができる。
【0095】
かかる吸収性物品であって、前記外装部材は、前記親水性不織布よりも肌側に、前記親水性不織布よりも親水性が低い疎水性不織布を有している、ことが望ましい。
【0096】
このような吸収性物品によれば、肌側に設けられた疎水性不織布を構成する高密度の繊維によって毛細管現象が発生し、着用者の肌から汗等の水分を吸収しやすい。そして、疎水性不織布に吸収された水分は、親水性の大きさの違いに基づいて非肌側の親水性不織布へ移行しやすくなる。したがって、外装部材において汗等の水分を吸収して非肌側へ移行させ、吸収性物品の外側へ蒸散させやすくすることができる。これにより、吸収性物品の着用時に、蒸れやかぶれ等を生じ難くすることができる。
【0097】
かかる吸収性物品であって、前記親水性不織布は、前記親水性不織布を厚さ方向に貫通する開孔部を有しており、前記外装部材の厚さ方向に見たときに、前記貼付物と前記親水性不織布とが重複している領域に、前記開孔部が少なくとも一つ配置されている、ことが望ましい。
【0098】
このような吸収性物品によれば、開孔部が設けられている部分において、親水性不織布に貼付物を貼付している接着剤が肌側の疎水性不織に付着しやすくなる。すなわち、油剤の影響を受けにくい疎水性不織布と貼付物とが接着剤によって直接接着された部分が形成され、貼付物の接着強度が強くなる。これにより、貼付物が親水性不織布から剥がれてしまうことを抑制し易くすることができる。
【0099】
かかる吸収性物品であって、前記貼付物は、使用後の前記吸収性物品を廃棄する際に、前記吸収性物品をコンパクトな形態に維持するための後処理テープである、ことが望ましい。
【0100】
このような吸収性物品によれば、使用後の吸収性物品を廃棄するための後処理操作を行う際に、外装部材から後処理テープが離脱してしまうことを抑制できる。したがって、吸収性物品の後処理操作を行う際に、使用者のストレスを軽減することができる。
【0101】
かかる吸収性物品であって、前記後処理テープは、前記親水性不織布に貼付された第1部材と、前記第1部材の長手方向における一方側の端と他方側の端との間に設けられた接合部によって、前記第1部材の非肌側に接合された第2部材と、を有している、ことが望ましい。
【0102】
このような吸収性物品によれば、後処理操作時において、後処理テープの第2部材が引っ張られたときに、接合部を中心として第1部材の長手方向の両側(一方側及び他方側)に引っ張り力を分散させやすくなる。したがって、貼付物(第1部材)に対する引っ張り力(貼付物を引き剥がそうとする力)が1箇所に集中して作用する場合と比較して、貼付物を剥がれ難くすることができる。
【0103】
かかる吸収性物品であって、前記第1部材は、前記接合部よりも前記長手方向の一方側の部分、及び、前記接合部よりも前記長手方向の他方側の部分が、それぞれ前記親水性不織布に貼付されている、ことが望ましい。
【0104】
このような吸収性物品によれば、後処理操作時において、第2部材との接合部を介して第1部材を引っ張る力が作用した場合に、第1部材の長手方向において接合部の両側に設けられた貼付部によって、当該第1部材を引っ張る力に対抗することができる。これにより、親水性不織から後処理テープが離脱し難くなり、使用者は、吸収性物品の後処理操作をより容易に行うことができる。
【0105】
===第1実施形態===
本発明に係る吸収性物品として、使い捨ておむつ(以下、「おむつ1」とも呼ぶ)を例に挙げて説明する。ただし、本発明に係る吸収性物品には、ナプキンやパンティーライナー、その他の吸収性物品も含まれるものとする。
【0106】
<おむつ1の構成>
図1は、おむつ1の概略斜視図である。
図2は、展開且つ伸長状態のおむつ1の平面図である。
図3は、
図2のA-A線での概略断面図である。なお、おむつ1の「伸長状態」とは、おむつ1全体(製品全体)を皺なく伸長させた状態、具体的には、おむつ1を構成する各部材(例えば、後述する吸収性本体10や,胴回り部材20等)の寸法がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い寸法になるまで伸長させた状態のことを言う。また、
図1は、後述するおむつ1001(第5実施形態)、及びおむつ1002(第9実施形態)についても共通して表している。
【0107】
おむつ1は、自然状態においてパンツ型形状を有する使い捨ておむつであり、
図1のパンツ型状態において、互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、胴回り開口BHと一対の脚回り開口LH,LHとを有している。上下方向の上側が胴回り開口BH側に対応し、下側が股下側に対応する。また、前後方向の前側が着用者の腹側に対応し、後側が着用者の背側に対応する。また、
図2の展開状態において、おむつ1は、互いに交差する縦方向と横方向とを有する。縦方向は、
図1における上下方向に沿った方向であり、吸収性本体10の長手方向に相当する。横方向は、
図1における左右方向に沿った方向である。また、
図3に示すように、おむつ1を構成する資材が積層された方向を厚さ方向とする。厚さ方向において着用者の肌と接する側を肌側とし、その反対側を非肌側とする。
【0108】
おむつ1は、排泄物を吸収する液吸収性の吸収性本体10と、吸収性本体10の非肌側に配置された胴回り部材20とを有している。胴回り部材20は、おむつ1の外装を構成する外装部材であり、おむつ1の前身頃に相当する前側胴回り部30と、おむつ1の後身頃に相当する後側胴回り部40とを有している。すなわち、第1実施形態のおむつ1は、第1部品として、着用者の股間部にあてがわれ尿等の排泄物を吸収する吸収性本体10を有し、第2部品として、着用者の腹側部を覆う前側胴回り部30を有し、第3部品として、着用者の背側部を覆う後側胴回り部40を有する、所謂3ピースタイプのパンツ型おむつである。
【0109】
図2の展開状態では、前側胴回り部30と後側胴回り部40とが互いに縦方向に間隔を空けて平行に並んだ状態で、これらの間に吸収性本体10が掛け渡されつつ、同吸収性本体10の長手方向(縦方向)の各端部10ea,10ebがそれぞれ最寄りの胴回り部30,40の肌側に接合固定されており、その外観形状は平面視略H形状をなしている。そして、この状態から、縦方向の中央位置CLを折り位置として吸収性本体10が二つ折りされる。この二つ折りの状態において互いに対向する前側胴回り部30と後側胴回り部40とが、左右方向両側の側部30sw及び側部40swにて互いに接合・連結され、一対のサイド接合部50,50が形成される。すなわち、一対のサイド接合部50,50によって前側胴回り部30と後側胴回り部40とが環状に成形される。なお、サイド接合部50は、溶着や接着等の公知の接合手段によって形成されている。これにより、
図1に示すような胴回り開口BH及び一対の脚回り開口LH,LHが形成されたパンツ型状態のおむつ1となる。
(吸収性本体10)
図4Aは、吸収性本体10の平面図であり、
図4Bは、吸収性本体10の概略断面図である。吸収性本体10は、排泄液を吸収する吸収性コア11と、吸収性コア11よりも厚さ方向の肌側に配置されたトップシート12と、吸収性コア11よりも非肌側に配置されたバックシート13とを有する。但し、吸収性本体10が、これ以外のシート部材を備えていても良い。例えば、トップシート12と吸収性コア11との厚さ方向の間に、セカンドシート(不図示)を備えていてもよい。
【0110】
吸収性コア11は、尿等の排泄液を吸収して保持する部材であり、例えば高吸収性ポリマー(SAP)が混入したパルプ繊維等の液体吸収性繊維により形成される。なお、吸収性コア11は、ティッシュペーパーや不織布等の液透過性のシート部材(コアラップシート11b)によって、外周面が覆われていても良い。本実施形態の吸収性コア11は、長手方向の前側端と後側端との間に、左右方向における幅が狭くなったくびれ部11cを有しており、
図4Aに示されるような平面視略砂時計形状を有している。このくびれ部11cは、おむつ1の着用時において着用者の両脚の間に挟まれる部分であり、当該部分の左右方向における長さが短く(幅が狭く)なっていることにより、吸収性コア11が着用者の股間にフィットしやすくなる。
【0111】
また、吸収性コア11には、該吸収性コア11を厚さ方向に貫通するスリット部11sが設けられている。スリット部11sは、縦方向(長手方向)に沿った略長方形状に形成され、吸収性コア11の横方向(左右方向)の中央部に1箇所設けられている。但し、スリット部11sの形状や個数は
図4に示される限りではない。また、吸収性コア11にスリット部11sが設けられていなくても良い。
【0112】
トップシート12は、液透過性のシートであり、例えば親水性のエアスルー不織布やスパンボンド不織布等が用いられる。本実施形態では、
図4Bのように吸収性コア11を巻き込むように、左右方向の両側部が非肌側に折り返されている。
【0113】
バックシート13は、液不透過性シート13aと、その非肌側に配された外装シート13bと、の二層構造である。液不透過性シート13aとしては、不透液性かつ透湿性を有するシート部材が用いられる。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂を主体としたシートに微細な孔が複数設けられた、微多孔性の通気性樹脂フィルムを用いることができる。本明細書中では、液不透過性シート13aのことを「通気性フィルム」とも呼ぶ。すなわち、通気性フィルムは、液体は透過させないが、水蒸気や空気を透過させることが可能なシート部材である。一方、外装シート13bとしては、柔軟性を有する疎水性の不織布が用いられる。例えば、エアスルー不織布やスパンボンド不織布等を用いることができる。
【0114】
吸収性本体10の左右方向の両側部には、縦方向(吸収性本体10の長手方向)に沿って一対の防漏壁部15が設けられている。本実施形態において、防漏壁部15は、上述した外装シート13bによって形成されている。具体的には、左右方向(横方向)において、外装シート13bの一部が吸収性コア11の両端よりも外側に延出しつつ、
図4Bのように肌側に複数個所で折り曲げられることによって、一対の防漏壁部15が形成される。防漏壁部15の肌側端部(先端部)には、糸ゴム等の防漏壁弾性部材16が縦方向(吸収性本体10の長手方向)に沿って伸長した状態で取り付けられている。おむつ1の着用時には、該防漏壁弾性部材16が発現する伸縮性に基づいて、防漏壁部15が着用者の肌側に起立し、着用者の股間部にフィットする。
【0115】
また、吸収性本体10の左右方向の両側部には、糸ゴム等の脚回り弾性部材17が縦方向(吸収性本体10の長手方向)に沿って伸長した状態で取り付けられている。おむつ1の着用時には、該脚回り弾性部材17が発現する伸縮性に基づいて、吸収性本体10の両側部が収縮し、着用者の脚回り沿ってフィットしやすくなる。
【0116】
(前側胴回り部30)
前側胴回り部30は、
図3に示されるように、厚さ方向の最も肌側に配置された肌側シート31と、肌側シート31の非肌側に隣接するように積層された非肌側シート32と、肌側シート31と非肌側シート32との厚さ方向の間に設けられた胴回り弾性部材35とを有する。おむつ1の外装部材たる前側胴回り部30は、基本的に肌側シート31と非肌側シート32との2層構造であるが、例えば、後述する肌面シート36等、部分的に3層以上の構成を有していていも良い。
【0117】
肌側シート31及び非肌側シート32は、
図2に示されるような平面視長方形状のシート部材であり、例えばSMS不織布等によって形成されている。おむつ1において、非肌側シート32を構成するシート部材(不織布)は、肌側シート31を構成するシート部材(不織布)よりも親水性が高くなっている。すなわち、肌側シート31は親水性の低い不織布によって構成され、非肌側シート32は肌側シート31よりも親水性の高い不織布によって構成されている。以下では、肌側シート31を構成する不織布を「疎水性不織布」とも呼び、非肌側シート32を構成する不織布を「親水性不織布」とも呼ぶ。不織布の「親水性」については、後で説明する。
【0118】
また、非肌側シート32の表面には、
図2の部分拡大図に示されるような開孔部32hが複数設けられている。開孔部32hは、非肌側シート32を厚さ方向に貫通する貫通孔であり、該開孔部32hが設けられていることにより、前側胴回り部30の通気性を高めることができる。また、開孔部32hが前側胴回り部30の非肌面側に視認可能に配置されていることにより、前側胴回り部30が良好な通気性を有していることをユーザーに想起させやすくすることができる。各々の開孔部32hは、例えば直径1mm程度の円形状とすることができるが、開孔部32hの形状や配置(個数及びパターン)は適宜変更可能である。なお、おむつ1において、肌側シート31には開孔部32hに相当する貫通孔は設けられていない。
【0119】
本実施形態の前側胴回り部30は、非肌側シート32の上端部(縦方向における前側端部)が非肌側から肌側、且つ、縦方向の前側から後側に折り返された折り返し部32fを有している。この折り返し部32fによって肌側シート31の一部(上端部)が覆われることにより、肌側シート31の上端エッジが着用者の肌に食い込んでしまうことが抑制される。但し、折り返し部32fは必ずしも設けられていなくても良い。
【0120】
胴回り弾性部材35は、肌側シート31と非肌側シート32との間に、上下方向に並んで複数配置されるとともに、左右方向に伸長された状態で取り付けられている。この胴回り弾性部材35が発現する伸縮性によって、前側胴回り部30は、着用者の腹側胴回りにフィットする。
【0121】
胴回り弾性部材35の取り付けは、ホットメルト接着剤等の接着剤を用いて行うことができる。例えば、胴回り弾性部材35にホットメルト接着剤を塗布して所定の伸長倍率で伸長させ、肌側シート31と非肌側シート32とで挟み込むことによって胴回り弾性部材35を取り付けることができる。すなわち、胴回り弾性部材35を介して肌側シート31と非肌側シート32とが接着剤によって接合される。また、肌側シート31及び非肌側シート32側に接着剤を塗布することによって胴回り弾性部材35を取り付けても良いし、後述する溶着部60を用いた溶着手段によって胴回り弾性部材35を取り付けるようにしても良い。
【0122】
また、前側胴回り部30は、肌面シート36を有していても良い。肌面シート36は、
図3に示されるように、吸収性本体10の上端部(縦方向における前側端部)を肌側から覆うように配置されたシート部材であり、カバーシートとしての機能を有している。これにより、おむつ1の着用時に吸収性本体10の上端エッジが着用者の肌に食い込んでしまうことが抑制される。肌面シート36は、例えばSMS不織布等によって形成されている。なお、肌面シート36は必ずしも設けられていなくても良い。
【0123】
本実施形態の前側胴回り部30において、肌側シート31よりも肌側、若しくは非肌側シート32よりも非肌側にシート部材が設けられる場合、肌側シート31及び非肌側シート32の一部部分のみが覆われるように各シートが配置される。例えば、
図3における肌面シート36は、肌側シート31の肌側の一部分のみを覆うように設けられており、肌側シート31の少なくとも一部は、着用者の肌側に露出した状態となっている。
【0124】
(後側胴回り部40)
後側胴回り部40は、前側胴回り部30と略同様の構成を有する。すなわち、後側胴回り部40は、厚さ方向の最も肌側に配置された肌側シート41と、肌側シート41の非肌側に隣接するように積層された非肌側シート42と、肌側シート41と非肌側シート42との厚さ方向の間に設けられた胴回り弾性部材45と、を有する。また、前側胴回り部30と同様に、開孔部42hや折り返し部42f、肌面シート46等を有していても良い(
図2,
図3参照)。各部材の構成は、前側胴回り部30とほぼ同様であるため、説明は省略する。
【0125】
一方、後側胴回り部40の外観形状は、前側胴回り部30とは異なっている。具体的に、後側胴回り部40は、
図2のように、サイド接合部50(側部40sw)よりも上下方向の下側が略台形形状となった臀部カバー40bを有している。臀部カバー40bは、上下方向の上側から下側に向かって左右方向の幅が狭くなっており、その外縁が湾曲した部位である。臀部カバー40bが設けられていることによって、おむつ1の着用時に後側胴回り部40が着用者の臀部を広く被覆することが可能となっている。
【0126】
そして、臀部カバー40bには、
図2に示されるような糸ゴム等の湾曲弾性部材47が設けられている。湾曲弾性部材47は、臀部カバー40bの端縁部に沿って伸長した状態で肌側シート41と非肌側シート42との間に取り付けられており、該湾曲弾性部材47が発現する伸縮性によって、おむつ1着用時に、後側胴回り部40の臀部カバー40bが着用者の臀部にフィットしやすくなり、また、臀部から捲れにくくなる。
【0127】
<シート部材の親水性について>
ここで、シート部材の親水性について説明する。おむつ1では、外装部材である胴回り部材20(前側胴回り部30、後側胴回り部40)を構成する肌側シート31,41、及び、吸収性本体10の外装シート13bとして疎水性不織布を用いている。一方、胴回り部材20を構成する非肌側シート32,42として疎水性不織布よりも親水性の高い親水性不織布を用いている。
【0128】
本実施形態の親水性不織布は、疎水性不織布に対して、所定の油剤を付着させる処理(親水処理)を行うことによって親水性を高めたものである。親水処理に用いる油剤としては、例えば、アニオン系油剤や非イオン系油剤及びそれらの配合品等、繊維の帯電防止剤として効果を有する市販の油剤を使用することができる。これらの油剤を油槽に投入して、オイリングローラー等を用いてオイリングすることにより、疎水性不織布の親水性を高め、親水性不織布を得ることができる。但し、これ以外の方法によって親水性不織布が形成されるのであっても良い。例えば、親水性の高い繊維を用いて不織布を製造することによって、親水性不織布を得ても良い。
【0129】
なお、本実施形態では、非肌側シート32,42を構成する不織布の全体について親水処理が行われ、各シート部材の全体について親水性が高められているものとする。但し、各シート部材の一部の領域のみ親水性が高められているのであってもよい。例えば、非肌側シート32の一部の領域にのみ親水処理が行われる等によって、局所的に親水性の高い部分と低い部分を有するシート部材としても良い。
【0130】
シート部材の親水性は、当該シート部材の表面にイオン交換水を接触させた際の接触角を測定することによって評価することができる。具体的には、親水性不織布とイオン交換水との接触角が、疎水性不織布とイオン交換水との接触角よりも小さければ、親水性不織布の親水性の方が、疎水性不織布の親水性よりも高くなる。本実施形態で用いられる親水性不織布(非肌側シート32等)としては、イオン交換水との接触角が、90°未満であることが好ましく、50°以下であることが更に好ましい。一方、疎水性不織布(肌側シート31)としては、イオン交換水との接触角が、90°以上であることが好ましく、120°以上であることが更に好ましい。
【0131】
接触角の測定は、例えば、協和界面科学株式会社製の接触角計MCA-Jを用いて、以下の方法で行うことができる。先ず、測定対象となるシート部材(被測定シート)を構成する繊維の表面に、イオン交換水を滴下(約20ピコリットル)した後、直ちに前記接触角計を用いて接触角度の測定を行う。測定は、被測定シートの表面の複数個所(例えば5箇所以上)で行い、それらの平均値を接触角とする。なお、測定環境温度は22℃とする。
【0132】
また、イオン交換水を滴下した被測定シートを、当該被測定シートの断面方向から撮像し、撮像した画像を解析して、イオン交換水の液滴と被測定シートとがなす角度を測定することによって、接触角を測定するようにしても良い。
【0133】
<吸収性本体10による水分の吸収及び排出について>
おむつ1では、吸収性本体10(吸収性コア11)によって尿等の排泄液(水分)が吸収されるが、吸収した水分を、おむつ1の外部へ適宜排出することによって、吸収性コア11の保水容量(吸水可能な水分の量)が限界に達することを抑制して吸水機能を維持しやすくすると共に、吸収性本体10の内部を蒸れ難くしている。
【0134】
図5A~
図5Cは、
図3の領域Bにおいて、吸収性本体10から水分が排出されるメカニズムについて説明する図である。同
図5A~
図5Cでは、厚さ方向の肌側から非肌側に向かって、吸収性コア11,液不透過性シート13a(通気性フィルム),外装シート13b(疎水性不織布),肌側シート31(疎水性不織布),非肌側シート32(親水性不織布)が、この順番で積層された状態について表している。
【0135】
おむつ1の着用時において尿等が排泄されると、当該尿等の水分は吸収性コア11によって吸収される。そして、吸収された水分の一部は、
図5Aに示されるように、水蒸気として、液不透過性シート13a(通気性フィルム)を厚さ方向の肌側から非肌側に透過して、外装シート13b及び肌側シート31側へ移動する。外装シート13b及び肌側シート31は疎水性の不織布であるが、不織布を構成する複数の繊維によって空隙が形成されているため、当該空隙による毛細管現象により、水分(水蒸気)の一部が外装シート13b及び肌側シート31に引き込まれる。
【0136】
外装シート13b及び肌側シート31に引き込まれた水分は、続いて、
図5Bのように、厚さ方向の肌側に隣接している非肌側シート32へ移行する。非肌側シート32は、外装シート13b及び肌側シート31よりも親水性の高い親水性不織布であるため、外装シート13b及び肌側シート31中に含まれる水分は、親水性不織布と疎水性不織布との間に形成される親水性の勾配に基づいて、親水性不織布側(非肌側シート32側)へと移行しやすくなっている。
【0137】
そして、非肌側シート32に移行した水分(水蒸気)は、
図5Cのように非肌側シート32の非肌側面から外側(
図5Cでは大気側)に蒸散する。おむつ1において非肌側シート32は、吸収性本体10の最も外側(非肌側)の面に配置されている。すなわち、非肌側シート32の非肌側面が大気との界面となっている。したがって、非肌側シート32の内部に含まれる水分を、非肌側面の広い範囲から効率的におむつ1の外側に蒸散させることができる。但し、外装部材の最も非肌側の面の全体に親水性不織布が配置されている必要はない。例えば、外装部材の最も非肌側の面の一部に、他の部材(例えばテープ部材等)が設けられていても良い。
【0138】
従来の使い捨ておむつ等の吸収性物品では、吸収性コア及び通気性フィルム(おむつ1における液不透過性シート13a)よりも非肌側には、親水性の高いシート部材(おむつ1における非肌側シート32)が設けられていないことが一般的であった。そのため、通気性フィルムを透過した水蒸気は、非肌側に設けられた親水性の低いシート部材(疎水性不織布)の部分に留まりやすくなっていた。すなわち、通気性フィルム(液不透過性シート13aに相当)と疎水性不織布(外装シート13b及び肌側シート31)との間に水分が滞留しやすい構成であり、おむつの蒸れ等の原因となる場合があった。
【0139】
これに対して、本実施形態のおむつ1では、通気性フィルム(液不透過性シート13a)及び疎水性不織布(外装シート13b及び肌側シート31)よりも非肌側に、親水性の高い親水性不織布(非肌側シート32)が設けられている。そのため、より親水性の高い親水性不織布側(非肌側)に水分が引き寄せられ、通気性フィルム(液不透過性シート13aに相当)と疎水性不織布(外装シート13bや肌側シート31)との間に水分が滞留し難くなっている。すなわち、吸収性コア11によって吸収された水分を厚さ方向の肌側から非肌側へ移行させやすい構成となっている。
【0140】
なお、おむつ1では、液不透過性シート13a(通気性フィルム)と非肌側シート32(親水性不織布)との厚さ方向の間に、疎水性不織布(外装シート13bや肌側シート31)が設けられているが、疎水性不織布が設けられていなかったとしても、上述のような水分の排出を行うことは可能である。少なくとも、吸収性コアよりも非肌側に通気性フィルムが配置され、通気性フィルムよりも非肌側に親水性の高いシート部材(親水性不織布)が配置されていれば良い。このような構成であれば、上述のような水分の厚さ方向への移動が促進され、吸収性コアによって吸収された尿等の水分を効率的に外部へ排出することが可能となる。
【0141】
このように、おむつ1では、吸収性コアと通気性フィルムと親水性不織布とが厚さ方向に重ねて配置されていることにより、当該3つの部材が重ねられた領域において厚さ方向への水分の移動が促進されやすくなっている。つまり、おむつ1の内側(吸収生本体)から外側に水分を排出しやすくなっている。したがって、おむつ1の内部に水分が残留し難くなり、吸収性コア11の水分吸収容量が限界に達し難く、吸水機能が維持されやすくなる。また、着用者に対しておむつ1着用時における蒸れ等の不快感を生じさせ難くすることができる。
【0142】
図6Aは、パンツ型形状のおむつ1を伸長状態として前後方向の前側から見たときの状態について示す概略平面図である。
図6Bは、パンツ型形状のおむつ1を伸長状態として前後方向の後側から見たときの状態について示す概略平面図である。同
図6A及び
図6Bに示されるように、おむつ1において吸収性コア11の左右方向における長さ(幅)W11よりも、液不透過性シート13a(通気性フィルム)の左右方向における長さ(幅)W13の方が大きくなっている(W11<W13)。また、
図6Aで、非肌側シート32(親水性不織布)の左右方向における長さ(幅)W32は、液不透過性シート13a(通気性フィルム)の左右方向における長さ(幅)W13よりも大きくなっている(W13<W32)。また、
図6Bで、非肌側シート42(親水性不織布)の左右方向における長さ(幅)W42は、液不透過性シート13a(通気性フィルム)の左右方向における長さ(幅)W13よりも大きくなっている(W13<W42)。
【0143】
図6A及び
図6Bに示されるように、吸収性コア11の左右方向の全体が液不透過性シート13a(通気性フィルム)と重ねられていることによって、吸収性コア11の左右方向の全体から通気性フィルムを透過して水分(水蒸気)を非肌側に移動させることが可能となっている。そして、液不透過性シート13a(通気性フィルム)の左右方向の全体が非肌側シート32,42(親水性不織布)と重ねられていることにより、通気性フィルムを透過した水分を非肌側の親水性不織布で吸収しやすくなっている。これにより、吸収性コア11の左右方向の全域から親水性不織布へ水分を移行させやすくなり、おむつ1の内側(肌側)から外側(非肌側)に、効率的に水分を排出することができる。
【0144】
また、上記の関係より、おむつ1は、厚さ方向に見たときに、非肌側シート32,42(親水性不織布)と吸収性コア11とが重複している部分と、重複していない部分とを有していることになる。吸収性コア11と親水性不織布とが重複している部分(
図6A及び
図6BにおいてW11で示されている領域)では、上述のように、吸収性コア11によって吸収された尿等の水分をおむつ1の外側に効率よく排出することができる。
【0145】
一方、吸収性コア11と親水性不織布とが重複していない領域では、着用者の身体から発せられる汗等の水分を親水性不織布側へと移行させることができる。
図7は、
図6AのC-C線での概略断面図である。同
図7は、
図3に対応する図であり、吸収性コア11と親水性不織布とが重複していない部分の断面を示している。
図7において着用者が汗をかいた場合、吸収性本体10のトップシート12を透過した汗は、水蒸気として液不透過性シート13a(通気性フィルム)を透過して、外装シート13b及び肌側シート31を介して非肌側シート32(親水性不織布)へ移行し、最終的におむつ1の外側に蒸散する。すなわち、おむつ1の肌側から非肌側へ水分を移行させて、親水性不織布の表面から非肌側に水分を排出することができる。したがって、おむつ1では、吸収性コア11によって吸収された尿等の水分に加えて、着用者の肌に付着した汗等の水分も外側に排出することができる。これにより、おむつ1着用時における蒸れをより生じ難くすることができる。
【0146】
なお、親水性不織布と吸収性コア11とが重複していない領域の少なくとも一部では、親水性不織布と通気性フィルムとの厚さ方向の間に疎水性不織布が配置されている。例えば
図7の場合、非肌側シート32(親水性不織布)と液不透過性シート13a(通気性フィルム)との間に、外装シート13b及び肌側シート31(何れも疎水性不織布)が設けられている。この場合、上述したように、親水性不織布と疎水性不織布との間に生じる親水勾配によって、疎水性不織布側から親水性不織布側へと水分が移行しやすくなる。すなわち、肌側から非肌側への水分の移行がスムーズに行われやすくなる。したがって、汗等の水分をおむつ1の外側により排出しやすくすることができる。
【0147】
また、おむつ1の胴回り部材20には、左右方向に伸縮する胴回り弾性部材35,45、及び、湾曲弾性部材47が設けられているが、これらの弾性部材は、いずれも吸収性本体10と重複する領域において一部が伸縮性を発現しないようになっている。例えば、
図6A及び
図6Bでは、吸収性本体10の左右方向における中央部にて胴回り弾性部材35,45、及び、湾曲弾性部材47の一部が切断されることによって、切断箇所から左右方向の両側(吸収性本体10の両端を左右方向に跨ぐ領域、以下「両側部」とも呼ぶ)に収縮した状態となっている。したがって、吸収性本体10の左右方向中央部に作用する弾性部材35,45,47による収縮力は、左右方向両側部に作用する弾性部材35,45,47による収縮力よりも弱くなっている。言い換えると、吸収性本体10の左右方向中央部における弾性部材35,45,47の応力は、吸収性本体10の左右方向両側部における弾性部材35,45,47の応力よりも小さくなっている。なお、各弾性部材35,45,47は、吸収性本体10の左右方向中央部にて必ずしも切断されていなくても良く、左右方向両側部と比較した場合に応力が弱くなっていれば良い。
【0148】
このような構成であれば、吸収性本体10(吸収性コア11)の左右方向中央部には、弾性部材35,45,47の収縮力が作用し難く、吸収性本体10や胴回り部材20の表面に皺等が形成され難く、平面形状が維持されやすい。したがって、
図5A~
図5Cで説明したような、シート部材同士の厚さ方向における積層構造が維持されやすく、水分の厚さ方向への移動が阻害され難くなっている。これにより、肌側の吸収性コア11によって吸収された尿等の水分を、非肌側の親水性不織布へ移行させ、親水性不織布よりも非肌側に蒸散させることができる。
【0149】
弾性部材の応力は、例えば、(株)島津製作所製のオートグラフ型引張試験機(例えば、AG-1KN1)を用いて下記のように測定することができる。まず、おむつ1の胴回り部材20(30,40)をその表面に皺がなくなる程度にまで伸長させた状態で、各弾性部材35,45,47が配置されている領域のうち、測定対象とする領域(吸収性本体10の左右方向の中央部、及び両側部)の左右方向の寸法を測定した後、カッターによって、当該測定対象領域を、その寸法で切断して試料とする。次に、試料の一方端を固定チャック、他方端を可動チャックに挟み、300mm/minの速度で初期寸法の約90%の大きさまで伸長させた後に反転させて、初期寸法の約75%の大きさまで各試料を収縮させたときの引張荷重(N)を求めて、単位長さ(mm)当たりの応力(N/mm)に換算して応力とする。
【0150】
また、おむつ1の吸収性本体10は、吸収性コア11を厚さ方向に貫通するスリット部11sを有している。そして、厚さ方向に見たときに、当該スリット部11sと親水性不織布とが重複する部分を有している。例えば、おむつ1では、
図6Bの斜線部で示される領域において、スリット部11sと親水性不織布(後側胴回り部40の非肌側シート42)とが重複している。
【0151】
吸収性コア11のうちスリット部11sでは剛性が低くなっているため、吸収性コア11を着用者の身体形状に沿って変形させやすくすることができる。一方で、スリット11sは溝状に構成されていることから、排泄物等の水分が溜まったり移動したりし易くなり、着用者に不快感を生じさせるおそれがある。これに対しておむつ1では、スリット部11sの非肌側に親水性不織布が設けられているため、上述のように水分を肌側から非肌側へ移行させ、親水性不織布よりも非肌側(おむつ1の外側)に蒸散させやすい構造となっている。したがって、吸収性コア11の身体への良好なフィット性を維持しつつ、水分を外側に排出しやすくすることにより、着用者に不快感を生じさせることを抑制することができる。
【0152】
また、おむつ1において、液不透過性シート13a(通気性フィルム)の透湿度は、1000g/m2・24h以上、3500g/m2・24h以下であるであることが望ましい。透湿度が1000g/m2・24h以上であれば、水蒸気が液不透過性シート13aを透過しやすく、おむつ1の内側(肌側)から外側(非肌側)に水分を蒸散させやすくすることができる。一方、透湿度が3500g/m2・24h以下であれば、液不透過性シート13aが水蒸気を過度に透過させてしまうことが抑制され、外側(非肌側)に設けられた親水性不織布によって水分が過剰に吸収されることを抑制できる。したがって、おむつ1の着用時において、適度な量の水分を排出しつつ、外側の親水性不織布が湿ってしまうことが抑制され、着用者に不快感を生じさせ難くすることができる。
【0153】
なお、透湿度は、JIS Z 0208(防湿包装材料の透過湿度試験方法)に基づいて、例えば以下のようにして測定できる。先ず、液不透過性シート13aから複数の試料(測定に使用する透湿カップ内径より約10mm大きい直径を有する円形の試料を3枚以上)を採取する。次いで、透湿面積が25cm2以上の透湿カップに吸湿剤 JIS K 8123〔塩化カルシウム(無水)〕を入れて資料を取り付け、封ろう剤を用いて封かんし、恒温恒湿室内に16時間以上静置した後取り出して、室温と平衡させ、電子天秤等によって質量を測定する。その後、再び試料を恒温恒湿室内に静置し、一定間隔(例えば24時間毎)で電子天秤による秤量操作を繰り返し、質量増加を求め、質量増加分が5%以内で一定になるまで試験を続ける。そして、各試料について、以下の式(1)により透湿度を算出し、JIS Z 8401(数値の丸め方)によって有効数字2けたに丸めた値を液不透過性シート13aの透湿度とする。
透湿度=240m/(t・s)・・・(1)
s:透湿面積(cm2)
t:試験を行った最後の二つのひょう量間隔の時間の合計(h)
m:試験を行った最後の二つのひょう量間隔の増加質量の合計(mg)
【0154】
<胴回り弾性部材35,45の取り付け方法の変形例>
上述の実施形態では、ホットメルト接着剤等を用いた接着手段によって胴回り弾性部材35,45が胴回り部材20に取り付けられていたが、胴回り弾性部材35,45の取り付け方法はこの限りでなはい。例えば、超音波溶着等の溶着手段を用いて胴回り弾性部材35,45が胴回り部材20に取り付けられていても良い。なお、超音波溶着は公知技術であることから、本明細書中では超音波溶着についての説明は省略する。
【0155】
図8A及び
図8Bは、溶着部60を用いて胴回り弾性部材35を前側胴回り部30に取り付ける方法について説明する図である。本変形例では、左右方向及び上下方向に離散的に配された複数の溶着部60,60…によって胴回り弾性部材35が前側胴回り部30に取り付けられる。各々の溶着部60は、超音波溶着により、略矩形状に形成され、前側胴回り部30の肌側シート31及び非肌側シート32を厚さ方向に接合する。そして、上下方向に隣り合う2つの溶着部60,60からなる1対の溶着部対60sによって、上下方向の両側から胴回り弾性部材35を挟み込むことによって、前側胴回り部30に対して胴回り弾性部材35を取り付けている。
【0156】
図8Aに示すように、溶着部対60sをなす一対の溶着部60,60は、上下方向に間隔GH60を空けて並んでいる。そして、間隔GH60の大きさは、所定の伸長倍率まで伸長した状態の胴回り弾性部材35の直径d35tと同寸又はそれよりも若干大きい寸法に設定されている(GH60≧d35t)。つまり、伸長状態の胴回り弾性部材35は、溶着部対60sの上下方向の間に配置される。
【0157】
次いで、胴回り弾性部材35が伸長状態から緩和されると、
図8Bに示すように、胴回り弾性部材35は左右方向に収縮しつつ上下方向に拡大し、自然状態における直径d35は溶着部対60sの上下方向の間隔GH60よりも大きくなる(d35>GH60)。これにより、溶着部60,60同士によって、胴回り弾性部材35が上下方向に挟圧された状態となる。その結果、胴回り弾性部材35が前側胴回り部30に取り付けられる。
【0158】
なお、
図1のパンツ型状態のおむつ1においては、胴回り弾性部材35(45)は、上記の伸長状態から緩和された自然状態である。また、パンツ型状態のおむつ1では、左右方向両側部のサイド接合部50,50によって胴回り弾性部材35(45)が前側胴回り部30(後側胴回り部40)に接合されている。そのため、おむつ1の着用時において前側胴回り部30(後側胴回り部40)が左右方向に伸長されたとしても、胴回り弾性部材35(45)が胴回り部材20から外れてしまうことは無い。
【0159】
===第2実施形態===
第2実施形態では、第1実施形態とは構成の一部が異なるパンツ型おむつ2(以下、「おむつ2」とも呼ぶ)について説明する。
図9Aは、展開且つ伸長状態のおむつ2の平面図である。
図9Bは、
図9AのD-D線での概略断面図である。なお、
図9A及び
図9Bにおける各方向(例えば縦方向や横方向等)は、第1実施形態で定義した各方向と同様である。
【0160】
第2実施形態のおむつ2は、液吸収性の吸収性本体10と、吸収性本体10の非肌側に接合された外装部材として胴回り部材20とを有している。そして、おむつ2の胴回り部材20は、
図9A及び
図9Bに示されるように、縦方向(吸収性本体10の長手方向)に連続するように一体的に構成されている。すなわち、おむつ2は、吸収性本体10と、外装部材(胴回り部材20)との2つの部品によって構成される、所謂2ピースタイプの使い捨ておむつである。以下では、おむつ2の外装部材(胴回り部材20)のうち、縦方向における中央位置CLよりも前側の部分を前側胴回り部30とし、中央位置CLよりも後側の部分を後側胴回り部40として説明を行う(
図9A参照)。
【0161】
図9Aの展開状態のおむつ2をパンツ型に形成する際には、吸収性本体10及び胴回り部材20を、縦方向における中央位置CLを折り位置として二つ折りにする。この二つ折りの状態において互いに対向する前側胴回り部30と後側胴回り部40とを、左右方向両側の側部30sw及び側部40swにて互いに接合・連結し、一対のサイド接合部50,50を形成する。これにより、
図1のおむつ1と同様に、胴回り開口BH及び一対の脚回り開口LH,LHを有するパンツ型状態のおむつ2となる。
【0162】
おむつ2において、吸収性本体10の基本的な構成や機能は、第1実施形態のおむつ1と略同様であるため、説明は省略する。但し、おむつ2のバックシート13は、液不透過性シート13a(通気性フィルム)のみを備え、外装シート13bを備えていなくても良い。これは、おむつ2において、吸収性本体10の非肌側面の全体に胴回り部材20が設けられており、当該胴回り部材20が吸収性本体10の外装シートとしての機能を有しているためである。したがって、おむつ2の吸収性本体10のバックシート13としては、おむつ1の外装シート13bに相当するシート部材が設けられていなくても良い(
図9B参照)。
【0163】
胴回り部材20は、肌側シート21と、肌側シート21の非肌側に隣接して積層された非肌側シート22と、肌側シート21と非肌側シート22との厚さ方向の間に配置された胴回り弾性部材35,45とを有する(
図9B参照)。肌側シート21は、おむつ1の肌側シート31,41と同様の疎水性不織布である。非肌側シート22は、おむつ1の非肌側シート32,42と同様の親水性不織布である。すなわち、おむつ2において、非肌側シート22は、肌側シート21よりも親水性の高い不織布である。そして、胴回り弾性部材35,45は、おむつ1と同様に糸ゴム等によって構成され、左右方向に伸長された状態で、肌側シート21と非肌側シート22との間に取り付けられている。
【0164】
第2実施形態のおむつ2でも、おむつ1と同様の効果が得られる。例えば、おむつ2では、厚さ方向に見たときに、吸収性コア11と、通気性フィルム(液不透過性シート13a)と、親水性不織布(非肌側シート22)とが重複する部分を有している。吸収性コア11と通気性フィルムと親水性不織布とが重複している部分では、
図5A~
図5Cで説明したように、厚さ方向の肌側から非肌側へ水分の移動が促進されやすくなり、おむつ2の内側(吸収生コア11)から外側に水分を排出しやすくすることができる。また、その他にも、おむつ2は、基本的に第1実施形態で説明したおむつ1と略同様の特徴を備えている。
【0165】
また、おむつ2では、サイド接合部50の下端50ebよりも上下方向の上側の領域において吸収性コア11と親水性不織布(非肌側シート22)とが重複している領域の面積よりも、サイド接合部50の下端50ebよりも上下方向の下側の領域において吸収性コア11と親水性不織布(非肌側シート22)とが重複している領域の面積の方が大きい(
図9A参照)。すなわち、おむつ2の着用時に、サイド接合部50の下端50ebよりも下側で着用者の股下に位置する領域(股下領域)において、吸収性コア11と親水性不織布(非肌側シート22)とが重複する領域の面積が広くなっている。
【0166】
したがって、おむつ2では、股下領域の広い範囲で、吸収性コア11によって吸収された尿等の水分を親水性不織布よりも非肌側(おむつ2の外側)に排出しやすくすることができる。これにより、股下部が蒸れにくくなり、着用者に不快感を生じ難くさせることができる。
【0167】
また、
図9Aの場合、厚さ方向に見たときに、通気性フィルム(液不透過性シート13a)の全体が親水性不織布(非肌側シート22)と重複している。したがって、吸収性コア11に吸収された尿等のうち、水蒸気として通気性フィルムを肌側から非肌側に透過した水分は、該通気性フィルムの全領域において非肌側に設けられている親水性不織布に移行しやすくなる。これにより、厚さ方向の肌側から非肌側へ水分の移行がより促進されやすくなり、おむつ2の内部に水分を残留し難くすることができる。但し、上述したように、吸収性コア11と通気性フィルム(液不透過性シート13a)と親水性不織布(非肌側シート22)とが少なくとも一部で重複していれば、おむつ2の外側に水分を排出する効果を得ることは可能であり、必ずしも通気性フィルム(液不透過性シート13a)の全体が親水性不織布(非肌側シート22)と重複していなくても良い。
【0168】
===第3実施形態===
第3実施形態では、上述の実施形態とは構成の一部が異なるパンツ型おむつ3(以下、「おむつ3」とも呼ぶ)について説明する。
図10Aは、展開且つ伸長状態のおむつ3の平面図である。
図10Bは、
図10AのE-E線での概略断面図である。なお、
図10A及び
図10Bにおける各方向(例えば縦方向や横方向等)は、第1実施形態で定義した各方向と同様である。
【0169】
第3実施形態のおむつ3は、液吸収性の吸収性本体10と、吸収性本体10の非肌側に接合された外装部材として胴回り部材20とを有している。おむつ3の胴回り部材20は、
図10A及び
図10Bに示されるように、縦方向(吸収性本体10の長手方向)に連続するように一体的に構成されている。すなわち、肌側シート21が縦方向の一方側の端部から他方側の端部に連続する一体的なシート部材として構成されている。一方、縦方向の前側に配置された非肌側シート32(前非肌側シート)と、縦方向の後側に配置された非肌側シート42(後非肌側シート)とは、縦方向に非連続な異なるシート部材として構成されている。このような構造のおむつを簡易3ピースタイプの使い捨ておむつとも呼ぶ。また、以下では、おむつ3の外装部材(胴回り部材20)のうち、縦方向における中央位置CLよりも前側の部分を前側胴回り部30とし、中央位置CLよりも後側の部分を後側胴回り部40として説明を行う(
図10A参照)。
【0170】
図10Aの展開状態のおむつ3をパンツ型に形成する際には、吸収性本体10及び胴回り部材20を、縦方向における中央位置CLを折り位置として二つ折りにする。この二つ折りの状態において互いに対向する前側胴回り部30と後側胴回り部40とを、左右方向両側の側部30sw及び側部40swにて互いに接合・連結し、一対のサイド接合部50,50を形成する。これにより、
図1のおむつ1と同様に、胴回り開口BH及び一対の脚回り開口LH,LHを有するパンツ型状態のおむつ3となる。
【0171】
おむつ3において、吸収性本体10の基本的な構成や機能は、第2実施形態のおむつ2の吸収性本体10と略同様であるため、説明は省略する。
【0172】
おむつ3の外装部材(胴回り部材20)のうち、前側胴回り部30は、厚さ方向の肌側において縦方向の一端側(腹側)から他端側(背側)に延びる一枚の肌側シート21と、縦方向の前側(腹側)において、肌側シート21の非肌側に隣接して積層された非肌側シート32と、肌側シート21と非肌側シート32との厚さ方向の間に配置された胴回り弾性部材35とを有する。後側胴回り部40は、前側胴回り部30と共通の肌側シート21と、縦方向の後側(背側)において、肌側シート21の非肌側に隣接して積層された非肌側シート42と、肌側シート21と非肌側シート42との厚さ方向の間に配置された胴回り弾性部材45とを有する。
【0173】
肌側シート21は、おむつ1の肌側シート31,41と同様の疎水性不織布である。非肌側シート32,42は、おむつ1の非肌側シート32,42と同様の親水性不織布である。すなわち、おむつ3において、非肌側シート32,42は、肌側シート21よりも親水性の高い不織布である。そして、胴回り弾性部材35,45は、おむつ1と同様に糸ゴム等によって構成され、左右方向に伸長された状態で、肌側シート21と非肌側シート32,42との間に取り付けられている。
【0174】
第3実施形態のおむつ3でも、おむつ1やおむつ2と同様の効果が得られる。例えば、おむつ3では、厚さ方向に見たときに、
図10Bの破線部で囲まれる領域において、吸収性コア11と通気性フィルム(液不透過性シート13a)と親水性不織布(非肌側シート32,42)とが重複している。吸収性コア11と通気性フィルムと親水性不織布とが重複している部分では、
図5A~
図5Cで説明したように、厚さ方向の肌側から非肌側へ水分の移動が促進されやすくなり、おむつ3の内側(吸収性コア11)から外側に水分を排出しやすくすることができる。また、その他にも、おむつ3は、基本的に第2実施形態で説明したおむつ2と略同様の特徴を備えている。
【0175】
===第4実施形態===
第4実施形態では、吸収性物品の一例として、第1~第3実施形態で説明した「パンツ型おむつ」とは異なる「テープ型おむつ」(以下、「おむつ4」とも呼ぶ)について説明する。
図11Aは、展開且つ伸長状態のおむつ4の平面図である。
図11Bは、
図11AのF-F線での概略断面図である。なお、
図11A及び
図11Bにおける各方向(例えば縦方向や横方向等)は、第1実施形態で定義した各方向と同様である。
【0176】
図11A及び
図11Bに示すように、おむつ4は、排泄物を吸収する吸収性コア11と、吸収性コア11よりも肌側に位置する液透過性のトップシート12と、吸収性コア11よりも非肌側に位置する液不透過性シート13aと、液不透過性シート13aよりも非肌側に位置する外装シート25と、トップシート12の左右方向における両側部において肌側に接合された一対のサイドシート18とを有する。また、おむつ4の左右方向における両側部には、縦方向に伸縮する脚回り弾性部材17(例えば糸ゴム等)が配置されている。
【0177】
おむつ4の吸収性コア11、トップシート12、及び液不透過性シート13aは、おむつ1における吸収性本体10に相当する部分であり、おむつ1の吸収性本体10を構成する吸収性コア11、トップシート12、及び液不透過性シート13aとそれぞれ同様の機能を有する。例えば、液不透過性シート13aは吸収性コア11によって吸収された尿等の水分を水蒸気として透過させることが可能な通気性フィルムである。
【0178】
おむつ4の外装シート25は、おむつ1における胴回り部材20に相当する外装部材であり、おむつ1の胴回り部材20を構成する非肌側シート33,43と同様に、親水性不織布によって構成されている。なお、おむつ4の外装部材が、おむつ1における胴回り部材20と同様の構成を有していてもよい。例えば、親水性不織布からなる外装シート25の肌側に疎水性不織布(
図11Bでは不図示)が設けられ、2枚のシート部材によっておむつ4の外装部材が構成されるのであっても良い。
【0179】
以下では説明の便宜のため、おむつ4の縦方向における中央位置CLよりも前側の部分を前側胴回り部30とも呼び、中央位置CLよりも後側の部分を後側胴回り部40とも呼ぶ(
図11A参照)。
【0180】
一対のサイドシート18は、トップシート12と同様の液透過性の不織布であり、該サイドシート18の左右方向の内側端部には、縦方向に伸縮可能な糸ゴム等の防漏壁弾性部材16が設けられている。おむつ4の着用時には、この防漏壁弾性部材16が発現する収縮力に基づいて、サイドシート18の左右方向内側端部が着用者の肌側に起立し、おむつ1と同様に防漏壁部15を形成する。
【0181】
おむつ4の縦方向における背側(後側胴回り部40)には、左右方向の両外側に延出する一対のファスニングテープ26が設けられている。また、おむつ4の縦方向における腹側(前側胴回り部30)の非肌側面には、おむつ4の装着時にファスニングテープ26を係合させるためのターゲットシート27が設けられている。ファスニングテープ26の自由端側(左右方向の外側)の肌側面には、複数のフック部材(不図示)を備えた面ファスナー26fが設けられている。ターゲットシート27は、ファスニングテープ26の面ファスナー26f(フック部材)と係合可能な部材であり、例えば不織布で形成されている。
【0182】
おむつ4を着用する際には、例えば、
図11Aに示される展開状態のおむつ4を着用者の股下部に配置して、前側胴回り部30を着用者の腹側部にあてがい、後側胴回り部40を着用者の背側部(臀部)にあてがう。そして、一対のファスニングテープ26,26を着用者の胴回りに沿って背側から腹側に巻き回し、着用者の腹側にて、面ファスナー26fをターゲットシート27に係合させる。これにより、おむつ1と略同様の胴回り開口BH及び一対の脚回り開口LH,LHが形成され、着用者の身体(股下部)に対しておむつ4の位置を固定することができる。
【0183】
なお、おむつ4においてターゲットシート27は必ずしも設けられていなくても良い。例えば、外装シート25の非肌側面にターゲットシート27を配置する代わりに、外装シート25を構成する不織布に対して直接面ファスナー26fを係合させることによっておむつ4を着用するようにしても良い。
【0184】
第4実施形態のおむつ4でも、おむつ1と同様の効果が得られる。例えば、おむつ4では、厚さ方向に見たときに、吸収性コア11の全域が通気性フィルム(液不透過性シート13a)及び親水性不織布(外装シート25)と重複している。吸収性コア11と通気性フィルムと親水性不織布とが重複している部分では、厚さ方向の肌側から非肌側へ水分が移動しやすくなり、おむつ4の内側(吸収性コア11)から外側に水分を排出しやすくすることができる。その他、おむつ4は、基本的に第1実施形態で説明したおむつ1と略同様の特徴を備えている。
【0185】
===第5実施形態===
第5実施形態に係る吸収性物品として、使い捨ておむつ(以下、「おむつ1001」とも呼ぶ)を例に挙げて説明する。
【0186】
<おむつ1001の構成>
図12は、展開且つ伸長状態のおむつ1001の平面図である。
図13は、
図12のA-A線での概略断面図である。
図14Aは、吸収性本体1010の平面図であり、
図14Bは、吸収性本体1010の概略断面図である。おむつ1001は、以下で説明する「インジケータ1070」を備えていること以外は、基本的に第1実施形態のおむつ1と略同様の構成を有するパンツ型使い捨ておむつである。したがって、おむつ1001のインジケータ1070以外の構成については、詳細な説明を省略する。
【0187】
なお、おむつ1001を構成する各部を表す符号は、おむつ1の対応する各部を表す符号に1000を加えた数字で表すものとする。例えば、おむつ1の吸収性本体10は、おむつ1001においては吸収性本体1010と表される(
図12等参照)。以下の各実施形態についても同様とする。また、第5実施形態では、液不透過性シート1013aのことを「液不透過性フィルム」とも呼ぶ。すなわち、液不透過性フィルムは、液体は透過させない「防漏性」を有するが、水蒸気や空気を透過させる「透湿性」や「通気性」を有するシート部材である
【0188】
(インジケータ1070)
おむつ1001の吸収性コア1011とバックシート1013との厚さ方向の間には、尿等が排泄されたことを検知するためのインジケータ1070が設けられている。インジケータ1070は、尿等の排泄物中に含まれる水分と接触することによって所定の反応(例えば呈色反応)を呈する排泄検知部であり、例えば、一般的なおむつに採用されているpH指示薬を含むインジケータとして構成されている。本実施形態において、インジケータ1070は、
図13や
図14Bに示されるように、吸収性コア1011と液不透過性シート1013a(液不透過性フィルム)との厚さ方向の間に配置されている。したがって、吸収性コア1011によって吸収された尿等の水分がインジケータ1070と直接接触しやすく、且つ、バックシート13を透かしておむつ1001の外側(非肌側)から当該インジケータ1070の反応(呈色反応)を視認しやすくなっている。
【0189】
おむつ1001において、インジケータ1070は、
図14Aに示されるように、縦方向(吸収性本体1010の長手方向)に沿った帯状の部材として構成され、吸収性本体1010の横方向(左右方向)の中央部において、縦方向の一方側(前側)の端部から他方側(後側)の端部まで連続するように配置されている。これにより、吸収性本体1010の長手方向の広範囲にわたって排泄の有無を検出可能となる。但し、インジケータ1070の構成はこの限りではなく、例えば、横方向に間隔を空けて複数のインジケータが配置されていても良いし、縦方向における長さや形状が異なるインジケータが配置されていても良い。
【0190】
<おむつ1001による水分の吸収及び蒸散について>
おむつ1001では、外装部材(前側胴回り部1030、後側胴回り部1040)の非肌側面に親水性の高い親水性不織布が設けられていることにより、着用者の肌から汗等の水分を吸収し、吸収した水分を大気に蒸散させることが可能となっている。
図15A~
図15Cは、おむつ1001において、水分を吸収・蒸散する際の基本原理について説明する図である。同
図15では、おむつ1001を構成する部材のうち、前側胴回り部1030の断面について模式的に表している。
【0191】
初めに、着用者がおむつ1001を着用すると、
図15Aのように、前側胴回り部1030の厚さ方向の肌側に配置されている肌側シート1031(疎水性不織布)が着用者の肌に当接する。上述したように、本実施形態の肌側シート1031はSMS不織布によって構成されており、スパンボンド繊維と比較して繊維径が細いメルトブローン繊維を含んでいる。そのため、細いメルトブローン繊維が密に絡まり合って繊維間距離が狭くなっている部分を有している。このような構成によって、肌側シート1031において毛細管現象が生じ、着用者の肌に付着している汗等の水分を吸収しやすくなっている。
【0192】
次いで、肌側シート1031によって吸収された水分は、
図15Bのように、該肌側シート1031の非肌側に隣接して積層されている非肌側シート1032(親水性不織布)に移行する。肌側シート1031が疎水性不織布であるのに対して、非肌側シート1032は親水性不織布であることから、両シート間には親水性の大きさの差(親水勾配)が生じ、親水性の低い肌側シート1031側から、親水性の高い非肌側シート1032側に水分が移動しやすくなるためである。したがって、着用者の肌と接している肌側シート1031側には水分が保持され難くなり、着用者の肌と接していない非肌側シート1032側に水分が保持されやすくなる。
【0193】
非肌側シート1032中に保持された水分は、非肌側シート1032の非肌側面から大気中に蒸散する。おむつ1001において非肌側シート1032は、吸収性本体1010の最も外側(非肌側)の面に配置されている。すなわち、非肌側シート1032の非肌側面が大気との界面となっている。したがって、非肌側シート1032の内部に含まれる水分を、非肌側面の広い範囲から効率的におむつ1001の外側に蒸散させることができる。但し、外装部材の最も非肌側の面の全体に親水性不織布が配置されている必要はない。例えば、外装部材の最も非肌側の面の一部に、非肌側シート1032とは異なる他の部材(例えばテープ部材等)が設けられていても良い。
【0194】
このようにして、おむつ1001の外装部材(胴回り部材1020)では、疎水性不織布によって着用者の肌から吸収し水分を、非肌側の親水性不織布へ移行させ、該親水性不織布の非肌側表面から大気中に放出する。つまり、水分を吸収して効率的に大気に蒸散させることができる。これにより、着用者の肌に水分が接触し難くなり、着用者の肌がビチャついてかぶれ等の肌トラブルを生じさせたり、着用者に不快感を生じさせたりすることを抑制することができる。
【0195】
逆に言うと、おむつ1001は、従来のおむつと比較して、外装部材を構成する親水性不織布が多くの水分を吸収しやすい構成となっている。そして、親水性不織布中に含まれる水分が、インジケータ1070と接触してしまった場合、インジケータ1070が当該水分に反応してしまうおそれがある。すなわち、インジケータ1070が尿等の排泄物以外の水分に反応(誤検出)してしまい、排泄物の検出精度が悪化するおそれがある。
【0196】
そこで、本実施形態のおむつ1001では、上述のようなインジケータ1070による誤検出を抑制するために、親水性不織布中に含まれる水分とインジケータ1070とが接触し難くなるように、各部材が構成されている。以下、おむつ1001においてインジケータ1070による誤検出を抑制する方法について説明する。
【0197】
<インジケータ1070の誤検出抑制について>
図16A及び
図16Bは、インジケータ1070の配置と、おむつ1001における水分の移動との関係について説明する図である。同
図16A及び
図16Bでは、吸収性本体1010と前側胴回り部1030(外装部材)との積層部分の概略断面を示している。ここでは、吸収性本体1010と前側胴回り部1030(外装部材)とが積層されている部分における水分の移動について説明するが、後側胴回り部1040についても同様のことが言える。
【0198】
図16Aは、吸収性コア1011によって吸収された排泄物中に含まれる水分(以下、「排泄液」とも呼ぶ)の移動について表している。おむつ1001の着用時に尿等の排泄が行われると、先ず、吸収性コア1011によって排泄液が吸収される。吸収された排泄液のうち少なくとも一部は、吸収性コア1011内を拡散しながら厚さ方向の肌側から非肌側へ移動し、吸収性コア1011の非肌側に隣接して設けられたインジケータ1070に到達する。そして、インジケータ1070と水分とが接触した部分において、インジケータ1070が呈色反応(変色)を生じる。これにより、尿等の排泄を検出することができる。
【0199】
図16Bは、前側胴回り部1030(外装部材)の非肌側シート1032(親水性不織布)に含まれる汗等の水分の動きについて表している。上述したように、おむつ1001の外装部材は親水性不織布を有しているため、該親水性不織布によって汗等の水分が吸収され、従来の吸収性物品と比較して、外装部材に水分が含まれやすい構成となっている。仮に、外装部材に含まれている水分が厚さ方向の非肌側から肌側に移動してインジケータ1070と接触した場合、当該水分によってインジケータが呈色反応を生じてしまうおそれがある。すなわち、吸収性コア1011に吸収された排泄液以外の水分がインジケータ1070によって検出されてしまうことにより、排泄物の検出精度が悪化するおそれがある。
【0200】
これに対して、本実施形態のおむつ1001では、
図16Bのように非肌側シート1032(親水性不織布)とインジケータ1070との間に防漏性を有する液不透過性シート1013a(液不透過性フィルム)が配置されている。そのため、液不透過性フィルムが配置されている部分では、水分の厚さ方向への移動が遮断される。つまり、親水性不織布中に含まれる汗等の水分が非肌側から肌側に移動した場合であっても、液不透過性シート1013a(液不透過性フィルム)よりも肌側に配置されているインジケータ1070までは到達し難く、汗等の水分によるインジケータ1070の呈色反応は生じ難い。
【0201】
このように、おむつ1001では、液不透過性シート1013a(液不透過性フィルム)よりも非肌側に非肌側シート1032(親水性不織布)が配置され、液不透過性シート1013a(液不透過性フィルム)よりも肌側にインジケータ1070が配置されている。言い換えると、親水性不織布とインジケータ1070とが、防漏性を有する液不透過性フィルムを挟んで、それぞれ厚さ方向の反対側に配置されている。これにより、親水性不織布に含まれる汗等の水分とインジケータ1070とが接触し難くなり、インジケータ1070が排泄液以外の液体を誤検出してしまうことを抑制できる。
【0202】
また、おむつ1001では、排泄物を検出可能な範囲を広くするために、吸収性本体1010の長手方向(縦方向)の一方側の端から他方側の端に亘ってインジケータ1070が配置されている。その結果、厚さ方向に見たときに、胴回り部材1020(前側胴回り部1030,後側胴回り部1040)の親水性不織布とインジケータ1070とが重複する部分が生じている(
図13及び
図16B参照)。このとき、仮に、親水性不織布とインジケータ1070とが、液不透過性シート1013a(液不透過性フィルム)に対して厚さ方向の同じ側に配置されていた場合、親水性不織布に含まれている水分がインジケータ1070と接触して誤検出を生じやすくなる可能性が高い。これに対して、おむつ1001では、親水性不織布とインジケータ1070とを液不透過性シート1013a(液不透過性フィルム)に対して厚さ方向の反対側に配置することで、インジケータ1070による排泄物検出範囲を広く確保しつつ、汗等の水分に起因する誤検出を抑制し易くすることができる。
【0203】
特に、おむつ1001の外装部材(胴回り部材1020)のうち、後側胴回り部1040は、おむつ1001の着用時に、着用者の背中から臀部にかけて汗をかきやすい領域に位置することになる。したがって、後側胴回り部1040の非肌側シート1042(親水性不織布)は、着用者の背側において、汗を吸収して水分を含みやすくなっている。そして、厚さ方向に見たときに、当該非肌側シート1042(親水性不織布)とインジケータ1070とは重複する部分を有している。したがって、仮に、親水性不織布とインジケータ1070とが、液不透過性シート1013a(液不透過性フィルム)に対して厚さ方向の同じ側に配置されていた場合、親水性不織布に含まれる水分(汗)によって、インジケータ1070による誤検出の要因となりやすい。しかしながら、おむつ1001では、上述のようにインジケータ1070と非肌側シート1042(親水性不織布)とが、液不透過性シート1013a(液不透過性フィルム)を挟んで反対側に配置されていることから、着用者の背側において汗等の水分がインジケータ1070と接触してしまうことが抑制される。したがって、着用者が汗をかきやすい背側においても、インジケータ1070の誤検出を効果的に抑制することができる。
【0204】
また、おむつ1001のような所謂3ピースタイプの吸収性物品では、厚さ方向に見たときに、吸収性本体1010の一部の領域のみが外装部材(前側胴回り部1030及び後側胴回り部1040)と重複するように配置されている。すなわち、厚さ方向に見たときに、吸収性本体1010及びインジケータ1070と、外装部材(前側胴回り部1030及び後側胴回り部1040)の親水性不織布とが重複している部分と、重複していない部分とが存在する。このような構成のおむつでは、インジケータ1070と非肌側シート1032(親水性不織布)とが重複する領域においてインジケータ1070よりも非肌側に積層されているシート部材の枚数が、インジケータ1070と非肌側シート1032(親水性不織布)とが重複していない領域においてインジケータ1070よりも非肌側に積層されているシート部材の枚数よりも多いことが望ましい。
【0205】
例えば、
図16Aで、インジケータ1070と非肌側シート1032(親水性不織布)とが重複する領域をA1とし、インジケータ1070と非肌側シート1032(親水性不織布)とが重複していない領域をA2とする。この場合、領域A1においてインジケータ1070よりも非肌側に積層されているシート部材は4枚であり、領域A2において、インジケータ1070よりも非肌側に積層されているシート部材は2枚である。すなわち、領域A1におけるシート部材の積層枚数が、領域A2におけるシート部材の積層枚数よりも多くなっている。このように、領域A1におけるシート部材の積層枚数が多いほど、非肌側の親水性不織布(非肌側シート1032)に含まれる汗等の水分が肌側に移動し難くなり、インジケータ1070による誤検出を抑制し易くすることができる。一方、領域A2におけるシート部材の積層枚数が少ないほど、おむつ1001の柔軟性を高め、着用時におけるフィット性を向上させることができる。
【0206】
また、おむつ1001の外装部材(前側胴回り部1030,後側胴回り部1040)には、
図15で説明したように、非肌側シート1032(親水性不織布)の肌側に、肌側シート1031(疎水性不織布)が設けられている。すなわち、液不透過性シート1013a(液不透過性フィルム)と非肌側シート1032(親水性不織布)との間に疎水性不織布が介在している。このような構成により、非肌側シート1032(親水性不織布)に含まれる汗等の水分は、親水性の低い肌側シート1031(疎水性不織布)側へ移動し難くなる。つまり、親水性不織布(非肌側)に含まれる水分が、液不透過性フィルム側(肌側)へ移動することがより抑制されやすくなる。したがって、インジケータ1070による誤検出をより抑制しやすくすることができる。
【0207】
このとき、疎水性繊維には長繊維が含まれていることが望ましい。長繊維とは、平均長さ(平均繊維長)が100mm以上の繊維、又は、外装部材(前側胴回り部1030,後側胴回り部1040)の横方向若しくは縦方向の一端から他端まで連続している繊維のことをいう。繊維長が長い長繊維を含んだ疎水性不織布を用いることにより、当該疎水性繊維の平面方向に水分が拡散しやすくなり、疎水性繊維の厚さ方向に水分が移動することを抑制しやすくすることができる。すなわち、水分が、疎水性繊維を厚さ方向に透過して、インジケータ1070側(肌側)へ移動することをより抑制し易くすることができる。これにより、インジケータ1070による誤検出を抑制することができる。
【0208】
なお、繊維の平均繊維長は、中心線繊維長(Cont)による測定で長さ加重平均繊維長L(l)を意味する。長さ加重平均繊維長は、メッツォオートメーション(metso automation)社製のカヤーニファイバーラボファイバープロパティーズ(オフライン)[kajaaniFiberLab fiber properties(off-line)]により、L(l)値として測定される。なお、これはJIS P 8226-2(パルプ-光学的自動分析法による繊維長測定方法 非偏光法に準ずる)で推奨されている方法でもある。
【0209】
また、厚さ方向に見たときに、外装部材(胴回り部1030,1040)の親水性不織布(非肌側シート1032,1042)とインジケータ1070とが重複している領域には、シート部材同士を接合する接着剤の層が形成されていることが望ましい。
図16A及び
図16Bでは、非肌側シート1032(親水性不織布)とインジケータ1070との間に、少なくとも、外装部材(前側胴回り部1030)と吸収性本体1010とを接合する第1接着層HMA1、及び、液不透過性シート1013a(液不透過性フィルム)と外装シート1013b(液不透過性フィルムの非肌側に隣接するシート部材)とを接合する第2接着層HMA2が設けられている。第1接着層HMA1及び第2接着層HMA2は、いずれも、2つのシート部材間に、ホットメルト接着剤等の接着剤がスパイラル塗工やΩ字塗工にて塗工されることにより形成される層であり、当該接着層HMA1、HMA2によって、厚さ方向に隣接する2つのシート部材同士が接合されている。
【0210】
おむつ1001では、非肌側シート1032(親水性不織布)とインジケータ1070との厚さ方向の間にこのような接着剤の層(接着層HMA1、HMA2)が設けられていることにより、厚さ方向への水分の移動が当該接着層によって妨げられやすくなる。すなわち、親水性不織布に含まれる汗等の水分が厚さ方向の肌側に移動してインジケータ1070と接触してしまうことが抑制されやすくなる。これにより、インジケータ1070による誤検出をより抑制し易くすることができる。
【0211】
また、おむつ1001において、厚さ方向に見たときに、第1接着層HMA1と第2接着層HMA2とは重複して配置されている(
図16A参照)。2つの接着層が重複している部分では単位体積当たりの接着剤の量が大きくなることから、当該重複部分において、水分の厚さ方向への移動がより抑制されやすくなる。したがって、親水性不織布に含まれる汗等の水分が厚さ方向の肌側に移動してインジケータ1070と接触してしまうことがより抑制され、インジケータ1070による誤検出をさらに抑制することができる。なお、おむつ1001を実際に製造する際には、第1接着層HMA1及び第2接着層HMA2の他にも他の接着層が形成される可能性が高い。したがって、インジケータ1070による誤検出をより生じ難くすることができる。
【0212】
また、おむつ1001の外装部材(胴回り部1030,1040)には、横方向(左右方向)に伸縮性を発現する胴回り弾性部材1035,1045及び湾曲弾性部材1047が設けられているが、これらの弾性部材1035,1045,1047は、インジケータ1070と重複する部分において、収縮力を作用させにくいことが望ましい。すなわち、インジケータ1070と重複する部分における弾性部材1035,1045,1047の応力は、インジケータ1070と重複しない部分における弾性部材1035,1045,1047の応力よりも小さいことが望ましい。言い換えると、横方向(左右方向)の中央部における弾性部材の応力は、当該中央部の横方向(左右方向)の両側部における弾性部材の応力よりも小さいことが望ましい。おむつ1001では、
図12に示されるように、これらの弾性部材1035,1045,1047の少なくとも一部が、横方向の中央部において切断されていることにより、インジケータ1070と重複する領域(すなわち、切断される前に重複していた領域)における弾性部材1035,1045,1047の応力が小さくなっている。
【0213】
仮に、インジケータ1070と重複する部分において、弾性部材1035,1045,1047による収縮力が大きく作用した場合、おむつ1001の着用時に、胴回り部1030,1040をインジケータ1070側(すなわち着用者の肌側)に押し付ける力が生じる。この場合、胴回り部1030,1040に設けられた非肌側シート1032,1042(親水性不織布)に含まれる水分がインジケータ1070と接触しやすくなり、インジケータ1070の誤検出を生じさせるおそれがある。これに対して、おむつ1001では、インジケータ1070と重複する部分において、弾性部材1035,1045,1047の応力を小さくし、当該部分に収縮力が作用し難くなるようにすることで、非肌側シート1032,1042(親水性不織布)がインジケータ1070に押し付けられることを抑制している。これにより、インジケータ1070の誤検出を生じ難くすることができる。
【0214】
弾性部材の応力は、例えば、(株)島津製作所製のオートグラフ型引張試験機(例えば、AG-1KN1)を用いて下記のように測定することができる。まず、おむつ1001の胴回り部材1020(1030,1040)をその表面に皺がなくなる程度にまで伸長させた状態で、各弾性部材1035,1045,1047が配置されている領域のうち、測定対象とする領域(吸収性本体1010の左右方向の中央部、及び両側部)の左右方向の寸法を測定した後、カッターによって、当該測定対象領域を、その寸法で切断して試料とする。次に、試料の一方端を固定チャック、他方端を可動チャックに挟み、300mm/minの速度で初期寸法の約90%の大きさまで伸長させた後に反転させて、初期寸法の約75%の大きさまで各試料を収縮させたときの引張荷重(N)を求めて、単位長さ(mm)当たりの応力(N/mm)に換算して応力とする。
【0215】
<インジケータ1070の変形例>
上述の実施例では、インジケータ1070が吸収性本体1010の長手方向(縦方向)の一端側から他端側に亘って連続的に配置されている構成について説明したが、インジケータ1070の配置はこの限りではない。
図17は、インジケータ1070の配置の一変形例について表す概略断面図である。同
図17は、
図13に対応する図である。
【0216】
図17の変形例では、長手方向(縦方向)におけるインジケータ1070の長さが
図13の場合よりも短くなっている。このようなインジケータ1070であれば、おむつ1001の着用時に、着用者の股下部付近(すなわち尿等の排泄口付近)において、排泄の有無を検知可能としつつ、インジケータ1070自体のコストを低く抑えることができる。また、
図17では、厚さ方向に見たときに、前側胴回り部1030の非肌側シート1032(親水性不織布)と、インジケータ1070とが重複していない。したがって、前側胴回り部1030において、非肌側シート1032(親水性不織布)に含まれる汗等の水分がインジケータ1070に接触してしまう可能性がより低くなり、おむつ1001の前側(腹側)における排泄の誤検出を抑制し易くすることができる。
【0217】
===第6実施形態===
第6実施形態では、第5実施形態とは構成の一部が異なるパンツ型おむつ1002(以下、「おむつ1002」とも呼ぶ)について説明する。
図18Aは、展開且つ伸長状態のおむつ1002の平面図である。
図18Bは、
図18AのD-D線での概略断面図である。なお、
図18A及び
図18Bにおける各方向(例えば縦方向や横方向等)は、第5実施形態で定義した各方向と同様である。また、
図18A及び
図18Bは、後述するおむつ2002についても共通して表している。
【0218】
第6実施形態のおむつ1002は、液吸収性の吸収性本体1010と、吸収性本体1010の非肌側に接合された外装部材として胴回り部材1020とを有している。そして、おむつ1002の胴回り部材1020は、
図18A及び
図18Bに示されるように、縦方向(吸収性本体1010の長手方向)に連続するように一体的に構成されている。すなわち、おむつ2は、吸収性本体1010と、外装部材(胴回り部材1020)との2つの部品によって構成される、所謂2ピースタイプの使い捨ておむつである。以下では、おむつ2の外装部材(胴回り部材1020)のうち、縦方向における中央位置CLよりも前側の部分を前側胴回り部1030とし、中央位置CLよりも後側の部分を後側胴回り部1040として説明を行う(
図18A参照)。
【0219】
図18Aの展開状態のおむつ1002をパンツ型に形成する際には、吸収性本体1010及び胴回り部材1020を、縦方向における中央位置CLを折り位置として二つ折りにする。この二つ折りの状態において互いに対向する前側胴回り部1030と後側胴回り部1040とを、左右方向両側の側部1030sw及び側部1040swにて互いに接合・連結し、一対のサイド接合部1050,1050を形成する。これにより、
図1のおむつ1(おむつ1001)と同様に、胴回り開口BH及び一対の脚回り開口LH,LHを有するパンツ型状態のおむつ1002となる。
【0220】
おむつ1002において、吸収性本体1010の基本的な構成や機能は、第5実施形態のおむつ1001と略同様であるため、説明は省略する。但し、おむつ1002のバックシート1013は、液不透過性シート1013a(液不透過性フィルム)のみを備え、外装シート1013bを備えていなくても良い。これは、おむつ1002において、吸収性本体1010の非肌側面の全体に胴回り部材1020が設けられており、当該胴回り部材1020が吸収性本体1010の外装シートとしての機能を有しているためである。したがって、おむつ1002の吸収性本体1010のバックシート1013としては、おむつ1001の外装シート1013bに相当するシート部材が設けられていなくても良い(
図18B参照)。
【0221】
また、おむつ1002において、吸収性コア1011と液不透過性シート1013a(液不透過性フィルム)との厚さ方向の間には、第5実施形態で説明したものと同様のインジケータ1070が設けられている。すなわち、吸収性本体1010の横方向中央部に、縦方向(吸収性本体1010の長手方向)に沿った帯状のインジケータ1070が配置されている。
【0222】
胴回り部材1020は、肌側シート1021と、肌側シート1021の非肌側に隣接して積層された非肌側シート1022と、肌側シート1021と非肌側シート1022との厚さ方向の間に配置された胴回り弾性部材1035,1045とを有する(
図18B参照)。肌側シート1021は、おむつ1001の肌側シート1031,1041と同様の疎水性不織布である。非肌側シート1022は、おむつ1001の非肌側シート1032,1042と同様の親水性不織布である。すなわち、おむつ1002において、非肌側シート1022は、肌側シート1021よりも親水性の高い不織布である。そして、胴回り弾性部材1035,1045は、おむつ1001と同様に糸ゴム等によって構成され、左右方向に伸長された状態で、肌側シート1021と非肌側シート1022との間に取り付けられている。
【0223】
第6実施形態のおむつ1002でも、おむつ1001と同様の効果が得られる。すなわち、おむつ1002でも、液不透過性シート1013a(液不透過性フィルム)よりも肌側にインジケータ1070が配置され、液不透過性シート1013a(液不透過性フィルム)よりも非肌側に非肌側シート1022(親水性不織布)が配置されている。このような構成であれば、非肌側シート1022(親水性不織布)によって吸収された汗等の水分が非肌側から肌側に移動した場合であっても、液不透過性フィルムよりも肌側に配置されているインジケータ1070までは到達し難く、汗等の水分によるインジケータ1070の呈色反応は生じ難くなる。つまり、親水性不織布に含まれる汗等の水分とインジケータ1070とが接触し難くなり、インジケータ1070が排泄液以外の液体を誤検出してしまうことを抑制することができる。また、その他にも、おむつ1002は、基本的に第5実施形態で説明したおむつ1001と略同様の特徴を備えている。
【0224】
また、おむつ1002の外装部材(胴回り部材1020)において、厚さ方向に見たときに、非肌側シート1022(親水性不織布)とインジケータ1070とが重複する部分を有している(
図18B参照)。親水性不織布とインジケータ1070とが重複している部分では、親水性不織布に含まれる水分がインジケータ1070と接触するおそれがあるが、上述のように親水性不織布とインジケータ1070とが液不透過性フィルムを挟んで反対側に配置されていることにより、インジケータ1070による誤検出を抑制することができる。したがって、おむつ1002では、親水性不織布と重複する広い領域にインジケータ1070を配置することが可能となる。すなわち、インジケータ1070の排泄物検出範囲を広く確保しつつ、汗等の水分に起因する誤検出を抑制し易くすることができる。
【0225】
なお、おむつ1002では、厚さ方向に見たときに、外装部材(胴回り部材1020)のうち縦方向における中央位置CLよりも後側の部分(後側胴回り部1040)とインジケータ1070とが重複する部分を有している。後側胴回り部1040は、おむつ1002の着用時において、着用者が汗をかきやすい背側に位置するため、非肌側シート1022(親水性不織布)が汗を吸収して水分を含みやすくなっている。これに対して、おむつ1002では、上述のようにインジケータ1070が液不透過性フィルムを挟んで非肌側シート1022(親水性不織布)の反対側に配置されていることから、着用者の背側において汗等の水分がインジケータ1070と接触してしまうことが抑制される。したがって、着用者が汗をかきやすい背側においても、インジケータ1070の誤検出を効果的に抑制することができる。
【0226】
また、おむつ1002では、吸収性本体1010の全体が、外装部材(胴回り部材1020)の肌側面に重なるように配置されており、厚さ方向に見たときに、インジケータ1070の全体が非肌側シート1022(親水性不織布)と重複している(
図18B参照)。そして、インジケータ1070と非肌側シート1022(親水性不織布)との間には、液不透過性シート1013a(液不透過性フィルム)が設けられている。これにより、インジケータ1070の全領域を、親水性不織布に含まれる水分と接触し難くすることができる。このように、おむつ1002では、インジケータ1070を広い範囲に配置することで排泄物の検出範囲を広げつつも、誤検出を生じ難くすることができる。
【0227】
===第7実施形態===
第7実施形態では、上述の実施形態とは構成の一部が異なるパンツ型おむつ1003(以下、「おむつ1003」とも呼ぶ)について説明する。
図19Aは、展開且つ伸長状態のおむつ1003の平面図である。
図19Bは、
図19AのE-E線での概略断面図である。なお、
図19A及び
図19Bにおける各方向(例えば縦方向や横方向等)は、第5実施形態で定義した各方向と同様である。また、
図19A及び
図19Bは、後述するおむつ2003についても共通して表している。
【0228】
第7実施形態のおむつ1003は、液吸収性の吸収性本体1010と、吸収性本体1010の非肌側に接合された外装部材として胴回り部材1020とを有している。おむつ1003の胴回り部材1020は、
図19A及び
図19Bに示されるように、縦方向(吸収性本体1010の長手方向)に連続するように一体的に構成されている。すなわち、肌側シート1021が縦方向の一方側の端部から他方側の端部に連続する一体的なシート部材として構成されている。一方、縦方向の前側に配置された非肌側シート1032(前非肌側シート)と、縦方向の後側に配置された非肌側シート1042(後非肌側シート)とは、縦方向に非連続な異なるシート部材として構成されている。このような構造のおむつを簡易3ピースタイプの使い捨ておむつとも呼ぶ。また、以下では、おむつ1003の外装部材(胴回り部材1020)のうち、縦方向における中央位置CLよりも前側の部分を前側胴回り部1030とし、中央位置CLよりも後側の部分を後側胴回り部1040として説明を行う(
図19A参照)。
【0229】
図19Aの展開状態のおむつ1003をパンツ型に形成する際には、吸収性本体1010及び胴回り部材1020を、縦方向における中央位置CLを折り位置として二つ折りにする。この二つ折りの状態において互いに対向する前側胴回り部1030と後側胴回り部1040とを、左右方向両側の側部1030sw及び側部1040swにて互いに接合・連結し、一対のサイド接合部50,50を形成する。これにより、
図1のおむつ1(おむつ1001)と同様に、胴回り開口BH及び一対の脚回り開口LH,LHを有するパンツ型状態のおむつ1003となる。
【0230】
おむつ1003において、吸収性本体1010の基本的な構成や機能は、第6実施形態のおむつ1002の吸収性本体1010と略同様であるため、説明は省略する。
【0231】
おむつ1003の外装部材(胴回り部材1020)のうち、前側胴回り部1030は、厚さ方向の肌側において縦方向の一端側(腹側)から他端側(背側)に延びる一枚の肌側シート1021と、縦方向の前側(腹側)において、肌側シート1021の非肌側に隣接して積層された非肌側シート1032と、肌側シート1021と非肌側シート1032との厚さ方向の間に配置された胴回り弾性部材35とを有する。後側胴回り部1040は、前側胴回り部1030と共通の肌側シート1021と、縦方向の後側(背側)において、肌側シート1021の非肌側に隣接して積層された非肌側シート1042と、肌側シート1021と非肌側シート1042との厚さ方向の間に配置された胴回り弾性部材45とを有する。
【0232】
肌側シート1021は、おむつ1001の肌側シート1031,41と同様の疎水性不織布である。非肌側シート1032,1042は、おむつ1001の非肌側シート1032,1042と同様の親水性不織布である。すなわち、おむつ1003において、非肌側シート1032,1042は、肌側シート1021よりも親水性の高い不織布である。そして、胴回り弾性部材1035,1045は、おむつ1001と同様に糸ゴム等によって構成され、左右方向に伸長された状態で、肌側シート1021と非肌側シート1032,1042との間に取り付けられている。
【0233】
第7実施形態のおむつ1003でも、おむつ1001やおむつ1002と同様の効果が得られる。すなわち、おむつ1003でも、液不透過性シート1013a(液不透過性フィルム)よりも肌側にインジケータ1070が配置され、液不透過性シート1013a(液不透過性フィルム)よりも非肌側に非肌側シート1032,1042(親水性不織布)が配置されている。このような構成であれば、非肌側シート1032,1042(親水性不織布)によって吸収された汗等の水分が非肌側から肌側に移動した場合であっても、液不透過性フィルムよりも肌側に配置されているインジケータ1070までは到達し難く、汗等の水分によるインジケータ1070の呈色反応は生じ難い。したがって、親水性不織布に含まれる汗等の水分とインジケータ1070とが接触し難くなり、インジケータ1070が排泄液以外の液体を誤検出してしまうことを抑制することができる。また、その他にも、おむつ1003は、基本的に第6実施形態で説明したおむつ1002と略同様の特徴を備えている。
【0234】
===第8実施形態===
第8実施形態では、吸収性物品の一例として、第5~第7実施形態で説明した「パンツ型おむつ」とは異なる「テープ型おむつ」(以下、「おむつ1004」とも呼ぶ)について説明する。
図20Aは、展開且つ伸長状態のおむつ1004の平面図である。
図20Bは、
図20AのF-F線での概略断面図である。なお、
図20A及び
図20Bにおける各方向(例えば縦方向や横方向等)は、第5実施形態で定義した各方向と同様である。また、
図20A及び
図20Bは、後述するおむつ2004についても共通して表している。
【0235】
図20A及び
図20Bに示すように、おむつ1004は、排泄物を吸収する吸収性コア1011と、吸収性コア1011よりも肌側に位置する液透過性のトップシート1012と、吸収性コア1011よりも非肌側に位置する液不透過性シート1013aと、液不透過性シート1013aよりも非肌側に位置する外装シート1025と、トップシート1012の左右方向における両側部において肌側に接合された一対のサイドシート1018とを有する。また、おむつ1004の左右方向における両側部には、縦方向に伸縮する脚回り弾性部材1017(例えば糸ゴム等)が配置されている。
【0236】
おむつ1004の吸収性コア1011、トップシート1012、及び液不透過性シート1013aは、おむつ1001における吸収性本体1010に相当する部分であり、おむつ1001の吸収性本体1010を構成する吸収性コア1011、トップシート1012、及び液不透過性シート1013aとそれぞれ同様の機能を有する。例えば、液不透過性シート1013aは吸収性コア1011によって吸収された尿等の水分を水蒸気として透過させることが可能な液不透過性フィルムである。
【0237】
おむつ1004の外装シート1025は、おむつ1001における胴回り部材1020に相当する外装部材であり、おむつ1001の胴回り部材1020を構成する非肌側シート1032,1042と同様に、親水性不織布によって構成されている。なお、おむつ1004の外装部材は、おむつ1001における胴回り部材1020と同様の構成を有していてもよい。例えば、親水性不織布からなる外装シート1025の肌側に隣接して疎水性不織布(
図20Bでは不図示)が設けられ、2枚のシート部材によっておむつ1004の外装部材が構成されるのであっても良い。
【0238】
以下では説明の便宜のため、おむつ1004の縦方向における中央位置CLよりも前側の部分を前側胴回り部1030とも呼び、中央位置CLよりも後側の部分を後側胴回り部1040とも呼ぶ(
図20A参照)。
【0239】
一対のサイドシート1018は、トップシート1012と同様の液透過性の不織布であり、該サイドシート1018の左右方向の内側端部には、縦方向に伸縮可能な糸ゴム等の防漏壁弾性部材1016が設けられている。おむつ1004の着用時には、この防漏壁弾性部材1016が発現する収縮力に基づいて、サイドシート1018の左右方向内側端部が着用者の肌側に起立し、おむつ1001と同様に防漏壁部15を形成する。
【0240】
おむつ1004の縦方向における背側(後側胴回り部1040)には、左右方向の両外側に延出する一対のファスニングテープ1026が設けられている。そして、ファスニングテープ1026の自由端側(左右方向の外側)の肌側面には、複数のフック部材(不図示)を備えた面ファスナー1026fが設けられている。また、おむつ1004の縦方向における腹側(前側胴回り部1030)の非肌側面には、おむつ1004の装着時にファスニングテープ1026を係合させるためのターゲットシート1027が設けられている。ターゲットシート1027は、ファスニングテープ1026の面ファスナー1026f(フック部材)と係合可能な部材であり、例えば不織布で形成されている。
【0241】
また、おむつ1004の縦方向における背側(後側胴回り部1040)には、左右方向(横方向)に沿って伸縮する、背側弾性部材1019が設けられている。背側弾性部材1019は、伸縮性不織布等によって形成される帯状の弾性部材であり、左右方向に伸長した状態でおむつ1004に取り付けられている。当該背側弾性部材1019が発現する伸縮力により、着用者の身体におむつ1004を装着させる際に、おむつ1004が着用者の胴回りにフィットしやすくなる。なお、第5実施形態のおむつ1001で説明した胴回り弾性部材1035,1045や、湾曲弾性部材1047と同様に、おむつ1004において、背側弾性部材1019は、インジケータ1070と重複する部分において、伸縮性を発現していないように配置されている。これにより、水分を含んだ外装シート1025(親水性不織布)がインジケータ1070に押し付けられることを抑制し、インジケータ1070の誤検出を生じ難くすることができる。
【0242】
おむつ1004を着用する際には、例えば、
図20Aに示される展開状態のおむつ1004を着用者の股下部に配置して、前側胴回り部1030を着用者の腹側部にあてがい、後側胴回り部1040を着用者の背側部(臀部)にあてがう。そして、一対のファスニングテープ1026,26を着用者の胴回りに沿って背側から腹側に巻き回し、着用者の腹側にて、面ファスナー1026fをターゲットシート1027に係合させる。これにより、おむつ1001と略同様の胴回り開口BH及び一対の脚回り開口LH,LHが形成され、着用者の身体(股下部)に対しておむつ1004の位置を固定することができる。
【0243】
なお、おむつ1004においてターゲットシート1027は必ずしも設けられていなくても良い。例えば、外装シート1025の非肌側面にターゲットシート1027を配置する代わりに、外装シート1025を構成する不織布に対して直接面ファスナー1026fを係合させることによっておむつ1004を着用するようにしても良い。
【0244】
第8実施形態のおむつ1004でも、おむつ1001と同様の効果が得られる。すなわち、おむつ1004でも、液不透過性シート1013a(液不透過性フィルム)よりも肌側にインジケータ1070が配置され、液不透過性シート1013a(液不透過性フィルム)よりも非肌側に外装シート1025(親水性不織布)が配置されている。このような構成であれば、外装シート1025(親水性不織布)によって吸収された汗等の水分が非肌側から肌側に移動した場合であっても、液不透過性フィルムよりも肌側に配置されているインジケータ1070までは到達し難く、汗等の水分によるインジケータ1070の呈色反応は生じ難くなる。したがって、親水性不織布に含まれる汗等の水分とインジケータ1070とが接触し難くなり、インジケータ1070が排泄液以外の液体を誤検出してしまうことを抑制することができる。その他、おむつ1004は、基本的に第5実施形態で説明したおむつ1001と略同様の特徴を備えている。
【0245】
===第9実施形態===
本発明に係る吸収性物品として、使い捨ておむつ(以下、「おむつ2001」とも呼ぶ)を例に挙げて説明する。
【0246】
<おむつ2001の構成>
図21は、展開且つ伸長状態のおむつ2001の平面図である。
図22は、
図21のA-A線での概略断面図である。
図23Aは、吸収性本体2010の平面図であり、
図23Bは、吸収性本体2010の概略断面図である。おむつ2001は、以下で説明する「後処理テープ2080(貼付物)」を備えていること以外は、基本的に第1実施形態のおむつ1と略同様の構成を有するパンツ型使い捨ておむつである。したがって、おむつ2001の後処理テープ2080以外の構成については、詳細な説明を省略する。また、おむつ2001では、
図15A~
図15Cで説明したのと同様に、外装部材(前側胴回り部2030、後側胴回り部2040)の非肌側面に親水性の高い親水性不織布が設けられていることにより、着用者の肌から汗等の水分を吸収し、吸収した水分を大気に蒸散させることが可能となっている。
【0247】
図21及び
図22に示されるように、後側胴回り部2040の非肌側面に、後述する後処理テープ2080(貼付物)が貼付されている。なお、おむつ2001に貼付される貼付物として、後処理テープ2080以外にも、おむつの前後やサイズ等の情報を表示する情報表示シールが貼付されていても良い。また、貼付物が貼付されるのは、外装部材のうち後側胴回り部2040には限られず、前側胴回り部2030に貼付物が貼付されていても良い。
【0248】
また、第9実施形態では、液不透過性シート2013aのことを「通気性フィルム」とも呼ぶ。すなわち、通気性フィルムは、液体は透過させない「防漏性」を有するが、水蒸気や空気を透過させる「透湿性」や「通気性」を有するシート部材である。
【0249】
(後処理テープ2080)
おむつ2001の後側胴回り部2040の非肌側面には、おむつ2001を廃棄する際に使用される後処理テープ2080が設けられている。
図24は、後側胴回り部2040の非肌側面に設けられた後処理テープ2080について表す断面模式図である。
図25Aは、後処理テープ2080を展開した状態のおむつ2001を背側から見た概略斜視図である。
図25Bは、
図25Aの状態のおむつ2001を丸めて廃棄処理状態にした様子を示す概略斜視図である。なお、
図24及び
図25では、説明の便宜上、弾性部材2045等を省略して簡略化して示している。
【0250】
後処理テープ2080は、
図21や
図25に示されるように上下方向に沿った長い帯状の部材で、後側胴回り部2040の非肌側シート2042の非肌側面に接着剤等によって貼付(接着)されている。後処理テープ2080には、テープ本体2081、テープ把持部2082、テープ把持部材2083、貼付部2084、複数のテープ接着部2085が設けられている。矩形形状の後処理テープ2080の長手方向及び短手方向を、それぞれおむつ2001の上下方向(縦方向)及び左右方向(横方向)に沿わせた状態で、後処理テープ2080の長手方向の一端部2080eにはテープ把持部2082が設けられ、長手方向の他端部2080fには貼付部2084が設けられている。
【0251】
後処理テープ2080の一端部2080eは、
図25Aのように展開することによって胴回り開口部BH側へと延長可能となっている。おむつ2001を廃棄する際におむつ2001をコンパクトな形態にするために、例えば、後側胴回り部2040の左右方向の両端部を腹側に向かってそれぞれ折り畳み、股下側からおむつ2001を胴回り開口側に丸めることにより、
図25Bに示す状態となる。このとき、後処理テープ2080を、胴回り開口部BHを超えた部分1pにテープ接着部2085で接着させることによって、おむつ2001をコンパクトな形態に維持することができる。
【0252】
後処理テープ2080の他端部2080fは、接着剤によって形成される貼付部2084によって、後側胴回り部2040の非肌側面(非肌側シート2042)に固定されている。貼付部2084は、
図25Aのように後処理テープ2080を展開する際に一端部2080eが引っ張られた場合であっても、後処理テープ2080が後側胴回り部2040から離脱しない、すなわち貼付部2084が剥がれないことが望ましい。
【0253】
未使用状態の後処理テープ2080は、例えば、
図24に示すように、長手方向にZ字状に折り畳まれた状態となっている。テープ本体2081は、Z字状に折り畳まれることで、最も肌側に位置する第1層2081x、最も非肌側に位置する第3層2081z、第1層と第3層の間に位置する第2層2081yの3つの層を有している。Z字状に折り畳まれた状態において、厚さ方向に隣接する第1層2081xの非肌側面と第2層2081yの肌側面との間、及び、厚さ方向に隣接する第2層2081yの非肌側面と第3層2081zの肌側面との間には、剥離可能な接着強度を有するテープ接着部2085がそれぞれ設けられている。つまり、テープ接着部2085によって、第1層2081xと第2層2081yとの接着、及び第2層2081yと第3層2081zとの接着は、剥離後に再接着可能な状態となっている。
【0254】
このテープ接着部2085によって、未使用の後処理テープ2080は、Z字状の折り畳み状態に仮固定されている。なお、テープ接着部2085は、必ずしも第1層2081xの非肌側面と第2層2081yの肌側面との間、及び第2層2081yの非肌側面と第3層2081zの肌側面との間のそれぞれ全域に亘って設ける必要はない。各テープ接着部2085は、未使用の後処理テープ2080をZ字状の折り畳み状態に仮固定することができる接着強度を備えていればよく、任意の接着範囲とすることができる。また、テープ接着部2085は、全てが接着剤によるものでなくてもよい。例えば、第2層2081yと第3層2081zとの仮固定が、接着剤の代わりに圧搾や圧着等によって行われるのであっても良い。
【0255】
そして、
図25Aの2点鎖線のように長手方向(上下方向)にテープ把持部2082を引っ張ると、テープ接着部2085による面同士の密着状態が解除されて、後処理テープ2080が展開され、上側の胴回り開口部BHの方へ延長することができる。
【0256】
テープ本体2081は、後処理テープ2080の基材となる部材であり、ポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂素材を例示できる。本実施形態におけるテープ本体2081は、両面に平滑面を有した透明の樹脂素材を用いている。テープ本体2081は、例えば、紙等のパルプ素材でもよく、両面に平滑面を有した形態に限らず、例えば、不織布や織布等の繊維集合体でも良い。ただし、テープ接着部2085の接着によってZ状に折り畳まれた状態を維持しつつ、後処理テープ2080同士の面同士の密着状態を解除可能とするために、ポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂素材で、両面に平滑面を有した形態とすることがより好ましい。
【0257】
テープ把持部2082は、おむつ2001の後処理を行う者が後処理テープ2080を把持する部分である。テープ把持部2082は、後処理テープ2080の端部に設けられており、テープ把持部2082には、テープ把持部材2083が設けられている。詳しくは、テープ本体2081の肌側面に、テープ把持部材2083が接着剤(不図示)等で剥離不能に固定されており、テープ把持部2082の外周面には接着剤が付着していない。テープ把持部材2083は、無色透明のポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂素材である。テープ把持部2082は、例えば、単にテープ本体2081の一端部2080eに接着剤を設けない部分をテープ把持部2082としてもよいし、テープ本体2081の一端部2080eを肌側に折り返してテープ本体2081同士を貼り付けた部分をテープ把持部2082としてもよい。
【0258】
なお、おむつ2001の後処理テープ2080自体は、長手方向にほぼ非伸縮としたが、これに限られない。テープ本体2081がゴム等の弾性素材で形成されて、長手方向に伸縮性を有していてもよい。さらに、後処理テープ2080は、必ずしもZ字状に折り畳まなくてもよく、2つ折りのV字状でもよいし、4つ折りのW字状でも、或いはW字状よりも多い折り曲げ回数で折り畳んでもよい。
【0259】
<おむつ2001の後処理時の操作について>
次に、おむつ2001の使用後に廃棄処理を行う際に生じる問題点について説明する。使用後のおむつ2001を廃棄する際には、
図25A及び
図25Bで説明したように、後処理テープ2080を展開し、排泄物を吸収した吸収性本体2010を内側にしておむつ2001を丸めた状態で、後処理テープ2080を用いて固定する後処理操作が行われる。後処理操作では、折り畳まれた状態の後処理テープ2080を展開するために、テープ把持部2082(一端部2080e)を非肌側に引っ張る動作が行われるが、このとき、貼付部2084が剥がれてしまうおそれがある。つまり、テープ把持部2082を引っ張った際に、後側胴回り部2040の非肌側シート2042から後処理テープ2080(貼付物)が離脱してしまうおそれがある。
【0260】
図26A及び
図26Bは、おむつ2001の後処理操作において後処理テープ2080が離脱する要因について説明する図である。
【0261】
図26Aは、第1の要因として、貼付部2084の粘着力の低下の影響について説明する図である。上述したように、後処理テープ2080では、テープ本体2081のうち最も肌側の第1層2081xが、接着剤によって形成された貼付部2084を介して後側胴回り部2040の非肌側シート2042に取り付けられている。すなわち、第1層2081xと非肌側シート2042とが対向した状態で、貼付部2084の粘着力によって互いに固定されている。この状態から後処理テープ2080のテープ把持部2082(一端部2080e)が非肌側に引っ張られると、非肌側シート2042からテープ本体2081の第1層2081x(貼付部2084)を引き剥がす方向に力が作用する。
【0262】
おむつ2001では、非肌側シート2042として、所定の油剤を用いて親水処理を施された親水性不織布が用いられており、非肌側シート2042には油剤が含まれている。そのため、当該油剤の影響により、貼付部2084が剥がれやすくなる場合がある。すなわち、油剤が含まれていない不織布(疎水性不織布)に貼付されている場合と比較して、貼付部2084の粘着力が低下してしまう場合がある。この場合、
図26Aのように、非肌側シート2042の非肌側面から貼付部2084が剥がれて後処理テープ2080が離脱してしまうおそれがある。
【0263】
次に、
図26Bは、第2の要因として、親水性不織布の繊維間の結合の影響について説明する図である。一般に、不織布は、複数の繊維が絡まり合うことによって形成されており、繊維の一本あたりについて、他の繊維と絡まった箇所(「交絡点」とも言う)が多く形成されているほど、繊維間の結合力が強くなり、不織布が破れ難くなる。このような不織布の表面に貼付されている後処理テープ2080(貼付物)が、おむつ2001の後処理動作において非肌側に引っ張られると、非肌側シート2042から貼付部2084を引き剥がす方向に力が作用する。
【0264】
そして、後処理テープ2080が引っ張られた際に、不織布を構成する繊維同士の結合が切れて、不織布の一部が破れてしまう場合がある。例えば、非肌側シート2042(親水性不織布)から貼付部2084を引き剥がす方向に力が作用したときに、非肌側シート2042と貼付部2084との間の粘着力よりも、非肌側シート2042における繊維間の結合力が弱い場合、非肌側シート2042が破れてしまう場合がある。すなわち、非肌側シート2042の表面付近における繊維同士の絡まり(交絡)が解けて、
図26Bのように非肌側シート2042の表面付近が破れて分離してしまうおそれがある。その結果、後処理テープ2080(貼付部2084)が非肌側シート2042から離脱してしまうおそれがある。
【0265】
このような問題に対して、本実施形態のおむつ2001では、後処理テープ2080が貼付される非肌側シート2042(親水性不織布)を構成する繊維の長さを調整することにより、後処理操作時に後処理テープ2080が離脱してしまうことを抑制している。
【0266】
図27は、おむつ2001の非肌側シート2042(親水性不織布)を構成する繊維と後処理テープ2080との関係について説明する図である。本実施形態のおむつ2001では、非肌側シート2042(親水性不織布)が、後処理テープ2080(貼付物)の幅寸法よりも長い繊維長の繊維を有するように構成されている。ここで、貼付物の幅寸法とは、貼付物の縦方向及び横方向のうち小さい方の寸法のことである。おむつ2001において、貼付物が、縦長帯状の後処理テープ2080である場合、後処理テープ2080の横方向における寸法が、貼付物の幅寸法となる。
【0267】
図27の場合、被貼付物である非肌側シート2042(親水性不織布)を構成する繊維のうち、ある繊維fHyの自然状態における繊維長LfHyが、貼付物である後処理テープ2080の横方向における寸法W2080よりも長くなっている(LfHy>W2080)。親水性不織布を構成している繊維fHyの繊維長LfHyが長いほど、他の繊維との交絡点の数が増えて繊維同士が絡まりやすく、結合力が強くなるため、親水性不織布が破れにくくなる。また、繊維長LfHyが後処理テープ2080の幅W2080よりも長いことにより、後処理テープ2080の幅W2080よりも広い範囲で繊維同士の絡まりが形成されやすくなる。すなわち、W2080よりも広い領域に繊維の交絡点が形成されているため、後処理テープ2080を引っ張る方向に力が作用した場合であっても、該後処理テープ2080が貼付されている部分において、親水性不織布を破れ難くすることができる。したがって、少なくとも
図26Bで説明したような、親水性不織布を構成する繊維間の結合力の弱さに起因する後処理テープ2080の剥がれを生じ難くすることができる。これにより、非肌側シート2042(親水性不織)から後処理テープ2080(貼付物)を剥がれ難くすることができる。
【0268】
さらに、
図27では、繊維fHyが、後処理テープ2080(貼付物)が引っ張られる方向(縦方向)と直交する方向(横方向)に跨ぐように配置されている。言い換えると、横方向において、繊維fHyの左側の端fHyelは、後処理テープ2080の左側の端2080elよりも左側に位置し、繊維fHyの右側の端fHyerは、後処理テープ2080の右側の端2080erよりも右側に位置している。この場合、繊維fHyは、左右方向において後処理テープ2080の両端2080el,2080erよりも外側の領域において、他の繊維との交絡点を有している可能性が高い。したがって、親水性不織布のうち後処理テープ2080が貼付されている幅W2080の部分よりも左右方向の両外側の領域において、繊維同士の交絡が解けにくくなり、結合力が強くなる。これにより、後処理テープ2080(貼付部2084)を引っ張る力に対して、親水性不織布がより破れ難くなり、後処理テープ2080の離脱を抑制し易くすることができる。
【0269】
なお、非肌側シート2042(親水性不織布)を構成する繊維が配置されている方向は、
図27のような横方向に沿った方向には限られず、繊維の一部がそれ以外の方向(例えば縦方向)に沿って配置されている可能性もある。しかしながら、上述したように、後処理テープ2080(貼付物)が引っ張られる方向(縦方向)と直交する方向(横方向)に貼付物を跨ぐように繊維が配置されていれば、親水性不織布を破れ難くすることができる。すなわち、貼付物を親水性不織布から剥がれ難くすることができる。したがって、親水性不織布の繊維配向は、後処理テープ2080(貼付物)が引っ張られる方向と直交する方向(横方向)に沿った方向であることが望ましい。言い換えると、貼付物を横方向に跨いで配置された単位体積当たりの繊維の数が、貼付物を縦方向に跨いで配置された単位体積当たりの繊維の数よりも大きいことが望ましい。このような構成であれば、貼付物をより剥がれ難くすることできる。
【0270】
おむつ2001において、非肌側シート2042(親水性不織)に貼付された貼付物である後処理テープ2080は、おむつ2001使用後の後処理操作を行う際に、親水性不織布から引き剥がす方向に引っ張られることを前提として設けられている。そのため、貼付部2084が簡単に剥がれてしまうと、後処理テープ2080の機能が失われ、使用者(ユーザー)は、後処理操作を快適に行うことができなくなってしまう。これに対して、本実施形態では、上述したように親水性不織布を構成する繊維の繊維長及びその配向と後処理テープ2080の配置を調整することで、おむつ2001の後処理操作時に非肌側シート2042(親水性不織)から後処理テープ2080が離脱してしまうことを抑制し易くなっている。したがって、おむつ2001の後処理操作に係る使用者のストレスや不快感を軽減することができる。
【0271】
また、後処理テープ2080(貼付物)を親水性不織布から離脱させ難くするために、後処理テープ2080の構造自体を変更しても良い。
図28は、後処理テープ2080の変形例について表す断面模式図である。
図29A及び
図29Bは、後処理操作を行う際に、変形例の後処理テープ2080に作用する力について説明する図である。
【0272】
図24で説明した後処理テープ2080は、Z字状に折り畳まれた一本のテープ基材であるテープ本体2081によって構成されていたが、変形例の後処理テープ2080は、
図28に示されるように、第1部材2086、及び、その非肌側に設けられた第2部材2087の2つの異なるテープ基材によって構成されている。但し、これ以外の他の基材(例えば第3部材)が設けられていても良い。テープ基材となる部材2086,2087及びそれらを接合する接合部2088以外の構成は、基本的に
図24で説明した後処理テープ2080とほぼ同様である。
【0273】
第1部材2086及び第2部材2087は、共に、上述したテープ本体2081と同様にポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂素材からなる帯状の部材である。第1部材2086は貼付部2084によって後側胴回り部2040の非肌側シート2042(親水性不織布)に固定されている。一方、第2部材2087は、V字状に折り畳まれ、肌側に位置する第1層2087yと、非肌側に位置する第2層2087zの2つの層を有している。第1層2087yと第2層2087zとは、テープ接着部2085によって剥離可能に接着されている。一方、第1部材2086と第2部材2087とは、接着剤等で形成された接合部2088によって剥離不能に接合されている。なお、接合部2088は、第1部材2086の長手方向における一方側の端と他方側の端との間に設けられている。言い換えると、接合部2088は、
図28の上下方向において第1部材2086の上端及び下端から所定の距離だけ離間して設けられている。つまり、第1部材2086と第2部材2087とは、
図29に示されるように、上下方向の上端部RU及び下端部RDにおいて互いに接合されていない部分を有している。
【0274】
変形例の後処理テープ2080を用いておむつ2001の後処理操作を行う際には、先ず、テープ把持部材2083(長手方向の一端部2080e)を非肌側に引っ張ってテープ接着部2085を剥離させ、後処理テープ2080を長手方向に展開させる。このとき、第2部材2087は、
図29Aのように接合部2088を起点として第1部材2086から非肌側に立ち上がった状態となっている。この状態から、第2部材2087(テープ把持部材2083)がさらに非肌側に引っ張られると、第1部材2086の長手方向(
図29Aでは上下方向)における両端部の間に位置する部分(接合部2088が設けられた部分)が非肌側に引っ張られる。したがって、第1部材2086(貼付部2084)に対する引っ張り力は、接合部2088を中心として長手方向の両側に分散して作用する。
【0275】
図24で説明した後処理テープ2080は、一体のテープ本体2081がZ字状に折り畳まれた構成であった。そのため、後処理操作時にテープ把持部材2083(一端部2080e)が引っ張られると、貼付部2084に対する引っ張り力は、テープ本体2081の第1層2081xのうち、上下方向の上端部(
図24において、第1層2081xと第2層2081yとの境界部)に集中して作用する。すなわち、貼付部2084の長手方向の1箇所(上下方向の上端部)に引っ張り力が集中しやすくなっていた。これに対して、変形例の後処理テープ2080では、貼付部2084に対する引っ張り力を長手方向(上下方向)に分散させることができるため、貼付部2084の1箇所に大きな力が作用する場合と比較して、貼付部2084を剥がれ難くすることができる。
【0276】
図29Aの状態から、第2部材2087(テープ把持部材2083)がさらに非肌側に引っ張られると、第1部材2086のうち接合部2088によって第2部材2087と接着されている部分が、
図29Bのように非肌側に引っ張られる。一方、第1部材2086のうち、接合部2088よりも長手方向の一方側(上下方向の上側)の端部RU、及び、接合部2088よりも長手方向の他方側(上下方向の下側)の端部RDは、貼付部2084によって非肌側シート2042(親水性不織布)に貼付されており、当該端部RU及び端部RDの部分で引っ張り力に対抗することができる。
【0277】
つまり、
図29Bでは、第1部材2086について、第2部材2087による引っ張り力が作用する部分(接合部2088の部分)の長手方向における両側部RU,RDに、それぞれ非肌側シート2042(親水性不織)との接着部(貼付部2084)が設けられている。したがって、第1部材2086に作用する引っ張り力に対して、その両側の2か所の貼付部2084で当該引っ張り力に対抗することができるため、第1部材2086をより剥がれ難くすることができる。これにより、非肌側シート2042(親水性不織)から後処理テープ2080が離脱し難くなり、おむつ2001の後処理操作をより容易に行うことができる。
【0278】
図30は、
図21の領域Bについて拡大して表す平面図であり、後処理テープ2080が貼付されている部分における非肌側シート2042の表面の状態について説明する図である。同
図30に示されるように、非肌側シート2042(親水性不織)の表面には、該非肌側シート2042を厚さ方向に圧搾する複数の圧搾部2042eが設けられている。圧搾部2042eは親水性不織布を製造する際に所謂エンボス加工を施すことによって形成され、このような圧搾部2042eが設けられることにより、親水性不織布の強度を高めることができる。
図30において、各々の圧搾部2042eは、例えば直径0.5mm程度の円形であり、隣り合う圧搾部2042e,2042e同士の間隔G2042eが2mm程度の格子状となるように並んで配置されている。これにより、非肌側シート2042が破れにくくなり、
図26Bで説明したような後処理テープ2080(貼付物)の離脱を生じ難くすることができる。
【0279】
なお、非肌側シート2042(親水性不織)に形成される複数の圧搾部2042e,2042e同士の間隔の最小値G2042eは、該親水性不織を構成する繊維fHyの繊維長LfHyよりも短いことが望ましい(G2042e<LfHy)。間隔G2042eが繊維長LfHyよりも短ければ、繊維fHyと重複する位置に圧搾部2042eが形成される可能性が高くなる。すなわち、圧搾部2042eを形成する際に繊維fHy自体が圧搾される可能性が高くなる。繊維fHyが圧搾された部分では、繊維fHyと他の繊維とが圧着しやすくなるため、繊維同士が絡み合って交絡しているだけの場合と比較して、繊維同士の結合力がより強固になり、親水性不織布が破れにくくなる。これにより、貼付物をより剥がれ難くすることができる。
【0280】
また、非肌側シート2042(親水性不織)の厚さ方向に見たときに、後処理テープ2080(貼付物)と非肌側シート2042(親水性不織)とが重複している部分に、圧搾部2042eが少なくとも一つ配置されていることが望ましい。上述したように、圧搾部2042eが配置されている部分では親水性不織の強度が高くなり、不織布が破れにくくなる。したがって、そのような破れにくい部分に貼付物が貼付されていることにより、貼付物が剥がれてしまうことを抑制し易くすることができる。本実施形態では、
図30に示されるように、後処理テープ2080が貼付されている領域(貼付部2084)に複数の圧搾部2042eが配置されているため、後処理テープ2080を離脱し難くすることができる。
【0281】
このとき、後処理テープ2080の幅W2080(貼付部2084の幅でもある)が、圧搾部2042e同士の間隔G2042eよりも大きいことがより望ましい(W2080>G2042e)。後処理テープ2080の幅W2080が圧搾部2042e同士の間隔G2042eよりも大きければ、後処理テープ2080の横方向(短手方向)において、少なくとも1つの圧搾部2042eが配置され、さらに2以上の圧搾部2042eが配置される可能性が高くなる。したがって、上述のように後処理テープ2080(貼付物)が貼付されている部分において繊維同士の結合力が強くなり、親水性不織布が破れ難くなる。これによって、後処理テープ2080をより離脱し難くすることができる。
【0282】
また、非肌側シート2042(親水性不織)の厚さ方向に見たときに、後処理テープ2080(貼付物)と非肌側シート2042(親水性不織)とが重複している部分に、開孔部2042hが少なくとも一つ配置されていることが望ましい。開孔部2042hが配置されている部分では、貼付部2084を形成している接着剤が、非肌側シート2042(親水性不織)の肌側に配置されている肌側シート41(疎水性不織)に付着することになる。すなわち、開孔部2042hの部分では、油剤を含んでいない疎水性不織布と後処理テープ2080(貼付物)とが直接接着されることとなり、油剤を含んだ親水性不織布と接着される場合よりも接着力を強めることができる。したがって、開孔部2042hと貼付部2084とが重複していない場合と比較して、後側胴回り部2040から後処理テープ2080(貼付部2084)が剥がれてしまうことを抑制し易くすることができる。
【0283】
===第10実施形態===
第10実施形態では、第9実施形態とは構成の一部が異なるパンツ型おむつ2002(以下、「おむつ2002」とも呼ぶ)について説明する。おむつ2002は、
図18A及び
図18Bで説明したおむつ1002と略同様の構成を有している。但し、おむつ2002には、インジケータ1070が設けられている必要は無く、後処理テープ2080が設けられているものとする。
【0284】
おむつ2002の後側胴回り部2040の非肌側シート2022(親水性不織布)には、おむつ2002の後処理操作を行う際に用いられる後処理テープ2080(貼付物)が貼付されている。後処理テープ2080の機能や構成は、第9実施形態で説明した後処理テープ2080と略同様であるため、説明は省略する(
図24及び
図28等参照)。
【0285】
第10実施形態のおむつ2002でも、おむつ2001と同様の効果が得られる。すなわち、おむつ2002において、後側胴回り部2040の非肌側シート2022を構成する親水性不織布は、後処理テープ2080(貼付物)の縦方向及び横方向における寸法のうち小さい方の寸法よりも繊維長が長い繊維を有している。このような構成であれば、親水性不織布を構成している複数の繊維同士が絡まりやすく、結合力が強くなるため、親水性不織布が破れにくくなる。また、繊維長が後処理テープ2080の幅よりも長いことにより、後処理テープ2080が貼付されている領域の外側でも繊維同士が交絡しやすくなるので、後処理テープ2080が引っ張られた場合であっても、引っ張り力に抗して親水性不織布が破れにくくなる。したがって、非肌側シート2022(親水性不織)から後処理テープ2080(貼付物)を剥がれ難くすることができる。また、その他にも、おむつ2002は、基本的に第9実施形態で説明したおむつ2001と略同様の特徴を備えている。
【0286】
===第11実施形態===
第11実施形態では、上述の実施形態とは構成の一部が異なるパンツ型おむつ2003(以下、「おむつ2003」とも呼ぶ)について説明する。おむつ2003は、
図19A及び
図19Bで説明したおむつ1003と略同様の構成を有している。但し、おむつ2003には、インジケータ1070が設けられている必要は無く、後処理テープ2080が設けられているものとする。
【0287】
おむつ2003の後側胴回り部2040の非肌側シート2042(親水性不織布)には、おむつ2003の後処理操作を行う際に用いられる後処理テープ2080(貼付物)が貼付されている。後処理テープ2080の機能や構成は、第9実施形態で説明した後処理テープ2080と略同様であるため、説明は省略する(
図24及び
図28等参照)。
【0288】
第11実施形態のおむつ2003でも、おむつ2001と同様の効果が得られる。すなわち、おむつ2003において、後側胴回り部2040の非肌側シート2042を構成する親水性不織布は、後処理テープ2080(貼付物)の縦方向及び横方向における寸法のうち小さい方の寸法よりも繊維長が長い繊維を有している。このような構成であれば、親水性不織布を構成している複数の繊維同士が絡まりやすく、結合力が強くなるため、親水性不織布が破れにくくなる。また、繊維長が後処理テープ2080の幅よりも長いことにより、後処理テープ2080が貼付されている領域の外側でも繊維同士が交絡しやすくなるので、後処理テープ2080が引っ張られた場合であっても、引っ張り力に抗して親水性不織布が破れにくくなる。したがって、非肌側シート2042(親水性不織)から後処理テープ2080(貼付物)を剥がれ難くすることができる。また、その他にも、おむつ2003は、基本的に第9実施形態で説明したおむつ2001と略同様の特徴を備えている。
【0289】
===第12実施形態===
第12実施形態では、吸収性物品の一例として、第9~第11実施形態で説明した「パンツ型おむつ」とは異なる「テープ型おむつ」(以下、「おむつ2004」とも呼ぶ)について説明する。おむつ2004は、
図20A及び
図20Bで説明したおむつ1004と略同様の構成を有している。但し、おむつ2004には、インジケータ1070が設けられている必要は無く、後処理テープ2080が設けられているものとする。
【0290】
おむつ2004の後側胴回り部2040の外装シート2025(親水性不織布)には、おむつ2004の後処理操作を行う際に用いられる後処理テープ2080(貼付物)が貼付されている。後処理テープ2080の機能や構成は、第9実施形態で説明した後処理テープ2080と略同様であるため、説明は省略する(
図24及び
図28等参照)。
【0291】
第12実施形態のおむつ2004でも、おむつ2001と同様の効果が得られる。すなわち、おむつ2004において、後側胴回り部2040の外装シート2025を構成する親水性不織布は、後処理テープ2080(貼付物)の縦方向及び横方向における寸法のうち小さい方の寸法よりも繊維長が長い繊維を有している。このような構成であれば、親水性不織布を構成している複数の繊維同士が絡まりやすく、結合力が強くなるため、親水性不織布が破れにくくなる。また、繊維長が後処理テープ2080の幅よりも長いことにより、後処理テープ2080が貼付されている領域の外側でも繊維同士が交絡しやすくなるので、後処理テープ2080が引っ張られた場合であっても、引っ張り力に抗して親水性不織布が破れにくくなる。したがって、外装シート2025(親水性不織)から後処理テープ2080(貼付物)を剥がれ難くすることができる。また、その他にも、おむつ2004は、基本的に第9実施形態で説明したおむつ2001と略同様の特徴を備えている。
【0292】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0293】
1 おむつ(吸収性物品、パンツ型おむつ)(第1実施形態)、
2 おむつ(吸収性物品、パンツ型おむつ)(第2実施形態)、
3 おむつ(吸収性物品、パンツ型おむつ)(第3実施形態)、
4 おむつ(吸収性物品、テープ型おむつ)(第4実施形態)、
10 吸収性本体、
11 吸収性コア、11b コアラップシート、11c くびれ部、11s スリット部、
12 トップシート、
13 バックシート、13a 液不透過性シート、13b 外装シート、
15 防漏壁部、16 防漏壁弾性部材、17 脚回り弾性部材、
18 サイドシート、
20 胴回り部材、
21 肌側シート(疎水性不織布)、
22 非肌側シート(親水性不織布)、
25 外装シート(親水性不織布)、
26 ファスニングテープ、26f 面ファスナー、27 ターゲットシート、
30 前側胴回り部、30sw 側部、
31 肌側シート(疎水性不織布)、
32 非肌側シート(親水性不織布)、32f 折り返し部、32h 開孔部、
35 胴回り弾性部材、
36 肌面シート、
40 後側胴回り部、40b 臀部カバー、40sw 側部、
41 肌側シート(疎水性不織布)、
42 非肌側シート(親水性不織布)、42f 折り返し部、42h 開孔部、
45 胴回り弾性部材、
46 肌面シート、47 湾曲弾性部材、
50 サイド接合部、
60 溶着部、
60s 溶着部対、
1001 おむつ(吸収性物品、パンツ型おむつ)(第5実施形態)、
1002 おむつ(吸収性物品、パンツ型おむつ)(第6実施形態)、
1003 おむつ(吸収性物品、パンツ型おむつ)(第7実施形態)、
1004 おむつ(吸収性物品、テープ型おむつ)(第8実施形態)、
1010 吸収性本体、
1011 吸収性コア、1011b コアラップシート、1011c くびれ部、
1012 トップシート、
1013 バックシート、
1013a 液不透過性シート(液不透過性フィルム)、1013b 外装シート、
1015 防漏壁部、1016 防漏壁弾性部材、1017 脚回り弾性部材、
1018 サイドシート、1019 背側弾性部材、
1020 胴回り部材、
1021 肌側シート(疎水性不織布)、
1022 非肌側シート(親水性不織布)、
1025 外装シート(親水性不織布)、
1026 ファスニングテープ、1026f 面ファスナー、
1027 ターゲットシート、
1030 前側胴回り部、1030sw 側部、
1031 肌側シート(疎水性不織布)、
1032 非肌側シート(親水性不織布)、1032f 折り返し部、
1032h 開孔部、
1035 胴回り弾性部材、
1036 肌面シート、
1040 後側胴回り部、1040b 臀部カバー、1040sw 側部、
1041 肌側シート(疎水性不織布)、
1042 非肌側シート(親水性不織布)、1042f 折り返し部、
1042h 開孔部、
1045 胴回り弾性部材、
1046 肌面シート、1047 湾曲弾性部材、
1050 サイド接合部、
1060 溶着部、
1060s 溶着部対、
1070 インジケータ、
2001 おむつ(吸収性物品、パンツ型おむつ)(第9実施形態)、
2002 おむつ(吸収性物品、パンツ型おむつ)(第10実施形態)、
2003 おむつ(吸収性物品、パンツ型おむつ)(第11実施形態)、
2004 おむつ(吸収性物品、テープ型おむつ)(第12実施形態)、
2010 吸収性本体、
2011 吸収性コア、2011b コアラップシート、2011c くびれ部、
2012 トップシート、
2013 バックシート、
2013a 液不透過性シート(通気性フィルム)、2013b 外装シート、
2015 防漏壁部、2016 防漏壁弾性部材、2017 脚回り弾性部材、
2018 サイドシート、2019 背側弾性部材、
2020 胴回り部材、
2021 肌側シート(疎水性不織布)、
2022 非肌側シート(親水性不織布)、
2025 外装シート(親水性不織布)、
2026 ファスニングテープ、2026f 面ファスナー、
2027 ターゲットシート、
2030 前側胴回り部、2030sw 側部、
2031 肌側シート(疎水性不織布)、
2032 非肌側シート(親水性不織布)、2032f 折り返し部、
2032h 開孔部、
2035 胴回り弾性部材、
2036 肌面シート、
2040 後側胴回り部、2040b 臀部カバー、2040sw 側部、
2041 肌側シート(疎水性不織布)、
2042 非肌側シート(親水性不織布)、2042f 折り返し部、
2042e 圧搾部、2042h 開孔部、
2045 胴回り弾性部材、
2046 肌面シート、2047 湾曲弾性部材、
2050 サイド接合部、
2060 溶着部、
2060s 溶着部対、
2080 後処理テープ(貼付物)、
2080e 一端部、2080f 他端部、
2081 テープ本体、2081x 第1層、2081y 第2層、
2081z 第3層、
2082 テープ把持部、2083 テープ把持部材、2084 貼付部、
2085 テープ接着部、2086 第1部材、2087 第2部材、
2087y 第1層、2087z 第2層、
2088 接合部、
BH 胴回り開口、LH 脚回り開口、
CL 中央位置(縦方向、長手方向)