(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-20
(45)【発行日】2025-10-28
(54)【発明の名称】二次電池バインダー、スラリー、電極、二次電池の製造方法、及び二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20251021BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20251021BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20251021BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20251021BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M4/139
C08L101/12
(21)【出願番号】P 2024137841
(22)【出願日】2024-08-19
【審査請求日】2024-12-20
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100224605
【氏名又は名称】畠中 省伍
(72)【発明者】
【氏名】島 宏輝
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-049937(JP,A)
【文献】特開2023-122163(JP,A)
【文献】特開2022-090606(JP,A)
【文献】特開2024-040732(JP,A)
【文献】特開2019-057488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/62
H01M 4/13
H01M 4/139
C08L 101/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系高分子を含み、
前記水系高分子の電解液吸液率(40℃)が1.0%以上5.0%以下であり、
前記水系高分子のGPC-RIによるMw(重量平均分子量)が500000以上であり、
前記水系高分子のGPC-RIによるMw/Mnが5以上15以下である、二次電池バインダー
であって、
前記水系高分子が、酸性官能基の塩を有する繰り返し単位を有する場合、その対カチオンはリチウムイオン、ナトリウムイオン、又はカリウムイオンである、二次電池バインダー。
【請求項2】
前記水系高分子が酸性官能基含有繰り返し単位を有するビニル系重合体である、請求項1に記載の二次電池バインダー。
【請求項3】
前記水系高分子は、
式:
-[CH
2-C(R
1)(C(=O)R
2)]-
[式中、
R
1は、水素原子又はCH
3であり、
R
2は、NH
2、OM(Mは水素原子
、リチウムイオン、ナトリウムイオン、又はカリウムイオンである。)、O(CH
2)
nOH、NH(CH
2)
nOH(nは、それぞれ独立して、1以上6以下)である。]
で表される繰り返し単位(1)を含む、請求項1に記載の二次電池バインダー。
【請求項4】
前記水系高分子は、
式:
-[CH
2-CH(OH)]-
で表される繰り返し単位(2)をさらに含む、請求項3に記載の二次電池バインダー。
【請求項5】
前記水系高分子において、
前記繰り返し単位(1)及び前記繰り返し単位(2)の合計量が40mol%以上であり、
酸性官能基含有繰り返し単位の量が0.8mol%以上であり、
非イオン性繰り返し単位の量が40mol%以上である、請求項4に記載の二次電池バインダー。
【請求項6】
SBRを含む、請求項1に記載の二次電池バインダー。
【請求項7】
請求項1に記載の二次電池バインダー、及び水を含む、スラリー。
【請求項8】
さらに電極活物質を含む、請求項7に記載のスラリー。
【請求項9】
請求項7に記載のスラリーを塗工する工程を含む、二次電池の製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の二次電池バインダー又は前記二次電池バインダー
の熱分解生成物若しくは熱反応生成物を含む電極。
【請求項11】
請求項8に記載のスラリーの加熱乾燥物を含む電極。
【請求項12】
請求項10に記載の電極を備える、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池バインダー、スラリー、電極、二次電池の製造方法、及び二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池の製造工程、特に電極の製造工程において、バインダーを含むスラリーが使用される。近年、環境への影響懸念の観点から、有機溶媒を用いたスラリーから、溶媒を水とした水系スラリーへの関心が高まっている。特許文献1においては、ラテックス系バインダーを含む水系スラリーの使用が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においてバインダーの種類や特性について十分に検討されていない。本開示は、電池の製造及び/又は電池特性に好適に寄与できる新規なバインダー又は当該バインダーを含むスラリーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は以下の態様を含む:
[項1]
水系高分子を含み、
前記水系高分子の電解液吸液率(40℃)が5.0%以下であり、
前記水系高分子のGPC-RIによるMw/Mnが5以上15以下である、二次電池バインダー。
[項2]
前記電解液吸液率(40℃)が1.0%以上である、項1に記載の二次電池バインダー。
[項3]
前記水系高分子が酸性官能基含有繰り返し単位を有するビニル系重合体である、項1又は2に記載の二次電池バインダー。
[項4]
前記水系高分子は、
式:
-[CH2-C(R1)(C(=O)R2)]-
[式中、
R1は、水素原子又はCH3であり、
R2は、NH2、OM(Mは水素原子又は対カチオンである。)、O(CH2)nOH、NH(CH2)nOH(nは、それぞれ独立して、1以上6以下)である。]
で表される繰り返し単位(1)、及び
式:
-[CH2-CH(OH)]-
で表される繰り返し単位(2)
から選択される繰り返し単位を含む、項1~3のいずれか一項に記載の二次電池バインダー。
[項5]
前記水系高分子において、
前記繰り返し単位(1)及び前記繰り返し単位(2)から選択される前記繰り返し単位の量が40mol%以上であり、
酸性官能基含有繰り返し単位の量が0.8mol%以上であり、
非イオン性繰り返し単位の量が40mol%以上である、項4に記載の二次電池バインダー。
[項6]
SBRを含む、項1~5のいずれか一項に記載の二次電池バインダー。
[項7]
項1~6のいずれか一項に記載の二次電池バインダー、及び水を含む、スラリー。
[項8]
さらに電極活物質を含む、項7に記載のスラリー。
[項9]
項7又は8に記載のスラリーを塗工する工程を含む、二次電池の製造方法。
[項10]
項1~6のいずれか一項に記載の二次電池バインダー又は前記二次電池バインダーに由来する成分を含む電極。
[項11]
項7又は8に記載のスラリーの加熱乾燥物を含む電極。
[項12]
項10又は11に記載の電極を備える、二次電池。
【発明の効果】
【0006】
本開示における二次電池バインダー又は当該二次電池バインダーを含むスラリーは、電池又はその製造に好適な一以上の特性を有する。特に本開示における二次電池バインダー又は当該二次電池バインダーを含むスラリーを用いることで、電池の充放電サイクル後の膨張を好適に抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<用語の定義等>
本明細書において、「それぞれ独立して」又はこれと同様の表現が明示的に記載されているか否かに関わらず、例外である旨の記載がある場合を除き、化学構造中に複数出現し得る用語(記号)が定義される場合、出現毎に独立して当該定義が適用される。
【0008】
本明細書において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル又はメタクリル」を意味し、「(メタ)アリル」とは「アリル又はメタリル」を意味する。
【0009】
本明細書において、複数の下限値と複数の上限値が別個に記載されている場合、任意の下限値と上限値を選択し、当該下限値及び当該上限値との組み合わせの範囲の数値範囲を選択できるものとする。
【0010】
<二次電池バインダー>
本開示における二次電池バインダーは、二次電池における電極内部の粒子間の結着性や活物質層と集電体との結着性を高めるため等に用いられる。
【0011】
〔水系高分子〕
本開示における二次電池バインダーは水系高分子を含む。本開示における水系高分子は、単独で水に分散可能であり、特に水溶性である高分子である。
【0012】
[水系高分子の特性等]
水系高分子の特性を以下に示す。
【0013】
(水溶性)
水系高分子2.0gを25℃において100gの水に溶解した際の不溶分が、水系高分子に対して20質量%以下、又は15質量%以下であってよく、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。
【0014】
(分子量等)
【0015】
水系高分子のGPC-RIによるMw(重量平均分子量)は、100000以上、300000以上、500000以上、750000以上、又は1500000以上であってよく、好ましくは500000以上であり、より好ましくは700000以上であり、また、3000000以下、1000000以下、500000以下、250000以下、又は100000以下であってよく、好ましくは1800000以下、より好ましくは1500000以下である。本値は実施例に記載の方法により求められる。
【0016】
水系高分子のGPC-RIによるMw/Mn(分子量分布の広さ)は、5以上15以下である。GPC-RIによるMw/Mnが上記範囲である場合、充放電サイクル後の膨張を好適に抑制できる。Mw/Mnは、好ましくは7.5以上であり、また、好ましくは14以下である。
本値は実施例に記載の方法により求められる。
【0017】
(pH)
水に水系高分子を2質量%の濃度で溶解させたときに得られた水溶液のpH(25℃)は、5.0以上、5.5以上、6.0以上、6.5以上、7.0以上、7.5以上、8.0以上、8.5以上、又は9.0以上であってよく、好ましくは6.5以上であり、より好ましくは7.0以上であり、また、10以下、9.5以下、9.0以下、8.5以下、8.0以下、7.5以下、又は7.0以下であってよく、好ましくは9.0以下、より好ましくは8.0以下である。本値は実施例に記載の方法により求められる。当該水としては通常、イオン交換水が使用される。
pHが上記下限値以上(特に7.0以上(中性~アルカリ))の場合、水系高分子を含む高分子成分の柔軟性が高くなり、活物質の膨張収縮に対しても高い追従性を示し得る。同様に、pHが上記下限値以上であることによりスラリーの分散性が良好となり得る。
pHが上記範囲(特に5.0以上7.5以下)であることにより水系高分子水溶液の粘度安定性が良好となり、電池製造の生産性の観点から好適となる。
【0018】
(比抵抗)
水に水系高分子を2質量%の濃度で溶解させたときに得られた水溶液の比抵抗は、100Ω・cm以上、200Ω・cm以上、300Ω・cm以上、400Ω・cm以上、600Ω・cm以上、800Ω・cm以上、又は1000Ω・cm以上であってよく、好ましくは200Ω・cm以上であり、より好ましくは250Ω・cm以上であり、また、2000Ω・cm以下、1500Ω・cm以下、1000Ω・cm以下、800Ω・cm以下、又は600Ω・cm以下であってよく、好ましくは500Ω・cm以下、より好ましくは400Ω・cm以下である。本値は実施例に記載の方法により求められる。当該水としては通常、イオン交換水が使用される。
【0019】
(酸価)
水に水系高分子を2質量%の濃度で溶解させたときに得られた水溶液の酸価は、0.3mgKOH/g以上、1.0mgKOH/g以上、3.0mgKOH/g以上、10mgKOH/g以上、又は25mgKOH/g以上であってよく、好ましくは0.5mgKOH/g以上、より好ましくは1.0mgKOH/g以上であり、また、50mgKOH/g以下、40mgKOH/g以下、30mgKOH/g以下、20mgKOH/g以下、又は10mgKOH/g以下であってよく、好ましくは15mgKOH/g以下、より好ましくは10mgKOH/g以下である。本値は実施例に記載の方法により求められる。当該水としては通常、イオン交換水が使用される。
【0020】
(電解液吸液率(40℃))
水系高分子の電解液吸液率(40℃)は、5.0%以下である。電解液吸液率が上記範囲である場合、充放電サイクル後の膨張を好適に抑制できる。同様の観点から、好ましくは、4.0%以下であり、好ましくは1.0%以上、より好ましくは2.0%以上である。
電解液吸液率(40℃)が上記範囲である水系高分子は、電解液に膨潤しにくく剛性が比較的高くなる。その結果、バインダー膜の強度が高くなり、電池の膨張抑制効果が好適になると考えられる。本値は実施例に記載の方法により求められる。
【0021】
[水系高分子の構造等]
水系高分子は、一種または二種以上の単量体を重合することにより得られる。水系高分子は、ビニル系重合体であってもよい。ビニル系重合体は、ビニル単量体を重合してなる重合体である。ここで、ビニル単量体は重合性の炭素-炭素二重結合(エチレン性不飽和二重結合)(>C=C<)を有する化合物であればよく、ビニル基、ビニレン基、ビニリデン基、アクリロイル基、メタクリロイル基、又はこれらの誘導体基を含む単量体であってよい。水系高分子は特にアクリロイル基、又はメタクリロイル基を有する単量体から誘導された繰り返し単位を含む(メタ)アクリル系高分子であってよい。
【0022】
水系高分子は、ランダム重合体又はブロック重合体であってもよく、例えばランダム重合体である。
【0023】
(親水性繰り返し単位)
水系高分子は親水性繰り返し単位を有する。親水性繰り返し単位は親水性基を含む。親水性基の例としては、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、硝酸基等のアニオン性基、アミノ基等のカチオン性基、ヒドロキシ基、ポリオキシエチレン基(例えば繰り返し数2以上、5以上、又は10以上)、及びアミド基等の非イオン性親水性基が挙げられる。アニオン性基及びカチオン性基は、遊離酸/塩基の状態でもよいし、その一部又は全部が塩となっていてもよい。
【0024】
本明細書中、アニオン性基又はカチオン性基若しくは当該基を含有する構造(例えば、酸性官能基含有繰り返し単位)について言及する場合、明示的に記載する場合を除き、アニオン性基及びカチオン性基だけではなくその塩も包含するものが意図される。
【0025】
アニオン性基の対カチオンの例としては、金属イオンが挙げられ、好ましくは軽金属イオンであり、より好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオン、又はカリウムイオンであり、特にリチウムイオン又はナトリウムイオンである。対カチオンは1~3価、1~2価、又は1価であってよく、好ましくは1価である。カチオン性基の対アニオンの例としては、リン酸イオン、硝酸イオン、及び硫酸イオン等の無機酸イオン、ハロゲン化物イオン等が挙げられる。水系高分子はアニオン性であってよく、カチオン性基を有していなくてもよい。
【0026】
本開示における水系高分子は、親水性繰り返し単位として、酸性官能基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。酸性官能基はカルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、硝酸基等のアニオン性基であってよく、好ましくはカルボキシ基又はスルホン酸基であり、より好ましくはカルボキシ基である。これら基が塩の状態で存在してもよく、その場合の対カチオンの例としては、上述した金属イオンが好適である。酸性官能基を有する繰り返し単位の例としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、又は(メタ)アリルスルホン酸から誘導される繰り返し単位等が挙げられる。
【0027】
本開示における水系高分子は、非イオン性の親水性繰り返し単位を有していてもよい。非イオン性の親水性繰り返し単位の例としては、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール等が挙げられる。
【0028】
好適な親水性繰り返し単位の例として、
式:
-[CH2-C(R1)(C(=O)R2)]-
[式中、
R1は、水素原子又はCH3であり、
R2は、NH2、OM(Mは水素原子又は対カチオンである。)、O(CH2)nOH、NH(CH2)nOH(nは、それぞれ独立して、1以上6以下)である。]
で表される繰り返し単位(1)、及び
式:
-[CH2-CH(OH)]-
で表される繰り返し単位(2)
から選択される繰り返し単位が挙げられる。
【0029】
繰り返し単位(1)において、R1は、好ましくは水素原子である。
【0030】
繰り返し単位(1)において、R2におけるMは、金属カチオンであってよく、好ましくは軽金属カチオン、より好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオン、又はカリウムイオンであり、特にリチウムイオン又はナトリウムイオンである。Mは1~3価、1~2価、又は1価であってよく、好ましくは1価である。
【0031】
繰り返し単位(1)において、R2におけるnは、6以下、5以下、4以下、3以下、又は2以下であってよく、3以下が好ましく、特に2以下である。
【0032】
繰り返し単位(1)は、R2がNH2基、OH基、ONa基、及びOLi基であるものの少なくとも1つが含まれていることが好ましい。繰り返し単位(1)は、R2がNH2基のみ、R2がOH基のみ、R2がONa基のみ、又はR2がOLi基のみであってもよい。繰り返し単位(1)は、R2がONa基のものとOH基のものを含んでいてもよいし、R2が、OLi基のものとOH基のものとを含んでいてもよいし、NH2基のものとOH基のものを含んでいてもよいし、NH2基のものとOH基のものとONa基のものとを含んでいてもよいし、NH2基のものとOH基のものとONa基のものとOLi基のものとを含んでいてもよいし、R2がOH基のものとOLi基のものとNH2基のものを含んでいてもよい。
【0033】
繰り返し単位(2)は、例えば、ビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等、特に酢酸ビニル)を重合させた後、けん化する方法、ビニルアルコール系繰り返し単位を有する重合体(例えば、ポリビニルアルコール)を反応させる方法等により導入することができる。
【0034】
水系高分子は、(メタ)アクリル酸から誘導された繰り返し単位(特にナトリウム塩又はリチウム塩)を含むことが好ましい。
【0035】
(非親水性繰り返し単位)
水系高分子は非親水性繰り返し単位を有してもよい。非親水性繰り返し単位は親水性基(例えば、イオン性基)を有しない。非親水性繰り返し単位の例として、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、塩化ビニル等から誘導される繰り返し単位等が挙げられる。
【0036】
[水系高分子の組成等]
親水性繰り返し単位の量は、水系高分子中、20mol%以上、40mol%以上、60mol%以上、80mol%以上、又は90mol%以上であってよく、好ましくは20mol%以上、より好ましくは40mol%以上であり、また、100mol%以下、90mol%以下、80mol%以下、又は70mol%以下であってよい。
【0037】
酸性官能基含有繰り返し単位の量は、水系高分子中、0.8mol%以上、3mol%以上、5mol%以上、10mol%以上、20mol%以上、40mol%以上、60mol%以上、80mol%以上、又は90mol%以上であってよく、好ましくは10mol%以上、より好ましくは30mol%以上であり、また、90mol%以下、80mol%以下、又は70mol%以下であってよく、好ましくは70mol%以下、より好ましくは60mol%以下である。
【0038】
非イオン性親水性繰り返し単位の量は、水系高分子中、10mol%以上、20mol%以上、40mol%以上、60mol%以上、80mol%以上、又は90mol%以上であってよく、好ましくは10mol%以上、より好ましくは40mol%以上であり、また、100mol%以下、90mol%以下、80mol%以下、又は70mol%以下であってよく、好ましくは90mol%以下、より好ましくは70mol%以下である。
【0039】
非親水性繰り返し単位の量は、水系高分子中、0mol%以上、1mol%以上、3mol%以上、5mol%以上、20mol%以上、40mol%以上、又は50mol%以上であってよく、好ましくは1mol%以上、より好ましくは20mol%以上であり、また、70mol%以下、50mol%以下、40mol%以下、30mol%以下、20mol%以下、10mol%以下、5mol%以下、又は3mol%以下であってよく、好ましくは60mol%以下である。
【0040】
非イオン性繰り返し単位の量は、水系高分子中、20mol%以上、40mol%以上、60mol%以上、80mol%以上、又は90mol%以上であってよく、好ましくは40mol%以上、より好ましくは60mol%以上であり、また、100mol%以下、90mol%以下、80mol%以下、又は70mol%以下であってよく、好ましくは90mol%以下、より好ましくは70mol%以下である。
【0041】
繰り返し単位(1)及び繰り返し単位(2)の合計量は、水系高分子中、20mol%以上、40mol%以上、60mol%以上、80mol%以上、又は90mol%以上であってよく、好ましくは30mol%以上、より好ましくは40mol%以上であり、また、100mol%以下、90mol%以下、80mol%以下、又は70mol%以下であってよく、好ましくは80mol%以下、より好ましくは60mol%以下である。
【0042】
繰り返し単位(1)の量は、水系高分子中、20mol%以上、40mol%以上、60mol%以上、80mol%以上、又は90mol%以上であってよく、好ましくは15mol%以上、より好ましくは40mol%以上であり、また、100mol%以下、90mol%以下、80mol%以下、又は70mol%以下であってよく、好ましくは80mol%以下、より好ましくは60mol%以下である。
【0043】
繰り返し単位(2)の量は、水系高分子中、20mol%以上、40mol%以上、60mol%以上、80mol%以上、又は90mol%以上であってよく、好ましくは20mol%以上、より好ましくは40mol%以上であり、また、100mol%以下、90mol%以下、80mol%以下、又は70mol%以下であってよく、好ましくは90mol%以下、より好ましくは70mol%以下である。水系高分子は繰り返し単位(2)を含まなくてもよい。
【0044】
(メタ)アクリルアミドから誘導される繰り返し単位(式(1)においてR2がNH2)の量は、水系高分子中、20mol%以上、40mol%以上、60mol%以上、80mol%以上、又は90mol%以上であってよく、好ましくは10mol%以上であり、また、90mol%以下、80mol%以下、又は70mol%以下であってよく、好ましくは50mol%以下、より好ましくは30mol%以下である。
【0045】
(メタ)アクリル酸又はその塩から誘導される繰り返し単位(式(1)においてR2がOM)の量は、水系高分子中、20mol%以上、40mol%以上、60mol%以上、80mol%以上、又は90mol%以上であってよく、好ましくは10mol%以上、より好ましくは30mol%以上であり、また、100mol%以下、90mol%以下、80mol%以下、又は70mol%以下であってよく、好ましくは60mol%以下、より好ましくは40mol%以下である。
【0046】
[水系高分子の製造方法]
前記水系高分子の製造方法については、特に制限されず、公知の共重合体の製造方法を利用して製造することができる。好ましくは水溶液ラジカル重合法により合成できる。具体的には、単量体混合液にラジカル重合開始剤及び必要に応じて連鎖移動剤を加え、撹拌しながら、反応温度50~100℃程度(例えば60~70℃)で重合反応を行えばよい。反応時間は特に限定されず、1~10時間程度であってよい。反応時間経過後、反応温度+3℃~+10℃(例えば+4℃~+8℃)の温度で15分~2時間(例えば30分~1.5時間)、さらに熟成させてもよい。熟成により未反応モノマーの量を低減することができる。水系高分子が、ビニルアルコール単位を有する場合、例えば、WO2017/168947に記載のビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体の製造方法を参考に、けん化条件を設定してもよい。
【0047】
重合開始時の単量体濃度は、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、又は25質量%以上であってよく、また、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、又は10質量%以下であってよく、一態様において、10質量%以上11質量%以下、15質量%以上17質量%以下、又は11質量%以上13質量%以下である。
【0048】
開始剤は、各種公知のものを特に制限なく使用できる。ラジカル重合開始剤は、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;該過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウム等の還元剤とを組み合わせたレドックス系重合開始剤;2,2’-アゾビス-2-アミジノプロパン二塩酸塩(NC-32)(V-50)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(VA-044)等のアゾ系開始剤等が例示される。ラジカル重合開始剤の使用量は本開示における水系高分子の原料となる単量体群100質量%に対し0.05~2質量%程度が好ましく、0.1~1.5質量%程度がより好ましい。
【0049】
各重合条件等は目的の化合物の構造に合わせて適宜設定できる。
【0050】
[水系高分子の量]
水系高分子の量は、二次電池バインダー中、25質量%以上、50質量%以上、75質量%以上、95質量%以上、又は99質量%以上であってよく、好ましくは50質量%以上、より好ましくは75質量%以上であり、また、99質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、又は70質量%以下であってよい。二次電池バインダーは水系高分子単独であってもよい。
【0051】
〔その他バインダー成分〕
本開示における二次電池バインダーは水系高分子以外にその他のバインダー成分を含んでいてよい。その他の成分の例としては、公知のバインダー樹脂等が挙げられ、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、ポリイミド(PI)、ポリアミド、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられる。
【0052】
その他バインダー成分の量は、二次電池バインダー中、0質量%以上、0.5質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、又は25質量%以上であってよく、また、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、又は5質量%以下であってよく、例えば3質量%以下である。
【0053】
<スラリー>
本開示のスラリーは、前述の二次電池バインダー及び水を含み、さらに電極活物質を含んでもよい。前記スラリーは、導電助剤等の電池用粒子、その他液状媒体を含んでもよく、典型的には電極活物質を含む電極スラリーである。スラリーは正極活物質を含む正極スラリー又は負極活物質を含む負極スラリーであってよい。
【0054】
〔液状媒体〕
スラリーは、水を含む液状媒体(水性媒体)を含む。液状媒体は、環境への影響懸念の観点から好ましくは水単独であるが、有機溶媒、例えばアルコール(エタノール、メタノール、イソプロピルアルコールなど)を含んでいてもよい。有機溶媒の量は、液状媒体中、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、又は3質量%以下であってよく、好ましくは10質量%以下である。
【0055】
[液状媒体の量]
液状媒体の量は、所望のスラリー固形分濃度に合わせて調製される。液状媒体の量は、スラリー固形分(二次電池バインダー、活物質および導電助剤の合計量)100質量%に対して、20質量%以上、40質量%以上、60質量%以上、80質量%以上、又は100質量%以上であってよく、好ましくは30質量%以上であり、また、200質量%以下、100質量%以下、80質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、又は40質量%以下であってよく、好ましくは160質量%以下、より好ましくは150質量%以下である。
【0056】
〔二次電池バインダー〕
スラリーは二次電池バインダーを含む。二次電池バインダーの種類については上記したとおりである。
【0057】
[二次電池バインダーの量]
二次電池バインダーの量は、スラリー固形分(二次電池バインダー、活物質および導電助剤の合計量)中、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、1.5質量%以上、3.0質量%以上、又は5.0質量%以上であってよく、好ましくは0.3質量%以上であり、また、10質量%以下、7.5質量%以下、5.0質量%以下、3.0質量%以下、1.0質量%以下、0.5質量%以下、であってよく、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である。上記下限値以上であることが、二次電池バインダーの効果を良好に奏する観点から好適である。上記上限値以下であることが、電池を高容量とする観点から好適である。
【0058】
〔活物質〕
活物質は、電極活物質であり、負極活物質または正極活物質が挙げられる。活物質は、例えば負極活物質である場合には、例えば炭素材料などを含むことができ、また、例えばケイ素及びケイ素酸化物のうち少なくとも一つを含むことができる。負極活物質及び正極活物質の具体的材料について、以下に例示する。
【0059】
(負極活物質)
負極活物質は、本技術分野で使用される負極活物質を使用してよい。
【0060】
負極活物質として、結晶質炭素や非晶質炭素等の炭素材料を使用してもよい。結晶質炭素の例としては、無定形、板状、鱗片状(flake)、球状、又は繊維状であってよい、天然黒鉛又は人工黒鉛のような黒鉛等が挙げられる。非晶質炭素の例としては、ソフトカーボン(易黒鉛化性炭素)又はハードカーボン(難黒鉛化性炭素)、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークス等が挙げられる。
【0061】
負極活物質として、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、Ti(チタン)などリチウムイオンを大量に吸蔵放出可能な材料を用いてもよい。これらの材料は、単体、合金、化合物、固溶体、又はケイ素含有材料、スズ含有材料、チタン含有材料を含む複合活物質の形態で使用され得る。ケイ素含有材料の例としては、Si、Si/C、SiOx(0.05<x<1.95)、またはこれらのいずれかにB、Mg、Ni、Ti、Mo、Co、Ca、Cr、Cu、Fe、Mn、Nb、Ta、V、W、Zn、C、N、及びSnからなる群から選択される少なくとも1つの元素でSiの一部を置換した合金や化合物、または固溶体などを用いることができる。ケイ素含有材料はケイ素酸化物であってよい。スズ含有材料の例としてはNi2Sn4、Mg2Sn、SnOx(0<x<2)、SnO2、SnSiO3、LiSnO等が挙げられる。チタン含有材料の例としてはLi2TiO3,Li4Ti5O12等のチタン酸リチウム、チタンニオブ複合化合物等が挙げられる。これらの材料は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。これらの中でも、ケイ素又はケイ素酸化物が好ましく、例えばSi単体や酸化ケイ素であってよい。
【0062】
負極活物質としては、ケイ素またはケイ素酸化物を第1負極活物質とし、炭素材料を第2負極活物質として、第1および第2負極活物質を混合して得られる複合体を負極活物質として使用することがより好ましい。炭素材料としては、二次電池、特に非水電解液二次電池で一般に使用される炭素材料であれば如何なるものでも使用でき、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらを共に使用してもよい。結晶質炭素の例としては、前記したものが挙げられる。
【0063】
負極活物質の製造方法は、特に制限されない。第1負極活物質と第2負極活物質を混合した活物質複合体を製造する場合、両者が均一に分散される方法を採用してもよく、例えば、第1負極活物質と第2負極活物質とをボールミルで混合する方法が挙げられる。
【0064】
(正極活物質)
正極活物質としては、特に制限されず、本技術分野で使用される正極活物質を使用してよい。
【0065】
正極活物質は、リチウム含有複合酸化物であってもよい。リチウム含有複合酸化物は、例えば、LiMnO2、LiFeO2、LiCoO2、LiMn2O4、Li2FeSiO4、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、LiNixCoyMzO2(但し、0≦x<1、0≦y<1、0≦z<1、x+y+z=1であり、MはMn、V、Mg、Mo、Nb、Fe、Cu及びAlからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。)、LiMn(1-w)FewPO4(但し、0<w<1)、LiFePO4等が挙げられる。
【0066】
[活物質の量]
活物質の量は、スラリー固形分(二次電池バインダー、活物質および導電助剤の合計量)中、35質量%以上、45質量%以上、55質量%以上、65質量%以上、75質量%以上、95質量%以上であってよく、好ましくは55質量%以上、より好ましくは75質量%以上であり、また、99質量%以下、95質量%以下、90質量%以下、又は85質量%以下である。
【0067】
[導電助剤]
導電助剤としては、本技術分野で使用される導電助剤を使用することができる。導電助剤としては、導電性を有するものであれば特に限定されないが、炭素粉末が好ましい。炭素粉末としては、通常用いられているもの、例えば、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)、黒鉛、カーボンファイバー、カーボンチューブ、グラフェン、非晶質炭素、ハードカーボン、ソフトカーボン、グラッシーカーボン、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等の炭素材料が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよいし、又は二種以上を併用してもよい。
【0068】
[導電助剤の量]
導電助剤の量は、スラリー固形分(二次電池バインダー、活物質および導電助剤の合計量)中、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、3.0質量%以上、又は5.0質量%以上であってよく、好ましくは0.3質量%以上であり、また、10質量%以下、5.0質量%以下、3.0質量%以下、1.0質量%以下、であってよく、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である。
【0069】
〔分散助剤〕
本開示のスラリーは、さらに分散助剤を含んでいてもよい。分散助剤としては、ヒドロキシ基、アミノ基及びイミノ基からなる群から選ばれる少なくとも一種の置換基と、カルボキシ基とを含む有機酸、又はフミン酸が好ましい。ヒドロキシ基とカルボキシ基とを有する有機酸としては、例えば、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グリコール酸、タルトロン酸、グルクロン酸、フミン酸などが挙げられる。アミノ基とカルボキシ基とを有する有機酸としては、例えば、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、4-アミノ酪酸、ロイシン、イソロイシン、リジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、トリプトファン、システイン、およびこれらの高分子などが挙げられる。イミノ基とカルボキシ基とを有する有機酸としては、例えば、プロリン、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン、ピペコリン酸などが挙げられる。これらの中でも、入手のしやすさの観点から、グルクロン酸、フミン酸、グリシン、ポリグリシン、アスパラギン酸、又はグルタミン酸が好ましい。
【0070】
[分散助剤の量]
分散助剤の量は、スラリー固形分(二次電池バインダー、活物質および導電助剤の合計量)中、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、1.5質量%以上、又は3.0質量%以上であってよく、好ましくは0.3質量%以上であり、また、5.0質量%以下、3.0質量%以下、又は1.0質量%以下であってよく、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である。
【0071】
〔その他成分〕
本開示のスラリーは、その他成分、例えば慣用の添加剤等を含んでいてもよい。
【0072】
[その他成分の量]
その他成分の量(各量又は総量)は、スラリー固形分(二次電池バインダー、活物質および導電助剤の合計量)中、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、3.0質量%以上、又は5.0質量%以上であってよく、好ましくは0.3質量%以上であり、また、10質量%以下、5.0質量%以下、3.0質量%以下、1.0質量%以下、又は0.5質量%以下、であってよく、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である。
【0073】
〔スラリーの製造方法〕
本開示のスラリーの製造方法は、特に限定されず、成分を混合することにより製造される。例えば、二次電池バインダー、液状媒体、活物質、さらには必要に応じて、導電助剤、分散助剤等を混合して、スラリーとする。液状媒体を加えるタイミングは特に限定されず、本開示の二次電池バインダーをあらかじめ液状媒体に分散または溶解させてから、活物質などを混合してスラリーとしてもよいし、活物質、本開示の二次電池バインダー、さらには必要に応じて、導電助剤、分散助剤などを固体状態で混合した後、液状媒体を加えてペースト状のスラリーとしてもよい。
【0074】
<電極>
本開示の電極は、二次電池用電極であって、前述の本開示における二次電池バインダー(又は二次電池バインダーに由来する成分)及び活物質を含む。すなわち、本開示の電極は、例えば、前述の本開示のスラリーを集電体に塗工し、乾燥させることによって作製することができる。よって、電極はスラリーの加熱乾燥物を含むものであってよい。二次電池バインダーは加熱乾燥により分解又は反応して二次電池バインダーに由来する成分へと変換されていてもよい。
【0075】
加熱乾燥時の温度は、50℃以上、70℃以上、90℃以上、110℃以上、又は130℃以上であってよく、好ましくは70℃以上であり、また、300℃以下、250℃以下、200℃以下、175℃以下、150℃以下、又は125℃以下であり、好ましくは150℃以下である。加熱乾燥は減圧下(例えば、0.05MPa以下、0.03MPa以下、又は0.01MPa以下)で行われてもよい。加熱乾燥の時間は、1時間以上、3時間以上、6時間以上、10時間以上、又は15時間以上であってよく、好ましくは6時間以上であり、また、72時間以下、48時間以下、36時間以下、24時間以下、又は18時間以下であってよく、好ましくは24時間以下である。
【0076】
本開示の電極が負極である場合、集電体を構成する素材としては、例えば、C、Cu、Ni、Fe、V、Nb、Ti、Cr、Mo、Ru、Rh、Ta、W、Os、Ir、Pt、Au、Al等の導電性物質、これら導電性物質の二種以上を含有する合金(例えば、ステンレス鋼)を使用し得る。また、集電体は、FeにCuをめっきしたものであってもよい。電気伝導性が高く、電解液中の安定性と耐酸化性に優れる観点で、負極の集電体の素材としてはCu、Ni、ステンレス鋼等が好ましく、さらに材料コストの観点からCu、又はNiが好ましい。
【0077】
本開示の電極が正極である場合、集電体を構成する素材としては、例えば、C、Ti、Cr、Mo、Ru、Rh、Ta、W、Os、Ir、Pt、Au、Al等の導電性物質、これら導電性物質の二種以上を含有する合金(例えば、ステンレス鋼)を使用し得る。電気伝導性が高く、電解液中の安定性と耐酸化性に優れる観点で、正極の集電体の素材としてはC、Al、ステンレス鋼等が好ましく、さらに材料コストの観点からAlが好ましい。
【0078】
集電体の形状は特に限定されず、例えば、箔状基材、三次元基材等を用いることができる。なお、三次元基材(発泡メタル、メッシュ、織布、不織布、エキスパンド等)を用いると、高率充放電特性も良好となりやすい。
【0079】
<電池>
本開示の二次電池は、前述の本開示の二次電池用電極を含む。本開示の二次電池は、正極及び負極のいずれか一方又は両方として、本開示の二次電池用電極を備えるものであればよい。本開示の二次電池は、本開示の二次電池用電極を利用し(すなわち、本開示における二次電池バインダーを利用し)、本技術分野で使用される手法によって作製される。
【0080】
本開示の二次電池は、好ましくは非水電解液二次電池であり、特にリチウムイオン二次電池であることが好ましい。リチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを含有する必要があることから、電解質としてはリチウム塩が好ましい。このリチウム塩としては、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム、過塩素酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸イミドリチウム等が挙げられる。電解質は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0081】
電解液としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトン等を用いることができる。電解液は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。特に、プロピレンカーボネート単体、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物、またはγ-ブチロラクトン単体が好ましい。なお、上述のエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物の混合比は、一方の成分が10~90体積%となる範囲で任意に調製可能である。
【0082】
その他の二次電池の構成についても、公知の二次電池の構成を採用することができる。
【0083】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例】
【0084】
以下、実施例を挙げて本開示を詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0085】
略号の意味は次のとおりである。
AN:アクリロニトリル
AA:アクリル酸
AAm:アクリルアミド
2-HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
VA:ビニルアルコール
CMC:カルボキシメチルセルロース
SBR:スチレンブタジエンゴム
【0086】
<高分子の調製>
下記に説明する手順に従い水系高分子を調製した。
【0087】
〔実施例1〕
密閉可能な内容積500mlのバイアル瓶に、アクリル酸22.3g(0.31mol)、アクリロニトリル30.2g(0.57mol)、アクリルアミド8.5g(0.12mol)、過硫酸カリウム0.405gおよびイオン交換水50gを添加して混合し、単量体水溶液を調製した。
上記とは別に、攪拌機、温度計、N2ガス導入管、還流冷却機および滴下ロートを備えた容量1Lの反応槽に、イオン交換水500.0gを仕込み、N2ガスを吹き込んで系内を脱酸素した後、内温を75℃まで昇温した。続いて、反応槽に攪拌下、調製した単量体水溶液を、滴下ロートにて3時間かけて滴下した。滴下後、内温を80℃で1時間保持した。その後、内温を40℃以下に冷却し、5mol/Lの水酸化リチウム水溶液69.5g(0.31mol)を添加しpH7.0とし、水系高分子を含む水溶液を得た。水系高分子の繰り返し単位の組成はAN/AA(H/Li)/AAm=57/31/12(モル比)であった。
【0088】
〔実施例2〕
密閉可能な内容積500mlのバイアル瓶に、アクリル酸40.0g(0.56mol)、アクリル酸2-ヒドロキシエチル60.0g(0.52mol)、過硫酸アンモニウム0.367gおよびイオン交換水50.0gを添加して混合し、単量体水溶液を調製し、脱酸素した。
上記とは別に、攪拌機、温度計、N2ガス導入管、還流冷却機および滴下ロートを備えた容量1Lの反応槽に、イオン交換水500.0gを仕込み、N2ガスを吹き込んで系内を脱酸素した後、内温を75℃まで昇温した。続いて、反応槽に攪拌下、調製した単量体水溶液を、滴下ロートにて3時間かけて滴下した。滴下後、2時間保持した。その後、内温を80℃に昇温し1時間保持した。その後、内温を40℃に冷却し、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液124.9g(0.53mol)を添加してpH6.5とし、水系高分子を含む水溶液を得た。水系高分子の繰り返し単位の組成は2-HEA/AA(H/Na)=48/52(モル比)であった。
【0089】
〔実施例3〕
密閉可能な内容積500mlのバイアル瓶に、アクリル酸メチル46.5g(0.54mol)および酢酸ビニル211.8g(2.46mol)を添加して混合し、単量体水溶液を調製した。
上記とは別に、攪拌機、温度計、N2ガス導入管、還流冷却機および滴下ロートを備えた容量2Lの反応槽に、イオン交換水768g及び無水硫酸ナトリウム12gを仕込み、N2ガスを吹き込んで系内を脱酸素した。続いて、部分ケン化ポリビニルアルコール(ケン化度88%)1gおよびラウリルパーオキシド1.2gを添加し、内温を60℃まで昇温した。続いて、反応槽に攪拌下、調製した単量体水溶液を、滴下ロートにて4時間かけて滴下した。滴下後、内温を65℃で2時間保持し、析出した固形分をろ過した。上記同様の反応槽に、得られた固形分、メタノール450g、イオン交換水420g、水酸化ナトリウム140g、及びヒドラジン0.52gを仕込み、35℃で3時間攪拌した。続いて、内温を30℃に冷却し、酢酸を添加しpH7.5とし、固形分をろ別後、該固形分をメタノールで洗浄し、減圧下60℃で8時間乾燥し、水系高分子を得た。水系高分子の繰り返し単位の組成はVA/AA(H/Na)=82/18(モル比)であった。
【0090】
〔比較例1〕
攪拌機、温度計、N2ガス導入管、還流冷却機および滴下ロートを備えた容量1Lの反応槽に、イオン交換水485.3g及び末端チオール変性ポリビニルアルコール100.0g(重合度375、ケン化度98.7mol%)を仕込み、N2ガスを吹き込んで系内を脱酸素した後、内温を95℃まで昇温し、室温まで冷却した。続いて、0.5N硫酸により、pHを3.0に調製した。次に、内温を62℃に昇温し、攪拌下、アクリル酸9.9g(0.14mol)、過硫酸アンモニウム1.70g及びイオン交換水75.2gを滴下ロートにて、1.5時間かけて滴下した。滴下後、内温を62℃に維持しながら、0.5時間保持し、更に、67℃で1時間攪拌した。その後、内温を30℃に冷却し、48質量%水酸化ナトリウム水溶液5.72g(0.69mol)を添加し水系高分子を含む水溶液を得た。水系高分子の繰り返し単位の組成はVA/AA(H/Na)=94/6(モル比)であった。
【0091】
〔比較例2〕
カルボキシメチルセルロースとスチレンブタジエンゴムの混合物(CMC/SBR=1/2(固形重量比))を用いた。
【0092】
〔比較例3〕
内容積500mlのビーカーに、アクリル酸メチル103.6g(1.20mol)および酢酸ビニル156.0g(1.81mol)を添加して混合し、単量体水溶液を調製した。
上記とは別に、攪拌機、温度計、N2ガス導入管、還流冷却機および滴下ロートを備えた容量2Lの反応槽に、イオン交換水768g及び無水硫酸ナトリウム12gを仕込み、N2ガスを吹き込んで系内を脱酸素した。続いて、部分ケン化ポリビニルアルコール(ケン化度88%)1gおよびラウリルパーオキシド1.2gを添加し、内温を60℃まで昇温した。続いて、反応槽に攪拌下、調製した単量体水溶液を、滴下ロートにて4時間かけて滴下した。滴下後、内温を65℃で2時間保持し、析出した固形分をろ過した。上記同様の反応槽に、得られた固形分、メタノール450g、イオン交換水420g、水酸化ナトリウム140g、及びヒドラジン0.52gを仕込み、35℃で3時間攪拌した。続いて、内温を30℃に冷却し、酢酸を添加しpH7.5とし、固形分をろ別後、該固形分をメタノールで洗浄し、減圧下60℃で8時間乾燥し、水系高分子を得た。水系高分子の繰り返し単位の組成はVA/AA(H/Na)=60/40(モル比)であった。
【0093】
<高分子の特性測定>
上記の実施例/比較例で得た水系高分子の特性を測定した。試験方法は以下のとおりである。なお、各試験方法で使用した高分子水溶液はすべて、イオン交換水に水系高分子を溶解させた高分子水溶液である。
【0094】
〔分子量等〕
上記の実施例/比較例で得た水系高分子について、標準ポリエチレングリコール/ポリエチレンオキサイド換算で、Mw(重量平均分子量)、Mw/Mn(分子量分布の広さ)について、GPC-RIを用いて測定した。条件の詳細は下記のとおりである。
[GPC-RI]
GPC装置:HLC-8320GPC(東ソー(株)社)
カラム:TSK GMPW XL(東ソー(株)社)
キャリア:0.1M 硝酸ナトリウム
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/min
注入量:200μL
濃度:0.5mg/mL
【0095】
〔pH〕
水に水系高分子を固形分濃度が2質量%になるように溶解させた高分子水溶液を25℃に保温後、pHメーター(堀場製作所製、型式「D-71」、ガラス製pH電極:型式「9681S-10D」)を用い、pHを測定した。測定値の小数点第2位を四捨五入することでpHを算定した。
【0096】
〔比抵抗〕
水に水系高分子を固形分濃度が2質量%になるように溶解させた高分子水溶液を、25℃に保温後、導電率メーター(アズワン製、型式「AS710」、電極「2301-S」)を用いて、比抵抗を測定した。測定値の小数点第1位を四捨五入することで塩分を算定した。
【0097】
〔酸価〕
水に水系高分子を固形分濃度が2質量%になるように溶解させた高分子水溶液70gを100mLビーカーに加え、自動滴定装置(株式会社HIRANUMA製、型式「COM-1700A」)を用いて0.1mol/L NaOHにて中和滴定を行い、滴定量より下記式より酸価を算出した。
【0098】
〔電解液吸液率(40℃)〕
水に水系高分子を固形分濃度が2質量%になるように溶解させた高分子水溶液をポリプロピレン製のトレー(アズワン製、型式「DT-1」)に20g加え、送風定温恒温器(ヤマト科学製、型式「DKM300」)内で60℃で15時間乾燥した後、真空乾燥器(アズワン製、型式「AVO-310N」)内で60℃、減圧度0.1MPaの条件で24時間追加乾燥を行い、フィルムを作製した。
前記の方法で作製したフィルムを露点-70℃のドライブース内で40mg(約2cm角)になるように切り取り、フィルムの電解液浸漬前重量を測定した。その後、切り取ったフィルムを50mLスクリュー管瓶に入れ、電解液(エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1 v/v%、キシダ化学製)を20g加えてフィルムを浸し、スクリュー管瓶を密栓し、40℃に設定した安全性試験機(ESPEC製、型式「CSH112」)内で22時間保管した。
保管後、ドライブース内にて電解液からフィルムを取り出し、キムワイプで挟んで上から2秒間約700gの荷重をかけて電解液を拭き取った後、電解液浸漬後重量を測定し、以下式にて電解液吸液率を算出した。
電解液吸液率=(電解液浸漬後重量-電解液浸漬前重量)/電解液浸漬前重量×100[%]
【0099】
<電池/スラリー/バインダー液の特性等>
上記の実施例/比較例で得た水系高分子を用いて、電池/スラリー/バインダー液の作製を行い、その特性を測定した。試験方法は以下のとおりである。
【0100】
〔初期膨張率〕
以下手順に従い、初期膨張率を求めた。
[電極の作製]
電極活物質として人造黒鉛(Jiangxi Zichen Technology製、G-49)23.3質量部、一酸化ケイ素(信越化学工業株式会社製、KSC-1265)5.8質量部、および高分子水溶液を固形分換算として0.9質量部を混練した。さらに、固形分濃度が58質量%となるように水を添加して混練することで、負極スラリーを調製した。得られた負極スラリーを厚さ18μmの圧延銅箔上に塗布し、乾燥させた後、ロールプレス機(大野ロール株式会社製)により、圧延銅箔と塗膜とを密着接合させ、次に加熱処理(減圧、100℃、12時間以上)を行って負極を作製した。得られた負極における活物質層の厚みは36μmであり、当該負極の容量密度は3.5mAh/cm2であった。
【0101】
[コインセルの組立]
上記で作製した負極、下記の正極、セパレータ、および電解液を具備したコインセル(CR2032)を作製した。
・正極:Li(本城金属株式会社製)
・セパレータ:ガラスフィルター(アドバンテック株式会社製 商品名GA-100)
・電解液:エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比1:1で混合した溶媒にLiPF6を1mol/Lの濃度で溶解させ、電解液用添加剤であるビニレンカーボネート(VC)を1質量%と、フルオロエチレンカーボネート(FEC)を1質量%添加した溶液。
【0102】
[初期膨張率の測定]
上述の通りに作製した各コインセルについて、30℃において、0.2Cに相当する電流で0.005Vまで充電した。その後、ドライブース内で二次電池を解体し、負極を取り出した。ジメチルカーボネートで洗浄し、23℃で1時間減圧乾燥後、マイクロメータにて電極厚みを測定した。電極厚みから銅箔厚みを除くことで活物質層厚みを計算し、下記式にて膨張率(初期膨張率)を計算した。
膨張率(初期膨張率)=(解体した後の活物質層厚み)/(電池作製時の活物質層厚み)×100[%]
【0103】
〔100サイクル後膨張率〕
以下手順に従い、100サイクル後膨張率を求めた。
[電極の作製]
電極活物質として人造黒鉛(Jiangxi Zichen Technology製、G-49)23.3質量部、一酸化ケイ素(信越化学工業株式会社製、KSC-1265)5.8質量部、および高分子水溶液を固形分換算として0.9質量部を混練した。さらに、固形分濃度が58質量%となるように水を添加して混練することで、負極スラリーを調製した。得られた負極スラリーを厚さ18μmの圧延銅箔上に塗布し、乾燥させた後、ロールプレス機(大野ロール株式会社製)により、圧延銅箔と塗膜とを密着接合させ、次に加熱処理(減圧、100℃、12時間以上)を行って負極を作製した。得られた負極における活物質層の厚みは36μmであり、当該負極の容量密度は3.5mAh/cm2であった。
【0104】
[コインセルの組立]
上記で作製した負極、下記の正極、セパレータ、および電解液を具備したコインセル(CR2032)を作製した。
・正極:LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2(株式会社八山社製)
・セパレータ:ガラスフィルター(アドバンテック株式会社製 商品名GA-100)
・電解液:エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比1:1で混合した溶媒にLiPF6を1mol/Lの濃度で溶解させ、電解液用添加剤であるビニレンカーボネート(VC)を1質量%と、フルオロエチレンカーボネート(FEC)を1質量%添加した溶液。
【0105】
[膨張率の測定]
上述の通りに作製した各コインセルについて、30℃において、0.1Cに相当する電流で4.2Vまで充電し、0.1Cに相当する電流で2.5Vまで放電し、0.5Cに相当する電流で4.2Vまで充電し、0.5Cに相当する電流で2.5Vまで放電する操作を3サイクル行い電池のエージングを行った。
続いて、0.5Cに相当する電流で4.2Vまで充電した後、0.5Cに相当する電流でSOC50まで放電し、0.2Cに相当する電流で12秒間定電流放電をした後、0.1Cに相当する電流で24秒間充電し、0.5Cに相当する電流で12秒間定電流放電をした後、0.1Cに相当する電流で1分間充電し、1Cに相当する電流で12秒間定電流放電をした後、0.1Cに相当する電流で2分間充電し、2Cに相当する電流で12秒間定電流放電をした後、0.2Cに相当する電流で2.5Vまで放電する(初期放電操作)操作を行った。
続いて、1Cに相当する電流で4.2Vまで充電し、1Cに相当する電流で2.5Vまで放電する操作を97サイクル(4~100サイクル目)行った。
その後、ドライブース内で二次電池を解体し、負極を取り出した。ジメチルカーボネートで洗浄し、23℃で1時間減圧乾燥後、マイクロメータにて電極厚みを測定した。電極厚みから銅箔厚みを除くことで活物質層厚みを計算し、下記式にて膨張率を計算した。
100サイクル後膨張率=(100サイクル後に解体した後の活物質層厚み)/(電池作製時の活物質層厚み)×100[%]
【0106】
〔ピール強度〕
以下手順に従い、ピール強度(剥離強度)を求めた。
[電極の作製]
電極活物質として人造黒鉛(Jiangxi Zichen Technology製、G-49)23.3質量部、一酸化ケイ素(信越化学工業株式会社製、KSC-1265)5.8質量部、および高分子水溶液を固形分換算として0.9質量部を混練した。さらに、固形分濃度が58質量%となるように水を添加して混練することで、スラリー状の負極スラリーを調製した。得られた負極スラリーを厚さ18μmの圧延銅箔上に塗布し、乾燥させた後、ロールプレス機(大野ロール株式会社製)により、圧延銅箔と塗膜とを密着接合させ、次に加熱処理(減圧、100℃、12時間以上)を行って負極を作製した。得られた負極における活物質層の厚みは36μmであり、当該負極の容量密度は3.5mAh/cm2であった。
[ピール強度の測定]
得られた電極について、それぞれ、集電箔から活物質層を剥離したときの剥離強度(N/15mm)を測定し、結着力とした。具体的な方法として、電極を幅80mm×15mmに切り出して粘着テープを表面(電極活物質層側)に貼り付けた後、両面テープでステンレス製の板に貼り付け電極(集電箔側)を固定し、これを評価用サンプルとした。この評価用サンプルを用いて引張試験機(株式会社島津製作所製 小型卓上試験機EZ-SX)にてステンレス製の板に対する電極の90度剥離試験(ステンレス製の板に固定した負極に対する粘着テープの90度剥離試験)を実施し、電極における活物質層と集電箔間の剥離強度を測定した。
【0107】
〔マンドレル試験〕
以下手順に従い、マンドレル試験を行った。
[電極の作製]
上記〔ピール強度〕での記載と同様に、電極を作製した。
[マンドレル試験]
JIS K 5600-5-1に準拠して、電極の活物質面を外側にし、直径3mmのマンドレルを用い、活物質層が外側になるように折り曲げ試験を4枚の電極で行い、電極面にヒビ、割れのある電極の数を評価結果とした。
【0108】
〔分散安定性(沈降率)〕
電極活物質として人造黒鉛(Jiangxi Zichen Technology製、G-49)23.3質量部、一酸化ケイ素(信越化学工業株式会社製、KSC-1265)5.8質量部、および固形分濃度を2質量%に調製した高分子水溶液45.9質量部を混練し、電極スラリーを作製した。作製した電極スラリーを胴径40mm、高さ120mmのスクリュー瓶に底から66mmの高さまで加え、25℃(25℃恒温槽)に保温し、6時間静置した。6時間静置後、粒子の沈降によって上部に生じた分離層の厚みを計測し、下記式によって沈降率を算定した。
沈降率=分離層の厚み/電極スラリー全体の液の厚み×100[%]
【0109】
〔1週間後粘度変化率 20℃〕
水に水系高分子を固形分濃度が2質量%になるように溶解させた高分子水溶液を、25℃に保温後、B型粘度計(BROOKFIELD製、型式「DV1MLVTJ0」)を用いて、保管前粘度を測定した。その後、2質量%水溶液を20℃で1週間静置保管し、25℃に調製後、B型粘度計(BROOKFIELD製、型式「DV1MLVTJ0」)を用いて、保管後粘度を測定した。
下記式を用いて、粘度変化率を算出した。
粘度変化率=(保管後粘度-保管前粘度)/保管前粘度×100[%]
なお、以下のとおり、粘度に対応するスピンドル及び回転数を採用した。
LV-2、12rpm:250~2500mPa・s
LV-1、30rpm:20~200mPa・s
【0110】
【産業上の利用可能性】
【0111】
本開示は、移動体通信機器、携帯用電子機器、電動自転車、電動二輪車、電気自動車等の電源に好適に利用される。
【要約】
【課題】電池の製造及び/又は電池特性に好適に寄与できる新規な二次電池バインダー又は当該二次電池バインダーを含むスラリーを提供すること。
【解決手段】水系高分子を含み、
前記水系高分子の電解液吸液率(40℃)が5.0%以下であり、
前記水系高分子のGPC-RIによるMw/Mnが5以上15以下である、二次電池バインダー。
【選択図】なし