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特表2022-505506調節可能スペーサ(tunable spacer)によりリソグラフィ装置の第1素子をリソグラフィ装置の第2素子に向けて調整する方法
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  • 特表-調節可能スペーサ(tunable  spacer)によりリソグラフィ装置の第1素子をリソグラフィ装置の第2素子に向けて調整する方法 図1A
  • 特表-調節可能スペーサ(tunable  spacer)によりリソグラフィ装置の第1素子をリソグラフィ装置の第2素子に向けて調整する方法 図1B
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  • 特表-調節可能スペーサ(tunable  spacer)によりリソグラフィ装置の第1素子をリソグラフィ装置の第2素子に向けて調整する方法 図4
  • 特表-調節可能スペーサ(tunable  spacer)によりリソグラフィ装置の第1素子をリソグラフィ装置の第2素子に向けて調整する方法 図5
  • 特表-調節可能スペーサ(tunable  spacer)によりリソグラフィ装置の第1素子をリソグラフィ装置の第2素子に向けて調整する方法 図6
  • 特表-調節可能スペーサ(tunable  spacer)によりリソグラフィ装置の第1素子をリソグラフィ装置の第2素子に向けて調整する方法 図7
  • 特表-調節可能スペーサ(tunable  spacer)によりリソグラフィ装置の第1素子をリソグラフィ装置の第2素子に向けて調整する方法 図8
  • 特表-調節可能スペーサ(tunable  spacer)によりリソグラフィ装置の第1素子をリソグラフィ装置の第2素子に向けて調整する方法 図9
  • 特表-調節可能スペーサ(tunable  spacer)によりリソグラフィ装置の第1素子をリソグラフィ装置の第2素子に向けて調整する方法 図10
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】調節可能スペーサ(tunable spacer)によりリソグラフィ装置の第1素子をリソグラフィ装置の第2素子に向けて調整する方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20220106BHJP
   G02B 7/00 20210101ALI20220106BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
G02B7/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021521774
(86)(22)【出願日】2019-10-22
(85)【翻訳文提出日】2021-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2019078734
(87)【国際公開番号】W WO2020083914
(87)【国際公開日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】102018218110.1
(32)【優先日】2018-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【弁理士】
【氏名又は名称】下地 健一
(72)【発明者】
【氏名】ボアズ ピニーニ
【テーマコード(参考)】
2H043
2H197
【Fターム(参考)】
2H043AA03
2H043AA06
2H043AA23
2H043AB02
2H043AB03
2H043AB04
2H043AB05
2H043AB09
2H043AB10
2H043AB18
2H043AB25
2H197AA05
2H197BA03
2H197BA09
2H197BA11
2H197BA30
2H197CA06
2H197CA08
2H197CA10
2H197CB16
2H197CC16
2H197DB23
2H197GA01
2H197GA03
2H197GA04
2H197GA08
2H197GA10
2H197GA23
2H197HA03
(57)【要約】
リソグラフィ装置(100A、100B)の第1素子(202)とリソグラフィ装置(100A,100B)の第2素子との間に配置された調節可能スペーサ(300)により、第1素子(202)を第2素子(204)に向けて調整する方法であって、a)第1素子(202)の実際ロケーション(IL)を求めるステップ(S1)と、b)第1素子(202)のノミナルロケーション(SL)を求めるステップ(S2)と、c)調節可能スペーサ(300)から荷重除荷するステップ(S3)と、d)第1素子(202)を実際ロケーション(IL)からノミナルロケーション(SL)にするために調節可能スペーサ(300)の高さ(h)を調整するステップ(S4)と、e)調節可能スペーサ(300)に荷重負荷するステップ(S5)とを含む方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィ装置(100A、100B)の第1素子(202)と前記リソグラフィ装置(100A、100B)の第2素子との間に配置された調節可能スペーサ(300)により、前記第1素子(202)を前記第2素子(204)に向けて調整する方法であって、
a)前記第1素子(202)の実際ロケーション(IL)を求めるステップ(S1)と、
b)前記第1素子(202)のノミナルロケーション(SL)を求めるステップ(S2)と、
c)前記調節可能スペーサ(300)から荷重除荷するステップ(S3)と、
d)前記第1素子(202)を前記実際ロケーション(IL)から前記ノミナルロケーション(SL)にするために前記調節可能スペーサ(300)の高さ(h)を調整するステップ(S4)と、
e)前記調節可能スペーサ(300)に荷重負荷するステップ(S5)と
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記ステップd)において、前記調節可能スペーサ(300)の前記高さ(h)を無段階で調整する方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、前記ステップc)において、前記第1素子(202)を前記調節可能スペーサ(300)から持ち上げる方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法において、前記ステップe)において、前記第1素子(202)を前記調節可能スペーサ(300)に載せる方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法において、前記ステップa)において、前記第1素子(202)の前記実際ロケーション(IL)を測定又は計算する方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法において、前記ステップb)において、前記第1素子(202)の前記ノミナルロケーション(SL)を計算する方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法において、前記ステップd)において、前記調節可能スペーサ(300)の一部である伝動機構(322)により、前記調節可能スペーサ(300)の前記高さ(h)を調整する方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記ステップd)において、第1空間方向(x)に沿った前記調節可能スペーサ(300)のハウジング要素(302、304)に向かう前記調節可能スペーサ(300)の変位要素(316)の相対的な直線移動により、前記調節可能スペーサ(300)の前記高さ(h)を調整する方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、前記ステップd)において、前記伝動機構(322)は、前記第1空間方向(x)に沿った前記変位要素(316)の前記直線移動を前記第1空間方向(x)とは異なる第2空間方向(z)に沿った前記変位要素(316)の直線移動に変える方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の方法において、前記ステップd)において、前記ハウジング要素(302、304)に向かう前記変位要素(316)の相対的な前記直線移動中に、前記変位要素(316)の傾斜摺動面(318、320)が前記ハウジング要素(302、304)の傾斜摺動面(308、312)上で摺動する方法。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか1項に記載の方法において、前記ステップd)において、調整要素(332、334)により、前記変位要素(316)を前記第1空間方向(x)に沿って前記ハウジング要素(302、304)に向けて相対的に移動させる方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の方法において、前記ステップd)において、前記調節可能スペーサ(300)を非撓み状態(Z1)から撓み状態(Z2)にし、該撓み状態(Z2)での前記高さ(h)は前記非撓み状態(Z1)よりも大きい方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の方法において、前記ステップa)~前記ステップe)を通して、前記調節可能スペーサ(300)は前記第1素子(202)と前記第2素子(204)との間にある方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の方法において、前記ステップe)において、前記調節可能スペーサ(300)は力を受けない方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の方法において、前記ステップa)において、前記第1素子(202)の前記実際ロケーション(IL)を前記第2素子(204)に対して求める方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィ装置の第1素子をリソグラフィ装置の第2素子に向けて調整する方法に関する。
【0002】
本願は、独国特許出願第DE10 2018 218 110.1号(2018年10月23日出願)の優先権を主張し、その全内容を参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0003】
マイクロリソグラフィは、微細構造コンポーネント、例えば集積回路の製造に用いられる。マイクロリソグラフィプロセスは、照明系及び投影系を有するリソグラフ装置を用いて実行される。この場合、照明系により照明されたマスク(レチクル)の像を、投影系により、感光層(フォトレジスト)で被覆されて投影系の像平面に配置された基板(例えばシリコンウェーハ)に投影することで、マスク構造を基板の感光コーティングに転写するようにする。
【0004】
集積回路の製造における構造のさらなる小型化が望まれることにより、0.1nm~30nm、特に13.5nmの範囲の波長を有する光を用いるEUVリソグラフィ装置が現在開発中である。このようなEUVリソグラフィ装置の場合、ほとんどの材料がこの波長の光に対して高い吸収を示すので、以前のような屈折光学ユニット、すなわちレンズ素子の代わりに、反射光学ユニット、すなわちミラーを用いなければならない。
【0005】
この種のリソグラフィ装置の始動前に、概して、素子、例えば上記光学ユニットを調整する必要がある。この調整は、例えば、間隔保持体(spacing elements)又はスペーサを用いて行うことができる。この目的で、例えば仮想取付けモデルを用いて又は短絡測定(short-circuit measurements)を用いて、このようなスペーサ要素の必要な厚さ又は高さが最初に決定される。特に必要なスペーサの研削により加工時間が長くならないように、高さ又は厚さがさまざまなスペーサのモジュラーシステムが利用可能とされる。スペーサは、所望の加工精度を達成するためにここでは±2μmの精度で研削される。したがって、10μmずつの小さな増加単位で、最大0.5mmという大きな調整範囲が通常必要であることにより、多数のスペーサを利用可能にする必要がある。スペーサの複雑な取り扱い及びロジスティクスが、コストを押し上げる。高精度スペーサの製造及び洗浄も非常に複雑である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
こうした背景から、本発明の目的は、リソグラフィ装置の素子を調整する方法を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、リソグラフィ装置の第1素子とリソグラフィ装置の第2素子との間に配置された調節可能スペーサにより、第1素子を第2素子に向けて調整する方法が提供される。本方法は、a)第1素子の実際ロケーション(location)を求めるステップと、b)第1素子のノミナルロケーションを求めるステップと、c)調節可能スペーサから荷重除荷する(unloading)ステップと、d)第1素子を実際ロケーションからノミナルロケーションにするために調節可能スペーサの高さを調整するステップと、e)調節可能スペーサに荷重負荷する(loading)ステップとを含む。
【0008】
調節可能スペーサの高さを調整できるので、異なる高さの複数のスペーサを用いずに第1素子を実際ロケーションからノミナルロケーションにすることが可能である。
【0009】
第1素子は、第2素子により担持又は支持されるミラーのような光学素子であり得る。第1素子はレンズとすることもできる。例えば、第2素子は、リソグラフィ装置のフォースフレームであり得る。調節可能スペーサが第1素子と第2素子との「間に」配置されることは、この文脈では調節可能スペーサが2つの素子間に挟まれることを意味する。特に、調節可能スペーサは、第1素子及び/又は第2素子に固定される。好ましくは、調節可能スペーサは、その高さを調整するために素子から取り外されない。好ましくは、第1素子、第2素子、及び調節可能スペーサは、リソグラフィ装置の光学系の一部である。光学系は、リソグラフィ装置の投影系であることが好ましい。光学系は、好ましくは複数の調節可能スペーサを備える。
【0010】
特に、第1素子は、x方向、y方向、及びz方向を有する座標系を有する。これらの方向は相互に垂直に配置される。x方向は第1空間方向と呼ぶことができ、z方向は第2空間方向と呼ぶことができ、y方向は第3空間方向と呼ぶことができる。第1素子は、特に6自由度、すなわちx方向、y方向、及びz方向それぞれに沿った3つの並進自由度と、x方向、y方向、及びz方向それぞれを中心とした3つの回転自由度とを有する。換言すれば、第1素子の位置(position)及び向きは、6自由度を用いて決定又は記述することができる。
【0011】
第1素子の「位置」は、特に、x方向、y方向、及びz方向に関するその座標又は第1素子上に設けられた測定点の座標と理解されたい。第1素子の「向き」は、特に、3つの空間方向に関するその傾斜と理解されたい。換言すれば、第1素子は、x方向、y方向、及び/又はz方向に関して傾斜し得る。これにより、第1素子の位置及び/又は向きに6自由度が与えられる。第1素子の「ロケーション」は、その位置及びその向きの両方を含む。第1素子のロケーションは、複数の調節可能スペーサを用いて調整することができる。この場合、「調整」は、第1素子をその実際ロケーションからノミナルロケーションにすることと理解され得る。
【0012】
この文脈での「荷重除荷」は、調節可能スペーサの高さを調整できるように、調節可能スペーサにかかる重量、例えば第1素子の重量及び/又はリソグラフィ装置の他の素子の重量が、除去されるか若しくは持ち上げられる、又は少なくとも部分的に除去されるか若しくは持ち上げられることを意味する。この文脈での「荷重負荷」は、調節可能スペーサの高さの調整後に重量が調節可能スペーサに戻されることを意味する。特に、高さはz軸に沿って測定される。好ましくは、ステップc)において、調節可能スペーサは、第1素子の重量を除荷され、ステップe)において、調節可能スペーサは、第1素子の重量を再度負荷される。この文脈での高さの「調整」は、第1素子のノミナルロケーションに達するように高さを必要に応じて増減させることを意味する。
【0013】
一実施形態によれば、ステップd)において、調節可能スペーサの高さは無段階調整される。
【0014】
この文脈での「無段階」は、従来の調節不可能なスペーサで必要となるような漸増(increments)がないことを意味する。
【0015】
さらに別の実施形態によれば、ステップc)において、第1素子を調節可能スペーサから持ち上げる。
【0016】
この文脈での「持ち上げる」は、調節可能スペーサと第1素子との間に隙間があるように第1素子を調節可能スペーサから取り外すことを意味する。しかしながら、「持ち上げる」は、第1素子が調節可能スペーサと接触したままだが重量が調節可能スペーサに負荷又は少なくとも部分的に負荷されていないことも意味し得る。
【0017】
さらに別の実施形態によれば、ステップe)において、第1素子を調節可能スペーサに載せる。
【0018】
「載せる」は、第1素子が調節可能スペーサと接触し、その重量が調節可能スペーサに完全にかかることを意味する。
【0019】
さらに別の実施形態によれば、ステップa)において、第1素子の実際ロケーションを測定又は計算する。
【0020】
これは、仮想組立てモデルを用いて又は短絡測定を用いて行うことができる。「短絡測定」は、2つの素子及び調節可能スペーサを備えた光学系に標準又はノミナルスペーサを完全に組み付けてから測定することを意味するとこの場合は理解されたい。
【0021】
さらに別の実施形態によれば、ステップb)において、第1素子のノミナルロケーションを計算する。
【0022】
ノミナル位置は、例えば特に補正レシピを用いて計算することができる。
【0023】
さらに別の実施形態によれば、ステップd)において、調節可能スペーサの一部である伝動機構により調節可能スペーサの高さを調整する。
【0024】
特に、伝動機構は、調節可能スペーサの変位要素及びハウジング要素の傾斜摺動面を含む。
【0025】
さらに別の実施形態によれば、ステップd)において、第1空間方向に沿った調節可能スペーサのハウジング要素に向かう調節可能スペーサの変位要素の相対的な直線移動により、調節可能スペーサの高さを調整する。
【0026】
好ましくは、高さは、第1空間方向又はx方向に向かって垂直な向きである。
【0027】
さらに別の実施形態によれば、ステップd)において、伝動機構は、第1空間方向に沿った変位要素の直線移動を第1空間方向とは異なる第2空間方向に沿った変位要素の直線移動に変える。
【0028】
特に、第2空間方向はz方向である。調節可能スペーサの高さは、z方向に沿って測定される。
【0029】
さらに別の実施形態によれば、ステップd)において、ハウジング要素に向かう変位要素の相対的な直線移動中に、変位要素の傾斜摺動面がハウジング要素の傾斜摺動面上で摺動する。
【0030】
好ましくは、変位要素及びハウジング要素は楔形である。
【0031】
さらに別の実施形態によれば、ステップd)において、調整要素により第1空間方向に沿って変位要素をハウジング要素に向けて相対的に移動させる。
【0032】
調整要素は、ねじ、ねじ棒等であり得る。
【0033】
さらに別の実施形態によれば、ステップd)において、調節可能スペーサを非撓み(non-deflected)状態から撓み(deflected)状態にし、撓み状態での高さは非撓み状態よりも大きい。
【0034】
特に、調節可能スペーサは、無段階で非撓み状態から撓み状態にすることができる。つまり、一定の増加単位は必要ない。
【0035】
さらに別の実施形態によれば、ステップa)~e)を通して、調節可能スペーサは第1素子と第2素子との間にある。
【0036】
代替として、調節可能スペーサは、調節可能スペーサの高さを調整するために取り外すことができる。しかしながら、調節可能スペーサを第1素子と第2素子との間に残したまま高さを調整することが好ましい。
【0037】
さらに別の実施形態によれば、ステップe)において、調節可能スペーサは力を受けない(force-free)。
【0038】
この文脈での「力を受けない」は、高さに沿って又はz方向に沿って調節可能スペーサに力が、例えば第1素子の重量が作用しないことを意味する。
【0039】
さらに別の実施形態によれば、ステップa)において、第1素子の実際ロケーションを第2素子に対して求める。
【0040】
第2素子も調整することができる。
【0041】
さらに、光学系又はリソグラフィ装置の調節可能スペーサが提案される。調節可能スペーサは、ハウジング要素と、ハウジング要素に対して直線変位可能な変位要素と、第1空間方向のハウジング要素に対する変位要素の直線移動を第1空間方向とは異なる第2空間方向のハウジング要素の直線移動に変換して、調節可能スペーサを無段階で非撓み状態から撓み状態とその逆とにするよう設計された伝動機構とを備える。
【0042】
調節可能スペーサを無段階で非撓み状態から撓み状態とその逆とにできることにより、調節可能スペーサの高さ又は厚さの調整の精度は、高精度の、したがって高価な製造によってではなく伝動機構の形態の敏感でない調整機構を用いて達成される。調節可能スペーサの高さ又は厚さの調整の精度は、特に変位要素及び/又はハウジング要素が浅い傾斜角又は楔角を有することにより達成される。ここで、「浅い」は、10°未満の傾斜角又は楔角と特に理解されたい。調節可能スペーサの高さを調整するために調節可能スペーサを交換する必要はない。調節可能スペーサでは、既知のモジュラー概念で可能なものと少なくとも同じ調整精度、すなわち高さの漸変(graduation)を達成することが可能である。
【0043】
調節可能スペーサは、調整可能スペーサと称することもできる。調節可能スペーサは、間隔保持体と称することもできる。伝動機構を用いて、特に第2空間方向の調節可能スペーサの高さ又は厚さを調整することが特に可能である。高さ又は厚さは、非撓み状態よりも撓み状態で特に大きい。調節可能スペーサには、x方向と、x方向に対して垂直な向きのy方向と、x方向に対して垂直且つy方向に対して垂直な向きのz方向とを有する座標系が割り当てられることが好ましい。この座標系は、第1素子の上記座標系と同じであり得る。方向は空間方向と称することもできる。上記第1空間方向は特にx方向である。上記第2空間方向はz方向であり得る。第2空間方向は、調節可能スペーサの垂直方向、高さ方向、又は厚さ方向と称することもできる。
【0044】
本明細書において、「直線移動」は、対応する空間方向に沿った且つ/又は平行な移動と理解されたい。非撓み状態は、非撓み位置、後退状態、又は後退位置と称することもできる。撓み状態は、撓み位置、展開状態、又は展開位置と称することもできる。非撓み状態及び撓み状態は、調節可能スペーサの終端状態又は終端位置を表し得る。調節可能スペーサを「無段階で」非撓み状態から撓み状態とその逆とにすることができることは、任意の所望数の調整可能な中間位置又は中間状態を非撓み状態と撓み状態との間に設けることができることを特に意味すると理解されたい。したがって、調節可能スペーサの高さ又は厚さは、特に非撓み状態と撓み状態との間で無段階調整することができる。
【0045】
変位要素は、少なくとも部分的にハウジング要素内に収容され得る。ハウジング要素に対する変位要素の直線移動中に、変位要素は特にハウジング要素上で摺動する。特に、ハウジング要素は、第2空間方向で変位要素に対して直線移動する。
【0046】
一実施形態によれば、伝動機構は、ハウジング要素に設けられた摺動面及び変位要素に設けられた摺動面を有し、摺動面は、調節可能スペーサが非撓み状態から撓み状態とその逆とになるときに相互に摺動する。
【0047】
摺動面は、摺動平面と称することもできる。特に、摺動面は傾斜平面(slanting planes)である。すなわち、摺動面は傾斜している。変位要素は、1つの摺動面を含むことができるか、又は変位要素の対称面に関して鏡面対称に配置された2つの摺動面を有することもできる。変位要素が2つの摺動面を含む場合、それぞれが摺動面を有する2つのハウジング要素が設けられる。すなわち、変位要素の各摺動面にハウジング要素が割り当てられることが好ましい。
【0048】
さらに別の実施形態によれば、摺動面はそれぞれが傾斜角をなして傾斜し、傾斜角は10°未満、好ましくは5°~8°である。
【0049】
傾斜角は全て同じサイズであることが好ましい。傾斜角が小さいほど、調節可能スペーサの高さ又は厚さの調整の精度が高くなる。傾斜角は、楔角と称することもできる。
【0050】
さらに別の実施形態によれば、調節可能スペーサはばね要素をさらに含み、ばね要素は、非撓み状態の方向で調節可能スペーサにプリテンションをかける。
【0051】
特に、ばね要素は、ハウジング要素に対して変位要素にプリテンションをかける。すなわち、ばね要素は、特に変位要素とハウジング要素との間に位置決めされる。特に、ばね要素は、非撓み状態で弛緩又は圧縮解除(relaxed or uncompressed)され、撓み状態で緊張又は圧縮(tensioned or compressed)される。ばね要素は、円筒ばね、特に圧縮ばねであり得る。しかしながら、ばね要素は、プラスチック材料から、例えばエラストマーから製造された構造部品とすることもできる。
【0052】
さらに別の実施形態によれば、ハウジング要素及び変位要素は、それぞれが収容領域を有し、ばね要素が収容領域に収容される。
【0053】
ハウジング要素の収容領域は半円筒状であり得る。特に、収容領域は、ハウジング要素の摺動面内又は摺動面上に設けられる。変位要素の収容領域は、摺動面に延びる凹部として構成され得る。例えば、変位要素の収容領域は矩形であり得る。
【0054】
さらに別の実施形態によれば、調節可能スペーサは、第1ハウジング要素及び第2ハウジング要素をさらに含み、変位要素はハウジング要素間に配置される。
【0055】
第1ハウジング要素には第1摺動面が特に割り当てられる。したがって、第2ハウジング要素には第2摺動面が特に割り当てられる。調節可能スペーサが非撓み状態から撓み状態とその逆とになると、第1ハウジング要素の第1摺動面が変位要素の第1摺動面上で摺動し、第2ハウジング要素の第2摺動面が変位要素の第2摺動面上で摺動する。
【0056】
さらに別の実施形態によれば、変位要素は楔形であり、変位要素は、対称面に関して鏡面対称に構成される。
【0057】
変位要素は、楔要素と称することもできる。2つの摺動面は、対称面に関して鏡面対称に位置決めされる。
【0058】
さらに別の実施形態によれば、第1ハウジング要素及び第2ハウジング要素は、対称面に関して鏡面対称に位置決めされる。
【0059】
第1ハウジング要素及び第2ハウジング要素は、同一の構成であることが好ましい。これにより、調節可能スペーサの製造に伴うコストが減る。
【0060】
さらに別の実施形態によれば、第1ハウジング要素及び第2ハウジング要素は、調節可能スペーサが非撓み状態から撓み状態になるときに第2空間方向で相互に離れ、第1ハウジング要素及び第2ハウジング要素は、調節可能スペーサが撓み状態から非撓み状態になるときに第2空間方向で相互に近付く。
【0061】
特に、調節可能スペーサが非撓み状態から撓み状態とその逆とになるときに、ハウジング要素はそれぞれがこうして同期移動を行う。
【0062】
さらに別の実施形態によれば、第1ハウジング要素及び第2ハウジング要素は、ガイドレールを用いて相互に直線的に案内される。
【0063】
ガイドレールは、ガイド面又はガイド壁と称することもできる。特に、第1ハウジング要素及び第2ハウジング要素は、ガイドレールを用いて第2空間方向に沿って相互に直線的に案内される。このように、ハウジング要素の相互に対する捩れが回避される。
【0064】
さらに別の実施形態によれば、調節可能スペーサは、変位要素をハウジング要素に対して第1空間方向で直線的にシフトさせるよう設計された調整要素をさらに含む。
【0065】
調整要素は、特に伝動機構の一部である。調整要素は、特に調節可能スペーサに横方向に設けられる。したがって、調節可能スペーサを非撓み状態から撓み状態とその逆とにするには、調整要素への横からのアクセスで十分である。調整要素は特にねじである。調整要素は、変位要素に嵌め合い(with positive locking、formschlussig)係合するよう設計される。この目的で、変位要素は、調整要素を螺入するねじ孔を含み得る。嵌め合い接続は、少なくとも2つの接続相手、この場合は調整要素及びねじ孔が相互に前後から係合する結果として起こる。ハウジング要素は、調整要素を案内する貫通孔を有する後壁を含むことが好ましい。したがって、調整要素は、後壁に回転可能に取り付けられる。調整要素を用いて、ばね要素のばね力に反して変位要素をハウジング要素に対して直線的にシフトさせることができる。2つの調整要素が設けられることが好ましい。調整要素は、y方向で相互に離間して位置決めされ得る。調節可能スペーサを非撓み状態から撓み状態にするために、調整要素を交互に作動させる、特に締めることができる。
【0066】
さらに別の実施形態によれば、第1空間方向の変位要素の変位経路は、第2空間方向の調節可能スペーサの高さ変化よりも大きく、変位経路は、高さ変化の3倍~15倍、好ましくは6倍~12倍、より好ましくは10倍である。
【0067】
このように、高さ変化を非常に高精度に行なわせることができる。摺動面の傾斜角が小さいほど、高さ変化に対する変位経路の比が大きくなる。高さ変化は、厚さ変化と称することもできる。高さ変化は、特に以下のように計算することができる:Δh=2tanβ1Δx。式中、Δhは高さ変化であり、β1は傾斜角であり、Δxは変位経路である。
【0068】
さらに別の実施形態によれば、調節可能スペーサは貫通孔を有し、貫通孔は、締結要素、特にねじを収容するために第2空間方向で調節可能スペーサを完全に貫通する。
【0069】
すなわち、締結要素は調節可能スペーサに通される。締結要素が調節可能スペーサに通されることにより、締結要素が調節可能スペーサの横を通過する配置に比べて、調節可能スペーサを用いて調整される素子の曲げ荷重を防止することが可能である。
【0070】
さらに、リソグラフィ装置の光学系が提案される。光学系は、素子、特に光学素子と、上記調節可能スペーサとを備え、調節可能スペーサを非撓み状態から撓み状態にすることにより素子を実際位置から所望位置にすることができる。
【0071】
素子は、例えば、ミラー、レンズ素子、絞り、及びエンドストップ(end stop)、フォースフレーム等であり得る。光学系は、リソグラフィ装置の投影系であることが好ましい。光学系は、複数の調節可能スペーサを備えることが好ましい。
【0072】
上記調節可能スペーサ及び/又は上記光学系を有するリソグラフィ装置がさらに提案される。
【0073】
リソグラフィ装置は、複数の調節可能スペーサ及び/又は複数の光学系を備えることができる。リソグラフィ装置は、EUVリソグラフィ装置であり得る。EUVは「極紫外線」を意味し、0.1nm~30nmの使用光の波長を示す。リソグラフィ装置は、DUVリソグラフィ装置でもあり得る。DUVは「深紫外線」を意味し、30nm~250nmの使用光の波長を示す。
【0074】
この場合の「a(an)」は、厳密に1つの要素に制限するものと必ずしも理解すべきでない。正確には、複数の要素、例えば、2つ、3つ、又はそれ以上等を設けることもできる。ここで用いる他の数字はいずれも、正確に対応する数の要素に厳密に制限しなければならないと理解すべきでない。正確には、数の増減が可能である。
【0075】
本方法に関して記載した実施形態及び特徴は、調節可能スペーサ、光学系、及び/又はリソグラフィ装置にも適宜当てはまり、またその逆でもある。
【0076】
本発明のさらに他の可能な実施態様は、例示的な実施形態に関して上述又は後述されている特徴又は実施形態の明記されていない組み合わせも含む。この場合、当業者であれば、個々の態様を改良又は補足として本発明の各基本形態に加えることもあろう。
【0077】
本発明のさらに他の有利な構成及び態様は、従属請求項の主題であり、後述する本発明の例示的な実施形態の主題でもある。以下において、好ましい実施形態に基づき添付図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0078】
図1A】EUVリソグラフィ装置の実施形態の概略図を示す。
図1B】DUVリソグラフィ装置の実施形態の概略図を示す。
図2図1Aに示すEUVリソグラフィ装置又は図1Bに示すDUVリソグラフィ装置の光学系の実施形態の概略図を示す。
図3図2に示す光学系の調節可能スペーサの実施形態の概略図を示す。
図4図3に示す調節可能スペーサのさらに別の概略図を示す。
図5図3に示す調節可能スペーサのさらに別の概略図を示す。
図6図3に示す調節可能スペーサの概略斜視図を示す。
図7図3に示す調節可能スペーサのハウジング要素の実施形態の概略斜視図を示す。
図8図3に示す調節可能スペーサの変位要素の実施形態の概略斜視図を示す。
図9図3に示す調節可能スペーサの概略斜視部分図を示す。
図10図1Aに示すEUVリソグラフィ装置又は図1Bに示すDUVリソグラフィ装置の第1素子をリソグラフィ装置の第2素子に向けて調整する方法の一実施形態の概略ブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0079】
別途指示のない限り、図中で同一の要素又は同一の機能を有する要素には同じ参照符号を設けてある。図示は必ずしも一定の縮尺ではないことにも留意されたい。
【0080】
図1Aは、ビーム整形・照明系102及び投影系104を備えたEUVリソグラフィ装置100Aの概略図を示す。この場合、EUVは「極紫外線」を意味し、0.1nm~30nmの使用光の波長を示す。ビーム整形・照明系102及び投影系104は、それぞれが真空ハウジング(図示せず)内に設けられ、各真空ハウジングは排気デバイス(図示せず)を用いて真空引きされる。真空ハウジングは、光学素子を機械的に移動させる又は設定する駆動デバイスが設けられた機械室(図示せず)により囲まれる。さらに、電気コントローラ等をこの機械室内に設けることもできる。
【0081】
EUVリソグラフィ装置100Aは、EUV光源106Aを備える。EUV域(極紫外域)の、すなわち例えば5nm~20nmの波長域の放射線108Aを発するプラズマ源(又はシンクロトロン)を、例えばEUV光源106Aとして設けることができる。ビーム整形・照明系102において、EUV放射線108Aを集束させ、所望の作動波長をEUV放射線108Aからフィルタリングする。EUV光源106Aが発生したEUV放射線108Aは、空気中の透過率が比較的低く、こうした理由でビーム整形・照明系102及び投影系104の導光空間が真空引きされる。
【0082】
図1Aに示すビーム整形・照明系102は、5つのミラー110、112、114、116、118を有する。ビーム整形・照明系102の通過後に、EUV放射線108Aはフォトマスク(レチクルと呼ばれる)へ導かれる。フォトマスク120は、同様に反射光学素子として具現され、システム102、104の外部に配置され得る。さらに、EUV放射線108Aは、ミラー122によりフォトマスク120へ指向され得る。フォトマスク120は、投影系104により縮小されてウェーハ124等に結像される構造を有する。
【0083】
投影系104(投影レンズとも称する)は、フォトマスク120をウェーハ124に結像するために6つのミラーM1~M6を有する。この場合、投影系104の個々のミラーM1~M6は、投影系104の光軸126に関して対称に配置され得る。EUVリソグラフィ装置100AのミラーM1~M6の数は、提示した数に制限されないことに留意されたい。設けられるミラーM1~M6の数をより多くすることもより少なくすることもできる。さらに、ミラーM1~M6は、ビーム整形用に前面が概して湾曲している。
【0084】
図1Bは、ビーム整形・照明系102及び投影系104を備えたDUVリソグラフィ装置100Bの概略図を示す。この場合、DUVは「深紫外線」を意味し、30nm~250nmの使用光の波長を示す。図1Aを参照してすでに記載したように、ビーム整形・照明系102及び投影系104は、真空ハウジング内に配置され且つ/又は対応する駆動デバイスを有する機械室により囲まれ得る。
【0085】
DUVリソグラフィ装置100Bは、DU光源106Bを有する。例として、例えば193nmのDUV域の放射線108Bを発するArFエキシマレーザをDUV光源106Bとして設けることができる。
【0086】
図1Bに示すビーム整形・照明系102は、DUV放射線108Bをフォトマスク120へ導く。フォトマスク120は、透過光学素子として具現され、システム102、104の外部に配置され得る。フォトマスク120は、投影系104により縮小されてウェーハ124等に結像される構造を有する。
【0087】
投影系104は、フォトマスク120をウェーハ124に結像するために複数のレンズ素子128及び/又はミラー130を有する。この場合、投影系104の個々のレンズ素子128及び/又はミラー130は、投影系104の光軸126に関して対称に配置され得る。DUVリソグラフィ装置100Bのレンズ素子128及びミラー130の数は、提示した数に制限されないことに留意されたい。設けられるレンズ素子128及び/又はミラー130の数をより多くすることもより少なくすることもできる。さらに、ミラー130は、ビーム整形用に前面が概して湾曲している。
【0088】
最終レンズ素子128とウェーハ124との間の空隙は、屈折率が1を超える液体媒体132で置き換えることができる。液体媒体132は、例えば高純度水であり得る。このような構成は、液浸リソグラフィとも称し、高いフォトリソグラフィ解像度を有する。媒体132は、浸液と称することもできる。
【0089】
図2は、光学系200を示す。光学系200は、EUVリソグラフィ装置100A又はDUVリソグラフィ装置100Bの一部であり得る。例えば、光学系200は、例えばEUVリソグラフィ装置100Aの投影系102の一部であり得るか又は投影系102であり得る。以下では、EUVリソグラフィ装置100Aのみを参照して光学系200を説明する。しかしながら、光学系200は、DUVリソグラフィ装置100Bで用いることもできる。
【0090】
光学系200は、第1素子202を備える。第1素子202は、例えば光学素子、特にミラー110、112、114、116、118、122、130、M1~M6のうちの1つ、レンズ素子128のうちの1つ、又は絞りであり得る。しかしながら、第1素子202は、フォースフレーム、光学素子を位置合わせするための調整素子又はアクチュエータ、光学素子のエンドストップ、特にセンサフレームの懸架用のアクティブ防振システム(AVIS)の一部、又は類似のものでもあり得る。
【0091】
光学系200は、第2素子204をさらに備える。第2素子204は、光学系200のベースであり得る。ベースは、光学系200の固定環境(fixed world)と称することもできる。例えば、第2要素204は、光学系200の又はEUVリソグラフィ装置100Aの上記フォースフレームでもあり得る。この場合、第1素子202は、例えば、第2素子204により担持又は支持される上述のような光学素子であり得る。
【0092】
第1素子202は、第2素子204に対して特に6自由度、すなわちx方向、y方向、及びz方向それぞれに沿った3つの並進自由度と、x方向、y方向、及びz方向それぞれを中心とした3つの回転自由度とを有する。換言すれば、第1素子202の位置及び向きは、6自由度を用いて決定又は記述することができる。方向x、y、zは、空間方向と称することもできる。
【0093】
第1素子202の「位置」は、特に、x方向、y方向、及びz方向に関するその座標又は第1素子202上に設けられた測定点の座標と理解されたい。第1素子202の「向き」は、特に、3つの空間方向に関するその傾斜と理解されたい。換言すれば、第1素子202は、x方向、y方向、及び/又はz方向に関して傾斜し得る。これにより、第1素子202の位置及び/又は向きに6自由度が与えられる。第1素子202の「ロケーション」は、その位置及びその向きの両方を含む。
【0094】
境界面206が、第1素子202と第2素子204との間に設けられる。第1素子202は、境界面206で第2素子204に結合される。第1素子202の表面208及び第2素子204の表面210に、境界面206が割り当てられる。表面208、210は相互に対面している。
【0095】
光学系200の始動前、例えば露光動作前に、第1素子202の位置及び/又は向きを適合させる必要がある。この目的で、例えば、第1素子202を空間方向x、y、zにより規定された座標系で調整する又は方向付けることができるか、又は第1素子202を第2素子204に対して調整する又は方向付ける。
【0096】
この場合、「調整」は、第1素子202を実際位置IL(図2に実線で示し参照符号202を付す)からノミナル位置SL(図2に破線で示し参照符号202’を付す)にすることと理解され得る。特に補正レシピを用いて、例えば実際位置ILを測定することができ、例えばノミナル位置SLを計算することができる。
【0097】
第1素子202の調整は、例えばスペーサを用いて行うことができる。この目的で、こうしたスペーサ要素の必要な厚さ又は高さが、例えば仮想組立てモデルを用いて又は短絡測定を用いて最初に決定される。「短絡測定」は、光学系200に標準又はノミナルスペーサを完全に組み付けてから測定することを意味するとこの場合は理解されたい。
【0098】
特に必要なスペーサの研削により加工時間が長くならないように、高さ又は厚さがさまざまなスペーサのモジュラーシステムが利用可能とされる。スペーサは、所望の加工精度を達成するためにここでは±2μmの精度で研削される。複数のスペーサを組み合わせてスペーサスタックを形成することができる。10μmずつの小さな増加単位で、最大0.5mmの大きな調整範囲が通常必要であることにより、多数のスペーサを利用可能にする必要がある。例えば、上述の種類の投影系104用に1000個を超えるスペーサの在庫がなければならない。スペーサの複雑な取り扱い及びロジスティクスが、コストを押し上げる。さらに、長い加工時間を予想しなければならない。高精度スペーサの製造及び洗浄も非常に複雑である。
【0099】
既知のスペーサに対する調整を容易にするために、調節可能スペーサ300が境界面206に設けられる。図2に示すスペーサ300により、第1素子202のz方向の位置を調整することができる。この種のスペーサ300を多数設けることができることで、第1素子202の位置及び/又は向きを特に第2素子204に対して調整することができる。締結要素212、例えばねじをスペーサ300に通すことができる。スペーサ300には、3つの空間方向x、y、zにより形成される座標が割り当てられることが好ましい。すなわち、空間方向x、y、zは、スペーサ300に割り当てられる。第1素子202は、スペーサ300にかかる重量Gを有する。このように、第1素子202は、その重量Gをスペーサ300に負荷する。
【0100】
図3及び図4は、スペーサ300の実施形態を示す。スペーサ300は、第1ハウジング要素302及び第2ハウジング要素304を含む。ハウジング要素302、304は、同一の構成であり得る。ハウジング要素302、304は、対称面306に関して鏡面対称に位置決めされ得る。
【0101】
第1ハウジング要素302は、第1摺動平面又は第1摺動面308を含み、これは第1ハウジング要素302の外面310に対して第1傾斜角α1で傾斜している。傾斜角α1は、好ましくは10°未満、例えば5°~8°である。したがって、第2ハウジング要素304は、第2摺動平面又は第2摺動面312を有し、これは第2ハウジング要素304の外面314に対して第2傾斜角αで傾斜している。傾斜角α1、α2は、同じサイズであることが好ましい。代替として、傾斜角α1、α2は、異なるサイズでもあり得る。外面310、314は、素子202、204の表面208、210に当接する。傾斜角α1、α2は、楔角と称することもできる。
【0102】
スペーサ300は、ハウジング要素302、304間に配置されてこれらに対して直線変位可能な変位要素316をさらに含む。変位要素316は楔形である。したがって、変位要素316は、楔要素と称することもできる。変位要素316は、対称面306に関して鏡面対称に構成されることが好ましい。
【0103】
変位要素316は、第1摺動平面又は第1摺動面318を含み、これは第1ハウジング要素302の第1摺動面308に当接して第1摺動面308上で摺動することができる。変位要素316は、第2摺動平面又は第2摺動面320をさらに含み、これは第2ハウジング要素304の第2摺動面312に当接して第2摺動面312上で摺動することができる。摺動面318、320は、対称面306に関して鏡面対称に位置決めされる。
【0104】
第1摺動面318は、第1傾斜角α1に等しいことが好ましい第1傾斜角β1で対称面306に対して傾斜している。第2摺動面320は、第2傾斜角α2に等しいことが好ましい第2傾斜角β2で対称面306に対して傾斜している。傾斜角α1、α2が異なるサイズである場合、傾斜角β1、β2も異なるサイズだが、第1傾斜角α1、β1及び第2傾斜角α2、β2はそれぞれ同じサイズである。例えば、対応する摺動面308、318又は312、320が対称面306と平行に位置決めされるように、第1傾斜角α1、β1又は第2傾斜角α2、β2を0°に等しくすることもできる。傾斜角β1、β2は、楔角と称することもできる。
【0105】
摺動面308、312、318、320は、スペーサ300の伝動機構322の一部である。伝動機構322は、ある空間方向、例えばx方向xの変位要素316の直線移動を、変位要素316がシフトする空間方向とは異なる空間方向、例えばz方向zのハウジング要素302、304のうちの少なくとも一方の直線移動に変換するよう設計される。すなわち、図3の向きでは、摺動面308、312、318、320は、x方向xの変位要素316の直線シフト中に相互に摺動し、その結果として、z方向zに見てハウジング要素302、304は相互に離れる。このように、図3の向きでz方向zと平行な向きのスペーサ300の高さhを調整することができる。高さhは、厚さと称することもできる。ハウジング要素302、304に対する変位要素316の直線移動は、図3及び図4に矢印324を用いて示す。
【0106】
スペーサ300は、任意のばね要素326をさらに含み得る。ばね要素326は、円筒ばね、特に圧縮ばねであり得る。ばね要素326は、変位要素316と固定軸受328との間に位置決めされる。特に、ばね要素326は、変位要素316を固定軸受328に結合する。固定軸受328は、例えばスペーサ300のハウジング要素302、304の一部であり得る。
【0107】
スペーサ300は、図3に示す非撓み状態Z1から図4に示す撓み状態Z2とその逆とにすることができる。高さhは、非撓み状態Z1よりも撓み状態Z2の方が大きい。状態Z1とZ2との間で、スペーサ300を無段階で任意の所望数の中間状態にすることができる。スペーサ300が非撓み状態Z1から撓み状態Z2とその逆とになるとき、摺動面308は摺動面318上で摺動し、摺動面312は摺動面320上で摺動する。非撓み状態Z1では、高さに参照符号hを付し、撓み状態では、高さに参照符号h’を付し、高さh’は高さhよりも大きい。
【0108】
スペーサ303が非撓み状態Z1から撓み状態Z2になるとき、ばね要素326は可逆的に非圧縮又は非緊張状態Z10から圧縮又は緊張状態Z2になる。緊張状態Z20では、ばね要素326が変位要素316にばね力F、特に圧縮力をかけることで、変位要素316が非撓み状態Z1の方向にプリテンションをかけられる。
【0109】
図5は、変位要素316の半分のみを図示し第2ハウジング要素304を全く図示しない、スペーサ300のさらに別の概略図を示す。第1ハウジング要素302は、変位要素316から区別しやすいようにハッチングで示す。上述のように、高さhを調整するために、変位要素316をハウジング要素302、304に対して直線移動させる。伝動機構322を用いて、ある空間方向に沿った、例えばx方向xに沿った変位要素316の変位経路Δxの直線移動を、別の空間方向の、例えばz方向zのハウジング要素302、304の直線移動、すなわち高さ変化Δhに変換することができる。
【0110】
図5に示す幾何学的配置では、tanβ1=(Δh/2)Δx又はtanα1=(Δh/2)/Δxである。x方向xに沿った変位要素316の変位経路Δxが例えば1mmで、傾斜角β1が5°であるとすると、変位要素316が2つの摺動面318、320を有する場合には高さ変化Δh=2tanβ1Δx=175μmとなる。傾斜角α1、α2、β1、β1が小さいほど、一定の変位経路Δxに対する高さ変化Δhが小さくなる。変位要素316が1つの摺動面318、320しか有しない場合、同じ変位経路Δxに対する高さ変化Δhは半減する。傾斜角α1、α2、β1、β2が小さいほど、実現される調整増加単位が小さくなる。
【0111】
浅い傾斜角α1、α2、β1、β2は、変位要素316とハウジング要素302、304との間の静摩擦も増加させる。したがって、スペーサ300はセルフロック式である。すなわち、スペーサ300は、ハウジング302、304の外面310、314に力を加えても撓み状態Z2から非撓み状態Z1にすることができない。したがって、調整不可能なスペーサに比べて、スペーサ300はこれに劣らず剛性があり、さらに安定性もある。
【0112】
図6は、スペーサ300の特定の設計を概略斜視図で示す。図9は、スペーサ300の概略斜視部分図を示す。スペーサ300は、2つのハウジング要素302、304を通り且つ変位要素316も通る貫通孔330を含む。貫通孔330は、x方向xに延び得る細長い幾何学的形状を有し得る。すなわち、x方向xに沿った貫通孔330の大きさは、y方向yに沿ったその大きさよりも大きい。締結要素212を貫通孔330に通すことができる。このように、締結要素212は、第1素子202の曲げ応力につながり得るようなスペーサ300の隣に配置される必要がない。貫通孔330は、スペーサ300の実質的に中心に設けられる。
【0113】
スペーサ300は、2つの調整要素332、334を含む。調整要素332、334は、ねじ、特に押えねじであり得る。第1調整要素332及び第2調整要素334が設けられる。調整要素332、334は、伝動機構322の一部であり得る。スペーサ300を非撓み状態Z1から撓み状態Z2にするために、調整要素332、334を用いて、変位要素316をばね要素326のばね力Fに反して変位経路Δxに沿って直線移動させることができる。調整要素332、334は、交互に作動させることができる。
【0114】
スペーサ300を撓み状態Z2から非撓み状態Z1にするには、調整要素332、334を再度緩め、その結果として、ばね要素326がスペーサ300を再度自動的に撓み状態Z2から非撓み状態Z1にする。
【0115】
スペーサ300がばね要素326を有しない場合、スペーサ300は、緩めた調整要素332、334に対する打撃動作により撓み状態Z2から非撓み状態Z1にすることもできる。さらに、スペーサ300は、代替として1つの調整要素332、334のみを含むこともできる。
【0116】
図7に概略斜視図で示す第1ハウジング要素302は、第2ハウジング要素304と同一の構成を有する。第1ハウジング要素302の第1摺動面308及び外面310には、貫通孔336が貫通している。貫通孔336は、貫通孔330の一部である。調整要素332、334用の溝338、340が、貫通孔336の両側で第1摺動面308に設けられる。さらに、ばね要素326用の収容領域342が第1摺動面308に設けられる。収容領域342は、半円筒状であり得る。第1ハウジング要素302は、金属材料から、例えば鋼合金、又はアルミニウム合金から製造され得る。
【0117】
第1ハウジング要素302は、第2調整要素334を通す貫通孔346を有する後壁344をさらに含む。ばね要素326の上記固定軸受328は、後壁344の一部であり得る。第1ハウジング要素302は、第1ガイドレール348と、第1ガイドレール348と平行且つこれから離れて配置された第2ガイドレール350とを有する。ガイドレール348、350は、ガイド面又はガイド壁と称することもできる。図6が示すように、第1ハウジング要素302の第2ガイドレール350は、第2ハウジング要素304の第1ガイドレール348に対して内側を案内される。したがって、第2ハウジング要素304の第2ガイドレール350は、第1ハウジング要素302の第1ガイドレール348に対して内側を案内される。このように、ハウジング要素302、304は相互に対して捩れることができない。
【0118】
図8に概略斜視図で示す変位要素316も同様に、摺動面318、320を通り貫通孔330の一部である貫通孔352を含む。さらに、変位要素316は、第1調整要素332用の第1収容部354と、第2調整要素334用の第2収容部356とを有する。収容部354、356は、摺動面318、320を部分的に貫通し得る。
【0119】
各収容部354、356は、各調整要素332、334を螺入できるねじ孔(図示せず)を有する。貫通孔として形成された収容領域358が、ばね要素326を収容する役割を果たす。変位要素316は、金属材料、例えば鋼合金又はアルミニウム合金から製造され得る。
【0120】
スペーサ300には、既知のスペーサに勝る多くの利点がある。高さhの調整の精度は、高精度の、したがって高価な製造によってではなく伝動機構322の形態の敏感でない調整機構を用いて達成される。高さhを調整するためにスペーサ300を交換する必要はない。正確には、高さhを調整するには、調整要素332、334への横からのアクセスで十分である。スペーサ300では、上述のモジュラー概念で可能なものと少なくとも同じ調整精度、すなわち高さhの漸変を達成することが可能である。スペーサ300は、既知のスペーサスタックに劣らない剛性及び安定性を提供する。
【0121】
図10は、第1素子202を第2素子204に向けて調整する方法の一実施形態の概略ブロック図を示す。
【0122】
ステップS1において、第1素子の実際ロケーションILを求める。その後、ステップS2において、第1素子202のノミナルロケーションSLを求める。ステップS3において、スペーサ300から荷重除荷する。これは、第1素子202をスペーサ300から持ち上げることにより行うことができる。結果として、第1素子20を実際ロケーションILからノミナルロケーションSLにするために、ステップS4においてスペーサ300の高さhを調整する。これは、スペーサを2つの素子202、204間に挟んだままで行われることが好ましい。最後に、ステップS5において、スペーサ300に再度荷重負荷する。例えば、スペーサ300に第1素子202の重量Gを負荷する。
【0123】
本発明は、例示的な実施形態に基づいて説明したが、多様な方法で変更可能である。
【符号の説明】
【0124】
100A EUVリソグラフィ装置
100B DUVリソグラフィ装置
102 ビーム整形・照明系
104 投影系
106A EUV光源
106B DUV光源
108A EUV放射線
108B DUV放射線
110 ミラー
112 ミラー
114 ミラー
116 ミラー
118 ミラー
120 フォトマスク
122 ミラー
124 ウェーハ
126 光軸
128 レンズ素子
130 ミラー
132 媒体
200 光学系
202 素子
202’ 素子
204 素子
206 境界面
208 表面
210 表面
212 締結要素
300 スペーサ
302 ハウジング要素
304 ハウジング要素
306 対称面
308 摺動面
310 外面
312 摺動面
314 外面
316 変位要素
318 摺動面
320 摺動面
322 伝動機構
324 矢印
326 ばね要素
328 固定軸受
330 貫通孔
332 調整要素
334 調整要素
336 貫通孔
338 溝
340 溝
342 収容領域
344 後壁
346 貫通孔
348 ガイドレール
350 ガイドレール
352 貫通孔
354 収容部
356 収容部
358 収容領域
F ばね力
G 重量
h 高さ
h’ 高さ
IL 実際位置
M1 ミラー
M2 ミラー
M3 ミラー
M4 ミラー
M5 ミラー
M6 ミラー
SL ノミナル位置
S1 ステップ
S2 ステップ
S3 ステップ
S4 ステップ
S5 ステップ
x 空間方向
y 空間方向
z 空間方向
Z1 状態
Z2 状態
Z10 状態
Z20 状態
α1 傾斜角
α2 傾斜角
β1 傾斜角
β2 傾斜角
Δh 高さ変化
Δx 変位経路
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】