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特表2022-507521自己律速型で有限溶解度の反応を使用した湿式原子層エッチング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】自己律速型で有限溶解度の反応を使用した湿式原子層エッチング
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20220111BHJP
   C23F 1/30 20060101ALI20220111BHJP
   C23F 1/28 20060101ALI20220111BHJP
   C23F 1/40 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
H01L21/306 F
C23F1/30
C23F1/28
C23F1/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021526545
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(85)【翻訳文提出日】2021-07-07
(86)【国際出願番号】 US2019061678
(87)【国際公開番号】W WO2020102655
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】62/767,808
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/287,658
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514028776
【氏名又は名称】トーキョー エレクトロン ユーエス ホールディングス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】アベル,ポール
【テーマコード(参考)】
4K057
5F043
【Fターム(参考)】
4K057WA11
4K057WB01
4K057WD05
4K057WE13
4K057WE30
4K057WM03
4K057WM04
4K057WN01
5F043AA26
5F043BB18
5F043DD15
5F043EE08
5F043EE27
(57)【要約】
エッチング中の、材料の微視的及び巨視的な均一性の両方を改善するための方法が、本明細書で開示される。これらの改善は、湿式原子層エッチング(ALE)技術を使用することにより、材料の表面上での薄い自己律速型の層の形成及び溶解を通じて、達成することができる。多結晶材料をエッチングする場合、これらの自己律速型反応を使用して、エッチング中の表面のこの粗化を防止することができる。従って、本明細書に開示するように、湿式ALEプロセスは連続した自己律速型の反応を使用して、まず材料の表面層を改質し、次いで改質された層を選択的に除去する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板をエッチングする方法であって、
前記基板を受け取ることであって、前記基板は露出した第1の材料を有し、前記第1の材料は多結晶材料を含むことと、
前記多結晶材料を選択的にエッチングすることであって、前記選択的にエッチングすることは、
a)酸化剤を使用した前記多結晶材料の酸化により、前記多結晶材料の表面を化学的に改質すること、
b)錯化剤を前記多結晶材料の前記改質された表面層に結合すること、及び
c)前記改質された表面層を液相の化学溶液に曝すことにより、前記多結晶材料の錯体結合された改質された表面層を選択的に除去することであって、前記選択的に除去することは、前記多結晶材料の前記改質された表面層を水性又は非水性の溶液に曝して、前記改質された層を溶解することを含むこと、を含むことと、を含み、
a)、b)、及びc)のうちの少なくとも2つは、時間的な重複がない、方法。
【請求項2】
a)及びb)は時間的な重複がない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
a)及びb)は少なくとも部分的に時間的な重複をしている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記酸化剤は、水中、アルコール中、又はケトン中に溶解した酸素を含む酸素飽和化学溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記錯化剤は、アセトン中又はイソプロピル・アルコール中に溶解している、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記多結晶材料は遷移金属である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記多結晶材料は、ルテニウム(Ru)又はコバルト(Co)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記錯化剤はクエン酸塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
b)の後で且つc)に先立って、溶媒で前記基板をすすぐことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
基板をエッチングする方法であって、
前記基板を受け取ることであって、前記基板は露出した第1の材料を有し、前記第1の材料は多結晶材料を含むことと、
前記多結晶材料を選択的にエッチングすることであって、前記選択的にエッチングすることは、
a)水中、アルコール中、又はアセトン中に溶解した酸素を含む酸化剤を使用した前記多結晶材料の酸化により、前記多結晶材料の表面を化学的に改質すること、
b)アセトン中又はイソプロピル・アルコール中に溶解した錯化剤を使用して、前記多結晶材料の前記改質された表面層に錯化剤を結合すること、及び
c)前記改質された表面層を液相の化学溶液に曝すことにより、前記多結晶材料の錯体結合された改質された表面層を選択的に除去することであって、前記選択的に除去することは、前記多結晶材料の前記改質された表面層を水性溶液に曝して、前記改質された層を溶解することを含むこと、を含むことと、を含み、
b)及びc)は時間的に重複しない、方法。
【請求項11】
前記多結晶材料は遷移金属である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記多結晶材料は、ルテニウム(Ru)又はコバルト(Co)を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記錯化剤はクエン酸塩を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
b)の後で且つc)に先立って、溶媒で前記基板をすすぐことを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
基板をエッチングする方法であって、
多結晶材料から構成される第1の材料と、異なる材料から構成される第2の材料と、を有する前記基板を受け取ることであって、前記多結晶材料の露出した表面は、第1の表面粗さ値によって特徴付けられる表面粗さを有することと、
前記多結晶材料を選択的にエッチングすることにより、前記表面粗さを第2の表面粗さ値まで低減することであって、
前記選択的にエッチングすることは、
a)酸化剤を使用した前記多結晶材料の酸化により、前記多結晶材料の表面を化学的に改質すること、
b)錯化剤を前記多結晶材料の前記改質された表面層に結合すること、及び
c)前記改質された表面層を液相の化学溶液に曝すことにより、前記多結晶材料の錯体結合された改質された表面層を選択的に除去することであって、前記選択的な除去は、前記多結晶材料の前記改質された表面層を水性溶液に曝して、前記改質された層を溶解することを含むこと、を含むことと、を含み、
a)、b)、及びc)のうちの少なくとも2つは、時間的な重複がない、方法。
【請求項16】
前記酸化剤は、水中、アルコール中、又はアセトン中に溶解した酸素を含む酸素飽和化学溶液である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記多結晶材料は、ルテニウム(Ru)又はコバルト(Co)を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記錯化剤はクエン酸塩を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
b)の後で且つc)に先立って、溶媒で前記基板をすすぐことを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
乾式エッチングプロセスを使用して前記基板上の前記多結晶材料をエッチングすることを更に含み、前記第1の表面粗さ値は前記乾式エッチングプロセスの結果である、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年11月15日に出願された「Wet Atomic Layer Etching Using Self-Limiting and Solubility-Limited Reactions」と題された米国仮特許出願第62/767,808号明細書、及び2019年2月27日に出願された「Wet Atomic Layer Etching Using Self-Limiting and Solubility-Limited Reactions」と題された米国特許出願第16/287,658号明細書の優先権を主張するものであり、これらの明細書の開示内容は、その全体が参照により、本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本開示は、基板の処理に関する。特に、本開示は基板上の層をエッチングする方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
基板処理中に基板上の様々な層をエッチングするための様々な技術が知られている。プラズマエッチング及び湿式エッチングが、2つの良く知られた技術である。湿式エッチングは、基板の表面上に化学溶液を分配すること、又は基板を化学溶液中に浸漬することを含む。しばしば、化学溶液は、溶媒と、基板表面上の材料と反応するように設計された化学物質と、反応生成物の溶解を促進するための化学物質とを含む。エッチング液に基板表面を曝した結果、基板から材料が除去される。エッチング液の組成及び温度により、エッチング速度、限定性、及びエッチング後の基板表面上の残留材料を制御することができる。
【0004】
熱力学及び動力学の両方とも、エッチング液の調製において役割がある。エッチングを成功させるために、熱力学的にも動力学的にも、所望の反応が程よいことが必要である。多結晶材料をエッチングするためには、成功の要件ははるかに厳しくなる。これらの材料の場合、結晶子の形態又は環境に関わりなく、それぞれの個別の結晶子面及び粒界の幾何形状に対する除去速度は、実質的に同様であることが望ましい。ナノスケールのフィーチャの界面品質及び電気特性において、表面粗さは重要な役割を果たす。ナノスケールの多結晶材料をエッチングする場合、異なる結晶面と比較して粒界でのエッチング速度が異なると、エッチング中の表面の粗化を引き起こす。更に、材料の除去速度は、巨視的レベル及び微視的レベルで均一であるべきであり、大量生産にも適合する速度で生じることが望ましい。巨視的な均一性は、注意深い工学技術により対処することができるが、微視的な均一性は、エッチング自体の化学現象に依存する。
【0005】
基板構造の幾何形状が縮小し続け、構造の種類が進化するにつれて、基板をエッチングするという課題が大きくなってきている。これらの課題に対処するために利用されてきた1つの技術は、原子層エッチング(ALE)である。ALEプロセスは、一般に、1つ又は複数の自己律速型反応(self-limiting reaction)を通じて薄層を順次除去するプロセスを含むことが知られている。例えば、ALEは通常、原子の精度でエッチングできる技術、即ち、一度に1つか2、3の単分子層で材料を除去できる技術を指す。一般的に、ALE方式は、エッチング対象の表面の化学的改質(chemical modification)、その後の、改質された層の選択的除去に依拠する。従って、ALEプロセスは、エッチングプロセスを、表面改質(surface modification)と改質された表面の除去という連続した工程に分離することにより、性能を向上させる。そのようなプロセスは、多くの場合、複数の一連の周期的な層の改質工程及びエッチング工程を含む。改質工程は、露出した表面を改質でき、エッチング工程は、改質された層を選択的に除去できる。従って、一実施形態では、一連の自己律速型反応がおきることがあり、このサイクルが、繰り返し行われることがある。他の実施形態では、プロセスは、1回のサイクルのみを使用することがある。本明細書で使用される場合、ALEプロセスは、quasi-ALEプロセスを含むこともある。そのようなプロセスでは、一連の改質及びエッチング工程のサイクルを依然として使用することがある。しかしながら、除去工程は、純粋に自己律速型ではないことがある、というのも、改質された層を除去した後でエッチングは実質的に減速するが、完全には停止しないことがあるからである。既知のALE技術は、これまで、真空中又は気相中で達成されてきた。そのような技術は、プラズマ又は高温熱化学反応を利用して、材料表面を改質し、その後、化学物質又は配位子(ligand)交換反応を発生させて、改質された層を揮発させる。ALEの性質により、表面がエッチングされるにつれて、表面が滑らかになる。
【0006】
他の既知の連続エッチング技術には、自己律速型酸化工程として酸素プラズマ、オゾン、又は過酸化水素を使用してIII-V族半導体をエッチングすること、及び酸化物を選択的に除去するための酸湿式エッチングが含まれる。しかしながら、従来技術は連続したエッチングプロセスを提供するものの、活動的な酸化体が必要とされるので、原子層の制御が不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
既知のエッチング技術を用いて、許容可能な程度で、微視的及び巨視的なエッチング均一性要件を満たすことは、エッチングされるフィーチャのサイズが減少し続けるにつれて、益々困難になってきている。従って、改良されたエッチングプロセスを提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
エッチング中の、材料の微視的及び巨視的な均一性の両方を改善するための方法が、本明細書で開示される。これらの改善は、湿式ALE技術を使用することにより、材料の表面上での薄い自己律速型の層の形成及び溶解を通じて、達成することができる。多結晶材料をエッチングする場合、これらの自己律速型反応を使用して、エッチング中の表面のこの粗化を防止することができる。従って、本明細書に開示するように、湿式ALEプロセスは連続した自己律速型の反応を使用して、まず材料の表面層を改質し、次いで改質された層を選択的に除去する。
【0009】
一実施形態では、基板をエッチングする方法が提供される。この方法は、基板を受け取ることを含むことがあり、基板は露出した第1の材料を有し、第1の材料は多結晶材料を含む。この方法は更に、多結晶材料を選択的にエッチングすることを含み、この選択的にエッチングすることは、多結晶材料の表面を化学溶液に曝して改質された表面層を提供することにより、多結晶材料の表面を化学的に改質することと、改質された表面層を液相の化学溶液に曝すことにより、多結晶材料の改質された表面層を選択的に除去することと、を含む。
【0010】
一実施形態では、多結晶材料の表面の化学的改質は、酸化剤を使用した多結晶材料の酸化を含む。一実施形態では、酸化剤には、酸素含有気体環境、溶存酸素若しくは他の酸化剤を含有する化学溶液、又は表面の酸化に直接的に関与する水などの溶媒、が含まれる。別の実施形態では、酸化剤は、水、アルコール、又はアセトン中に溶解した酸素を含む、酸素飽和化学溶液である。
【0011】
別の実施形態では、化学的改質は更に、錯化剤を使用した多結晶材料の改質層の不動態化を含む。一実施形態では、錯化剤はクエン酸塩を含む。
【0012】
別の実施形態では、化学的改質は更に、基板をクエン酸に曝すことによる、多結晶材料中の改質層の不動態化を含む。別の実施形態では、化学的改質は、基板を分子状酸素及びクエン酸塩に曝すことを含む。
【0013】
別の実施形態では、上述した基板をエッチングする方法は更に、化学的改質に続いて、且つ選択的除去に先立って、基板を溶媒ですすぐことを含む。
【0014】
上述した基板をエッチングする方法の別の実施形態では、選択的除去には、水溶液に多結晶材料の改質層を曝して、改質層を溶解することが含まれる。
【0015】
他の実施形態では、化学的改質及び選択的除去が順次、交互に実施される、記載した基板をエッチングする方法が利用される。実施形態によっては、化学的改質及び選択的除去の順次の工程は、(1)時間的に部分的に重複しているか、又は(2)連続的に実施される。実施形態によっては、化学的改質及び選択的除去の順次の工程は、時間的に重複していない。
【0016】
更に別の実施形態では、上述した選択的エッチングを行う前に、多結晶材料を気相環境に曝すことにより、多結晶材料の選択的な乾式エッチングを行うことがある。
【0017】
一実施形態では、多結晶材料は、遷移金属又は貴金属であり得る。好ましい一実施形態では、多結晶材料はルテニウム又はコバルトのいずれかである。
【0018】
別の実施形態では、基板をエッチングする方法が説明される。この方法は、多結晶材料から構成される第1の材料と、異なる材料から構成される第2の材料と、を有する基板を受け取ることを含むことがあり、多結晶材料の露出した表面は、第1の表面粗さ値によって特徴付けられる表面粗さを有する。この方法は、基板を第1の湿式化学溶液に曝して多結晶材料を化学的に改質して、化学的改質層を生成することにより、且つその後、基板を第2の湿式化学溶液に曝して化学的改質層を溶解することにより、表面粗さを第2の表面粗さ値まで低減させることを更に含む。一実施形態では、多結晶材料は遷移金属である。別の実施形態では、多結晶材料の化学的改質には、酸化剤を使用した多結晶材料の酸化が含まれる。更に別の実施形態では、この方法は更に、乾式エッチングプロセスを使用して基板上の多結晶材料をエッチングすることを含み、この場合、第1の表面粗さ値は乾式エッチングプロセスの結果である。
【0019】
本発明及びその利点のより完全な理解は、添付の図面と併せて以下の記載を参照することによって得られ、図面では、同様の参照番号は、同様の特徴を示す。しかしながら、添付の図面は、開示された概念の例示的な実施形態のみを示し、従って範囲を限定するものと見なされるべきではなく、開示された概念に対して他の同等に効果的な実施形態も許され得ることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A】多結晶金属エッチングの動態解析を示す。
図1B】多結晶金属エッチングの動態解析を示す。
図1C】多結晶金属エッチングの動態解析を示す。
図2A】例示的な湿式ALE金属エッチングの例示的なエッチングサイクルを示す。
図2B】例示的な湿式ALE金属エッチングの例示的なエッチングサイクルを示す。
図2C】例示的な湿式ALE金属エッチングの例示的なエッチングサイクルを示す。
図2D】例示的な湿式ALE金属エッチングの例示的なエッチングサイクルを示す。
図3図2A図2Dに示したようなエッチングサイクル中の溶媒リンスの影響を示す。
図4】湿式ALE金属エッチングプロセスで発生することがあるピークツーピークの粗さの低下を示す。
図5】本明細書に記載する技術に従って基板を処理するための例示的な方法を示す。
図6】本明細書に記載する技術に従って基板を処理するための例示的な方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
エッチング中の、材料の微視的及び巨視的な均一性の両方を改善するための方法が、本明細書で開示される。これらの改善は、湿式ALE技術を使用することにより、材料の表面上での薄い自己律速型の層の形成及び溶解を通じて、達成することができる。多結晶材料をエッチングする場合、これらの自己律速型反応を使用して、エッチング中の表面の粗化を防止することができる。従って、本明細書に開示するように、湿式ALEプロセスは連続した自己律速型の反応を使用して、まず材料の表面層を改質し、次いで改質された層を選択的に除去する。
【0022】
本明細書に記載するように、湿式化学法を使用した連続した自己律速型反応を実施するための方法が提供される。この方法の湿式ALEプロセスを使用すると、エッチング溶液中の表面反応は自己律速型になるので、エッチングされる総量は、1サイクル当たりのエッチング量の整数倍になることがある。この理由のために、この方法は、「デジタルエッチング」と呼ばれることもある。本明細書に記載する技術は、基板処理技術において知られている広範な種類の材料に利用することができる。そのような材料は、多結晶材料を含むことがある。一実施形態では、多結晶材料は金属であり得る。実施形態によっては、金属は遷移金属であり得る。他の実施形態では、金属は貴の材料である。幾つかの特定の実施形態では、金属はルテニウム(Ru)又はコバルト(Co)から構成されることがある。
【0023】
一実施形態では、記載する湿式エッチング技術は、基板の表面を2種以上のエッチング溶液に順次曝すことからなる。第1のエッチング液は、自己律速型の態様で、基板の表面と反応する。第2のエッチング液は、反応生成物を溶解し、後に続くサイクルにおいて第1のエッチング液と自由に反応できる新しい表面を露出させる。反応生成物の揮発性に依拠する乾式プロセスである乾式ALEとは対照的に、この湿式エッチングALEは、除去するために反応生成物の溶解性に依拠する。自己律速型であるためには、表面反応生成物が、一般的に第1のエッチング液に不溶解性であることが望ましい。しかしながら、反応生成物は、デジタルエッチングにおいて材料が除去されるように、第2のエッチング液に容易に溶解する。
【0024】
更に、除去されることになる基板表面は、第1のエッチング液の成分とは容易に自己律速的に反応するが、第2のエッチング液とは反応しない。基板の反応性及び生成物の溶解性の違いは、共通の溶媒中の化学添加物が異なることにより、又は2つのエッチング液のそれぞれに異なる溶媒を使用することにより、実現することができる。
【0025】
記載する方法は、原子層制御をもたらす。この方法は、湿式化学を使用してエッチングされることになる任意の種類の材料に一般化することができる。この方法は、不動態層の溶解性における溶媒選択の役割を拡大することができる。更に、反応生成物の溶解度を制御するための方法として、錯化剤を使用することができる。
【0026】
本明細書に記載する技術は、他のエッチング方式に勝る複数の利点のある機会を提供する。この技術は、エッチング総量の正確な制御、表面粗さの制御、及びウェハスケールの均一性の向上などの、ALEの利点を提供する。この技術は、湿式エッチングの幾つかの利点も提供し、利点とは例えば、エッチングチャンバの単純さ、大気のエッチング条件、及び達成できるスピード、などである。
【0027】
湿式ALEは、基板表面を複数のエッチング液に順次曝すことにより、達成される。多くの場合、各エッチング液は、以下のうちの1つ又は複数を含むことがある溶媒を含む:基板表面と反応する化学物質、基板表面上に形成された生成物と反応する化学物質、基板表面上に形成された生成物の溶解を促進する化学物質、又は基板表面の洗浄を促進する化学物質。基板は、エッチング液の交差汚染を防止するために、連続したエッチング液への曝露の間に不活性溶液ですすがれることがある。基板は、更なる化学反応を推進するために、エッチング液曝露の間に、気相の反応物に曝されることもある。
【0028】
湿式ALEプロセスにおけるエッチング液は、一般的に、自己律速的に基板表面と反応する。エッチング液は、基板表面と反応して基板表面上に化学的に改質された層を形成することがあり、改質された層と反応することがあり、改質された層を溶解することがあり、又はこれらのプロセスの何らかの組み合わせを行うことがある。一般的に、エッチング液は選択的であり且つ自己律速型であることが望ましい。基板表面はエッチング液によって影響を受けることがあるが、下にある層は変化しないままであることも望ましい。自己律速型反応の厚さは、一般的に、原子スケールである。必須ではないが、1つの単分子層が理想的である。
【0029】
単一のエッチング液への曝露は、広範な技術によって達成することができ、これには、基板を浴に浸漬すること、基板をエアロゾルスプレーに曝すこと、又はスピンチャンバ内で基板上にエッチング液を分配すること、が含まれる。いずれの場合にも、エッチング液の分量は、基板表面全体にわたって自己律速値まで反応を推進するのに十分であることが好ましい。
【0030】
本明細書に開示する技術で利用される基板は、材料のエッチングが望まれる任意の基板であり得る。例えば、一実施形態では、基板は、その上に1つ又は複数の半導体処理層(その全てが一緒に基板を構成し得る)が形成された半導体基板であり得る。一実施形態では、基板は、幅広い種類の構造及び層をもたらす複数の半導体処理工程を施された基板であることがあり、それらの半導体処理工程の全てが基板処理技術で知られている。一実施形態では、基板は、形成された様々な構造及び層を含む半導体ウェハであり得る。
【0031】
上述したように、本明細書に記載する技術を使用して、広範な種類の材料をエッチングすることができる。そのような材料は、多結晶材料を含むことがある。そのような材料は、遷移金属及び貴金属を含むがこれらには限定されない金属を含むことがある。1つの例示的な実施形態では、エッチングされることになる材料は、多結晶コバルト材料であり得る。以下に示されるように、本明細書に記載する技術は、多結晶コバルト材料のエッチングに関連して説明される。しかしながら、当業者であれば、そのような例は単なる例示に過ぎず、他の材料を使用することもできることを、認識するであろう。
【0032】
多くの化学物質が多結晶コバルトをエッチングすることができるが、エッチング中に表面粗さを制御することは困難である。粒界での孔食及び優先的エッチングを防止するのは困難である。ゼロ価のコバルトは一般的に不溶解性であるので、まず酸化させる必要がある。本明細書で使用する場合、コバルトの酸化とは、コバルトの形式電荷を増加させることを指す。次いで、酸化された種を、溶液に溶解させることができる。一般的な2段階エッチングプロセス(酸化及びそれに続く溶解)の動態解析は、3つの関連する反応速度を示す。それらは、粒界での酸化速度Kox,b、粒表面での酸化速度Kox,g、及び酸化物溶解速度Kdである。これらの反応の相対速度によって、エッチング後の粗さが決まる。これらの反応は図1A図1Cに表わされており、これらの図は、多結晶金属エッチングの動態解析を示す。図1A図1Cに示すように、(エッチングされることになる)多結晶金属、例えばコバルト105は、誘電体110に囲まれており、酸化金属領域115A、115B、及び120が、コバルト105の上部に形成されている。図1Aに示すように、酸化金属領域115Aは、コバルト105の粒界125に形成される。酸化金属領域115Bは、粒表面上に形成される。式1及び式2は、それぞれ粒表面及び粒界での酸化についての酸化式を示す。
【数1】
式3は、反応にクエン酸を利用した場合の、酸化コバルトの例示的な溶解反応を示す。
【数2】
Kox,b(粒界での酸化速度)がKox,g(粒表面での酸化速度)よりも大きい場合、粒界で優先的酸化が発生することがある。酸化反応速度(Kox)が、溶解反応速度(Kd)よりもはるかに大きい場合、図1Bに示すように、表面粗さの増加は起こらないことがある(図1Bは、酸化金属領域120が構造表面上の酸化コバルトである構造を示す)。酸化反応速度(Kox)が溶解反応速度(Kd)以下である場合、図1Cに示すように、表面粗さが増加することがある。上記の式では、酸化されたコバルトは酸化コバルトとして表わされる。しかしながら、形成される酸化されたコバルトは、酸化コバルト、水酸化コバルト、オキシ水酸化コバルト、又はこれらの種の何らかの組み合わせ、から構成されることがある。
【0033】
具体的には、酸化が溶解よりも速い場合、エッチング溶液に差し出される表面は、酸化された金属になる。酸化された層は、自己律速しない限り、厚さが増え続けることになる。自己律速する場合、金属がエッチングされるにつれて、制限された厚さの酸化層が、コバルトを通って下方に広がる。この場合には、滑らかなエッチングが生じる、というのも、粒界及び粒表面での酸化速度は重要ではない-溶解が、速度を決定する工程になる、からである。しかしながら、溶解が酸化よりも速い場合、金属表面がエッチング溶液と接触することになる、というのも、酸化されたコバルトは、形成されるのと同じ速さで溶液に溶解するからである。これは、エッチング速度が酸化動態によって制御される状況であるので、粒界での酸化速度がより速くなると、粒界でのエッチングがより速くなり、孔食、及び表面粗さの増加につながる。
【0034】
以下で説明するように、以下は、エッチングプロセスの酸化工程と溶解工程とを時間的に分離するための方法である。各反応は、その反応独自のエッチング溶液中で実行される。酸化工程は自己律速型であり、溶解工程は酸化金属だけを除去するように選択的である。これらの条件が一般的に満たされる場合、エッチング総量は自己律速酸化物の厚さの整数倍になる。そのようなプロセスは、エッチングが進行するにつれて表面粗さを低減させる湿式ALEプロセスを提供する。
【0035】
溶解速度よりもはるかに速い酸化速度を提供するために、酸化生成物が不溶解性である溶媒を用いて酸化工程を実施することがある。これにより、溶解で材料を失うことなく、自己律速酸化層を形成することが可能になる。その後、酸化表面をエッチング液に曝すことができ、エッチング液は、表面を更に酸化させることなく、酸化層を溶解する。錯化剤を使用して、酸化金属種の溶解性を促進することができる。これらの錯化剤が酸化エッチング液中に存在する場合、自己律速金属錯体が形成される。溶解に使用されるエッチング液が錯体を溶解できるが酸化金属は溶解できない場合、溶解は依然として自己律速的であるので、エッチング液も酸化していることがある。複数のエッチング液を用いて錯体形成し溶解する可能性もある。例えば、エッチング液1は、表面上に錯体1を形成する。エッチング液2は錯体1を溶解し、表面上に錯体2を形成する。次いで、エッチング液1は錯体2を溶解し、再び錯体1を形成することにより、サイクルを継続する。そのような技術により、有利にも、サイクル当たりのエッチング速度を増加させることができる。
【0036】
コバルトをエッチングするために、一実施形態では、酸化剤として酸素が使用され、錯化剤はクエン酸塩を含む。一実施形態では、酸化剤は、酸素含有気体環境又は酸素飽和化学溶液を含む。例示的な酸素飽和化学溶液としては、水、アルコール、又はアセトン中に溶解した酸素が挙げられるが、これらには限定されない。一実施形態では、錯化剤としてクエン酸が使用される。クエン酸は、酸化コバルトと反応して、水溶液に可溶な種を形成する。クエン酸と酸化コバルトとの間の反応も、自己律速型である。酸化コバルト表面がクエン酸に曝されたときに、単一の単分子層の生成物が形成される。クエン酸は、金属コバルトとは反応しない。空気又は溶液中の溶存酸素への曝露により、自己律速型で自然のままの酸化物層がコバルト上に形成される。この自然のままの酸化物層は、酸化コバルト、水酸化コバルト、オキシ水酸化コバルト、又はこれらの種の何らかの組み合わせ、から構成されることがある。これにより、湿式ALEの酸化部分が達成される。錯体形成工程には、アセトン又はイソプロピル・アルコールなどの非水溶媒を使用することができる。クエン酸コバルトは、これらの溶媒には不溶解性であるので、単分子層のクエン酸コバルトが、自己律速型不動態層として形成される。クエン酸の非水溶液を、エッチング浴として使用するか、又はスピンチャンバ内で基板表面上に分配することがある。この工程の間に、自己律速型クエン酸コバルト層が形成される。この反応は速く、自己律速的である。溶液が溶存酸素及びクエン酸の両方を含んでいる場合、酸化工程及び錯体形成工程は、同じ溶液中で達成されることがある。エッチング液は、これらの成分の両方を含んでいることがある、というのも、両方の反応とも自己律速的であり、溶液中の分子状酸素とクエン酸との間の反応はないからである。
【0037】
錯体形成工程の後、溶媒リンスを行って、自己律速型コバルト錯体を邪魔することなく、過剰なクエン酸溶液を除去することがある。このリンスは、溶媒浴で、又はスピンチャンバ内で基板上に溶媒を分配することにより、達成することができる。錯体形成工程に使用される溶媒を、リンス工程に使用することができるが、錯化剤が可溶性であるが金属錯体が可溶性ではない任意の溶媒を使用することもできる。このリンス工程は、酸化/錯化溶液と溶解溶液との混合を防ぐ。これらの溶液の混合物は、自然発生的にコバルトをエッチングすることがある。リンス工程をしないで済ますと、コバルトの自然発生的なエッチングがおきることがあり、デジタルエッチングの利点の多くが妨害される。
【0038】
錯体形成及び溶媒リンスの後で、水溶液を使用してクエン酸コバルト層を除去する。基板を水浴に浸すことがあるか、又はスピンチャンバ内で基板表面上に水を分配することがある。クエン酸コバルトは水溶液に容易に溶解するが、酸化コバルト及び金属コバルトはそうではない。このプロセスは、図2A図2Dの4つの工程で示されており、これらの図は、1つのエッチングサイクルを示す。
【0039】
図2Aに示すように、エッチングサイクルの第1の工程は、コバルト215の表面を酸化することを含む。図2Aに示すように、コバルト215は誘電体220の中に埋め込まれている。コバルト215の表面の酸化は、コバルト215の表面を大気、酸素環境、又は水、アルコール、アセトン、若しくは他の溶液の酸素飽和溶液に曝すことにより、達成することができる。図2Aに示すように、コバルト215は、アセトン/イソプロピル・アルコール225中の酸素205に曝される。その結果、図2Bに示すように、コバルト215の上方に自己律速型酸化コバルト層235が形成される。次いで、クエン酸がアセトン又はイソプロピル・アルコールのいずれか中で溶解することにより、図2Bでクエン酸塩210によって示されるように、表面が、非水性クエン酸溶液に曝される。図2Cに示すように、酸化コバルト層235への曝露時に、自己律速型クエン酸コバルト錯体245層が形成され、図2Cでは、酸化コバルト層235の一部が消費されている。最終的に、1回又は複数回の錯体形成サイクルが酸化コバルト層235を消費する。次いで、図2Dに示すように、クエン酸コバルト錯体245が溶液中に除去されることにより示されるように、自己律速型クエン酸コバルト錯体245層は、水リンスの水230によって除去される。酸化物消費/クエン酸コバルト錯体の形成、及びクエン酸コバルト錯体の除去の自己律速速度は、同じである必要はないことに留意されたい。2つのエッチング溶液が混合した場合に自然発生的なエッチングを防止するために、図2Cの工程と図2Dの工程との間に、溶媒リンスが必要であることがある。更に、それらの工程で使用される溶液を酸素添加することにより、様々な工程を組み合わせることができるが、一般的に、それらの溶液が混合した場合に発生する自然発生的なエッチングを防止するために、図2Dの工程と図2Bの工程との間で表面をすすがなければならない。
【0040】
上述した特定の酸化溶液、錯化溶液、及び溶解溶液は単なる例示に過ぎないことが認識されよう。従って、エッチングされる特定の材料にとって適切であり得るように、広範な溶液を利用することができ、本明細書に記載する概念は、記載した特定の酸化溶液、錯化溶液、及び溶解溶液には限定されない。例えば、酸素、オゾン、水、亜酸化窒素、又は過酸化水素などの酸化剤、クエン酸塩、酢酸塩、カルボン酸塩含有種、又はアミン含有種などの錯化剤、及びアセトニトリルなどの溶解溶液が利用されることがある。
【0041】
図3に、溶媒リンスがある場合とない場合のコバルトのエッチング挙動が示されており、図3は、厚さ対エッチングサイクル数をグラフ化したものである。具体的には、図3は、プロセスの複数のサイクルに渡る、1サイクル当たりのエッチング量を示す。溶媒リンスありの場合、プロット310によって示されるように、エッチングサイクル毎に約0.28nmのコバルトが除去される。このエッチング量は、単一の単分子層のコバルトに近い。プロット305で示すように、リンス工程無しの場合、エッチングサイクル毎に、2倍を超える材料、0.6nmのコバルトが除去される。これは、エッチング溶液の混合に起因して、自然発生的なエッチングが発生していることを示す。
【0042】
使用される溶媒及び酸化剤に基づいて、自己律速型酸化物の厚さを変えることができる。異なる錯化剤を使用することにより、金属錯体層の自己律速の厚さを変えることができる。分子状酸素及びクエン酸の場合、約0.28nmのコバルトがエッチングサイクル毎に除去される。より強力な酸化剤が、エッチングサイクル毎に除去されるコバルトの量を増加させる訳ではなく、これは、クエン酸コバルト層の厚さがサイクル毎のエッチング速度を決定することを示唆している。
【0043】
同じエッチング化学反応を達成するための、連続的なエッチング液曝露を構造化する複数の方法がある。溶存酸素又は何らかの他の酸化剤及びクエン酸を含有するエッチング液を使用して、自己律速型クエン酸コバルト層を形成することができる。その代わりに、溶液又は気相のいずれかの酸化エッチング液への連続曝露と、それに続くクエン酸含有エッチング液への曝露を、使用することができる。これらの両方の場合において、その後の水性リンスによって、クエン酸コバルト層が除去される。第3の技術は、水性リンス内に酸化剤を含めることである。このリンスは、自己律速型クエン酸コバルト層を除去するのに加えて、自己律速型酸化コバルト層を形成する。非水性クエン酸溶液へのその後の曝露により、次のエッチングサイクルのために、自己律速型クエン酸コバルト層が改質される。
【0044】
開示するエッチング化学反応を使用すると、エッチング中のコバルト膜の表面粗さが低下する。一実施形態では、コバルト膜の、受け取られた二乗平均平方根(RMS)粗さは、約1.5nmのRMS粗さであった。これは、10nmのコバルトがエッチングされた後で、約0.6nmまで減少する。このレベルの粗さが、追加のエッチングの間維持される。30nmのコバルトが除去された後では、RMS粗さは約0.6nmのままである。図4に示すように、ピークツーピークの粗さも低減される。図4は、断面(profile)の高さ対基板の位置をグラフにしたものである。より具体的には、図4は異なる量の湿式ALEの後の、コバルト膜のこのピークツーピーク粗さを示す。エッチングされていない参照用の初期粗さが、プロット405として示されている。この>5nmという初期粗さは、プロット415に示すように、たった10nmのコバルトを除去した後には、約1.5nmに減少する。この改善は、30nmのコバルトエッチングを示すプロット410によって示されるように、追加のエッチングの間も維持される。
【0045】
コバルト湿式ALEはスピンチャンバ内で実施することができ、スピンチャンバでは、エッチング溶液が基板表面に分配される間、基板が回転する。基板の動きにより、基板表面にわたってエッチング液が均等に分布する。各エッチング液の分配時間は、基板表面全体に渡って自己律速型反応厚さが達成されるように、十分に長くなければならない。分配される化学物質は、デジタルエッチングを達成するために、エッチング成分間で切り替えられることがある。錯体形成溶液と溶解溶液との合間にリンス溶液を分配して、それらの間の遷移における溶液の過渡的な混合中の、コバルトの自然発生的なエッチングを防止することがある。酸化/錯体形成とそれに続く錯体の溶解によって規定される単一のエッチングサイクルを、適切な量の材料が除去されるまで、繰り返すことができる。
【0046】
スピンチャンバの使用は単なる一実施形態に過ぎず、多様な種類の異なるプロセスツ-ルを使用して、本明細書に記載する技術を実施することができることが、認識されよう。代替として、例えば、基板を、エッチング液を含む化学浴に浸すことができる。基板を、順番に各エッチング液の浴に順次浸すことがあり、これには、化学物質の交差汚染を防止するための中間リンス浴を伴う。このプロセスは、適切な量の材料が除去されるまで、繰り返されることがある。更に別の実施形態では、このプロセスは、各反応物のエアロゾルスプレー、霧、又はミストと共に利用されることがある。更に、プロセスの1サイクルの中であっても、反応物を適用するために様々な記載したツールの組み合わせが使用されることがあることが、認識されよう。
【0047】
従って、本明細書に記載するように、滑らかな層を提供するために自己律速型プロセスが利用される技術が、層をエッチングするために提供される。そのような技術の1つの用途は、完全に自己整合したビア用の凹部エッチングのために金属表面をエッチングするためのものであり得る。そのような用途では、誘電体材料中の金属が充填されたトレンチは、金属の表面粗さを増加させることなく、選択的にエッチングされなければならない。そのような用途は、単なる例示に過ぎず、本明細書に記載する技術は他の多くの用途に使用できることが認識されよう。
【0048】
一実施形態では、本明細書に記載する湿式エッチング技術を、プラズマエッチングなどの乾式エッチング技術と組み合わせることもある。例えば、一実施形態では、選択的湿式エッチングを行う前に、多結晶材料を気相環境に曝すことによって、多結晶材料の選択的乾式エッチングをまず遂行することがある。次いで、本明細書に記載する湿式エッチング技術を実施することがある。このようにして、乾式処理と湿式処理との組み合わせを達成することができ、湿式処理は、本明細書に記載する湿式ALEの利点を提供する。従って、例えば、湿式エッチングを利用して、乾式エッチングプロセスの後に存在する表面粗さを低減することができる。
【0049】
図5図6は、本明細書に記載の処理技術を使用するための例示的な方法を示す。図5図6の実施形態は、単なる例示であり、追加の方法が、本明細書に説明された技術を利用できることが認識されるであろう。更に、説明された工程は、排他的であることを意図していないので、図5図6に示す方法に追加の処理工程を追加することができる。更に、工程の順序は、異なる順序が生じてもよく、且つ/又は様々な工程が組み合わされるか若しくは同時に実施されてもよいので、図に示す順序には限定されない。
【0050】
図5は、基板をエッチングするための方法を示す。この方法は、基板を受け取る工程505を含み、基板は露出した第1の材料を有し、第1の材料は多結晶材料を含む。次いで、この方法は、多結晶材料を選択的にエッチングする工程510を含み、この選択的にエッチングすることは、多結晶材料の表面を化学溶液に曝して改質された表面層を提供することにより、多結晶材料の表面を化学的に改質することと、改質された表面層を液相の化学溶液に曝すことにより、多結晶材料の改質された表面層を選択的に除去することと、を含む。
【0051】
図6は、基板をエッチングするための方法を示す。この方法は、多結晶材料から構成される第1の材料と、異なる材料から構成される第2の材料と、を有する基板を受け取る工程605を含み、多結晶材料の露出した表面は、第1の表面粗さ値によって特徴付けられる表面粗さを有する。次いで、この方法は、基板を第1の湿式化学溶液に曝して多結晶材料を化学的に改質して、化学的改質層を生成することにより、その後、基板を第2の湿式化学溶液に曝して化学的改質層を溶解することにより、表面粗さを第2の表面粗さ値まで低減させる工程610を含む。
【0052】
本発明の更なる修正形態及び代替の実施形態が、本明細書の記載を考慮して当業者には明らかになるであろう。従って、本明細書の記載は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実施する方法を当業者に教示する目的のためのものである。本明細書に示され且つ記載された本発明の形態及び方法は、現在好ましい実施形態として解釈されるべきであることを理解されたい。本明細書で例示及び記載されたものの代わりに等価な技術を使用することができ、また本発明の特定の特徴は、他の特徴の使用とは無関係に利用することができ、これらは、全て本発明の本明細書の記載の利益を享受した後に当業者に明らかになるであろう。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】