(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】結晶性2’-フコシルラクトースを得る方法
(51)【国際特許分類】
C07H 3/06 20060101AFI20220112BHJP
C07H 1/06 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
C07H3/06
C07H1/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021521243
(86)(22)【出願日】2019-10-17
(85)【翻訳文提出日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 EP2019078147
(87)【国際公開番号】W WO2020079114
(87)【国際公開日】2020-04-23
(32)【優先日】2018-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プール,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ウロッチ,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】オイドマン,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】レッツェル,アン-カトリン
(72)【発明者】
【氏名】シュローダー,ハートウィグ
(72)【発明者】
【氏名】マリーズ,ジャセック
(72)【発明者】
【氏名】シーベルト-ルドヴィク,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】カッパート,エミエル ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,チャン ファン
(72)【発明者】
【氏名】バロス グロス,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ビアテルハウス,マーティン
【テーマコード(参考)】
4C057
【Fターム(参考)】
4C057AA04
4C057AA14
4C057BB04
4C057CC01
(57)【要約】
本発明は、主成分として2'-FL、並びに原料中の単糖及びオリゴ糖の合計量に対して、少なくとも0.5重量%、しばしば少なくとも1重量%、特に少なくとも2重量%、とりわけ少なくとも5重量%、殊に少なくとも8重量%の2'-FLと異なる1種以上の単糖又はオリゴ糖を含む2'-FL原料から結晶性2'-フコシルラクトースを得る方法であって、a)水の合計量に対して、10重量%以下、好ましくは7重量%以下、より好ましくは5重量%以下の有機溶媒を含む水中の2'-FL原料の溶液を用意するステップ、b)溶液中で制御された過飽和の条件を誘導することによってステップa)で用意される溶液から2'-FLの結晶化を達成するステップ、及びc)母液から結晶性2'-FLを分離するステップを含み、ステップb)の制御された過飽和の間、ステップb)の間に存在する水の合計量に対して、10重量%以下、好ましくは7重量%以下、より好ましくは5重量%以下の有機溶媒が存在する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分として2'-FL、並びに原料中の単糖及びオリゴ糖の合計量に対して、少なくとも0.5重量%、しばしば少なくとも1重量%、特に少なくとも2重量%の2'-フコシルラクトースと異なる1種以上の単糖又はオリゴ糖を含む2'-フコシルラクトース原料から結晶性2'-フコシルラクトースを得る方法であって、
a)水の合計量に対して、10重量%以下、好ましくは7重量%以下、より好ましくは5重量%以下の有機溶媒を含む水中の2'-フコシルラクトース原料の溶液を用意するステップ、
b)溶液中で制御された過飽和の条件を誘導することによって、2'-フコシルラクトースの結晶化を達成するステップ、及び
c)母液から結晶性2'-フコシルラクトースを分離するステップを含み、
ステップb)の制御された過飽和の間、ステップb)の間に存在する水の合計量に対して、10重量%以下、好ましくは7重量%以下、より好ましくは5重量%以下の有機溶媒が存在する方法。
【請求項2】
0~52℃の範囲の温度で2'-フコシルラクトースの結晶化が達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
52超~105℃の範囲の温度で2'-フコシルラクトースの結晶化が達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
制御された過飽和の条件下での溶解した2'-フコシルラクトースの濃度cと2'-フコシルラクトースの平衡溶解度c*との比c:c*が1:1超~1.5:1であるように、制御された過飽和の条件が誘導され、それによって2'-フコシルラクトースの結晶化を達成する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
制御された過飽和が水の除去及び/又は冷却により誘導される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
制御された結晶化が、固体2'-フコシルラクトース、特に結晶性2'-フコシルラクトースの存在下で達成される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
結晶化が蒸発結晶化として実行される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
制御された過飽和の条件下の溶解した2'-フコシルラクトースの濃度が、400~750g/Lの範囲である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
2'-フコシルラクトース原料がラクトース、ジフコシルラクトース、ラクツロース及びフコシル化ラクツロースから選択される少なくとも1種のオリゴ糖を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップa)において用意される2'-フコシルラクトースの溶液が、溶液の合計重量に対して5000ppm以下の固体不溶性材料を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップa)において用意される2'-フコシルラクトースの水溶液が発酵プロセスによって得られる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップa)において用意される2'-フコシルラクトースの水溶液が、2'-フコシルラクトース結晶の水性懸濁液を含む連続作動される結晶化装置に供給される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップb)が、
b1)2'-フコシルラクトースの水性懸濁液を含む結晶化装置に2'-フコシルラクトースの水溶液を連続的に供給するステップ、
b2)結晶化装置に含まれる2'-フコシルラクトースの水性懸濁液から連続的に水を除去して、制御された過飽和の条件を維持するステップ、
b3)結晶化装置から2'-フコシルラクトースの水性懸濁液を連続的に取り出すステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップb3)において取り出された2'-フコシルラクトースの水性懸濁液の一部が、ステップb1)の2'-フコシルラクトースの水溶液と混合され、混合物が結晶化装置へフィードバックされる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
2'-フコシルラクトース原料の溶液が、バッチ又はフェドバッチで作動する結晶化装置の結晶化にかけられる、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
結晶化が固体2'-フコシルラクトースの存在下で20~52℃の範囲の温度で実行され、結晶化が、制御された過飽和の条件下の水性過飽和溶液から達成され、水性過飽和溶液が410~630g/Lの範囲の濃度の溶解した2'-フコシルラクトースを有する、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ステップc)において得られた母液の少なくとも一部が、母液中の制御された過飽和の条件を誘導することによる2'-フコシルラクトースの結晶化にかけられる、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
母液の少なくとも一部が、ステップb)を実行する前に2'-フコシルラクトース原料の溶液と混合される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
第1の結晶化ステップ及び第2の結晶化ステップを含み、
ステップa)において用意された2'-フコシルラクトース原料の水溶液が、第2の結晶化ステップの結晶化にかけられ、
第2の結晶化ステップにおいて、2'-フコシルラクトースの結晶化が、ステップb)による溶液中で制御された過飽和の条件を誘導することによって達成され、
第2の結晶化ステップにおいて得られた結晶性2'-フコシルラクトースの水性懸濁液が、固体-液体分離にかけられて結晶性2'-フコシルラクトース及び母液を得、
固体-液体分離で得られた母液が第1の結晶化ステップへ導入される、
請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
第1の結晶化ステップにおいて得られた結晶性2'-フコシルラクトースが、第2の結晶化ステップを実行する前に2'-フコシルラクトース原料の水溶液に溶解される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ステップc)の前に、結晶化がほとんど完結した場合に、水混和性有機溶媒が、ステップb)において得られた懸濁液に添加される、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
主成分として2'-FL、並びに原料中の単糖及びオリゴ糖の合計量に対して、少なくとも0.5重量%、しばしば少なくとも1重量%、特に少なくとも2重量%の2'-フコシルラクトースと異なる1種以上の単糖又はオリゴ糖を含む2'-フコシルラクトース原料から、2'-フコシルラクトースの結晶形A、結晶形B又は結晶形IIのいずれかを選択的に得る方法であって、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法を実施するステップを含み、ただし、
- 2'-フコシルラクトースの結晶化が、0~52℃の範囲、特に0~50℃の範囲の温度で達成されて2'-フコシルラクトースの結晶形A又は結晶形Bを得ること、
- 又は、2'-フコシルラクトースの結晶化が52℃を超える、特に53℃を超える温度で達成されて2'-フコシルラクトースの結晶形IIを得ることのいずれかを条件とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2'-フコシルラクトース原料から結晶性2'-フコシルラクトースを得る方法、特に2'-フコシルラクトースの水和物形A又は無水物形IIのいずれかを選択的に得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2'-フコシルラクトース(CAS No.:41263-94-9:α-L-フコピラノシル-(1→2)-O-β-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-D-グルコピラノース、以下2'-FL)は、母乳に比較的多量に見られるオリゴ糖である。母乳中に存在する2'-FLは、それに起因して、母乳で育てられている新生児において感染のリスクを低下させることが、様々に報告されている(例えば、Weichertら、Nutrition Research、33(2013)、10巻、831~838; Jantscher-Krennら、Minerva Pediatr. 2012、64(1)83~99; Morrowら、J. Pediatr. 145(2004)297~303を参照のこと)。したがって、2'-FLは、栄養補助食品の成分として、特にヒト化乳製品用、殊に乳児栄養用の添加物として、特に興味深い。
【0003】
古典的な化学的又は生化学的手段による2'-O-フコシルラクトースの調製については、文献に様々に記載されている(古典的な化学的手段については、以下を参照のこと:例えば米国特許第5,438,124号、国際公開第2010/070616号、国際公開第2010/115934号、国際公開第2010/115935号、国際公開第2016/038192号及び国際公開第2017/153452号;生化学的手段については、以下を参照のこと:例えばDrouillardら、Angew. Chem. Int. Ed. 45, 1778(2006)、国際公開第2010/070104号、国際公開第2012/007481号、国際公開第2012/097950号、国際公開第2012/112777号、国際公開第2013/139344号、国際公開第2014/086373号、国際公開第2015/188834号及び国際公開第2016/095924号)。
【0004】
主に、形質転換された微生物、例えば、形質転換された大腸菌を使用した発酵プロセスによる2'-FLの産生は、経済、環境双方上の理由で見込みがある。しかしながら、2'-FLの単離には時間がかかり、通常、以下を必要とする。
- 遠心分離による生成物を含有する上清の分離、
- 水で洗浄して塩などの水溶性汚染物質、アミノ酸及びタンパク質断片を除去した生成物の活性炭床での吸着
- アルコール又は水性アルコールを用いる生成物の溶離、及び
- 最後になるが重要なのは、ゲル浸透クロマトグラフィー又は炭セライト床上のフラッシュクロマトグラフィーによる、ラクトース及びフコースなどの他の炭水化物からの2'-FLの分離。
【0005】
この単離方法の主要な欠点は、純物質を得るため、又は、少なくとも目標化合物に富むがなお望まれない誘導体を含む混合物を得るためのいずれかでクロマトグラフ分離が必要であることである。クロマトグラフ分離を繰り返せば純度の改善をもたらすことができるが、供給溶液及びカラム充填物を扱い、分離を行い、場合によって殊に大規模に又は工業規模で充填物を再生成する高いコスト及び比較的長い技術的な時間は、不利及び/又は煩雑である場合がある。
【0006】
結晶化又は再結晶は、主に反応混合物から生成物を単離しそれを汚染物から分離し、精製された物質をそれによって得るための、簡単で安価な方法である。したがって、結晶化を使用する単離又は精製は、全体の技術プロセスを堅牢且つ費用効率をよくすることができるため、それは他の処置と比較して、主として有利で魅力的である。古典的有機合成によって調製された2'-FLの結晶化は、2'-FLの単離又は精製に効率的な手段であるが、2'-FLの発酵による産生によって得られる生成物は、特に2'-FL以外のオリゴ糖、また単糖も含むかなりの量の副生物を含んでいるので、結晶化は、非古典的有機合成によって調製された2'-FLに容易には適用することができない。これらの単糖及びオリゴ糖は、類似の極性及び、したがって、類似の溶解性を有するので、結晶化プロセスによって分離することは困難である。
【0007】
Kuhnら(Chem.Ber.1956,2513頁)は、クロマトグラフィーを繰り返して精製された2'-FLが容易に結晶化せず、シロップのままであると報告している。著者は、2'-FLの水溶液を長期間放置した場合に形成された2'-Flの結晶はわずかであったと記載している。多量の結晶性2'-FLは、相当な量の有機溶媒との水の混合物を含む溶液からのみ得ることができた。
【0008】
国際公開第2014/086373号は、オリゴ糖、例えば発酵培養液から2'-FLを得る方法であって、発酵培養液を、好ましくはそこからタンパク質を除去した後に凍結乾燥して乾燥粉を生成するステップ、脂肪族アルコール、例えばメタノールを用いて乾燥粉を処理してオリゴ糖を溶かし、次いで、アルコール系溶液から結晶化するステップを含む方法を記載している。この方法は、発酵培養液の予めの凍結乾燥及び有機溶媒の使用を必要とするので、時間がかかる。
【0009】
国際公開第2015/188834号は、2'-FL及びフコシル化オリゴ糖、例えばジフコシルラクトースを含有する水溶液から2'-FLを結晶化する方法であって、1,2-フコシルトランスフェラーゼをコードする組み換え遺伝子を有する遺伝子的に改変された細胞の使用による2'-FLの発酵による産生を含み、非炭水化物固体及び汚染物質から上清を分離するステップ、及び2'-FLの結晶化を達成するためにC1-C4-アルカノールを添加するステップを含む方法を記載している。
【0010】
国際公開第2016/095924号は、2'-FL及びフコシル化オリゴ糖、例えばジフコシルラクトースを含有する水溶液から2'-FLを結晶化する方法であって、国際公開第2015/188834号に記載のように2'-FL及びフコシル化オリゴ糖の水溶液を用意するステップ、及び2'-FLの結晶化を達成するために水溶液に酢酸を添加するステップを含む方法を記載している。
【0011】
国際公開第2014/009921号は、2'-FLの種々の多形相を記載している。純粋な2'-FLは、例えば純粋な多形相Aの水からの再結晶によって多形相Bを得ることができるが、2'-FLと異なる相当な量の単糖又はオリゴ糖をさらに含む2'-FL含有原料の精製は、その中に記載されていない。
【0012】
国際公開第2018/164937号は、水溶液から2'-FLを結晶化させる方法を記載し、60℃より高い温度で水性過飽和溶液から2'-FLを析出させることを必要とする。この方法によって、2'-FLの結晶性無水物、すなわち、2'-FLのII形が得られ、これは国際公開第2011/150939号に記載されている。
【0013】
結晶を得る方法は、なお結晶化の間に相当な量の有機溶媒を必要とし、しばしば結晶性材料中に捕捉されるのでこれを除去するのが難しい。特に、乳児及び有機溶媒の使用について、有機溶媒を完全には除去することができないというリスクを常に負うので受け入れられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5,438,124号
【特許文献2】国際公開第2010/070616号
【特許文献3】国際公開第2010/115934号
【特許文献4】国際公開第2010/115935号
【特許文献5】国際公開第2016/038192号
【特許文献6】国際公開第2017/153452号
【特許文献7】国際公開第2010/070104号
【特許文献8】国際公開第2012/007481号
【特許文献9】国際公開第2012/097950号
【特許文献10】国際公開第2012/112777号
【特許文献11】国際公開第2013/139344号
【特許文献12】国際公開第2014/086373号
【特許文献13】国際公開第2015/188834号
【特許文献14】国際公開第2016/095924号
【特許文献15】国際公開第2014/009921号
【特許文献16】国際公開第2018/164937号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Weichertら、Nutrition Research、33(2013)、10巻、831~838
【非特許文献2】Jantscher-Krennら、Minerva Pediatr. 2012、64(1)83~99
【非特許文献3】Morrowら、J. Pediatr. 145(2004)297~303
【非特許文献4】Drouillardら、Angew. Chem. Int. Ed. 45, 1778(2006)
【非特許文献5】Kuhnら、Chem.Ber.1956,2513頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
相当な量の、2'-FL以外の単糖及びオリゴ糖、例えばラクトース、アセチル化2'-FL、2'-FL以外のフコシル化ラクトース、及びフコシル化ラクツロースを含む2'-FL原料から結晶性2'-FLを、そのような原料の水溶液から、特に発酵プロセスによって得られた水溶液から得る効率的なプロセスの必要性が依然としてある。方法は、特に有機溶媒の回避を可能にし、高純度及び高収率の2'-FLを提供するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
相当な量の、2'-FL以外の単糖及びオリゴ糖を含む2'-FL原料の水溶液から、水溶液中で制御された過飽和の条件を誘導することによって2'-FLを効率的に確実に結晶化し、それによって、2'-FLの選択的な結晶化を達成できることが見出された。2'-FL原料の水溶液中で制御された過飽和の条件を誘導することによって、結晶化の間に相当な量の有機溶媒の使用をしない効率的な結晶化を可能にする。2'-FLは水に非常によく溶け、純粋な2'-FLすら水からほとんど結晶化しないので、また、2'-FL原料中に含まれる相当な量の単糖及びオリゴ糖は、さらに2'-FLの結晶化を妨げるはずなのでこれは極めて驚くべきことである。
【0018】
したがって、本発明は、主成分として2'-フコシルラクトース、並びに原料中の単糖及びオリゴ糖の合計量に対して、少なくとも0.5重量%、しばしば少なくとも1重量%、特に少なくとも2重量%、とりわけ少なくとも5重量%、殊に少なくとも8重量%の2'-FLと異なる1種以上の単糖又はオリゴ糖を含む2'-FL原料から結晶性2'-フコシルラクトースを得る方法であって、
a)水の合計量に対して、10重量%以下、好ましくは7重量%以下、より好ましくは5重量%以下の有機溶媒を含む水中の2'-FL原料の溶液を用意するステップ、
b)好ましくは最高60℃の温度の溶液中で制御された過飽和の条件を誘導することによって、ステップa)で用意される溶液から2'-FLの結晶化を達成するステップ、及び
c)母液から結晶性2'-FLを分離するステップを含み、
ステップb)の制御された過飽和の間、ステップb)の間に存在する水の合計量に対して、10重量%以下、好ましくは7重量%以下、より好ましくは5重量%以下の有機溶媒が存在する方法に関する。
【0019】
本発明の方法は幾つかの利点を伴う。それは、他のオリゴ糖から2'-FLを効率的に分離し、それによって高収率で、結晶性2'-FL中の有機物に対して、しばしば93%を超える、特に95%を超える、殊に少なくとも97%又は少なくとも98%の高純度で2'-FLを得ることを可能にする。特に、本方法は、結晶化の間に有機溶媒の使用を必要とせず、したがって、結晶性2'-FLが著しい量の捕捉された有機溶媒を含むというリスクを最小限にする。本方法は、無色又はほとんど無色である母液をもたらし、したがって、さらなる結晶化ステップにかけ、又は、結晶化を達成する前に結晶化すべき溶液へ再導入することができる。
【0020】
本発明の方法によって、純粋な結晶性2'-FLは密度の高い結晶の形で得られる。
【0021】
驚いたことに、本方法は、信頼できる方式において2'-FLの3種の多形相、すなわち
- 国際公開第2011/150939号に記載され、例えば特に以下の反射を2θ値:16.98±0.2°、13.65±0.2°及び18.32±0.2°(25℃及びCu-Kα照射で)として引用されるX線粉末回折図のその特性反射によって特定することができる無水物形II、
- 国際公開第2014/009921号に記載され、例えば、特に以下の反射を2θ値:18.86±0.2°、17.05±0.2°及び9.89±0.2°(25℃及びCu-Kα照射で)として引用されるX線粉末回折図のその特性反射によって特定することができる水和物形A、又は
- 国際公開第2014/009921号に記載され、例えば、特に以下の反射を2θ値:20.48±0.2°、11.90±0.2°及び9.96±0.2°(25℃及びCu-Kα照射で)として引用されるX線粉末回折図のその特性反射によって特定することができる水和物形B
の選択的な結晶化を可能にする。
【0022】
これは、特定の多形相の確実な製造を必要とし得る、2'-FLの登録のために特別に重要である。方法は、2'-FLの結晶化が達成される温度に応じて2'-FLの結晶性無水物形II、又は結晶性水和物形A若しくはBいずれかの選択的な調製を可能にする。特に、2'-FLの結晶化が、最高52℃、特に最高50℃、とりわけ最高48℃、殊に最高45℃、例えば0~52℃、特に0~50℃、とりわけ0~48℃、殊に0~45℃の範囲の温度で達成されれば、水和物形A又はBが得られるが、一方52℃を超える温度、特に53℃を超える温度で2'-FLの結晶化が達成されれば、無水物形IIが得られる。最高52℃、特に最高50℃、とりわけ最高48℃、殊に最高45℃の温度で結晶化を達成する場合、結晶性水和物形Bが初めに形成されることは注目される。しかしながら、結晶性水和物形Bは乾燥すると結晶性水和物形Aへ変換する。
【0023】
したがって、本発明はまた、本明細書において定義される2'-FL原料から2'-FLの結晶性水和物形A若しくはB又は2'-FLの結晶性無水物形IIのいずれかを選択的に得る方法であって、本明細書に記載の結晶性2'-FLを得る方法を実施するステップを含み、ただし、
- 2'-フコシルラクトースの結晶化が、0~52℃、特に0~50℃、とりわけ0~48℃、殊に0~45℃の範囲の温度で達成されて2'-フコシルラクトースの結晶形A又は結晶形Bを得ること、
- 又は、2'-フコシルラクトースの結晶化が52℃を超える、特に少なくとも53℃若しくは53℃を超える、好ましくは最高60℃の温度で達成されて2'-フコシルラクトースの結晶形IIを得ることのいずれかを条件とする方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以降においては、用語2'-FL及び2'-フコシルラクトースは同義的に使用され、α-及びβ-アノマー及びその混合物を含むα-L-フコピラノシル-(1→2)-O-β-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-D-グルコピラノースを指す。
【0025】
本明細書において使用される用語「2'-FL原料」は、オリゴ糖組成物を指し、主成分として、特に少なくとも70重量%の量の2'-FL、及び相当な量、すなわち、原料中の単糖及びオリゴ糖の合計量に対して、少なくとも0.5重量%、しばしば少なくとも1重量%、特に少なくとも2重量%、とりわけ少なくとも5重量%、殊に少なくとも8重量%の2'-フコシルラクトースと異なる1種以上の単糖又はオリゴ糖を含む。特に、結晶性2'-FLが本発明の方法によって得られる2'-FL原料は、原料中の単糖及びオリゴ糖の合計量に対して、
- 70~98重量%、特に75~95重量%、殊に78~92重量%の2'-FL、及び
- 原料中の単糖及びオリゴ糖の合計量に対して、2~30重量%、特に5~25重量%、殊に8~22重量%の2'-フコシルラクトースと異なる1種以上の単糖又はオリゴ糖を含む。
【0026】
2'-FL原料中に含まれる、2'-フコシルラクトースと異なる典型的な単糖及びオリゴ糖は、ラクトース、2'-FL以外のフコシル化ラクトース、フコース、ガラクトース、グルコース、ラクツロース及びフコシル化ラクツロースを含むがこれらに限定されない。これらの単糖及びオリゴ糖は、以下において「炭水化物不純物又は副生物」と名付けられる。
【0027】
本明細書において使用される用語「2'-FL以外のフコシル化ラクトース」は、2'-FL以外の任意のモノフコシル化ラクトースを含む。用語「2'-FL以外のフコシル化ラクトース」はまた任意のポリフコシル化ラクトース、特にジフコシル化ラクトースを含み、「ジフコシルラクトース」、例えば2,2'-O-ジフコシルラクトース又は2',3-O-ジフコシルラクトースとも名付けられる。
【0028】
同様に、本明細書において使用される用語「フコシル化ラクツロース」は、任意のモノフコシル化ラクツロース及びポリフコシル化ラクツロース、すなわち、1個以上の、例えば1又は2個のフコース部分によって、ラクツロースのガラクトース部分にフコシル化されたラクツロースを含む。
【0029】
前述の炭水化物不純物又は副生物は、発酵の間、又は発酵後の条件下で形成されることがある。例えば、2'-FL以外のフコシル化ラクトースは、ラクトースのガラクトース部分へのα-1,2-フコシル化以外の、欠損した不完全な若しくは損なわれたフコシル化の、又は発酵若しくは発酵後の条件下での2'-FLのフコース移動の、又は多重フコシル化ラクトースからのフコース加水分解の結果として形成されることがある。他の炭水化物不純物又は副生物は、転位によって形成され得る、例えばラクツロース及びフコシル化ラクツロース、若しくは加水分解によって形成され得る、例えばフコース、グルコース、ガラクトース及びラクトース、又は、消費されない出発材料、例えばグルコース又はラクトースであり得る。
【0030】
特に、2'-FL原料は、2'-FL以外の少なくとも1種のフコシル化ラクトース、特にジフコシルラクトースを含む。特に、フコシル化ラクトースの量は、2'-FL原料中に含まれる単糖及びオリゴ糖の重量に対して0.3~10重量%、特に0.5~10重量%、殊に1~10重量%の範囲にある。特に、2'-FL原料はまた、ラクツロース及びフコシル化ラクツロース又は両方の混合物の少なくとも1つを含む。特に、ラクツロース及びフコシル化ラクツロースの合計量は、2'-FL原料中に含まれる単糖及びオリゴ糖の重量に対して、0.2~10重量%、特に0.5~10重量%、殊に1~10重量%の範囲にある。
【0031】
本発明の方法の第1のステップa)において、2'-FL原料の水溶液が用意され、次いで、制御された過飽和の条件下で第2のステップb)の結晶化にかけられる。主として、2'-FL原料の任意の水溶液は、その中に含まれる水の量に対して、10重量%以下、好ましくは7重量%以下、より好ましくは5重量%以下の有機溶媒を含み、本発明の方法において使用することができる。
【0032】
ステップa)で用意され、ステップb)で結晶化にかけられる2'-FL原料の水溶液、並びにまた、ステップb)の間に存在する水がそれほどの量の有機溶媒を含まないことは本発明にとって不可欠である。本発明によると、ステップa)で用意される溶液中の有機溶媒の濃度は、ステップa)で用意される溶液中に含まれる水に対して5重量%を超えず、特に2%を超えず、殊に1重量%を超えない。さらに、ステップb)の間に存在する水中の有機溶媒の濃度は、ステップb)の間に存在する水に対して10重量%を超えず、好ましくは7重量%を超えず、より好ましくは5重量%を超えず、特に2%を超えず、殊に1重量%を超えない。この文脈において、用語「有機溶媒」は、標準圧力で30~250℃の範囲の沸点を有する任意の有機化合物、例えば有機アルコール、特にC1-C4-アルカノール及びC1-C4-アルカン酸、並びに有機化学の分野、特に炭水化物化学の分野で一般に使用される他の有機化合物を含む。
【0033】
水溶液は、生化学プロセス、又は従来の、すなわち化学プロセスから得られる水溶液であってもよい。
【0034】
本発明の方法において使用される2'FL原料の水溶液は、好ましくは生化学プロセス、例えば2'-FLが、ラクトースの酵素による生体触媒的フコシル化又は発酵によって得られるプロセスから得られ、それは、例えば、Drouillardら、Angew. Chem. Int. Ed. 45, 1778(2006)、国際公開第2010/070104号、国際公開第2012/007481号、国際公開第2012/097950号、国際公開第2012/112777号、国際公開第2013/139344号、国際公開第2014/086373号、国際公開第2015/188834号及び国際公開第2016/095924号に記載されている。
【0035】
発酵培養液は、通常、培地の上清中に少なくとも25g/Lの2'-FLを含み、最大120g/Lの2'-FL、又は120g/Lよりはるかに多くの2'-FLを含み得る。さらに、上清はまた、典型的には、2'-FLに対して約1.5~20重量%の量のDFLを含み得る。2'-FL/DFL混合物は、場合によって、培地中で産生されたフコシル化ラクツロース、及び/又は消費されない受容体としてのラクトース又はさらなる単糖又はオリゴ糖を含む。
【0036】
本発明の方法において使用される原料の水溶液が生化学プロセスから、特に発酵から得られる場合、得られる水溶液は、結晶化前にしばしば後処理にかけられる。
【0037】
そのような後処理は、結晶化の前にミネラル、塩及び他の荷電した分子が水溶液から抽出される間に従来の脱ミネラル化処理ステップを含んでもよい。脱ミネラル化は、従来のイオン交換樹脂の使用により、すなわちH+形のカチオン交換樹脂及び遊離塩基形の陰イオン交換樹脂に水溶液を通して行うことができる。陽イオン交換樹脂は好ましくは強い交換体であり、陰イオン交換樹脂は好ましくは弱い交換体である。イオン交換樹脂は、溶液から塩及び荷電した分子を除去することに加えて、先行の精製ステップの後に溶液中に場合によって残されたタンパク質、DNA及び着色体/カラメル体(colorizing/caramel bodies)を物理的に吸着することができる。代替として、脱ミネラル化は、従来の電気透析によって行うことができる。加えて、吸着剤、例えば活性炭は、場合によって、水溶液から着色化合物を除去するために用いられてもよい。
【0038】
幾つかの事例において、結晶化の前に2'-FLの水溶液の幾つかの成分を選択的に取り出すことが望ましいことがある。これは、異なるタイプのクロマトグラフィー例えば、再循環ループを用いる若しくは用いない、又は連続的クロマトグラフィープロセスを用いる溶離クロマトグラフィー、例えば、出入り口の非同期切り替えを有するその変形及び/又は切り替え区間の間の流速及び/又は供給濃度の変形を含む擬似移動床クロマトグラフィー(SMB)を使用して達成されてもよい。オリゴ糖、例えば、発酵から得られる2'-FLの水溶液の精製にSMBを使用する方法は、例えば、T. Eiweggerら、Pediatric Research, Vol. 56(2004),536 - 540頁、中国特許第102676604号及び欧州特許第2857410号によって記載され、結晶化の前に2'-FLの水溶液の幾つかの成分を取り出すために同様に適用することができる。SMBを行うのに適している方法の総説は、M. Ottensら、"Advances in process chromatography and application" 4.4.3章、132-135頁、Woodhead Publishing Limited 2010及びその中の引用文献に見出すことができる。
【0039】
次いで、上のいずれかの方法で得られた溶液は、限外濾過及び透析濾過を含む従来の蒸発ステップ又は従来のナノ濾過ステップのいずれかによって濃縮することができる。また、精密濾過を組み込んでタンパク質及び巨大分子を除去することもできる。結晶化の前のさらなる最終(「無菌」)濾過が、菌の汚染物質を除去するために含まれてもよい。
【0040】
ステップa)で用意される2'-FL原料の水溶液が、水に溶けない固体材料を基本的に含まない場合、すなわち、その中に含まれる2'-FLに対して水に溶けない材料の量が5000ppm未満、特に1000ppm未満、又は2'-FL原料の水溶液の重量に対して最高3000ppm、特に最高1000ppmである場合、有益であることが見出された。したがって、好ましくは、後処理は、従来の清澄化ステップを含む。この清澄化ステップによって、発酵後の細胞断片(破片)及びタンパク質は除去される。清澄化は、好ましくは下記の炭処理より前にある。清澄化は従来の方式、例えば、清澄化又は部分的に清澄化された上清溶液を生成する遠心分離機の沈澱によって行うことができる。代替として、発酵培養液をステップb)の結晶化にかける前に、濾過ステップ、例えば、精密濾過又は限外濾過にかけることができる。例えば、限外濾過は従来方式において行われ、高分子量成分を除去する。2'-FL発酵培養液の限外濾過に使用される半透膜は、適切には5-50kDa、好ましくは10-25kDa、より好ましくはおよそ15kDaのカットオフを有することができる。清澄化すべき発酵培養液の特性に応じて、上記の所与の範囲内で大と小のカットオフメンブレンの組合せ(この順序で)が用いられてもよい。場合によって、遠心分離又は限外濾過の後、2'-FL及び炭水化物副生物を含有する水溶液が従来方式で濃縮される間にナノ濾過を続けることができ、その後炭を用いて処理される。このナノ濾過ステップにおいて、そのメンブレンは、488の分子量を有する2'-FLの保持を保証する孔径を有することができ、そのため、典型的には、200-300Daのカットオフメンブレンを使用することができる。
【0041】
さらに、先行の精製ステップから場合によって残された色素体、及び場合によって水溶性の生体ゴミ(bio-junk)を除去するために、後処理は、好ましくは脱ミネラル化ステップの前に行われる従来の炭処理をさらに含むことができる。炭水化物化合物は、水性媒体中の炭に吸着される強い親和性を有し、したがって、水溶性の汚染物質は、容易に水を用いて(蒸留水、好ましくは食品等級)洗い流すことができる。次いで、炭水化物は、アルコール又は水性アルコールを用いて炭床から溶離することができる。
【0042】
ステップb)において、2'-FLの結晶化は、2'-FL原料の溶液中で制御された過飽和の条件を誘導することによって達成される。
【0043】
ステップb)で結晶化にかけられる水溶液中の2'-FLの濃度は、水溶液の温度に依存して、一般に400~750g/L又は500~750g/L、特に500~700g/Lの範囲で様々であってもよい。しばしば、炭水化物、すなわち2'-FL及び2'-FLと異なる単糖及びオリゴ糖の合計濃度は、510~950g/Lの範囲、特に510~850g/Lの範囲である。
【0044】
しばしば、最高500g/L、特に最高450g/L、殊に最高400g/L、例えば、25~450g/Lの範囲、又は50~400g/Lの範囲の2'-FLの濃度を有する希薄溶液はステップa)で用意され、次いで、例えば水の蒸発によって、結晶化が生じ得る2'-FLの濃度まで濃縮ステップにかけられ、これは、特に400~750g/L又は500~750g/L、特に420~720g/L、又は510~720g/Lの範囲である。
【0045】
結晶化のための所望の濃度範囲への希薄溶液の濃縮及び結晶化は、単一のステップ、すなわち結晶化装置で行うことができる。また、水が蒸発によって除去される予備濃縮ステップを、平衡条件下でなお2'-FLの溶解度未満である2'-FLの濃縮が達成されるまで、最初に行うことは可能である。次いで、この溶液は結晶化装置へ導入され、このようにして濃縮された溶液中で制御された過飽和の条件が誘導される。平衡条件下の溶解度に相当する2'-FLの濃度はまた、所与の条件下の平衡濃度又は平衡溶解度c*と名付けられる。上に挙げたように、制御された過飽和の条件が誘導される溶液中の2'-FLの濃度は、典型的には400~750g/Lの範囲、特に410~700g/Lの範囲、又は410~650g/Lの範囲にある。
【0046】
本発明のために、ステップb)で結晶化にかけられる2'-FL原料の水溶液中の2'-FLの濃度が、650g/Lを超えず、特に630g/Lを超えず、例えば、400~650g/L、又は500~650g/L、特に410~630g/L、又は500~630g/L、殊に510~630g/Lの範囲である場合、有益であることが見出された。
【0047】
しかし、630g/Lを超える、特に650g/Lを超える2'-FLの濃度を有する2'-FL原料の水溶液をステップb)で結晶化にかけることもまた可能である。
【0048】
所与の条件で制御された過飽和の条件の誘導は、所望の多形体が2'-FL原料の水溶液から選択的に結晶化できることを保証する。
【0049】
制御された過飽和とは、結晶化の間に、過飽和度が、制御できない値、すなわち自発的な結晶化が生じる値を超えないことを意味する。過飽和度は、結晶化の間に溶解した2'-FLの実際の濃度cと、所与の条件で水中の2'-FLの平衡溶解度c*との比、すなわち比c:c*として理解される。特に、比c:c*は、1.5:1の値、特に1.3:1の値、とりわけ1.2:1の値、殊に1.15:1の値を超えない。明らかに、過飽和は、比c:c*が熱力学的平衡の状態、すなわち、比c:c*が1である状態を超えることを必要とし、すなわち、そのc:c*は1:1を超える値を有する。1:1を超える値は、例えば1.00001:1、1.0005:1、1.0001:1、1.0005:1、1.001:1又は1.0002:1の値、特に1.00001~1.002:1の範囲の値を示す。所与の温度又は圧力で水中の2'-FLの平衡濃度c*は、公知であるか、又はルーチン実験によって求めることができる。水中に溶解した2'-FLの実際の濃度は、水溶液中の2'-FLの濃度、結晶化装置に供給される2'-FLの量、除去された水の量及び結晶化した2'-FLの量を使用して計算することができる。溶液又は懸濁液の実際の濃度も、例えば、ATR-FTIR(全反射吸収分光法フーリエ変換赤外分光法)、又は密度測定によって実験的に求められてもよい。
【0050】
溶解した2'-FLの濃度及びしたがって過飽和度は、通常2'-FL原料の水溶液から水を除去することによって、すなわち結晶化の条件下の2'-FLの濃度を増すことによって及び/又は冷却によって、すなわち、結晶化の条件下の2'-FLの溶解度を減少させることによって、特に蒸発によって、又は両方の組合せによって調節される。
【0051】
過飽和を達成又は維持する条件については、水は好ましくは蒸発によって除去される。特に、過飽和の条件は、水の蒸発によって、又は蒸発/冷却を組み合わせることによって誘導され維持される。言いかえれば、結晶化は、好ましくは蒸発結晶化として実行される。すなわち、反応容器中の2'-FLの濃度は、水の蒸発によって結晶化の条件下で増加され、冷却は、当然伴ってもよく、又は水の蒸発後、結晶性2'-FLの初めに得られた水性懸濁液は、結晶化した2'-FLの収率を増すために冷却される。
【0052】
好ましくは、水は減圧下の蒸発によって除去される。好ましくは、水は、10~900mbarの範囲、特に50~800mbarの範囲の圧力で蒸発する。
【0053】
好ましくは、蒸発は、少なくとも20℃、特に少なくとも25℃、とりわけ少なくとも30℃、殊に少なくとも35℃の温度で行われる。一般に、温度は105℃を超えず、特に100℃又は95℃を超えない。特に、蒸発温度は62℃又は60℃を超えない。蒸発が行われる温度はまた、生成した多形体のタイプに依存する。多形体A又は多形体Bを得ることが所望の場合、水溶液は、通常、20℃から52℃未満の範囲、特に25~50℃、とりわけ30~48℃、殊に35~45℃の範囲の温度で濃縮されるが、無水物形IIを得るためには、2'-FL原料の水溶液は、通常52超~105℃、しばしば52~100℃又は52~95℃、特に52~65℃又は52~60℃の範囲の温度で濃縮される。
【0054】
水の蒸発は、蒸留によって水の除去を可能にする任意の設備を使用して、従来の手段によって達成されてもよい。装置のタイプは、公知の方式で、予備濃縮の間に又は制御された過飽和の条件を誘導するために水が除去されるかどうかから、また結晶化が不連続的に、すなわち、バッチ又はセミバッチ又は連続的に作動されるかに依存する。
【0055】
バッチ又はセミバッチ作動の結晶化における水の蒸発による過飽和の条件を誘導するために、加熱装置によって、例えば、ダブルジャケットによって、容器中の加熱素子によって、熱交換器を用いる外部ポンプのループによって、又はこれらの装置の組合せによって必要な熱が伝えられる簡単な容器を使用することができる。結晶化が連続方式で行われる場合、連続作動の結晶化装置、例えば、撹拌タンク容器、導入管を備えた撹拌タンク容器、強制循環晶析装置(FC)、ドラフトチューブバッフル晶析装置(DTB)又はオスロ型晶析装置が、水の蒸発によって過飽和の条件を誘導するために使用される。蒸発装置は、従来の加熱媒体、例えば、蒸気ネットワークからの蒸気又は蒸気再圧縮によって本発明の方法において用意される蒸気を含む加熱オイル又は加熱蒸気を用いて加熱されてもよい。
【0056】
予備濃縮ステップにおける水の蒸発は、蒸留による水の除去を可能にする任意の設備、例えば、撹拌タンク容器、薄膜蒸発装置、流下膜式蒸発装置及び螺旋管蒸発装置を使用する従来の手段によって達成されてもよい。好ましくは、予備濃縮ステップにおける水の蒸発は、好ましくは機械的な蒸気再圧縮によって得られる加熱蒸気を使用して、流下膜式蒸発装置によって達成される。機械的な蒸気再圧縮は、必要とされる量の新しい蒸気の低減を可能にし、それによって全費用を下げる。蒸気再圧縮は、好ましくは1種以上の回転圧縮機によって達成される。蒸気再圧縮の穏やかな圧縮行程(stroke)のため、したがって加熱部での温度上昇が限定されているため、小さな温度勾配で作動することができるので、流下膜式蒸発装置が、好ましくは使用される。流下膜式蒸発装置は、小さい循環率及び少ない圧力損失で高い蒸発速度を可能にする。したがって、流下膜式蒸発装置は、温度に敏感な2'-FLの短い滞留時間を可能にする。さらに、流下膜式蒸発装置の少ない圧力損失は、蒸気再圧縮、したがって熱回収に有益である。幾つかの蒸発装置を直列に連結することは有益であるが、それは、そのことによって加熱側とプロセス側の間の温度差を高く維持することができ、それによって熱交換器中の狭い表面を可能にするからである。
【0057】
除去される水の量は、通常、結晶化の少なくとも初めに、結晶化中に存在する水性媒体中の溶解した2'-FLの濃度が、上記の所与の範囲になるように選ばれ、したがって結晶化の間の温度に応じて、400~750g/L、又は500~750g/L、特に410~720g/L又は510~720g/Lと様々であってもよい。上に説明されたように、結晶化の間に存在する水性媒体中の最高650g/L、特に最高630g/L、例えば400~650g/L、殊に410~630g/Lの範囲の溶解した2'-FLの濃度は、有益であり得る。しかし、結晶化の間に存在する水性媒体中の630g/Lを超える、特に650g/Lを超える2'-FLの濃度もまた可能であり得る。また、連続作動される結晶化において結晶化の間に存在する水に溶解した2'-FLの濃度が、結晶化の全体にわたってここで得られた範囲にあることは明白である。
【0058】
結晶化の達成のために、制御された過飽和は、典型的には少なくとも0℃、特に少なくとも10℃又は少なくとも20℃の温度で誘導される。制御された過飽和が誘導される温度は、典型的には105℃を超えず、特に100℃を超えず、とりわけ95℃又は90℃を超えず、殊に85℃を超えない。変色を回避するために、温度は好ましくは70℃、特に65℃又は60℃を超えず、特に60℃未満である。
【0059】
制御された過飽和が水の蒸発を含むプロセスによって誘導される場合、以後これを蒸発結晶化と称し、過飽和が誘導される温度は、典型的には少なくとも20℃、特に少なくとも25℃、殊に少なくとも30℃又は少なくとも35℃である。一般に、温度は、105℃を超えず、特に100℃を超えず、とりわけ95℃又は90℃を超えず、殊に85℃を超えない。母液の変色を回避するために、結晶化温度は、好ましくは70℃、特に65℃又は60℃を超えず、特に60℃未満である。特に、過飽和は、0~95℃の範囲又は0~60℃の範囲、とりわけ0~90℃の範囲又は0~60℃未満の範囲、殊に0~85℃の範囲又は0~58℃の範囲の温度で誘導される。制御された過飽和が蒸発結晶化によって誘導される場合、過飽和は、好ましくは25~95℃の範囲又は25~60℃の範囲、より好ましくは30~90℃の範囲又は30~60℃未満の範囲、殊に35~85℃の範囲又は35~58℃の範囲の温度で誘導される。
【0060】
蒸発結晶化によって多形体B又はAをそれぞれ生成するように意図される場合、過飽和は、典型的には20~52℃の範囲、特に25~50℃の範囲、とりわけ30~48℃の範囲、殊に35~45℃の範囲の温度で誘導される。水和物形IIの製造については、過飽和は、典型的には52超~105℃の範囲、特に52~100℃の範囲、殊に52~95℃又は52~90℃又は52~85℃又は52~60℃又は52~60℃未満又は52~58℃の範囲の温度で誘導される。
【0061】
制御された過飽和が水の蒸発を含まないプロセスによって誘導される場合、例えば過飽和が冷却によって誘導される場合、温度は上記の所与の範囲より低くなり得、0℃ほどに低くなり得る。この場合、結晶化が誘導される温度は、典型的には0~60℃の範囲、特に0~60℃未満の範囲、又は0~58℃の範囲にある。温度は、当然、2'-FLの所望の多形相に依存する。
【0062】
2'-FLの結晶化は、通常、周囲圧力で又は減圧下、例えば10~1020mbarの範囲の圧力で行われる。圧力は、当然、2'-FL原料の水溶液の温度及び濃度に依存する。結晶化の間に蒸発によって水の除去を容易にするために減圧で2'-FLの結晶化を行うことは有益であり得る。次いで、2'-FLの結晶化は、好ましくは10~900mbar、特に20~800mbar、殊に30~700mbarの範囲の圧力で実行される。
【0063】
結晶化の完結を促すために、特に結晶化がバッチ式又はセミバッチ処置で行われる場合、結晶化の間に、温度はさらに下げられてもよく及び/又は水はさらに蒸発されてもよい。当然のことながら、2'-FLの結晶化が連続的に行われる場合、温度は上記の範囲にある。
【0064】
過飽和の制御を達成するために、結晶化を促進し、結晶化の反応速度論的阻害を、したがって過剰飽和を防止する方策が取られる。そのような方策は、特に固体、例えば、非晶質2'-FL又は特に結晶性2'-FLの存在下での結晶化の遂行である。また、非晶質2'-FLと結晶性2'-FLとの混合物を使用することが可能である。結晶性2'-FLがこの目的のために使用される場合、任意の結晶形を使用することができる。固体CO2を含む他の固体もまた使用されてよい。結晶化の反応速度論的阻害を防止するために超音波を適用することも可能であり得る。当然のことながら、特に、比c:c*が1.5:1の値を超えない、特に1.3:1の値を超えない、とりわけ1.2:1の値を超えない、殊に1.15:1の値を超えない結晶化を促進する方策が取られる。
【0065】
本発明の一実施形態によると、2'-FLの種結晶、好ましくは所望の多形相(必ずというわけではないが)の種結晶が添加される。結晶化が不連続式に行われる場合、この方策が特に取られる。次いで、種結晶の量は、ステップb)中の結晶化にかける水溶液中の純粋な2'-FLに関して、通常0.01~5重量%の範囲、特に0.02~3重量%又は0.02~1重量%の範囲である。
【0066】
結晶性2'-FLの存在下で結晶化を行うために、また、制御された過飽和の条件下で水中の結晶性2'-FLの懸濁液に対して水溶液を供給することも可能である。水性懸濁液において、固体含有率は、懸濁液の合計重量に対して、好ましくは5~60重量%、特に10~45重量%、殊に20~40重量%の範囲である。好ましくは、過飽和の条件下の2'-FLの懸濁液の水相に溶解した2'-FLの濃度は、結晶化の間の温度及び所望される多形相に依存して、好ましくは400~750g/L又は500~750g/Lの範囲、特に410~720g/L又は510~720g/L、とりわけ400~650g/L、殊に410~630g/Lの範囲である。
【0067】
実施形態の非常に好ましい群において、ステップb)の結晶化は、固体2'-フコシルラクトース、特に結晶性2'-フコシルラクトース(2'-FLの任意の公知多形体を使用することができる)の存在下で、20~52℃の範囲、特に25~50℃の範囲、とりわけ30~48℃の範囲、殊に35~45℃の範囲の温度で実行され、本明細書に記載の制御された過飽和の条件下の水性過飽和溶液から結晶化が達成される場合、水性過飽和溶液は、当初少なくとも410~630g/Lの範囲の、溶解した2'-フコシルラクトースの濃度を有する。
【0068】
2'-FLの結晶化は、水溶液から有機化合物の結晶化に使用することができる任意のタイプの結晶化装置で行うことができる。適切な結晶化装置としては、撹拌タンク式晶析装置、導入管を備えた撹拌タンク晶析装置、導入管及び場合によって結晶の分類のための手段を備えた撹拌タンク晶析装置、いわゆるドラフトチューブ晶析装置又はドラフトチューブバッフル(DTB)晶析装置、場合によって、結晶の分類のための手段を有する強制循環晶析装置、例えば、オスロ型晶析装置、場合によって、結晶の分類のための手段を有する誘導式強制循環晶析装置及び冷却板晶析装置を含むがこれらに限定されない。好ましい晶析装置は、強制循環晶析装置、ドラフトチューブ晶析装置、ドラフトチューブバッフル晶析装置、オスロ型晶析装置及び誘導式強制循環晶析装置の群から選択され、ドラフトチューブバッフル晶析装置及び誘導式強制循環晶析装置が特に好ましい。
【0069】
上に指摘したように、本発明の方法は、不連続的に、すなわちバッチ式で、又はセミバッチで、又は連続的に行うことができる。
【0070】
バッチ式とは、2'-FL原料の水溶液が結晶化容器に装填され、制御された過飽和の条件が2'-FLの結晶化を達成するためにその中に誘導されることを意味する。それによって、2'-FLは、溶液から消費され、そのようにして2'-FLの濃度が低下する。結晶化の反応速度論的阻害を防止するために、固体物質、特に非晶質又は結晶性の2'-フコシルラクトース、殊に2'-FLの種結晶が好ましくは添加される。制御された過飽和の条件を維持するために、結晶化の間に水を蒸発させてもよく、又は、結晶化の間に温度を低下させてもよく、又は両方の方策が取られる。特に固体物質、特に非晶質又は結晶性2'-フコシルラクトース(2'-FLの任意の公知の多形体を使用することができる)又は結晶性2'-FLと非晶質2'-FLの混合物、殊に2'-FLの種結晶が添加され、この場合、比c:c*が1.5:1の値を超えない、特に1.3:1の値を超えない、とりわけ1.2:1の値を超えない、殊に1.15:1の値を超えない。通常、結晶性2'-フコシルラクトースの得られた水性懸濁液は、結晶化容器から取り出され、所望の量の2'-フコシルラクトースが溶液から結晶化した場合、固体-液体分離ステップにかけられる。しばしば、バッチ式結晶化は、懸濁液が最終的に懸濁液の重量に対して、5~55重量%、特に10~45%、殊に20~40重量%の量の固体結晶性2'-FLを含むように実行される。
【0071】
セミバッチは、2'-FL原料の水溶液の一部が結晶化容器に装填され、制御された過飽和の条件が2'-FLの結晶化を達成するためにその中に誘導されることを意味する。結晶化の反応速度論的阻害を防止するために、固体物質、特に非晶質又は結晶性2'-フコシルラクトース(2'-FLの任意の公知多形体又は非晶質2'-FLと結晶性2'-FLとの混合物を使用することができる)、殊に2'-FLの種結晶が好ましくは添加される。次いで2'-FL原料のさらなる量の水溶液が、結晶化装置に、したがって部分的に又は完全に結晶化した2'-FLの水性懸濁液に供給される。制御された過飽和の条件を維持するために、結晶化の間に水を蒸発させてもよく、又は温度は結晶化の間に低下させてもよく、又は両方の方策が取られる。通常、結晶性2'-フコシルラクトースの得られた水性懸濁液は、結晶化容器から取り出され、所望の量の2'-フコシルラクトースが溶液から結晶化した場合、固体-液体分離ステップにかけられる。しばしば、セミバッチ式結晶化は、懸濁液が最終的に懸濁液の重量に対して、5~55重量%、特に10~45%、殊に20~40重量%の量で固体結晶性2'-FLを含むように実行される。
【0072】
実施形態の別の群において、結晶化は連続的に行われる。このために、ステップa)で用意された2'-FL含有原料の水溶液は、2'-フコシルラクトース結晶の水性懸濁液を含む連続作動される結晶化装置に供給される。言いかえれば、2'-FLの水溶液が連続作動される結晶化装置に連続的に供給され、結晶化した2'-FLは結晶化装置から連続的に取り出される。
【0073】
連続作動される結晶化装置において、制御された過飽和の条件は結晶化全体にわたって維持される。好ましくは、制御された過飽和の条件は、連続的に規定量の水を除去することによって、好ましくは蒸発によって、冷却によって、又はこれらの方策の組合せによって維持される。
【0074】
しばしば、連続作動される結晶化装置は、制御された過飽和の条件が準静的又はほぼ準静的であるような方式で作動される。特に、温度変動は5K未満であり、及び/又は圧力変動は60mbar未満である。
【0075】
一般に、連続作動される結晶化装置は、2'-FL結晶の水性懸濁液を含む。好ましくは、連続作動される結晶化装置中に含まれる水性懸濁液の固体含有率、すなわち、結晶性2'-FLの量は、連続作動される結晶化装置に又は連続作動される結晶化装置の有効容積に含まれる懸濁液の合計重量に対して、5~60重量%、特に10~45重量%、殊に20~40重量%の範囲である。有効容積は、結晶化が生じる結晶化装置の部分、例えば2'-FL結晶の自由流動する水性懸濁液を含む部分として理解される。
【0076】
しばしば、連続作動される結晶化装置のステップb)は以下のサブステップを含む:
b1)懸濁液の重量に対して、好ましくは5~60重量%、特に10~45%、殊に20~40重量%の量の結晶性2'-FLを含む結晶性2'-FLの水性懸濁液を含む連続作動される結晶化装置に2'-FL原料の水溶液を連続的に供給するステップ、
b2)好ましくは蒸発によって、特に減圧下の蒸発によって結晶化装置中に含まれる2'-FLの水性懸濁液から連続的に水を除去するステップ、
b3)結晶化装置から2'-FLの水性懸濁液を連続的に取り出すステップ。
【0077】
ステップb3)の晶析装置から取り出された2'-FLの水性懸濁液の流れが、2つの流れに分割されると有益であることが見出された:第1の流れは結晶性2'-FLの単離にかけ、一方、残りは、ステップb1)で用意される2'-FL原料の新しい水溶液と一緒に結晶化装置に対して部分的にフィードバックされる。このために、ステップb3)で取り出された2'-FLの水性懸濁液の一部は、ステップb1)の2'-FL原料の水溶液と混合され、その後、それは結晶化装置に供給される。次いで、このようにして得られた混合物は結晶化装置へフィードバックされる。ステップb3)で晶析装置から取り出された流れの合計と結晶性2'-FLの単離にかける第1の流れの体積比は、少なくとも4:1、特に少なくとも7:1、とりわけ少なくとも10:1、例えば、4:1~200:1、又は7:1~80:1若しくは10:1~60:1である。
【0078】
蒸発によって水を除去するために、蒸発のために必要なエネルギーを晶析装置へ導入しなければならない。これは従来の加熱素子によって達成することができる。好ましくは、蒸発の熱は、2'-FL原料の水溶液の加熱流を反応器に供給することにより、晶析装置へ導入される。反応器に供給される2'-FL原料の水溶液の加熱流は、従来の任意の熱交換器によって加熱されてもよい。熱交換器は、従来の加熱媒体、例えば、加熱オイル、又は、蒸気ネットワークからの蒸気又は本発明のプロセスにおいて結晶化又は2'-FL原料の水溶液の濃縮の間に蒸発した水の蒸気再圧縮によって用意される蒸気を含む加熱蒸気を用いて作動されてもよい。好ましくは、晶析装置に供給される2'-FL原料の加熱溶液は、強制循環減圧蒸発装置の使用により加熱され、好ましくは結晶化又は2'-FL原料の水溶液の濃縮の間に蒸発した水の蒸気再圧縮からの蒸気によって加熱される。強制循環減圧蒸発装置を使用すると、熱交換器表面の汚染が最小限になる。
【0079】
連続作動される結晶化装置は、好ましくは強制循環晶析装置である。
【0080】
ステップb)の結晶化は、典型的にはステップb)で結晶化にかける水溶液に当初含まれる2'-フコシルラクトースの少なくとも30%、特に少なくとも40%、例えば30~95%、特に40~90%が結晶化するように実行される。当業者は、低い百分率の結晶化した2'-フコシルラクトースは高純度をもたらすが、高い百分率の結晶化した2'-フコシルラクトースは、結晶性2'-フコシルラクトースが低純度で得られることを直ちに理解する。
【0081】
ステップb)において、水性母液中の結晶性2'-フコシルラクトースの懸濁液が得られる。ステップc)において、結晶化した2'-FLは、水性母液から分離される。このために、水性母液中の結晶化した2'-FLの懸濁液は、固体/液体分離にかけられる。液体からの固体の分離のために適切な方策は、遠心分離、濾過又は洗浄塔を含む。遠心分離の手段としては、プッシャー遠心分離機、ワームスクリーン遠心分離機、ピーラー遠心分離機及び傾瀉器を含むことができるが、これらに限定されない。濾過のための手段としては、回転式加圧濾過器、ベルトフィルター、吸引濾過器、チェンバーフィルター、及びチェンバーフィルタープレスを含んでもよいがこれらに限定的されない。適切な洗浄塔は、重力洗浄カラム、機械的洗浄カラム、水圧洗浄カラム及びピストン型洗浄カラムを含むことができるが、これらに限定されない。好ましくは、固体/液体分離は遠心分離によって、特にプッシャー遠心分離機又はワームスクリーン遠心分離機の使用によって行われるが、それによって得られる固体中の低い残留湿分が達成され得るからであり、それはしばしば10重量%未満、例えば1~8重量%になる。
【0082】
固体/液体分離は段階的に行われてもよく、又は連続的に行われる。
【0083】
得られた固体を、例えば、冷溶媒、例えば水、又は純粋な2'-FLの飽和水溶液によって洗浄して付着性の母液を取り出すことができる。固体2'-FLの洗浄に使用することができる適切な溶媒はまた、水と2'-FLの非溶媒との混合物であってもよい。典型的な非溶媒は、C1-C4-アルカノール、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール又はn-ブタノール及び酢酸である。固体2'-FLの洗浄に使用することができる適切な溶媒は、結晶化が2つ以上の結晶化段階で実施される場合、後続の結晶化ステップの母液であってもよい。固体2'-FLの洗浄に使用することができる適切な溶媒はまた、結晶化が2つ以上の結晶化段階で実施される場合、水と2'-FLの非溶媒との混合物、すなわち非溶媒と後続の結晶化ステップの母液の混合物であってもよい。洗浄は、例えば、固体結晶性2'-FLを冷溶媒で噴霧し、次いでさらに液体/固体分離することによって、又は固体結晶性2'-FLを冷溶媒中に懸濁させ、次いでさらに液体/固体分離することによって実施することができる。洗浄は、単一ステップにおいて、又は複数の洗浄ステップによって、例えば、2、3又はそれ以上のステップによって実施することができる。洗浄が、複数の洗浄ステップによって実施される場合、洗浄ステップを、同時に実施することができ、又は好ましくは向流で実施することができる。
【0084】
結晶化の完結を促し結晶性2'-フコシルラクトースの収率を増すために、ステップb)の前に結晶化がほとんど完結した場合、母液中の2'-フコシルラクトースの懸濁液に水混和性有機溶媒を添加することは可能である。この文脈において、ほとんど完結とは、好ましくはステップb)で選ばれた結晶化の条件下のステップb)の溶液から理論上結晶化することができる2'-フコシルラクトースの量に基づいて計算して少なくとも80%の、特に少なくとも90%の2'-フコシルラクトースが結晶化したことと理解される。典型的には、ステップb)の結晶化にかけられた水溶液中に当初含まれていた2'-フコシルラクトースの少なくとも30%、特に少なくとも40%、例えば30~95%、特に40~90%が結晶化した場合にのみ、有機溶媒は添加される。適切な水混和性有機溶媒は、20℃及び1barで脱イオン水と完全に混和性になる。適切な有機溶媒の例としては、C1-C4-アルカノール及びC1-C4-アルカン酸、特にエタノール、酢酸及び/又はプロピオン酸並びにその混合物が含まれる。有機溶媒の量は、しばしば有機溶媒と水の重量比が少なくとも1:1、例えば、1:1~10:1の範囲となるように選ばれる。驚いたことに、有機溶媒の添加によって、得られる2'-フコシルラクトースの純度がより高くなる。
【0085】
単一の結晶化が一般に2'-FLの純度を保証し、ほとんどの目的のためは十分であるので、2'-FLの結晶化はしばしば単一の結晶化ステップを含む。しかし、2'-FLの結晶化は、2又はそれ以上の結晶化ステップ、2又は3の後続の結晶化ステップ又は段階を含んでもよい。さらなる結晶化段階は、第1の結晶化段階で得られた結晶性材料の再結晶化を伴っていてもよい。この場合、さらなる結晶化段階を制御された過飽和条件下の結晶化を伴う上に記載の方法に従って実施することができ、所望の2'FLの純度をさらに増すのに有用である。また、2'-フコシルラクトースの収率を増すために、第1の結晶化段階で得られた母液を第2の結晶化段階にかけることは可能である。この場合、母液を2'-フコシルラクトース原料の水溶液の一部と混合し、混合物を結晶化にかけることが可能である。
【0086】
結晶性2'-フコシルラクトースの収率を増すために、ステップc)で得られた母液の一部又は全量を、母液の制御された過飽和の条件を誘導することによって、2'-フコシルラクトースの結晶化にかけることができる。このために、母液はさらなる結晶化に、好ましくは本明細書に記載の方法に従ってかけることができる。しかし、またステップb)を実行する前に母液の少なくとも一部を2'-フコシルラクトース原料の溶液と混合し、次いで、本明細書に記載の方法による2'-フコシルラクトースのさらなる結晶化に混合物をかけることが可能である。
【0087】
実施形態の第1の好ましい群によると、多段階結晶化方法は、第1の結晶化ステップ及び第2の結晶化ステップ、及び場合によって、1つ以上の、例えば1つ又は2つのさらなる結晶化ステップを含み、少なくとも第2の結晶化ステップ、及び好ましくはまた第1の結晶化ステップにおいても、本明細書に記載の方法によって、2'-フコシルラクトースの結晶化は、溶液の制御された過飽和条件を誘導することによって達成される。実施形態のこの好ましい群において、ステップa)で用意される2'-フコシルラクトース原料の水溶液は、第2の結晶化ステップの結晶化にかけられる。この第2の結晶化ステップから、母液中の結晶性2'-フコシルラクトースの水性懸濁液が得られ、それは次いで、ステップc)による固体-液体分離にかけられ、それによって結晶性2'-フコシルラクトース及び母液が得られる。次いで、この母液は第1の結晶化ステップに供給される。第1の結晶化ステップは、ステップb)について本明細書に記載のように、又は先行技術による結晶化に従って実行されてもよい。好ましくは、第1の結晶化ステップは、本明細書に記載のステップb)に従って実行される。第1の結晶化ステップは、追加の量の結晶性2'-フコシルラクトースをもたらす。しばしば、第1の結晶化ステップにおいて得られた結晶性2'-フコシルラクトースの純度は、第2の結晶化ステップにおいて得られた結晶性2'-フコシルラクトースの純度より多少低い。第1の結晶化ステップにおいて得られた結晶性2'-フコシルラクトースはそういうものとして使用されてもよい。しかしながら、また、それは、ステップa)で用意される2'-フコシルラクトース原料の水溶液に溶かすことができ、このようにして得られた溶液は、第2の結晶化ステップの結晶化にかけられる。
【0088】
多段階結晶化方法の実施形態の第2の群によると、ステップa)で用意される2'-FL原料の水溶液は、結晶化段階(1)に供給され、上に記載のようにバッチ式で又は連続的に作動される。次いで、この段階(1)で得られた結晶性2'-FLは、水に溶解され、得られた溶液は、後続の結晶化ステップ(2)にかけられ、精製された結晶性2'-FL及びさらなる母液が得られる。後続の結晶化ステップ(2)の母液は水と混合することができ、次いで、混合物は、結晶化ステップ(1)で得られた結晶性2'-FLを溶解するために使用される。段階(2)で得られた結晶性2'-FLは、1つ以上の、例えば、1つ又は2つのさらなる結晶化段階(3)及び(4)にそれぞれかけることができる。例えば後続の結晶化ステップ(n+1)の母液が水と混合され、この混合物は、結晶化ステップ(n)(nはそれぞれの結晶化ステップを示す)で得られた結晶性2'-FLを溶解するために使用される。第1の結晶化段階の母液は廃棄されてもよい。
【0089】
実施形態の第1及び第2の群の組合せによると、第1の結晶化段階の母液は、ストリッピング段階とも名付けられるさらなる結晶化段階にかけられ、廃棄される残留母液及び低純度の結晶性2'-FLが得られる。前記結晶化段階で得られた低純度の結晶性2'-FLを、例えばステップa)で用意される2'-FLの水溶液に溶かして、より高濃度の溶液が得ることができ、これは結晶化ステップ(1)に供給される。ステップ(1)の母液から前記結晶化で得られた結晶性2'-FLを、また水と結晶化ステップ(1)で得られた母液との混合物に溶解してステップa)で用意された2'-FLの水溶液と混合してより高濃度の溶液を得ることができ、これは結晶化ステップ(1)に供給される。
【0090】
本発明によると、実施形態の第2の群及び実施形態の第2と第1の群との組合せの少なくとも結晶化段階(1)は、上記の方法に従って実施され、制御された過飽和条件下の結晶化を伴う。結晶化段階に結晶化段階(2)が続く場合、また、結晶化段階(2)は、好ましくは上に記載の方法に従って行われ、これは、制御された過飽和条件下の結晶化を伴う。
【0091】
本発明による方法は、
図1~9に関して詳細に、以下に記載される。示す図は、例証のために役立ち、本発明をそれに限定するようには意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【
図1】本発明による方法の基本的なフローチャートを示す図である。
【
図2】強制循環晶析装置の一実施形態を示す図である。
【
図3】強制循環晶析装置の別の実施形態、この場合ドラフトバッフル晶析装置を示す図である。
【
図4】誘導式強制循環晶析装置の一実施形態を示す図である。
【
図5】本発明の多段階プロセスの一実施形態の構成図を示す図である。
【
図6】本発明の多段階プロセスの実施形態の第2の群のブロック図を示す図である。
【
図7】本発明の1つの結晶化段階を概略的に示す図である。
【
図8】本発明の実施形態の第1の群による2段階結晶化プロセスを概略的に示す図である。
【
図9】本発明の実施形態の第2の群による2段階結晶化プロセスを概略的に示す図である。
【0093】
図において、以下の参照記号が使用される:
C 結晶相/結晶
CR 結晶化
D 排出
DU 希釈設備
F 供給
L 液体
ML 母液
MLR 再循環母液
P 生成物
R 再循環懸濁液
RL 残留液
S 新しい溶液
SLS 固体/液体分離
V 蒸気
W 凝縮蒸気(液体水)
WL 洗浄液
i 段階の指標
1 晶析装置
2 熱交換器
3 分離器
4 循環ポンプ
5 濃縮ポンプ
6 蒸気用圧縮機
10 注入口
11 スラリー回収
12 懸濁液出口
13 液体回収/越流
14 ドラフトチューブ
15 デミスター
16 蒸気出口
17 沈降ゾーン
18 揺動機
19 誘導物
20 蒸気分離ゾーン
21 有効容積
【0094】
図1に示すように、2'-FL原料の水溶液を含む新しい流れSは、再循環流Rと合わされ、熱交換器2において、少なくとも40℃、例えば40℃~95℃の範囲の温度に加熱されて、供給流Fとして2'-FL原料の水溶液をもたらす。熱交換器2は、特定の要件に応じて、水平又は垂直のいずれかに配置することができる。次いで、供給Fを、連続作動される晶析装置1へ供給する。晶析装置1は、懸濁液の重量に基づき、5重量%~50重量%、例えば20重量%~40重量%の固体2'-FLの含有率を有する、2'-FLの水性過飽和懸濁液を有効容積として含む。2'-FL原料の未飽和水溶液Fを有効容積へ供給し、同時に水を除去すると、過飽和懸濁液における、すなわち晶析装置1の有効容積における2'-FLの濃度は横這いになる。水性懸濁液中の2'-FLの制御された過飽和は、2'-FLの所望の多形体に依存して少なくとも25℃、例えば30℃~95℃の範囲の温度で、且つ減圧で、例えば20mbar~800mbarの範囲で実施される。
【0095】
水は蒸発によって2'-FLの水性懸濁液から除去され、水蒸気Vは晶析装置1から頂部で回収される。蒸気Vは、熱交換器2を加熱するために、圧縮機6を介してさらに運ばれ、例えば、加熱すべき供給Fに向流で運ばれ、凝縮液Wとして熱交換器2を離れることができる。
【0096】
結晶性2'-FLを含むスラリーの排出Dは、晶析装置1から下端部で取り出される。排出Dから部分流が、再循環流Rとして取り込まれ、再循環ポンプ4によって運ばれて、熱交換器2へ入る前、入るとき、又は入った後に新しい流れSと混合される。排出Dは、再循環流Rと新しい流れSとの重量比が、好ましくは5を超える、特に10を超える、20を超える、例えば40:1~60:1の範囲になるように分配される。
【0097】
排出Dの他の部分は、濃縮ポンプ5によって分離器3へ回される。分離器3において、スラリーDは、分離されて母液ML及び生成物Pとしての結晶性2'-FLが得られる。所望の場合、母液MLを本発明の方法又は先行の段階へ再循環することができる。
【0098】
代替として、結晶性2'-FLを含むスラリーの排出Dは、晶析装置1から下端部の側面で取り出される。排出Dは、濃縮ポンプ5によって分離器3へ送られる。分離器3において、スラリーDは、分離されて母液ML及び生成物Pとしての結晶性2'-FLが得られる。所望の場合、母液MLを本発明の方法又は先行の段階へ再循環することができる。第2の排出は、晶析装置1から下端部の中央部分で再循環流Rとして取り出される。再循環流Rは、再循環ポンプ4によって運ばれて、熱交換器2へ入る前、入るとき、又は入った後に新しい流れSと混合される。再循環流Rと新しい流れSとの重量比は、5を超える、特に10を超える、20を超える、例えば40:1~60:1の範囲である。晶析装置の側面で取り出されたスラリーDが、晶析装置1の下部で取り出されたスラリーRよりもより高粘度であるか、又は異なる粒径分布の結晶を含むならば、2つの異なるスラリーの、この代替の回収が、特に好都合であることを実証することができる。
【0099】
結晶化は、好ましくは、連続作動される晶析装置、例えば、強制循環晶析装置、ドラフトチューブ晶析装置、又はドラフトチューブバッフル晶析装置、又は特に誘導式強制循環晶析装置において実施することができる。
【0100】
図2にドラフトチューブ晶析装置を示す。2'-FL原料の過熱された水溶液Fは、注入口10を介して晶析装置1へ供給され、ドラフトチューブ14を通って上方へ流れ、ドラフトチューブ14の外側に沿って下方へ戻る。
【0101】
有効容積21の懸濁液から蒸発した水は、蒸気Vとして晶析装置1の頂部まで上昇する。蒸気Vは、蒸気分離ゾーン20及びデミスター15を通過して液滴を除去し、蒸気出口16を介して晶析装置1を離れる。蒸気Vは、熱交換器2を加熱するために圧縮機6を介してさらに運ばれ、例えば、加熱すべき供給Fに向流で運ばれ、凝縮液Wとして熱交換器2を離れる。
【0102】
有効容積21周辺に、沈降ゾーン17を配置することができる。有効容積21の下部領域の懸濁液出口12を介して、懸濁液Rを取り出し、新しい溶液Sと合わせる。RとSとの合流は、循環ポンプ4を介して熱交換器2を通って、供給Fとして晶析装置へ再循環される。循環ポンプ4により、入ってくる溶液Fと混合された懸濁液との必要な揺動が行われ、有効容積21内で懸濁液の循環が実施される。
【0103】
有効容積21の下の、晶析装置1の下部に設置されたスラリー回収11を介して、スラリーDは晶析装置1から取り出される。回収されたスラリーDは、所望の結晶性2'-FLを含む。
【0104】
図3に、強制循環を備えたドラフトチューブバッフル晶析装置を示す。2'-FL原料の過熱された水溶液Fは、注入口10を介して晶析装置1へ供給され、ドラフトチューブ14を通って上方へ流れ、ドラフトチューブ14の外側に沿って下方へ戻る。下部入口の揺動機18により、入ってくる溶液Fと混合された懸濁液との必要な揺動が適度なエネルギー消費で行われ、有効容積21内で懸濁液の循環が果たされる。
【0105】
有効容積21の懸濁液から蒸発した水は、蒸気Vとして晶析装置1の頂部まで上昇する。蒸気Vは、蒸気分離ゾーン20及びデミスター15を通過して液滴を除去し、蒸気出口16を介して晶析装置1を離れる。
【0106】
有効容積21周辺に、沈降ゾーン17がバッフルによって配置されている。沈降ゾーン17において、過剰な母液L及び/又は微粒子をさらに処理するために、沈降ゾーン17の上部領域の越流13で回収することができる。この基本的に透明な液体Lを、任意の段階で、2'-FLの溶液の温度及び/又は濃度を調整するプロセスへ再循環することができる。
【0107】
沈降ゾーン12の下部領域の懸濁液出口12を介して、懸濁液Rが取り出され、再循環されて新しい供給流Sと混合される。
【0108】
沈降ゾーン12の下に設置されたスラリー回収11を介して、スラリーDは、晶析装置1から取り出される。回収されたスラリーDは、生成物Pとして、所望の結晶性2'-FLを含む。
【0109】
図4に示す誘導式強制循環晶析装置を、上に説明した
図2及び
図3に示す強制循環晶析装置と同様に作動させる。
図3に示す実施形態と異なり、誘導式強制循環晶析装置は、内部揺動装置がなくても働く。
【0110】
2'-FL原料の過熱された水溶液Fは、注入口10を介して晶析装置1へ供給され、ドラフトチューブ14を通って上方へ流れ、ドラフトチューブ14の外側に沿って下方へ戻る。有効容積21の懸濁液から蒸発した水は、蒸気Vとして晶析装置1の頂部まで上昇する。蒸気Vは、蒸気分離ゾーン20及びデミスター15を通過して液滴を除去し、蒸気出口16を介して晶析装置1を離れる。
【0111】
有効容積21周辺に、沈降ゾーン17が配置されている。液体Lは、沈降ゾーン17の上部領域の液体回収13で回収される。この基本的に透明な液体Lは、循環ポンプ4によって再循環される。沈降ゾーン12の下の懸濁液出口12を介して、懸濁液Rを取り出し、外部循環路で透明液体Lと合わせる。新しい溶液Sは、流れRと合わされる前に、合わされるのと同時に、又は合わされた後に、再循環流Lへ供給される。合わせた再循環流は、熱交換器(図示せず)で加熱され、供給Fとして晶析装置1へ供給される。
図2に示す実施形態と同様に、熱交換器2を加熱するために、蒸気Vを用いることができる。
【0112】
循環ポンプ4の処理能力によって、再循環懸濁液Rを吸い上げ、有効容積21内で懸濁液の必要な揺動が行われる。さらなる揺動装置は必要とされず、懸濁液中の結晶は想定される最小の負荷で処理される。
【0113】
有効容積21の下の、及び沈降ゾーン12の下の、晶析装置1の下部に設置されたスラリー回収11を介して、スラリーDは、晶析装置1から取り出される。回収されたスラリーDは、生成物Pとして、所望の結晶性2'-FLを含む。
【0114】
図5の多段階プロセスにおいて、結晶化はn段階で遂行される。段階3~nが任意選択の段階であることが注目されるべきである。供給Fは第1の結晶化段階(i=1)へ導入される。溶媒は、例えば、第1の結晶化から蒸発によって除去される。懸濁液は、残留液RLと第1の結晶相C
1とへ分離される。第1の結晶性相C
1は第2の結晶化段階(i=2)へ送られる。第2の結晶化段階(i=2)の母液は、例えば、水と混合され、その混合物を用いて第1の結晶化段階で得られた結晶相C
1を溶解させることによって、第1の結晶化段階(i=1)へ再循環される。それぞれの結晶化段階(i=2~n)において、水は、例えば、溶媒蒸気Vの形で回収することによって除去され、且つ懸濁液は、母液MLと結晶相Cとへ分離される。各結晶化段階(i)の結晶相は、後続の結晶化段階(i+1)へ送られる。各結晶化段階(i)の母液は、例えば、水と混合され、その混合物を用いて先行の結晶化段階の結晶性2'-FLを溶解させることによって、先行の結晶化段階(i-1)へ再循環される。所望の2'-FL結晶を含む結晶相は、最後の段階nで回収される。段階の回数nは、形態、純度、流動特性及び保存性に関して、結晶の所望される性質に依存する。
【0115】
図6の多段階プロセスにおいて、結晶化は、n段階で遂行され、第1の段階(i=1)がストリッピング部である。段階3~nが任意選択の段階であることは注目されるべきである。フローは、
図5で記載したフローと同様であるが、供給Fが、ストリッピング段階(i=1)と第2の結晶化段階(i=2)との間に導入される。一般に、
図6によるプロセスは、所望の生成物がより高い収率でもたらす。
【0116】
図7の結晶化段階(i)は、結晶化CR
i及び固体/液体分離SLS
iのための装置をそれぞれ含む。結晶化CR
iに使用される装置は、一般に、結晶性懸濁液に適した晶析装置、例えば、撹拌タンク反応器、例えば、スウェンソン型晶析装置、強制循環晶析装置、例えば、オスロ型反応器、ドラフトチューブ反応器、ドラフトチューブバッフル晶析装置(
図3を参照のこと)、又は誘導式強制循環晶析装置(
図4を参照のこと)である。固体/液体分離SLS
iに使用される装置は、一般に、遠心分離機、デカンター、フィルター、フィルタープレス又は洗浄塔である。
【0117】
各段階(i)の供給Fiは、先行の段階(i-1)からの結晶相Ci-1及び/又は新しい供給Fをそれぞれ含む懸濁液、並びに再循環母液MLRiを含む。留出物は、溶媒蒸気Viの形で結晶化CRiから回収される。その後、懸濁液は、固体/液体分離SLSiにおいて、母液MLiと結晶相Ciとへ分離される。各結晶化段階(i)の結晶相Ciは、それぞれ、後続の結晶化段階(i+1)へ供給Fi+1として送るか、又は生成物として回収することができる。各結晶化段階(i)の母液MLiの一部は、MLRiとして同じ段階へ再循環される。各結晶化段階(i)の母液MLiの残留部分を、それぞれ、先行の結晶化段階(i-1)へ再循環するか、又は回収することができる。生成物2'-FLの純度を高めるために、固体/液体分離SLSiにおいて洗浄液WLiを追加して使用することができる。洗浄液WLiとして、好ましくは、冷水、又は後続の結晶化段階(i+1)の冷却された母液が使用される。
【0118】
図8において、
図6と同様の2段階プロセスが描かれる。供給Fは、ストリッピング段階(i=1)と第2の結晶化段階(i=2)との間で希釈設備DUへ導入され、そこで、第1の結晶化段階で得られた結晶性2'-フコシルラクトースC1が供給、すなわち2'-フコシルラクトース原料の水溶液に溶解される。水は第2の結晶化段階から、例えば、蒸発による蒸気Vとして除去される。それによって、母液中の2'-フコシルラクトースの懸濁液が得られ、これを固体-液体分離SLS2にかけて母液ML及び精製された結晶性2'-フコシルラクトースC2が得られる。第2の結晶化段階(i=2)からの母液は、第1の結晶化段階(i=1)へ再循環される。水は第1の結晶化段階から、例えば、蒸発による蒸気Vとして除去される。それによって、母液中の2'-フコシルラクトースの懸濁液が得られ、これは固体-液体分離SLS1にかけて廃棄される残留液RL、及び結晶性2'-フコシルラクトースC1が得られる。
【0119】
図9において、
図5と同様の2段階プロセスが描かれる。供給F、すなわち、2'-フコシルラクトース原料の水溶液は第1の結晶化段階(i=1)へ導入される。水は第1の結晶化段階から、例えば、蒸発による蒸気Vとして除去される。それによって、母液中の2'-フコシルラクトースの懸濁液が得られ、これは固体-液体分離SLS1にかけて廃棄される残留液RL、及び精製された結晶性2'-フコシルラクトースC1が得られる。結晶性2'-フコシルラクトースC1は、希釈設備DU中で溶媒S(水又はさらなる供給)に溶解される。このように得られた溶液は、第2の結晶化段階(i=2)へ送られる。水は第2の結晶化段階から、例えば、蒸発による蒸気Vとして除去される。それによって、母液中の2'-フコシルラクトースの懸濁液が得られ、これは固体-液体分離SLS2にかけて母液ML及び精製された結晶性2'-フコシルラクトースC2が得られる。第2の結晶化段階(i=2)からの母液MLは、第1の結晶化段階(i=1)へ、例えば、それを供給Fと混合することによって再循環される。
【0120】
略号:
2'-FL:2'-O-フコシルラクトース
DiFL:ジフコシルラクトース
b.w:重量で
rpm:毎分回転数
RT:室温、すなわち約22℃
【実施例】
【0121】
分析:
HPLC:
カラム:Spherisorb NH2カラム(アミン修飾シリカ:粒度3μm、孔径80Å)長さ250mm、内径4.5mm(Waters Corporation)
溶離液:アセトニトリル/水82.5/17.5 v/v
検出:RID
パラメーター:流速1.3ml/分、T=35℃、圧力112bar、5μl注入量
【0122】
水分の測定:水の濃度はKarl-Fischer滴定によって求めた。
【0123】
乾燥分含有率は、130℃で2gの試料を2時間乾燥することにより求めた。
【0124】
濾過ケーキ抵抗力を、加圧ヌッチェ、印加圧力及びフィルター面積において、濾液の測定した体積流量に基づいて計算した。
【0125】
結晶形の判定:粉末X線回折(PXRD)X線回折図形を、Panalytical X'Pert Pro回折計(製造業者: Panalytical)を用いて2θ=3°~40°の範囲、例えば0.017°の増分の反射ジオメトリ(Bragg-Brantano)で、20秒/ステップの測定時間、25℃でCu-Kα照射(1.54178Å)を使用して記録した。管電圧は45kV及び電流40mAであった。試料は、深さ0.2mmの平坦化したシリコン単結晶サンプルホルダー中に置いた。
【0126】
結晶化実施例
実施例1~3において、発酵によって得られた2'-FL原料の水溶液を使用し、イオン交換樹脂床に発酵培養液を通し、このように処理した培養液を61.1重量%の固体含有率に濃縮することを含む後続の下流での加工を使用した。水溶液は、52.5重量%の2'-FL、及びラクトース、DiFL及びフコシルラクツロースを含む8.6重量%の単糖及びオリゴ糖を含んでいた。
【0127】
[実施例1]
蒸留橋かけ(distillation bridge)及び撹拌機を装備した反応フラスコにおいて、2'-FL原料の水溶液100gを水浴によって50℃(浴温)に加熱した。30mbarの圧力で19.42gの水を留去し、65重量%の2'-FLを含有するシロップを得た。生成物(2'-FL)と得られたシロップ中の水との重量比は、2.74:1であった。容器は周囲圧力に戻し(expanded)、得られた粘性の溶液を45℃(浴温)に冷却し、先の作業から得られた2'-FLの結晶II形0.05gを播種した。45℃(浴温)で混合物をさらに4時間撹拌し、RTに冷却し、さらに16時間撹拌した。このようにして得られた高粘度の懸濁液を35℃(浴温)に温め、周囲圧力35℃で2時間撹拌した。加熱した吸引濾過器(35℃)に通して温かい懸濁液を濾過し、各10mlのエタノール/水(80/20w/w)を用いて濾過ケーキを4回洗浄し、その後40℃及び0.8mbarで12時間乾燥した。それによって、以下の組成物を有する、38.9gの結晶性材料(収率70.5%)を得た:
【0128】
組成物(HPLC):95.1%の2'-FL、0.2%のラクトース、0.3%のフコシルラクツロース、0.9%のDiFL。得られた結晶性材料は、Karl-Fischer滴定によって求めて水を3.3重量%含んでいた。
【0129】
得られた結晶性材料において、2'-FLは、PXRDによって求めて基本的に形態Aとして存在した。
【0130】
[実施例2]
蒸留橋かけ及び撹拌機を装備した反応フラスコにおいて、2'-FL原料の水溶液200gを水浴によって55℃(浴温)に加熱した。30mbarの圧力で31.65gの水を留去し、62.4重量%の2'-FLを含有するシロップを得た。生成物(2'-FL)と得られたシロップ中の水との重量比は、2.3:1であった。結果として得られた粘性の溶液は周囲圧力に戻し、45℃(浴温)に冷却し、実施例1から得られた、0.05gの結晶性2'-FL(形態A)を播種した。混合物を45℃(浴温)及び周囲圧力でさらに4時間撹拌し、次いで、10°に冷却した。2'-FLの形態Aが形成されたことを示す試料を採取した。次いで、10℃で温度を維持しながら酢酸及び水の体積比が3:1v/vになるように、30分以内に136.2mlの酢酸を添加した。得られた懸濁液を周囲圧力10℃で0.5時間撹拌した。このようにして得られた懸濁液を吸引濾過器に通して濾過し、各10mlの酢酸/水(80/20w/w)を用いて濾過ケーキを3回洗浄し、その後40℃及び0.8mbarで12時間乾燥した。それによって、以下の組成物を有する、53.6g(収率49.1%)の結晶性材料を得た:
【0131】
組成(HPLC):0.5%のDiFL及び96.2%の2'-FL(ラクトース及びフコシルラクツロースは検出限界以下)。得られた結晶性材料は、Karl-Fischer滴定によって求めて水を3.9重量%含んでいた。
【0132】
得られた結晶性材料において、2'-FLは、PXRDによって求めて基本的に形態Aとして存在した。
【0133】
[実施例3]
蒸留橋かけ及び撹拌機を装備した反応フラスコにおいて、2'-FL原料の水溶液200gを水浴によって65℃(内部温度、80℃浴温)に加熱した。250mbarの圧力で38gの水を留去し、64.8重量%の2'-FLを含有するシロップを得た。生成物(2'-FL)と得られたシロップ中の水との重量比は、2.5:1であった。得られたシロップは周囲圧力に戻し、50℃(浴温)に冷却した。懸濁液は周囲圧力50℃(浴温)でさらに3時間撹拌し、次いで20℃に冷却し、20℃でさらに1時間間撹拌した。次いで、20℃に温度を維持しながら、酢酸と水の体積比が3:1v/vとなるように30分以内に117mlの酢酸を添加した。得られた懸濁液を10℃で0.5時間撹拌した。このようにして得られた懸濁液を吸引濾過器に通して濾過し、各15mlの酢酸/水(80/20w/w)を用いて濾過ケーキを3回洗浄し、その後、40℃及び0.8mbarで12時間乾燥した。それによって、以下の組成物を有する80.3gの結晶性材料(収率75.6%)を得た:
【0134】
組成(HPLC):0.2%のラクトース、0.3%のフコシルラクツロース及び98.8%の2'-FL(DiFLは検出限界以下)。得られた結晶性材料は、Karl-Fischer滴定によって求めて水を0.015重量%含んでいた。
【0135】
得られた結晶性材料において、2'-FLは、PXRDによって求めて基本的に形態IIとして存在した。
【0136】
上記の実施例3に対する変動として下記が可能である:
a.実施例3に詳述したように60重量%を超えるシロップ中の2'-FLの濃度を増す代わりに、また、わずか50重量%までの2'-FLの濃度を有する低濃度シロップの2'-FLを使用することも可能である。より低濃度の溶液から開始した実験結果は、基本的に実施例3と同じである。
b.さらなる可能性として、実施例3に使用したような酢酸の量は、3倍の量まで増すことができるが、やはり実施例3でのような基本的に同一の結果に結びつく。
c.さらなる可能性として、2'-FLの任意の多形相及びさらに非晶質2'-FLを溶液に播種できるが、やはり基本的に同一の結果が得られる。
「基本的に同一の結果」とは、2'-FLの純度及び副生物の含有率の絶対量が非常にわずかな程度、すなわち実施例3の実験結果から約5%未満の偏差で変動することを意味する。
【0137】
実施例4において発酵によって得られた2'-FL原料の水溶液を使用し、イオン交換樹脂床に発酵培養液を通し、このように処理した培養液を61.5重量%の固体含有率に濃縮することを含む後続の下流での加工を使用した。水溶液は、49.4重量%の2'-FL、並びに0.8%のラクトース、0.4%のフコシルラクツロース及び2.5%のDiFLを含む12.1重量%の単糖及びオリゴ糖を含んでいた。
【0138】
[実施例4]
蒸留橋かけ及び撹拌機を装備した反応フラスコにおいて、2'-FL原料の水溶液200gを水浴によって45℃(浴温)に加熱した。20~50mbarの圧力で約30gの水を留去し、約58重量%の2'-FLを含有するシロップを得た。生成物(2'-FL)と得られたシロップ中の水との重量比は、2.1:1であった。得られた粘性のシロップは周囲圧力に戻し、実施例3から得られた、0.05gの結晶性2'-FL(形態II)を45℃(浴温)で播種した。周囲圧力及び45℃(浴温)でさらに16時間混合物を撹拌した。このようにして得られた高粘度の懸濁液を反応器から取り出し、加熱した吸引濾過器(40℃)に通して濾過し、不活性ガスの流動下で40℃及び10mbarで16時間濾過ケーキを乾燥した。それによって、以下の組成を有する、78.1gの結晶性材料(収率69.3%)を得た:
【0139】
組成(HPLC):0.72%のラクトース、0.57%のフコシルラクツロース、2.61%のDiFL及び87.64%の2'-FL。得られた結晶性材料は、Karl-Fischer滴定によって求めて水を3.0重量%含んでいた。
【0140】
得られた結晶性材料において、2'-FLは、PXRDによって求めて基本的に形態Aとして存在した。
【0141】
以下の実施例5~8及び比較例C1及びC2において、発酵並びに脱色、精密濾過、限外濾過、脱ミネラル化及び逆浸透を含む後続の下流の加工によって得られた2'-FL原料の水溶液を使用した。水溶液は、25重量%の乾燥分含有率を有し、21.0重量%の2'-FL、並びにラクトース及びDiFLを含む、4重量%の単糖及びオリゴ糖を含んでいた。
【0142】
[実施例5]
ロータリーエバポレータで、2'-FL原料の水溶液を減圧下60℃で蒸発させ、約73重量%の乾燥分含有率、及び約59重量%の2'-FLの濃度にした。1517gのこのようにして得られた溶液を、バッフルタンクへ充填し、60℃(内部温度)で撹拌した。次いで、12gの非晶質の2'-FLをこの溶液に添加し、固体の形成が認められた。60℃(内部温度)で20時間このようにして形成された懸濁液を撹拌した。次いで撹拌しながら25℃にこのようにして形成された懸濁液を1.5時間冷却した。次いで、洗浄せずにこのようにして得られた懸濁液を濾過した。それによって、以下の組成を有する467gの湿潤結晶性材料を得た:
【0143】
濾過ケーキの組成:83重量%の2'-FL、1.2重量%のラクトース、0.9重量%のフコシルラクツロース、2.1重量%のDiFL及び9重量%の水。濾過ケーキにおいて2'-FLは、PXRDによって求めて基本的に形態IIとして存在した。理論収率は、濃縮溶液中に含まれるフコシルラクトースに基づいて42%であった。
【0144】
濾液には以下の組成を有していた:49重量%の2'-FL、1.4重量%のフコシルラクツロース、2重量%のラクトース、3.7重量%のDiFL及び36重量%の水。
【0145】
濾過ケーキ抵抗力は5×1012Pas/m2であった。
【0146】
実施例3の文脈において挙げた変動と同様の変動a及びcが、ここでも当てはまり、実施例5での結果と基本的に同じになる。
【0147】
[実施例6]
ロータリーエバポレータにおいて、2'-FL原料の水溶液を、約62重量%の乾燥分含有率、及び約50重量%の2'-FLの濃度にまで減圧下40℃で蒸発させた。1532gのこのようにして得られた溶液を、バッフルタンクへ充填して、40℃(内部温度)で撹拌した。次いで、5gの結晶性2'-FL(形態II)をこの溶液に添加し、固体の形成が認められた。このように形成された懸濁液を40℃(内部温度)で19時間撹拌した。次いで、このようにして形成された懸濁液を減圧下40℃で61重量%の2'-FLの濃度に蒸発させ、その後撹拌しながら1.0時間以内に25℃に冷却した。懸濁液を25℃でさらに22時間撹拌した。次いで、このようにして得られた懸濁液を洗浄せずに濾過した。それによって、以下の組成を有する、772gの湿潤結晶性材料を得た:
【0148】
濾過ケーキの組成:77重量%の2'-FL、1.1重量%のラクトース、0.8重量%のフコシルラクツロース、1.9重量%のDiFL及び15重量%の水。理論収率は、濃縮溶液中に含まれる2'-FLに基づいて77%であった。濾過ケーキにおいて、2'-FLは、PXRDによって求めて基本的に形態Bとして存在した。
【0149】
濾液には以下の組成を有していた:36重量%の2'-FL、2重量%のフコシルラクツロース、3.1重量%のラクトース、5重量%のDiFL及び40重量%の水。
【0150】
濾過ケーキ抵抗力は4×1011Pas/m2であった。
【0151】
[実施例7]
ロータリーエバポレータにおいて、2'-FL原料の水溶液を、約65重量%の乾燥分含有率、及び約52重量%の2'-FLの濃度に減圧下40℃で蒸発させた。1572gのこのようにして得られた溶液を、バッフルタンクへ充填して、40℃(内部温度)で撹拌した。次いで、26gの結晶性2'-FL(形態A)をこの溶液に添加し、固体の形成が認められた。40℃(内部温度)で1時間このようにして形成された懸濁液を撹拌した。次いで、このようにして形成された懸濁液を減圧下40℃で55重量%の2'-FLの濃度に蒸発させ、続いて40℃で12時間撹拌し、その後1.0時間以内に撹拌しながら25℃に冷却した。25℃でさらに7時間懸濁液を撹拌した。次いで、このようにして得られた懸濁液を洗浄しないで濾過した。それによって湿潤結晶性材料を得、PXRDによって求めて形態Bとしての2'-FLを含んでいた。
【0152】
濾過ケーキを60℃100mbarで2日間乾燥した後、以下の組成を有する結晶性材料を得た:
【0153】
90重量%の2'-FL、0.5重量%のラクトース、0.3重量%のフコシルラクツロース、1.1重量%のDiFL及び5.9重量%の水。理論収率は、濃縮溶液に含まれる2'-FLに基づいて41%であった。乾燥した結晶性材料において、2'-FLは、PXRDによって求めて基本的に形態Aとして存在した。
【0154】
濾液は以下の組成を有していた:45重量%の2'-FL、1.3重量%のフコシルラクツロース、1.9重量%のラクトース、3.7重量%のDiFL及び39重量%の水。
【0155】
濾過ケーキ抵抗力は5×1011Pas/m2であった。
【0156】
[実施例8]
合計で1099gの、実施例5、6及び7で得られた濾液、並びに水を、バッフルタンクへ充填して、40℃で撹拌した。この溶液中の2'-FLの濃度は36重量%であった。水を減圧下40℃で溶液から蒸発させながら、2'-FLの濃度が43重量%になるまで撹拌を継続した(乾燥分含有率は67重量%であった)。次いで、8gの結晶性2'-FL(形態A)をこの溶液に添加し、固体の形成が認められた。40℃(内部温度)で2時間このようにして形成された懸濁液を撹拌した。次いで、このようにして形成された懸濁液を減圧下40℃で47重量%の2'-FLの濃度に蒸発させ、続いて40℃で1時間撹拌し、その後1.0時間以内に撹拌しながら25℃に冷却した。25℃でさらに72時間懸濁液を撹拌した。次いで、このようにして得られた懸濁液を洗浄しないで濾過した。それによって湿潤結晶性材料を得、これは形態Bとして2'-FLを含んでいた。
【0157】
60℃及び100mbarで2日間濾過ケーキを乾燥した後、以下の組成を有する結晶性材料を得た:88%の2'-FL、0.9重量%のラクトース、0.5重量%のフコシルラクツロース及び1.7重量%のDiFL。理論収率は、濃縮溶液に含まれる2'-FLに基づいて26%であった。乾燥結晶性材料において、2'-FLは、PXRDによって求めて基本的に形態Aとして存在した。
【0158】
濾液には以下の組成を有していた:40重量%の2'-FL、2.1重量%のフコシルラクツロース、3.2重量%のラクトース、5.7重量%のDiFL及び35重量%の水。
【0159】
濾過ケーキ抵抗力は6×1011Pas/m2であった。
【0160】
比較例C1
蒸留装置において、2'-FL原料の水溶液を約42重量%の2'-FLの濃度に減圧下60℃で蒸発させた。1663gのこのようにして得られた溶液をバッフルタンクへ充填して、85重量%の乾燥分含有率、及び69%の2'-FL濃度に減圧下60℃で蒸発させた。次いで、自発的な結晶化が生じて、懸濁液の粘度は高過ぎたので、バッフルタンクからそれを排出することができなかった。懸濁液のPXRDは、形態IIとして、2'-FLが基本的に存在することを示した。
【0161】
比較例C2
蒸留装置において、2'-FL原料の水溶液を、約50重量%の2'-FLの濃度に減圧下50℃で蒸発させた。1607gのこのようにして得られた溶液をバッフルタンクへ充填し、80重量%の乾燥分含有率、及び65%の2'-FLの濃度に減圧下40℃で蒸発させた。次いで、自発的な結晶化が生じ、懸濁液の粘度が高過ぎてバッフルタンクからそれを排出することができなかった。懸濁液のPXRDは、2'-FLが基本的に形態Bとして存在することを示した。
【0162】
以下の実施例9~10において、発酵、及び脱色、精密濾過、限外濾過、脱ミネラル化及び逆浸透を含む後続の下流の加工によって得られた2'-FL原料の水溶液を使用した。水溶液は、29重量%の乾燥分含有率を有し、24.5重量%の2'-FL、並びにラクトース及びDiFLを含む4重量%の単糖及びオリゴ糖を有していた。
【0163】
減圧下ロータリーエバポレータで2'-FL原料の水溶液を、約52.1重量%の2'-FLの濃度に濃縮した。この溶液を「予備蒸発した供給」と名付け、以下の実施例9及び10において使用した。
【0164】
[実施例9]
1612gの予備蒸発した供給原料をバッフルタンクへ充填して、60℃(内部温度)で撹拌した。水を60℃で撹拌しながら減圧下で62重量%の2'-FLの濃縮に蒸発させた。次いで、12gの結晶性2'-FL(形態II)を、少量の予備蒸発した供給中に懸濁し、この溶液に添加し、固体の形成が認められた。450rpmで撹拌しながら60℃(内部温度)で19時間このようにして形成された懸濁液を撹拌した。次いで、このようにして形成された懸濁液を加熱した加圧ヌッチェの使用により洗わずに濾過した(60℃、圧力差0.5bar、230秒)。それによって湿潤結晶性材料を得、これは、PXRDによって明示されるように形態IIとして2'-FLを含んでいた。
【0165】
60℃及び100mbarで1日間濾過ケーキを乾燥した。得られた結晶性材料は以下の組成を有していた:94.6重量%の2'-FL、0.8重量%のラクトース、2.1重量%のDiFL。理論収率は、濃縮溶液に含まれる2'-FLに基づいて45%であった。
【0166】
実施例3において挙げた変動と同様の変動a及びcが、ここでも当てはまり、実施例9での結果と基本的に同じになる。
【0167】
[実施例10]
1628gの予備蒸発した供給を、バッフルタンクへ充填して、40℃(内部温度)で撹拌した。水を減圧下40℃で撹拌しながら、63重量%の濃度の2'-FLに蒸発させた。次いで、13gの結晶性2'-FL(形態A)を、少量の予備蒸発した供給中に懸濁し、この溶液に添加し、固体の形成が認められた。450rpmで撹拌しながら40℃(内部温度)で21時間このようにして形成された懸濁液を撹拌した。次いで、このようにして形成された懸濁液を加熱した加圧ヌッチェの使用により洗わずに濾過した(40℃、圧力差0.5bar、403秒)。それによって、湿潤結晶性材料を得、これはPXRDによって明示されるように形態Bとして2'-FLを含んでいた。
【0168】
60℃及び100mbarで1日間濾過ケーキを乾燥した。得られた結晶性材料は以下の組成を有していた:88重量%の2'-FL、1.4重量%のラクトース、4.3重量%のDiFL。理論収率は、濃縮溶液に含まれる2'-FLに基づいて80%であった。乾燥した結晶性材料のPXRDは、PXRDによって求めて2'-FLは基本的に形態Aとして存在したことを示した。
【0169】
[実施例11]
発酵、並びにイオン交換樹脂床に発酵培養液を通し及び50.4重量%の2'-FL含有率にこのように処理した培養液を濃縮することを含む後続の下流の加工によって得られた2'-FL原料の水溶液を使用した。水溶液は、加えて、0.9重量%のラクトース、2.9重量%のDiFL、及び1.6重量%のフコシルラクツロースを含んでいた。
【0170】
蒸留橋かけ及び撹拌機を装備した反応フラスコにおいて、水浴によって150gの2'-FL原料の水溶液を50℃(浴温)に加熱した。30~100mbarの圧力で水を留去し、65重量%の2'-FLを含有するシロップを得た。容器を周囲圧力に戻し、得られた粘性の溶液を45℃(浴温)に冷却し、先の作業から得られた0.15gの結晶性2'-FLを播種した。さらに4時間45℃(浴温)で混合物を撹拌し、RTに冷却し、RTでさらに30時間撹拌した。このようにして得られた高粘度の懸濁液に、84gの氷酢酸を添加し、結晶化を完結するためにさらに3時間混合物を撹拌した。吸引濾過器に通してその懸濁液を濾過し、氷酢酸を用いて濾過ケーキを3回洗浄し、その後12時間40℃1.0mbarで乾燥した。それによって、以下の組成を有する61gの結晶性材料を得た:
【0171】
組成(HPLC):92.9%の2'-FL、0.1%のラクトース、0.1%のフコシルラクツロース、0.4%のDiFL及び0.6%の酢酸。得られた結晶性材料は、Karl-Fischer滴定によって求めて水を3.6重量%含んでいた。
【0172】
得られた結晶性材料において、2'-FLは、PXRDによって求めて基本的に形態Aとして存在した。
【国際調査報告】