(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(54)【発明の名称】被覆された酸化物材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 53/00 20060101AFI20220113BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220113BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20220113BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20220113BHJP
【FI】
C01G53/00 A
H01M4/36 C
H01M4/525
H01M4/505
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021527046
(86)(22)【出願日】2019-11-11
(85)【翻訳文提出日】2021-07-19
(86)【国際出願番号】 EP2019080834
(87)【国際公開番号】W WO2020099302
(87)【国際公開日】2020-05-22
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(72)【発明者】
【氏名】アールフ,マライケ
(72)【発明者】
【氏名】モイラー,トルシュテン
(72)【発明者】
【氏名】エルク,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ハーグ,ジェイコブ
(72)【発明者】
【氏名】ゾンマー,ハイノ
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB02
4G048AB04
4G048AC06
4G048AD04
4G048AE05
4G048AE08
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA08
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB11
5H050GA02
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA07
5H050HA14
(57)【要約】
被覆された酸化物材料を製造するための方法であって、以下の工程:
(a)リチウム化したニッケル-コバルトアルミニウム酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウム化したコバルト-マンガン酸化物、及びリチウム化した層状化ニッケル-コバルト-マンガン酸化物から選ばれる粒子状材料を提供する工程、
(b)前記粒子状材料を水性媒体で処理する工程、
(c)前記水性媒体を除去する工程、
(d)処理された前記粒子状材料を乾燥させる工程、
(e)工程(d)からの前記粒子状材料を金属アミド、又はアルキル金属化合物で処理する工程、
(f)工程(e)で得られた材料を、水分、又は酸化剤で処理する工程、
及び任意に、工程(e)及び(f)のシーケンスを繰り返す工程を含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆された酸化物材料を製造するための方法であって、以下の工程:
(a)リチウム化したニッケル-コバルトアルミニウム酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウム化したコバルト-マンガン酸化物、及びリチウム化した層状化ニッケル-コバルト-マンガン酸化物から選ばれる粒子状材料を提供する工程、
(b)前記粒子状材料を水性媒体で処理する工程、
(c)前記水性媒体を除去する工程、
(d)処理された前記粒子状材料を乾燥させる工程、
(e)工程(d)からの前記粒子状材料を金属アミド、又はアルキル金属化合物で処理する工程、
(f)工程(e)で得られた材料を、水分、又は酸化剤で処理する工程、
及び任意に、工程(e)及び(f)のシーケンスを繰り返す工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記粒子状材料は、式Li
1+xTM
1-xO
2を有し、
TMは、Niと、Co及びMnから選ばれる少なくとも1種の遷移金属と、任意にAl、B、Ba及びMgから選ばれる少なくとも1種の金属と、任意に、Ni、Co及びMn以外の少なくとも1種の遷移金属との組合せを含み、及びxは-0.05~0.2の範囲である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
TMの少なくとも75モル%がNiであることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(e)及び(f)が、気相で行われることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程(e)及び(f)が、混合エネルギーを粒子状材料内に導入するミキサー内で行われるか、又は移動床又は固定床を使用して行われることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程(b)が、10~80℃の範囲の温度で行われることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
TMが、一般式(Ia)
(Ni
aCo
bMn
c)
1-dM
1
d (Ia)
(但し、
a+b+c=1であり、及び
aが、0.75~0.95の範囲であり、
bが、0.025~0.2の範囲であり、
cが、0.025~0.2の範囲であり、
dが、ゼロ~0.1の範囲であり、
M
1が、Al、Mg、W、Mo、Nb、Ti又はZrの少なくとも1つである)
に従う金属の組合せであることを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
TMが、一般式(Ib)
[Ni
hCo
iAl
j] (Ib)
(但し、
hが、0.8~0.95の範囲であり、
iが、0.025~0.19の範囲であり、
jが、0.01~0.05の範囲である)
に従う金属の組合せであることを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(d)が、100~300℃の範囲の温度で行われることを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程(d)に次いで熱処理工程(d
*)が行われ、該熱処理工程(d
*)は300~700℃の範囲の温度での処理を含むことを特徴とする請求項1~9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
後続の熱処理工程(g)を含み、該熱処理工程(g)では、工程(f)の後に得られた材料が、300~700℃の範囲の温度で処理されることを特徴とする請求項1~10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
一般式Li
1+x1TM
1-x1O
2に従う電極活性材料であって、TMは、Niと、Co及びMnから選ばれる少なくとも1種の遷移金属と、任意にAl、Ba及びMgから選ばれる少なくとも1種の金属と、任意に、Ni、Co及びMn以外の少なくとも1種の遷移金属との組合せを含み、TMの少なくとも75モル%がNiであり、及びx1が-0.01~0.1の範囲であり、及び比表面積(BET)が、0.3~1.5m
2/gの範囲であり、及びAlの100~1500ppmの、少なくとも部分的なコーティングを含む電極活性材料。
【請求項13】
前記電極活性材料を基準として、LiOH及びLi
2CO
3を、合計で0.05~0.15質量%の範囲で含むことを特徴とする請求項12に記載の電極活性材料。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の粒子状電極活性材料を少なくとも1種含む電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆された酸化物材料の製造方法であって、以下の工程:
(a)リチウム化(lithiated)したニッケル-コバルトアルミニウム酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウム化したコバルト-マンガン酸化物、及びリチウム化した層状化ニッケル-コバルト-マンガン酸化物から選ばれる粒子状材料を提供する工程、
(b)上記粒子状材料を水性媒体で処理する工程、
(c)上記水性媒体を除去する工程、
(d)処理された上記粒子状材料を乾燥させる工程、
(e)工程(d)からの上記粒子状材料を金属アミド、又はアルキル金属化合物で処理する工程、
(f)工程(e)で得られた材料を、水分、又は酸化剤で処理する工程、
及び任意に、工程(e)及び(f)のシーケンスを繰り返す工程を含む方法に関する。
【0002】
更に本発明は、Niリッチな電極活性材料に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン二次電池は、エネルギー保存用の現代的な装置である。小さな装置、例えば携帯電話、及びラップトップコンピュータから、自動車バッテリー、及びe-モビリティーを通して多くの用途分野が検討されてきており、そして検討されている。電池(battery)の種々の要素、例えば電解質、電極材料及びセパレータが、電池の性能の観点から決定的な役割を有している。カソード材料について特に注意が払われる。いくつかの材料、例えばリチウム鉄ホスフェート、リチウムコバルト酸化物、及びリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物が示唆されている。広範な研究が行われたにも拘わらず、その解決手段にはなお改良の余地が残っている。
【0004】
現在、所定の興味が所謂Niリッチ電極活性材料、例えば合計TM容量に対して、75モル%以上のNiを含む電極活性材料に見出されても良い。
【0005】
リチウムイオン電池、特にNiリッチ電極活性材料の一つの問題は、電極活性材料の表面上での望ましくない反応に起因する。このような反応は、電解質又は溶媒又は両方の分解であっても良い。従って、充電及び放電の間に、リチウム交換を阻害することのなく表面を保護することが試みられてきた。例は、電極活性材料を、例えばアルミニウム酸化物、又はカルシウム酸化物で被覆することの試みである(例えば、特許文献1:US8993051が参照される)。
【0006】
他の理論は、望ましくない反応を表面上の遊離LiOH又はLi2CO3に関連付ける。電極活性材料を水で洗浄することによって、このような遊離LiOH又はLi2CO3を除去する試みがなされてきた(特許文献2:JP4789066B、特許文献3;JP5139024B及び特許文献4;US2015/0372300が参照される)。しかしながら、ある例では得られた電極活性材料の特性が改良されないことが観察された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US8993051
【特許文献2】JP4789066B
【特許文献3】JP5139024B
【特許文献4】US2015/0372300
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、優れた電気化学特性を有する電極活性材料を製造するための方法を提供することである。本発明の目的は特に、優れた電気化学特性を有する所謂Niリッチな電極活性材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、上記に定義した方法が見出され、これは以降、「本発明の方法」とも記載される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の方法は、幾つかの工程を含むが、本発明ではこれらを工程(a)~工程(f)とも称する。工程(b)及び(c)の始まりは同時であっても良く、又は好ましくは順次のものであって良い。工程(d)は工程(c)の後に行われる。工程(e)及び(f)は、繰り返されても良い。以下に個々の工程をより詳細に記載する。
【0011】
工程(a)は、リチウム化したニッケル-コバルトアルミニウム酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウム化したコバルト-マンガン酸化物、及びリチウム化した層状化ニッケル-コバルト-マンガン酸化物から選ばれる粒子状材料を提供することを含む。
【0012】
リチウムコバルト酸化物の式は、LiCoO2である。リチウム化した層状化コバルト-マンガン酸化物の例は、Li1+x(CoeMnfM3
d)1-xO2である。層状化ニッケル-コバルト-マンガン酸化物の例は、一般式Li1+x(NiaCobMncM3
d)1-xO2の化合物である。ここでM3は、Mg、Ca、Ba、Al、Ti、Zr、Zn、Mo、V及びFeから選ばれ、更なる変数記号は、以下のように定義される:
ゼロ≦x≦0.2
0.1≦a≦0.9、
ゼロ≦b≦0.5、
0.1≦c≦0.6、
ゼロ≦d≦0.1、及びa+b+c+d=1。
【0013】
好ましい一実施の形態では、一般式(I)
Li(1+x)[NiaCobMncM3
d](1-x)O2 (I)
に従う化合物で、
M3は、Ca、Mg、Al及びBaから選ばれ、
及び更なる変数記号は、上記に定義したものである。
【0014】
特に好ましい実施の形態では、TMは、一般式(Ia)
(NiaCobMnc)1-dM1
d (Ia)
(但し、
a+b+c=1であり、及び
aが、0.75~0.95の範囲であり、
bが、0.025~0.2の範囲であり、
cが、0.025~0.2の範囲であり、
dが、ゼロ~0.1の範囲であり、及び
M1が、Al、Mg、W、Mo、Nb、Ti又はZrの少なくとも1つである)
に従う金属の組合せである。
【0015】
Li(1+x)[CoeMnfM3
d]1-xO2で、eは0.2~0.8の範囲であり、fは、0.2~0.8の範囲であり、変数記号M3及びd及びxは、上記に定義したものであり、及びe+f+d=1である。
【0016】
リチウム化したニッケル-コバルトアルミニウム酸化物の例は、一般式Li[NihCoiAlj]O2+rの化合物である。従ってTMは、一般式(Ib)
[NihCoiAlj] (Ib)
(但し、
hが、0.8~0.95の範囲であり、
iが、0.025~0.19の範囲であり、
jが、0.01~0.05の範囲でありる)
に従う金属の組合せである。
【0017】
変数記号rは、ゼロ~0.4の範囲である。
【0018】
特定の例は、Li(1+x)[Ni0.33Co0.33Mn0.33](1-x)O2、Li(1+x)[Ni0.5Co0.2Mn0.3](1-x)O2、Li(1+x)[Ni0.6Co0.2Mn0.2](1-x)O2、Li(1+x)[Ni0.85Co0.1Mn0.05](1-x)O2、Li(1+x)[Ni0.7Co0.2Mn0.1](1-x)O2、及びLi(1+x)[Ni0.8Co0.1Mn0.1](1-x)O2であり、それぞれxは、上記に定義したものである。
【0019】
幾つかの元素は偏在する。本願において、少量の偏在する金属、例えばナトリウム、カルシウム、鉄、又は亜鉛は不純物として、本発明の記載には考慮されない。この点に関し、少量は、粒子状材料の合計金属含有量に対し、0.05モル%以下の量を意味すると理解される。
【0020】
上記粒子状材料は好ましくは、如何なる添加剤、例えば導電性カーボン、又はバインダー無しで、しかし自由流動性粉末として提供される。特に、粒子状材料は好ましくは、導電性カーボンを有しておらず、このことは、粒子状材料の導電性カーボンの含有量が、上記粒子状材料に対して1質量%未満、好ましくは0.001~1.0質量%、又は検出レベル未満でさえあることを意味する。
【0021】
本発明の一実施の形態では、粒子状材料は、平均粒子径(D50)が、3~20μmの範囲、好ましくは5~16μmの範囲である。平均粒子径は例えば、光散乱、又はLASER回折、又は電子音響分光法によって測定可能である。粒子は通常、一次粒子からの塊で構成され、及び上述した粒子径は二次粒子径を示している。
【0022】
本発明の一実施の形態では、粒子状材料は、比表面積(BET)(以降、「BET表面積」とも記載する)は、0.1~1.0m2/gの範囲である。BET表面積は、DINISO9277:2010に従って、試料を200℃で30分以上脱ガスした後、窒素吸着によって測定されても良い。
【0023】
工程(b)では、上述した粒子状材料は、水性媒体で処理される。上記水性媒体は、pH値が2~14の範囲であっても良く、好ましくは少なくとも5、より好ましくは7~12.5、及びより好ましくは、8~12.5の範囲であっても良い。pH値は、工程(b)の開始時に測定される。工程(b)の過程で、pH値は、少なくとも10にまで上昇することが観察される。
【0024】
好ましくは、水性媒体の水の硬度、及び特に、工程(b)で使用された水の硬度、特にカルシウムは、少なくとも部分的に除去される。脱塩水の使用が好ましい。
【0025】
工程(b)の替わりの実施の形態では、工程(b)で使用される水性媒体は、アンモニア又は少なくとも1種の遷移金属塩、例えばニッケル塩又はコバルト塩を含んでも良い。このような遷移金属塩は、好ましくは電極活性材料にとって有害ではない対イオンを有している。硫酸塩及び硝酸塩が適している。塩化物は好ましくはない。
【0026】
工程(b)の一実施の形態では、工程(b)で使用される水性媒体は、0.001~10質量%の、Al、Mo、W、Ti又はZrの酸化物又は水酸化物、又はオキシ水酸化物を含む。工程(b)の他の実施形態では、工程(b)で使用される水性媒体は、Al、Mo、W、Ti又はZrの酸化物又は水酸化物、又はオキシ水酸化物の何れのものも測定可能な量では含まない。
【0027】
本発明の一実施の形態では、工程(b)は、5~65℃の範囲の温度で行われ、この温度範囲は、10~35℃が好ましい。
【0028】
本発明の一実施の形態では、工程(b)は標準圧力で行われる。しかしながら、工程(b)を、圧力を上昇させて行うことが好ましく、例えば標準圧力より、10ミリバール~10バール高くして行うことが好ましく、又は吸引状態で、例えば標準圧力より50~250ミリバール低い圧力、好ましくは標準圧力より100~200ミルバール低い圧力で行うことが好ましい。
【0029】
工程(b)は、例えばろ過装置上のその配置の理由で、容易に排出可能な容器内で行われても良い。このような容器は、出発材料が充填され、次いで水性媒体が導入されても良い。他の実施の形態では、このような容器は、水性媒体が装填され、次いで出発材料が導入される。他の実施の形態では、出発材料及び水性媒体が同時に導入される。
【0030】
本発明の一実施の形態では、出発材料と工程(b)における合計水性媒体の体積比は2:1~1:5の範囲、好ましくは2:1~1:2の範囲である。工程(b)は、混合操作、例えばシェイキング、又は特に攪拌又はせん断によって補助されても良い(下記が参照される)。
【0031】
本発明の一実施の形態では、工程(b)は、1分間~30分間の範囲、好ましくは1間から5分間未満の範囲の継続時間を有する。5分間以上の継続時間は、工程(b)及び(c)が重複して、又は同時に行われる実施形態で可能である。
【0032】
本発明の一実施の形態では、工程(b)及び(c)は連続して行われる。工程(b)に従って水性媒体で処理を行った後、水は、ろ過の任意の種類によって、例えばバンドフィルター上で、又はフィルタープレス内で除去されても良い。
【0033】
本発明の一実施の形態では、工程(b)の開始後少なくとも3分間して、工程(c)が開始される。工程(c)は、固-液分離を使用して、例えばデカンターを使用して、又は好ましくはろ過によって、上記水性媒体を処理された粒子状材料から除去することを含む。
【0034】
本発明の一実施の形態では、工程(b)で得られたスラリーは、好ましくは工程(b)が行われる容器の直下部に配置される遠心分離機内、例えばデカンター遠心分離機、又はろ過遠心分離機内に、又はろ過装置上に、例えば吸引フィルター、又はベルトフィルターで排出される。そしてろ過が開始される。
【0035】
本発明の特に好ましい実施形態では、工程(b)及び工程(c)は、攪拌機付のろ過装置(フィルター装置)、例えば攪拌機付の圧力フィルター又は攪拌機付の吸引フィルターで行われる。工程(b)に従い出発材料及び水性媒体が混合されて、最大で3分後の後に、又は直後に、水性媒体の除去が、ろ過を開始させることによって開始される。実験室規模では、工程(b)及び(c)は、ブフナー漏斗上で行われても良く、及び工程(b)は、手動攪拌によって補助されても良い。
【0036】
好ましい実施形態では、工程(b)は、ろ過装置内、例えばフィルター内のスラリー又はろ過ケーキの攪拌を可能にする攪拌ろ過装置で行われる。工程(b)の開始後、最大3分後に、ろ過、例えば圧力ろ過、又は吸引ろ過を開始することにより、工程(c)が開始される。
【0037】
本発明の一実施の形態では、工程(c)は1分~1時間の範囲の継続時間を有している。
【0038】
本発明の一実施の形態では、工程(b)における攪拌は、1~50回/分(rpm)の速度で行われ、この速度は5~20rpmの範囲が好ましい。
【0039】
工程(b)及び(c)を同じ温度で行うことが好ましい。
【0040】
工程(b)及び(c)を同じ圧力で行うことが好ましく、又は工程(b)を開始させた時に圧力を増すことが好ましい。
【0041】
本発明の一実施の形態では、工程(c)のためのろ過媒体は、セラミック、焼成ガラス、焼成金属、有機ポリマーフィルム、不織布、及びファイバーから選択されても良い。
【0042】
本発明の一実施の形態では、工程(b)及び(c)はCO2含有量が低減された雰囲気、例えば二酸化炭素の含有量が0.01~500質量ppm、好ましくは0.1~50ppmの雰囲気下で行われる。CO2含有量は、例えば、赤外光を使用した光学的手法によって測定されても良い。工程(b)及び(c)が、例えば赤外光ベースの光学的手法を使用して、検知限界未満の二酸化炭素濃度を有する雰囲気下で行われることが更に好ましくさえある。
【0043】
工程(d)では、工程(c)からの処理された材料が、例えば、40~250℃の範囲の温度、標準圧力、又は減圧した圧力、例えば1~500ミリバールの圧力で乾燥される。より低い温度、例えば40~100℃での乾燥が所望される場合、強く減圧された圧力、例えば1~20ミリバールが好ましい。
【0044】
本発明の一実施の形態では、工程(d)は、CO2含有量が低減された雰囲気、例えば二酸化炭素の含有量が0.01~500質量ppm、好ましくは0.1~50ppmの雰囲気下で行われる。CO2含有量は、例えば、赤外光を使用した光学的手法によって測定されても良い。工程(d)が、例えば赤外光ベースの光学的手法を使用して、検知限界未満の二酸化炭素濃度を有する雰囲気下で行われることが更に好ましくさえある。
【0045】
本発明の一実施の形態では、工程(d)は、1~10時間の継続時間、好ましくは、90分~6時間の継続時間を有する。
【0046】
本発明の一実施の形態では、工程(b)~(d)を行うことによって、電極活性材料のリチウム含有量は、1~5質量%、好ましくは2~4質量%、低減される。上述した低減は主として、所謂残存リチウムに影響を及ぼす。
【0047】
本発明の好ましい実施形態では、工程(d)で得られた材料は、残留水分含有量が、50~1000ppmの範囲、好ましくは100~400ppmの範囲、又は600~1000ppmの範囲である。残留水分含有量は、カール-フィッシャー滴定によって測定されても良い。
【0048】
工程(e)で、上述した電極活性材料は、金属ハロゲン化物、又は金属アミド又はアルキル金属化合物で処理される。
【0049】
本発明の一実施の形態では、工程(e)は、15~1000℃の範囲の温度、好ましくは15~500℃、より好ましくは20~350℃、及び更に好ましくは50~200℃の範囲の温度で行われる。場合によって、工程(e)で、金属アミド、又はアルキルアミド化合物がガス相中に存在する温度を選択することが好ましい。
【0050】
本発明の一実施の形態では、工程(e)は、標準圧力で行われるが、しかしながら工程(e)は、同様に、減圧下、又は上昇させた圧力下に行われても良い。例えば、工程(e)は、標準圧力より5ミリバール~1バールの範囲高い圧力で行われても良く、好ましくは標準圧力より10~150ミリバールの範囲高い圧力で行われても良い。本発明において、標準圧力は、1気圧又は1013ミリバールである。他の実施の形態では、工程(e)は、標準圧力より150ミリバールから560ミリバールの範囲高い圧力で行われても良い。
【0051】
本発明の好ましい一実施形態では、アルキル金属化合物又は金属アミドはそれぞれ、Al(R1)3、Al(R1)2OH、AlR1(OH)2、M2(R1)4-yHy、Al(OR2)3、M2[NR2)2]4、及びメチルアルモキサン
(但し、
R1は、同一又は異なり、及び直鎖状、又は分岐したC1~C8-アルキルから選ばれ、
R2は、同一又は異なり、及び直鎖状、又は分岐したC1~C4-アルキルから選ばれ、
M2は、Ti又はZrであり、Tiが好ましい)
から選ばれる。
【0052】
アルミニウムアルキル化合物の例は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、及びメチルアルモキサンである。
金属アミドは、金属イミドとも称される場合がある。金属アミドの例は、Ti[N(CH3)2]4である。
【0053】
特に好ましい化合物は、金属アルキル化合物から選ばれ、及びより好ましくはトリメチルアルミニウムである。
【0054】
本発明の一実施の形態では、金属アミド又はアルキル金属化合物の量は、0.1~1g/(特定の材料1kg)である。
【0055】
好ましくは、金属アミド又はアルキル金属化合物の量はそれぞれ、1サイクルにつき、特定の材料上の単分子層の80~200%の量であると計算される。
【0056】
本発明の一実施の形態では、工程(e)はロータリーキルン内で、混合ミキサー内、例えばプロウシェアミキサー内、又はフリーフォールミキサー内で、連続振動ベッド内、又は流動床ベッド内で行われる。本発明の工程(e)及び(f)は同一の容器内で行われても良く、又は異なる容器内で行われても良く、そしてその詳細については以下に記載される。
【0057】
本発明の好ましい実施形態では、工程(e)の継続時間は、1秒~2時間の範囲、好ましくは1秒~30分の範囲である。
【0058】
本発明では工程(f)とも称される第3の工程では、工程(e)で得られた材料は、水分で処理される。
【0059】
本発明の一実施の形態では、工程(f)は、50~250℃の範囲の温度で行われる。
【0060】
本発明の一実施の形態では、工程(f)はロータリーキルン内、ロータリーキルン、混合ミキサー内、例えばプロウシェアミキサー内、又はフリーフォールミキサー内で、連続振動ベッド内、又は流動床ベッド内で行われる。
【0061】
本発明の一実施の形態では、工程(f)は標準圧力で行われるが、しかしながら工程(f)を、減圧下に、又は圧力を上昇させて行っても良い。例えば工程(f)を、標準圧力より5ミリバール~1バール高くして行っても良く、好ましくは標準圧力より10ミリバール~250ミリバール高くして行っても良い。本発明において、標準圧力は、1気圧又は1013ミリバールである。他の実施の形態では、工程(f)は、標準圧力より150ミリバールから560ミリバールの範囲高い圧力で行われても良い。
【0062】
工程(e)及び(f)は、同じ圧力で行われても良く、又は異なる圧力で行われても良く、同じ圧力であることが好ましい。
【0063】
上述した水分は、例えば工程(e)に従って得られた材料を水分飽和不活性ガス、例えば水分飽和窒素、又は水分飽和希ガス、例えばアルゴンで処理することによって導入されても良い。飽和は標準条件、又は工程(f)の反応条件であっても良い。
【0064】
本発明の好ましい実施の形態では、工程(f)の継続時間は、1秒~2時間の範囲、好ましくは1秒~30分の範囲である。
【0065】
本発明の一実施の形態では、本方法が行われる反応器は、工程(e)と(f)の間、不活性ガス、例えば乾燥窒素又は乾燥アルゴンでフラッシュ(flushing)又はパージされる。フラッシュ又はパージの適切な時間は1秒~20分である。好ましくは、不活性ガスの量は、反応器の内容物を1~15回交換する(入れ替える)のに十分な量である。このようなフラッシュ又はパージによって、副生成物、例えば金属アミド又はアルキル金属化合物の水との反応生成物の分離した粒子の精製が回避され得る。トリメチルアルミニウム及び水を連結させる場合、このような副生成物は、メタン及びアルミナ又は粒子状材料上には沈澱しないトリメチルアルミニウムであり、後者は望ましくない副生成物である。上述したフラッシュは工程(f)の後、従って他の工程(e)の前にも行われる。
【0066】
本発明の一実施の形態では、工程(e)及び工程(f)の間のフラッシュ工程はそれぞれ、1秒~30分間の範囲の継続時間を有する。
【0067】
本発明の一実施の形態では、反応器は工程(e)及び工程(f)の間にエバキュエーションされる。上述したエバキュエーションは、工程(f)の後、従って他の工程(e)の前にも行われる。この構成に関し、エバキュエーションは如何なる減圧をも含み、例えば10~1000ミリバール(abs)、好ましくは10~500ミリバール(abs)を含む。
【0068】
工程(e)及び工程(f)のそれぞれは、固定床反応器内、流動床反応器内、強制流反応器内、又はミキサー内、例えば強制ミキサー内、又はフリーフォールミキサー内で行われても良い。流動床反応器の例は、噴流層反応器である。強制ミキサーの例は、プロウシェアミキサー、パドルミキサー及びシャベルミキサーである。プロウシェアミキサーが好ましい。好ましいプロウシェアミキサーは、水平に導入され、ここで「水平」という用語は、その回りをミキシング要素が回転する軸についてのものである。好ましくは本発明の方法は、シャベルミキサーツール内、パドルミキサーツール内、ベッカーブレードツール内で行われ、最も好ましくは、ハーリング及びワイヤリング原理に従うプロウシェアミキサー内で行われる。フリーフォールミキサーは、ミキシング状態を達成するために重力を使用している。好ましい一実施の形態では、本発明の方法の工程(e)及び(f)は、その水平方向回りに回転するドラム又はパイプ形状の容器内で行われる。より好ましい実施形態では、本発明の工程(e)及び(f)は、バッフルを有する回転容器内で行われる。
【0069】
本発明の一実施の形態では、回転容器は2~100個の範囲のバッフル、好ましくは2~20個の範囲のバッフルを有する。このようなバッフルは好ましくは、容器の壁に取り付けられている。
【0070】
本発明の一実施の形態では、このようなバッフルは回転容器、ドラム又はパイプに沿って軸対称的に配置されている。上記回転容器の壁との角度は、5~45°の範囲、好ましくは10~20°の範囲である。このような配置によって、これらは被覆されたカソード活性材料を、非常に効果的に回転容器を通して輸送することが可能である。
【0071】
本発明の一実施の形態では、上述したバッフルは回転容器内に、直径に対して10~30%の範囲にまで達する。
【0072】
本発明の一実施の形態では、上述したバッフルは、回転容器の全長の10~100%の範囲、好ましくは30~80%の範囲をカバーする。この点に関し、「長さ」とういう用語は、回転軸に平行なものである。
【0073】
本発明の好ましい実施の形態では、本発明の方法は、被覆された材料を容器又は複数の容器から、例えば20~100m/sの空気搬送によって除去する工程を含む。
【0074】
本発明の一実施の形態では、排出ガスは、工程(e)及び(f)が行われる反応器内よりも1バール高い圧力、より好ましくはより高い圧力で、例えば1.010~2.1バールの範囲、好ましくは1.005から1.150バールの範囲で水で処理される。上昇された圧力は、排出ライン中の圧力損失を補償するするのに有利である。
【0075】
工程(e)及び(f)のシーケンスは、2~4回繰り返されても良く、工程(e)及び(f)の最後のシーケンスでは、水分が少なくとも部分的に酸化剤に置き換えられても良い。酸化剤の例は、酸素、H2O2等の過酸化物及びオゾン、及びこれらの少なくとも2種の組合せである。特に好ましい酸化剤は、オゾン及び酸素とオゾンからの混合物である。このような酸化剤は、純粋な状態で、又は水分との組合せで与えられても良い。
【0076】
水分が酸化剤によって少なくとも部分的に置き換えられても良い、上述した後者の工程(f)は以降、工程(f*)とも称する。
【0077】
繰返し(repetition)は、各回ごとに、正確に同じ条件下で、又は変更した条件下ではあるが、なお上述した定義の範囲内で工程(e)及び(f)のシーケンスを繰り返すことを含んでも良い。例えば、各工程(e)は、正確に同じ条件下に行われても良く、又は例えば、各工程(e)は、異なる温度条件下に、又は異なる継続時間で、例えば120℃、次いで10℃及び160℃、それぞれ1秒~1時間行われても良い。
【0078】
工程(f*)では、水分が酸化剤に少なくとも部分的に置き換えられる。好ましくは、工程(f*)で、湿気は与えられず、及び水分は完全に酸化剤によって置き換えらる。
【0079】
オゾンは、それ自体は公知の条件下で、酸素から生成されても良く、及び従って、工程(f*)では通常、酸素の存在下にオゾンが施される。工程(f*)でオゾンを与える間、窒素が存在しないことが好ましい。
【0080】
本発明の一実施の形態では、工程(f*)は、標準圧力で行われる。本発明の他の実施の形態では、工程(f*)は、標準圧力により5ミリバール~1バール高い圧力、好ましくは標準圧力より10~250ミリバール高い圧力で行われる。他の実施の形態では、工程(f*)は、標準圧力より低い圧力、例えば100~900ミリバールで、好ましくは標準圧力より100~500ミリバール低い圧力で行われる。工程(f*)は、20~300℃の温度で行われても良く、好ましくは100~300℃の温度、より好ましくは150~250℃の温度で行われても良い。
【0081】
本発明の一実施の形態では、工程(f*)の継続時間は、1秒~2時間の範囲、好ましくは1秒~30分間の範囲である。
【0082】
工程(f*)は、工程(f)の容器と同じタイプの容器内で行われても良い。好ましくは、工程(f)及び工程(f*)は、同じ容器内で行われる。
【0083】
粒子状電極活性材料が得られる。
【0084】
本発明の一実施の形態では、工程(e)及び工程(f*)のシーケンスは、ただ1回のみ行われる。他の実施の形態では、工程(e)及び工程(f*)のシーケンスは、2~5回行われる。
【0085】
本発明の一実施の形態では、工程(f)又は場合によって工程(f*)の後、後処理、例えば熱後処理(g)が行われる。このような熱後処理(g)は、工程(f)又は(f*)の後に粒子状電極活性材料を、それぞれ、150~800℃、好ましくは150~400℃の範囲の温度で、例えば所定期間に亘り、180~350℃の温度で、例えば、10分間~2時間の期間に亘り行われても良い。
【0086】
本発明の一実施の形態では、工程(d)の後に後処理、例えば熱後処理(d*)が行われる。このような熱後処理(d*)は、工程(d)の後に得られた粒子状電極活性材料を、150~800℃の範囲の温度、好ましくは150~400℃の範囲の温度で、例えば好ましくは180~350℃の範囲の温度で所定の期間に亘り、例えば10分間~2時間の期間に亘り行われても良い。
【0087】
本発明の方法を行うことによって、卓越した電気化学的特性を示す電極活性材料が得られても良い。
【0088】
本発明の更なる形態は、電極活性材料に関し、これは以降、本発明の電極活性材料とも称される。本発明の電極活性材料は、一般式Li1+x1TM1-x1O2に対応し、ここでTMは、Niと、Co及びMnから選ばれる少なくとも1種の遷移金属と、任意にAl、Ba及びMgから選ばれる少なくとも1種の金属と、Ni、Co及びMn以外の少なくとも1種の遷移金属との組合せを含み、及びTMの少なくとも75%は、Niであり、及びx1は-0.01~0.1の範囲である。TMの式は、被覆の無い上記本発明の電極活性材料を表す。更に、本発明の電極活性材料は、比表面積(BET)を0.3~1.5m2/gの範囲に有し、及び100~1500ppmのAlの、少なくとも部分的な被覆を含む。ppmの量は、質量ppmを表す。
【0089】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の電極活性材料は、LiOH及びLi2CO3の合計を、上記電極活性材料に対して0.05~0.15質量%の範囲で含む。LiOH及びLi2CO3の量は、例えば滴定法によって測定される。
【0090】
本発明の一実施の形態では、本発明の電極活性材料は、平均粒子径(D50)を、3~20μmの範囲、好ましくは5~16μmの範囲に有する。平均粒子径は例えば、光散乱又はレーザー回折、又は電子音響分光法によって測定可能である。粒子は通常、一次粒子からの塊から構成され、及び上記粒子径は、二次粒子径を表す。
【0091】
好ましい実施の形態では、一般式(I)に従う化合物では、
Li(1+x1)[TM](1-x1)O2 (I)
TMが、(NiaCobMncM3
d)であり、
M3が、Ca、Mg、Al及びBaから選ばれ、
及び更なる変数記号は、上記に定義したものである。
【0092】
特に好ましい実施の形態では、TMは、一般式(Ia)
(NiaCobMnc)1-dM1
d (Ia)
(但し、
a+b+c=1であり、及び
aが、0.75~0.95の範囲であり、
bが、0.025~0.2の範囲であり、
cが、0.025~0.2の範囲であり、及び
dが、ゼロ~0.1の範囲であり、及び
M1が、Al、Mg、W、Mo、Nb、Ti又はZrの少なくとも1つである)
に従う金属の組合せである。
【0093】
Li1+x(CoeMnfM3
d)1-xO2中、eは、0.2~0.8の範囲、fは、0.2~0.8の範囲、変数記号M3及びd及びxは、上記に定義したものであり、及びe+f+d=1である。
【0094】
他の実施の形態では、TMが、一般式(Ib)
[NihCoiAlj] (Ib)
(但し、
hが、0.8~0.95の範囲であり、
iが、0.025~0.19の範囲であり、及び
jが、0.01~0.05の範囲である)
に従う金属の組合せである。
本発明の更なる形態は、本発明に従う電極活性材料を少なくとも1種含む、電極である。これらはリチウムイオン電池用に特に有用である。本発明に従う少なくとも1種の電極を含むリチウムイオン電池は、良好な放電挙動を示す。本発明に従う電極活性材料を少なくとも1種含む電極は以降、本発明のカソード、又は本発明に従うカソードとも称される。
【0095】
本発明に従うカソードは、更なる構成要素を含むことが可能である。これらは、電流コレクタ、例えばアルミニウムホイルを含むことが可能であるが、これに限定されるものではない。これらは更に、導電性カーボン及びバインダーを含むことが可能である。
適切なバインダーは好ましくは、有機(コ)ポリマーから選択される。適切な(コ)ポリマー、すなわちホモポリマー又はコポリマーは、例えばアニオン、触媒、又はフリーラジカル(共)重合によって得られる(コ)ポリマーから、特にポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリスチレンから、及びエチレン、プロピレン、スチレン、(メト)アクリロニトリル、及び1,3-ブタジエンから選ばれる少なくとも2種のコモノマーのコポリマーから選択することが可能である。ポリプロピレンも適切である。ポリイソプレン及びポリアクリレートが追加的にて適切である。特に好ましいものは、ポリアクリロニトリルである。
【0096】
本発明において、ポリアクリロニトリルは、ポリアクリロニトリルホモポリマーのみならず、アクリロニトリルの1,3-ブタジエン又はスチレンとのコポリマーをも意味するものと理解される。ポリアクリロニトリルホモポリマーが好ましい。
【0097】
本発明において、ポリエチレンは、ホモポリエチレンのみならず、共重合したエチレンを少なくとも50モル%含み、及び少なくとも1種の更なるコモノマーを50モル%以下で含む、エチレンのコポリマーをも意味すると理解される。上記更なるコモノマーは例えば、アルファオレフィン、例えばプロピレン、ブチレン(1-ブテン)、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-ペンテン、及びイソブテン、ビニル芳香族化合物、例えばスチレン、及び(メト)アクリル酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニール、(メト)アクリル酸のC1~C10-アルキルエステル、特にメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、及びマレイン酸、無水マレイン酸、及びイタコン酸無水物である。ポリエチレンは、HDPE又はLDPEであっても良い。
【0098】
本発明において、ポリプロピレンは、ホモポリプロピレンのみならず、共重合したプロピレンを少なくとも50モル%含み、及び少なくとも1種の更なるコモノマーを50モル%以下で含む、プロピレンのコポリマーをも意味すると理解される。当該更なるコモノマーは例えば、エチレン及びアルファオレフィン、例えばブチレン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、及び1-ペンテンである。ポリプロピレンは、好ましくはイソタクチック、又は本質的にイソタクチックのポリプロピレンである。
【0099】
本発明において、ポリスチレンはスチレンのホモポリマーを意味するのみならず、アクリロニトリル、1,3-ブタジエン、(メト)アクリル酸、(メト)アクリル酸のC1~C10-アルキルエステル、ジビニルベンゼン、特に1,3-ジビニルベンゼン、1,2-ジフェニルエチレン及びα-メチルスチレンとのコポリマーをも意味するものと理解される。
【0100】
他の好ましいバインダーは、ポリブタジエンである。
【0101】
他の適切なバインダーは、ポリエチレンオキシド(PEO)、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリイミド及びポリビニルアルコールから選ばれる。
【0102】
本発明の一実施の形態では、バインダーは、平均分子量Mwが、50000~1000000g/mol、好ましくは500000g/molまでの、これらの(コ)ポリマーから選ばれる。
【0103】
バインダーは架橋されていても良く、架橋されていなくても良い。
【0104】
特に好ましい実施の形態では、バインダーは、ハロゲン化(コ)ポリマーから、特にフッ素化(コ)ポリマーから選ばれる。ハロゲン化又はフッ素化(コ)ポリマーは、分子ごとに少なくとも一つのハロゲン原子又は少なくとも一つのフッ素原子、より好ましくは、分子ごとに少なくとも二つのハロゲン原子又は少なくとも二つのフッ素原子を有する(共)重合化された(コ)ポリマーを少なくとも1種含む(コ)ポリマーを意味するものと理解される。例は、ポリビニルクロリド、ポリビニリデンクロリド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリド(PVdF)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVdF-HFP)、ビニリデンフルオリド-テトラフルオロエチレンコポリマー、ペルフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー、ビニリデンフルオリド-クロロトリフルオロエチレンコポリマー及びエチレン-クロロフルオロエチレンコポリマーである。
【0105】
適切なバインダーは特に、ポリビニルアルコール及びハロゲン化(コ)ポリマー、例えばポリビニルクロリド又はポリビニリデンクロリド、特にフッ素化(コ)ポリマー、例えばポリビニルフルオリド及び特に、ポリビニリデンフルオリド及びポリテトラフルオロエチレンである。
【0106】
本発明のカソードは、電極活性材料に対して、1~15質量%のバインダー(複数種を含む)を含んでも良い。他の実施の形態では、本発明のカソードは、0.1質量%~1質量%未満のバインダー(複数種を含む)を含む。
【0107】
本発明の更なる形態は、本発明の電極活性材料、カーボン、及びバインダーを含む少なくとも1つのカソード、少なくとも1つのアノード、及び少なくとも1つの電解質を含むバッテリーである。
【0108】
本発明のカソードの実施形態については、上記に詳細に記載した。
【0109】
上述したアノードは、少なくとも1種のアノード活性材料、例えばカーボン(グラファイト)、TiO2、リチウムチタニウム酸化物、シリコン、又はスズを含んでも良い。上述したアノードは電流コレクタ、例えば、金属箔、たとえば銅箔を追加的に含んでも良い。
【0110】
上述した電解質は、少なくとも1種の非水性溶媒、少なくとも1種の電解質塩、及び任意に添加剤を含んでも良い。
【0111】
電解質用の非水性溶媒は、室温で液体又は固体であることが可能であり、及び好ましくは、ポリマー、環式又は非環式のエーテル、環式又は非環式のアセタール、及び環式又は非環式の有機カーボネートから選ばれる。
【0112】
適切なポリマーの例は特に、ポリアルキレングリコール、好ましくはポリ-C1~C4-アルキレングリコール及び特に、ポリエチレングリコールである。ポリエチレングリコールはここで、20mol%以下の、1種以上のC1~C4-アルキレングリコールを含むことが可能である。ポリアルキレングリコールは好ましくは、2つのメチル又はエチル末端キャップを有するポリアルキレングリコールである。
【0113】
適切なポリアルキレングリコール及び特に、適切なポリエチレングリコールの分子量Mwは、少なくとも400g/molであることが可能である。
【0114】
適切なポリアルキレングリコール及び特に、適切なポリエチレングリコールの分子量Mwは、5000000g/mol以下、好ましくは2000000g/mol以下であることが可能である。
【0115】
適切な非環式エーテルの例は例えば、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタンであり、好ましいものは、1,2-ジメトキシエタンである。
【0116】
適切な環式エーテルの例は、テトラヒドロフラン及び1,4-ジオキサンである。
【0117】
適切な非環式アセタールの例は例えば、ジメトキシメタン、ジエトキシエタン、1,1-ジメトキシエタン、及び1,1-ジエトキシエタンである。
【0118】
適切な環式アセタールの例は、1,3-ジオキサン及び特に、1,3-ジオキソランである。
【0119】
適切な非環式の有機カーボネートの例は、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート及びジエチルカーボネートである。
【0120】
適切な環式の有機カーボネートの例は、一般式(II)及び(III)に従う化合物である。
【0121】
【0122】
ここで、R1、R2及びR3は、同一であるか、又は異なることが可能であり、及び水素、及びC1~C4-アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル及びtert-ブチルから選ばれ、及びR2及びR3は好ましくは、両方がtert-ブチルではない。
【0123】
特に好ましい実施の形態では、R1はメチルであり、及びR2及びR3はそれぞれ、水素であるか、又はR1、R2及びR3は、それぞれが水素である。
【0124】
他の好ましい環式有機カーボネートは、式(IV)のビニレンカーボネートである。
【0125】
【0126】
溶媒(1種又は複数種)は好ましくは、水の無い状態で使用され、すなわち、例えばカール-フィッシャー滴定によって測定して、水の含有量が1質量ppm~0.1質量%の範囲で使用される。
【0127】
電解質(C)は更に、少なくとも1種の電解質塩を含む。適切な電解質塩は特に、リチウム塩である。適切なリチウム塩の例は、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiC(CnF2n+1SO2)3、リチウムイミド、例えばLiN(CnF2n+1SO2)2(但し、nは1~20の範囲の整数である)、LiN(SO2F)2、Li2SiF6、LiSbF6、LiAlCl4及び一般式(CnF2n+1SO2)tYLiの塩(但し、mは以下のように定義される:
t=1、Yが酸素及び硫黄から選ばれる場合、
t=2、Yが窒素及びリンから選ばれる場合、
t=3、Yが炭素及びシリコンから選ばれる場合)である。
【0128】
好ましい電解質塩は、LiC(CF3SO2)3、LiN(CF3SO2)2、LiPF6、LiBF4、LiClO4から選ばれ、特に好ましくはLiPF6及びLiN(CF3SO2)2である。
【0129】
本発明の実施の形態では、本発明に従うバッテリーは、電極を機械的に分離する1つ以上のセパレータを含む。適切なセパレータは、金属リチウムに対して非反応性のポリマーフィルム、特に多孔性ポリマーフィルムである。セパレータ用に特に適切な材料は、ポリオレフィン、特にフィルム形成多孔性ポリエチレン及びフィルム形成多孔性ポリプロピレンである。
【0130】
ポリオレフィン、特にポリエチレン又はポリプロピレンで構成されるセパレータは、多孔性を35~45%の範囲に有することが可能である。適切な孔径は例えば、30~500nmの範囲である。
【0131】
本発明の他の実施の形態では、セパレータは、無機粒子が充填されたPET不織布から選択することが可能である。このようなセパレータは、40~55%の範囲内に多孔性を有することが可能である。適切な孔径は、例えば、80~750nmの範囲である。
【0132】
本発明に従うバッテリーは更に、ハウジングを含み、該ハウジングは任意の形状、例えば立方体状、又はシリンダー状ディスク、又はシリンダー状缶の形状を有することが可能である。一変形形態では、ポーチとして構成された金属ホイルがハウジングとして使用される。
【0133】
本発明に従うバッテリーは、良好な放電挙動、例えば低温(0℃以下、例えば-10℃以下)で非常に良好な放電及びサイクリング挙動を示す。
【0134】
本発明に従うバッテリーは、例えば直列に接続する、又は並列に接続することができる、相互に結びついた2つ以上の電気化学セルを含むことが可能である。直列接続が好ましい。本発明に従うバッテリーでは、少なくとも1つの電気化学セルが、本発明に従う少なくとも1つのカソードを含む。好ましくは、本発明に従う電気化学セル中で電気化学セルの大部分が、本発明に従うカソードを含む。より好ましくは、本発明に従うバッテリー中で、全ての電気化学セルが本発明に従うカソードを含む。
【0135】
本発明は更に、本発明に従うバッテリーの電気器具、特にモバイルアプリケーション(mobile application)における使用方法を提供する。モバイルアプリケーションの例は、乗り物、例えば自動車、自転車、航空機又は船舶、例えばボート又は船である。モバイルアプリケーションの他の例は、マニュアルで作動するものであり、例えばコンピューター、特にラップトップ、電話、又は電動工具、例えば建築部門で使用するもの、例えばドリル、バッテリー駆動スクリュードライバー、又はバッテリー駆動ステープラーである。
【0136】
以下に本発明を、実施例を用いて説明するが、本発明はこれらには限られない。
【実施例】
【0137】
sccm:1分間あたりの標準立方センチメートルで、立方センチメートルは、標準条件:1atm及び20℃でのものである。
【0138】
I.カソード活性材料の合成
I.1 前駆体TM-OH.1の合成
攪拌タンク反応器を脱イオン水及び水1kgあたり49gの硫酸アンモニウムで満たした。この溶液を55℃の温度にし、及び水酸化ナトリウム水溶液を加えることによってpH値を12に調節した。
【0139】
遷移金属硫酸塩水溶液及び水酸化ナトリウム水溶液を、1.8の流量割合、及び8時間の滞留時間(residence time)となる流量で同時に供給することによって共沈反応を開始させた。遷移金属溶液は、Ni、Co、及びMnを8.5:1.0:0.5のモル比で含み、及び合計遷移金属濃度は、1.65mol/kgであった。水酸化ナトリウム水溶液は、質量割合が6の、25質量%水酸化ナトリウム溶液及び25質量%アンモニア溶液であった。水酸化ナトリウム水溶液を別個に供給することによって、pH値を12に維持した。全ての供給の開始と一緒に開始して、母液を連続的に除去した。33時間後、全ての供給流を停止させた。得られた懸濁液をろ過し、蒸留水で洗浄し、空気中120℃で乾燥させ、及び篩にかけることによって、混合遷移金属(TM)オキシヒドロキシド前駆体TM-OH.1が得られた。
【0140】
I.2 TM-OH.1のカソード活性材料への変換、及び本発明の方法に従う処理
1.2.1 比較カソード活性材料、C-CAM.1の製造、ステップ(a.1)
C-CAM.1:I.1に従って得られた混合遷移金属オキシヒドロオキシド前駆体を、LiOH一水和物と混合し、1.05のモル比のLi/(TM)を得た。この混合物を760℃まで加熱し、及び60%酸素と40%窒素(体積%)の混合物の強制流中に10時間保持した。周囲温度(大気温度)にまで冷却した後、粉末を解砕し(deagglomerate)、及び32μmメッシュを通して篩分けし、電極活性材料C-CAM1を得た。
【0141】
Malvern Instrumentsからの器具であるMastersize3000中で、レーザー回折の技術を使用して測定して、D50=9.0μmであった。250℃での残留水分は、300ppmであると測定された。
【0142】
1.2.2 水性媒体を使用した処理、ステップ(b.1)及び(c.1)及び(d.1)
周囲温度(大気温度)で脱塩水にC-CAM.1を1.5の質量比(CAM:水)で加えた。得られたスラリーの攪拌の2分後、ブフナー漏斗を通したろ過によって液体を除去した。このようにして得られたフィルターケーキ(ろ過塊)を薄膜ポンプによる真空状態中で2時間、65℃で乾燥させ、次いで第2乾燥ステップで、同様に薄膜ポンプによる真空状態中で10時間、180℃で乾燥させた。CAM.1-Wが得られた。
【0143】
I.2.3 アルミニウム酸化物コーティング、ステップ(e.1)及び(f.1)
外部加熱ジャケットを備えた流動床反応器に100gのCAM.1-Wを導入し、及び130ミリバールの平均圧力で、C-CAM.1-Wを流動化した。流動床反応器を180℃に加熱し、そして180℃で3時間保持した。液体状態のTMAを含み、及び50℃に保持されている前駆体貯蔵容器に繋げるバルブを開けることによって、気体状態のトリメチルアルミニウム(TMA)を、フィルタープレーターを通して流動化床に導入した。TMAをキャリアガスとしての窒素で希釈した。TMA及びN2のガス流は10sccmであった。210秒の反応期間の後、未反応TMAを、窒素流を通して除去し、及び窒素を使用して30sccmの流れで反応器を15分間、パージした。
【0144】
次に、24℃に保持された液体水を含んだ貯蔵容器へのバルブを開けることによって、気体状態の水を流動床反応器に導入した(流れ:10sccm)。120秒の反応期間の後、未反応水を窒素流を通して除去し、及び反応器を窒素を使用して15分間、30sccmでパージした。上述したシーケンスを3回繰り返した。反応器を25℃に冷却し、そして材料を排出した。得られたCAM.2は、以下の特性を示した:Malvern Instrumentsからの器具であるMastersize3000中で、レーザー回折の技術を使用して測定して、D50=10.6μm。PE-Optima3300RLinstrument(典型的な検出限界は3ppm)を使用した誘導結合プラズマによって、標準溶液に対する評価法を介して測定して、Al含有量:1400ppm。250℃での残留水分は、200ppmであると測定された。
【0145】
本発明のCAM.2は、卓越した電気化学的特性を示した。
【手続補正書】
【提出日】2020-11-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆された酸化物材料の製造方法であって、以下の工程:
(a)リチウム化(lithiated)したニッケル-コバルトアルミニウム酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウム化したコバルト-マンガン酸化物、及びリチウム化した層状化ニッケル-コバルト-マンガン酸化物から選ばれる粒子状材料を提供する工程、
(b)上記粒子状材料を水性媒体で処理する工程、
(c)上記水性媒体を除去する工程、
(d)処理された上記粒子状材料を乾燥させる工程、
(e)工程(d)からの上記粒子状材料を金属アミド、又はアルキル金属化合物で処理する工程、
(f)工程(e)で得られた材料を、水分、又は酸化剤で処理する工程、
及び任意に、工程(e)及び(f)のシーケンスを繰り返す工程を含む方法に関する。
【0002】
更に本発明は、Niリッチな電極活性材料に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン二次電池は、エネルギー保存用の現代的な装置である。小さな装置、例えば携帯電話、及びラップトップコンピュータから、自動車バッテリー、及びe-モビリティーを通して多くの用途分野が検討されてきており、そして検討されている。電池(battery)の種々の要素、例えば電解質、電極材料及びセパレータが、電池の性能の観点から決定的な役割を有している。カソード材料について特に注意が払われる。いくつかの材料、例えばリチウム鉄ホスフェート、リチウムコバルト酸化物、及びリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物が示唆されている。広範な研究が行われたにも拘わらず、その解決手段にはなお改良の余地が残っている。
【0004】
現在、所定の興味が所謂Niリッチ電極活性材料、例えば合計TM容量に対して、75モル%以上のNiを含む電極活性材料に見出されても良い。
【0005】
リチウムイオン電池、特にNiリッチ電極活性材料の一つの問題は、電極活性材料の表面上での望ましくない反応に起因する。このような反応は、電解質又は溶媒又は両方の分解であっても良い。従って、充電及び放電の間に、リチウム交換を阻害することのなく表面を保護することが試みられてきた。例は、電極活性材料を、例えばアルミニウム酸化物、又はカルシウム酸化物で被覆することの試みである(例えば、特許文献1:US8993051が参照される)。
【0006】
他の理論は、望ましくない反応を表面上の遊離LiOH又はLi2CO3に関連付ける。電極活性材料を水で洗浄することによって、このような遊離LiOH又はLi2CO3を除去する試みがなされてきた(特許文献2:JP4789066B、特許文献3;JP5139024B及び特許文献4;US2015/0372300が参照される)。しかしながら、ある例では得られた電極活性材料の特性が改良されないことが観察された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US8993051
【特許文献2】JP4789066B
【特許文献3】JP5139024B
【特許文献4】US2015/0372300
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、優れた電気化学特性を有する電極活性材料を製造するための方法を提供することである。本発明の目的は特に、優れた電気化学特性を有する所謂Niリッチな電極活性材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、上記に定義した方法が見出され、これは以降、「本発明の方法」とも記載される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の方法は、幾つかの工程を含むが、本発明ではこれらを工程(a)~工程(f)とも称する。工程(b)及び(c)の始まりは同時であっても良く、又は好ましくは順次のものであって良い。工程(d)は工程(c)の後に行われる。工程(e)及び(f)は、繰り返されても良い。以下に個々の工程をより詳細に記載する。
【0011】
工程(a)は、リチウム化したニッケル-コバルトアルミニウム酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウム化したコバルト-マンガン酸化物、及びリチウム化した層状化ニッケル-コバルト-マンガン酸化物から選ばれる粒子状材料を提供することを含む。
【0012】
リチウムコバルト酸化物の式は、LiCoO2である。リチウム化した層状化コバルト-マンガン酸化物の例は、Li1+x(CoeMnfM3
d)1-xO2である。層状化ニッケル-コバルト-マンガン酸化物の例は、一般式Li1+x(NiaCobMncM3
d)1-xO2の化合物である。ここでM3は、Mg、Ca、Ba、Al、Ti、Zr、Zn、Mo、V及びFeから選ばれ、更なる変数記号は、以下のように定義される:
ゼロ≦x≦0.2
0.1≦a≦0.9、
ゼロ≦b≦0.5、
0.1≦c≦0.6、
ゼロ≦d≦0.1、及びa+b+c+d=1。
【0013】
好ましい一実施の形態では、一般式(I)
Li(1+x)[NiaCobMncM3
d](1-x)O2 (I)
に従う化合物で、
M3は、Ca、Mg、Al及びBaから選ばれ、
及び更なる変数記号は、上記に定義したものである。
【0014】
特に好ましい実施の形態では、TMは、一般式(Ia)
(NiaCobMnc)1-dM1
d (Ia)
(但し、
a+b+c=1であり、及び
aが、0.75~0.95の範囲であり、
bが、0.025~0.2の範囲であり、
cが、0.025~0.2の範囲であり、
dが、ゼロ~0.1の範囲であり、及び
M1が、Al、Mg、W、Mo、Nb、Ti又はZrの少なくとも1つである)
に従う金属の組合せである。
【0015】
Li(1+x)[CoeMnfM3
d]1-xO2で、eは0.2~0.8の範囲であり、fは、0.2~0.8の範囲であり、変数記号M3及びd及びxは、上記に定義したものであり、及びe+f+d=1である。
【0016】
リチウム化したニッケル-コバルトアルミニウム酸化物の例は、一般式Li[NihCoiAlj]O2+rの化合物である。従ってTMは、一般式(Ib)
[NihCoiAlj] (Ib)
(但し、
hが、0.8~0.95の範囲であり、
iが、0.025~0.19の範囲であり、
jが、0.01~0.05の範囲でありる)
に従う金属の組合せである。
【0017】
変数記号rは、ゼロ~0.4の範囲である。
【0018】
特定の例は、Li(1+x)[Ni0.33Co0.33Mn0.33](1-x)O2、Li(1+x)[Ni0.5Co0.2Mn0.3](1-x)O2、Li(1+x)[Ni0.6Co0.2Mn0.2](1-x)O2、Li(1+x)[Ni0.85Co0.1Mn0.05](1-x)O2、Li(1+x)[Ni0.7Co0.2Mn0.1](1-x)O2、及びLi(1+x)[Ni0.8Co0.1Mn0.1](1-x)O2であり、それぞれxは、上記に定義したものである。
【0019】
幾つかの元素は偏在する。本願において、少量の偏在する金属、例えばナトリウム、カルシウム、鉄、又は亜鉛は不純物として、本発明の記載には考慮されない。この点に関し、少量は、粒子状材料の合計金属含有量に対し、0.05モル%以下の量を意味すると理解される。
【0020】
上記粒子状材料は好ましくは、如何なる添加剤、例えば導電性カーボン、又はバインダー無しで、しかし自由流動性粉末として提供される。特に、粒子状材料は好ましくは、導電性カーボンを有しておらず、このことは、粒子状材料の導電性カーボンの含有量が、上記粒子状材料に対して1質量%未満、好ましくは0.001~1.0質量%、又は検出レベル未満でさえあることを意味する。
【0021】
本発明の一実施の形態では、粒子状材料は、平均粒子径(D50)が、3~20μmの範囲、好ましくは5~16μmの範囲である。平均粒子径は例えば、光散乱、又はLASER回折、又は電子音響分光法によって測定可能である。粒子は通常、一次粒子からの塊で構成され、及び上述した粒子径は二次粒子径を示している。
【0022】
本発明の一実施の形態では、粒子状材料は、比表面積(BET)(以降、「BET表面積」とも記載する)は、0.1~1.0m2/gの範囲である。BET表面積は、DIN ISO9277:2010に従って、試料を200℃で30分以上脱ガスした後、窒素吸着によって測定されても良い。
【0023】
工程(b)では、上述した粒子状材料は、水性媒体で処理される。上記水性媒体は、pH値が2~14の範囲であっても良く、好ましくは少なくとも5、より好ましくは7~12.5、及びより好ましくは、8~12.5の範囲であっても良い。pH値は、工程(b)の開始時に測定される。工程(b)の過程で、pH値は、少なくとも10にまで上昇することが観察される。
【0024】
好ましくは、水性媒体の水の硬度、及び特に、工程(b)で使用された水の硬度、特にカルシウムは、少なくとも部分的に除去される。脱塩水の使用が好ましい。
【0025】
工程(b)の替わりの実施の形態では、工程(b)で使用される水性媒体は、アンモニア又は少なくとも1種の遷移金属塩、例えばニッケル塩又はコバルト塩を含んでも良い。このような遷移金属塩は、好ましくは電極活性材料にとって有害ではない対イオンを有している。硫酸塩及び硝酸塩が適している。塩化物は好ましくはない。
【0026】
工程(b)の一実施の形態では、工程(b)で使用される水性媒体は、0.001~10質量%の、Al、Mo、W、Ti又はZrの酸化物又は水酸化物、又はオキシ水酸化物を含む。工程(b)の他の実施形態では、工程(b)で使用される水性媒体は、Al、Mo、W、Ti又はZrの酸化物又は水酸化物、又はオキシ水酸化物の何れのものも測定可能な量では含まない。
【0027】
本発明の一実施の形態では、工程(b)は、5~65℃の範囲の温度で行われ、この温度範囲は、10~35℃が好ましい。
【0028】
本発明の一実施の形態では、工程(b)は標準圧力で行われる。しかしながら、工程(b)を、圧力を上昇させて行うことが好ましく、例えば標準圧力より、10ミリバール~10バール高くして行うことが好ましく、又は吸引状態で、例えば標準圧力より50~250ミリバール低い圧力、好ましくは標準圧力より100~200ミルバール低い圧力で行うことが好ましい。
【0029】
工程(b)は、例えばろ過装置上のその配置の理由で、容易に排出可能な容器内で行われても良い。このような容器は、出発材料が充填され、次いで水性媒体が導入されても良い。他の実施の形態では、このような容器は、水性媒体が装填され、次いで出発材料が導入される。他の実施の形態では、出発材料及び水性媒体が同時に導入される。
【0030】
本発明の一実施の形態では、出発材料と工程(b)における合計水性媒体の体積比は2:1~1:5の範囲、好ましくは2:1~1:2の範囲である。工程(b)は、混合操作、例えばシェイキング、又は特に攪拌又はせん断によって補助されても良い(下記が参照される)。
【0031】
本発明の一実施の形態では、工程(b)は、1分間~30分間の範囲、好ましくは1間から5分間未満の範囲の継続時間を有する。5分間以上の継続時間は、工程(b)及び(c)が重複して、又は同時に行われる実施形態で可能である。
【0032】
本発明の一実施の形態では、工程(b)及び(c)は連続して行われる。工程(b)に従って水性媒体で処理を行った後、水は、ろ過の任意の種類によって、例えばバンドフィルター上で、又はフィルタープレス内で除去されても良い。
【0033】
本発明の一実施の形態では、工程(b)の開始後少なくとも3分間して、工程(c)が開始される。工程(c)は、固-液分離を使用して、例えばデカンターを使用して、又は好ましくはろ過によって、上記水性媒体を処理された粒子状材料から除去することを含む。
【0034】
本発明の一実施の形態では、工程(b)で得られたスラリーは、好ましくは工程(b)が行われる容器の直下部に配置される遠心分離機内、例えばデカンター遠心分離機、又はろ過遠心分離機内に、又はろ過装置上に、例えば吸引フィルター、又はベルトフィルターで排出される。そしてろ過が開始される。
【0035】
本発明の特に好ましい実施形態では、工程(b)及び工程(c)は、攪拌機付のろ過装置(フィルター装置)、例えば攪拌機付の圧力フィルター又は攪拌機付の吸引フィルターで行われる。工程(b)に従い出発材料及び水性媒体が混合されて、最大で3分後の後に、又は直後に、水性媒体の除去が、ろ過を開始させることによって開始される。実験室規模では、工程(b)及び(c)は、ブフナー漏斗上で行われても良く、及び工程(b)は、手動攪拌によって補助されても良い。
【0036】
好ましい実施形態では、工程(b)は、ろ過装置内、例えばフィルター内のスラリー又はろ過ケーキの攪拌を可能にする攪拌ろ過装置で行われる。工程(b)の開始後、最大3分後に、ろ過、例えば圧力ろ過、又は吸引ろ過を開始することにより、工程(c)が開始される。
【0037】
本発明の一実施の形態では、工程(c)は1分~1時間の範囲の継続時間を有している。
【0038】
本発明の一実施の形態では、工程(b)における攪拌は、1~50回/分(rpm)の速度で行われ、この速度は5~20rpmの範囲が好ましい。
【0039】
工程(b)及び(c)を同じ温度で行うことが好ましい。
【0040】
工程(b)及び(c)を同じ圧力で行うことが好ましく、又は工程(b)を開始させた時に圧力を増すことが好ましい。
【0041】
本発明の一実施の形態では、工程(c)のためのろ過媒体は、セラミック、焼成ガラス、焼成金属、有機ポリマーフィルム、不織布、及びファイバーから選択されても良い。
【0042】
本発明の一実施の形態では、工程(b)及び(c)はCO2含有量が低減された雰囲気、例えば二酸化炭素の含有量が0.01~500質量ppm、好ましくは0.1~50ppmの雰囲気下で行われる。CO2含有量は、例えば、赤外光を使用した光学的手法によって測定されても良い。工程(b)及び(c)が、例えば赤外光ベースの光学的手法を使用して、検知限界未満の二酸化炭素濃度を有する雰囲気下で行われることが更に好ましくさえある。
【0043】
工程(d)では、工程(c)からの処理された材料が、例えば、40~250℃の範囲の温度、標準圧力、又は減圧した圧力、例えば1~500ミリバールの圧力で乾燥される。より低い温度、例えば40~100℃での乾燥が所望される場合、強く減圧された圧力、例えば1~20ミリバールが好ましい。
【0044】
本発明の一実施の形態では、工程(d)は、CO2含有量が低減された雰囲気、例えば二酸化炭素の含有量が0.01~500質量ppm、好ましくは0.1~50ppmの雰囲気下で行われる。CO2含有量は、例えば、赤外光を使用した光学的手法によって測定されても良い。工程(d)が、例えば赤外光ベースの光学的手法を使用して、検知限界未満の二酸化炭素濃度を有する雰囲気下で行われることが更に好ましくさえある。
【0045】
本発明の一実施の形態では、工程(d)は、1~10時間の継続時間、好ましくは、90分~6時間の継続時間を有する。
【0046】
本発明の一実施の形態では、工程(b)~(d)を行うことによって、電極活性材料のリチウム含有量は、1~5質量%、好ましくは2~4質量%、低減される。上述した低減は主として、所謂残存リチウムに影響を及ぼす。
【0047】
本発明の好ましい実施形態では、工程(d)で得られた材料は、残留水分含有量が、50~1000ppmの範囲、好ましくは100~400ppmの範囲、又は600~1000ppmの範囲である。残留水分含有量は、カール-フィッシャー滴定によって測定されても良い。
【0048】
工程(e)で、上述した電極活性材料は、金属ハロゲン化物、又は金属アミド又はアルキル金属化合物で処理される。
【0049】
本発明の一実施の形態では、工程(e)は、15~1000℃の範囲の温度、好ましくは15~500℃、より好ましくは20~350℃、及び更に好ましくは50~200℃の範囲の温度で行われる。場合によって、工程(e)で、金属アミド、又はアルキルアミド化合物がガス相中に存在する温度を選択することが好ましい。
【0050】
本発明の一実施の形態では、工程(e)は、標準圧力で行われるが、しかしながら工程(e)は、同様に、減圧下、又は上昇させた圧力下に行われても良い。例えば、工程(e)は、標準圧力より5ミリバール~1バールの範囲高い圧力で行われても良く、好ましくは標準圧力より10~150ミリバールの範囲高い圧力で行われても良い。本発明において、標準圧力は、1気圧又は1013ミリバールである。他の実施の形態では、工程(e)は、標準圧力より150ミリバールから560ミリバールの範囲高い圧力で行われても良い。
【0051】
本発明の好ましい一実施形態では、アルキル金属化合物又は金属アミドはそれぞれ、Al(R1)3、Al(R1)2OH、AlR1(OH)2、M
2
(R
1
)
4-y
H
y
、M
2
[NR
2
)
2
]
4
、及びメチルアルモキサン
(但し、
R1は、同一又は異なり、及び直鎖状、又は分岐したC1~C8-アルキルから選ばれ、
R2は、同一又は異なり、及び直鎖状、又は分岐したC1~C4-アルキルから選ばれ、
M2は、Ti又はZrであり、Tiが好ましい)
から選ばれる。
【0052】
アルミニウムアルキル化合物の例は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、及びメチルアルモキサンである。
金属アミドは、金属イミドとも称される場合がある。金属アミドの例は、Ti[N(CH3)2]4である。
【0053】
特に好ましい化合物は、金属アルキル化合物から選ばれ、及びより好ましくはトリメチルアルミニウムである。
【0054】
本発明の一実施の形態では、金属アミド又はアルキル金属化合物の量は、0.1~1g/(粒子状の材料1kg)である。
【0055】
好ましくは、金属アミド又はアルキル金属化合物の量はそれぞれ、1サイクルにつき、粒子状の材料上の単分子層の80~200%の量であると計算される。
【0056】
本発明の一実施の形態では、工程(e)はロータリーキルン内で、混合ミキサー内、例えばプロウシェアミキサー内、又はフリーフォールミキサー内で、連続振動ベッド内、又は流動床ベッド内で行われる。本発明の工程(e)及び(f)は同一の容器内で行われても良く、又は異なる容器内で行われても良くそしてその詳細については以下に記載される。
【0057】
本発明の好ましい一実施形態では、工程(e)の継続時間は、1秒~2時間の範囲、好ましくは1秒~30分の範囲である。
【0058】
本発明では工程(f)とも称される第3の工程では、工程(e)で得られた材料は、水分で処理される。
【0059】
本発明の一実施の形態では、工程(f)は、50~250℃の範囲の温度で行われる。
【0060】
本発明の一実施の形態では、工程(f)はロータリーキルン内、ロータリーキルン、混合ミキサー内、例えばプロウシェアミキサー内、又はフリーフォールミキサー内で、連続振動ベッド内、又は流動床ベッド内で行われる。
【0061】
本発明の一実施の形態では、工程(f)は標準圧力で行われるが、しかしながら工程(f)を、減圧下に、又は圧力を上昇させて行っても良い。例えば工程(f)を、標準圧力より5ミリバール~1バール高くして行っても良く、好ましくは標準圧力より10ミリバール~250ミリバール高くして行っても良い。本発明において、標準圧力は、1気圧又は1013ミリバールである。他の実施の形態では、工程(f)は、標準圧力より150ミリバールから560ミリバールの範囲高い圧力で行われても良い。
【0062】
工程(e)及び(f)は、同じ圧力で行われても良く、又は異なる圧力で行われても良く、同じ圧力であることが好ましい。
【0063】
上述した水分は、例えば工程(e)に従って得られた材料を水分飽和不活性ガス、例えば水分飽和窒素、又は水分飽和希ガス、例えばアルゴンで処理することによって導入されても良い。飽和は標準条件、又は工程(f)の反応条件であっても良い。
【0064】
本発明の好ましい一実施の形態では、工程(f)の継続時間は、1秒~2時間の範囲、好ましくは1秒~30分の範囲である。
【0065】
本発明の一実施の形態では、本方法が行われる反応器は、工程(e)と(f)の間、不活性ガス、例えば乾燥窒素又は乾燥アルゴンでフラッシュ(flushing)又はパージされる。フラッシュ又はパージの適切な時間は1秒~20分である。好ましくは、不活性ガスの量は、反応器の内容物を1~15回交換する(入れ替える)のに十分な量である。このようなフラッシュ又はパージによって、副生成物、例えば金属アミド又はアルキル金属化合物の水との反応生成物の分離した粒子の精製が回避され得る。トリメチルアルミニウム及び水を連結させる場合、このような副生成物は、メタン及びアルミナ又は粒子状材料上には沈澱しないトリメチルアルミニウムであり、後者は望ましくない副生成物である。上述したフラッシュは工程(f)の後、従って他の工程(e)の前にも行われる。
【0066】
本発明の一実施の形態では、工程(e)及び工程(f)の間のフラッシュ工程はそれぞれ、1秒~30分間の範囲の継続時間を有する。
【0067】
本発明の一実施の形態では、反応器は工程(e)及び工程(f)の間にエバキュエーションされる。上述したエバキュエーションは、工程(f)の後、従って他の工程(e)の前にも行われる。この構成に関し、エバキュエーションは如何なる減圧をも含み、例えば10~1000ミリバール(abs)、好ましくは10~500ミリバール(abs)を含む。
【0068】
工程(e)及び工程(f)のそれぞれは、固定床反応器内、流動床反応器内、強制流反応器内、又はミキサー内、例えば強制ミキサー内、又はフリーフォールミキサー内で行われても良い。流動床反応器の例は、噴流層反応器である。強制ミキサーの例は、プロウシェアミキサー、パドルミキサー及びシャベルミキサーである。プロウシェアミキサーが好ましい。好ましいプロウシェアミキサーは、水平に導入され、ここで「水平」という用語は、その回りをミキシング要素が回転する軸についてのものである。好ましくは本発明の方法は、シャベルミキサーツール内、パドルミキサーツール内、ベッカーブレードツール内で行われ、最も好ましくは、ハーリング及びワイヤリング原理に従うプロウシェアミキサー内で行われる。フリーフォールミキサーは、ミキシング状態を達成するために重力を使用している。好ましい一実施の形態では、本発明の方法の工程(e)及び(f)は、その水平方向回りに回転するドラム又はパイプ形状の容器内で行われる。より好ましい実施形態では、本発明の工程(e)及び(f)は、バッフルを有する回転容器内で行われる。
【0069】
本発明の一実施の形態では、回転容器は2~100個の範囲のバッフル、好ましくは2~20個の範囲のバッフルを有する。このようなバッフルは好ましくは、容器の壁に取り付けられている。
【0070】
本発明の一実施の形態では、このようなバッフルは回転容器、ドラム又はパイプに沿って軸対称的に配置されている。上記回転容器の壁との角度は、5~45°の範囲、好ましくは10~20°の範囲である。このような配置によって、これらは被覆されたカソード活性材料を、非常に効果的に回転容器を通して輸送することが可能である。
【0071】
本発明の一実施の形態では、上述したバッフルは回転容器内に、直径に対して10~30%の範囲にまで達する。
【0072】
本発明の一実施の形態では、上述したバッフルは、回転容器の全長の10~100%の範囲、好ましくは30~80%の範囲をカバーする。この点に関し、「長さ」とういう用語は、回転軸に平行なものである。
【0073】
本発明の好ましい実施の形態では、本発明の方法は、被覆された材料を容器又は複数の容器から、例えば20~100m/sの空気搬送によって除去する工程を含む。
【0074】
本発明の一実施の形態では、排出ガスは、工程(e)及び(f)が行われる反応器内よりも1バール高い圧力、より好ましくはより高い圧力で、例えば1.010~2.1バールの範囲、好ましくは1.005から1.150バールの範囲で水で処理される。上昇された圧力は、排出ライン中の圧力損失を補償するするのに有利である。
【0075】
工程(e)及び(f)のシーケンスは、2~4回繰り返されても良く、工程(e)及び(f)の最後のシーケンスでは、水分が少なくとも部分的に酸化剤に置き換えられても良い。酸化剤の例は、酸素、H2O2等の過酸化物及びオゾン、及びこれらの少なくとも2種の組合せである。特に好ましい酸化剤は、オゾン及び酸素とオゾンからの混合物である。このような酸化剤は、純粋な状態で、又は水分との組合せで与えられても良い。
【0076】
水分が酸化剤によって少なくとも部分的に置き換えられても良い、上述した後者の工程(f)は以降、工程(f*)とも称する。
【0077】
繰返し(repetition)は、各回ごとに、正確に同じ条件下で、又は変更した条件下ではあるが、なお上述した定義の範囲内で工程(e)及び(f)のシーケンスを繰り返すことを含んでも良い。例えば、各工程(e)は、正確に同じ条件下に行われても良く、又は例えば、各工程(e)は、異なる温度条件下に、又は異なる継続時間で、例えば120℃、次いで10℃及び160℃、それぞれ1秒~1時間行われても良い。
【0078】
工程(f*)では、水分が酸化剤に少なくとも部分的に置き換えられる。好ましくは、工程(f*)で、湿気は与えられず、及び水分は完全に酸化剤によって置き換えらる。
【0079】
オゾンは、それ自体は公知の条件下で、酸素から生成されても良く、及び従って、工程(f*)では通常、酸素の存在下にオゾンが施される。工程(f*)でオゾンを与える間、窒素が存在しないことが好ましい。
【0080】
本発明の一実施の形態では、工程(f*)は、標準圧力で行われる。本発明の他の実施の形態では、工程(f*)は、標準圧力より5ミリバール~1バール高い圧力、好ましくは標準圧力より10~250ミリバール高い圧力で行われる。他の実施の形態では、工程(f*)は、標準圧力より低い圧力、例えば100~900ミリバールで、好ましくは標準圧力より100~500ミリバール低い圧力で行われる。工程(f*)は、20~300℃の温度で行われても良く、好ましくは100~300℃の温度、より好ましくは150~250℃の温度で行われても良い。
【0081】
本発明の一実施の形態では、工程(f*)の継続時間は、1秒~2時間の範囲、好ましくは1秒~30分間の範囲である。
【0082】
工程(f*)は、工程(f)の容器と同じタイプの容器内で行われても良い。好ましくは、工程(f)及び工程(f*)は、同じ容器内で行われる。
【0083】
粒子状電極活性材料が得られる。
【0084】
本発明の一実施の形態では、工程(e)及び工程(f*)のシーケンスは、ただ1回のみ行われる。他の実施の形態では、工程(e)及び工程(f*)のシーケンスは、2~5回行われる。
【0085】
本発明の一実施の形態では、工程(f)又は場合によって工程(f*)の後、後処理、例えば熱後処理(g)が行われる。このような熱後処理(g)は、工程(f)又は(f*)の後に粒子状電極活性材料を、それぞれ、150~800℃、好ましくは150~400℃の範囲の温度で、例えば所定期間に亘り、180~350℃の温度で、例えば、10分間~2時間の期間に亘り行われても良い。
【0086】
本発明の一実施の形態では、工程(d)の後に後処理、例えば熱後処理(d*)が行われる。このような熱後処理(d*)は、工程(d)の後に得られた粒子状電極活性材料を、150~800℃の範囲の温度、好ましくは150~400℃の範囲の温度で、例えば好ましくは180~350℃の範囲の温度で所定の期間に亘り、例えば10分間~2時間の期間に亘り行われても良い。
【0087】
本発明の方法を行うことによって、卓越した電気化学的特性を示す電極活性材料が得られても良い。
【0088】
本発明の更なる形態は、電極活性材料に関し、これは以降、本発明の電極活性材料とも称される。本発明の電極活性材料は、一般式Li1+x1TM1-x1O2に対応し、ここでTMは、Niと、Co及びMnから選ばれる少なくとも1種の遷移金属、任意にAl、Ba及びMgから選ばれる少なくとも1種の金属と、Ni、Co及びMn以外の少なくとも1種の遷移金属との組合せを含み、及びTMの少なくとも75%は、Niであり、及びx1は-0.01~0.1の範囲である。TMの式は、被覆の無い上記本発明の電極活性材料を表す。更に、本発明の電極活性材料は、比表面積(BET)を0.3~1.5m2/gの範囲に有し、及び100~1500ppmのAlの、少なくとも部分的な被覆を含む。ppmの量は、質量ppmを表す。
【0089】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の電極活性材料は、LiOH及びLi2CO3の合計を、上記電極活性材料に対して0.05~0.15質量%の範囲で含む。LiOH及びLi2CO3の量は、例えば滴定法によって測定される。
【0090】
本発明の一実施の形態では、本発明の電極活性材料は、平均粒子径(D50)を、3~20μmの範囲、好ましくは5~16μmの範囲に有する。平均粒子径は例えば、光散乱又はレーザー回折、又は電子音響分光法によって測定可能である。粒子は通常、一次粒子からの塊から構成され、及び上記粒子径は、二次粒子径を表す。
【0091】
好ましい実施の形態では、一般式(I)に従う化合物では、
Li(1+x1)[TM](1-x1)O2 (I)
TMが、(NiaCobMncM3
d)であり、
M3が、Ca、Mg、Al及びBaから選ばれ、
及び更なる変数記号は、上記に定義したものである。
【0092】
特に好ましい実施の形態では、TMは、一般式(Ia)
(NiaCobMnc)1-dM1
d (Ia)
(但し、
a+b+c=1であり、及び
aが、0.75~0.95の範囲であり、
bが、0.025~0.2の範囲であり、
cが、0.025~0.2の範囲であり、及び
dが、ゼロ~0.1の範囲であり、及び
M1が、Al、Mg、W、Mo、Nb、Ti又はZrの少なくとも1つである)
に従う金属の組合せである。
【0093】
Li1+x(CoeMnfM3
d)1-xO2中、eは、0.2~0.8の範囲、fは、0.2~0.8の範囲、変数記号M3及びd及びxは、上記に定義したものであり、及びe+f+d=1である。
【0094】
他の実施の形態では、TMが、一般式(Ib)
[NihCoiAlj] (Ib)
(但し、
hが、0.8~0.95の範囲であり、
iが、0.025~0.19の範囲であり、及び
jが、0.01~0.05の範囲である)
に従う金属の組合せである。
本発明の更なる形態は、本発明に従う電極活性材料を少なくとも1種含む、電極である。これらはリチウムイオン電池用に特に有用である。本発明に従う少なくとも1種の電極を含むリチウムイオン電池は、良好な放電挙動を示す。本発明に従う電極活性材料を少なくとも1種含む電極は以降、本発明のカソード、又は本発明に従うカソードとも称される。
【0095】
本発明に従うカソードは、更なる構成要素を含むことが可能である。これらは、電流コレクタ、例えばアルミニウムホイルを含むことが可能であるが、これに限定されるものではない。これらは更に、導電性カーボン及びバインダーを含むことが可能である。
適切なバインダーは好ましくは、有機(コ)ポリマーから選択される。適切な(コ)ポリマー、すなわちホモポリマー又はコポリマーは、例えばアニオン、触媒、又はフリーラジカル(共)重合によって得られる(コ)ポリマーから、特にポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリスチレンから、及びエチレン、プロピレン、スチレン、(メト)アクリロニトリル、及び1,3-ブタジエンから選ばれる少なくとも2種のコモノマーのコポリマーから選択することが可能である。ポリプロピレンも適切である。ポリイソプレン及びポリアクリレートが追加的にて適切である。特に好ましいものは、ポリアクリロニトリルである。
本発明において、ポリアクリロニトリルは、ポリアクリロニトリルホモポリマーのみならず、アクリロニトリルの1,3-ブタジエン又はスチレンとのコポリマーをも意味するものと理解される。ポリアクリロニトリルホモポリマーが好ましい。
【0096】
本発明において、ポリエチレンは、ホモポリエチレンのみならず、共重合したエチレンを少なくとも50モル%含み、及び少なくとも1種の更なるコモノマーを50モル%以下で含む、エチレンのコポリマーをも意味すると理解される。上記更なるコモノマーは例えば、アルファオレフィン、例えばプロピレン、ブチレン(1-ブテン)、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-ペンテン、及びイソブテン、ビニル芳香族化合物、例えばスチレン、及び(メト)アクリル酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニール、(メト)アクリル酸のC1~C10-アルキルエステル、特にメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、及びマレイン酸、無水マレイン酸、及びイタコン酸無水物である。ポリエチレンは、HDPE又はLDPEであっても良い。
【0097】
本発明において、ポリプロピレンは、ホモポリプロピレンのみならず、共重合したプロピレンを少なくとも50モル%含み、及び少なくとも1種の更なるコモノマーを50モル%以下で含む、プロピレンのコポリマーをも意味すると理解される。当該更なるコモノマーは例えば、エチレン及びアルファオレフィン、例えばブチレン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、及び1-ペンテンである。ポリプロピレンは、好ましくはイソタクチック、又は本質的にイソタクチックのポリプロピレンである。
【0098】
本発明において、ポリスチレンはスチレンのホモポリマーを意味するのみならず、アクリロニトリル、1,3-ブタジエン、(メト)アクリル酸、(メト)アクリル酸のC1~C10-アルキルエステル、ジビニルベンゼン、特に1,3-ジビニルベンゼン、1,2-ジフェニルエチレン及びα-メチルスチレンとのコポリマーをも意味するものと理解される。
【0099】
他の好ましいバインダーは、ポリブタジエンである。
【0100】
他の適切なバインダーは、ポリエチレンオキシド(PEO)、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリイミド及びポリビニルアルコールから選ばれる。
【0101】
本発明の一実施の形態では、バインダーは、平均分子量Mwが、50000~1000000g/mol、好ましくは500000g/molまでの、これらの(コ)ポリマーから選ばれる。
【0102】
バインダーは架橋されていても良く、架橋されていなくても良い。
【0103】
特に好ましい実施の形態では、バインダーは、ハロゲン化(コ)ポリマーから、特にフッ素化(コ)ポリマーから選ばれる。ハロゲン化又はフッ素化(コ)ポリマーは、分子ごとに少なくとも一つのハロゲン原子又は少なくとも一つのフッ素原子、より好ましくは、分子ごとに少なくとも二つのハロゲン原子又は少なくとも二つのフッ素原子を有する(共)重合化された(コ)ポリマーを少なくとも1種含む(コ)ポリマーを意味するものと理解される。例は、ポリビニルクロリド、ポリビニリデンクロリド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリド(PVdF)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVdF-HFP)、ビニリデンフルオリド-テトラフルオロエチレンコポリマー、ペルフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー、ビニリデンフルオリド-クロロトリフルオロエチレンコポリマー及びエチレン-クロロフルオロエチレンコポリマーである。
【0104】
適切なバインダーは特に、ポリビニルアルコール及びハロゲン化(コ)ポリマー、例えばポリビニルクロリド又はポリビニリデンクロリド、特にフッ素化(コ)ポリマー、例えばポリビニルフルオリド及び特に、ポリビニリデンフルオリド及びポリテトラフルオロエチレンである。
【0105】
本発明のカソードは、電極活性材料に対して、1~15質量%のバインダー(複数種を含む)を含んでも良い。他の実施の形態では、本発明のカソードは、0.1質量%~1質量%未満のバインダー(複数種を含む)を含む。
【0106】
本発明の更なる形態は、本発明の電極活性材料、カーボン、及びバインダーを含む少なくとも1つのカソード、少なくとも1つのアノード、及び少なくとも1つの電解質を含むバッテリーである。
【0107】
本発明のカソードの実施形態については、上記に詳細に記載した。
【0108】
上述したアノードは、少なくとも1種のアノード活性材料、例えばカーボン(グラファイト)、TiO2、リチウムチタニウム酸化物、シリコン、又はスズを含んでも良い。上述したアノードは電流コレクタ、例えば、金属箔、たとえば銅箔を追加的に含んでも良い。
【0109】
上述した電解質は、少なくとも1種の非水性溶媒、少なくとも1種の電解質塩、及び任意に添加剤を含んでも良い。
【0110】
電解質用の非水性溶媒は、室温で液体又は固体であることが可能であり、及び好ましくは、ポリマー、環式又は非環式のエーテル、環式又は非環式のアセタール、及び環式又は非環式の有機カーボネートから選ばれる。
【0111】
適切なポリマーの例は特に、ポリアルキレングリコール、好ましくはポリ-C1-C4-アルキレングリコール及び特に、ポリエチレングリコールである。ポリエチレングリコールはここで、20mol%以下の、1種以上のC1~C4-アルキレングリコールを含むことが可能である。ポリアルキレングリコールは好ましくは、2つのメチル又はエチル末端キャップを有するポリアルキレングリコールである。
【0112】
適切なポリアルキレングリコール及び特に、適切なポリエチレングリコールの分子量Mwは、少なくとも400g/molであることが可能である。
【0113】
適切なポリアルキレングリコール及び特に、適切なポリエチレングリコールの分子量Mwは、5000000g/mol以下、好ましくは2000000g/mol以下であることが可能である。
【0114】
適切な非環式エーテルの例は例えば、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタンであり、好ましいものは、1,2-ジメトキシエタンである。
【0115】
適切な環式エーテルの例は、テトラヒドロフラン及び1,4-ジオキサンである。
【0116】
適切な非環式アセタールの例は例えば、ジメトキシメタン、ジエトキシエタン、1,1-ジメトキシエタン、及び1,1-ジエトキシエタンである。
【0117】
適切な環式アセタールの例は、1,3-ジオキサン及び特に、1,3-ジオキソランである。
【0118】
適切な非環式の有機カーボネートの例は、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート及びジエチルカーボネートである。
【0119】
適切な環式の有機カーボネートの例は、一般式(II)及び(III)に従う化合物である。
【0120】
【0121】
ここで、R1、R2及びR3は、同一であるか、又は異なることが可能であり、及び水素、及びC1~C4-アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル及びtert-ブチルから選ばれ、及びR2及びR3は好ましくは、両方がtert-ブチルではない。
【0122】
特に好ましい実施の形態では、R1はメチルであり、及びR2及びR3はそれぞれ、水素であるか、又はR1、R2及びR3は、それぞれが水素である。
【0123】
他の好ましい環式有機カーボネートは、式(IV)のビニレンカーボネートである。
【0124】
【0125】
溶媒(1種又は複数種)は好ましくは、水の無い状態で使用され、すなわち、例えばカール-フィッシャー滴定によって測定して、水の含有量が1質量ppm~0.1質量%の範囲で使用される。
【0126】
電解質(C)は更に、少なくとも1種の電解質塩を含む。適切な電解質塩は特に、リチウム塩である。適切なリチウム塩の例は、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiC(CnF2n+1SO2)3、リチウムイミド、例えばLiN(CnF2n+1SO2)2(但し、nは1~20の範囲の整数である)、LiN(SO2F)2、Li2SiF6、LiSbF6、LiAlCl4及び一般式(CnF2n+1SO2)tYLiの塩(但し、mは以下のように定義される:
t=1、Yが酸素及び硫黄から選ばれる場合、
t=2、Yが窒素及びリンから選ばれる場合、
t=3、Yが炭素及びシリコンから選ばれる場合)である。
【0127】
好ましい電解質塩は、LiC(CF3SO2)3、LiN(CF3SO2)2、LiPF6、LiBF4、LiClO4から選ばれ、特に好ましくはLiPF6及びLiN(CF3SO2)2である。
【0128】
本発明の実施の形態では、本発明に従うバッテリーは、電極を機械的に分離する1つ以上のセパレータを含む。適切なセパレータは、金属リチウムに対して非反応性のポリマーフィルム、特に多孔性ポリマーフィルムである。セパレータ用に特に適切な材料は、ポリオレフィン、特にフィルム形成多孔性ポリエチレン及びフィルム形成多孔性ポリプロピレンである。
【0129】
ポリオレフィン、特にポリエチレン又はポリプロピレンで構成されるセパレータは、多孔性を35~45%の範囲に有することが可能である。適切な孔径は例えば、30~500nmの範囲である。
【0130】
本発明の他の実施の形態では、セパレータは、無機粒子が充填されたPET不織布から選択することが可能である。このようなセパレータは、40~55%の範囲内に多孔性を有することが可能である。適切な孔径は、例えば、80~750nmの範囲である。
【0131】
本発明に従うバッテリーは更に、ハウジングを含み、該ハウジングは任意の形状、例えば立方体状、又はシリンダー状ディスク、又はシリンダー状缶の形状を有することが可能である。一変形形態では、ポーチとして構成された金属ホイルがハウジングとして使用される。
【0132】
本発明に従うバッテリーは、良好な放電挙動、例えば低温(0℃以下、例えば-10℃以下)で非常に良好な放電及びサイクリング挙動を示す。
【0133】
本発明に従うバッテリーは、例えば直列に接続する、又は並列に接続することができる、相互に結びついた2つ以上の電気化学セルを含むことが可能である。直列接続が好ましい。本発明に従うバッテリーでは、少なくとも1つの電気化学セルが、本発明に従う少なくとも1つのカソードを含む。好ましくは、本発明に従う電気化学セル中で電気化学セルの大部分が、本発明に従うカソードを含む。より好ましくは、本発明に従うバッテリー中で、全ての電気化学セルが本発明に従うカソードを含む。
【0134】
本発明は更に、本発明に従うバッテリーの電気器具、特にモバイルアプリケーション(mobile application)における使用方法を提供する。モバイルアプリケーションの例は、乗り物、例えば自動車、自転車、航空機又は船舶、例えばボート又は船である。モバイルアプリケーションの他の例は、マニュアルで作動するものであり、例えばコンピューター、特にラップトップ、電話、又は電動工具、例えば建築部門で使用するもの、例えばドリル、バッテリー駆動スクリュードライバー、又はバッテリー駆動ステープラーである。
【0135】
以下に本発明を、実施例を用いて説明するが、本発明はこれらには限られない。
【実施例】
【0136】
sccm:1分間あたりの標準立方センチメートルで、立方センチメートルは、標準条件:1atm及び20℃でのものである。
【0137】
I.カソード活性材料の合成
I.1 前駆体TM-OH.1の合成
攪拌タンク反応器を脱イオン水及び水1kgあたり49gの硫酸アンモニウムで満たした。この溶液を55℃の温度にし、及び水酸化ナトリウム水溶液を加えることによってpH値を12に調節した。
【0138】
遷移金属硫酸塩水溶液及び水酸化ナトリウム水溶液を、1.8の流量割合、及び8時間の滞留時間(residence time)となる流量で同時に供給することによって共沈反応を開始させた。遷移金属溶液は、Ni、Co、及びMnを8.5:1.0:0.5のモル比で含み、及び合計遷移金属濃度は、1.65mol/kgであった。水酸化ナトリウム水溶液は、質量割合が6の、25質量%水酸化ナトリウム溶液及び25質量%アンモニア溶液であった。水酸化ナトリウム水溶液を別個に供給することによって、pH値を12に維持した。全ての供給の開始と一緒に開始して、母液を連続的に除去した。33時間後、全ての供給流を停止させた。得られた懸濁液をろ過し、蒸留水で洗浄し、空気中120℃で乾燥させ、及び篩にかけることによって、混合遷移金属(TM)オキシヒドロキシド前駆体TM-OH.1が得られた。
【0139】
I.2 TM-OH.1のカソード活性材料への変換、及び本発明の方法に従う処理
1.2.1 比較カソード活性材料、C-CAM.1の製造、ステップ(a.1)
C-CAM.1:I.1に従って得られた混合遷移金属オキシヒドロオキシド前駆体を、LiOH一水和物と混合し、1.05のモル比のLi/(TM)を得た。この混合物を760℃まで加熱し、及び60%酸素と40%窒素(体積%)の混合物の強制流中に10時間保持した。周囲温度(大気温度)にまで冷却した後、粉末を解砕し(deagglomerate)、及び32μmメッシュを通して篩分けし、電極活性材料C-CAM1を得た。
【0140】
Malvern Instrumentsからの器具であるMastersize3000中で、レーザー回折の技術を使用して測定して、D50=9.0μmであった。250℃での残留水分は、300ppmであると測定された。
【0141】
I.2.2 水性媒体を使用した処理、ステップ(b.1)及び(c.1)及び(d.1)
周囲温度(大気温度)で脱塩水にC-CAM.1を1.5の質量比(CAM:水)で加えた。得られたスラリーの攪拌の2分後、ブフナー漏斗を通したろ過によって液体を除去した。このようにして得られたフィルターケーキ(ろ過塊)を薄膜ポンプによる真空状態中で2時間、65℃で乾燥させ、次いで第2乾燥ステップで、同様に薄膜ポンプによる真空状態中で10時間、180℃で乾燥させた。CAM.1-Wが得られた。
【0142】
I.2.3 アルミニウム酸化物コーティング、ステップ(e.1)及び(f.1)
外部加熱ジャケットを備えた流動床反応器に100gのCAM.1-Wを導入し、及び130ミリバールの平均圧力で、C-CAM.1-Wを流動化した。流動床反応器を180℃に加熱し、そして180℃で3時間保持した。液体状態のTMAを含み、及び50℃に保持されている前駆体貯蔵容器に繋げるバルブを開けることによって、気体状態のトリメチルアルミニウム(TMA)を、フィルタープレーターを通して流動化床に導入した。TMAをキャリアガスとしての窒素で希釈した。TMA及びN2のガス流は10sccmであった。210秒の反応期間の後、未反応TMAを、窒素流を通して除去し、及び窒素を使用して30sccmの流れで反応器を15分間、パージした。
【0143】
次に、24℃に保持された液体水を含んだ貯蔵容器へのバルブを開けることによって、気体状態の水を流動床反応器に導入した(流れ:10sccm)。120秒の反応期間の後、未反応水を窒素流を通して除去し、及び反応器を窒素を使用して15分間、30sccmでパージした。上述したシーケンスを3回繰り返した。反応器を25℃に冷却し、そして材料を排出した。得られたCAM.2は、以下の特性を示した:Malvern Instrumentsからの器具であるMastersize3000中で、レーザー回折の技術を使用して測定して、D50=10.6μm。PE-Optima3300RLinstrument(典型的な検出限界は3ppm)を使用した誘導結合プラズマによって、標準溶液に対する評価法を介して測定して、Al含有量:1400ppm。250℃での残留水分は、200ppmであると測定された。
【0144】
本発明のCAM.2は、卓越した電気化学的特性を示した。
【国際調査報告】