(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-21
(54)【発明の名称】高い耐薬品性を有するポリウレタン接着剤
(51)【国際特許分類】
C08G 18/48 20060101AFI20220114BHJP
C09J 175/08 20060101ALI20220114BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
C08G18/48
C09J175/08
C09J5/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021531268
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(85)【翻訳文提出日】2021-05-31
(86)【国際出願番号】 EP2019081440
(87)【国際公開番号】W WO2020109028
(87)【国際公開日】2020-06-04
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】マルセル・ブロダウ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・クルレイオヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエラ・マイヤー
(72)【発明者】
【氏名】マルセル・フランケン
【テーマコード(参考)】
4J034
4J040
【Fターム(参考)】
4J034BA08
4J034CA04
4J034CB03
4J034CC03
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB07
4J034DG04
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC71
4J034HC73
4J034QA03
4J034QB17
4J034QB19
4J034RA06
4J034RA08
4J034SA02
4J034SB01
4J034SD03
4J040EF131
4J040EF281
4J040EF282
4J040HC09
4J040JA13
4J040KA14
4J040LA06
4J040LA08
4J040MA02
4J040MA10
4J040MB03
4J040NA06
4J040PA00
4J040PA30
(57)【要約】
本発明は、ウレタン基のウレタン基密度がポリエーテル1モル当たり2~10個であるポリエーテル、前記ポリエーテルおよび少なくとも1つのNCO末端化化合物を含むポリウレタン(PU)接着剤、および包装、特に食品包装を製造するための前記ポリウレタン接着剤の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン基密度がポリエーテル1モル当たり2~10個ウレタン基であるポリエーテル。
【請求項2】
前記ポリエーテルが、ポリオールをイソシアネート成分と反応させることによって調製されることを特徴とする、請求項1に記載のポリエーテル。
【請求項3】
前記イソシアネート成分が、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジイソシアネートジシクロヘキシルメタン(H12MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、およびこれらの化合物の誘導体および混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれかまたは両方に記載のポリエーテル。
【請求項4】
前記ポリオールが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオールおよびそれらの混合物からなる群から選択されるモノマーから合成されることを特徴とする、請求項1~3の1つまたは複数に記載のポリエーテル。
【請求項5】
接着剤組成物、好ましくは2K接着剤組成物における請求項1~4の1つまたは複数に記載のポリエーテルの使用。
【請求項6】
a)請求項1~4の1つまたは複数に記載の少なくとも1つのポリエーテル、および
b)少なくとも1つのNCO末端化化合物
を含む接着剤組成物。
【請求項7】
NCO:OHとして表される、前記少なくとも1つのNCO末端化化合物の前記少なくとも1つのポリエーテルに対する付加比は、1.0:1~8.0:1、好ましくは1.1:1~4.0:1であることを特徴とする、請求項6に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
前記接着剤は、モノマーNCO末端化化合物の含有量がいずれの場合も前記接着剤の全重量に基づいて10.0重量%未満、好ましくは0.01~1重量%、より好ましくは0.01~0.1重量%、特に好ましくは0.1重量%未満であることを特徴とする、請求項1~7の少なくとも1つに記載の接着剤組成物。
【請求項9】
前記接着剤が臨界移行性環状エステルを実質的に含まないことを特徴とする、請求項1~8の少なくとも1つに記載の接着剤組成物。
【請求項10】
i)請求項1~9の少なくとも1つに記載の接着剤組成物を少なくとも1つの基材に塗布するステップと、
ii)塗布された基材をさらなる基材と接触させるステップと、
iii)ポリウレタン接着剤を硬化するステップと、
を含む、少なくとも2つの基材を接着接合するための方法であって、
前記接着剤は40~85℃、好ましくは55~65℃の温度で硬化されることを特徴とする、方法。
【請求項11】
前記基材は箔状基材であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの基材は、好ましくは5~240μm、特に好ましくは40~180μmの厚さを有するアルミ箔であることを特徴とする、請求項10または請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~9の少なくとも1つに記載のポリウレタン接着剤を含む、または請求項10~12のいずれかに記載の方法に従って得られる複合系。
【請求項14】
包装、好ましくは食品包装、特に動物向け食品およびヒト向け食品用包装を製造するための、請求項1~9の少なくとも1つに記載の接着剤組成物の使用。
【請求項15】
箔状基材を接着接合するための、請求項1~9の少なくとも1つに記載の接着剤組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン基密度がポリエーテル1モル当たり2~10個ウレタン基であるポリエーテル、ポリエーテルおよび少なくとも1つのNCO末端化化合物を含むポリウレタン(PU)接着剤、および包装、特に食品包装を製造するためのポリウレタンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン接着剤は、特に食品包装の分野で一般的に使用されているようなフレキシブル包装の製造において様々な用途がある。特に複合材料に高い要件が課せられている場合、ポリエステル系ポリウレタン接着剤はもはや考えられない。高レベルの化学的および熱応力にさらされることに加えて、食品包装の製造に使用される接着剤は、例えば米国食品医薬品局(FDA)または、プラスチック材料EC10/2011に関する欧州規制に提示されている地域ごとに異なる様々な範囲の食品規制仕様にも準拠する必要がある。
【0003】
法規制に起因する制限に加えて、包装食品の重量によって引き起こされる機械的応力、さらに使用される材料が包装食品自体またはその成分によって攻撃されることを考慮に入れなければならない。結果として、例えば動物向け食品、特にウェットフードの分野で安定した包装を製造することは、成分の攻撃的な性質および包装される量のために著しい困難を伴う。
【0004】
米国特許第5096980号明細書は、包装されるまたはケースに入れられる内容物に対して、および沸騰水に対して優れた接着挙動をもたらすポリウレタン/接着剤組成物を記載している。請求項に記載の組成物は、有機ポリイソシアネート、ポリオール、0.01~10重量%のリンまたはその誘導体のオキソ酸、9.91~20重量%のカルボン酸またはその無水物、および0.1~50重量%のエポキシ樹脂を含む。
【0005】
EP1983011は、シュリンクラップ製品用のラミネーション接着剤を調製する方法に関するものであり、この方法では50~350のヒドロキシル価および2~3のヒドロキシル官能価を有する50~98重量%のヒドロキシを末端基とするポリエステル、および500~4000のエポキシ当量を有する1~30重量%のエポキシ樹脂、およびC1-C4-アルコキシ基を含有する1~20重量%の有機アルコキシシランを含む混合物を調製し、前記混合物を、エポキシ樹脂が実質的に完全に溶解するまで、100~150℃の温度で加熱する。続いて、第1成分を調製するために、C1-C4-アルコールを13kPa未満の圧力でC1-C4-アルコール残留含有量を0.4重量%未満まで蒸発させて1.8~4のイソシアネート官能価を有する多官能性イソシアネートを含む第2成分を提供する。この第2成分は、第1成分に対して、0.9:1~3:1のNCO/OH基モル比で存在する。現在の食品規制の規定を考慮すると、食品用の包装におけるエポキシ樹脂の使用は、少なくともいくつかの化合物が健康上のリスクを抱えているため、批判的に見られるべきである。
【0006】
国際公開第WO2006/026670号パンフレットは、少なくとも2つのイソシアネート基を有する少なくとも1つのポリエステルウレタンを含む高温ラミネート用接着剤を開示しており、このポリエステルウレタンは、1つまたは複数のヒドロキシル官能性ポリエステル1を脂肪族ジイソシアネートと反応させ、1つまたは複数のヒドロキシル官能性ポリエステル2を反応させることによって得られ、ポリエステル1は3000~7000g/molの範囲の数平均分子量Mnを有し、ポリエステル2は700~2000g/molの範囲の数平均分子量Mnを有し、脂肪族ジイソシアネートは110~300g/モルの数平均分子量Mnを有し、1つまたは複数の分岐ヒドロキシル官能性ポリエステルは1000~3500g/モルの範囲の数平均分子量Mnを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5096980号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1983011号明細書
【特許文献3】国際公開第2006/026670号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
接着剤の機械的性質および接着効果に課せられた厳しい要件を満たすことができるようにするために、ポリエステルポリオールをベースとするポリウレタン接着剤が一般的に使用されている。しかしながら、上述の接着剤の一部は環状エステルなどの「移行可能な」化合物を形成する点で不都合であり、これらの化合物が包装された食品に移行するのを防ぐことができない。上述の移行可能な化合物は、少なくとも部分的に健康に有害である可能性がある限り問題がある。
【0009】
従って、本発明の目的は、この種の移行可能な化合物を含まず、同時に食品包装の分野で遭遇する高い機械的、化学的および熱応力に耐える接着剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことに、この目的は、ポリエーテル1モルあたり少なくとも1つのウレタン基を含むポリエーテルが使用されるポリウレタンをベースとする接着剤組成物によって達成されることが見出された。従って、本発明は、第一に、ウレタン基密度がポリエーテル1モル当たり2~10個、好ましくは3~7個、より好ましくは3~5個ウレタン基であるポリエーテルに関する。
【0011】
本発明の意味内で、ウレタン単位は、化学構造-NH-(CO)-O-を有するポリマー中の繰り返し単位として理解されるべきである。この場合、ウレタン単位の数は理論的には以下の式を使用して決定できる。
【数1】
【0012】
100gバッチ中のこのイソシアネートのモル分率を使用して、組成物中のウレタン単位の数を決定できる。
【数2】
【0013】
驚くべきことに、ウレタン単位の数が示された範囲内にある場合、ポリエーテルが得られ、該ポリエーテルを接着剤組成物で使用することで、長期間の保菅および滅菌後であっても維持できる良好な接着力を達成する組成物が得られることが見出された。好ましい実施形態では、本発明のポリエーテルは、ポリオールをイソシアネート成分と反応させることによって調製される。
【0014】
イソシアネート成分については、これ以上の要件はない。しかしながら、本発明のポリエーテルを調製するためのイソシアネート成分として脂肪族イソシアネート成分を使用することが特に有利であることが見出された。従って、好ましい実施形態では、イソシアネート成分は、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ならびに上記化合物の誘導体および混合物からなる群から選択される。特に好ましい実施形態では、イソシアネート成分は、イソホロンジイソシアネート(IPDI)および/またはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)である。
【0015】
さらに好ましい実施形態において、本発明のポリエーテルを調製するために使用されるポリオールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオールおよびそれらの混合物からなる群から選択されるモノマーから合成される。好ましい実施形態では、ポリエーテルはジグリコールである。
【0016】
好ましい実施形態において、ポリエーテルは、260mg KOH/g以下のヒドロキシル価を有する。特に、ポリエーテルが1~260mg KOH/g、好ましくは5~120mg KOH/g、特に好ましくは10~50KOH/gのヒドロキシル価を有する実施形態が好ましい。本発明の意味の範囲内で、ヒドロキシル価(OH価)は、ポリエーテル中のヒドロキシル基の含有量の尺度であり、1グラムの物質のアセチル化中に結合した酢酸の量に等しい、ミリグラム単位の水酸化カリウムの量として特定される。
【0017】
好ましい実施形態において、本発明のポリエーテルは、1~20重量%、好ましくは5~10重量%のポリオール、および1~50重量%、好ましくは20~40重量%のイソシアネート成分を含む反応混合物から得られ、重量パーセントの仕様は、いずれの場合も無溶媒の反応混合物の総重量に基づいている。
【0018】
驚くべきことに、本発明のポリエーテルを使用することは、非常に良好な接着効果および高い耐加水分解性を特徴とする接着剤化合物をもたらすことが見出された。従って、本発明はさらに、接着剤組成物における本発明のポリエーテルの使用に関する。
【0019】
本発明はさらに、
a)ウレタン基密度がポリエーテル1モル当たり2~10個、好ましくは3~7個、より好ましくは3~5個ウレタン基である少なくとも1つのポリエーテル、および
b)少なくとも1つのNCO末端化化合物
を含む接着剤組成物に関する。
【0020】
ポリエーテルウレタンは、アルミニウムまたはアルミニウム含有合金に対して不十分でしかない、もしくは全く接着力を示さないことが知られている。本発明の文脈において、驚くべきことに、アルミニウム合金などの異なる材料を使用する場合でさえ、本発明の接着剤組成物を使用して非常に良好な接着効果を達成できることが見出された。
【0021】
本発明の接着剤組成物の好ましい実施形態では、NCO:OHとして表される、少なくとも1つのNCO末端化化合物の少なくとも1つのポリエーテルに対する付加比は、1.0:1~8.0:1、好ましくは1.1:1~4.0:1である。
【0022】
驚くべきことに、本発明の接着剤組成物を使用し、ポリエステルポリオールを使用せずに、通常はポリエステルポリオールのみを使用して達成される複合系を得ることができることが見出された。従って、好ましい実施形態は、本発明の接着剤組成物がポリエステルポリオールを含まない複合系である。特に好ましい実施形態において、本発明の接着剤組成物中のポリエステルポリオールの割合は、いずれの場合も無溶媒の接着剤組成物の総重量に基づいて、0.1重量%未満、好ましくは0.01重量%未満である。
【0023】
食品包装の分野で接着剤としての使用に適するためには、使用される組成物は、健康に害を及ぼす可能性のある成分をできるだけ少なくする必要がある。従来の組成物を使用する場合、イソシアネートモノマーの残留物が硬化した接着剤組成物に残る危険性があり、これらのモノマーの一部が健康に有害であると考えられている。本発明の接着剤組成物では、モノマーイソシアネートの存在は認められていない。従って、好ましい実施形態は、モノマーNCO末端化化合物の含有量がいずれの場合も前記接着剤の全重量に基づいて10.0重量%未満、好ましくは0.01~1重量%、より好ましくは0.01~0.1重量%、特に好ましくは0.1重量%未満である接着剤組成物である。さらに、硬化した場合、本発明の接着剤組成物は、モノマーNCO化合物の含有量がいずれの場合も硬化した接着剤組成物の総重量に基づいて、1重量%未満、好ましくは0.01重量%未満である。
【0024】
好ましい実施形態では、本発明の接着剤組成物中の少なくとも1つのポリエーテルの含有量が、いずれの場合も無溶媒の接着剤組成物の総重量に基づいて、1~40重量%、好ましくは2~15重量%である。
【0025】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明の接着剤組成物中の少なくとも1つのNCO末端化化合物の割合が、いずれの場合も無溶媒の接着剤組成物の総重量に基づいて1~50重量%、好ましくは20~40重量%である。
【0026】
NCO末端化化合物は、好ましくはポリイソシアネートである。ポリイソシアネートは、芳香族、脂肪族、または脂環式イソシアネートである。ポリイソシアネートは、好ましくは、1,5-ナフチルジイソシアネート、2,4-または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)および前記異性体の混合物、水和MDI(H12MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、テトラアルキレンジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,3-または1,4-フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート(TDI)の異性体、1-メチル-2,4-ジイソシアネート-シクロヘキサン、1,6-ジイソシアネート-2,2,4-トリメチルヘキサン、1,6-ジイソシアネート-2,4,4-トリメチルヘキサン、1-イソシアネートメチル-3-イソシアネート-1,5,5-トリメチルシクロヘキサン(IPDI)、リン-またはハロゲン含有ジイソシアネート、テトラメトキシブタン1,4-ジイソシアネート、ブタン1,4-ジイソシアネート、1,6-ヘキサンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、メチレントリフェニルトリイソシアネート(MIT)、1,4-ジイソシアネートブタン、1,12-ジイソシアネートドデカンおよび二量体脂肪酸ジイソシアネートからなる群から選択される。ジイソシアネートの三量体化またはオリゴマー化の結果として、またはジイソシアネートを多官能性ヒドロキシルまたはアミノ基含有化合物と反応させることによって、多官能性イソシアネートを使用することもできる。ジイソシアネートおよびそのオリゴマーが好ましく使用される。
【0027】
特に好ましい実施形態において、NCO末端化化合物は、キシリレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1-イソシアナトメチル-3-イソシアナト-1,5,5-トリメチルシクロヘキサン(IPDI)、ならびに前記化合物のポリマーおよびオリゴマー、および前記化合物の誘導体および混合物からなる群から選択される。
【0028】
本発明の接着剤組成物は、好ましくはさらに接着促進剤を含み、接着促進剤は、いずれの場合も無溶媒の組成物の総重量に基づいて、最大20重量%、特に好ましくは1~10重量%の量で含まれることが好ましい。接着促進剤は、好ましくは、アルコキシル化シランおよびその有機官能性誘導体から選択される。特に好ましくは、接着促進剤は、メトキシル化およびエトキシル化シランならびにそれらの混合物から選択される。驚くべきことに、選択された接着剤を添加することにより、需要の高い食品包装に充填剤が存在する場合でも、高接着力を有する接着剤組成物を達成することができることが見出された。
【0029】
本発明の接着剤組成物は、移行可能な環状化合物を含まないことを特徴とするので、食品産業における包装の製造に特に適している。好ましくは、本発明の接着剤組成物は、臨界移行性環を実質的に含まない。さらに好ましい実施形態では、本発明の接着剤組成物中の臨界移行性環の含有量は、いずれの場合も無溶媒の接着剤組成物の総重量または硬化した接着剤組成物の総重量に基づいて、1重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、特に好ましくは0.01重量%未満である。特に好ましい実施形態では、本発明の接着剤組成物は、硬化後であっても、臨界移行性環を含まない。
【0030】
本発明の接着剤組成物は、1成分(1K)系および2成分(2K)系の両方として使用できる。従って、好ましい実施形態では、本発明の接着剤組成物は2K系である。代替の好ましい実施形態では、本発明の接着剤組成物は1K系である。
【0031】
本発明の接着剤組成物は、特に食品包装の分野で箔状基材を接着接合するのに適している。従って、好ましい実施形態は、本発明の接着剤組成物がラミネート接着剤である実施形態である。この場合、接着剤組成物は、溶媒を含んで、もしくは溶媒を含まないで、または分散液の形態で提供され得る。
【0032】
好ましい実施形態では、本発明の接着剤組成物は、いずれの場合も無溶媒の接着剤組成物の総重量に基づいて、好ましくは0~10重量%、特に好ましくは0.5~3重量%の量の触媒をさらに含み得る。さらに好ましい実施形態では、本発明の接着剤組成物は、金属化合物を含まない。金属化合物は、従来の系では触媒としてよく使用されるが、食品包装の分野では、これらの化合物に関連する健康上の懸念があるため避けるべきである。従って、好ましい実施形態は、触媒が存在する場合アミン化合物であり、好ましくは少なくともOH官能価を有するものである。この場合、適当な化合物は、例えば、ジメチルアミノエタノール(DMEA)、2-(ジエチルアミノ)エタノール(2-DEEA)もしくは上記化合物の誘導体、N-メチルアミノエタノールまたはメチルジエタノールである。
【0033】
本発明はさらに、本発明の接着剤組成物を使用して、基材を接着接合するための方法に関する。この場合、本発明の方法は、
i) 本発明の接着剤組成物を少なくとも1つの基材に塗布するステップと、
ii) コーティングされた基材を別の基材と接触させるステップと、
iii) 塗布された接着剤組成物を硬化するステップと、
を含み、
接着剤組成物は、40~85℃、好ましくは55~65℃の温度で硬化される。
【0034】
好ましい実施形態では、基材同士がさらなる圧力下で接触する。
【0035】
本発明の接着剤組成物は、特にフレキシブル基材を接着剤で接着するのに適している。この場合、本出願の文脈内で、フレキシブル基材は、箔、シート、またはプレートなど、ある程度の弾性および柔軟性を有する基材として理解されるべきである。好ましい実施形態では、基材は、箔のような基材、特にプラスチックまたは金属箔である。代替の実施形態では、基材は、プラスチックまたは金属シート、特にアルミニウムシートである。
【0036】
フレキシブル基材を接着接合することは、当業者には日常的な事項であり、古くに確立された方法である。しかしながら、厚いフレキシブル基材、特にアルミニウム箔などの厚い金属箔を接着接合することは依然として困難である。しかしながらこれらはまさしく食品包装の分野で使用されている材料である。本発明の文脈内で、驚くべきことに、本発明の方法は、本発明の接着剤組成物との併用で、特にウェットフード包装を製造する際に使用されるような厚い金属箔を接着接合するのに適していることが見出された。従って、好ましい実施形態は、少なくとも1つの基材が、好ましくは5~240μm、特に好ましくは40~180μmの厚さを有するアルミ箔である方法である。好ましい実施形態では、アルミ箔はさらに、アルミニウム合金でできた箔であり得る。
【0037】
本発明はさらに、本発明の接着剤組成物を含むか、または本発明の方法によって得ることができる複合系(composite system)に関する。
【0038】
本発明の複合系は、接着剤組成物の硬化後、滅菌後でさえも高い接着力を特徴とする。従って、好ましい実施形態は、複合系が、7日後かつ131℃で45分間の滅菌後に、3~19N/15mm、好ましくは5~15N/15mm、特に好ましくは5~10N/15mmの接着力を有するものである。
【0039】
複合系は、好ましくは、包装、特にヒトまたは動物向け食品用の包装、特に動物向け食品用包装である。驚くべきことに、本発明の複合系は、攻撃的な内容物のために使用される系に細かい要求を出す動物向け食品用包装として使用できることが見出されている。本発明はさらに、包装、好ましくはヒトまたは動物用の食品包装、特に動物向け食品、最も具体的には動物向けウェットフードの包装を製造するための本発明の接着剤組成物の使用に関する。
【0040】
本発明はさらに、箔状基材を接着接合するための本発明の接着剤組成物の使用に関する。接着接合される少なくとも1つの基材は、好ましくはアルミ箔であり、好ましくは5~240μm、特に好ましくは40~180μmの厚さを有する。
【0041】
本発明は、以下の実施例を参照してより詳細に説明されるが、当該実施例は、本発明の概念を限定するとみなされることを意図したものではない。
【実施例】
【0042】
本発明のポリエーテルの実施例は、PPG 400、PPG 1100、イソホロンジイソシアネートおよびエチレングリコールを含む反応混合物から調製した(実施例1)。実施例2の本発明のポリエーテルは、さらに触媒として2-(ジエチルアミノ)エタノールを含む反応混合物から得た。PPG 400は、分子量400g/モルを有するポリプロピレングリコールであり、ダウからVoranol P 400の商品名で市販されている。PPG 1000は、分子量1,000g/モルを有するポリプロピレングリコールであり、ダウからVoranol P1000の商品名で市販されている。イソホロンジイソシアネートは、コベストロからDesmodur Iの商品名で市販されている。エチレングリコールは、例えばダウから市販されている。実施例1および2のポリエーテルは共に、ウレタン基密度がポリエーテル1モル当たり3.35個ウレタン基であり、21mgKOH/gのヒドロキシル価を有する。
【0043】
ポリエーテルは、いずれの場合も、NCO末端化化合物と反応させて、ラミネート接着剤を形成した。この目的のために、2.0の皮膜形成付加比NCO/OHを選択した。得られた反応性接着剤混合物を酢酸エチルで固形分が33.3%になるように希釈した。
【0044】
コーティングされる基材をA4サイズにフォーマットした。アルミニウムから成るキャリア箔を、18g/m2の希釈した反応性接着剤混合物でコーティングし、プレ複合体上に配置した。続いて、こうしてコーティングしたキャリア箔を、乾燥キャビネット内90℃で5分間乾燥し、6g/m2の乾燥コーティング重量を得た。こうして調製した複合系を、乾燥キャビネット内の金属板間に圧力(重量8kg)を加えて、60℃で硬化した。
【0045】
調製したラミネートを、実用性について試験した。この目的のために、引張試験(tension test)を行い、ラミネートを滅菌した。
【0046】
結果を表1~3にまとめている。IPDI三量体、IPDI、およびメトキシシランの混合物をNCO末端化化合物として使用した。
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
上記の表のデータから分かるように、本発明の接着剤組成物を使用して、滅菌後および強力な充填剤の存在下で保菅した場合でも接着力を維持する複合材料系を調製することができる。
【国際調査報告】