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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(54)【発明の名称】金属膜を高選択的に堆積する方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/455 20060101AFI20220119BHJP
   C23C 16/16 20060101ALI20220119BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20220119BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20220119BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20220119BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20220119BHJP
   H01L 21/283 20060101ALI20220119BHJP
   C23C 16/18 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
C23C16/455
C23C16/16
H01L21/285 C
H01L21/28 301R
H01L21/88 M
H01L21/90 K
H01L21/90 A
H01L21/283 C
C23C16/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021531326
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(85)【翻訳文提出日】2021-06-25
(86)【国際出願番号】 US2019064113
(87)【国際公開番号】W WO2020117725
(87)【国際公開日】2020-06-11
(31)【優先権主張番号】62/774,695
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(71)【出願人】
【識別番号】521234375
【氏名又は名称】ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニヴァーシティ・オブ・カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】カンジョリア・ラヴィンドラ
(72)【発明者】
【氏名】モインプール・マンスール
(72)【発明者】
【氏名】ウッドラフ・ジェイコブ
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ・スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】ブリーデン・マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ウエダ・スコット・ティー
(72)【発明者】
【氏名】キュンメル・アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】アヌラーグ・アシャイ
【テーマコード(参考)】
4K030
4M104
5F033
【Fターム(参考)】
4K030AA09
4K030AA11
4K030AA12
4K030BA01
4K030BA05
4K030BB14
4K030DA09
4K030FA10
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4K030JA10
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4M104FF27
5F033HH07
5F033HH15
5F033JJ01
5F033JJ07
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5F033QQ84
5F033RR01
5F033RR04
5F033RR06
(57)【要約】
本発明のコンセプトは、選択的金属層堆積に関する。
態様には、金属の原子層堆積(ALD)のための方法が含まれ、該方法は、a)基材を有機金属前駆体に暴露し、ここで前記基材は、金属部分及び絶縁体部分を含む表面を含み;b)有機金属前駆体を基材の金属部分の上面に堆積させて、基材の金属部分の上面に金属前駆体層を選択的に提供し;c)金属前駆体層を共反応体に暴露し;及びd)共反応体を金属前駆体層上に堆積する少なくとも一回のサイクルを含み、ここで共反応体は、金属前駆体層との配位子交換に関与する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属の原子層堆積(ALD)のための方法であって、
a)基材を有機金属前駆体に暴露し、ここで、前記基材は、金属部分及び絶縁体部分を含む表面を含み、
b)基材の金属部分の表面上に有機金属前駆体を堆積させて、基材の金属部分の表面上に金属前駆体層を選択的に提供し、
c)金属前駆体層を共反応体に暴露し、及び
d)共反応体を金属前駆体層上に堆積する、
サイクルを少なくとも一回含み、但し、共反応体が金属前駆体層との配位子交換に関与する、方法。
【請求項2】
a)、b)、c)、及びd)のサイクルが1回超行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
a)、b)、c)、及びd)の2つのサイクルの間に周期的アニーリングが行われる、請求項2に記載の方法
【請求項4】
周期的アニーリングが、有機金属前駆体がCoを含む場合は約260℃で、またはOの存在下では約250℃~約350℃で、または有機金属前駆体がRuを含む場合はOの不在下に約350℃~約400℃で行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
有機金属前駆体への基材の暴露が約1秒のパルス時間を含む、請求項1~4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
基材が、飽和供給量未満(<0.7×飽和量)の有機金属前駆体に暴露される、請求項1~5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
ステップa)の後に、約20秒~約60秒の期間、過剰な有機金属前駆体をパージすることを更に含む、請求項1~5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
共反応体が、ギ酸(HCOOH)またはtert-ブチルアミン(TBA)、または類似の有機カルボン酸または有機アミンである、請求項1~7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
有機金属前駆体がビス(1,4-ジ-tert-ブチル-1,3-ジアゼニル)コバルト[Co(DAD)]である、請求項1~8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
堆積が約160℃と約200℃との間で行われる、請求項1~9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
堆積が約180℃で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
基材が、銅(Cu)、または白金(Pt)またはコバルト(Co)またはルテニウム(Ru)を含む金属部分を含み、及び基材の金属部分上への堆積が、SiO、SiNまたはSiCOHを含む基材の絶縁部分上への堆積に対してよりも選択的である、請求項1~11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
基材の絶縁部分がSiOを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
配位子交換が気相CVDの制御を介して誘起される、請求項1~13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
金属の原子層堆積(ALD)のための方法であって、
a)基材をゼロ酸化状態の液体有機金属前駆体に暴露し、ここで前記基材は金属部分及び絶縁体部分を含む表面を含み、
b)基材の金属部分の上面にゼロ酸化状態の液体有機金属前駆体を堆積させて、基材の金属部分の上面に金属前駆体層を選択的に提供し、
c)金属前駆体層を共反応体に暴露し、及び
d)共反応体を金属前駆体層上に堆積する、
サイクルを少なくとも一回含み、但し、共反応体が、ギ酸(HCOOH)またはtert-ブチルアミン(TBA)、あるいは類似の有機カルボン酸または有機アミンである、方法。
【請求項16】
a)、b)、c)及びd)のサイクルが1回超行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
a)、b)、c)、及びd)の2つのサイクルの間で周期的アニーリングが行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
基材が、銅(Cu)または白金(Pt)を含む金属部分を含み、及び基材の金属部分上への堆積が、SiO、SiNまたはSiCOHを含む基材の絶縁部分上への堆積に対してよりも選択的である、請求項15~17のいずれか一つに記載の方法。
【請求項19】
基材の絶縁部分がSiOを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
ゼロ酸化状態の液体有機金属前駆体がη-2,3-ジメチルブタジエンルテニウムトリカルボニル[Ru(DMBD)(CO)]である、請求項15~19のいずれか一つに記載の方法。
【請求項21】
金属部分が、Cu、Pt、CoまたはRuを含み、及び共反応体がHCOOHまたはTBAである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
堆積が約160℃と約230℃との間で行われる、請求項15~21のいずれか一つに記載の方法。
【請求項23】
堆積が約215℃で行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
金属の原子層堆積(ALD)のための方法であって、
a)基材の表面を、コバルト(Co)またはルテニウム(Ru)を含む有機金属前駆体に暴露し、ここで前記基材の表面は、銅(Cu)、白金(Pt)、コバルト(Co)またはルテニウム(Ru)を含む金属部分と、SiO、SiNまたはSiCOHを含む絶縁体部分とを含み、
b)有機金属前駆体を基材の金属部分の上面に堆積させて、基材の金属部分の上面に金属前駆体層を選択的に提供し、
c)金属前駆体層を共反応体に曝露し、及び
d)共反応体を金属前駆体層上に堆積する、
サイクルを少なくとも一回含み、但し、共反応体がギ酸(HCOOH)またはtert-ブチルアミン(TBA)であり、及び堆積が約160℃と約230℃との間で行われる、方法。
【請求項25】
a)、b)、c)及びd)のサイクルが1回超行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
共反応体が金属前駆体層との配位子交換に関与する、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
有機金属前駆体がビス(1,4-ジ-tert-ブチル-1,3-ジアゼニル)コバルト[Co(DAD)]であり、共反応体がHCOOHであり、基材の金属部分がPt、Cu、CoまたはRuを含み、及び堆積が約180℃で行われる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
有機金属前駆体がビス(1,4-ジ-tert-ブチル-1,3-ジアゼニル)コバルト[Co(DAD)]であり、共反応体がTBAであり、基材の金属部分がCu、Pt、CoまたはRuを含み、及び堆積が約180℃で行われる、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
a)、b)、c)及びd)のサイクルが1回超行われ、及びa)、b)、c)及びd)の二つのサイクルの間で周期的アニールが行われる、請求項26~28のいずれか一つに記載の方法。
【請求項30】
周期的アニールが約260℃で行われる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
有機金属前駆体がη4-2,3-ジメチルブタジエンルテニウムトリカルボニル[Ru(DMBD)(CO)]であり、及び堆積が約215℃で行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
有機金属前駆体への基材の暴露が約1秒のパルス時間を含む、請求項24~31のいずれか一つに記載の方法。
【請求項33】
基材が、飽和供給量未満(<0.7×飽和量)の有機金属前駆体に暴露される、請求項24~32のいずれか一つに記載の方法。
【請求項34】
ステップa)の後に、約20秒~約60秒の期間、過剰な有機金属前駆体をパージすることを更に含む、請求項24~33のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年12月3日出願の米国仮特許出願第62/774,695号の利益を主張するものであり、その全体が引用により組み込まれる。
【0002】
[連邦支援に関する記述]
本発明は、国防総省/国防先端研究プロジェクト庁(DARPA)から授与されたグラントNo.HR0011-18-3-0004に基づく政府支援によりなされた。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本発明の分野は、半導体デバイスの製造、特に金属膜の高選択性堆積である。本発明の応用例には、ビアのボトムアップ充填、集積回路のパターン化、バリア層の施与、及び銅堆積のためのシード層の形成が含まれる。
【背景技術】
【0004】
選択的金属堆積は、ミドルオブライン(MOLまたはMEOL)及びバックエンドオブライン(BEOL)加工の両方のためのボトムアップ充填のために望ましい。成功した実装は、より大きな粒の形成及び成長を誘起し、これは、粒界を減少させ、表面粗さを減少させることによって、ビア及び配線抵抗を減少させることが期待されるであろう。加えて、ボトムアップ成長は、核形成が底面上でのみ起こるので、低誘電体(SiCOH)上の核形成層の必要性を除去する可能性を持っている。ボトムアップ成長のための重要な金属としてはコバルト及びルテニウムが挙げられる。コバルトは、Cuを酸化から保護するためにCu上のキャッピング層として用いられる他[Yang,CC.,et al.“Characterization of copper electromigration dependence on selective chemical vapor deposited cobalt capping layer thickness”(選択的な化学的蒸着コバルトキャッピング層厚に対する銅電解移動依存の特性化),IEEE Electron Device Letters 32.4(2011): 560-562)(非特許文献1)]、CoがCuよりも短い電子平均自由経路を持ちそして10nm未満のビアではCu電気メッキに問題を抱えるために、CoがCuよりも優れた導電体である考えられる10nm未満のビアにおいても使用される[Gall,Daniel,“Electron mean free path in elemental metals”(元素金属における電子平均自由経路),Journal of Applied Physics 119.8(2016):085101](非特許文献2)ために、特に重要である。
【0005】
コバルト原子層堆積(ALD)は、以前にCharles Winter及び同僚らによって報告されている。Klesko,Joseph P.、Marissa M.Kerrigan、及びCharles H.Winter,“Low Temperature Thermal Atomic Layer Deposition of Cobalt Metal Films”(コバルト金属膜の低温熱原子層堆積),Chemistry of Materials 28.3(2016):700~703(非特許文献3);Kerrigan,Marissa M.et al.,“Substrate selectivity in the low temperature atomic layer deposition of cobalt metal films from bis(1,4-di-tert-butyl-1,3-diazadienyl)cobalt and formic acid”(ビス(1,4-ジ-tert-ブチル-1,3-ジアザジエニル)コバルト及びギ酸からのコバルト金属膜の低温原子層堆積における基材選択性),The Journal of Chemical Physics 146.5(2017):052813(非特許文献4);Kerrigan,Marissa M.、Joseph P.Klesko、及びCharles H.Winter,“Low Temperature, Selective Atomic Layer Deposition of Cobalt Metal Films Using Bis(1,4-di-tert-butyl-1,3-diazadienyl)cobalt and Alkylamine Precursors”(ビス(1,4-ジ-tert-ブチル-1,3-ジアザジエニル)コバルト及びアルキルアミン前駆体を用いるコバルト金属膜の低温選択的原子層堆積),Chemistry of Materials29.17(2017): 7458~7466(非特許文献5); Winter et al.,US9,255,327(特許文献1); Winter et al.,US20180265975(特許文献2)。Winterらの研究では選択性は定量化されていない。Winterらが記述したコバルト層ALDでは、HCOOHが解離的に化学吸着して原子Hを生成し、これがCo(DAD)から配位子を除去したと結論された。他のCoALD技術も存在するが、これはしばしば高められた温度とOのような共反応体を必要とし、これらはラインプロセシングの中間工程及び後工程(MOL及びBEOL)で使用されるSiCOH(メチル終端多孔質SiO)のような低k誘電体とは不適合である。更に、MOL及びBEOLについては、選択性は、金属成長表面と絶縁体との間でナノスケールで維持しなければならない。パターン化されたサンプル/基材上では、分子状に吸着した金属前駆体が反応性表面から非反応性表面に拡散するために、同じALD条件下では選択性はしばしば制限される。そのため、特にパターン化されたサンプル上でナノスケールでの、金属膜の選択的堆積の改良された方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US9,255,327
【特許文献2】US20180265975
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Yang,CC.,et al.“Characterization of copper electromigration dependence on selective chemical vapor deposited cobalt capping layer thickness”(選択的な化学的な気体蒸着コバルトキャッピング層厚に対する銅電解移動依存の特性化),IEEE Electron Device Letters 32.4(2011): 560-562)
【非特許文献2】Gall,Daniel,“Electron mean free path in elemental metals”(元素金属における電子平均自由経路),Journal of Applied Physics 119.8(2016):085101
【非特許文献3】Klesko,Joseph P.、Marissa M.Kerrigan、及びCharles H.Winter,“Low Temperature Thermal Atomic Layer Deposition of Cobalt Metal Films”(コバルト金属膜の低温熱原子層堆積),Chemistry of Materials 28.3(2016):700~703
【非特許文献4】Kerrigan,Marissa M. et al.,“Substrate selectivity in the low temperature atomic layer deposition of cobalt metal films from bis(1,4-di-tert-butyl-1,3-diazadienyl)cobalt and formic acid”(ビス(1,4-ジ-tert-ブチル-1,3-ジアザジエニル)コバルト及びギ酸からのコバルト金属膜の低温原子層堆積における基材選択性),The Journal of Chemical Physics 146.5(2017):052813
【非特許文献5】Kerrigan,Marissa M.、Joseph P.Klesko、及びCharles H.Winter,“Low Temperature, Selective Atomic Layer Deposition of Cobalt Metal Films Using Bis (1,4-di-tert-butyl-1,3-diazadienyl)cobalt and Alkylamine Precursors”(ビス(1,4-ジ-tert-ブチル-1,3-ジアザジエニル)コバルト及びアルキルアミン前駆体を用いるコバルト金属膜の低温選択的原子層蒸着),Chemistry of Materials(2017)29.17: 7458~7466
【発明の概要】
【0008】
選択的金属堆積は、ミドルオブライン(MOLまたはMEOL)及びバックエンドオブライン(BEOL)工程の両方のためのボトムアップ充填のために望ましい。成功した実装は、より大きな粒の形成及び成長を誘起し、それは、粒界を減少させ、表面粗さを減少させることによって、ビア及び配線抵抗を減少させることが期待される。加えて、ボトムアップ成長は、核形成が底面上でのみ起こるので、低k誘電体(SiCOH)上の核形成層の必要性を排除する可能性を持っている。ボトムアップ成長のための重要な金属としてはコバルト及びルテニウムが挙げられる。コバルトは、Cuを酸化から保護するためにCu上のキャッピング層として用いられる他[Yang,C-C.,et al.“Characterization of copper electromigration dependence on selective chemical vapor deposited cobalt capping layer thickness”(選択的な化学的蒸着コバルトキャッピング層厚に対する銅電解移動依存の特性化),IEEE Electron Device Letters 32.4(2011):560-562)(非特許文献1)、CoがCuよりも短い電子平均自由経路を持ちそして10nm未満のビアではCu電気メッキに問題を抱えるために、CoがCuよりも優れた導電体である考えられる10nm未満のビアにおいても使用される[Gall,Daniel,“Electron mean free path in elemental metals”(元素金属における電子平均自由経路),Journal of Applied Physics 119.8(2016):085101](非特許文献2)ために、特に重要である。
【0009】
本発明の一つの観点によれば、金属の原子層堆積(ALD)のための方法が提供され、前記方法は、a)基材を有機金属前駆体に暴露し、但し、前記基材は金属部分と絶縁体部分とを含む表面を含み、b)有機金属前駆体を前記基材の前記金属部分の表面上に堆積させて、前記基材の前記金属部分の前記表面上に金属前駆体層を選択的に提供し、c)前記金属前駆体層を共反応体に暴露し、及びd)前記金属前駆体層上に前記共反応体を堆積するサイクルを少なくとも1回含み、但し、前記共反応体が前記金属前駆体層との配位子交換に関与する。
【0010】
本発明の他の観点の一つによれば、金属の原子層堆積(ALD)のための方法が提供され、該方法は、a)基材をゼロ酸化状態の液体有機金属前駆体に暴露し、但し、前記基材は、金属部分と絶縁体部分とを含む表面を含み、b)前記ゼロ酸化状態の液体有機金属前駆体を前記基材の前記金属部分の表面上に堆積させて、前記基材の前記金属部分の前記表面上に金属前駆体層を選択的に提供し、c)前記金属前駆体層を共反応体に暴露し、及びd)前記金属前駆体層上に前記共反応体を堆積するサイクルを少なくとも1回含み、但し、前記共反応体は、ギ酸(HCOOH)またはtert-ブチルアミン(TBA)である。他の有機酸や他の有機アミンのような類似の共反応体も働くことに注意されたい。
【0011】
本発明の別の態様によれば、金属の原子層堆積(ALD)のための方法であって、a)基材の表面を、コバルト(Co)またはルテニウム(Ru)を含む金属有機前駆体に暴露し、但し、前記基材表面は、銅(Cu)または白金(Pt)またはコバルト(Co)またはルテニウム(Ru)または他の金属を含む金属部分と、SiO、SiNまたはSiCOHを含む絶縁体部分とを含み、b)前記基材の前記金属部分の表面に有機金属前駆体を堆積して、前記基材の前記金属部分の前記表面上に金属前駆体層を選択的に提供し、c)前記金属前駆体層を共反応体に暴露し、及びd)前記共反応体を前記金属前駆体層上に堆積するサイクルを少なくとも1回含み、但し、共反応体はギ酸(HCOOH)またはtert-ブチルアミン(TBA)であり、及び堆積は約140℃と約230℃との間で行われる方法が提供される。他の有機酸、他の有機アミンのような類似の共反応体も同様に作用することに注意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】100サイクル経過後に180℃でのCo(DAD)+HCOOHの追加的な100ALDサイクルを施した、UHVアニールしたPt及びSiO基材のXPS。Pt基材の場合、XPSにおけるPt信号の損失は、厚さが10nm超の堆積コバルト膜と合致し、他方で、SiOではコバルト信号は観察されず、これは堆積が起こらなかったことを示唆し、選択性が無限大であることと合致する。
図2】SiO及びPt上でのALDサイクル前後のAFMイメージング。SiO上では変化は観察されなかったが、Pt上のCo膜は2nm未満のRMS表面粗さを有していた。
図3】180℃におけるCo(DAD)及びHCOOHの飽和研究。自己制御性曝露はALDと一致した。HCOOH供給後のCとOの増加は、ホルメートが表面に堆積したことと合致した。Co(DAD)供給後のCとOの減少及びCoの増加は、この反応について配位子交換機序を示唆した。
図4】Co2p raw XPSピーク。ギ酸供給後、より高い結合エネルギー(BE)成分が示され、ホルメートがCo表面に堆積したことと合致する。このホルメートは、Co(DAD)供給後に除去される。
図5A】Cu対SiO上のHCOOH対TBAを用いたCoALD。HCOOHを用いて基材Cu信号が減衰しなかったことはCu/CuOxのエッチングと合致した。
図5B】Cu対SiO上のHCOOH対TBAを用いたCoALD。ALDをTBAを用いて行った場合、Cuは完全に埋められ、これはエッチングされていないことと合致した。
図5C】Cu対SiO上のHCOOH対TBAを用いたCoALD。Co(DAD)+TBAの50サイクル後に4%のCoOxが観察された。250回の追加ALDサイクル後には追加的なCoOxは観察されず、超選択性と合致した。
図6】HCOOHを用いた高温堆積の場合の非選択性。
図7】温度を215℃に下げ及びHCOOHを使用した場合の強い選択性。顕著な堆積はCu上でのみ起こり、SiO上では起こらない。
図8】温度を215℃に下げ及びHCOOHを使用した場合の強い選択性。左側のAFMは、Cu上の堆積を示す(縮小図及び拡大図);電位エッチングと合致して、より大きな粒が形成した。TBAを用いて繰り返す必要がある。右側は、SiOであり、これは小さな核を示しているだけである。
図9】TBAを用いた選択的堆積。SiO及び不動態化SiO上のXPSは、Ptサンプル上の堆積と比較して、全サイクル数600後の非常に少ない堆積を示す。Pt対SiOにはほぼ20:1の選択性が見られる。
図10】Pt上に生じた平滑な膜を示すAFM。左:Pt上に生じた平滑なRu膜を示すAFM。右:AFMはSiO上に生じたRu膜を示し、XPSで見られる選択性と合致して、より多くの粒子を有するように見える。
図11】SiO及びPt上のRaw XPS Ru 3dピーク。raw XPSピークは、堆積したRuの酸化状態の更なる洞察を与える。Pt上では、酸化状態は金属Ru(279.8eVのBE)と合致し、SiO上のRuの酸化状態は酸化物(280.3eVのBE)の酸化状態とより合致する。これは、表面上に堆積を妨げる酸化物を形成することにより、選択性の機序に対する洞察を得ることを可能にする。
図12】パターン化したCu/SiO構造上で180℃でのCo(DAD)+TBAの200サイクル。Cuストリップは灰色で、SiO領域は黒色である。(左)非不動態化サンプルで200サイクル後、望ましくないCo核がCo/Cuストリップ付近に観察される。(右)不動態化サンプルでは、望ましくない核の密度は4倍低く、SiOにわたってより均一である。
図13a】パターン化したCu/SiOサンプル上で180℃でのCo(DAD)+TBAの200サイクル。Cuストリップは灰色であり、SiO領域は黒色である。ポンプアウト時間の増加は核形成密度に及ぼす影響は弱い。
図13b】パターン化したCu/SiOサンプル上で180℃でのCo(DAD)+TBAの200サイクル。Cuストリップは灰色であり、SiO領域は黒色である。各サイクルにおけるCo(DAD)の供給量は4x減少した。備考:選択的はほぼ完全であったが、全体的な成長速度は2x減少した。
図14】260℃の周期的アニールを用いた、パターン化したCu/SiOサンプル上で180℃でのCo(DAD)+TBAの200サイクル。Cuストリップは灰色であり、SiCOH領域は黒色である。(左)備考:ほぼ完全な選択性。不動態化は採用せず、5秒間のポンプアウトのみを採用し、最大成長速度及び相似(conformal)堆積を得るために飽和Co(DAD)供給量を採用した。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の前述の及び他の観点を、ここに記載の他の態様に関してより詳しく説明する。当然のことながら、本発明は、様々な形態で具現化することができ、ここに記載された態様に限定されると解釈するべきではない。むしろ、これらの態様は、本願の開示を徹底的かつ完全なものにするように、そして本発明の範囲を当業者に十分に伝えるために提供されるものである。
【0014】
本発明の詳細な説明で使用される用語は、特定の態様のみを記載することを目的としたものであり、本発明を限定することを意図したものではない。本発明の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形は、文脈上明らかに他の意味を示していない限り、複数形も含むことを意図している。加えて、本明細書で使用される場合、「及び/または」という用語は、関連して記載された項目の一つ以上の任意の及び全ての組み合わせを含み、そして「/」と略する場合もある。
【0015】
別段の定義がない限り、ここで使用される全ての技術及び化学用語は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有するものによって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0016】
本発明の態様は、基材の第一の表面または部分、例えば金属表面上に、同基材の第二の表面、例えば絶縁体表面、例えば限定はされないが基材上のSiO表面に対して優先的に金属を選択的に堆積することを可能にするALD技術を提供する。一部の態様では、金属の堆積は、例えば、絶縁体、例えばSiOまたはSiCOH(多孔質低k誘電体)に対して選択性を持って、Pt、Cu、Co、及び/またはRuのような金属上で例えばCo及びRuを用いて行い得るが、選択性をもたらすこの機構は、ギ酸もしくはtert-ブチルアミン(TBA)の共反応体または有機カルボン酸及び有機アミノのような関連する共反応体を介して、本発明の方法を他の金属前駆体に拡張することができる。一部の態様では、前記基材はパターン化されていない基材であってもよい。他の態様では、前記基材はパターン化基材であってもよい。
【0017】
本発明の態様は、例えばCo(DAD)またはRu(DMBD)(CO)金属前駆体及び2つの異なる共反応体(HCOOH及びTBA)からの、非常に選択的なCo及びRu金属堆積を提供する。一部の態様、例えばCo堆積、例えば、共反応体としてHCOOHを用いたPtまたはCu上へのCo堆積では、平坦なサンプル上での選択性が無限であることと合致してSiO上には堆積は観察されなかったが、HCOOHがCuをエッチングすることが観察された。TBAに切り替えることにより、Cuエッチングは観察されず、CoALDサイクル数に無関係にSiO上にわずか4%のCoOxを持って類似の金属Co膜が堆積した。SiO上への自己制御性堆積は、酸化物粒子の形成を介した選択性の新規な機序であり、これは超選択性をもたらす。
【0018】
本発明による方法で実行されるALDサイクルの数は、特に限定されず、わずか1サイクル、及び約2、5、10、20、30、40、50、100、150、200、300、400、500、600、700、800、900、約1,000サイクルまで、もしくはそれ以上もの多くのサイクル数、またはそれらの間の任意の数のサイクルであり得る。
【0019】
本発明の態様において、ALDによる金属の堆積は、金属前駆体層、例えば基材の金属表面または部分上の金属前駆体層と共反応体との間で起こる配位子交換を介して生じる。例えば、基材上に金属前駆体層を堆積/形成するために基材の金属表面または部分を金属前駆体、例えばCo(DAD)に暴露した後、この金属前駆体層を共反応体、例えばHCOOHに暴露してこの共反応体を金属前駆体層上に堆積させると、例えば金属前駆体層上にホルメートが生じる、すなわち共反応体が金属前駆体層との配位子交換に関与する。
【0020】
HCOOH及びTBAは、WinterらによってCo(DAD)と共に選択的CoALDを与えるものとして開示されたが、本発明によれば、CVD成分を除去して配位子交換または分子化学吸着を達成するためのポンピング、パージング及び壁温度の特定の制御のために、ALD選択性は無限大に近づきそして無限大となり、このことは、HCOOHが解離的に化学吸着されて、Co(DAD)から配位子を除去する原子Hを生成すると結論づけたWinterらによって記述されたALDとは対照的である。前記の特定の制御の重要な観点には、(a)バックグラウンドの水、他の反応性ガス及び共反応体(これらは全て非選択的CVDを誘発する虞がある)を減少させるために、例えば約1×10-6Torrのチャンバベース圧を使用すること(これは例えばターボ分子ポンプの使用により供し得る);(b)表面汚染物を減少させること(これは例えばターボ分子ポンプの使用によって供し得る);(c)CVDを誘発し得る前の1/2サイクルの残留共反応体を減少するために長いパージサイクル(例えば約15~30秒間)を使用すること;(d)絶縁体表面上の望ましくない金属堆積物を減少するために約250℃~約350℃の温度で、例えば30分間UHV高温プリアニールを使用すること;(e)各々のパルス後にチャンバ内に残る前駆体を減少するために約80℃と約100℃との間にチャンバ壁温度を制御すること;及び(f)各々の前駆体について最適化されたパルス時間を使用することが含まれる。パルス及びポンピング時間は、前駆体のためには約1秒間(パルス時間)に最適化し、これは約15秒のポンピング(ポンピング時間)で隔てた。
【0021】
一部の態様では、特にナノスケールのパターン化されたサンプルについて選択性を高めるために、比較的長いパージ時間を使用でき、例えば、基材/サンプルを有機金属前駆体に曝した後のパージ時間を約5秒から約10秒、約15秒、約20秒、約30秒、約40秒、約50秒、または更には約60秒に増加することができる。他の態様では、特に、ナノスケールのパターン化されたサンプルについて選択性を高めるために、例えば1サイクル当たりのパルス数を減少することにより有機金属前駆体の供給量を減らすことができる。一部の態様では、特にナノスケールのパターン化サンプルについて選択性を高めるために、有機金属前駆体の供給量は飽和供給量未満の量であってよい。例えば、供給量は、約0.7×飽和供給量未満、約0.6×飽和供給量未満、約0.5×飽和供給量未満、約0.4×飽和供給量未満、約0.3×飽和供給量未満、または約0.2×飽和供給供給量未満であってよい。更に、一部の態様では、ALDの2つのサイクル間の周期的アニールを行ってよく、例えば、限定されないが、例えば約10、20、50、100、150または200回のALDサイクル後に、堆積された金属のリフロー温度未満の温度(例えば、Coの場合は約260℃)で周期的アニールを行い、次いで、一回または複数回の追加的なALDサイクル、例えば約10、20、50、100、150または200回のALDサイクルを行うことにより、特にナノスケールのパターン化されたサンプルについて選択性を増大させることができる。Ruの場合、周期的なアニールは、Oが存在する場合には例えば約250℃~350℃に近い温度、またはOが存在しない場合には約350℃~約400℃に近い温度で行ってよい。
【0022】
加えて、堆積が行われる温度は選択性にとって重要であり得る。一部の態様では、Coの選択的ALDは、約160℃と約280℃との間で行ってよい。一部の態様では、Coの選択的ALDは約180℃の温度で行われる。他の態様では、Ruの選択的ALDは、約160℃と約230℃の間で行ってよい。一部の態様では、Ruの選択的ALDは約215℃±15℃で行われる。
【0023】
更に、本発明の一態様は、DAD配位子前駆体を有するほぼすべての金属に拡張可能な超選択的ALDの機序を提供する。ALDコバルト金属は、有機金属コバルト前駆体としてのビス(1,4-ジ-tert-ブチル-1,3-ジアザジエニル)コバルト(Co(DAD))と、共反応体としてのギ酸(HCOOH)またはtert-ブチルアミン(TBA)のいずれかを用いて180℃でCu、Pt及びSiO基材上に堆積した。堆積したCo膜は、イン・サイチューでのX線光電子分光法(XPS)及び原子間力顕微鏡(AFM)を用いて調査した。断面走査電子顕微鏡(SEM)及び4点プローブ測定を行って、膜厚と抵抗率をそれぞれ検査した。ゼロ酸化状態の液体前駆体としてのη-2,3-ジメチルブタジエンルテニウムトリカルボニル[Ru(DMBD)(CO)]及び再びギ酸またはTBAのいずれかを用いてALDルテニウム金属を堆積した。選択性は、金属基材(Pt及びCu)対SiO上に堆積したRu金属として再び観察された。ALDは215℃で行った。選択的ALDプロセスを介したこれらの両方の金属上への堆積は、ビア金属堆積を低下させる比較的大きな粒を有するビア金属堆積を可能にする。
【0024】
HCOOHからの選択的Co:Co(DAD)及びHCOOHを用いた180℃ALDの場合は、SiO上にではなく、導体上にCoのほぼ無限の選択的堆積が存在することが確認された。ALDは、壁温度80℃、ベース圧力1×10-6Torrでターボ分子ポンプシステムを用いて実行した。Co(DAD)前駆体は、十分な蒸気圧を達成するために150℃のボトル温度に加熱し、他方、HCOOHは室温で供給した。ALDパルス時間及びポンピング時間は、前駆体のためには1秒間に最適化し、これは、15秒のポンピングによって隔てた。
【0025】
図1は、UHVアニールしたPt対SiO上で、100回のALDサイクルに続いて更に追加的に100サイクルを行ったXPSを示す。Pt上では、厚い(>10nm)Co+0膜が堆積するが、SiO上では実質的に堆積しない。AFM画像は、CoALDサイクルの前後でSiO上では変化がないことを示し、これは核の形成がないことに合致し、他方で、Pt表面上のCoの場合の粗さは1.8nm未満のままである(図2)。ALDと合致する自己制御性前駆体曝露を実証するために、飽和検証を行い、XPSで監視した。図3は、ALDと合致して、自己制御性Co(DAD)及びHCOOH曝露を結果としてもたらす個々の追加的な半サイクル量の効果を強調している。追加的に、本検証は、該反応に関する新規な機序を明らかにした。HCOOHが解離的に化学吸着して原子Hを生成し、これがCo(DAD)からの配位子を除去すると結論されたWinterらのコバルト層ALDとは異なり、本発明のALDでは、XPSは、HCOOHは配位子を除去せず、その代わりに配位子交換プロセスを誘起することを示す。図4は、Co2pピークを示し、これは、Co(DAD)に暴露された際に除去される表面上のホルメートの存在と合致して、HCOOHが比較的高い結合エネルギー成分を残すことを示唆する。
【0026】
TBAからの選択的Co:HCOOHを用いた堆積をCu基材上で試みた(図5A);しかしながら、HCOOHによるエッチングと合致して基材Cu信号はゼロに減少せず、そのため、アルキルアミン共反応体(TBA)も検証した。180℃でのCo(DAD)+TBA ALDでは、還元されたCo金属膜が、SiOに対して超選択性を持ってCu及びPt基材上に堆積した。30nmもの厚さの膜が、基材のエッチングを伴うことなく導体上に成長した(図5B)。SiO上では、初期の50回のALDサイクル後、わずか4%のCoOxしか堆積しなかった。追加的な250回のALDサイクル後、飽和及び超選択性(すなわち、無限選択性)と合致して、なおも4%のCoOxしか存在しなかった(図5C)。TBAを用いたALDからのAFMイメージングは、Pt及びCu上の低表面粗さALDを確認し、他方で、SiO上には小さい(<5nm)CoOx粒子のみが存在した。
【0027】
RuALDについては、図6は、高温(325℃)での反応を示す。金属対絶縁体での選択性は観察されない。しかし、温度を215℃に下げると、SiO上の非常に少ない堆積量を伴って、金属上でのRu堆積の強い選択性が生じる。ALDは、壁温度80℃、ベース圧力1×10-6Torrでターボ分子ポンプシステムを用いて実行した。Ru(DMBD)(CO)前駆体を30℃のボトル温度に緩やかに加熱して十分な蒸気圧を達成し、他方、HCOOH及びTBAは、室温に保った源から再び供給した。ALDパルス時間は、前駆体のためには1秒間に設定し、これを15秒間のポンピングによって隔てた。
【0028】
表面トポグラフィを見るためにAFMを調査すると、Cu上でのRu堆積は、その堆積と合致して幾らかの比較的大きな粒を示すが、他方で、良好な選択性と合致してSiO上には僅かな核しかない(図8)。膜は理想よりも少し粗いので、前駆体を、(Coと同様に)ギ酸からTBAに切り替えた。Ru(DMBD)(CO)と共にTBAを使用した場合、選択性はXPSにおいて依然として非常に強かった。図9は、種々の基材の各々上に堆積されたRuの量を示す。図10は、SiO上への堆積と比較して、より平滑な白金サンプルに切り替えたAFM画像を示す。このAFMは、Ruの非常に平滑な膜が堆積されたことと合致して、非常に小さい表面粗さを示す。この平滑な膜は、ビア内のボトムアップ充填のための非常に良い選択肢であると期待される。図11は、Pt及びSiO基材の両方について、XPSにおけるRu3dピークのXPS化学シフトデータを示す。SiOの場合、ピーク位置は280.3eVにあり、他方、Ptの場合、ピークは279.8eVにある。これはSiO表面でのRuOx形成と非常に合致するものであり、他方で、より強く還元された(金属)RuがPt表面で形成されており、このことは、酸化された金属成分が表面上に形成することによって、還元された金属種の堆積は減少するが、RuOxが完全に酸化されないために、前駆体の吸着は完全には阻止されないことを示唆している。
【0029】
本発明の他の態様では、MOL及びBEOLに使用できるALDプロセスが提供され、この場合、金属成長表面と絶縁体との間で、すなわちパターン化された表面/基材上で、選択性がナノスケールレベルで維持される。次に、例示的な態様を以下に説明する。
【0030】
本発明の一部の態様によれば、Co(DAD)及び第三級ブチルアミン(TBA)を用いたコバルトの原子層堆積は、金属対絶縁体(SiOまたは低kSiCOH)平坦サンプル上でほぼ無限の選択性(>1000サイクル)を有する。しかしながら、パターン化されたサンプル上では、反応性表面から非反応性表面への分子吸着した金属前駆体の拡散のために、同一のALD条件下での選択性が制限される可能性がある。CoALD選択性を改善するために、パージ時間の増加、前駆体供給量の減少、及び周期的アニーリングの三つの方策が見出された。前駆体供給量を減少させることは従来の方策と考えられるかもしれないが、他の2つの方策は従来にない手法である。パージ時間の増加は、Co(DAD)前駆体にとって特に効果的である、なぜならばサンプルからの可逆的な吸着及び脱着が可能であるからであり;逆に、殆どの前駆体は急速な解離的ケミストリを受ける。周期的アニーリング技術は、いかなるシステムについても以前には報告されていない。周期的アニーリング技術は絶縁体表面から成長表面へのCo核の再吸収を可能にし、そして低温リフロープロセスと合致する。
【0031】
CoALDは、SiO上の85nm幅のCuストリップ上で180℃でCo(DAD)+TBAを用いて行った。不動態化の効果を実証するためにこれらストリップの平坦構造が使用される。というのも、トップダウンSEM画像及びXPS定量化を、絶縁体上の望ましくないCo核の成長及び存在をモニターするために使用できるからである。前駆体供給量を制御するために、最大圧力を制限するために各々のサイクルで複数回の前駆体パルスを採用した。XPSは、Coの酸化を防ぐために真空を破ることなく行われる。
【0032】
ナノスケールでの選択性の低下:Co(DAD)+TBA ALDプロセスを、SiOによって隔てられた85nm幅のCuラインを有するパターン化基材上に採用した。XPS定量化は、選択的堆積と合致するCu減衰及びSiの残存を示すが、SEMイメージングは非反応性SiO表面上のCo核を示す(図12参照)。核はCu近傍で高密度であり、ストリップから離れるにつれ先細りになる。加えて、ほぼ全ての核は同様の直径をもつ。これは、Co(DAD)前駆体がCu上のCo成長表面からSiOへ拡散し、そこでその後のTBAパルスによってCoに還元されることによって望ましくない核が形成することと合致する。パターン化されていないSiO表面上では、観察された超選択性は分子吸着の欠如と合致するが、SiO上のヒドロキシル基がCo/Cu表面の近接と組み合わさって、Co前駆体の望ましくない吸着を招き、ひいては望ましくない核形成を招き得ることが仮定される。
【0033】
これを確認するために、Cu/SiOパターン化サンプルを、気相ジメチルアミノ-ジメチル-シラザン(DMADMS)及びテトラメチル-ジシラザン(TMDS)を用いて70℃において10分間で不動態化し、そして200サイクルのCoALDを行った。図12に示されるように、望ましくない核の数は少なくとも4x減少し、そしてSiO上の核の均一性は増した。このことは、SiO上の欠陥部位が不動態化され、表面拡散経路がより長い及び金属ストライプ上により再吸着し易いCo(DAD)を残すことと合致する。
【0034】
拡散制御の2つの方法:Co(DAD)+TBA ALDは異常である。なぜならば、XPSデータが180℃でのCo(DAD)の解離的化学収着ではなく分子吸着と合致するからである。これは、Co(DAD)吸着が可逆的であることを示唆する;それ故、選択性はパージ時間を増加させることによっても改善でき、そうして、SiO上に拡散したCo(DAD)は、TBAのパルスがCo(DAD)から(DAD)配位子を除去して不可逆的吸着を誘起する前に脱着し得るものと仮定された。図13aに示すように、パージ時間を5秒から20秒に増加させると、Co(DAD)拡散及び可逆的吸着と合致して望ましくない核の密度は減少したが、その効果は不動態化の効果よりも劇的ではない。
【0035】
Co(DAD)はCo金属成長表面に強く吸着し易いが、各々のALDサイクルの間は、飽和を保証するために過剰のCo(DAD)が使用されるため、成長表面はCo(DAD)供給の終了時には金属Coとならない。成長表面が一旦Co(DAD)で飽和された後は、Co(DAD)の更なる供給はSiOへの拡散を招くであろうと仮定された。これを試験するために、1サイクル当たりのパルス数を減らすことにより、より少ないCo(DAD)供給量を採用した。図13bに示すように、これは、SiO上の望ましくない核の数を減らすのに非常に効果的であったが、成長速度も低下させた。これらの結果は、ナノスケールでの選択性の損失は表面前駆体拡散によることを確認するものである。
【0036】
ナノリフローによる望ましくない核の除去:選択性を改善する第3の方法を試験した;各100CoALDサイクル後、260℃までのアニールを行った;これは通常のCoリフロー温度より約100℃低い。しかしながら、単純なOstwald熟成モデルによれば、小さな核からの原子は大きな核からの原子よりも容易に拡散することができる;従って、核が小さい時にサンプルをアニールすることによって、核からCo/CuストリップへのCo拡散を誘起することが可能であるかもしれない。図14に示すように、周期的なアニーリングは、不動態化を行わずに、Cu/SiOパターン上でほぼ完全な選択性をもたらした。この技術は、リフローのためのより低い温度を可能にして、通常採用されるCoとSiCOHとの間の拡散障壁の除去を潜在的に可能にするという追加的な利点を有する。Coに対する選択性を高め、高温リフローの必要性を低減するこの方法は、他の選択的CoALD及びCVDプロセスにも有用であり得ることに留意されたい。この方法並びに他の2つの方法(パージ時間の増加及び金属供給量の減少)は、ナノスケールでの選択性の増加に及びRu(DMBD)(CO)+HCOOHまたはTBAのRuALDプロセスにも効果的であり得ることに留意されたい。Ruリフローの場合は、RuOxが所与の温度でRuよりも速く拡散する可能性があるため、Oを供給する間にアニーリングしてもよいかもしれないことに留意されたい。
【0037】
本発明の特定の態様を示し及び説明したが、他の変更、置換及び代替は、当業者には明らかであることが理解されるであろう。このような変更、置換及び代替は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく行うことができ、添付の請求の範囲から判断されるべきものである。
【0038】
本発明の種々の特徴は、添付の特許請求の範囲に記載されている。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13a
図13b
図14
【国際調査報告】