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特表2022-510815基板洗浄液、これを用いる洗浄された基板の製造方法およびデバイスの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-28
(54)【発明の名称】基板洗浄液、これを用いる洗浄された基板の製造方法およびデバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20220121BHJP
   C11D 7/50 20060101ALI20220121BHJP
   C11D 7/22 20060101ALI20220121BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
H01L21/304 643A
H01L21/304 651B
C11D7/50
C11D7/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021527970
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(85)【翻訳文提出日】2021-05-19
(86)【国際出願番号】 EP2019084873
(87)【国際公開番号】W WO2020120667
(87)【国際公開日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】P 2018234040
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】絹田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】長原 達郎
(72)【発明者】
【氏名】堀場 優子
【テーマコード(参考)】
4H003
5F157
【Fターム(参考)】
4H003BA12
4H003DA05
4H003DA09
4H003EB04
4H003EB29
4H003EB30
4H003EB32
4H003EB33
4H003FA34
5F157AA22
5F157AA28
5F157AA30
5F157AA34
5F157AA36
5F157AB02
5F157AB33
5F157AB90
5F157AC01
5F157AC26
5F157BC03
5F157BC04
5F157BC05
5F157BC13
5F157BF02
5F157BF22
5F157BF32
5F157BF33
5F157BF34
5F157BF45
5F157BF48
5F157BF52
5F157BF55
5F157BF56
5F157BF58
5F157BF59
5F157BF60
5F157CB13
5F157CB14
5F157CB32
5F157CE07
5F157DB03
5F157DB51
(57)【要約】
【課題】基板を洗浄し、パーティクルを除去し得る基板洗浄液を得ること。
【解決手段】本発明は、(A)不溶または難溶の溶質、(B)可溶の溶質、および(C)溶媒を含んでなる基板洗浄液である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)不溶または難溶の溶質、(B)可溶の溶質、および(C)溶媒を含んでなる基板洗浄液;
ここで、基板洗浄液は、基板上に滴下され、乾燥されることで(C)溶媒が除去され、(A)不溶または難溶の溶質が膜化され、(B)可溶の溶質と共に膜として基板上に残され、
その後に除去液によって前記膜が基板上から除去されることを特徴とする;
好ましくは、(A)不溶または難溶の溶質は、除去液に不溶性または難溶性であり;
好ましくは、(B)可溶の溶質は、除去液に可溶性である。
【請求項2】
(C)溶媒が有機溶媒を含んでなる請求項1に記載の基板洗浄液;
好ましくは(C)溶媒は揮発性を有し;
好ましくは(C)溶媒は1気圧における沸点が、50~250℃である。
【請求項3】
(A)不溶または難溶の溶質が、ノボラック、ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸誘導体、ポリマレイン酸誘導体、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール誘導体、ポリメタクリル酸誘導体、およびこれらの組合せの共重合体、の少なくとも1つを含んでなる請求項1または2に記載の基板洗浄液;
好ましくは、(A)不溶または難溶の溶質はフッ素および/またはケイ素を含有しない。
【請求項4】
(B)可溶の溶質が(B’)クラック促進成分であり、(B’)クラック促進成分は、炭化水素を含んでなり、さらにヒドロキシ基および/またはカルボニル基を含んでなる、請求項1~3の少なくともいずれか一項に記載の基板洗浄液。
【請求項5】
(B)可溶の溶質が、下記(B-1)、(B-2)および(B-3)の少なくともいずれか1つで表される請求項1~4の少なくともいずれか一項に記載の基板洗浄液;
(B-1)下記式(B-1)’を構成単位として1~6つ含んでなり、各構成単位が連結基Lで結合される化合物、
【化1】
ここで、Lは単結合、およびC1~6アルキレンの少なくとも1つから選ばれる
CyはC5~30の炭化水素環であり、Rはそれぞれ独立にC1~5のアルキルであり、
b1は1、2または3であり、nb1’は0、1、2、3または4である;
【化2】
ここで、R21、R22、R23、およびR24は、それぞれ独立に水素またはC1~5のアルキルであり、
21およびL22は、それぞれ独立に、C1~20のアルキレン、C1~20のシクロアルキレン、C2~4のアルケニレン、C2~4のアルキニレン、またはC6~20のアリーレンであり、これらの基はC1~5アルキルまたはヒドロキシで置換されていてもよく、
b2は0、1または2である;
(B-3)下記式(B-3)’で表される構成単位を含んでなり、重量平均分子量(Mw)が500~10,000であるポリマー
【化3】
ここで、R25は-H、-CH、または-COOHである。
【請求項6】
(A)不溶または難溶の溶質の5.0質量%アンモニア水に対する溶解性が100ppm未満であり、(B)可溶の溶質の5.0質量%アンモニア水に対する溶解性が100ppm以上である請求項1~5の少なくともいずれか一項に記載の基板洗浄液;
好ましくは、溶解性は20~35℃(さらに好ましくは25±2℃)の条件において、フラスコに前記(A)または(B)を5.0質量%アンモニア水に100ppm添加し、蓋をし、振とう器で3時間振とうすることで、(A)または(B)が溶解したかで求める。
【請求項7】
基板洗浄液の全質量と比較して、(A)不溶または難溶の溶質の質量が0.1~50質量%である請求項1~6の少なくともいずれか一項に記載の基板洗浄液;
好ましくは、(A)不溶または難溶の溶質の質量と比較して、(B)可溶の溶質の質量が1~100質量%であり、
好ましくは、基板洗浄液の全質量と比較して、(C)溶媒の質量が0.1~99.9質量%である。
【請求項8】
(A)不溶または難溶の溶質の重量平均分子量(Mw)が150~500,000であることを特徴とする請求項1~7の少なくともいずれか一項に記載の基板洗浄液;
好ましくは、(B)可溶の溶質が分子量80~10,000である。
【請求項9】
(D)その他の添加物をさらに含んでなる、請求項1~8の少なくともいずれか一項に記載の基板洗浄液;
ここで、(D)その他の添加物は、界面活性剤、酸、塩基、抗菌剤、殺菌剤、防腐剤、または抗真菌剤を含んでなり、
好ましくは、(A)不溶または難溶の溶質の質量と比較して、(D)その他の添加物の質量が0~100質量%(さらに好ましくは、0~10質量%)である。
【請求項10】
下記工程を含んでなる洗浄された基板の製造方法;
(1)基板上に請求項1~9の少なくとも一項に記載の基板洗浄液を滴下する;
(2)前記基板洗浄液中の(C)溶媒を除去し、(A)不溶または難溶の溶質を膜化させ、(B)可溶の溶質と共に基板上に膜として残す;
(3)前記膜に基板上のパーティクルを保持させる;
(4)前記基板上に除去液を供給し、パーティクルが保持された前記膜を除去する。
【請求項11】
前記(1)に記載の基板が、非加工基板または被加工基板であることを特徴とする請求項10に記載の洗浄された基板の製造方法;
好ましくは、基板の表面は半導体であり、
好ましくは、基板の表面はSi、Ge、SiGe、Si、TaN、SiO、TiO、Al、SiON、HfO、T、HfSiO、Y、GaN、TiN、TaN、Si、NbN、Cu、Ta、W、Hf、およびAlからなる群から選ばれる。
【請求項12】
下記工程の少なくとも1つをさらに含んでなる、請求項10または11に記載の洗浄された基板の製造方法;
(0-1)エッチングにより基板にパターンを加工し、エッチングマスクを除去する;
(0-2)基板を洗浄する;
(0-3)基板をプリウェットする;
(0-4)基板を洗浄する;
(5)パーティクルが保持された膜が除去された基板に有機溶媒を滴下し、前記有機溶媒を除去することで、基板をさらに洗浄する。
【請求項13】
前記(2)の工程が、基板のスピンドライによって行われる請求項10~12の少なくともいずれか一項に記載の洗浄された基板の製造方法;
好ましくは、スピンドライは500~3,000rpm、0.5~90秒で行われる;
好ましくは、基板は直径200~600mmの円盤状の基板である。
【請求項14】
請求項10~13の少なくともいずれか一項に記載の洗浄された基板の製造方法を含んでなるデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を洗浄する基板洗浄液、これを用いた基板の洗浄方法に関する。
【0002】
従来より基板の製造工程は、例えばリソグラフィー工程等により異物が発生することがある。そこで、基板の製造工程は基板上からパーティクルを除去する洗浄工程を含むことがある。洗浄工程では、脱イオン水(DIW)等の洗浄液を基板に供給し物理的にパーティクルを除去する方法、薬液により化学的にパーティクルを除去する方法、等の方法が存在する。しかし、パターンが微細化かつ複雑化すると、パターンは物理的または化学的なダメージを受けやすくなる。
【0003】
その他にも、基板の洗浄工程として、基板上に膜を形成してパーティクルを除去する方法が存在する。
特許文献1は、剥離液に対する親和性と溶解速度を得るために、フッ素を必須とする特殊な部分構造を有する重合体を用いて膜を形成する基板洗浄用組成物を検討する。
特許文献2は、処理液を基板上で固化または硬化させて形成した膜を除去液で全て溶解させて除去する基板洗浄装置について検討する。
特許文献3は、パーティクル保持層に残る溶媒を除去液に溶解させることで、膜(パーティクル保持層)を基板から除去する基板洗浄装置について検討する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-34006
【特許文献2】特開2014-197717
【特許文献3】特開2018-110220
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者らは基板上に膜を形成してパーティクルを除去する技術において、いまだ改良が求められる1または複数の課題が存在すると考えた。それらは例えば以下が挙げられる;パーティクルの除去が不充分である;膜が均一に形成されず、パーティクルが残る;形成された膜が基板から剥がれない;形成された膜が十分に除去されず、ゴミになる;フッ素等を有する材料を用いようとすると、合成が複雑化する;形成された膜が剥がれるきっかけとなる部分が膜中に存在しない;膜が完全に溶解されることで、保持されたパーティクルが脱離し基板に再付着する;膜中に有機溶媒を残すためのプロセス制御が必要となる。
本発明は上述のような技術背景に基づいてなされたものであり、基板洗浄液を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による基板洗浄液は、(A)不溶または難溶の溶質、(B)可溶の溶質、および(C)溶媒を含んでなる。ここで、基板洗浄液は、基板上に滴下され、乾燥されることで(C)溶媒が除去され、(A)不溶または難溶の溶質が膜化され、(B)可溶の溶質と共に膜として基板上に残され、その後に除去液によって前記膜が基板上から除去されることを特徴とする。好ましくは、(A)不溶または難溶の溶質は、除去液に不溶性または難溶性である。また、好ましくは、(B)可溶の溶質は、除去液に可溶性である。
【0007】
また、本発明は以下の工程を含んでなる洗浄された基板の製造方法を提供する。(1)基板上に本発明の基板洗浄液を滴下する;(2)前記基板洗浄液中の(C)溶媒を除去し、(A)不溶または難溶の溶質を膜化させ、(B)可溶の溶質と共に基板上に膜として残す;(3)前記膜に基板上のパーティクルを保持させる;(4)前記基板上に除去液を供給し、パーティクルが保持された前記膜を除去する。
【0008】
また、本発明は本発明の洗浄された基板の製造方法を含んでなるデバイスの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の基板洗浄液を用いることで、以下の1または複数の効果を望むことが可能である。充分なパーティクルの除去を可能にする;膜を均一に形成することが可能であり、パーティクルの残存量を減らすことが可能である;形成された膜を基板から充分に剥がし、除去することが可能である;合成が複雑なフッ素等を有する材料を用いる必要がない;剥がれるきっかけとなる部分が膜中にあるため、膜を充分に除去することが可能である;除去するために膜の大部分を溶解する必要性がないため、保持されたパーティクルの脱離を防ぐことが可能である;膜中に有機溶媒を残すためのプロセス制御を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、この発明に係る基板の洗浄における基板表面の様子を模式的に説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記の概略および下記の詳細は本願発明を説明するためのものであり、請求された発明を制限するためのものではない。
【0012】
本明細書において、特に限定されて言及されない限り、単数形は複数形を含み、「1つの」や「その」は「少なくとも1つ」を意味する。本明細書において、特に言及されない限り、ある概念の要素は複数種によって発現されることが可能であり、その量(例えば質量%やモル%)が記載された場合、その量はそれら複数種の和を意味する。
「および/または」は要素の全ての組み合わせを含み、また単体での使用も含む。
本明細書において、「~」または「-」を用いて数値範囲を示した場合、特に限定されて言及されない限り、これらは両方の端点を含み、単位は共通する。例えば、5~25モル%は、5モル%以上25モル%以下を意味する。
本明細書において、「Cx~y」、「C~C」および「C」などの記載は、分子または置換基中の炭素の数を意味する。例えば、C1~6アルキルは、1以上6以下の炭素を有するアルキル鎖(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等)を意味する。
本明細書において、ポリマーが複数種類の繰り返し単位を有する場合、これらの繰り返し単位は共重合する。特に限定されて言及されない限り、これら共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、またはこれらの混在のいずれであってもよい。ポリマーや樹脂を構造式で示す際、括弧に併記されるnやm等は繰り返し数を示す。
本明細書において、特に限定されて言及されない限り、温度の単位は摂氏(Celsius)を使用する。例えば、20度とは摂氏20度を意味する。
【0013】
<基板洗浄液>
本発明による基板洗浄液は(A)不溶または難溶の溶質、(B)可溶の溶質、および(C)溶媒を含んでなる。ここで、本発明の基板洗浄液は、基板上に滴下され、乾燥されることで(C)溶媒が除去され、(A)不溶または難溶の溶質が膜化され、(B)可溶の溶質と共に膜として基板上に残され、その後に除去液によって前記膜が基板上から除去されることを特徴とする。好ましくは、(A)不溶または難溶の溶質は、除去液に不溶性または難溶性である。また、好ましくは、(B)可溶の溶質は、除去液に可溶性である。上記「溶質」とは(C)溶媒に溶解している状態に限定されず、懸濁状態も許容される。本発明の好適な一態様として、基板洗浄液に含まれる溶質、成分および添加物は(C)溶媒に溶解する。この態様をとる基板洗浄液は、埋め込み性能または膜の均一性が良いと考えられる。
ここで、好適には「共に膜として」とは1つの膜中に共存する状態となることであり、それぞれが別の層を作ることではない。「膜化」の一態様は、「固化」である。なお、基板洗浄液から得られる膜はパーティクルを保持できる程度の固さを有していればよく、(C)溶媒が完全に除去(例えば気化による)される必要はない。前記基板洗浄液は(C)溶媒の揮発に伴って徐々に収縮しながら膜となる。前記「膜として基板上に残され」とは、全体と比してごく少量が除去(例:蒸発、揮発)されることは許容される。例えば、元の量と比して0~10質量%(好ましくは0~5質量%、より好ましくは0~3質量%、さらに好ましくは0~1質量%、よりさらに好ましくは0~0.5質量%)が除去されることは許容される。
権利範囲を限定する意図はなく、理論に拘束されないが、前記の膜が基板上のパーティクルを保持し、後述の除去液によって剥がされることで除去されると考えられる。また、前記膜に(B)可溶の溶質が残るため、前記膜が剥がれるきっかけとなる部分が生じると考えられる。
【0014】
<不溶または難溶の溶質>
本発明による基板洗浄液は(A)不溶または難溶の溶質を含んでなる。
(A)不溶または難溶の溶質は、ノボラック、ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸誘導体、ポリマレイン酸誘導体、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール誘導体、ポリメタクリル酸誘導体、およびこれらの組合せの共重合体、の少なくとも1つを含んでなる。好ましくは、(A)不溶または難溶の溶質は、ノボラック、ポリヒドロキシスチレン、ポリアクリル酸誘導体、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸誘導体、およびこれらの組合せの共重合体、の少なくとも1つを含んでなる。さらに好ましくは、(A)不溶または難溶の溶質は、ノボラック、ポリヒドロキシスチレン、ポリカーボネート、およびこれらの組合せの共重合体、の少なくとも1つを含んでなる。ノボラックはフェノールノボラックであっても良い。
言うまでもないが、本発明による基板洗浄液は(A)不溶または難溶の溶質として、上記の好適例を1または2以上組み合わせて含んでも良い。例えば、(A)不溶または難溶の溶質はノボラックとポリヒドロキシスチレンの双方を含んでも良い。
(A)不溶または難溶の溶質は乾燥されることで膜化し、前記膜は後述の除去液で大部分が溶解されることなくパーティクルを保持したまま剥がされることが、本発明の好適な一態様である。なお、除去液によって(A)不溶または難溶の溶質のごく一部が溶解される態様は許容される。
好ましくは、(A)不溶または難溶の溶質はフッ素および/またはケイ素を含有せず、より好ましくは双方を含有しない。
前記共重合はランダム共重合、ブロック共重合が好ましい。
【0015】
本発明を限定する意図はないが、(A)不溶または難溶の溶質の具体例として以下が挙げられる。
【化1】
(A)不溶または難溶の溶質の重量平均分子量(Mw)は好ましくは150~500,000であり、より好ましくは300~300,000であり、さらに好ましくは500~100,000であり、よりさらに好ましくは1,000~50,000である。
【0016】
(A)不溶または難溶の溶質は合成することで入手可能である。また、購入することもできる。購入する場合、例として供給先は以下が挙げられる。本発明の効果を奏するように、供給先が(A)不溶または難溶の溶質を合成することも可能である。
ノボラック:昭和化成(株)、旭有機材(株)、群栄化学工業(株)、住友ベークライト(株)
ポリヒドロキシスチレン:日本曹達(株)、丸善石油化学(株)、東邦化学工業(株)
ポリアクリル酸誘導体:(株)日本触媒
ポリカーボネート:シグマアルドリッチ
ポリメタクリル酸誘導体:シグマアルドリッチ
【0017】
本発明の一態様として、基板洗浄液の全質量と比較して、(A)不溶または難溶の溶質が0.1~50質量%であり、好ましくは0.5~30質量%であり、より好ましくは1~20質量%であり、さらに好ましくは1~10質量%である。つまり、基板洗浄液の全質量を100質量%とし、これを基準として(A)不溶または難溶の溶質が0.1~50質量%であることが本発明の一態様である。すなわち、「と比較して」は「を基準として」と言い換えることが可能である。特に言及しない限り、本明細書において同様である。
【0018】
溶解性は公知の方法で評価することができる。例えば、20~35℃(さらに好ましくは25±2℃)の条件において、フラスコに前記(A)または後述の(B)を5.0質量%アンモニア水に100ppm添加し、蓋をし、振とう器で3時間振とうすることで、(A)または(B)が溶解したかで求めることができる。振とうは攪拌であっても良い。溶解は目視で判断することもできる。溶解しなければ溶解性100ppm未満、溶解すれば溶解性100ppm以上とする。本明細書において、溶解性が100ppm未満は不溶または難溶、溶解性が100ppm以上は可溶とする。本明細書において広義には、可溶は微溶を含む。本明細書において、不溶、難溶、可溶の順で溶解性が高くなる。本明細書において狭義には、微溶は可溶よりも溶解性が低く、難溶よりも溶解性が高い。
前記5.0質量%アンモニア水を後のプロセスで使用する除去液(後述する)に変更しても良い。溶解性の評価で用いる液と除去液は同じものである必要はなく、溶解性が異なる成分が共に存在することが本発明の効果を奏するための1つのポイントと考えられる。本発明の好適な態様として、基板洗浄液から形成された膜に存在する(B)可溶の溶質が除去液によって溶けだすことで、膜が剥がれるきっかけを与える態様が挙げられる。よって、除去液によって(B)可溶の溶質の一部が溶けることができれば、本発明の効果を期待できると考えられる。そのため、例えば除去液は溶解性の評価で用いる液よりアルカリ性が弱くても、本発明の効果を発揮すると考えられる。
【0019】
<可溶の溶質>
本発明による基板洗浄液は(B)可溶の溶質を含んでなる。好適には、(B)可溶の溶質は(B’)クラック促進成分であり、(B’)クラック促進成分は、炭化水素を含んでなり、さらにヒドロキシ基(-OH)および/またはカルボニル基(-C(=O)-)を含んでなる。(B’)クラック促進成分がポリマーである場合、構成単位の1種が1単位ごとに炭化水素を含んでなり、さらにヒドロキシ基および/またはカルボニル基を有する。カルボニル基とは、カルボン酸(-COOH)、アルデヒド、ケトン、エステル、アミド、エノンが挙げられ、カルボン酸が好ましい。
権利範囲を限定する意図はなく、理論に拘束されないが、基板洗浄液が乾燥され基板上に膜を形成し、除去液が前記膜を剥離する際に(B)可溶の溶質が膜が剥がれるきっかけとなる部分を生むと考えられる。このために、(B)可溶の溶質は除去液に対する溶解性が、(A)不溶または難溶の溶質よりも高いものであることが好ましい。(B’)クラック促進成分がカルボニル基としてケトンを含む態様として環形の炭化水素が挙げられる。具体例として、1,2-シクロヘキサンジオンや1,3-シクロヘキサンジオンが挙げられる。
【0020】
より具体的な態様として、(B)可溶の溶質は、下記(B-1)、(B-2)および(B-3)の少なくともいずれか1つで表される。
(B-1)は下記式(B-1)’を構成単位として1~6つ含んでなり(好適には1~4つ)、各構成単位が連結基Lで結合される化合物である。
【化2】
ここで、Lは単結合、およびC1~6アルキレンの少なくとも1つから選ばれる。前記C1~6アルキレンはリンカーとして構成単位を連結し、2価の基に限定されない。好ましくは2~4価である。前記C1~6アルキレンは直鎖、分岐のいずれであっても良い。L1は単結合、メチレン、エチレン、またはプロピレンであることが好ましい。
CyはC5~30の炭化水素環であり、好ましくはフェニル、シクロヘキサンまたはナフチルであり、より好ましくはフェニルである。好適な態様として、リンカーLは複数のCyを連結する。
はそれぞれ独立にC1~5アルキルであり、好ましくはメチル、エチル、プロピル、またはブチルである。前記C1~5アルキルは直鎖、分岐のいずれであっても良い。
b1は1、2または3であり、好ましくは1または2であり、より好ましくは1である。
b1’は0、1、2、3または4であり、好ましくは0、1または2である。
本発明を限定する意図はないが、(B-1)の好適例として、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’-メチレンビス(4-メチルフェノール)、2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール、1,3-シクロヘキサンジオール、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,6-ナフタレンジオール、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、が挙げられる。これらは、重合や縮合によって得てもよい。
一例として2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノールを取り上げ説明する。同化合物は(B-1)において、(B-1)’構成単位を3つ有し、構成単位はL(メチレン)で結合される。nb1=nb1’=1であり、Rはメチルである。
【化3】
【0021】
(B-2)は下記式で表される。
【化4】
21、R22、R23、およびR24は、それぞれ独立に水素またはC1~5のアルキルであり、好ましくは水素、メチル、エチル、t-ブチル、またはイソプロピルであり、より好ましくは水素、メチル、またはエチルであり、さらに好ましくはメチルまたはエチルである。
21およびL22は、それぞれ独立に、C1~20のアルキレン、C1~20のシクロアルキレン、C2~4のアルケニレン、C2~4のアルキニレン、またはC6~20のアリーレンである。これらの基はC1~5アルキルまたはヒドロキシで置換されていてもよい。ここで、アルケニレンとは、1以上の二重結合を有する二価の炭化水素を意味し、アルキニレンとは、1以上の三重結合を有する二価の炭化水素基を意味するものとする。L21およびL22は、好ましくはC2~4のアルキレン、アセチレン(Cのアルキニレン)またはフェニレンであり、より好ましくはC2~4のアルキレンまたはアセチレンであり、さらに好ましくはアセチレンである。
b2は0、1または2であり、好ましくは0または1、より好ましくは0である。
本発明を限定する意図はないが、(B-2)の好適例として、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、が挙げられる。別の一形態として、3-ヘキシン-2,5-ジオール、1,4-ブチンジオール、2,4-ヘキサジイン-1,6-ジオール、1,4-ブタンジオール、シス-1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、1,4-ベンゼンジメタノールも(B-2)の好適例として挙げられる。
【0022】
(B-3)は下記式(B-3)’で表される構成単位を含んでなり、重量平均分子量(Mw)が500~10,000のポリマーである。Mwは、好ましくは600~5,000であり、より好ましくは700~3,000である。
【化5】
ここで、R25は-H、-CH、または-COOHであり、好ましくは-H、または-COOHである。1つの(B-3)ポリマーが、それぞれ(B-3)’で表される2種以上の構成単位を含んでなることも許容される。
本発明を限定する意図はないが、(B-3)ポリマーの好適例として、アクリル酸、マレイン酸、アクリル酸、またはこれらの組合せの重合体が挙げられる。ポリアクリル酸、マレイン酸アクリル酸コポリマーがさらに好適な例である。
共重合の場合、好適にはランダム共重合またはブロック共重合であり、より好適にはランダム共重合である。
一例として、以下のマレイン酸アクリル酸コポリマーを挙げて説明する。同コポリマーは(B-3)に含まれ、2種の(B-3)’構成単位を有し、1の構成単位においてR25は-Hであり、別の構成単位においてR25は-COOHである。
【化6】
【0023】
言うまでもないが、本発明による基板洗浄液は(B)可溶の溶質として、上記の好適例を1または2以上組み合わせて含んでも良い。例えば、(B)可溶の溶質は2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンと3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオールの双方を含んでも良い。
本発明の一形態として、(B)可溶の溶質は分子量80~10,000であり、好ましくは分子量90~5000であり、より好ましくは100~3000である。(B)可溶の溶質が樹脂、重合体またはポリマーの場合、分子量は重量平均分子量(Mw)で表す。
(B)可溶の溶質は合成しても購入しても入手することが可能である。供給先としては、シグマアルドリッチ、東京化成工業、日本触媒が挙げられる。
【0024】
本発明の一態様として、基板洗浄液中の(A)不溶または難溶の溶質の質量と比較して、(B)可溶の溶質は、好ましくは1~100質量%であり、より好ましくは1~50質量%であり、さらに好ましくは1~30質量%である。
【0025】
<溶媒>
本発明による基板洗浄液は、(C)溶媒を含んでなる。(C)溶媒は有機溶媒を含んでなることが好ましい。本発明の一形態として、(C)溶媒は揮発性を有する。揮発性を有するとは水と比較して揮発性が高いことを意味する。例えば、(C)溶媒は1気圧における沸点が、50~250℃であることが好ましく、50~200℃であることがより好ましく、60~170℃であることがさらに好ましく、70~150℃であることがよりさらに好ましい。(C)溶媒は、少量の純水を含むことも許容される。(C)溶媒に含まれる純水は、(C)溶媒全体と比較して、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、よりさらに好ましくは5質量%以下である。純水を含まない(0質量%)ことも、本発明の好適な一形態である。本明細書において純水とは、好適にはDIWである。
【0026】
有機溶媒としては、イソプロパノール(IPA)等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)等の乳酸エステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類、γ-ブチロラクトン等のラクトン類等を挙げることができる。これらの有機溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
好ましい一態様として、(C)溶媒が含む有機溶媒は、IPA、PGME、PGEE、EL、PGMEA、これらのいかなる組合せから選ばれる。有機溶媒が2種の組合せである場合、その体積比は、好ましくは20:80~80:20であり、より好ましくは30:70~70:30である。
【0027】
本発明の一態様として、基板洗浄液の全質量と比較して、(C)溶媒は0.1~99.9質量%であり、好ましくは50~99.9質量%であり、より好ましくは75~99.5質量%であり、さらに好ましくは80~99質量%であり、よりさらに好ましくは85~99質量%である。
【0028】
<アルカリ成分>
本発明による基板洗浄液は、さらにアルカリ成分を含んでも良い。本発明の一形態として、アルカリ成分は第一級アミン、第二級アミン、第三級アミンおよび第四級アンモニウム塩(好適には第一級アミン、第二級アミンおよび第三級アミン)の少なくとも1つを含んでなり、アルカリ成分は炭化水素を含んでなる。好適な一態様として、基板洗浄液から形成された膜にアルカリ成分が残り、除去液が前記膜を剥離する際にアルカリ成分が除去液に溶けだす。そのために、アルカリ成分の1気圧における沸点が、20~400℃であることが好適であり、115~350℃であることがより好適であり、200~350℃あることがよりさらに好適である。
本発明の基板洗浄液にアルカリ成分を加えることにより、除去液にpHの高い液を使わなくても、膜を除去できるようになることが期待される。例えば除去液に純水や弱酸性の液を使用できると期待される。同時に、基板へのダメージを低減することも期待される。
【0029】
本発明を限定する意図はないが、アルカリ成分の好適例として、N-ベンジルエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2-(ブチルアミノ)エタノール、2-アニリノエタノール、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ヘキサメチレンテトラミン、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン、1,4,7,10,13,16-ヘキサアザシクロオクタデカンが挙げられる。
アルカリ成分の分子量は、好適には50~500であり、より好適には80~300である。
アルカリ成分は合成することでも、購入することでも入手可能である。供給先として、シグマアルドリッチ、東京化成工業が挙げられる。
本発明の一態様として、基板洗浄液中の(A)不溶または難溶の溶質の質量と比較して、アルカリ成分は、好ましくは1~100質量%であり、より好ましくは1~50質量%であり、さらに好ましくは1~30質量%である。
【0030】
<その他の添加物>
本発明の基板洗浄液は、(D)その他の添加物をさらに含んでも良い。本発明の一態様として、(D)その他の添加物は、界面活性剤、酸、塩基、抗菌剤、殺菌剤、防腐剤、または抗真菌剤を含んでなり(好ましくは、界面活性剤)、これらのいずれの組合せを含んでも良い。
本発明の一態様として、基板洗浄液中の(A)不溶または難溶の溶質の質量と比較して、(D)その他の添加物(複数の場合、その和)は、0~100質量(好ましくは0~10質量%、より好ましくは0~5質量%、さらに好ましくは0~3質量%、よりさらに好ましくは0~1質量%)である。基板洗浄液が(D)その他の添加剤を含まない(0質量%)ことも、本発明の態様の一つである。
【0031】
<除去液>
先述の通り、本発明の基板洗浄液は、基板上に滴下され、乾燥されることで(C)溶媒が除去され、(A)不溶または難溶の溶質が膜化され、(B)可溶の溶質と共に膜として基板上に残され、その後に除去液によって前記膜が基板上から除去されることを特徴とする。前記膜は基板上に存在するパーティクルを保持することが可能であり、保持したまま除去液によって除去されることが、本発明の好適な一態様である。
除去液はアルカリ性、中性または酸性のいずれでもあっても良いが、アルカリ性であることが好ましい。本発明の一態様として、除去液のpHは7~13である(好ましくはpH8~13、より好ましくはpH10~13、よりさらに好ましくはpH11~12.5)。pHの測定は、空気中の炭酸ガスの溶解による影響を避けるために、脱ガスして測定することが好ましい。
本願発明を限定する意図はないが、除去液の具体例として、アンモニア水、SC-1洗浄液、TMAH水溶液、コリン水溶液、これらのいずれかの組合せが挙げられる(好適にはアンモニア水)。本発明の一態様として、除去液の溶媒の大部分は純水であり、溶媒に占める純水の割合が50~100質量%(好ましくは70~100質量%、より好ましくは90~100質量%、さらに好ましくは95~100質量%、よりさらに好ましくは99~100質量%)である。本発明の一態様として、除去液の溶質の濃度は0.1~10質量%(好ましくは0.2~8質量%、さらに好ましくは0.3~6質量%)である。前記のアルカリ成分を基板洗浄液に加えることで、純水(溶質の濃度0.0質量%、好ましくは0.00質量%)を除去液に使用することも可能である。
【0032】
本発明を限定する意図はなく理論に拘束されないが、本発明の理解のために模式図を用いて本発明に係る基板の洗浄の様子を説明する。
図1の態様で使用される基板洗浄液は、(A)不溶または難溶の溶質、(B’)クラック促進成分および(C)溶媒から構成される。(a)は、基板1にパーティクル2が付着している状態を示す。この基板に本発明の基板洗浄液を滴下し、乾燥させ、(A)不溶または難溶の溶質が膜化した状態が(b)である。(b)において、前記膜はパーティクル保持層3となる。パーティクル保持層3内にクラック促進成分4が存在する。その後、前記膜に除去液5を供給し、クラック促進成分4が除去液5に溶けだした状態が(c)である。溶けだすことで、パーティクル保持層3にクラック促進成分が溶出した跡6が生じる。跡6は膜が剥がれ、基板から剥離される作用を促進する。跡6を起点にクラック7が広がった状態が(d)である。クラック7が広がることで分断された膜が、パーティクルを保持したまま基板から除去される状態が(e)である。洗浄され得られた基板の状態が(f)である。
【0033】
<基板の洗浄>
本発明の基板洗浄液を基板の洗浄に使用することができる。基板の洗浄には、公知(例えば、特開2018-110220に記載)の方法や装置を使用することができる。本発明は、洗浄された基板を製造する方法を一態様として提供する。
以降において、より具体的な態様を用いて基板の洗浄方法を説明する。以降において、()内の数字は工程の順番を示す。例えば、(0-1)、(0-2)、(1)の工程が記載されている場合、工程の順番は前記の通りになる。
基板の洗浄は好適には以下の工程を含んでなる。
(1)基板上に本発明の基板洗浄液を滴下する;
(2)前記基板洗浄液中の(C)溶媒を除去し、(A)不溶または難溶の溶質を膜化させ、(B)可溶の溶質と共に基板上に膜として残す;
(3)前記膜に基板上のパーティクルを保持させる;
(4)前記基板上に除去液を供給し、パーティクルが保持された前記膜を除去する。
【0034】
前記(1)は、基板洗浄に適した装置においてノズル等により、水平姿勢の基板のほぼ中央に基板洗浄液を滴下することで行われる。滴下は、液柱状でも落下でも良い。前記滴下の際に、基板は例えば10~数十rpmにて回転することで、滴下痕の発生を抑えることができる。
滴下する量は、好ましくは0.5~10ccである。これら条件は、均一に基板洗浄液が塗布されて広がるように、調整することができる。
前記(2)の(C)溶媒の除去は、乾燥することで行われ、好適にはスピンドライで行われる。スピンドライは、好適には500~3,000rpm(より好適には500~1,500rpm、さらに好適には500~1,000rpm)、好適には0.5~90秒(より好適には5~80秒、さらに好適には15~70秒、よりさらに好適には30~60秒)で行われる。これにより基板洗浄液を基板の全面に広げつつ、(C)溶媒を乾燥させることができる。好ましくは、基板は直径200~600mm(より好ましくは200~400mm)の円盤状の基板である。
前記(3)のパーティクルを保持させる、とは前記(2)の(C)溶媒が除去されることにより、(A)不溶または難溶の溶質が膜化しパーティクルを保持することで行われる。つまり、前記(2)と(3)の工程は一つの操作により連続的に生じるとも言える。ここで、前記(2)の(C)溶媒の除去とは、(C)溶媒が膜中にわずかに残る状態は許容される。本発明の一態様として、前記(2)および(3)の工程終了時に(C)溶媒の95%以上(好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上)が揮発され、膜に残らない。
前記(2)および又は(3)の工程は、装置内の温度を上昇させても良い。温度上昇により、(C)溶媒の揮発、(A)不溶または難溶の溶質等の固形成分の膜化が促進されることが期待できる。温度を上昇させる場合、40~150℃であることが好ましい。
【0035】
前記(4)は、基板上に除去液を供給し、パーティクルが保持された前記膜(パーティクル保持層)を除去する。前記供給は、滴下、スプレー、液浸によって行うことが可能である。前記滴下は、基板上に液溜まり(パドル)を形成するように行ってもよいし、連続的に滴下しても良い。本発明の一態様として、基板が500~800rpmで回転する状態で、除去液を基板の中央に滴下する。
除去液がパーティクル保持層を除去(例えば剥離)する際、膜に残る(B)可溶の溶質が膜が剥がれるきっかけになる部分を生むと考えられる。そのため、(B)可溶の溶質は除去液に対する溶解性が、(A)不溶または難溶の溶質よりも高いものであることが好ましい。
パーティクル保持層は除去液により完全に溶解することなく、パーティクルを保持したまま基板上から除去されることが本発明の好適な態様である。パーティクル保持層は例えば前記「剥がれるきっかけになる部分」により細かく切れた状態になって、除去されると考えられる。
【0036】
本発明による基板の洗浄方法は、上記以外の少なくとも1つの工程をさらに含む態様も好ましい。そのような工程は、基板の洗浄において公知のものが含まれる。例えば、以下の工程が挙げられる。
(0-1)エッチングにより基板にパターンを加工し、エッチングマスクを除去する工程。
洗浄される基板は、被加工基板であっても良く、加工はリソグラフィー技術によって行われても良い。
(0-2)基板を洗浄する工程。
基板上のパーティクルの数を減らすために、公知の洗浄液(リンス液等)によって基板を洗浄しても良い。これによっても残る、わずかなパーティクルを除くことが本発明の目的の1つである。
(0-3)基板をプリウェットする工程。
本発明の基板洗浄液の塗布性を改善し、均一に基板上に広げるために、基板をプリウェットすることも好適な態様である。好ましくはプリウェットに使用する液体(プリウェット液)として、IPA、PGME、PGMEA、PGEE、n-ブタノール(nBA)、純水、およびこれらいずれかの組合せが挙げられる。
(0-4)基板を洗浄する工程。
前記(0-3)のプリウェット液を置き換えるために、基板を洗浄する工程も好適な一態様である。前記(0-2)工程を入れることで、(0-4)工程を不要とすることも、本発明の一態様である。
【0037】
(3-1)パーティクル保持層上に、液体を供給する工程。
パーティクル保持層の親水性または疎水性(好ましくは親水性)を高めるために、(3)工程の後に除去液とは異なる液体を供給する工程を含めることも可能である。前記液体は除去液よりもパーティクル保持層の構成する固形成分を溶解する力が弱いものが好ましい。(3-1)工程は省略されても良い。
(5)パーティクルが保持された膜が除去された基板に純水または有機溶媒を滴下し、前記純水または有機溶媒を除去することで、基板をさらに洗浄する工程。
局所的な膜残渣やパーティクル残渣を除去するために、純水または有機溶媒(好適には有機溶媒)で基板をさらに洗浄することも好適な一態様である。前記有機溶媒として、IPA、PGME、PGMEA、PGEE、nBA、およびこれら少なくとも2つの組合せが挙げられる。
(6)基板を乾燥する工程。
基板を乾燥する手段として、スピンドライ、乾燥ガスの供給(吹きかけ等)、減圧、加熱、およびこれらいずれかの組合せが挙げられる。
【0038】
<基板>
本発明において洗浄される基板としては、半導体ウェハ、液晶表示装置用ガラス基板、有機EL表示装置用ガラス基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用ガラス基板、太陽電池用基板、等が挙げられる。基板は非加工基板(例えばベアウェーハ)であっても、被加工基板(例えばパターン基板)であっても良い。基板は複数の層が積層されることで構成されても良い。好ましくは、基板の表面は半導体である。半導体は酸化物、窒化物、金属、これらのいずれかの組合せのいずれから構成されていても良い。また、好ましくは、基板の表面はSi、Ge、SiGe、Si、TaN、SiO、TiO、Al、SiON、HfO、T、HfSiO、Y、GaN、TiN、TaN、Si、NbN、Cu、Ta、W、Hf、およびAlからなる群から選ばれる。
【0039】
<デバイス>
本発明による洗浄方法によって製造された基板を、さらに加工することでデバイスを製造することができる。デバイスとしては、半導体、液晶表示素子、有機EL表示素子、プラズマディスプレイ素子、太陽電池素子が挙げられる。これらの加工は公知の方法を使用することができる。デバイス形成後、必要に応じて、基板をチップに切断し、リードフレームに接続し、樹脂でパッケージングすることができる。このパッケージングされたもの一例が半導体である。
【0040】
本発明を諸例により説明すると以下の通りである。なお、本発明の態様はこれらの例のみに限定されるものではない。
【0041】
パターン基板の準備
8インチSi基板にKrFレジスト組成物(AZ DX-6270P、メルクパフォーマンスマテリアルズマテリアルズ株式会社、以下MPM株とする)を滴下し、1500rpmで前記基板にスピンコートする。基板を120℃で90秒ソフトベークする。KrFステッパー(FPA-3000 EX5、Canon)を用い、20mJ/cmで露光し、130℃で90秒 PEB(露光後ベーク)し、現像液(AZ MIF-300、MPM株)で現像する。これにより、ピッチ360nm、デューティー比1:1のライン・スペースのレジストパターンを得る。同レジストパターンをエッチングマスクとして、ドライエッチ装置(NE-5000N、ULVAC)で基板をエッチングする。その後、ストリッパー(AZ 400T、MPM株)で基板洗浄を行い、レジストパターンおよびレジスト残渣を剥離する。これにより、ピッチ360nm、デューティー比1:1、ライン高さ150nmのパターンを有するパターン基板を作成する。
【0042】
ベア基板の準備
8インチSi基板を用いる。
【0043】
評価基板の調整
上記のパターン基板およびベア基板にパーティクルを付着させる。
実験用のパーティクルとして超高純度コロイダルシリカ(PL-10H、扶桑化学工業、平均一次粒径90nm)を用いる。シリカ微粒子組成物を50mL滴下し、500rpmで5秒間回転することで、塗布する。その後、1000rpmで30秒間回転することで、シリカ微粒子組成物の溶媒をスピンドライする。これによって、評価基板を得る。
【0044】
溶解性の評価
以降に使用する各成分(例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)4mgを50mLサンプル瓶に入れ、5.0質量%アンモニア水を加えて総量を40gにする。これに蓋をし、3時間振とう攪拌する。これにより、成分濃度100ppmの液を得る。
各成分の添加量を40mgに変更する以外は上述同様に行い、1,000ppmの液を得る。
これらの溶解性を目視で確認する。評価基準は以下である。
X:100ppmおよび1,000ppmで溶け残りが確認される。不溶または難溶と判断される。
Y:100ppmでは溶け残りが確認されず、1,000ppmで溶け残りが確認される。微溶と判断される。
Z:100ppmおよび1,000ppmで溶け残りが確認されない。可溶と判断される。
評価結果を下記表1に記載する。
【0045】
洗浄液1の調製例1
(A)不溶または難溶の溶質としてノボラック(Mw約300)、(B)可溶の溶質として2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンを使用する。
ノボラック(Mw約300)に対して5質量%になるように2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンを秤量する。これらを合計5gとなるように取り、95gのIPA((C)溶媒)に添加する。これを1時間、攪拌子で攪拌し、固形成分濃度が5質量%の液を得る。
この液をOptimizer UPE(日本インテグリス株式会社、UPE、孔径10nm)でろ過する。これにより、洗浄液1を得る。表1に記載する。
以下の表1において、(B)列における()内の数字は、(A)不溶または難溶の溶質と比較した(B)可溶の溶質の濃度(質量%)を意味する。
【表1】
上記表において以下のように略称する。
ノボラック(Mw約300)をA1、
ノボラック(Mw約500)をA2、
ノボラック(Mw約1,000)をA3、
ノボラック(Mw約10,000)をA4、
ノボラック(Mw約100,000)をA5、
ノボラッ(Mw約500,000)をA6、
フェノールノボラック(Mw約5,000)をA7、
ポリヒドロキシスチレン(Mw約5,000)をA8、
下記構造からなるポリアクリル酸ブチル(Mw約60,000、シグマアルドリッチ)をA9、
【化7】
ポリカーボネート(Mw約5,000)をA10、
4,4’-ジヒドロキシテトラフェニルメタン(Mw352)をA11、
ノボラック(Mw約5,000)をA12、
ポリフルオロアルキル酸(TAR-015、ダイキン工業株式会社)をA13、
KF-351A(Si素含有ポリエーテル変性ポリマー、信越シリコーン)をA14、
ポリビニルイミダゾールを(Mw約5,000)をA15、
ポリアリルアミンを(Mw約5,000)をA16、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンをB1、
1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタンをB2、
1,3-シクロヘキサンジオールをB3、
2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノールをB4、
2,2’-メチレンビス(4-メチルフェノール)をB5、
4,4’-ジヒドロキシビフェニルをB6、
2,6-ナフタレンジオールをB7、
2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオールをB8、
3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオールをB9、
2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノンをB10、
ポリアクリル酸(Mw約1,000)をB11、
下記構造からなるマレイン酸アクリル酸コポリマー(Mw約3,000)をB12、
【化8】
ノボラック(Mw約15,000)をB13。
【0046】
比較洗浄液1の比較調製例1
A12を5g取り、95gのIPA((C)溶媒)に添加する以外は、調製例1と同様の調製を行い、比較洗浄液1を得る。表1に記載する。
【0047】
比較洗浄液2の比較調製例2
B4を5g取り、95gのIPA((C)溶媒)に添加する以外は、調製例1と同様の調製を行い、比較洗浄液2を得る。表1に記載する。
【0048】
洗浄液2~33の調製例2~33、比較洗浄液3~7の比較調製例3~7
(A)不溶または難溶の溶質、(B)可溶の溶質、(C)溶媒、濃度を、表1に記載のものに変更する以外は、調製例1と同様にして、洗浄液2~33および比較洗浄液3~7を調製する。表1に記載する。
【0049】
洗浄液1~33、比較洗浄液1~7のパーティクル残存量の評価
上記の評価基板の調整に記載の通り調整した評価基板を用いる。
コータ・デベロッパRF(株SOKUDO)を用い、各評価基板に、各基板洗浄液を10cc滴下し、1,500rpmで60秒回転することで、塗布および乾燥を行う。基板を100rpmで回転させながら5.0質量%アンモニア水を10秒間滴下し、基板全体を5.0質量%アンモニア水で覆い、この状態を20秒間維持する。この基板を1,500rpmで回転することで、膜を剥離・除去し、基板を乾燥させる。
これら基板のパーティクル残存量を比較する。パターン基板の評価には明視野欠陥検査装置 (UVision 4、AMAT社)を用い、ベア基板の評価には暗視野欠陥検査装置(LS-9110、日立ハイテク社)を用いる。
塗布状況、膜の除去状況を確認し、パーティクル残数をカウントし、以下の基準で評価する。評価結果を表1に記載する。
AA:≦10個
A:>10個、≦100個
B:>100個、≦1,000個
C:>1000個
D:膜が均一に塗布されない、または膜が除去されない
比較洗浄液1~7は溶解度の異なる複数成分を含有しない。比較洗浄液1~7と比べて、洗浄液1~33で洗浄した基板はパーティクル残存量が少ないことが確認される。
【符号の説明】
【0050】
1.基板
2.パーティクル
3.パーティクル保持層
4.クラック促進成分
5.除去液
6.クラック促進成分が溶出した跡
7.クラック
図1(a)】
図1(b)】
図1(c)】
図1(d)】
図1(e)】
図1(f)】
【国際調査報告】