(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】大腸癌の治療のためのアビツズマブ
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20220131BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220131BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20220131BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220131BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20220131BHJP
A61K 31/513 20060101ALI20220131BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20220131BHJP
A61K 31/282 20060101ALI20220131BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20220131BHJP
C07K 16/22 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P35/04
A61K39/395 U
A61K45/00
A61K31/4745
A61K31/513
A61K31/519
A61K31/282
C07K16/28 ZNA
C07K16/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021521247
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(85)【翻訳文提出日】2021-06-04
(86)【国際出願番号】 EP2019078327
(87)【国際公開番号】W WO2020079209
(87)【国際公開日】2020-04-23
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100111501
【氏名又は名称】滝澤 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】マッスィミーニ ジョルジオ
(72)【発明者】
【氏名】チェリック イルハン
(72)【発明者】
【氏名】シュトラウブ ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ブルンス ロルフ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB051
4C084ZB091
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C084ZC752
4C085AA14
4C085BB01
4C085CC21
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC43
4C086CB09
4C086CB22
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB05
4C086ZB09
4C086ZB26
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206JB14
4C206JB15
4C206JB16
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA86
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZB05
4C206ZB09
4C206ZB26
4C206ZC75
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、大腸癌の治療方法に関するものであり、前記治療は抗α-vインテグリン(受容体)抗体アビツズマブの投与を含む。好ましくは、本発明は、それを必要とする患者への前記アビツズマブの投与を含む、大腸癌、ステージII~IVの大腸癌、転移性大腸癌、左側大腸癌、及び/又は左側転移性大腸癌を治療する方法に関するものである。本発明は、大腸癌、好ましくは本明細書で定義された大腸癌を治療するための医薬品の製造のためのアビツズマブの使用、及び/又は成長因子又は成長因子受容体を標的とするモノクローナル抗体などの適切な標的療法の概念、及び/又は化学療法と組み合わせた大腸癌を治療するための医薬品の製造のためのアビツズマブの使用にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの大腸癌を治療する方法であって、ヒトにアビツズマブを投与することを含み、前記大腸癌はαvβ6インテグリンが高発現していることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
ヒトの大腸癌を治療する方法であって、ヒトにアビツズマブを投与することを含み、前記大腸癌が左側大腸癌である、前記方法。
【請求項3】
左側大腸癌を治療する方法であって、ヒトにアビツズマブを投与することを含み、前記の左側大腸癌はαvβ6インテグリンが高発現していることを特徴とする、前記方法。
【請求項4】
ヒトが少なくとも1つの成長因子又は成長因子受容体を標的とするモノクローナル抗体、及び/又は化学療法も受ける、請求項1、2、又は3に記載の方法。
【請求項5】
大腸癌がステージII、ステージIII、又はステージIVの大腸癌である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
大腸癌が転移性大腸癌又は左側転移性大腸癌である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
大腸癌が左側大腸癌又は左側転移性大腸癌であって、αvβ6インテグリンが高発現していることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
大腸癌がRAS野生型及び/又はKRAS野生型大腸癌である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
大腸癌が、RAS野生型及び/又はKRAS野生型の左側大腸癌又はRAS野生型及び/又はKRAS野生型の左側転移性大腸癌である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
大腸癌が、ステージII、ステージIII、又はステージIVのRAS野生型及び/又はKRAS野生型の左側大腸癌、又はRAS野生型及び/又はKRAS野生型の左側転移性大腸癌であり、αvβ6インテグリンが高発現していることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
大腸癌がRAS野生型及び/又はKRAS野生型の左側転移性大腸癌であり、αvβ6インテグリンが高発現していることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
左側大腸癌が、新たに診断された大腸癌である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
第一選択治療で適用される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
方法が併用療法で適用される、請求項4~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
アジュバント療法で適用される、請求項4~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
ネオアジュバント療法で適用される、請求項4~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ヒトが、アビツズマブと同時に、少なくとも1つの成長因子又は成長因子受容体を標的とするモノクローナル抗体及び/又は前記化学療法を受ける、請求項4~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの成長因子又は成長因子受容体を標的とするモノクローナル抗体が、セツキシマブ、ベバシズマブ及び/又はパニツムマブを含む、請求項4~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの成長因子又は成長因子受容体を標的とするモノクローナル抗体が、セツキシマブ及びベバシズマブからなる群から選択される、請求項4~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
化学療法が、イリノテカン、フルオロウラシル、テガフール/ウラシル(UFT)、フォリン酸、オキサリプラチン、アフリベルセプト、レゴラフェニブ、カペシタビン、及びそれらのプロドラッグ、並びにそれらの塩及び溶媒和物からなる群から選択される1つ以上の化合物を含む、請求項5~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
化学療法がFOLFIRIプロトコルに従って実施される、請求項4~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
化学療法がFOLFOXプロトコルに従って実施される、請求項4~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
化学療法が、
a)イリノテカン、フルオロウラシル(5-FU)、及びフォリン酸(ロイコボリン)から選択される1つ以上の化合物、並びにそれらのプロドラッグ、
又は
b)オキサリプラチン、フルオロウラシル(5-FU)、及びフォリン酸(ロイコボリン)、並びにそれらのプロドラッグから選択される1つ以上の化合物、
及び、その塩及び溶媒
を含む、請求項4~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
アビツズマブが、1週間あたり375mgから750mgの量で、隔週で750mgから1500mgの量で、又は1ヶ月あたり1500mgから3000mgの量で、ヒトに投与される、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
アビツズマブが、1週間あたり約500mgの量で、隔週で約1000mgの量で、又は1ヶ月あたり2000mgの量で、ヒトに投与される、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
アビツズマブが少なくとも6サイクルにわたってヒトに投与され、各サイクルが約1週間、約2週間、約4週間、又は約1カ月の期間を有する、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
アビツズマブが少なくとも6サイクルにわたってヒトに投与され、各サイクルが約2週間の期間を有する、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも1つの成長因子又は成長因子受容体を標的とするモノクローナル抗体が、1週間あたり75mg~1000mg、隔週で150mg~2000mg、又は1ヶ月あたり300mg~4000mgの量でヒトに投与される、請求項4~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
セツキシマブが、1週間に約150mg/m
2~550mg/m
2、隔週で約300mg/m
2~1100mg/m
2、又は1ヶ月に約600mg/m
2~2200mg/m
2の量で、ヒトに投与される、請求項18~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
セツキシマブが少なくとも6サイクルにわたってヒトに投与され、各サイクルが約1週間、約2週間、約4週間、又は約1カ月の期間を有する、請求項18~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
セツキシマブが少なくとも6サイクルにわたってヒトに投与され、各サイクルが約2週間の期間を有し、前記セツキシマブが、ヒトに毎週又は隔週で投与される、請求項18~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
セツキシマブが少なくとも6サイクルにわたってヒトに投与され、各サイクルが約2週間の期間を有し、セツキシマブがヒトに、
a)各サイクル中、好ましくは各サイクルの開始時に、約500mg/m
2の量、
又は
b)各サイクルの第1週目の初めに約400mg/m
2の量で、各サイクルの第2週目の初めに約250mg/m
2の量
のいずれかで投与される、請求項18~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
ベバシズマブは、1週間あたり約1mg/kg~10mg/kgの量、隔週で3mg/kg~15mg/kgの量、又は1ヶ月あたり約6mg/kg~30mg/kgの量でヒトに投与される、請求項18~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
ベバシズマブが少なくとも6サイクルにわたってヒトに投与され、各サイクルが約1週間、約2週間、約4週間、又は約1カ月の期間を有する、請求項18~28及び33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
ベバシズマブが少なくとも6サイクルにわたってヒトに投与され、各サイクルが約2週間の期間を有し、ベバシズマブがヒトに毎週又は隔週で投与される、請求項18~28及び33~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
ベバシズマブが少なくとも6サイクルにわたってヒトに投与され、各サイクルが約2週間の持続時間を有し、ベバシズマブがヒトに
a)各サイクル中、好ましくは各サイクルの開始時に、3mg/kg~15mg/kgの量、又は5mg/kg~10mg/kgの量、
又は
b)各サイクル中、好ましくは各サイクルの開始時に、約7.5mg/kgの量
のいずれかで投与される、請求項18~28及び33~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
パニツムマブが、1週間あたり約1mg/kg~10mg/kgの量、隔週で3mg/kg~15mg/kgの量、又は1ヶ月あたり約6mg/kg~30mg/kgの量でヒトに投与される、請求項18~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
パニツムマブが少なくとも6サイクルにわたってヒトに投与され、各サイクルが約1週間、約2週間、約4週間、又は約1カ月の期間を有する、請求項18~28及び37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
パニツムマブが少なくとも6サイクルにわたってヒトに投与され、各サイクルが約2週間の期間を有し、パニツムマブがヒトに毎週又は2週目ごとに投与されることを特徴とする、請求項18~28及び37~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
パニツムマブが少なくとも6サイクルにわたってヒトに投与され、各サイクルが約2週間の持続時間を有し、パニツムマブがヒトに
a)各サイクル中、好ましくは各サイクルの開始時に、3mg/kg~15mg/kgの量、又は4mg/kg~10mg/kgの量、
又は
b)各サイクル中、好ましくは各サイクルの開始時に、約6mg/kgの量
のいずれかで投与される、請求項18~28及び37~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
大腸癌がRAS野生型及び/又はKRAS野生型大腸癌である、請求項29~32及び/又は請求項37~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
大腸癌が、RAS野生型及び/又はKRAS野生型の左側大腸癌、又はRAS野生型及び/又はKRAS野生型の左側転移性大腸癌である、請求項29~32及び/又は請求項37~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
化学療法が少なくとも6サイクルにわたってヒトに施され、各サイクルが約2週間の期間を有し、
a)イリノテカン、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物、
b)フォリン酸、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物、
及び/又は
c)フルオロウラシル(5-FU)、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物が、
各サイクル中、好ましくは各サイクルの開始時及び/又は各サイクルの各週の開始時にヒトに投与される、請求項4~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
ヒトが化学療法も受け、前記化学療法が、
a)1週間に50mg/m
2~150mg/m
2、隔週で100mg/m
2~300mg/m
2、又は1ヶ月に200mg/m
2~600mg/m
2の量の、イリノテカン、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物、
b)1週間あたり150mg/m
2~250mg/m
2、隔週で300mg/m
2~500mg/m
2、又は1ヶ月あたり600mg/m
2~1000mg/m
2の量の、フォリン酸、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物、
及び/又は
c)1週間あたり150mg/m
2~250mg/m
2、隔週で300mg/m
2~500mg/m
2、又は1ヶ月あたり600mg/m
2~1000mg/m
2の量の、フルオロウラシル(5-FU)、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物
を含む、請求項4~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
ヒトが化学療法も受け、前記化学療法が
a)1週間あたり50mg/m
2~150mg/m
2、隔週で100mg/m
2~300mg/m
2、又は1ヶ月あたり200mg/m
2~600mg/m
2の量のイリノテカン、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物、
b)1週間あたり150mg/m
2~250mg/m
2、隔週で300mg/m
2~500mg/m
2、又は1ヶ月あたり600mg/m
2~1000mg/m
2の量の、フォリン酸、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物、
及び/又は
c)1週間あたり1000mg/m
2~3000mg/m
2、隔週で2000mg/m
2~6000mg/m
2、又は1ヶ月あたり4000mg/m
2~12000mg/m
2の量、好ましくは隔週で2000mg/m
2~3200mg/m
2の量の、フルオロウラシル(5-FU)、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物
を含む、請求項4~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
化学療法が少なくとも6サイクルにわたってヒトに施され、各サイクルが約1週間、約2週間、約4週間、又は約1カ月の期間を有する、請求項4~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
化学療法が少なくとも6サイクルにわたってヒトに施され、各サイクルが約2週間の期間を有し、
a)オキサリプラチン、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物、
b)フォリン酸、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物、
及び/又は
c)フルオロウラシル(5-FU)、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物が、
各サイクル中、好ましくは各サイクルの開始時にヒトに投与される、請求項4~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
ヒトが化学療法も受け、前記化学療法が、
a)1週間あたり20mg/m
2~120mg/m
2、隔週で40mg/m
2~240mg/m
2、又は1ヶ月あたり80mg/m
2~480mg/m
2の量の、オキサリプラチン、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物、
b)1週間あたり150mg/m
2~250mg/m
2、隔週で300mg/m
2~500mg/m
2、又は1ヶ月あたり600mg/m
2~1000mg/m
2の量の、フォリン酸、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物、
及び/又は
c)1週間あたり150mg/m
2~250mg/m
2、隔週で300mg/m
2~500mg/m
2、又は1ヶ月あたり600mg/m
2~1000mg/m
2の量の、5-FU、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物
を含む、請求項4~42及び47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
ヒトが化学療法も受け、前記化学療法が、
a)1週間あたり20mg/m
2~120mg/m
2、隔週で40mg/m
2~240mg/m
2、又は1ヶ月あたり80mg/m
2~480mg/m
2の量の、オキサリプラチン、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物、
b)1週間あたり150mg/m
2~250mg/m
2、隔週で300mg/m
2~500mg/m
2、又は1ヶ月あたり600mg/m
2~1000mg/m
2の量の、フォリン酸、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物、
及び/又は
c)1週間あたり1000mg/m
2~3000mg/m
2、隔週で2000mg/m
2~6000mg/m
2、又は1ヶ月あたり4000mg/m
2~12000mg/m
2の量、好ましくは隔週で2000mg/m
2~3200mg/m
2の量の、5-FU、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物
を含む、請求項4~42及び47~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
化学療法が少なくとも6サイクルにわたってヒトに施され、各サイクルが約1週間、約2週間、約4週間、又は約1カ月の期間を有する、請求項4~42及び47~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
化学療法が少なくとも6サイクルにわたってヒトに施され、各サイクルが約2週間の期間を有する、
a)オキサリプラチン、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物、
b)フォリン酸、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物、
及び/又は
c)5-FU、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物が、
各サイクル中、好ましくは各サイクルの開始時にヒトに投与される、請求項4~42及び47~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
原発性腫瘍が結腸に位置する、請求項1~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
原発性腫瘍が結腸の左側に位置する、請求項1~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
セツキシマブ及び/又はFOLFIRIと併用し、αvβ6インテグリンが高発現している患者のRAS野生型及び/又はKRAS野生型の左側転移性大腸癌(mCRC)を治療するための医薬品の製造におけるアビツズマブの使用。
【請求項55】
セツキシマブ及びFOLFIRIの併用し、αvβ6インテグリンが高発現している患者のRAS野生型の左側転移性大腸癌(mCRC)を治療するための医薬品の製造におけるアビツズマブの使用。
【請求項56】
セツキシマブ及び/又はFOLFIRIと併用し、αvβ6インテグリンが高発現している患者のRAS野生型及び/又はKRAS野生型の左側転移性結腸癌を治療するための医薬品の製造におけるアビツズマブの使用。
【請求項57】
セツキシマブ及び/又はイリノテカンと併用し、αvβ6インテグリンが高発現している患者のRAS野生型及び/又はKRAS野生型の左側転移性結腸癌又は転移性大腸癌を治療するための医薬品の製造におけるアビツズマブの使用。
【請求項58】
セツキシマブ及びイリノテカンと併用、好ましくはフォリン酸及び/又は5-FUと併用し、αvβ6インテグリンが高発現している患者のRAS野生型の左側転移性結腸癌又は転移性大腸癌を治療するための医薬品の製造におけるアビツズマブの使用。
【請求項59】
治療が第一選択治療である、請求項54~58のいずれか1項に記載のアビツズマブの使用。
【請求項60】
治療する前記転移性結腸癌及び/又は転移性大腸癌が、ステージIII及び/又はステージIVの癌である、請求項54~59のいずれか1項に記載のアビツズマブの使用。
【請求項61】
医薬品が、投与されるアビツズマブの量が隔週で約1000mg、又は1ヶ月あたり約2000mgとなるように患者に投与される、請求項54~60のいずれか1項に記載のアビツズマブの使用。
【請求項62】
αvβ6インテグリンが高発現している患者が、70より高いαvβ6インテグリンのヒストスコアによって特徴付けられる、請求項54~61のいずれか1項に記載のアビツズマブの使用。
【請求項63】
治療が少なくとも6サイクル、少なくとも8サイクル、少なくとも10サイクル、又は少なくとも12サイクルにわたって投与され、各サイクルが2週間又は約2週間で構成される、請求項54~62のいずれか1項に記載のアビツズマブの使用。
【請求項64】
アビツズマブ、セツキシマブ、及び/又はFOLFIRIを、隔週で、好ましくは2週間又は約2週間のサイクルで前記患者に投与する、請求項54~62のいずれか1項に記載のアビツズマブの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月19日に出願された仮出願第62/748114号の利益を請求するものであり、その全体が参照により組み込まれている。
【0002】
本発明は、大腸癌の治療方法に関するものであり、前記治療は抗α-vインテグリン(受容体)抗体アビツズマブの投与を含む。好ましくは、本発明は、それを必要とする患者への前記アビツズマブの投与を含む、大腸癌、ステージII~IVの大腸癌、転移性大腸癌、左側大腸癌、及び/又は左側転移性大腸癌を治療する方法に関するものである。より好ましくは、本発明は、大腸癌、好ましくは上記の種類又はステージの大腸癌を治療する方法であって、前記種類又はステージの大腸癌に対する既存の治療又は治療レジメンに追加して、抗α-vインテグリン(受容体)抗体アビツズマブの投与を含む方法に関する。従って、本発明は、大腸癌、好ましくは本明細書で定義された大腸癌を治療するための医薬品の製造のためのアビツズマブの使用、及び/又は成長因子又は成長因子受容体を標的とするモノクローナル抗体などの適切な標的療法の概念、及び/又は化学療法と組み合わせた大腸癌を治療するための医薬品の製造のためのアビツズマブの使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
大腸癌(一般的には、結腸癌、直腸癌、及び/又は腸管癌とも呼ばれる)は、結腸又は直腸(大腸の一部)に癌が発生することである。一般的には体内の他の部位に侵入したり、転移したりする能力を持つ細胞が異常に増殖することによる。
現在、大腸癌の治療には、手術、放射線療法、化学療法、及び標的療法などが使用されている。大腸の壁の中にとどまっている癌は手術で治る可能性があるが、広範囲に広がっている癌は通常治らず、生活の質又は症状の改善に重点を置いた管理を伴う。米国における5年生存率は、約65%である。しかし、これは癌の進行度、手術で全ての癌を取り除くことができるかどうか、そしてその人の全体の健康状態によって異なる。大腸癌は、世界的に見ても3番目に多い癌で、全ての癌患者の約10%を占めている。2012年には140万人の新規患者が発生し、69万4千人が死亡した。先進国でより多く、発症の65%以上を占める。男性よりも女性の方が少ない。
【0004】
大腸癌及び直腸癌共に、場合によっては手術に加えて化学療法を使用することもある。直腸癌の場合、ネオアジュバント環境で化学療法を使用することもある。
癌がリンパ節に転移している場合、化学療法剤であるフルオロウラシル又はカペシタビンを追加することで、生命予後が向上する。リンパ節に癌がない場合、化学療法の効果については賛否両論ある。広範囲に転移した癌又は切除不能な癌の場合、これまでは緩和的な治療が中心だった。一般的に、このような状況では、いくつかの異なる化学療法薬が使用されることもある。この疾患に対する化学療法薬としては、カペシタビン、フルオロウラシル、イリノテカン、ロイコボリン、オキサリプラチン、及びUFTが含まれてもよい。好ましくは、フルオロウラシルは、カペシタビン及び/又は5-フルオロシトシンなどのプロドラッグとして投与されてもよい。上皮細胞成長因子受容体阻害剤もまた使用されることもある。
放射線及び化学療法の併用は直腸癌には有効かもしれないが、大腸癌では腸が放射線に弱いため、通常は使用しない。化学療法と同様に、直腸癌の一部のステージでは、ネオアジュバント及びアジュバント環境で放射線治療を使用することができる。
【0005】
しかし、大腸癌(CRC)という適応症は当業界では知られており、広く理解されている。好ましくは、大腸癌は、限定はしないが、発生場所、罹患した組織の種類、及び/又は発症した疾患の段階などの特徴によって区別できる異種混合を呈する疾患である。大腸癌の病期分類は、当業界では広く知られており、理解されている。好ましくは、発症の異なる段階を4つ又は5つのカテゴリー、好ましくは4つのカテゴリーに分類する。最も初期の大腸癌は「ステージ0」(超早期癌)に分類されるのが好ましく、その後、ステージI(1)からIV(4)まで分類される。原則として、数値が低いほど、癌の発症、進行、及び/又は転移が少ないことを意味する。ステージIVのように数字が大きいほど、癌がより広がっていることを意味する。そして、1つのステージの中で、前の文字は好ましくは下のステージを意味する。癌の体験は人それぞれだが、同じようなステージの癌は、見通しも似ていて、ほぼ同じように治療されることが多い。
大腸癌の病期分類には、米国癌合同委員会(AJCC)のTNM分類がよく使用され、3つの基本情報に基づく。
・腫瘍(T)の範囲(大きさ):癌が結腸又は直腸の壁にどの程度まで成長しているか。これらの層は、
図1に示すように、内層から外層へと続き、以下が含まれる。
〇内側の層(粘膜)は、ほぼ全ての大腸癌が発生する層である。これには、薄い筋肉の層(粘膜筋層)が含まれる。
〇この筋層の下にある繊維組織(粘膜下層)
○厚い筋肉の層(固有筋層)
○直腸ではなく結腸の大部分を覆っている薄い結合組織の一番外側の層(漿膜下層及び漿膜)
・近くのリンパ節への転移(N):癌が近くのリンパ節に転移しているか。
・遠くの部位への広がり(転移)(M):癌が遠隔のリンパ節、又は肝臓若しくは肺などの遠隔臓器に転移しているか。
【0006】
以下に紹介するシステムは、2018年1月施行の最新のAJCCシステムである。手術中に摘出した組織を検査して決定する病理学的病期(外科的病期ともいう)を使用する。このシステムは外科的ステージングとも呼ばれている。健康診断、生検、及び画像検査の結果を考慮する臨床病期診断よりも正確である可能性が高く、手術前に実行するのが好ましい。
T、N、及びMの後の数字又は文字は、それぞれの要素の詳細を表している。数字が大きいほど、癌が進行していることを意味する。T、N、及びMの各カテゴリーが決定されると、これらの情報はステージグループ化と呼ばれる工程で統合され、全体のステージが割り当てられる。
【表1】
*以下の追加カテゴリーは、上記の表1には記載されていない:
・TX:主な腫瘍は、情報不足のため評価できない。
・T0:原発性腫瘍の証拠はない。
・NX:広域リンパ節は、情報不足のため評価できない。
【0007】
大腸癌は、より一般的に4つのステージに分類される。ステージI、ステージII、ステージIII、及びステージIVである。ステージが高いほど、大腸癌が進行していることを意味する。好ましくは、ステージIとは、大腸の特定の場所に癌があると診断できるが、まだ実際には成長し始めていないことを意味する。ステージIIの大腸癌は、腫瘍が元々の大腸の場所で成長しているが、そこから先には広がっていないのに対し、ステージIIIでは、癌が元々の大腸の場所の外に、例えば転移を介して広がっているが、最小限の範囲のみにとどまっている。多くの場合、ステージIIIの大腸癌は、隣接する組織及び近くのリンパ節など、近くの組織にのみ転移している。最後に、ステージIVでは、癌が大腸領域の元の場所の外に、離れたリンパ節、骨、肝臓、肺、及び/又は脳などの他の組織に広がっている。例えば、Matias Riihimaki, Akseli Hemminki, Jan Sundquist, Kari Hemminki, Scientific Reports|6:29765|DOI:10.1038/srep29765を参照する。この開示内容は、好ましくは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0008】
1996年以降、CRC及び/又はmCRCの治療法は、イリノテカン及びオキサリプラチンなどの化学療法、並びにセツキシマブ、パニツムマブ、アフリベルセプト、レゴラフェニブ、ベバシズマブなどの分子標的薬の登場により、選択肢が広がった。現在、大腸癌、特に進行性大腸癌に対しては、5-FU及びイリノテカンを含む複合化学療法レジメンによる治療が確立されている。これらにより、患者の予後は改善されたが、それでもほとんどの患者はこの疾患が原因で亡くなっている。
CRCの分子生物学的な理解が進み、側性が治療成績に影響を与えることが新たに分かってきたことから、腫瘍の成長及び進行に不可欠な因子を標的とした新しい併用療法が患者の治療成績の改善につながることが期待されている。基本的に、既存のmCRCの治療は、腫瘍細胞を破壊するための5つの異なる作用メカニズム、すなわち、チミジル酸合成酵素の阻害、DNAへのインターカレーション(白金化合物)、トポイソメラーゼIの標的(イリノテカン)、限定はしないが、EGF(上皮細胞成長因子)、EGFR(上皮細胞成長因子受容体)、VEGF(血管内皮細胞成長因子)、及び/又はVEGFR(血管内皮細胞成長因子受容体)などの成長因子又は成長因子受容体を標的とした治療法に基づいている。
【0009】
インテグリン阻害剤の使用は、インテグリンが内皮細胞だけでなく腫瘍細胞にも発現していることから、癌細胞の生存及び血管新生の両方に影響を与えると考えられている。腫瘍の成長に対する効果及び血管新生に対する効果を区別することは困難だが、標的とするインテグリンが腫瘍細胞及び内皮細胞の両方に発現している場合、これらの阻害剤の最大の反応が予測される。
骨は、CRCに限定はしないが、様々な癌の頻繁な転移部位の一つである。Bisanzら(Molecular Therapy 2005; 12, 634-643)は、α-vインテグリンが、例えば骨内での前立腺腫瘍生存にプラスの役割を果たすことを示している。更に、研究(McCabe et al.,Oncogene 2007; 26, 6238-6243)によると、腫瘍細胞におけるαvβ3インテグリンの活性化は、主要な骨特異的マトリックスタンパク質の認識に不可欠である。これらのデータは、αvβ3インテグリンが遠隔転移における癌の成長を調節していることを示唆している。
インテグリンは、腫瘍細胞と骨微小環境の間の相互作用を媒介し、骨での成長を促進するという仮説が立てられているため、インテグリン阻害剤を使用することで、CRC癌の骨病変を予防することが可能となる。これらの病変は、好ましくは骨芽細胞性及び/又は溶骨性であり、癌患者で頻繁に検出される。一部の癌の場合、剖検時に80%以上の患者に骨転移が認められる。
更に、免疫組織化学的分析により、ヒトCRC癌組織の大部分にαvインテグリンが存在することが示されている。
従って、大腸癌の治療のための新しい高活性の治療薬及び/又は高効率の治療法を提供する必要性が高くなっている。従って、本発明の好ましい目的は、ヒト、特に大腸癌(CRC)及び/又はこれらの転移、特に転移性大腸癌(mCRC)に罹患しているヒト患者に対して、好ましくは転移の場所とは無関係に、より効果的で忍容性の高い治療レジメンを提供することであり、従って、好ましくは、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、生活の質(QOL)、及び/又は生存期間の中央値の増加をもたらすことである。
【発明の概要】
【0010】
本発明によれば、大腸癌の治療のための新しい非常に強力な治療薬を提供する高い必要性は、抗α-vインテグリン(受容体)抗体アビツズマブを、インテグリンの発現が高く、特にαvβ6インテグリンが高発現している腫瘍及び/又は転移を有する患者の大腸癌の治療方法に使用することによって満たされる。より好ましくは、大腸癌の治療のための新しい非常に強力な治療薬を提供する高い必要性は、抗α-vインテグリン(受容体)抗体アビツズマブの提供によって満たされ、好ましくは左側大腸癌、より好ましくは左側転移性大腸癌、特にインテグリンの発現が高く、特にαvβ6インテグリンが高発現している腫瘍及び/又は転移を有する患者に適している。好ましくは、大腸癌の治療のための新しい高効率の治療法を提供する、これまでの満たされていない高い必要性も、本発明によって満たされる。
この点で、アビツズマブは大腸癌において、好ましくは直接的及び間接的な抗腫瘍作用を有することが分かっている。
【0011】
アビツズマブは、ヒトのインテグリン受容体のα-βサブユニットに対する組換えヒト化モノクローナルIgG2抗体アンタゴニストである。アビツズマブは、αvインテグリンに特異的な汎インテグリン阻害剤で、すべてのαvヘテロ二量体(αvβ1、β3、β5、β6、及びβ8)を阻害する。特に、アビツズマブは、転移性大腸癌において活性が高く、この疾患の負の予後因子として議論されているαvβ6を阻害し(Bates RC, Bellovin DI, Brown C, et al.“Transcriptional activation of integrin β6 during the epithelial-mesenchymal transition defines a novel prognostic indicator of aggressive colon carcinoma”. The Journal of Clinical Investigation.2005 115 (2):339-347; Niu Z, Wang J, Muhammad S, et al. “Protein expression of eIF4E and integrin αvβ6 in colon cancer can predict clinical significance, reveal their correlation and imply possible mechanism of interaction” Cell & Bioscience.2014 ; Yang GY, Guo S, Dong CY, et al. “Integrin αvβ6 sustains and promotes tumor invasive growth in colon cancer progression”. World Journal of Gastroenterol.2015; 21(24):7457-7467)、これらの開示は、好ましくは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。インテグリンは細胞接着分子の一種であり、細胞と細胞外マトリックス(ECM)及び細胞と細胞の幅広い相互作用に役割を果たし(Arnaout MA、Goodman SL、Xiong JP Structure and mechanics of integrin-based cell adhesion. Curr Opin Cell Biol. 2007;19(5):495-507)、これらの開示は、好ましくは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。インテグリンは、アルファ(α)サブユニット及びベータ(β)サブユニットからなるECMタンパク質のヘテロ二量体膜貫通型受容体である。これらは、それぞれのECMリガンドに結合することで活性化される。この相互作用の後、インテグリンは細胞内のキナーゼカスケードを引き起こし、細胞の増殖や生存を調節したり、アクチン細胞骨格と結合して細胞の接着や運動を促したりする(Goel HL, Languino LR. Integrin signaling in cancer. Cancer Treat Res. 2004; 119:15 31、これらの開示は、好ましくは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
α-v-インテグリンは、血管新生、増殖中の腫瘍血管や、ある種の腫瘍細胞に多く発現している。αvβ6インテグリンファミリーのメンバーは、腫瘍の進行、腫瘍の血管新生、及び転移に直接的な役割を果たしていることが実証されている(Nemeth JA, Nakada MT, Trikha M, et al.α-v integrins as therapeutic targets in oncology. Cancer Invest. 2007;25(7):632-646、これらの開示は、好ましくは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0012】
本発明によれば、インテグリンが高発現しているCRC患者、好ましくはαvβ6インテグリンが高発現しているCRC患者において、αvβ6を含むがこれに限定されないインテグリンをアビツズマブでターゲティングすることは、CRC及び/又はmCRCの治療にとって驚くほど有利な新規アプローチであり、特にCRC及び/又はmCRCで有効性を示した他の標的治療薬及び/又は化学療法と組み合わせた場合に有効であると考えられる。
従って、本発明の好ましい対象は、以下の1つ以上を含む。
好ましくは、上記及び/又は下記に記載の方法で、ヒト(複数可)にアビツズマブを投与することを含み、前記大腸癌が高いαvβ6インテグリン発現によって特徴づけられる、又は高いαvβ6インテグリン発現を有することを特徴とする、ヒト又は複数のヒトの大腸癌を治療する前記方法。
好ましくは、上記及び/又は下記に記載のヒト又はヒト集団における大腸癌を治療する方法であって、ヒト(複数を含む)にアビツズマブを投与することを含み、前記大腸癌が左側大腸癌であることを特徴とする前記方法。
好ましくは、上記及び/又は下記に記載の左側大腸癌の治療方法であって、ヒト(複数を含む)にアビツズマブを投与することを含み、前記左側大腸癌が高いαvβ6インテグリン発現によって特徴付けられる、又は高いαvβ6インテグリン発現を有することを特徴とする前記方法。
大腸癌が転移性大腸癌である、上記及び/又は下記に記載の方法。
アビツズマブが、2週間ごとに約1000ミリグラムの量で、又は1ヶ月あたり約2000ミリグラムの量で、ヒト(複数可)に投与されることを特徴とする、上記及び/又は下記に記載の方法。
ヒト(複数可)が少なくとも1つの成長因子又は成長因子受容体を標的とするモノクローナル抗体、及び/又は化学療法も受ける、上記及び/又は下記に記載の方法。
ヒト(複数可)が、上記及び/又は下記に記載の大腸癌の治療における現在の標準治療(SoC)の1つ以上の治療オプションも受ける、上記及び/又は下記に記載の方法。
上記及び/又は下記に記載の方法であって、以下
a)大腸癌が、RAS野生型及び/又はKRAS野生型の左側大腸癌、又はRAS野生型及び/又はKRAS野生型の左側転移性大腸癌であり、
b)ヒトが、好ましくはセツキシマブであり、少なくとも1つの成長因子又は成長因子受容体を標的とするモノクローナル抗体も与えられており、及び
c)ヒトが、FOLFIRI又はFOLFOXプロトコルによる化学療法を任意的に処置されていてもよく、好ましくはFOLFIRIプロトコルによる化学療法を受けていてもよい、
前記方法。
本発明の更なる側面については、以下でより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ヒトの腸管組織及び大腸壁層の一般的な構造を示している。
【
図2】セツキシマブ+イリノテカン単独群におけるαvβ6の発現量に基づくOS曲線(POSEIDON)であり、24カ月時点でαvβ6>中央値が下側の曲線、αvβ6<中央値が上側の曲線である。
【
図3】右側と左側の両方に腫瘍がある患者にアビツズマブ+セツキシマブ+イリノテカンの治療及びセツキシマブ+イリノテカン単独(SOC)の治療を実施した場合のαvβ6の高発現に基づくOS曲線で(POSEIDON)、SoCは24ヵ月後の最低曲線;アビツズマブ500ミリグラムは24ヵ月後の中央曲線;アビツズマブ1000ミリグラムは24ヵ月後の最高曲線である。
【
図4】試験の第2相部分のCONSORT図である。
【
図5A】ITT集団におけるPFSのカプランマイヤー曲線を示しており、SoC、アビツズマブ500ミリグラム、アビツズマブ1000ミリグラムは、いずれも16ヶ月で同一の曲線となっている。
【
図5B】ITT集団におけるOSのカプランマイヤー曲線を示しており、SoCは24ヶ月目の曲線の中央値;アビツズマブ500ミリグラムは24ヶ月目の曲線の最低値;アビツズマブ1000ミリグラムは24ヶ月目の曲線の最高値を示している。
【
図6】入手できた、腫瘍ブロックを有する全患者(n=197)のαvβ6のヒストスコア、及びこの集団のヒストスコア中央値(70)を示すヒストグラムである。各患者について、αvβ6染色の強度及び頻度に関するデータを統合し、以下の数式を用いてヒストスコアを作成した。1×(弱く染色された細胞の割合[1+])+2×(中程度に染色された細胞の割合[2+])+3×(強く染色された細胞の割合[3+])[12]。
【
図7】セツキシマブ及びイリノテカン単独を受けたαvβ6発現量が多い患者と少ない患者のOS曲線(POSEIDON(ポセイドン)試験)で、αvβ6>中央値は24カ月時点での下側の曲線;αvβ6<中央値は24カ月時点での上側の曲線;CIは信頼区間;HRはハザード比を示す。
【
図8】右側及び左側の両方に腫瘍がある患者において、αvβ6が高発現している患者にアビツズマブ+セツキシマブ+イリノテカンで治療及びセツキシマブ+イリノテカン単独(SOC)で治療した場合のOSカーブ(POSEIDON試験)で、SoCは24カ月時点で最も低い曲線となり;アビツズマブ500ミリグラムは24ヵ月後の曲線の中央値;アビツズマブ1000ミリグラムは24ヵ月後の曲線の最高値;CIは信頼区間;HRはハザード比;SoCは標準治療を示す。
【
図9A】αvβ6が高発現している左側患者におけるOSのレトロスペクティブな解析結果を示しており(POSEIDON試験)、SoCは24カ月時点で最も低い曲線となり;アビツズマブ500ミリグラムは24カ月時点で曲線の中央値;アビツズマブ1000ミリグラムは24カ月時点で曲線の最高値となっている。
【
図9B】αvβ6が高発現している右側患者におけるOSのレトロスペクティブな解析結果を示しており(POSEIDON試験)、SoCは18カ月時点で最も低い曲線となり;アビツズマブ500ミリグラムは18カ月時点で曲線の中央値;及びアビツズマブ1000ミリグラムは18カ月時点で曲線の最高値となっている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
組織化学的なデータによると、CRC及び/又はmCRCの腫瘍血管系及び腫瘍細胞には、αvインテグリンの標的が発現している。特に、αvβ6インテグリンの発現は、700人以上のmCRC患者で解析されており、CRCの予後因子としても注目され(Bates RC, Bellovin DI, Brown C, et al. “Transcriptional activation of integrin β6 during the epithelial-mesenchymal transition defines a novel prognostic indicator of aggressive colon carcinoma”. The Journal of Clinical Investigation. 2005; 115 (2):339-347; Niu Z, Wang J, Muhammad S, et al. “Protein expression of eIF4E and integrin αvβ6 in colon cancer can predict clinical significance, reveal their correlation and imply possible mechanism of interaction” Cell & Bioscience. 2014; Yang GY, Guo S, Dong CY, et al. “Integrin αvβ6 sustains and promotes tumor invasive growth in colon cancer progression”. World Journal of Gastroenterol. 2015; 21(24):7457-7467)、これらの開示は、好ましくは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。このように、本発明によれば、結腸及び/又は直腸癌の腫瘍における高いαvβ6の発現は、腫瘍の進行及びこれらの患者の生存率の低さの指標となると考えられる。
【0015】
POSEIDON試験で得られたデータを最近再評価し (Elez E, Kocakova I, Hohler T, et al. Abituzumab combined with cetuximab plus irinotecan versus cetuximab plus irinotecan alone for patients with KRAS wild-type metastatic colorectal cancer: the randomised phase I/II POSEIDON trial. Annals of Oncology. 2015;26: 132-140、これらの開示は、好ましくは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、KRAS WT mCRCのセカンドラインにおけるアビツズマブとセツキシマブ及びイリノテカンの併用の活性度を探ったところ、セツキシマブ+イリノテカン単独群の解析では、αvβ6の発現量が多いと予後が悪くなることが示され、好ましくはαvβ6の高発現が、予後が悪くなる原因であること示された(
図2)。更に、POSEIDON試験のデータを最近再評価したところ、αvβ6が高発現している患者をアビツズマブで治療した場合、より高いPFSが得られたことから、好ましくはαvβ6の高発現がアビツズマブの奏効を予測する効果があることが示された。
【0016】
更に、アビツズマブの治療に関しては、CRC、特にmCRCは遺伝的に不均一な疾患であり、結腸の異なる側(左と右)から発生した腫瘍は臨床的に異なる結果をもたらすという証拠が増えてきていることが分かった (Bever KM, Le DT. An Expanding Role for Immunotherapy in Colorectal Cancers. Journal of the National Comprehensive Cancer Network. 2017;15(3):401-410; Lee MS, Menter DG, Kopets S. Right Versus Left Colon Cancer Biology: Integrating the Consensus Molecular Subtypes. Journal of the National Comprehensive Cancer Network. 2017;15(3):411-419, Lee B, et al. Left versus right sided colorectal cancer: Teasing out drivers of disparity in outcomes in metastatic disease. Journal of Clinical Oncology. 2017;35:4_suppl, 682-682、これらの開示は、好ましくは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。KRAS野生型(WT)又はRAS野生型のmCRC患者を対象に、異なるクラスの標的薬剤の活性の比較分析により、mCRCにおいては、原発性腫瘍の位置(側)が予後及び予測両方を示す臨床結果を示唆する可能性がある。
【0017】
6つの無作為化試験(CRYSTAL、FIRE-3、CALGB 80405、PRIME、PEAK、20050181)に参加した切除不能なRAS WT及び/又はKRAS WT mCRC患者を対象に、化学療法+EGFR抗体療法(実験群)並びに化学療法又は化学療法+ベバシズマブ(対照群)を比較し、原発性腫瘍の局在性が予後及び予測に及ぼす影響をレトロスペクティブ分析により検討した。左側腫瘍及び右側腫瘍の患者の全生存期間(OS)及び無増悪生存期間(PFS)のハザード比(HR)並びに95%信頼区間(CI)、及び客観的奏効率(ORR)のオッズ比(OR)は、個々の研究のHR/ORをプールして推定した10。
治療効果と腫瘍側の相関関係をレトロスペクティブに評価し、予知性を評価した。その結果、6つの試験で無作為に割り付けられた5,760人の患者のうち、2,159人(37.5%)の原発性腫瘍の位置及びRAS遺伝子変異の有無を調べたところ、プールされた対照群及び実験群の両方において、右側腫瘍の患者が左側の腫瘍の患者に比べて有意に予後が悪いことが分かった(OS(HR2.03(95%CI:1.69~2.42)及び1.38(1.17~1.63))、PFS(HR1.59(1.34~1.88)及び1.25(1.06~1.47))、並びにORR(OR0.38(0.28~0.50)及び0.56(0.43~0.73))。
予測効果の観点から、化学療法+EGFR抗体療法は、左側腫瘍の患者では、OS及びPFSにおいて、それぞれ(HR0.75(0.67~0.84)及び0.78(0.70~0.87)の有意な効果が認められたのに対し、右側腫瘍の患者では、OS及びPFSにおいて、それぞれ(HR1.12(0.87~1.45)及び1.12(0.87~1.44)の有意な効果が認められず、P値はそれぞれ<0.001及び0.002であった。ORRについては、右側腫瘍の患者(HR 1.47(0.94~2.29))と比較して、左側腫瘍の患者(HR 2.12(1.77~2.55))では、化学療法+EGFR抗体療法の有益性が高いという傾向(P値0.07)が見られた。
この解析では、RAS WT及び/又はKRAS WTのmCRC患者において、右側腫瘍の患者は左側腫瘍の患者に比べてOS、PFS、及びORRの予後がより悪く、腫瘍側の予測効果があり、化学療法とセツキシマブの併用は、化学療法又は化学療法及びベバシズマブの併用に比べて効果が大きく、その効果は左側腫瘍の患者で最も大きいことが示されているが、この結果はこれらの試験の患者のサブ集団に基づくものであり、解析はレトロスペクティブに実行されている。
【0018】
非臨床試験データ
αv-インテグリンは、多くの腫瘍の適応症にわたって原発性腫瘍及び転移性腫瘍の様々な腫瘍細胞、腫瘍浸潤脈管、及び腫瘍間質細胞に発現している。
好ましくは、アビツズマブは、血管新生を阻害することにより、間質を改変することにより、及び/又は腫瘍細胞を直接標的とすることにより、腫瘍の進行を阻害する力を有する。インビトロにおいて、アビツズマブは、内皮細胞のEMCへの接着、フォーカルコンタクトの不安定化、内皮細胞の移動、血管新生成長因子シグナルの伝達、及び/又は内皮細胞の生存率など、腫瘍の血管新生に関わる複数の側面を好ましく阻害することが示されている。インビボにおいて、アビツズマブの血管新生阻害効果は、好ましくは様々な動物モデルで実証されている。
アビツズマブは、好ましくは、腫瘍細胞にも直接作用する。アビツズマブは、好ましくは、αvインテグリンリガンドへの腫瘍細胞の接着を減少させる。アビツズマブは、好ましくは、αv-インテグリンヘテロダイマーの発現量が異なる、異なる適応症の複数の腫瘍異種移植モデルにおいて、腫瘍の成長を阻害する。アビツズマブは、単剤療法に加えて、様々なモデルにおいて、複数の化学療法剤及びセツキシマブの効果を高めることが示され得る。
カニクイザルを用いたアビツズマブの反復投与毒性試験における安全性薬理評価では、循環器系、呼吸器系などの主要な身体システム又は臨床行動に関連する所見は認められなかった。6ヵ月間の慢性静脈内投与による毒性試験では、心拍数、QTc間隔を含む心電図パラメータに、治療に関連した障害は認められなかった。
要約すると、本明細書で提供される科学的証拠は、アビツズマブを脈管新生阻害活性及び直接抗腫瘍活性を有する薬剤として使用することを支持するものであり、この薬剤を単独で、又は標準治療(SoC)治療オプションと組み合わせて、若しくは好ましくはセツキシマブを含むがこれに限定されない成長因子ターゲティングモノクローナル抗体又は成長因子受容体ターゲティングモノクローナル抗体及び/又は化学療法と組み合わせて投与すると、好ましくは本明細書に記載されているように、大腸癌、特に転移性大腸癌の治療に驚くほど有利な治療コンセプトを提供することができる。
【0019】
臨床試験データ
KRAS WT mCRC患者を対象としたフェーズI/II試験
EMR 62242-004「POSEIDON試験7」は、KRAS遺伝子変異を有するmCRC患者の第二選択治療として、アビツズマブを2用量(500ミリグラム及び1,000ミリグラム静注)でセツキシマブ+イリノテカンと併用する方法、及びセツキシマブ+イリノテカン単独で投与する方法を調査する、非盲検、多施設共同の無作為化比較フェーズI/II試験である。KRAS WT mCRC患者は、オキサリプラチンを含む治療レジメンによる一次化学療法に抵抗性又は進行性である場合、登録の対象となった。
本試験は、セツキシマブ+イリノテカンとの併用において、異なる用量レベルのアビツズマブを繰り返し投与した際の安全性及び忍容性プロファイルを明らかにするためのフェーズI/II試験の用量設定/安全性試験である。本試験では、2種類のアビツズマブの投与量の抗癌作用をPFSの観点から評価することを主要な目的とした。
副次的な目的は、全生存期間(OS)、腫瘍進行までの期間(TTP)、腫瘍反応(固形腫瘍における反応評価基準[RECIST]、第1.0版)、治療失敗までの期間(TTF)に関して、アビツズマブの2つの投与量の有効性を評価することであった。
その他の目的としては、血中に循環している、及び/若しくは腫瘍に発現している候補タンパク質、及び有効性並びに安全性の評価項目との関係を調べることにより、調査中の治療に対する反応を予測するマーカーとなり得るものを同定することが挙げられる。
合計232名の患者が登録され、試験のフェーズI部分に16名、無作為のフェーズII部分に216名が登録された。
フェーズII部分では、73名の患者が、アビツズマブ500ミリグラム静注とセツキシマブ+イリノテカンの併用グループ、71名がアビツズマブ1000ミリグラム静注とセツキシマブ+イリノテカンの併用グループ、72名がセツキシマブ+イリノテカン単独グループに無作為に割り当てられた。パープロトコール(PP)解析セットの患者数は、197名(アビツズマブ500ミリグラムとセツキシマブ+イリノテカンの併用グループ66名、アビツズマブ1000ミリグラムとセツキシマブ+イリノテカンの併用グループ65名、セツキシマブ+イリノテカン単独グループ66名)だった。プロトコルに重大な逸脱があった患者の発生率は低く、全ての治療グループでおおむね同程度であった。
【0020】
ITT集団における有効性の結果
有効性の主要評価項目は、治験責任医師の評価に基づくPFSとした。データカットオフ日の時点で、アビツズマブ500ミリグラムとセツキシマブ+イリノテカンの併用グループ及びアビツズマブ1000ミリグラムとセツキシマブ+イリノテカンの併用グループのセツキシマブ+イリノテカン単独群に対するCox比例ハザードモデルによる推定HRは、それぞれ1.13(95%CI:078、1.64)及び1.11(95%CI:0.77、1.61)であり、両グループ間に差はなかった。PFS期間の中央値は、アビツズマブ500ミリグラムをセツキシマブ+イリノテカンの併用グループ、アビツズマブ1000ミリグラムをセツキシマブ+イリノテカンの併用グループ、セツキシマブ+イリノテカン単独グループで同等であった(それぞれ5.4ヵ月[95% CI:4.1, 6.0]、5.6ヵ月[95% CI:4.1, 6.9]、5.6ヵ月[95% CI: 4.2, 6.9])。
OS解析の結果から、アビツズマブが良好な所見を示す可能性が示された。イベント(あらゆる原因による死亡)が発生した患者の数と割合は、アビツズマブとセツキシマブ+イリノテカンの併用グループがセツキシマブ+イリノテカン単独グループよりも少なく、それぞれ、アビツズマブ500ミリグラムとセツキシマブ+イリノテカンの併用グループでは39名(53.4%)、アビツズマブ1000ミリグラムとセツキシマブ+イリノテカンの併用グループでは35名(49.3%)、セツキシマブ+イリノテカン単独グループでは45名(62.5%)であった。アビツズマブ500ミリグラム、1000ミリグラムとセツキシマブ+イリノテカン併用グループとセツキシマブ+イリノテカン単独グループのHRは、それぞれ0.83(95%CI:0.54、1.28)、0.80(95%CI:0.52、1.25)であり、アビツズマブが有利であることがわかった。OSの中央値は、それぞれアビツズマブ500ミリグラムとセツキシマブ+イリノテカンの併用では15.0カ月(95%CI:10.9、19.2)、アビツズマブ1000ミリグラムとセツキシマブ+イリノテカンの併用では14.4カ月(95%CI:9.8、19.3)、セツキシマブ+イリノテカンの単独では11.6カ月(95%CI:9.8、15.7)であった。
【0021】
探索的バイオマーカーの結果
以下のハイレベルな概要は、主なバイオマーカーの知見をまとめたものである:
免疫組織化学に基づくターゲット(αvβ3、αvβ5,αvβ6,αvβ8、パンαvβ)とターゲットリガンド(オステオポンチン、ビトロネクチン)の発現解析を実施した。
インテグリンαvβ6の高発現は、負の予後(セツキシマブ+イリノテカン単独グループでの短い生存期間を予測)として同定され、アビツズマブ治療によるOSの延長を予測する指標として同定された。αvβ6バイオマーカーのサブセットは、POSEIDON試験の無作為化パートのITT集団の91%にあたる197名の患者から構成されている。
更に、インテグリンαvβ3、αvβ5、αvβ8、パンαvβ、オステオポンチンなどの候補マーカーの免疫組織化学検査を実施したが、テストしたいずれの追加のマーカーも予後又は予測に相関性を示さなかった。
αvβ6のヒストスコアが高い患者のOSに対するVEGFを含む第一選択治療の影響を分析したところ、HRに関しては2群間で差がなかった。
【0022】
免疫原性の結果
アビツズマブに対する中和抗体が陽性となった患者がいなかったことから、アビツズマブの免疫原性特性は有利に肯定的である。
【0023】
安全性の結果
本試験では、セツキシマブ+イリノテカン単独グループの1名を除き、全ての患者に1つ以上の治療中AEが発生した。3つの試験薬のうち少なくとも1つに関連していると考えられたTEAEが発生した患者の数と割合は、3群グループ間で同程度であり、アビツズマブに関連していると考えられたTEAEが発生した患者の数と割合は、アビツズマブ500ミリグラムのグループで35名(48.6%)、1000ミリグラムのグループで39名(56.5%)であった。
グレード3以上のTEAEは、アビツズマブ500ミリグラム及び1000ミリグラムのグループで、セツキシマブ+イリノテカン単独グループと比較して、わずかに高い頻度で報告された(それぞれ、52名[72.2%]、54名[78.3%]、49名[67.1%]の患者)。アビツズマブの投与を中止するに至ったTEAEは、アビツズマブ500ミリグラムのグループと1000ミリグラムのグループで、それぞれ16名(22.2%)と12名(17.4%)の患者に報告され、投与量との明らかな関係はなかった。重篤なTEAEの発生率は、アビツズマブ1000ミリグラム治療グループが他の治療グループに比べて最も高く、アビツズマブ500ミリグループ、アビツズマブ1000ミリグラムグループ、セツキシマブ+イリノテカン単独グループでは、それぞれ26名(36.1%)、34名(49.3%)、29名(39.7%)の患者であった。致命的な結果をもたらしたTEAEは、それぞれ9名(12.5%)、7名(10.1%)、6名(8.2%)の患者に発生した。
結論として、POSEIDON試験におけるアビツズマブの250ミリグラムから1000ミリグラムへの増量は、良好な忍容性を示し、安全性に関する重大な懸念は認められなかった。
【0024】
バイオマーカーの結果
POSEIDON試験では、免疫組織化学によるαvβ6の発現を事前に検査することが計画されていた。αvβ6の発現量が高い場合と低い場合は、これらの患者の生存率の予後を左右するマーカーになると考えられ、αvβ6が高発現している患者はアビツズマブによる治療が有効であると考えられた(
図3)。
アビツズマブの追加が最も効果的な患者集団を特定するために、更なる分析が実行された。αvβ6の高発現は、腫瘍に発現すると生存率の負の予後因子となることが示唆されているため、セツキシマブ+イリノテカン単独での治療効果は限定的とみられる。更に、αvβ6の高発現がアビツズマブの奏効予測因子であることが判明していることから、αvβ6インテグリン阻害剤としてのアビツズマブは、これらの患者のサブセットにおいてPFS及びOSの延長をもたらすと推測される。
【0025】
αvβ6が高発現している左側集団における有効性の結果(POSEIDON)
POSEIDON試験のデータを再評価した結果、約73%の患者において、腫瘍の位置は結腸の左側にあり、アビツズマブとセツキシマブ+イリノテカン併用グループとセツキシマブ+イリノテカン単独グループの間で均等に分布していることが判明した。国際ガイドライン(NCCN、ESMO2017)によるRAS WT及び/又はKRAS WT mCRCにおける左側腫瘍の推奨に基づき、POSEIDON試験データを用いて更に探索的な解析を実行し、αvβ6が高発現している左側患者におけるアビツズマブによる治療効果を、右側CRCと比較して検討した。驚くべきことに、左側CRC患者集団において非常に良好な治療効果が認められた。
【表2】
【0026】
左側大腸癌
左側大腸癌及び左側結腸癌という用語は、癌又は腫瘍のそれぞれの局在を含めて当業界では知られており、理解されており、「右側大腸癌」又は「右側結腸癌」と区別できる。本発明によれば、「左側大腸癌」及び「左側結腸癌」を治療する方法が好ましい。
更に詳しく言うと、結腸の近位部及び遠位部は、好ましくは発生学的に異なる起源を持っていると考えられる。盲腸から横行結腸の近位3分の2までの部分は、好ましくは中腸に由来すると考えられる。横行結腸の遠位3分の1から上部肛門管までを含む部分は、後腸に由来すると考えるのが好ましい。遠位横行結腸を右結腸と左結腸の境界と考えた場合、右結腸は盲腸、上行結腸、肝弯曲、及び横行結腸を含むのが好ましく、左結腸は脾弯曲、下行結腸、及びS状結腸を含むのが好ましい。これらの知見に基づき、大腸癌は、右結腸癌、左結腸癌、直腸癌の3つの異なる疾病に分けられることが示唆され、例えば、Michal Mik, Maciej Berut, Lukasz Dziki, Radzislaw Trzcinski, Adam Dziki; Arch Med Sci 2017; 13, 1: 157-162を参照し、これらの開示は、好ましくは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
より具体的には、本発明との関係において、「左側大腸癌」及び「左側結腸癌」は、好ましくは直腸を含み、より好ましくは直腸を除く、結腸の一部であり、結腸彎曲部である自然な解剖学的離線によって定義されるものである。
本発明との関係では、左側大腸癌又は左側結腸癌は、前記結腸彎曲部の左側の組織に位置する癌と定義される。従って、本発明との関係では、結腸彎曲部の右側に位置する癌、好ましくは横行部を含む癌を、「右側大腸癌」又は「右側結腸癌」とみなす。
癌又は腫瘍を実際に診断する方法、及び/又は左側として局所化する方法は、当技術分野で知られており、理解されている。好ましくは、解剖学的、光学的、又はセンサー的に、好ましくは光学的に、例えば、手術中に探索的に、又は大腸内視鏡を用いて、左側と判定する。しかし、CT、MRT、MRI、X線、超音波、及び医療用超音波などを含む(ただし、これらに限定されない)イメージング方法は、ヒト、ヒトの患者、又は患者が左側CRC及び/又はmCRCを有しているかどうかを判断するのにも同様に適している。詳細は、米国癌協会の「大腸癌検診ガイドライン」も参照する。
【0027】
αvβ6インテグリンの高発現
CRC及び/又はmCRCの状況下で、αvβ6インテグリンの高発現を判定する方法は、当技術分野で知られており、理解されている。既知の手順としては、免疫組織化学などの組織学的手法により、好ましくは腫瘍組織を用いてαvβ6インテグリンの発現を測定することが挙げられる。それらの適切な方法は、当技術分野で知られており、例えば、Simon L. Goodman, Hans Juergen Grote and Claudia Wilm; Biology Open 1, 329-340 (2012)に記載され、その開示内容は好ましくは参照により本文書に含まれる。
インテグリンαvβ3、αvβ5、αvβ6、αvβ8、及びパンαvの発現、特にαvβ6インテグリンの発現は、好ましくは、ホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍組織の免疫組織化学を用いて評価され、前記の通りGoodman SL, Grote HJ, Wilm C. “Matched rabbit monoclonal antibodies against αv-series integrins reveal a novel αvβ3-LIBS epitope, and permit routine staining of archival paraffin samples of human tumors”. Biol Open 2012; 1: 329-340に記載され、これらの開示は、好ましくは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
染色の強度及び頻度のデータを用いて、0~300の連続スケールでヒストスコアを算出したが、前記の通りPirker R, Pereira JR, von Pawel J et al. “EGFR expression as a predictor of survival for first-line chemotherapy plus cetuximab in patients with advanced non-small cell lung cancer: analysis of data from the phase 3 FLEX study”. Lancet Oncol 2012; 13: 33-42に記載され、これらの開示は、好ましくは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
好ましくは、このようにして得られた免疫組織化学的に染色されたFFPEサンプルを病理学的に評価する。一般的に、病理医は優勢な染色強度を定量化し、染色パターンを特定し、陽性に染色された腫瘍組織の割合を推定する。好ましくは、免疫組織化学的に染色された腫瘍組織の半定量的評価であるHスコア分類を適用し、好ましくは、上記で引用したMcCarty KS Jrらの1985年に記載された手順に従う。従って、陰性(0)、弱く染まった(1)、中程度に染まった(2)、強く染まった(3)部分は、腫瘍組織の割合として推定することが好ましい。その後、それぞれのヒストスコア(Hスコア)を以下のように算出することが好ましい。
Hスコア=(弱)%+(中)%×2+(強)%×3
得られたヒストスコアは、好ましくは以下のように分類される。
【0028】
【0029】
本発明との関係では、αvβ6インテグリンの発現は、区分が少なくとも弱陽性であれば、好ましくは中程度の陽性であれば、更に特に強陽性であれば、高いと分類される。
また、中央値以上のαvβ6インテグリンの発現は、好ましくはαvβ6インテグリンの高発現とも言える。
より好ましくは、本発明による使用において、高いαvβ6インテグリンの発現は、ヒストスコア、好ましくは本明細書及び/又はこの点で本明細書に引用された文献に記載されているように得られたヒストスコア、若しくは本明細書に記載及び/又は引用されている方法に類似して得られたヒストスコアが、60よりも高く(>60)、好ましくは70よりも高く(>70)、より好ましくは80よりも高く(>70)、更に好ましくは90よりも高く(>90)、特に100よりも高い(>100)ことによって特徴付けられる。しかし、>110、>120、>130、>140、>150、>160、>170、>180、>190、>200など、更に高いヒストスコアも同様に好ましい。
しかし、POSEIDON試験では、70以上のヒストスコアが、アビツズマブ治療において「αvβ6インテグリンの高発現」という基準を満たすための適切な閾値であることが明らかにされている。
【0030】
RAS野生型及び/又はKRAS野生型の状態
大腸癌及び/又は転移性大腸癌におけるRAS検査の重要性、及びその決定のための方法、好ましくはRAS野生型及び/又はKRAS野生型の状態の決定のためのものを含むがこれに限定されないものは、当技術分野で知られており、理解されており、例えば、以下に記載されている。J Han JM Van Krieken, Etienne Rouleau, Marjolijn J. L. Ligtenberg, Nicola Normanno,Scott D. Patterson, Andreas Jung, Virchows Arch (2016) 468:383-396。
CRC及び/又はmCRC患者のRAS WT、KRAS WT及び/又はNRAS WTの状態を判定するための適切な検査は、世界中で市販されており、世界中の病院で実施されており、好ましくはEMA及び/又はFDAの承認を受けている。RAS WT、KRAS WT及び/又はNRAS WTの状態を決定するための適切な試験及び試験手順は、本明細書の実験セクションに記載されている。
更に、N.Normanno、R.Esposito Abate、M.Lambiase、L.Forgione、C.Cardone、A.Iannaccone、A.Sacco、A.M.Rachiglio、E.Martinelli、D.Rizzi、S.Pisconti、M. Biglietto、R.Bordonaro、T.Troiani、T.P.Latiano、F.Giuliani、S.Leo、A.Rinaldi、E.Maiello、F.Ciardiello; Annals of Oncology 29: 112-118, 2018, J.Vidal et al, Annals of Oncology 28: 1325-1332, 2017, J. Grasselli et al., Annals of Oncology 28: 1294-1301, 2017に記載され、これらの開示は、好ましくはその全体が参照により本明細書に組み込まれるものであり、RAS WT、KRAS WT及び/又はNRAS WTの状態を決定するための好適な代替方法を記載している。
【0031】
本発明との関係では、RASは好ましくはKRAS及び/又はNRASを含み、好ましくはKRAS及びNRASの両方を含む。特に好ましくは、セツキシマブを含む本発明による治療法の場合、RASは好ましくはKRAS及びNRASからなる。それぞれの野生型の状態は、限定はしないが、セツキシマブ及びパニツムマブを含む、少なくとも幾つかの成長因子又は成長因子受容体を標的とするモノクローナル抗体の重要なバイオマーカーとなることがわかっている。しばらくの間、セツキシマブの効果は主にKRAS野生型の状態と関連付けられていたが、現在はRAS野生型の状態とも関連していることが好ましいとされている。これとは対照的に、パニツムマブの有効性は主にNRASの野生型の状態と関連している。しかし、パニツムマブの有効性は、好ましくは、RAS及び/又は野生型試験によっても評価することができ、例えば、Rafael G. Amado、Michael Wolf、Marc Peeters、Eric Van Cutsem、Salvatore Siena、Daniel J. Freeman、Todd Juan、Robert Sikorski、Sid Suggs、Robert Radinsky、Scott D. Patterson、及びDavid D. Chang、Clin Oncol 26:1626-1634 (2008)を参照でき、この開示内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
また、主要なガイドラインでは、左辺RAS WT mCRCの第一選択治療にセツキシマブが推奨されている(NCCNガイドライン第2版2017年更新の結腸癌;Arnold D, Cutsem E. V, Cervantes A, et al. Metastatic Colorectal Cancer: ESMO Clinical Practice Guidelines. Annals of Oncology. 2014;25 (suppl 3): iii1-iii9.)。
【0032】
本発明に従って好ましく使用されるRAS WT状態の判定は、好ましくは、例えばPOSEIDON試験の実施時に実行されたKRAS WT状態の判定とは異なる(KRASエクソン2変異のみが除外され、エクソン4及びNRASエクソン2~4の変異(=RAS変異)は除外されなかった)。従って、本発明による治療方法では、治療対象となる患者は、KRAS WT CRC/MCRC患者ではなく、RAS WT CRC/MCRC患者であることが好ましい。前記RAS検査の結果、KRASエクソン2~4及びNRASエクソン2~4の両方の変異(=RAS変異)を有する患者は、本発明の方法に従って治療を受けるべき好ましい患者サブグループから好ましくは除外される。
従って、RAS野生型の検査は、K好ましくはRAS変異型及びNRAS変異型の両方の患者を除外する。
結果として、RAS野生型の状態は、好ましくは、KRAS野生型の状態及びNRAS野生型の状態を含み、より好ましくは、KRAS野生型の状態及びNRAS野生型の状態を含む。
従って、本発明との関係において、RAS WT検査は、好ましくは、KRAS WT検査及び/又はNRAS WT検査を含み、好ましくは、KRAS WT検査及びNRAS WT検査の両方を含む。特に好ましくは、セツキシマブを含む本発明による治療法の場合、RAS WT検査は、好ましくはKRAS WT検査及びNRAS WT検査からなる。
従って、本発明の好ましい対象は、以下の通りである。
【0033】
[1]ヒトの大腸癌を治療する方法であって、それを必要とするヒトにアビツズマブを投与することを含み、前記大腸癌が高いαvβ6インテグリン発現を有する、前記方法。
[2]ヒトの大腸癌を治療する方法であって、それを必要とするヒトにアビツズマブを投与することを含み、前記大腸癌が左側大腸癌である、前記方法。
[3]本明細書、好ましくは上記及び/又は下記に記載の左側大腸癌を治療する方法であって、それを必要とするヒトにアビツズマブを投与することを含み、前記左側大腸癌が高いαvβ6インテグリン発現を有する、前記方法。
[4]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[1]、[2]、又は[3]のセクションの1つ以上に記載の方法であって、それを必要とするヒトが、少なくとも1つの成長因子又は成長因子受容体を標的とするモノクローナル抗体、及び/又は化学療法も受ける、前記方法。
[5]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[1]、[2]、[3]、及び/又は[4]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、前記大腸癌がステージII、ステージIII、又はステージIVの大腸癌である、前記方法。
[6]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[1]、[2]、[3]、[4]、及び/又は[5]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、前記大腸癌が、転移性大腸癌又は左側転移性大腸癌である、前記方法。
[7]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[1]、[2]、[3]、[4]、[5]、及び/又は[6]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、前記大腸癌が、左側大腸癌又は左側転移性大腸癌であり、αvβ6インテグリンが高発現している、前記方法。
[8]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[1]~[7]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、前記大腸癌が、RAS野生型及び/又はKRAS野生型の大腸癌である、前記方法。
[9]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[1]~[8]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、前記大腸癌が、RAS野生型及び/又はKRAS野生型の左側大腸癌、若しくはRAS野生型及び/又はKRAS野生型の左側転移性大腸癌である、前記方法。
[10]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[1]~[9]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、前記大腸癌が、ステージII、ステージIII、又はステージIVのRAS野生型及び/又はKRAS野生型の左側大腸癌、若しくはRAS野生型及び/又はKRAS野生型の左側転移性大腸癌であり、αvβ6インテグリンが高発現している、前記方法。
【0034】
[11]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[1]~[10]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、前記大腸癌が、RAS野生型及び/又はKRAS野生型の左側転移性大腸癌であり、αvβ6インテグリンが高発現している、前記方法。
[12]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[1]~[11]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、前記左側大腸癌が新たに診断された大腸癌である、前記方法。
[13]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[1]~[12]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、第一選択治療において適用される、前記方法。
[14]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[4]~[13]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、併用療法の環境で適用される、前記方法。
[15]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[4]~[14]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、アジュバント療法の環境で適用される、前記方法。
[16]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[4]~[15]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、ネオアジュバント療法の環境で適用される、前記方法。
[17]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[4]~[15]のセクションの1つ以上に記載の方法であって、ヒトが、前記アビツズマブと同時に、前記少なくとも1つの成長因子又は成長因子受容体を標的とするモノクローナル抗体及び/又は前記任意の化学療法を受けることを特徴とする、前記方法。
[18]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[4]~[16]のセクションの1つ以上に記載の方法であって、少なくとも1つの成長因子又は成長因子受容体を標的とするモノクローナル抗体が、セツキシマブ、ベバシズマブ及び/又はパニツムマブを含む、前記方法。
[19]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[4]~[18]のセクションの1つ以上に記載の方法であって、少なくとも1つの成長因子又は成長因子受容体を標的とするモノクローナル抗体が、セツキシマブ及びベバシズマブからなる群から選択される、前記方法。
[20]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号のセクションに記載、特に番号[5]~[18]のセクションの1つ以上に記載の方法であって、化学療法が、イリノテカン、フルオロウラシル(5-FU)、又はそのプロドラッグ、好ましくはカペシタビン及び/又は5-フルオロシトシン、テガフール/ウラシル(UFT)、フォリン酸(ロイコボリン)、オキサリプラチン(エロキサチン)、アフリベルセプト、レゴラフェニブ、カペシタビン、及びそのプロドラッグ、並びにそれらの塩及び溶媒和物からなる群から選択される1つ以上の化合物を含む、前記方法。
【0035】
[21]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[4]~[20]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、化学療法がFOLFIRIプロトコルに従って実施される、前記方法。
[22]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[4]~[20]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、化学療法がFOLFOXプロトコルに従って実施される、前記方法。
[23]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[4]~[22]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、化学療法が
a)イリノテカン、フルオロウラシル(5-FU)、及びフォリン酸(ロイコボリン)から選択される1つ以上の化合物、並びにそのプロドラッグ、
又は
b)オキサリプラチン(例、エロキサチン)、フルオロウラシル(5-FU)、及びフォリン酸(例、ロイコボリン)、並びにそれらのプロドラッグから選択される1つ以上の化合物、
及びその塩及び溶媒を含む、前記方法。
[24]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[1]~[23]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、アビツズマブが、1週間あたり375ミリグラム~750ミリグラムの量で、隔週で750ミリグラム~1500ミリグラムの量で、又は1ヶ月あたり1500ミリグラム~3000ミリグラムの量で、ヒトに投与される、方法。
[25]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[1]~[24]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、アビツズマブが、1週間あたり約500ミリグラムの量で、隔週で約1000ミリグラムの量で、又は1ヶ月あたり約2000ミリグラムの量で、ヒトに投与されることを特徴とする。
[26]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[1]~[25]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、アビツズマブが、少なくとも6サイクル、好ましくは少なくとも8サイクル、より好ましくは少なくとも10サイクル、特に少なくとも12サイクルヒトに投与され、各サイクルが約1週間、約2週間、約4週間、又は約1カ月の期間を有する、前記方法。
[27]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[1]~[26]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、アビツズマブが、少なくとも6サイクル、好ましくは少なくとも8サイクル、より好ましくは少なくとも10サイクル、特に少なくとも12サイクルヒトに投与され、各サイクルが約2週間の期間を有する、前記方法。
[28]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[4]~[27]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、少なくとも1つの成長因子又は成長因子受容体を標的とするモノクローナル抗体が、1週間あたり75ミリグラム~1000ミリグラム、隔週で150ミリグラム~2000ミリグラム、又は1ヶ月あたり300ミリグラム~4000ミリグラムの量でヒトに投与される、前記方法。
[29]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[18]~[28]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、セツキシマブは、1週間あたり約150ミリグラム/平方メートル~550ミリグラム/平方メートル、2週間に約300ミリグラム/平方メートル~1100ミリグラム/平方メートル、又は1ヶ月あたり約600ミリグラム/平方メートル~2200ミリグラム/平方メートルの量でヒトに投与される。
[30]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[18]~[29]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、セツキシマブが、少なくとも6サイクル、好ましくは少なくとも8サイクル、より好ましくは少なくとも10サイクル、特に少なくとも12サイクルにわたってヒトに投与され、各サイクルが約1週間、約2週間、約4週間、又は約1カ月の期間を有する、前記方法。
【0036】
[31]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[18]~[30]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、セツキシマブが、少なくとも6サイクル、好ましくは少なくとも8サイクル、より好ましくは少なくとも10サイクル、特に少なくとも12サイクルにわたってヒトに投与され、各サイクルが約2週間の期間を有し、前記セツキシマブが毎週又は隔週でヒトに投与される、前記方法。
[32]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[18]~[31]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、セツキシマブが、少なくとも6サイクル、好ましくは少なくとも8サイクル、より好ましくは少なくとも10サイクル、特に好ましくは少なくとも12サイクルにわたってヒトに投与され、各サイクルが約2週間の期間を有し、セツキシマブが
a)各サイクル中、好ましくは各サイクルの開始時に、約500ミリグラム/平方メートルの量、
又は
b)各サイクルの第1週目の初めに約400ミリグラム/平方メートルの量で、各サイクルの第2週目の初めに約250ミリグラム/平方メートルの量
のいずれかで投与される、前記方法。
[33]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[18]~[28]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、ベバシズマブが、1週間あたり約1ミリグラム/キログラム~10ミリグラム/キログラム、隔週で3ミリグラム/キログラム~15ミリグラム/キログラム、又は1ヶ月あたり約6ミリグラム/キログラム~30ミリグラム/キログラムの量で、ヒトに投与される、前記方法。
[34]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[18]~[28]、及び[33]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、ベバシズマブが、少なくとも6サイクル、好ましくは少なくとも8サイクル、より好ましくは少なくとも10サイクル、特に少なくとも12サイクルにわたってヒトに投与され、各サイクルが約1週間、約2週間、約4週間、又は約1カ月の期間を有する、前記方法。
[35]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[18]~[28]、及び[33]~[34]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、ベバシズマブが、少なくとも6サイクル、好ましくは少なくとも8サイクル、より好ましくは少なくとも10サイクル、特に少なくとも12サイクルにわたってヒトに投与され、各サイクルが約2週間の期間を有し、前記ベバシズマブが毎週又は隔週でヒトに投与される、前記方法。
[36]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[18]~[28]、及び[33]~[35]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、ベバシズマブが、少なくとも6サイクル、好ましくは少なくとも8サイクル、より好ましくは少なくとも10サイクル、特に好ましくは少なくとも12サイクルにわたってヒトに投与され、各サイクルが約2週間の期間を有し、前記ベバシズマブが
a)各サイクル中、好ましくは各サイクルの開始時に、3ミリグラム/キログラム~15ミリグラム/キログラムの量、又は5ミリグラム/キログラム~10ミリグラム/キログラムの量、
又は
b)各サイクル中、好ましくは各サイクルの開始時に、約7.5ミリグラム/キログラムの量
のいずれかで投与される、前記方法。
[37]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[18]~[28]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、パニツムマブが、1週間あたり約1ミリグラム/キログラム~10ミリグラム/キログラム、隔週で3ミリグラム/キログラム~15ミリグラム/キログラム、又は1ヶ月あたり約6ミリグラム/キログラム~30ミリグラム/キログラムの量で、ヒトに投与される、前記方法。
[38]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[18]~[28]、及び[37]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、パニツムマブが、少なくとも6サイクル、好ましくは少なくとも8サイクル、より好ましくは少なくとも10サイクル、特に好ましくは少なくとも12サイクルにわたってヒトに投与され、各サイクルが約1週間、約2週間、約4週間、又は約1カ月の期間を有する、前記方法。
[39]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[18]~[28]、及び[37]~[38]の2つ以上のセクションに記載の方法であって、パニツムマブが、少なくとも6サイクル、好ましくは少なくとも8サイクル、より好ましくは少なくとも10サイクル、特に少なくとも12サイクルにわたってヒトに投与され、各サイクルが約2週間の期間を有し、前記パニツムマブが毎週又は隔週でヒトに投与される、前記方法。
[40]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[18]~[28]、及び[37]~[39]の2つ以上のセクションに記載の方法であって、パニツムマブが、少なくとも6サイクル、好ましくは少なくとも8サイクル、より好ましくは少なくとも10サイクル、特に少なくとも12サイクルにわたってヒトに投与され、各サイクルが約2週間の期間を有し、前記パニツムマブが、
a)各サイクル中、好ましくは各サイクルの開始時に、3ミリグラム/キログラム~15ミリグラム/キログラムの量、又は4ミリグラム/キログラム~10ミリグラム/キログラムの量、
又は
b)各サイクル中、好ましくは各サイクルの開始時に、約6ミリグラム/キログラムの量
のいずれかの方法で投与される、前記方法。
【0037】
[41]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[29]から[32]までのセクション及び/又は番号[37]から[40]までのセクションの1つ以上のセクションに記載の方法であって、前記大腸癌が、RAS野生型及び/又はKRAS野生型の大腸癌である、前記方法。
[42]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[29]~[32]及び/又は番号[37]~[40]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、前記大腸癌が、RAS野生型及び/又はKRAS野生型の左側大腸癌、若しくはRAS野生型及び/又はKRAS野生型の左側転移性大腸癌であることを特徴とする。
[43]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[4]~[42]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、前記化学療法が、少なくとも6サイクル、好ましくは少なくとも8サイクル、より好ましくは少なくとも10サイクル、特に少なくとも12サイクルにわたってヒトに施され、各サイクルが約2週間の期間を有し、
a)前記イリノテカン、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物、
b)前記フォリン酸、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物、
及び/又は
c)前記フルオロウラシル(5-FU)、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物が、
各サイクル中、好ましくは各サイクルの開始時及び/又は各サイクルの各週の開始時に、ヒトに投与される、前記方法。
[44]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[4]~[43]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、ヒトが化学療法も受けており、前記化学療法が、
a)1週間あたり50ミリグラム/平方メートル~150ミリグラム/平方メートル、隔週で100ミリグラム/平方メートル~300ミリグラム/平方メートル、又は1ヶ月あたり200ミリグラム/平方メートル~600ミリグラム/平方メートルの量の、イリノテカン、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物、
b)1週間あたり150ミリグラム/平方メートル~250ミリグラム/平方メートル、隔週で300ミリグラム/平方メートル~500ミリグラム/平方メートル、又は1ヶ月あたり600ミリグラム/平方メートル~1000ミリグラム/平方メートルの量の、フォリン酸(ラセミ体)、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物、
及び/又は
c)1週間あたり150ミリグラム/平方メートル~250ミリグラム/平方メートル、隔週で300ミリグラム/平方メートル~500ミリグラム/平方メートル、又は1ヶ月あたり600ミリグラム/平方メートル~1000ミリグラム/平方メートルの量の、フルオロウラシル(5-FU)、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物
を含む、前記方法。
[45]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[4]~[44]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、ヒトが化学療法も受けており、前記化学療法が、
a)1週間あたり50ミリグラム/平方メートル~150ミリグラム/平方メートル、隔週で100ミリグラム/平方メートル~300ミリグラム/平方メートル、又は1ヶ月あたり200ミリグラム/平方メートル~600ミリグラム/平方メートルの量の、イリノテカン、並びにそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物、
b)1週間あたり150ミリグラム/平方メートル~250ミリグラム/平方メートル、隔週で300ミリグラム/平方メートル~500ミリグラム/平方メートル、又は1ヶ月あたり600ミリグラム/平方メートル~1000ミリグラム/平方メートルの量の、フォリン酸(ラセミ体)、並びにそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物、
及び/又は
c)1週間あたり1000ミリグラム/平方メートル~3000ミリグラム/平方メートル、隔週で2000ミリグラム/平方メートル~6000ミリグラム/平方メートル、又は1ヶ月あたり4000ミリグラム/平方メートル~12000ミリグラム/平方メートルの量、好ましくは隔週で2000ミリグラム/平方メートル~3200ミリグラム/平方メートルの量の、フルオロウラシル(5-FU)、並びにそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物
を含む、前記方法。
[46]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[4]~[45]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、前記化学療法が、少なくとも6サイクル、好ましくは少なくとも8サイクル、より好ましくは少なくとも10サイクル、特に少なくとも12サイクルにわたってヒトに施され、各サイクルが約1週間、約2週間、約4週間、又は約1カ月の期間を有する、前記方法。
[47]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[4]~[42]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、前記化学療法が、少なくとも6サイクル、好ましくは少なくとも8サイクル、より好ましくは少なくとも10サイクル、特に少なくとも12サイクルにわたってヒトに施され、各サイクルが約2週間の期間を有し、
a)前記オキサリプラチン、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物、
b)前記フォリン酸、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物、
及び/又は
c)前記フルオロウラシル(5-FU)、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物が、
各サイクル中、好ましくは各サイクルの開始時にヒトに投与される、方法。
[48]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載の、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[4]~[42]、及び[47]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、ヒトが化学療法も受けており、前記化学療法が、
a)1週間あたり20ミリグラム/平方メートル~120ミリグラム/平方メートル、隔週で40ミリグラム/平方メートル~240ミリグラム/平方メートル、又は1ヶ月あたり80ミリグラム/平方メートル~480ミリグラム/平方メートルの量の、オキサリプラチン、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物、
b)1週間あたり150ミリグラム/平方メートル~250ミリグラム/平方メートル、隔週で300ミリグラム/平方メートル~500ミリグラム/平方メートル、又は1ヶ月あたり600ミリグラム/平方メートル~1000ミリグラム/平方メートルの量の、フォリン酸(ラセミ体)、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物、
及び/又は
c)1週間あたり150ミリグラム/平方メートル~250ミリグラム/平方メートル、隔週で300ミリグラム/平方メートル~500ミリグラム/平方メートル、又は1ヶ月あたり600ミリグラム/平方メートル~1000ミリグラム/平方メートルの量の、5-FU、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物
を含む、前記方法。
[49]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[4]~[42]、及び[47]~[48]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、ヒトが化学療法も受けており、前記化学療法が、
a)1週間あたり20ミリグラム/平方メートル~120ミリグラム/平方メートル、隔週で40ミリグラム/平方メートル~240ミリグラム/平方メートル、又は1ヶ月あたり80ミリグラム/平方メートル~480ミリグラム/平方メートルの量の、オキサリプラチン、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物、
b)1週間あたり150ミリグラム/平方メートル~250ミリグラム/平方メートル、隔週で300ミリグラム/平方メートル~500ミリグラム/平方メートル、又は1ヶ月あたり600ミリグラム/平方メートル~1000ミリグラム/平方メートルの量の、フォリン酸(ラセミ体)、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物、
及び/又は
c)1週間あたり1000ミリグラム/平方メートル~3000ミリグラム/平方メートル、隔週で2000ミリグラム/平方メートル~6000ミリグラム/平方メートル、又は1ヶ月あたり4000ミリグラム/平方メートル~12000ミリグラム/平方メートルの量、好ましくは隔週で2000ミリグラム/平方メートル~3200ミリグラム/平方メートルの量の、5-FU、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物
を含む、前記方法。
[50]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[4]~[42]、及び[47]~[49]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、前記化学療法が、少なくとも6サイクル、好ましくは少なくとも8サイクル、より好ましくは少なくとも10サイクル、特に少なくとも12サイクルにわたってヒトに施され、各サイクルが約1週間、約2週間、約4週間、又は約1カ月の期間を有する、前記方法。
【0038】
[51]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[4]~[42]、及び[47]~[50]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、前記化学療法が、少なくとも6サイクル、好ましくは少なくとも8サイクル、より好ましくは少なくとも10サイクル、特に少なくとも12サイクルにわたってヒトに以下が投与され、各サイクルが約2週間の期間を有する、
a)オキサリプラチン、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物、
b)フォリン酸、並びに/若しくはそのプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物、及び/又は
c)5-FU、並びにその/若しくはプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物が、
各サイクル中、好ましくは各サイクルの開始時にヒトに投与される、前記方法。
[52]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[1]~[51]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、原発性腫瘍が結腸に位置している、方法。
[53]本明細書に記載、好ましくは上記及び/又は下記に記載、より好ましくは上記及び/又は下記の番号の付いたセクションに記載、特に番号[1]~[52]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、原発性腫瘍が結腸の左側に位置していることを特徴とする、前記方法。
[54]αvβ6インテグリンが高発現している患者におけるRAS野生型及び/又はKRAS野生型の左側転移性大腸癌(mCRC)の治療方法であって、前記患者にアビツズマブをセツキシマブ及び/又はFOLFIRIと併用して投与することを含む、方法。
[55]αvβ6インテグリンが高発現している患者におけるRAS野生型の左側転移性大腸癌(mCRC)の治療方法であって、前記患者にアビツズマブをセツキシマブ及びFOLFIRIと併用して投与することを含む、前記方法。
[56]αvβ6インテグリンが高発現している患者におけるRAS野生型及び/又はKRAS野生型の左側転移性結腸癌の治療方法であって、前記患者にアビツズマブをセツキシマブ及び/又はFOLFIRIと併用して投与することを含む、方法。
[57]αvβ6インテグリンが高発現している患者におけるRAS野生型及び/又はKRAS野生型の左側転移性結腸癌、又は転移性大腸癌の治療方法であって、前記患者にアビツズマブをセツキシマブ及び/又はイリノテカンと併用して投与することを含む、前記方法。
[58]αvβ6インテグリンが高発現している患者におけるRAS野生型の左側転移性結腸癌、又は転移性大腸癌の治療方法であって、前記患者にアビツズマブを、セツキシマブ及びイリノテカンと併用して、好ましくはフォリン酸及び/又は5-FUと併用して投与することを含む、前記方法。
[59]前記治療が第一選択治療である、セクション番号[54]~[58]の1つ以上に記載の方法。
[60]治療する転移性大腸癌及び/又は転移性大腸直腸癌が、ステージIII及び/又はステージIVの癌である、セクション番号[54]~[59]の1つ以上に記載の方法。
【0039】
[61]前記医薬品が、投与されるアビツズマブの量が隔週で約1000ミリグラム、又は1ヶ月あたり約2000ミリグラムとなるように患者に投与される、セクション番号[54]~[60]の1つ以上に記載の方法。
[62]高いαvβ6インテグリン発現を有する前記患者が、70より高い、好ましくは80より高い、より好ましくは90より高い、及び特に100より高い、120より高い、又は150より高いαvβ6インテグリンのヒストスコアを有する、セクション番号[54]~[61]の1つ以上に記載の方法。
[63]前記治療が少なくとも6サイクル、少なくとも8サイクル、少なくとも10サイクル、又は少なくとも12サイクルにわたって投与され、各サイクルが2週間又は約2週間で構成される、セクション番号[54]~[62]の1つ以上に記載の方法。
[64]前記アビツズマブ、前記セツキシマブ、及び/又は前記FOLFIRIを、隔週で、好ましくは2週間又は約2週間のサイクルで前記患者に投与する、セクション番号[54]~[63]の1つ以上に記載の方法。
[65]セクション番号[54]~[64]の1つ以上のセクションに記載された方法で、前記方法が更にセクション番号[1]~[53]の1つ以上のセクション記載のように定義される方法。
[65]セクション番号[1]~[64]の1つ以上のセクションに記載の方法であって、アビツズマブで治療されるヒト(複数可)又は患者(複数可)が、高いαvβ6インテグリン発現を有しており、好ましくは70より高い、好ましくは80より高い、より好ましくは90より高い、及び特に100より高い、120より高い、又は150より高いαvβ6インテグリンのヒストスコアによって定量化され、前記ヒストスコアがSimon L. Goodman, Biology Open 1, 329-340 (2012), and Histoscore classification performed according to McCarty Jr KS, Arch Pathol Lab Med 109: 716-721 (1985)に基づいて実施される免疫組織化学によって決定される、前記方法。
【0040】
従って、本発明の好ましい対象は、大腸癌、好ましくはαvβ6が高発現している左側CRC及び/又はmCRC患者の大腸癌、好ましくは第一選択治療を受けている患者の治療におけるアビツズマブの使用である。特に好ましいのは、RAS野生型(WT)及び/又はKRAS野生型のCRC及び/又はmCRC患者において、少なくとも1つの成長因子又は成長因子受容体を標的とするモノクローナル抗体、好ましくはセツキシマブ及びパニツムマブからなる群から選択されるモノクローナル抗体と併用して、大腸癌の治療にアビツズマブを使用することである。
【0041】
また、特に好ましいのは、好ましくは上記及び/又は下記のようなアビツズマブを、大腸癌の推奨される標準治療(SOC)と組み合わせて使用することであり、特に推奨される標準治療(SOC)の治療レジメン、好ましくは推奨される標準治療(SOC)の治療レジメン、
i)RAS WT CRC及び/又はmCRCの治療のためのSOC治療レジメン、
ii)KRAS WT CRC及び/又はmCRCの治療のためのSOC治療レジメン、
iii)左側RAS WT CRC及び/又はmCRCの治療のためのSOC治療レジメン、
iv)左側KRAS WT CRC及び/又はmCRCの治療のためのSOC治療レジメン、
v)左側RAS WT CRC及び/又はmCRCの第一選択治療のためのSOC治療レジメン、
vi)左側KRAS WT CRC及び/又はmCRCの第一選択治療のためのSOC治療レジメン、
からなる群から選択されるSOC治療レジメン、好ましくはセツキシマブ又はパニツムマブ、より好ましくはセツキシマブを含み、任意にFOLFIRI又はFOLFOXと併用し、好ましくはFOLFIRIと併用するSOC治療レジメン。これらの治療法は十分に確立されており、特に第一選択のRAS WT及び/又はKRAS WTのCRC及び/又はmCRCにおいて、好ましくは第一選択RAS WT及び/又はKRAS WTのmCRCにおいて、並びに最新の分析によれば、左側CRC及び/又はmCRCにおいて特に好ましく、更に好ましくは左側CRC及び/又はmCRCにおいて確立されている。
更に、主要なガイドラインでは、第一選択左側RAS WT及び/又はKRAS WT mCRCにおける本治療法を推奨している(参考:NCCNガイドライン11、ESMOガイドライン12)。
【0042】
上記及び/又は下記に記載したアビツズマブの使用、並びに本発明による治療方法は、確認されたRAS WT状態を有するヒト、複数のヒト、又はヒトの患者に関して特に好ましい。この患者群は、好ましくは、KRASエクソン2のみを除外し、エクソン4は除外せず及びNRASエクソン2~4の変異(=RAS変異)を除外したという点でKRAS WT状態が確認されたヒト又はヒト患者、例えばPOSEIDON試験で治療を受けたヒト又はヒト患者とは異なる。従って、RAS WT CRC患者は、KRAS WT CRC患者よりも本発明に従って治療することがより好ましい。従って、KRASエクソン2~4及びNRASエクソン2~4変異(=RAS変異)を有する患者は、本発明に従って治療されるべきヒト又はヒト患者の最も好ましい集団の一部ではない。更に、CRCでBRAF遺伝子変異を示すヒト又はヒト患者は、好ましくは異なる治療法を必要とする予後不良のCRC患者のサブセットとみなせる。しかし、BRAFの変異は、右側CRCで発生すると考えられている。
従って、本発明による方法の相乗効果は、特にアビツズマブ+セツキシマブ+イリノテカンを含む本発明による方法に関して、特にαvβ6インテグリンが高発現しているヒト、複数のヒト、又はヒト患者において、好ましくは確立されていると考えられる。
【0043】
従って、本発明によれば特に好ましいのは、CRC及び/又はmCRC、好ましくはmCRCを治療する方法であり、好ましくは本明細書に記載されているように、バックボーン治療の選択がイリノテカンベースの化学療法、好ましくはFOLFIRIであり、特に第一選択治療のためのものである。更に、セツキシマブ+FOLFIRIは、CRC及び/又はmCRCの国際ガイドラインでSOCとして推奨されており、特に左側RAS WT mCRCの治療にSOCとして推奨されている。好ましくは、バックボーン治療の選択は、特にこれらの第一選択治療の患者では、腫瘍生物学に基づいて実施される。本発明によれば、特に好ましいのは、治療レジメンに5-FUを加えることを含む、本明細書に記載のCRC及び/又はmCRC、好ましくはmCRCの治療方法である。従って、本発明との関係において特に好ましいのは、アビツズマブをセツキシマブ及びFOLFIRI(好ましくは5-FUを含む)に追加することを含む治療レジメンである。
また、セツキシマブ及び/又はFOLFOXを含むバックボーン治療、若しくはベバシズマブを含むバックボーン治療(任意でFOLFIRI又はFOLFOXとの併用)も好ましい。
【0044】
本明細書に記載の治療方法又は治療における使用において、アビツズマブは、好ましくは、1週あたり少なくとも250ミリグラムの量で、隔週で少なくとも500ミリグラムの量で、又は1ヶ月あたり少なくとも1000ミリグラムの量で、ヒト(複数可)、ヒト患者、又は患者に投与される。アビツズマブは、好ましくは、ヒト(複数可)、ヒト患者、又は患者に対して、1週間あたり最大1000ミリグラム以下、隔週で最大2000ミリグラム以下、又は1ヶ月あたり最大4000ミリグラム以下の量で投与される。好ましくは、アビツズマブは、いわゆる「フラットドージング」方式で投与され、全てのヒト、ヒトの患者、又は単なる患者が、体重又は体表面などとは無関係に、定義された量又は用量のアビツズマブを受け取ることを意味する。
他に明確に定義されていない場合、アビツズマブの投与は、好ましくは、ヒト/複数のヒト、ヒトの患者、又は単なる患者へのアビツズマブの投与を意味し、それに関して与えられる量は、好ましくは、ヒトあたり、ヒトの患者あたり、又は単なる患者あたりの量である。同じことが、好ましくは、本明細書に記載された本発明による治療方法、医療用途及び/又は治療レジメンとの関係における全ての活性成分、活性原理、又は医薬品に適用される。
より好ましくは、アビツズマブが、1週間あたり375ミリグラム~750ミリグラムの量で、隔週で750ミリグラム~1500ミリグラムの量で、又は1ヶ月あたり1500ミリグラム~3000ミリグラムの量で投与される。
更に好ましくは、アビツズマブが、1週間あたり450ミリグラム~550ミリグラムの量で、隔週で900ミリグラム~1100ミリグラムの量で、又は1ヶ月あたり1800ミリグラム~2200ミリグラムの量で投与される。
【0045】
典型的には、腫瘍治療は定義された時間間隔で繰り返され、その間隔は好ましくは「サイクル」と呼ばれる。「サイクル」という言葉は、当業界では知られており、理解されている。一般的に、1サイクルは、1週間以上、好ましくは1週間、2週間、3週間、又は4週間の間隔で、その後、特定のヒト、ヒトの患者、又は単なる患者に関して、基本的に同じ治療を繰り返すことである。本発明によれば、1サイクルは、特にアビツズマブの投与に関して、好ましくは2週間又は約2週間の期間を有する。
更に好ましくは、アビツズマブを1サイクルあたり900ミリグラム~1100ミリグラムの量で投与し、各サイクルは好ましくは2週間又は約2週間で構成される。
好ましくは、前記アビツズマブを各サイクルの初めに、好ましくは各サイクルの1日目又は2日目に、より好ましくは各サイクルの1日目に投与する。
特に好ましくは、アビツズマブを1サイクルあたり約1000ミリグラムの量で投与し、各サイクルは好ましくは2週間又は約2週間で構成される。好ましくは、前記アビツズマブを各サイクルの初めに、好ましくは各サイクルの1日目又は2日目に、より好ましくは各サイクルの1日目に投与する。
特に好ましくは、アビツズマブを1サイクルあたり約1000ミリグラムの量(フラットドーズ)で患者に投与し、各サイクルは好ましくは2週間又は約2週間で構成される。好ましくは、前記アビツズマブを各サイクルの初めに、好ましくは各サイクルの1日目又は2日目に、より好ましくは各サイクルの1日目に投与する。
【0046】
好ましくは、アビツズマブは、少なくとも1つの成長因子又は成長因子受容体を標的とするモノクローナル抗体、及び/又は化学療法と組み合わせて投与される。成長因子又は成長因子受容体を標的とするモノクローナル抗体は、当技術分野で知られている。好ましい成長因子又は成長因子受容体ターゲティングモノクローナル抗体は、セツキシマブ、ベバシズマブ、及び/又はパニツムマブからなり、好ましくは、前記成長因子又は成長因子受容体ターゲティングモノクローナル抗体は、セツキシマブ、ベバシズマブ、及び/又はパニツムマブの群から選択され、その中でもセツキシマブが特に好ましい。
セツキシマブ自体、及びセツキシマブを投与するための適切な投与法は、当技術分野で知られている。好ましくは、セツキシマブが、1週間に150ミリグラム/平方メートル~550ミリグラム/平方メートル、2週間に300ミリグラム/平方メートル~1100ミリグラム/平方メートル、1ヶ月に600ミリグラム/平方メートル~2200ミリグラム/平方メートル程度の量で投与される。
更に好ましくは、セツキシマブが、1週間に200ミリグラム/平方メートル~350ミリグラム/平方メートル、2週間に400ミリグラム/平方メートル~700ミリグラム/平方メートル、1ヶ月に800ミリグラム/平方メートル~1400ミリグラム/平方メートル程度の量で投与される。
更に好ましくは、セツキシマブを1サイクルあたり450ミリグラム~750ミリグラムの量で投与し、各サイクルは好ましくは2週間又は約2週間で構成される。
好ましくは、前記セツキシマブを2週間の各サイクルの最初に、好ましくは各サイクルの1日目又は2日目に、より好ましくは各サイクル(2週間又は約2週間からなる)の1日目に投与する、若しくは代わりに、投与するセツキシマブの量を2つに分け、1つの部分を各サイクルの1週目の最初に投与し、2つ目の部分を各サイクルの2週目の最初に投与することである。好ましくは、約1:1の比率、又は2:1~4:1の間の比率で分割され、特に好ましくは約3:2の比率で分割される。特に好ましくは、前記セツキシマブを1サイクル(2週間又は約2週間で構成)あたり約500ミリグラム/平方メートルの量で、好ましくは各サイクルの1日目又は2日目、より好ましくは各サイクルの1日目に投与する、若しくは1サイクルあたり約650ミリグラム/平方メートルの量で、最初の約400ミリグラム/平方メートルを各サイクルの第1週目の初めに投与し、残りの約250ミリグラム/平方メートルを各サイクルの第2週目(及び最終週)の初めに投与する。
【0047】
好ましくは、前記アビツズマブをFOLFIRIと併用して投与する。更に好ましくは、前記アビツズマブは、前記セツキシマブ及びFOLFIRIと併用して投与される。FOLFIRIは、フォリン酸(ロイコボリン)、フルオロウラシル(5-FU)、及びイリノテカン、並びに/若しくはそれらのプロドラッグ、塩、及び/又は溶媒和物を含み、より好ましくはフォリン酸(ロイコボリン)、フルオロウラシル(5-FU)、及びイリノテカン、並びに/若しくはそれらのプロドラッグ、塩、及び/又は溶媒和物から構成されている。
FOLFIRI自体、およびその投与方法は当業界では知られており、理解されている。好ましくは、FOLFIRIは、FOLFIRIプロトコルに従って投与される。更に好ましくは、下記のようにFOLFIRIを投与する。
【0048】
フォリン酸(好ましくはラセミ体のフォリン酸)、及び/又はそのプロドラッグ、塩、及び/又は溶媒和物は、それ自体、及びそのための適切な投与量がレジメンとして、当技術分野で知られている。好ましくは、1週間あたり150ミリグラム/平方メートル~250ミリグラム/平方メートルの量で、隔週で300ミリグラム/平方メートル~500ミリグラム/平方メートルの量で、又は1ヶ月あたり600ミリグラム/平方メートル~1000ミリグラム/平方メートルの量で投与される。より好ましくは、1サイクルあたり300ミリグラム/平方メートル~500ミリグラム/平方メートルの量で投与し、各サイクルは好ましくは2週間又は約2週間で構成される。更に好ましくは、1サイクルあたり約400ミリグラム/平方メートルの量で投与し、各サイクルは好ましくは2週間又は約2週間で構成される。好ましくは、各サイクルの初めに、好ましくは各サイクルの1日目又は2日目に、より好ましくは各サイクルの1日目に投与され、前記サイクルは2週間又は約2週間で構成される。
フルオロウラシル(5-FU)、及び/又はそのプロドラッグ、塩、及び溶媒和物、それ自体、及びそのための適切な投与量がレジメンとして、当技術分野で知られている。好ましくは、1週間あたり1000ミリグラム/平方メートル~3000ミリグラム/平方メートル、隔週で2000ミリグラム/平方メートル~6000ミリグラム/平方メートル、又は1ヶ月あたり4000ミリグラム/平方メートル~12000ミリグラム/平方メートルの量、より好ましくは隔週で2000ミリグラム/平方メートル~3200ミリグラム/平方メートルの量で投与される。更に好ましくは、1週間あたり1200ミリグラム/平方メートル~1500ミリグラム/平方メートル、隔週で2400ミリグラム/平方メートル~3000ミリグラム/平方メートル、又は1ヶ月あたり4800ミリグラム/平方メートル~6000ミリグラム/平方メートルの量、より好ましくは隔週で2000ミリグラム/平方メートル又は3000ミリグラム/平方メートルの量で投与される。更に好ましくは、1サイクルあたり、2000ミリグラム/平方メートル又は2800ミリグラム/平方メートルの量で投与し、各サイクルは好ましくは2週間又は約2週間で構成される。好ましくは、2週間の各サイクルの最初に、好ましくは各サイクルの1日目及び/又は2日目に投与される。より好ましくは、1日目に約400ミリグラム/平方メートルを静脈内ボーラス投与し、1日目及び/又は2日目に1回以上、合計約2400ミリグラム/平方メートルを静脈内に追加投与する、或いは1日目及び2日目に2400ミリグラム/平方メートルを持続的に投与する。
イリノテカン、及び/又はプロドラッグ、塩、及び溶媒和物、それ自体、並びにその投与のための適切な用量レジメンは、当技術分野で知られている。好ましくは、1週間あたり50ミリグラム/平方メートル~150ミリグラム/平方メートル、隔週で100ミリグラム/平方メートル~300ミリグラム/平方メートル、又は1ヶ月あたり200ミリグラム/平方メートル~600ミリグラム/平方メートルの量、より好ましくは1週間あたり80ミリグラム/平方メートル~100ミリグラム/平方メートルの量、隔週で160ミリグラム/平方メートル~200ミリグラム/平方メートルの量、又は1ヶ月あたり320ミリグラム/平方メートル~400ミリグラム/平方メートルの量で投与される。更に好ましくは、1サイクルあたり160ミリグラム/平方メートル~200ミリグラム/平方メートルの量で投与し、各サイクルは好ましくは2週間又は約2週間で構成される。好ましくは、各サイクルの初めに、好ましくは各サイクルの1日目又は2日目に、より好ましくは各サイクルの1日目に投与され、前記サイクルは2週間又は約2週間で構成される。
【0049】
1000ミリグラムのアビツズマブ投与により、試験を受けた最も多数の患者で、毒性の著しい増加を伴わない有効性が新たに確認されたことから、好ましくは2週間の投与間隔で、やはり好ましくは2週間又は約2週間のサイクルとして言及されたように、1000ミリグラムの投与が最も好ましいものとなった。また、前記1000ミリグラムの定常状態での投与では、2週間の投与間隔でアビツズマブの血清トラフ濃度が非線形クリアランス経路のIC99を常に上回っている。
好ましくは、前記1000ミリグラムのアビツズマブ投与量、好ましくは静脈内投与を、同じく好ましくは静脈内投与を行うセツキシマブ+FOLFIRIと組み合わせて、αvβ6インテグリンが高発現しているRAS WT、左側、mCRC患者、より好ましくは、αvβ6インテグリンが高発現しているRAS WT、左側、mCRCの新規診断患者、特に第一選択治療の対象となる患者に投与する。
【0050】
セツキシマブの投与にあたっては、現地の検査機関でRAS WT又はKRAS WTのmCRCであることを確認してから投与することが強く推奨される。中央検査室によるαvβ6インテグリンの高発現の判定は特に好ましく、スクリーニング時に実施することが好ましい。
好ましくは、αvβ6インテグリンの高発現が確認され、RAS WT又はKRAS WTの状態にある患者を、この点に関して標準治療のプロトコルに基づいて、アビツズマブ1000ミリグラム(2週目ごと=1サイクル)に加えて、セツキシマブ+FOLFIRIで治療する。
好ましくは、治療は少なくとも6サイクル、より好ましくは少なくとも8サイクル、特に少なくとも10サイクル継続される。典型的には、6サイクル又は8サイクル以上が投与される。典型的には、最大で約20サイクル、好ましくは約18サイクル、約16サイクル、約14サイクル、又は約12サイクルを実施する。しかし、各患者への投与サイクル数は、担当の腫瘍医が独自に決定する。
好ましくは、SoCに加えられた、より好ましくはセツキシマブ+FOLFIRIに加えられた本発明によるアビツズマブ治療は、無増悪生存期間(PFS)に関して、好ましくは治験責任医師による無増悪生存期間(PFS)に関して、SoCに比べて優れており、より好ましくはセツキシマブ+FOLFIRI単独に比べて優れている。
【0051】
好ましくは、本発明による治療方法は、以下の基準からなる群から選択される1つ以上の基準に関して、先行技術による治療レジメンよりも優れている。治験責任医師による全生存率(OS)、客観的奏効率(ORR)、奏効深度(DPR)、及び早期腫瘍縮小(ETS)。
より好ましくは、本発明による治療方法は、安全性及び忍容性に関して先行技術による治療レジメンと同等であり、好ましくはより高い有効性を考慮しても同等である。
従って、本発明による方法治療は、好ましくは、以下の与えられた特性の1つ以上において好ましい結果を示す。
・高い全生存率(OS)、
・高い客観的奏効率(ORR)、
・高い奏効深度(DPR)、及び
・早期腫瘍縮小(ETS)。
・治癒効果を意図した二次切除率が高くなる可能性。
・好ましい総合的な安全性プロファイル、例えば、以下の1つ以上において少なくとも妥当な結果が得られること:AE(重篤な結果を伴うAEを含む)の頻度、重症度及び重さ、中止に至ったAEの頻度及び性質、臨床的に有意な臨床検査項目及びバイタルサインの異常の頻度及び性質、抗薬剤抗体(結合及び/又は中和)の頻度。
【0052】
本発明による治療、特に本発明による好ましい治療の利益を得るためには、ヒト、ヒトの患者、又は患者は、好ましくは以下の基準の1つ以上、好ましくは2つ以上、特に3つ以上を満たさなければならない。
・転移性大腸癌、好ましくはステージIVの転移性大腸癌、より好ましくは新たに診断された転移性大腸癌、又は新たに診断されたステージIVの転移性大腸癌の証拠;
・結腸の左側(左脾彎曲部を含む)又は直腸に原発性腫瘍がある、若しくは好ましくは結腸の左側(左脾彎曲部を含む)に原発性腫瘍があることであって、直腸を除く;
・局所評価により、腫瘍(原発性腫瘍又は転移性腫瘍)に野生型RAS遺伝子変異状態が明らかにされていること;若しくは、好ましくは局所評価により、腫瘍(原発性腫瘍又は転移性腫瘍)に野生型KRAS遺伝子変異状態が明らかにされていること;
・腫瘍組織標本が、中央検査室での評価により、高いαvβ6インテグリン発現を示していること;若しくは、好ましくは、腫瘍組織標本(ホルマリン固定、パラフィン包埋ブロック)が、好ましくは一次切除の腫瘍組織標本及び/又は転移部位からの外科的サンプルが入手可能な場合の、腫瘍組織標本であること。
本発明による治療、特に本発明による好ましい治療の利益を得るためには、ヒト、ヒトの患者、又は患者は、好ましくはRAS又はBRAFの変異を持たず、特に実証されたRAS又はBRAFの変異を持たないものとする。
【0053】
本発明による特に好ましい投与レジメンは、以下に直接記載されており、以下を含む、又は好ましくは以下で構成されている。
治療は2週間のサイクルで静脈内投与され、各サイクル(2週間)は以下の内容で構成される。
セツキシマブ:
400ミリグラム/平方メートル(好ましくは120分かけて静脈内注入)、続いて
週に250ミリグラム/平方メートル(好ましくは60分かけて静脈内注入)
又は
500ミリグラム/平方メートルを2週間ごとに投与(好ましくは点滴で、最初は120分かけて投与し、その後60~90分で投与する)
+(セツキシマブの注入完了後60分[±5分])
アビツズマブ:
1000ミリグラム:2週間ごと(好ましくは60分かけて静脈内注入)
+(アビツズマブの注入完了後60分[±5分])
FOLFIRI:
2週間ごと
イリノテカン180ミリグラム/平方メートルを1日目に30~90分かけて静脈内投与
フォリン酸(好ましくはラセミ体)400ミリグラム/平方メートルを1日目に120分かけて静脈内投与
5-FU400ミリグラム/平方メートルをボーラスで1日目に投与
5-FU2400ミリグラム/平方メートルを好ましくは1~2日目の46時間かけて静脈内投与。
【0054】
しかし、セツキシマブ及びFOLFIRIは、地域の標準に沿って、及び国際的なガイドライン(NCCN、ESMOなど)の推奨に沿って投与されることが好ましい。セツキシマブ及びFOLFIRIの投与量の調整は、好ましくは添付文書又は地域で受け入れられている方法に従って、治験責任医師の裁量で実行される。
典型的には、セツキシマブを投与した後、アビツズマブ(若しくは他の成長因子又は成長因子受容体を標的とするモノクローナル抗体)及びFOLFIRI(若しくは他の化学療法、好ましくはFOLFOX)をそれぞれ投与するスケジュールとなる。
好ましくは、セツキシマブ(若しくは他の成長因子又は成長因子受容体を標的としたモノクローナル抗体)の注入終了からアビツズマブの注入開始まで、常に1時間空ける必要がある。好ましくは、アビツズマブの注入終了とFOLFIRI(若しくは他の化学療法、好ましくはFOLFOX)の注入開始の間に、それぞれ薬に関連する副作用の評価を可能にするために、常に1時間空けるべきである。
本発明による治療レジメンは、好ましくは最低6サイクル、より好ましくは最低8サイクル、特に最低10サイクル適用されるべきである。本発明による治療レジメンは、許容できない毒性が現れない限り、疾患が退縮又は疾患が進行するまで継続することが好ましい。
【0055】
アビツズマブ(EMD 525797)(mAb DI 17E6)は、好ましくは現在、静脈内注入用の滅菌溶液として入手可能である。アビツズマブは、安定剤及び等張化剤としての塩化ナトリウムを含む緩衝生理食塩水に、25ミリグラム/ミリリットルの溶液として製剤化するのが好ましい。
典型的には、アビツズマブ1000ミリグラムを1時間(±5分)かけて点滴静注する。一定の注入速度を得るために、マイクロプロセッサ制御の注入ポンプを使用するのが好ましい。
典型的には、アビツズマブの投与は、第1日目(好ましくはセツキシマブ(若しくは他の成長因子又は成長因子受容体を標的とするモノクローナル抗体)の注入完了後60分[±5分])、その後は2週間ごとに、すなわち好ましくは2週間又は約2週間の各サイクルの第1日目に実施される。
【0056】
治療やスクリーニングを実行する前に、現地の検査機関でRAS WT mCRCの確認をすることが望まれる。αvβ6インテグリンが高発現しているかどうかは、治療前及び/又はスクリーニングの段階で中央検査機関が判定することが好ましい。
スクリーニングは、以下の項目の1つ以上からなることが好ましい。
【表4】
【0057】
本発明による治療方法で取り組むべき好ましい目的には、好ましくは、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、奏効深度(DPR)、早期腫瘍収縮(ETS)、及び/又は潜在的に治癒的な意図を持つ二次切除率が含まれる。
奏効深度(DPR)は、治療中の腫瘍収縮率の最大値として決定するのが好ましい。
早期腫瘍縮小(ETS)は、最長の腫瘍径の合計がベースラインから20%以上減少した患者の割合として決定するのが好ましい。
治癒の可能性のある二次切除率は、好ましくは以下のように決定される。
試験治療中に転移性腫瘍の切除可能性が明らかになった患者は、転移性腫瘍の外科的切除を実行するべきである。
本臨床試験プロトコルの範囲内で、治癒目的で転移性腫瘍の二次的切除を実行する場合は、客観的寛解(CR又はPR)が事前に明らかにされる必要がある。
【0058】
登録及び推奨されている国際的な一般名(INN)「アビツズマブ」を持つ既知のモノクローナル抗αv抗体は、DI-17E6、DI17E6、EMR62242、又はEMD 525797とも呼ばれることがある。
アビツズマブは、α-vインテグリン(受容体)に対する、特別に適合するように調整されたIgG2ハイブリッドモノクローナル抗体である。本抗体の詳細は国際公開第2009/010290号に記載され、これらの開示は、好ましくは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0059】
アビツズマブの超可変領域(CDR)は、マウスmAb 17E6(EMD 73034)に由来する。この親マウスIgG1抗体は、例えば、Mitjansら(1995; J.Cell Sci. 108, 2825)、及び米国特許第5985278号並びに欧州特許第719859号に記載されている。マウスmAb 17E6は、ハイブリドーマ細胞株272-17E6によって産生され、アクセッション番号DSM ACC2160で寄託されている。
アビツズマブの軽鎖ドメインは、ヒト化モノクローナル抗EGFR抗体425(マツズマブ)に由来する。本抗体は、例えば、欧州特許第0531472B1号に詳細に記載され、マウスの対応する425(マウスMAb425、ATCC HB9629)に由来している。本抗体は、ヒトのA431癌細胞株に対して発現され、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)の外部ドメイン上のポリペプチドエピトープに結合することが分かった。マツズマブは、臨床試験で高い有効性を示している。
【0060】
一般的に、本発明に基づいて使用される抗αvインテグリン抗体アビツズマブ/DI17E6には、以下が含まれる。
(i)マウスモノクローナル抗αvインテグリン抗体17E6に由来するCDR軽鎖領域及び重鎖領域
(ii)ヒト化モノクローナル抗EGFR抗体425から採取した軽鎖フレームワーク領域、
(iii)マウスモノクローナル抗αvインテグリン抗体17E6に由来する重鎖フレームワーク領域であって、任意に特定の位置のアミノ酸の1つ以上の変異を含む重鎖フレームワーク領域、及び
(iv)ヒトIgG2に由来する重鎖定常領域、及びヒトカッパ軽鎖定常領域を有し、前記IgG2ドメインにおいて、IgG2ヒンジ領域がヒトIgG1ヒンジドメインに置換されている、並びに;
ここで、任意にIgG2内の1つ以上の変異が実施されている。
【0061】
具体的には、治療、好ましくは本明細書に記載及び/又は請求されている治療、好ましくは上記及び下記の臨床試験で使用されるアビツズマブ/DI17E6(「DI17E6γ2h(N297Q)」又は「EMD525797」とも呼ばれる)は、以下のアミノ酸配列を有する。
【化1】
【0062】
ここで、下線部の配列は、CDRを持つ可変領域(太字は親マウス抗体と同一)を表している。変更されたIgG1ヒンジ領域は、EPKSSDKTHTCPPCP(SEQ ID No.3)で表され、AQはIgG2ドメイン内の置換である。
【0063】
しかし、国際公開第2009/010290に示されているように、本発明の考え方によれば、DI17E6の変種も使用することができる。従って、以下の重鎖のフレームワーク領域に1つ以上の改変を含むDI17E6の変種は
【化2】
【0064】
太字及び下線の位置の1つ以上が変異しており、記載されているように、前立腺癌患者の治療に使用できる。より詳細には、以下の位置の重鎖フレームワーク領域が、1つ、複数、又は全てで変異している。A9、E13、M20、K38、R40、A72、S76、Q82、G85、T87、S91、及びS113。これらの変種は、上記の配列で定義されたDI17E6と比較して、同一又は非常に類似した生物学的活性と有効性を示す。
【0065】
一般的に、記載されている本発明には、未改変のDI17E6と機能的及び/又は薬学的に同一又は類似のDI17E6抗体の改変体及び変種も含まれ、CDR領域並びに重鎖及び軽鎖可変領域は、DI17E6のそれぞれの可変領域と比較して、そのアミノ酸配列において少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である。更に、本発明は、好ましくは、未改変のDI17E6と機能的及び/又は薬学的に同一又は類似のDI17E6抗体の改変体及び変種も含まれ、定常領域は、DI17E6のそれぞれの定常領域と比較して、そのアミノ酸配列において少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である。抗体のIgG鎖の定常領域を変更することで、免疫原性又はADCCなどの特定の特性を向上させてもよい。
好ましくは、記載されている本発明には、(未改変の)DI17E6又はアビツズマブと機能的及び/又は薬学的に同一又は類似のDI17E6抗体の改変体及び変種も含まれ、重鎖及び軽鎖可変領域は、DI17E6のそれぞれの重鎖及び軽鎖可変領域と比較して、そのアミノ酸配列において、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%又は少なくとも99.9%同一である。更に、本発明は、未改変のDI17E6と機能的及び/又は薬学的に同一又は類似のDI17E6抗体の改変体及び変種も含まれ、好ましくは、上述したように、定常領域は、DI17E6のそれぞれの定常領域と比較して、そのアミノ酸配列において少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、又は少なくとも99.9%同一である。抗体のIgG鎖の定常領域を変更することで、免疫原性又はADCCなどの特定の特性を向上させてもよい。
【0066】
更に好ましくは、記載されている本発明には、(未改変の)DI17E6又はアビツズマブと機能的及び/又は薬学的に同一又は類似のDI17E6抗体の改変体及び変種も含まれ、重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域上のCDR領域が、DI17E6の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域上のそれぞれのCDR領域と比較して、そのアミノ酸配列において、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも96%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である。更に、本発明は、未改変のDI17E6と機能的及び/又は薬学的に同一又は類似のDI17E6抗体の改変体及び変種も含まれ、好ましくは、上述したように、定常領域は、DI17E6のそれぞれの定常領域と比較して、そのアミノ酸配列において少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、又は少なくとも99.9%同一である。
特に好ましくは、記載されている本発明には、(未改変の)DI17E6又はアビツズマブと機能的及び/又は薬学的に同一又は類似のDI17E6抗体の改変体及び変種も含まれ、重鎖及び軽鎖CDR領域は、(未改変の)DI17E6又はアビツズマブと100%同一であるが、前記CDR領域以外の重鎖及び軽鎖可変領域が、DI17E6のそれぞれの重鎖及び軽鎖可変領域と比較して、そのアミノ酸配列が少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも99.5%同一である。更に、本発明は、好ましくは、未改変のDI17E6と機能的及び/又は薬学的に同一又は類似のDI17E6抗体の改変体及び変種も含まれ、好ましくは、上述したように、定常領域は、DI17E6のそれぞれの定常領域と比較して、そのアミノ酸配列において少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、又は少なくとも99.9%同一である。
特に好ましくは、記載されている本発明には、(未改変の)DI17E6又はアビツズマブと機能的及び/又は薬学的に同一又は類似のDI17E6抗体の改変体及び変種も含まれ、重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域上のCDR領域が、DI17E6の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域上のそれぞれのCDR領域と比較して、そのアミノ酸配列において少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも96%、又は少なくとも98%同一であり、前記CDR領域以外の重鎖及び軽鎖可変領域が、DI17E6のそれぞれの重鎖及び軽鎖可変領域と比較して、そのアミノ酸配列において少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも99.5%同一である。更に、本発明は、好ましくは、未改変のDI17E6と機能的及び/又は薬学的に同一又は類似のDI17E6抗体の改変体及び変種も含まれ、好ましくは、上述したように、定常領域は、DI17E6のそれぞれの定常領域と比較して、そのアミノ酸配列において少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、又は少なくとも99.9%同一である。
【0067】
更に、本明細書に記載の使用に特に好ましいのは、DI17E6抗体の改変体又は変種であり、好ましくは(未改変の)DI17E6又はアビツズマブと機能的及び/又は薬学的に同一又は類似であり、SEQ ID No.1に従う配列及び/又はSEQ ID No.2に従う配列を含み、SEQ ID No.1の配列及び/又はSEQ ID No.2の配列の1~10個のアミノ酸、好ましくは1~5個のアミノ酸、特に1~3個のアミノ酸が、異なるアミノ酸、好ましくは異なる天然由来のアミノ酸で置換されているものである。従って、更に、本明細書に記載の使用に特に好ましいのは、DI17E6抗体の改変体又は変種であり、好ましくは(未改変の)DI17E6又はアビツズマブと機能的及び/又は薬学的に同一又は類似であり、SEQ ID No.1に従う配列及び/又はSEQ ID No.2に従う配列からなり、SEQ ID No.1の配列及び/又はSEQ ID No.2の配列の1~10個のアミノ酸、好ましくは1~5個のアミノ酸、特に1~3個のアミノ酸が、異なるアミノ酸、好ましくは異なる天然由来のアミノ酸で置換されているものである。従って、本明細書に記載されている使用に更に特に好ましいのは、DI17E6抗体の改変体又は変種であり、好ましくは(未改変の)DI17E6又はアビツズマブと機能的及び/又は薬学的に同一又は類似しており、SEQ ID No.1及び/又はSEQ ID No.2の配列と少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%、特に少なくとも99.9%の同一性を有する配列を含んでいる。従って、本明細書に記載されている使用に更に特に好ましいのは、DI17E6抗体の改変体又は変種であり、好ましくは(未改変の)DI17E6又はアビツズマブと機能的及び/又は薬学的に同一又は類似しており、SEQ ID No.1及び/又はSEQ ID No.2の配列と少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%、特に少なくとも99.9%の同一性を有する配列からなる。
【0068】
特に好ましくは、DI17E6抗体又はアビツズマブは、ヒトαv-インテグリンへのリガンド結合を標的として阻害する、上記及び下記のIgG2サブクラスの組換え脱免疫モノクローナル抗体である。特に好ましくは、前記DI17E6抗体又はアビツズマブのFc領域に通常存在する糖鎖構造を、通常の結合点となるアミノ酸残基を遺伝子的に変化させることで除去し、分子をアグリコシル化したものである。特に好ましくは、447個のアミノ酸からなる同一の重鎖2本及び214個のアミノ酸からなる同一の軽鎖2本の計4本のポリペプチド鎖からなる抗体である。一般的に、4本の鎖は共有結合(ジスルフィド)と非共有結合の組み合わせで結合している。大体の分子量は、145kDaである。
しかし、全ての方法、用途、及び治療において最も好まれるのは、登録された国際的な一般名(INN)であるアビツズマブの名を持つ抗体である。
アビツズマブの単回及び複数回投与後のPK評価では、膜結合型受容体を標的とする他の抗体で説明されているように、受容体を介したクリアランスモデルに基づいて挙動することが好ましいとされている。健康なボランティアを対象とした先行研究の結果と同様に、mCRPC患者におけるアビツズマブのPKは用量依存性であり、クリアランスは主に未結合の受容体の利用可能性によって決定される。好んで使用されるアビツズマブの用量において、1000ミリグラム以上の用量では、好ましくはほぼすべての受容体が飽和状態となり、好ましくは薬物のクリアランスに寄与しない、又はわずかに寄与するだけであることが想定され得る。
【0069】
本明細書で使用されている「化学療法」という用語は、当技術分野で理解されている。好ましくは、化学療法レジメンの一部として1つ以上の抗癌剤(化学療法剤)を使用する癌治療の種類として理解される。
「化学療法剤」又は「化学療法剤」又は「抗新生物剤」という用語は、本発明の理解によれば、好ましくは、「細胞毒性剤」及び/又は「細胞静菌剤」のクラスのメンバーとみなされ、抗新生物効果、すなわち新生物細胞の発生、成熟、又は拡散を防ぐ効果を、生物学的反応改変などのメカニズムを介した間接的なものではなく、腫瘍細胞に直接及ぼす化学剤を含むものである。本発明による適切な化学療法剤は、好ましくは天然又は合成の化学化合物であるが、タンパク質、ポリペプチド等以外の生物学的分子は、好ましくは明示的に除外されない。化学療法又は薬剤の例としては、好ましくは、例えば、ナイトロスマスタード、エチレンイミン化合物、アルキルスルホン酸塩などのアルキル化剤及びニトロソウレア、シスプラチン、及びダカルバジンなどのアルキル化作用を有する化合物;例えば、葉酸、プリン、又はピリミジン拮抗剤などの代謝拮抗剤;例えば、ビンカアルカロイド、及びポドフィロトキシンの誘導体などの分裂阻害剤;細胞毒性抗生物質及びカンプトテシン誘導体などが挙げられる。
【0070】
好ましい化学療法剤又は化学療法としては、アミフォスチン(エチオール)、カバジタキセル、シスプラチン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、ドセタキセル、メクロレタミン、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、カルナスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ドキソルビシンリポ(ドキシル)、ゲムシタビン(ゲムザール)、ダウノルビシン、ダウノルビシンリポ(ダウノソーム)、プロカルバジン、ケトコナゾール、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル(5-FU)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテール)、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、CPT-11、10-ヒドロキシ-7-エチル-カンプトテシン(SN38)、ダカルバジン、フロクスリジン、フルダラビン、ヒドロキシウレア、イホスファミド、イダルビシン、メスナ、インターフェロンα、インターフェロンβ、イリノテカン、ミトキサントロン、トポテカン、リュープロリド、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、プリカマイシン、ミトタン、ペガスパルガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、クロラムブシル、及びそれらの組み合わせである。
アビツズマブとの併用でより好ましい本発明による化学療法剤は、カバジタキセル、シスプラチン、ドセタキセル、ゲムシタビン、ドキソルビシン、パクリタキセル(タキソール)、イリノテカン、及びブレオマイシンである。
アビツズマブと併用するための本発明による更に好ましい化学療法剤は、好ましくは、イリノテカン、フルオロウラシル(5-FU)、テガフール/ウラシル(UFT)、フォリン酸(ロイコボリン)、オキサリプラチン(エロキサチン)、アフリベルセプト、レゴラフェニブ、カペシタビン、及びそれらのプロドラッグ、並びにそれらの塩及び溶媒和物からなる群から選択される。
アビツズマブと併用するための最も好ましい本発明による化学療法剤は、好ましくは、
イリノテカン、フルオロウラシル(5-FU)、及びフォリン酸(ロイコボリン)、並びにそれらのプロドラッグからなる群から選択されるいずれか、
若しくは、オキサリプラチン、フルオロウラシル(5-FU)、及びフォリン酸(ロイコボリン)、並びにそれらのプロドラッグからなる群から選択されるいずれか、
並びにそれらの塩及び溶媒和物、
である。
【0071】
アビツズマブは、典型的には静脈内注射で投与されるが、抗体/タンパク質医薬の分野では便利な他の投与方法が適用できる。リポソーム製剤を含む、国際公開第2005/077414号及び国際公開第2003/053465号に記載されているような、全ての標準的な輸液及び製剤が適用できる。更に、DI17E6及び任意に(細胞毒性を高めるために)化学療法剤を担持したヒト血清アルブミンナノ粒子を提供することは好ましいことである(Biomaterials 2010, 8, 2388-98; Wagner et al.)。
他に明確に定義されていない場合、有効成分、活性原理(API)、医薬品、又はその国際的な一般名(INN)の命名には、好ましくはその全てのプロドラッグ、塩、及び溶媒和物、特に機能的に同等のもの、及び/又は臨床的観点から適切な代替品とみなされるものが含まれる。
他に明確に定義されていない場合、本明細書では、ヒト、人間、ヒト患者、又は患者という用語は、互換性があるものとして、又は同義語として使用されることが好ましい。
他に明確に定義されていない場合、本明細書では、ヒト、ヒト患者、又は(単なる)患者という用語は、互換性があるものとして、又は同義語として使用されることが好ましい。
他に明示的に定義されていない場合、又はある用語が使用される文脈に不利な場合、単数形での用語の使用は、好ましくは、複数形でのその用語そのものを含むことを意味し、複数形での用語の使用は、好ましくは、単数形でのその用語そのものを含むことを意味する。
【0072】
本発明によれば特に好ましいのは、2つ以上の好ましい、より好ましい、及び/又は特に好ましい実施形態、態様、及び/又は対象の特性が1つの実施形態、態様、及び/又は対象に組み合わされている、本明細書に記載の対象である。好ましくは、本発明によれば、好ましい対象又は実施形態は、他の好ましい対象又は実施形態と組み合わせることができ、より好ましい対象又は実施形態は、他のより好ましくない対象又は更に好ましい対象又は実施形態と組み合わせることができ、特に好ましい対象又は実施形態は、他のちょうど好ましい対象又はちょうど更に好ましい対象又は実施形態と組み合わせることができるなどである。
【0073】
本明細書で、数字、数値、範囲、及び/又は量に関して使用されている「約」という用語は、好ましくは「約」及び/又は「およそ」を意味する。これらの用語の意味は、当業界ではよく知られており、好ましくは、それぞれの数字、数値、範囲、及び量の分散、偏差、及び/又は変動がプラス/マイナス15%、特にプラス/マイナス10%であることを含む。
いずれにしても、本明細書で、数字、数値、範囲、及び/又は量に関して使用されている「約」という用語は、好ましくは「約」及び/又は「およそ」を意味する。これらの用語の意味は、当業界ではよく知られており、好ましくは、それぞれの数値、数字、範囲、及び量の分散、偏差、及び/又は変動が少なくともプラス/マイナス5%であることを含む。
【0074】
本明細書で使用されている「障害」及び「疾患」という用語は、当業界ではよく知られており、理解されている。本発明との関係では、それらは好ましくは同義語として使用されるため、それらが本明細書で使用されている文脈が他を強く示唆していない場合、好ましくは交換可能である。従って、本明細書で使用されている「繊維性障害」及び「繊維性疾患」という用語も、当業界ではよく知られており、理解されている。本発明との関係では、それらは好ましくは同義語として使用されるため、それらが本明細書で使用されている文脈が、それ以外を強く示唆していない場合、好ましくは交換可能である。
【0075】
治療レジメン、投与スケジュール、及び臨床試験デザインなど(これらに限定しない)の医療関連では、患者、医療スタッフ、及び/又は医師の利便性及び/又は使いやすさ、結果の信頼性及び/又は再現性などを考慮して、「週」/「1週間」、「月」/「1ヶ月」、「年」/「1年」という用語を、グレゴリオ暦の定義から若干逸脱した形で使用することができる。例えば、前記医療関連の文脈では、1ヶ月を28日、1年を48週と呼ぶことが多い。
従って、本発明との関係では、「週」又は「1週間」という用語は、好ましくは約5日、約6日、又は約7日、より好ましくは約7日の期間を意味する。
医療関連の文脈では、「月」又は「1ヶ月」という用語は、好ましくは約28日、約29日、約30日、又は約31日の期間を指し、より好ましくは約28日、約30日、又は約31日の期間を指す。
医療関連の文脈では、「年」又は「1年」という用語は、好ましくは約12ヶ月の期間、又は約48週、約50週、若しくは約52週の期間を指し、より好ましくは12ヶ月、又は約48週、又は約52週の期間を指す。
【0076】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。本発明は、好ましくは、請求された範囲全体で実施することができ、ここで与えられた実施例に限定されるものではない。
更に、当業者が例示によって本発明をよりよく理解するのを助けるために、以下の実施例が挙げられている。実施例は、特許請求の範囲によって与えられる保護の範囲を制限することを意図したものではない。実施例で定義された工程、化合物、組成物、及び/又は使用について例示された特徴、特性、及び利点は、実施例で具体的に説明、及び/又は定義されていないが、特許請求の範囲で定義されている範囲内にある他の工程、化合物、組成物、及び/又は使用に割り当てることができる。
従って、以下の実施例では、本発明をより詳細に説明しているが、本発明及び請求項に記載された範囲を限定するものではない。
以下の実施例では、本発明をより詳細に説明しているが、本発明及び請求項に記載された範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0077】
KRAS野生型の転移性大腸癌患者に対するアビツズマブとセツキシマブ+イリノテカンの併用療法、及びセツキシマブ+イリノテカン単独療法の比較:無作為化されたフェーズI/IIのPOSEIDON試験
次も参照: Annals of Oncology 26: 132-140, 2015
背景:インテグリンは、腫瘍の進行又は転移に関与しており、大腸癌(CRC)細胞では異なる発現をしている。インテグリンαvヘテロダイマーを標的としたヒト化モノクローナル抗体であるアビツズマブ(EMD 525797)は、前臨床試験で活性を示した。本試験は、転移性CRC(mCRC)患者を対象に、アビツズマブの異なる用量をセツキシマブ及びイリノテカンと併用した場合の忍容性を評価し(フェーズI部分)、セツキシマブ及びイリノテカンとの併用に対する有効性及び忍容性を評価し、セツキシマブ及びイリノテカンに対する有効性及び忍容性を検討するために設計された(フェーズII部分)。
手法:対象となるのは、KRAS(エクソン2)野生型のmCRCで、オキサリプラチンを含む治療を受けたことのある患者である。本試験は、アビツズマブ1000ミリグラムまでを標準治療(SoC:セツキシマブ+イリノテカン)と併用して安全性を確認する初期ランイン試験と、アビツズマブ500ミリグラム(A治療群)又は1000ミリグラム(B治療群)を2週間ごとにSoCと併用するグループ、又はSoCのみを投与するグループ(C治療群)に1:1:1で割り当てられたフェーズ2試験で構成されている。主要評価項目は、治験責任医師が評価した無増悪生存期間(PFS)だった。副次評価項目には、全生存期間(OS)、奏功率(RR)、及び忍容性が含まれる。また、腫瘍のインテグリン発現と転帰の関連も評価した。
結果:フェーズI試験では、SoCとの併用により、1000ミリグラムまでのアビツズマブの用量が良好な忍容性を示した。73名(A治療群)、71名(B治療群)、72名(C治療群)の患者が、フェーズII試験に無作為に割り当てられた。ベースラインの特徴はバランスが取れていた。PFSは、A治療群対SoC治療群ではハザード比(HR)1.13[95%信頼区間(CI)0.78~1.64);B治療群対SoC治療群ではHR1.11(95%CI 0.77~1.61)と、3つのグループで同様の結果が得られた。RRも同様であった。OSの改善傾向が見られた:A治療群対SoC治療群でHR 0.83(95%CI 0.54~1.28);B治療群対SoC治療群でHR 0.80(95%CI 0.52~1.25)であった。グレード3以上の治療上の有害事象は、72%、78%、及び67%の患者に認められた。腫瘍インテグリンαvβ6の高発現は、A治療群[HR 0.55(0.30~1.00)]及びB治療群[HR 0.41(0.21~0.81)]において、C治療群よりもOSの延長と関連していた。
結論:主要評価項目であるPFSは達成されなかったが、事前に定義した探索的バイオマーカー解析により、アビツズマブの効果が期待できる患者のサブグループが特定された。アビツズマブとセツキシマブ及びイリノテカンとの併用療法の忍容性は、許容範囲内であった。更なる研究が望まれる。
ClinicalTrials.govの識別子:NCT01008475
キーワード:アビツズマブ、大腸癌、インテグリン、バイオマーカー、モノクローナル抗体、フェーズI/II
【0078】
導入
過去20年間、転移性大腸癌の治療法は、イリノテカン及びオキサリプラチンなどの化学療法、並びにセツキシマブ、パニツムマブ、アフリベルセプト、レゴラフェニブ、ベバシズマブなどの標的薬の登場により、選択肢が広がった[1: Van Cutsem E, Cervantes A, Nordlinger B et al. Metastatic colorectal cancer: ESMO Clinical Practice Guidelines for diagnosis, treatment and follow-up. Ann Oncol 2014; 25(suppl 3): iii1-iii9]。これにより、患者の予後は改善されたが、ほとんどの患者は疾患が原因で亡くなっている。CRCの分子生物学的解明が進む中、腫瘍の成長及び進行に不可欠な因子を標的とした新しい治療法は、患者の予後を改善するための最大の希望となっている[2: Ciombor KK, Berlin J. Targeting metastatic colorectal cancer-present and emerging treatment options. Pharmgenomics Pers Med 2014; 7: 137-144]。インテグリンは、膜貫通型のヘテロ二量体糖タンパク質(αサブユニットとβサブユニットを含む)のファミリーであり、正常細胞及び腫瘍細胞の両方において、様々な細胞間及び細胞と細胞外マトリックス(ECM)の相互作用を媒介する [3: Goodman SL, Picard M. Integrins as therapeutic targets. Trends Pharmacol Sci 2012; 33: 405-412]。インテグリンは腫瘍細胞の生存、転移、及び血管新生を促進する[4: Nemeth JA, Nakada MT, Trikha M et al. Alpha-v integrins as therapeutic targets in oncology. Cancer Invest 2007; 25: 632-646]。CRC細胞にはインテグリンαvβ5及びαvβ6が、腫瘍関連の血管にはインテグリンαvβ3及びαvβ5が発現しているという研究結果がある[5, 6: Goodman SL, Grote HJ, Wilm C. Matched rabbit monoclonal antibodies against αv-series integrins reveal a novel αvβ3-LIBS epitope, and permit routine staining of archival paraffin samples of human tumors. Biol Open 2012; 1: 329-340; Agrez MV, Bates RC, Mitchell D et al. Multiplicity of fibronectin-binding alpha V integrin receptors in colorectal cancer. Br J Cancer 1996; 73: 887-892]。インテグリンαvβ6の過剰発現は、早期のmCRC患者の全生存期間(OS)中央値の有意な低下と関連する[7: Bates RC, Bellovin DI, Brown C et al. Transcriptional activation of integrin β6 during the epithelial-mesenchymal transition defines a novel prognostic indicator of aggressive colon carcinoma. J Clin Invest 2005; 115: 339-347]。従って、αvインテグリン、特にαvβ6は、mCRCの治療のための合理的なターゲットとなる。ヒト化モノクローナルIgG2抗体アビツズマブ(EMD 525797)は、αvインテグリンサブユニットに特異的に結合し、ECM内のリガンドとの相互作用を阻害する。これにより、細胞の付着や運動を妨げ、アポトーシスを誘導する可能性がある[3, 8: Goodman SL, Picard M. Integrins as therapeutic targets. Trends Pharmacol Sci 2012; 33: 405-412; Mitjans F, Sander D, Adan J et al. An anti-alpha v-integrin antibody that blocks integrin function inhibits the development of a human melanoma in nude mice. J Cell Sci 1995; 108(Pt 8): 2825-2838]。前臨床試験では、ヒトの腫瘍の異種移植モデルにおいて、アビツズマブの抗腫瘍活性が確認されており、アビツズマブとセツキシマブ又はイリノテカンを併用した場合には、いずれかの薬剤単独よりも高い活性が確認された[Merck KGaA、社内資料]。更に、アビツズマブ単剤療法の臨床試験では、その忍容性が証明されている[9, 10: Uhl W, Zuhlsdorf M, Koernicke T et al. Safety, tolerability, and pharmacokinetics of the novel alphav-integrin antibody EMD 525797 (DI17E6) in healthy subjects after ascending single intravenous doses. Invest New Drugs 2014; 32: 347-354; Wirth M, Heidenreich A, Gschwend JE et al. A multicenter phase 1 study of EMD 525797 (DI17E6), a novel humanized monoclonal antibody targeting alphav integrins, in progressive castration-resistant prostate cancer with bone metastases after chemotherapy. Eur Urol 2014; 65: 897-904]。我々は、オキサリプラチンを含む前治療歴のあるKRASエクソン2野生型mCRC患者を対象に、mCRCの標準治療(SoC)であるイリノテカン及びセツキシマブとアビツズマブの異なる用量を併用した場合の忍容性を評価するフェーズI/II試験を実施した。フェーズII試験では、これらの患者を対象に、アビツズマブとイリノテカン、セツキシマブの併用療法とイリノテカン、セツキシマブの併用療法の有効性を比較した。
【0079】
患者及び手法
試験設計及び治療
本非盲検の多施設共同のフェーズI/II試験(ClinicalTrials.gov識別子:NCT01008475)は、各施設の施設内審査委員会の承認を得た。全患者は、登録前にインフォームド・コンセントを得た。本研究は、ヘルシンキ宣言の原則に基づいて実施された。フェーズIの用量漸増試験では、古典的な「3+3」デザインが採用され、対象となる患者は、SoCと併用してアビツズマブ250、500、750、又は1000ミリグラムを2週間ごとに静脈投与された。アビツズマブの投与量は、標的の飽和度を参考に、潜在的に有効な投与量範囲の薬物動態(PK)モデルに基づいて選択された。第1サイクルの第1日目にセツキシマブ400ミリグラム/平方メートルを投与し、その後は毎週250ミリグラム/平方メートルを投与した。アビツズマブは、セツキシマブの注入終了後60分以上経過してから投与し、イリノテカン180ミリグラム/平方メートル(最大体表面積2.0平方メートル)はアビツズマブの注入終了後60分以上経過してから投与し、注入関連の副作用の評価を実施した。治療は疾患が進行する、又は許容できない毒性が出るまで続けられた。用量制限毒性(DLT)は、治療開始後2週間以内の治療関連死亡;又は試験治療に関連したグレード3/4の非血液学的毒性又はグレード4の血液学的毒性と定義した。セツキシマブ及びイリノテカンで予想される毒性(発熱を伴わないグレード4の好中球減少又は白血球減少が5日以下の持続する、十分な支持療法を実施しないグレード3/4の下痢など)はDLTに含めなかった[11: Elez E, Kocakova I, Hohler T et al. Phase I study of EMD 525797 (DI17E6), an antibody targeting αvβ integrins, in combination with cetuximab and irinotecan, as a second-line treatment for patients with k-ras wild-type metastatic colorectal cancer. J Clin Oncol 2012; 30(suppl): abstract 3539]。無作為化されたフェーズII試験では、患者はアビツズマブ500ミリグラム又はアビツズマブ1000ミリグラムを2週間ごとに投与してSoCを併用する治療法、又はSoC(セツキシマブを毎週、イリノテカンを2週間ごとに投与)を併用する治療法に1:1:1で中央無作為に割り当てられた(図は、Annals of Oncologyオンライン版で入手可能、
図4を参照)。フェーズII試験で2種類のアビツズマブの用量を選択したのは、フェーズ1試験のデータが不十分であったため、1種類の用量を選択し、主に異なるレベルの標的飽和度を達成するためにPKガイドを実行し:アビツズマブ500ミリグラムを2週間に1回投与することで、前臨床試験で活性が確認された血清濃度が得られる可能性があり;アビツズマブ1000ミリグラムを2週間に1回投与することで、投与間の非線形クリアランス経路のIC99を常に上回る定常血清トラフ濃度が得られるように選択した。患者は、抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法の既往の有無によって層別された。治療は、治験責任医師によりレントゲン写真で評価された疾患の進行、許容できない毒性、治癒的切除の適格性(治験責任医師による評価)、又は同意の撤回があるまで続けられた。
【0080】
患者
18歳以上の成人で、組織学的にKRASエクソン2野生型のmCRCであることが確認され、遠隔転移が確認され、以前に放射線を照射していない部位に少なくとも1つのX線写真で測定可能な病変が確認された人を対象とした。全患者は、オキサリプラチン/フルオロピリミジン含有レジメンの前治療に失敗した者でなければならず、その定義は、最終投与から6カ月以内に疾患が進行した場合、又は不耐症の場合とする。患者は、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)のパフォーマンスステータスが0若しくは1、又はカルノフスキーのパフォーマンスステータスが80%以上であり、許容可能な検査項目(絶対好中球数が1.5×109/リットル以上、血小板数が100×109/リットル以上、ヘモグロビンが9グラム/デシリットル以上、ビリルビンが1.5×正常上限値以上など)を有していた。主な除外基準は、上皮成長因子受容体阻害剤による治療歴、既知の脳転移、臨床的に関連のある冠動脈疾患、コントロールされていない高血圧、過去12ヶ月以内の心筋梗塞の既往などだった。
【0081】
評価
全患者は、スクリーニング時にKRAS遺伝子変異の解析及びインテグリン発現の評価のために腫瘍塊を提供する必要があった。インテグリンαvβ3、αvβ5、αvβ6、αvβ8、及びパンαvの発現は、ホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍組織の免疫組織化学を用いて評価された[5: Goodman SL, Grote HJ, Wilm C. ”Matched rabbit monoclonal antibodies against αv-series integrins reveal a novel αvβ3-LIBS epitope, and permit routine staining of archival paraffin samples of human tumors. Biol Open 2012; 1: 329-340]。染色の強度及び頻度のデータを用いて、0~300の連続スケールでヒストスコアを算出した[Pirker R, Pereira JR, von Pawel J et al.EGFR expression as a predictor of survival for first-line chemotherapy plus cetuximab in patients with advanced non-small cell lung cancer: analysis of data from the phase 3 FLEX study. Lancet Oncol 2012; 13: 33-4]。患者は、試験開始時から試験薬の最終投与後31日目まで、治療中発生した有害事象(TEAE)をモニターされた。試験薬とTEAEの因果関係は、治験責任医師が評価した。腫瘍は、ベースライン時と、無作為化された日から疾患の進行又は死亡までの6週間ごとに、コンピュータ断層撮影(CT)又は磁気共鳴画像(MRI)スキャンを用いた画像で評価された。奏功を客観的に評価するために、RECISTを使用した[13: Therasse P, Arbuck SG, Eisenhauer EA et al. New guidelines to evaluate the response to treatment in solid tumors. European Organization for Research and Treatment of Cancer, National Cancer Institute of the United States, National Cancer Institute of Canada. J Natl Cancer Inst 2000; 92: 205-216]。完全奏功及び部分奏功(CR又はPR)は、初回スキャンから6週間以上経過した後のスキャンで確認される必要があった。無作為化されたフェーズII試験では、全てのスキャン画像が独立審査委員会によって審査された。最初のスクリーニングの後、腫瘍の評価を受けずに死亡以外の理由で試験から離脱した全患者は、CT又はMRIスキャンを含む最終的な治療評価を受けた。
【0082】
統計学的考察
フェーズIの主要評価項目であるプロトコル定義のDLT及び各用量レベルの他のデータを要約するために、記述統計学が用いられた。無作為化されたフェーズII試験の主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)で、無作為化されてから最後の腫瘍評価後12週間以内に疾患が進行する、又は何らかの原因で死亡するまでの期間と定義された。SoCに対するハザード比(HR)が0.67、PFSの中央値がSoCの4.0ヵ月からアビツズマブベースの治療で6.0ヵ月に増加、有意水準(α)が25%(両側)と仮定して、薬物活性なしの帰無仮説を棄却するのに必要な173件のPFSイベントを、85%の検出力で観察するために、213名のサンプルサイズの患者群(各グループ71名)を計画した。フェーズII部分の副次的評価項目は、OS、進行までの期間、治療失敗までの期間、奏効率、及び病勢コントロール率、安全性などである。事前に設定した探索的評価項目には、腫瘍のインテグリン発現と有効性の関連性が含まれていた。有効性の主要解析では、無作為化された全患者を含む包括解析(ITT)集団を用いた。安全性解析対象者は、いずれかの試験薬を少なくとも1回投与された全ての患者であった。データは、記述統計学を用いて要約された。イベントまでの時間を表す評価項目の解析には、抗癌剤治療歴(抗VEGFの有無)で層別化したログランク検定を用いた。治療法及び抗癌剤治療歴(抗VEGFの有無)を共変量としたCox比例ハザードモデルを用いて、HRを推定した。統計解析は、SAS(登録商標)システム(バージョン8.2以降)を用いて実行した。腫瘍のインテグリン発現と患者の転帰の関連性という探索的評価項目の評価では、当初、高発現と低発現の間のカットオフとしてヒストスコアの中央値が用いられた。その後、カットオフ値を中央値付近で変化させ、中央値が試験対象の患者集団に許容可能かどうかを評価した。
【0083】
結果
フェーズIの用量漸増試験
2009年10月~2010年10月にかけて、16名の患者がフェーズIの用量漸増試験に登録された。いずれの投与量においてもDLTは認められなかった(Annals of Oncologyオンライン版に掲載されている補遺、表S1、下記の表5参照)。しかし、DLT観察期間終了後、最初の3名の患者のうち1名がアビツズマブとは無関係の原因で死亡したため、750ミリグラムの用量で更に3名の患者が登録された。4人目の追加患者は、1人の患者が予定されていた750ミリグラムの用量ではなく、250ミリグラムのアビツズマブを投与されたために登録された。アビツズマブに関連するTEAEは稀で、グレード3の低カリウム血症(250ミリグラム投与時に1名)及びグレード3の頻脈性不整脈(1000ミリグラム投与時に1名)が含まれていた(Annals of Oncology誌オンライン版に掲載されている補遺、表S1、下記表5参照)。また、グレード4の好中球減少、グレード3/4の血小板減少、グレード3/4のヘモグロビン減少は認められず、腎機能、肝機能、肺機能、心拍出量の悪化もなかった。アビツズマブの投与期間は、一般的に用量の増加と共に長くなり、相対用量強度の中央値は全ての用量レベルで96%より高かった。セツキシマブとイリノテカンの相対的な用量強度は維持された。全ての用量で抗腫瘍効果が確認され、CRが1例、PRが4例、病勢が安定した患者が7例いた(Annals of Oncologyオンライン版に掲載されている補足表S1、下記表5参照)。これらのデータを総合すると、アビツズマブとセツキシマブ、イリノテカンの併用療法を、更に評価することが正当化される。
【0084】
【表5】
*全患者が、MCCCに対して、オキサリプラチン/フルオロピリミジンを含む第一選択治療を受けた。
†2人の患者は評価不能であった。
‡42日以上のCR、PR、又はSDと定義された。
CR、完全奏功;ECOG、米国東海岸癌臨床試験グループ;PR、部分奏功;SD、安定期;TEAE、治療に起因する有害事象
【0085】
無作為化フェーズII試験
患者
2011年4月~2013年10月にかけて、合計216名の患者が登録され、無作為化された。コンソート図を、
図4に示す。
試験期間の中央値(範囲)は、アビツズマブ500ミリグラム治療群、アビツズマブ1000ミリグラム治療群、SoC治療群で、それぞれ13.6(0.1-26.2)ヵ月、12.3(0.5-27.3+)ヵ月、11.6(0.6-28.8+)ヵ月であった。アビツズマブの全投与期間の中央値は4.1カ月、相対用量強度の中央値は98%だった。3つの治療群の患者のベースライン特性は、概ねバランスが取れていた(表6)。安全性。アビツズマブ治療群では全例、SoC治療群では1例(99%)を除く全例でTEAEが発生し(表5)、グレード3以上のTEAEは、アビツズマブ500ミリグラム治療群、アビツズマブ1000ミリグラム治療群、SoC治療群のそれぞれ72%、78%、67%の患者に認められた。これらのデータは、アビツズマブがセツキシマブ及びイリノテカンとの併用において許容できる安全性プロファイルを有することを示している。しかし、アビツズマブ500ミリグラム及び1000ミリグラム治療群の17%及び29%の患者に発生したグレード3以上のTEAEを含む、アビツズマブ群のTEAEの約50%は、治験責任医師の評価に基づき、アビツズマブとの関連性が疑われた;アビツズマブに関連する重篤なTEAEは、アビツズマブ500ミリグラム治療群では、発熱性好中球減少症、大腸炎、直腸膿瘍、末梢神経障害、及び急性腎不全;アビツズマブ1000ミリグラム治療群では好中球減少症、消化管感染症、及び深部静脈血栓症が、それぞれ1名の患者に発生した。データカットオフ時点で、アビツズマブ500ミリグラム治療群、アビツズマブ1000ミリグラム治療群、SoC治療群で、それぞれ39名(54%)、35名(51%)、45名(62%)の患者が死亡した。アビツズマブ1000ミリグラム治療群1名及びSoC治療群1名の死亡者2名は、いずれも敗血症で、イリノテカンに関連していると考えられ、32/39名、30/35名、38/45名の死亡者は、疾患の進行に起因するものであった。有効性。ITT集団の有効性データを表7及び
図5A-Bに示す。これらのデータによると、PFS及び奏効率(RR)は治療群間で差がなかった。OSの中央値は、アビツズマブ500ミリグラム[HR 0.83(95%CI 0.54-1.28)対SoC]で15.0カ月[95%信頼区間(CI)10.9-19.2]、アビツズマブ1000ミリグラム[HR 0.80(95%CI 0.52-1.25)対SoC]で14.4カ月(95%CI 9.8-19.3)、SoCで11.6カ月[95%CI 9.8-15.7]だった(
図5B)。
【0086】
【0087】
【0088】
バイオマーカー分析
αvインテグリンの発現と転帰の関係をより深く理解するために実施した、事前に計画された探索的バイオマーカー分析では、インテグリンαvβ6の高発現[調査対象集団(n=197)の中央値以上、ヒストスコア中央値=70]が示唆され(Annals of Oncologyオンライン版に掲載されている図、
図6参照)SoC治療群におけるOSの負の予後を左右し、アビツズマブ治療によるOSの延長を予測する可能性が示唆された(
図7及び8、表7)。また、インテグリンαvβ6が高発現している腫瘍の患者では、RRが改善される可能性が示唆された。対照的に、インテグリンαvβ6の発現が低い(中央値以下)腫瘍の患者は、アビツズマブ治療の恩恵を受けないようだった(表7)。腫瘍インテグリンαvβ6のヒストスコアが0であった患者(n=24)の数が少なすぎたため、この集団の分析はできなかった。パンαvインテグリンレベル(ヒストスコア中央値=230)の予測及び予後判定は、インテグリンαvβ6と同様のようであったが、インテグリンαvβ5のレベルは予測及び予後判定にはならず、インテグリンαvβ3及びαvβ8は発現していなかった(データは示さず)。
【0089】
考察
CRC患者を対象としたインテグリン阻害剤の臨床試験としては、初めての報告である。セツキシマブとイリノテカンの併用療法にアビツズマブを追加した場合も、オキサリプラチンの前治療を受けた非選択的なmCRC集団では、その効果は限定的だったが、事前に設定した探索的バイオマーカー解析では、インテグリンαvβ6が高発現している腫瘍を持つ患者では、アビツズマブがOSを向上させる可能性が示唆された。OSは、癌の臨床試験におけるゴールドスタンダードの評価項目で[14, 15: 欧州医薬品庁 Guideline on the evaluation of anticancer medicinal products in man. In 欧州医薬品委員会(ed), London, UK: European Medicines Agency 2013; Food and Drug Administration. Guidance for Industry: clinical trial endpoints for the approval of cancer drugs and biologics. In Services USDoHaH (ed), Rockville, MD, USA: Food and Drug Administration 2007]、本試験ではOSは副次的な評価項目であったが、探索的なバイオマーカーのデータは、腫瘍αvβ6が高発現している患者集団を対象に、OSを主要評価項目とした更なる試験が必要であることを示唆している。適切な患者集団を選択するためのコンパニオン診断テストの開発は、更なる試験のために非常に重要である。その結果、インテグリンαvβ6が高発現している患者は低い患者に比べてOSの中央値が約4ヶ月短く[HR 1.95 (95% CI 1.04-3.67)]、早期のmCRC患者でインテグリンαvβ6の発現量が高いとOSが有意に低下するという過去の研究結果と一致していた。[7: Bates RC, Bellovin DI, Brown C et al. Transcriptional activation of integrin β6 during the epithelial-mesenchymal transition defines a novel prognostic indicator of aggressive colon carcinoma. J Clin Invest 2005; 115: 339-347]。しかし、アビツズマブ治療により、腫瘍インテグリンαvβ6が高発現している患者の死亡リスクは、対照群に比べて最大59%減少する可能性がこの解析により示唆された。また、予後不良のバイオマーカーで選別された本集団では、アビツズマブ治療によりPFS及びRRが増加したようである。一方、インテグリンαvβ5レベルと臨床転帰との関連性は示されず、これまでの研究では、CRCにおけるインテグリンαvβ5の予後又は予測に関わる役割は報告されていない。
【0090】
早期癌の研究では、インテグリンαvβ6が上皮間葉転換(EMT)に関与し、CRCなどの上皮性腫瘍の浸潤挙動を亢進することが示唆されている[16: Bates RC. Colorectal cancer progression: integrin alphavbeta6 and the epithelial mesenchymal transition (EMT). Cell Cycle 2005; 4: 1350-1352]。EMT工程は転移にも関与している可能性があり、肝転移又はリンパ節転移で見られる高レベルのインテグリンαvβ6の存在は、mCRCの攻撃性にインテグリンαvβ6が関与していることを示唆している[7, 16: Bates RC, Bellovin DI, Brown C et al. Transcriptional activation of integrin β6 during the epithelial-mesenchymal transition defines a novel prognostic indicator of aggressive colon carcinoma. J Clin Invest 2005; 115: 339-347; Bates RC. Colorectal cancer progression: integrin alphavbeta6 and the epithelial mesenchymal transition (EMT). Cell Cycle 2005; 4: 1350-1352]。
【0091】
更に、インテグリンαvβ6は、結腸癌の進行過程で腫瘍の成長及び浸潤を促す潜在的なトランスフォーミング成長因子-β(TGF-β)の活性化因子であることが知られている[16: Bates RC. Colorectal cancer progression: integrin alphavbeta6 and the epithelial mesenchymal transition (EMT). Cell Cycle 2005; 4: 1350-1352]。従って、インテグリンαvβ6を阻害する治療法は、浸潤及び転移する腫瘍細胞を標的とする可能性があり、本試験でαvβ6が高発現している腫瘍患者においてアビツズマブによるOS及びPFSの改善が認められた理由と考えられる。TGF-βは免疫機能の制御にも重要な役割を果たしており、インテグリンは本工程に不可欠である[17: Travis MA, Sheppard D. TGF-beta activation and function in immunity. Annu Rev Immunol 2014; 32: 51-82]。アビツズマブによる腫瘍インテグリンαvβ6の阻害が抗腫瘍免疫応答に対するTGF-βの阻害作用を低下させるという可能性は、PFS及びRRよりもOSに対するアビツズマブの効果を説明できるかもしれない。本研究には、データを解釈する際に考慮する必要がある複数の限界が存在する。鍵となるのは、本試験がフェーズII試験であること、並びにバイオマーカーのデータは、仮説が立てられているとはいえ、事前に計画された探索的分析に基づくことである。アビツズマブの治療を受けたmCRC患者におけるαvインテグリンの予後及び予測値を確認するために、更なる試験を実施する必要がある。結論として、今回のデータは、インテグリンを標的とした治療が、特定のmCRC患者の治療に役立つ可能性を示している。探索的解析では、インテグリンαvβ6が高発現している腫瘍を有する患者において、(使用しない場合に)予後が悪いであろう患者にアビツズマブを用いた治療が有効である可能性が示された。mCRCにおけるアビツズマブの有効性を更に評価するために、本集団を対象とした更なる試験、及びコンパニオン診断試験の開発が必要となる。
【0092】
【実施例2】
【0093】
転移性大腸癌患者(mCRC)におけるアビツズマブによるインテグリン標的のための患者選択。無作為化されたフェーズI/IIのPOSEIDON試験のレトロスペクティブ分析。
【0094】
導入
インテグリン、特にαvβ6を標的とすることは、mCRCの治療に対する新しいアプローチである。組織化学的なデータによると、アビツズマブ(αvインテグリン)の標的はCRCの腫瘍脈管系及び腫瘍細胞に発現している。
特にαvβ6インテグリンの発現は、700人以上のmCRC患者で解析されているので、CRCの予後因子としても提案されている1-4 (Bates RC, et al. J Clin Invest. 2005;115(2):339-347; Niu Z, et al. Cell Biosci; 2014;4:23; Yang GY, et al. World J Gastroenterol. 2015;21(24):7457-7467; Elez E, et al. Ann Oncol. 2015;26:132-140)。結腸癌におけるαvβ6の高発現は、腫瘍の進行及び患者の生存率の低さの指標であった。
mCRCは遺伝的に不均一な疾患であり、結腸の異なる側(左対右)から発生した腫瘍は異なる臨床転帰をもたらすという証拠が増えてきている5(Arnold D, et al. Ann Oncol. 2017;28:1713-1729)。k-RAS野生型(WT)又はRAS野生型のmCRC患者を対象に、異なるクラスの標的薬剤の活性を比較した従来の分析から、原発性腫瘍の位置(サイド)が予後を左右する可能性が示唆された。
αvβ6のレトロスペクティブな本データ解析では、POSEIDON試験の探索的データに基づき、右側と左側のk-RAS WT CRCの違いを調査し、アビツズマブを投与した場合に、右側mCRCと左側mCRCの患者とで転帰に違いがあるかどうかを検討している。
【0095】
背景
第二選択k-RAS WT mCRCにおけるアビツズマブとセツキシマブ及びイリノテカンとの併用療法の活性を探るPOSEIDON試験(NCT01008475)
4(Elez E, et al. Ann Oncol. 2015;26:132-140)では、セツキシマブ+イリノテカン単独群の解析でも、αvβ6の高発現が予後不良と関連することが示され、αvβ6の高発現が負の予後因子であることが示唆されている(
図7)。
主要評価項目である包括解析集団における無増悪生存期間(PFS)は、前回のPOSEIDON試験で第二選択k-RAS WT(k-RAS WT exon-2)mCRCにおけるフェーズI/II試験において、統計的に有意な恩恵を示すことができなかった
4 (Elez E, et al. Ann Oncol. 2015;26:132-140)。
事前に計画された探索的バイオマーカー解析により、インテグリンαvβ6の高発現は、対照群では全生存期間(OS)の負の予後因子となり、アビツズマブ治療下ではOSの延長を予測する可能性が示唆された
4 (Elez E, et al. Ann Oncol. 2015;26:132-140)。
前回のPOSEIDON試験の探索的データ解析では、αvβ6が高発現している(ヒストスコア > 70)患者にアビツズマブを投与すると、PFS、OS、及び客観的奏効率(ORR)が高くなることが示されて、αvβ6の高発現(ヒストスコア > 70)がアビツズマブの奏効を予測することが示唆された(
図8)。
【0096】
方法
レトロスペクティブ分析のPOSEIDON試験
ホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍組織におけるインテグリンαvβ6の発現を解析することは、POSEIDON試験の一部であり、事前に計画された患者資料のレトロスペクティブ解析が実行された(αvβ6の発現が高かったn=98人、低かったn=99人)。
POSEIDON試験データのレトロスペクティブ解析を実行し、腫瘍部位(左n=152対右n=44、1名は左右両方の大腸癌)とインテグリンαvβ6の発現量(低値対高値)の影響を相関させ、イリノテカン+セツキシマブにアビツズマブを追加した場合のOS、PFS、及びORRを解析した(表8、
図9A、9B)。
【0097】
【表8】
CRC、大腸癌;ORR、客観的奏効率;OS、全生存期間;PFS、無増悪生存期間
【表9】
HR、ハザード比;OS、全生存率
【0098】
結論
サンプルサイズは小さいが、左側k-RAS WT mCRCで、腫瘍にαvβ6インテグリンが高発現している患者は、イリノテカン+セツキシマブにアビツズマブを追加することで、イリノテカン+セツキシマブ単独と比較して、最も効果がある。
ヒストスコアが低い患者には、効果が見られなかった。
POSEIDON試験では、イリノテカン+セツキシマブとの併用において、1000ミリグラムまでのアビツズマブの用量は良好な忍容性を示した5 (Arnold D, et al. Ann Oncol. 2017;28:1713-1729)。
セカンドラインのPOSEIDON試験の本レトロスペクティブなデータ解析は、第一選択の転移性疾患に対してセツキシマブ又はパニツムマブなどのEGFR阻害剤の投与を受けた患者のk-RAS WT mCRCにおいて、左側と右側で治療効果に差があるという観察結果を裏付けるものである5(Arnold D, et al. Ann Oncol. 2017;28:1713-1729)。
単独で、αvβ6インテグリンの発現は、mCRCの新たなバイオマーカーとなる可能性がある。
【0099】
参考文献
1. Bates RC, et al. J Clin Invest. 2005;115(2):339-347.2. Niu Z, et al. Cell Biosci; 2014;4:23.
3. Yang GY, et al. World J Gastroenterol. 2015;21(24):7457-7467
4. Elez E, et al. Ann Oncol. 2015; 26:132-140.
5. Arnold D, et al. Ann Oncol. 2017; 28:1713-1729
【実施例3】
【0100】
RAS野生型、KRAS野生型、及び/又はNRAS野生型の検査方法 Therascreen(登録商標)KRAS RGQ PCRキット及び手法
I.一般情報
デバイスの一般名:リアルタイムPCR検査
デバイスの商品名: therascreen(登録商標)KRAS RGQ PCRキット
デバイスのプロコード: OWD
申請者の名前及び住所: QIAGEN Manchester Ltd. Skelton House, Lloyd Street North Manchester, UK M15 6SH
諮問建議の日付:なし
市販前承認申請(PMA)番号:P110027
FDAの承認通知の日付:2014年5月23日
優先性:適用なし
Therascreen(登録商標) KRAS RGQ PCRキットの最初のPMA(P110030)は2012年7月6日に承認され、KRAS遺伝子変異が検出されないという検査結果に基づいて、Erbitux(登録商標)(セツキシマブ)による治療を受けるCRC患者の特定を支援することを目的としている。適応を裏付けるSSEDは、CDRHのウェブサイトから入手可能であり、ここに参照として組み込まれている。今回のPMA(P110027)は、Therascreen(登録商標)KRAS RGQ PCRキットの適応拡大のために提出された。
【0101】
II. 使用の適応
Therascreen(登録商標)KRAS RGQ PCRキットは、Rotor-Gene Q MDx装置で使用されるリアルタイム定性PCR分析で、大腸癌(CRC)のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織から抽出したDNAを用いて、ヒトKRAS癌遺伝子の7つの体細胞変異を検出する。Therascreen(登録商標)KRAS RGQ PCRキットは、KRASの変異が検出されないという検査結果に基づいてErbitux(登録商標)(セツキシマブ)及びVectibix(登録商標)(パニツムマブ)による治療を受けるCRC患者の特定を支援することを目的としている。
III.禁忌
なし。
IV.警告及び注意事項
警告及び注意事項は、Therascreen(登録商標)KRAS RGQ PCRキットのラベルに記載されている。
V.デバイスの説明
デバイス全体を構成する要素は、以下の通りである。
・QIAGEN QIAamp(登録商標)DSP DNA FFPE Tissueキット
・QIAGEN therascreen(登録商標)KRAS RGQ PCRキット
・QIAGEN Rotor-Gene Q MDx、ソフトウェアバージョン2.1.0、及びKRASアッセイパッケージ
【0102】
検体の調製
ホルマリン固定、パラフィン包埋(FFPE)ブロックを、スライドガラス上に切片化する。染色したスライドを用いて、腫瘍の含有量が組織の20%を超え、最小で4平方ミリメートルの腫瘍面積があることを確認する。DNAを抽出するために、スライドから非染色の組織切片を1枚削り取る。腫瘍の含有量が20%以下の切片は、マクロダイセクションを実行する。QIAGEN QIAamp(登録商標)DSP DNA FFPE Tissue Kit及び改変したプロトコルを用いて、大腸癌患者から採取したFFPE組織の5マイクロメートルのガラスマウントされた切片から、手作業でDNAを抽出及び精製する。腫瘍組織をキシレンで脱パラフィンし、キシレンをエタノールで抽出する。サンプルは、プロテイナーゼKを用いた変性条件で1時間かけて溶解される。サンプルを90℃で加熱し、ゲノムDNAのホルマリン架橋を逆転させる。サンプルをシリカベースの膜に通すことで、ゲノムDNAが膜に結合し、夾雑物が除去される。精製されたゲノムDNAは、膜から200マイクロリットルの溶出バッファーに溶出される。抽出されたDNAは、-20℃で保存される。
【0103】
PCR増幅及び検出
QIAGEN therascreen(登録商標)KRAS RGQ PCR Kitには、KRAS癌遺伝子のエクソン2のコドン12及び13の変異を増幅して検出する7つの変異特異的反応、並びにKRAS癌遺伝子のエクソン4の領域を増幅して検出する1つのコントロール反応の計8つの個別反応用の試薬が含まれている。KRAS RGQキットの各反応では、ARMS(登録商標)(Amplification Refractory Mutation System)対立遺伝子特異的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、変異していないゲノムDNA(変異陰性、野生型)をバックグラウンドとして、変異したゲノムDNAテンプレート(変異陽性)を選択的に増幅し、蛍光標識されたスコーピオン(Scorpion(登録商標))プライマーと組み合わせて、得られた増幅産物を検出する。ARMS技術は、PCRプライマーの3’末端のマッチとミスマッチを区別するTaqポリメラーゼの能力を利用している。スコーピオンは、PCRプライマーとプローブを共有結合させた2つの機能を持つ分子である。プローブには、フルオロフォアであるカルボキシフルオレセイン(FAM(登録商標))と、フルオロフォアの蛍光を消させるクエンチャーの両方が組み込まれている。PCRの際、プローブがARMSアンプリコンに結合すると、フルオロフォア及びクエンチャーが分離し、検出可能な蛍光の増加が見られる。
変異特異的試験反応で検査する前に、各DNAサンプルをコントロール反応で検査して、DNAの質及び量が分析のワーキングレンジに対して十分かつ適切であるかどうかを判断する必要がある。コントロール反応のCt値は、サンプル中の増幅可能なDNAの総量を評価するために使用され、各サンプルにあらかじめ指定された範囲内でなければならない。
コントロール反応で得られた結果の解釈は、以下の通りである。
【0104】
表10.コントロール反応で得られた結果の解釈
【表10】
【0105】
コントロール反応ミックスを用いたDNAサンプルの評価に使用した実行パラメータは、変異反応ミックスを用いた変異解析の実行パラメータと同じである。実行パラメータは、以下の通りである:(1)95℃で15分間保持し、Taqポリメラーゼを活性化する。(2)95℃で30秒間変性させ、60℃で1分間アニーリング/伸長させる、という40サイクルのPCRを実行する。特定の反応からの蛍光が、あらかじめ定義された閾値と交差するPCRサイクルをCt値と定義する。Therascreen(登録商標)KRAS RGQ Kitで検出されるKRAS癌遺伝子のコドン12及び13における7つの変異を以下に示す。
【0106】
表11:Therascreen(登録商標) KRAS RGQ Kitで検出されるKRAS癌遺伝子のコドン12及び13における7つの変異
【表11】
【0107】
試験コントロール
各テストランには、インターナルコントロール、ポジティブコントロール、及びネガティブコントロールが含まれている必要がある。ネガティブコントロールがテストランが夾雑物を含むことを示す場合(FAMチャンネルのCt値が設定値を超える場合)、又はポジティブコントロールのCt値が設定範囲外の場合(FAM及びHEXチャンネルの両方)、テストランは無効とみなされる。
【0108】
【0109】
インターナルコントロール
全ての8つの反応には、インターナルコントロールとして使用される合成された非KRAS関連オリゴヌクレオチドテンプレートの増幅及び検出のために、追加のARMSのプライマー及びHEX標識されたスコーピオンプライマーが含まれている。スコーピオンプライマーは、HEXで標識されており、コントロール反応及び突然変異反応におけるFAM標識のスコーピオンと区別することができる。それぞれの反応において、インターナルコントロールの反応は、2つの反応のうち弱い方になるように設計されている。これは、非常に低濃度のインターナルコントロールテンプレートを使用することで実現している。インターナルコントロール反応は、変異特異的な増幅とは独立して働くように設計されているが、強い増幅がある場合、FAM反応に「対抗」されて失敗することがある。7つの変異反応のうち1つでもインターナルコントロール反応が失敗した変異陰性の結果は、無効な結果として報告される。インターナルコントロールは、阻害要因又はグロス反応の失敗を検出するために使用される。
ポジティブコントロール
ポジティブコントロールは、Therascreen(登録商標)KRAS RGQ Kitで検出される各変異を表す合成オリゴヌクレオチドの混合物で構成されている。ポジティブコントロールの検出により、キット内の各反応ミックスが正しく機能していることが確認できる。
ネガティブコントロール
Therascreen(登録商標)KRAS RGQ Kitには、ノーテンプレートコントロール(NTC)反応として使用するための核酸フリーの水が含まれている。NTCはネガティブコントロールとしての役割を果たし、分析のセットアップ中に潜在的なコンタミネーションを評価する。
【0110】
機器及びソフトウェア
Rotor-Gene Q (RGQ) MDx機器は、増幅されたDNAの熱サイクル及びリアルタイム検出のために設計されたリアルタイムPCR分析装置である。RGQ MDx機器は、PCR反応を制御及び監視し、PCR結果に基づいて変異状態を判定するソフトウェアを搭載している。PCR反応時の熱サイクル用の遠心式ローターデザインを採用しており、各チューブが空気の流れるチャンバー内で回転する。サンプルは、ソフトウェアが決定したPCRサイクルの異なるフェーズを開始するサイクルにしたがって、低質量空気オーブンで加熱及び冷却され、各PCRランで合計40サイクルが実行される。RGQ MDx機器において、発光ダイオードによってチャンバーの底部からサンプルが励起される。エネルギーは、チューブの底部にある薄い壁を介して伝達される。放射された蛍光は、チャンバー側面の放射光フィルターを通過し、光電子増倍管で検出される。検出は、各チューブが検出光学系に整列する際に実施され、チューブは150ミリ秒ごとに励起/検出光学系を通過して回転する。蛍光シグナルは、PCR反応の進行をモニターする。本装置は最大6つの光学チャンネル(6つの励起光源及び6つの検出フィルター)に対応しているが、Therascreen(登録商標)KRAS RGQ Kitではこれらのうち2つのチャンネル(FAMチャンネル及びHEXチャンネル)のみを使用している。
Therascreen(登録商標)KRAS Assay Packageは、「Therascreen(登録商標)KRAS QC Locked Template」(DNAサンプル評価用)及び「Therascreen(登録商標)KRAS Locked Template」(KRAS変異の検出用)の2つのテンプレートで構成されている。これらのテンプレートには、PCRの実行パラメータが含まれており、結果を算出する。コントロール反応ミックスを用いたDNAサンプルの評価と、変異反応ミックスを用いたKRAS変異の検出の両方に、同じ実行パラメータが使用される。
RGQ MDx機器のソフトウェアは、リアルタイムの分析手順をサポートしている。本ソフトウェアは、Ct値を決定し、ΔCt値を計算し、これらを上述のようにソフトウェアに組み込まれた変異特異的カットオフ値と比較する。フラグ/警告システムがソフトウェアに組み込まれており、分析における潜在的な問題をユーザーに通知し、無効なテストラン又は有効なテストラン内の無効なサンプル(不適切なレベルのDNA又はインターナルコントロールの失敗)を示す。無効なラン又は有効なサンプルの結果は、報告されない。KRAS RGQキットのユーザーは、Ct値又はΔCt値を見ることができず、ソフトウェアが報告する変異状態のコールを見るだけなので、変異状態を本質的に判断することはできない。
【0111】
結果の解釈
コントロール反応のCtはサンプル内の増幅可能なKRASテンプレートの総量を反映し、対立遺伝子特異的反応のCtはサンプル内のKRAS変異の量を反映する。コントロール反応と対立遺伝子特異的反応のCt値の差(ΔCt)は、サンプル内の変異の割合を示している。ΔCt値は、サンプル中の変異体DNAの割合が増えると0に近づく。ΔCt値は、サンプル中の変異体DNAの割合が減少すると増加する(ポジティブコールvs.ネガティブコールの閾値に近づく)。ΔCt測定値が変異反応のΔCtカットオフ値を超えると、分析は「変異は検出されなかった」と報告する(例えば、7つの変異に対して陰性)。
各サンプルについて、RGQ MDx機器ソフトウェアにより計算が実施され、7つの変異特異的反応のそれぞれについてΔCt値(FAMチャンネル)が決定される。
[変異反応Ct値]-[コントロール反応Ct値]=ΔCt
Rotor-Gene Qソフトウェアは、あらかじめ設定された分析用Ct及びΔCt値に基づいて、DNAサンプルの変異状態を定性的に判断し、どのサンプルにどのような変異が含まれているかを報告する。各サンプルには、7つの可能なΔCt値が存在する(変異ごとに1つ)。これらの値は、RGQ MDx機器のソフトウェアに組み込まれた事前に設定された仕様(カットオフ値)と比較され、サンプルが変異陽性又は陰性か、若しくは変異がある場合にはどの変異が存在するかが判断される。変異反応のΔCt値が、その反応のカットオフ値以下の場合、そのサンプルはKRAS変異陽性である。分析結果は、「変異陽性」、「変異は検出されなかった」、「無効」、又はランコントロールが失敗した場合は「ランコントロール失敗」と表示される。変異陽性のサンプルについては、特定の変異が報告されている。
【0112】
【0113】
VI.代替手段及び手順
大腸癌の治療には、手術、高周波焼灼療法、凍結手術、化学療法、放射線療法、及び標的療法などのいくつかの他の代替手段がある。それぞれの選択肢には、長所及び短所がある。患者は、これらの代替手段について医師と十分に話し合い、希望及びライフスタイルに合った方法を選択する必要がある。
ベクティビックス(パニツムマブ)による標的療法の効果が期待できる患者を選択するために、大腸癌組織のKRA癌遺伝子の変異を検出する検査には、他にFDA(米国食品医薬品局)で認可又は承認された代替手段はない。
【0114】
cobas(登録商標)KRAS変異検査
I.一般情報
デバイスの一般名:リアルタイムPCR検査
デバイスの商品名:cobas(登録商標)KRAS変異検査
デバイスのプロコード:OWD
申請者の名前及び住所: Roche Molecular Systems, Inc. (RMS) 4300 Hacienda Drive Pleasanton, CA 94588-2722
諮問建議の日付:なし
市販前承認申請(PMA)番号:P140023
承認通知の日付:2015年5月7日
優先性:適用なし
II.使用の適応
cobas(登録商標)4800システムで使用するcobas(登録商標)KRAS変異検査は、ホルマリン固定パラフィン包埋のヒト大腸癌(CRC)腫瘍組織由来のDNAに含まれるKRAS遺伝子のコドン12及び13における7つの体細胞変異を検出するためのリアルタイムPCR検査である。本検査は、変異が検出されないという結果に基づいてErbitux(登録商標)(セツキシマブ)又はVectibix(登録商標)(パニツムマブ)による治療が適応となるCRC患者を特定するための補助として使用することを目的としている。検体の処理には、手動でのサンプル調製にはcobas(登録商標)DNAサンプル調製キットを、自動での増幅及び検出にはcobas z 480アナライザーを使用する。
III.禁忌
本検査の使用に関する既知の禁忌は存在しない。
IV.警告及び注意事項
警告及び注意事項は、cobas(登録商標)KRAS変異検査の製品ラベルに記載されている。
V.デバイスの説明
cobas(登録商標)KRAS遺伝子変異検査は、2つの試薬キット及びシステムプラットフォームで構成されている。cobas(登録商標)4800システムのプラットフォームの詳細は、後述の「機器及びソフトウェア」に記載されている。試薬キットは、検査の2つの主要工程を実施するために必要な試薬を提供する。
1.cobas(登録商標)DNAサンプル調製キットは、ホルマリン固定、パラフィン包埋組織(FFPET)からゲノムDNAを得るための手作業による検体調製用の試薬を提供する。
2.cobas(登録商標)KRAS変異検査キットは、KRAS変異の自動リアルタイムPCR増幅及び検出用の試薬を提供する。
【0115】
検体の調製
FFPETの検体は、ガラス繊維への核酸の結合に基づいた手動の検体前処理であるcobas(登録商標)DNAサンプル調製キットを用いて処理され、ゲノムDNAが分離される。FFPET検体の脱パラフィン処理された5マイクロメートルの切片を、プロテアーゼ及びカオトロピックを含む溶解/結合バッファーを用いて高温でインキュベートすることにより、核酸を放出し、放出されたゲノムDNAをDNaseから保護しながら溶解する。その後、イソプロパノールを溶解混合物に加え、ガラス繊維のフィルターインサート付きのカラムで遠心分離する。遠心分離の際、ゲノムDNAはグラスファイバーフィルターの表面に結合する。塩分、タンパク質、及び他の細胞の不純物など、結合していない物質は、遠心分離によって取り除かれる。
吸着した核酸を洗浄した後、水溶液で溶出する。ゲノムDNAの量を分光光度計で測定し、2ナノグラム/マイクロリットルの固定濃度に調整する。50ナノグラムのゲノムDNAを含む溶出液25マイクロリットルを、cobas(登録商標)KRAS変異検査キットの各活性化マスターミックス試薬25マイクロリットルと合わせて96ウェルプレートに入れる。コントロール及びサンプルを96ウェルプレートに加えた後、プレートをcobas z 480アナライザーに移し、自動増幅及び検出を実施する。
【0116】
PCR増幅
ターゲット選択及び増幅
cobas(登録商標)KRAS変異検査キットは、ヒトゲノムDNAのKRASコドン12及び13を含むエクソン2の85塩基対の配列を定義するプライマーを使用している。プライマー間のKRAS遺伝子の領域でのみ増幅され、KRAS遺伝子全体は増幅されない。以下の表14に、意図した標的変異を示す。
【0117】
【0118】
ターゲットの増幅には、サーマス種 Z05 DNA ポリメラーゼの誘導体を使用している。まず、PCR反応混合物を加熱してゲノムDNAを変性させ、プライマーの標的配列を露出させる。混合物が冷えると、上流側及び下流側のプライマーがターゲットのDNA配列にアニーリングする。Z05 DNAポリメラーゼは、2価の金属イオン及び過剰なdNTPの存在下で、アニーリングした各プライマーを伸長し、2本目のDNA鎖を合成する。これでPCRの第1サイクルが完了し、KRAS遺伝子の標的となる85塩基対の領域を含む二本鎖DNAが得られる。本工程を数サイクル繰り返し、各サイクルでアンプリコンDNAの量を効果的に2倍にする。
cobas(登録商標)KRAS変異検査では、AmpErase(ウラシル-N-グリコシラーゼ)酵素及びデオキシウリジン三リン酸(dUTP)を使用することで、検体からの標的核酸の選択的な増幅が実施される。AmpErase酵素は、デオキシウリジンを含むDNA鎖の破壊を触媒するが、チミジンを含むDNAは破壊しない。デオキシウリジンは天然のDNAには存在しないが、反応ミックス試薬のヌクレオチド三リン酸の1つとしてチミジン三リン酸の代わりにdUTPを使用しているため、アンプリコンには常に存在する。従って、アンプリコンのみデオキシウリジンを含む。デオキシウリジンは、ターゲットDNAを増幅する前に、汚染されたアンプリコンをAmpErase酵素で破壊しやすくする。AmpErase酵素は、55℃以上の温度では不活性であるため、サーマルサイクリングのステップを通して、ターゲットアンプリコンを破壊することはない。
【0119】
自動化されたリアルタイム変異検出
cobas z 480アナライザーでは、特定のPCR産物から発生する蛍光の量をリアルタイムで測定する。増幅後、cobas(登録商標)KRAS変異検査を使用して生成された各アンプリコンは、40℃~95℃まで温度を変化させる融解プログラム(TaqMelt)の対象となる。野生型の特異的プローブは、低温下では野生型及び変異型の両方のアンプリコンに結合する。結合状態では、プローブの5’末端のフルオレセインレポーター色素が3’末端のクエンチャー色素から十分に離れているため、蛍光色素が特定の波長の光を発することができる。温度が上昇すると、プローブがアンプリコンから解離し、クエンチャー色素が蛍光色素に近づき、測定可能な蛍光の量が減少する。プローブと完全に一致したアンプリコン(ワイルドタイプ)は、1つ以上のミスマッチを持つアンプリコン(ミュータント)よりも高い温度で溶解する。各温度増分における蛍光量を測定し、融解温度を算出する。コドン12及び13の変異KRAS配列の存在は、融解温度が特定の範囲内にある場合に検出できる。コドン12及びコドン13のサイレント・ミューテーション(アミノ酸の変化がない)の検出を避けるために、改変された塩基がユニバーサル塩基として機能し、野生型の範囲内の融解温度が得られる。
【0120】
計測機器及びソフトウェア
cobas(登録商標)4800システムは、コア・ソフトウェア・エンジン及びユーザー・インターフェースを提供するcobas(登録商標)4800システムSR2.1ソフトウェアによって制御されている。本コアシステムのソフトウェアは、分析対象物に特化した分析パッケージソフトウェア(ASAP)を使用して、システム上で複数の分析を実行できるように設計されている。試験システムのコンポーネントであるcobas z 480アナライザーにも、コア・ソフトウェアによって駆動される独自の機器制御ソフトウェアが内蔵されている。これらのソフトウェアコンポーネントは全て、設計管理工程及び関連するソフトウェア標準に基づいて開発された。
専用の制御装置コンピュータは、cobas(登録商標)4800 SR2.1システムソフトウェアを実行し、cobas z 480及び検査室情報システム(LIS)へのインターフェースを提供する。また、コンピュータは、ASAPで蛍光信号を処理し、検査結果を管理されたデータベースに保存する。本システムでは、ユーザーは各検体の試験作業指示書を手動で作成できる。cobas z 480のメンテナンス、検査項目の選択、検体IDの入力、試薬並びにマイクロウェルプレートのバーコード入力、マイクロウェルプレートのセット、及び検査の開始など、検査に必要な手順をソフトウェアのウィザードが案内する。
cobas(登録商標)4800システムは、処理中及びcobas z 480分析装置における分析中に各検体を追跡する。熱実行が完了すると、ASAPはデータ解析アルゴリズムを使用して蛍光データを処理し、コントロールの有効性を評価し、アッセイ固有の結果解釈ロジックを使用して結果を判定する。本ソフトウェアは、印刷可能なPDF形式の結果レポート、グラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI)ベースの結果ビューア、及びLISへの結果エクスポートの3つの形式でユーザーに結果を提供する。cobas(登録商標)4800システムのソフトウェアには、有効なKRASデータ解析アルゴリズムが含まれており、サンプルの結果及びランの有効性を判断できる。
【0121】
結果の解釈
融解温度(Tm)及び融解曲線のピークの高さ(PH)は解析ソフトウェアによって計算され、実行が有効であるかどうかを判断するために、全ての変異コントロール、ネガティブコントロール、及びキャリブレーターの反応からの値が使用される。ランが有効であれば、解析ソフトはTm及びPHを許容範囲と比較して評価することで、検体の有効性及び変異状態を判断する。
変異Tmが観察された検体は「変異検出」と報告され、変異反応が報告される(表15)。可能な変異の数及び融解技術の性質上、コドン内の特定の変異は指定されていない。
変異Tmが観察されない検体は「変異は検出されなかった」と報告される(表15)。コドン12/13反応のウェルが無効な検体は、「無効」と報告される。範囲外のTmが観察された検体(野生型の範囲でも変異型の範囲でもない)は「無効」と報告される。有効な検体には、少なくとも1つのメルトピーク(変異型、野生型、又はその両方)が存在する。メルトピークがない検体は、無効である。
【0122】
【0123】
試験コントロール及びキャリブレーター
外部ランコントロールとして、KRAS変異コントロール(MC)及びKRASネガティブコントロールが1つずつ用意されている。プローブによる野生型コドン12及び13の検出は、内部の完全なプロセスコントロールとして機能する。
1.KRAS変異コントロール:変異コントロールは、二重変異線状化DNAプラスミドと野生型細胞株のゲノムDNAの混合である。このプラスミドには、KRASのコドン12(Asp, GAT)及びKRASのコドン61(His, CAC)の変異配列が含まれている。
変異コントロールは全ての実行操作に含まれており、サンプルの調製を除く全てのステップのプロセスコントロールとして機能する。変異コントロール反応は、実行が有効とみなされるために、KRAS野生型及びKRASコドン12/13変異体の融解温度がそれぞれの許容範囲内にある必要がある。
2.KRASネガティブコントロール:ネガティブコントロールは完全なプロセスコントロールであり、cobas(登録商標)DNAサンプル調製キット及びcobas(登録商標)KRAS変異キットの試薬又は工程のコンタミネーションの可能性を確認するためのものである。ランが有効とみなされるために、融解ピークの高さの値が、あらかじめ設定されたカットオフ値以下でなければならない。ネガティブコントロール用の試薬は、提供されていない。ネガティブコントロールとして、DNA検体希釈物(DNA SD)を使用する。
3.KRASキャリブレーター:KRASキャリブレーターは、野生型のゲノムDNAで構成されており、各実行間及び装置間の温度変動を補正するための融解温度(Tm)のキャリブレーターとして機能する。野生型のピークTmは、解析ソフトウェアによって、変異状態の解析に先立って、変異体コントロール及び全ての検体のTm値を調整するために使用される。
【0124】
VI.代替手段及び手順
現在、セツキシマブ(アービタックス)又はパニツムマブ(ベクティビックス)による治療に適格性のある患者を選択する際に、ホルマリン固定、パラフィン包埋CRC組織のKRAS遺伝子変異状態を検査するためのFDA承認の代替手段が1つある。すなわち、QIAGEN therascreen KRAS RGQ PCRキットがPMA P110030及びP110027として承認されている。
【0125】
FoundationOne CDx(登録商標)
I.一般情報
デバイスの一般名:次世代シーケンサーによるオンコロジーパネル、体細胞、又は生殖細胞系列のバリアント検出システム
デバイスの商品名:FoundationOne CDx(登録商標)
デバイスのプロコード:PQP
申請者の名前及び住所:Foundation Medicine, Inc. 150 Second Street Cambridge, MA 02141
諮問建議の日付:なし
市販前承認申請(PMA)番号:P170019
FDAの承認通知の日付:2017年11月30日
ブレークスルーデバイス:2016年6月15日時点の承認ブレークスルーデバイスステータス[従前の迅速アクセスプログラムExpedited Access Pathway(EAP)]であると認められた理由は、(1)生命を脅かす、若しくは不可逆的に衰弱させる疾患又は状態を診断することを目的としていること、(2)既存の合法的に販売されている技術に対して臨床的に意味のある優位性を提供する画期的な技術を表していること、及び(3)その装置の入手が患者の最善の利益になることである。
【0126】
II.使用の適応
FoundationOne CDx(登録商標)(F1CDx)は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍組織標本から分離したDNAを用いて、324遺伝子の置換、挿入、及び欠失変化(インデル)並びにコピー数変化(CNA)、及び特定の遺伝子の再配列、マイクロサテライト不安定性(MSI)並びに腫瘍遺伝子変異量(TMB)などのゲノムシグネチャーを検出する、次世代シーケンシングに基づく体外診断装置である。本検査は、承認された治療薬の添付文書に基づき、表16に記載された標的治療薬による治療が有効である可能性のある患者を特定するためのコンパニオン診断を目的としている。また、F1CDxは、固形悪性新生物の癌患者に対して、腫瘍学の専門的なガイドラインに沿って、資格を有する医療従事者が使用する腫瘍変異プロファイリングを提供することを目的としている。F1CDx試験は、ファウンデーション・メディシン社で実施される単一サイト分析である。
【0127】
【0128】
III.禁忌
既知の禁忌は存在しない。
IV.警告/注意事項及び制限事項
警告/注意事項及び制限事項は、FoundationOne CDx分析のラベルに記載されている。
V.デバイスの説明
FoundationOne CDx(F1CDx)は、ファウンデーション・メディシン社で実施される単一サイト分析である。本分析には、ホルマリン固定、パラフィン包埋(FFPE)腫瘍標本から抽出したDNAを検査するための試薬、ソフトウェア、機器、及び手順が含まれる。本分析では、通常のFFPEバイオプシー又は外科的切除標本からの単一DNA抽出法を採用し、50~1000ナノグラムのDNAは、全ゲノムショットガンライブラリの構築及びハイブリダイゼーションに基づく309の癌関連遺伝子の全コーディングエクソン、1つのプロモーター領域、1つのノンコーディングRNA(ncRNA)、及び34の一般的に再配列された遺伝子の選択されたイントロン領域(そのうち21はコーディングエクソンも含む)の捕捉に供される(F1CDxに含まれる遺伝子の全リストは、下記の表17及び表18を参照)。従って、本分析では合計324の遺伝子の変化が検出される。Illumina(登録商標)Hi Seq 4000プラットフォームを用いて、ハイブリッドキャプチャーで選択されたライブラリを高い均一な深さでシーケンスする(中央値で500倍以上のカバレッジ、エクソンの99%以上のカバレッジで100倍以上を目標としている)。配列データは、塩基置換、インデル、コピー数の変化(増幅及びホモ接合の欠失)、特定のゲノム再配列(遺伝子融合など)を含む、全てのクラスのゲノム変化を検出するように設計された、カスタマイズされた解析パイプライン(Analysis Pipeline)を用いて処理される。更に、マイクロサテライト不安定性(MSI)及び腫瘍遺伝子変異量(TMB)などのゲノムシグネチャーも報告される。
【0129】
置換、挿入欠失(インデル)、及びコピー数変化(CNA)を検出するために、F1CDに含まれる完全長エクソンコード領域を有する遺伝子
【表17-1】
【表17-2】
【0130】
【0131】
試験結果
試験の結果には、以下が含まれる。
カテゴリー1:使用目的の表16に記載されたCDxクレーム
カテゴリー2:臨床的意義が確認された癌変異
カテゴリー3:臨床的意義が期待される癌変異
使用目的の説明の表16に記載されているもの以外のゲノム所見(すなわちカテゴリー2及び3)は、特定の治療製品のラベル使用を規定するものでもなければ、決定的なものでもない。
試験キットの内容
本検査には、サンプル送付キットが含まれており、注文した検査機関に送られる。送付キットには、以下の構成物品が含まれる。
・検体の調製手順
・送付方法
・返送用ラベル
機器
F1CDx分析は、下記の表19に示されているように、シリアル番号で管理された機器で実施することを意図している。全ての機器は、ファウンデーション・メディシン社(FMI)がFMl社の品質システムに基づいて認定している。
【0132】
【0133】
試験工程
F1CDxの分析工程に含まれる全ての分析試薬は、FMIによって認定され、医療機器の品質システム規制(QSR)に準拠している。
A.検体の収集及び調製
ホルマリン固定、パラフィン包埋(FFPE)された腫瘍標本は、標準的な病理学的手法に基づいて収集及び調製される。FFPE検体は、染色していないスライドとして、又はFFPEブロックとして受け取ることができる。
分析開始前に、ヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色したスライドを用意し、有資格病理医による検査を受け、疾患のオントロジーを確認すると共に、分析の実施に十分な組織(0.6立方メートル)、腫瘍の含有量(20%以上の腫瘍)、十分な有核細胞が存在することを確認する。
B.DNA抽出
病理検査に合格した検体は、DNA抽出のために待ち行列に入れられ、FFPE組織からプロテイナーゼKバッファーで消化して細胞を溶解した後、96ウェルのKingFisher(商標)FLEX磁性粒子プロセッサーを使って自動精製を実施する。
DNA抽出終了後、ライブラリ構築(LC)に先立ち、付属のラムダDNAスタンダード(インビトロジェン社)を用いてQuant-iT(商標)PicoGreen(登録商標)蛍光測定法により二本鎖DNA(dsDNA)を定量する。品質管理(QC)のために十分なDNAを確保し、LCを進めるためには、サンプルから最低55ナノグラムのゲノムDNAが得られる必要がある。
C.ライブラリ構築
ライブラリ構築(LC)は、DNAを50~1000ナノグラムに正規化することから始まる。正規化されたDNAサンプルは、Covaris LE220を用いた適応型集束音響ソニケーションにより、ランダムに約200塩基対までせん断(断片化)された後、1.8倍量のAMPure(登録商標)XP Beads(Agencourt(登録商標))を用いて精製される。固相可逆的固定化(SPRI)精製と、それに続くNEBNext(登録商標)試薬(NEB社のカスタム充填キット)を用いた末端修復、dA添加、及びライゲーション用ミックスを含むライブラリ構築は、96ウェルプレート(エッペンドルフ)を用いて、再現性及びライブラリ収量を最大化するために、Bravo Benchbot(アジレント)で「ビーズあり」のプロトコルで実行する。インデックス付き(6塩基対バーコード)シーケンスライブラリは、HiFi(商標)(Kapa社)で10サイクルのPCR増幅を実行し、その後1.8倍のSPRI精製を実行する。QC用の精製及び希釈を実行する。
LCに続いて、モレキュラーデバイス社のMultimode Spectra Max M2プレートリーダーでQuant-iT(商標)OliGreen(登録商標)ssDNA分析キット(ライフテクノロジーズ社)を用いて、精製したライブラリの一本鎖DNA(ssDNA)を定量することにより、QC手順を実施する。不十分なシーケンスライブラリが得られたライブラリは、失敗となる。
【0134】
D.ハイブリッドキャプチャー
ハイブリッドキャプチャー(HC)は、各ライブラリを500~2000ナノグラムに正規化することから始まる。その後、正規化されたサンプルは、個別に合成された5'ビオチン化DNA 120塩基対オリゴヌクレオチドのプールを50倍以上のモル比で使用して、溶液ハイブリダイゼーションを実施する。本ベイトは、ヒトゲノムの約1.8メガベースを対象としており、癌関連遺伝子309個の全コードエクソン、35個の遺伝子のイントロン、又は非コード領域、及びゲノム全体に存在する3,500を越える一塩基多型(SNP)を含む。ベイトは、ターゲットのエクソン(60塩基対オーバーラップ)及びイントロン(20塩基対オーバーラップ)をカバーする120塩基対のDNA配列間隔を重ね合わせて設計されており、ターゲットごとに最低3つのベイトが割り当てられている。イントロニックベイトは、UCSCゲノムのRepeatMaskerトラックで定義された繰り返し要素をフィルタリングしている。
ハイブリダイゼーション後、ライブラリ-ベイト二重鎖は常磁性MyOne(商標)ストレプトアビジンビーズ(インビトロジェン)に捕捉され、25℃の1X SSCで1回、55℃の0.25X SSCで4回の洗浄により標的でない物質が除去される。PCRマスターミックスを加え、洗浄したビーズから捕捉したライブラリを直接増幅(12サイクル)する。3 12サイクルの増幅後、サンプルは1.8X SPRI精製される。QC用の精製及び希釈を実行する。
ハイブリッドキャプチャーの品質管理は、モレキュラーデバイス社のMultimode SpectraMax M2プレートリーダーでQuant-iT(商標)PicoGreen(登録商標)dsDNA分析キット(ライフテクノロジーズ社)を使用してdsDNA収量を測定することで実施する。140ナノグラム未満のシーケンスライブラリしか得られなかった場合は、失敗となる。
E.シークエンシング
シークエンシングは、パターン化されたフローセル技術を採用したIllumina cBotでオフボードクラスタリングを用いて実行し、単一のDNAテンプレートからモノクローナルクラスターを生成した後、Illumina HiSeq 4000で逐次合成によるシーケンス反応(SBS)ケミストリーを用いてシークエンシングを実施する。蛍光標識された3’ブロックdNTP及びポリメラーゼがフローセルに取り込まれ、成長するヌクレオチド鎖が生成され、レーザーで励起される。組み込まれた塩基の放射光色をカメラで捉え、それを切断する。その後、ターミネーターを除去すると、ヌクレオチドが自然な形に戻り、ポリメラーゼが成長中の鎖に別の塩基を加えることができるようになる。新しいシーケンスサイクルごとに、蛍光標識された3’ブロックdNTPsの新しいプールが追加される。新しいサイクルでは、成長する鎖に新しい塩基が追加されるたびに色が変わる。本方法では、幾百万ものクローンコピーの個別のクラスターのDNAを並行して配列できる。
【0135】
F.シーケンス分析
シーケンスデータの分析には、FMI社が開発した独自のソフトウェアを使用する。配列データは、バローズ・ウィーラーアライナ(BWA) v0.5.9を用いて、ヒトゲノム(hg19)にマッピングされている。PCRの重複リードの除去及びシーケンスメトリックの収集は、Picard 1.47 (http://picard.sourceforge.net)及びSAMtools 0.1.12aを用いて実施している。ローカルアライメントの最適化は、ゲノム分析ツールキット(GATK) 1.0.4705を用いて実施している。バリアントコーリングは、試験の対象となるゲノム領域でのみ実施される。
塩基置換の検出はベイジアン手法を用いて行われ、組織固有の事前期待値を組み込むことで、低い変異対立遺伝子頻度(MAF)で新規の体細胞変化を検出し、ホットスポット部位の変化に対する感度を高めることができる。マッピングの質が低い(マッピングの質<25)、又はベースコールの質が低い(ベースコールの質≦2)リードは破棄される。最終的にはMAF≧5%(ホットスポットではMAF≧1%)で判定される。
インデルを検出するために、ド・ブラウン法を用いて、各ターゲットエクソンのデノボ・ローカルアセンブリを実施する。主要なステップは、以下の通りである。
・少なくとも1つのリードがターゲット領域にマッピングされている、全リードペアを収集する。
・各リードを、構成するk-merに分解し、存在する全ての非参照ハプロタイプ候補の列挙可能なグラフ表現(ド・ブラウン)を構築する。
・生のリードデータについて各代替ハプロタイプのサポートを評価し、変異候補を生成する。全てのリードは、ギャップ無しアライメントによって各ハプロタイプ候補と比較され、各リードについて最も一致する候補にリード「票」が割り当てられる。候補間のつながりは、それぞれのハプロタイプを既にサポートしているリードの数で重み付けしてリード票を分割することで明らかにされる。本工程は、「勝者」ハプロタイプが選ばれるまで繰り返し実施される。
・候補を参照ゲノムとアラインメントし、変異コールを報告する。
インデル候補のフィルタリングは、塩基置換と同様に、GA TKに実装されているように、リピート部分の対立遺伝子頻度の閾値を経験的に上げ、隣接する配列の品質メトリクスを用いて実施される。隣り合う塩基のミスマッチの割合<25%、隣り合う塩基の平均品質>25、サポートリードのミスマッチの平均数≦2。最終的にはMAF≧5%(ホットスポットではMAF≧3%)で判定される。
コピー数変化(CNA)は、比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)に類似した方法で検出される。まず、全てのエクソン及びゲノム全体のSNP(約3,500個)にて得られた配列カバレッジを、工程を適合させた正常対照に対して正規化することで、サンプルの対数比プロファイルを取得する。本プロファイルをセグメント化し、配列決定したSNPの対立遺伝子頻度を用いて解釈することで、各セグメントにおける腫瘍の純度及びコピー数を推定する。腫瘍の純度が20%以上のサンプルでは、6コピー以上(3倍体の場合は7コピー以上、4倍体の場合は8コピー以上)のセグメントで増幅が、0コピーでホモ接合性の欠失が確認される。ERBB2の増幅は、2倍体の腫瘍では5コピー以上のセグメントで陽性と呼ばれる。
ゲノムの再配列は、キメラのリードペアを解析することで特定される。キメラリードペアとは、リードが別々の染色体にマッピングされているか、又は10メガベース(Mb)超の距離があるリードペアと定義される。ペアは、ペアのゲノム座標によってクラスター化され、少なくとも5つのキメラペア[既知の融合の場合は3つ]を含むクラスターが再配列候補として同定される。候補のフィルタリングは、マッピング品質(クラスター内の平均リードマッピング品質は30以上でなければならない)及びアライメント位置の分布によって実施される。再配列には、予測される機能(融合遺伝子の生成など)がアノテーションされる。
【0136】
マイクロサテライト不安定性(MSI)の状態を判定するために、F1CDx分析で十分なカバー率を持つ95のイントロンホモポリマーのリピート遺伝子座(ヒト参照ゲノムでは10~20塩基対の長さ)の長さの変動を分析し、主成分分析によってMSIの総合スコアにまとめた。95の遺伝子座を用いて、各サンプルについて、遺伝子座にまたがる各リードの繰り返し長さを計算する。繰り返しの長さの平均及び分散を記録する。主成分分析(PCA)を用いて、190次元のデータを、データの分離度を最大化する1次元(第1主成分)に投影し、MSIスコアを算出する。各サンプルには、MSI-高(MSI-H)又はMSI-安定(MSS)の質的ステータスが割り当てられ、MSIスコアの範囲は、手動の教師なしクラスタリングによってMSI-H又はMSSに割り当てられる。カバー率が低い(中央値250倍未満)サンプルには、MSI-未知というステータスが割り当てられる。
腫瘍遺伝子変異量(TMB)は、5%以上の対立遺伝子頻度で存在する全ての同義及び非同義バリアントをカウントし、一塩基多型データベース(dbSNP)又はエクソーム集約コンソーシアム(Exome Aggretation Consortium:ExAC)などの既知の生殖細胞系列多型の公開データベースに基づいて、潜在的な生殖細胞系列多型をフィルタリングして測定する。データベースへの問い合わせ後にも依然として存在するさらなる生殖細胞系列の変化は、潜在的な生殖細胞系列状態について評価し、体細胞-生殖細胞/接合性(SGZ)アルゴリズムを用いてフィルタリングされる。更に、データセットの偏りをなくすために、既知のドライバーとなりそうな変異はフィルターで除外される。その後、得られた変異数を、カウントされた総変異数に対応するコーディング領域、すなわち793キロベースで割る。結果の数値は、メガベース単位あたりの変異数(変異数/メガベース)として伝えられる。
解析パイプラインの完了後、バリアントデータはFMI社が独自に開発したCATiソフトウェアアプリケーションに配列品質管理指標とともに表示される。F1CDxアッセイは、各サンプルのデータ解析QCの一環として、SNPプロファイル・アルゴリズムを用いてクロスコンタミネーションを評価し、予期せぬコンタミネーションの結果として起こりうる偽陽性コールのリスクを低減する。配列データは、バイオインフォマティクスのトレーニングを受けた担当者がレビューする。QC基準を満たさないサンプルは、自動的にホールドされ、リリースされない。
【0137】
G.レポート作成
承認された結果は、自動化されたソフトウェアによってCDxに関連する情報が注釈され、実験室管理者又は指定された者による承認及びリリースの前に、患者の人口統計情報及びFMIが専門サービスとして提供する追加情報と統合される。
H.システムに関連するインターナルプロセスコントロール
ポジティブコントロール
各分析の実行には、コントロールサンプルの二重実行が含まれている。コントロールサンプルは、10種類のHapMapセルラインのプールを含み、ポジティブ変異検出コントロールとして使用される。解析パイプラインが検出するためには、対象領域全体に存在する100種類の生殖細胞系SNPが必要である。SNPが期待通りに検出されなかった場合は、処理エラーの可能性があるため、QCは失敗となる。
感度コントロール
ポジティブコントロールとして使用されるHapMapコントロールプールは、各ランで期待される感度を確保するために、解析パイプラインで検出する必要がある5%~10%のMAFのバリアントを含むように用意されている。
ネガティブコントロール
サンプルは、LCの段階で分子的にバーコード化されている。完璧な分子バーコード配列を持つリードのみが解析に組み込まれる。分析パイプラインには、各検体のSNPプロファイルを分析して、分子バーコード化の前に発生した可能性のあるコンタミネーションを特定するアルゴリズムが含まれており、1%より低いコンタミネーションを検出することができる。
【0138】
VI.代替手段及び手順
FFPE腫瘍標本を用いた遺伝子変化の検出については、F1CDx使用目的の説明の表16に記載されているように、FDAが承認したコンパニオン診断(CDx)の代替手段が存在する。承認されたCDx試験は、以下の表20に記載され、詳細は認可又は承認されたコンパニオン診断機器のFDAリスト(https://www.fda.gov/MedicalDevices/ProductsandMedicalProcedures/InVitroDiagnostics/ucm301431.htm?source=govdelivery)を参照する。
【0139】
【0140】
VII.マーケティングの歴史
ファウンデーション・メディシン社は、最初にFoundationOne(登録商標)実験室開発試験(F1 LDT)を設計及び開発し、2012年に最初の商用サンプルが試験された。F1 LDTは、FFPEの腫瘍組織標本におけるゲノム変化の存在を検出するために使用されている。F1 LDTは、FDAの認可又は承認を得ていない。
F1CDx分析は、米国及び他の国では販売されていない。
【0141】
therascreen(登録商標)KRAS RGQ PCRキット(2012)
I. 一般情報
デバイスの一般名:リアルタイムPCR検査
デバイスの商品名: therascreen(登録商標)KRAS RGQ PCRキット
デバイスのプロコード:OWD
申請者の名前及び住所: QIAGEN Manchester Ltd Skelton House, Lloyd Street North Manchester, UK M15 6SH
諮問建議の日付:なし
市販前承認申請(PMA)番号:P110030
FDAの承認通知の日付:2012年7月6日
優先性:適用なし
II.使用の適応
therascreen KRAS RGQ PCRキットは、Rotor-Gene Q MDx装置で使用されるリアルタイム定性PCR分析で、大腸癌(CRC)のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織から抽出したDNAを用いて、ヒトKRAS癌遺伝子の7つの体細胞変異を検出する。therascreen KRAS RGQ PCRキットは、KRASの変異が検出されないという検査結果に基づいて、Erbitux(登録商標)(セツキシマブ)による治療を受けるCRC患者の特定を支援することを目的としている。
III.禁忌
なし。
IV.警告及び注意事項
警告及び注意事項は、Therascreen(登録商標)KRAS RGQ PCRキットのラベルに記載されている。
V.デバイスの説明
デバイス全体を構成する要素は、以下の通りである。
・QIAGEN QIAamp(登録商標)DSP DNA FFPE Tissueキット
・QIAGEN therascreen(登録商標)KRAS RGQ PCRキット
・QIAGEN Rotor-Gene Q MDx、ソフトウェアバージョン2.1.0、及びKRASアッセイパッケージ
【0142】
検体の調製
ホルマリン固定、パラフィン包埋(FFPE)ブロックを、スライドガラスに切片化する。染色したスライドを用いて、腫瘍の含有量が組織の20%を超え、最小で4平方ミリメートルの腫瘍面積があることを確認する。DNAを抽出するために、スライドから非染色の組織切片を1枚削り取る。腫瘍の含有量が20%以下の切片は、マクロダイセクションを実行する。QIAGEN QIAamp(登録商標)DSP DNA FFPE Tissueキット及び改変したプロトコルを用いて、大腸癌患者から採取したFFPE組織の5マイクロメートルのガラスマウントされた切片から、手作業でDNAを抽出及び精製する。腫瘍組織をキシレンで脱パラフィンし、キシレンをエタノールで抽出する。サンプルは、プロテイナーゼKを用いた変性条件で1時間かけて溶解される。サンプルを90℃で加熱し、ゲノムDNAのホルマリン架橋を逆にする。サンプルをシリカベースの膜に通すことで、ゲノムDNAが膜に結合し、汚染物質が除去される。精製されたゲノムDNAは、膜から200マイクロリットルの溶出バッファーに溶出される。抽出されたDNAは、-20℃で保存される。
【0143】
PCR増幅及び検出
QIAGEN therascreen(登録商標)KRAS RGQ PCRキットには、K-Ras癌遺伝子のエクソン2のコドン12及び13の変異を増幅して検出する7つの変異特異的反応、並びにK-Ras癌遺伝子のエクソン4の領域を増幅して検出する1つのコントロール反応の計8つの個別反応用の試薬が含まれている。KRAS RGQキットの各反応では、ARMS(登録商標)(Amplification Refractory Mutation System)対立遺伝子特異的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、変異していないゲノムDNA(変異陰性、野生型)をバックグラウンドとして、変異したゲノムDNAテンプレート(変異陽性)を選択的に増幅し、蛍光標識されたScorpion(登録商標)プライマーと組み合わせて、得られた増幅産物を検出する。ARMS技術は、PCRプライマーの3’末端のマッチとミスマッチを区別するTaqポリメラーゼの能力を利用している。スコーピオンは、PCRプライマーとプローブを共有結合させた2つの機能を持つ分子である。プローブには、フルオロフォアであるカルボキシフルオレセイン(FAM(商標))と、フルオロフォアの蛍光を消させるクエンチャーの両方が組み込まれている。PCRの際、プローブがARMSアンプリコンに結合すると、フルオロフォア及びクエンチャーが分離し、検出可能な蛍光の増加が見られる。
変異特異的試験反応で検査する前に、各DNAサンプルをコントロール反応で検査して、DNAの質及び量が分析のワーキングレンジに対して十分かつ適切であるかどうかを判断する必要がある。コントロール反応のCt値は、サンプル中の増幅可能なDNAの総量を評価するために使用され、各サンプルにあらかじめ指定された範囲内でなければならない。
コントロール反応で得られた結果の解釈は、以下の通りである。
【0144】
表21.コントロール反応で得られた結果の解釈
【表21】
【0145】
コントロール反応ミックスを用いたDNAサンプルの評価に使用した実行パラメータは、変異反応ミックスを用いた変異解析の実行パラメータと同じである。実行パラメータは、以下の通りである。(1)95℃で15分間保持し、Taqポリメラーゼを活性化する。(2)95℃で30秒間変性させ、60℃で1分間アニーリング/伸長させる40サイクルのPCRを実行する。特定の反応からの蛍光が、あらかじめ定義された閾値を越えるPCRサイクルをCt値と定義する。
本キットで検出されたK-RAS癌遺伝子のコドン12及び13における7つの変異を以下に示す。
【0146】
表22.キットで検出されたK-RAS癌遺伝子のコドン12および13における7つの変異
【表22】
【0147】
試験コントロール
各テストランには、インターナルコントロール、ポジティブコントロール、及びネガティブコントロールが含まれている必要がある。ネガティブコントロールが汚染されていることを示す場合(FAMチャンネルのCt値が設定値を超える場合)、又はポジティブコントロールのCt値が設定範囲外の場合(FAM及びHEXチャンネルの両方)、テストランは無効とみなされる。
【0148】
【0149】
インターナルコントロール:
8つの反応には、インターナルコントロールとして使用される合成された非K-Ras関連オリゴヌクレオチドテンプレートの増幅及び検出のために、追加のARMSプライマー及びHEX標識されたスコーピオンプライマーが含まれている。スコーピオンプライマーは、HEXで標識されており、コントロール反応及び突然変異反応におけるFAM標識のスコーピオンと区別することができる。それぞれの反応において、インターナルコントロールの反応は、2つの反応のうち弱い方になるように設計されている。これは、非常に低濃度のインターナルコントロールテンプレートを使用することで実現している。インターナルコントロール反応は、変異特異的な増幅とは独立して働くように設計されているが、強い増幅がある場合、FAM反応に「対抗」されて失敗することがある。7つの変異反応のうち1つでもインターナルコントロール反応が失敗した変異陰性の結果は、無効な結果として報告される。インターナルコントロールは、阻害要因又はグロス反応の失敗を検出するために使用される。
ポジティブコントロール:
ポジティブコントロールは、KRAS Kitで検出される各変異を表す合成オリゴヌクレオチドの混合物で構成されている。ポジティブコントロールの検出により、キット内の各反応ミックスが正しく機能していることが確認できる。
ネガティブコントロール:
KRAS RGQキットには、ノーテンプレートコントロール(NTC)反応として使用するための核酸フリーの水が含まれている。NTCはネガティブコントロールとしての役割を果たし、分析のセットアップ中に潜在的な汚染を評価する。
【0150】
機器及びソフトウェア
Rotor-Gene Q (RGQ) MDx機器は、増幅されたDNAの熱サイクル及びリアルタイム検出のために設計されたリアルタイムPCR分析装置である。RGQ MDx機器は、PCR反応を制御及び監視し、PCR結果に基づいて変異状態を判定するソフトウェアを搭載している。PCR反応時の熱サイクル用の遠心式ローターデザインを採用しており、各チューブが空気の流れるチャンバー内で回転する。サンプルは、ソフトウェアが決定したPCRサイクルの異なるフェーズを開始するサイクルにしたがって、低質量空気オーブンで加熱及び冷却され、各PCRランで合計40サイクルが実行される。RGQ MDx機器において、発光ダイオードによってチャンバーの底部からサンプルが励起される。エネルギーは、チューブの底部にある薄い壁を介して伝達される。放射された蛍光は、チャンバー側面の放射光フィルターを通過し、光電子増倍管で検出される。検出は、各チューブが検出光学系に整列する際に実施され、チューブは150ミリ秒ごとに励起/検出光学系を通過して回転する。蛍光シグナルは、PCR反応の進行をモニターする。本装置は最大6つの光学チャンネル(6つの励起光源及び6つの検出フィルター)に対応しているが、KRASキットではこれらのうち2つのチャンネル(FAMチャンネル及びHEXチャンネル)のみを使用している。
therascreen KRAS 分析パッケージは、「therascreen KRAS QC Locked Template」(DNAサンプル評価用)及び「therascreen KRAS Locked Template」(KRAS変異の検出用)の2つのテンプレートで構成されている。これらのテンプレートには、PCRの実行パラメータが含まれており、結果を算出する。コントロール反応ミックスを用いたDNAサンプルの評価と、変異反応ミックスを用いたKRAS変異の検出の両方に、同じ実行パラメータが使用される。
RGQ MDx機器のソフトウェアは、リアルタイムの分析手順をサポートしている。本ソフトウェアは、Ct値を決定し、ΔCt値を計算し、これらを上述のようにソフトウェアに組み込まれた変異特異的カットオフ値と比較する。フラグ/警告システムがソフトウェアに組み込まれており、分析における潜在的な問題をユーザーに通知し、無効なテストラン又は有効なテストラン内の無効なサンプル(不適切なレベルのDNA又はインターナルコントロールの失敗)を示す。無効なラン又は有効なサンプルの結果は、報告されない。KRAS RGQキットのユーザーは、Ct値又はΔCt値を見ることができず、ソフトウェアが報告する変異状態のコールを見るだけなので、変異状態を主観的に判断することはできない。
【0151】
結果の解釈
コントロール反応のCtはサンプル内の増幅可能なK-Rasテンプレートの総量を反映し、対立遺伝子特異的反応のCtはサンプル内のK-Ras変異の量を反映する。コントロール反応と対立遺伝子特異的反応のCt値の差(ΔCt)は、サンプル内の変異の割合を示している。ΔCt値は、サンプル中の変異体DNAの割合が増えると0に近づく。ΔCt値は、サンプル中の変異体DNAの割合が減少すると増加する(ポジティブコールとネガティブコールの閾値に近づく)。ΔCt測定値が変異反応のΔCtカットオフ値を超えると、分析は「変異は検出されなかった」と報告する(例えば、7つの変異に対して陰性)。
各サンプルについて、RGQ MDx機器ソフトウェアにより計算が実施され、7つの変異特異的反応のそれぞれについてΔCt値(FAMチャンネル)が決定される。
[変異反応Ct値]-[コントロール反応Ct値]=ΔCt
Rotor-Gene Qソフトウェアは、あらかじめ設定された分析用Ct及びΔCt値に基づいて、DNAサンプルの変異状態を定性的に判断し、どのサンプルにどのような変異が含まれているかを報告する。各サンプルには、7つの可能なΔCt値が存在する(変異ごとに1つ)。これらの値は、RGQ MDx機器のソフトウェアに組み込まれた事前に設定された仕様(カットオフ値)と比較され、サンプルが変異陽性又は陰性か、若しくは変異がある場合にはどの変異が存在するかが判断される。変異反応のΔCt値が、その反応のカットオフ値以下の場合、そのサンプルはK-Ras変異陽性である。分析結果は、「変異陽性」、「変異は検出されなかった」、「無効」、又はランコントロールが失敗した場合は「ランコントロール失敗」と表示される。変異陽性のサンプルについては、特定の変異が報告されている。
【0152】
【0153】
VI.代替手段及び手順
Erbitux(登録商標)(セツキシマブ)療法が有効な患者を選択するために、大腸癌組織のK-Ras癌遺伝子の変異を検出する検査には、他にFDAで認可又は承認された代替法は存在しない。
【実施例4】
【0154】
αvβ6インテグリンの高発現状態の判定
4.方法
4.1免疫組織化学
FFPE組織の免疫組織化学は、インテグリンαvβ5、αvβ3、 αv、αvβ6、αvβ8、及びβ3、並びにビトロネクチン、オステオポンチン、Ki67、及びCD31に対する抗体を用いて実施した。全ての抗インテグリン抗体及び関連する染色プロトコルは、メルクセローノ社から提供された。本プロトコルは、Indivumed社の実験室にある染色装置に合わせて更に調整された。ビトロネクチン、オステオポンチン、Ki67、及びCD31を検出するための免疫組織化学のプロトコルは、Indivumed社で事前に確立され、メルクセローノ社の承認を得ている。品質管理として、各ランで細胞株及び組織のIHCを実施した(ランコントロール)。更に、全てのランコントロールにアイソタイプコントロールを用意した。
IHC染色には、メルクセローノ社/コーヴァンス社からFFPE組織が提供された。ランコントロール及びアイソタイプコントロールとして使用したFFPEポジティブコントロールサンプル(細胞株又は組織)は、3マイクロメートルの切片にスライスし、正電荷を帯びたSuper Frost(登録商標)Ultra Plusスライドガラス(ロート、カルルスルーエ)にマウントした。IHCは、Discovery(登録商標)XT染色装置(ロシュ社/バリアンメディカルシステムズ社)で実施した。FFPEスライドを染色装置内で脱パラフィンし、Discovery(登録商標))XTでChromoMap検出キット(ロシュ・ダイアグノスティックス Deutschland GmbH)を用いて免疫染色を実施した。詳細な染色方法は、例えば、以下に記載されている。Goodman SL, Grote HJ, Wilm C. Matched rabbit monoclonal antibodies against αv-series integrins reveal a novel αvβ3-LIBS epitope, and permit routine staining of archival paraffin samples of human tumors. Biol Open 2012; 1: 329-340。その後、界面活性剤を加えたお湯でスライドを手動で洗浄し、最後に水道水のみ及びdH2Oで洗浄した。脱水のために、スライドを昇順のエタノールシリーズ(2×80%、2×96%、2×abs. EtOH)に移し、それぞれ1~3分間インキュベートした。脱水後、スライドをキシレン(3×2分)に移し、最後にパーテックスで自動包埋した。
【0155】
4.1.1抗インテグリンαvβ6
4.1.1.1抗インテグリンαvβ6抗体及びイソタイプコントロール
【表25】
【0156】
4.2.自動手順/プロトコル
プログラムステップ(DiscoveryXT):
手順:Res IHC Omni-UltraMap HRP XT(プロトコル概要)
ディスカバリーXT染色モジュール
Indivumed, Falkenried 88, 20251 Hamburg
プロトコル番号307
プロトコル名:A-avb6(107)
作成日:2013年10月5日
1 組織サンプル[選択]
2 パラフィン[選択]
3 デパラフィン化 [選択]
4 酵素 [選択]
5 PROTEASE2(酵素)を1滴滴下し、カバースリップを装着し、12分間インキュベート
6 抗体[選択]
7 抗体オートディスペンス[選択]
8 標準Abインキュベーション(選択)
9 抗体23(抗体)を1滴滴下し、32分間インキュベート
10 OMap anti-Rb HRP(Multimer HRP)を1滴滴下し、カバースリップを装着し、16分間インキュベート
11 カウンターステイン[選択]
12 標準[選択]
13 HEMATOXYLIN II(カウンターステイン)を1滴滴下し、カバースリップを装着し、8分間インキュベート
14 ポスト・カウンターステイン[選択]
15 BLUING試薬(ポスト・カウンターステイン)を1滴滴下し、カバースリップを装着し、4分間インキュベート
16 スライド洗浄[選択]
【0157】
4.2.病理組織学的評価
免疫組織化学的に染色されたFFPEサンプルは、Indivumed社の病理学者によって評価された。一般的に、病理医は優勢な染色強度を定量化し、染色パターンを特定し、陽性に染色された腫瘍組織の割合を推定する。H&Eで染色した切片を用いて、腫瘍の量並びに組織の種類を確認した。半定量的な評価用のスコアリングシステムは、以下の通りである。更に、免疫組織化学的に染色された細胞内のコンパートメントを定義した。従って、病理医は、膜(m)、核(n)、及び細胞質(c)を区別していた。必要に応じて、染色パターンのより詳細な説明をコメントに記載した。腫瘍組織の増殖率を解析するために、抗-Ki67 IHCを実施した。病理医は、100個の腫瘍細胞の評価により、Ki67陽性の腫瘍細胞の割合を決定した。
【0158】
4.2.1ヒストスコア(H-スコア):腫瘍細胞の評価
免疫組織化学的に染色された腫瘍組織を半定量的に評価するために、H-スコア分類を適用した。McCarty Jr KS, Miller LS, Cox EB, Konrath J, McCarty Sr KS “Estrogen receptor analyses: Correlation of biochemical and immunohistochemical methods using monoclonal antireceptor antibodies”.Arch Pathol Lab Med 109: 716-721 (1985)、これらの開示は、好ましくは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。従って、陰性(0)、弱く染まった(1)、中程度に染まった(2)、強く染まった(3)部分は、腫瘍組織の割合として推定する。その後、Hスコアを以下のように算出する。
Hスコア=(弱)%+(中)%×2+(強)%×3
【表26】
このようにして得られた70超のヒストスコアが、好ましくは、アビツズマブ治療において「αvβ6インテグリンの高発現」という基準を満たすための適切な閾値であることが証明されている。
【配列表】
【国際調査報告】