(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】アジピン酸とトリデカノールとのジエステルを含む潤滑剤
(51)【国際特許分類】
C10M 105/36 20060101AFI20220131BHJP
C10M 101/02 20060101ALI20220131BHJP
C10M 107/02 20060101ALI20220131BHJP
C10M 105/06 20060101ALI20220131BHJP
C10M 107/34 20060101ALI20220131BHJP
C10M 107/50 20060101ALI20220131BHJP
C10M 105/74 20060101ALI20220131BHJP
C10M 105/32 20060101ALI20220131BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20220131BHJP
C10N 30/02 20060101ALN20220131BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20220131BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20220131BHJP
C10N 40/30 20060101ALN20220131BHJP
C10N 40/32 20060101ALN20220131BHJP
C10N 40/16 20060101ALN20220131BHJP
C10N 40/08 20060101ALN20220131BHJP
C10N 40/06 20060101ALN20220131BHJP
C10N 40/20 20060101ALN20220131BHJP
C10N 50/10 20060101ALN20220131BHJP
C10N 40/36 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C10M105/36
C10M101/02
C10M107/02
C10M105/06
C10M107/34
C10M107/50
C10M105/74
C10M105/32
C10N30:06
C10N30:02
C10N40:25
C10N40:04
C10N40:30
C10N40:32
C10N40:16
C10N40:08
C10N40:06
C10N40:20
C10N50:10
C10N40:36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523685
(86)(22)【出願日】2019-10-28
(85)【翻訳文提出日】2021-05-28
(86)【国際出願番号】 EP2019079417
(87)【国際公開番号】W WO2020094445
(87)【国際公開日】2020-05-14
(32)【優先日】2018-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェーラー,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】シュトリットマッター,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ブライツシャイデル,ボーリス
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB31A
4H104BB33A
4H104BB41A
4H104BH03A
4H104CA01A
4H104CB14A
4H104CJ02A
4H104DA02A
4H104LA01
4H104LA03
4H104PA02
4H104PA03
4H104PA04
4H104PA05
4H104PA08
4H104PA12
4H104PA20
4H104PA21
4H104PA37
4H104PA41
4H104PA48
4H104PA50
4H104QA18
(57)【要約】
本発明は、アジピン酸と、20~60%の少なくとも三分岐のトリデカノール、10~50%の二分岐トリデカノール、及び5~30%の一分岐及び/又は線状トリデカノール(パーセンテージは、ガスクロマトグラフィーによって決定される)を含むトリデカノール混合物とのジエステルを含む潤滑剤に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アジピン酸と、
- 20~60%の少なくとも三分岐のトリデカノール、
- 10~50%の二分岐トリデカノール、及び
- 5~30%の一分岐及び/又は線状トリデカノール
(パーセンテージは、ガスクロマトグラフィーによって決定される)を含むトリデカノール混合物とのジエステルを含む潤滑剤。
【請求項2】
トリデカノール混合物が、異性体ドデセンの混合物のヒドロホルミル化及び水素化によって得られる、請求項1に記載の潤滑剤。
【請求項3】
異性体ドデセンの混合物が、不均一触媒上でブテンを含む炭化水素混合物を反応させることによって得られる、請求項2に記載の潤滑剤。
【請求項4】
トリデカノール混合物が、25~50%の少なくとも三分岐のトリデカノールを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の潤滑剤。
【請求項5】
トリデカノール混合物が、20~45%の二分岐トリデカノールを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の潤滑剤。
【請求項6】
トリデカノール混合物が、10~25%の一分岐及び/又は線状トリデカノールを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の潤滑剤。
【請求項7】
トリデカノール混合物が、少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも95重量%、特に少なくとも98重量%の線状又は分岐トリデカノールを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の潤滑剤。
【請求項8】
トリデカノール混合物が、15%未満、好ましくは5重量%未満、特に2重量%未満のドデカノールを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の潤滑剤。
【請求項9】
トリデカノール混合物が、5%未満、好ましくは3重量%未満、特に1重量%未満のテトラデカノールを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の潤滑剤。
【請求項10】
トリデカノール混合物が、H-NMRによって決定して、1.1~3.5、好ましくは1.5~3.0、特に1.9~2.4の範囲の分岐度を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の潤滑剤。
【請求項11】
鉱油、ポリアルファオレフィン、ポリマー化及びインターポリマー化オレフィン、アルキルナフタレン、アルキレンオキシドポリマー、シリコーン油、リン酸エステル及びカルボン酸エステルから選択される基油; 及び/又は潤滑剤添加剤をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の潤滑剤。
【請求項12】
表面を請求項1~11のいずれか一項に定義される潤滑剤と接触させるステップを含む、移動表面間の摩擦を低減する方法。
【請求項13】
潤滑剤の粘度指数を低減するための、請求項1~11のいずれか一項に定義されるジエステルの使用。
【請求項14】
潤滑剤の流動点を低減するための、請求項1~11のいずれか一項に定義されるジエステルの使用。
【請求項15】
アクセル潤滑、ミディアム及びヘビーデューティーエンジンオイル、工業用エンジンオイル、船舶用エンジンオイル、自動車用エンジンオイル、クランクシャフトオイル、コンプレッサーオイル、冷凍機油、炭化水素コンプレッサーオイル、超低温潤滑油及び脂肪、高温潤滑油及び脂肪、ワイヤーロープ潤滑剤、繊維機械油、冷凍機油、航空及び航空宇宙潤滑剤、航空タービン油、トランスミッション油、ガスタービン油、スピンドル油、スピン油、トラクション流体、トランスミッション油、プラスチックトランスミッション油、乗用車トランスミッション油、トラックトランスミッション油、工業用トランスミッション油、工業用ギアオイル、絶縁油、インストルメントオイル、ブレーキ流体、トランスミッション液、ショックアブソーバーオイル、熱分配媒体油、変圧器油、脂肪、チェーンオイル、金属加工作業用の最小量の潤滑剤、温冷加工用オイル、水性金属加工液用オイル、ニートオイル金属加工液用オイル、半合成金属加工液用オイル、合成金属加工液用オイル、土壌探査用掘削洗浄剤、油圧オイル、生分解性潤滑剤又は潤滑グリース若しくはワックス、チェーンソーオイル、離型剤、成形流体、銃、ピストル及びライフル潤滑剤又は時計用潤滑剤及び食品グレードで承認された潤滑剤における、請求項1~11のいずれか一項に定義されるジエステルの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
本発明は、アジピン酸と、20~60%の少なくとも三分岐のトリデカノール、10~50%の二分岐トリデカノール、及び5~30%の一分岐及び/又は線状トリデカノール(パーセンテージは、ガスクロマトグラフィーによって決定される)を含むトリデカノール混合物とのジエステルを含む潤滑剤に関する。好ましい実施形態と他の好ましい実施形態との組み合わせは、本発明の範囲内である。
【背景技術】
【0002】
US 5,245,072は、Mobil Oil, USAから市販されているトリデカノール異性体混合物Exxal(登録商標)13に基づく潤滑性エステルとしてアジピン酸ジトリデシルを開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、粘度指数、流動点、引火点、摩耗痕、摩擦、又は熱酸化安定性などの、アジピン酸トリデシルジエステルを含む潤滑剤の性能をさらに改善することであった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、アジピン酸と、
- 20~60%の少なくとも三分岐のトリデカノール、
- 10~50%の二分岐トリデカノール、及び
- 5~30%の一分岐及び/又は線状トリデカノール
(パーセンテージは、ガスクロマトグラフィーによって決定される)を含むトリデカノール混合物とのジエステルを含む潤滑剤によって解決された。
【0005】
この目的はまた、表面を潤滑剤と接触させるステップを含む、移動表面間の摩擦を低減する方法; 潤滑剤の粘度指数を低減するためのジエステルの使用; 又は潤滑剤の流動点を低減するためのジエステルの使用によって解決された。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【発明を実施するための形態】
【0007】
トリデカノール混合物は、異性体ドデセンの混合物のヒドロホルミル化及び水素化によって入手可能であってよく、好ましくはそれによって得られる。
【0008】
異性体ドデセンの混合物は、不均一触媒上でブテンを含む炭化水素混合物を反応させることによって入手可能であってよく、好ましくはそれによって得られる。
【0009】
ブテンを含む炭化水素混合物から開始する多段階プロセスでは、最初のステップでブテンを二量体化して、異性体オクテン及びドデセンの混合物を得る。ここで生成される主な生成物は、オクテンであり、一方、生成されるドデセンの割合は、反応器排出物に基づいて、一般的に5~20重量パーセントである。次いで、ドデセンを反応混合物から単離し、ヒドロホルミル化して、対応するC13アルデヒドを得て、次いで水素化してイソトリデカノールを得る。
【0010】
したがって、ブテンを含む炭化水素混合物を、酸化ニッケルを含む不均一触媒と接触させることによって、異性体ドデセンの混合物を得ることが好ましい。炭化水素混合物のイソブテン含有量は、それぞれの場合に総ブテン含有量に基づいて、好ましくは5重量パーセント以下、特に3重量パーセント以下、特に好ましくは2重量パーセント以下、最も好ましくは1.5重量パーセント以下である。適切な炭化水素流は、ブテン及びブタンで構成される混合物であるC4カットとして公知であるものであり、これは、FCCプラント又はスチームクラッカーから大量に利用可能である。出発材料としてラフィネートII(これはイソブテンが不足しているC4カットである)を使用することが特に好ましい。
【0011】
1つの好ましい出発材料は、50~100重量パーセント、好ましくは80~95重量パーセントのブテン、及び0~50重量パーセント、好ましくは5~20重量パーセントのブタンを含む。ブテン画分の次の組成は、一般的な定量的ガイドラインとして与えることができる: 1~99重量パーセントの1-ブテン、1~50重量パーセントのcis-2-ブテン、1~99重量パーセントのtrans-2-ブテン、1~5重量パーセントのイソブテン。
【0012】
使用し得る触媒は、酸化ニッケルを含むそれ自体が公知の触媒である。担持された酸化ニッケル触媒を使用してもよく、適切な担持材料は、シリカ、アルミナ、アルミノケイ酸塩、フィロケイ酸塩構造を有するアルミノケイ酸塩、及びゼオライトである。特に適切な触媒は、ニッケル塩及びケイ酸塩の水溶液を混合し、例えば、ケイ酸ナトリウム及び硝酸ニッケルを混合し(適切な場合にはアルミニウム塩、例えば硝酸アルミニウムなどの他の成分と共に)、焼成することによって得られる沈殿触媒である。
【0013】
NiO、SiO2、TiO2及び/又はZrO2、及びまた適切な場合にはAl2O3で実質的に構成される触媒が特に好ましい。活性な実質成分が、10~70重量パーセントの酸化ニッケル、5~30重量パーセントの二酸化チタン及び/又は二酸化ジルコニウム、及び0~20重量パーセントの酸化アルミニウムであり、100重量パーセントを与えるための残部は二酸化ケイ素である、触媒が最も好ましい。このタイプの触媒は、二酸化チタン及び/又は二酸化ジルコニウムを含むアルカリ金属水ガラス溶液に硝酸ニッケルを含む水溶液を添加することによって5~9のpHで触媒組成物を沈殿させ、濾過し、乾燥させ、350~650℃でアニーリングすることによって入手可能である。
【0014】
ブテンを含む炭化水素混合物は、好ましくは、30~280℃、特に30~140℃、特に好ましくは40~130℃で触媒と接触させる。ここでの圧力は、好ましくは10~300bar、特に15~100bar、特に好ましくは20~80barである。この圧力は、オレフィンに富む炭化水素混合物が、選択された温度で液体であるか、又は超臨界状態であるように、有用に調整される。
【0015】
ブテンを含む炭化水素混合物を不均一触媒と接触させるための適切な装置の例は、チューブバンドル反応器及びシャフト炉である。設備投資コストがより低いため、シャフト炉が好ましい。二量体化は、オリゴマー化触媒が1つ以上の固定床に配置されていてもよい単一の反応器で実施してもよい。別の方法は、直列に配置された2つ以上、好ましくは2つの反応器で構成される反応器カスケードを使用することであり、反応混合物中のブテン二量体化は、カスケードの最後の反応器に先行する反応器(1つ又は複数)を通過する際に部分変換のみへと駆動され、反応混合物がカスケードの最後の反応器を通過するまで、所望の最終変換は達成されない。ブテン二量体化は、好ましくは、断熱反応器又は断熱反応器カスケードで起こる。
【0016】
反応器又はそれぞれカスケードの最後の反応器を出た後、形成されたドデセンは、反応器排出物において、オクテンから、及び適切な場合にはより高級のオリゴマーから、及び未変換ブテン及びブタンから分離される。オクテンは、一般的に主な生成物である。
【0017】
プロセスの第2段階では、得られたドデセンは、合成ガスを使用したヒドロホルミル化によって、それ自体が公知の方法で、分子が1つの炭素原子で延長されたアルデヒドに変換される。ヒドロホルミル化は、反応媒体に均一に溶解した触媒の存在下で起こる。ここで使用される触媒は、一般的に、遷移族VIIIの金属の化合物又は錯体、特にCo、Rh、Ir、Pd、Pt又はRuの化合物又はそれぞれの錯体であり、これらは未修飾であるか、又は例えばアミン含有化合物又はホスフィン含有化合物で修飾されている。
【0018】
本発明の目的のために、ヒドロホルミル化は、好ましくは、コバルト触媒の存在下で、好ましくは120~240℃、特に160~200℃で、150~400bar、特に250~350barの合成ガス圧下で起こる。ヒドロホルミル化は、好ましくは水の存在下で起こる。使用される合成ガス中の水素と一酸化炭素との混合比は、好ましくは、70:30~50:50体積パーセント、特に65:35~55:45体積パーセントの範囲である。
【0019】
コバルト触媒によるヒドロホルミル化プロセスは、触媒の調製(プレカルボニル化)、触媒抽出、オレフィンヒドロホルミル化、及び反応生成物からの触媒の除去(脱コバルト化)の4つの段階を含む多段階プロセスとして実施してもよい。プロセスの第1段階であるプレカルボニル化では、使用される出発材料は、コバルト塩水溶液、例えば、ギ酸コバルト又は酢酸コバルトであり、これを、一酸化炭素及び水素と反応させて、ヒドロホルミル化に必要な触媒錯体(HCo(CO)4)を調製する。プロセスの第2段階である触媒抽出では、プロセスの第1段階で調製されたコバルト触媒は、有機相を使用して、好ましくはヒドロホルミル化されるべきオレフィンを使用して、水相から抽出される。時には、オレフィンの他に、ヒドロホルミル化からの反応生成物及び副生成物を、触媒抽出のために使用することが有用である(これらが、選択された反応条件下で水及び液体に不溶性である限り)。相の分離後、コバルト触媒が充填された有機相は、プロセスの第3段階であるヒドロホルミル化に供給される。プロセスの第4段階である脱コバルト化では、反応器排出物の有機相は、酸素又は空気で処理することにより、錯体を含まないプロセス水の存在下でコバルトカルボニル錯体から解放される。この間、コバルト触媒は酸化的に分解され、得られたコバルト塩は水相に抽出される。脱コバルト化から得られたコバルト塩水溶液は、プロセスの第1段階であるプレカルボニル化に再循環される。得られた粗ヒドロホルミル化生成物は、水素化に直接供給してもよい。別の方法として、C13アルデヒド画分を、通常の方法で、例えば蒸留によって、これから単離し、水素化に供給してもよい。コバルト触媒の形成、コバルト触媒の有機相への抽出、及びオレフィンのヒドロホルミル化はまた、ヒドロホルミル化反応器における一段階プロセスで実施してもよい。
【0020】
使用し得るコバルト化合物の例は、塩化コバルト(II)、硝酸コバルト(II)、これらのアミン又は水和物錯体、カルボン酸コバルト、例えば、ギ酸コバルト、酢酸コバルト、エチルヘキサン酸コバルト、又はナフテン酸コバルト、及びまたコバルトカプロラクタメート錯体である。ヒドロホルミル化条件下で、触媒的に活性なコバルト化合物は、コバルトカルボニルとしてその場で形成する。コバルトのカルボニル錯体、例えば、ジコバルトオクタカルボニル、テトラコバルトドデカカルボニル、又はヘキサコバルトヘキサデカカルボニルを使用することも可能である。
【0021】
ヒドロホルミル化中に得られたアルデヒド混合物は、還元されて、第一級アルコールを与える。ある程度の還元は、一般的に、ヒドロホルミル化条件下で起こり、ここでのヒドロホルミル化はまた、実質的に完全な還元が起こるように制御してもよい。しかし、得られたヒドロホルミル化生成物は、一般的に、水素ガス又は水素を含むガス混合物を使用するプロセスの別のステップで水素化される。水素化は、一般的に、不均一水素化触媒の存在下で起こる。使用される水素化触媒は、アルデヒドを水素化して第一級アルコールを与えるのに適した任意の所望の触媒であってよい。市販の適切な触媒の例は、亜クロム酸銅、コバルト、コバルト化合物、ニッケル、ニッケル化合物であり、これらは、適切な場合、少量のクロム又は他の助触媒、並びに銅、ニッケル、及び/若しくはクロムの混合物を含んでもよい。ニッケル化合物は、一般的に、アルミナ又は珪藻土などの担持材料上に担持された形態である。白金又はパラジウムなどの貴金属を含む触媒を使用することも可能である。
【0022】
水素化は、水素化されるべき混合物及び水素ガス、又はそれぞれ水素含有ガス混合物が、例えば同時に、水素化触媒の固定床上を通過する、トリクルフロー(trickle flow)法によって起こり得る。水素化は、好ましくは、50~250℃、特に100~150℃で、及び50~350bar、特に150~300barの水素圧で起こる。分別蒸留を使用して、水素化中に得られる反応排出物中に存在するC8炭化水素及びより高沸点の生成物から所望のイソトリデカノール画分を分離することができる。
【0023】
本発明の目的のために特に好ましい得られたイソトリデカノールは、異性体の特徴的な分布を有し、これは、例えば、ガスクロマトグラフィーによってより詳細に定義することができる。トリデカノール混合物は、一定のパーセンテージの線状又は分岐トリデカノールを含み、パーセンテージはガスクロマトグラフィーによって決定される。通常、パーセンテージは、分析される混合物に含まれる全てのトリデカノールにわたる総面積に関連する。ガスクロマトグラフィーによって決定されるパーセンテージは、典型的には、例えば、水素炎イオン化検出器(FID)によって検出されるガスクロマトグラム曲線の対応するセクション下のガスクロマトグラム面積の、面積パーセンテージである。トリデカノール混合物(例えば、トリデカノール、及び存在する場合はドデカノール及びテトラデカノール)中の成分のパーセンテージは、合計で100%になり得る。
【0024】
ガスクロマトグラムは、例えば、Kovacs (Z. Anal. Chem. 181, (1961), p. 351; Adv. Chromatogr. 1 (1965), p. 229)によって記載されるように、保持指標(「RI」)を用いて、且つ参照物質としてのn-ウンデカノール、n-ドデカノール、及びn-トリデカノールを使用して、3つの保持領域に分割することができる:
領域1: 1180未満の保持指標
領域2: 1180~1217の保持指標
領域3: 1217を超える保持指標
【0025】
領域1に存在する物質は、主に少なくとも三分岐のトリデカノールであり、領域2に存在する物質は、主に二分岐イソトリデカノールであり、領域3に存在する物質は、主に一分岐イソトリデカノール及び/又はn-トリデカノールである。本発明の目的のために、この方法は、ガスクロマトグラム曲線の対応するセクション下の面積(面積パーセント)を比較することによって、イソトリデカノールの組成の十分に正確な決定を与える。通常、水素炎イオン化検出器は、ガスクロマトグラム曲線及びその結果の面積パーセンテージを検出するために使用される。
【0026】
アジピン酸とトリデカノール混合物とのジエステルを鹸化して、アジピン酸及びトリデカノール混合物を得ることができ、次いで、トリデカノール混合物をガスクロマトグラフィーによって分析してもよい。
【0027】
トリデカノール混合物は、20~60%、好ましくは25~50%、特に40~48%の少なくとも三分岐のトリデカノールを含む。
【0028】
トリデカノール混合物は、10~50%、好ましくは20~45%、特に30~40%の二分岐トリデカノールを含む。
【0029】
トリデカノール混合物は、5~30%、好ましくは10~25%、特に15~20%の一分岐及び/又は線状トリデカノールを含む。
【0030】
別の形態では、トリデカノール混合物は、25~50%の少なくとも三分岐のトリデカノール、20~45%の二分岐トリデカノール、及び10~25%の一分岐及び/又は線状トリデカノールを含む。
【0031】
別の形態では、トリデカノール混合物は、40~48%の少なくとも三分岐のトリデカノール、30~40%の二分岐トリデカノール、及び15~20%の一分岐及び/又は線状トリデカノールを含む。
【0032】
トリデカノール混合物は、例えばガスクロマトグラフィーによって決定して、通常少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも95重量%、特に少なくとも98重量%の線状又は分岐トリデカノールを含む。
【0033】
トリデカノール混合物は、線状又は分岐トリデカノールに加えて、少量のドデカノール及びテトラデカノールも含んでよい。
【0034】
トリデカノール混合物は、例えばガスクロマトグラフィーによって決定して、通常15%未満、好ましくは5重量%未満、特に2重量%未満のドデカノールを含む。
【0035】
トリデカノール混合物は、例えばガスクロマトグラフィーによって決定して、通常5%未満、好ましくは3重量%未満、特に1重量%未満のテトラデカノールを含む。
【0036】
トリデカノール混合物の密度は、一般的に0.8~0.9g/cm3、好ましくは0.82~0.86g/cm3、特に好ましくは0.84~0.845g/cm3である。
【0037】
トリデカノール混合物の屈折率nD
20は、一般的に1.4~1.5、好ましくは1.44~1.46、特に好ましくは1.446~1.45である。
【0038】
トリデカノール混合物の沸点範囲は、一般的に230~280℃、好ましくは240~275℃、特に好ましくは250~270℃である。
【0039】
トリデカノール混合物は、通常、典型的には脂肪族CH、CH2及びCH3基のシグナルの積分を使用して、例えばH-NMR(例えば、CDCl3における)によって決定して、1.1~3.5、好ましくは1.5~3.0、特に1.9~2.4の範囲の分岐度を有する。
【0040】
アジピン酸とトリデカノール混合物とのジエステルは、アジピン酸及びトリデカノール混合物のエステル化によって入手可能である。通常、アジピン酸及びトリデカノール混合物を含む混合物を、チタン含有化合物、ジルコニウム含有化合物、又はスズ含有化合物から選択される触媒の存在下で反応させる。アジピン酸とトリデカノール混合物との間のエステル化は、化学量論量のアルコール及び酸を使用して、特にエントレーナーを使用する場合に実施することができる。しかし、酸の完全な変換を達成するために、酸1モルあたり0.05~1.0モルの化学量論的に過剰のアルコールを使用することが好ましい。
【0041】
混合物は、80℃~250℃の範囲の温度に加熱してもよい。好ましくは、エステル化反応は、2段階で実施される。第1段階では、触媒を添加せずに、アジピン酸のモノエステルが形成される。満足のいく反応速度は、100℃超、好ましくは120℃超で達成される。これらの温度でモノエステル形成を完了することが可能である。しかし、温度を160℃まで連続的に上昇させることがより有利である。形成される水は、反応温度が共沸混合物の沸点を超える限り(すなわち、大気圧下で90~100℃の範囲内)、アルコールとの共沸混合物として反応系から除去してもよい。第2段階では、酸のエステル化が完了する。第2段階は、上記の触媒の存在下で、第1段階で使用された温度より高く、且つ250℃まで上昇する温度で実施される。反応中に形成される水は、共沸混合物として除去され、アルコールがエントレーナーとして機能する。
【0042】
一形態では、ジエステルの後処理のために、塩基性水溶液を添加してもよく、残りのトリデカノール混合物を除去してもよい。粗ジエステルを後処理するために、反応器からの生成物は、最初にアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物で中和される。アルカリ性試薬は、溶液の総重量に基づいて、5~20重量%、好ましくは10~15重量%の水酸化物を含有する水溶液として使用される。続いて、任意の遊離アルコールを反応混合物から分離することができる。蒸気蒸留はこのステップに有用であることがわかっており、蒸気を粗生成物に通過させることによって簡単な形で実施することができる。遊離アルコールを除去した後、ジエステルを乾燥させる。このステップの特に簡単で有効な実施形態では、乾燥は、不活性ガスを生成物に通過させることによって達成される。次いで、粗エステルを濾過して固体を除去する。濾過は、従来の濾過装置で室温又は150℃までの温度で実施される。濾過はまた、セルロース又はシリカゲルなどの通例の濾過助剤によって容易になり得る。
【0043】
ジエステルは、室温、例えば、25℃で透明な液体であってもよい。典型的には、透明な液体中に、濁りは見えない。
【0044】
ジエステルは、100℃で約6cStの動粘性率を有するポリアルファオレフィンと混和性であってもよい。この混和性は、室温、例えば、25℃で24時間50:50の重量比で決定してもよい。
【0045】
ジエステルは、通常、-50℃未満、好ましくは-61℃未満、特に-64℃未満の流動点を有する。流動点は、ASTM D 97に従って決定してもよい。
【0046】
ジエステルは、40℃で15~35mm2/s(cSt)、好ましくは18~25mm2/s、特に21~24mm2/sの動粘性率を有してもよい。
【0047】
ジエステルは、100℃で2~15mm2/s(cSt)、好ましくは3~9mm2/s、特に4~6mm2/sの動粘性率を有してもよい。動粘性率は、ASTM D445に従って決定してもよい。
【0048】
ジエステルは、少なくとも130、好ましくは少なくとも140、特に少なくとも145の粘度指数を有してもよい。ジエステルは、130~170、140~160、特に145~155の粘度指数を有してもよい。粘度指数は、ASTM D2270に従って決定してもよい。
【0049】
ジエステルの沸点範囲は、一般的に、305~340℃、好ましくは315~330℃、特に好ましくは319~325℃である。
【0050】
潤滑剤は、通常、さらに、
- 鉱油、ポリアルファオレフィン、ポリマー化及びインターポリマー化オレフィン、アルキルナフタレン、アルキレンオキシドポリマー、シリコーン油、リン酸エステル及びカルボン酸エステルから選択される、基油; 及び/又は
- 潤滑剤添加剤
を含む。
【0051】
一形態では、潤滑剤は、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも30重量%、特に少なくとも60重量%のジエステルを含んでもよい。
【0052】
別の形態では、潤滑剤は、10~99重量%、好ましくは30~95重量%、特に少なくとも60~95重量%のジエステルを含んでもよい。
【0053】
別の形態では、潤滑剤は、1~90重量%、好ましくは5~50重量%、特に20~50重量%の基油を含んでもよい。
【0054】
別の形態では、潤滑剤は、少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%、特に少なくとも1重量%のジエステルを含んでもよい。
【0055】
別の形態では、潤滑剤は、0.1~20重量%、好ましくは0.1~150重量%、特に少なくとも0.1~10重量%のジエステルを含んでもよい。
【0056】
別の形態では、潤滑剤は、30~99.9重量%、好ましくは50~99重量%、特に70~95重量%の基油を含んでもよい。
【0057】
潤滑剤は、最大20重量%、好ましくは最大15重量%、特に最大10重量%の潤滑剤添加剤を含んでもよい。
【0058】
別の形態では、潤滑剤は、0.1~20重量%、好ましくは0.1~15重量%、特に少なくとも0.1~10重量%の潤滑剤添加剤を含んでもよい。
【0059】
潤滑剤は、通常、機械的装置の表面などの表面間の摩擦を低減することができる組成物を指す。機械的装置は、機械的原理に基づいて機能する装置からなる機構であってよい。適切な機械的装置は、ベアリング、ギア、ジョイント及びガイダンスである。機械的装置は、-30℃~80℃の範囲の温度で操作し得る。
【0060】
基油は、鉱油(群I、II又はIII油)、ポリアルファオレフィン(群IV油)、ポリマー化及びインターポリマー化オレフィン、アルキルナフタレン、アルキレンオキシドポリマー、シリコーン油、リン酸エステル及びカルボン酸エステル(群V油)からなる群から選択してよい。好ましくは、基油は、APIの定義に従って、群I、群II、群III基油、又はそれらの混合物から選択される。基油の定義は、米国石油協会(API)刊行物"Engine Oil Licensing and Certification System", lndustry Services Department, Fourteenth Edition, December 1996, Addendum 1, December 1998に見出されるものと同じである。前記刊行物は、次のように基油を分類する:
【0061】
a) 群I基油は、90パーセント未満の飽和物(ASTM D 2007)及び/又は0.03パーセントを超える硫黄(ASTM D 2622)を含有し、80以上且つ120未満の粘度指数(ASTM D 2270)を有する。
b) 群II基油は、90パーセント以上の飽和物及び0.03パーセント以下の硫黄を含有し、80以上且つ120未満の粘度指数を有する。
c) 群III基油は、90パーセント以上の飽和物及び0.03パーセント以下の硫黄を含有し、120以上の粘度指数を有する。
d) 群IV基油は、ポリアルファオレフィンを含有する。ポリアルファオレフィン(PAO)としては、アルファオレフィンの比較的低分子量の水素化ポリマー又はオリゴマーを典型的には含む公知のPAO材料が挙げられ、アルファオレフィンとしては、以下に限定されないが、C2~約C32アルファオレフィンが挙げられ、C8~約C16アルファオレフィン、例えば、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセンなどが好ましい。好ましいポリアルファオレフィンは、ポリ-1-オクテン、ポリ-1-デセン、及びポリ-1-ドデセンである。
e) 群V基油は、群I~IVによって記載されない任意の基油を含有する。群V基油の例としては、アルキルナフタレン、アルキレンオキシドポリマー、シリコーン油、及びリン酸エステルが挙げられる。
【0062】
合成基油としては、炭化水素油及びハロ置換炭化水素油、例えば、ポリマー化及びインターポリマー化オレフィン(例えば、ポリプロピレン、プロピレン-イソブチレンコポリマー、塩素化ポリブチレン、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、ポリ(1-デセン)); アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼン); ポリ-フェニル(例えば、ビフェニル、テルフェニル、アルキル化ポリフェノール); 及びアルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド並びにそれらの誘導体、類似体及び同族体が挙げられる。
【0063】
アルキレンオキシドポリマー並びにそのインターポリマー及び誘導体は、末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化などによって修飾されている場合、公知の合成基油の別のクラスを構成する。これらは、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドの重合によって調製されるポリオキシアルキレンポリマー、並びにポリオキシアルキレンポリマーのアルキル及びアリールエーテル(例えば、1000の分子量を有するメチル-ポリイソ-プロピレングリコールエーテル又は1000~1500の分子量を有するポリエチレングリコールのジフェニルエーテル); 並びにそのモノ-及びポリカルボン酸エステル、例えば、酢酸エステル、混合C3~C8脂肪酸エステル及びテトラエチレングリコールのC13オキソ酸ジエステルによって例示される。
【0064】
ケイ素ベースの油、例えば、ポリアルキル-、ポリアリール-、ポリアルコキシ-又はポリアリールオキシシリコーン油及びシリケート油は、合成基油の別の有用なクラスを構成する; そのような基油としては、テトラエチルシリケート、テトライソプロピルシリケート、テトラ-(2-エチルヘキシル)シリケート、テトラ-(4-メチル-2-エチル-ヘキシル)シリケート、テトラ-(p-tert-ブチル-フェニル)シリケート、ヘキサ-(4-メチル-2-エチルヘキシル)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサン及びポリ(メチルフェニル)シロキサンが挙げられる。他の合成基油としては、リン含有酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、デシルホスホン酸のジエチルエステル)及びポリマーテトラヒドロフランが挙げられる。
【0065】
適切な潤滑剤添加剤は、粘度指数向上剤、ポリマー増粘剤、酸化防止剤、腐食防止剤、洗浄剤、分散剤、消泡剤、染料、摩耗保護添加剤、極圧添加剤(EP添加剤)、耐摩耗添加剤(AW添加剤)、摩擦調整剤、金属不活性化剤、流動点降下剤から選択してもよい。
【0066】
粘度指数向上剤は、低温で油の相対粘度を高める以上に高温で油の相対粘度を高める高分子量ポリマーを含む。粘度指数向上剤としては、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、アルキルメタクリレート、ビニルピロリドン/メタクリレートコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリブテン、オレフィンコポリマー、例えば、エチレン-プロピレンコポリマー又はスチレン-ブタジエンコポリマー、又はポリアルケン、例えば、PIB、スチレン/アクリレートコポリマー及びポリエーテル、及びそれらの組み合わせが挙げられる。最も一般的なVI向上剤は、メタクリレートポリマー及びコポリマー、アクリレートポリマー、オレフィンポリマー及びコポリマー、並びにスチレンブタジエンコポリマーである。粘度指数向上剤の他の例としては、ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、アルファ-オレフィンポリマー、アルファ-オレフィンコポリマー(例えば、エチレンプロピレンコポリマー)、ポリアルキルスチレン、フェノール縮合物、ナフタレン縮合物、スチレンブタジエンコポリマーなどが挙げられる。これらのうち、10000~300000の数平均分子量を有するポリメタクリレート、及び1000~30000の数平均分子量を有するアルファ-オレフィンポリマー又はアルファ-オレフィンコポリマー、特に1000~10000の数平均分子量を有するエチレン-アルファ-オレフィンコポリマーが好ましい。粘度指数増加剤は、個別に、又は混合物の形態で、好都合にはベースストックの重量に対して≧0.05~≦20.0重量%の範囲内の量で、添加及び使用することができる。
【0067】
適切な(ポリマー)増粘剤としては、以下に限定されないが、ポリイソブテン(PIB)、オリゴマーコポリマー(OCP)、ポリメタクリレート(PMA)、スチレンとブタジエンのコポリマー、又は高粘度エステル(複合エステル)が挙げられる。
【0068】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤又は非フェノール系酸化防止剤が挙げられる。
【0069】
有用なフェノール系酸化防止剤としては、ヒンダードフェノールが挙げられる。これらのフェノール系酸化防止剤は、無灰(金属を含まない)フェノール系化合物、又は特定のフェノール系化合物の中性若しくは塩基性金属塩であってもよい。典型的なフェノール系酸化防止剤化合物は、立体障害型ヒドロキシル基を含有するものであるヒンダードフェノール類であり、これらとしては、ヒドロキシル基が互いにo又はp位にあるジヒドロキシアリール化合物の誘導体が挙げられる。典型的なフェノール系酸化防止剤としては、6個以上の炭素原子を有するアルキル基で置換されたヒンダードフェノール、及びこれらのヒンダードフェノールのアルキレン結合誘導体が挙げられる。このタイプのフェノール系材料の例は、2-t-ブチル-4-ヘプチルフェノール; 2-t-ブチル-4-オクチルフェノール; 2-t-ブチル-4-ドデシルフェノール; 2,6-ジ-t-ブチル-4-ヘプチルフェノール; 2,6-ジ-t-ブチル-4-ドデシルフェノール; 2-メチル-6-t-ブチル-4-ヘプチルフェノール; 及び2-メチル-6-t-ブチル-4-ドデシルフェノールである。他の有用なヒンダードモノフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ヒンダード2,6-ジ-アルキル-フェノール系プロピオン酸エステル誘導体が挙げられる。ビスフェノール系酸化防止剤はまた、本発明と組み合わせて使用してもよい。オルト結合フェノールの例としては、2,2'-ビス(4-ヘプチル-6-t-ブチル-フェノール); 2,2'-ビス(4-オクチル-6-t-ブチル-フェノール); 及び2,2'-ビス(4-ドデシル-6-t-ブチル-フェノール)が挙げられる。パラ結合ビスフェノールとしては、例えば、4,4'-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)及び4,4'-メチレン-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)が挙げられる。
【0070】
使用し得る非フェノール系酸化防止剤としては、芳香族アミン酸化防止剤が挙げられ、これらは、そのままで、又はフェノール類と組み合わせて使用してもよい。非フェノール系酸化防止剤の典型的な例としては、アルキル化及び非アルキル化芳香族アミン、例えば、式R8R9R10N(式中、R8は、脂肪族、芳香族又は置換芳香族基であり、R9は、芳香族又は置換芳香族基であり、R10は、H、アルキル、アリールである)又はR11S(O)xR12(式中、R11は、アルキレン、アルケニレン、又はアラルキレン(aralkylene)基であり、R12は、高級アルキル基、又はアルケニル、アリール、又はアルカリル基であり、xは、0、1又は2である)の芳香族モノアミンが挙げられる。脂肪族基R8は、1~約20個の炭素原子を含有してよく、好ましくは約6~12個の炭素原子を含有する。脂肪族基は、飽和脂肪族基である。好ましくは、R8及びR9の両方は、芳香族又は置換芳香族基であり、芳香族基は、ナフチルなどの縮合環芳香族基であってもよい。芳香族基R8及びR9は、Sなどの他の基と一緒に結合してもよい。
【0071】
典型的な芳香族アミン酸化防止剤は、少なくとも約6個の炭素原子のアルキル置換基を有する。脂肪族基の例としては、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びデシルが挙げられる。一般的に、脂肪族基は、約14個を超える炭素原子を含有しない。本組成物において有用なアミン酸化防止剤の一般的なタイプとしては、ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、フェノチアジン、イミドジベンジル及びジフェニルフェニレンジアミンが挙げられる。2つ以上の芳香族アミンの混合物もまた有用である。ポリマーアミン酸化防止剤も使用することができる。本発明において有用な芳香族アミン酸化防止剤の特定の例としては、p,p'-ジオクチルジフェニルアミン; t-オクチルフェニル-アルファ-ナフチルアミン; フェニル-アルファナフチルアミン; 及びp-オクチルフェニル-アルファ-ナフチルアミンが挙げられる。硫化アルキルフェノール並びにそのアルカリ若しくはアルカリ土類金属塩も有用な酸化防止剤である。
【0072】
腐食防止剤としては、様々な酸素、窒素、硫黄、及びリンを含有する材料が挙げられ、金属含有化合物(塩、有機金属など)並びに非金属含有若しくは無灰材料が挙げられる。腐食防止剤としては、以下に限定されないが、添加剤タイプ、例えば、ヒドロカルビル、アリール、アルキル、アリールアルキル、及びアルキルアリールバージョンの洗浄剤(中性、過塩基性)、スルホネート、フェネート、サリチレート、アルコレート、カルボキシレート、サリキサレート、ホスファイト、ホスフェート、チオホスフェート、アミン、アミン塩、アミンリン酸塩、アミンスルホン酸塩、アルコキシル化アミン、エーテルアミン、ポリエーテルアミン、アミド、イミド、アゾール、ジアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、トリルトリアゾール(TTZタイプ)、複素環式アミン、複素環式硫化物、チアゾール、チアジアゾール、メルカプトチアジアゾール、ジメルカプトチアジアゾール(DMTDタイプ)、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ジチオベンズイミダゾール、イミダゾリン、オキサゾリン、マンニッヒ反応生成物、グリシジルエーテル、無水物、カルバメート、チオカルバメート、ジチオカルバメート、ポリグリコールなど、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0073】
洗浄剤としては、汚れ粒子に付着して、それが臨界面に付着するのを防ぐ洗浄剤が挙げられる。洗浄剤はまた、金属表面自体に付着して、それをきれいに保ち、腐食の発生を防ぎ得る。洗浄剤としては、カルシウムアルキルサリチレート、カルシウムアルキルフェネート、及びカルシウムアルカリルスルホネートが挙げられ、代替金属イオン、例えば、マグネシウム、バリウム、又はナトリウムも使用される。使用できる洗浄剤及び分散剤の例としては、金属ベースの洗浄剤、例えば、中性及び塩基性アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート及びアルカリ土類金属サリチレート、アルケニルスクシンイミド及びアルケニルスクシンイミドエステル及びそれらのホウ水素化物、フェネート、サリエニウス(salienius)錯体洗浄剤及び硫黄化合物で修飾された無灰分散剤が挙げられる。これらの薬剤は、個別に、又は混合物の形態で、好都合にはベースストックの重量に対して≧0.01~≦1.0重量%の範囲内の量で、添加及び使用することができる; これらはまた、高い総塩基数(TBN)、低いTBN、又は高い/低いTBNの混合物であり得る。
【0074】
分散剤は、臨界面上にスラッジ、ワニス、及び他の堆積物が形成するのを防ぐのに役立つ潤滑剤添加剤である。分散剤は、スクシンイミド分散剤(例えば、N置換長鎖アルケニルスクシンイミド)、マンニッヒ分散剤、エステル含有分散剤、脂肪性ヒドロカルビルモノカルボン酸アシル化剤とアミン又はアンモニアとの縮合生成物、アルキルアミノフェノール分散剤、ヒドロカルビル-アミン分散剤、ポリエーテル分散剤又はポリエーテルアミン分散剤であってもよい。一実施形態では、スクシンイミド分散剤としては、ポリイソブチレン置換スクシンイミドが挙げられ、分散剤が由来するポリイソブチレンは、約400~約5000、又は約950~約1600の数平均分子量を有してもよい。一実施形態では、分散剤としては、ホウ酸化(borated)分散剤が挙げられる。典型的には、ホウ酸化分散剤としては、ポリイソブチレンスクシンイミドを含むスクシンイミド分散剤が挙げられ、分散剤が由来するポリイソブチレンは、約400~約5000の数平均分子量を有してもよい。ホウ酸化分散剤は、極圧剤の記載の中で上により詳細に記載される。
【0075】
消泡剤は、シリコーン、ポリアクリレートなどから選択してもよい。本明細書に記載の潤滑剤組成物中の消泡剤の量は、配合物の総重量に基づいて、≧0.001重量%~≦0.1重量%の範囲であってよい。さらなる例として、消泡剤は、約0.004重量%~約0.008重量%の量で存在してもよい。
【0076】
適切な極圧剤は、硫黄含有化合物である。一実施形態では、硫黄含有化合物は、硫化オレフィン、多硫化物、又はそれらの混合物であってもよい。硫化オレフィンの例としては、プロピレン、イソブチレン、ペンテンから誘導された硫化オレフィン; ベンジルジスルフィドを含む有機硫化物及び/又は多硫化物; ビス-(クロロベンジル)ジスルフィド; ジブチルテトラスルフィド; ジ-第三級ブチル多硫化物; 及びオレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化テルペン、硫化ディールスアルダー付加物、アルキルスルフェニルN'N-ジアルキルジチオカルバメート; 又はそれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、硫化オレフィンとしては、プロピレン、イソブチレン、ペンテン、又はそれらの混合物から誘導された硫化オレフィンが挙げられる。一実施形態では、極圧添加剤硫黄含有化合物としては、ジメルカプトチアジアゾール又はその誘導体若しくは混合物が挙げられる。ジメルカプトチアジアゾールの例としては、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール又はヒドロカルビル置換2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールなどの化合物、又はそれらのオリゴマーが挙げられる。ヒドロカルビル置換2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールのオリゴマーは、典型的には、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール単位間に硫黄-硫黄結合を形成して、前記チアジアゾール単位の2つ以上の誘導体又はオリゴマーを形成することによって形成する。適切な2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール由来の化合物としては、例えば、2,5-ビス(tert-ノニルジチオ)-1,3,4-チアジアゾール又は2-tert-ノニルジチオ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾールが挙げられる。ヒドロカルビル置換2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールのヒドロカルビル置換基上の炭素原子の数は、典型的には、1~30、又は2~20、又は3~16を含む。極圧添加剤としては、ホウ素及び/又は硫黄及び/又はリンを含有する化合物が挙げられる。極圧剤は、潤滑剤組成物の0重量%~約20重量%、又は約0.05重量%~約10.0重量%、又は約0.1重量%~約8重量%で潤滑剤組成物中に存在してもよい。
【0077】
耐摩耗添加剤の例としては、有機ボレート、有機ホスファイト、例えば、ジドデシルホスファイト、有機硫黄含有化合物、例えば、硫化鯨油又は硫化テルペン、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアリールジチオリン酸亜鉛、ホスホ硫化炭化水素及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0078】
摩擦調整剤としては、金属含有化合物若しくは材料、並びに無灰化合物若しくは材料、又はそれらの混合物が挙げられる。金属含有摩擦調整剤としては、金属が、アルカリ、アルカリ土類、又は遷移族金属を含み得る、金属塩又は金属配位子錯体が挙げられる。そのような金属含有摩擦調整剤はまた、低灰分特性を有してもよい。遷移金属としては、Mo、Sb、Sn、Fe、Cu、Znなどが挙げられる。配位子としては、アルコール、ポリオール、グリセロール、部分エステルグリセロール、チオール、カルボキシレート、カルバメート、チオカルバメート、ジチオカルバメート、ホスフェート、チオホスフェート、ジチオホスフェート、アミド、イミド、アミン、チアゾール、チアジアゾール、ジチアゾール、ジアゾール、トリアゾールのヒドロカルビル誘導体、並びに有効量のO、N、S、又はPを個別に又は組み合わせて含有する他の極性分子官能基が挙げられる。特に、Mo含有化合物、例えば、Mo-ジチオカルバメート、Mo(DTC)、Mo-ジチオホスフェート、Mo(DTP)、Mo-アミン、Mo(Am)、Mo-アルコレート、Mo-アルコール-アミドなどが特に有効であり得る。
【0079】
無灰摩擦調整剤としてはまた、有効量の極性基を含有する潤滑剤材料、例えば、ヒドロキシル含有ヒドロカルビル基油、グリセリド、部分グリセリド、グリセリド誘導体などが挙げられる。摩擦調整剤中の極性基としては、有効量のO、N、S、又はPを個別に又は組み合わせて含有するヒドロカルビル基が挙げられる。特に有効であり得る他の摩擦調整剤としては、例えば、脂肪酸の塩(灰含有及び無灰誘導体の両方)、脂肪アルコール、脂肪アミド、脂肪エステル、ヒドロキシル含有カルボキシレート、及び同等の合成長鎖ヒドロカルビル酸、アルコール、アミド、エステル、ヒドロキシカルボキシレートなどが挙げられる。ある場合には、脂肪有機酸、脂肪アミン、及び硫化脂肪酸を、適切な摩擦調整剤として使用してもよい。摩擦調整剤の例としては、脂肪酸エステル及びアミド、有機モリブデン化合物、モリブデンジアルキルチオカルバメート及びモリブデンジアルキルジチオホスフェートが挙げられる。
【0080】
適切な金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、例えば、4-又は5-アルキルベンゾトリアゾール(例えば、トリアゾール)及びその誘導体、4,5,6,7-テトラヒドロベンゾトリアゾール及び5,5'-メチレンビスベンゾトリアゾール; ベンゾトリアゾール又はトリアゾールのマンニッヒ塩基、例えば1-[ビス(2-エチル-ヘキシル)アミノメチル)トリアゾール及び1-[ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル)ベンゾトリアゾール; 及びアルコキシ-アルキルベンゾトリアゾール、例えば、1-(ノニルオキシメチル)ベンゾトリアゾール、1-(1-ブトキシエチル)ベンゾトリアゾール及び1-(1-シクロヘキシルオキシブチル)トリアゾール、及びそれらの組み合わせが挙げられる。1つ以上の金属不活性化剤の追加の非限定的な例としては、1,2,4-トリアゾール及びその誘導体、例えば、3-アルキル(又はアリール)-1,2,4-トリアゾール、及び1,2,4-トリアゾールのマンニッヒ塩基、例えば、1-[ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル-1,2,4-トリアゾール; アルコキシアルキル-1,2,4-トリアゾール、例えば、1-(1-ブトキシエチル)-1,2,4-トリアゾール; 及びアシル化3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、イミダゾール誘導体、例えば、4,4'-メチレンビス(2-ウンデシル-5-メチルイミダゾール)及びビス[(N-メチル)イミダゾール-2-イル]カルビノールオクチルエーテル、及びそれらの組み合わせが挙げられる。1つ以上の金属不活性化剤のさらなる非限定的な例としては、硫黄含有複素環式化合物、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チア-ジアゾール及びそれらの誘導体; 及び3,5-ビス[ジ(2-エチルヘキシル)アミノメチル]-1,3,4-チアジアゾリン-2-オン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。1つ以上の金属不活性化剤のさらに非限定的な例としては、アミノ化合物、例えば、サリチリデンプロピレンジアミン、サリチルアミノグアニジン及びそれらの塩、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。1つ以上の金属不活性化剤は、組成物中の量において特に制限されないが、典型的には、組成物の重量に基づいて、約0.01~約0.1、約0.05~約0.01、又は約0.07~約0.1重量%の量で存在する。あるいは、1つ以上の金属不活性化剤は、組成物の重量に基づいて、約0.1重量%未満、約0.7重量%未満、又は約0.5重量%未満の量で存在してもよい。
【0081】
流動点降下剤(PPD)としては、ポリメタクリレート、アルキル化ナフタレン誘導体、及びそれらの組み合わせが挙げられる。アルキル芳香族ポリマー及びポリメタクリレートなどの一般的に使用される添加剤も、この目的に有用である。典型的には、処理率は、ベースストックの重量に対して、≧0.001重量%~≦1.0重量%の範囲である。
【0082】
解乳化剤としては、リン酸トリアルキル、並びにエチレングリコール、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、又はそれらの混合物の様々なポリマー及びコポリマーが挙げられる。
【0083】
潤滑剤及びジエステルの使用の例は、アクセル潤滑、ミディアム及びヘビーデューティーエンジンオイル、工業用エンジンオイル、船舶用エンジンオイル、自動車用エンジンオイル、クランクシャフトオイル、コンプレッサーオイル、冷凍機油、炭化水素コンプレッサーオイル、超低温潤滑油及び脂肪、高温潤滑油及び脂肪、ワイヤーロープ潤滑剤、繊維機械油、冷凍機油、航空及び航空宇宙潤滑剤、航空タービン油、トランスミッション油、ガスタービン油、スピンドル油、スピン油、トラクション流体、トランスミッション油、プラスチックトランスミッション油、乗用車トランスミッション油、トラックトランスミッション油、工業用トランスミッション油、工業用ギアオイル、絶縁油、インストルメントオイル、ブレーキ流体、トランスミッション液、ショックアブソーバーオイル、熱分配媒体油、変圧器油、脂肪、チェーンオイル、金属加工作業用の最小量の潤滑剤、温冷加工用オイル、水性金属加工液用オイル、ニートオイル金属加工液用オイル、半合成金属加工液用オイル、合成金属加工液用オイル、土壌探査用掘削洗浄剤、油圧オイル、生分解性潤滑剤又は潤滑グリース若しくはワックス、チェーンソーオイル、離型剤、成形流体、銃、ピストル及びライフル潤滑剤又は時計用潤滑剤及び食品グレードで承認された潤滑剤である。
【0084】
本発明はさらに、表面を潤滑剤と又はジエステルと接触させるステップを含む、移動表面間の摩擦を低減する方法に関する。
【0085】
摩擦は、70℃及び1GPaでミニトラクションマシン(MTM)測定を使用して、25%スライドロール比(SRR)で摩擦係数を測定することによって決定してもよい。
【0086】
本発明によるジエステルは、潤滑剤中に多くの目的のために使用してもよく、例えば、潤滑剤の粘度指数を高めるため、潤滑剤を増粘させるため、潤滑剤の摩擦係数を向上させるため、摩耗を低減するため、又は潤滑剤のベースストックとして使用してもよい。
【実施例】
【0087】
実施例1: トリデカノール混合物
トリデカノールの工業用混合物を、US 2003/0187114に記載されるように、工業用C4-ラフィネートから出発して調製した。ブタン及びブテン異性体の工業用混合物を不均一触媒上で二量体化に供して、オクテン異性体及びドデセン異性体の混合物を生成した。ドデセン異性体を蒸留によって分離した。異性体ドデセンを、水素及び一酸化炭素を含む合成ガスでヒドロホルミル化し、続いて水素で水素化した。得られたトリデカノール混合物を分別蒸留によって単離した。
【0088】
イソトリデカノール混合物の密度は0.843g/cm3であり、屈折率nD
20は1.448であり、粘度は34.8mPasであり、沸点範囲は251~267℃(DIN 51751に従って)であった。
【0089】
トリデカノール異性体の割合は、DIN 55685に従ってガスクロマトグラフィーによって決定して、少なくとも99.0面積%であった。ドデカノール及びテトラデカノールの含有量は、ガスクロマトグラフィーによって決定して、それぞれ1面積%未満であった。
【0090】
実施例2: GC分析
実施例1からのトリデカノール混合物を、Kovacs法を使用して、US 2003/0187114に記載されるようにガスクロマトグラフィーによって分析した:
【0091】
100μlの検体あたり1mlのN-メチル-N-トリメチルシリルトリフルオロアセトアミドを使用して、イソトリデカノールの検体を、80℃で60分間トリメチルシリル化した。ガスクロマトグラフィーによる分離には、内径0.32mmの、100%メチル化シリコーンゴムをベースにした長さ50mのHewlett Packard Ultra 1分離カラムを使用した。インジェクター温度及び検出器温度は250℃であり、オーブン温度は160℃(等温)であった。スプリットは80ml/分であった。キャリアガスは窒素であった。注入口圧力は2barに設定した。1μlの検体をガスクロマトグラフに注入し、分離した成分をFID(水素炎イオン化検出器)によって検出した。
【0092】
ここで使用した参照物質は、
n-ウンデカノール: 保持指標(「RI」) 1100
n-ドデカノール: 保持指標1200
n-トリデカノール 保持指標1300
であった。
【0093】
評価の目的で、ガスクロマトグラムを次の領域に細分した:
領域1: 1180未満の保持指標
領域2: 1180~1217の保持指標
領域3: 1217を超える保持指標
【0094】
トリデカノールピークの面積は、100面積パーセントに設定した。結果を表1にまとめる。
【0095】
比較のために、トリデカノールの市販の混合物(Exxon Mobil, USAからのExxal(登録商標)13)を分析し、結果を表1「比較」にまとめる。密度は0.843~0847g/cm3であり、ヒドロキシル価は275~295mg KOH/gであり、沸点範囲は250~270℃であり、C9及びC10アルコールの割合は約2重量%であり、C14以上のアルコールの割合は約5重量%であった。WO 2010/057847の表1によれば、C12アルコールの量は約30%である。
【0096】
【0097】
実施例3: アジピン酸のジエステルの合成
実施例1(2.4mol)及びアジピン酸(1.0mol)のトリデカノール混合物を、オートクレーブ中、不活性ガス(N2)下、反応温度230℃で、イソ-プロピル-ブチル-チタネート(0.001mol)の存在下で反応させる。反応中に形成された水を、不活性ガス流(N2流)を介して反応混合物から除去する。約180分後、50mbarの圧力で蒸留することによって、過剰のアルコールを混合物から除去する。次いで、こうして得られたアジピン酸のジエステルを、80℃で0.5%NaOHで中和する。その後、有機相及び水相を分離し、有機相を水で2回洗浄する。さらなるステップにおいて、粗アジピン酸エステルを180℃及び50mbarの蒸気で処理することによって、有機相を精製する。次いで、150℃及び50mbarでN2流に供することによって、アジピン酸のジエステルを乾燥させる。最後に、アジピン酸のジエステルを活性炭と混合し、レオロジー剤としてスープラセオリット(supra-theorit)を使用して、80℃で減圧下で濾過する。
【0098】
無色から黄色がかった液体は、沸点範囲321~324℃(ASTM D1120)及び20℃での密度0.907を有した。
【0099】
実施例4: ジエステルの性能試験
実施例3のジエステルの様々な性能試験を行い、表2にまとめた。比較のために、アジピン酸及びExxal(登録商標)13(実施例2で分析した)のジエステルを、実施例3に記載されるように調製し(「比較ジエステル」)、試験する。
【0100】
熱酸化安定性「RPVOT」を、ASTM D2272に従って試験した。この標準試験は、酸素圧容器を使用して、150℃で水及び銅触媒コイルの存在下で酸化安定性油を評価する。圧力が最大値を175kPa下回るまで低下するまでの時間(分)を測定した。時間が長くなるほど、油は酸化に対してより耐性となる。全てのサンプルは、BASF SEから市販されているオクチル化フェニル-アルファ-ナフチルアミンである酸化防止剤Irganox(登録商標)L06を0.5重量%含有した。
【0101】
データは、粘度指数、流動点、引火点、及び熱酸化安定性が改善したことを実証した。
【0102】
【0103】
実施例5: トラクション試験
実施例のジエステル及び比較ジエステルを、いわゆるトラクション試験モードを使用して、MTM(ミニトラクションマシン)機器で試験した。このモードでは、摩擦係数を、ある範囲のスライドロール比(SRR)にわたって一定の平均速度で測定し、トラクション曲線を得る。ボールと平面との間の接触部が完全に浸るように、試験潤滑剤を含有する浴にディスクを保持する。ボールシャフトは、接触部でのスピンを防ぐようにディスクに対して位置調整され、スライドロール比は、ボールとディスクの両方を別々のモーターで駆動することによって独立して制御される。実験に使用したディスク及びボールは、硬度750HV及びRa<0.02μmの鋼(AISI 52100)でできていた。直径は、ディスク及びボールについてそれぞれ45.0mm及び19.0mmであった。トラクション曲線は、38ニュートン、200mm/sの速度及び70℃の温度で実行した。
【0104】
スライドロール比(「SRR」)を、0から50パーセントまで変化させ、トラクション係数(「TC」)を測定した。結果の図を
図1に示す。四角線は、実施例2の本発明のジエステルについてのデータ、三角線は、比較ジエステルについてのデータを表す。これは、本発明のジエステルの改善された摩擦特性を実証した。
【国際調査報告】