(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】膜濾過法による金属-有機構造体の調整方法
(51)【国際特許分類】
B01D 61/14 20060101AFI20220131BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20220131BHJP
C07C 57/15 20060101ALN20220131BHJP
C07F 5/06 20060101ALN20220131BHJP
C07D 233/58 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
B01D61/14 500
B01D69/00
C07C57/15
C07F5/06 D
C07D233/58
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021526780
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(85)【翻訳文提出日】2021-07-19
(86)【国際出願番号】 EP2019081312
(87)【国際公開番号】W WO2020099554
(87)【国際公開日】2020-05-22
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(72)【発明者】
【氏名】アルノルト,レナ
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンゲラー,ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,パトリク
(72)【発明者】
【氏名】カルワッキー,ルーカス
【テーマコード(参考)】
4D006
4H006
4H048
【Fターム(参考)】
4D006GA06
4D006GA07
4D006HA01
4D006HA21
4D006HA41
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4H048AA01
4H048AA02
4H048AA03
4H048AB90
4H048AD19
4H048VA20
4H048VA80
4H048VB10
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの膜濾過法により、少なくとも1つの金属-有機構造体と少なくとも1つの懸濁媒体とを含む未処理の懸濁液を調整して生成物懸濁液を得る方法に関する。本発明はまた、前記生成物懸濁液を基材の表面の少なくとも一部に被覆する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの金属-有機構造体と少なくとも1つの懸濁媒体SM1とを含む未処理の懸濁液SRを調整する方法であって、
該少なくとも1つの金属-有機構造体が、少なくとも1つの金属イオンに配位した少なくとも二座である有機化合物を少なくとも1つ含むこと、
未処理の懸濁液SRを少なくとも1つの膜濾過法によって調整して、少なくとも1つの金属-有機構造体と少なくとも1つの懸濁媒体SM2とを含む生成物懸濁液SPを得ること
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの膜濾過法が、少なくとも1つの精製工程、又は少なくとも1つの濃縮工程、又は少なくとも1つの精製工程及び少なくとも1つの濃縮工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの膜濾過法が、少なくとも1つの精製工程と少なくとも1つの濃縮工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの精製工程及び/又は前記少なくとも1つの濃縮工程をダイアフィルトレーションとして実施する、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記ダイアフィルトレーションの媒体が、水、メタノール、エタノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、sec-ブタノール又はこれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、好ましくは水である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
膜の分離層が、50~800nm、好ましくは50~200nmの範囲の細孔サイズを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
懸濁媒体SM1と懸濁媒体SM2が、互いに独立して、水、メタノール、エタノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、sec-ブチルブタノール、又はこれらの2種以上の混合物から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
懸濁媒体SM1と懸濁媒体SM2が同じものであり、好ましくは水である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記未処理の懸濁液SRが前記少なくとも1つの金属-有機構造体の製造方法により得られ、その製造方法が、
-少なくとも1つの金属塩と少なくとも1つの少なくとも二座である有機化合物とを、好ましくは少なくとも1つの追加の化合物の存在下で、反応媒体中で反応させる工程であって、該反応媒体が前記少なくとも1つの懸濁媒体SM1に相当する、工程
を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの金属イオンが、Zn、Al、Mg、Cu、Mn、Fe、Co、Ni、Ti、Zr、Y、Sc、V、In、Ca、Cr、Mo、W、Ln、好ましくはCu、Zn、Al、Mg、Zr及びFeのイオンである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの金属イオンが、Cu、Zn、Mg又はAlのイオンである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの少なくとも二座の有機化合物が、ジ-、トリ-又はテトラカルボン酸、又は、ピロール、アルファ-ピリドン及びガンマーピリドンからなる群から選択される少なくとも1つの複素環から誘導される単環式、二環式又は多環式の環系から誘導される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの少なくとも二座の有機化合物が、ジ-、又はトリカルボン酸又は置換若しくは非置換イミダゾールである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記金属-有機構造体が、Cu-1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、Zn-2-メチルイミダゾレート、Al-フマレート、Al-テレフタレート又はMg-ホルメート、好ましくは、Al-フマレートである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの金属-有機構造体を含む活性層で基材の表面の少なくとも一部を被覆する方法であって、その方法が、
a)基材の表面の少なくとも一部をコーティング組成物と接触させる工程であって、該コーティング組成物が、少なくとも1つの金属-有機構造体を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の生成物懸濁液と、少なくとも1つのバインダーとを含む、工程
を備えることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの膜濾過法により、少なくとも1つの金属-有機構造体(Metal-Organic Framework:MOF)と少なくとも1つの懸濁媒体とを含む未処理の懸濁液を調整して生成物懸濁液を得る方法に関する。本発明はまた、前記生成物懸濁液を基材の表面の少なくとも一部に被覆する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な吸着用途に有用な多孔質材料が知られている。その例として、M.Tatl1erら、Microporous and Mesoporous Materials 34(2000)、23-30の、the optimization of the cycle duration of adsorption heat pumpsに関する文献には、各種ゼオライトが記載されている。
【0003】
多孔質金属-有機構造体は先行技術で知られており、興味深いクラスの物質を構成する。この多孔質金属-有機構造体は、ゼオライト、活性炭、及び、不均一系触媒作用などの様々な用途向けの他の多孔質材料の代替材料となることが可能である。
【0004】
吸着ヒートポンプ又は空調システムなどのアプリケーションでは、金属-有機構造体、例えば、フマル酸アルミニウム(A520)を機能性コーティングとして塗布する必要がある。機能性コーティングは、このように、様々な基材に被覆される。
【0005】
金属-有機構造体、及び、金属-有機構造体を含むコーティング組成物を調製するための現在のプロセスとしては、以下の工程を包含する。すなわち、最初に、当該MOFの調製を、溶媒の存在下で金属イオンと二座有機化合物とを反応させることにより行う。ここで、MOF含有懸濁液を得る。その後、MOF含有懸濁液を、通常、従来の濾過、洗浄、及びその後の、乾燥、通常は噴霧乾燥により分離する。その後、懸濁媒体として液体、及び、典型的には少なくとも1つのバインダー化合物を、所望のMOF濃度が得られるまで加えることによって、コーティング組成物を調合する。
【0006】
上記の従来の方法には、幾つかの欠点がある。すなわち、特に、エネルギーと材料を大量に消費し、大量の廃水を生成するため、プロセスコストが比較的高くなることである。
【0007】
さらに、従来のコーティング組成物、すなわち、MOF粉末、液体媒体、及び通常はバインダーから調合した組成物を用いて基材の表面に形成したMOFフィルム(被膜)は、亀裂形成、接着特性、密度に関して幾つかの望ましくない特性を有することが多いことが観察される。
【0008】
したがって、既知のプロセスよりもエネルギー効率及びコスト効率が高い、MOFを含有する未処理の懸濁液の状態を調整するための方法の必要性がある。
【0009】
さらには、基材をMOFフィルムで被覆する方法として、当該MOFフィルムが従来の方法で製造するMOFフィルムよりも改善した特性を示すような方法が必要とされる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】M.Tatl1erら:「the optimization of the cycle duration of adsorption heat pumps」、Microporous and Mesoporous Materials 34(2000)、23-30
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の1つの目的は、上記のような、状態を適切に調整する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、少なくとも1つの金属-有機構造体及び少なくとも1つの懸濁媒体SM1を含む未処理の懸濁液SRを調整するする方法によって達成される。この方法は、該少なくとも1つの金属-有機構造体が、少なくとも1つの金属イオンに配位した少なくとも1つの少なくとも二座の有機化合物を含むものであり、また、未処理の懸濁液SRを、少なくとも1つの膜濾過法によって調整し、少なくとも1つの金属-有機構造体と少なくとも1つの懸濁媒体SM2とを含む生成物懸濁液SPを得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】実験1及び2におけるDF又はCFの関数として、透過流束及び保持液での導電率を示す。
【
図3】実験3におけるDF又はCFの関数として、透過流束及び保持液での導電率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
驚くべきことに、本発明の方法は、従来の技術よりもエネルギー消費量が少ない方法であり、しかも、例えば、基材の表面上にMOFフィルムを被覆するのに直接、使用することができる生成物懸濁液SPを提供する方法であることが分かった。さらに、かかるMOFフィルムは特性が改善されており、特に、密度が高いものであって、フィルムの亀裂形成も少ないことが観察できることが見出された。
【0015】
金属-有機構造体
本発明による金属-有機構造体は、細孔、特にミクロ細孔及び/又はメソ細孔を含む。ミクロ細孔は、2nm以下の直径を有する細孔として定義され、メソ細孔は、2~50nmの範囲の直径によって定義される(いずれの場合にもPure&Applied Chem.57(1983),603-619頁、特に606頁に記載された定義に従う)。 ミクロ細孔及び/又はメソ細孔の存在は、収着測定によって確認することができる。これらの測定により、DIN66131:1993-07及び/又はDIN66134:1998-2に従って77ケルビンでMOFsの窒素取り込み能力を決定する(ラングミュア法)、又はBET法(DIN ISO 9277:2003-05)に準拠して決定する。
【0016】
粉末形態の金属-有機構造体の、BET法(DIN ISO 9277:2003-05)に従いN2吸着によって決定される比表面積は、好ましくは100m2/gを超え、より好ましくは300m2/gを超え、より好ましくは500m2/gを超え、さらにより好ましくは800m2/gを超え、さらにより好ましくは1000m2/gを超え、特に好ましくは1200m2/gを超える。
【0017】
本発明に係る金属-有機構造体は、少なくとも1つの金属イオンを含む。
【0018】
本発明に係る構造体中の前記金属イオンは、Ia族、IIa族、IIIa族、IVa族~VIIIa族及びIb族~VIb族から選択される金属のイオンであることが好ましい。Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Ln、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ro、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb及びBi(ここで、Lnはランタニドを表す)のイオンが特に好ましい。
【0019】
ランタニドは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、En、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybである。
【0020】
これらの元素のイオンに関しては、特に、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Sc3+、Y3+、Ln3+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V4+、V3+、V2+、Nb3+、Ta3+、Cr3+、Mo3+、W3+、Mn3+、Mn2+、Re3+、Re2+、Fe3+、Fe2+、Ru3+、Ru2+、Os3+、Os2+、Co3+、Co2+、Rh2+、Rh+、Ir2+、Ir+、Ni2+、Ni+、Pd2+、Pd+、Pt2+、Pt+、Cu2+、Cu+、Ag+、Au+、Zn2+、Cd2+、Hg2+、Al3+、Ga3+、In3+、Tl3+、Si4+、Si2+、Ge4+、Ge2+、Sn4+、Sn2+、Pb4+、Pb2+、As5+、As3+、As+、Sb5+、Sb3+、Sb+、Bi5+、Bi3+及びBi+を挙げることができる。
【0021】
Zn、Al、Mg、Cu、Mn、Fe、Co、Ni、Ti、Zr、Y、Sc、V、In、Ca、Cr、Mo、W、Lnのイオンが好ましい。前記少なくとも1つの金属イオンは、Cu、Zn、Al、Mg、Zr、及びFeのイオンであることが好ましい。特に、Cu、Zn、Mg及びAlのイオン、好ましくはCu2+、Zn2+、Mg2+、及びAl3+が特に好ましく、Al3+が非常に特に好ましい。
【0022】
本発明に係る方法では、金属イオンとしては、前記少なくとも1つの金属イオンに相当する少なくとも1つの金属塩の形態で使用する。
【0023】
好ましくは、少なくとも1つの金属塩の少なくとも1つの陰イオンは、酸化物、水酸化物、酢酸塩、塩化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、又はそれらの2つ以上の混合物、好ましくは水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩又はそれらの2つ以上の混合物である。
【0024】
好適な実施形態では、金属塩は、水酸化銅(Cu(OH)2)、炭酸亜鉛(ZnCO3)、塩基性炭酸亜鉛[Zn(CO3)]2[Zn(OH)2]3、硫酸アルミニウムAl2(SO4)3、又はそれらの水和物、又は金属水酸化物であり、特に好ましいのは、(Cu(OH)2)、塩基性炭酸亜鉛[Zn(CO3)]2[Zn(OH)2]3、硫酸アルミニウムAl2(SO4)3、又は水和物である。
【0025】
「少なくとも二座の有機化合物」という用語は、所与の金属イオンに対して少なくとも2つの配位結合を形成することができ、及び/又は2つ以上の金属原子、好ましくは2つの金属原子のそれぞれに対して配位結合を形成することができる少なくとも1つの官能基を備える有機化合物のことをいう。前記少なくとも1つの少なくとも二座の有機化合物は、それ自体で、又はその塩の形態で使用することができる。なお、当該有機化合物はそれ自体で使用することが好ましい。
【0026】
上記の配位結合はある官能基を介して形成されるものであるが、当該官能基としては、例として、特に、-CO2H、-CS2H、-NO2、-B(OH)2、-SO3H、-Si(OH)3、-Ge(OH)3、-Sn(OH)3、-Si(SH)4、-Ge(SH)4、-Sn(SH)3、-PO3H、-AsO3H、-AsO4H、-P(SH)3、-As(SH)3、-CH(RSH)2、-C(RSH)3-CH(RNH2)2-C(RNH2)3、-CH(ROH)2、-C(ROH)3、-CH(RCN)2、-C(RCN)3を挙げることができる。式中、Rは、好ましくは、例えば、1、2、3、4又は5個の炭素原子を有するアルキレン基、例えばメチレン、エチレン、n-プロピレン、i-プロピレン、n-ブチレン、i-ブチレン、tert-ブチレン若しくはn-ペンチレン基、又は、1個又は2個の芳香環、例えば2個のC6環を含むアリール基であり、当該芳香環にあっては、適切な場合、縮合(fused)していてもよく、また、互いに独立して、いずれの場合にも、少なくとも1個の置換基で適切に置換されていてもよく、及び/又は、互いに独立して、いずれの場合にも、少なくとも1個のヘテロ原子、例えばN、O及び/又はSを含んでいてもよい。同様に好適な実施形態において、上記のラジカルRが存在しない官能基も挙げることができる。この関連では、とりわけ-CH(SH)2、-C(SH)3、-CH(NH2)2、-C(NH2)3、-CH(OH)2、-C(OH)3、-CH(CN)2又は-C(CN)3が挙げられる。
【0027】
しかしながら、前記官能基はまた、複素環のヘテロ原子である可能性もある。ここでは、特に窒素原子が挙げられる。
【0028】
少なくとも2つの官能基は、これらの官能基を含む、いかなる有機化合物も配位結合を形成し、かつ、構造体を生成する能力が確保される限り、原則として、その適切な有機化合物に結合していてもよい。
【0029】
少なくとも2つの官能基を含む有機化合物は、好ましくは、飽和又は不飽和脂肪族化合物若しくは芳香族化合物、又は脂肪族芳香族化合物から誘導される。
【0030】
脂肪族化合物、又は脂肪族芳香族化合物の脂肪族部分は、直鎖及び/又は分岐及び/又は環式であることができ、化合物ごとに複数の環も可能である。脂肪族化合物、又は脂肪族芳香族化合物の脂肪族部分は、さらに好ましくは1~15個、さらに好ましくは1~14個、さらに好ましくは1~13個、さらに好ましくは1~12個、さらに好ましくは1~11個、特に好ましくは1~10個の炭素原子、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の炭素原子を含む。ここでは、とりわけ、メタン、アダマンタン、アセチレン、エチレン又はブタジエンが特に好ましい。
【0031】
前記芳香族化合物、又は芳香族脂肪族化合物の芳香族部分は、1個以上の環、 例えば2、3、4又は5個の環を持つことができ、この複数の環は、互いに分離して存在してもよく、及び/又は少なくとも2個の環が縮合した形態で存在していてもよい。芳香族化合物、又は芳香族脂肪族化合物の芳香族部分は、1、2又は3個の環を有することが特に好ましい。特に1個又は2個の環が優先する。さらに、前記化合物の環はそれぞれ、互いに独立して、N、O、S、B、P、Si、Al、好ましくはN、O及び/又はSなどの少なくとも1個のヘテロ原子を含むことができる。また、芳香族化合物、又は芳香族かつ脂肪族化合物の芳香族部分は、1個又は2個のC6環を含むことがより好ましい。2個の環の場合、それらは互いに別々に、又は縮合した形で存在することができる。特に挙げ得る芳香族化合物には、ベンゼン、ナフタレン及び/又はビフェニル及び/又はビピリジル及び/又はピリジルがある。
【0032】
前記少なくとも二座の有機化合物としては、脂肪族又は芳香族の非環式又は環式炭化水素であって、1~18個、好ましくは1~10個、特に6個の炭素原子を有し、さらに、官能基として専ら2、3又は4個のカルボキシル基を有することがより好ましい。
【0033】
例えば、少なくとも二座の有機化合物は、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、1,4-ブタンジカルボン酸、1,4-ブテンジカルボン酸、4-オキソピラン-2,6-ジカルボン酸、1,6-ヘキサンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、1,8-ヘプタデカンジカルボン酸、1,9-ヘプタデカンジカルボン酸、ヘプタデカンジカルボン酸、アセチレンジカルボン酸、1,2-ベンゼンジカルボン酸、1,3-ベンゼンジカルボン酸、2,3-ピリジンジカルボン酸、ピリジン-2,3-ジカルボン酸、1,3-ブタジエン-1,4-ジカルボン酸、1,4-ベンゼンジカルボン酸、p-ベンゼンジカルボン酸、イミダゾール-2,4-ジカルボン酸、2-メチルキノリン-3,4-ジカルボン酸、キノリン-2,4-ジカルボン酸、キノキサリン-2,3-ジカルボン酸、6-クロロキノキサリン-2,3-ジカルボン酸、4,4’-ジアミノフェニルメタン-3,3’-ジカルボン酸、キノリン-3,4-ジカルボン酸、7-クロロ-4-ヒドロキシキノリン-2,8-ジカルボン酸、ジイミドジカルボン酸、ピリジン-2,6-ジカルボン酸、2-メチルイミダゾール-4,5-ジカルボン酸、チオフェン-3,4-ジカルボン酸、2-イソプロピルイミダゾール-4,5-ジカルボン酸、テトラヒドロピラン-4,4-ジカルボン酸、ペリレン-3,9-ジカルボン酸、ペリレンジカルボン酸、プルリオール(Pluriol)E200-ジカルボン酸、3,6-ジオキサオクタンジカルボン酸、3,5-シクロヘキサジエン-1,2-ジカルボン酸、オクタジカルボン酸、ペンタン-3,3-ジカルボン酸、4,4’-ジアミノ-1,1’-ビフェニル-3,3’-ジカルボン酸、4,4’-ジアミノビフェニル-3,3’-ジカルボン酸、ベンジジン-3,3’-ジカルボン酸、1,4-ビ ス(フェニルアミノ)ベンゼン-2,5-ジカルボン酸、1,1’-ビナフチルジカルボ ン酸、7-クロロ-8-メチルキノリン-2,3-ジカルボン酸、1-アニリノアントラ キノン-2,4’-ジカルボン酸、ポリテトラヒドロフラン-250-ジカルボン酸、1,4-ビス(カルボキシメチル)ピペラジン-2,3-ジカルボン酸、7-クロロキノリン-3,8-ジカルボン酸、1-(4-カルボキシ)フェニル-3-(4-クロロ)フェニルピラゾリン-4,5-ジカルボン酸、1,4,5,6,7,7-ヘキサクロロ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、1,3-ジベンジル-2-オキソイミダゾリジン-4,5-ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレン-1,8-ジカルボン酸、2-ベンゾイルベンゼン-1,3-ジカルボン酸、1,3-ジベンジル-2-オキソイミダゾリジン-4,5-シス-ジカルボン 酸、2,2’-ビキノリン-4,4’-ジカルボン酸、ピリジン-3,4-ジカルボン酸 、3,6,9-トリオキサウンデカンジカルボン酸、ヒドロキシベンゾフェノンジカルボン酸、プルリオールE300-ジカルボン酸、プルリオールE400-ジカルボ ン酸、プルリオールE600-ジカルボン酸、ピラゾール-3,4-ジカルボン酸、2,3-ピラジンジカルボン酸、5,6-ジメチル-2,3-ピラジンジカルボン酸、(ビス(4-アミノフェニル)エーテル)ジイミドジカルボン酸、4,4’-ジアミノジフェニルメタンジイミドジカルボン酸、(ビス(4-アミノフェニル)スルホン)ジイミドジカルボン酸酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,3-アダマンタンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、8-メトキシ-2,3-ナフタレンジカルボン酸、8-ニトロ-2,3-ナフタレンカルボン酸、8-スルホ-2,3-ナフタレンジカルボン酸、アントラセン-2,3-ジカルボン酸、2’,3’-ジフェニル-p-ターフェニル-4,4’’-ジカルボン酸、(ジフェニルエーテル)-4,4’-ジカルボン酸、イミダゾール-4,5-ジカルボン酸、4(1H)-オキソチオクロメン-2,8-ジカルボン酸、5-tert-ブチル-1,3-ベンゼンジカルボン酸、7,8-キノリンジカルボン酸、4,5-イミダゾールジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、ヘキサトリアコンタンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、1,7-ヘプタジカルボン酸、5-ヒドロキシ-1,3-ベンゼンジカルボン酸、2,5-ジヒドロキシ-1,4-ジカルボン酸、ピラジン-2,3-ジカルボン酸、フラン-2,5-ジカルボン酸、1-ノネン-6,9-ジカルボン酸、エイコセンジカルボン酸、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン-3,3’-ジカルボン酸、1-アミノ-4-メチル-9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-2,3-ジカルボン酸、2,5-ピリジンジカルボン酸、シクロヘキセン-2,3-ジカルボン酸、2,9-ジクロロフルオルビン-4,11-ジカルボン酸、7-クロロ-3-メチルキノリン-6,8-ジカルボン酸、2,4-ジクロ ロベンゾフェノン-2’,5’-ジカルボン酸、1,3-ベンゼンジカルボン酸、2,6-ピリジンジカルボン酸、1-メチルピロール-3,4-ジカルボン酸、1-ベンジル-1H-ピロール-3,4-ジカルボン酸、アントラキノン-1,5-ジカルボン酸、3,5-ピラゾールジカルボン酸、2-ニトロベンゼン-1,4-ジカルボン酸、ヘプタン-1,7-ジカルボン酸、シクロブタン-1,1-ジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、5,6-デヒドロノルボルナン-2,3-ジカルボン酸、5-エチル-2,3-ピリジンジカルボン酸又はカンファージカルボン酸などのジカルボン酸から誘導される。
【0034】
少なくとも二座の有機化合物としては、例として上記したジカルボン酸の1つそれ自体であることがさらにより好ましい。
【0035】
少なくとも二座の有機化合物は、例えば、2-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボン酸、7-クロロ-2,3,8-キノリントリカルボン酸、1,2,3-、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、2-ホスホノ-1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、1-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボン酸、4,5-ジヒドロ-4,5-ジオキソ-1H-ピロロ[2,3-F]キノリン-2,7,9-トリカルボン酸、5-アセチル-3-アミノ-6-メチルベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸、3-アミノ-5-ベンゾイル-6-メチルベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸又はアウリントリカルボン酸などのトリカルボン酸から誘導することができる。
【0036】
少なくとも二座の有機化合物としては、例として上記したトリカルボン酸の1つそれ自体であることがさらにより好ましい。
【0037】
テトラカルボン酸から誘導される少なくとも二座の有機化合物の具体例としては、1,1-ジオキシドペリロ[1,12-BCD]チオフェン-3,4,9,10-テトラカルボン酸、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸又は(ペリレン1,12-スルホン)-3,4,9,10-テトラカルボン酸などのペリレンテトラカルボン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸又はメソ-1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸などのブタンテトラカルボン酸、デカン-2,4,6,8-テトラカルボン酸、1,4,7,10,13,16-ヘキサオキサシクロオクタデカン-2,3,11,12-テトラカルボン酸、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸、1,2,11,12-ドデカンテトラカルボン酸、1,2,5,6-ヘキサンテトラカルボン酸、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,9,10-デカンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、テトラヒドロフランテトラカルボン酸又はシクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸などのシクロペンタンテトラカルボン酸がある。
【0038】
少なくとも二座の有機化合物としては、例として上記したテトラカルボン酸の1つそれ自体であることがさらにより好ましい。
【0039】
したがって、好適な実施形態では、前記少なくとも1つの、少なくとも二座の有機 化合物は、ジカルボン酸、トリカルボン酸若しくはテトラカルボン酸から誘導されるか、又はそのような酸である。
【0040】
少なくとも一置換、芳香族ジカルボン酸、トリカルボン酸又はテトラカルボン酸であって、1、2、3、4つ又はそれ以上の環を有し、環の各々が少なくとも1つのヘテロ原子を含むことができ、2つ以上の環が同一の又は異なるヘテロ原子を含むことができる、そのような酸を、必要に応じて、使用することも好ましい。例えば、一環式ジカルボン酸、一環式トリカルボン酸、一環式テトラカルボン酸、二環式ジカルボン酸、二環式トリカルボン酸、二環式テトラカルボン酸、三環式ジカルボン酸、三環式トリカルボン酸、三環式テトラカルボン酸、四環式ジカルボン酸、四環式トリカルボン酸及び/又は四環式テトラカルボン酸が好ましい。好適なヘテロ原子は、例えば、N、O、S、B、Pであり、好ましいヘテロ原子はN、S及び/又はOである。上記に関し、有用な置換基としては、とりわけ、-OH、ニトロ基、アミノ基又はアルキル若しくはアルコキシ基を挙げることができる。
【0041】
本発明において、用語「誘導される(た)」とは、前記ジカルボン酸、トリカルボン酸又はテトラカルボン酸が、前記構造体中で、部分的に脱プロトン化した形態又は完全に脱プロトン化した形態で存在し得ることを意味する。さらに、前記ジカルボン酸、トリカルボン酸又はテトラカルボン酸は、1つの置換基を、又は、相互に独立した複数の置換基を含むことができる。このような置換基の具体例としては、-OH、-NH2、-OCH3、-CH3、-NH(CH3)、-N(CH3)2、-CN及びハロゲン化物がある。さらに、「誘導される(た)」という用語は、本発明において、ジカルボン酸、トリカルボン酸又はテトラカルボン酸がまた、相当する硫黄類似体の形態としても存在し得ることを意味する。硫黄類似体は、1つ又は複数のカルボン酸基の代わりに使用できる官能基-C(=O)SHとその互変異性体及びC(=S)SHである。さらに、「誘導される(た)」という用語は、本発明に関し、1つ又は複数のカルボン酸部分をスルホン酸基(-SO3H)で置換することができることを意味する。さらに、2、3又は4個のカルボン酸官能基に加えて、スルホン酸基が存在することも同様に可能である。
【0042】
カルボン酸官能基を介して配位結合が形成される、少なくとも二座の化合物として好適なモノカルボン酸は、特にMg-及びLi-MOFの形態のギ酸塩(ホルメート)及び混合ギ酸塩(ホルメート)/酢酸塩(アセテート)である(WO2009/115513A1及びWO2010/012715A1)。
【0043】
別の好適な実施形態では、前記少なくとも1つの少なくとも二座の有機化合物は、ピロール、アルファ-ピリドン及びガンマ-ピリドンからなる群から選択される少なくとも1つの複素環から誘導される単環式、二環式又は多環式環系である。これら3種の複素環は、すべて、少なくとも1個の極限構造中に、分裂し得る水素原子を持つ環窒素(ring nitrogen)を有する。したがって、ピロール、アルファ-ピリドン又はガンマ-ピリドンを脱プロトン化することが可能である。したがって、負電荷が形成し、これにより、少なくとも1つの金属イオンの正電荷と少なくとも部分的に平衡させることができる。
【0044】
さらに、これに関連して、「誘導する(derive)」という用語は、本発明では、単環式、二環式又は多環式の環系がピロール、アルファ-ピリドン又はガンマ-ピリドンに相当する少なくとも1つの副構造(substructure)を有していることを意味する。さらに、2つ又は3つすべての複素環は、環系内の副構造として存在することも可能である。
【0045】
本発明について、用語「誘導する(derive)」とは、また、上記3種の複素環が中性形態ではなく、適切な場合、アニオン、又はカチオンとしても存在し得ることを意味する。
【0046】
さらに、環系の副構造を表す複素環の少なくとも1つは、反応中に脱プロトン化され得ることに留意されたい。
【0047】
さらに、本発明において、「誘導する(derive)」という用語は、上記3つの複素環のうちの少なくとも1つの副構造が置換基を有することができ、1つ又は複数の環炭素をヘテロ原子で置き換えることができることを意味する。
【0048】
もちろん、前記環系は、また、前記複素環ピロール、アルファ-ピリドン又はガンマ-ピリドンそれ自体のうちの1つであることができ、あるいは、前記環系は同様に、専ら、ピロール、アルファ-ピリドン又はガンマ-ピリドンからなる群から選択される複数の副構造から構成され得るものである。なお、この場合も、上述したように修飾することが可能である。
【0049】
最後に、少なくとも1つの極限構造において当該窒素に結合している水素ではない少なくとも1つの水素が、環系の残りの部分に各複素環を結合させる結合(手)によって置き換えられることに留意されたい。
【0050】
単環式環系が存在する場合、これはピロール又はアルファ-ピリドン又はガンマ-ピリドンから誘導される。
【0051】
ただし、該環系は二環式環系でもあり得る。この場合は、例えば、共有結合的単結合を介して又は基Rを介して互いに結合した2個の環が環系中に存在する。ここでは、1個の環は、ピロール、アルファ-ピリドン又はガンマ-ピリドンから誘導したものであることが必要である。
【0052】
Rは、-O-、-NH-、-S-、-N=N-、又は、1~4個の炭素原子を有し、-O-、-NH-、-S-及び-N=N-からなる群から独立して選択される1つ以上の原子又は官能基によって中断されていてもよい脂肪族の分岐又は非分岐の、飽和又は不飽和炭化水素であることができる。
【0053】
さらに、前記二環式環系は縮合環系であることができる。
【0054】
例としては、特に、ピロール、アルファ-ピリドン及びガンマ-ピリドンから誘導されるベンゾ-縮合誘導体がある。
【0055】
さらに、二環式環系は、架橋環系であることができる。
【0056】
該環系は、同様に、例えば、3個、4個又はそれ以上の環を有する多環式環系であることができる。ここでは、これらの環は、共有結合的単結合及び/又は基Rを介して結合することができ、及び/又は縮合することができ、及び/又は架橋環系として存在することができる。
【0057】
該環系には少なくとも2つの環窒素がある。ここで、2つの環窒素のうちの少なくとも1つは、ピロール、アルファ-ピリドン又はガンマ-ピリドンから誘導される環に存在する窒素である。さらに、少なくとも1つのさらなる環窒素が存在する必要がある。環系が2つ以上の環を有するものである場合、少なくとも第2の環窒素はまた、ピロール、アルファ-ピリドン又はガンマ-ピリドンから誘導される環に存在することができ、又は、少なくとも1つのさらなる環がこれら3つの複素環の1つから誘導されない場合、この環に位置してもよい。
【0058】
上記少なくとも2つの環窒素は、当該環系の1つの環に存在することが好ましい。
【0059】
この場合、該環はピラゾール、イミダゾール、ピリダジン-2-オン又はピリミジン-2-オン又はピリミジン-4-オンから誘導される。イミダゾールが優先される。
【0060】
2つの環窒素に加えて、さらに環窒素が存在することができる。例えば、環系は3つ、4つ、5つ又はそれ以上の環窒素を有することができる。
【0061】
3つ以上の環窒素が存在する場合、全ての環窒素は、環系の1つの環に存在することができ、又は環系の全ての環までの複数の環上に分布することができる。
【0062】
例えば、3つの環窒素が存在する場合、これらの環窒素はまた、ピロール、アルファ-ピリドン又はガンマ-ピリドンから誘導される環に存在することが好ましい。結果として生じる環の副構造は、また、例えば、1,2,3-トリアゾール又は1,2,4-トリアゾールなどのトリアゾールから誘導することができる。
【0063】
さらに、環系は環内にさらにヘテロ原子を有することもできる。これらのヘテロ原子は、例えば、酸素又は硫黄であることができる。ただし、存在している窒素の他に、それ以上のヘテロ原子が存在しないことが優先される。
【0064】
前記環系が2つ以上の環を有する場合、この環は、飽和又は不飽和であることができる。少なくとも1つのさらなる環としては、少なくとも部分的に共役した二重結合系を有するか、又は性質的に芳香族であることが好ましい。
【0065】
環系は非置換であることができる。
【0066】
また、環系は、1つ又は複数の置換基を有することもできる。複数の置換基が存在する場合、これら置換基は同一であっても異なっていてもよい。置換イミダゾールが好ましい。
【0067】
環系に結合する置換基は、ハロゲン、C1~6-アルキル、フェニル、NH2、NH(C1~6-アルキル)、N(C1~6-アルキル)2、OH、Oフェニル又はOC1~6-アルキルであることができる。
【0068】
環系の上記の置換基の少なくとも1つがC1~6-アルキル又はフェニルである場合、これらは同様に非置換であるか、又は1つ又は複数の置換基を有することができる。複数の置換基が存在する場合、ここでは、それら置換基が同一であるか又は異なることも可能である。これら置換基は、ハロゲン、NH2、NH(C1~6-アルキル)、N(C1~6-アルキル)、N(C1~6-アルキル)2、OH、Oフェニル及びOC1~6-アルキルからなる群から選択される。
【0069】
基C1~6-アルキルが複数回出現する場合、これらのアルキル基は同一又は異なることができる。
【0070】
本発明においては、アルファ-ピリドン及びガンマ-ピリドンのヒドロキシ基又はケト基は、少なくとも1つの極限構造について、水素に結合した環窒素を得るために必然的に当該環に存在するので、置換基としては数えられない。
【0071】
環系に結合する置換基は、さらなる置換基を有さないことが好ましい。
【0072】
環系に結合する好適な置換基は、C1~6-アルキル、フェニル、NH2及びOHである。C1~6-アルキル及びNH2がより好適である。特に、C1~6-アルキルが優先される。
【0073】
さらに好適な実施形態では、環系としては、以下からなる群から選択される。
【0074】
【0075】
さらに好適な環系は、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、2-ヒドロキシピリミジン又は4-ヒドロキシピリミジンであり、特に格別好ましくは、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、ベンズイミダゾール、1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、2-ヒドロキシピリミジン及び4-ヒドロキシピリミジン並びにそれらの脱プロトン化形態からなる群から選択される。
【0076】
好適な実施形態において、前記少なくとも1つの少なくとも二座の有機化合物は、ジ-、トリ-若しくはテトラカルボン酸、又はピロール、アルファ-ピリドン及びガンマ-ピリドンからなる群から選択される少なくとも1つの複素環から誘導される、単環式、二環式若しくは多環式の環系から誘導される。
【0077】
特に好適な実施形態では、前記少なくとも1つの少なくとも二座の有機化合物は、ジ-若しくはトリカルボン酸、又は置換若しくは非置換のイミダゾールである。
【0078】
少なくとも二座の有機化合物として、2-メチルイミダゾールなどのイミダゾール、アセチレンジカルボン酸(ADC)、カンファージカルボン酸、フマル酸、コハク酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸(BDC)、アミノテレフタル酸などのベンゼンジカルボン酸、トリエチレンジアミン(TEDA)、ナフタレンジカルボン酸(NDC)、4,4’-ビフェニルジカルボン酸(BPDC)等のビフェニルジカルボン酸、2,5-ピラジンジカルボン酸などのピラジンジカルボン酸、2,2’-ビピリジンジカルボン酸(例えば、2,2’-ビピリジン-5,5’-ジカルボン酸)などのビピリジンジカルボン酸、1,2,3-、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸又は1,3,5-ベンゼントリカルボン酸(BTC)などのベンゼントリカルボン酸、ベンゼンテトラカルボン酸、アダマンタンテトラカルボン酸(ATC)、アダマンタンジベンゾエート(ADB)、ベンゼントリベンゾエート(BTB)、メタンテトラベンゾエート(MTB)、アダマンタンテトラベンゾエート又は2,5-ジヒドロキシテレフタル酸(DHBDC)などのジヒドロキシテレフタル酸を使用することが特に好ましい。
【0079】
とりわけ、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸、アミノBDC、TEDA、フマル酸、ビフェニルジカルボキシレート、1,5-及び2,6-ナフタレンジカルボン酸、tert-ブチルイソフタル酸 、ジヒドロキシ安息香酸が、非常に特に優先する。
【0080】
特に、2-メチルイミダゾール、テレフタル酸、2,6-及び1,5-ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、フマル酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、トリメリット酸、グルタル酸、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸及び4,5-イミダゾールジカルボン酸、並びにそれらから誘導された酸が優先する。また、少なくとも二座の有機化合物としてギ酸塩(ホルメート)が好適である。
【0081】
フマル酸、テレフタル酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸及び2-メチルイミダゾールが非常に特に優先する。
【0082】
これらの少なくとも二座有機化合物に加えて、金属-有機構造体は、ジカルボン酸、トリカルボン酸又はテトラカルボン酸から、又は、(ピロール、アルファ-ピリドン及びガンマ-ピリドンからなる群から選択される少なくとも1つの複素環から誘導される)単環式、二環式又は多環式の環系から誘導されない、1つ又は複数の単座配位子及び/又は1つ又は複数の少なくとも二座の配位子をさらに含むことができる。
【0083】
金属-有機構造体の細孔サイズ(寸法)は、適切な任意の単座配位子及び/又は少なくとも二座の有機化合物を選択することによって制御することができる。一般に、有機化合物が大きくなるほど、細孔サイズが大きくなる。細孔サイズは、結晶質(crystalline material)に基づいて、好ましくは0.2nm~30nm、特に好ましくは0.3nm~3nmの範囲である。
【0084】
金属-有機構造体の具体例を、WO2009/09277の表(11~23頁)に見ることができる。それには、MOFの指定の他、当該金属及び少なくとも二座の配位子、溶媒、及び格子パラメータ(角度アルファ、ベータ、ガンマ、及び寸法A、B、C(Å))が示されている。後者の格子パラメータはX線回折によって測定されたものである。
【0085】
さらなる金属-有機構造体は、MOF-2~4、MOF-9、MOF-31~36、MOF-39、MOF-69~80、MOF103~106、MOF-122、MOF-125、MOF-150、MOF-177、MOF-178、MOF-235、MOF-236、MOF-500、MOF-501、MOF-502、MOF-505、IRMOF-1、IRMOF-61、IRMOP-13、IRMOP-51、MIL-17、MIL-45、MIL-47、MIL-53、MIL-59、MIL-60、MIL-61、MIL63、MIL-68、MIL-79、MIL-80、MIL-83、MIL-85、CPL-1~2、SZL-1であり、これらは前記文献に記載されている。
【0086】
好適な金属-有機構造体は、MIL-53、Zn-tBu-イソフタル酸、Al-テレフタレート、MOF-5、IRMOF-8、Cu-1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、Al-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、Al-アミノテレフタレート、Al-1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、Al-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、Mg-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、Al-フマレート、Zn-2-メチルイミダゾレート、Zn-2-アミノイミダゾレート、MOF-177、MOF-74、MOF-205、UiO66、MOF801、MOF808、Zn-ジヒドロキシテレフタレート、Mn-テレフタレート、Mg-ホルメート、Fe-1,3,5-ベンゼントリカルボキシレートである。
【0087】
より好適な金属-有機構造体は、Al-テレフタレート、Al-フマレート、Al-1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、Mg-NDC、Mg-ホルメート、MOF-74、MOF-5、MOF-177、MOF-205、IRMOF-8、Cu-1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート及びZn-2-メチルイミダゾレートである。
【0088】
Al-テレフタレート、MOF-177、MOF-205、IRMOF-8、Cu-1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、Al-フマレート及びZn-2-メチルイミダゾレートがさらに好適である。
【0089】
バソライト(Basolite(登録商標))C300又はHKUST-1とも称されるCu-1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、ZIF-8又はバソライト(Basolite(登録商標))Z1200とも称されるZn-2-メチルイミダゾレート、バソライト(Basolite(登録商標))A520とも称されるAl-フマレート、MIL-53又はバソライト(Basolite(登録商標))A100とも称されるAl-テレフタレート、及びM050とも称されるMg-ホルメートがさらに好適であり、また、Cu-1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、Al-フマレート及びZn-2-メチルイミダゾレート及びMg-ホルメート(M050)がより好適であり、Al-フマレートが格別好適である。
【0090】
調整方法
本発明は、上述した少なくとも1つの金属-有機構造体及び少なくとも1つの懸濁媒体SM1を含む未処理の懸濁液SRを調整するための方法に関する。この方法では、未処理の懸濁液SRの調整を、少なくとも1つの膜濾過法によって行い、少なくとも1つの金属-有機構造体及び少なくとも1つの懸濁媒体SM2を含む生成物懸濁液SPを得るものである。
【0091】
未処理の原料懸濁液SR
本発明について「懸濁液」という用語は、少なくとも1つの金属-有機構造体及び少なくとも1つの懸濁媒体を含む固体粒子の不均一な混合物に関する。ここで、該少なくとも1つの懸濁媒体は少なくとも1つの液体である。
【0092】
「未処理の懸濁液SR」という用語は、少なくとも1つの金属-有機構造体の製造方法から直接得られる懸濁液をいう。
【0093】
本発明に係る未処理の懸濁液SRは、該少なくとも1つの金属-有機構造体の製造方法によって得られるものであることが好ましい。該製造方法は、
―少なくとも1つの金属塩を少なくとも1つの少なくとも二座の有機化合物と、反応媒体中で、好ましくは少なくとも1つの追加の化合物ACの存在下で、反応させる工程であって、該反応媒体は該少なくとも1つの懸濁媒体SM1に相当するものである、工程
を備えるものである。
【0094】
当業者は、反応温度、反応媒体、少なくとも1つの塩基又は少なくとも1つの酸などの適切な追加の成分、テンプレート成分、及び適切な反応圧力などの適切な反応条件を選択することができる。
【0095】
好適な実施形態では、少なくとも1つの金属-有機構造体の製造は、少なくとも1つの追加の化合物ACの存在下で実施する。
【0096】
本発明による少なくとも1つの追加の化合物ACは、少なくとも1つのテンプレート化合物、少なくとも1つの塩基又は少なくとも1つの酸、好ましくは少なくとも1つの塩基である。
【0097】
少なくとも1つのMOFを製造するための上記の方法による反応媒体は、典型的には、少なくとも1つの液体を含み、未処理の懸濁液SRに存在する懸濁媒体SM1に相当する。
【0098】
「生成物(product)懸濁液SP」という用語は、未処理の懸濁液SRを調整する本方法を実施した後に得られる懸濁液を指す。当該方法の終わりは、懸濁媒体SM2中の少なくとも1つの金属-有機構造体の所望の濃度及び/又は純度が得られる時点と定義される。
【0099】
「懸濁媒体」という用語は、少なくとも1つの金属-有機構造体が存在する液相をいう。懸濁媒体SM1は、未処理の懸濁液SRに含まれる液相を指し、一方、懸濁媒体SM2は、生成物懸濁液SPに含まれる液相を指す。
【0100】
本発明の方法の好適な実施形態では、上記少なくとも1つの金属-有機構造体は、特定の懸濁媒体に不溶性である。好ましくは、10g未満の金属-有機構造体が1リットルの懸濁媒体に可溶であり、より好ましくは、1g/l未満であり、特に好ましくは、0.1g/L未満である(20℃)。懸濁媒体が複数の金属-有機構造体を含む場合には、1Lの懸濁媒体に可溶な金属-有機構造体の総量は、好ましくは10g未満、より好ましくは1g未満、特に好ましくは0.1g未満である。
【0101】
懸濁媒体は、1つ又は複数の液体、例えば2、3、4、又は5つの液体を含む。懸濁媒体が複数の液体を含む場合、個々の液体は互いに混和性であることが好ましい。複数の液体のそのような混合物の例としては、水と1つ又は複数のアルコールとの混合物(アルコールは、メタノール、エタノール、i-プロパノール、n-プロパノール、及びn-ブタノール、イソ-ブタノール及びsec-ブタノールからなる群から選択される)、又は、上記で定義したアルコールから選択される2つ以上のアルコールの混合物、例えば、メタノールとエタノールの混合物がある。
【0102】
本発明によれば、懸濁媒体SM1及び懸濁媒体SM2は、水、メタノール、エタノール、i-プロパノール、i-ブタノール、sec-ブタノール、及びそれらの2つ以上の混合物から独立して選択される。
【0103】
本発明の一実施形態では、懸濁媒体SM1は懸濁媒体SM2とは異なる。
【0104】
好適な実施形態では、懸濁媒体SM1及び懸濁媒体SM2は同じであり、特に好適な実施形態では、懸濁媒体SM1及び懸濁媒体SM2は水である。
【0105】
懸濁媒体SM1及びSM2は、互いに独立して、個々の懸濁媒体の総量に基づいて、少なくとも80質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、より好ましくは少なくとも95質量%、特に好ましくは少なくとも98質量%の水を含むことが好ましい。本発明の特に好適な実施形態では、懸濁媒体SM1及びSM2は水からなる。
【0106】
未処理の懸濁液SRは、幾つかのさらなる成分を含んでいてもよい。典型的なさらなる成分は、例えば、未反応の出発物質である。すなわち、未反応の金属塩、有機化合物、又は必要に応じて用いられる、追加の化合物AC;出発物質に含まれる不純物、及び塩などの副産物である。
【0107】
本発明の好適な一実施形態では、生懸濁液SRは、このようなさらなる成分を含まない。これは、少なくとも1つの金属塩と少なくとも1つの少なくとも二座の有機化合物との反応の副生成物として塩が生成されない場合に特に当てはまる。一例としては、(一般に、であるが)、金属水酸化物とジカルボン酸との反応があり、この場合にはMOFが脱水下で形成される。
【0108】
本発明の別の好適な実施形態では、未処理の懸濁液SRはMOF-製造の副生成物として形成される少なくとも1つの塩を含む。代表的な一方法は、少なくとも1つの少なくとも二座の有機化合物、例えばフマル酸と少なくとも1つの金属塩、例えば硫酸アルミニウムとの反応であり、少なくとも1つの塩基、例えば水酸化ナトリウムを添加して、懸濁媒体SM1に相当する少なくとも1つの反応媒体、例えば水中で行う反応を指す。こうして生じる未処理の懸濁液SRは、少なくともAl-フマレート及び硫酸ナトリウムを含む。
【0109】
特に好適な実施形態では、未処理の懸濁液SRは少なくとも1つの塩を含む。この塩は懸濁媒体SM1に可溶であることが好ましい。これに関連して、可溶性とは、少なくとも33g、好ましくは少なくとも50g、特に好ましくは少なくとも100gの塩が、20℃で1Lの懸濁媒体SM1に可溶性であることを意味する。
【0110】
本発明について「調整(する)(conditioning)」という用語は、本発明による未処理の懸濁液SRの精製及び/又は濃縮のための方法に関し、少なくとも1つの膜濾過法を含む。
【0111】
本発明について「膜濾過法」は、精密濾過又は限外濾過、好ましくは精密濾過に関する。膜濾過法の一般的な原理は、当業者にはよく知られているところである。しかしながら、以下の段落では、本方法をより詳細に説明するために、さらに定義について述べる。
【0112】
本発明について用語「精製」は、未処理の懸濁液SRに任意で存在する、さらなる成分を除去すること、好ましくは、上述の方法で形成された少なくとも1つの塩を除去することを指す。本調整方法は、1つ又は複数の精製工程を具備することができ、少なくとも1つの精製工程を膜濾過法として実施する。また、全ての精製工程を膜濾過法として実施することが好ましい。
【0113】
したがって、「精製工程」という用語は、膜濾過法であって、その後には、MOF含有懸濁液が、膜濾過の前よりも減少した量の、任意のさらなる成分、好ましくは少なくとも1つの塩を含むこととなる膜濾過法を指す。
【0114】
本発明の典型的な実施形態では、未処理の懸濁液SRは、未処理の懸濁液SRの総質量に基づいて1~25質量%、好ましくは2~20質量%、特に好ましくは5~10質量%の少なくとも1つの塩を含む。好適な実施形態では、生成物懸濁液SPは、2質量%未満、好ましくは1.0質量%未満、より好ましくは0.3質量%未満、特に好ましくは0.2質量%未満の少なくとも1つの塩を含む(ここで、記載されているすべての量は、生成物懸濁液SPの総質量に基づく)。
【0115】
本発明に係る「濃縮(する)」という用語は、MOF含有懸濁液中の少なくとも1つの金属-有機構造体の濃度を増加させることを意味する。本調整方法は、1つ又は複数の濃縮工程を備えるものであって、少なくとも1つの濃縮工程を膜濾過法として実施する。なお、全ての濃縮工程を膜濾過法として実施することが好ましい。したがって、「濃縮工程」という用語は、好ましくは、膜濾過法であって、その後には、MOF含有懸濁液が当該膜濾過の前よりも高濃度の少なくとも1つの金属-有機構造体を含むこととなる膜濾過法を指す。
【0116】
典型的には、本発明に係る未処理の懸濁液SRは、未処理の懸濁液SRの総質量に基づいて1~25質量%、好ましくは5~20質量%、特に好ましくは5~10質量%の少なくとも1つのMOFを含む。
【0117】
好適な実施形態では、少なくとも1つの膜濾過は、少なくとも1つの精製工程、又は少なくとも1つの濃縮工程、又は少なくとも1つの精製工程及び少なくとも1つの濃縮工程を含む。
【0118】
未処理の懸濁液SRがMOF製造の副産物としての塩を含まないか、又は副産物がMOFのさらなる用途に不利な影響を及ぼさない場合には、精製工程なしで調整を実施することができる(例えば、Basolite M050-ギ酸マグネシウムの調製)。
【0119】
したがって、本発明の一実施形態では、少なくとも1つの膜濾過法としては、少なくとも1つの濃縮工程のみを備え、精製工程を含まない。
【0120】
少なくとも1つのMOFの製造方法が、MOFの最終濃度がすでにさらなる用途に適切な範囲にある未処理の懸濁液SRをもたらす場合には、濃縮工程なしで調整を実施することができる。
【0121】
したがって、本発明の一実施形態では、少なくとも1つの膜濾過法としては、少なくとも1つの精製工程のみを備え、濃縮工程を含まない。
【0122】
好適な実施形態では、少なくとも1つの膜濾過法としては、少なくとも1つの精製工程及び少なくとも1つの濃縮工程を備える。
【0123】
上記のように、本発明について「膜濾過法」という用語は、精密濾過又は限外濾過を指す。膜濾過法は、精密濾過を指すことが好ましく、より好ましくはクロスフロー濾過としての精密濾過を指す。
【0124】
クロスフロー濾過は、流体を膜に対して接線方向に通過させるものである。処理済み液体を含む供給流の一部はフィルターの下に集められ、一方、懸濁媒体の一部は未処理で膜を通過する。クロスフロー濾過は、プロセスではなく単位操作であると理解されている。精密濾過プロセスは、懸濁粒子、すなわちMOF粒子、及び保持液としての懸濁媒体、及び溶解溶質、例えば少なくとも1つの塩、さらに、透過液としての懸濁媒体で圧力駆動される。水圧を使用すると、液体流の流量(流束)が増加することで分離プロセスが加速する。また、保持液及び生成物流内の化学種の化学組成には影響を与えない。
【0125】
好適な実施形態では、少なくとも1つの膜濾過法をダイアフィルトレーションとして実施する。したがって、少なくとも1つの精製工程及び/又は少なくとも1つの濃縮工程をダイアフィルトレーションとして実施することが好ましい。
【0126】
本発明について、用語「ダイアフィルトレーション(diafiltration)」とは、ダイアフィルトレーション媒体を膜濾過の前又はその間に保持液に添加する膜濾過法を指す。ダイアフィルトレーション媒体の添加は、一般に、金属-有機構造体の濃度を変更しない。ダイアフィルトレーション媒体は、懸濁媒体SM1と同じか異なる液相を含む。
【0127】
ダイアフィルトレーション媒体が懸濁媒体SM1とは異なる場合には、未処理の懸濁液SRの懸濁媒体SM1は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、異なる種類の懸濁媒体で、すなわちダイアフィルトレーション媒体で置き換えられることができる。したがって、懸濁媒体SM1が部分的にインフィルトレーション(infiltration)媒体で置き換えられる場合には、懸濁媒体SM2は懸濁媒体SM1とインフィルトレーション媒体との混合物に相当し、また、懸濁媒体SM1が完全にダイアフィルトレーション媒体で置き換えられる好適な場合には、懸濁媒体SM2はダイアフィルトレーション媒体に相当する。
【0128】
ダイアフィルトレーション媒体は、懸濁媒体SM1と相境界なしに混和性であることが好ましい。ダイアフィルトレーション媒体は、特に好ましくは、任意の比率で、先に存在していた懸濁媒体と相境界なしで混和性であることが特に好ましい。ここで、相境界なしで混和性であるということは、それぞれの場合の一般的な圧力及び温度条件下で、また、使用した混合比で、例えばエマルションの形で相境界が形成しないことを意味する。
【0129】
好適な実施形態では、ダイアフィルトレーション媒体としては、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソ-プロパノール、n-ブタノール、イソ-ブタノール又はsec-ブタノール、又はそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択されるが、水であることが特に好ましい。
【0130】
本発明の特に好適な実施形態では、ダイアフィルトレーション媒体は未処理の懸濁液SRの懸濁媒体SM1と同一である。前記実施形態では、懸濁媒体SM1及びSM2は同一である。なお、懸濁媒体SM1及びSM2、及びダイアフィルトレーション媒体は水であることが特に好ましい。
【0131】
上述したように、膜濾過法としては、用語「濃縮工程」が、濾過の後には、金属-有機構造体が当該濾過の前より小さい体積の懸濁溶媒に存在することとなる膜濾過法を指すところの、少なくとも1つの濃縮工程を含むことが好ましい。例えば、懸濁した金属-有機構造体の濃縮は、膜を介して懸濁媒体SM1の一部を除去することによって行うことができる。この場合、懸濁した金属-有機構造体がより少量の懸濁媒体に残る。そうする代わりに、より大量の未処理の懸濁液SRを供給物へ加えることにより、濃度を変更することができる。あるいは、供給流なしで膜濾過を実施することにより、濃度を変更することもできる。
【0132】
「保持液(retentate)」という用語は膜を通過しない流れを指し、一方、「透過液(permeate)」という用語は膜を通過する流れを指す。結果として生じる、膜の単位面積当たりの質量流量は、透過流束(permeate flux)と呼ばれ、一般に単位kg/m2/hで示される。保持液及び透過液の定義によれば、保持液側は、膜の、未処理の懸濁液SRが存在する方の側であり、透過液側は、それに相当して、膜の、少なくとも1つの金属-有機構造体を本質的に含まない液相が存在する方の側である。
【0133】
懸濁媒体SM1の置き換えの進行状況又は程度は置換係数で示される。置換係数は、除去された透過液の量又は導入されたダイアフィルトレーション媒体の量(ダイアフィルトレーションの場合、分離された透過液の量と導入されたダイアフィルトレーション媒体の量は同じである)を保持液の量で割ったものである。ここで、これらの量は、一貫して体積によって、又は一貫して質量によって決定することができる。新たなダイアフィルトレーション媒体は液体又は固体の形態で導入することができる。固体の形態の場合、該媒体は、例えば、結晶状態又は凍結状態で存在することができ、本方法を実施している間に液化することができ又は液化させることができる。
【0134】
本発明の方法を実施した後、すなわち最後の膜濾過の後、少なくとも1つの金属-有機構造体が、上記で定義した懸濁媒体SM2中に、好ましくは水中に存在する。
【0135】
本発明の方法は、好ましくは、少なくとも1つの濃縮工程、特に好ましくは2つの濃縮工程を備える。最初の濃縮工程は、最初のダイアフィルトレーション工程の前に実施するのが通常である。ここでは、金属-有機構造体は反応媒体中で濃縮する。その結果として、濃縮していない未処理の懸濁液を直接ダイアフィルトレーションする場合よりも、後続のダイアフィルトレーション工程で必要となる消耗のために、消費されるダイアフィルトレーション媒体が少なくなり、又は生成する透過液が少なくなる。第2の濃縮工程は、最後のダイアフィルトレーション工程の後に実施するのが一般的である。ここでは、最終濃縮にあっては、適切な場合、1つ又は複数の適切な助剤を用いて行う。
【0136】
本プロセス中、ダイアフィルトレーションと濃縮の工程は、適切な数と順序で連続して組み立てることができる。
【0137】
ダイアフィルトレーション工程及び濃縮工程の最適な数は、不純物の種類及び量に応じて、それぞれのMOFについて当業者が決定することができる。
【0138】
一般に、各濾過で形成された保持液は次の濾過に移される。それぞれ個々の濾過から得られる本質的にMOFを含まない透過液は、別々に、又は収集した透過液として処理して、例えば、塩、懸濁媒体、ダイアフィルトレーション媒体及び/又は助剤を回収することができる。個々の透過液又は収集した透過液から回収した材料は、適切な時点で、例えば、懸濁媒体中のMOFの濃度を増加させるため、膜濾過ユニットにフィードバックすることができる。あるいは、そのような材料は、別の方法で利用することができる。透過液、それぞれ収集した透過液は、幾つかの用途で、好ましくは以下により詳細に記載するような基材を被覆するための方法に直接使用することができる。
【0139】
好適な実施形態では、生成物懸濁液SPは、生成物懸濁液SPの総量に基づいて、10~30質量%、好ましくは15~25質量%、特に18~22質量%の少なくとも1つの金属-有機構造体を含む。
【0140】
膜濾過プロセスについては、調整対象のMOFの粒子サイズに応じて、精密濾過(クロスフロー濾過)又は限外濾過として実施することが有利である。
【0141】
未処理の懸濁液は、反応器に一定の方法で少なくとも一部の時間連結できる膜濾過ユニットで濾過する。その膜濾過ユニットは、1つの濾過ユニット部材のみ又は複数の濾過ユニット部材から構成することができるが、少なくとも1つの膜フィルターを備えている。膜濾過ユニットは、通常、1つ以上の反応器から調整済みMOF懸濁液の取り出し箇所まで延びている。
【0142】
選択する濾過ユニット部材の数量及び型式は、当業者によって各々のニーズに適合させることができる。このようにして、複雑な構造を有する膜濾過ユニットを得ることが可能である。簡素で、したがって安価な膜濾過ユニットであることが優先される。本発明にあっては、濾過ユニット部材は、各々、膜濾過ユニットにおいて機能を果たす、膜濾過ユニットの取り外し可能な部分である。個々の濾過ユニット部材には、例えば、パイプ及び/又はホース接続部、シール材、圧力及び温度計及び調節器、ポンプ、バルブ、フィルター、並びに供給ライン及び排出ラインがある。適切な膜濾過ユニットは、例として挙げた部材の1つ、複数、又は全てを備えることができ、各部材の1つ又は複数が適切な態様及び状態で存在する。膜濾過ユニットは、また、同時に又は交互に稼働可能な平行ライン、フィルター及び濾過経路を含むことができる。
【0143】
使用するメンブレンフィルターは、濾過の各条件下で安定なフィルターハウジングを備えている。そのような条件には、例えば、圧力、温度、又は触媒懸濁液の種類及び組成がある。フィルターハウジングは、1つ又は複数の膜を含むことができる。フィルターハウジングとは、適切な方向に1つ又は複数の膜を備える容器であり、少なくとも一部の時間、1つ又は複数の他の濾過ユニット部材に一定の方法で連結することができる。膜はフィルターハウジングに恒久的に固定することも、取り外し可能にすることもできる。また、膜の形状は、平坦状、ディスク状、管状、毛細管状又はロール状であることができる。必要な面積に応じて、フィルターは、並列又は直列に配置された複数の膜を含むことができる。好適な実施形態では、エラストマーシール材を用いて金属フィルターハウジングに挿入されることが好ましいセラミック膜、又は、フィルターハウジングに固定されることが好ましい金属膜が使用される。セラミック膜は管状形状又はマルチチャネル形状を有することが好ましく、金属膜は管状形状を有することが好ましい。
【0144】
膜は、一般に、1つの分離層のみで構成され(均質な、自立し得る膜)、又は分離層と少なくとも1つの支持構造体とで構成される(多層複合膜)。機械的に安定でない薄い分離層を、単層又は多層の多孔質支持構造体上に使用すると、一般に、透過流束が増加し、膜の機械的強度が確保される。この支持構造体は、分離層と同じ材料から、又は少なくとも1つの異なる材料から構成することができる。支持構造体は、一般に、分離層よりも粗い細孔を持っている。
【0145】
使用可能な分離層と支持構造体の材料の組合せは、例えば、金属-金属、セラミック-金属、セラミック-セラミック、セラミック-炭素、ポリマー-ポリマー、ポリマー-金属、ポリマー-セラミック、ポリマー-金属上のセラミック、カーボン-カーボン、カーボン-メタル、カーボン-セラミックであってもよい。ポリマー、炭素、セラミック、又は金属に基づく均質な自立性の膜も使用することができる。
【0146】
有機分離層及び/又は支持構造体の材料として、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、再生セルロース、シリコーン、ポリイミド、又は同等の機能を持つ材料を使用することができる。
【0147】
無機分離層及び/又は支持構造体の材料の例には、アルファ-Al2O3、ガンマ-Al2O3、ZrO2、TiO2、SiC、混合セラミック材料、ステンレス鋼、ニッケル、金属合金及びカーボンがある。具体例は次のとおりである(MF=精密濾過膜、UF=限外濾過膜)。
【0148】
【0149】
1:管状膜;
2:マルチチャネル部材
3:膜の間に移動膜又は攪拌装置を備えた、ロール状、ポケット状、積層板又は特別なモジュール用の平膜
【0150】
分離層の細孔径は、一般に、主に最小のMOF粒子の各サイズに依存する。分離層の適切な細孔サイズを選択する場合には、濁った流出物に起因するMOF損失を無視することができる。本発明に関連して、濁った流出物という用語は、分離層の細孔サイズを不適切に選択した場合に膜を通過することができ、したがって透過液中に現れるMOF粒子のことをいう。この濁った流出物及び関連する濾過媒体のブロッキングは、固形物を除去するために従来の濾過プロセスを使用する場合に(例えば、フィルタープレス、加圧フィルター、キャンドルフィルター、遠心分離機及びディスクフィルターを使用する場合)、及び、固形物を濃縮するために従来の濾過プロセスを使用する場合に(例えば、セパレーター、遠心分離機及びデカンターを使用する場合)、より広範囲に発生する。
【0151】
分離層の細孔サイズは、最小のMOF粒子のサイズよりも小さいことが有利である。MOF粒子が凝集した形態で存在する場合、好適な細孔サイズは、最小の触媒粒子のサイズではなく、最小の凝集体のサイズに依存する。報告されている分離層の細孔サイズは、一般に、その細孔の90%が示された細孔サイズよりも小さい直径に基づいている。膜の分離層は、膜の最小の細孔を含む膜の層である。膜の細孔サイズ又は分離限界は、当業者に知られている方法によって決定される。
【0152】
MOF粒子のサイズ分布に応じて、使用する膜の分離層は、好ましくは50nm~800nmの範囲、より好ましくは50nm~500nmの範囲、特に好ましくは50nm~200nm範囲の細孔径を有する。
【0153】
膜を選択する際には、分離層の細孔サイズやMOF粒子のサイズ分布だけでなく、懸濁媒体又はダイアフィルトレーション媒体の組成、圧力条件、温度、及び存在する助剤などの濾過条件も考慮する必要がある。適切な膜としては、例として述べたいずれの要因の下でも、その分離特性、すなわちその分離限界を著しく変化させないものであることが有利である。
【0154】
分離限界(単位kD)は、90%の保持率(R)を有する溶解した試験物質の分子量である。ここで、Rは、1から透過液の濃度を引いた値を保持液の濃度で除したものである。
【0155】
分離限界kDと細孔径との相関関係は、当業者に知られている。したがって、たとえば、分子量が1000kDを超える場合は2.0~1.2μmの細孔サイズが使用され、1000kDの場合は0.6μmの細孔サイズが使用され、400kDの場合は0.2μmが使用され、200kDの場合は0.1μmが使用され、100kDの場合は50μmが使用され、20kDの場合は10nmが使用される。
【0156】
本発明の方法において、濾過の条件、例えば圧力、温度又は流速は、必要があれば、反応システムにおける条件とは独立して選択することができる。この独立性により、それぞれの濾過に合わせて条件を最適化することができる。例えば、温度及び/又は圧力を増加又は減少させることができ、流速を最適に選択することができ、懸濁媒体を取り換えることができ、及び/又は保持液及び/又は透過液の特性及び組成を助剤の添加によって最適化することができる。当業者は、それぞれの場合に最適な濾過条件を選択することができる。この問題に関する詳細は、技術文献に記載されている。
【0157】
濾過は様々な圧力で実施することができ、本方法の濾過ごとに個別に選択して最適化することができる。したがって、その圧力は、先行又は後続の濾過の際の圧力と同一又は異なる可能性があり、濾過中であっても、本方法の濾過ごとに変更し又は修正することができる。
【0158】
様々な名前が付けられた様々な圧力が、通常、濾過中フィルター内で優勢になる。透過液圧力(permeate pressure)は膜の透過側の圧力であり、保持液圧力(retentate pressure)は膜の保持側の圧力である。濾過は、1~100バールの範囲、好ましくは1~50バールの範囲の保持圧力で実施することができる膜貫通圧力(transmembrane pressure)は、フィルターへの入口とフィルターからの出口での圧力の保持側の算術平均であり、透過液圧力によって減少する。膜貫通圧力は、同様に、濾過法ごとに最適化することができ、本方法の他の濾過法の膜貫通圧力と同じ又は異なることができる。膜貫通圧力は、例えば、0.1バール以上の範囲、特に0.2~50バールの範囲、好ましくは0.5~25バールの範囲、特に好ましくは1~20バールの範囲であることができる。選択すべき圧力条件は、本質的に、膜の種類、膜の細孔の直径、触媒濃度、膜モジュール内の流体力学的条件、及び全ての濾過ユニット部材の機械的安定性に依存する。膜貫通圧力が高くなると、一般に、透過流束も高くなる。必要な圧力は、ポンプ及び/又は重力によって生じさせることができる。
【0159】
温度にあっては、本発明の方法中に実施する各濾過に応じて独立して選択し及び最適化することができる。一般に、温度が高いほど透過流束が高くなる。結果として、温度は、先行及び/又は後続の濾過工程の温度と同一に又は異なることになる可能性がある。選択する値は、主に、それぞれの場合に一般的な圧力条件下で存在する各材料の溶解度と融点及び沸点に依存する。0~200℃の範囲、有利には10~180℃の範囲、好ましくは20~150℃の範囲、特に好ましくは20~80℃の範囲の温度を選択することが可能である。
【0160】
濾過については、膜上に薄い又は目立たない被覆物層(covering ayer)しか形成しないように、各条件を設定することが好ましい。被覆物層は、例えば、膜上及び/又は膜内に堆積する固体物質を含み、濾過に悪影響を与える可能性がある。また、この物質は、未処理の懸濁液中に存在する、あらゆる固体材料である可能性がある。例えば、かかる物質は、金属-有機構造体を含む可能性がある。平坦又はディスク状の膜形状を有するフィルター及び膜の場合、攪拌及び/又はせん断部材、及び/又は、例えば回転又は振動モジュールによる膜又はフィルターの可動部分もまた、かかる被覆物層を防止するために用いることもできる。さらに、膜表面で、高流速のMOF懸濁液とそれに伴うせん断力を利用することができる。一般に、0.2~20m/sの範囲の流速が選択される。適切な流速は、使用するフィルターと使用する膜によって異なる。
【0161】
ロール形状のフィルター及び膜の場合、0.2~2m/sの範囲の流速で使用することが好ましい。管状形状を有するフィルター及び膜の場合は、1~6m/sの範囲の好ましい流速で使用する。回転式フィルターの場合は、5~20m/sの範囲の流速で使用することが好ましい。場合により異なる複数のフィルターを使用する場合、流速をそれぞれのフィルターに適合させることができる。
【0162】
当業者は、流速を測定及び制御するための利用可能な適切な手段を有している。被覆物層を除去するために、本発明の方法は、また、流れを逆転させてもよく、これは、透過液の圧力を保持液の圧力よりも高くすることによって生じさせることができる(透過液の逆洗)。
【0163】
被覆物層を抑制又は防止するための上記の手段は、個々に、組み合わせて、又は交互に使用することができる。被覆物層は、膜濾過ユニットの各フィルターの中で、同一の手段又は異なる手段によって、又は手段の同一の組合せ又は異なる組合せによって影響変化する可能性がある。
【0164】
本発明の方法の別の好適な実施形態には、1つ以上の適切な助剤を添加することが含まれる。本発明について、助剤という用語は、濾過前又は濾過中に未処理の懸濁液SRに添加するもので、濾過にプラスの影響を与えるのに適した固体、液体又は気体の材料の全てを指す。濾過には、例えば、粘度を下げることによって好影響を与えることができる。そのうえ、助剤又は複数の助剤を使用して、未処理の懸濁液SRを安定化させることができる。ここで、未処理の懸濁液SRの安定化は、MOF粒子の沈降速度などの物理的パラメータ及び/又はpHなどの化学的パラメータに関連する可能性がある。少なくとも1つの助剤を本発明に従って使用することで、例えば、保持液中のMOFの最終濃度を一層高いものとすることが可能となる。
【0165】
本発明の方法は、連続的又は不連続的に実施することができる。不連続運転では、未処理の懸濁液SRを、1つ又は複数のフィルターが組み込まれているポンプ回路の循環容器として機能する容器に入れる。未処理の懸濁液SRをポンプで循環させることができ、透過物を取り除くことができ、適切な場合、助剤又は懸濁媒体などの液体又は固体材料をポンプ回路の適切な箇所で導入することができる。この目的に適した箇所は、例えば、フィルターの上流のライン又は容器、あるいはフィルター自体である。未処理の懸濁液SRは、金属-有機構造体の所望の濃度及び/又は懸濁液媒体の所望の純度が達成されるまで、ポンプを使用して循環する。したがって、例えば、濾過により液体成分を除去することによって、又は同じ又は異なる組成の懸濁媒体の幾つかの成分又は全ての成分を加えることによって、MOF濃度を変更することができる。さらに、例えば、1つ又は複数の助剤を添加することで、MOF懸濁液の化学的又は物理的特性、例えば、pH又は粘度を変化させることによって、質的変化を生じさせることもできる。またさらに、温度又は圧力などのパラメータを変更することができる。これらの変更は、いずれの場合も、単独で又は組み合わせて行うことができる。
【0166】
本方法を連続的に行う場合、反応系から取り出した未処理の懸濁液SRを、一旦膜濾過ユニットの1つ以上のフィルターに通して、又はそれに沿って通過させる。ここで、MOFの濃度又は未処理の懸濁液SRの濃度若しくは特性を変更するため上記で例として言及した全ての手段を、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0167】
要約すると、最後の濾過の後、生成物懸濁液SPとして、好ましくは水性生成物懸濁液SPとして、特に好ましくは本質的にMOF及び水、並びに該当する場合、添加した分散剤又は界面活性剤からなる生成物懸濁液SPとして、膜濾過ユニットから、状態を調整したMOFを取り出すことができる。あらゆる用途で直接使用される。この調整したMOFを、直接、いかなる用途にも、例えば少なくとも1つの金属-有機構造体で基材を被覆する方法に使用することができる。
【0168】
少なくとも1つのMOFを含む未処理の懸濁液を調整する既存の方法と比較して、本発明は、その調整プロセスが少ない量のエネルギーしか必要とせず、少ない量の廃水しか生成しないという、特別な利点を有するものである。ダイアフィルトレーションの構成要素により、膜濾過ユニットから、MOFを所望濃度の所望懸濁媒体に高純度で取り込むことができる。
【0169】
また、MOFを、更なる用途、特にコーティングプロセスで直接使用することができる生成物懸濁液SPの形態で提供できることも有利である。
【0170】
したがって、本発明は、少なくとも1つの金属-有機構造体を含む、活性層で基材の表面の少なくとも一部を被覆するための方法であって、
a)基材の表面の少なくとも一部をコーティング組成物と接触させる工程であって、ここで、該コーティング組成物が、少なくとも1つの金属-有機構造体とを含む、上記で定義した生成物懸濁液と、少なくとも1つのバインダーとを含む、工程
を備える方法を提供する。
【0171】
好適な実施形態では、この方法は、さらに、
b)工程a)で得られた被覆した基材を乾燥させる工程を備える。上記少なくとも1つの金属-有機構造体と生成物懸濁液SPの好適な実施形態は、本発明の調整方法を考慮して上記に記載した好適な実施形態に相当する。
【0172】
少なくとも1つのバインダーは、水系材料又は溶剤系材料であることができる。例えば、少なくとも1つのバインダーは、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、及びポリアルキレンイミン(例えば、ポリエチレンイミン)から選択される。好適な実施形態では、バインダー成分は、水系材料、スチレンアクリルポリマー、例えば、ジョンクリル(Joncryl)3030(BASF SE)である。
【0173】
「基材」という用語は、金属、ポリマー(プラスチックを含む)、紙、ガラス、セラミック、織物、不織布、繊維複合材料、及び前述のいずれかの複合材料(例えば、ポリマーを被覆した金属)から選択される1つ又はそれ以上をいう。基材は、金属又はプラスチック、可撓性ホイル(foil)(例えば、ポリプロピレン、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエステル、フラッシュ紡糸高密度ポリエチレン、成形繊維、アルミニウム、ステンレス鋼、アルミニウム被覆したポリマー、ナイロンポリアミド、プレス板紙、又はその生分解性改良品)、又は可撓性布(例えば、織布及び不織布、綿布、紙、薄い織物、ポリエチレン布、ポリエチレンテレフタレート布、ガラス繊維、炭素繊維)で作られた、剛性の三次元物体(例えば、熱伝達装置の構成部品、ジャー、ボトル、缶、容器、ドラム、トート(tote)又は中間バルク容器、発泡体)であることができる。
【0174】
好適な実施形態にあっては、基材は熱伝達要素である。例えば、基材としては、チラーコンポーネント(chiller component)、ヒートポンプコンポーネント、暖房・換気・空調(HVAC)コンポーネント、パッケージングコンポーネント、臭気除去コンポーネント、ラジエーターコンポーネント、熱伝達デバイスのフィン、又は冷蔵庫コンポーネントであることができる。
【0175】
被覆方法は、プライマー層の有無にかかわらず実施することができる。該方法は、プライマー層を形成し、プライマー層上に活性層を形成することを包含することができる。プライマー層上に活性層を形成する方法としては、プライマー層を活性層で被覆することを包含してもよい。
【0176】
別の好適な実施形態においては、該方法は、基材をプライマー層で被覆することからなる。そのようなプライマー層は、金属-有機構造体をプライマー層上に被覆する前に、基材の表面上に被覆するものである。適切なプライマーについては、例えば、WO2018/036997A1に記載されている。
【0177】
「活性層」という用語は、基材上に存在する、MOFを含む層、言い換えれば、基材上に被覆したMOFフィルムを指す。
【0178】
したがって、好ましい実施形態では、本発明の方法は、下記の工程
a1)基材の表面の少なくとも一部にプライマー層を被覆する工程、
a2)工程a1)で得た基材の表面の少なくとも一部をコーティング組成物と接触させる工程、ここで、コーティング組成物が、少なくとも1つの金属-有機構造体を含む、上記の生成物懸濁液SPと、少なくとも1つのバインダーとを含有する;及び
a3)好ましくは、工程a2)で得た被覆した基材を乾燥させる工程
を備える。
【0179】
プライマー層は、ポリアルキレンイミンなどの適切な材料を含むことができる。ポリアルキレンイミンは、分枝状、直鎖状、又はそれらの組み合わせであることができ、例えば、プライマー層は、分枝状ポリアルキレンイミンを含むことができる。ポリアルキレンイミンは約1~約35meq/gの電荷密度を有することができ、ポリアルキレンイミンの分子量は約20,000ダルトン~約3,000,000ダルトン、又は約500,000ダルトン~約1,000,000ダルトンであることができる。
【0180】
幾つかの例示的態様によれば、ポリアルキレンイミンのアルキレン部分は、エチレンイミン、1,2-プロピレンイミン、1,2-ブチレンイミン、2,3-ブチレンイミン又はそれらの組み合わせであることができる。例えば、ポリアルキレンイミンは、分岐ポリエチレンイミンなどの、ポリエチレンイミンとすることができる。特定の態様では、分岐ポリエチレンイミンは高度に分岐したものであってもよい。
【0181】
プライマー層(バインダーの有無を問わず)は、できるだけ薄いことが好ましい。例えば、プライマー層は、約10μm以下の厚さを有することができる。特定の態様では、プライマー層は、約0.05μm~約5μmの厚さを有することができる。
【0182】
本方法は、プライマー層を形成すること、及びプライマー層上に活性層を形成することを含むことができる。プライマー層上に活性層を形成することには、プライマー層を活性層で被覆することを含むことができる。基材の表面又はプライマー層上に活性層を形成することは、ディップコーティング、スプレーコーティング、静電スプレーコーティング、ナイフコーティング、カーテンコーティング又はスロット-ダイコーティング、ロールコーティング又はスピンコーティングすることを含むことができる。例えば、ヒートポンプの部品の場合、プライマー層で被覆してから、活性層でディップコーティングすることができる。
【0183】
本発明について乾燥とは、20~200℃、好ましくは50~150℃、特に好ましくは60~120℃の範囲の温度での乾燥を指す。
【0184】
本発明によれば、MOF材料は、未処理のMOF-懸濁液を調整するための上記の方法により直接得られる生成物懸濁液の形態で提供される。言い換えれば、1つの好適な実施形態では、コーティング組成物は、生成物懸濁液に相当する。
【0185】
別の好適な実施形態においては、コーティング組成物は、生成物懸濁液と少なくとも1つのバインダーとの混合物に相当する。このコーティング組成物は、典型的には、生成物懸濁液に少なくとも1つのバインダーを加えることによって調製する。好適な実施形態では、コーティング組成物は、
-生成物懸濁液50~99質量%、及び
-少なくとも1つのバインダー1~50質量%
を含む。ただし、該コーティング組成物は、少なくとも10質量%の少なくとも1つのMOFを含むものである(ここで、所与の量はコーティング組成物の総質量に基づく)。
【0186】
得られるMOF-水-バインダーの組合せは、前述した手法の1つ又は複数を使用して、プライマー層上に被覆するか、基材の表面の少なくとも一部に直接、被覆することができる。
【0187】
MOF含有活性層は、約50μm~約500μm、又は約100μm~約250μm、又は約150μm~約200μm、又は約100μm~約200μm、又は約150μm~約250μmの厚さを有することができる。プライマー層と活性層の両方を含む複合材料の合計の厚さは、約100μm~約260μm、又は約100μm~約250μm、又は約100μm~約210μm、又は約100μm~約200μm、又は約100μm~約160μm又は約100μm~約150μmであることができる。層の厚さは、被覆した試験片の断面に対して行う光学顕微鏡又はSEM顕微鏡による検査によって分析することができる。
【0188】
本発明のコーティング組成物は、従来の方法で調製したコーティング組成物よりも、粘度が高く、また、プロセス安定性及び貯蔵安定性も高いものであることが見出された。
【0189】
さらに、得られた活性層、言い換えれば、表面に被覆したMOF-フィルムは、MOF-粉末から配合した、従来のコーティング組成物によって被覆したMOF-フィルムよりも驚くほど高い密度を有することが見出された。
【0190】
本発明につき、以下の実施例及び図面によって説明する。
【実施例】
【0191】
図1:膜ユニットの概略図
図1にフィルターユニットの略図を示す。フィルターユニットは、供給容器、ポンプ1、サーモスタット、及び膜モジュールからなるポンプ回路を備えている。膜フィルター上流の回路には、圧力計(PI)と流量計(FI)が組み込まれている。(LI)は供給容器のレベル指示器を表す。ポンプ回路に加えて、フィルターは、ダイアフィルトレーション媒体又は透過液用のリザーバーを備えており、ポンプ2を使用してダイアフィルトレーション媒体又は透過液を供給容器に計量供給することができる。得られた透過液は、透過液容器に排出し、秤量することができる。
【0192】
A.MOFの調製
Alフマレート(Al Fumarate)の合成例(1時間、60℃)
原材料:
フマル酸 0.211モル 24.47g 24.47g
水酸化ナトリウム 0.633モル 25.32g 25.32g
硫酸アルミニウム*18モル水 0.105モル 70.0g 70.0g
水 36.8モル 661.7g 661.77g
硫酸アルミニウムをビーカー内の300gの水に溶解し60℃まで加熱した。この溶液に、フマル酸、水酸化ナトリウム及び水の411.5gの溶液(60℃)の混合物を58分間加えた。ポンプ供給中に、白い沈殿物が現れた。溶液を使い果たしたら、白い沈殿物を濾別し、500mlの脱塩水で3回洗浄した。得た濾過ケークを空気中100℃で乾燥粉末となるまで乾燥し、130℃で16時間真空乾燥して残留水を除去した。
【0193】
この調製方法により、約33.08gの材料が得られる。
【0194】
B.精密濾過実験
1.一般的実験装置構成
膜濾過実験は、
図1に示す基本的な概略図に従い、バッチ操作モードで実施した。金属-有機構造体を含むスラリーを供給容器に充填し、膜モジュール上を連続的に循環させ、そこから透過液流を除去した。その溶液を濃縮/精製(「ダイアフィルトレート」)するために、追加のMOF含有スラリー又はVE水を供給容器に加えた。供給流しないことによって、つまり濾過ループ内のスラリーの総量を減らすことによって、MOFをさらに濃縮することが可能になった。実験中は、すべての圧力(膜モジュール前後の圧力)、温度、及びクロスフロー速度を制御した。さらに、供給容器内の導電率を測定した。これにより、精製の進行状況が示される。
【0195】
膜分離実験の特性値は、総質量濃度係数(CF)とダイアフィルトレーション係数(DF)である。
【0196】
CFは、透過液の総質量を供給容器内の初期質量に関連付けるものである。
CF=(m透過液+m供給、初期)/m供給、初期
その定義により、MOFが100%保持されると仮定すると、濃度係数(濃縮係数)CFは、バソライト(Basolite)A520の、初期濃度と比較した相対濃度を表す(例えば、最初はCF=1、m透過液=m供給、初期の場合はCF=2で固形分濃度2倍)。
【0197】
DFは「洗浄係数」を表す。つまり、加えたVE水の量をバッチサイズに関連付ける。この定義により、DFは総透過液質量を初期供給量で割ったものに等しくなる。
DF=m透過液/m供給、初期
各ユニットのその他の特性について、以下の表1に要約する。膜ユニット2では、膜ユニット1での遠心ポンプと比較して、媒体を穏やかに輸送することを可能にする膜ポンプを適用したことに注意することが重要である。
【0198】
【0199】
2.実験計画とプロセス評価
合計で、バソライト(Basolite)A520スラリーを含む2つのバッチを用いた。下記の表2に、これら2つのバッチの分析特性を要約する。表から分かるように、両方のバッチでは、バッチの総質量に基づいて約4.5質量%のバソライトA520濃度、及び約5~6質量%のNa2SO4濃度であった。濃度測定は、スラリーのわずかな希釈をもたらす各膜ユニットへの装入後に行った。
【0200】
【0201】
実施した実験のパラメータを表3に要約する。合計で、MF1”、MF2”、及びMF3”の3つの異なる実験を実施した。膜の型式のバリエーションを検討することを目的とし、また、最大濃度のバソライトA520スラリーを目指す(MF3では、達成可能な最大値CF5を使用)。最大CFは、実験装置構成(最小ホールドアップ、ポンプ)によって決定した。全ての実験で、経験に基づいた、同様の(最適ではない)プロセス条件を適用した。
【0202】
【0203】
*膜ユニット1内の最小ホールドアップによって制限され、**濃縮バソライトA520スラリーの粘度によって制限されている。
【0204】
***透過流束を増加させるため実験の後期段階でTMPを増加した。
【0205】
Na2SO4とバソライトA520の濃度を評価するため、蒸発を使用する総固形分分析及びNa2SO4濃度測定についてのGMCでの硫酸塩元素分析の分析論を適用した。バソライトA520の濃度を決定する際の主な仮定は、スラリーがNa2SO4、バソライトA520、及び水のみで構成されていることである。これにより、バソライトA520の濃度は次の式で計算できる。
【0206】
c(バソライトA520)=c(全固形分)-c(Na2SO4)
【0207】
したがって、膜によるバソライトA520の保持率を計算することが可能であり、次の式で与えられる。
【0208】
R(バソライトA520)=1-c(バソライトA520、透過液)/c(バソライトA520、保持液)
【0209】
これにより、透過液にバソライトA520を確認できない場合100%の保持率、c(バソライト、A520、透過液)とc(バソライト、A520、保持液)の両方の濃度が同じである場合0%の保持率であることが示される。Na2SO4の保持率についても同じ計算を行うことができる。保持液と透過液の両サンプルは、定義したDF及びCFで収集した。
【0210】
MF実験について、次の3つの基準、すなわち
(1)DF/CFの関数としての透過流束
(2)バソライトA520の保持率
(3)DFの関数としてのNa2SO4除去能力(保持液ループ内の導電率とNa2SO4濃度の低下によって示される)
で評価した。
【0211】
さらに、膜ファウリング効果の大きさを評価するため、実験前後の水流束測定を0.5バールのTMPで実施した。実験中、透過液による逆洗を一定の間隔で行い、膜性能に対する影響を確認した。最終的に多くの物質が壁(例えば、供給ガラス容器)に付着していることが観察されたため、VE水で2回洗浄し(クリーニングし)、両サンプルの総固形分濃度を分析した(塩がほとんど存在しなかったため、最終的には、バソライトA520の濃度とほぼ同じであった)。
【0212】
3.実験結果
図2及び
図3には、MF透過流束(左軸)及び保持液導電率(右軸)を、それぞれDF及びCFの関数として示している。導電率は、標準の導電率測定電極で洗浄水100mLを測定することによって決定した。
【0213】
両方の膜(0.2μmと0.05μm)の性能は非常に類似していた。これは、予想通り、境界層制御の浸透メカニズムが発生したことを示している。両方の膜は、ダイアフィルトレーションの工程中に200~550kg/m2hの非常に高い透過流束に達し、その後、濃縮中に約2.5倍に約50kg/m2hの値に減少した。導電率に関しては、両方の膜ともに500μS/cmを十分に下回る最終導電率を示した。実験の開始時は大幅に減少したが、実験の終了時には洗い出し効果は低いものであった(導電率の対数目盛に留意されるべきである)。最後のDFsの過程での導電率の低下は非常に低く、これは高い洗浄係数でのブロッキング効果によって(非常にまれである:MF3においては2倍の予備濃縮でも、導電率はダイアフィルトレーション中に大幅に低下した)又はバソライトA520自体の導電率によって説明することができる。
【0214】
バソライトA520濾過実験の前後のTMP=0.5バールでの水流束測定では、次のことが示された。すなわち、水流束は、MF1では、濾過前は700kg/m2h、濾過後は1280kg/m2hであり、MF2では574kg/m2h及び555kg/m2h、MF3では565kg/m2h及び562kg/m2hであった。したがって、膜ファウリングの程度が非常に小さいことを示している。
【0215】
詳細に、
図2に、実験1及び2におけるDF又はCFの関数として、透過流束及び保持液での導電率を示す。両方の実験において、最初にダイアフィルトレーションを行い、続いて濃縮を行った。両方の実験中に、透過流束に対する逆洗の効果を試験した。この効果は、軽微であるか、短い時間間隔でしか見られないことが分かった(グラフのスパイク箇所参照)。
【0216】
図3に、実験3におけるDF又はCFの関数として、透過流束及び保持液での導電率を示す。この実験では、バソライトA520スラリーの初期濃縮、これに続いて、ダイアフィルトレーション及び最終濃縮を行った。示した導電率は、ダイアフィルトレーション中のものである(最初の濃縮中にオンライン導電率測定装置が詰まったため、手動測定装置を使用する必要があった)。
【0217】
表4に、3つの実験の最終保持液について得られた特性を要約する。観察できるように、保持液MF1とMF2との差は非常に小さいものであった。すなわち、それぞれが約9.7質量%の最終バソライトA520濃度及び非常に少量のNa2SO4に達した。
【0218】
【0219】
5.結論
実施した実験により、脱イオン水を使用して膜濾過法によりバソライトA520スラリーを精製することが可能であることが分かる。上記の表に見られるように、Na2SO4の濃度は約5.5質量%から0.15質量%未満の値に減少させることができた。その目的に必要なダイアフィルトレーション量は初期量の8~9倍である。
【0220】
さらに、これらの実験から、スラリー中のバソライトA520の濃度を、それぞれ4.5質量%、4.8質量%から、それぞれ約10質量%、約19質量%の値まで増加させることができたことが分かる。
【0221】
C.被覆実験
スラリー特性解析及び被覆実験の目的は、一般的な原理証明を示し、従来のフィルターケーキを噴霧乾燥及び分散するなどの代わりとなる他の処理に関するプロセスを設定することにある。
【0222】
1.実験
a)材料:
基材
- 基材1:日本箔(1N30)120mmX20μmを剥離試験及びフィルム密度測定用の基材として使用した。
【0223】
複雑な形状のディップコーティングを試験するために、3つの異なる基材を使用した。
- 基材2:フィン付きチューブ熱交換器のセグメント、管継手付きアルミニウム板、390g/m2、フィンピッチ2mm
- 基材3:シングルフィン付きチューブ熱交換器プレート、311g/m2
- 基材4:ポリプロピレン製の段ボールプラスチック、287g/m2
MOF-材料:
- 上記のフマル酸アルミニウムサンプル「MF1、2、及び3の最終保持液」(以下、MF1-MOF、MF2-MOF、及びMF3-MOFという)
- 従来法で濾過及び噴霧乾燥した材料(バソライトA520;BASF SE)(以下、SPD-MOFという)
- 分散フィルターケーキ(「WFC」、フマル酸アルミニウム)の実験室サンプル(以下、WFC-MOFという)
バインダー:
水性ポリアクリレートバインダー(Joncryl 3030;BASF SE、Mw>200000)を、コーティングの総乾燥質量に対して19.6質量%の固形分で使用した。
【0224】
プライマー:
ポリエチレンイミン(Lupasol PS;BASF SE、Mw約750000)をプライマーとして使用した。特に明記しない限り、プライマー層なしでコーティングを塗布した。
【0225】
b)コーティング組成物の調製
ポリプロピレン混合容器に水を入れ、手動で攪拌しながらSPD-MOF粉末を加えた。続いて、バインダー分散液を加え、遠心ミキサー(ARE310;Thinky inc)を使用して2000rpmで3分間分散させた。
【0226】
ポリエチレンイミン溶液(Lupasol PS;BASF SE)は、脱塩水を使用して元の固形分32.76質量%から6.55質量%に希釈した。
【0227】
当該スラリーがプロセス条件下で安定しているかどうかを示すために、300mlビーカー内で、100rpmで磁性ロッドを用いて攪拌した。また、当該スラリーの貯蔵安定性について、周囲温度(約20~25℃)で、攪拌せずに、密閉容器内でエージングすることにより試験した。どちらの場合も、調製後時間間隔を置いて粘度を測定した。
【0228】
c)被覆
個々のコーティング組成物を、ナイフコーティング装置(ZAA2300;ZUA2000;Zehntner GmbH)を使用して、150mm/sで200μmの隙間設定及び8mlの堆積量で基材上に被覆した。
【0229】
基材上へのプライマー溶液(6.55質量%Lupasol PS)の被覆は、25μmワイヤーバー塗布器を使用し30mm/sで基材上を引っ張って2mlの堆積量で行った。
【0230】
d)乾燥
電気的に温度制御した真空プレート(ACC188.230;Zehntner GmbH)を使用して60℃で10分間、及び、続いて乾燥キャビネット(UN110Plus;Memmert)内で、110℃で1時間以上接触乾燥することにより、コーティングを乾燥させた。
【0231】
e)分析:
固形分の測定は、乾燥重量秤(設定120℃;HB43-S;Mettler Toledo)を使用して行った。
【0232】
粘度の測定は、コーンプレート型レオメーター(MCR102、Anton Paar;PP50;400μmギャップ;25℃)を使用し、1-/sから1000-/sのせん断速度で行った。
【0233】
基準基材に対する接着力は、DIN28510に準拠した90°剥離試験により、50mm/分の引張速度、25℃、相対湿度約40%rHで測定した。
【0234】
密度は、50cm2のフィルム試料上のコーティングの質量(Excellence Plus、10-4g;Mettler Toledo)と厚さ(ID-H0530、10-4mm;Mitutoyo Corp)の測定値から計算した。サンプルは、円形ナイフカッター(150805;Karl Schroeder KG)を使用して、被覆したアルミニウム基材から切り出した。
【0235】
f)命名法:
バソライトA520と水との分散液(膜濾過によって、又はSPD-MOF粉末又はWFC-MOFの水中分散液によって調製)を「MOFプレミックス」と呼ぶ。バインダーを添加し希釈した後の、最終的なコーティング配合物を「MOF/バインダースラリー」と呼ぶ。
【0236】
特性は、プロセス経路によって決まってくるが、プロセスパラメータ(すなわち、結晶化中の供給速度、噴霧乾燥中の温度)を変更することによっても調整することができる。ここで観察される変化がプロセス経路のみによるものか、最適化される可能性があるかは、詳細に確認していないが、この調査研究の範囲外である。
【0237】
2.コーティング組成物の特性
a)粘度
理想的には、コーティング組成物は、中~高せん断速度(100~1000-/s)で低粘度、10/s未満(<)の低せん断速度で高粘度、及び、高降伏点を持ち、かつ、プロセス条件及び保管条件下で安定している必要がある。
【0238】
被覆用途に関しては、コーティング配合物の流体力学的特性と乾燥フィルムの特性の両方を考慮する必要がある。ここに示す結果は、上記の膜濾過プロセスで製造した材料がコーティング用途に適しているかどうかを示すものではあるが、被覆プロセス開発のための完全な評価を表すものではない。
【0239】
コーティング組成物は、溶剤(ここでは水)、活性物質(ここではフマル酸アルミニウム(A520))、バインダー(ここではJoncryl 3030)、及び加工添加剤で構成される。しかし、比較をできるだけ簡単なものとするために、バインダーの種類、バインダーの含有量、及び固形分を可能な限り一定に保つこととした。また、加工添加剤は使用しなかった。
【0240】
理想的には、コーティング組成物は、中~高せん断速度(100~1000-/s)で低粘度、10/s未満(<)の低せん断速度で高粘度、及び、高降伏点を示し、かつ、プロセス条件及び保管条件下で安定している必要がある。レオロジー降伏点は明示的に測定しなかったが、同様の組成物の場合にはゼロせん断粘度に比例するものと推定することができる。
【0241】
ディップコーティングプロセスの場合、2つの特徴的な限界によって粘度が制限される。粘度が高すぎると、被覆した構造物から液体の排出が不完全になるため、ブロッキングが発生する。粘度が低すぎると、液体が基材を流れ落ちる細流を形成するため、コーティングが不均一になる。高い塗工量を目的とするディップコーティングプロセスは、通常、粘度の上限付近で行われる。こうすることで、より高い固形分が可能となるためである(固形分がより高いということは、より高い乾燥フィルム厚さを実現することができ、また、蒸発させる必要のある水を少なくすることができることを意味する)。粘度は、プロセス条件又は保管条件下で変化する可能性がある。プロセス条件下で起きる粘度の変動は不安定化、構造形成、又は不完全な分散を暗に示す場合があり、このような粘度変動は産業技術的なコーティングプロセスでは受け入れられない。
【0242】
表5 膜濾過法(MF1-MOF)と噴霧乾燥法(SD6-MOF)で作製したフマル酸アルミニウムの粘度流動曲線の比較(測定は25℃、固形分7.5質量%で行った)
【0243】
【0244】
再分散したWFC-MOF由来のプレミックスについて信頼性の高い測定をすることは、スラリーの粘性が低くなりすぎ、7.5質量%に希釈する間に不安定になったことから、不可能であった。
【0245】
b)プロセス安定性
プロセス安定性を評価するために、MF3-MOF由来のMOFプレミックスとMOF/バインダースラリー(バインダーを含むMF3-MOF)を、膜濾過の終了後、様々な時間間隔で測定を行った。最初の5時間以内には粘度の変化は全く観察できなかった。したがって、このスラリーは、プロセスに関連している期間、安定しているとみなすことができる。
【0246】
バインダーを添加したときも、分散液を継続的に攪拌する限り、プロセスに関連する期間内に粘度変化は全く観察されなかった。
【0247】
3.結果と考察
精製・濃縮法は粒子形態の変化が予想されるため、膜特性に対する影響を確認することが重要である。したがって、亀裂、フィルム密度及び接着性などの機械的特性について評価した。
【0248】
a)亀裂形成
乾燥中に収縮すると、被覆したフィルムに亀裂を引き起こす可能性がある。フィルムに亀裂が生じる傾向は、主に組成(例えば、バインダーの種類と含有量、溶媒の種類と表面張力)、粒度分布と形態、及びフィルム厚さに依存する。ここでは、粒子サイズと粒子形態の影響を示すために、組成、乾燥温度、及びフィルム厚さを一定に保持した。
【0249】
MOF(洗浄したMOF-WFC、膜濾過したMF1-MOF及びSPD-MOF)を含む3種類の異なる乾燥コーティング組成物を亀裂形成について比較した。
【0250】
WFC-MOFでは亀裂の量がほとんど増加せず、膜濾過したMF1-MOFではわずかな亀裂が形成され、SPD-MOFでは深刻であることが観察された。
【0251】
したがって、MF1-MOFは、MOF-WFC材料よりも多くの亀裂を示すが、SPD-MOFよりは少ない。この組成物の臨界亀裂厚さとしては、湿ったフィルターケーキ材料が120μmであると決定された。亀裂の抑制は、コーティング膜厚を薄くしたり、バインダーの含有量を増やしたりすることで可能であるとは言え、この調査研究に使用した噴霧乾燥材料は、大容量のコーティング用途には不適切であるとみなすことができる。
【0252】
b)フィルム密度
被覆したフィルムの密度は、収着ヒートポンプ被覆に重要な要素である。被覆厚さはモジュールの形状、及び、所与の組成物に要求される最小接着力によって制限されることから、密度はシステム系全体のパワー密度に比例する。
【0253】
【0254】
*WFC-MOFについて幾つかの空気連行欠陥が観察された。実際のかさ密度はわずかに高い可能性がある。
【0255】
**膜濾過の場合の値は、MF1-MOF及びMF3-MOF材料から生成したコーティング膜の平均であり、相対偏差は5%未満である。
【0256】
c)接着性
コーティングの接着性は、主に組成、乾燥条件、フィルム厚さ、粒度分布と粒子形態、及び表面特性に依存する。ここでは、組成と乾燥条件を一定に保った。熱交換器フィンの複雑な表面上では再現性のある接着力を測定できないため、標準化90°剥離試験を使用して、基準基材としてアルミホイル(日本)上で測定を行った(詳細は実験の項目を参照)。必要な最小限の接着力は、最終用途の操作条件によって異なるが、5N/m未満の値では、多くの技術用途に不十分であるとみなすことができる。
【0257】
実験3で膜濾過により及びフィルターケーキの再分散により、生成した材料からのMOFコーティングの接着力を評価した。
【0258】
【0259】
予想通り、接着力は被覆量(フィルム厚さに相当)とともに減少する。
【0260】
MOF-MF3-コーティングの接着性は、WFC MF3-MOF-コーティングと比較して低い。ただし、測定値は全て10N/mを超えており、ほとんどの用途に19.6質量%のバインダー含有量で十分であることを示している。
【0261】
噴霧乾燥により調製したSPD-MOF及び膜濾過法により調製したMF-MOFの場合、ポリエチレンイミンプライマー層を基材表面に塗布すると接着力の増加を観察することができた(PCT/EP2017/071096)。この効果は、表8に要約するように、膜濾過した材料MF3-MOFでも再現することができた。
【0262】
【0263】
プライマーは水ベースであるが、沸騰水に3分間浸した後も(「水浴試験」と呼ぶ)接着力は高いままである。水浴試験は、コーティング層を沸騰水に3分間浸すものであるから、収着ヒートポンプの過酷な動作条件に匹敵している。
【0264】
d)複雑な形状のディップコーティング
用途に応じて、MOF-コーティングを様々な基材に塗布する必要がある。これらの基材は、表面の材質と形状が異なる場合がある。複雑な形状であると、液体がチューブフィン式熱交換器の窪みに蓄積したり、狭いギャップを完全に塞いだりする可能性があるため、被覆量が非常に不均一になる可能性がある。ポリマー表面であると、脱濡れ現象又は低接着力につながる可能性がある。MOF-コーティング組成物の粘度としては、目的物の形状に適合するようにする必要がある。粘度が高すぎると、ブロッキングが生じたり又は被覆量が多くなり過ぎたり、その一方、粘度が低すぎると、細流が形成したり、被覆量が非常に低くなる可能性がある。
【0265】
基材を手でディップ浸漬し、室温で30分間乾燥させた後、110℃で1時間以上乾燥させた。3種類の代表的形状に対して、(ポリアクリル系バインダーと混合し、水で適切な固形分に希釈した)バソライトA520 MOF-MF1を被覆した。固体中のバインダーの質量分率は19.6質量%に一定に保持し、加工添加剤は全く使用しなかった。また、固形分は粘度を適合させるよう12.5~155質量の間で変化させた。
- 基材2:フィン付きチューブ熱交換器のセグメント、管継手付きアルミニウムプレート、390g/m2、フィンのピッチ2mm、12.5質量%
- 基材3:シングルフィン付きチューブ熱交換器プレート、311g/m2、固形分(MOF)15質量%
- 基材4:ポリプロピレン段ボールプラスチック、287g/m2、12.5質量%
高度に波形に形成したポリプロピレン基材には多少の亀裂が観察されるが、全てのコーティングは良好な接着性を示し、目に見える欠陥はごくわずかである。
【0266】
4.結論
要約すると、本発明に係るMF-MOF含有コーティング組成物は、SPD-MOF又はWFC-MOFを含むコーティング組成物より改善された特性をいくつか示す。具体的には、本発明に係るコーティング組成物は、MOF-層の再現性のある高密度を、十分に高い臨界亀裂厚さと共に示すものである。膜濾過実験MF1、MF2及びMF3の間には、コーティング組成物又はMOF-フィルムの特性に有意差は何ら観察できなかった。結果の簡潔な概要を表6に示す。さらに、本発明のコーティング組成物にあっては、エネルギー消費は著しく低いものであった。
【0267】
【手続補正書】
【提出日】2020-11-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの金属-有機構造体と少なくとも1つの懸濁媒体SM1とを含む未処理の懸濁液SRを調整する方法であって、
該少なくとも1つの金属-有機構造体が、少なくとも1つの金属イオンに配位した少なくとも二座である有機化合物を少なくとも1つ含むこと、
及び、該少なくとも1つの金属-有機構造体がAl-フマレートであること、
未処理の懸濁液SRを少なくとも1つの膜濾過法によって調整して、少なくとも1つの金属-有機構造体と少なくとも1つの懸濁媒体SM2とを含む生成物懸濁液SPを得ること
、
該少なくとも1つの膜濾過法が、少なくとも1つの精製工程、又は少なくとも1つの濃縮工程、又は少なくとも1つの精製工程及び少なくとも1つの濃縮工程を含むこと、及び、
該少なくとも1つの精製工程及び/又は該少なくとも1つの濃縮工程をダイアフィルトレーションとして実施すること
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの膜濾過法が、少なくとも1つの精製工程及び少なくとも1つの濃縮工程を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記ダイアフィルトレーションの媒体が、水、メタノール、エタノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、sec-ブタノール又はこれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、好ましくは水である、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記膜の分離層が、50~800nm、好ましくは50~200nmの範囲の細孔サイズを有する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
懸濁媒体SM1及び懸濁媒体SM2が、互いに独立して、水、メタノール、エタノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、sec-ブチルブタノール、又はこれらの2種以上の混合物から選択される、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
懸濁媒体SM1及び懸濁媒体SM2が同じものであり、好ましくは水である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記未処理の懸濁液SRが、前記少なくとも1つの金属-有機構造体を製造する方法により得られ、その製造する方法が、
-少なくとも1つの金属塩と少なくとも1つの少なくとも二座である有機化合物とを、好ましくは少なくとも1つの追加の化合物の存在下で、反応媒体中で反応させる工程であって、該反応媒体が前記少なくとも1つの懸濁媒体SM1に相当する、工程
を備える、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの金属-有機構造体を含む活性層で基材の表面の少なくとも一部を被覆する方法であって、その方法が、
a1)未処理の懸濁液SRを調整して生成物懸濁液SPを得るための、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法、
a
2)基材の表面の少なくとも一部をコーティング組成物と接触させる工程であって、該コーティング組成物が、
工程a1)により得られた生成物懸濁液
SPを含み、かつ、該コーティング組成物が、さらに、少なくとも1つのバインダー
を含む、工程
を備えることを特徴とする、方法。
【国際調査報告】