(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】向上したMVTRバリア性を有するコーティングを作成するための水性分散液
(51)【国際特許分類】
C09D 123/00 20060101AFI20220202BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220202BHJP
C08L 45/00 20060101ALI20220202BHJP
C08K 5/42 20060101ALI20220202BHJP
C08K 5/04 20060101ALI20220202BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20220202BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20220202BHJP
C08J 3/07 20060101ALI20220202BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20220202BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
C09D123/00
C08L101/00
C08L45/00
C08K5/42
C08K5/04
C08L23/00
C08L9/00
C08J3/07
C08J7/04 Z
B32B27/32 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534160
(86)(22)【出願日】2019-12-02
(85)【翻訳文提出日】2021-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2019083248
(87)【国際公開番号】W WO2020120188
(87)【国際公開日】2020-06-18
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】デ ゼーウ,アルト
(72)【発明者】
【氏名】トメ ホルヘ,マリア
(72)【発明者】
【氏名】クルーク,ロビン レイフ
(72)【発明者】
【氏名】メラー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シュトット,ユルゲン
【テーマコード(参考)】
4F006
4F070
4F100
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
4F006AA14
4F006AA35
4F006AB32
4F006BA05
4F070AA41
4F070AA47
4F070AB11
4F070AE14
4F070CA02
4F070CB02
4F070CB12
4F100AH02A
4F100AK02A
4F100AK03B
4F100AK04A
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK08A
4F100AK09A
4F100AK42B
4F100AL01
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4F100BA02
4F100CA18A
4F100EH46A
4F100EJ24A
4F100EJ37B
4F100EJ42A
4F100EJ86A
4F100GB15
4F100JA05A
4F100JA06A
4F100JA13A
4F100JD02
4F100JD04
4F100JK02A
4F100JK07A
4F100JK08A
4F100JL11
4F100YY00
4F100YY00A
4J002AA002
4J002AA003
4J002AC024
4J002AC034
4J002BB024
4J002BB034
4J002BB054
4J002BB084
4J002BB094
4J002BB101
4J002BB104
4J002BB111
4J002BB124
4J002BB171
4J002BB174
4J002BB184
4J002BK001
4J002CE001
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4J002CH052
4J002DA077
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4J002DH007
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4J002DJ007
4J002ED036
4J002EJ067
4J002EV256
4J002EV317
4J002EV347
4J002EY007
4J002FD017
4J002FD027
4J002FD097
4J002FD177
4J002FD187
4J002FD203
4J002FD204
4J002FD312
4J002FD316
4J002GB01
4J002GG01
4J002GG02
4J002GH00
4J002GH01
4J002HA06
4J038CB001
4J038DD001
4J038KA09
4J038MA08
4J038NA08
(57)【要約】
本発明は、A)少なくとも1つの環状オレフィンコポリマー、B)少なくとも1つの界面活性剤、場合によりC)少なくとも1つの接着促進剤、場合によりD)少なくとも1つのフィルム形成樹脂、場合により少なくとも1つの添加剤、およびF)水を含んでなる、または、上記からなる水性分散液に関する。さらに、本発明は、水性分散液を製造する方法、少なくとも1つの基材および前記水性分散液から得られる少なくとも1つのコーティング層を含む物品、および基材をコーティングするための前記水性分散液の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)少なくとも1つの環状オレフィンコポリマー、
B)少なくとも1つの界面活性剤、
C)場合により、少なくとも1つの接着促進剤、
D)場合により、少なくとも1つのフィルム形成樹脂、
E)場合により、少なくとも1つの添加剤、および
F)水
を含んでなる、または上記からなる水性分散液。
【請求項2】
前記少なくとも1つの環状オレフィンコポリマーが、
i)C
5~C
12シクロアルケンと少なくとも1つのC
2~C
10アルキレン、好ましくはノルボルネンとエチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキシレンおよびオクチレンのうちの少なくとも1つ、より好ましくはノルボルネンとエチレン、を共重合させることによって得られる、および/または、
ii)DIN EN ISO 11357-1:2017-02、-2:2014-07、または-3:2018-07に従って測定される、6~138℃の、好ましくは33~78℃の、最も好ましくは65℃のガラス転移温度Tgを有する、および/または、
iii)DIN EN ISO 1183-1:2013-04に従って測定された、905~1200kg/m
3の、好ましくは1000~1050kg/m
3の密度を有する、および/または、
iv)DIN EN ISO 527-3:2003-07に従って測定される、1500~2500MPaの、好ましくは1600~1800MPaの機械方向の引張弾性率を有する、および/または、
v)DIN EN ISO 527-3:2003-07に従って測定される、40~70MPaの、好ましくは50~60MPaの機械方向の破断強度を有する、および/または、
vi)DIN EN ISO 527-3:2003-07に従って測定される、2.0~4.0%の、好ましくは2.3~3.6%の機械方向の破断点伸度を有する、および/または、
vii)0.5~15.0g/10分の、好ましくは3.5~9.5g/10分の、230℃、2.16kg負荷における溶融流量を有する、および/または、
viii)水性分散液の固形分に基づいて、5~99重量%、好ましくは50~95重量%で存在する、および/または、
ix)水性分散液中で、D50値として50~500nmの、動的光散乱によって測定された平均粒度を有する、
請求項1に記載の水性分散液。
【請求項3】
i)前記少なくとも1つの界面活性剤が、陰イオン界面活性剤もしくは非イオン界面活性剤またはそれらの混合物である、および/または、
ii)前記少なくとも1つの界面活性剤が、アルキル硫酸塩、好ましくは脂肪アルコールアルキル硫酸塩、より好ましくはラウリル硫酸ナトリウムを含む、および/または、
iii)前記少なくとも1つの界面活性剤が、脂肪アルコールアルコキシレート、好ましくは直鎖C12-18脂肪アルコールアルコキシレート、より好ましくは10~15のエトキシ単位を有する直鎖C16-18アルコールエトキシレートを含む、および/または、
iv)前記少なくとも1つの界面活性剤が、好ましくはエチレン、プロペン、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン、1,3-ブタジエンおよび2-メチルブタ-1,3-ジエンから選択される少なくとも1つのオレフィンモノマーを、α,β-不飽和カルボン酸、好ましくは桂皮酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、アクリル酸およびメタクリル酸から選択される少なくとも1つのコモノマーと反応させることによって得られるコポリマーを含む、ここで、得られたコポリマーは、好ましくは少なくとも60mgKOH/g、より好ましくは200mgKOH/g未満、より好ましくは100mgKOH/g未満の酸価を有する、および/または、
v)前記少なくとも1つの界面活性剤が、水性分散液の固形分に基づいて、0.01~10重量%、好ましくは2~7重量%で存在する、
請求項1または2に記載の水性分散液。
【請求項4】
i)前記少なくとも1つの接着促進剤が10~100mgKOH/g、好ましくは20~60mgKOH/gのヒドロキシル価を有する、および/または、
ii)前記少なくとも1つの接着促進剤が、ヒドロキシル基、カルボン酸基、ホスホン酸基および/またはリン酸基を含み、好ましくは酸価およびヒドロキシル価の合計が20mgKOH/gを超える、より好ましくは60mgKOHを超える樹脂から選択される、および/または、
iii)前記少なくとも1つの接着促進剤が、5~75mgKOH/g、好ましくは20~30mgKOH/gの酸価を有する少なくとも1つのポリエステル樹脂を含む、および/または、
iv)前記少なくとも1つの接着促進剤が、DIN EN ISO 11357-1:2017-02、-2:2014-07、または-3:2018-07に従って測定されるガラス転移温度Tgが、0~35℃、好ましくは10~25℃である少なくとも1つのポリエステル樹脂を含む、および/または、
v)少なくとも1つのポリエステル樹脂が、水性分散液の固形分に基づいて、0.5~20重量%、好ましくは1~7重量%で存在する、
請求項1~3のいずれかに記載の水性分散液。
【請求項5】
i)前記少なくとも1つのフィルム形成樹脂が塗布後に、100℃未満の温度で凝集性フィルムを形成する、および/または、
ii)前記少なくとも1つのフィルム形成樹脂が、DIN EN ISO 11357-1:2017-02、-2:2014-07、または-3:2018-07に従って測定される、138℃未満の、好ましくは78℃未満の、最も好ましくは65℃未満のガラス転移温度を有する、および/または、
iii)前記少なくとも1つのフィルム形成樹脂が、好ましくはエチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン、1,3-ブタジエンおよび2-メチルブタ-1,3-ジエン、好ましくはエチレンおよび/またはプロピレンから選択される、8個以下の炭素原子を有する少なくとも1つのオレフィン性モノマーを重合させることによって得られるホモポリマーおよびコポリマーを含む、および/または、
iv)前記少なくとも1つのフィルム形成樹脂が、イソブチレンを共役ジエン、例えばイソプレン、好ましくはブチルゴムと重合することによって得られるコポリマーを含む、および/または、
v)前記少なくとも1つのフィルム形成樹脂が、少なくとも1つのオレフィン性モノマー、好ましくは非環式で5以下の炭素原子を有するオレフィン性モノマー、より好ましくはエチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン、1,3-ブタジエンおよび2-メチルブタ-1,3-ジエンを、α,β-不飽和カルボン酸、好ましくは桂皮酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、アクリル酸およびメタクリル酸から選択される少なくとも1つのコモノマーと重合することによって得られるコポリマーを含む、ここで、該コモノマーは60mgKOH/g未満、好ましくは少なくとも5mgKOH/g、より好ましくは少なくとも10mgKOH/g、さらにより好ましくは少なくとも20mgKOH/gの酸価を有する、および/または、
vi)前記少なくとも1つのフィルム形成樹脂が、分散液の固形分に基づいて、0.5~40重量%、好ましくは5~20重量%で存在する、
請求項1~4のいずれかに記載の水性分散液。
【請求項6】
i)前記少なくとも1つの添加剤が、殺生物剤、有機溶媒、可塑剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤、pH調整剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、および/または有機または無機充填剤を含む群から、好ましくは、殺生物剤および/または有機溶媒から選択される、および/または
ii)前記少なくとも1つの添加剤が、水性分散液の総重量に基づいて、0.0001~20重量%、好ましくは0.01~15重量%で存在する、
請求項1~5のいずれかに記載の水性分散液。
【請求項7】
水性分散液が、20~60重量%、好ましくは40~55重量%の固形分を有する、
請求項1~6のいずれかに記載の水性分散液。
【請求項8】
(i)A)少なくとも1つの環状オレフィンコポリマーを適当な溶媒に溶解し、場合によりB)少なくとも1つの界面活性剤、および/または、場合によりC)少なくとも1つの接着促進剤、および/または、場合によりD)少なくとも1つのフィルム形成樹脂、および/または、場合によりE)少なくとも1つの添加剤を加える工程、
(ii)B)が工程(i)で加えられていない場合、任意に水相をB)少なくとも1つの界面活性剤、好ましくは陰イオン界面活性剤および/または非イオン界面活性剤と、好ましくは50~100℃、より好ましくは65~80℃、最も好ましくは70~75℃の温度への加熱下で混合する工程、
(iii)B)が工程(i)で加えられていない場合、工程(i)の溶液を、任意にB)少なくとも1つの界面活性剤を含む水相と、高せん断下で、好ましくは新たな容器内で、より好ましくは高せん断ミキサー内で、好ましくは0.1~10分間、より好ましくは0.5~5分間、最も好ましくは0.7~2分間混合する工程、および、
(iv)前記使用済みの溶媒を、好ましくは真空下で、より好ましくは50~500ミリバールで、より好ましくは150~450ミリバールで、最も好ましくは200~400ミリバールで濃縮する工程、
を含んでなる、または、上記工程からなる、請求項1~7のいずれかに記載の水性分散液を製造する方法。
【請求項9】
(i)押出機にA)少なくとも1つの環状オレフィンコポリマー、場合によりB)少なくとも1つの界面活性剤、および/または、場合によりC)少なくとも1つの接着促進剤、および/または、場合によりD)少なくとも1つのフィルム形成樹脂、および/または、場合によりE)少なくとも1つの添加剤を供給する工程、
(ii)水を前記押出機に、好ましくは押出機の高せん断領域内に、より好ましくは押出し工程の間に加える工程、ここで、水は工程(i)でB)が加えられていない場合、任意にB)少なくとも1つの界面活性剤と、および/または、C)が存在し、工程(i)で加えられていない場合、任意にC)少なくとも1つの接着促進剤と、および/または、D)が存在し、工程(i)で加えられていない場合、任意にD)少なくとも1つのフィルム形成樹脂と、および/または、E)が存在し、工程(i)で加えられていない場合、任意にE)少なくとも1つの添加剤と混合される、および、
(iii)工程(ii)によって得られる水性分散液を前記押出機から移送する工程、
を含んでなる、または、上記工程からなる、請求項1~7のいずれかに記載の水性分散液を製造する方法。
【請求項10】
(i)A)少なくとも1つの環状オレフィンコポリマー、B)少なくとも1つの界面活性剤、場合によりC)少なくとも1つの接着促進剤、および/または、場合によりD)少なくとも1つのフィルム形成樹脂、および/または、場合によりE)少なくとも1つの添加剤を、好ましくは撹拌または混合下溶融する工程、
(ii)反応チャンバーにおいて、工程(i)の混合物を、好ましくは入口上に、より好ましくは10~900バールの高圧下で移動させる工程、
(iii)反応チャンバーにおいて、工程(ii)と同時に、100℃を超えるが好ましくは200℃未満の温度を有する水を、好ましくは第2の入口上に、より好ましくは10~900バールの高圧下で移動させる工程、
(iv)反応チャンバーにおいて、工程(ii)の混合物と工程(iii)の水とを同時にキャリアガス、例えば、N
2、H
2またはアルゴン中に、好ましくは最大300m/sの噴射速度で、より好ましくは、工程(ii)の混合物と工程(iii)の水とを0.1ms未満の混合時間で移送する工程と、
(v)工程(iv)によって得られる混合物を反応チャンバーから移送する工程、
を含んでなる、または、上記工程からなる、請求項1~7のいずれかに記載の水性分散液を製造する方法。
【請求項11】
少なくとも1つの基材および少なくとも1つのコーティング層を含む物品であって、
請求項1~7のいずれかに記載の水性分散液を、好ましくはフィルムコーターによって、より好ましくは真空下で基材上に塗布すること;および、
次いで、得られた物品を、好ましくは加熱することにより乾燥させ、それによってコーティング層を得る、
ことにより得られる、物品。
【請求項12】
i)前記基材が、ポリエチレンテレフタレートまたはポリオレフィン基材、好ましくはポリエチレンテレフタレートまたは延伸ポリプロピレンである、および/または、
ii)前記基材がフレキシブル基材、好ましくはフィルムである、および/または、
iii)前記得られるコーティング層が、0.1~15g/m
2、好ましくは5~10g/m
2、より好ましくは7~9.5g/m
2のコーティング厚さを有する、および/または、
iv)前記物品が、38℃および90%RHで7~60g/(m
2・日)、好ましくは12~50g/(m
2・日)のMVTRを有する、
請求項11に記載の物品。
【請求項13】
基材、好ましくはポリエチレンテレフタレートまたはポリオレフィン基材をコーティングするための、請求項1~7のいずれかに記載の水性分散液の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、A)少なくとも1つの環状オレフィンコポリマー、B)少なくとも1つの界面活性剤、場合によりC)少なくとも1つの接着促進剤、場合によりD)少なくとも1つのフィルム形成樹脂、場合により少なくとも1つの添加剤、およびF)水を含んでなる、または、上記からなる水性分散液に関する。さらに、本発明は、水性分散液を製造する方法、少なくとも1つの基材および前記水性分散液から得られる少なくとも1つのコーティング層を含む物品、および基材をコーティングするための前記水性分散液の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンフィルムなどのポリマー系の包装システムは、包装業界で広く使用されている。包装は、環境の影響から食品などの充填物を保護するために使用される。CO2、O2などの移動する気体、フレーバー化合物または水分は、そのような環境化合物であり、最終使用に至る前に製品のオリジナル特性を変える可能性があるため、バランスを取る必要がある。例えば、乾燥充填物は湿気から保護する必要がある。この観点から、包装は包装の外側から防湿性を提供する必要があり、その逆も同様である。
【0003】
産業界は、長期のバリア性を提供するためにいくつかのコンセプトを使用している。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、または延伸ポリプロピレン(OPP)などのオレフィンフィルムは、特にO2と水分に対する気体バリアを高めるために、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)でコーティングされている。塩化物が存在するため、この技術は環境上の理由から懸念されている。
【0004】
別の手法は、多層フィルムをキャスト成形することである。しかし、キャスト成形された多層フィルムの技術は複雑であり、製造サイドからコストがかかる。さらに、この材料の再生利用は困難になり得る。
【0005】
さらなる代替手法は、蒸着によるバリアフィルムの蒸着である。しかしながら、物理蒸着の技法は複雑な製造プロセスに関連している。化学蒸着コーティングは優れたバリア性を有するが、機械的応力に影響を受ける。従って、保護コーティングを塗布する必要があり、このことでコストとより時間のかかるプロセスステップも増加する。さらに、コーティングは多くの場合、所望の美的要件を満たしていない。例えば、AlOxコーティングは透明ではなく金属的である。
【0006】
基材をコーティングするためのプロセスはすでに多数存在するが、すべてのプロセスは1つまたは複数の欠点を有する。従って、良好な気体および水分バリア性を備えた、改善された、好ましくは透明な包装溶液が必要である。
【0007】
一般に、コーティング用途のポリマーおよびコポリマーの水性分散液は、有機溶媒ベースの混合物および上記のプロセスと比較して、取り扱いが容易であり、可燃性が低く、健康への損傷が少ないため通常好ましい。さらに、有機溶媒ベースの混合物が使用される場合、溶媒は得られるコーティングの特性に影響を与える可能性があり、これは望ましくない。
【0008】
c)少なくとも1つのメタセシス触媒、および少なくとも1つの界面活性物質d)、および、場合によりe)さらなる添加剤の存在下での、a)少なくとも1つの低水溶性環状オレフィンの、場合により、さらにb)環状および/または非環状オレフィンの開環メタセシス重合によって水性ポリアルケナマー分散液を調製する方法において、前記分散液がミニ乳化重合によって調製されることを特徴とする方法が、DE19859191A1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第19859191号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
水性分散液を製造する方法はすでに存在するが、安定した溶液または分散液を達成するためにホモポリマーおよびコポリマーを水と混合することはかなり困難であり、ポリマーの構造を望ましくない方法で変更するメタロセン触媒や開環重合を使用せずに、優れた気体バリア性および水分バリア性を備える包装システム用の透明なコーティングを提供するホモポリマーまたはコポリマーの水性分散液を製造する新しい方法が必要とされている。
【0011】
驚くべきことに、本発明者らは、少なくとも1つの環状オレフィンコポリマー、少なくとも1つの界面活性剤、および水を含む新規の水性分散液によって問題を解決できることを見出した。この水性分散液は、(メタロセン)触媒または開環重合を使用せずに提供できる。場合により、水性分散液は、少なくとも1つの接着促進剤、および/または少なくとも1つのフィルム形成樹脂、および/または少なくとも1つの添加剤を含む。少なくとも1つの接着促進剤は、例えば、ポリエステル樹脂であり得る。それにより、得られたコーティングのポリオレフィン基材への接着性および気体バリア性は、水に分散させずに塗布される環状オレフィンコポリマーのコーティングと比較して、水分バリア性を変えることなくさらに改善される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、本発明は、第1の態様において、A)少なくとも1つの環状オレフィンコポリマー、B)少なくとも1つの界面活性剤、場合によりC)少なくとも1つの接着促進剤、場合によりD)少なくとも1つのフィルム形成樹脂、場合によりE)少なくとも1つの添加剤、およびF)水を含んでなる、または、上記からなる水溶液に関する。
【0013】
第2の態様では、水性分散液を製造する方法が提供され、この方法は、
(i)A)少なくとも1つの環状オレフィンコポリマーを適当な溶媒に溶解し、場合によりB)少なくとも1つの界面活性剤、および/または、場合によりC)少なくとも1つの接着促進剤、および/または、場合によりD)少なくとも1つのフィルム形成樹脂、および/または、場合によりE)少なくとも1つの添加剤を加える工程、
(ii)B)が工程(i)で加えられていない場合、任意に水相をB)少なくとも1つの界面活性剤、好ましくは陰イオン界面活性剤および/または非イオン界面活性剤と混合する工程と、
(iii)B)が工程(i)で加えられていない場合、工程(i)の溶液を、任意にB)少なくとも1つの界面活性剤を含む水相と混合する工程、および、
(iv)前記使用済みの溶媒を濃縮する工程ステップ、を含んでなる、または、上記工程からなる。
【0014】
第3の態様では、水性分散液を製造する方法が提供され、この方法は、
(i)押出機にA)少なくとも1つの環状オレフィンコポリマー、場合によりB)少なくとも1つの界面活性剤、および/または、場合によりC)少なくとも1つの接着促進剤、および/または、場合によりD)少なくとも1つのフィルム形成樹脂、および/または、場合によりE)少なくとも1つの添加剤を供給する工程、
(ii)水を前記押出機に、好ましくは押出機の高せん断領域内に、好ましくは押出し工程の間に加える工程、ここで、水は工程(i)でB)が加えられていない場合、任意にB)少なくとも1つの界面活性剤と、および/または、C)が存在し、工程(i)で加えられていない場合、任意にC)少なくとも1つの接着促進剤と、および/または、D)が存在し、工程(i)で加えられていない場合、任意にD)少なくとも1つのフィルム形成樹脂と、および/または、E)が存在し、工程(i)で加えられていない場合、任意にE)少なくとも1つの添加剤と混合される、および、
(iii)工程(ii)によって得られる水性分散液を前記押出機から移送する工程、を含んでなる、または、上記工程からなる。
【0015】
第4の態様では、水性分散液を製造する方法が提供され、この方法は、
(i)A)少なくとも1つの環状オレフィンコポリマー、B)少なくとも1つの界面活性剤、場合によりC)前記少なくとも1つの接着促進剤、および/または、場合によりD)少なくとも1つのフィルム形成樹脂、および/または、場合によりE)少なくとも1つの添加剤を溶融する工程、
(ii)反応チャンバーにおいて、工程(i)の混合物を移動させる工程、
(iii)反応チャンバーにおいて、工程(ii)と同時に、100℃を超えるが好ましくは200℃未満の温度を有する水を移動させる工程、
(iv)反応チャンバーにおいて、工程(ii)の混合物と工程(iii)の水とを同時に、キャリアガス、例えば、N2、H2またはアルゴンに移送する工程、および、
(v)工程(iv)によって得られる混合物を前記反応チャンバーから移送する工程、を含んでなる、または、上記工程からなる。
【0016】
さらに、第5の態様では、少なくとも1つの基材および少なくとも1つのコーティング層を含む物品が提供され、この物品は、本発明の水性分散液を基材上に塗布し、その後前記物品を加熱することにより乾燥させることによりコーティング層を得ることにより得られ得る。
【0017】
最後に、第6の態様では、基材をコーティングするための本発明の水性分散液の使用が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で使用される「1つまたは複数」は、「少なくとも1つ」に関連し、1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくはそれを超える言及種を含む。同様に、「少なくとも1つ」は「1つ以上」、つまり1、2、3、4、5、6、7、8、9以上を意味する。任意の成分に関して本明細書で使用される「少なくとも1つ」は、化学的に異なる分子の数、すなわち、言及種の異なるタイプの数を指すが、分子の総数を指すものではない。例えば、「少なくとも1つの環状ポリオレフィンコポリマー」は、定義の範囲内にある少なくとも1つのタイプのコポリマーが水性分散液の一部であり得るが、この定義に含まれる2つ以上の異なるコポリマータイプが存在し得ることも意味する。
【0019】
小数点以下の桁数なしで明記された数値は、小数点以下1桁で明記された完全な値を指す。例えば、「99%」は特に明記されない限り「99.0%」を意味する。
【0020】
数値と併せた「おおよそ」または「約」という表現は、特に明記されない限り、与えられた数値に対して±10%、好ましくは±5%、より好ましくは±1%の変動を指す。
【0021】
水性分散液または水性分散液の固形分に関して本明細書に示されるすべてのパーセンテージは、特に明記されない限り、それぞれの水性分散液または水性分散液の固形分の総重量に対する重量%(重量%)に関する。
【0022】
本明細書で使用される場合、「ホモポリマー」という用語は単一のモノマー種から調製されたポリマーを意味する。「コポリマー」という用語は、少なくとも2つのモノマー種から調製されたポリマーを意味する。
【0023】
「界面活性剤」、「乳化剤(emulsifier)」および「乳化剤(emulsifying agent)」という用語は、この用途では交換可能に使用される。
【0024】
「添加剤」という用語は、水性分散液の特定の特性を達成するために、水性分散液の分野の当業者によって水溶液に添加される任意の一般的な成分または化合物であり得る。さらに、本発明によれば、この用語は、少量、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満、最も好ましくは0.01重量%未満の、水性分散液中で形成し得る任意の不純物および/または反応生成物または副生成物を包含する。
【0025】
本発明のこれらおよび他の態様、特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲において当業者に明らかになる。本発明の一態様からの各特徴は、本発明の他の任意の態様で使用できる。さらに、特に明記しない限り、一実施形態からの各特徴は、別の実施形態からの他のすべての特徴と組み合わせることができる。さらに、本明細書に含まれる実施例は、本発明を説明および例示することを意図しているが、それを限定するものではなく、特に、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0026】
本発明によれば、水性分散液は、A)少なくとも1つの環状オレフィンコポリマー、B)少なくとも1つの界面活性剤、任意選択でC)少なくとも1つの接着促進剤、任意選択でD)少なくとも1つのフィルム形成樹脂、任意選択でE)少なくとも1つの添加剤、およびF)水を含む、またはから成る。
【0027】
好ましい実施形態では、水性分散液が、A)少なくとも1つの環状オレフィンコポリマーを含み、この少なくとも1つの環状オレフィンコポリマーは、
i)C5~C12シクロアルケンと少なくとも1つのC2~C10アルキレン、好ましくはノルボルネンとエチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキシレンおよびオクチレンのうちの少なくとも1つ、より好ましくはノルボルネンとエチレンを共重合させることによって得られ、および/または、
ii)DIN EN ISO 11357-1:2017-02、-2:2014-07、または-3:2018-07に従って測定される、6~138℃の、好ましくは33~78℃の、最も好ましくは65℃のガラス転移温度Tgを有し、および/または、
iii)DIN EN ISO 1183-1:2013-04に従って測定された、905~1200kg/m3の、好ましくは1000~1050kg/m3の密度を有し、および/または、
iv)DIN EN ISO 527-3:2003-07に従って測定される、1500~2500MPaの、好ましくは1600~1800MPaの機械方向の引張弾性率を有し、および/または、
v)DIN EN ISO 527-3:2003-07に従って測定される、40~70 MPaの、好ましくは50~60MPaの機械方向の破断強度を有し、および/または、
vi)DIN EN ISO 527-3:2003-07に従って測定される、2.0~4.0%の、好ましくは2.3~3.6%の機械方向の破断点伸度を有し、および/または、
vii)0.5~15.0g/10分の、好ましくは3.5~9.5g/10分の、230℃、2.16kg負荷における溶融流量を有し、および/または、
viii)水性分散液の固形分に基づいて、5~99重量%、好ましくは50~95重量%で存在し、および/または、
ix)水性分散液中で、D50値として50~500nmの、動的光散乱によって測定された平均粒度を有する。
【0028】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの環状オレフィンコポリマーは、C5~C12シクロアルケンと少なくとも1つのC2~C10アルキレン、好ましくはノルボルネンとエチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキシレンおよびオクチレンのうちの少なくとも1つ、より好ましくはノルボルネンとエチレンを少なくとも1つのメタロセン触媒の存在下共重合させることによって得られる。得られたコポリマーは本発明で用いられ、これは、本質的にメタロセン触媒を含まず、好ましくは、コポリマーの総重量に基づいて0.001重量%未満、より好ましくはコポリマーの総重量に基づいて0.000001重量%未満でメタロセン触媒を含み、最も好ましくはメタロセン触媒を含まない。
【0029】
別の好ましい実施形態において、少なくとも1つの環状オレフィンコポリマーは、C5~C12シクロアルケンと少なくとも1つのC2~C10アルキレン、好ましくはノルボルネンとエチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキシレンおよびオクチレンのうちの少なくとも1つ、より好ましくはノルボルネンとエチレンの連鎖共重合によって得られる。コポリマーの組成は、好ましくは、コポリマー化混合物中の単一モノマーの相対濃度に依存する。
【0030】
環状オレフィンコポリマーにおいて高いノルボルネン含量を用いることによって、得られるコーティング層の耐熱性が高まる。
【0031】
好ましい実施形態では、水性分散液は、メタロセン触媒および/またはメタセシス触媒を本質的に含まず、好ましくはそれらを水性分散液の総重量に基づいて0.0001重量%未満、より好ましくは0.0000001重量%未満で含み、最も好ましくはそれらを含まない。
【0032】
本明細書で使用される用語「Tg」はガラス転移温度を指す。Tgは、DIN EN ISO 11357-1:2017-02、-2:2014-07、または-3:2018-07に従って決定できる。ガラス転移温度Tgは、示差走査熱量測定(DSC)によって決定されることが好ましい。Tgを測定するためのさらに一般的な手法は、熱機械分析(TMA)または動的機械分析(DMA)である。
【0033】
D50値は、カン内部のコーティングの分散ポリマー成分の50体積%が、所定の値よりも小さい大きさを有することを示している。好ましくは、D50値は、体積加重累積粒度分布から決定できる。粒度分布曲線は、好ましくは、当業者によく知られている同様の動的光散乱法を用いて測定できる。好ましくは、本発明の文脈において、粒度は、分散液の固形分が脱イオン水により1g/kgに調整されるという条件で、20℃の温度で本発明の水性分散液中で直接測定される(κ<1μScm-1)。
【0034】
好ましい実施形態では、無色および/または透明および/または半透明のコーティング層が水性分散液から得られる。好ましくは、無色および/または透明および/または半透明のコーティング層の透過率は、>0.85(>85%)、より好ましくは>0.9(>90%)である。本発明のコーティング層の透過率は、本発明の水性分散液を基準材料に塗布することによって決定される。本発明のコーティング層を含まない基準材料のみの透過率は、バックグラウンド対照としての機能を果たし、決定された透過率値は、コーティングされた基準材料の透過率から差し引かれる。好ましくは、透過率は、角度0℃および波長390~700nmの縞状の入射光を用いたUV-Vis分光光度法によって決定される。基準材料として、透明な二軸共押出ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用でき、これは、三菱から「Hostaphan RNK」の商品名で市販されている。
【0035】
水蒸気透過率(MVTR)は、DIN EN ISO 15106-3:2005-05に従って測定される、物質またはコーティング層を通過する水蒸気の量である。
【0036】
好ましくは、本発明の水性分散液によって得られるコーティング層の酸素透過性は、23℃および50%RHでASTM D3985-17に従って測定され、150~300cm3/(m2・day・bar)、より好ましくは160~200cm3/(m2・day・bar)の範囲である。
【0037】
さらに好ましい実施形態では、(i)本発明の水性分散液によって得られるコーティング層のコーティング厚さは、0.1~15g/m2、好ましくは5~10g/m2、より好ましくは7~9.5g/m2であり、および/または
ii)コーティング層は、38℃、90%RHで7~60g/(m2・day)、好ましくは12~50g/(m2・day)のMVTRを有する。
【0038】
適切な環状オレフィンコポリマーは、TOPAS Advances Polymers GmbH(フランクフルト、ドイツ)から、TOPAS 9506F-500(Tg 65℃)、TOPAS 8007F-600(Tg 780℃)、TOPAS 7010F-600 (Tg 110℃)、TOPAS 6013F-04(Tg 138℃)、TOPAS 9903D-10(Tg 33℃)、TOPAS 8007F-04 (Tg 78℃)、TOPAS 5013F-04 (Tg 136℃)、またはTOPAS E-140(Tg 6℃)の商品名で市販されている。好ましくは、それらはアモルファス熱可塑性樹脂であり、および/またはその剛性は、Tgより約10℃低い温度まで維持される。
【0039】
好ましい実施形態では、ノルボルネンとエチレンから共重合された環状オレフィンコポリマーであるTOPAS 9506F-500(Tg 65℃)が、本発明の水性分散液を製造するために使用される。
【0040】
本発明によれば、少なくとも1つの環状オレフィンコポリマーA)は、水性分散液の成分B)の化合物、ならびに任意の成分C)、D)、およびE)とは異なる。
【0041】
水性分散液は、好ましくはその水性分散液を安定化するために、さらにB)少なくとも1つの界面活性剤を含む。
【0042】
好ましい実施形態では、
i)前記少なくとも1つの界面活性剤が、陰イオンもしくは非イオン界面活性剤またはそれらの混合物であり、および/または、
ii)前記少なくとも1つの界面活性剤が、アルキル硫酸塩、好ましくは脂肪アルコールアルキル硫酸塩、より好ましくはラウリル硫酸ナトリウムを含み、および/または、
iii)前記少なくとも1つの界面活性剤が、脂肪アルコールアルコキシレート、好ましくは直鎖C12-18脂肪アルコールアルコキシレート、より好ましくは10~15個のエトキシ単位を有する直鎖C16-18アルコールエトキシレートを含み、および/または、
iv)前記なくとも1つの界面活性剤が、好ましくはエチレン、プロペン、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン、1,3-ブタジエンおよび2-メチルブタ-1,3-ジエンから選択される少なくとも1つのオレフィン性モノマーを、α,β-不飽和カルボン酸、好ましくは桂皮酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、アクリル酸およびメタクリル酸から選択される少なくとも1つのコモノマーと反応させることによって得られるコポリマーを含み、得られたコポリマーは、好ましくは、少なくとも60mgKOH/g、より好ましくは200mgKOH/g未満、より好ましくは100mgKOH/g未満の酸価を有し、および/または、
v)前記少なくとも1つの界面活性剤が、水性分散液の固形分に基づいて、0.01~10重量%、好ましくは2~7重量%で存在する。
【0043】
酸価は固有値であり、本発明に従って実験に基づいて決定する必要があり、コポリマーまたはコポリマーブレンド中の遊離酸基の数の測定値である。好ましくは、酸価は、秤量した量の基準物質を、メタノールと蒸留水の混合溶媒に体積比3:1で溶解し、次いで、メタノール中の0.05mоl/LのKOHで電位差滴定することによって決定される。好ましくは、電位差測定は、組み合わせ電極(MetrohmのLL-Solvotrode(登録商標)、参照電解質エチレングリコール中0.4モル/L臭化テトラエチルアンモニウム)を使用して実施される。本発明に記載されている酸価は、電位差滴定曲線の転換点で、コポリマーおよび/またはコポリマーブレンド1グラムあたりの添加されたKOHのミリグラム量に対応する。
【0044】
上記少なくとも1つの界面活性剤の酸価は、好ましくは少なくとも60mgKOH/gであり、これは水性分散液の表面活性を向上させる。さらに、環状オレフィンコポリマーA)との相溶性を向上させるために、上記少なくとも1つの界面活性剤の酸価は、好ましくは200mgKOH/g未満、より好ましくは100mgKOH/g未満である。
【0045】
さらに好ましい陰イオン界面活性剤は、C8-18アルキルベンゼンスルホン酸塩、オレフィンスルホン酸塩、C12-18アルカンスルホン酸塩、スルホン酸エステル、アルキル(アルケニル)硫酸塩、脂肪アルコールエーテル硫酸塩およびそれらの混合物からなる群から選択できる。好ましくは、陰イオン界面活性剤は、少なくとも1つのC8-18アルキルベンゼンスルホン酸塩から選択される。
【0046】
本発明の水性分散液は、式(T1)
【化1】
〔式中、R
1は、アルキル、アリールまたはアルキルアリール官能基から選択される、直鎖または分岐、置換または非置換官能基であり、基-A-は、化学結合または官能基-(OZ)
nOであり、
ここで、OZは、エチレンオキシド(EO)基またはプロピレンオキシド(PO)基であり、nは、1~50、好ましくは1~20、より好ましくは2~10の整数であり、特に2、3、4、5、6、7または8であり、Y
+は一価の陽イオンまたはn価の陽イオンのn番目の部分である〕
で示される少なくとも1つの陰イオン界面活性剤を含むことが好ましい。
【0047】
式(T1-1):
【化2】
のアルキルエーテル硫酸塩が好ましい。
【0048】
この式(T1-1)において、R1は、直鎖または分枝、置換または非置換アルキル官能基、好ましくは直鎖非置換アルキル官能基、特に脂肪アルコール官能基である。好ましい官能基R1は、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル官能基から選択され、上述の化合物から、偶数のC原子を有するものが好ましい。特に好ましい官能基R1は、C12-C18脂肪アルコール、例えば、ココナッツ脂肪アルコール、獣脂脂肪アルコール、ラウリル、ミリスチル、セチルもしくはステアリルアルコール、またはC10-C18オキソアルコールに由来する。Y+およびnは、式(T1)で先に述べたとおりである。
【0049】
式(T1-1)のさらに好ましい実施形態において、OZは、エチレンオキシド(EO)基またはプロピレンオキシド(PO)基、好ましくはエチレンオキシド基である。指数nは、1~50、好ましくは1~20、特に2~10の整数である。より好ましくは、nは2、3、4、5、6、7または8である。式(T1-1)によれば、Y+は一価カチオンまたはn価カチオンのn番目の部分であり、この場合、Na+またはK+を含むアルカリ金属イオンが好ましく、Na+が特に好ましい。さらなるカチオンは、NH4
+、1/2Zn2+、1/2Mg2+、1/2Ca2+、1/2Mn2+、およびそれらの混合物から選択できる。
【0050】
水性分散液は、式(T1-2):
【化3】
〔式中、k=11~19、n=2、3、4、5、6、7または8である〕
で示される脂肪アルコールエーテル硫酸塩から選択される少なくとも1つのアルキルエーテル硫酸塩を含み得る。
【0051】
より好ましい典型例は、2個のEO(k=11~13、n=2)を有するC12-14脂肪アルコールエーテル硫酸塩である。示されているエトキシル化度は、特定の製品の整数または分数に相当し得る統計的平均を表している。好ましいアルコキシレート/エトキシレートは、狭い同族体分布を有する(狭い範囲のエトキシレート、NRE)。
【0052】
本発明の水性分散液は、式(T1-1)、(T1-2)、(T1-3)、(1-3a)の少なくとも1つの化合物またはそれらの混合物を含むことが好ましい。
【0053】
化合物(T1-3)は以下の式を有する。
【化4】
〔式中、R’およびR’’は、互いに独立して、Hまたはアルキルであり、共に9~19個、好ましくは9~15個、特に9~13個のC原子を含み、Y
+は一価のカチオンまたはn価のカチオンのn番目の部分、特にNa
+を示す。〕
【0054】
さらに好ましい典型例は、式(T1-3a)によって表現される。
【化5】
【0055】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの界面活性剤は、陰イオンもしくは非イオン界面活性剤またはそれらの混合物を含み、および/または、
少なくとも1つの界面活性剤は、アルキル硫酸塩、好ましくは脂肪アルコールアルキル硫酸塩、より好ましくはラウリル硫酸ナトリウムを含む。適当な陰イオン界面活性剤は、BASF(モンハイム、ドイツ)から、Texapon K 12P(0.3重量%)の商品名で市販されている。
【0056】
本発明の水性分散液は、少なくとも1つの界面活性剤として少なくとも1つの非イオン界面活性剤を含み得る。好ましい実施形態では、本発明の水性分散液は、陰イオン界面活性剤に加えて、少なくとも1つの非イオン界面活性剤を含む。適当な追加の非イオン界面活性剤としては、アルコキシル化脂肪酸アルキルエステル、アルコキシル化脂肪酸アミド、ヒドロキシル化アルキルグリコールエーテル、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド、アルキルフェノールポリグリコールエーテル、アミンオキシド、アルキル(ポリ)グルコシドおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0057】
特に好ましくは、本発明の薬剤は、非イオン界面活性剤として式(T2):
【化6】
〔式中、
・R2は、直鎖または分岐C8-C18アルキル官能基、アリール官能基、またはアルキルアリール官能基であり、
・XOは互いに独立して、エチレンオキシド(EO)基またはプロピレンオキシド(PO)基であり、
・mは1~50までの整数である〕
で示される少なくとも1つの化合物を含む。
【0058】
好ましくは、式(T2)の官能基R2は、C12-C18脂肪アルコール、例えば、ココナッツ脂肪アルコール、獣脂脂肪アルコール、ラウリル、ミリスチル、セチルもしくはステアリルアルコール、またはC8-C18オキソアルコールに由来する。
【0059】
式(T2)によれば、XOは好ましくはエチレンオキシド基である。
【0060】
式(T2)によれば、指数mは、好ましくは1~20、特に2~10の数である。好ましくは、mは2、3、4、5、6、7または8である。
【0061】
好ましく使用される非イオン界面活性剤は、好ましくはアルコキシル化、より好ましくはエトキシル化、特に好ましくは8~18個のC原子、および平均してアルコール1モルあたり4~12モルのエチレンオキシド(EO)を有する第一級アルコールであり、アルコール官能基は、直鎖もしくは好ましくは2位にメチル分岐していてよく、またはオキソアルコール官能基に通常存在するように、直鎖およびメチル分岐した官能基の混合物を含有していてよい。しかしながら、例えばココナッツ、ヤシ、獣脂脂肪もしくはオレイルアルコールなどの12-18個のC原子を有する天然起源のアルコールの直鎖官能基を有し、アルコール1モル当たり平均4~8個のEOを有するアルコールエトキシレートが特に好ましい。好ましいエトキシル化アルコールの例は、4個のEOまたは7個のEOを有するC12-14アルコール、7個のEOを有するC9-11アルコール、5個のEO、7個のEOもしくは8個のEOを有するC13-15アルコール、5個のEOもしくは7個のEOを有するC12-18アルコール、およびそれらの混合物である。好ましいアルコールエトキシレートは、狭い同族体分布を有する(狭い範囲のエトキシレート、NRE)。これらの好ましい非イオン界面活性剤に加えて、またはその代わりに、12を超えるEOを有する脂肪アルコールも使用できる。これらの例は、14EO、25EO、30EO、もしくは40EOの獣脂脂肪アルコールである。分子内にEO基およびPO基を共に含む非イオン界面活性剤もまた、本発明に従って使用できる。さらに、(より高度に)分岐したエトキシル化脂肪アルコールと非分岐エトキシル化脂肪アルコールの混合物、例えば、7EOを有するC16-18脂肪アルコールと7EOを有する2-プロピルヘプタノールとの混合物が好ましい。特に、本発明の水性分散液は、好ましくは、非イオン界面活性剤として、7EOを有するC12-18脂肪アルコールまたは7EOを有するC13-15オキソアルコールを含む。
【0062】
非イオン界面活性剤はまた、式R1R2R3NOのアミンオキシドであり得、式中、R1、R2およびR3は、互いに独立して、置換されていてもよいC1-C30炭化水素鎖である。特に好ましく使用されるアミンオキシドは、R1がC12-C18アルキルであり、R2およびR3が、互いに独立して、C1-C4アルキル、特にC12-C18アルキルジメチルアミンオキシドであるものである。適当なアミンオキシドの代表的な例は、N-ココナッツアルキル-N,N-ジメチルアミンオキシド、N-獣脂アルキル-N,N-ジヒドロキシエチルアミンオキシド、ミリスチル/セチルジメチルアミンオキシドまたはラウリルジメチルアミンオキシドである。
【0063】
本発明の水性分散液は、少なくとも1つの界面活性剤を含み、この少なくとも1つの界面活性剤が、好ましくは陰イオンもしくは非イオン界面活性剤またはそれらの混合物であり、および/またはこの少なくとも1つの界面活性剤が、脂肪アルコールアルコキシレート、好ましくは直鎖C12-18脂肪アルコールアルコキシレート、より好ましくは10~15個のエトキシ単位を有する直鎖C16-18アルコールエトキシレート、最も好ましくはセテアレス-12を含み、および/またはこの少なくとも1つの界面活性剤が、水性分散液の固形分に基づいて、0.01~10重量%、好ましくは2~7重量%で存在する。
【0064】
適当な非イオン界面活性剤は、BASF(ルートヴィヒスハーフェン、ドイツ)からEumulgin(登録商標)B1(セテアレス-12)の商品名で市販されている。それは70~75のヒドロキシル価を有する。
【0065】
本発明によれば、少なくとも1つの界面活性剤B)は、水性分散液の成分A)の化合物、ならびに任意の成分C)、D)およびE)とは異なる。
【0066】
環状オレフィンコポリマーおよび界面活性剤に加えて、共樹脂も本発明の水性分散液中に含有することができ、好ましくは、共樹脂はC)少なくとも1つの接着促進剤であり、より好ましくはこの少なくとも1つの接着促進剤は、得られるコーティング層の、特にポリエチレンテレフタレートまたはポリオレフィン基材に対する接着性を高める。
【0067】
好ましい実施形態では、本発明の水性分散液は少なくとも1つの接着促進剤C)を含み、
i)前記少なくとも1つの接着促進剤が、10~100mgKOH/g、好ましくは20~60mgKOH/gのヒドロキシル価を有し、および/または、
ii)前記少なくとも1つの接着促進剤が、ヒドロキシル基、カルボン酸基、ホスホン酸基および/またはリン酸基を含み、酸価およびヒドロキシル価の合計が好ましくは20mgKOH/gを超える、より好ましくは60mg/KOHを超える樹脂から選択され、および/または、
iii)前記少なくとも1つの接着促進剤が、5~75mgKOH/g、好ましくは20~30mgKOH/gの酸価を有する少なくとも1つのポリエステル樹脂を含み、および/または、
iv)前記少なくとも1つの接着促進剤が少なくとも1つのポリエステル樹脂を含み、この樹脂は、DIN EN ISO 11357-1:2017-02、-2:2014-07、または-3:2018-07に従って測定されたガラス転移温度Tgが0~35℃、好ましくは10~25℃であり、および/または、
v)少なくとも1つのポリエステル樹脂が、水性分散液の固形分に基づいて、0.5~20重量%、好ましくは1~7重量%で存在する。
【0068】
それぞれに定義された参照セット中の遊離ヒドロキシル基の数の尺度としてのヒドロキシル価、例えば樹脂1グラム当たりのヒドロキシル価は、好ましくは電位差滴定によって実験に基づいて決定できる。この目的のために、好ましくは、秤量した量の参照物質を、ピリジン中0.1mоl/Lの無水フタル酸の反応溶液に130℃で45分間溶解し、その後、ピリジンの反応溶液の容量の1.5倍、次いで反応溶液の初期容量の1.5倍の脱イオン水(κ<μScm-1)を追加した。好ましくは、放出された量のフタル酸は、この混合物中で1M水酸化ナトリウム溶液によって滴定される。好ましくは、電位差測定は、組み合わせ電極(LL Solvotrode(登録商標)the Fa.メトローム、参照電解質:エチレングリコール中臭化テトラエチルアンモニウム0.4mol/L)を使用して実施される。電位差滴定曲線の変曲点における参照量1グラムあたりのNaOHの添加量は、好ましくは、ヒドロキシル価に直接対応する理論的な添加KOHの量に変換される。
【0069】
好ましい実施形態では、接着促進剤、好ましくは本発明に適したポリエステル樹脂は、好ましくは少なくとも2の有効酸官能価を有するカルボン酸(またはそれらの無水物、またはそれらのエステル)を、好ましくは少なくとも2のヒドロキシ官能価を有するポリオールと反応させることによって調製される。反応物質のヒドロキシ基に対するカルボン酸基のモル当量比は、得られるポリエステルがヒドロキシル官能基および所望の分子量を有するように選択される。本発明の水性分散液に含有できるポリエステル樹脂は、環状カルボン酸エステルと、好ましくは少なくとも2のヒドロキシ官能価を有するポリオールとを反応させることにより調製できる。
【0070】
接着促進剤、好ましくはポリエステル樹脂の調製に有用な多官能カルボン酸の例としては、ベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドビシクロ-2,2,1,5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸、テトラクロロフタル酸、シクロヘキサン二酸、コハク酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アゼラン酸、マレイン酸、トリメシン酸、3,6-ジクロロフタル酸、アジピン酸、およびセバシン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
接着促進剤、好ましくはポリエステル樹脂の調製に有用なポリオールの例としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ビストリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ビストリメチロールエタン、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、ペンタエリスリトール、ビスペンタエリスリトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-、1,2-および1,4-ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、2,2-ビス(4-シクロヘキサノール)プロパン、ネオペンチルグリコール、2,2,3-トリメチルペンタン-1,3-ジオール、1,4-ジメチロールシクロヘキサン、および2,2,4-トリメチルペンタンジオールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
接着促進剤は、好ましくは脂肪族ポリエステル樹脂である。脂肪族ポリエステル樹脂は芳香族基を含まず、場合により炭素-炭素二重結合および/または炭素-炭素三重結合を含んでいてもよい。脂肪族ポリエステル樹脂は、好ましくは、芳香族基を含まず、芳香族基を含むように形成後に修飾されないモノマーから調製される。
【0073】
接着促進剤は、好ましくは脂肪族ポリエステルであり、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つの脂肪族ポリオールなどの、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つのポリオールの残基を含む。ポリエステルを調製できる少なくとも2つのヒドロキシル基を有する脂肪族ポリオールの例としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ビストリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ビストリメチロールエタン、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、ペンタエリスリトール、ビスペンタエリスリトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-、1,2-および1,4-ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、2,2-ビス(4-シクロヘキサノール)プロパン、ネオペンチルグリコール、2,2,3-トリメチルペンタン-1,3-ジオール、1,4-ジメチロールシクロヘキサン、および2,2,4-トリメチルペンタンジオールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
さらなる実施形態において、接着促進剤は脂肪族ポリエステルであり、その各ポリオール残基は少なくとも3つのヒドロキシル基を有し、好ましくは脂肪族ポリエステルであり、その各ポリオール残基は少なくとも3つのヒドロキシル基を有する脂肪族ポリオール残基である。ポリエステルを調製できる少なくとも3つのヒドロキシル基を有する脂肪族ポリオールの例としてはグリセリン、トリメチロールプロパン、ビストリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ビストリメチロールエタン、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、ペンタエリスリトール、およびビスペンタエリスリトールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
接着促進剤は、好ましくは、少なくとも1つの環状カルボン酸エステルの残基を含む。ポリエステルは脂肪族ポリエステルであり、少なくとも1つの脂肪族環状カルボン酸エステルなどの少なくとも1つの環状カルボン酸エステルの残基を含む。
【0076】
いくつかの実施形態において、本発明の水性分散液に添加可能なポリエステルを調製できる環状カルボン酸エステルは、以下の式(T-3)によって表すことができる。
【化7】
【0077】
式(T-3)に関して、およびいくつかの実施形態によれば、
R3は、二価の直鎖もしくは分枝C2-C20アルキル、または二価の直鎖もしくは分枝C2-C10アルキル、または二価の直鎖もしくは分枝C2-C5アルキルから選択され、これらはそれぞれ、場合により、ヒドロキシル、チオール、およびF、Cl、Br、Iなどのハロゲンから選択される少なくとも1つの置換基を含んでいてもよい。
【0078】
好ましい実施形態では、接着促進剤は、脂肪族ポリエステルであり、環状カルボン酸エステルから調製され、(対応して環状カルボン酸エステルの少なくとも1つの残基を含み)、環状カルボン酸エステルはイプシロン-カプロラクトン、デルタ-バレロラクトンおよびそれらの組み合わせから選択される。
【0079】
さらに好ましい実施形態では、本発明の水性分散液に適した接着促進剤、好ましくは、ポリエステル樹脂は、3つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つのポリオールの残基および少なくとも1つの環状カルボン酸エステルの残基を含む。ポリエステルは、3つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つのポリオールの残基、および少なくとも1つの環状カルボン酸エステルの残基から本質的になる。ポリエステルは、好ましくは脂肪族ポリエステルであり、3つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つの脂肪族ポリオールの残基、および少なくとも1つの脂肪族環状カルボン酸エステルの残基から本質的になる。より好ましくは、接着促進剤は脂肪族ポリエステルであり、3つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つの脂肪族ポリオールの残基、および少なくとも1つの脂肪族環状カルボン酸エステルの残基から本質的になり、および/または、脂肪族ポリエステルの総重量に基づいて、1重量%未満、もしくは0.5重量%未満、もしくは0.1重量%未満の(i)3つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つの脂肪族ポリオールの残基、および(ii)少なくとも1つの脂肪族環状カルボン酸エステルの残基以外の残基を含む。さらに好ましい実施形態では、ポリエステルは、好ましくは脂肪族ポリエステルであり、3つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つのポリオールの残基、および少なくとも1つの環状カルボン酸エステルの残基から本質的になり、(i)3つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つの脂肪族ポリオールの残基、および(ii)少なくとも1つの脂肪族環状カルボン酸エステルの残基以外の残基を含まない。
【0080】
市販の適当な接着促進剤、好ましくは、ポリエステル樹脂は、例えば、Evonik(エッセン、ドイツ)製のTego AddBond LTW(5重量%)であり、これは、DIN EN ISO 11357-2:2014-07によるガラス転移温度が約20℃であり、DIN EN ISO 2114:2002-06による酸価が20~30mgKOH/gである。DIN EN ISO 4629-1:2016-12または-2:2016-12によるヒドロキシル価は約30mgKOH/gである。
【0081】
本発明によれば、少なくとも1つの接着促進剤C)は、水性分散液の成分A)およびB)の化合物、ならびに任意の成分D)およびE)とは異なる。
【0082】
好ましい実施形態では、水性分散液は、A)少なくとも1つの環状オレフィンコポリマー、B)少なくとも1つの界面活性剤、C)少なくとも1つの接着促進剤、およびF)水を含む、またはこれらからなる。
【0083】
別の好ましい実施形態では、水性分散液は、A)少なくとも1つの環状オレフィンコポリマー、B)少なくとも1つの界面活性剤、C)少なくとも1つの接着促進剤、D)少なくとも1つのフィルム形成樹脂、およびF)水を含む、またはこれらからなる。
【0084】
別の好ましい実施形態では、水性分散液は、A)少なくとも1つの環状オレフィンコポリマー、B)少なくとも1つの界面活性剤、D)少なくとも1つのフィルム形成樹脂、およびF)水を含む、またはこれらからなる。
【0085】
好ましい実施形態では、水性分散液は、少なくとも1つのフィルム形成樹脂を含み、
i)前記少なくとも1つのフィルム形成樹脂は塗布後に100℃未満の温度で凝集性フィルムを形成し、および/または、
ii)前記少なくとも1つのフィルム形成樹脂はDIN EN ISO 11357-1:2017-02、-2:2014-または-3:2018-07に従って測定されたガラス転移温度が138℃未満、好ましくは78℃未満、最も好ましくは65℃未満であり、および/または、
iii)前記少なくとも1つのフィルム形成樹脂は、好ましくはエチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン、1,3-ブタジエンおよび2-メチルブタ-1,3-ジエン、好ましくはエチレンおよび/またはプロピレンから選択される、8個以下の炭素原子を有する少なくとも1つのオレフィン性モノマーを重合させることによって得られるホモおよびコポリマーを含み、および/または、
iv)前記少なくとも1つのフィルム形成樹脂は、イソブチレンを共役ジエン、例えばイソプレン、好ましくはブチルゴムと重合させることによって得られるコポリマーを含み、および/または、
v)前記少なくとも1つのフィルム形成樹脂は、少なくとも1つのオレフィン性モノマー、好ましくは非環式で5個以下の炭素原子を有するオレフィン性モノマー、より好ましくはエチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン、1,3-ブタジエン、2-メチルブタ-1,3-ジエンを、α,β-不飽和カルボン酸、好ましくは桂皮酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、アクリル酸およびメタクリル酸から選択される少なくとも1つのコモノマーと重合させることによって得られるコポリマーを含み、そのコポリマーは、60mgKOH/g未満、好ましくは少なくとも5mgKOH/g、より好ましくは少なくとも10mgKOH/g、さらにより好ましくは少なくとも20mgKOH/gの酸価を有し、および/または
vi)前記少なくとも1つのフィルム形成樹脂は、分散液の固形分に基づいて、0.5~40重量%、好ましくは5~20重量%で存在する。
【0086】
好ましくは、上記フィルム形成樹脂は、化合物A)と共にフィルム形成を確実にするために、少なくとも5mgKOH/gの酸価を有する。しかしながら、フィルム形成樹脂は、化合物Aの安定な分散を維持するために、好ましくは60mgKOH/g未満の酸価を有する。
【0087】
本発明によれば、上記少なくとも1つのフィルム形成樹脂D)は、水性分散液の成分A)およびB)の化合物、ならびに任意の成分C)およびE)とは異なる。
【0088】
好ましい実施形態では、水性分散液は、A)少なくとも1つの環状オレフィンコポリマー、B)少なくとも1つの界面活性剤、C)少なくとも1つの接着促進剤、D)少なくとも1つのフィルム形成樹脂、E)少なくとも1つの添加剤、およびF)水を含む、またはこれらからなる。
【0089】
別の好ましい実施形態では、水性分散液は、A)少なくとも1つの環状オレフィンコポリマー、B)少なくとも1つの界面活性剤、D)少なくとも1つのフィルム形成樹脂、E)少なくとも1つの添加剤、およびF)水を含む、またはこれらからなる。
【0090】
別の好ましい実施形態では、水性分散液は、A)少なくとも1つの環状オレフィンコポリマー、B)少なくとも1つの界面活性剤、C)少なくとも1つの接着促進剤、E)少なくとも1つの添加剤、およびF)水を含む、またはこれらからなる。
【0091】
別の好ましい実施形態では、水性分散液は、A)少なくとも1つの環状オレフィンコポリマー、B)少なくとも1つの界面活性剤、E)少なくとも1つの添加剤、およびF)水を含む、またはこれらからなる。
【0092】
好ましい実施形態では、水性分散液が少なくとも1つの添加剤を含み、
i)前記少なくとも1つの添加剤は、殺生物剤、有機溶媒、可塑剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤、pH調整剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、および/または有機または無機充填剤を含む群から、好ましくは、殺生物剤および/または有機溶媒から選択され、および/または、
ii)前記少なくとも1つの添加剤は、水性分散液の総重量に基づいて、0.0001~20重量%、好ましくは0.01~15重量%で存在する。
【0093】
本発明によれば、水性分散液中に形成され得る少量、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満、より好ましくは0.01重量%未満の任意の不純物および/または任意の反応生成物または副生成物もまた「添加剤」という用語に該当する。
【0094】
本発明の水性分散液に添加できる好ましい殺生物性化合物としては、トリクロサン、重金属特に銀をベースとする化合物、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、酸化亜鉛、二酸化チタン、リン酸ジルコニウム、イソチアゾロン、ベンズイソチアゾリン-3-オン誘導体、10,10’-オキシビスフェノキシアルシン、イソチアゾリン、亜鉛ピリチオン、およびフォルペット(トリクロロメチルチオフタルイミド)などの無機担体が挙げられる。殺生物剤の添加によって、既知の殺生物性化合物を含むコーティング層の殺菌活性が向上し得る。上記以外の殺生物性化合物もまた、本発明の水性分散液において効率的に使用できることが想定される。
【0095】
「殺生物剤」という用語は、生物静力学的活性を有する化合物、すなわち、微生物種が殺される真の殺菌活性に加えて、微生物種の増殖が減少または排除される化合物を指す。本発明によれば、この用語は、真菌、細菌、および他の微生物種に対する活性も含む。
【0096】
本発明の水性分散液に添加できる適当な有機溶媒は、芳香族溶媒、例えばベンズアルデヒド、トルエン、ベンゼン、および塩素化溶媒、非極性有機溶媒、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどのC5-C12炭化水素、ガソリン(石油エーテル)、ノルボルネン、オレイン酸、およびそれらの混合物である。適当な有機溶媒には、芳香族溶媒および/または非極性有機溶媒と極性有機溶媒、例えばエタノール、メタノール、ブタノール、イソプロパノール、アセトン、ブタノンとの混合物も含まれる。好ましい混合物は、特に9:1の量のトルエンおよびイソプロパノールである。
【0097】
本発明によれば、少なくとも1つの添加剤E)は、水性分散液の成分A)およびB)の化合物、ならびに任意の成分C)およびD)とは異なる。
【0098】
好ましい実施形態では、水性分散液は、20~60重量%、好ましくは40~55重量%、より好ましくは45~50重量%の固形分を有する。
【0099】
態様2によれば、本発明は、
(i)A)少なくとも1つの環状オレフィンコポリマーを適当な溶媒に溶解し、場合によりB)少なくとも1つの界面活性剤、および/または、場合によりC)少なくとも1つの接着促進剤、および/または、場合によりD)少なくとも1つのフィルム形成樹脂、および/または、場合によりE)少なくとも1つの添加剤を加える工程、
(ii)B)が工程(i)で加えられていない場合、任意に水相をB)少なくとも1つの界面活性剤、好ましくは陰イオン界面活性剤および/または非イオン界面活性剤と、好ましくは50~100℃、より好ましくは65~80℃、最も好ましくは70~75℃の温度への加熱下で混合する工程、
(iii)B)が工程(i)で加えられていない場合、工程(i)の溶液を、任意にB)少なくとも1つの界面活性剤を含む水相と、高せん断下で、好ましくは新たな容器内で、より好ましくは高せん断ミキサー内で、好ましくは0.1~10分間、より好ましくは0.5~5分間、最も好ましくは0.7~2分間混合する工程、および、
(iv)前記使用済みの溶媒を、好ましくは真空下で、より好ましくは50~500ミリバールで、より好ましくは150~450ミリバールで、最も好ましくは200~400ミリバールで濃縮する工程、
を含んでなる、または、上記工程からなる、水性分散液を製造する方法に関する。
【0100】
本発明による水性分散液を製造するための方法に適した溶媒は、それに限定されないが、例えば、極性有機溶媒、芳香族および/または非極性有機溶媒、好ましくはエタノール、メタノール、ブタノール、イソプロパノール、アセトン、ブタノン、ベンズアルデヒド、トルエン、ベンゼン、塩素化溶媒、C5-C12の直鎖または分岐炭化水素、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、またはオクタン、ガソリン(ペトロールエーテル)、ノルボルネン、オレイン酸、およびそれらの混合物である。芳香族および非極性有機溶媒が好ましい。
【0101】
好ましい実施形態では、溶媒はトルエンとイソプロパノールの混合物である。
【0102】
好ましくは、工程(iii)のせん断は、高せん断ミキサー、より好ましくはバッチ高せん断ミキサーまたはインライン高せん断ミキサー内で行われる。好ましい実施形態では、高せん断ミキサーのインペラ速度は100~1500rpm、より好ましくは200~1000rpmである。
【0103】
好ましい実施形態では、B)が工程(i)で加えられていない場合、工程(i)の溶液および任意にB)少なくとも1つの界面活性剤と混合される水相を、同時に、好ましくは新たな容器に加える。
【0104】
別の好ましい実施形態では、B)が工程(i)で加えられていない場合、工程(i)の溶液を最初に新たな反応容器に加え、その後、任意にB)少なくとも1つの界面活性剤と混合される水相を、高せん断下で段階的に加える。
【0105】
別の好ましい実施形態では、B)が工程(i)で加えられていない場合、任意にB)少なくとも1つの界面活性剤と混合される水相を、最初に新たな反応容器に加え、その後、工程(i)の溶液を高せん断下で段階的に加える。
【0106】
適当な高せん断ミキサーは、例えば、Kady International社、Scarboroughから市販されているKady Mill LT2000である。
【0107】
好ましい実施形態では、工程(i)の溶液、およびB)が工程(i)で添加されていない場合、任意にB)少なくとも1つの界面活性剤と混合される水相は、好ましくは自動的に好ましくは連続プロセス内の新たな反応容器に、より好ましくはインライン高せん断ミキサーを使用することによって加えられる。
【0108】
第3の態様によれば、
(i)押出機にA)少なくとも1つの環状オレフィンコポリマー、場合によりB)少なくとも1つの界面活性剤、および/または、場合によりC)少なくとも1つの接着促進剤、および/または、場合によりD)少なくとも1つのフィルム形成樹脂、および/または、場合によりE)少なくとも1つの添加剤を供給する工程、
(ii)水を前記押出機に、好ましくは押出機の高せん断領域内に、より好ましくは押出し工程の間に加える工程、ここで、水は工程(i)でB)が加えられていない場合、任意にB)少なくとも1つの界面活性剤と、および/または、C)が存在し、工程(i)で加えられていない場合、任意にC)少なくとも1つの接着促進剤と、および/または、D)が存在し、工程(i)で加えられていない場合、任意にD)少なくとも1つのフィルム形成樹脂と、および/または、E)が存在し、工程(i)で加えられていない場合、任意にE)少なくとも1つの添加剤と混合される、および、
(iii)工程(ii)によって得られる水性分散液を前記押出機から移送する工程、
を含んでなる、または、上記工程からなる、本発明の水性分散液を製造する方法がクレームされている。
【0109】
好ましい実施形態では、押出機のスクリュー速度は100~1500rpm、より好ましくは200~1000rpmである。
【0110】
別の好ましい実施形態において、工程(ii)の水または水相は、高せん断下、好ましくは100~1500rpm、より好ましくは200~1000rpmで段階的に添加される。
【0111】
好ましい実施形態では、工程(i)において、押出機に、A)少なくとも1つの環状オレフィンコポリマー、および任意にB)少なくとも1つの界面活性剤、好ましくはエチレンアクリル酸(EAA)を供給する。その後、工程(ii)において、水が押出機に加えられ、ここで、B)が工程(i)で加えられていない場合、水はB)少なくとも1つの界面活性剤、好ましくはエチレンアクリル酸(EAA)と、および/または任意にC)少なくとも1つの接着促進剤と、および/または任意にD)フィルム形成樹脂と、および/またはE)少なくとも1つの添加剤と混合される。
【0112】
第4の態様によれば、
(i)A)少なくとも1つの環状オレフィンコポリマー、B)少なくとも1つの界面活性剤、場合によりC)少なくとも1つの接着促進剤、および/または、場合によりD)少なくとも1つのフィルム形成樹脂、および/または、場合によりE)少なくとも1つの添加剤を、好ましくは撹拌または混合下溶融する工程、
(ii)反応チャンバーにおいて、工程(i)の混合物を、好ましくは入口上に、より好ましくは10~900バールの高圧下で移動させる工程、
(iii)反応チャンバーにおいて、工程(ii)と同時に、100℃を超えるが好ましくは200℃未満の温度を有する水を、好ましくは第2の入口上に、より好ましくは10~900バールの高圧下で移動させる工程、
(iv)反応チャンバーにおいて、工程(ii)の混合物と工程(iii)の水とを同時にキャリアガス、例えば、N2、H2またはアルゴン中に、好ましくは最大300m/sの噴射速度で、より好ましくは、工程(ii)の混合物と工程(iii)の水とを0.1ms未満の混合時間で移送する工程と、
(v)工程(iv)によって得られる混合物を反応チャンバーから移送する工程、
を含んでなる、または、上記工程からなる、本発明の水性分散液を製造する方法がクレームされている。
【0113】
態様4の好ましい実施形態では、この方法は、マイクロジェットリアクタ(MJR)で実行される。適当なデバイスは、Nanosaar(スターンベルグ、ドイツ)から市販されている。
【0114】
好ましい実施形態では、本発明の水性分散液を使用して、基材上にコポリマーコーティングを形成する。
【0115】
従って、第5の態様では、本発明は、少なくとも1つの基材および少なくとも1つのコーティング層を含む物品に関し、この物品は本発明の水性分散液を、好ましくはフィルムコーターによって、より好ましくは真空下で基材上に塗布し、その後この物品を、好ましくは加熱することにより乾燥させることによりコーティング層を得ることにより得られ得る。
【0116】
好ましい実施形態では、
i)前記基材が、ポリエチレンテレフタレートまたはポリオレフィン基材、好ましくはポリエチレンテレフタレートまたは延伸ポリプロピレンであり、および/または、
ii)前記基材がフレキシブル基材、好ましくはフィルムであり、および/または、
iii)前記得られたコーティング層が、0.1~15g/m2、好ましくは5~10g/m2、より好ましくは7~9.5g/m2のコーティング厚さを有し、および/または、
iv)前記物品が、38℃および90%RHで7~60g/(m2・日)、好ましくは12~50g/(m2・日)のMVTRを有する。
【0117】
好ましくは、水性分散液は、(自動)フィルムコーターを使用することによって、より好ましくは支持体としての真空プレートと組み合わせて、基材上に塗布される。適当な自動フィルムコーターは、例えば、Elcometer Limitedから、Elcometer4340の商品名で市販されている。さらに、例えば、グラビア印刷またはロール・ツー・ロール・プロセスにおいて、ワイヤーバーコーターまたはドクターブレードを使用して、本発明の水性分散液を基材に塗布できる。
【0118】
好ましい実施形態では、熱放射などの従来の乾燥方法が、好ましくはオーブン内で、好ましくは50~200℃で、例えば140℃で、好ましくは0.5分~120分間、より好ましくは1分~10分間、最も好ましくは5分間適用される。
【0119】
好ましくは、本発明によれば、「真空」という用語は、特に明記しない限り、500ミリバール未満、より好ましくは450ミリバール未満、より好ましくは400ミリバール未満、より好ましくは300ミリバール未満、より好ましくは200ミリバール未満、より好ましくは100ミリバール未満、最も好ましくは50ミリバール未満の空気圧であると定義される。
【0120】
第6の態様では、本発明は、基材、好ましくはポリエチレンテレフタレートまたはポリオレフィン基材をコーティングするための本発明の水性分散液の使用に関する。ポリエチレン基材は、好ましくは、ポリエチレン、および/またはその延伸および未延伸バージョン、ならびにその塩素化またはフッ素化バージョンなどのポリプロピレンからなる。
【0121】
好ましい実施形態では、水性分散液を使用して、熱成形フィルムまたはシートであるコーティング層を形成し、これは、食品包装、例えば、多層パウチ、キャンディー用の多層ツイスト/フォールドラッピングフィルム、ならびにPEベースのフォーミングウェブ、パッケージ、例えば線状引き裂きパウチ、高性能多層ポリオレフィンシュリンクフィルムおよび保護包装用バブルラップフィルム、食品および消費財用ジッパー、または医薬品および装置用の包装、例えばブリスターフィルム、医療機器用の医療フォーミングウェブ、経皮パッチおよび医療トレイに適している。
【0122】
さらに好ましい実施形態では、本発明の水性分散液は、基材上、好ましくはポリエチレンテレフタレートまたはポリオレフィン基材上、より好ましくはポリエチレンテレフタレートまたはポリオレフィン包装上にコーティングを提供する。好ましくは、本発明の水性分散液から得られるコーティングは、基材の気体バリア性を高める。さらに、本発明の水性分散液から生成されたコーティングは、好ましくは水分バリア性を変えることなくコーティングの基材に対する接着性を向上させる。
【0123】
本発明の水溶液について記載されたすべての特徴は、請求項にクレームされた製造方法、請求項にクレームされた物品、および請求項にクレームされた使用にも適用され、逆もまた同様である。
【実施例】
【0124】
実施例1
<分散液の調製>
手順は3つの工程で構成されている。第1工程では、環状オレフィン共重合体樹脂(Topas GmbHのTopas9506F-04、7重量%)をポリエステル樹脂(EvonikのTego AddBond LTW、5重量%)と共に三口丸底グラスに加え、続いて溶媒の混合物(トルエン:イソプロパノール、9:1比)を加えた。丸底グラスを還流系に接続し、連続撹拌下で加熱し、加熱マントルを使用して沸騰させた。反応物質は、ポリオレフィンの膨潤の可能性を回避し、これにより撹拌ブレードの閉塞を防ぐために段階的に添加する必要があった。完全な可溶化が達成されるまで混合物を撹拌して、粗製物を得た。丸底グラスの大きさは、調製物の総容量によって決まる。
【0125】
第2工程では、陰イオン界面活性剤(BASFのTexapon K 12 P、0.3重量%)を非イオン乳化剤(BASFのEumulgin B1、0.5重量%)と共にビーカーに加え、対応する量の水と混合することによって水相を調製した。ビーカーを連続的に撹拌しながら磁気ホットプレートを使用して70~75℃に加熱した。
【0126】
第3工程では、ラッカー相を高せん断ミキサー(Kady Mill LT2000)に移動させ、続いて水相を加えた。最後に、混合物を、高せん断を用いて1分間分散させた。次に、粗製物を再び丸底グラスに移動させ、クライゼンブリッジに接続することによって蒸留セットアップに取り付けた。溶媒の蒸留は真空下で行った(発泡度に応じて200~400ミリバール)。
【0127】
<コーティングの調製>
分散が完了したら、真空プレートを備えたフィルムコーター(Elcometer 4340)を使用してその分散液からコーティングを作製した。コーティング塗布中に生じ得るしわを防ぐために、真空を使用して、所望の基材(ポリエチレンテレフタレート(PET)または延伸ポリプロピレン(OPP))をプレートに配置した。このようにして分散液をワイヤーバーコーターまたはドクターブレードを用いて基材上に塗布し、均質なフィルムを作製した。コーティング厚さはワイヤーバーまたはドクターブレードの大きさを適切に選択することによって調整できる。最後に、コーティングを140℃のオーブンで5分間熱乾燥させた。
【0128】
<水蒸気透過度(MVTR)の測定>
ひとたびフィルムが乾燥したら、2片を適切な形に切り取って、それらをMoconセル(Mocon Inc.のPermatran-W3/34)に配置する。コーティングを乾燥側に向けてフィルムを配置し、そのMVTRを38℃および90%RHでプラトーに達するまで継続的に測定した。表1は、PET上の最終コーティングの厚さとMVTRに関する結果を示している。
【0129】
【国際調査報告】