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特表2022-514242非タングステン材料を有するフッ素イオン注入システムおよび使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(54)【発明の名称】非タングステン材料を有するフッ素イオン注入システムおよび使用方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 27/08 20060101AFI20220203BHJP
   H01J 37/08 20060101ALI20220203BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
H01J27/08
H01J37/08
H01J37/317 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021533857
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(85)【翻訳文提出日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 US2019066156
(87)【国際公開番号】W WO2020123901
(87)【国際公開日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】62/780,222
(32)【優先日】2018-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/780,219
(32)【優先日】2018-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/806,365
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】タン, イン
(72)【発明者】
【氏名】イェーデーヴ, シャラド エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】デプレ, ジョセフ ロバート
(72)【発明者】
【氏名】スウィーニー, ジョセフ ディー.
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA25
5C101DD03
5C101DD20
5C101DD22
5C101DD30
5C101DD31
5C101DD33
5C101FF02
(57)【要約】
対象への注入のためのフッ素イオン種を発生させるために使用されるフッ素ガス源と、1種または複数の非タングステン材料(グラファイト、炭化物、フッ化物、窒化物、酸化物、セラミック)を含むアークチャンバとを含む、フッ素イオン注入のためのシステムおよび方法を記載する。システムにより、システム運転中のフッ化タングステンの形成が最小化し、これによって、供給源寿命が延長され、システム性能の改善が促進する。さらに、システムは、水素および/またはヒドリドガス源を含んでもよく、これらのガスをフッ素ガスと一緒に使用して、供給源耐用期間および/またはビーム電流を改善することができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素イオン種を基板に注入するためのシステムであって、
フッ素化合物を含むガス源であり、前記フッ素化合物がイオン化された場合に少なくとも1種のフッ素イオン種を発生させることができる、ガス源、および
グラファイト含有材料、炭化物含有材料、フッ化物含有材料、窒化物含有材料、酸化物含有材料、またはセラミックを含む1種または複数の材料を含む、アークチャンバ
を含む、システム。
【請求項2】
グラファイト含有材料、炭化物含有材料、フッ化物含有、窒化物含有、酸化物含有材料、またはセラミックを含む前記1種または複数の材料が、アークチャンバライナーまたはアークチャンバピースのうちの1つまたは複数の、すべてまたは一部に存在する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
グラファイト含有材料、炭化物含有材料、フッ化物含有、窒化物含有、酸化物含有材料、またはセラミックを含む前記1種または複数の材料が、アークチャンバライナーまたはアークチャンバピース上に、非傾斜であっても、表面傾斜処理または表面コーティングされてもよい、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記グラファイト含有材料、前記炭化物含有材料、フッ化物含有、窒化物含有、酸化物含有材料、または前記セラミックが、グラファイト(C)、炭化ケイ素(SiC)、炭化タングステン(WC)、ホウ化タングステン(WB、WB、WB、WB)、炭化ホウ素(BC、B12)、炭化カルシウム(CaC)、炭化アルミニウム(Al)、炭化マグネシウム(MgC)、フッ化アルミニウム(AlF)、フッ化ガリウム(GaF)、フッ化インジウム(InF)、窒化ホウ素(BN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、タングステンランタンオキシド(WLa)、酸化ガリウム(Ga)、酸化アルミニウム(Al)からなる群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記グラファイト含有材料、前記炭化物含有材料、または前記セラミックが、10ミクロングラファイト、5ミクロングラファイト、DFP3-緻密化グラファイト、硬質グラファイト、熱分解炭素コーティングを有する硬質5ミクロングラファイト、熱分解炭素が含浸した硬質5ミクロングラファイト、硬質1ミクロングラファイト、熱分解炭素コーティングを有する硬質1ミクロングラファイト、熱分解炭素が含浸した硬質1ミクロングラファイト、SiC複合層を有するグラファイト、またはこれらの材料のうちの任意の2種以上の組み合わせであってもよい、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記アークチャンバが、
側壁、底部、および上部を含めた内側表面によって画定される内側を含み、前記内側表面のすべてまたは一部が、前記グラファイト含有材料、前記炭化物含有材料、前記フッ化物含有材料、前記窒化物含有材料、前記酸化物含有材料、または前記セラミックを含み、
前記側壁が、カソード側および反カソード側における側壁を含み、
前記アークチャンバライナーもしくはアークチャンバピースが、グラファイト含有材料、炭化物含有材料、フッ化物含有、窒化物含有、酸化物含有材料、またはセラミックを損ない(compromise)、非傾斜であっても、表面傾斜処理もしくは表面コーティングされてもよい、
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
(a)前記フッ素化合物が、式Q[式中、Qはフッ素(F)と結合を形成することができる元素である]を有し、かつ式Q 、F+、およびF の化合物を含めたフッ素イオン性種を形成することができ、xがu以上の整数であり、uが1以上の整数であり、yがv以上の整数であり、vが1以上の整数である、
(b)前記フッ素化合物が、式Q[式中、QおよびRは、フッ素(F)と結合を形成することができる元素である]を有し、かつ式Q 、F+、およびF の化合物を含めたフッ素イオン性種を形成することができ、xがu以上の整数であり、uが1以上の整数であり、yがv以上の整数であり、vが1以上の整数であり、zがw以上の整数であり、wが1以上の整数である、
(c)前記フッ素化合物が式Fを有し、前記フッ素イオン性種が式F の化合物を含み、yがv以上の整数であり、vが1以上の整数である、または
(d)式Q、Q、およびFの化合物のうちの任意の2種以上の混合物
請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記フッ素化合物が、F、BF、BHF、BHF、B、SiF、Si、SiHF、SiH、SiHF、Si、SiF、SiHF、GeF、Ge、Ge、GeHF、GeH、GeHF、PF、PF、PHF、PHF、PH、PHF、AsF、AsF、AsHF、AsHF、AsH、SbF3、SbF、XeF、XeF、XeF、WF、MoF、C2n+2、C2n、C2n-2、C2n+2-x、C2n-x、C2n-2-x、COF、SF、SF、SeF、NF、N、NHF、NHF、NHF、NF、およびHF[式中、nは1~3の範囲内の整数であり、xは0、1、または2である]からなる群から選択される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
、B、SiH、Si、GeH、Ge、PH、AsH CH、C、C[式中、xおよびyは1以上である]、NH、およびNからなる群から選択される、水素またはヒドリド含有ガス源をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
、O、HO、H、CO、CO、NO、NO、NO、NO、N、N、N、およびNからなる群から選択される酸素含有ガス源をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、およびキセノンからなる群から選択される不活性ガス源をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
1種または複数のフッ素イオン種を基板に注入するための方法であって、
フッ素化合物を含むガス源を含むシステムを準備することであり、前記フッ素化合物がイオン化された場合、少なくとも1種のフッ素イオン種を発生させることができ、アークチャンバが、グラファイト含有材料、炭化物含有材料、フッ化物含有材料、窒化物含有材料、酸化物含有材料、またはセラミックを含む1種または複数の材料を含む、システムを準備すること、および
前記1種または複数のフッ素イオン種を前記基板に注入するように、前記システムを運転すること
を含み、
基板がプロセスチャンバに存在する、
方法。
【請求項13】
前記システムが、タングステンのアークチャンバライナーとアークチャンバピースとを含み、前記システムを運転することが、フッ化タングステンが発生させ、前記1種または複数の材料が、グラファイト含有材料、炭化物含有材料、フッ化物含有、窒化物含有、酸化物含有材料、またはセラミックを含み、これが、前記アークチャンバにおけるフッ化タングステンの形成を低減し、かつフッ素イオン種ビーム電流を改善し、供給源寿命を改善し、または両方である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記フッ素化合物を、前記アークチャンバに、所定の流速において流し込むこと、
所定のアーク電力および供給源磁場において、前記フッ素化合物から前記フッ素イオン性種を発生させることであって、前記フッ素イオン性種が、基板注入のための所望のフッ素イオン性種を含む、前記フッ素イオン性種を発生させること
を含み、
前記流速、アーク電力、および供給源磁場が、前記所望のフッ素イオン性種に最適化されたビーム電流を提供するように選ばれる、
請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記フッ素イオン性種がF+イオンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記所望のフッ素イオン性種が、選択されたエネルギーによって、前記選ばれた流速、アーク電力、および供給源磁場を使用して、所望の深さにおいて前記基板に注入される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記アーク電力が5W~1500Wの範囲内である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記アーク電力を、30V~150Vの範囲内のアーク電圧において発生させる、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記流速が、0.2sccm~10sccmの範囲内である、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
水素またはヒドリド含有ガスを、0.05sccm~10sccmの速度においてアークチャンバに流すことをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハロゲンサイクルを制御し、性能を強化し、システム寿命を延長するために、非タングステン材料を利用する、フッ素イオン注入システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素共注入は、先進半導体デバイス製造において、欠陥エンジニアリング、シャロージャンクションの形成、および材料改質のために使用される。フッ素注入のための一般的な設定は、フッ化物ドーパント源ガスをイオン源に供給して、解離副生成物の1つとしてフッ素(F)を提供することを含む。
【0003】
しかしながら、従来のフッ素インプラントプロセスは、一般に、注入されるフッ素イオンのタイプとフッ素イオン注入の特異性とに関して、例えばフッ素イオン注入深さに関して制限される。さらに、フッ素含有化合物の分解時に発生されるイオン性種も、望ましくないことに、フッ素と共注入されうる。
【0004】
また、フッ素含有供給ガスの使用は、イオン源性能、供給源寿命、インプラント用具の生産能力、および用具所有コストに悪影響を及ぼしうる、ハロゲンサイクルを生じる。幅広い潜在的用途を考慮すると、フッ素イオンビーム性能を改善することについて、当技術分野における様々な課題が残されている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、イオン注入プロセスにおいて、フッ素イオン性種を基板に注入するためのシステムおよび方法に関する。システムは、アークチャンバ内に非タングステン材料を含み、その結果、他の方法ではフッ化物ガスとタングステンチャンバ材料との反応から生じる、システム運転中のフッ化タングステンの形成が最小化される。このように、望ましくないタングステンまたはフッ化タングステンコーティングを最小化できることによって、供給源寿命が延長され、システム性能の改善が促進する。さらに、システムは、水素および/またはヒドリドガス源を含んでもよく、これらのガスをフッ素ガスと一緒に使用して、供給源耐用期間および/またはビーム電流を改善することができる。
【0006】
一態様では、本発明は、フッ素イオン種を基板に注入するためのシステムであって、フッ素化合物を含むガス源を含み、フッ素化合物がイオン化された場合、少なくとも1種のフッ素イオン種を発生させることができる、システムを提供する。システムはまた、1種または複数の(非タングステン)材料、グラファイト含有材料、炭化物含有材料、フッ化物含有材料、窒化物含有材料、酸化物含有材料、またはセラミックから形成されるアークチャンバを含む。例示的な態様では、これらの非タングステン材料は、アークチャンバライナーまたはアークチャンバピース上に、非傾斜であっても、表面傾斜処理または表面コーティングされてもよい。
【0007】
別の態様では、本発明はまた、1種または複数のフッ素イオン種を基板に注入するための方法であって、ここに記載するシステムを準備するステップであり、基板がプロセスチャンバに存在するステップ、および次いで、1種または複数のフッ素イオン種を基板に注入するように、システムを運転するステップを含む、方法を提供する。
【0008】
フッ素イオン種は、F2などのもの、およびフッ素との結合を形成することができる1つまたは複数の元素を有する様々な他の化合物を含めた、1種または複数のフッ素含有化合物から発生させることができる。
【0009】
本発明のシステムおよび方法はまた、以下の特性:水素もしくはヒドリド含有ガス源、酸素含有ガス源、および/または不活性ガス源のうちの1種または複数を含むことができる。一部の実施形態では、フッ素含有ガスは、水素含有ガス、酸素含有ガス、および/または不活性ガスのうちの1種または複数と、個別に共流動する。一部の実施形態では、フッ素含有ガス、水素含有ガス、酸素含有ガス、および/または不活性ガスのうちの2種以上が、ガスシリンダーパッケージ中で予備混合状態にある。一部の実施形態では、フッ素含有ガス、水素含有ガス、酸素含有ガス、および/または不活性ガスのうちの2種以上が、一緒に共流動される。フッ素化合物とは異なるこれらのガスのうちの1種または複数の使用によって、インプラントビーム電流、供給源寿命の性能、または両方を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ドーパント源ガスをアークチャンバに供給するためのガス供給ラインを有し、チャンバ内のドーパント源ガスをイオン化するためのアークチャンバを含む、イオン注入システムの略図である。
図2図1のシステムのアークチャンバにおける、プラズマの発生を模式的に示す、図1のイオン注入システムの断面図である。
図3】イオン源装置と、イオン源装置の熱管理のためのヒートシンク装置とを含む、イオン源アセンブリの断面における斜視図である。
図4】図示されるイオンインプラントチャンバにおいて、基板にイオン注入ドーピングするために補給されるガスを含有する貯蔵および投入容器を含む、イオンインプラントプロセスシステムの略図である。
図5】タングステンライナー対グラファイトライナーの存在下、GeFガスを使用した実験から、Fビーム電流データを示すグラフである。
図6】GeFガスを使用した実験からのイオン化種、ならびにグラファイトライナーを使用した場合に、WおよびWF ビームが低下したことを示すグラフである。
図7】BFガスとHガスとの混合物を使用した実験から、Fビーム電流のデータを示すグラフである。
図8】BF/H混合ガスを使用した実験からのイオン化種、ならびにHをBFガスと混合した場合に、WおよびWF ビームが低下したことを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、フッ素イオン注入に、ならびに様々な態様において、複数のフッ素イオン性種を発生させるフッ素化合物が使用される方法およびシステムに関し、システムは、所定のフッ素化合物の流速、所定のアーク電力、および所定の供給源磁場を提供するために運転される。この運転条件では、所望のフッ素イオン種に最適化され、ひいては、基板への注入を対象とすることができる、ビーム電流が提供される。
【0012】
本開示の方法は、イオン注入のためのイオン源装置を使用して実行することができる。ここに記載するフッ素注入方法のために、任意のタイプのイオン注入システムを使用することができる。グラファイト含有材料、炭化物含有材料、フッ化物含有材料、窒化物含有材料、酸化物含有材料、またはセラミックを含む1種または複数の材料から形成される、アークチャンバを含むシステム。これらの材料がチャンバに存在すると、タングステンに置き換わることができ、ビーム電流および供給源寿命を含めたF+インプラント性能を改善することができる。特に、これらの材料によって、注入プロセス中に形成されるフッ化タングステンの量を低減することができる。
【0013】
これらの非タングステン材料(グラファイト含有材料、炭化物含有材料、フッ化物含有、窒化物含有、酸化物含有材料、またはセラミック)のうちの1種または複数が、アークチャンバライナーまたはアークチャンバピースのうちの1つまたは複数の、すべてまたは一部に存在してもよい。
【0014】
非タングステン材料の1種または複数を、アークチャンバの構造材料に組み込むことができる。例えば、アークチャンバ材料は、グラファイト含有、炭化物含有、フッ化物含有、窒化物含有、もしくは酸化物含有材料による、またはセラミックによる、「表面傾斜処理」(例えば「吹き込み」)をすることができる。いくつかの実施の形態では、表面傾斜処理は、所望の非タングステン材料(グラファイト、炭化物等)を、金属表面に適用し、次いで、表面を加熱して、非タングステン材料をアークチャンバの金属中に組み込むことによって達成される。非タングステン材料が、構造体の表面に高密度で存在することとなり、保護バリアを提供することができる。表面傾斜処理は、アークチャンバの表面(内側)のすべてにわたることも、一部にわたることもできる。
【0015】
あるいは、アークチャンバを非傾斜とするが、他の方法で改質して、所望の非タングステン材料とアークチャンバの材料とを連結させることもできる。例えば、別の改質のモードでは、所望の非タングステン材料(グラファイト、炭化物等)を、アークチャンバの金属表面のすべてまたは一部に表面コーティングする。表面コーティングにおいて、非タングステン材料は、金属表面にコーティング層を形成するが、必ずしも金属中に組み込まれるわけではない。コーティング層は、多様な技法のうちの1つ、例えば、熱を使用して非タングステン材料をコーティングすること、圧力を使用してコーティングすることによって、またはスパッタコーティングによって、形成することができる。コーティング層は、所望の厚さ、例えば1ナノメートル~5ミリメートルのものであってよい。表面コーティングは、アークチャンバの表面(内側)のすべてにわたることも、一部にわたることもできる。
【0016】
なおも別の実施形態として、システムは、イオン源チャンバに配置された非タングステン材料を含む構造部材、例えば非タングステンライナー、または他のイオン源チャンバの構造部品を含むことができる。ライナーは、2つの反対側にある主表面と、これらの間の厚さとを有する構造の、扁平な、例えば平面的なピースであってもよい。ライナーは、長方形の、曲がった(例えば円形の)、角のある、またはそれ以外の形状であってもよい。ライナーは取り外し可能であってもよく、これは、イオン源チャンバの内部空間へのライナーの挿入および取り外しができることを意味する。他の場合において、ライナーが固定的であり、チャンバから取り外し不能であってもよい。挿入可能なライナーは、ここに記載するグラファイト含有材料、炭化物含有材料、フッ化物含有材料、窒化物含有材料、酸化物含有材料、またはセラミックのうちのいずれか1種または複数から形成することができる。
【0017】
様々なタイプの非タングステン材料を、アークチャンバを改質するために使用することができる。例えば、グラファイト含有材料、炭化物含有材料、フッ化物含有、窒化物含有、酸化物含有材料、またはセラミックは、グラファイト(C)、炭化ケイ素(SiC)、炭化タングステン(WC)、ホウ化タングステン(WB、WB、WB、WB)、炭化ホウ素(BC、B12)、炭化カルシウム(CaC)、炭化アルミニウム(Al)、炭化マグネシウム(MgC)、フッ化アルミニウム(AlF)、フッ化ガリウム(GaF)、フッ化インジウム(InF)、窒化ホウ素(BN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、タングステンランタンオキシド(WLa)、酸化ガリウム(Ga)、酸化アルミニウム(Al)からなる群から選択される。
【0018】
一部の実施形態では、グラファイト含有材料、炭化物含有材料、またはセラミックは、PLS(10ミクロングラファイト)、DFP(5ミクロングラファイト)、DFP3-2(緻密化グラファイト)、SCF(硬質グラファイト)、SCF-PYC(熱分解炭素コーティングを有する硬質5ミクロングラファイト)、SCF-IF(熱分解炭素が含浸した硬質5ミクロングラファイト)、ZEE(硬質1ミクロングラファイト)、ZEE-PYC(熱分解炭素コーティングを有する硬質1ミクロングラファイト)、ZEE-IF(熱分解炭素が含浸した硬質1ミクロングラファイト)、SUPERSiC、SUPERSiC-GS(SiC複合層を有するグラファイト)、またはこれらの材料のうちの任意の2種以上の組み合わせであってもよい。
【0019】
本開示のシステムにおいて、アークチャンバは、側壁、底部、および上部を含めた内側表面によって画定される内側を含んでもよく、内側表面のすべてまたは一部は、グラファイト含有材料、炭化物含有材料、フッ化物含有材料、窒化物含有材料、酸化物含有材料、またはセラミックを含み、前記側壁は、カソード側および反カソード側における側壁を含む。
【0020】
ここで図面を参照すると、図1は、フッ素含有ガスをアークチャンバに供給するためのガス供給ライン14を有し、チャンバ内のフッ素含有ガスをイオン化するためのアークチャンバ12を含む、イオン注入システム10の略図である。したがって、アークチャンバ12は、グラファイト含有材料、炭化物含有材料、フッ化物含有材料、窒化物含有材料、酸化物含有材料、またはセラミックを含み、注入プロセス中に形成されるフッ化タングステンの量を低減するイオン源チャンバを提供する。
【0021】
図2は、図1のシステムのアークチャンバ12における、プラズマ16の発生を模式的に示す、図1のイオン注入システム10の断面図である。フッ素含有ガスは、供給ラインとアークチャンバに入るガスとの熱状態の質を判定するための監視の関係で、固定された監視熱電対TC1およびTC2を有するフッ素含有ガス供給ライン14に、矢印Aによって指示される方向に流れ込むが、これは、イオン注入システムについての熱管理システムの使用に関して望ましいこともある。
【0022】
図3は、イオン源装置70と、システムの熱管理のための任意選択のヒートシンク装置50とを含む、イオン源アセンブリの断面における斜視図である。この断面図は、フッ素含有ガス供給ライン72が、ガス供給プラグ内のガス流路84、およびイオン源と連結されたガスブッシング内のガス流路86に結合していることを示す。
【0023】
図3に示すイオン源装置はベース80を含み、ベース80は、グラファイト含有材料、炭化物含有材料、フッ化物含有材料、窒化物含有材料、酸化物含有材料、またはセラミックによって、コーティングまたは改質することができる。ベース80は、開口部82を中に含むことができる。
【0024】
図4は、反応物質ガスを収容している、貯蔵および投入容器302を含む、イオンインプラントプロセスシステム300の略図であり、反応物質ガスは、イオン源チャンバにおけるフッ素含有ガスとのin situ反応のために補給され、図示されるイオンインプラントチャンバ301において、基板328のイオン注入のためのフッ素イオン性種を発生させる。
【0025】
貯蔵および投入容器302は、フッ素ガスを収容する内部容積を囲んでいる容器壁306を含む。
【0026】
容器は、ガスのみを収容するように手配された内部容積を有する、従来タイプのガスシリンダーであってもよく、あるいは容器が、反応物質ガスについての吸着親和性を有し、投入条件下では、容器から放出するための共反応物質源ガスが脱着可能な、吸着剤材料を含有してもよい。
【0027】
貯蔵および投入容器302は、放出ライン312とガス流連通においてつながったバルブヘッド308を含む。圧力センサ310は、質量流量制御装置314と一緒に、ライン312に配置される。他の監視およびセンシング部品がラインにつながり、制御手段、例えば、アクチュエータ、フィードバックおよびコンピュータ制御システム、サイクルタイマー等と接続されてもよい。
【0028】
イオンインプラントチャンバ301はイオン化装置316を含有し、イオン化装置316は、イオン化装置チャンバにおいて、またはイオン化装置チャンバと共同して提供されるドーパント源反応物質に反応性である、ライン312から放出されたフッ素含有ガスを受け取り、フッ素イオン性種を発生させ、フッ素イオン性種は、イオン化装置チャンバにおいて、イオン化条件下でイオンビーム305を生成する。イオンビーム305は、必要なイオンを選択して不要なイオンを拒絶する、質量分析装置ユニット322を通過する。
【0029】
選択されたイオンは、加速電極アレイ324を、次いで偏向電極326を通過する。結果として収束したイオンビームは、さらにはスピンドル332に取り付けられた回転式収容器330上に配置された、基板要素328に衝突し、イオン注入生成物として、ドーピングされた(ガリウムドーピング)基板を形成する。
【0030】
イオンインプラントチャンバ301のそれぞれのセクションは、それぞれポンプ320、342、および346によって、ライン318、340、および344を通じて排気される。
【0031】
本開示の方法では、イオン化してフッ素含有イオン性種にすることができる、1種または複数のフッ素化合物が使用される。フッ素イオン、特に2個以上のフッ素原子を有するフッ素イオンを注入するための例示的な方法は、整理番号ENT0188/P1 (E000202)を有する、本出願と同時出願された「フッ素イオン注入方法およびシステム」と題する米国特許仮出願に記載されており、その開示内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0032】
フッ素化合物の1つのタイプは、式Qを有する化合物によって表される。Qにおいて、Qは、フッ素(F)との結合を形成することができる元素であり、xおよびyは両方、1以上の整数である。実施形態では、xは1~3の範囲内の整数であり、かつyは1~8の範囲内の整数であり、実施形態では、xは1または2であり、かつyは1~6の範囲内の整数である。いくつかの式Qの化合物について、yはxに等しく、例えば、yとxとが両方1である。いくつかの式Qの化合物について、yはxよりも大きい。例えば、yはxの2倍であり、yはxの3倍であり、yはxの4倍であり、yはxの5倍であり、またはyはxの6倍である。いくつかの式Qの化合物について、yは1+xであり、yは2+xであり、yは3+xであり、yは4+xであり、またはyは5+xである。
【0033】
例えばここに記載する条件を使用したイオン化の際、式Qを有する化合物は、式Q 、F、およびF の化合物を含めたフッ素イオン性種を発生させることができる。uとvとは両方整数であり、式Qのxおよびyに関して記載することができ、式中、xはu以上の整数であり、かつuは1以上の整数であり、yはv以上の整数であり、かつvは1以上の整数である。したがって、式Q のイオン性種について、uとvとは両方、1以上の整数である。実施形態では、uは1~3の範囲内の整数であり、かつvは1~8の範囲内の整数であり、実施形態では、uは1または2であり、かつvは1~6の範囲内の整数である。いくつかの式Q のイオン性種について、uはvに等しく、例えば、uとvとが両方1である。いくつかの式Q のイオン性種について、vはuよりも大きい。例えば、vはuの2倍であり、vはuの3倍であり、vはuの4倍であり、vはuの5倍であり、またはvはuの6倍である。いくつかの式Q のイオン性種について、vは1+u、vは2+u、vは3+u、vは4+u、またはvは5+uである。
【0034】
ケイ素とフッ素とを含有する化合物の例としては、式SiFおよびSiを有するものが挙げられ、これらはイオン化されて、F、F 、SiF、SiF 、SiF 、SiF 、Si、Si 、Si 、Si 、Si 、およびSi からなる群から選択されるイオン性種を含めた、フッ素イオン性種を発生させることができる。好ましい態様では、SiFはイオン化されて、F、SiF、SiF 、SiF 、およびSiF からなる群から選択される、2つ以上の種を発生させる。
【0035】
ホウ素とフッ素とを含有する化合物の例としては、式BFおよびBの化合物が挙げられ、これらはイオン化されて、F、F 、BF、BF 、BF 、B、B 、B 、およびB からなる群から選択されるイオン性種を含めた、フッ素イオン性種を発生させることができる。好ましい態様では、BFはイオン化されて、F、BF、BF 、およびBF からなる群から選択される、2つ以上の種を発生させる。
【0036】
ゲルマニウムとフッ素とを含有する化合物の例としては、式GeFおよびGeの化合物が挙げられ、これらはイオン化されて、F、F 、GeF、GeF 、GeF 、GeF 、Ge、Ge 、Ge 、Ge 、Ge 、およびGe からなる群から選択されるイオン性種を含めた、フッ素イオン性種を発生させることができる。好ましい態様では、GeFはイオン化されて、F、GeF、GeF 、GeF 、およびGeF からなる群から選択される、2つ以上の種を発生させる。
【0037】
リンとフッ素とを含有する化合物の例としては、式PFおよびPFの化合物が挙げられ、これらはイオン化されて、F、F 、ならびにPF、PF 、PF 、PF 、およびPF からなる群から選択されるイオン性種を含めた、フッ素イオン性種を発生させることができる。
【0038】
ヒ素とフッ素とを含有する化合物の例としては、式AsFおよびAsFの化合物が挙げられ、これらはイオン化されて、F、F 、ならびにAsF、AsF 、AsF 、AsF 、およびAsF からなる群から選択されるイオン性種を含めた、フッ素イオン性種を発生させることができる。
【0039】
アンチモンとフッ素とを含有する化合物の例としては、式SbFの化合物が挙げられ、これはイオン化されて、F、F 、ならびにSbF、SbF 、SbF 、SbF 、およびSbF からなる群から選択されるイオン性種を含めた、フッ素イオン性種を発生させることができる。
【0040】
タングステンとフッ素とを含有する化合物の例としては、式がWFの化合物が挙げられ、これはイオン化されて、F、F 、ならびにWF、WF 、WF 、WF 、WF 、およびWF からなる群から選択されるイオン性種を含めた、フッ素イオン性種を発生させることができる。
【0041】
窒素とフッ素とを含有する化合物の例としては、式NFおよびNの化合物が挙げられ、フッ素イオン性種には、F、F 、NF、NF 、NF 、N、N 、N 、N 、N 、およびN からなる群から選択される、2つ以上の種が含まれる。
【0042】
炭素とフッ素とを含有する化合物の例としては、式CFおよびCの化合物が挙げられ、フッ素イオン性種には、F、F 、CF、CF 、CF 、CF 、C、C 、C 、C 、C 、およびC からなる群から選択される、2つ以上の種が含まれる。
【0043】
フッ素イオン性種を発生させることができる他のタイプのフッ素含有化合物としては、式Qの化合物[式中、QおよびRは、フッ素(F)との結合を形成することができる元素であり、x、z、およびyは、1以上の整数である]が挙げられる。実施形態では、Qは、B、Si、Ge、P、As、C、およびNからなる群から選択され、Rは、HおよびOから選択される。実施形態では、xは1~3の範囲内の整数、好ましくは1または2であり、zは1~4の範囲内の整数、好ましくは1、2、または3であり、yは1~8、好ましくは1~6の範囲内の整数である。
【0044】
例えばここに記載する条件を使用したイオン化の際、式Qを有する化合物は、式Q 、F、およびF のものを含めたフッ素イオン性種を発生させることができる。u、w、およびvのすべては整数であり、式Qのx、z、およびyに関して記載することができ、式中、xはu以上の整数であり、かつuは1以上の整数であり、yはv以上の整数であり、かつvは1以上の整数であり、zはw以上の整数であり、かつwは1以上の整数である。したがって、式Q のイオン性種について、u、w、およびvのすべては、1以上の整数である。好ましくは、uは1~3の範囲内の整数、好ましくは1または2であり、wは1~4の範囲内の整数、好ましくは1、2、または3であり、vは1~8、好ましくは1~6の範囲内の整数である。
【0045】
式Qを有する化合物の例としては、限定するものではないが、BHF、BHF、SiHF、SiH、SiHF、Si、SiF、SiHF、GeHF、GeH、GeHF、PHF、PHF、PH、PHF、AsHF、AsHF、AsH、C2n+2-x、C2n-x、C2n-2-x、COF、NHF、NHF、NHF、およびNF[式中、nは1~3の範囲内の整数であり、xは0、1、または2である]などが挙げられる。
【0046】
フッ素イオン性種を発生させることができる他のタイプのフッ素含有化合物としては、式Fの化合物が挙げられ、フッ素イオン性種としては、Fおよび式F の化合物が挙げられ、式中、yはv以上の整数であり、かつvは1以上の整数である。
【0047】
本開示の方法はまた、式Q、Q、およびFのうちの2種以上のフッ素化合物の混合物の使用を含んでもよい。2種以上の異なるフッ素含有化合物が使用される場合、これらは、独立に注入チャンバに流し込まれてもよく、混合物としてチャンバに流し込まれてもよい。
【0048】
本開示の方法において、1種または複数のフッ素含有化合物は、注入チャンバに流し込まれて、フッ素イオン性種を発生させる。一部の実施形態では、フッ素イオン性種は、最大数のフッ素原子を有する種(「クラスターイオン」)を含んでもよく、最大数のフッ素原子を有する種が、より少ない数のフッ素原子を有する種のビーム電流よりも大きいビーム電流を有するように、流速、アーク電力、および供給源磁場が選ばれる。
【0049】
フッ素イオン注入のためのシステムの運転は、アーク電力およびアーク電圧の観点で記載することができる。一部の実施の形態では、システムは、約5W~約1500Wの範囲内のアーク電力を提供するように運転され、または一部の実施の形態では、アーク電力は、約90W~約1000Wの範囲内である。これらの範囲の1つにおけるアーク電力を達成するために、約30V~約150Vの範囲内のアーク電圧において、アーク電力が発生させるようにシステムを運転することができ、またはより詳細には、約60V~約125Vの範囲内である。
【0050】
フッ素イオン注入のためのシステムの運転は、フッ素含有化合物のイオン注入チャンバへの流速の観点でも記載することができる。一部の実施形態では、フッ素含有化合物は、10sccm以下の速度においてチャンバに流し込まれ、実施形態では、フッ素含有化合物は、0.2sccm~6sccmの範囲内の速度において流れる。
【0051】
一部の特定の実施の形態では、フッ素化合物はBFであり、フッ素イオン性種は、F、BF、BF 、およびBF からなる群から選択される2つ以上の種を含み、アーク電力は350W~1500Wの範囲内であって、これは30V~150Vの範囲内のアーク電圧において発生させたものであり、流速は1.25sccm~1.75sccmの範囲内である。
【0052】
一部の特定の実施の形態では、フッ素化合物はSiFであり、フッ素イオン性種は、F、SiF、SiF 、SiF 、およびSiF からなる群から選択される2つ以上の種を含み、アーク電力は50W~1500Wの範囲内であって、これは30V~150Vの範囲内のアーク電圧において発生させたものであり、流速は1.0sccm~1.5sccmの範囲内である。
【0053】
一部の特定の実施の形態では、フッ素化合物はGeFであり、フッ素イオン性種は、F、GeF、GeF 、GeF 、およびGeF からなる群から選択される2つ以上の種を含み、アーク電力は50W~1500Wの範囲内であって、これは30V~150Vの範囲内のアーク電圧において発生させたものでありし、流速は0.2sccm~0.8sccmの範囲内である。
【0054】
任意選択で、本開示の方法は、フッ素化合物とは異なる(非フッ素化)水素またはヒドリド含有化合物を、イオン注入機に流すことを含むことができる。このような化合物の例としては、限定するものではないが、H、B、SiH、Si、GeH、Ge、PH、AsH CH、C、C[式中、xおよびyは1以上である]、NH、およびNなどの化合物が挙げられる。例示的な実施の形態では、水素またはヒドリド含有化合物は、0.05sccm~10sccmの速度において、アークチャンバに流れ込む。
【0055】
任意選択で、本開示の方法は、フッ素化合物とは異なる(非フッ素化)酸素含有化合物を、イオン注入機に流すことを含むことができる。このような化合物の例としては、限定するものではないが、O、O、HO、HO2、CO、CO、NO、NO、N2O、NO、N、N、N、およびNなどの化合物が挙げられる。
【0056】
任意選択で、本開示の方法は、不活性ガスをイオン注入機に流すことを含むことができる。不活性ガスの例としては、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、およびキセノンが挙げられる。
【0057】
実施の形態では、水素もしくはヒドリド含有ガス、酸素含有ガス、または不活性ガスのうちの1種が、フッ素含有ガスと一緒に注入機に流れ、他の実施の形態では、これらのガスのうちの2種が流れ、なおも他の実施の形態では、3種すべてのガスが、フッ素含有化合物と一緒に、注入機に流れる。
【0058】
2種以上のガスがチャンバに流れる場合、ガスは個別に流れてもよい。あるいは、ガスは混合状態で流れてもよい。例えば、フッ素含有ガス、水素含有ガス、酸素含有ガス、および/または不活性ガスのうちの任意の2種以上が、ガスシリンダーパッケージ中の予備混合物であってもよい。なおも他の実施形態では、2種以上のガスが混合状態にあり、次いで、別のガスが個別にチャンバに流れる。
【実施例1】
【0059】
フッ素含有ガス(GeF)を、タングステンライナーを有するイオン化チャンバと、グラファイトライナーを有するイオン化チャンバとに流し込んだ。110Vのアーク電圧および20mAの供給源ビームにおいて、システムを運転した。様々なガス(GeF)流速において、F+イオンビーム電流を測定した。試験した各流速において、グラファイトライナーを有するシステムは、タングステンライナーを有するシステムと比較して、より高いFビーム電流を提供した。結果を図5に示す。
【実施例2】
【0060】
実施例1に記載したプロセスから得られる、様々なイオン化種のビームスペクトルを決定した。結果は、グラファイトライナーを使用した場合、GeFビームスペクトルから、有意に低いWおよびWF ビームが観察されたことを示している。図6を参照されたい。
【実施例3】
【0061】
フッ素含有ガス(BF)を、単独で、または水素ガス(H)の存在と共に、イオン化チャンバに流し込んだ。BFの流速は1.5sccmであり、110Vのアーク電圧および20mAの供給源ビームにおいて、システムを運転した。図7は、次第に上昇するH濃度におけるFビーム電流を示し、Hを最大50%に上昇させた場合、電流がわずかにしか影響を受けないことを明らかにしている。しかしながら、イオン化種のBF3ビームスペクトルを分析すると、H2をBF3と混合した場合、W+およびWFx+ビームにおける有意な低減を示した。図8を参照されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2021-08-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素イオン種を基板に注入するためのシステムであって、
フッ素化合物を含むガス源であり、前記フッ素化合物がイオン化された場合に少なくとも1種のフッ素イオン種を発生させることができる、ガス源、および
グラファイト含有材料、炭化物含有材料、フッ化物含有材料、窒化物含有材料、酸化物含有材料、またはセラミックを含む1種または複数の材料を含む、アークチャンバ
を含む、システム。
【請求項2】
グラファイト含有材料、炭化物含有材料、フッ化物含有材料、窒化物含有材料、酸化物含有材料、またはセラミックを含む前記1種または複数の材料が、アークチャンバライナーまたはアークチャンバピースのうちの1つまたは複数の、すべてまたは一部に存在する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
グラファイト含有材料、炭化物含有材料、フッ化物含有材料、窒化物含有材料、酸化物含有材料、またはセラミックを含む前記1種または複数の材料が、アークチャンバライナーまたはアークチャンバピース上に、非傾斜であっても、表面傾斜処理または表面コーティングされてもよい、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記グラファイト含有材料、前記炭化物含有材料、フッ化物含有材料、窒化物含有材料、酸化物含有材料、または前記セラミックが、グラファイト(C)、炭化ケイ素(SiC)、炭化タングステン(WC)、ホウ化タングステン(WB、WB、WB、WB)、炭化ホウ素(BC、B12)、炭化カルシウム(CaC)、炭化アルミニウム(Al)、炭化マグネシウム(MgC)、フッ化アルミニウム(AlF)、フッ化ガリウム(GaF)、フッ化インジウム(InF)、窒化ホウ素(BN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、タングステンランタンオキシド(WLa)、酸化ガリウム(Ga)、酸化アルミニウム(Al)からなる群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記グラファイト含有材料、前記炭化物含有材料、または前記セラミックが、10ミクロングラファイト、5ミクロングラファイト、DFP3-緻密化グラファイト、硬質グラファイト、熱分解炭素コーティングを有する硬質5ミクロングラファイト、熱分解炭素が含浸した硬質5ミクロングラファイト、硬質1ミクロングラファイト、熱分解炭素コーティングを有する硬質1ミクロングラファイト、熱分解炭素が含浸した硬質1ミクロングラファイト、SiC複合層を有するグラファイト、またはこれらの材料のうちの任意の2種以上の組み合わせであってもよい、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記アークチャンバが、
側壁、底部、および上部を含めた内側表面によって画定される内側を含み、前記内側表面のすべてまたは一部が、前記グラファイト含有材料、前記炭化物含有材料、前記フッ化物含有材料、前記窒化物含有材料、前記酸化物含有材料、または前記セラミックを含み、
前記側壁が、カソード側および反カソード側における側壁を含み、
前記アークチャンバライナーもしくはアークチャンバピースが、グラファイト含有材料、炭化物含有材料、フッ化物含有材料、窒化物含有材料、酸化物含有材料、またはセラミックを含み、非傾斜であっても、表面傾斜処理もしくは表面コーティングされてもよい、
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
1種または複数のフッ素イオン種を基板に注入するための方法であって、
フッ素化合物を含むガス源を含むシステムを準備することであり、前記フッ素化合物がイオン化された場合、少なくとも1種のフッ素イオン種を発生させることができ、アークチャンバが、グラファイト含有材料、炭化物含有材料、フッ化物含有材料、窒化物含有材料、酸化物含有材料、またはセラミックを含む1種または複数の材料を含む、システムを準備すること、および
前記1種または複数のフッ素イオン種を前記基板に注入するように、前記システムを運転すること
を含み、
基板がプロセスチャンバに存在する、
方法。
【請求項8】
前記システムが、タングステンのアークチャンバライナーとアークチャンバピースとを含み、前記システムを運転することが、フッ化タングステンを発生させ、前記1種または複数の材料が、グラファイト含有材料、炭化物含有材料、フッ化物含有材料、窒化物含有材料、酸化物含有材料、またはセラミックを含み、これが、前記アークチャンバにおけるフッ化タングステンの形成を低減し、かつフッ素イオン種ビーム電流を改善し、供給源寿命を改善し、または両方である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記フッ素化合物を、前記アークチャンバに、所定の流速において流し込むこと、
所定のアーク電力および供給源磁場において、前記フッ素化合物から前記フッ素イオン性種を発生させることであって、前記フッ素イオン性種が、基板注入のための所望のフッ素イオン性種を含む、前記フッ素イオン性種を発生させること
を含み、
前記流速、アーク電力、および供給源磁場が、前記所望のフッ素イオン性種に最適化されたビーム電流を提供するように選ばれる、
請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記フッ素イオン性種がFイオンを含む、請求項に記載の方法。
【国際調査報告】