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特表2022-514243フッ素イオン注入方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(54)【発明の名称】フッ素イオン注入方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   H01J 27/08 20060101AFI20220203BHJP
   H01J 37/08 20060101ALI20220203BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
H01J27/08
H01J37/08
H01J37/317 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534041
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(85)【翻訳文提出日】2021-08-13
(86)【国際出願番号】 US2019066168
(87)【国際公開番号】W WO2020123907
(87)【国際公開日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】62/780,222
(32)【優先日】2018-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/780,219
(32)【優先日】2018-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/806,365
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】タン, イン
(72)【発明者】
【氏名】イェーデーヴ, シャラド エヌ.
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA25
5C101DD20
5C101DD30
5C101DD31
5C101DD33
5C101FF02
(57)【要約】
複数のフッ素イオン性種を形成することができるフッ素化合物が、所定の流速において、イオン注入機に導入される、フッ素イオン注入のための方法およびシステムを記載する。フッ素イオン性種を所定のアーク電力および供給源磁場において発生させて、所望のフッ素イオン性種に最適化されたビーム電流を提供する。所望のフッ素イオン性種、例えば複数のフッ素原子を有するものを、選択された運転条件下で基板に注入する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素イオン注入方法であって、
非フッ素原子と2個以上のフッ素原子とを含むフッ素化合物を含む組成物を、イオン注入機に、所定の流速において流すことであって、注入されるイオンが、基板へのフッ素イオン注入のために構成される、非フッ素原子と2個以上のフッ素原子とを含むフッ素化合物を含む組成物を、イオン注入機に、所定の流速において流すこと、
所定のアーク電力および磁場において、前記フッ素化合物からフッ素イオン性種を発生させるように、前記イオン注入機を運転することであって、前記フッ素イオン性種が、基板注入のための所望のフッ素イオン性種を含む、前記イオン注入機を運転すること、および
前記所望のフッ素イオン性種を、前記基板に注入すること
を含み、
前記流速、アーク電力、および磁場が、前記所望のフッ素イオン性種に最適化されたビーム電流を提供するように選ばれる、
フッ素イオン注入方法。
【請求項2】
前記フッ素イオン性種が、最大数のフッ素原子を有する種を含み、前記最大数のフッ素原子を有する種が、より少ない数のフッ素原子を有する種のビーム電流よりも大きいビーム電流を有するように、前記流速、アーク電力、および供給源磁場が選ばれる、請求項1に記載のフッ素イオン注入方法。
【請求項3】
前記所望のフッ素イオン性種が、選択されたエネルギーによって、前記選ばれた流速、アーク電力、および供給源磁場を使用して、所望の深さにおいて前記基板に注入される、請求項1に記載のフッ素イオン注入方法。
【請求項4】
前記アーク電力が5W~2500Wの範囲内である、請求項1に記載のフッ素イオン注入方法。
【請求項5】
前記流速が10sccm以下である、請求項1に記載のフッ素イオン注入方法。
【請求項6】
前記流速が、0.2sccm~6sccmの範囲内である、請求項1に記載のフッ素イオン注入方法。
【請求項7】
(a)前記フッ素化合物が式Q[式中、Qはフッ素(F)と結合を形成することができる元素である]を有し、前記フッ素イオン性種が、式Q 、およびF+、F の化合物を含み、xがu以上の整数であり、uが1以上の整数であり、yがv以上の整数であり、vは1以上の整数であり、
(b)前記フッ素化合物が、式Q[式中、QおよびRは、フッ素(F)と結合を形成することができる元素である]を有し、前記フッ素イオン性種が、式Q 、およびF+、F の化合物を含み、xがu以上の整数であり、uが1以上の整数であり、yがv以上の整数であり、vが1以上の整数であり、zがw以上の整数であり、wが1以上の整数であり、または
(c)前記フッ素化合物が式Fを有し、前記フッ素イオン性種が式F の化合物を含み、yがv以上の整数であり、vが1以上の整数であり、
(d)式Q、Q、およびFのうちの2種以上のフッ素化合物の混合物が使用される、
請求項1に記載のフッ素イオン注入方法。
【請求項8】
前記フッ素化合物が、F、BF、BHF、BHF、B、SiF、Si、SiHF、SiH、SiHF、Si、SiF、SiHF、GeF、Ge、Ge、GeHF、GeH、GeHF、PF、PF、PHF、PHF、PH、PHF、AsF、AsF、AsHF、AsHF、AsH、SbF3、SbF、XeF、XeF、XeF、WF、MoF、C2n+2、C2n、C2n-2、C2n+2-x、C2n-x、C2n-2-x、COF、SF、SF、SeF、NF、N、NHF、NHF、NHF、NF、およびHF[式中、nは1~3の範囲内の整数であり、xは0、1、または2である]からなる群から選択される、請求項1に記載のフッ素イオン注入方法。
【請求項9】
流すことが、前記フッ素化合物とは異なる水素含有化合物を、前記イオン注入機に流すことをさらに含み、前記水素含有化合物が、H、B、SiH、Si、GeH、Ge、PH、AsH CH、C、C、C[式中、xおよびyおよびzは、1以上である]、NH、およびNからなる群から選択される、請求項1に記載のフッ素イオン注入方法。
【請求項10】
前記水素含有化合物が、0.01sccm~10sccmの速度において、前記イオン注入機に流れる、請求項9に記載のフッ素イオン注入方法。
【請求項11】
流すことが、前記フッ素化合物とは異なる酸素含有化合物を、前記イオン注入機に流すことをさらに含み、前記酸素含有化合物が、O、O、HO、HO2、CO、CO、NO、NO、N2O、NO、N、N、N、N、およびCOFからなる群から選択される、請求項1に記載のフッ素イオン注入方法。
【請求項12】
流すことが、不活性ガスを前記イオン注入機に流すことをさらに含み、前記不活性ガスが、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、およびキセノンからなる群から選択される、請求項1に記載のフッ素イオン注入方法。
【請求項13】
前記不活性ガスが、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、およびキセノンからなる群から選択される、請求項12に記載のフッ素イオン注入方法。
【請求項14】
前記フッ素含有ガス、前記水素含有ガス、前記酸素含有ガス、および/または前記不活性ガスのうちの2種以上が、ガスシリンダーパッケージ中で予備混合状態にある、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記フッ素含有ガス、前記水素含有ガス、前記酸素含有ガス、および/または前記不活性ガスのうちの2種以上が、ガスシリンダーパッケージ中の予備混合物であり、一緒に共流動される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フッ素イオン注入方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素注入は、先進半導体デバイス製造において、欠陥エンジニアリング、シャロージャンクションの形成、および材料改質のために使用される。フッ素注入のための一般的な設定は、フッ化物ドーパント源ガスをイオン源に供給して、解離副生成物の1つとしてフッ素(F)を提供することを含む。
【0003】
しかしながら、従来のフッ素インプラントプロセスは、一般に、注入されるフッ素イオンのタイプとフッ素イオン注入の特異性とに関して、例えばフッ素イオン注入深さに関して制限される。さらに、フッ素含有化合物の分解時に発生されるイオン性種も、望ましくないことに、フッ素と共注入されうる。
【0004】
また、フッ素含有供給ガスの使用は、イオン源性能、供給源寿命、インプラント用具の生産能力、および用具所有コストに悪影響を及ぼしうる、ハロゲンサイクルを生じる。幅広い潜在的用途を考慮すると、フッ素イオンビーム性能を改善することについて、当技術分野における様々な課題が残されている。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、イオン注入プロセスにおいて、1種または複数の所望のフッ素イオン性種を、基板に注入するための方法およびシステムに関する。この方法およびシステムでは、複数のフッ素イオン性種を、フッ素含有化合物から発生させることができる。所定の流速、アーク電力、および供給源磁場条件を使用することで、所望のフッ素イオン種に最適化され、ひいては基板への注入を対象とすることができる、ビーム電流を発生させることができる。したがって、最新の方法では、注入されるフッ素種、およびこれらがどのように基板に注入されるかについて、より優れた制御が可能となり、ひいては、改善された電子特性を有するマイクロ電子デバイスのように、高レベルの化学改質が基板に提供される。
【0006】
一実施形態によれば、フッ素イオン注入方法は、非フッ素原子と1つまたは複数のフッ素原子とを含むフッ素化合物を含む組成物を、イオン注入機に、所定の流速において流すステップを含み、注入されるイオンは、基板へのフッ素イオン注入のために構成される。この方法はまた、所定のアーク電力および供給源磁場において、フッ素化合物からフッ素イオン性種を発生させるように、イオン注入機を運転することを含み、フッ素イオン性種は、基板注入のための所望のフッ素イオン性種を含む。運転中、流速、アーク電力、および供給源磁場は、所望のフッ素イオン性種に最適化されたビーム電流を提供するように選ばれる。したがって、所望のフッ素イオン性種は、選択された運転条件下で基板に注入される。
【0007】
一部の実施形態では、この方法は、Fイオン種を注入するために有益でありうる。イオン注入システムは、所定の流速、アーク電力、および供給源磁場において運転され、最適化されたフッ素イオン性種Fのビーム電流を提供する。フッ素イオン性種Fは、選択された運転条件下で基板に注入される。いくつかの例では、フッ素イオン性種Fは、フッ素含有化合物、例えば、SiF、BF、GeF、およびCFを使用して達成することができるが、これらに限定されない。いくつかの場合において、一定の条件下でCFからフッ素イオン性種Fを発生させる場合、同じまたは同様の条件下で、SiF、BF、またはGeFから発生させたフッ素イオン性種Fと比較して、より高いビーム電流が観察される。より高いビーム電流は、より低いガス流速において得られるようである。また、水素(H)共ガスをCFガスストリームに加えても、最大33%の水素ガスを含有する、混合物または共流動ガスストリームについて、ビーム電流に有意な影響を及ぼさないようである。
【0008】
他の実施形態は、ここでは「分子注入」または「クラスター注入」と呼ぶ、複数のフッ素原子を有するイオン性種に最適なビーム電流を得ることによって達成される、このようなイオン種を注入するための方法に関する。クラスター注入は、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、アンチモン、ヒ素、キセノン、モリブデン、炭素、セレン、硫黄、および窒素などの原子を含むフッ素化化合物から達成することができる。例示的なフッ素化合物は
SiFであり、F、SiF、SiF 、SiF 、およびSiF を含めたフッ素イオン性種を発生させる。別の例示的なフッ素化合物はBFであり、F、BF、BF 、およびBF を含めたフッ素イオン性種を発生させる。例示的なフッ素化合物はGeFであり、F、GeF、GeF 、GeF 、およびGeF を含めたフッ素イオン性種を発生させる。なおも別の例示的なフッ素含有化合物はCFであり、F、F 、CF、CF 、CF 、およびCF を含めたフッ素イオン性種を発生させる。
【0009】
クラスター注入のために、本開示の方法を使用して、より高いビーム電流を達成することができる。さらに、Fイオンとは異なるフッ素イオン性種(分子またはクラスターイオン)は、より容易にイオン化することができ、アーク電力、ならびにイオン源およびインプラント用具への応力を低減することができる。また、より高いエネルギーにおいて、所望の注入深さを達成することができ、これは、容易に達成することができ、インプラント用具への応力を少なくすることができる。分子またはクラスター注入は、本開示の方法を使用してより低いビーム電流において実行することができ、供給源寿命を延長することもできる。さらに、本開示の方法は、任意選択で、フッ素とは異なる原子または化学を注入するために使用することができ、これによって、全体としての注入ステップの数が低減される。
【0010】
本発明の実施形態はまた、フッ素化合物とは異なる水素含有ガスを、イオン注入機に流すことを含む。本発明の実施形態はまた、フッ素化合物とは異なる酸素含有ガスを、イオン注入機に流すことを含む。いっそうさらに、本発明の実施形態はまた、不活性ガスをイオン注入機に流すことを含むことができる。本開示の方法は、これらのガスのうちの1種または複数を、フッ素化合物と共に、互いに独立にまたは混合状態において、流すことを含む。一部の実施形態では、水素ガス(H)をフッ素含有ガスと共に、独立に(共流動)または混合状態のいずれかで、流すことができる。フッ素化合物とは異なるこれらのガスのうちの1種または複数の使用によって、インプラントビーム電流、供給源寿命の性能、または両方を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ドーパント源ガスをアークチャンバに供給するためのガス供給ラインを有し、チャンバ内のドーパント源ガスをイオン化するためのアークチャンバを含む、イオン注入システムの略図である。
図2図1のシステムのアークチャンバにおける、プラズマの発生を模式的に示す、図1のイオン注入システムの断面図である。
図3】イオン源装置と、イオン源装置の熱管理のためのヒートシンク装置とを含む、イオン源アセンブリの断面における斜視図である。
図4】図示されるイオンインプラントチャンバにおいて、基板にイオン注入ドーピングするために補給されるガスを含有する貯蔵および投入容器を含む、イオンインプラントプロセスシステムの略図である。
図5】タングステンライナーを有するタングステンアークチャンバの存在下、異なる流速においてSiFを使用したビームスペクトルデータを示すグラフである。
図6】タングステンライナー対グラファイトライナーの存在下、GeFガスを使用した実験から、Fビーム電流データを示すグラフである。
図7】GeFガスを使用した実験からのイオン化種、ならびにグラファイトライナーを使用した場合に、WおよびWF ビームが低下したことを示すグラフである。
図8】BFガスとHガスとの混合物を使用した実験から、Fビーム電流のデータを示すグラフである。
図9】BF/H混合物を使用した実験からのイオン化種、ならびにHをBFガスと混合した場合に、WおよびWF ビームが低下したことを示すグラフである。
図10】異なるフッ素含有ガスについて、異なる流速において発生させたFビーム電流を比較するグラフである。
図11】タングステンライナーを有するタングステンアークチャンバの存在下、異なる流速におけるCFガスについて、ビームスペクトルデータを示すグラフである。
図12】CFとHとを含有するガス混合物中の水素の百分率に対してプロットした、Fビーム電流データを示すグラフである。
図13】CFとHとを含有するガス混合物中の水素の百分率に対してプロットした、HFおよびWビーム電流データを示すグラフである。
図14】タングステンライナーを有するタングステンアークチャンバを含むイオン注入システムにおいて、CFガスがイオン化された場合、CFガスについて、経時的なFビーム電流展開のプロットを示すグラフである。
図15】タングステンライナーを有するタングステンアークチャンバの存在下、CF4ガスから発生させたF+、W+、C+、およびCF+ビーム電流について、時間の関数としてビーム電流の傾向を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、フッ素イオン注入に、ならびに様々な態様において、複数のフッ素イオン性種を発生させるフッ素化合物が使用される方法およびシステムに関し、システムは、所定のフッ素化合物の流速、所定のアーク電力、および所定の供給源磁場において運転される。この運転条件では、所望のフッ素イオン種に最適化され、ひいては、基板への注入を対象とすることができる、ビーム電流が提供される。いくつかの場合において、所望のフッ素イオン性種は、単原子Fでありうる。他の場合において、所望のフッ素種は、「クラスター注入」のために、多原子または分子またはクラスターのフッ素イオン性種、例えば、F またはSiF3+などを含有しうる。
【0013】
本開示の方法では、イオン化してフッ素含有イオン性種にすることができる、1種または複数のフッ素化合物が使用される。
【0014】
フッ素化合物の1つのタイプは、式Qを有する化合物によって表される。Qにおいて、Qは、フッ素(F)との結合を形成することができる元素であり、xおよびyは両方、1以上の整数である。実施形態では、xは1~3の範囲内の整数であり、かつyは1~8の範囲内の整数であり、実施形態では、xは1または2であり、かつyは1~6の範囲内の整数である。いくつかの式Qの化合物について、yはxに等しく、例えば、yとxとが両方1である。いくつかの式Qの化合物について、yはxよりも大きい。例えば、yはxの2倍であり、yはxの3倍であり、yはxの4倍であり、yはxの5倍であり、またはyはxの6倍である。いくつかの式Qの化合物について、yは1+xであり、yは2+xであり、yは3+xであり、yは4+xであり、またはyは5+xである。
【0015】
例えばここに記載する条件を使用したイオン化の際、式Qを有する化合物は、式F、Q 、およびF の化合物を含めたフッ素イオン性種を発生させることができる。複数のフッ素原子を有する種は、分子種またはクラスター種と呼ばれる。uとvとは両方整数であり、式Qのxおよびyに関して記載することができ、式中、xはu以上の整数であり、かつuは1以上の整数であり、yはv以上の整数であり、かつvは1以上の整数である。したがって、式Q のイオン性種について、uとvとは両方、1以上の整数である。実施形態では、uは1~3の範囲内の整数であり、かつvは1~8の範囲内の整数であり、実施形態では、uは1または2であり、かつvは1~6の範囲内の整数である。いくつかの式Q のイオン性種について、uはvに等しく、例えば、uとvとが両方1である。いくつかの式Q のイオン性種について、vはuよりも大きい。例えば、vはuの2倍であり、vはuの3倍であり、vはuの4倍であり、vはuの5倍であり、またはvはuの6倍である。いくつかの式Q のイオン性種について、vは1+u、vは2+u、vは3+u、vは4+u、またはvは5+uである。
【0016】
ケイ素とフッ素とを含有する化合物の例としては、式SiFおよびSiを有するものが挙げられ、これらはイオン化されて、F、F 、SiF、SiF 、SiF 、SiF 、Si、Si 、Si 、Si 、Si 、およびSi からなる群から選択されるイオン性種を含めた、フッ素イオン性種を発生させることができる。好ましい態様では、SiFはイオン化されて、F、SiF、SiF 、SiF 、およびSiF からなる群から選択される、2つ以上の種を発生させる。
【0017】
ホウ素とフッ素とを含有する化合物の例としては、式BFおよびBの化合物が挙げられ、これらはイオン化されて、F、F 、BF、BF 、BF 、B、B 、B 、およびB からなる群から選択されるイオン性種を含めた、フッ素イオン性種を発生させることができる。好ましい態様では、BFはイオン化されて、F、BF、BF 、およびBF からなる群から選択される、2つ以上の種を発生させる。
【0018】
ゲルマニウムとフッ素とを含有する化合物の例としては、式GeFおよびGeの化合物が挙げられ、これらはイオン化されて、F、F 、GeF、GeF 、GeF 、GeF 、GeF 、Ge、Ge 、Ge 、Ge 、Ge 、およびGe からなる群から選択されるイオン性種を含めた、フッ素イオン性種を発生させることができる。好ましい態様では、GeFはイオン化されて、F、GeF、GeF 、GeF 、およびGeF からなる群から選択される、2つ以上の種を発生させる。
【0019】
リンとフッ素とを含有する化合物の例としては、式PFおよびPFの化合物が挙げられ、これらはイオン化されて、F、F 、ならびにPF、PF 、PF 、PF 、およびPF からなる群から選択されるイオン性種を含めた、フッ素イオン性種を発生させることができる。
【0020】
ヒ素とフッ素とを含有する化合物の例としては、式AsFおよびAsFの化合物が挙げられ、これらはイオン化されて、F、F 、ならびにAsF、AsF 、AsF 、AsF 、およびAsF からなる群から選択されるイオン性種を含めた、フッ素イオン性種を発生させることができる。
【0021】
アンチモンとフッ素とを含有する化合物の例としては、式SbFの化合物が挙げられ、これはイオン化されて、F、F 、ならびにSbF、SbF 、SbF 、SbF 、およびSbF からなる群から選択されるイオン性種を含めた、フッ素イオン性種を発生させることができる。
【0022】
タングステンとフッ素とを含有する化合物の例としては、式がWFの化合物が挙げられ、これはイオン化されて、F、F 、ならびにWF、WF 、WF 、WF 、WF 、およびWF からなる群から選択されるイオン性種を含めた、フッ素イオン性種を発生させることができる。
【0023】
窒素とフッ素とを含有する化合物の例としては、式NFおよびNの化合物が挙げられ、フッ素イオン性種には、F、F 、NF、NF 、NF 、N、N 、N 、N 、N 、およびN からなる群から選択される、2つ以上の種が含まれる。
【0024】
炭素とフッ素とを含有する化合物の例としては、式CFおよびCの化合物が挙げられ、フッ素イオン性種には、F、F 、CF、CF 、CF 、CF 、C、C 、C 、C 、C 、およびC からなる群から選択される、2つ以上の種が含まれる。
【0025】
フッ素イオン性種を発生させることができる他のタイプのフッ素含有化合物としては、式Qの化合物[式中、QおよびRは、フッ素(F)との結合を形成することができる元素であり、x、z、およびyは、1以上の整数である]が挙げられる。実施形態では、Qは、B、Si、Ge、P、As、C、およびNからなる群から選択され、Rは、HおよびOから選択される。実施形態では、xは1~3の範囲内の整数、好ましくは1または2であり、zは1~4の範囲内の整数、好ましくは1、2、または3であり、yは1~8、好ましくは1~6の範囲内の整数である。
【0026】
例えばここに記載する条件を使用したイオン化の際、式Qを有する化合物は、式Q 、およびF、F のものを含めたフッ素イオン性種を発生させることができる。u、w、およびvのすべては整数であり、式Qのx、z、およびyに関して記載することができ、式中、xはu以上の整数であり、かつuは1以上の整数であり、yはv以上の整数であり、かつvは1以上の整数であり、zはw以上の整数であり、かつwは1以上の整数である。したがって、式Q のイオン性種について、u、w、およびvのすべては、1以上の整数である。好ましくは、uは1~3の範囲内の整数、好ましくは1または2であり、wは1~4の範囲内の整数、好ましくは1、2、または3であり、vは1~8、好ましくは1~6の範囲内の整数である。
【0027】
式Qを有する化合物の例としては、限定するものではないが、BHF、BHF、SiHF、SiH、SiHF、Si、SiF、SiHF、GeHF、GeH、GeHF、PHF、PHF、PH、PHF、AsHF、AsHF、AsH、C2n+2-x、C2n-x、C2n-2-x、COF、NHF、NHF、NHF、およびNF[式中、nは1~3の範囲内の整数であり、xは0、1、または2である]などが挙げられる。
【0028】
フッ素イオン性種を発生させることができる他のタイプのフッ素含有化合物としては、式Fの化合物が挙げられ、フッ素イオン性種としては、式F の化合物が挙げられ、式中、yはv以上の整数であり、かつvは1以上の整数である。
【0029】
本開示の方法はまた、式Q、Q、およびFのうちの2種以上のフッ素化合物の混合物の使用を含んでもよい。2種以上の異なるフッ素含有化合物が使用される場合、これらは、独立に注入チャンバに流し込まれてもよく、混合物としてチャンバに流し込まれてもよい。
【0030】
本開示の方法において、1種または複数のフッ素含有化合物は、注入チャンバに流し込まれて、フッ素イオン性種を発生させる。フッ素イオン性種は、最大数のフッ素原子を有する種を含むことができる。本開示の方法において、流速、アーク電力、および供給源磁場は、所望の数のフッ素原子を有する種が、最大ビーム電流に最適化されるように選ばれる。他の方法において、流速、アーク電力、および供給源磁場は、フッ素イオン性種Fが最大ビーム電流に最適化されるように選択される。
【0031】
フッ素イオン注入のためのシステムの運転は、アーク電力およびアーク電圧の観点で記載することができる。一部の実施の形態では、システムは、約5W~約2500Wの範囲内のアーク電力を提供するように運転され、または一部の実施の形態では、アーク電力は、約90W~約1500Wの範囲内である。これらの範囲の1つにおけるアーク電力を達成するために、約30V~約150Vの範囲内のアーク電圧において、アーク電力が発生させるようにシステムを運転することができ、またはより詳細には、約60V~約125Vの範囲内である。
【0032】
フッ素イオン注入のためのシステムの運転は、フッ素含有化合物のイオン注入チャンバへの流速の観点でも記載することができる。一部の実施形態では、フッ素含有化合物は、10sccm以下の速度においてチャンバに流し込まれ、実施形態では、フッ素含有化合物は、0.1sccm~6sccmの範囲内の速度において流れる。なおも他の実施形態では、フッ素含有化合物は、0.2sccm~4sccmの範囲、より詳細には0.2sccm~2sccmの範囲において、システムに流れる。
【0033】
一部の特定の実施の形態では、フッ素化合物はBFであり、フッ素イオン性種は、F、F2+、BF、BF 、およびBF からなる群から選択される2つ以上の種を含み、アーク電力は50W~2500Wの範囲内であって、これは30V~150Vの範囲内のアーク電圧において発生させたものであり、流速は1.25sccm~1.75sccmの範囲内である。
【0034】
一部の特定の実施の形態では、フッ素化合物はSiFであり、フッ素イオン性種は、F、F2+、SiF、SiF 、SiF 、およびSiF からなる群から選択される2つ以上の種を含み、アーク電力は50W~2500Wの範囲内であって、これは75V~125Vの範囲内のアーク電圧において発生させたものであり、流速は1.0sccm~1.5sccmの範囲内である。
【0035】
一部の特定の実施の形態では、フッ素化合物はGeFであり、フッ素イオン性種は、F、F2+、GeF、GeF 、GeF 、およびGeF からなる群から選択される2つ以上の種を含み、アーク電力は50W~2500Wの範囲内であって、これは30V~150Vの範囲内のアーク電圧において発生させたものでありし、流速は0.2sccm~0.8sccmの範囲内である。
【0036】
一部の特定の実施の形態では、フッ素化合物はCFであり、フッ素イオン性種は、F、F 、CF、CF 、およびCF のうちの少なくとも1種を含み、アーク電力は50W~2500Wの範囲内であって、これは30V~150Vの範囲内のアーク電圧によって発生させたものであり、流速は0.2sccm~1.5sccmの範囲内、より詳細には0.3sccm~1.0sccmの範囲内である。
【0037】
任意選択で、本開示の方法は、フッ素化合物とは異なる(非フッ素化)水素またはヒドリド含有化合物を、イオン注入機に流すことを含むことができる。このような化合物の例としては、限定するものではないが、H、B、SiH、Si、GeH、Ge、PH、AsH CH、C、C[式中、xおよびyは1以上である]、NH、およびNなどの化合物が挙げられる。例示的な実施の形態では、水素またはヒドリド含有化合物は、0.05sccm~10sccmの速度において、アークチャンバに流れ込む。
【0038】
任意選択で、本開示の方法は、フッ素化合物とは異なる(非フッ素化)酸素含有化合物を、イオン注入機に流すことを含むことができる。このような化合物の例としては、限定するものではないが、O、O、HO、HO2、CO、CO、NO、NO、N2O、NO、N、N、N、およびNなどの化合物が挙げられる。
【0039】
任意選択で、本開示の方法は、不活性ガスをイオン注入機に流すことを含むことができる。不活性ガスの例としては、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、およびキセノンが挙げられる。
【0040】
実施の形態では、水素もしくはヒドリド含有ガス、酸素含有ガス、または不活性ガスのうちの1種が、フッ素含有ガスと一緒に注入機に流れ、他の実施の形態では、これらのガスのうちの2種が流れ、なおも他の実施の形態では、3種すべてのガスが、フッ素含有化合物と一緒に、注入機に流れる。
【0041】
2種以上のガスがチャンバに流れる場合、ガスは個別に流れてもよい。あるいは、ガスは混合状態で流れてもよい。例えば、フッ素含有ガス、水素含有ガス、酸素含有ガス、および/または不活性ガスのうちの任意の2種以上が、ガスシリンダーパッケージ中の予備混合物であってもよい。なおも他の実施形態では、2種以上のガスが混合状態にあり、次いで、別のガスが個別にチャンバに流れる。一実施形態では、水素ガスをフッ素含有ガスと共流動させ、または予備混合する。
【0042】
本開示の方法は、イオン注入のためのイオン源装置を使用して実行することができる。ここに記載するフッ素注入方法のために、任意のタイプのイオン注入システムを使用することができる。システムは、1種または複数のタングステン含有または非タングステン含有材料から形成される、アークチャンバを含む。一部の実施形態では、フッ素イオン注入のために、例えばCFまたはCなどの炭素とフッ素とを含有する化合物を利用すること、ならびにタングステンアークチャンバおよび/またはタングステン含有ライナーの組み合わせは、ビーム電流および供給源寿命を含めたF+インプラント性能を改善することがあり、注入プロセス中に形成されるフッ化タングステンの量を低減しうる。
【0043】
例示的な非タングステン含有材料としては、限定するものではないが、グラファイト含有材料、炭化物含有材料、フッ化物含有材料、窒化物含有材料、酸化物含有材料、またはセラミックを挙げることができる。非タングステン含有材料を使用した例示的なシステムは、米国特許仮出願第62/780,222号に記載されており、すべての目的について、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。これらの非タングステン材料がチャンバに存在すると、タングステンに置き換わることができ、一部の実施形態では、これによって、ビーム電流および供給源寿命を含めたF+インプラント性能を改善することができる。特に、これらの材料によって、注入プロセス中に形成されるフッ化タングステンの量を低減することができる。
【0044】
イオン源装置は、イオン源チャンバに配置された構造部材、例えば、ライナーまたは他のイオン源チャンバの構造部品を含むことができる。ライナーは、2つの反対側にある主表面と、これらの間の厚さとを有する構造の、扁平な、例えば平面的なピースであってもよい。ライナーは、長方形の、曲がった(例えば円形の)、角のある、またはそれ以外の形状であってもよい。ライナーは取り外し可能であってもよく、これは、イオン源チャンバの内部空間へのライナーの挿入および取り外しができることを意味する。他の場合において、ライナーが固定的であり、チャンバから取り外し不能であってもよい。
【0045】
ここで図面を参照すると、図1は、フッ素含有ガスをアークチャンバに供給するためのガス供給ライン14を有し、チャンバ内のフッ素含有ガスをイオン化するためのアークチャンバ12を含む、イオン注入システム10の略図である。したがって、アークチャンバ12は、イオン源チャンバを提供する。一部の実施形態では、アークチャンバは、タングステンアークチャンバとタングステンライナーとを含むことができる。他の実施形態では、アークチャンバは、タングステンアークチャンバと非タングステン材料含有ライナーとを含むことができる。なおも他の実施形態では、アークチャンバとライナーとが両方、非タングステン含有材料を含むことができる。注入プロセス中のフッ化タングステン形成の量を低減するため、および/またはフッ素インプラントビーム電流を改善するための好適な非タングステン含有材料としては、限定するものではないが、グラファイト含有材料、炭化物含有材料、フッ化物含有材料、窒化物含有材料、酸化物含有材料、またはセラミックを挙げることができる。
【0046】
図2は、図1のシステムのアークチャンバ12における、プラズマ16の発生を模式的に示す、図1のイオン注入システム10の断面図である。フッ素含有ガスは、供給ラインとアークチャンバに入るガスとの熱状態の質を判定するための監視の関係で、固定された監視熱電対TC1およびTC2を有するフッ素含有ガス供給ライン14に、矢印Aによって指示される方向に流れ込むが、これは、イオン注入システムについての熱管理システムの使用に関して望ましいこともある。
【0047】
図3は、イオン源装置70と、システムの熱管理のための任意選択のヒートシンク装置50とを含む、イオン源アセンブリの断面における斜視図である。この断面図は、フッ素含有ガス供給ライン72が、ガス供給プラグ内のガス流路84、およびイオン源と連結されたガスブッシング内のガス流路86に結合していることを示す。
【0048】
図3に示すイオン源装置は、ベース80を含む。ベース80は、タングステン含有材料によってコーティングもしくは改質することができ、またはグラファイト含有材料、炭化物含有材料、フッ化物含有材料、窒化物含有材料、酸化物含有材料、またはセラミックによってコーティングもしくは改質することができる。ベース80は、開口部82を中に含むことができる。
【0049】
図4は、反応物質ガスを収容している、貯蔵および投入容器302を含む、イオンインプラントプロセスシステム300の略図であり、反応物質ガスは、イオン源チャンバにおけるフッ素含有ガスとのin situ反応のために補給され、図示されるイオンインプラントチャンバ301において、基板328のイオン注入のためのフッ素イオン性種を発生させる。
【0050】
貯蔵および投入容器302は、フッ素ガスを収容する内部容積を囲んでいる容器壁306を含む。
【0051】
容器は、ガスのみを収容するように手配された内部容積を有する、従来タイプのガスシリンダーであってもよく、あるいは容器が、反応物質ガスについての吸着親和性を有し、投入条件下では、容器から放出するための共反応物質源ガスが脱着可能な、吸着剤材料を含有してもよい。
【0052】
貯蔵および投入容器302は、放出ライン312とガス流連通においてつながったバルブヘッド308を含む。圧力センサ310は、質量流量制御装置314と一緒に、ライン312に配置される。他の監視およびセンシング部品がラインにつながり、制御手段、例えば、アクチュエータ、フィードバックおよびコンピュータ制御システム、サイクルタイマー等と接続されてもよい。
【0053】
イオンインプラントチャンバ301はイオン化装置316を含有し、イオン化装置316は、イオン化装置チャンバにおいて、またはイオン化装置チャンバと共同して提供されるドーパント源反応物質に反応性である、ライン312から放出されたフッ素含有ガスを受け取り、フッ素イオン性種を発生させ、フッ素イオン性種は、イオン化装置チャンバにおいて、イオン化条件下でイオンビーム305を生成する。イオンビーム305は、必要なイオンを選択して不要なイオンを拒絶する、質量分析装置ユニット322を通過する。
【0054】
選択されたイオンは、加速電極アレイ324を、次いで偏向電極326を通過する。結果として収束したイオンビームは、さらにはスピンドル332に取り付けられた回転式収容器330上に配置された、基板要素328に衝突し、イオン注入生成物として、ドーピングされた(フッ素ドーピング)基板を形成する。
【0055】
イオンインプラントチャンバ301のそれぞれのセクションは、それぞれポンプ320、342、および346によって、ライン318、340、および344を通じて排気される。
【実施例1】
【0056】
本発明により、フッ素含有ガス(SiF)を、所定のアーク電力および磁場において、様々な流速(0.5、1.5、および2.5sccm)でイオン化チャンバに流し込んだ。様々な流速において、各イオン性種についてのビーム電流を測定した。図5に示すように、条件の最適化およびビームをSiF 種にチューニングすることによって、高SiF ビーム電流を達成した。
【実施例2】
【0057】
フッ素含有ガス(GeF)を、タングステンライナーを有するイオン化チャンバと、グラファイトライナーを有するイオン化チャンバとに流し込んだ。110Vのアーク電圧および20mAの供給源ビームにおいて、システムを運転した。様々なガス(GeF)流速において、F+イオンビーム電流を測定した。試験した各流速において、グラファイトライナーを有するシステムは、タングステンライナーを有するシステムと比較して、より高いFビーム電流を提供した。結果を図6に示す。
【実施例3】
【0058】
実施例2に記載したプロセスから得られる、様々なイオン化種のビームスペクトルを決定した。結果は、GeFビームスペクトルから、グラファイトライナーではWおよびWF ビームが有意に低いことを示している。図7を参照されたい。
【実施例4】
【0059】
フッ素含有ガス(BF)を、単独で、または水素ガス(H)の存在と共に、イオン化チャンバに流し込んだ。BFの流速は1.5sccmであり、110Vのアーク電圧および20mAの供給源ビームにおいて、システムを運転した。図8は、次第に上昇するH濃度におけるFビーム電流を示し、Hを最大50%に上昇させた場合、電流がわずかにしか影響を受けないことを明らかにしている。しかしながら、イオン化種のBF3ビームスペクトルを分析すると、H2をBF3と混合した場合、W+およびWFx+ビームにおける有意な低減を示した。図9を参照されたい。
【実施例5】
【0060】
同じ運転条件下で、異なるフッ素ガス(BF、SiF、GeF、CF)から発生させたFビーム電流を評価した。ガスを独立に、タングステンライナーを有するタングステンチャンバを有するイオン化チャンバに流し込んだ。110Vのアーク電圧および90Vのアーク電圧、ならびに20mAの供給源ビームにおいて、システムを運転した。それぞれのガスについて、Fイオンビーム電流を様々な流速において測定した。低流速において、CFは、BF、SiF、およびGeFよりも有意に高いFビーム電流を発生させた。結果を図10に示す。
【実施例6】
【0061】
図11は、異なるガス流速において、実施例5に記載した条件下でCFから発生させたFビームスペクトルを示す。見て取れるように、より高いFビーム電流は、より低いガス流速において発生させた。ガス流速が0.42sccmから1sccmに増加した場合、FおよびW++ビーム電流は減少し、W、C、およびCFビーム電流は増加した。
【実施例7】
【0062】
0.5sccmの固定流速、110Vのアーク電圧、および20mAの供給源ビームにおいて、タングステンライナーを有するタングステンアークチャンバを含むイオン注入システムに流れた、CFとHとを含有するガス混合物。図12は、Fビーム電流を、混合物中の水素ガスの百分率の関数として示す。最大33%水素を含有する混合物について、Fビーム電流に関する有意な影響は観察されなかった。図13は、ガス混合物中の水素の量の関数としてプロットした、HFおよびWビーム電流を示す。予想される通り、Wビーム電流は有意に低減し、HFビームは増加した。
【実施例8】
【0063】
0.5sccmの固定流速、110Vのアーク電圧、および20mAの供給源ビームにおいて、タングステンライナーを有するタングステンアークチャンバ中、CF4のイオン化から発生させたFビーム電流の安定性を調査した。図14は、Fビーム電流が、経時的に増加したこと、および2~3時間後に安定になることを示す。図15は、図14に示した評価期間にわたって発生させた、F+、C、CF、Wについてのビーム電流を比較する。Cビーム電流は、期間の前半中に低減し、期間の後半に増加し始めた。Cにおける初期の低減は、先行のCOビームからの炭素残留物を除去したことに起因しうる。Cビーム電流が遅れて増加する傾向は、CF自体からの炭素沈着に関係しうる。CFビーム電流は接触増加傾向を有したが、これは、Fビーム電流と同じ関係である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2021-08-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素イオン注入方法であって、
非フッ素原子と2個以上のフッ素原子とを含むフッ素化合物を含む組成物を、イオン注入機に、所定の流速において流すことであって、注入されるイオンが、基板へのフッ素イオン注入のために構成される、非フッ素原子と2個以上のフッ素原子とを含むフッ素化合物を含む組成物を、イオン注入機に、所定の流速において流すこと、
所定のアーク電力および磁場において、前記フッ素化合物からフッ素イオン性種を発生させるように、前記イオン注入機を運転することであって、前記フッ素イオン性種が、基板注入のための所望のフッ素イオン性種を含む、前記イオン注入機を運転すること、および
前記所望のフッ素イオン性種を、前記基板に注入すること
を含み、
前記流速、アーク電力、および磁場が、前記所望のフッ素イオン性種に最適化されたビーム電流を提供するように選ばれる、
フッ素イオン注入方法。
【請求項2】
前記フッ素イオン性種が、最大数のフッ素原子を有する種を含み、前記最大数のフッ素原子を有する種が、より少ない数のフッ素原子を有する種のビーム電流よりも大きいビーム電流を有するように、前記流速、アーク電力、および供給源磁場が選ばれる、請求項1に記載のフッ素イオン注入方法。
【請求項3】
前記所望のフッ素イオン性種が、選択されたエネルギーによって、前記選ばれた流速、アーク電力、および供給源磁場を使用して、所望の深さにおいて前記基板に注入される、請求項1に記載のフッ素イオン注入方法。
【請求項4】
前記アーク電力が5W~2500Wの範囲内である、請求項1に記載のフッ素イオン注入方法。
【請求項5】
前記流速が10sccm以下である、請求項1に記載のフッ素イオン注入方法。
【請求項6】
前記流速が、0.2sccm~6sccmの範囲内である、請求項1に記載のフッ素イオン注入方法。
【請求項7】
(a)前記フッ素化合物が式Q[式中、Qはフッ素(F)と結合を形成することができる元素である]を有し、前記フッ素イオン性種が、式Q 、およびF、F の化合物を含み、xがu以上の整数であり、uが1以上の整数であり、yがv以上の整数であり、vは1以上の整数であり、
(b)前記フッ素化合物が、式Q[式中、QおよびRは、フッ素(F)と結合を形成することができる元素である]を有し、前記フッ素イオン性種が、式Q 、およびF、F の化合物を含み、xがu以上の整数であり、uが1以上の整数であり、yがv以上の整数であり、vが1以上の整数であり、zがw以上の整数であり、wが1以上の整数であり、または
(c)前記フッ素化合物が式Fを有し、前記フッ素イオン性種が式F の化合物を含み、yがv以上の整数であり、vが1以上の整数であり、
(d)式Q、Q、およびFのうちの2種以上のフッ素化合物の混合物が使用される、
請求項1に記載のフッ素イオン注入方法。
【請求項8】
前記フッ素化合物が、F、BF、BHF、BHF、B、SiF、Si、SiHF、SiH、SiHF、Si、SiF、SiHF、GeF、Ge、Ge、GeHF、GeH、GeHF、PF、PF、PHF、PHF、PH、PHF、AsF、AsF、AsHF、AsHF、AsH、SbF、SbF、XeF、XeF、XeF、WF、MoF、C2n+2、C2n、C2n-2、C2n+2-x、C2n-x、C2n-2-x、COF、SF、SF、SeF、NF、N、NHF、NHF、NHF、NF、およびHF[式中、nは1~3の範囲内の整数であり、xは0、1、または2である]からなる群から選択される、請求項1に記載のフッ素イオン注入方法。
【請求項9】
流すことが、前記フッ素化合物とは異なる水素含有化合物を、前記イオン注入機に流すことをさらに含み、前記水素含有化合物が、H、B、SiH、Si、GeH、Ge、PH、AsH CH、C、C、C[式中、xおよびyおよびzは、1以上である]、NH、およびNからなる群から選択される、請求項1に記載のフッ素イオン注入方法。
【請求項10】
流すことが、前記フッ素化合物とは異なる酸素含有化合物を、前記イオン注入機に流すことをさらに含み、前記酸素含有化合物が、O、O、HO、H、CO、CO、NO、NO、NO、NO、N、N、N、N、およびCOFからなる群から選択される、請求項1に記載のフッ素イオン注入方法。
【国際調査報告】