IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの特許一覧

特表2022-514350バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖を含む溶液からバイオマスを分離する方法
<>
  • 特表-バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖を含む溶液からバイオマスを分離する方法 図1
  • 特表-バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖を含む溶液からバイオマスを分離する方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(54)【発明の名称】バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖を含む溶液からバイオマスを分離する方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 19/00 20060101AFI20220203BHJP
   C12P 1/04 20060101ALI20220203BHJP
   C13B 20/16 20110101ALI20220203BHJP
   C13B 20/12 20110101ALI20220203BHJP
【FI】
C12P19/00
C12P1/04
C13B20/16
C13B20/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535550
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(85)【翻訳文提出日】2021-08-06
(86)【国際出願番号】 EP2019085479
(87)【国際公開番号】W WO2020127140
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】18214004.6
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マリッツ,ヤセク
(72)【発明者】
【氏名】シーベルト-ルドヴィク,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】エドマン,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】プール,ミヒャエル
【テーマコード(参考)】
4B064
【Fターム(参考)】
4B064AF04
4B064BD03
4B064CA02
4B064CA19
4B064CC15
4B064CC24
4B064CE06
4B064CE09
4B064DA10
(57)【要約】
本発明は、バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖を含む溶液からバイオマスを分離する方法であって、バイオマス及びオリゴ糖を含む溶液を用意するステップ、バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖を含む溶液に少なくとも1種の酸を加えることにより、溶液のpH値を7未満に低下させるステップ、バイオマス及びオリゴ糖を含む溶液に吸着剤を加えるステップ、並びに第1の膜ろ過を実施して少なくとも1種のオリゴ糖を含む溶液からバイオマスを分離するステップを含む、方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖を含む溶液からバイオマスを分離する方法であって、
- バイオマス及びオリゴ糖を含む溶液を用意するステップ、
- バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖を含む溶液に少なくとも1種の酸を加えることにより、溶液のpH値を7未満に設定するステップ、
- バイオマス及びオリゴ糖を含む溶液に少なくとも1種の吸着剤、好ましくは活性炭を加えるステップ、並びに
- 第1の膜ろ過、好ましくは精密ろ過又は限外ろ過を実施して、少なくとも1種のオリゴ糖を含む溶液からバイオマスを分離するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
溶液のpH値を3.0~5.5の範囲、好ましくは3.5~5の範囲、より好ましくは4.0~4.5の範囲のpH値に低下させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1種の酸が、H2SO4、H3PO4、HCl、HNO3及びCH3CO2Hからなる群から選択される酸である、請求項1から2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記吸着剤、好ましくは活性炭が、0.5重量%~3重量%の範囲、好ましくは0.75重量%~2.5重量%の範囲、より好ましくは1.0重量%~2.0重量%の範囲の量で加えられる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記吸着剤、好ましくは活性炭が、2μm~25μmの範囲、好ましくは3μm~20μmの範囲、より好ましくは3μm~7μmの範囲の直径d50の粒径分布をもつ粉末として加えられる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記吸着剤、好ましくは活性炭が、水中の粉末の懸濁液として加えられる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の膜ろ過が、クロスフロー精密ろ過又はクロスフロー限外ろ過として実施される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記クロスフロー精密ろ過又はクロスフロー限外ろ過が、0.5m/s~6.0m/sの範囲、好ましくは2.0m/s~5.5m/sの範囲、より好ましくは3.0m/s~4.5m/sの範囲のクロスフロー速度を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記クロスフロー速度が3m/s以下であり、好ましくは高分子膜では1.7m/s以下である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の膜ろ過が、8℃~55℃の範囲、好ましくは10℃~50℃の範囲、より好ましくは30℃~40℃の範囲の溶液の温度で実施される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の膜ろ過が、20nm~800nmの範囲、好ましくは40nm~500nmの範囲、より好ましくは50nm~200nmの範囲の孔径を有するセラミック精密ろ過若しくは限外ろ過膜を用いて実施される、又は前記第1の膜ろ過が、カットオフが10kDa~200nmの範囲、好ましくは50kDa~200nmの範囲、より好ましくは50kDa~100nmの範囲の高分子精密ろ過膜若しくは高分子限外ろ過膜を用いて実施される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
第1の膜ろ過によって得られたオリゴ糖を含む溶液を用いた第2の膜ろ過、好ましくは、第1の膜ろ過の膜よりもカットオフが低い膜を用いた限外ろ過を実施するステップをさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の膜ろ過が限外ろ過であり、カットオフが1.5kDa~10kDaの範囲、好ましくは2kDa~10kDaの範囲、より好ましくは4kDa~5kDaの範囲の限外ろ過膜を用いて実施される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の膜ろ過が、5℃~15℃の範囲、好ましくは8℃~13℃の範囲、より好ましくは8℃~12℃の範囲である溶液の温度で実施される、請求項12から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1種のオリゴ糖が、ヒト母乳オリゴ糖、好ましくは2'-フコシルラクトース、6'-シアリルラクトース及び/又はラクト-N-テトラオース、より好ましくは2'-フコシルラクトースを含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖を含む溶液からバイオマスを分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト母乳オリゴ糖(HMO)は、ラクトース及び脂質に次いで3番目に豊富なヒト母乳の固形成分である。ヒト母乳中の異なるHMOの濃度及びそれらの合計量は、授乳期内及び個人間で異なり、それは遺伝的背景に部分的に基づいていると考えられている。重要なことは、しかしながら、HMOは、ウシ、ヒツジ、又はヤギ乳のような他の天然資源において匹敵する量では見られない。ビフィズス菌の増殖の選択的な強化、病原体に対する抗接着効果及び腸上皮細胞に対するグライコーム改変効果を含む、乳児に対するHMOのいくつかの有益な効果が、示され、又は示唆されている。三糖2'-フコシルラクトース(2'-FL)は、ヒト母乳に見られる最も豊富なオリゴ糖の1つである。そのプレバイオティック及び抗感染特性のため、2'-FLは、乳児用調合乳の栄養添加物として論じられる。その上、2'-FLを含有する乳児の栄養は、より低い下痢の比率と関連しており、それを十分な量及び適正価格で入手できた場合、2'-FLを潜在的な栄養補給剤及び治療薬にする。
【0003】
以前、2'-FLは、ヒト母乳からの抽出又は化学合成によって得られていたが、ヒト母乳の限られた入手可能性又は化学合成における側基保護及び脱保護の必要性は、それぞれ、供給及びコスト効率に制限を設定する。したがって、2'-FLの代替供給源が注目されるようになった。化学合成及びヒト母乳からの抽出に加えて、2'-FLは酵素的にインビトロ及びインビボで生成することができる。大規模な2'-FLの形成のための最も有望な手法は、GDP-L-フコースの細胞内合成及びそれに続く適切なα1,2-フコシルトランスフェラーゼによるラクトースのフコシル化による大腸菌(Escherichia coli)における全細胞生合成である。
【0004】
したがって、HMOは、発酵を用いてバイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖、好ましくは2'-FLを含む溶液を生成することができる。このような溶液は、発酵ブロスと呼ぶこともできる。
【0005】
HMOプロセスからの発酵ブロスからのバイオマス分離は、HMOの生成における最初の下流処理ステップである。このステップの現況技術の技術は、遠心分離及び又はフィルタープレスであり、凝集剤を用いる場合もある。しかしながら、精密ろ過も使用することができ、他の分離技術と比較していくつかの利点がある。遺伝子操作生物を含まない生成物溶液を可能にするためには、精密ろ過が、遺伝子操作微生物を含む全ての非溶解固体を完全に保留できるので、最良の選択肢である。
【0006】
膜ろ過は、溶液中のより小さい分子をより大きいものから分離するのにしばしば使用される。オリゴ糖含有溶液の一例は、CN 100 549 019として公開されている中国特許出願に開示されており、この特許出願は、酵素及び膜技術を使用することによってわらから高純度キシロオリゴ糖を調製する方法を開示している。別の例は、EP 2 896 628に開示されており、この特許出願は、オリゴ糖含有発酵ブロスの膜ろ過を開示し、続いてろ液への活性炭の添加を含むさらなるプロセスステップを実施している。
【0007】
HMOの発酵生産後のバイオマスの分離は、通常pH値7で、最初の遠心分離又はフィルタープレス及びさらなる遠心分離を用いて行われる。高分子膜が代わりに使用されることもある。
【0008】
膜が使用される場合、しかしながら、膜性能はかなり低く、透過液は多くのタンパク質及び色成分を含有し、それらは次のステップで除去する必要があり、複雑な下流プロセス、高い生成物収量の損失及び何らかの品質問題をもたらす。
【0009】
通常、発酵ブロスからのバイオマス分離のこれらの最初のステップの後、実施される次のステップは、通常10kDaポリエーテルスルホン膜によって完了する限外ろ過であるが、これによって全てのタンパク質及び多糖類が分離できるわけではない。限外ろ過透過液はしたがって、活性炭カラムに配置されて、溶液を脱色され、1000未満のAPHA値が達成される。活性炭カラムにおける脱色は、かなり時間のかかるプロセスであり、発酵ブロスの初期量に関して約14%重量/重量の活性炭を使用する必要がしばしばある。このステップは、高い生成物損失をもたらし、巨大な活性炭カラムを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、上記の不利な点を回避することであった。特に、バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖を含む溶液からバイオマスを分離する性能を向上させるのに適した、且つろ過透過液中のタンパク質の量及びろ過透過液の色を低下させるのに適した方法を提供するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、この目的は、バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖を含む溶液からバイオマスを分離する方法であって、
- バイオマス及びオリゴ糖を含む溶液を用意するステップ、
- バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖を含む溶液に少なくとも1種の酸を加えることにより、溶液のpH値を7未満、好ましくはpH5.5未満又はそれ以下に低下させるステップ、
- バイオマス及びオリゴ糖を含む溶液に吸着剤を加えるステップ、並びに
- 本明細書で第1の膜ろ過とも呼ばれる膜ろ過、通常、精密ろ過又は限外ろ過を実施して、少なくとも1種のオリゴ糖を含む溶液からバイオマスを分離するステップ
を含む、方法によって解決される。好ましくは、方法ステップの順序は、前の文で示したものである。
【0012】
本発明の方法によれば、驚くべきことに、溶液のpH値を7未満に低下させた場合、膜性能を大幅に向上させることができ、タンパク質の除去を大幅に改善することができることが判明した。さらに、任意の膜ろ過の前に吸着剤を溶液に加えた場合、膜性能はさらに向上し、透過液の色は要求仕様より低い値に大幅に低下させることができることが判明した。また有利には、pH値が所望の目標値pH7未満に設定された後及び少なくとも1種の吸着剤が加えられた後に膜ろ過が行われた場合、活性炭のような吸着剤の必要量は既知の方法と比較してはるかに少なく、また脱色に要する時間は既知の方法よりもはるかに短い。
【0013】
好ましくは、吸着剤は活性炭である。活性炭(active carbon)は、活性炭(activated carbon)又は活性炭(activated charcoal)としても知られており、低コスト、大量に入手可能、取り扱いが簡単及び食品に安全であるため、好ましい吸着剤である。
【0014】
第1の膜ろ過が行われる場合、より好ましくは吸着剤が加えられる場合に、バイオマス及び1種以上のオリゴ糖、1種以上の二糖及び/又は1種以上の単糖を含む溶液のpH値がpH7.0未満であることが、本発明の方法に有益である。したがって、発酵ブロスのpH値は通常pH7.0以上であるので、目標pH値を達成するために必要に応じて少なくとも1種の酸の添加によってpH値を低下させる。バイオマス及び1種以上のオリゴ糖、1種以上の二糖及び/又は1種以上の単糖を含む溶液のpH値が開始時にすでにpH7.0未満である場合、必要に応じてpH値を安定してpH7.0未満に設定するために少なくとも1種の酸を使用してもよい。また好ましくは、溶液のpH値は、任意の膜ろ過を開始する前に、pH値5.5以下に設定される。好ましくはpH値は、3.0~5.5の範囲、より好ましくは3.5~5の範囲の目標pH値に低下させる(ここで、所与の範囲には所与の数値が含まれる)。さらにより好ましい実施形態では、溶液のpH値はpH3.5以上、ただしpH4.5以下に設定されており、最も好ましくはpH値は4.0以上4.5以下の範囲内の値に設定されている。このために、少なくとも1種の酸を溶液に加える。前記少なくとも1種の酸は、より好ましくは、H2SO4、H3PO4、HCl、HNO3及びCH3CO2Hからなる群から選択される酸である。基本的に、任意の酸を使用してもよい。それにもかかわらず、これらの酸は通常取り扱いが簡単である。
【0015】
前記吸着剤、好ましくは活性炭は、通常0.25重量%~3重量%の範囲、好ましくは0.5重量%~2.5重量%の範囲、より好ましくは0.75重量%~2.2重量%の範囲、さらにより好ましくは1.0重量%~2.0重量%の範囲の量で加えられ、ここで、パーセント値は、溶液の重量当たりの吸着剤の重量に基づいている。したがって、好ましくは1000APHAである上限仕様以下に色数を低下させるのには、比較的少量の前記吸着剤、好ましくは活性炭で十分である。これにより、活性炭の消費量のかなりの削減、並びに活性炭カラムと比較して生成物の損失のかなりの削減が可能になる。一実施形態では、1種以上の吸着剤は、バイオマス及び/又は多糖及び/又はタンパク質及び/又は存在し得るDNA若しくはRNAのような核酸を含む出発溶液中の色成分及び/又はタンパク質の(好ましさが高まる順に)少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、90%、92%、94%、95%又はそれ以上に結合するのに適した量で添加される。さらに、前記吸着剤、好ましくは活性炭は、通常2μm~25μmの範囲、好ましくは3μm~20μmの範囲、より好ましくは3μm~7μmの範囲、さらにより好ましくは5μm~7μmの範囲の直径d50の粒径分布をもつ粉末として加えられる。d50値は、標準手順によって決定される。この寸法範囲の粒径は、膜の摩耗のリスクを軽減する。その上、前記吸着剤、好ましくは活性炭は、さらに好ましくは水中の粉末の懸濁液として加えられる。これにより、粉末の懸濁液はバイオマス及びオリゴ糖を含む懸濁液とよりよく混合し得るので、吸着剤の取り扱いが容易になる。前記吸着剤、好ましくは活性炭を溶液に加えることは、通常、溶液に少なくとも1種の酸を加えた後に実施される。予想外に、最初にpH値を調整し、次に吸着剤又は少なくとも大部分の吸着剤を加える場合、色の低下及びタンパク質の減少ははるかに優れている。溶液に少なくとも1種の酸を加える前に、前記吸着剤、好ましくは活性炭を発酵ブロスに加えることが可能である。
【0016】
別の変形形態では、溶液のpH値は、少なくとも1種の適当な酸を加えることによって5.5、より好ましくは5.0、さらにより好ましくは4.5に低下させ、次いで吸着剤、好ましくは活性炭、さらに所望の最終pH値が達成されるまで酸を加える。
【0017】
また、pH値を低下させるために任意の酸を加える前に吸着剤の一部を加え、続いてpH値をpH7.0未満の目標値に設定した後に吸着剤を追加してもよい。
【0018】
好ましくは、前記バイオマス及びオリゴ糖を含む溶液、通常発酵ブロスは、1種以上のタイプの細胞、好ましくは細菌又は酵母菌、より好ましくは細菌、さらにより好ましくは遺伝子改変された大腸菌を、培養液、好ましくは少なくとも1種の炭素供給源、少なくとも1種の窒素供給源及び無機栄養素を含む培養液中で培養することによって得られる。したがって、費用効率のよい方法で十分な量の前記オリゴ糖を生成することができる。
【0019】
好ましくは、バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖を含む溶液を用意することは、微生物発酵を用いて前記溶液を調製することを含む。したがって、費用効率のよい方法で十分な量の前記オリゴ糖を生成することができる。
【0020】
第1の膜ろ過ステップの前記精密ろ過又は限外ろ過は、通常クロスフロー精密ろ過又はクロスフロー限外ろ過として実施される。したがって、ろ過効率は、向上している可能性がある。セラミックモノ及びマルチチャンネルエレメントを使用している場合、前記クロスフロー精密ろ過又はクロスフロー限外ろ過は、0.2m/s超、好ましくは0.5m/s~6.0m/sの範囲、より好ましくは2.0m/s~5.5m/sの範囲、さらにより好ましくは2.8m/s~4.5m/sの範囲、最も好ましくは3.0m/s~4.0m/sの範囲のクロスフロー速度を含む。別の実施形態では、クロスフロー速度は、3.0m/s以下である。高分子膜を第1の膜ろ過に使用する場合、2m/s以下のクロスフロー速度を使用してもよく、0.5m/s~1.7m/の範囲のクロスフロー速度を好ましくは使用するが、0.5m/s以下のクロスフロー速度さえ使用してもよい。別の好ましい実施形態では、高分子膜を使用する場合、クロスフロー速度は、1.7m/s以下、1.6m/s以下、1.5m/s以下、1.4m/s以下、1.3m/s以下、1.2m/s以下、1.1m/s以下又は1.0m/s以下である。したがって、ろ過速度は、pH値調整及び吸着剤の添加を含まないろ過プロセスと比較した場合に最適化することができる。そうすることによって、以前に知られている方法と比較してより遅いクロスフロー速度で操作することにより、膜ろ過装置の摩滅及び/又はエネルギー消費を減らすと同時に良好な分離をもたらすことができる。
【0021】
前記第1の膜ろ過、好ましくは精密ろ過又は限外ろ過は、通常、4℃~55℃の範囲、好ましくは10℃~50℃の範囲、より好ましくは30℃~40℃の範囲の溶液の温度で実施する。したがって、前記ろ過ステップ中の温度は、発酵中と同じである可能性があり、これは膜性能をさらに向上させ、バイオマス及びオリゴ糖を含む溶液の粘度を低下させる。さらに、第1の膜ろ過はまた、好ましくは、20nm~800nmの範囲、好ましくは40nm~500nmの範囲、より好ましくは50nm~200nmの範囲の孔径を有するセラミック精密ろ過膜又はセラミック限外ろ過膜を用いて実施する。耐摩耗性が向上するように設計された多層膜、例えば400nm及び200nm及び50nm孔径のAl2O3の層を使用することも可能である。したがって、所望の仕様に適合するために十分な量のタンパク質及び多糖を除去することができる。また通常、第1の膜ろ過は、カットオフが4kDa以上、好ましくは10kDa~200nmの範囲、より好ましくは50kDa~200nmの範囲、さらにより好ましくは50kDa以上の高分子精密ろ過膜又は高分子限外ろ過膜を用いて実施する。別の好ましい実施形態では、カットオフは100nm以下である。したがって、所望の仕様に適合するために十分な量のタンパク質及び多糖を除去することができる。
【0022】
高分子精密ろ過膜又は高分子限外ろ過膜の高分子材料は、好ましくは:ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデンからなる群から選択される少なくとも1種の高分子材料である。改変された高分子材料、例えば、親水化ポリエーテルスルホンも使用してもよい。
【0023】
セラミック精密ろ過膜又はセラミック限外ろ過膜のセラミック材料は、好ましくは:TiO2、ZrO2、SiC及びAl2O3からなる群から選択される少なくとも1種のセラミック材料である。
【0024】
第1の膜ろ過、好ましくは精密ろ過又は限外ろ過は、通常、吸着剤、好ましくは活性炭を溶液に加えてから所定時間後に実施する。これにより、色成分が吸着される吸着時間をもたらすことが可能になる。前記所定時間は、少なくとも2分、好ましくは少なくとも10分、より好ましくは少なくとも20分である。したがって、色成分の吸着は、比較的速い。
【0025】
方法は、好ましくは、第2の又はさらなる膜ろ過、好ましくは限外ろ過を、第1の膜ろ過の精密ろ過又は限外ろ過によって得られたバイオマスを本質的に含まず、1種以上のオリゴ糖、1種以上の二糖及び/又は1種以上の単糖を含み、好ましくはバイオマスも含む出発溶液、例えば発酵ブロスからのこれらの糖の大部分を含む溶液を使用して実施することをさらに含んでいてもよい。好ましくは、第2の膜ろ過は、第1の膜ろ過の透過液と第1の膜よりもカットオフが低い膜で行われる。したがって、第1の膜ろ過によって得られた透過液の有利なさらなる処理が実現される。第2の膜ろ過は、通常、限外ろ過は、好ましくは、少なくとも部分的に高分子材料でできており、カットオフが1kDa~10kDaの範囲、好ましくは2kDa~10kDaの範囲、より好ましくは4kDa~5kDaの範囲の限外ろ過膜を用いて実施する。
【0026】
第2の膜ろ過は、カットオフが1~25kDaのセラミック膜で行ってもよい。他の実施形態では、膜が少なくとも部分的に高分子材料でできていることが好ましい。前記高分子材料は、より好ましくは:ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、酢酸セルロースからなる群から選択される少なくとも1種の高分子材料である。前記第2の膜ろ過は、通常、溶液の温度を20未満の温度、好ましくは4℃~15℃の範囲、好ましくは8℃~13℃の範囲、より好ましくは8℃~12℃の範囲である溶液の温度に調整した後に実施する。
【0027】
好ましい実施形態では、本発明の方法で使用される第1の膜ろ過は、以下でさらに詳細に説明されるように、2つ又は好ましくは3つのステップを含む。第1のステップは、ダイアフィルトレーション係数(DF)(ダイアフィルトレーション水の量=発酵ブロスの出発量×ダイアフィルトレーション係数)が0.5以下~3以上の第1のダイアフィルトレーションを含む。例えば、2'FLを含む溶液では、DFが0.5であることは有利だったが、他のHMO分子では、濃縮ステップが続く場合には3の値がより良いことが判明した。ダイアフィルトレーションの間、加えられた水又は適当な水溶液の量は、排出された透過液の量と同一である。バッチ式ダイアフィルトレーションでは、したがって供給容器内の体積は一定に保たれる。第2のステップは、ダイアフィルトレーション水の供給を停止することによって、好ましくは2以上の係数を用いて発酵ブロスを濃縮することを含み、レベルは目標値まで低下する(目標値=発酵ブロスの開始時の体積又は質量/濃縮係数)。任意選択で、後続の第3のステップは、第2のダイアフィルトレーションを含む。これらの3つのステップを用いて、透過液内での生成物のより低い希釈及び95%以上の増加した収率が実現される。第2のダイアフィルトレーションの係数を増加させることによって、収率はさらに増加し得る。
【0028】
次いで透過液は、通常これらの3つのステップで膜を通過する全ての溶液の組合せである。バッチプロセスでは、各ステップは、時間分離された形で透過液画分を生成し、これは混合するために1つの容器に捕集し、又は別々に処理することができる。継続的なプロセスでは、3つのステップはそれぞれ、時間的に分離されていない透過液画分を生成し、これらの画分を組み合わせて、必要に応じて組み合わせた又は別々に処理した透過液を形成することができる。
【0029】
任意選択で、第1の膜ろ過の第1のステップは、第2のステップの濃縮が終わる前に1回以上繰り返すことができる。任意選択で、第2のステップは、行ってもよく、又は溶液の濃縮が望ましくない場合は抜かしてもよい。これは、例えば、発酵ブロスが高粘度であり、及び又はバイオマス含有量が極めて高い場合、有用である。
【0030】
任意選択で、第1のステップは抜かしてもよく、或いは第2のステップは第1のステップなしで行い、それにより最初に透過液を作成しながら発酵ブロスの濃縮が行われ、次に、最後のステップのダイアフィルトレーションは、バイオマス及び1種以上のオリゴ糖、二糖又は単糖を含む溶液に水又は水溶液を供給することによって行われる。
【0031】
好ましくは、少なくとも1種のオリゴ糖は、ヒト母乳オリゴ糖、好ましくは中性又はシアリル化ヒト母乳オリゴ糖、より好ましくはラクト-N-テトラオース、ラクト-N-ネオテトラオース、3'-シアリルラクトース、6'-シアリルラクトース及び/又は2'-フコシルラクトース、さらにより好ましくは2'-フコシルラクトース、6'-シアリルラクトース及び/又はラクト-N-テトラオースを含む。
【0032】
本発明の一実施形態では、本発明の方法は、単糖及び/又は二糖及びバイオマスを含有する溶液からのバイオマスから単糖及び/又は二糖を分離するため、例えばバイオマスからラクトース、フコース、マルトース又はサッカロースを分離するための方法が適用される。
【0033】
他の実施形態は、本発明の方法を行うのに適した本発明の装置である。
【0034】
本発明のさらなる特徴及び実施形態は、特に従属請求項と併せて後続の説明でより詳細に開示される。その中で、それぞれの特徴は、当業者が理解しているように、独立した形並びに任意の実行可能な組合せで実現することができる。実施形態は、図に概略的に示す。その中で、これらの図中の同一の参照番号は、同一の要素又は機能的に同一の要素を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明に基づくバイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖を含む溶液からバイオマスを分離する方法を示すブロック図である。
図2】個別のステップ(図2のS15)として示された分離前の1種以上の吸着剤への色成分の付着に適した時間を含む本発明の方法の一連のステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下で使用するように、用語「有する(have)」、「含む(comprise)」若しくは「含む(include)」又はその任意の文法上の変化は、非排他的な方法で使用されている。したがって、これらの用語は、これらの用語によって導入される特徴以外に、このような文脈において記載されている実体にはさらなる特徴が存在しない状況も、1つ以上のさらなる特徴が存在している状況も表し得る。一例として、「AはBを有する」、「AはBを含む(comprises)」及び「AはBを含む(includes)」という表現は、B以外に、Aには他の構成要素は存在しない状況(すなわちAがもっぱらBだけで構成されている状況)も、B以外に、実体Aには1つ以上のさらなる構成要素、例えば構成要素C、構成要素C及びD又はさらに他の構成要素が存在する状況も表し得る。
【0037】
さらに、用語「少なくとも1つ(at least one)」、「1つ以上(one or more)」或いは特徴又は構成要素が1回又は1回よりも多く提示され得ることを示す同様の表現は、通常それぞれの特徴又は構成要素を導入する場合に1回だけ使用されることは留意されたい。以下において、ほとんどの場合、それぞれの特徴又は構成要素に言及する場合には、それぞれの特徴又は構成要素が1回又は1回よりも多く提示され得るという事実にもかかわらず、表現「少なくとも1つ」又は「1つ以上」は繰り返されない。
【0038】
さらに、以下で使用されるように、用語「特に(particularly)」、「より詳細には(more particularly)」、「具体的には(specifically)」、「より具体的には(more specifically)」、「通常(typically)」、「より一般的には(more typically)」、「好ましくは(preferably)」、「より好ましくは(more preferably)」又は同様の用語は、追加/代替の特徴と併用され、代替の可能性を限定することはない。したがって、これらの用語によって導入される特徴は、追加/代替の特徴であり、請求項の範囲を限定することは全く意図していない。本発明は、当業者に認識されるように、代替の特徴を使用することによって行ってもよい。同様に、「本発明の実施形態では」又は同様の表現によって導入される特徴は、追加/代替の特徴であることを意図しており、本発明の代替実施形態に関して全く限定されず、本発明の範囲に関して全く限定されず、このようにして導入される特徴を、本発明の他の追加/代替又は非追加/代替の特徴と組み合わせる可能性に関して全く限定されない。
【0039】
本明細書では、用語「バイオマス」は、溶液中に含まれる生物学的な有機体の質量を意味する。通常、本発明による前記生物学的有機体は、1種類以上の原核生物又は真核生物、好ましくは細菌又は酵母菌である。より好ましくは、前記バイオマスは、細菌、さらにより好ましくは遺伝子改変された大腸菌を含み、それらは培養液、好ましく少なくとも1種の炭素供給源、少なくとも1種の窒素供給源及び無機栄養素を含む培養液で培養されている。他の実施形態では、本発明の方法は、巨大分子バイオマス、例えば木、わら、茎及びリグニン、セルロース及び/又はデンプンを含有する他の植物材料から、或いは巨大分子バイオマス又は動物若しくは微生物起源、例えば物質、多糖などを含有するキチンから、前記巨大分子バイオマスの残りから生成したオリゴ糖、二糖及び単糖を分離するために適用する。
【0040】
バイオマス及びオリゴ糖(複数可)、二糖(複数可)及び/又は単糖(複数可)の分離の成功を評価するのに最も簡単な方法は、第1の膜ろ過の透過液が光学的に透明であることをモニターすることである。分離が失敗すると、透過液の光学的検査でバイオマスが検出されることになり、透過液中の黒色活性炭などの吸着剤の存在も光学的検査で簡単に検出され、膜ろ過装置の漏れ又は故障を示すことになる。
【0041】
本明細書では、用語「オリゴ糖」は、少数の通常3~10個の単糖(単純糖)を含有する糖ポリマーを意味する。好ましくは、前記オリゴ糖は、ヒト母乳オリゴ糖、好ましくは中性、酸性非フコシル化及び/又は酸性フコシル化されたもの、より好ましくは2'-フコシルラクトース、ジフコシルラクトース、ラクト-N-テトラオース、ラクト-N-ネオテトラオース、LNFP I、LNFP II、LNFP III、LNFP V、LNDFH I、LNDFH II及び/又はそれだけには限らないが3'-シアリルラクトース及び/又は6'-シアリルラクトースなどのヒト母乳オリゴ糖を含有するシアル酸、さらにより好ましくは2'-フコシルラクトースを含む。
【0042】
本明細書では、用語「二糖」は、2個の単糖からなる糖、例えばグルコースとガラクトース部分からなるラクトース、又は1個のグルコースと1個のフルクトース分子からできているサッカロースを意味する。
【0043】
本明細書では、用語「単糖」は、単純糖、好ましくは5又は6個の炭素原子を含む糖分子、例えばグルコース、フルクトース、ガラクトース又はフコースを意味する。
【0044】
用語「吸着剤」は、本明細書では気体、液体、又は溶解固形物から表面への原子、イオン、又は分子の付着をもたらすように構成されたエレメントを意味する。用語「付着」は、異なる粒子又は表面が互いにくっつく傾向を意味する。好ましくは、吸着剤は、色成分の付着をもたらすように構成されている。好ましくは、吸着は活性炭である。
【0045】
本明細書では、用語「精密ろ過」は、望ましくない粒子を含む流体、例えば汚染された流体が特別な孔径の膜を通過して、微生物と懸濁粒子を処理液、特により大きい細菌、酵母菌、及び任意の固体粒子から分離する物理的ろ過プロセスの一種を意味する。精密ろ過膜は0.1μm~10μmの孔径を有する。それによって、このような膜は、100000kDaを超える分子量でカットオフを有する。
【0046】
本明細書では、用語「限外ろ過」は、望ましくない粒子を含む流体、例えば汚染された流体が特別な孔径の膜を通過して、微生物と懸濁粒子を処理液、特に細菌、巨大分子、タンパク質、より大きいウィルスから分離する物理的ろ過プロセスの一種を意味する。限外ろ過膜は通常2nm~100nmの孔径を有し、2kDa~250000kDaの分子量でカットオフを有する。限外ろ過の基礎となる原理は、精密ろ過の基礎となるものと根本的に変わらない。これらの方法の両方とも、サイズ排除又は粒子保持に基づいて分離するが、粒子の大きさによってそれらの分離能力が異なる。
【0047】
本発明の方法によれば、第1の膜ろ過は、好ましくはカットオフが4kDa以上、好ましくは10kDa~200nmの範囲、より好ましくは50kDa~200nmの範囲、さらにより好ましくは50kDa~100nmの範囲の高分子精密ろ過膜又は高分子限外ろ過膜を用いて実施する。さらに、前記第2の膜ろ過は、好ましくはカットオフが1kDa~10kDaの範囲、好ましくは2kDa~10kDaの範囲、より好ましくは4kDa~5kDaの範囲の限外ろ過膜を用いて実施する。
【0048】
ろ過膜のカットオフは、通常所与のサイズ又は分子量の溶質の90%の保持を意味し、例えばxkDaの球状タンパク質の90%は、カットオフがxkDaの膜によって保持される。これらのカットオフ値は、例えば定義されたデキストラン又はポリエチレングリコールの使用、並びに保持液、透過液及び供給物とも呼ばれる元の溶液を当技術分野で一般的な方法及びパラメーターを使用してGPCゲル透過クロマトグラフィー分析器で分析することによって測定することができる。
【0049】
本明細書では、用語「クロスフローろ過」は、透過液側に対して正圧で、供給物流の大部分がフィルター内ではなくフィルターの表面を横切って接線方向に移動するろ過の一種を意味する。これの主な利点は、他の方法ではフィルターを目詰まりさせる可能性のあるろ過ケーキがろ過プロセス中に蓄積されず、ろ過ユニットが可動できる時間の長さが延びることである。これは、バッチ式のデッドエンドろ過とは違って、連続プロセスになり得る。大規模な用途には、連続プロセスが好ましい。デッドエンドろ過ではフィルター表面が固体材料にすぐに塞がれてしまう(目詰まりする)可能性があるので、透過液が最も重要とされる小さな粒径の固体を高い割合で含有する供給物の場合にこの種のろ過が通常選択される。本開示によれば、前記クロスフロー精密ろ過又はクロスフロー限外ろ過は、0.5m/s~6.0m/sの範囲、好ましくは2.0m/s~5.5m/sの範囲、より好ましくは3.0m/s~4.5m/sの範囲のクロスフロー速度を含む。セラミックでできた膜の場合、膜のそれぞれの形状に応じて、クロスフロー速度が高分子材料でできた膜の場合よりも高くすることができる。例えば、平坦な高分子膜、例えば平坦シートモジュールの高分子膜の場合、クロスフロー速度は0.5m/s~2.0m/s、好ましくは1.0m/s~1.7m/s、より好ましくは1.0~1.5m/sである。特定の設定及びバイオマスを含む特定溶液に応じて、場合によっては1.0m/s以下のクロスフロー速度さえも使用できるが、クロスフロー速度が低すぎる場合にろ過がデッドエンドろ過に変わるかもしれない。
【0050】
用語「カットオフ」は、本明細書では、通常ダルトン単位のMWCO、分子量カットオフの形式で指定される膜の排除限界を意味する。これは、溶質、例えば膜によって90%に保持される球状タンパク質の最小分子量として定義される。カットオフは、本方法に応じて、いわゆるD90に変換でき、それは次にメートル単位で表される。
【0051】
第1のステップ(図1、ステップS10)では、バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖を含む溶液を供給している。前記少なくとも1種のオリゴ糖は、ヒト母乳オリゴ糖、好ましくは2'-フコシルラクトースを含む。好ましくは、バイオマス及びオリゴ糖を含む前記溶液は、培養液中での1種類以上の細胞の培養によって得られる。したがって、前記溶液はまた、好ましい実施形態では発酵ブロスと呼んでもよい。培養液は、好ましくは少なくとも1種の炭素供給源、少なくとも1種の窒素供給源及び無機栄養素を含む培養液である。より好ましくは、発酵ブロス又はバイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖を含む溶液は、微生物発酵、好ましくは好気性微生物発酵によって得られる。オリゴ糖を生成できる微生物は、例えばエシェリキア属(Escherichia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、バチルス属(Bacillus)、ラクトバシラス属(Lactobacillus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ピキア属(Pichia)、サッカロミセス属(Saccharomyces)及びクルイベロマイセス属(Kluyveromyces)からなる群からの、又はWO 2015/032412として公開された国際特許出願若しくはEP 2 379 708として公開された欧州特許出願に記載された酵母菌又は細菌、好ましくは遺伝子改変された大腸菌株、より好ましくはlacZ遺伝子(lacZ-)を欠損し、オリゴ糖の生合成に有利な制御された条件下で水性栄養培地で培養される、ヒトの栄養のための物質の生成に適した遺伝子改変された大腸菌株、例えばEP 2 379 708、EP 2 896 628又はUS 9 944 965に開示されているようなものであってもよい。水性栄養培地は、増殖及び/又はオリゴ糖の生合成ために微生物に使用される少なくとも1種の炭素供給源(例えばグリセリン又はグルコース)を含む。その上、栄養培地は、好ましくはアンモニウム塩、例えば硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、水酸化アンモニウムなどの形態で少なくとも1種の窒素供給源も含有し、これは微生物の増殖に必要である。培地中の他の栄養素には、例えば1つ又は複数のリン供給源としてのリン酸塩、硫黄供給源としての硫酸塩、並びに例えばMg、Fe及び他の微量栄養素を微生物にもたらす他の無機又は有機塩がある。多くの場合、1種以上のビタミン、例えばチアミンは、最適な性能のために栄養培地に補充する必要がある。栄養培地は、任意選択で複雑な混合物、例えば酵母エキス又はペプトンを含有していてもよい。このような混合物は通常、高窒素含有化合物、例えばアミノ酸並びにビタミン及びいくつかの微量栄養素を含有する。
【0052】
栄養素は、培養開始時に培地に加えることができ、及び/又はそれらはプロセスの過程の間に供給することもできる。ほとんどの場合、炭素供給源(複数可)は、培養開始時に定義された低濃度まで培地に加えられる。炭素供給源(複数可)は次いで、微生物の増殖速度、したがって、酸素要求量を制御するために連続的又は断続的に供給される。追加の窒素供給源は、通常アンモニアを用いたpH制御によって得られる(下記参照)。培養の過程中に上記の他の栄養素を加えることも可能である。
【0053】
場合によっては、前駆体化合物を培地に加え、これはオリゴ糖の生合成に必要である。例えば、2'-フコシルラクトースの場合、ラクトースは通常前駆体化合物として加える。前駆体化合物は、培養開始時に培地に加えてもよく、又は培養中に連続的若しくは断続的に供給してもよく、又は最初の追加と供給の組合せによって加えてもよい。
【0054】
細胞は、撹拌槽バイオリアクター中で増殖及びオリゴ糖の生合成を可能にする条件下で培養する。微生物細胞への50mmol O2/(l*h)~180mmol O2/(l*h)の範囲の十分な酸素供給は増殖及び生合成に必須であり、したがって液体培地への高速酸素移動を達成するために培養液を通気及び強烈に撹拌する。任意選択で、培地中の細胞への酸素移動の速度を増大させるために、培養液への空気流は、純粋な酸素ガスの流れによって濃縮してもよい。培養は、24℃~41℃、好ましくは32℃~39℃で実施し、pH値は、好ましくはNH3(ガス又はNH4OHの水溶液として)の自動追加によって6.2~7.2に設定する。
【0055】
場合によっては、例えばEP 2 379 708として公開された欧州特許出願にあるように、オリゴ糖の生合成は、化合物、例えばイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)の追加によって誘発する必要がある。誘発化合物は、培養開始時に培地に加えてもよく、又は培養中に連続的若しくは断続的に供給してもよく、又は最初の追加と供給の組合せによって追加してもよい。
【0056】
続いて、本発明の方法は、第2のステップ(図1、ステップS12)でpH値の調整に進む。前記ステップでは、通常7未満の溶液のpH値を、バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖を含む溶液に少なくとも1種の酸を加えることによって低下させる。溶液のpH値を、好ましくは3.0~5.5の範囲、より好ましくは3.5~5の範囲、さらにより好ましくは4.0~4.5の範囲、例えば4.0又は4.1の目標pH値に低下させる。前記少なくとも1種の酸は、H2SO4、H3PO4、HCl、HNO3(好ましくは濃縮形態ではない)及びCH3CO2Hからなる群から選択される酸、又は食物若しくは飼料の生産において安全と考えられる任意の他の酸であり、好ましくは酸は、H2SO4、H3PO4、HCl及びCH3CO2Hからなる群から選択される。これらの酸単一の代わりに、これらの酸の混合物を一実施形態で使用することができる。
【0057】
さらに、本発明の方法の別の実施形態では、バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖、少なくとも1種の二糖又は少なくとも1種の単糖を含む溶液が、すでに7未満のpH値、好ましくはpH5.5未満、より好ましくはpH5.0以下、さらにより好ましくはpH4.5以下を有している場合、これらの酸を少しも追加せず、ステップS12を抜かし、そのような溶液のための本発明の方法をステップS14で続ける。
【0058】
次いで、方法は次のステップ(図1、S14)に進む。前記ステップでは、バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖を含む溶液に1種以上の吸着剤を加える。好ましくは、吸着剤は活性炭である。前記吸着剤、好ましくは活性炭は、0.5重量%~3重量%の範囲、好ましくは0.6重量%~2.5重量%の範囲、より好ましくは0.7重量%~2.0重量%の範囲、例えば1.5重量%の量で加える。この点に関して、吸着剤の粒子が小さいほど、吸着特性が良くなることに留意されたい。前記吸着剤、好ましくは活性炭は、2μm~25μmの範囲、好ましくは3μm~20μmの範囲、より好ましくは3μm~7μmの範囲、例えば5μmの直径d50の粒径分布をもつ粉末として加える。より好ましくは、前記吸着剤、好ましくは活性炭は、水中の粉末の懸濁液として加える。好ましくは、前記吸着剤、好ましくは活性炭を溶液に加えることは、少なくとも1種の酸を溶液に加えてから実施する。或いは、前記吸着剤、好ましくは活性炭を溶液に加えることは、少なくとも1種の酸を溶液に加える前に実施してもよい。言い換えると、ステップS12及びS14の順序は変えてもよく、その順序は固定されていない。しかし、7未満のpHを所望のpH値に設定し、次に1種以上の吸着剤、好ましくは活性炭を加える順序の場合、タンパク質の除去及び脱色に関して最良の結果をもたらすはずである。好ましい実施形態では、少なくとも1種の酸の追加は、少なくとも1種の吸着剤、好ましくは活性炭の追加に先行する。
【0059】
本発明の方法の好ましい実施形態では、ステップS12とS14の両方とも実施され、S12、続いてS14の順序で実施される。
【0060】
方法は、次いで、分離前に1種以上の吸着剤への色成分の付着に適した時間を含むさらなるステップ(図1、ステップS16)の第1の膜ろ過、好ましくは精密又は限外ろ過に進む。第1の膜ろ過は、少なくとも1種のオリゴ糖、少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含む溶液からバイオマス及び1種以上の吸着剤を分離するために実施し、これにより、バイオマスが除去され、オリゴ糖、二糖及び/又は単糖を含む透過液とも呼ばれる得られた溶液の色成分及びタンパク質が減少する。基本的に、ステップS16は精密ろ過又は限外ろ過を含む。しかしながら、精密ろ過と限外ろ過の間に円滑に移行されるので、両方とも当業者によって、片側にバイオマス、吸着剤及びタンパク質、反対側に所望の1種以上のオリゴ糖、1種以上の二糖及び/又は1種以上の単糖のバルクを含有する透過液を分離する目的で使用可能である。ステップS16のろ過はまた、精密ろ過に代わる方法としての限外ろ過であってもよい。前記精密ろ過又は限外ろ過は、好ましくはクロスフロー精密ろ過又はクロスフロー限外ろ過として実施して、膜性能を改善し、膜摩耗を減少させる。ステップS16のろ過の詳細を以下に説明する。前記クロスフロー精密ろ過又はクロスフロー限外ろ過は、0.5m/s~6.0m/sの範囲、好ましくは2.0m/s~5.5m/sの範囲、より好ましくは3.0m/s~4.5m/sの範囲、例えば4.0m/sのクロスフロー速度を含む。一実施形態では、クロスフロー速度は、3.0m/s以下であり、好ましくは1.0~2.0(両端含む)である。本発明の方法、使用及び装置の1つの有利な点は、より遅いクロスフロー速度を使用して、好ましくは任意のオリゴ糖、二糖又は単糖からの溶液のタンパク質成分の良好な分離を達成できることである。したがって、エネルギー及び機器のコストを削減でき、機器の摩滅及びろ過膜の摩耗も減少する。前記第1の膜ろ過、好ましくは精密ろ過又は限外ろ過は、8℃~55℃の範囲、好ましくは10℃~50℃の範囲、より好ましくは30℃~40℃の範囲、例えば38℃の溶液の温度で実施する。前記精密ろ過又は限外ろ過は、20nm~800nmの範囲、好ましくは40nm~500nmの範囲、より好ましくは50nm~200nmの範囲、例えば100nmの孔径を有するセラミック若しくは高分子精密ろ過膜又はセラミック限外ろ過膜を用いて実施する。前記セラミック材料は:二酸化チタン(TiO2)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、炭化ケイ素(SiC)及び酸化アルミニウム(Al2O3)からなる群から選択される少なくとも1種のセラミック材料の少なくとも1種の層であり、又はそれを有している。或いは、前記精密ろ過又は限外ろ過は、カットオフが10kDa~200nmの範囲、好ましくは50kDa~200nmの範囲、より好ましくは50kDa~100nmの範囲の高分子精密ろ過膜又は高分子限外ろ過膜を用いて実施する。前記高分子材料は:ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデンからなる群から選択される少なくとも1種の高分子材料である。前記第1の膜ろ過、好ましくは精密ろ過又は限外ろ過は、吸着剤、好ましくは活性炭を溶液に加えた後の所定時間後に実施する。したがって、色成分の付着を確実にする。通常、溶液中の吸着剤、好ましくは活性炭の均一な分布が達成されるまで溶液と加えた吸着剤とを混合するのに必要な時間は、色成分の付着を可能にするのに十分であるが、これを最大にするためにより長いインキュベーション時間を使用することができる。一実施形態では、前記所定時間は、少なくとも2分、好ましくは少なくとも10分、より好ましくは少なくとも20分、例えば25分又は30分である。
【0061】
一実施形態では、本発明の方法は通常、次に第2の膜ろ過ステップ(図1、ステップS18)に進む。好ましくはステップS16の第1の膜ろ過によって得られたオリゴ糖、二糖及び/単糖を含む溶液の限外ろ過を実施する。言い換えれば、ステップS16の第1の膜ろ過から導出された透過液の限外ろ過を実施する。好ましくは、前記第2の膜ろ過、好ましくは限外ろ過は、カットオフが1.5kDa~10kDaの範囲、好ましくは2kDa~10kDaの範囲、より好ましくは4kDa~5kDaの範囲の限外ろ過膜を用いて実施する。特に好ましい実施形態では、カットオフが4kDa又は5kDaの膜が適している。前記限外ろ過膜は、少なくとも部分的に高分子材料でできている。前記高分子材料は:ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、酢酸セルロースからなる群から選択される少なくとも1種の高分子材料である。前記第2の膜ろ過、好ましくは限外ろ過は、溶液の温度が5℃~15℃の範囲、好ましくは8℃~13℃の範囲、より好ましくは8℃~12℃の範囲、例えば10℃で実施する。
【0062】
図2は、個別のステップ(図2のS15)として示された分離前の1種以上の吸着剤への色成分の付着に適した時間を含む本発明の方法の一連のステップを示す。このような個別のインキュベーションステップは、吸着剤への望ましくない化合物の十分な付着のために長時間が必要な場合に有利かもしれない。さらに、図2は、第1の膜ろ過(図1のS16だった)を3つの部分からなるステップとして描写しており、第1の膜ろ過の3つのステップは、第1のダイアフィルトレーション、濃縮、その後任意選択で第2のダイアフィルトレーションである。これらは図2でそれぞれS16-1、S16-2及びS16-3として示されている。他のステップは、図1と同様である。
【0063】
別の実施形態では、ステップS10~S18を行い、ここで、少なくとも1種のオリゴ糖ではなく、少なくとも1種の単糖、少なくとも1種の二糖或いは少なくとも1種の単糖、少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種のオリゴ糖の混合物が、少なくとも1種のオリゴ糖の代わりに存在する。
【0064】
誤解を避けるために、溶液又は透過液又は保持液のタンパク質含有量へのいかなる言及も、溶液/透過液/保持液中の遊離タンパク質を指し、すなわちたとえあったとしてもバイオマスに含有されているタンパク質ではなく、細胞外で見つかったタンパク質である。発酵及びその後の取り扱い及び膜ろ過の間も、タンパク質は、バイオマスから遊離し、次いで遊離タンパク質と見なされることがある。
【0065】
誤解を避けるために、溶液又は透過液又は保持液の少なくとも1種のオリゴ糖、少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖へのいかなる言及も、溶液/透過液/保持液中の遊離した少なくとも1種のオリゴ糖、少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を指し、すなわちたとえあったとしてもバイオマスに含有されている少なくとも1種のオリゴ糖、少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖ではなく、細胞外で見つかったものである。発酵及びその後の取り扱い及び膜ろ過の間も、少なくとも1種のオリゴ糖、少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖は、バイオマスから遊離し、次いで溶液中の遊離した少なくとも1種のオリゴ糖、少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖と見なされることがある。
【0066】
好ましい実施形態では、第1の膜ろ過、好ましくは精密ろ過又は限外ろ過を実施して、少なくとも1種のオリゴ糖、少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含む溶液からバイオマスを分離するするステップは、少なくとも1種のオリゴ糖、少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖からバイオマスを分離するステップとして理解されるべきであり、ここで、少なくとも1種のオリゴ糖、少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖の大部分は、バイオマスの分離後の第1の膜ろ過の透過液に見られる。
【0067】
好ましい実施形態では、第1の膜ろ過の後に限外ろ過が続き、次いで任意選択でナノろ過、イオン交換及び/又は逆浸透が続く。
【0068】
要約すると、本発明は、以下の実施形態を含むものであって、それらはここで定義される各相互従属により示された実施形態の特定の組合せを含む。
【0069】
さらなる実施形態
実施形態1: バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖、少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含む溶液からバイオマスを分離する方法であって:
a. バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖、少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含む溶液を用意するステップ、
b. pH値がpH7.0以上の場合、バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖、少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含む溶液に少なくとも1種の酸を加えることにより、溶液のpH値を7未満に低下させるステップ、
c. バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖、少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含む溶液に1種以上の吸着剤を加えるステップ、
d. 任意選択で、1種以上の吸着剤が溶液中の色成分に結合するのに十分なインキュベーションステップ、並びに
e. 少なくとも1種のオリゴ糖、少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含む溶液からバイオマス及び1種以上の吸着剤を分離する目的で、第1の膜ろ過、好ましくは精密ろ過又は限外ろ過を実施するステップ
を含む、方法。
【0070】
実施形態1A: バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖、少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含む溶液からバイオマスを分離する方法であって:
a. バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖、少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含む溶液を用意するステップ、
b. 任意選択で、溶液に1種以上の吸着剤を加えるステップ
c. バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖、少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含む溶液に少なくとも1種の酸を加えることにより、溶液のpH値を7.0未満、好ましくは5.5未満、より好ましくは5.0未満、さらにより好ましくはpH4.5以下に設定するステップ、
d. バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖、少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含む溶液に、溶液中の色成分及び細胞外タンパク質の大部分を除去するのに適した量で1種以上の吸着剤を加えるステップ、
e. 任意選択で、1種以上の吸着剤が溶液中の色成分に結合するのに十分なインキュベーションステップ、並びに
f. 少なくとも1種のオリゴ糖、少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖の大部分を含む溶液からバイオマスを分離する目的で、第1の膜ろ過、好ましくは精密ろ過又は限外ろ過を実施するステップ
を含む、方法。
【0071】
実施形態1B: バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖、少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含む溶液からバイオマスを分離する方法であって:
a. バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖、少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含む溶液を用意するステップ、
b. バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖、少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含む溶液に少なくとも1種の酸を加えることにより、溶液のpH値を7.0未満に低下させるステップ、
c. バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖、少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含む溶液に1種以上の吸着剤を加えるステップ、
d. 任意選択で、1種以上の吸着剤が溶液中の色成分に結合するのに十分なインキュベーションステップ、並びに
e.第1の膜ろ過、好ましくは精密ろ過又は限外ろ過を実施して、少なくとも1種のオリゴ糖、少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含む溶液からバイオマスを分離するステップ
を含む、方法。
【0072】
実施形態A1: 装置であって
i. バイオマス、少なくとも1種の吸着剤、好ましくは活性炭及び少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含有する、pH値が7未満である溶液、
ii. 第1のろ過膜、好ましくは精密ろ過又は限外ろ過膜、
iii. 前記第1のろ過膜を横切って第1の膜ろ過、好ましくは精密ろ過又は限外ろ過を実施して、オリゴ糖、二糖及び又は単糖のバルクを含有する透過液を生成する手段、並びに
iv. 上記iに記載されているように溶液から第1の膜ろ過の透過液を分離する手段
を含み、さらに任意選択で:
v. 第1の膜ろ過の前記透過液を第2のろ過膜に移送する手段、
vi. 透過液の温度を20℃未満の温度に調整する手段、
vii. 第2のろ過膜、好ましくは限外ろ過膜、
viii. 第2の膜ろ過、好ましくは限外ろ過を20℃未満の温度で実施する手段、並びに
ix. 第2の膜ろ過の透過液を第1の膜ろ過の透過液から分離しておく手段
を含み、ここで、溶液又は透過液のいずれかと接触している装置の部品の表面は、食品の製造に適した材料でできており、pH3.5という低いpH値に耐性がある、装置。
【0073】
実施形態A2: 装置であって
i. バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含有する溶液を保持する容器
ii. 前記溶液の温度を5℃~70℃の温度に調整する手段、
iii. 容器内の溶液のpH値を測定するための測定システム、
iv. 溶液のpH値を7.0未満の値、好ましくは5.5より低い目標pH値に設定する、好ましくは少なくとも1種の酸の追加に適している手段、
v. 少なくとも1種の吸着剤、好ましくは活性炭を溶液に加える手段、
vi. 溶液中の吸着剤の本質的に均一な分布を生成する手段、
vii. 第1のろ過膜、好ましくは精密ろ過又は限外ろ過膜、
viii. 前記第1のろ過膜を使用して、バイオマス、少なくとも1種の吸着剤、好ましくは活性炭及び少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含有する、7.0未満のpH値を有する溶液の第1の膜ろ過、好ましくは精密ろ過又は限外ろ過を実施する手段と、オリゴ糖、二糖及び/又は単糖のバルクを含有する透過液を生成するのに適している手段、並びに
ix. バイオマス、少なくとも1種の吸着剤、好ましくは活性炭及び少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含有する、7.0未満のpH値を有する溶液から第1の膜ろ過の透過液を捕集、移送及び任意選択で貯蔵する手段
を含み、さらに任意選択で:
x. 第1の膜ろ過の前記透過液を第2のろ過膜に移送する手段、
xi. 第1の透過液の温度を20℃未満の温度に調整する手段、
xii. 第2のろ過膜、好ましくは限外ろ過膜、
xiii. 第2の膜ろ過、好ましくは限外ろ過を20℃未満の温度で実施する手段、並びに
xiv. 第2の膜ろ過の透過液を第1の膜ろ過の透過液から分離する手段
を含み、ここで、溶液又は透過液のいずれかと接触している装置の部品の表面は、食品の製造に適した材料でできており、pH3.5という低いpH値に耐性がある、装置。
【0074】
実施形態B1
少なくとも1種のオリゴ糖、少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含む溶液からのバイオマスの分離に使用される膜ろ過装置の摩滅及び/又はエネルギー消費を減らす方法であって、
a. バイオマス及び糖を含む溶液を用意するステップ、
b. pH値がpH7.0以上の場合、バイオマスを含み、少なくとも1種のオリゴ糖、少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含む溶液に少なくとも1種の酸を加えることにより、溶液のpH値を7未満に低下させるステップ、
c. バイオマス及びオリゴ糖を含む溶液に1種以上の吸着剤を加えるステップ、
d. 必要に応じて任意選択で、1種以上の吸着剤が溶液中の色成分に結合するのに十分なインキュベーションステップ、並びに
e. 第1の膜ろ過を3m/s以下のクロスフロー速度で実施して少なくとも1種のオリゴ糖、少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含む溶液からバイオマスを分離するステップ
を含む、方法。
【0075】
実施形態2: 吸着剤が活性炭である、実施形態1、1A、1B若しくはB1のいずれかに基づく方法、又は実施形態A1若しくはA2に基づく装置。
【0076】
実施形態3: 溶液のpH値を3.0~5.5の範囲、好ましくは3.5~5の範囲、より好ましくは4.0~4.5の範囲に低下させる、前の実施形態のいずれかに基づく方法又は装置。
【0077】
実施形態4: 前記少なくとも1種の酸が、H2SO4、H3PO4、HCl、HNO3及びCH3CO2Hからなる群から選択される酸である、前の実施形態のいずれかに基づく方法又は装置。
【0078】
実施形態5: 前記吸着剤、好ましくは活性炭が、0.5重量%~3重量%の範囲、好ましくは0.75重量%~2.5重量%の範囲、より好ましくは1.0重量%~2.0重量%の範囲の量で加えられる、前の実施形態のいずれかに基づく方法又は装置。
【0079】
実施形態6: 前記吸着剤、好ましくは活性炭が、2μm~25μmの範囲、好ましくは3μm~20μmの範囲、より好ましくは3μm~7μmの範囲の直径d50の粒径分布をもつ粉末として加えられる、前の実施形態のいずれかに基づく方法又は装。
【0080】
実施形態7: 前記吸着剤、好ましくは活性炭が、水中の吸着剤粉末の懸濁液として加えられる、実施形態6に基づく方法又は装置。
【0081】
実施形態8: 溶液のpH値が7未満の場合、前記吸着剤、好ましくは活性炭を溶液に加えるステップを、少なくとも1種の酸を溶液に加え続けている間、又は少なくとも1種の酸の溶液への追加が完了した後に実施する、前の実施形態のいずれかに基づく方法又は装置。
【0082】
実施形態9: 前記吸着剤、好ましくは活性炭を溶液に加えるステップを、少なくとも1種の酸を溶液に加える前に実施する、実施形態8を除く前の実施形態のいずれかに基づく方法又は装置。
【0083】
実施形態10: バイオマス及び1種以上のオリゴ糖、1種以上の二糖及び/又は1種以上の単糖を含む前記溶液が、1種以上のタイプの細胞、好ましくは細菌又は酵母菌、より好ましくは細菌、さらにより好ましくは遺伝子改変された大腸菌を、培養液、好ましくは少なくとも1種の炭素供給源、少なくとも1種の窒素供給源及び無機栄養素を含む培養液中で培養することによって得られる、前の実施形態のいずれかに基づく方法又は装置。
【0084】
実施形態11: バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖、1種以上の二糖及び/又は1種以上の単糖を含む溶液を用意するステップが、微生物発酵を用いた前記溶液の調製を含む、前の実施形態のいずれかに基づく方法又は装置。
【0085】
実施形態12: 前記第1の膜ろ過が、クロスフロー精密ろ過又はクロスフロー限外ろ過として実施される、実施形態B1を除く前の実施形態のいずれかに基づく方法又は装置。
【0086】
実施形態13: 前記クロスフロー精密ろ過又はクロスフロー限外ろ過が、0.5m/s~6.0m/sの範囲、好ましくは2.0m/s~5.5m/sの範囲、より好ましくは2.2m/s~4.5m/sの範囲、さらにより好ましくは2.5~4.5の範囲のクロスフロー速度を含む、実施形態12に基づく方法又は装置。
【0087】
実施形態14: 前記第1の膜ろ過が、8℃~55℃の範囲、好ましくは10℃~50℃の範囲、より好ましくは30℃~40℃の範囲の溶液の温度で実施される、前の実施形態のいずれかに基づく方法又は装置。
【0088】
実施形態15: 前記第1の膜ろ過が、20nm~800nmの範囲、好ましくは40nm~500nmの範囲、より好ましくは50nm~200nmの範囲の孔径を有するセラミック精密ろ過膜又はセラミック限外ろ過膜を用いて実施される、前の実施形態のいずれかに基づく方法又は装置。
【0089】
実施形態16: 前記セラミック材料が、TiO2、ZrO2、SiC及びAl2O3からなる群から選択される少なくとも1種のセラミック材料である、実施形態15に基づく方法又は装置。
【0090】
実施形態17: 前記第1の膜ろ過が、カットオフが10kDa~200nmの範囲、好ましくは50kDa~200nmの範囲、より好ましくは50kDa~100nmの範囲の高分子精密ろ過膜又は高分子限外ろ過膜を用いて実施される、前の実施形態のいずれかに基づく方法又は装置。
【0091】
実施形態18: であって、前記高分子材料が、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデンからなる群から選択される少なくとも1種の高分子材料である、実施形態17に基づく方法又は装置。
【0092】
実施形態19: 前記第1の膜ろ過が、吸着剤、好ましくは活性炭を溶液に加えてから所定時間後に実施される、前の実施形態のいずれかに基づく方法又は装置。
【0093】
実施形態20: 前記所定時間が、少なくとも2分、好ましくは少なくとも10分、より好ましくは少なくとも20分である、実施形態19に基づく方法又は装置。
【0094】
実施形態21: 第1の膜ろ過が、好ましくは2つ、より好ましくは3つのステップ:第1のダイアフィルトレーションステップ、濃縮ステップ及び任意選択で第2のダイアフィルトレーションステップを含み、それぞれ本出願で詳細に開示されている、前の実施形態のいずれかの方法。
【0095】
実施形態22: 第1の膜ろ過の透過液の第1の膜ろ過、好ましくは限外ろ過によって得られた少なくとも1種のオリゴ糖、1種以上の二糖及び/又は1種以上の単糖を含む溶液の第2の膜ろ過を実施するステップをさらに含む、前の実施形態のいずれか1つに基づく方法。
【0096】
実施形態23: 前記第2の膜ろ過が限外ろ過であり、カットオフが1.0kDa~10kDaの範囲、好ましくは2kDa~10kDaの範囲、より好ましくは4kDa~5kDaの範囲の限外ろ過膜を用いて実施される、実施形態22に基づく方法。
【0097】
実施形態24: 前記限外ろ過膜が、少なくとも部分的に高分子材料でできている、実施形態23に基づく方法。
【0098】
実施形態25: 前記高分子材料が、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、酢酸セルロースからなる群から選択される少なくとも1種の高分子材料である、実施形態24に基づく方法。
【0099】
実施形態26: 前記第2の膜ろ過、好ましくは限外ろ過が、5℃~15℃の範囲、好ましくは8℃~13℃の範囲、より好ましくは8℃~12℃の範囲である溶液の温度で実施される、実施形態22~25のいずれか1つに基づく方法。
【0100】
実施形態27: 第1の膜ろ過によって得られたオリゴ糖を含む溶液を、先に20℃未満の温度にし、好ましくは前記第2の膜ろ過の間、20℃未満の温度に維持する、実施形態22~26のいずれか1つに基づく方法。
【0101】
実施形態27: 前記少なくとも1種のオリゴ糖が、ヒト母乳オリゴ糖、好ましくは2'-フコシルラクトース、6'-シアリルラクトース又はラクト-N-テトラオース、より好ましくは2'-フコシルラクトースを含む、前の実施形態のいずれか1つに基づく方法又は装置。
【0102】
実施形態28: バイオマスは巨大分子バイオマスである、前の実施形態のいずれか。
【0103】
実施形態29:
巨大分子バイオマスが、
- 木、わら、茎及びリグニン、リグノセルロース、セルロース及び/又はデンプンを含有する他の植物材料、及び/又は
- 動物及び/又は微生物起源の巨大分子バイオマス、好ましくは物質及び/又は多糖を含有するキチン
を含む、実施形態28。
【0104】
実施形態30:
バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖、少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含む溶液が、以下:
- 少なくとも1種のオリゴ糖、及び
- 少なくとも1種の二糖
のうちの少なくとも2つの混合物を含む、前の実施形態のいずれか。
【0105】
[実施例]
本発明に基づく方法を以下にさらに詳細に示す。いずれにせよ、実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0106】
[実施例1]
バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖を含む複合溶液としての発酵ブロスを、2.4kgの量で標準的な方法によって調製した。そのpH値は、10%硫酸を92g加えることによって4±0.1まで低下させた。その後、食品安全性がある、活性炭Carbopal Gn-P(Donau Carbon GmbH, Gwinnerstraβe 27-33, 60388 Frankfurt am Main, Germany)の30%懸濁液98gを加え、20分撹拌した。
【0107】
このようにして調製した溶液は、プロセス装置、Sartorius AG, Otto-Brenner-Str. 20, 37079 Goettingen, Germany製の半自動MFラボユニットに供給し、目的のために改変し、透過液を密閉して37℃に循環加熱した。分離目的で、プロセス装置は、外径10mm、内径6mm、長さ1.2m及びAl2O3製の孔径50nmの膜を有するモノチャンネルエレメント(Atech Innovations GmbH, Gladbeck, Germany製)を含んでいた。溶液の循環を実施し、溶液が目標温度37℃を有するとすぐに、透過液の排出が開始され、膜間圧の制御を起動させた。
【0108】
本発明の方法の終了後、プロセス装置を停止し、濃縮液を処理し、プロセス装置を洗浄した。洗浄は、50℃~80℃の温度で0.5%~1%NaOHを用いて実施し、ここでNaOHはその後パージによって除去した。
【0109】
好ましい実施形態では、以下でさらに詳細に説明するように、本発明の方法の第1の膜ろ過は3つのステップを含む。第1のステップは、0.5の係数(ダイアフィルトレーション水の量=発酵ブロスの出発量×ダイアフィルトレーション係数)を有する第1のダイアフィルトレーションを含む。ダイアフィルトレーションの間、加えられた水の量は、排出された透過液の量と同一である。第1のステップは継続的なステップであり、したがって供給容器内の体積は一定に保たれる。第2のステップは、ダイアフィルトレーション水の供給を停止することによって、係数2で発酵ブロスを濃縮することを含み、レベルは目標値まで低下する(目標値=発酵ブロスの開始時の体積又は質量/濃縮係数)。続いて、第3のステップは、第2のダイアフィルトレーションを含む。これら3つのステップの間に捕集した透過液は通常、組み合わせて、以下の表で参照されている透過液を形成する。これらの3つのステップを用いて、透過液内での生成物のより低い希釈及び95%以上の増加した収率が実現される。第2のダイアフィルトレーションの係数を増加させることによって、収率はさらに増加し得る。
【0110】
以下の分析方法を実施した。
- 生成物、すなわちヒト母乳オリゴ糖、及び第2の成分を測定するためのHPLC
- 乾燥含有量を測定するための乾燥天秤
- 標準方法、例えばDIN EN ISO 6271を用いて色を測定するためのAPHA
- タンパク質の濃度を測定するためのブラッドフォードタンパク質アッセイ。
【0111】
これらは長期間保存されない可能性があるので、異なる発酵ブロスでいくつかの実験を行った。方法が正しく機能し、発表された利点をもたらすかどうかを決定できるようにするため:
- pH値を調整しないで、活性炭を加えず、
- pH値を調整しないで、活性炭を加えて、
- pH値の調整後、活性炭を加えず、
- pH値の調整後値、活性炭を加えて、
- 活性炭を加えた後、次いでpH値を調整して、
実験を行った。
【0112】
以下、次の略語を使用する:
- AC=活性炭
- UF=限外ろ過
- DF=ダイアフィルトレーション係数(比:水の量と開始体積)
- CF=濃縮係数(開始体積と最終体積の間の比)
- DP=モジュールに沿った圧力降下(p供給物-p保持液)
- 流量=1m2及び1時間当たりの透過液流速(l/m2h)
- クロスフロー速度=膜チャンネル内の懸濁液の線速度(m/s)
- 膜負荷=1m2の膜面積によって生成される透過液の量(m3/m2)
【0113】
さらに、液体分離に関して、以下の記号及び説明を使用する。
【0114】
【表1】
またさらに、以下の表では、用語「系列」は、それぞれの実験番号を意味する。
【0115】
表1は、pH値及び活性炭に応じた膜性能を示す。異なるパラメーターを有する発酵に由来する異なるバッチの発酵ブロスは、異なる色成分と溶液の異なるオリゴ糖及び二糖組成を有する溶液をもたらし、本発明の方法の広範な適用可能性を実証する。
【0116】
【表2】
略語「ads.[h]」は、時間単位の、吸着剤を溶液に加えてから第1の膜ろ過を開始するまでの時間である。
【0117】
系列A1は、任意の吸着剤の不在下だが、異なるpH値で行った。系列A2は、活性炭を含んで又は含まずにpH7.0及び4.0で行った。系列A3は、示したように、様々な量の活性炭及び異なるクロスフロー速度で、pH4で行った。これらの3つの系列では、DF=1の第1のダイアフィルトレーションステップ及びCF=2の濃縮ステップだけを行い、次いで第1の膜ろ過を停止し、得られた溶液及び出発溶液の残りを分析し、結果を比較した。
【0118】
以下の結果は、表1から導き出すことができる:
膜性能は、クロスフロー速度4m/sで、pH値4で最大になる。膜性能はpH値7で1%活性炭が存在すると低下するが、膜性能はpH値4で、1%活性炭が存在し、クロスフロー速度4m/sの場合、約4倍に向上する。活性炭を加えた後に吸着時間を0.3時間から24時間に増やすと、ごくわずかな膜性能の向上しか示さない。活性炭の追加量を1%から2%に増やすと、膜性能が低下する。クロスフロー速度を4m/sから3m/sに下げると、膜性能が低下するが、それは活性炭が存在しない場合よりも依然として高い。クロスフロー速度を下げると、電力消費量がかなり減少し、膜の摩耗リスクも減少する。
【0119】
表2は、pH値及び系列A1の活性炭に応じて分析結果を示す。DCは、乾燥含量の略語である。ODは、光学密度である。供給物は、バイオマス並びにオリゴ糖及び二糖を含む溶液を示す。透過液は、第1の膜ろ過後に得られた溶液であり、濃縮液は供給物の残りである。
【0120】
【表3】
【0121】
以下の結果は、表2から導き出すことができる:
pH値の変動は、透過液の色値に影響を与えない。より低いpH値でのより低いAPHA値は、10%硫酸による発酵ブロスのわずかな希釈の結果である。タンパク質の濃度は、より低いpH値でかなり低下する。発酵ブロスのpH値は、オリゴ糖3.2-Di-フコシルラクトース(3.2-Di-Fl)及び2’フコシルラクトース(2FL)又は二糖ラクトースへの影響は極めて少ない。
【0122】
表3は、pH値及び系列A2の活性炭に応じて分析結果を示す。DCは、乾燥含量の略語である。ODは、光学密度である。
【0123】
【表4】
【0124】
以下の結果は、表3から導き出すことができる:
発酵ブロスに1%活性炭を加えると、透過液の色値が低下する。pH値7で、1%の活性炭は色値を約65%低下させる。pH値4で、1%の活性炭は色値を約84%低下させる。したがって、色値は1000の上限を下回っており、さらなる脱色の必要はない。pH値7で活性炭を加えると、透過液内のタンパク質の濃度が約40%低下するが、この点に関して活性炭を加えることによる効果は、タンパク質濃度へのpHの効果に対してpH値4では得られない。それにもかかわらず、pH値4で1%活性炭を加えた場合の透過液内のタンパク質の濃度は、pH値7で1%活性炭を加えた場合の透過液内のタンパク質の濃度と比較して4分の1になる。活性炭を加えることは、両方のpH値で透過液内のオリゴ糖3.2-Di-フコシルラクトース(3.2-Di-Fl)、2’フコシルラクツロース(2F-ラクツロース)及び2’フコシルラクトース(2FL)の濃度への影響が極めて少ない。したがって、これらの成分は、かなりの量で活性炭に付着しないと推論することができる。この実験で二糖ラクトースは、活性炭を使用した場合に濃度が少し低下することを示すが、低下したpH及び活性炭の有益な効果により、この二糖に本発明の方法の適用が可能になる。
【0125】
表4は、pH値及び系列A3の活性炭に応じて分析結果を示す。DCは、乾燥含量の略語である。ODは、光学密度である。
【0126】
【表5】
【0127】
以下の結果は、表4から導き出すことができる:
活性炭を加えない実験と比較した場合、活性炭を加えると、透過液内のタンパク質の濃度が95%低下する。活性炭の追加量を1%から2%に増やしても、タンパク質の濃度に著しい又は検出可能な影響はない。活性炭を加えると、APHAが大幅に低下する。低下は、1%活性炭を加えると約85%、2%活性炭を加えると93%~95%であり、ろ過前の吸着時間がより長くても、APHA又はタンパク質の濃度に著しい又は検出可能な影響はない。吸着時間の延長も活性炭の使用量の増加も、透過液中のオリゴ糖3.2-Di-フコシルラクトース(3.2-Di-Fl)、2’フコシルラクツロース(2F-ラクツロース)及び2’フコシルラクトース(2FL)又は二糖ラクトースに強い影響を与えなかった。
【0128】
追加の試験は、これらの良好な結果が、第2のダイアフィルトレーションステップを使用した場合にさらに改善できることを示した。
【0129】
別の実験(系列A4)では、バイオマスを含む溶液(供給物とも呼ばれる)のpHを低下させる前又は後に活性炭を加える効果を試験した。この実験では、DF3で第1のダイアフィルトレーションステップだけを使用し、第1の膜ろ過を停止し、透過液及びバイオマスを含む濃縮した溶液を分析し、2つの処理を比較した。
【0130】
表5は、pH値及び系列A4の活性炭に応じて分析結果を示す。
【0131】
【表6】
【0132】
以下の結果は、表5から導き出すことができる:
最初にpH値を4に調整し、次に活性炭を加えると、タンパク質及び色の低下は、最初に活性炭を加え、次にpH値を調整するよりも約15%優れている。測定したオリゴ糖に対する強い影響は観察されなかった。最初にpH値を低下させた場合、二糖ラクトースの保持がわずかに強くなった。空のセルは、値が決定されなかったことを示す。
【0133】
膜のより安定な性能(流量、TMP、DP)は、反対の方法よりも、最初にpH値を4に調整し、次に活性炭懸濁液を加えた場合に得られた。
【0134】
[実施例2]
以下、実施例1との違いだけについて記載し、同一のパラメーターは繰り返さない
【0135】
バイオマス及び少なくとも1種のオリゴ糖を含む複合溶液としての発酵ブロスを調製した。そのpH値は、発酵ブロス1kg当たり20%硫酸38gを加えることによって、4±0.1に低下させた。さらに、1%活性炭粉末を加えた。分離は、親水性50kDaポリエーテルスルホン(PES)膜(NADIR(登録商標) UH050 P. MICRODYN-NADIR GmbH. Kasteler Straβe 45. 65203 Wiesbaden. Ger-many)で実施した。
【0136】
表6は、pH=4と1%活性炭粉末における吸着時間と異なる発酵ブロスのクロスフロー速度の関数としてのバイオマス分離の性能データを示す。「Pe」は、透過液量を示す。
【0137】
【表7】
【0138】
以下の結果は、表6から導き出すことができる:
異なる出発溶液を使用して、pH4.4、1%活性炭及び低いクロスフロー速度を試験し、優れた膜性能をもたらした。出発溶液中の吸着剤のより長いインキュベーション期間は必要なかった。
【0139】
表2、3及び6の結果を比較すると、pH=4と1%活性炭では、膜性能は、pH値7で活性炭を含まない発酵ブロスを用いて測定した性能と比較して4~10倍高く、また、クロスフロー速度を1.5m/sから1.1m/sに下げると、流量が著しく低下するが、pH値7、クロスフロー速度1.5m/sでの試用と比較して、性能は依然として2倍高くなると結論付けることができる。
【0140】
さらなる実験では、表6に示す発酵ブロスのバッチを、さらなる試験のための開始溶液実験として使用した。バッチ4を使用して、最初にpHを4.0に設定し、次に1%w/w活性炭を加え、又は最初に同じ割合の炭素を加え、その後pHを4.0に設定し、続いて最初の膜ろ過を行う、2つの変形を試験した。以前に観察されたように、膜ろ過の透過液は、活性炭を加えてからpHを設定した場合、すでにpH 4.0の溶液に活性炭を加えたことと比較して、3~4倍多くタンパク質を示した。また、透過液のAPHA値は、pH調整前に活性炭を加えた場合により高かった。両方の処理は、測定したオリゴ糖及び二糖に同様の効果があり、これらは主として透過液で回収され、保持液の損失は10%~20%程度であり、場合によっては最大30%だった。
【0141】
バッチ5、6及び7を用いて、pHを4.0に設定し、次に1%w/w活性炭を加える試験は、、透過液が出発溶液のタンパク質量のわずか5~15%を含有することを確認した。透過液の700未満(バッチ7)及び400未満(バッチ5及び6)のAPHA値を達成した。オリゴ糖及び二糖に関して、再度、大部分は透過液で回収され、保持液はバッチ4で観察された量と同様の量を含有していた。
【0142】
追加の観察は、発酵ブロス中のオリゴ糖とラクトース濃度が大幅に異なる可能性があることだったが、それにもかかわらず、本発明の方法はオリゴ糖及びラクトースについて同様の結果で適用することができ、傾向として透過液中の色数がより低いことは、透過液中のタンパク質濃度がより低いことと相関している。
【0143】
その上、標準方法で生成した、6'-シアリルラクトース又はラクト-N-テトラオースを含む発酵ブロスのいくつかのバッチを、本発明の方法で試験した。初めにpHを低下させ、次に活性炭を加えた場合の結果は、上記に示したものと同等であり、多くの場合さらに優れていた。例えば、ラクト-N-テトラオースを含む発酵ブロスは、高濃度の色成分から始まって供給物中のAPHA値が7000以上になり、第1の膜ろ過後にAPHA値が1000未満の透過液を生成したが、通常は300未満、さらには100未満ほど低い。タンパク質濃度は、通常約3g/lから0.01g/l未満に低下させた。もとは発酵ブロスで見られた、大量の、通常95%超のラクト-N-テトラオースは、組み合わせた透過液中に存在していた。同様に、存在する他のオリゴ糖、また二糖ラクトースの場合、ほとんどが組み合わせた透過液に存在し、第1の膜ろ過の最後に保持液に少量しか見られなかった。適用したDF値は3未満であった。
【0144】
また、APHA値が約7000の6'-シアリルラクトースを含む発酵ブロスは、前記第1の膜ろ過後にAPHA値が300未満、さらには70未満ほど低い透過液をもたらした。タンパク質濃度は、3未満のDF値で、発酵ブロスの開始値と比較して10分の1以上に低下した。もとは発酵ブロスで見られた、大量の、通常90%超の6'-シアリルラクトースは、組み合わせた透過液中に存在していた。同様に、存在する他のオリゴ糖、また二糖ラクトースの場合、ほとんどが組み合わせた透過液に存在し、第1の膜ろ過の最後に保持液に少量しか見られなかった。
【0145】
方法を5.5未満のpHで行うと、より高いpH値と比較して第1の膜ろ過で流量が改善されたことも判明した(クロスフロー速度3.5m/s、温度30℃;DF=3)。これは、バイオマス及び6’-シアリルラクトースを含む溶液のpH値がpH4.2の場合にさらにもっと改善された。pH6.3と比較して、流量は、pH5.2を使用した場合に2倍以上になり、pH値がpH4.2の場合に3倍になった。
【0146】
引用文献
- WO 2015/032412
- EP 2 379 708
- CN 100 549 019
- EP 2 896 628
- US 9 944 965
図1
図2
【国際調査報告】