(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(54)【発明の名称】高抵抗率および超高抵抗率単結晶シリコンインゴット成長用ファットネックスラブの改良された比抵抗安定化測定
(51)【国際特許分類】
C30B 29/06 20060101AFI20220209BHJP
C30B 15/04 20060101ALI20220209BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20220209BHJP
H01L 21/324 20060101ALI20220209BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
C30B29/06 502H
C30B15/04
H01L21/304 611
H01L21/324 X
H01L21/66 L
H01L21/66 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021537899
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(85)【翻訳文提出日】2021-08-24
(86)【国際出願番号】 US2019066187
(87)【国際公開番号】W WO2020139584
(87)【国際公開日】2020-07-02
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518112516
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GlobalWafers Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】ハドソン,カリシマ マリー
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヒョンミン
(72)【発明者】
【氏名】リュー,ジェウ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップス,リチャード ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】スタンドリー,ロバート ウェンデル
【テーマコード(参考)】
4G077
4M106
5F057
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AB01
4G077AB06
4G077BA04
4G077CF02
4G077EB01
4G077FE20
4G077FG12
4G077FG13
4G077GA01
4G077GA07
4G077HA12
4M106AA01
4M106AA20
4M106BA08
4M106CA01
4M106CA10
4M106CA50
4M106CA51
4M106DH09
4M106DH51
5F057AA19
5F057BA01
5F057BA12
5F057BB03
5F057CA02
5F057CA11
5F057CA27
5F057DA02
5F057DA05
5F057DA28
(57)【要約】
抵抗率の制御が改良された単結晶シリコンインゴットを作製する方法が開示されている。この方法は、サンプルロッドの成長を含む。サンプルロッドは、製品インゴットの直径よりも小さい直径を有してもよい。サンプルロッドは、中央スラブを形成するためにクロップされる。中央スラブの抵抗率は、4点プローブなどで直接測定してもよい。サンプルロッドまたは任意に中央スラブは、抵抗率を測定する前に熱ドナー消滅サイクルでアニールされてもよく、アニールされたロッドまたはスラブは、緩和率を高めてより迅速な抵抗率の測定を可能にするために光で照射される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョクラルスキ法により成長した単結晶シリコンインゴットの抵抗率を制御する方法であって、
シリコン種結晶をシリコン融液と接触させる工程であって、シリコン融液はるつぼ内に収容され、溶融シリコンを含む工程と、
シリコン種結晶をシリコン融液から引き抜いて、単結晶シリコンを含むサンプルロッドを形成する工程であって、サンプルロッドは、中心軸、周縁部、および比較的一定の直径を有する概ね円筒形の本体を有する工程と、
サンプルロッドからスラブをスライスする工程であって、スラブは、サンプルロッドの中心軸の少なくとも一部を取り囲む長手方向の平面を含みかつ厚さを有する工程と、
スラブをアニールして熱ドナーを消滅させる工程と、
スラブをラップする工程と、
スラブに赤外光を照射する工程と、
スラブの温度が30℃未満に低下した後に、スラブの抵抗率を測定する工程と、を含む方法。
【請求項2】
サンプルロッドの中心軸は、約100ミリメートルから約500ミリメートルの間の長さであり、例えば約150ミリメートルから約300ミリメートルの間の長さである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
サンプルロッドの直径は、約150mm未満、約100mm未満、約50mm未満、約25mm未満、または約20mm未満(例えば、約5mm~約150mm、約5mm~約100mm、約5mm~約50mm、約5mm~約25mm、または約10mm~約25mm)である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
スラブの厚さは、約1ミリメートルから約3ミリメートルの間である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
さらにシリコン融液から単結晶シリコンインゴットを成長させる工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
単結晶シリコンインゴットは、少なくとも約500Ω・cm、少なくとも約1,000Ω・cm、少なくとも約1,500Ω・cm、少なくとも約2,000Ω・cm、少なくとも約4,000Ω・cm、少なくとも約6,000Ω・cm、少なくとも約8,000Ω・cm、または少なくとも約10,000Ω・cm、または約500Ω・cmから約50,000Ω・cm、約1,000Ω・cmから約50,000Ω・cm、約1,500Ω・cmから約50,000Ω・cm、または約8,000Ω・cmから約50,000Ω・cmの抵抗率を有する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
さらに、スラブ温度が30℃未満に低下した後にスラブの抵抗率を測定した後に、
シリコン融液にドーパントを添加する工程と、
シリコン融液から、サンプルロッドの抵抗率とは異なる抵抗率を有する単結晶シリコンインゴットを成長させる工程と、を含む請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
単結晶シリコンインゴットの抵抗率は、少なくとも約500Ω・cm、少なくとも約1,000Ω・cm、少なくとも約1,500Ω・cm、少なくとも約2,000Ω・cm、少なくとも約4,000Ω・cm、少なくとも約6,000Ω・cm、少なくとも約8,000Ω・cm、または少なくとも約10,000Ω・cm、または約500Ω・cmから約50,000Ω・cm、約1,000Ω・cmから約50,000Ω・cm、約1,500Ω・cmから約50,000Ω・cm、または約8,000Ω・cmから約50,000Ω・cmである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
単結晶シリコンインゴットがp型単結晶シリコンインゴットであり、添加されたドーパントはリン、ヒ素、およびアンチモンからなる群から選択され、ドーパントはp型単結晶シリコンインゴットの抵抗率を増加させるために添加される請求項7に記載の方法。
【請求項10】
単結晶シリコンインゴットの抵抗率は、少なくとも約500Ω・cm、少なくとも約1,000Ω・cm、少なくとも約1,500Ω・cm、少なくとも約2,000Ω・cm、少なくとも約4,000Ω・cm、少なくとも約6,000Ω・cm、少なくとも約8,000Ω・cm、または少なくとも約10,000Ω・cm、または約500Ω・cmから約50,000Ω・cm、約1,000Ω・cmから約50,000Ω・cm、約1,500Ω・cmから約50,000Ω・cm、または約8,000Ω・cmから約50,000Ω・cmである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
単結晶シリコンインゴットはp型単結晶シリコンインゴットであり、添加されたドーパントはホウ素、ガリウム、およびアルミニウムからなる群から選択され、ドーパントはp型単結晶シリコンインゴットの抵抗率を減少させるために添加される請求項7に記載の方法。
【請求項12】
単結晶シリコンインゴットの抵抗率は、少なくとも約500Ω・cm、少なくとも約1,000Ω・cm、少なくとも約1,500Ω・cm、少なくとも約2,000Ω・cm、少なくとも約4,000Ω・cm、少なくとも約6,000Ω・cm、少なくとも約8,000Ω・cm、または少なくとも約10,000Ω・cm、または約500Ω・cmから約50,000Ω・cm、約1,000Ω・cmから約50,000Ω・cm、約1,500Ω・cmから約50,000Ω・cm、または約8,000Ω・cmから約50,000Ω・cmの範囲である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
単結晶シリコンインゴットはn型単結晶シリコンインゴットであり、添加されたドーパントはホウ素、ガリウム、およびアルミニウムからなる群から選択され、ドーパントはn型単結晶シリコンインゴットの抵抗率を増加させるために添加される請求項7に記載の方法。
【請求項14】
単結晶シリコンインゴットの抵抗率は、少なくとも約500Ω・cm、少なくとも約1,000Ω・cm、少なくとも約1,500Ω・cm、少なくとも約2,000Ω・cm、少なくとも約4,000Ω・cm、少なくとも約6,000Ω・cm、少なくとも約8,000Ω・cm、または少なくとも約10,000Ω・cm、または約500Ω・cmから約50,000Ω・cm、約1,000Ω・cmから約50,000Ω・cm、約1,500Ω・cmから約50,000Ω・cm、または約8,000Ω・cmから約50,000Ω・cmの範囲である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
単結晶シリコンインゴットがn型単結晶シリコンインゴットであり、添加されたドーパントはリン、ヒ素、およびアンチモンからなる群から選択され、ドーパントはn型単結晶シリコンインゴットの抵抗率を減少させるために添加される請求項7に記載の方法。
【請求項16】
単結晶シリコンインゴットの抵抗率は、少なくとも約500Ω・cm、少なくとも約1,000Ω・cm、少なくとも約1,500Ω・cm、少なくとも約2,000Ω・cm、少なくとも約4,000Ω・cm、少なくとも約6,000Ω・cm、少なくとも約8,000Ω・cm、または少なくとも約10,000Ω・cm、または約500Ω・cmから約50,000Ω・cm、約1,000Ω・cmから約50,000Ω・cm、約1,500Ω・cmから約50,000Ω・cm、または約8,000Ω・cmから約50,000Ω・cmである請求項15に記載の方法。
【請求項17】
熱的ドナーを消滅させるためのアニールは、スラブを約600℃以上の温度で、60分間以下、または30分間アニールする工程を含む請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
熱的ドナーを消滅させるためのアニールは、スラブを約720℃の温度で約2分間アニールする工程を含む請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
スラブに、約0.75マイクロメートルから約1000マイクロメートルの間の波長を有する光を照射する請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
スラブに、約400ナノメートルから約4.5マイクロメートルの間の波長を有する光を照射する請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
スラブの温度を少なくとも約50℃の温度まで上昇させるのに十分な強度の光をスラブに照射する請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
スラブは、少なくとも約50℃の温度で少なくとも約10分間照射される請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
スラブは、少なくとも約50℃の温度で約10分間から約2時間照射される請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
スラブは、少なくとも約50℃の温度で約10分間から約1時間照射される請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
スラブの抵抗率は、中心軸に沿った複数の点で測定される請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2018年12月27日に出願された米国仮出願62/785,432の優先権を主張するものであり、その開示内容は、その全体が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示の分野は、改良された抵抗率制御を有する単結晶シリコンインゴットを作製する方法に関し、特に、製品インゴットよりも小さい直径を有するサンプルロッドから切り出された中央スラブの成長および抵抗率測定を含む方法に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体電子部品の製造のためのほとんどのプロセスの出発材料である単結晶シリコンは、一般的に、単結晶である種結晶を溶融シリコンに浸漬した後、ゆっくりと抽出して成長させる、いわゆるチョクラルスキ(Czochralski:CZ)プロセスによって準備される。溶融シリコンは、石英ルツボの中に入っている間に、酸素を中心としたさまざまな不純物が混入する。高度な無線通信用途や絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、低電力・低リークのデバイスなどの一部の用途では、1500Ω・cm以上といった比較的高い抵抗率のウエハが必要となる。
【0004】
高抵抗率のインゴット製造には、高純度多結晶シリコンが用いられる。高純度多結晶シリコンは、不純物プロファイルに広がりがあることが特徴であり、これにより、アンドープ材料とその種類の真性抵抗値の範囲に大きな広がりがある。このような高抵抗または超高抵抗材料のシードエンド抵抗率をターゲットにすることは、出発材料中のホウ素およびリン(多結晶シリコン材料中の表面ホウ素およびリンを含む)のばらつきや、るつぼ中の不純物、および/または熱ドナー消滅サイクル後に抵抗率を変化させる酸素レベルに起因して困難である。さらに、そのような高抵抗率のアプリケーションは、抵抗率測定における誤差の増加の影響を受けやすいかもしれない。
【0005】
多結晶シリコン出発材料の不純物濃度および/または抵抗率を、抵抗率測定のために消費されるシリコンの量が比較的少なく、比較的迅速かつ確実にサンプリングすることができる、高抵抗率シリコンインゴットを準備するための方法が必要である。
【0006】
このセクションは、以下に説明および/または請求される本開示の様々な態様に関連する技術の様々な態様を読者に紹介することを意図している。この議論は、本開示の様々な態様のより良い理解を促進するための背景情報を読者に提供するのに役立つと考えられる。従って、これらの記述は、先行技術を認めるものではなく、この観点から読まれるべきものであることを理解すべきである。
【発明の概要】
【0007】
本願は、チョクラルスキ法によって成長させた単結晶シリコンインゴットの抵抗率を制御する方法を提供するものである。この方法は、シリコン種結晶をシリコン融液と接触させる工程であって、シリコン融液はるつぼ内に収容され溶融シリコンを含む工程と、シリコン融液からシリコン種結晶を引き上げて、単結晶シリコンを含むサンプルロッドを形成する工程であって、サンプルロッドは概ね円筒形の形状を有し、中心軸と円周縁と中心軸から円周縁まで延びる半径とを含む工程と、サンプルロッドの中心軸の少なくとも一部を囲む長手方向の平面を含み厚さを有するスラブをサンプルロッドからスライスする工程と、スラブをアニールして熱ドナーを消滅させる工程と、スラブをラッピングする工程と、スラブに赤外線を照射する工程と、スラブの温度が30℃未満に低下した後、スラブの抵抗率を測定する工程と、を含む。
【0008】
本開示の上述の態様に関連して述べた特徴の様々な改良が存在する。さらなる特徴もまた、本開示の上述の態様に同様に組み込まれ得る。これらの改良点および追加の特徴は、個別に存在してもよいし、任意の組み合わせで存在してもよい。例えば、本開示の図示された実施形態のいずれかに関連して以下に議論される様々な特徴は、本開示の上述した態様のいずれかに、単独でまたは任意の組み合わせで組み込まれてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】単結晶シリコンインゴットを作製するための引上げ装置の概略側面図である。
【
図2】シリコン融液から成長したサンプルロッドである。
【
図3】中央スラブを形成するためにロッドが切り取られる2つのクロップ面を示すサンプルロッドの概略斜視図である。
【
図4】中央スラブを含む切り取られたサンプルロッドの概略斜視図である。
【
図5】抵抗率の測定に使用されるI-V曲線である。
【
図6】シードエンドからの様々な位置におけるサンプルロッドの抵抗率の散布図である。
【
図7】平らに研磨されたサンプルロッド、ショートインゴットおよび製品インゴットのそれぞれの抵抗率の散布図である。
【
図8A】平坦なセグメント(フラット)を形成するために連続的に研磨された3つのサンプルロッドの概略上面図である。
【
図8B】
図8Aの連続して研磨されたサンプルロッドの抵抗値、およびショートインゴットと製品インゴットの抵抗率の散布図である。
【
図9】ハーフカットされたサンプルロッドとサンプルロッドから切り取られた中央スラブの抵抗率、およびショートインゴットと製品インゴットの抵抗率の散布図である。
【
図10】連続して研磨されたサンプルロッドとサンプルロッドから切り出された中央スラブの抵抗率、およびショートインゴットと製品インゴットの抵抗率の散布図である。
【
図11】2点プローブと4点プローブによって測定された、製品インゴットから切り取られた中央スラブの抵抗率、およびショートインゴットと製品インゴットの抵抗率の散布図である。
【
図12】熱ドナー消滅アニールおよびラッピングの後の時間の関数としての、~5KΩcmの中央スラブの抵抗率測定値を示すグラフである。
【
図13】照射中のファットネック中央スラブの温度プロファイルを示すグラフである。時間ゼロは、IRランプがオンになったときである。
【
図14A】ファットネック中央スラブ~1.5KΩcmの抵抗率の緩和を、IR照射を行った場合(新方法)と行わなかった場合(PORテスト#1および#2)で比較したグラフである。IR照射アニールは、熱ドナー消滅アニールの1時間後に開始した。
【
図14B】1.5Kの中央スラブについて、IR照射を行った場合(新方法)と行わなかった場合(PORテスト#2)の、相対的な抵抗率低下と時間との関係を示すグラフである。
【
図15A】ファットネックの中央スラブ~5KΩcmの抵抗率緩和を、IR照射(新手法)をした場合としなかった場合(PORテスト#1、#2)とで比較したグラフである。IR照射アニールは、熱ドナー消滅アニールの1時間後に開始した。
【
図15B】5Kの中央スラブについて、IR照射を行った場合(新方法)と行わなかった場合(PORテスト#2)の相対的な抵抗率低下と時間との関係を示すグラフである。
【
図16A】ファットネックの中央スラブ~20KΩcmの抵抗率緩和を、IR照射をした場合(新方法)としなかった場合(PORテスト#1、#2)で比較したグラフである。IR照射アニールは、熱ドナー消滅アニールの1時間後に開始した。
【
図16B】20Kの中央スラブについて、IR照射を行った場合(新方法)と行わなかった場合(PORテスト#2)の相対的な抵抗率低下と時間との関係を示すグラフである。
【0010】
対応する参照文字は、図面全体を通して対応する部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の仮出願は、融液の抵抗率を決定するためにサンプルロッドを成長させるチョクラルスキ法によって単結晶シリコンインゴットを製造する方法に関する。サンプルロッドは、製品インゴットよりも小さい直径を有する。サンプルロッドはスラブ化され、スラブの抵抗率は、4点プローブなどで測定される。いくつかの実施形態では、スラブの抵抗率は、例えば赤外線の照射後に測定される。照射は、抵抗率の緩和を促進する効果があり、それによって、より迅速な抵抗率の測定が可能になる。
【0012】
本開示の実施形態に従い、
図1を参照すると、製品インゴットは、インゴット引上げ装置23のるつぼ22内に保持されたシリコン融液44からインゴットが引き上げる、いわゆるチョクラルスキプロセスによって成長する。インゴット引上げ装置23は、結晶成長チャンバ16と、成長チャンバよりも小さい横方向の寸法を有する引上げチャンバ20とを規定するハウジング26を含む。成長チャンバ16は、成長チャンバ16から狭くなった引上げチャンバ20に移行する概ねドーム状の上壁45を有する。インゴット引上げ装置23は、結晶成長中にプロセスガスをハウジング26に導入したり、ハウジング26から除去したりするために使用される入口ポート7および出口ポート12を含む。
【0013】
インゴット引上げ装置23内のるつぼ22は、シリコンインゴットが引き上げられるシリコン融液44を含む。シリコン融液44は、るつぼ22に装填された多結晶シリコンを加熱して融解させることにより得られる。るつぼ22は、インゴット引上げ装置23の中心長手方向軸Xを中心に回転させるためにターンテーブル31に取り付けられている。
【0014】
融液44を生成するためにシリコンチャージを溶融するための加熱システム39(例えば、電気抵抗加熱器)が、るつぼ22を取り囲んでいる。加熱システム39は、米国特許第8,317,919号に示されているように、るつぼの下に延びていてもよい。加熱システム39は、制御システム(図示せず)によって制御され、融液44の温度が引上げプロセス全体にわたって正確に制御される。加熱システム39を囲む断熱材(図示せず)は、ハウジング26を介して失われる熱の量を減らしてもよい。また、インゴット引上げ装置23は、固体-融液界面での軸方向の温度勾配を大きくするために、インゴットをるつぼ22の熱から遮蔽するための、融液表面上の熱シールドアセンブリ(図示せず)を含んでもよい。
【0015】
引上げ機構(図示せず)は、その機構から下に伸びる引上げワイヤ24に取り付けられている。この機構は、引上げワイヤ24を昇降させることができる。インゴット引上げ装置23は、引上げの種類に応じて、ワイヤではなく引上げシャフトを有してもよい。引上げワイヤ24は、シリコンインゴットを成長させるために使用される種結晶6を保持する種結晶チャック32を含む引上げアセンブリ58で終端する。インゴットを成長させる際、引上げ機構は、種結晶6がシリコン融液44の表面に接触するまで下降させる。種結晶6が融解し始めると、引上げ機構は成長チャンバ16と引上げチャンバ20を介して種結晶をゆっくりと引き上げ、単結晶インゴットを成長させる。引上げ機構が種結晶6を回転させる速度と、引上げ機構が種結晶を引上げる速度(すなわち、引上げ速度v)は、制御システムによって制御される。
【0016】
プロセスガスは、入口ポート7からハウジング26内に導入され、出口ポート12から取り出される。プロセスガスは、ハウジング26内に雰囲気を作り、融液と雰囲気は融液-ガス界面を形成する。出口ポート12は、インゴット引上げ装置の排気システム(図示せず)と流体連通している。
【0017】
この点に関して、
図1に示され、ここに記載されたインゴット引上げ装置23は例示的なものであり、他の結晶引上げ装置の構成や配置は、特に明記されない限り、融液から単結晶シリコンインゴットを引き出すために使用されてもよい。
【0018】
本開示の実施形態によれば、多結晶シリコンがるつぼ22に加えられ、加熱システム39が多結晶シリコンをメルトダウンするように動作した後、サンプルインゴットまたはロッドが融液から引き上げられる。
図2には、サンプルロッド5の例が示されている。ロッド5は、ロッドが移行してシードから外側に向かって先細りになり、目標直径に達するクラウン部21を含む。ロッド5は、中心軸Aと、引っ張り速度を増加させることによって成長する結晶の一定の直径部25または円筒形の本体または単に「本体」とを含む。サンプルロッド5の本体部25は、比較的一定の直径を有する。ロッド5は、ロッドが本体25の後に直径が細くなるテールコーンまたはエンドコーン29を含む。直径が十分に小さくなると、ロッド5は融液から分離される。ロッド5は、クラウン21およびインゴットの末端端33を通って延びる中心長手方向軸Aを有する。
【0019】
サンプルロッド5の成長条件は、当業者が利用可能な適切な成長条件の概ねいずれかから選択することができる。サンプルロッド5は、転位がゼロのサンプルロッドの本体を有する単結晶であってもよい。サンプルロッド5は、ロックされたシードリフト(すなわち、±約5mmなどの直径を変化させながら固定された引っ張り速度)またはアクティブなシードリフト(目標直径を維持するために変化する引っ張り速度)で成長させてもよい。
【0020】
サンプルロッド5は、サンプルロッドの後に成長する製品インゴットよりも小さい直径を有する。例えば、サンプルロッドの直径は、製品インゴットの直径の0.75倍未満、0.50倍未満、約0.25倍未満、または0.1倍未満であってもよい。いくつかの実施形態では、サンプルロッドの直径は、約150mm未満、または約100mm未満、約50mm未満、約25mm未満、または約20mm未満(例えば、約5mmから約150mm、約5mmから約100mm、約5mmから約50mm、約5mmから約25mm、または約10mmから約25mm)である。一般に、ロッド5の直径は、いくつかの軸方向の位置に沿って(例えば、ロッドがクラウンおよび/またはテーパードエンドを有する場合には、ロッドの一定の直径部分内で)ロッドを測定し、測定された直径を平均化する(例えば、長さに沿って2、4、6、10またはそれ以上の直径を測定して平均化する)ことによって測定される。いくつかの実施形態では、サンプルロッドの最大直径は、約150mm未満、または約100mm未満、約50mm未満、約25mm未満、または約20mm未満である(例えば、約5mmから約150mm、約5mmから約100mm、約5mmから約50mm、約5mmから約25mm、または約10mmから約25mm)。
【0021】
いくつかの実施形態では、ロッド5は、結晶引上げ装置で成長した製品インゴットのネック部分の直径に概ね対応する直径を有する。例えば、ロッドは、50mm未満、25mm未満、または20mm未満、例えば、約17mmの直径を有してもよい。
【0022】
サンプルロッド5は、任意の適切な長さを有してもよい。いくつかの実施形態では、ロッド(例えば、クロッピング後)は、約100ミリメートルと約500ミリメートルとの間の長さ、例えば、約150ミリメートルと約300ミリメートルとの間の長さ、例えば、約200ミリメートルの長さを有する。いくつかの実施形態では、ロッド(例えば、クロッピング後)は、約300ミリメートル未満、約200ミリメートル未満、または約100ミリメートル未満(例えば、約25ミリメートルから約300ミリメートル、例えば約200ミリメートル)の長さを有する。
【0023】
サンプルロッド5を成長させた後、サンプルロッドを加工、例えば、スライスして中央スラブ40を形成する(
図4)。サンプルロッド5から中央スラブ40をスライスすることで、比抵抗測定の信頼性を向上させることができる。ファットネックは、抵抗率の半径方向の変動が最小となるような、できるだけ軸対称の中心に近い位置で測定する必要がある。これを実現するために、ファットネックを中央部(またはファットネックの最も広い直径に近い部分)で薄いスラブ状にスライスする。サンプルロッド5のクラウンとテールは、ワイヤソーを使用してスライスするなどして除去してもよい。その後、
図4に示すように、サンプルロッド5を切り取ってスラブ40を形成する。サンプルロッド5は、卓上切断機(例えば、Streuers(Westlake,Ohio)から入手可能なMinitom)によって、またはダイヤモンドワイヤソー(例えば、DTWワイヤソー)を用いて切り取られてもよい。サンプルロッド5は、第1のクロップ面42(
図3)に沿って切り取られ、第2のクロップ面46に沿って切り取られて、第1および第2のクロップ部49、52(
図4)とスラブ40を形成する。第1のクロップ面42および第2のクロップ面46は互いに平行であり、サンプルロッド5の中心長手方向軸Aに平行である。スラブ40は、例えば、約5mmから約0.1mmの間、約3mmから約0.5mmの間、約3mmから約1mmの間、2mmから1mmの間、または約1.1mmの厚さなど、比抵抗測定に適した任意の厚さを有していてもよい。スラブ40は、その断面が概ね正方形または長方形であってもよい。スラブ40の第1および第2の側面62、64は、サンプルロッド5の輪郭に起因してわずかに丸みを帯びていてもよく、あるいはスラブ40をさらに切り取って平面的な側面62、64を形成してもよい。
【0024】
一般的に、中央スラブ40は、クロッピングされていないサンプルロッド5の中心軸Aの少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態では、クロッピング方法は、中央スラブ40がロッド5の軸対称の中心線のできるだけ多くを捕捉できるように、サンプルロッドの直径の軸方向の不均一性を考慮して可変であってもよい。例えば、中央スラブ40は、サンプルロッド5(すなわち、中央スラブを形成するためにクロッピングする直前のサンプルロッド)の中心軸Aの少なくとも約10%、またはサンプルロッド5の中心軸Aの少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約90%を含んでもよい。いくつかの実施形態では、クロッピング後、クロッピングされたサンプルロッド5の中心軸Aは、中央スラブ40の全長(例えば、中央スラブ40の第1の端部54から第2の端部56まで)を通って延びている。
【0025】
いくつかの実施形態では、ロッド5または中央スラブ40のクロップされた端部は、端部を平らにするために研磨される。ロッドの端部は、エッチングされてもよい(例えば、混酸エッチング)。中央スラブ40は、その第1および第2の端部54、56にオーミックコンタクトを含むように変更されてもよい。例えば、中央スラブ40の第1および第2の端部54、56は、コロイド状銀ペイントで塗装し、乾燥させてもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、サンプルロッド5またはサンプルロッド5からスライスされた中央スラブ40(
図4参照)は、抵抗率を測定する前に、熱ドナー消滅アニールを受ける。熱ドナー消滅アニールは、侵入型の酸素クラスターを分離させることにより、熱ドナー消滅サイクル(すなわち、熱ドナーの消滅)として作用してもよい。いくつかの実施形態では、熱ドナーを消滅させるアニーリングは、約500℃以上、または約600℃以上、約650℃以上、または約800℃以上の温度(例えば、500℃から約1000℃まで、約500℃から約900℃まで、または約650℃から約1100℃まで)で、60分以内、または30分以内で、少なくとも約5秒、少なくとも約30秒、少なくとも約1分、または少なくとも約3分以上(例えば、約5秒から15分、約5秒から約5分、または約5秒から約3分)行われる。いくつかの実施形態では、熱ドナーを消滅させるためのアニールは、サンプルロッド5またはサンプルロッド5からスライスされたスラブ40を、約600℃を超える温度に60分以下、または30分以下でアニールすることを含む。いくつかの実施形態では、熱ドナーを消滅させるアニールは、サンプルロッド5またはサンプルロッド5からスライスされたスラブ40を約720℃の温度に約2分間アニールすることからなる。
【0027】
中央スラブ40の第1および第2の切り取られた(クロップされた)平面状の表面57、59は、表面を平坦にするために研磨されてもよい。いくつかの実施形態では、中央スラブ40は、抵抗率測定の前にラッピングされて、表面モフォロジが減少したラッピングされた表面を形成する(例えば、熱ドナーキ消滅サイクルの前または後)。ラッピングの目的は、スライスされた中央スラブ40の表面下の損傷を除去すること、中央スラブ40を目標の厚さまで薄くすること、および中央スラブ40の表面の高度な平行性および平坦性を達成することを含む。中央スラブ40のラッピングには、シングルサイドラッピングプロセスとダブルサイドラッピングプロセスの両方を使用することができる。ダブルサイドラッピング(DSL)では、緩い研磨粒子をコロイドスラリーに懸濁させて、中央スラブ40の表面から材料を擦り取る。中央スラブ40は、ギア付きキャリアに保持されており、遊星運動で駆動される。中央スラブ40のバッチは、手動でキャリアの孔に入れることができ、上部プレートは、一定の圧力(または重量)、例えば、約1kgから約30kg、または約5kgから約20kg、例えば約10kgによって押し下げられる。2枚のプレートは、同じ方向または反対方向のいずれかに回転し始める。両面ラッピングでは、中央スラブ40の両面を同時にラッピングする。コロイド状のスラリーは、ラッピングマシンに連続的に充填され、中央スラブ40と2つのプレートの間には、通常、スラリーの薄膜が存在する。スラリーは、ウエハ表面と2つのプレートの間をスライドまたはロールする際に、砥粒を介して材料除去を行う。ラッピングは、少なくとも1分、少なくとも5分、少なくとも10分、少なくとも15分、少なくとも20分、少なくとも25分、例えば約10分行われる。ラッピング圧力、プレート回転速度、プレート材料、研磨材および粒径、スラリー濃度、スラリー流量、およびキャリア設計を含むラッピングパラメータは、従来の技術に従ってよい。例えば、ラッピングスラリーの粒径は、約1~約250マイクロメートル、例えば約1~約50マイクロメートル、例えば約5~約20マイクロメートルの範囲であってもよい。回転速度は、約10~約150rpm、または約25~約150rpm、例えば約50rpm、約75rpm、または約100rpmの範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、中央スラブ40は、アルミナ(Al2O3)スラリーと接触してもよい。いくつかの実施形態では、中央スラブ40は、単結晶ダイヤモンド粒子を含むスラリーと接触してもよい。いくつかの実施形態では、中央スラブ40は、炭化ホウ素粒子を含むスラリーと接触してもよい。いくつかの実施形態では、中央スラブ40は、炭化ケイ素粒子を含むスラリーと接触してもよい。
【0028】
チョクラルスキ法により成長させたインゴットが高い抵抗率を有することを目標とする実施形態では、正確な抵抗率の測定には、サンプルを準備するための熱ドナー消滅アニールおよびラッピングの後の緩和に時間依存性が必要であることが観察されている。例えば、抵抗率が安定した値に緩和されるには、室温で最大72時間を必要とされる。また、緩和、安定化が遅れる原因として、表面処理(エッチング、研磨、研削、ラッピングなどの表面モフォロジ)が過渡的プロファイルに影響を与えることが含まれる。これらの過渡的な影響は、多結晶シリコンを正確に「サンプリング」するために必要な、真のドーパント濃度決定の測定を妨害する。正確なサンプリング抵抗率の測定は、HR(高抵抗)またはUHR(超高抵抗)用途のプライムロッドを対象とした単結晶シリコンインゴットを成長させる際に、シリコン融液に追加のドーパントが必要かどうかを判断するために必要である。従って、抵抗率によって測定される真の正味の溶融ドーパント濃度を引き出すためには、この過渡的な挙動を十分に緩和させることが重要である。正確な抵抗率の測定には、熱ドナー消滅アニールとラッピングの後、抵抗率が90%減衰するまで少なくとも4時間、95%以上減衰するには最大12時間、待つ必要があるかもしれない。
図12は、同一スラブに2つの異なる処理を施した後、熱ドナー消滅アニールとラッピングを行った中央スラブの緩和曲線を示す。
図12に示すように、サンプルスラブの抵抗率が完全に緩和されて安定するまで、36時間以上かかることもある(白丸曲線)。
図12の開いた白ダイヤモンドの曲線は、同じスラブに追加の熱ドナー消滅アニールとラッピングを行った後の抵抗率の安定化時間を示す。2つの曲線は、最初の数時間はわずかに異なる過渡的な挙動を示すが、より長い時間が経過すると同じになる。これは、室温での長時間の緩和後の真の安定したドーパント濃度を反映している。抵抗率の安定化を可能にするために必要な時間は、所望のHRまたはUHRフルサイズ単結晶シリコンインゴットを成長させるための適切なドーパント添加を決定するために、多結晶シリコン融液を「サンプリング」するプロセスの全体的なサイクル時間に影響を与え、それによってプロセスのスループットに影響を与える。
【0029】
本発明の方法によれば、サンプルロッド5からスライスされた中央スラブ40は、照射を受けて過渡緩和プロセスを促進し、それによって正確な抵抗率測定値を得るために必要な安定化期間を短縮する。いくつかの実施形態では、中央スラブ40は赤外光で照射される。いくつかの実施形態では、中央スラブ40は、約0.75マイクロメートルから約1000マイクロメートルの間の波長を有する光で照射される。いくつかの実施形態では、中央スラブ40は、約400ナノメートルから約4.5マイクロメートルの間の波長を有する光で照射される。いくつかの実施形態では、中央スラブ40は、約0.75マイクロメートルから約4.5マイクロメートルの間の波長を有する光で照射される。これらの範囲内の照射を行うことができる任意の市販のランプは、本発明の方法に適している。いくつかの実施形態では、中央スラブ40は、少なくとも約10分、例えば約10分から約2時間の間、例えば約10分から1時間の間の持続時間で照射されてもよい。市販のランプを使用して中央スラブ40を照射してもよく、ただし、そのようなランプは、本発明の方法に従って所望の波長内で照射される。いくつかの実施形態において、中央スラブ40は、中央スラブ40の温度を少なくとも約40℃、少なくとも約50℃、または少なくとも約60℃の温度に上昇させるのに十分な強度の光で照射される。温度は、これらの実施形態では、より迅速な抵抗率緩和を達成するのに十分な光子束の近接した測定値である。いくつかの実施形態では、中央スラブ40は、少なくとも約40℃、少なくとも約50℃、または少なくとも約60℃の温度で、少なくとも約10分間照射される。いくつかの実施形態では、中央スラブ40は、少なくとも約40℃の温度、少なくとも約50℃の温度、または少なくとも約60℃の温度で、約10分から約2時間の間、照射される。いくつかの実施形態では、中央スラブ40は、少なくとも約40℃の温度、少なくとも約50℃の温度、または少なくとも約60℃の温度で、約10分から約1時間の間、照射される。いくつかの実施形態では、中央スラブ40は、少なくとも約40℃の温度、少なくとも約50℃の温度、または少なくとも約60℃の温度で、約10分間照射される。いくつかの実施形態では、中央スラブ40は、少なくとも約40℃の温度、少なくとも約50℃の温度、または少なくとも約60℃の温度で約1時間照射される。
【0030】
照射の適切な期間および強度は、温度を測定することによって決定することができるが、いくつかの実施形態では、温度上昇は、スラブの抵抗率の強化された緩和および安定化にとって重要ではない。すなわち、照射の結果である抵抗率の緩和を達成するためには、温度上昇は必要ない。必要な光子束は、いくつかの実施形態では、温度上昇なしに達成される。本発明の方法による照射は、加熱を伴ってもよいが、照射が緩和をもたらすと考えられており、これは、光束による光解離が緩和強化の支配的なメカニズムであることを意味している。光解離のメカニズムには、光生成キャリアが関与している可能性があり、これは、緩和に適した光の範囲が広くてもよいことを意味し、例えば、可視光(あるいは近紫外光)から近赤外光の約1100nm(バンドギャップエネルギーに相当)までで、範囲は約250~1100nmとなる。また、光解離には、バンドギャップ内の振動状態や欠陥電子状態などの低エネルギー状態の光励起が含まれる可能性があり、その場合、光解離は中赤外域にまで及ぶ可能性がある。抵抗率測定の前に、スラブは室温などの30℃以下に冷却され、これには一般に数分、例えば最大30分、または10分、または1~5分かかる。
【0031】
製品インゴットが成長する融液の抵抗率は、中央スラブ40の抵抗率を測定することによって決定してもよい。いくつかの実施形態では、照射によって中央スラブ40の温度が上昇した場合に、30℃以下に冷却した後、照射後に抵抗率を測定する。本開示のいくつかの実施形態では、中央スラブ40を介して電流を駆動し、中央スラブ40の長さに沿った1つまたは複数の位置で抵抗率プローブを接触させる。電流は、端部54、56のいずれかを介してロッド5に印加されてもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、中央スラブ40の抵抗率は、4つのプローブ先端がすべてスラブ40に接触する4点抵抗率プローブ(例えば、インライン4点プローブ)によって測定される。抵抗率測定時には、スラブ40を治具に取り付けてもよい。いくつかの実施形態によれば、外側のプローブピンの間のスラブ40に電流(例えば、直流)を流し、その結果生じる電位差を内側のプローブピンの間で測定する。抵抗率は、測定された電流および電位の値から、スラブの形状から適切な係数に基づいて計算される。この点に関して、抵抗率は、SEMI MF84-0307の"Test Method for Measuring Resistivity of Silicon Wafers with an In-line Four-Point Probe"および/またはSEMI MF43-0705の"Test Methods for Resistivity of Semiconductor Materials"に準拠して測定されてもよく、これらは、関連するすべての一貫した目的のために、参照によって本明細書に組み込まれる。電圧は、スラブ40の長さに沿った様々な点で測定されてもよい。測定された電圧、ならびに試料の長さおよび平均厚さは、電流-電圧曲線の傾きを決定するなど、抵抗率を計算するために使用されてもよい(例えば、以下の実施例1)。
【0033】
いくつかの実施形態では、サンプルロッド5および中央スラブ40は、約5.5ppma未満の酸素含有量など、比較的低い酸素含有量を有する。他の実施形態では、サンプルロッド5およびスラブ40の酸素含有量は、5.2ppma未満、5.0ppma未満、3.5ppma未満、約3ppma未満、またはさらに約2.5ppma未満である。いくつかの実施形態では、サンプルロッド5およびサンプルロッド5から製造されたスラブ40には、転位がない。
【0034】
スラブ40の測定された抵抗率は、るつぼ内の多結晶シリコン融液の抵抗率(すなわち、出発ドーパント不純物濃度(すなわち、正味のドナー・アクセプター濃度))に関連する情報を提供するものである。測定されたスラブ40の抵抗率は、その後に成長するインゴットの製造条件を調整するために使用されてもよい。例えば、測定された抵抗率に少なくとも部分的に基づいて(例えば、製品インゴットの抵抗率を予測するモデルを使用して)ドーパントの量を調整して、多結晶シリコン融液にドーパントを添加してもよい。適切なドーパントには、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムなどのp型ドーパントと、リン、ヒ素、アンチモンなどのn型ドーパントがある。
【0035】
測定された抵抗率は、入ってくる多結晶シリコンに含まれるp型ドーパント、例えばホウ素、またはn型ドーパント、例えばリンの総量を間接的に測ることができる。測定された抵抗率とタイプに応じて、超高抵抗(>5KΩcm、より具体的には>7.5KΩcm)材料の適切なシードエンド抵抗率ターゲットを達成するために、微量のp型ドーパント、例えばホウ素、またはn型ドーパント、例えばリンが添加される。ターゲットへの精度は、ショートボディやファットネックの抵抗率の結果の精度に大きく影響される。稼動中、引上げ装置は高温のまま、ショートボディまたはファットネックの抵抗率が決定されるのを待つ。これは、プロセス全体のサイクルタイムを増加させ、るつぼが継続的に溶解しているため、酸素または他の不純物に有害な影響を与える可能性がある。ファットネックのサンプルロッドは、「サンプル」材料を成長させるためのサイクルタイムを取り除くために、スラブ化してもよい。中央スラブサンプルに放射線を照射することで、抵抗率が飽和近くまで緩和されるのに必要な待機時間を6~12時間から1時間以下に短縮することで、プロセス全体のサイクルタイムをさらに短縮することができる。また、この方法は、ショートボディまたはファットネックで測定された抵抗率が、最終的な抵抗率の状態まで完全に緩和され~95%以下にならないことを保証することによって、長いUHRロッドのシードエンドターゲティングのためのこの精度の改良を提供する。
【0036】
いくつかの実施形態では、サンプルロッドを成長させてロッドの抵抗率を測定する前に、融液に所定の量のドーパントを添加し、サンプルロッドを成長させた後に所定の量のドーパント(例えば、同じドーパントまたは異なるドーパント)を添加する。他の実施形態では、サンプルロッドを成長させて抵抗率を測定した後に、全てのドーパント(もしあれば)を添加する(例えば、ホウ素またはリン)。
【0037】
ドーパントが添加され、そこからサンプルインゴットおよび製品インゴットが引上げられる多結晶シリコンは、半導体グレードの多結晶シリコンであってもよい。半導体グレードの多結晶シリコンが使用される場合、いくつかの実施形態では、多結晶シリコンは4,000Ω・cmを超える抵抗率を有し、0.02ppbaを超えるホウ素またはリンを含まない。
【0038】
サンプルロッドが引き出され、任意的にドーパントが融液に添加された後、製品インゴットが融液から引上げられる。製品インゴットは、サンプルロッドの直径よりも大きい直径を有する(すなわち、サンプルロッドの一定直径部分の直径は、インゴットの一定直径部分の直径よりも小さい)。製品インゴットは、約150mm、または他の実施形態のように、約200mm、約300mmまたはそれ以上(例えば、450mmまたはそれ以上)の直径を有してもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、多結晶シリコンは、(例えば、バッチプロセスのように)インゴットの成長中に追加されない。他の実施形態では、多結晶シリコンは、製品インゴットが成長する際に融液に添加される(例えば、連続的なチョクラルスキ法のように)。
【0040】
融液に添加されるドーパントの量は(サンプルロッドが成長する前に第1のドーパントを添加するか、または添加しないで)、インゴットの本体の少なくとも一部(例えば、インゴットのプライム部分)における目標抵抗率を達成するように制御されてもよい。いくつかの実施形態では、目標抵抗率は最小抵抗率である。いくつかの実施形態では、インゴットの長さ(例えば、インゴットの本体の長さ)全体が、目標抵抗率(例えば、最小抵抗率)を有する。いくつかの実施形態では、製品インゴットの少なくとも一部の目標抵抗率は、最小抵抗率が少なくとも約500Ω・cm、少なくとも約1,000Ω・cm、少なくとも約1,500Ω・cm、少なくとも約2,000Ω・cm、少なくとも約4,000Ω・cm、少なくとも約6.000Ω・cm、少なくとも約8,000Ω・cm、少なくとも約10,000Ω・cm、または約500Ω・cmから約50,000Ω・cm、約1,000Ω・cmから約50,000Ω・cm、約1,500Ω・cmから約50,000Ω・cm、または約8,000Ω・cmから約50,000Ω・cmの範囲である。代替的または追加的に、サンプルロッド(および得られる中央スラブ)は、少なくとも約500Ω・cm、少なくとも約1,000Ω・cm、少なくとも約1,500Ω・cm、少なくとも約2,000Ω・cm、少なくとも約4,000Ω・cm、少なくとも約6, 000Ω・cm、少なくとも約8,000Ω・cm、または少なくとも約10,000Ω・cm、または約500Ω・cmから約50,000Ω・cm、約1,000Ω・cmから約50,000Ω・cm、約1,500Ω・cmから約50,000Ω・cm、または約8,000Ω・cmから約50,000Ω・cmである。
【0041】
いくつかの実施形態では、p型単結晶シリコンインゴットを対象とする。サンプルスラブの抵抗率が目標値以下である場合、添加されるドーパントは、リン、ヒ素、およびアンチモンからなる群から選択され、ドーパントは、p型単結晶シリコンインゴットの抵抗率を増加させるために添加される。
【0042】
いくつかの実施形態では、p型単結晶シリコンインゴットを対象とする。サンプルスラブの抵抗率が目標を上回っている場合、または抵抗率測定が、スラブがn型であることを示している場合、添加されるドーパントは、ホウ素、ガリウム、およびアルミニウムからなる群から選択され、ドーパントは、p型単結晶シリコンインゴットの抵抗率を低下させるために添加される。
【0043】
いくつかの実施形態では、n型単結晶シリコンインゴットが対象となる。サンプルスラブの抵抗率がターゲット以下である場合、添加されるドーパントは、ホウ素、ガリウム、およびアルミニウムからなる群から選択され、ドーパントは、n型単結晶シリコンインゴットの抵抗率を増加させるために添加される。
【0044】
いくつかの実施形態では、n型単結晶シリコンインゴットを対象とする。サンプルスラブの抵抗率がターゲットを上回っている場合、または抵抗率測定が、スラブがp型であることを示している場合、添加されるドーパントがリン、ヒ素、およびアンチモンからなる群から選択され、ドーパントは、n型単結晶シリコンインゴットの抵抗率を減少させるために添加される。
【0045】
単結晶シリコンインゴットを製造する従来の方法と比較して、本開示の方法はいくつかの利点を有する。比較的高い抵抗率の単結晶シリコンを製造するために使用される比較的高純度の多結晶シリコンは、ホウ素およびリンの不純物量に幅があり、それによって真性抵抗率に幅がある。比較的小さな直径(例えば少なくとも200mmのような製品インゴットと実質的に同じサイズを有するサンプルインゴットと比較して、100mm未満、50mm未満、25mm未満、さらには10mm未満、製品インゴットよりも小さい)のサンプルロッドを成長させ、サンプルロッドからスラブを形成することにより、融液の抵抗率を比較的迅速かつ確実にサンプリングすることができる。
【0046】
高抵抗率または超高抵抗率製品(例えば、少なくとも約3000Ω・cm、5000Ω・cmまたは少なくとも7000Ω・cm以上)のより良い目標を達成するために、特に、より良いシードエンド抵抗率の目標の達成のために、測定された抵抗率はドーパントのより正確な添加のために使用できる。比較的小さな直径のサンプルロッドは、比較的少ない量(例えば、15kg、20kg、または50kg以上の融液を消費する可能性のあるフル直径のショートインゴットと比較して、1kg未満、0.5kg未満、または約0.25kg未満)の融液を消費し、サンプリングプロセスに起因する不純物の蓄積を低減する。サンプルロッドは、比較的短時間(例えば、20時間、30時間、40時間、または50時間の成長時間を要する可能性があるフルサイズのショートインゴットと比較して、約12時間、10時間、または5時間以下)で成長させることができる。サンプルロッドから切り取られたスラブは、比較的低い酸素含有量(例えば、約5ppma未満または4ppma未満など)を有していてもよく、これにより、抵抗率測定の精度(例えば、熱的ドナーキルサイクル後の精度)が向上する可能性がある。
【0047】
サンプルロッドからの比抵抗の測定における変動は、(1)2点プローブによって測定される比抵抗の直径補正、サンプルロッド上の平面セグメントの準備による接触ノイズ、および/または(3)大きなモフォロジの変動によって引き起こされる可能性がある。サンプルロッドからスラブを形成することで、サンプルロッドの軸対称の中心に近い部分の比抵抗を測定することができる。これにより、抵抗率の半径方向の変動が低減または排除されるため、抵抗率測定の精度が向上する。また、スラブをラップして研磨によるモフォロジを低減し、厚さの均一性を向上させる実施形態では、抵抗率の測定がより正確になる場合がある。抵抗率を測定するために4点プローブが使用される実施形態では、抵抗率測定はさらに改良されてもよい。
【0048】
サンプルロッドの成長時間の短縮および抵抗率測定時間の短縮により、抵抗率測定が行われる処理時間が短縮され(例えば、20時間、30時間または40時間の処理時間の短縮)、これにより、るつぼの溶解に起因する不純物の蓄積が低減される。不純物が減ることで、将来的な抵抗率の予測がしやすくなります。各バッチ(すなわち製品インゴット間)のホットアワー時間を短縮することで、ゼロ転位の損失を増加させることなく、追加のサイクルでるつぼを再充填することができる。
【0049】
本開示のプロセスは、以下の実施例によってさらに説明される。これらの実施例は、限定的な意味で見られるべきではない。
【0050】
実施例1:I-V曲線からの抵抗率の決定
サンプルロッドの電圧を軸方向に測定し、印加した電流と測定した電圧を記録した。
図5は、生成されたI-V曲線を示している。試料の形状とI-V曲線の傾きから、試料の抵抗率を6139Ω・cmと求めた。なお、サンプルロッドから切り出した中央スラブについても、同様に抵抗率を求めることができる。
【0051】
実施例2:ショートインゴットとサンプルロッドの比較
製品インゴットの大きさ(例えば、200mmの引上げ装置では約200mm)程度の直径を有する単結晶ショートサンプルインゴット(「ショートインゴット」)を、
図1と同様の引上げ装置で成長させた。この結晶をクロップし、混酸エッチング(MAE)を行った。この結晶スラブを800℃で3分間、急速熱アニールし、ラップした。このスラブを4点プローブで接触させて抵抗率を測定し、3回の測定で平均した抵抗率を求めた。
【0052】
ショートインゴットを成長させた後、サンプルロッド(「サンプルロッド」)を同じ引上げ装置でロックシードリフトモードで成長させた。ロッドの直径は、その長さにわたって変化し、17~23mmの範囲内であり、平均は20mmであった。サンプルロッドは、ロッドの一端から他端まで伸びる平らなセグメントを形成するために切り取られ、研磨された。このロッドを720℃で2分間急速熱アニールした。このインゴットの抵抗率を2点式プローブで測定した。それぞれの成長条件の違いを以下の表1に示す。
表3:直径200mmのサンプルインゴットと直径約17~23mmのサンプルロッドの成長条件
【0053】
サンプルロッドの長さに渡って測定した抵抗率と、サンプルインゴットからのスラグの抵抗率を
図6に示す。
【0054】
ショートインゴットのサンプル準備時間は26時間であり、クロッピング、混酸エッチング、急速熱アニール、スラブ切断、研磨(例えば、ダイヤモンドパッドを用いて)、ラッピング、および抵抗率測定を含んでいた。サンプルロッドの準備時間は6時間で、クロッピング、混酸エッチング、急速熱アニール、フラットグラインディング(ダイヤモンドグラインダーを使用)、ラッピング、抵抗率測定を行った。サンプルロッドの処理時間は、ショートインゴットのプロセス時間の20%(5時間対25時間)であり、サンプルロッドの合計時間は、ショートインゴットの合計時間の22%(11時間対51時間)であった。いくつかの実施形態では、サンプルロッドの処理時間および合計時間は、ショートインゴットのプロ処理時間および合計時間の約15%から約25%の範囲である。
【0055】
実施例3:サンプルロッドの抵抗率、ショートインゴットの抵抗率、製品インゴットのシードエンドの抵抗率の比較
単結晶ショートサンプルインゴット(「ショートインゴット」)と2本のサンプルロッド(「サンプルロッド」)を実施例2の条件で成長させた。ショートインゴットを成長させる前に1本のサンプルロッドを成長させ、ショートインゴットを成長させた後に1本のサンプルロッドを成長させた。また、目標とするシードエンド抵抗率が約8,000Ω・cm(p型)の製品インゴットを成長させた。ショートインゴットの抵抗率は約5,000Ω・cmであったため、製品インゴットの抵抗率が少なくとも7,500Ω・cmを目標とする量のリンドーパントを添加した。
【0056】
サンプルロッドの抵抗率を2点式プローブで測定し、ショートインゴットのスラグの抵抗率を4点式プローブで測定し、その結果を
図7に示した。また、
図7には、製品インゴットのシードエンド付近の抵抗率も示されている。
図7から、サンプルロッドの2点測定のばらつきが観察される。ショートインゴットの前に成長したサンプルロッドの抵抗率測定における変動は、オーバードーピングを引き起こすであろう(例えば、平均が使用されていた場合)。サンプルロッドを半分にカットした場合(センターカット)にも同様の変動(図示せず)が見られた。
【0057】
実施例4:サンプルロッドの軸対称の中心との近さと抵抗率測定のばらつき
実施例2の条件で単結晶ショートサンプルインゴット(「ショートインゴット」)とサンプルロッド(「サンプルロッド」)を成長させた。また、製品インゴットを、目標とするシードエンド抵抗率が約7,500Ω・cm(p型)となるように成長させた。サンプルロッドを3回研磨して、サンプルロッド上に、サンプルロッドの中心軸に徐々に近づく平面状のセグメントを形成した(
図8A)。各平面セグメントを形成した後、ロッドに沿って2点プローブで抵抗率を測定し、各平面の抵抗率を
図8Bに示した。製品インゴットのドーパント量を決定するために使用されたショートインゴットの抵抗率および製品ロッドの抵抗率も、
図8Bに示されている。
【0058】
図8Bに示すように、各平坦化の軸方向の測定値は、除去するごとに平坦になり、軸方向の変動が少なくなる。各平坦化について、サンプルロッドの初期種抵抗率は、ロッドの中期から後期のボディ平均を十分に下回っている。各平坦化の平均値はショートインゴットの平均値を下回っており、これによりリンドーパントを追加で使用することになり、製品インゴットが7,500Ωcmの目標値から遠ざかることになる。
【0059】
実施例5:センターカットサンプルロッドと中央スラブとの抵抗率測定値の比較
ショートインゴットの成長の前に、実施例2の条件でサンプルロッドを成長させた。1本のサンプルロッドをセンターカットし、1本のサンプルロッドを約1.1mmの厚さの中央スラブに加工した。ショートインゴットを成長させた後に、実施例2の条件でサンプルロッドを成長させ、1本のサンプルロッドをセンターカットし、もう1本のサンプルロッドを加工して、厚さ約1.1mmの中央スラブを形成した。センターカットされたサンプルロッドを準備するために、熱ドナー消滅アニールと4時間の待機時間の後、サンプルロッドのトップとテールを取り除き、ロッドを中心線に沿って軸方向に切断して2つのハーフピースを作った。中央スラブを作製するために、サンプルロッドのトップとテールを取り除き、ロッドを切り取って中央スラブを形成した。混酸エッチング(MAE)の後、中央スラブに熱ドナー消滅アニールを施した。4時間の待機時間の後、抵抗率を測定した。センターカットサンプルロッドの抵抗率は2点式プローブで、中央スラブの抵抗率は4点式プローブで測定した。また、製品インゴットを成長させ、シードエンドの抵抗率を測定した。抵抗率の測定結果を
図9に示す。
【0060】
図9に示すように、センターカットサンプルロッドには軸方向のばらつきが見られる。中央スラブの測定値には、軸方向の測定値にいくつかのランダムな変動が含まれているが、平均抵抗率はショートボディに比較的近い値(~6200Ω・cm)であった。中央スラブの抵抗率を使用してドーパントの添加量を決定した場合、結果的にドーパントの添加量は同程度になる(例えば、少量のリンの添加)。
【0061】
実施例6:サンプルロッドと中央スラブの連続した平坦化研磨の抵抗率の比較
実施例2に従ってサンプルロッドを成長させた。このサンプルロッドを順次研磨し、各研磨後に実施例4と同様に2点プローブで抵抗率を測定した。また、サンプルロッドを成長させて処理し、厚さ約1.1mmの中央スラブを形成した。この中央スラブの抵抗率を4点式プローブで測定した。また、サンプルロッドを形成した後に、ショートインゴットと製品インゴットを成長させ、シードエンドの抵抗率をスラグから測定した。その抵抗率を
図10に示す。
【0062】
図10に示すように、各平坦化測定(第1、第3、および第5研磨が示されている)は、シードエンドから反対側のエンドへの軸方向の傾向を含み、全体的な平均抵抗率は、ショートインゴットのそれよりも低い。中央スラブの測定では、全体の平均がショートボディの抵抗率と非常によく似た平坦な軸方向の傾向が見られ、その結果、同様のドーパント添加が行われる。
【0063】
実施例7:抵抗率予測の精度
表1は、ショートインゴットの抵抗率を、4点プローブ(「4PP」)によって測定したサンプルロッドから切り取られた中央スラブの抵抗率と、2点プローブ(「2PP」)によって測定されたサンプルロッド中に研磨された平面セグメントを有するサンプルロッドの抵抗率とを比較したものである。ショートインゴットは、サンプルロッドよりも先に成長させた。ショートインゴットの抵抗率は、ショートインゴットの反対側の端(~250mm)で測定した。サンプルロッドのデータポイントは、シードエンドから反対側の端までの軸方向の抵抗率を10mmごとに測定した平均値である。製品インゴットは、表1に示されているシードエンド(~150mmのボディ位置)の抵抗率で成長させた。サンプルロッド、ショートインゴット、製品インゴットは、実施例2の条件に従って、8回に分けて成長させた。
表1:サンプルロッド、ショートインゴット、製品インゴットの抵抗率測定結果
【0064】
表1に示すように、ショートインゴットの抵抗率とサンプルロッドの中央スラブ(4PP)の抵抗率は比較的類似しており、いずれの結果によってもドーパントの添加は方向的に類似していたと考えられる。平面セグメントを持つサンプルロッド(2PP)には、誤ったドーパント(すなわち、P型とN型)が添加されうるショートボディとは方向性が逆の結果がいくつか含まれている。これは、4点プローブ比抵抗測定を用いたサンプルロッド中央スラブが、製品インゴットの比抵抗をより良い精度で予測することを示す。
【0065】
実施例8:中央スラブの2点プローブ比抵抗測定と4点プローブ比抵抗測定の比較
サンプルロッドから切り出した複数の中央スラブの抵抗率を、2点プローブと、4点プローブで測定した。また、ショートインゴットの抵抗率(4PP)も測定した。
図11に示すように、2点測定と4点測定は、軸方向の平均比抵抗率がショートインゴットと同様になっており、比較的よく追従している。これは、平面セグメントを有する短いサンプルロッドと中央スラブとの間の測定における軸方向のばらつきが、サンプルの物理的な体積と、使用される厚さのばらつきに起因することを示している。
【0066】
実施例9:抵抗率の緩和を高めるためのスラブ照射
サンプルロッドを成長させ、そのサンプルロッドから中央スラブを切り出した。中央スラブには、720℃で2分間の熱ドナー消滅アニールを行った。その後、中央スラブをキャリアに10kgの重量圧でラップさせた。
【0067】
アニールされ、ラップされたスラブを、赤外線(IR)ランプを用いて照射した。IRランプは10分以上の時間をかけてサンプルファットネックスラブを約50℃に加熱した。照射と光束の測定は温度計測を用いて行ったが、現在のところ、加熱は支配的な緩和メカニズムではないと考えられている。照射は加熱を伴うが、光解離が支配的なメカニズムであると現在は考えられている。ランプとサンプルの距離を変えることで、スラブの温度とサンプル上の光束の両方が変化し、光解離率が変化した。どちらのメカニズムも放射線の照射に起因するものであるため、抵抗緩和に対するそれぞれの効果を分離することはできないかもしれない。しかし、現在のところ、光解離はどのような温度でも進行する可能性があると考えられている。
【0068】
試料を約2分待って室温に戻し、室温で4点プローブにより抵抗率を測定した。IRランプのセットアップを使用して、ファットネックが平衡温度になるには、約10分の照射が必要であることが分かった。
図13は、照射中のファットネック中央スラブの温度プロファイルを示したグラフである。時間ゼロは、IRランプがオンになったときである。温度の上昇は、約50℃の所望の終点に到達するようにモニタされるが、この温度モニタは十分な光解離をもたらすのに十分な光子束を近似するためのものである。ファットネック中央スラブを50℃で10分以上保持して、2時間以内に抵抗率の所望の緩和過渡現象を達成した。サンプルは、ソーク温度でより長い時間保持することができるが、10分が最小必要時間である。
【0069】
実施例10:抵抗率の緩和を高めるためのスラブ照射
1500Ω・cmの目標抵抗率でサンプルロッドを成長させ、サンプルロッドから中央スラブを切り出した。2枚の中央スラブに720℃で2分間の熱ドナー消滅アニールを行った。その後,中央スラブをキャリアに入れて10kgの重さの圧力でラップさせた。
【0070】
1枚の中央スラブを32時間緩和させ、抵抗値を安定させた。第2の中央スラブは、赤外線で60分間、少なくとも50℃の温度に照射された。
図14Aは、ファットネック中央スラブ~1.5KΩcmの抵抗率の緩和を、赤外線照射を行った場合(新方法)と行わなかった場合(PORテスト#1、#2)で比較したグラフである。IR照射アニールは、熱ドナー消滅アニールの1時間後に開始した。白丸で示したように、非照射のサンプルがほぼ完全な飽和状態になり、抵抗率が安定するまでに約32時間の緩和が必要だった。再調製した同じサンプルの白いダイヤモンドは、初期の過渡的な減衰が若干異なるが(当時のRTAおよび/またはラップ処理によるものと思われる)、12時間後には同様の抵抗値にカーブが収束している。黒い三角形は、ラップ処理後に赤外線照射を行うという新しい方法で観察された減衰曲線である。このグラフは、低温アニールによって緩和が促進され、アニール後1時間で抵抗値が完全に飽和したことを明確に示す。
図14Bは、1.5KファットネックスラブにIR照射を行った場合(新方法)と行わなかった場合(PORテスト#2)の、ファットネック中央スラブの相対的な抵抗率低下と時間とを示すグラフである。この結果は、1時間の低温アニールで抵抗率を100%近くまで緩和するのに十分すぎる効果があることを明らかに示す。一方、PORプロセスでは、RTA/Lap後に12時間待つことで、最終的な抵抗率の約95%を達成することができた。
【0071】
実施例11:抵抗率緩和を高めるためのスラブ照射
目標抵抗値5,000Ω・cmと20,000Ω・cmのサンプルロッドを追加成長させた。それぞれから中央スラブを切り出し、720℃で2分間の熱ドナー消滅アニールを行った。その後、中央スラブをキャリアに入れて、10kgの加重でラップした。各サンプルロッドから1枚の中央スラブを32時間かけて緩和させ、抵抗値を安定化させた。各サンプルロッドからの第2の中央スラブは、赤外線で60分間、少なくとも50℃の温度に照射された。
図15Aは、ファットネック中央スラブ~5KΩcmの抵抗率の緩和を、IR照射をした場合(新方法)としなかった場合(POR Test #1、#2)で比較したグラフである。IR照射アニールは、熱ドナー消滅アニールの1時間後に開始した。
図15Bは、5Kファットネックスラブに対して、IR照射を行った場合(新方法)と行わなかった場合(PORテスト#2)の相対的な抵抗率低下と時間を示すグラフである。
図16Aは、ファットネック中央スラブ~20KΩcmの抵抗率緩和を、IR照射を行った場合(新方法)と、行わなかった場合(PORテスト#1および#2)とで比較したグラフである。IR照射アニールは、熱ドナー消滅アニールの1時間後に開始した。
図16Bは、20Kファットネックスラブについて、IR照射を行った場合(新方法)と、行わなかった場合(PORテスト#2)の相対的な抵抗率低下と時間を示すグラフである。この結果は、1時間の低温アニールが、抵抗率を飽和近くまで緩和するのに十分すぎることを明確に示しており、一方、PORプロセスでは、RTA/ラップ後に12時間待つことで、最終的な抵抗率の約95%を達成することができる。
【0072】
ここで使用されるように、寸法、濃度、温度、又は他の物理的又は化学的特性又は特徴の範囲と関連して使用される「約(about)」、「実質的に(substantially)」、「本質的に(essentially)」および「およそ(approximately)」という用語は、例えば丸め、測定方法又は他の統計的変動に起因する変動を含む、特性又は特徴の範囲の上限および/または下限に存在し得る変動をカバーすることを意味する。
【0073】
本開示の要素またはその実施形態を紹介する場合、冠詞「1つ(a)」、「1つ(an)」、「その(the)」および「その(said)」は、1つまたは複数の要素が存在することを意味することを意図する。用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」、および「有する(having)」は、包括的であることを意図しており、記載された要素以外の追加の要素が存在する可能性があることを意味する。特定の向きを示す用語(例えば、「上(top)」、「底(bottom)」、「側(side)」など)の使用は、説明の便宜上のものであり、記載されたアイテムの特定の向きを要求するものではない。
【0074】
本開示の範囲から逸脱することなく、上記の構造および方法に様々な変更を加えることができるため、上記の説明に含まれ、添付の図面に示されているすべての事項は、限定的な意味ではなく、例示として解釈されることが意図されている。
【国際調査報告】