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特表2022-515334アルミニウム層をインサイチュで保護する方法及びVUV波長域用の光学装置
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  • 特表-アルミニウム層をインサイチュで保護する方法及びVUV波長域用の光学装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-18
(54)【発明の名称】アルミニウム層をインサイチュで保護する方法及びVUV波長域用の光学装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20220210BHJP
【FI】
H01L21/302 105B
H01L21/302 101C
H01L21/302 101D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021532158
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(85)【翻訳文提出日】2021-07-09
(86)【国際出願番号】 EP2019083621
(87)【国際公開番号】W WO2020115109
(87)【国際公開日】2020-06-11
(31)【優先権主張番号】102018221188.4
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100205833
【弁理士】
【氏名又は名称】宮谷 昂佑
(72)【発明者】
【氏名】ビタリー シュクロベール
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA08
5F004BA03
5F004BB13
5F004BB18
5F004CA03
5F004CA06
5F004CA08
5F004DB14
5F004EA23
5F004EA28
(57)【要約】
本発明は、VUV波長域用の光学装置の内部に配置された光学素子(4)のVUV放射線(11、21)反射コーティング(6)のアルミニウム層(7)の表面(7a)を、酸化アルミニウム層(8)の成長からインサイチュで保護する方法であって、アルミニウム層の表面から酸化アルミニウム層(8)を1層ずつ除去するために原子層エッチングプロセスを実行することを含み、原子層エッチングプロセスは、表面改質ステップ及び材料剥離ステップを含み、表面改質ステップ中に、少なくとも1つのハロゲン化ホウ素を表面改質反応物として内部にパルス状に供給し、少なくとも材料剥離ステップ中に、内部において酸化アルミニウム層(8)の表面(8a)でプラズマを発生させ、原子層エッチングプロセスを、酸化アルミニウム層(8)の厚さ(D)が5nm未満に達するまで実行するか、又は原子層エッチングプロセスにより、酸化アルミニウム層(8)の厚さ(D)を5nm未満に保つ方法に関する。本発明は、VUV波長域用の光学装置、例えば検査システム又はVUVリソグラフィ装置にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
VUV波長域用の光学装置(1、2)の内部(122a、24a)に配置された光学素子(4;121、220、221)のVUV放射線(11、21)反射コーティング(6)のアルミニウム層(7)の表面(7a)を、酸化アルミニウム層(8)の成長からインサイチュで動的に保護する方法であって、
前記アルミニウム層(7)の前記表面(7a)から前記酸化アルミニウム層(8)を1層ずつ除去するために原子層エッチングプロセスを実行することを含み、
前記原子層エッチングプロセスは、表面改質ステップ及び材料剥離ステップを含み、前記表面改質ステップ中に、少なくとも1つのハロゲン化ホウ素を表面改質反応物として前記内部(122a、24a)にパルス状に供給し、少なくとも前記材料剥離ステップ中に、前記内部(122a、24a)において前記酸化アルミニウム層(8)の表面(8a)でプラズマを発生させ、
前記原子層エッチングプロセスを、前記酸化アルミニウム層(8)の厚さ(D)が5nm未満に達するまで実行するか、又は
前記原子層エッチングプロセスにより、前記酸化アルミニウム層(8)の厚さ(D)を5nm未満に保つ方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記プラズマをパルス状に発生させる方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、前記プラズマをリモートプラズマとして発生させる方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記リモートプラズマは、誘導結合プラズマ、表面波プラズマ、マイクロ波プラズマ、及びヘリコン波プラズマを含む群から選択される方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法において、前記光学装置(1、2)の動作停止中に前記表面改質ステップ及び/又は前記材料剥離ステップを実行する方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法において、前記光学素子(4;121、220、221)にVUV放射線(11、21)を照射している間に少なくとも前記材料剥離ステップを実行する方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法において、前記材料剥離ステップ中に、塩素(Cl)を含有することが好ましい少なくとも1つの材料剥離反応物を前記内部(122a、24a)にパルス状に供給する方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法において、前記酸化アルミニウム層(8)の前記厚さ(D)に応じて変わる前記反射光学素子(4;121、220、221)の少なくとも1つの特性、特に前記反射光学素子(4;121、220、221)の反射率(R)を監視し、前記少なくとも1つの監視された特性(R)に基づいて前記原子層エッチングプロセスを開始させるか又は制御する方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法において、前記表面改質ステップ中に、BBr及び/又はBClを表面改質反応物として前記内部(122a、24a)にパルス状に供給する方法。
【請求項10】
VUV波長域用の光学装置、特に検査システム(2)又はVUVリソグラフィ装置(1)であって、
アルミニウム層(7)を有するVUV放射線(11、21)反射コーティング(6)を有する少なくとも1つの光学素子(4、121、220、221)が配置される内部(122a、24a)と、該内部(122a、24a)にガス(BBr、BCl、Cl)を供給する少なくとも1つのガス入口(123、26)とを備えた光学装置において、
前記ガス入口(123、26)は、少なくとも1つのハロゲン化ホウ素、好ましくはBBr及び/又はBClを前記内部(122a、24a)にパルス状に供給するよう具現され、前記ハロゲン化ホウ素は、原子層エッチングプロセスの表面改質ステップの表面改質反応物として、前記アルミニウム層(7)の表面(7a)を酸化アルミニウム層(8)の成長からインサイチュで動的に保護するのに役立ち、該光学装置(2)は、前記内部(122a、24a)において前記酸化アルミニウム層(8)の表面(8a)でプラズマ(31)を好ましくはパルス状に発生させるプラズマ源(30)を備えることを特徴とする光学装置。
【請求項11】
請求項10に記載の光学装置において、前記プラズマ源(30)は、リモートプラズマ(31)を発生させる、好ましくは誘導結合プラズマ、表面波プラズマ、マイクロ波プラズマ、又はヘリコン波プラズマを発生させるよう具現される光学装置。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の光学装置において、前記ガス入口(123、26)は、前記原子層エッチングプロセスの材料剥離ステップ中に、塩素(Cl)を含有することが好ましい材料剥離反応物を前記内部(122a、24a)に供給するよう具現される光学装置。
【請求項13】
請求項12に記載の光学装置において、該光学装置(1、2)の動作中に、少なくとも前記原子層エッチングプロセスの前記材料剥離ステップ中に、前記光学素子(4;121、220、221)にVUV放射線(11、21)をパルス状に照射するよう具現された光源(10、20)をさらに備えた光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の参照]
本願は、2018年12月7日の独国特許出願第10 2018 221 188.4号の優先権を主張し、当該出願の全開示を参照により本願の内容に援用する。
【0002】
本発明は、VUV波長域用の光学装置の内部に配置された光学素子のVUV放射線反射コーティングのアルミニウム層の表面を、酸化アルミニウム層の成長からインサイチュ(in situ)で保護する方法に関する。本発明は、VUV波長域用の光学装置、特に検査システム又はVUVリソグラフィ装置であって、アルミニウム層を有するVUV放射線反射コーティングを有する少なくとも1つの光学素子が配置される内部と、内部にガスを供給する少なくとも1つのガス入口とを備えた光学装置にも関する。
【背景技術】
【0003】
透過光学素子は、約110nm~約200nmの真空紫外波長域(VUV波長域)の光学用途では非常に限定的にしか用いることができない。したがって、VUV波長域用の、例えば顕微鏡法用又は半導体検査用、例えばマスク検査若しくはウェーハ検査用の光学装置では、主に反射光学ユニットの使用で済ませる必要がある。
【0004】
アルミニウムはVUV波長域で約0.8~0.9以上の高い反射率を有するので、VUV波長域用の光学素子の(高)反射コーティングはアルミニウム層を含むことが多い。アルミニウム層を酸化から保護するために、非特許文献1の論文は、例えば、アルミニウム層に金属フッ化物の形態の、例えばMgF、AlF、又はLiFの形態の保護層又は保護コーティングを施すことを開示している。このような保護層がなければ、大気と接触すると事実上即座に層厚2nm~3nmの自然酸化アルミニウム層(Al層)が形成される(非特許文献2の論文を参照)。酸化アルミニウム層は、VUV波長域の放射線の吸収が大きすぎるので、保護層の使用を伴わないアルミニウム層の使用は概して魅力的ではない。
【0005】
非特許文献3の論文及び非特許文献4の論文は、施された層の密度を高めるためにいわゆる原子層堆積(ALD)を用いて、VUV波長域用のミラーコーティングの層、例えばアルミニウム層又はフッ化物層を施すことを開示している。
【0006】
しかしながら、真空条件下での照射の場合、すなわち周囲環境中の酸素又は水の含量が非常に低い場合でも、下地層としてのアルミニウム層と種々のタイプの従来通りに堆積された保護層とを有するコーティングの場合には、大きな反射損失及び迷光の増加が観察された。
【0007】
概して、酸化物層の方がフッ化物層よりも良好な保護効果を達成する。しかしながら、最大のバンドギャップを有する酸化物でも、必要な(VUV)波長域内ですでに吸収している。電界の極小点に酸化物層を配置することにより酸化物の吸収効果を低減する1つの解決手段が、特許文献1に記載されている。
【0008】
EUV用途については、水素の添加により酸化を防止できる、例えばルテニウムでできた自己洗浄金属層が開示されている。酸素とのアルミニウムの反応エンタルピーは、ルテニウムのものよりも大幅に高いので、水素のみにより酸化アルミニウムをアルミニウムに還元するのは不可能である。しかしながら、アルミニウム層上のルテニウムでできた保護層は、VUV波長域の放射線には高すぎる吸収を引き起こす。水素の使用により、原則として酸化アルミニウム層を少なくとも部分的に除去する、すなわち酸化アルミニウムをアルミニウムに還元することが可能になるが、これは技術的な観点から非常に困難である。
【0009】
特許文献5の論文は、自然Al層をトリメチルアルミニウム(TMA)及び無水フッ化水素(HF)に交互に曝すことにより、原子層エッチング(ALE)で自然Al層を除去することを開示している。この論文は、フッ化物保護層をアルミニウム層に施す前にALEプロセスによりAl層を除去することを提案している。これには、ALDプロセスがALEプロセスと同じ化学作用、すなわちTMA及び無水フッ化水素の交互供給を用いることができることを利用する。優勢な反応(ALE又はALD)は、基板温度に応じて変わり、所望のプロセス(ALE又はALD)を実行させるために変えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許出願公開第102018211499.4号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】"Protected and enhanced aluminum mirrors for the VUV" by S. Wilbrandt et al., Applied Optics, Vol. 53, No. 4, February 2014
【非特許文献2】"On the Vacuum-Ultraviolet Reflectance of Evaporated Aluminum before and during Oxidation", R. P. Madden et al., J. Opt. Soc. Am. 53, 620-625 (1963)
【非特許文献3】"Enabling High Performance Mirrors for Astronomy with ALD", ECS Trans. 50 (13), 141-148 (2013), F. Greer et al.
【非特許文献4】"Atomic Layer Deposition of Lithium Fluoride Optical Coatings for the Ultraviolet”, Inorganics 6, 46 (2018), J. Hennessy et al.
【非特許文献5】"Enhanced atomic layer etching of native aluminum oxide for ultraviolet optical applications", J. Hennessy et al, Journal of Vacuum Science & Technology A 35, 041512 (2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、アルミニウム層をインサイチュで保護する方法及びVUV波長域用の光学装置であって、アルミニウム層の表面及び/又は光学装置のコンポーネントの劣化を最大限に回避することができる、方法及び光学装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、前述のタイプの方法であって、酸化アルミニウム層を1層ずつ(layer-by-layer)除去するために原子層エッチングプロセスを実行することを含み、原子層エッチングプロセスは、表面改質ステップ及び材料剥離ステップを含み、表面改質ステップ中に、少なくとも1つのハロゲン化ホウ素、特にBBr又はBClを表面改質反応物として内部にパルス状に供給し、少なくとも材料剥離ステップ中に、内部において、好ましくはアルミニウム物体層の表面で好ましくはパルス状のプラズマを発生させる方法により達成される。
【0014】
本発明によれば、VUV波長域用の光学装置の動作中の酸化アルミニウム層の成長、すなわち厚さの増加、したがって比較的厚い酸化アルミニウム層の形成を防止するために、光学素子の酸化アルミニウム層をインサイチュで、すなわち光学装置に設置した状態で少なくとも部分的に除去することが提案される。
【0015】
酸化アルミニウム層の1層ずつの除去は、酸化アルミニウム層の吸収により光学素子の反射を大きく低下させすぎないほど十分に薄い残厚まで酸化アルミニウム層が1層ずつアブレーションされることを意味すると理解される。理想的には、アルミニウム層の表面上に残るのは、できる限り薄い、場合によってはわずか1原子層厚又は数原子層厚の酸化アルミニウム層だけである。これにより、原子層エッチングプロセスが、光学素子の光学特性を損なわせるほどその下のアルミニウム層をアブレーションしないことが確実になる。理想的には、原子層エッチングプロセスはアルミニウム層の動的保護を達成し、すなわち、酸化アルミニウム層の特定の厚さにおいて、光学素子の周囲環境中にある酸素の結果としての酸化アルミニウム層の成長と原子層エッチングプロセスによるアブレーションとの間に安定平衡が成り立つ。
【0016】
原子層エッチングプロセスは、自己限定的なプロセスであり、これは原子層堆積(ALD)と同様に表面限定反応に基づき、且つ概して反応物が豊富に存在する場合でもプロセスステップの各サイクル中に1つの原子層又は少数の(原子)層のみがアブレーションされる。自己限定的なALEプロセスを確保するために、通常は指定のプロセスウィンドウ内にALEプロセスのパラメータを保つ必要があり、例えば、論文"Challenges of Tailoring Surface Chemistry and Plasma/Surface Interactions to Advance Atomic Layer Etching" S.U. Engelmann et al, ECS J. Solid State Sci. Technol. 4(6), N5054-N5060 (2015)を参照されたい。
【0017】
原子層エッチングプロセスでは、2つのプロセスステップ(A/B/A/B/…)、3つのプロセスステップ(A/B/C/A/B/C/…)、又はより多くのプロセスステップの交互シーケンス又はサイクルが通常は実行され、2つのプロセスステップの場合、第1ステップが表面改質ステップを表し、時間的に後続の第2ステップがエッチングすなわち材料剥離ステップを表す。2つの又は場合によってはより多くの連続ステップは、時間的に前後して実行され、過剰な反応物又は各反応から得られた反応生成物を内部から除去するために、上記ステップ間で付加的なパージステップが通常は実行される。
【0018】
表面改質ステップにおいて、反射光学素子、より厳密には少なくとも酸化アルミニウム層の表面が表面改質反応物に曝され、これは化学前駆物質とも称し、酸化アルミニウム層の表面に通常は吸着して表面を変化させる。例として、変化は化学吸着により、すなわち酸化アルミニウム層における化学結合の切断により起こり得る。
【0019】
第1ステップ、すなわち表面改質ステップの後に、過剰な前駆物質又は表面改質反応物は、具体的には概して押し出し又は洗い流しにより、光学素子が配置されている内部から除去される。第2の材料剥離ステップにおいて、酸化アルミニウム層又はその表面は、酸化アルミニウム層の化学的に弱い最上層(単数又は複数)を剥離する高エネルギー種(フリーラジカル、イオン、光子)に通常は曝される。このように、剥離された反応生成物つまり廃棄物は内部に到達する。これらの廃棄物も同様に、通常は吸引による取り出し又はチャンバのパージにより第2ステップの完了後に内部から除去される。
【0020】
ここに記載した原子層エッチングプロセスでは、少なくとも1つの(ガス状)ハロゲン化ホウ素、好ましくはBBr及び/又はBClが表面改質反応物として内部に供給される。本発明者らは、HF又はフッ素含有プラズマを用いた酸化アルミニウム層の上記除去が、労働安全上のリスク及び技術上のリスクの両方に結び付くことに気付いた。特に、揮発性フッ化物反応生成物がこのようなALEプロセスの範囲内で形成され得るが、上記反応生成物は、内部に位置付けられたコンポーネント、例えばさらなる光学素子に堆積する、つまりコンポーネントを攻撃し、場合によってはその劣化につながる。ALEプロセスにHFを用いる代わりに、フッ素化合物よりも扱いやすいことから、概してBFではなくガス状の三ハロゲン化ホウ素、通常はBBr又はBClの使用が提案される。三ハロゲン化物及び場合によっては塩化物を含有するガスプラズマを用いた、酸化アルミニウム層及びその下に配置されたアルミニウム層のエッチングは、半導体技術から既知であり、例えば全体が参照により本願の内容に含まれる米国特許第4,030,967号を参照されたい。
【0021】
材料剥離ステップにおいて、通常は材料剥離反応物との反応を誘発するエネルギーがある。酸化アルミニウム層の最上層での反応に必要なエネルギーを供給する選択肢は数多くある。例として、表面の温度を上昇させるために、エネルギーは熱の形態で供給され得る。
【0022】
本方法では、少なくとも材料剥離ステップ中に、好ましくはパルス状のプラズマを内部で、好ましくは酸化アルミニウム層の表面で発生させる。表面での材料剥離反応を増進つまり促進するために、プラズマにより材料剥離反応物を励起エネルギー状態にすることができ、且つ/又は材料剥離反応物のラジカルを形成することができる。
【0023】
原則として、プラズマを発生させる選択肢は数多くある。半導体産業で通常用いられるプラズマを励起つまり発生させるプラズマ源は、例えば論文"Plasma generation and plasma sources", H. Conrads and M. Schmidt, Plasma Sources Sci. Technol. 9, 441-454 (2000)に記載のように、例えば容量結合プラズマによる電界の使用に基づくものである。2つの電極間で発生させた高周波プラズマを用いるALEプロセスを記載した米国特許出願公開第2011/0139748号も参照されたい。電界を用いたプラズマの発生は、平面基板(ウェーハ)に最適化される。しかしながら、電極は光学装置内で邪魔になってはならない。特に、電極は光学装置のビーム経路に突出してはならない。
【0024】
一発展形態において、プラズマはリモートプラズマとして発生する。本願の意味の範囲内で、リモートプラズマは、電極を用いずに(無電極で)発生させたプラズマであると理解される。概して、リモートプラズマを発生させるプラズマ源は、伝播波を発生させるよう具現される。例えば、論文"Propagating Wave Characteristics for Plasma Production in Plasma Processing Field", S. Shinohara, Japanese Journal of Applied Physics, 36, 4695-4703 (1997)を参照されたい。伝播波は、各プラズマガスのプラズマ励起に役立つ。例として、アンテナ、マイクロ波スタータ等を用いて伝播波を発生させることができる。
【0025】
一発展形態において、リモートプラズマは、誘導結合(高周波)プラズマ、高周波又はマイクロ波表面波プラズマ、電子サイクロトロン共鳴マイクロ波プラズマ、及びヘリコン波プラズマを含む群から選択される。例として、誘導結合プラズマは、高周波(RF)発生器により励起されたコイルを用いて発生させることができる。表面波つまり表面波プラズマは、RF又はマイクロ波波長域で励起されるアンテナ又はいわゆるランチャ(launchers)を用いて発生させることができる。電子サイクロトロン共鳴マイクロ波プラズマ又はいわゆるヘリコン波は、適当なアンテナ構成を用いて発生させることができ、プラズマの励起つまり発生に用いることができる。伝播電磁波の発生によるプラズマ源を用いたプラズマ発生の詳細に関しては、全体が参照により本願の内容に含まれる上記で引用したS. Shinoharaによる論文を参照されたい。プラズマ源を用いてプラズマを発生させるさらなる例は、論文"Plasma and Ion Sources in Large Area Coatings: A Review", Andre Anders, Surface and Coatings Technology (2005), volume 200, pages 1893-1906に記載されており、その全体も同様に参照により本願の内容に含まれる。
【0026】
さらに別の変形形態において、表面改質ステップ及び/又は材料剥離ステップは、光学装置の動作停止中に実行される。特に、原子層エッチングプロセス全体が、光学装置の動作停止中つまり複数回の動作停止中に実行され得る。このように、光学装置の動作中に存在するVUV放射線と原子層エッチングプロセスの反応物との間の面倒な相互作用を回避することが可能である。例として、光学装置を用いて検査される物体(例えば、マスク又はウェーハ)又は光学装置を用いて露光される物体(例えば、ウェーハ)を、動作停止中に移送又は交換することができる。
【0027】
代替的な変形形態において、光学素子にVUV放射線を照射している間に少なくとも材料剥離ステップが実行される。この場合、光学装置内にいずれの場合も存在するVUV放射線自体が、光アシストつまり光化学原子層エッチングに用いられ得る。放射線つまり光の供給に基づく、材料剥離ステップを実行するために表面へのエネルギー流入を発生させる例が、論文"Photochemical atomic layer deposition and etching" by P.R. Chalker, Surface and Coatings Technology 291, 258-263 (2016)に記載されている。論文"Microstructuring of Si(100) by light induced dry etching in the VUV" by U. Streller et al., Superlattices and Microstructures 23 (2) 445-451 (1998)も参照されたい。エネルギー流入の発生に用いられる放射線のパワー及びスペクトル特性は、この場合は用途により指定される。したがって、エッチングレートは、パルス状に供給される反応物の周波数により決まる。
【0028】
一発展形態において、材料剥離ステップ中に、塩素を含有することが好ましい少なくとも1つの材料剥離反応物が内部にパルス状に供給される。反応物は、塩素ガスであってもよく、表面改質ステップと同じくBBr及び/又はBClであってもよく、又は上記の混合物等であってもよい。しかしながら、フッ化物反応物、例えばHFの場合のように、内部に存在するコンポーネントつまり構造要素(例えば、壁、ホルダ等)を汚染する反応物、又は内部の金属コンポーネントを攻撃する反応物は、材料剥離ステップでも用いるべきではない。各表面改質又は材料剥離反応物を含む混合ガスの化学組成はさらに、不揮発性反応生成物の形成を抑制又は少なくとも縮小するべきである。フッ化物反応生成物は、不揮発性であることが多い。これは特にAlFに当てはまり、表面改質反応物としてBFの使用が不利なのはこれが理由である。材料剥離又は表面改質反応物に加えて、表面改質ステップ又は材料剥離ステップにおいて内部に供給された混合ガスは、例えば水素又は1つ又は複数の希ガスを含有し得る。
【0029】
さらに別の変形形態において、原子層エッチングプロセスは、原子層エッチングプロセスにより酸化アルミニウム層の厚さが5nm未満に達するか又は酸化アルミニウム層の厚さが5nm未満に保たれるまで実行される。既に上述したように、原子層エッチングプロセスは、光学装置の動作停止中に実行され得る。事前に実行された測定を用いて、酸化アルミニウム層が各動作停止中に事実上完全にアブレーションされるように原子層エッチングプロセスのエッチングレートが選択つまり設定され得るので、非常に薄い酸化アルミニウム層しかアルミニウム層上に残らない。原子層エッチングプロセスが光学装置の動作中に少なくとも部分的に実行される場合、酸化アルミニウム層の厚さが上記値を超えない動的平衡が成り立つようにエッチングレートを同じく設定する、つまり成長速度に一致させることができる。アルミニウム層の成長速度は、内部のガス組成に応じて変わり、酸化アルミニウム層の成長速度とエッチングレートとの間の動的平衡を適切に設定するために同様に事前に測定することができる。
【0030】
さらに別の変形形態において、酸化アルミニウム層の厚さに応じて変わる光学素子の少なくとも1つの特性、特に光学素子の反射率が監視され、少なくとも1つの監視された特性に基づいて原子層エッチングプロセスが開始又は制御される。例として、原子層エッチングプロセスは、光学素子の反射率が、光学装置の有効性を低下させないように酸化アルミニウム層の厚さを減らす必要があるような指定値未満に低下すると、開始することができる。層厚は、ミラーをイオンでのエッチングから保護するために動的保護層をミラーに施す欧州特許第1 522 895号に記載の方法と類似のつまり同様の方法で制御することができる。上記特許では、ミラーの反射率が監視され、監視された反射率に基づいて保護層の厚さが制御される。用途のタイプに応じて、原子層エッチングプロセスは、所定の時間間隔で光学素子を監視することなく実行することができる。しかしながら、この場合、原子層エッチングプロセスによりアブレーションされるのが酸化アルミニウム層だけであり、その下にあるアルミニウム層ではないことを確実にする必要もある。
【0031】
本発明のさらに別の態様は、上記タイプの光学装置であって、ガス入口が少なくとも1つのハロゲン化ホウ素、好ましくはBBr及び/又はBClを内部にパルス状に供給するよう具現され、上記ハロゲン化ホウ素は、原子層エッチングプロセスの表面改質ステップの表面改質反応物として、アルミニウム層の表面を酸化アルミニウム層の成長からインサイチュで動的に保護するのに役立つ光学装置に関し、当該光学装置は、内部で、特に酸化アルミニウム層の表面でプラズマを好ましくはパルス状に発生させるプラズマ源を備える。内部へのハロゲン化ホウ素の供給のために、ガス入口は、ハロゲン化ホウ素を貯留するよう働くガスリザーバを通常は有する。既に上述したように、フッ化物反応物を用いた場合に起こるような内部のコンポーネントの損傷は、ハロゲン化ホウ素を表面改質ステップの実行に用いる場合に回避することができる。原子層エッチングプロセスの実行により、酸化アルミニウム層の均一な1層ずつのアブレーションが促進される。ガス入口は、ハロゲン化ホウ素をパルス状に供給するための弁を通常は有する制御可能な入口である。
【0032】
ガス入口又は場合によっては複数のガス入口は、表面改質反応物、材料剥離反応物、又はパージガスを内部に交互に供給するよう具現され得る。この目的で、ガス入口又は光学装置は、原子層エッチングプロセスを内部で実行させるために反応物又はパージガスの供給を適切に制御する制御デバイスを備える。特に、原子層エッチングプロセスのエッチングレートを設定つまり必要に応じて調整するために、各反応物のレートつまり質量流量及び/又はパルスレートを設定することが可能であり得る。
【0033】
一実施形態において、光学装置は、内部で、好ましくは酸化アルミニウム層の表面でプラズマを好ましくはパルス状に発生させるプラズマ源を備える。方法と共に既に上述したように、プラズマは、材料剥離ステップ中にパルス状に発生させられることが好ましく、その際に、塩素を含有することが好ましい少なくとも1つの材料剥離反応物が内部にパルス状に供給される。光学装置は、材料剥離反応物がプラズマ状態に変換されるようにプラズマ源及びガス入口を同期制御するために、例えば制御コンピュータの形態の制御デバイスを備えることができる。
【0034】
好ましくは、プラズマ源は、リモートプラズマを発生させる、特に誘導結合プラズマ、表面波プラズマ、マイクロ波プラズマ、又はヘリコン波プラズマを発生させるよう具現される。既に上述したように、(リモート)プラズマの無電極発生が本願では有利であることが分かった。
【0035】
一発展形態において、ガス入口は、原子層エッチングプロセスの少なくとも材料剥離ステップ中に、塩素を含有することが好ましい材料剥離反応物を内部に供給するよう具現される。既に上述したように、材料剥離反応物は、塩素ガス、ハロゲン化ホウ素、特にBBr及び/又はBCl、又は表面改質ステップ中に改質された酸化アルミニウム層の層(単数又は複数)をアブレーションするのに適した任意の他の反応物であり得る。
【0036】
この実施形態の一発展形態において、光学装置は、光学装置の動作中に、少なくとも原子層エッチングプロセスの材料剥離ステップ中に、光学素子にVUV放射線をパルス状に照射するよう具現された光源を備える。この場合、光化学原子層エッチングプロセスを実行することが可能であり、光が材料剥離反応物を励起するよう働いて、エネルギー流入を発生させるための上述のプラズマ源を省くことが可能となる。ここに記載する実施形態では、原子エッチングプロセスは、酸化アルミニウム層の厚さが永久に所望の厚さ範囲内又は指定の厚さ若しくは厚さ閾値未満であるように、光学装置の動作中に、正確には概して連続的に実行される。しかしながら、このような連続的なクリーニング、つまり原子層エッチングプロセスによるこのような連続的なエッチングは、エネルギー流入を発生させるプラズマ源を利用する場合にも可能である。代替として、ガス入口は、光学装置の動作停止中にのみ内部に各反応物を供給するように制御することができる。
【0037】
本発明のさらなる特徴及び利点は、本発明に必須の詳細を示す図面の図を参照した以下の本発明の例示的な実施形態の説明から及び特許請求の範囲から明らかである。個々の特徴のそれぞれを、単独で又は本発明の一変形形態において複数の任意の組み合わせで実施することができる。
【0038】
例示的な実施形態を概略図に示し、以下で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】VUVリソグラフィ装置の形態の、VUV波長域用の光学装置の概略図を示す。
図2】ウェーハ検査システムの形態の光学装置の概略図を示す。
図3a】プラズマ源と、アルミニウム層及びアルミニウム層上に成長した酸化アルミニウム層を含む反射コーティングを有する光学素子との概略図を示す。
図3b】プラズマ源と、アルミニウム層及びアルミニウム層上に成長した酸化アルミニウム層を含む反射コーティングを有する光学素子との概略図を示す。
図4a】酸化アルミニウム層の原子層を除去する原子エッチングプロセスの4つのステップの1つを示す概略図である。
図4b】酸化アルミニウム層の原子層を除去する原子エッチングプロセスの4つのステップの1つを示す概略図である。
図4c】酸化アルミニウム層の原子層を除去する原子エッチングプロセスの4つのステップの1つを示す概略図である。
図4d】酸化アルミニウム層の原子層を除去する原子エッチングプロセスの4つのステップの1つを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図面の以下の説明において、同一又は機能的に同一の構成部品には同一の参照符号を用いる。
【0041】
図1は、特に約110nm~約200nmのVUV波長域の波長用のVUVリソグラフィ装置の形態の光学装置1を概略的に示す。VUVリソグラフィ装置1は、必須コンポーネントとして、照明系12及び投影系14の形態の2つの光学系を備える。露光プロセスを実行するために、VUVリソグラフィ装置1は、放射源10を備え、これは、例えば193nm、157nm、又は126nmのVUV波長域の波長のVUV放射線11を発するエキシマレーザとすることができ、VUVリソグラフィ装置1の一体構成部品であり得る。
【0042】
放射源10が発したVUV放射線11は、照明系12を用いて、レチクルとも称するマスク13を照明できるように調整される。図1に示す例では、照明系12は、透過光学素子及び反射光学素子の両方を含む。代表的に、図1は、例えば、VUV放射線11を集束させる透過光学素子120と、VUV放射線11を偏向させる反射光学素子121とを示す。既知のように、照明系12において、さまざまな透過光学素子、反射光学素子、又は他の光学素子を任意の方法で、より複雑な方法でも相互に組み合わせることができる。透過光学素子120及び反射光学素子121は、照明系12のハウジング122の内部122aに配置される。
【0043】
マスク13は、投影系14を用いて、露光される光学素子15、例えば半導体コンポーネントの製造の状況ではウェーハに転写される構造を表面に有する。図示の例では、マスク13は、透過光学素子として具現される。マスク13は、代替的な実施形態において反射光学素子として具現することもできる。投影系14は、図示の例では少なくとも1つの透過光学素子を含む。図示の例では、2つの透過光学素子140、141が代表的に示されており、これらは、例えばマスク13上の構造をウェーハ15の露光に望まれるサイズに縮小する働きをする。投影系14にも、特に反射光学素子を設けることができ、任意の光学素子を任意の既知の方法で相互に組み合わせることができる。透過光学素子のない光学装置をVUVリソグラフィに用いることもできることも指摘しておく。
【0044】
図2は、ウェーハ検査システム2の形態の光学装置の例示的な実施形態を概略的に示す。以下で行う説明は、マスク検査用の検査システムにも同様に当てはまる。
【0045】
ウェーハ検査システム2は、放射源20を含み、そのVUV放射線21は光学系22によりウェーハ25へ指向される。この目的で、放射線21は、凹面ミラー220からウェーハ25へ反射される。マスク検査システム2の場合、ウェーハ25の代わりに検査対象のマスクを配置してもよい。ウェーハ25で反射、回折、及び/又は屈折した放射線は、同じく光学系22に関連するさらに別の凹面ミラー221により、さらなる評価用の検出器23へ指向される。ウェーハ検査システム2の光学系22は、ハウジング24を備え、その内部24aに2つの光学素子又はミラー220、221が配置される。
【0046】
例として、放射源20は、実質的に連続した放射スペクトルを提供するために1つの放射源のみ又は複数の個別の放射源の組み合わせであり得る。変更形態において、1つ又は複数の狭帯域放射源20を用いることもできる。好ましくは、放射源20が発生する放射線21の波長又は波長帯は、100nm~200nmの範囲、特に好ましくは110nm~190nmのVUV波長域にある。
【0047】
図3は、VUV波長域の放射線11、21を反射するよう具現され、図1又は図2の反射光学素子121、220、221のうちの1つを例えば形成し得る、光学素子4を示す。図3に示す光学素子4は、基板5を有するミラーであり、基板5は、図示の例では石英(ガラス)、特にチタンドープ石英ガラス、セラミック、又はガラスセラミックであり得る。反射コーティング6が基板5に施されており、上記反射コーティングは、金属ミラー層として働く連続アルミニウム層7を有する。
【0048】
図3に示す例に示すように、アルミニウム層7は、基板5に直接施すことができる。代替として、接着促進層の形態の機能層をアルミニウム層7と基板5との間に施すことができる。接着促進層の材料は、多数の材料から選択することができるが、基板5及びアルミニウム層7の両方に十分な接着があるように注意すべきである。他の機能層、例えば平滑化層及び/又は研磨層を、アルミニウム層7と基板5との間に設けてもよい。
【0049】
図3に示す例では、(自然)酸化アルミニウム層(Al層)8が、基板5とは反対側のアルミニウム層7の表面7aに成長している。アルミニウムとは異なり、酸化アルミニウムはVUV波長域での吸収が大きいので、酸化アルミニウム層8の厚さDをできる限り薄くすべきである。理想的には、アルミニウム層7の表面7aには、酸化アルミニウムがあるべきではなく、すなわち、理想的な場合には酸化アルミニウム層8が存在しない。酸化種、概して酸素含有種の存在は、光学素子121、220、221が配置される各内部122a、24aで完全に回避できないので、比較的厚い酸化アルミニウム層8がアルミニウム層7の表面7aに比較的短期間で成長する。
【0050】
原則として、(自然)酸化アルミニウム層8は、例えば完全に又は部分的にアブレーションされるので、その過程でアルミニウム層7の表面7aを変えることなくアルミニウム層7の表面7aからできる限り完全に除去されるべきである。いわゆる原子層エッチングプロセスを実行して、酸化アルミニウム層8が除去されるが、上記原子層エッチングプロセスは、酸化アルミニウム層8をインサイチュで、すなわち各反射光学素子121、220、221の設置状態で1層ずつアブレーションすることを可能にする。理想的には、この場合は原子層が連続してアブレーションされる。すなわち、酸化アルミニウム層8の均一なアブレーションを促す等方性エッチングが実行される。原子層堆積と同様に、原子層エッチングプロセスは周期的で自己限定的なプロセスであり、これを図4a~図4dに基づいて以下でより詳細に説明する。図4a~図4dは、上下に配置された酸化アルミニウム層8の複数の原子層を示し、酸化アルミニウム層8の個々の構成成分を塗り潰した(黒)丸で表す。
【0051】
図4aに示し表面改質ステップとも称する第1ステップにおいて、塗り潰されていない丸の形態で図4aに示す表面改質反応物が、酸化アルミニウム層8に、より厳密にはその表面8aに供給される。図1のVUVリソグラフィ装置1では、表面改質反応物は、三ハロゲン化ホウ素の形態で、より厳密にはBClの形態で、照明系12のハウジング122つまりチャンバの内部122aにパルス状に供給される。VUVリソグラフィ装置1は、ハウジング122の内部122aにBClを供給するためのガス入口123を備える。図1に非常に概略的に示すガス入口123は、内部122aへのガスの制御可能なパルス供給を容易にし、この目的で制御可能な弁124を含む。同様に、図2に示すウェーハ検査システム2もガス入口26を備え、これにより、図示の例ではBBrの形態の三ハロゲン化ホウ素を図1と同様の方法で光学系22の内部24aに供給することが可能である。図2に示すガス入口26も同じく、内部24aへの種々のガスのパルス供給を容易にするために制御可能な弁27を含む。
【0052】
図4aに示す表面改質ステップにおいて、概してBFではないハロゲン化ホウ素の形態の表面改質反応物が、酸化アルミニウム層8の表面8aに吸着し、正確には、図4bで識別できるように、これは通常は表面改質反応物の1つの原子層Lのみである。フッ素は、各内部122a、24aの他のコンポーネントを損傷させ得る反応生成物につながるので、反応物として塩素又は臭素を含有するハロゲン化ホウ素の使用は、フッ素の使用よりも有利であることが分かった。
【0053】
図4bは、表面改質ステップ後且つ表面改質ステップに続くパージステップ後の酸化アルミニウム層8を示し、パージステップでは、表面8aに堆積していない表面改質反応物の過剰な成分が、例えば窒素の形態の不活性パージガスを用いて内部122a、24aから除去される。吸引によりパージガスを除去するために、ハウジング122、24は、図示しないポンプ又はガス出口に接続される。
【0054】
ハロゲン化ホウ素BBr、BClの吸着及びそれに続くパージステップ後に、表面剥離ステップにおいて、図示の例では塩素ガス(Cl)である材料剥離反応物が内部122a、24aにパルス状に供給される。Clの代替として又はClに加えて、さらに他の反応物、例えば水素、又はHe、Ne、Kr、Ar、Xeのような希ガスの1つ又は複数を、内部122a、24aに供給することもできる。図4cでR付きの丸で表す材料剥離反応物も同様に吸着し、表面8a及びその下にある酸化アルミニウム層8の上層に吸着したハロゲン化ホウ素と化学反応を起こし、当該化学反応により、酸化アルミニウム層8の最上原子層Lが剥離される。
【0055】
図4dは、さらに別のパージステップ後の酸化アルミニウム層8を示し、このパージステップでは、材料剥離ステップ中に形成された反応生成物及び場合によっては過剰な材料剥離反応物が、内部122a、24aから除去される。図4dで識別できるように、上述の原子層エッチングプロセスの4つのステップにおいて、酸化アルミニウム層8の1つの原子層Lのみが除去つまりアブレーションされた。
【0056】
表面改質ステップにおいて表面改質反応物としてハロゲン化ホウ素を供給し、材料剥離ステップにおいて材料アブレーション反応物として例えば塩素を供給し、且つパージガスを供給するために、各ガス入口123、126はそれぞれガスリザーバ(図示せず)を有する。各ガスリザーバは、各指示フィードラインを介して制御可能な弁124、27に接続される。表面改質反応物、材料剥離反応物、又はパージガスを内部122a、24aに交互に供給するために、例えばデータ処理装置又はコンピュータの形態の制御デバイス9が、各弁124、27を制御する働きをする。
【0057】
図4cに示す材料剥離ステップにおいて化学反応を起こすために、通常は材料剥離反応物を表面8aと接触させるだけでは十分ではない。概して、その代わりに活性化エネルギーを克服する必要があり、すなわちこれはエネルギーで誘発される反応である。反応に必要なエネルギーを導入つまり供給する選択肢は数多くある。
【0058】
例として、エネルギーは、例えば図3a、図3bに示すように、プラズマ源30を用いて内部122a、24aで、より正確には酸化アルミニウム層8の表面8aで生成したパルスプラズマ31を用いて供給することができる。プラズマ31は、内部122a、24aへの材料剥離反応物の供給と同期して生成されることが好ましく、同期は制御デバイス8を用いて実施される。
【0059】
図3aに示す例では、プラズマ源30はリモートプラズマを生成するよう具現され、すなわちプラズマ源30は無電極プラズマ生成用に具現される。図3aに示すように、プラズマ源30は、誘導結合プラズマ31を発生させる働きをし、この目的で、インピーダンス整合デバイス34(「整合器」)が間に配置された高周波(RF)発生器32及びコイル33を含む。例として、RF発生器32は、例えば約13.56MHz又は27.12MHzの周波数を発生させることができる。RF発生器は、コイル33を用いて誘導結合プラズマ31を生成するために、例えば40.68MHz、60MHz、81.36MHz、又は100MHzのVHF波を生成するよう具現することもできる。
【0060】
図3bは、マイクロ波表面波プラズマ31の形態のリモートプラズマを生成するよう具現されるプラズマ源30を示す。プラズマ源30は、シリンドリカル光学素子4をリング状に囲む中空導波路35を励起するために、マイクロ波発生器32及び上記インピーダンス整合デバイス34を含む。図3bに一部のみを図示するリング状の導波路35では、複数の方位角方向に分配されたスロット36が光学素子4に面する内側に施される。スロット36を有する導波路35は、表面波プラズマ31を生成するアンテナとして働く。
【0061】
原理上、プラズマ源30は、誘導結合プラズマ、表面波プラズマ、(電子サイクロトロン共鳴)マイクロ波プラズマ、ヘリコン波プラズマ等を生成するために異なる実施形態を有することもできる。このようなプラズマ源30の構成に関する詳細に関しては、先に引用したS. Shinohara及びAndre Andersによる論文を参照されたい。
【0062】
VUV放射線11、21が各反応物と相互作用するのを防止するために、各光学装置1、2の動作停止中に上記原子層エッチングプロセス、特に表面改質ステップ又は材料剥離ステップを実行することが有利である。例として、図1に示すVUVリソグラフィ装置1の場合、このような動作停止中にマスク13を移送又は交換することができる。これに対応して、図2に示すウェーハ検査システム2の場合、ウェーハ25を移送又は交換することができる。必要な場合、パルス状に動作する各VUV光源10、20のパルス停止中に、原子層エッチングプロセスつまり原子層エッチングプロセスの各ステップを実施して、可能であれば反応物とのVUV放射線11、21の相互作用を回避することもできる。
【0063】
制御デバイス9は、酸化アルミニウム層8の厚さDが約5nm未満に達するまで各動作停止中に原子層エッチングプロセスを実行するよう具現される。この目的で、制御デバイス9は、原子層エッチングプロセスの所定のサイクル数を実行することができ、その数は、例えば事前に実行された実験を用いて決定されたものである。場合によっては、光学系22の第2反射光学素子221について図2に例示的に示すように、酸化アルミニウム層8の厚さDに応じて変わる反射光学素子4、121、220、221の少なくとも1つの特性、例えば反射率Rを監視することができる。
【0064】
図2で識別できるように、光学素子221の反射率Rを判定又は監視するために、測定放射源222を用いてVUV波長域の測定放射線が光学素子221に放射され、光学素子221で反射した測定放射線の強度が検出器223により検出される。光学測定の代替として、酸化アルミニウム層8の厚さDに応じて変わる光学素子4、121、220、22の他の特性を監視することも可能である。例として、同様に酸化アルミニウム層8の厚さDに応じて変わるアルミニウム層7の表面7aつまり光学素子4、121、220、221の導電率を監視することが可能である。
【0065】
各光学装置1、2の動作停止中に原子層エッチングプロセスを実行する代替として、光学装置1、2の動作中に、すなわち光学素子4、121、220、221に各光源10、20からのVUV放射線11、21が照射されている間に、原子層エッチングプロセス、特に材料剥離ステップを実行することが可能である。材料剥離ステップにおける化学反応に必要なエネルギーは、この場合はVUV放射線11、21により供給されるので、概してプラズマ源30を設ける必要をなくすことが可能である。
【0066】
この場合、原子層エッチングプロセスは、制御デバイス9を用いて開ループ制御、場合によっては閉ループ制御を行うことができ、この制御の際には、原子層エッチングプロセスによる酸化アルミニウム層8のアブレーションと内部112a、24aつまり光学素子4、121、220、221の周囲環境に存在する酸化種の結果としての酸化アルミニウム層8の成長との間で動的平衡が成り立つ。このように、光学装置1、2の動作中に酸化アルミニウム層8の厚さDが5nm未満に保たれ続ける動的平衡状態を達成することが可能である。材料剥離ステップにおいて供給されるエネルギーは、用途により又は各光学装置1、2により決定されるVUV放射線11、21のスペクトル特性及びパワーにより指定されるので、制御デバイス9は、所望のエッチングレートを設定するために、各ガス入口123、26を介して供給される供給量、より厳密には質量流量又は体積流量、及び/又は供給反応物又はパージガスのパルスレートを適切に設定することができる。
【0067】
場合によっては、制御デバイス9は、この場合は原子層エッチングプロセスの開ループ/閉ループ制御のために、各光学素子4、121、220、221の上記監視された特性に頼ることもできる。代替として、酸化アルミニウム層8の厚さDが5nmという値を超えず且つ酸化アルミニウム層8の少なくとも1つの原子層がアルミニウム層7の表面7aに残るように、事前に実行された実験に基づいて原子層エッチングプロセス又はエッチングレートを制御することが可能である。上記の場合全てにおいて、各反射光学素子4、121、220、221の光学特性の劣化を回避するために、原子層エッチングプロセス中にアルミニウム層7の表面7aがエッチングされないよう注意しなければならない。
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図4d
【国際調査報告】