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特表2022-516353アミノ酸エステルの有機硫酸塩を調製する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-25
(54)【発明の名称】アミノ酸エステルの有機硫酸塩を調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 303/24 20060101AFI20220217BHJP
   C07C 229/08 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
C07C303/24
C07C229/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021539420
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(85)【翻訳文提出日】2021-08-23
(86)【国際出願番号】 EP2019085995
(87)【国際公開番号】W WO2020144030
(87)【国際公開日】2020-07-16
(31)【優先権主張番号】19150654.2
(32)【優先日】2019-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エーベルト,ソフィア
(72)【発明者】
【氏名】ボエック,ディーター
(72)【発明者】
【氏名】マルチェフスキ,ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】シアラ,ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】ロックネイン,ブライアン ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】フルスケッター,フランク
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB70
4H006AC48
4H006BA66
4H006BB31
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC31
4H006BT12
4H006BU32
(57)【要約】
本発明は、アミノ酸エステルの有機硫酸塩を合成する方法であって、ラクタム環中に少なくとも3個の炭素原子を有する少なくとも1種のラクタムを、水溶液中で硫酸と反応させるステップ;続いて先述のステップの反応生成物を、少なくとも200mol-%の、1個のヒドロキシ基を含有する直鎖状アルキルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有する分岐状アルキルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有する直鎖状アルキルエーテルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有する分岐状アルキルエーテルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有するフェノキシアルカノール及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアルコールでエステル化するステップ;続いて、任意選択で、水を除去するステップ、及び/又は過剰なアルコールを除去するステップを含む、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸エステルの有機硫酸塩を合成する方法であって、
(i)ラクタム環中に少なくとも3個の炭素原子を有する少なくとも1種のラクタムを、水溶液中で硫酸と反応させるステップ、
(ii)ステップ(i)の反応生成物を、少なくとも200mol-%の、1個のヒドロキシ基を含有する直鎖状アルキルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有する分岐状アルキルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有する直鎖状アルキルエーテルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有する分岐状アルキルエーテルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有するフェノキシアルカノール及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアルコールでエステル化するステップ、並びに
(iii)任意選択で、水を除去するステップ、及び/又はステップ(ii)の過剰なアルコールを除去するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
ステップ(i)及び(ii)が、単一のステップで実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
硫酸とラクタムとのモル比が、90から200mol-%の範囲である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
1個のヒドロキシ基を含有するアルコールと少なくとも3個の炭素原子を有するラクタムとのモル比が、200mol-%から400mol-%の範囲である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
1個のヒドロキシ基を含有するアルコールと硫酸とのモル比が、200mol-%から400mol-%の範囲である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
組み合わせたステップ(i)及び(ii)が、硫酸、少なくとも1種のラクタム及び少なくとも1種のアルコールの混合物を、80から200℃の温度にて1から30h反応させるステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
組み合わせたステップ(i)及び(ii)が、硫酸、少なくとも1種のラクタム及び少なくとも1種のアルコールの混合物を反応させるステップを含み、該ステップが、密閉容器中において、1.0から10.0barの圧力下で実行される、請求項2又は6に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(i)で使用されるラクタムが、ε-ラクタムである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ酸エステルの有機硫酸塩を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機硫酸塩、例えばアルキル硫酸塩及びアルキルエーテル硫酸塩は、洗剤又は湿潤剤として使用される水溶性塩であることが公知である。
【0003】
3個以上の炭素原子を有するアミノ酸からのアミノ酸エステルは、対応するラクタムから合成できる。この合成は、第1のステップとして、酸の存在下での、アミノ酸を得るためのラクタムの開環、及び第2のステップとして、アルコールでのエステル化反応を含む。
【0004】
FR2977585B1は、水の存在下での酸性触媒、例えば硫酸の存在下で、アミノ酸又はその塩から開始して、C7-からC36-アルコールのα-アミノ酸エステルをアミノ酸又はその塩から合成する方法を開示している。
【0005】
WO2015172158は、エタンスルホン酸アルファ及び高級アミノ酸エステルの塩を開示している。
【0006】
WO2011002746は、硫酸を用いたアミノ酸エステルの調製を開示している。
【0007】
TRIVEDI、T. J.らChemSusChem 2011年、第4号、604~608頁は、アルファ-C3~C4-アミノ酸エステル及びラウリルスルフェートから塩への合成経路について記載しており、これは、塩酸塩としてのアミノ酸エステルの形成を含み、続いてラウリル硫酸ナトリウムを用いたイオン交換を伴う。
【0008】
SU1276661は、プロトン化アミノ酸エステル及びアニオン性アルキルスルフェートからの塩を開示している。これらは、ジオキサン中の2molのヘキサデカノール及び過剰な硫酸を用いて、アミノ酸から得られる。
【0009】
JP49076822及びJP51036735は、硫酸の存在下で、1モルのアミノ酸を、少なくとも3モルのラウリルアルコールと加熱することにより、アルキルスルフェートを用いてアミノ酸エステル塩を調製する方法を開示している。合成は、溶媒としてのトルエン中で実行される。
【0010】
アミノ酸を出発材料として適用する、現在利用可能なアミノ酸エステルの有機硫酸塩を合成する方法は、有機溶媒中で実行され、アミノ酸エステルの合成後に、エステル化反応に存在するアニオンを有機スルフェートで置き換えるアニオン交換を伴うことが多い。
【0011】
有機溶媒を取扱わず且つ気体腐食性酸を取扱わずに、速い反応時間で高収率でアミノ酸エステルの有機硫酸塩を調製する、改善された方法の必要性が継続してある。反応時間を短縮し且つ合成の複雑さを抑えて、1回の反応で高収率で有機スルフェート及びアミノ酸エステルを調製する方法も必要性がある。アミノ酸及びアミノ酸前駆体、例えばラクタムと、水溶解度が低く、ひいては水中で分散しかできないアルコールを定量的に反応させて、アミノ酸エステルの有機硫酸塩を得る方法も必要性がある。
【0012】
ファブリック及びホームケア用途、例えば硬質表面クリーニングのために改善された洗剤配合物に組み込むための、洗剤配合物において活性なアミノ酸エステルと、有機スルフェート洗剤を組み合わせたアミノ酸エステル塩の必要性が継続してある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、上の特定されている目的及び必要性に適合する方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、本明細書で以下に記載され且つ特許請求の範囲に反映されている、本発明により達成された。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書及び後続する特許請求の範囲を通じて、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む(comprise)」及び変形、例えば「含む(comprises)」及び「含むこと(comprising)」という語句は、定められた整数若しくはステップ、又は整数若しくはステップの群を含むが、他のいかなる整数若しくはステップ、又は整数若しくはステップの群も排除しないことを示唆するように理解される。「含むこと」という用語は、本明細書で使用される場合、「含有すること(containing)」若しくは「含むこと(including)」という用語で置換され得、又は、本明細書で使用される場合、時に「有すること(having)」という用語で置換され得る。
【0016】
「からなる(consisting of)」は、本明細書で使用される場合、特許請求の範囲の要素で特定されていないある要素、ステップ又は原料を排除する。「から本質的になる(consisting essentially of)」は、本明細書で使用される場合、特許請求の範囲の基本的及び新規な特性に著しい影響を与えない材料又はステップを排除しない。
【0017】
本明細書の各例では、「含むこと」、「から本質的になる」及び「からなる」という用語のいずれかは、他の2つの用語のいずれかで置き換えられ得る。
【0018】
一般的に、本明細書で使用されている「により取得可能な(obtainable by)」という用語は、対応する生成物が必ずしも、それぞれの特定の文脈に記載されている対応する方法又はプロセスによって生成され(すなわち得られ)なければならないわけではないが、前記対応する方法又はプロセスにより生成された(得られた)生成物のすべての特徴を示す生成物も含まれ、前記生成物は、そのような方法又はプロセスにより実際には生成されなかった(得られなかった)ことを意味する。しかし、「により取得可能な」という用語は、「により得られる(obtained by)」というより限定的な用語、すなわち、それぞれの特定の文脈に記載されている方法又はプロセスにより実際に生成された(得られた)生成物も含む。
【0019】
化合物又は化合物の置換基が、「少なくともいくつかの炭素原子」からなることを必要とするある定義は、本明細書で使用される場合、炭素原子の数は、前記化合物又は化合物の置換基における炭素原子の合計数を指す。例えば、「アルキレンオキシド基を含む少なくとも8個の炭素原子を有するアルキルエーテル」として開示されている置換基では、少なくとも8個の炭素原子の合計数は、アルキル部分の炭素原子数及びアルキレンオキシド部分の炭素原子数の総計となる必要がある。
【0020】
「1個のヒドロキシ基を含有する」という用語は、1個のみの-OH基が存在することを意味する。ヒドロキシ基に由来するいずれの官能基化基、例えばエーテル基は、-OH基とはみなされない。
【0021】
本発明は、アミノ酸エステルの有機硫酸塩を合成する方法であって、
(i)ラクタム環中に少なくとも3個の炭素原子を有する少なくとも1種のラクタムを、水溶液中で硫酸と反応させるステップ、
(ii)ステップ(i)の反応生成物を、少なくとも200mol-%の、1個のヒドロキシ基を含有する直鎖状アルキルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有する分岐状アルキルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有する直鎖状アルキルエーテルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有する分岐状アルキルエーテルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有するフェノキシアルカノール及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアルコールでエステル化するステップ、並びに
(iii)任意選択で、水を除去するステップ、及び/又はステップ(ii)の過剰なアルコールを除去するステップ
を含む、方法に関する。
【0022】
有機スルフェートは、アルコール及び硫酸に由来するエステルである。有機スルフェートR-SO4 -は、SO4核、並びに直鎖状アルキル、分岐状アルキル、直鎖状アルキルエーテル、分岐状アルキルエーテル及びフェノキシアルキルからなる群から選択され得るR基を含む。
【0023】
ラクタムは、α-ラクタム(3個の環原子)から始まり、β-ラクタム(4個の環原子)、γ-ラクタム(5個の環原子)などが続く環状アミドである。加水分解された場合、ラクタムは、対応するα-、β-、γ-アミノ酸を形成する。ラクタム環中に少なくとも3個の炭素原子を有するラクタムすべては、アミノ酸の有機硫酸塩を合成する方法に使用できる。本発明の一実施形態では、ラクタム環中に4から12個の炭素原子を有するラクタムが使用される。本発明の別の実施形態では、ラクタム環中に5から7個の炭素原子を有するラクタムが使用される。さらなる実施形態では、ラクタム環中に6個の炭素原子を有するラクタム、ε-ラクタムが使用される。
【0024】
ラクタム環の反応は、少なくとも1種のラクタムと硫酸を反応させることによって行われる。ラクタム環と硫酸の反応は、水溶液中で実行される。本出願の一実施形態では、ラクタム環の反応は、少なくとも1種のラクタムと硫酸を、水のみを含有する水溶液中で反応させることによって行われる。
【0025】
「水を含まない」という用語は、溶媒の合計量に対して5wt.-%以下の水、別の実施形態では、溶媒の合計量に対して1wt.-%以下の水を含有する組成物を意味し、さらなる実施形態では、溶媒は、水をまったく含有しない。
【0026】
「水溶液」という用語は、溶媒が、溶媒の合計量に対して50wt.-%超の水を含有することを意味する。さらなる実施形態では、この用語は、溶媒が、溶媒の合計量に対して80wt.-%超の水を含有することを意味する。別の実施形態では、この用語は、溶媒が、溶媒の合計量に対して95wt.-%超の水を含有することを意味する。さらなる実施形態では、この用語は、溶媒が、溶媒の合計量に対して99wt.-%超の水を含有することを意味する。なおさらなる実施形態では、この用語は、溶媒が水のみを含有することを意味する。
【0027】
本発明の一実施形態では、水以外の追加の溶媒は、方法のステップ(i)に存在しない。
【0028】
本発明の一実施形態では、ラクタムは、ラクタム環中に5個の炭素原子を有するラクタム、及びラクタム環中に6個の炭素原子を有するラクタムからなる群から選択され、硫酸との反応は、水溶液中で実行される。本発明の別の実施形態では、ラクタムは、ラクタム環中に5個の炭素原子を有し、硫酸との反応は、水溶液中で実行される。
【0029】
一実施形態では、ラクタムは、水に溶解するか、又は水相中で分散させるかのいずれかである。典型的な水中のラクタム濃度は、ラクタム及び水の合計重量に対して50重量%から99重量%の範囲である。本発明の一実施形態では、水中のラクタム濃度は、ラクタム及び水の合計重量に対して55から90重量%の範囲である。さらなる実施形態では、水中のラクタム濃度は、ラクタム及び水の合計重量に対して65から80重量%の範囲である。
【0030】
一実施形態では、硫酸は、濃硫酸として使用される。別の実施形態では、硫酸は、水中の96から98wt.-%硫酸溶液として使用される。さらなる実施形態では、硫酸は、水中の80wt.-%硫酸溶液として使用される。
【0031】
本発明の一実施形態では、硫酸の合計量は、少なくとも1種のラクタムへの反応を始める際に添加される。別の実施形態では、硫酸は、0.1から10hの期間少なくとも1種のラクタムに滴下添加される。
【0032】
硫酸とラクタムとのモル比は、90から200mol-%の範囲である。本発明の一実施形態では、硫酸とラクタムとのモル比は、90から150mol-%の範囲である。別の実施形態では、硫酸とラクタムとのモル比は、95から125mol-%の範囲である。さらなる実施形態では、硫酸とラクタムとのモル比は、100mol-%である。
【0033】
少なくとも1種のラクタムと硫酸の反応は、50から150℃の温度にて実行される。本発明の一実施形態では、反応は、80から140℃の温度にて実行される。別の実施形態では、反応は、90から130℃の温度にて実行される。本発明の一実施形態では、温度は、反応の期間一定に維持される。別の実施形態では、温度は反応の期間、温度範囲内で変動する。少なくとも1種のラクタムと硫酸の反応は、0.1から15時間の期間実行される。本発明の別の実施形態では、期間は1から10時間である。別の実施形態では、期間は2から5時間である。本発明の一実施形態では、少なくとも1種のラクタムと硫酸の反応は、大気圧下で実行される。別の実施形態では、少なくとも1種のラクタムと硫酸の反応は、密閉容器中において、1から10barの圧力下で実行される。さらなる実施形態では、少なくとも1種のラクタムと硫酸の反応は、密閉容器中において、1から5barの圧力下で実行される。別の実施形態では、少なくとも1種のラクタムと硫酸の反応は、密閉容器中において、1から4barの圧力下で実行される。一実施形態では、例えば窒素ガス又はアルゴンガスの保護雰囲気が、反応を実行するために使用される。別の実施形態では、少なくとも1種のラクタムと硫酸の反応は、大気圧で50から150℃の温度にて、0.1から10hの期間実行される。本発明のさらなる実施形態では、少なくとも1種のラクタムと硫酸の反応は、大気圧下で90から130℃の温度にて3時間実行される。本発明の別の実施形態では、少なくとも1種のラクタムと硫酸の反応は、密閉容器中において、1.0から10barの圧力下で50から150℃の温度にて0.1から10h時間の期間実行される。
【0034】
ステップ(ii)では、2つの並行したエステル化反応を行う。1つのエステル化反応は、ラクタムの開環により形成されたカルボン酸基と、硫酸、並びに1個のヒドロキシ基を含有する直鎖状アルキルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有する分岐状アルキルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有する直鎖状アルキルエーテルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有する分岐状アルキルエーテルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有するフェノキシアルカノール及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアルコールの、エステルの形成である。他のエステル化反応は、硫酸、並びに1個のヒドロキシ基を含有する直鎖状アルキルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有する分岐状アルキルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有する直鎖状アルキルエーテルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有する分岐状アルキルエーテルアルコール及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアルコールのエステルの形成である。
【0035】
本発明の一実施形態では、少なくとも1種のラクタムと硫酸の反応は、方法の別のステップ(i)として実行される。別の実施形態では、少なくとも1種のラクタムと硫酸及び少なくとも1種のアルコールの反応は、単一のステップで実行され、すなわちステップ(i)は、ステップ(ii)、1個のヒドロキシ基を含有する直鎖状アルキルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有する分岐状アルキルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有する直鎖状アルキルエーテルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有する分岐状アルキルエーテルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有するフェノキシアルカノール及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアルコールとのエステル化反応と組み合わせて実行される。さらなる実施形態では、少なくとも1種のラクタムと硫酸の反応、及び少なくとも1種のアルコールとの反応は、水のみを含有する水溶液中で単一のステップで実行され、すなわちステップ(i)は、ステップ(ii)、1個のヒドロキシ基を含有する直鎖状アルキルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有する分岐状アルキルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有する直鎖状アルキルエーテルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有する分岐状アルキルエーテルアルコール及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアルコールとのエステル化反応と組み合わせて実行される。
【0036】
ステップ(ii)が、方法のステップ(i)に後続する別のステップとして行われる場合、ステップ(i)の反応は、ラクタム環の加水分解が完了するまで実行される。完了する、は、ラクタム環がすべて加水分解されているため、又は反応パートナーの化学的性質及びその量を踏まえるとこれ以上加水分解ができないためのいずれかで、これ以上加水分解は行われ得ない意味と理解される。
【0037】
ステップ(ii)におけるアルコールは、追加の溶媒なしの物質、又は水に溶解した物質のいずれかとして添加される。本発明の一実施形態では、少なくとも1種のアルコールは、1個のヒドロキシ基を含有する直鎖状アルキルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有する分岐状アルキルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有する直鎖状アルキルエーテルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有する分岐状アルキルエーテルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有するフェノキシアルカノール及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0038】
本発明の一実施形態では、1個のヒドロキシ基を含有する少なくとも1種の直鎖状又は分岐状C2-からC36-アルコールが使用される。別の実施形態では、1個のヒドロキシ基を含有する少なくとも1種のC8-からC22-脂肪族アルコールが使用される。別の実施形態では、1個のヒドロキシ基をそれぞれ含有するC16-及びC18-脂肪族アルコールの混合物が使用される。別の実施形態では、1個のヒドロキシ基をそれぞれ含有するC18-及びC22-脂肪族アルコールの混合物が使用される。一実施形態では、少なくとも1種の分岐状C9-からC17アルコールが使用される。さらなる実施形態では、1個のヒドロキシ基を含有する直鎖状又は分岐状C8-からC10-モノ-アルコールが使用される。さらなる実施形態では、2-プロピルヘプタノール又は2-エチルヘキサノールが使用される。なおさらなる実施形態では、2-エチルヘキサノールが使用される。
【0039】
別の実施形態では、アルキルエーテルアルコールが使用される。アルキルエーテルアルコールは、例えば、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドでアルコキシル化されたアルキルアルコールである。本発明の一実施形態では、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドでアルコキシル化された、1個のヒドロキシ基を含有する少なくとも1種の直鎖状又は分岐状C2-からC36-アルコールが使用される。別の実施形態では、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドでアルコキシル化された、1個のヒドロキシ基を含有する少なくとも1種のC8-からC22-アルコールが使用される。アルコールのアルコキシル化は、1種のみのアルキレンオキシド又は1種超のアルキレンオキシドのいずれかで実行される。1種超のアルキレンオキシドが使用される場合、生じたアルキルエーテルアルコールは、ランダムに分布したアルキレンオキシド単位、又は1種のアルキレンオキシドのブロック、続いて別のアルキレンオキシドのブロックのいずれかを含む。本発明の一実施形態では、単一のアルキレンオキシドのみでアルコキシル化されたアルキルアルコールが使用される。さらなる実施形態では、最初のアルキレンオキシドでアルコキシル化され、続いて第2のアルキレンオキシドでアルコキシル化され、それにより異なるアルキレンオキシドブロックのブロック構造を形成するアルキルアルコールが使用される。さらなる別の実施形態では、アルコキシル化2-プロピルヘプタノールが使用される。
【0040】
本発明のさらなる実施形態では、少なくとも1種のフェノキシアルカノールが使用される。別の実施形態では、フェノキシエタノールが使用される。
【0041】
本発明の一実施形態では、1個のヒドロキシ基を含有するアルコールと少なくとも3個の炭素原子を有するラクタムとのモル比は、200から400mol-%の範囲である。別の実施形態では、1個のヒドロキシ基を含有するアルコールと少なくとも3個の炭素原子を有するラクタムとのモル比は、200から300mol-%の範囲である。別の実施形態では、1個のヒドロキシ基を含有するアルコールと少なくとも3個の炭素原子を有するラクタムとのモル比は、200から250mol-%の範囲である。
【0042】
本発明の別の実施形態では、1個のヒドロキシ基を含有するアルコールと硫酸とのモル比は、200mol-%から400mol-%の範囲である。さらなる実施形態では、1個のヒドロキシ基を含有するアルコールと硫酸とのモル比は、200mol-%から300mol-%の範囲である。別の実施形態では、1個のヒドロキシ基を含有するアルコールと硫酸とのモル比は、200mol-%から250mol-%の範囲である。
【0043】
ステップ(ii)のエステル化反応は、80から200℃の範囲の温度にて実行される。本発明の別の実施形態では、エステル化反応は、120から140℃の範囲の温度にて実行される。本発明の一実施形態では、温度は、反応の期間一定に維持される。別の実施形態では、温度は、反応の期間中、温度範囲内で変動する。ステップ(ii)のエステル化反応の期間は、1から30hである。本発明の別の実施形態では、エステル化反応の期間は、2から5hである。さらなる実施形態では、エステル化は密閉容器中において、1から10barの圧力下で実行される。さらなる実施形態では、エステル化は密閉容器中において、1から5barの圧力下で実行される。別の実施形態では、エステル化は密閉容器中において、1から4barの圧力下で実行される。一実施形態では、例えば窒素ガス又はアルゴンガスの保護雰囲気が、反応を実行するために使用される。別の実施形態では、エステル化は、大気圧で80から200℃の温度にて0.1から10hの期間実行される。本発明のさらなる実施形態では、エステル化は、大気圧下で90から130℃の温度にて3時間実行される。本発明の別の実施形態では、エステル化の反応は、密閉容器中において、1.0から10barの圧力下で80から200℃の温度にて0.1から30h時間の期間実行される。
【0044】
本発明の一実施形態では、組み合わせたステップ(i)及び(ii)は、水溶液中の少なくとも3個の炭素原子を有する少なくとも1種のラクタム、並びに1個のヒドロキシ基を含有する直鎖状アルキルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有する分岐状アルキルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有する直鎖状アルキルエーテルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有する分岐状アルキルエーテルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有するフェノキシアルカノール及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアルコールを混合すること、硫酸を添加し、続いて容器を封止して、混合物を80から200℃の温度にて1から30h反応させることにより実行される。本発明のさらなる実施形態では、組み合わせたステップ(i)及び(ii)は、少なくとも3個の炭素原子を有する少なくとも1種のラクタム、並びに1個のヒドロキシ基を含有する直鎖状アルキルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有する分岐状アルキルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有する直鎖状アルキルエーテルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有する分岐状アルキルエーテルアルコール、1個のヒドロキシ基を含有するフェノキシアルカノール及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアルコールを混合すること、硫酸を添加し、続いて容器を封止して、1.0から10barの圧力下で混合物を80から200℃の温度にて1から30h反応させることにより実行される。
【0045】
ステップ(ii)の後、又は組み合わせたステップ(i)及び(ii)の後で、水及び/又は過剰なアルコールが除去され得る。水及びアルコールの除去は、当技術分野で公知のあらゆる技術、例えば真空の適用により実行され得る。本発明の一実施形態では、ステップ(iii)任意選択の水及び/又は過剰なアルコールの除去は、0.1mbarから800mbarの範囲の真空を適用して実行される。別の実施形態では、1mbarから500mbarの範囲の真空が適用される。さらなる実施形態では、10mbarから100mbarの範囲の真空が適用される。
【0046】
[実施例]
方法
1H NMRは、Bruker Avance 400 MHz分光計を用いてMeOD中で測定した。
【0047】
ヒドロキシ値は、DIN 53240-1、2016年に従って判定する。
【0048】
[実施例1]
ジエチレングリコール-C12/C14-アルキル硫酸塩としての6-アミノ-ヘキサン酸-ジエチレングリコール-C12/C14-アルキルエステル
温度計、還流冷却器、窒素注入口、滴下漏斗及びスターラーを備えた4口容器中に、28.3gのカプロラクタム(80wt.-%水溶液)及び11.5gの水を入れ、20.8gの濃硫酸を5分以内に添加する。温度を、添加中に室温から60℃に上昇させる。混合物を加熱還流し、4時間撹拌する。2モルのエチレンオキシドでエトキシル化した130.7gのC12/C14脂肪族アルコール(ヒドロキシ価185mg KOH/g)を入れ、115℃に加熱する。反応混合物から水を留去する。反応混合物をこれらの条件下で4時間撹拌する。155.0gのオフホワイト軟ロウ状物(soft wax)を得る。MeOD中の1H-NMRは、ジエチレングリコール-C12/C14-アルキル硫酸塩としての6-アミノ-ヘキサン酸-ジエチレングリコール-C12/C14-アルキルエステルへの完全な変換を示している。
【0049】
[実施例2]
2-エチル-ヘキシル硫酸塩としての6-アミノ-ヘキサン酸-2-エチル-ヘキシルエステル
温度計、還流冷却器、窒素注入口、滴下漏斗及びスターラーを備えた4口容器中に、99.0gのカプロラクタム(80wt.-%水溶液)、40.3gの水及び227.9gの2-エチルヘキサノールを入れる。72.9gの濃硫酸を15分以内に添加する。温度を、添加中に室温から50℃に上昇させる。混合物を加熱還流し、還流させながら3時間撹拌する。還流冷却器を蒸留ヘッドに置き換え、107~130℃にて反応混合物から水を留去する。反応混合物をこれらの条件下で4時間撹拌する。310.0gの薄黄色油状物が得られる。MeOD中の1H-NMRは、エチル-ヘキシル硫酸塩としての6-アミノ-ヘキサン酸-2-エチル-ヘキシルエステルへの92%の変換率を示している。
【0050】
[実施例3]
2-エチル-ヘキシル硫酸塩としての6-アミノ-ヘキサン酸-2-エチル-ヘキシルエステル(圧力下)
マグネチックスターラーを備えた、10barまで安定な50ml丸底ガラス圧力容器中に、6.3gのカプロラクタム(90wt.-%水溶液)及び16.3gの2-エチルヘキサノールを入れる。5.2gの濃硫酸を15分以内に添加する。温度を室温から50℃に添加中に上昇させる。容器を密閉し、油浴に入れる。油浴を135℃に加熱し、混合物をこれらの条件下で、密閉容器中において3時間撹拌する。混合物を、スターラー、温度計及び窒素注入口を備えた3口容器に移す。液体中への一定の窒素流下で、反応混合物を135℃の油浴温度にて6.5時間撹拌する。21.0gの黄色油状物が得られる。MeOD中の1H-NMRは、エチル-ヘキシル硫酸塩としての6-アミノ-ヘキサン酸-2-エチル-ヘキシルエステルへの98%の変換率を示している。
【国際調査報告】