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特表2022-516600無線周波数用途のための半導体・オン・インシュレータ構造用のレシーバ基板を製造するためのプロセス及び係る構造を製造するためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-01
(54)【発明の名称】無線周波数用途のための半導体・オン・インシュレータ構造用のレシーバ基板を製造するためのプロセス及び係る構造を製造するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20220221BHJP
【FI】
H01L27/12 B
H01L21/02 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021532344
(86)(22)【出願日】2020-01-08
(85)【翻訳文提出日】2021-06-07
(86)【国際出願番号】 FR2020050028
(87)【国際公開番号】W WO2020144438
(87)【国際公開日】2020-07-16
(31)【優先権主張番号】1900194
(32)【優先日】2019-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598054968
【氏名又は名称】ソイテック
【氏名又は名称原語表記】Soitec
【住所又は居所原語表記】Parc Technologique des fontaines chemin Des Franques 38190 Bernin, France
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ブルクアールト, マルセル
(72)【発明者】
【氏名】パリシ, ダミアン
(57)【要約】
本発明は、無線周波数用途のための半導体・オン・インシュレータ構造用のレシーバ基板(30)を製造するためのプロセスに関し、
単結晶材料で作られたベース基板(1)及びベース基板(1)上に配置されたポリシリコンで作られた電荷トラッピング層(2)を備える半導体基板を用意するステップと、
電荷トラッピング層上に配置される酸化物層(3)を形成するために前記電荷トラッピング層(2)を酸化するステップと
を含み、プロセスは、電荷トラッピング層(2)が下記の方法、
750℃と1000℃との間で構成される第1の温度(T)で酸化を開始するステップと、
第1の温度(T)よりも低くそして750℃と875℃との間で構成される第2の温度(T)まで温度を低下させるステップと、
第2の温度(T2)で酸化を続けるステップと
で875℃以下の温度で少なくとも部分的に酸化されることを特徴とする。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数用途のための半導体・オン・インシュレータ構造用のレシーバ基板(30)を製造するためのプロセスであって、
単結晶材料で作られたベース基板(1)及び前記ベース基板(1)上に配置されたポリシリコンで作られた電荷トラッピング層(2)を備える半導体基板(10)を用意するステップと、
前記電荷トラッピング層上に配置される酸化物層(3)を形成するために前記電荷トラッピング層(2)を酸化するステップと、
を含むプロセスにおいて、前記プロセスは、前記電荷トラッピング層(2)が下記の方法、
750℃と1000℃との間で構成される第1の温度(T)で前記酸化を開始するステップと、
前記第1の温度(T)よりも低く750℃と875℃との間で構成される第2の温度(T)まで前記温度を低下させるステップと、
前記第2の温度(T)で前記酸化を続けるステップと、
で875℃以下の温度で少なくとも部分的に酸化されることを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
前記電荷トラッピング層(2)が、750℃以上の温度で少なくとも部分的に酸化される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記第1の温度(T)から前記第2の温度(T)への温度の前記低下が、徐々である、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記酸化物層の厚さの少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%が、前記第1の温度(T)で作られ、そして前記酸化物層の前記厚さの少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%が、前記第2の温度(T)で作られる、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記形成された酸化物層(3)が、200nmと400nmとの間で構成される厚さを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記電荷トラッピング層(2)が、20nmと500nmとの間で構成される厚さを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記電荷トラッピング層(2)が、反応炉内で低圧化学気相堆積によって単結晶材料で作られた前記ベース基板(1)上に事前に堆積される、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
無線周波数用途のための半導体・オン・インシュレータ構造を製造するためのプロセスにおいて、前記プロセスが、
請求項1~7のいずれか一項に従ってレシーバ基板(30)を製造するステップと、
単結晶基板を含むドナー基板を用意するステップと、
前記レシーバ基板に前記ドナー基板をボンディングするステップと、
前記レシーバ基板に前記ドナー基板の層を移転するステップと、
を含むことを特徴とする、プロセス。
【請求項9】
前記ドナー基板から移転された前記層が、半導体を備える、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記ドナー基板から移転された前記層が、強誘電性材料を備える、請求項8に記載のプロセス。
【請求項11】
前記強誘電性材料が、LiTaO、LiNbO、LiAlO、BaTiO、PbZrTiO、KNbO、BaZrO、CaTiO、PbTiO、KTaOから選択される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記移転が、
移転されるべき単結晶半導体又は強誘電性材料の層を画定する弱化ゾーンを形成するために前記ドナー基板に原子種を注入するステップと、
前記レシーバ基板に前記ドナー基板をボンディングするステップであって、前記酸化物層及び移転されるべき単結晶半導体又は強誘電性材料の前記層がボンディング界面のところにある、ボンディングするステップと、
前記レシーバ基板へ単結晶半導体又は強誘電性材料の前記層を移転させるために前記弱化ゾーンに沿って前記ドナー基板を切り離すステップであって、前記酸化物層が電荷トラッピング層と単結晶半導体又は強誘電性材料の前記移転すべき層との間に配置される、切り離すスッテプと、
を含む、請求項8~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記単結晶半導体又は強誘電性材料が、前記ドナー基板の表面のところに存在し、原子種の前記注入が前記表面を通して直接実行される、請求項12に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線周波数用途のための半導体・オン・インシュレータ構造を生産するための「レシーバ基板」と呼ばれる基板の製造に関する。本発明はさらに、レシーバ基板への、「ドナー基板」と呼ばれる第2の基板の層の移転を介して係る構造を製造するためのプロセスにも関する。
【背景技術】
【0002】
半導体がシリコンであるときにその特定の例がシリコン・オン・インシュレータ(SOI)構造である、半導体・オン・インシュレータ構造(頭字語SeOI)の製造の状況では、ドナー基板がレシーバ基板にボンディングされる。
【0003】
一般に、ドナー基板は、単結晶半導体基板、例えば単結晶シリコン基板を含み、そしてレシーバ基板は、ドナー基板からレシーバ基板へ移転されなければならない薄い半導体層のためのキャリアとして作用するように特に意図された少なくとも1つのベース基板を含む。
【0004】
酸化物層が、ドナー基板上に又はレシーバ基板上に形成され、そのため、前記酸化物層は、ドナー基板とレシーバ基板とがボンディングされた後でボンディング界面のところに配置される。酸化物層は、そのときには「埋め込まれた」と言われ、埋め込み酸化物(Buried OXide)に関して「BOX」と呼ばれる。
【0005】
無線周波数(RF)用途に関して、ベース層と埋め込み酸化物層との間の界面のところに存在する電荷をトラップするために、ポリシリコン(多結晶シリコン)層が埋め込み酸化物層の下のレシーバ基板へと組み込まれる。このポリシリコン層は、ボンディングの前にレシーバ基板のベース層上に配置される。
【0006】
酸化物層は、「ダイレクトボンディング」と呼ばれる第1のプロセスを使用してドナー基板の単結晶半導体で作られた基板上、又は「リバースボンディング」と呼ばれる第2のプロセスを使用してレシーバ基板のポリシリコン層上のいずれかに形成される。
【0007】
図1を参照して、ダイレクトボンディングプロセスでは、ポリシリコン(多結晶シリコン)で作られた電荷トラッピング層2で覆われたベース基板1を含むレシーバ基板10、及び単結晶半導体で作られた基板4を含むドナー基板20が用意される。ドナー基板の単結晶材料で作られた基板は、酸化物層3を形成するために酸化される。
【0008】
次に、単結晶材料で作られた前記層4に「弱化ゾーン」と呼ばれるゾーンを形成するために、原子種が酸化物層3を通して単結晶材料で作られた層4へと注入される。弱化ゾーンは、移転されるべき層の厚さに実質的に対応する所定の深さのところに作り出される。移転されるべき層は、そのときには、酸化物層及び単結晶基板のセグメントを含む。
【0009】
ドナー基板20は、次いでレシーバ基板10にボンディングされ、ポリシリコン層2及び酸化物層3がボンディング界面のところにあり、次いで、酸化物層3及び単結晶基板のセグメントをレシーバ基板10へ移転させるために、ドナー基板20が弱化ゾーンに沿って切り離される。
【0010】
ダイレクトボンディングプロセスは、酸化物層がドナー基板上に配置されるという欠点を有する。したがって、注入中に、原子種は、単結晶層に達する前に酸化物層を通過しなければならず、これが高い注入エネルギーを必要とする。ここで、注入エネルギーが高いほど、注入すべきイオンの量は多くなければならず、そして注入電流(電流密度)が低いほど、生産コストの増加に結びつき、プロセスの実行可能性を制限し、特に酸化物層の最大厚さを制限する。加えて、ドナー基板の一部が酸化物層を形成するために消費されるので、このプロセスは、ドナー基板の再使用性を低下させる。
【0011】
図2を参照して、リバースボンディングプロセスでは、ポリシリコンで作られた電荷トラッピング層2で覆われたベース基板1を含むレシーバ基板10及び単結晶半導体で作られた基板4を含むドナー基板20が用意される。しかしながら、ダイレクトボンディングプロセスとは対照的に、酸化物層3が電荷トラッピング層2の酸化を介してレシーバ基板10上に直接形成される。
【0012】
弱化ゾーンを形成するために、原子種の注入は、このときには、ドナー基板の単結晶材料で作られた層4へ直接実行され、そして酸化物層3を通過しない。移転されるべき層は、そのときには単結晶基板のセグメントを単独で含む。
【0013】
ドナー基板は、次いで、レシーバ基板にボンディングされ、単結晶基板及び酸化物層がボンディング界面のところにあり、次いで、レシーバ基板へ単結晶基板のセグメントを移転させるために、ドナー基板が弱化ゾーンに沿って切り離される。
【0014】
リバースボンディングプロセスは、生産コストを低下させること及びドナー基板の再利用性を改善することを可能にする。
【0015】
対照的に、ポリシリコン層上に形成された酸化物層は、ダイレクトボンディングプロセスにおいて(特に単結晶シリコンの問題であるときに)ドナー基板の単結晶材料上の成長によって得られた酸化物層に対して、余りにも低い絶縁破壊電圧(Vbd)を有する。絶縁破壊電圧は、無線周波数用途に適合するためには余りにも低い。
【0016】
この記述を図説するために、図3は、様々なレシーバ基板についての、センチメートル当たりのメガボルト(MV/cm)での電界の関数として、電流、アンペア(A)の変化をプロットするグラフを示し、レシーバ基板には、埋め込み酸化物層が、先行技術によるダイレクトボンディング(図1のものなどの基板)又はリバースボンディング(図2のものなどの基板)によって形成された。
【0017】
及びDとして参照されたグラフ中の右の2つの曲線は、ダイレクトボンディングによって得られた2つの基板に対応する。これら2つの基板では、酸化物層が、ドナー基板の単結晶半導体の酸化によって形成され、次いで電荷トラッピング層へ移転された。
【0018】
、I、I、I、及びIとして参照されたグラフ中の左の5つの曲線は、リバースボンディングによって得られた5つの基板に対応する。5つの基板には、酸化物層が、レシーバ基板の多結晶シリコンで作られた電荷トラッピング層の酸化によって形成された。
【0019】
電流は、酸化物層上に配置された一片のアルミニウム及び測定プローブを用いて、グランドと基板の自由表面との間で測定された。
【0020】
ダイレクトボンディングに関して、2つの曲線D及びDは、基板が約7MV/cmの短絡の前に耐えることができる最大電界に対応する勾配の急変を示す。曲線Dに対応する最大電界の値は、曲線Dに対応する最大電界の値よりもわずかに大きい。
【0021】
リバースボンディングに関して、5つの曲線I、I、I、I、及びIは、基板が約3MV/cmの短絡の前に耐えることができる最大電界に対応する勾配の急変を示す。最大電界の値は、IとIとの間で増加する。
【0022】
比較によって、最大電界の値が、ダイレクトボンディングによって得られた最大電界の値に対してリバースボンディングによって得られた基板に関して明らかに低いことを見ることができる。曲線の2つの組の間の平均距離は、約4MV/cmである。
【0023】
リバースボンディングによる基板の製造は、これゆえ最大電界の低下を引き起こし、これが絶縁破壊電圧の対応する低下という結果をもたらす。
【発明の概要】
【0024】
本発明の1つの目的は、前述の欠点が克服されることを可能にするプロセスを提供することである。本発明は、レシーバ基板が半導体・オン・インシュレータ構造用に製造されることを可能にするこのようなプロセスを提供することを目的とし、レシーバ基板の埋め込み酸化物層は、生産コストを制限しながら無線周波数用途のために十分な絶縁破壊電圧を保有する。
【0025】
この目的のために、本発明は、無線周波数用途のための半導体・オン・インシュレータ構造用のレシーバ基板を製造するためのプロセスであって、
単結晶材料で作られたベース層及びベース層上に配置されたポリシリコンで作られた電荷トラッピング層を備える半導体基板を用意するステップと、
前記電荷トラッピング層上に配置される酸化物層を形成するために前記電荷トラッピング層を酸化するステップと
を含み、このプロセスは、上記電荷トラッピング層が下記の方法、
750℃と1000℃との間で構成される第1の温度で酸化を開始するステップと、
第1の温度よりも低くそして750℃と875℃との間で構成される第2の温度まで温度を低下させるステップと、
第2の温度で酸化を続けるステップと
で875℃以下の温度で少なくとも部分的に酸化されることを主に特徴とする、プロセスを提案する。
【0026】
875℃以下の温度は、トラッピング層の酸化が先行技術で通常実行される温度よりも低い。具体的に、出願人は、無線周波数分野の当業者が特に出版物[1]によって例証されたような現在の知識に基づいて予想されるはずのものとは対照的に、電荷トラッピング層の酸化の温度を低下させることが、形成される酸化物層の絶縁破壊電圧を高くすることを可能にすることを発見したことは驚くべきことである。
【0027】
ポリシリコンで作られた電荷トラッピング層の酸化は、ポリシリコンを消費し、そして酸化物の形成の速度は、ポリシリコン粒子の結晶方位に依存する。このように、ポリシリコン層の結晶粒子が種々に配向されるという事実は、これらの粒子から形成されるシリコン酸化物を異なる速度で成長させる。例えば、酸化物は、<100>方向及び<111>方向に配向した粒子から、同じ<100>方向及び<111>方向に異なる速度で成長する。<100>及び<111>という指数は、ミラー指数であり、この指数は結晶内の面の方位が決定されることを可能にし、これゆえ、結晶構造内の結晶粒子の方位が表現される。
【0028】
ポリシリコンの結晶粒子の方位に依存する酸化物の成長速度のこれらの違いは、結晶構造内部に、最も特に、成長中の酸化物層とその下にあるポリシリコン層との間の界面のところに機械的応力を発生する。成長中の酸化物層の体積が増加するので、そして酸化が進行するので、これらの応力は、ポリシリコン表面のところで増幅される。
【0029】
他の態様によれば、提案したプロセスは、下記の様々な特徴を有し、これらの特徴は、単独で又は技術的に実行できるこれらの組み合わせで実装されてもよく、
電荷トラッピング層が、750℃以上の温度で少なくとも部分的に酸化される。酸化速度が、したがって産業上の必要条件にさらに適合し、そして経済的に実行可能なままであり、
第1の温度Tから上記第2の温度Tへの温度の低下が、徐々であり、
酸化物層の厚さの少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%が、第1の温度Tで作られ、そして酸化物層の厚さの少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%が、第2の温度Tで作られ、
形成された酸化物層が、200nmと300nmとの間で構成される厚さを有し、
電荷トラッピング層が、20nmと500nmとの間で構成される厚さを有し、
電荷トラッピング層が、反応炉内で低圧化学気相堆積によって単結晶材料で作られたベース基板の上に事前に堆積される。
【0030】
本発明はまた、無線周波数用途のための半導体・オン・インシュレータ構造を製造するためのプロセスに関し、このプロセスは、
上述したようなレシーバ基板を製造するステップと、
単結晶基板を含むドナー基板を用意するステップと、
レシーバ基板にドナー基板をボンディングするステップと、
レシーバ基板にドナー基板の層を移転するステップと
を含むことを特徴とする。
【0031】
他の態様によれば、提案したプロセスは、下記の様々な特徴を有し、これらの特徴は、単独で又は技術的に実行できるこれらの組み合わせで実装されてもよく、
ドナー基板から移転された層が、半導体を含み、
ドナー基板から移転された層が、強誘電性材料を含み、
強誘電性材料が、LiTaO、LiNbO、LiAlO、BaTiO、PbZrTiO、KNbO、BaZrO、CaTiO、PbTiO、KTaOから選択され、
前記移転が、
移転されるべき単結晶半導体又は強誘電性材料の層を画定する弱化ゾーンを形成するためにドナー基板に原子種を注入するステップと、
レシーバ基板にドナー基板をボンディングするステップであって、酸化物層及び移転すべき単結晶半導体又は強誘電性材料の層がボンディング界面のところにある、ボンディングするステップと、
レシーバ基板へ単結晶半導体又は強誘電性材料の層を移転させるために弱化ゾーンに沿ってドナー基板を切り離すステップであって、酸化物層が電荷トラッピング層と単結晶半導体又は強誘電性材料の移転すべき層との間に配置される、切り離すスッテプと
を含む。
【0032】
単結晶半導体又は強誘電性材料が、ドナー基板の表面のところに位置することが好ましく、原子種の注入が前記表面を通して直接実行される。
【0033】
本発明の他の利点及び特徴は、次の添付した図を参照して、実例であり非限定的な例として与えられた下記の説明を読むと明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】ダイレクトボンディングによる無線周波数用途のための半導体・オン・インシュレータ基板の製造を図説する図である。
図2】リバースボンディングによる無線周波数用途のための半導体・オン・インシュレータ基板の製造を説明する図である。
図3】先行技術による、埋め込み酸化物層がダイレクトボンディングによって又はリバースボンディングによって形成された様々なレシーバ基板について、電界の関数として電流の大きさの変化を示すグラフである。
図4】温度の関数として<100>及び<111>ミラー指数の酸化物結晶について400nmの厚さの酸化物層の成長時間を示す図である。
図5】温度の関数として図4の2つの曲線の間の違いの変化を示すグラフである。
図6】電荷トラッピング層の酸化の後で得られそして凸型の湾曲を有する図2の基板の模式図である。
図7】埋め込み酸化物層が本発明によるリバースボンディングによって形成された様々なレシーバ基板について、電界の関数として電流の大きさの変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図の見やすさの目的で、基板を形成する様々な層は、必ずしも等尺で示される必要がない。
【0036】
本発明は、無線周波数用途のための半導体・オン・インシュレータ構造用のレシーバ基板(30)を製造するためのプロセスに関し、下記のステップを含む。
【0037】
本発明によるプロセスは、リバースボンディングプロセスである。このプロセスは、図2を参照して、単結晶材料で作られたベース基板1及びベース基板上に配置されたポリシリコンで作られた電荷トラッピング層2を備える半導体基板10を用意するステップで、前記電荷トラッピング層上に配置される酸化物層3を形成するために電荷トラッピング層2を酸化するステップが続く。
【0038】
電荷トラッピング層2は、ベース基板1上にエピタキシによって形成されるか、又は代替で特に化学気相堆積(CVD)により前記ベース基板上に堆積されてもよい。
【0039】
電荷トラッピング層2は、750℃と875℃との間で構成される温度で少なくとも部分的に酸化される。
【0040】
このようなプロセスは、リバースボンディングによって、レシーバ基板30を形成することを可能にし、このレシーバ基板の酸化物層は、酸化が875℃よりも高い温度で実行されるときよりも高い絶縁破壊電圧を有する。
【0041】
形成された酸化物層3は、数100ナノメートル(nm)の厚さ、200nmと400nmとの間で構成される厚さを有することが好ましい。
【0042】
酸化の後で残っている電荷トラッピング層は、20nmと500nmとの間で構成される厚さを有することが好ましい。
【0043】
「少なくとも部分的に」という表現は、酸化の全体が750℃と875℃との間で構成される温度で実行されること、又は酸化の一部だけが750℃と875℃との間で構成される温度で実行されることを意味する。
【0044】
1つの実施形態によれば、電荷トラッピング層2が750℃と1000℃との間で構成される温度Tで酸化されることから始めて、次いで、温度はTより低くそして750℃と875℃との間で構成される温度Tが達せられるまで直ちに又は徐々に下げられ、酸化がさらにまた続けられる。
【0045】
温度Tは、これゆえ875℃よりも低いことがあり、又は実際には875℃よりも高く、例えば、900℃若しくは950℃に等しいことがある。
【0046】
この実施形態では、酸化物層3の上側セグメントは温度Tで作られ、一方、酸化物層3の下側セグメントは温度Tよりも低い温度Tで作られる。具体的には、電荷トラッピング層2は、その上面から下面へと酸化され、そして酸化界面は、反応が進むにつれて上面から下面へと移動する。
【0047】
この実施形態は、酸化速度が温度とともに増加するので電荷トラッピング層2の上側セグメントの酸化速度が増加すること、そしてこれゆえトラッピング層を酸化するために必要な時間が減少することを可能にする。
【0048】
酸化物層3の絶縁破壊電圧の上昇は、酸化の全体が750℃と875℃との間で構成される温度で実行される場合、及び酸化の一部だけが750℃と875℃との間で構成される温度で実行される場合の両方で観測される。具体的には、前記電荷トラッピング層2とベース基板との間の界面から電荷トラッピング層の自由表面に向けて延びる電荷トラッピング層2の少なくとも1つのセグメントに関して750℃と875℃との間で構成される温度で酸化されることが単純に必要である。
【0049】
750℃と875℃との間で構成される温度で作られる電荷トラッピング層のセグメントを最小にし、これゆえ酸化ステップの合計の長さを最小にするために、酸化パラメータを調節することが可能である。
【0050】
1つの実施形態によれば、酸化物層3の厚さの少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%が、第1の温度Tで作られ、そして酸化物層の厚さの少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%が、第2の温度Tで作られる。
【0051】
温度の関数として酸化物層を成長させるためにかかる時間の変化の検討が、種々の結晶方位の結晶について実行されてきている。
【0052】
図4は、ミラー指数<100>(曲線E)及び<111>(曲線E)を有する酸化物結晶について(度摂氏での)温度の関数として400nmの厚さの酸化物層の(時間での)成長時間を示すグラフである。
【0053】
図5は、(度摂氏での)温度の関数として図4のミラー指数<100>(曲線E)及び<111>(曲線E)を有する酸化物結晶間の(相対パーセントでの)成長速度の相対的な違いΔvを示すグラフである。
【0054】
これらの結果は、温度が低いほど、異なる<100>及び<111>結晶方位の結晶間の成長速度の違いが大きいことを示す。特に、この相対的な違いは、温度が875℃であるときに約48%であり、それから875℃よりも低い温度に対して50%より高く増加する。
【0055】
対照的に、温度が高いほど、異なる<100>及び<111>結晶方位の結晶間の成長速度の違いが小さくなる。特に、この違いは、温度が1200℃であるときには約9%である。
【0056】
加えて、酸化時間は、1000℃よりも低い温度に関して、さらにもっと850℃よりも低い温度に関して非常に大きく増加する。このように、このプロセスを産業上の必要条件に適合する時間で実行されそして経済的に実行可能であり続けることを可能にするために、750℃よりも低く低下させないことが望ましい。
【0057】
電荷トラッピング層2の酸化は、ベース基板1の反対側の酸化を同時にともなう。基板の2つの側の間の材料の違いのために、ベース基板1及び電荷トラッピング層2を含む半導体基板10は変形する。この変形は、全体の基板に影響を及ぼし、すなわち、基板の湾曲はその全体で、湾曲が凹型又は凸型になるように変形される。基板が円盤形状であるときには、基板は、変形の後で全体として放物面形状を有するだろう。
【0058】
より正確には、酸化中には、電荷トラッピング層2は、成長中の酸化物層3の機械的応力を支える。基板は、次いで凸型に変形する。
【0059】
「凸型」及び「凹型」という用語は、本明細書で下記に説明するドナー基板とのボンディング界面を形成することを意図する基板30の側の湾曲に関すると理解されるべきであり、この側は、「表側」と呼ばれる。このように、表側の湾曲が凸型であるときに、基板は「凸型」であると言われ、そして表側の湾曲が凹型であるときに、基板は「凹型」であると言われる。
【0060】
図6に示した基板30は、凸型に変形している。表側31は上側である。裏側32は表側に平行である。
【0061】
基板の湾曲は、バウと呼ばれそしてBwと記される大きさパラメータを介して典型的には定量化される。
【0062】
Bwは、基板のメジアン平面Pm(破線により示される)の中心点Cと基板が載る基準ホルダに対応する基準平面Pとの間の距離に対応する。Bwは、(図6に示したような)凸型湾曲の場合は正であり、凹型湾曲の場合は負である。
【0063】
出願人は、先行技術よりも低い温度で、そして特に750℃と875℃との間で構成される温度で電荷トラッピング層2の酸化の少なくとも一部を実行することが、バウBwを減少させることを可能にすることにさらに言及している。ベース基板1との界面のところの電荷トラッピング層2の下側表面と酸化物3との界面のところの電荷トラッピング層の上側表面との間の湾曲の違いが、このように減少され、このことはしたがって電荷トラッピング層内部の機械的応力を低下させる。
【0064】
上述したプロセスを使用して得られたレシーバ基板30から、無線周波数用途のための半導体・ノン・インシュレータ構造は、プロセスのステップが下記に説明される製造プロセスを使用して製造される。
【0065】
次々と、ベース基板1、電荷トラッピング層2、及び酸化物層3を備えるレシーバ基板30が用意される。ドナー基板と呼ばれる、単結晶材料で作られる第2の基板もまた用意される。
【0066】
ドナー基板は、半導体基板を含むことが好ましい。
【0067】
弱化ゾーンが、移転されるべき層を画定するように前記ドナー基板に形成される。
【0068】
移転されるべき層は、半導体層であることが好ましい。
【0069】
弱化ゾーンが、移転されるべき層の厚さに実質的に対応する所定の深さのところのドナー基板内に形成される。弱化ゾーンは、ドナー基板中へ、原子種、例えば、水素原子及び/又はヘリウム原子を注入することによって作り出されることが好ましい。実際には、原子種の注入は、ドナー基板の自由表面のところの単結晶材料を通して直接実行されることが好ましい。
【0070】
ドナー基板は、次いで、レシーバ基板にボンディングされる。酸化物層及び移転されるべき層は、ボンディング界面のところに配置される。
【0071】
ドナー基板は、次いで、レシーバ基板へ層を移転させるために、弱化ゾーンに沿って切り離される(スマートカット(Smart Cut)(商標)プロセス)。酸化物層が電荷トラッピング層と移転された層との間に配置される最終構造が、このように得られる。
【0072】
或いは、層は、層に対する所望の厚さが得られるまで、ボンディング界面とは反対の側からドナー基板をシンニングすることによって移転されてもよい。
【0073】
1つの実施形態によれば、ドナー基板の移転されるべき層は、強誘電性材料を含む。
【0074】
強誘電性材料は、LiTaO、LiNbO、LiAlO、BaTiO、PbZrTiO、KNbO、BaZrO、CaTiO、PbTiO及びKTaOから選択されることが有利である。
【0075】
移転されるべき前記単結晶層のドナー基板は、例えば、直径150mm又は200mmの標準化されたサイズの円形ウェハの形態を取ることができる。本発明は、しかしながらこれらの寸法に又はこの形態に決して限定されない。ウェハは、予め決めた結晶方位を有するドナー基板を形成するように、強誘電体材料のインゴットから得られていてもよい。或いは、ドナー基板は、キャリア基板に接合された強誘電性材料の層を含むことができる。
【0076】
移転されるべき強誘電性材料の単結晶層の結晶方位は、意図された用途に応じて選択される。このように、材料LiTaOに関して、特に、SAWフィルタ(SAWは表面弾性波(Surface Acousitc Wave)の頭字語である)を形成するために薄層の特性を利用することが望まれる場合では、30°と60°XYとの間、又は40°と50°XYとの間で構成される方位を選択することが定型である。材料LiNbOに関して、約128°XYの方位を選択することが定型である。しかしながら、本発明は、特定の結晶方位に決して限定されない。
【0077】
ドナー基板の強誘電性材料の結晶方位がどうであろうとも、プロセスは、例えば、このドナー基板中へ水素種及び/又はヘリウム種(イオン及び/又は原子)を導入するステップを含む。この導入は、例えば、水素注入、すなわち、ドナー基板の平坦な面の水素イオン照射、に対応することができる。
【0078】
それ自体知られているように、注入したイオンの目的は、移転すべき強誘電性材料の第1の層を画定する弱化平面を形成するためであり、この第1の層は、面の側に置かれそして他の部分が基板の残りを形成する。注入される種の特質、ドーズ及び注入されるイオンのタイプ、並びに注入エネルギーは、移転することが望まれる層の厚さ及びドナー基板の物理化学的特性に応じて選択される。LiTaOで作られたドナー基板の場合は、したがって、約20~2000nmの厚さの第1の層を画定するために30と300keVとの間のエネルギーで1E16と5E17at/cmとの間の水素のドーズを注入するように選択されてもよい。
【0079】
(実験結果)
電界の関数としての構造内の電流の大きさの変化
上述の本発明のプロセスを使用して実現される利点を例証するために、電界の関数としての構造内の電流の変化の検討が実行された。
【0080】
図7は、本発明によるリバースボンディングによって得られた様々な基板について、センチメートル当たりのメガボルト(MV/cm)での、電界の関数として、グラフをより見やすくするために係数100を掛け算したアンペア(A)での、電流の大きさの変化をプロットするグラフを示す。前記基板は、埋め込み酸化物層を形成するために使用したレシーバ基板の酸化の形成の条件においては異なる。
【0081】
電流は、酸化物層上に配置された一片のアルミニウム及び測定プローブを通して、グランドと基板の自由表面との間で測定された。
【0082】
ref、C、C、C、C、及びCで参照された曲線は、下記をプロットする。
【0083】
曲線Crefは、4000オングストロームの酸化物層を有する参照値、すなわち、ダイレクトボンディングによって得られた基板、に対応する。この曲線は、約7MV/cmの最大電界に対応する勾配の急変を有する。
【0084】
曲線Cは、追加アニールをせずに850℃で全体が実行された酸化に対応する。この曲線は、約6MV/cmの最大電界を有する。
【0085】
曲線Cは、950℃で実行された酸化であり、次いでその温度が従来型の炉内で1時間にわたり1100℃に上昇された酸化に対応する。この曲線は、約3.7MV/cmの最大電界を有する。
【0086】
曲線Cは、熱アニールをせずに950℃で全体が実行された酸化に対応する。この曲線は、約3.5MV/cmの最大電界を有する。
【0087】
曲線Cは、950℃で全体が実行された酸化であり、1100℃での45秒の急速熱アニール(RTA)が続く酸化に対応する。この曲線は、約2.8MV/cmの最大電界を有する。
【0088】
曲線Cは、1000℃で全体が実行された酸化であり、1100℃での45秒の急速熱アニール(RTA)が続く酸化に対応する。この曲線は、約2.8MV/cmの最大電界を有する。
【0089】
これらの結果は、酸化温度の低下が最大電界を高くすることを可能にし、このことが絶縁破壊電圧の対応する増加という結果をもたらすことを示す。
【0090】
(参考文献)
[1]: Effect of Physical Stress on theDegradation of Thin SiO2 Films Under Electrical Stress, Tien-ChunYang, 2000 IEEE.
図1
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図7
【国際調査報告】