(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-08
(54)【発明の名称】波面センサ及び関連するメトロロジ装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20220301BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G03F7/20 502
G02B5/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021540203
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(85)【翻訳文提出日】2021-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2019086296
(87)【国際公開番号】W WO2020151891
(87)【国際公開日】2020-07-30
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デル ポスト,シートセ,テイメン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン フォールスト,ピーター,ダニー
【テーマコード(参考)】
2H197
2H249
【Fターム(参考)】
2H197HA03
2H197JA17
2H197JA22
2H249AA03
2H249AA13
(57)【要約】
放射ビームに交差する位置アレイでの波面の傾斜を測定する波面センサであって、位置アレイの各々に凹部を含む凹部アレイを有する(例えばジルコニウムの)フィルムを含み、凹部アレイの各凹部は、放射の集束を実施するように動作可能である、波面センサが開示される。そのような波面センサを含む、放射源及び検査装置も開示される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射ビームに交差する位置アレイでの波面の傾斜を測定する波面センサであって、
前記位置アレイの各々に凹部を含む凹部アレイを有するフィルムを含み、
前記凹部アレイの各凹部は、前記放射の集束を実施するように動作可能である、波面センサ。
【請求項2】
前記凹部アレイは、前記フィルムの
表面平面、
インターフェイス平面、
一側面、及び、
両側面、
の少なくとも1つに配置される、請求項1に記載の波面センサ。
【請求項3】
前記フィルムは、前記波面を実質的に透過させるように動作可能である透過フィルムである、請求項1又は2に記載の波面センサ。
【請求項4】
前記フィルムは、1~50nmの放射範囲の少なくとも一部に対して1未満の屈折率の実部を有する、
任意選択で、前記屈折率の前記実部は、1~50nmの放射範囲の少なくとも一部に対して0.99未満である、
任意選択で、前記屈折率の前記実部は、1~50nmの放射範囲の少なくとも一部に対して0.97未満である、及び
任意選択で、前記屈折率の前記実部は、1~50nmの放射範囲の少なくとも一部に対して0.96未満である、
のうちの少なくとも1つである、請求項1~3の何れか一項に記載の波面センサ。
【請求項5】
前記フィルムは、1~50nmの放射範囲の少なくとも一部に対して0.2未満の消光係数を有する、
前記フィルムは、1~50nmの放射範囲の少なくとも一部に対して0.1未満の消光係数を有する、
任意選択で、前記フィルムは、1~50nmの放射範囲の少なくとも一部に対して0.05未満の消光係数を有する、
のうちの少なくとも1つである、請求項1~4の何れか一項に記載の波面センサ。
【請求項6】
前記フィルムは、
1~50nm、任意選択で1~20nm、任意選択で10~20nmの放射範囲の少なくとも一部に対して、
2よりも小さい、任意選択で1.5よりも小さい分散を有する、請求項1~5の何れか一項に記載の波面センサ。
【請求項7】
前記フィルムは、MgO、Co、Ni、Cu、Zr、Zn、Ga、Ge、As、Cd、In、Pb、Bi、C、Y及びScの少なくとも1つを含み、任意選択で、前記フィルムはジルコニウムで構成される、請求項1~6の何れか一項に記載の波面センサ。
【請求項8】
前記凹部の各々は、凹状又は部分球状である、請求項1~7の何れか一項に記載の波面センサ。
【請求項9】
前記フィルムは、1μm未満の厚さを有し、任意選択で、前記フィルムは100nmの厚さを有し、任意選択で、前記フィルムは100nm未満の厚さを有する、請求項1~8の何れか一項に記載の波面センサ。
【請求項10】
各凹部の直径は、100μmよりも大きく、又は任意選択で300μmよりも大きく、又は任意選択で500μmよりも大きい、請求項1~9の何れか一項に記載の波面センサ。
【請求項11】
各凹部の前記直径は、凹部間の間隔と実質的に等しい、請求項1~10の何れか一項に記載の波面センサ。
【請求項12】
前記凹部アレイの各凹部は、前記放射を検出面又は検出面の周辺に集束させるように動作可能である、請求項1~11の何れか一項に記載の波面センサ。
【請求項13】
前記凹部アレイの前記凹部の各々は、前記放射ビームのスペクトル成分を異なる方向に向けるための分散要素を設けられ、任意選択で、前記分散要素は回折格子である、請求項1~12の何れか一項に記載の波面センサ。
【請求項14】
放射ビームを発生させるように動作可能な放射源装置であって、
前記発生した放射ビームに交差する位置アレイでの波面の傾斜を少なくとも断続的に測定する、請求項1~13の何れか一項に記載の波面センサと、
前記測定した波面傾斜に少なくとも部分的に基づいて、前記放射源装置の動作状態を求めるプロセッサと、
をさらに含む、放射源装置。
【請求項15】
検査放射をターゲット構造に送出する照明系と、前記ターゲット構造と相互作用した後の前記検査放射を検出する検出系と、を含む検査装置であって、
前記照明系は、請求項14に記載の放射源装置を含み、
前記発生した放射ビームは、前記検査放射として使用される、検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本願は、2019年1月25日に出願された欧州特許第19153671.3号の優先権を主張するものであり、この特許は、参照によりその全体を本明細書に援用される。
【0002】
[0002] 本開示は、例えば、リソグラフィ技術によるデバイスの製造に使用可能な検査(例えば、メトロロジ)用の方法及び装置と、リソグラフィ技術を使用してデバイスを製造する方法と、に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、基板に、通常は基板のターゲット部分に所望のパターンを付加する機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造で使用することができる。その際に、代替としてマスク又はレチクルとも称されるパターニングデバイスを使用して、ICの個々の層に形成される回路パターンを発生させることができる。このパターンは、基板(例えば、シリコンウェハ)のターゲット部分(例えば、1つのダイの一部、又は複数のダイを含む)に転写することができる。パターンの転写は通常、基板に設けられた放射感応性材料(レジスト)層への結像による。一般に、単一の基板は、連続的にパターン形成された、隣接したターゲット部分のネットワークを含む。これらのターゲット部分は、通常「フィールド」と呼ばれる。
【0004】
[0004] リソグラフィプロセスでは、多くの場合、例えば、プロセス制御及び検証を行うために、形成された構造の測定を行うのが好ましい。クリティカルディメンジョン(CD)を測定するのにしばしば使用される走査電子顕微鏡と、デバイスの2つの層のアライメント精度、オーバーレイを測定する専用ツールと、を含む、上記の測定を行う様々なツールが公知である。最近では、様々な形態のスキャトロメータが、リソグラフィ分野で使用するために開発された。これらのデバイスは、ターゲットの対象となる特性を求めることを可能にする回折「スペクトル」を得るために、放射ビームをターゲットに誘導し、散乱線の1つ又は複数の特性、例えば、単一の反射角における波長に応じた強度照度、1つ又は複数の波長における反射角に応じた強度照度、又は反射角に応じた偏光を測定する。
【0005】
[0005] 同時に、公知の検査技術は、可視又は紫外波帯の放射を使用する。これは、測定できる最小フィーチャを限定し、そのため、この技術は、もはや最新リソグラフィプロセスで作製された最小フィーチャを直接測定することができない。より小さい構造の測定を可能にするために、例えば、EUVリソグラフィで使用される極紫外(EUV)波長と同様のより短い波長の放射を使用することが提案された。そのような波長は、例えば、1~100nm、又は1~125nmの範囲を取ることができる。この波長範囲の一部又はすべては、軟x線(SXR)波長とも呼ばれることがある。一部の著者は、例えば、1~100nm、1~50nm、1~20nm又は10~20nmの範囲のより狭い波長範囲を指すために、SXRを使用することがある。本開示において、これらの用語SXR及びEUVは、厳然たる区別を含意することなく使用される。例えば、0.1~1nmの範囲のより硬質のx線を使用するメトロロジも考えられる。透過及び/又は反射散乱モードでこれらの波長を使用する透過及び反射メトロロジ技術の例は、公開特許出願である国際公開第2015172963A1号に開示されている。透過及び/又は反射散乱モードでこれらの波長を使用するメトロロジ技術及び装置の例は、公開特許出願である米国特許出願公開第2016/282282A1号、米国特許出願公開第2017/045823A1号、及び国際公開第2017/025392A1号と、本件の優先日にまだ公開されていない国際特許出願番号PCT/EP2016/080058号とに記載されている。すべてのこれらの出願の内容は、参照により本明細書に援用される。
【0006】
[0006] SXR放射の簡便な放射源には、レーザからの赤外ポンピング光が、ガス状媒体との相互作用によって、より短い波長の放射に変換される、高調波発生(HHG)源がある。HHG源は、例えば、KMLabs, Boulder Colorado, USA (http://www.kmlabs.com/)から入手可能である。リソグラフィ用の検査装置での用途に対して、HHG源の様々な修正も検討されている。これらの修正の一部は、例えば、本願の優先日に公開されていない、欧州特許第3321739号に開示されている。他の修正は、国際公開第2017/108410号に開示されている。欧州特許第3296723号は、検査装置の測定スポットのぼけを最小限にするためのHHG放射源の波面の補正について記載している。すべてのこれらの出願の内容は、参照により本明細書に援用される。
【0007】
[0007] 波面測定は、例えば、光源の焦点を特定のスポット径及び形状に合わせる能力を示すために使用することができる。これは、高SXR束が、例えば、オーバーレイメトロロジ用の明瞭で限定されたスポットに必要とされる場合に重要な情報である。そのようなパラメータが、迅速に測定できる場合に、その情報は、メトロロジで使用されるSXRビームの適応制御用に、又はメトロロジ測定の結果を改善するために、フィードバックループで使用することができる。
【0008】
[0008] 極紫外線(EUV)及び軟x線の特定の領域での波面の測定は、ほとんどの材料による高い吸収作用と、集束光学部品を製造する困難さと、のために難易度が高い。EUV波帯での一般的な手法は、開口アレイであるハルトマンセンサを使用して、局所位相勾配を測定することである。記載のある例として、Mercere et al., Opt. Lett. 28, 1534 (2003)、Kuenzel et al., Appl. Opt. 54, 4745 (2015)、及び米国特許出願公開第2004/196450号に例がある。EUVで頻繁に使用される別の手法は、位相-シフト点回折干渉法(Naulleau et al., Appl. Opt. 38, 7252 (1999))と呼ばれる干渉技術である。2つのより新型の非標準技術も説明されている。最初の技術は、スリットを走査することでビームプロファイル全体にわたって測定された単一スリット回折に基づく(Frumker et al., Opt. Lett. 34, 3026 (2009))。第2の技術は、2つの同一ビーム間の干渉パターンを使用し、横剪断アルゴリズムによって波面を再構築する(Austin et al., Opt. Lett. 36, 1746 (2011))。
【発明の概要】
【0009】
[0009] 本発明の目的は、放射源装置、例として、例えば、HHG放射源装置を含むEUV又はSXR放射源の動作状態の観測及び/又は制御を改善することである。
【0010】
[0010] 本発明は、別の態様において、EUV及びSXR波長との適合性が向上した波面センサを提供することを目的とする。
【0011】
[0011] 本発明は、第1の態様において、放射ビームに交差する位置アレイでの波面の傾斜を測定する波面センサを提供し、波面センサは、位置アレイの各々に凹部、凹み又は窪みを含む凹部アレイを有するフィルムを含み、凹部アレイの各凹部は、放射の集束を実施するように動作可能である。
【0012】
[0012] 本発明は、第2の態様において、放射ビームを発生させるように動作可能な放射源装置を提供し、放射源装置は、発生した放射ビームに交差する位置アレイでの波面の傾斜を少なくとも断続的に測定する第1の態様の波面センサと、測定した波面傾斜に少なくとも部分的に基づいて放射源装置の動作状態を求めるプロセッサと、をさらに含む。
【0013】
[0013] 本発明は、検査放射をターゲット構造に送出する照明系と、ターゲット構造と相互作用した後の検査放射を検出する検出系と、を含む検査装置をさらに提供し、照明系は、本発明の第1の態様による放射源装置を含む。
【0014】
[0014] 本発明の任意の態様では、位置アレイは、1つ又は複数の空間ベクトルによって規定することができ、各分散要素の分散の方向は、空間ベクトルのいずれとも平行ではない。これは、アレイの様々な位置によるスペクトル成分間の干渉なしに、所望の空間分解が達成されるのを可能にする。
【0015】
[0015] 位置アレイは、2つ以上のサブセットに分割することができ、各サブセットの分散要素は、分散の方向が異なる。これは、空間分解能がさらに高くなり、及び/又は、アレイの様々な位置のスペクトル成分がさらに分離される、のを可能にする。
【0016】
[0016] さらなる特徴及び利点、さらには、様々な実施形態の構造及び動作が、添付図面を参照して下記に詳細に説明される。なお、本発明は、本明細書で説明する特定の実施形態に限定されない。そのような実施形態は、例示のみを目的として本明細書に提示される。さらなる実施形態が、本明細書に記載された教示から当業者に明らかになるであろう。
【0017】
[0017] 実施形態が、例としてのみ、添付の図面を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】半導体デバイス用の製造設備を形成し、本発明の実施形態による検査装置を含むメトロロジ装置を含む他の装置と共にリソグラフィ装置を示している。
【
図2】放射源装置と本発明を適用することができる波面センサとを含む検査装置の第1の実施形態のコンポーネントの構成を概略的に示している。
【
図3】例示的な放射源装置での第1の放射とHHG媒体との間の相互作用領域を示している。
【
図4】HHG放射源装置で起こり得る動作状態のいくつかの例示的な偏移を示している。
【
図5】公知のハルトマンタイプの波面センサの動作原理を示している。
【
図6】公知のシャックハルトマンタイプの波面センサの動作原理を示している。
【
図7】(a)本発明の一実施形態によるフィルムベースの波面センサの動作、及び(b)凹部アレイの詳細を概略的に示している。
【
図8】特定の凹部深さ及び照明波長に対する焦点距離と凹部直径との関係を説明するプロット図である。
【
図9】(a)~(d)本発明の実施形態において使用可能な4つの異なる凹部アレイ配置を示す。
【
図10】本開示の例示的な実施形態による
図2の検査装置内のセンサ信号及びフィードバック制御信号の流れを概略的に示している。
【
図11】
図1の検査装置によって行われる測定を使用して、メトロロジ法及び/又はリソグラフィ製造プロセスの性能を制御する方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[0018] 本発明の実施形態を詳細に説明する前に、本発明の実施形態を実施できる例示的環境を提示することは有益である。
【0020】
[0019]
図1は、リソグラフィ大量製造プロセスを実施する製造設備の一部として、リソグラフィ装置LAを100で示している。この例では、製造プロセスは、半導体ウェハなどの基板上での半導体製品(集積回路)の製造に適している。当業者には、このプロセスの変形型で様々なタイプの基板を処理することで、多岐にわたる製品を製造できると分かるであろう。今日、莫大な商業的価値がある半導体製品の製造は、単なる例として使用される。
【0021】
[0020] リソグラフィ装置(又は、略して「リソツール」100)内において、測定ステーションMEAは102で示され、露光ステーションEXPは104で示されている。制御ユニットLACUは106で示されている。この例では、各基板は、測定ステーションと、適用されるパターンを有する露光ステーションと、に滞在する。光学リソグラフィ装置では、例えば、調整された放射線及び投影システムを使用して、製品パターンをパターニングデバイスMAから基板に転写するために、投影システムが使用される。これは、放射線感応性レジスト材料の層にパターン像を形成することで行われる。
【0022】
[0021] 本明細書で使用される「投影システム」という用語は、露光放射を使用するのに適した、又は液浸液の使用若しくは真空の使用などの他の要素に適した、屈折式、反射式、反射屈折式、磁気式、電磁式、及び静電式光学系、又はそれらの任意の組み合わせを含む任意のタイプの投影システムを包含すると広く解釈すべきである。パターニングMAデバイスはマスク又はレチクルとすることができ、パターン又はレチクルは、パターニングデバイスによって透過又は反射される放射ビームにパターンを付与する。公知の動作モードとして、ステッピングモード及び走査モードがある。公知のように、投影システムは、基板及びパターニングデバイス用のサポート及び位置決めシステムと様々な方法で協同して、基板全体にわたる多数のターゲット部分に所望のパターンを付加することができる。プログラマブルパターニングデバイスは、固定パターンを有するレチクルの代わりに使用することができる。放射には、例えば、深紫外線(DUV)又は極紫外線(EUV)周波帯の電磁放射があり得る。本開示は、他のタイプのリソグラフィプロセス、例えば、電子ビームによる、例えば、インプリントリソグラフィ及びダイレクトライティングリソグラフィにも適用可能である。
【0023】
[0022] リソグラフィ装置制御ユニットLACUは、装置に基板W及びレチクルMAを受け入れさせ、パターン形成処理を実施させるために、様々なアクチュエータ及びセンサのすべての動作及び測定を制御する。LACUには、装置の動作に関連する所望の計算を実施する信号処理及びデータ処理能力もある。実際に、制御ユニットLACUは、それぞれがリアルタイムのデータ取得、処理、及び装置内のサブシステム又はコンポーネントの制御を取り扱う多数のサブユニットからなるシステムとして具現化される。
【0024】
[0023] 基板は、様々な予備ステップが実施できるように、露光ステーションEXPでパターンが基板に付加される前に、測定ステーションMEAで処理される。予備ステップは、高さセンサを使用して基板の面高さをマッピングすること、及び、アライメントセンサを使用して基板のアライメントマークの位置を測定すること、を含むことができる。アライメントマークは、通常、規則的な格子パターンに配置される。しかし、マークを形成する際の不正確さにより、さらに、基板の処理全体を通して発生する基板の変形により、マークは理想的な格子から外れる。このため、装置が、製品フィーチャをきわめて高い精度で正確な位置にプリントする場合に、基板の位置及び向きを測定することに加えて、実際上、アライメントセンサが、基板領域全体にわたって、多数のマークの位置を詳細に測定しなければならない。
【0025】
[0024] リソグラフィ装置LAは、制御ユニットLACUによって制御される位置決めシステムをそれぞれが含む2つの基板テーブルを有する、いわゆる2段タイプとすることができる。一方の基板テーブルに載った1つの基板は、露光ステーションEXPで露光され、別の基板は、様々な予備ステップを実施できるように、測定ステーションMEAで他方の基板テーブルに載せることができる。したがって、アライメントマークの測定は非常に時間がかかり、2つの基板テーブルを設けることで、装置のスループットの大幅な向上が可能になる。基板テーブルが測定ステーション及び露光ステーションにある間、位置センサIFが、基板テーブルの位置を測定できない場合に、両方のステーションで基板テーブルの位置を探知するのを可能にする第2の位置センサを設けることができる。リソグラフィ装置LAが、2つの基板テーブルを有する、いわゆる2段タイプである場合に、露光ステーション及び測定ステーションは、基板テーブルを交換することができる別の位置とすることができる。しかし、これは、単なる1つの可能な構成に過ぎず、測定ステーション及び露光ステーションはそのように別個である必要はない。例えば、単一の基板テーブルを有することは周知であり、測定台は、予備露光測定段階時に一時的に単一の基板テーブルに連結される。本開示は、どちらのタイプのシステムにも限定されない。
【0026】
[0025] 製造設備内で、装置100は、装置100でパターンを形成するために、感光性レジスト及び他の被覆を基板Wに塗布する被覆装置108も収容する「リソセル」又は「リソクラスタ」の一部を形成する。装置100の出力側には、露光されたパターンを現像して物理レジストパターンにするために、焼成装置110及び現像装置112が設けられている。これらの全装置間で、基板ハンドリングシステムは、基板の支持と、1つの装置から次の装置への基板の移送と、を引き受ける。しばしば一括してトラックと称されるこれらの装置は、トラック制御ユニットの制御下にあり、トラック制御ユニットは、それ自体、監視制御システムSCSによって制御され、監視制御システムSCSはまた、リソグラフィ装置制御ユニットLACUを通してリソグラフィ装置を制御する。こうして、様々な装置は、スループット及び処理効率を最大限にするように動作することができる。監視制御システムSCSは、各パターン付き基板を形成するために実施されるステップの定義をより詳細に規定したレシピ情報Rを受け取る。
【0027】
[0026] パターンがリソセルにおいて付加され、現像されると、パターン付き基板120は、122、124、及び126などで示す他の処理装置に移送される。典型的な製造設備の様々な装置によって、様々な処理ステップが実施される。例として、この実施形態の装置122は、エッチングステーションであり、装置124は、エッチング後のアニールステップを行う。さらなる物理的及び/又は化学的処理ステップがさらなる装置126などに適用される。材料の堆積、表面材料特性の改質(酸化、ドーピング、イオン注入など)、化学機械研磨(CMP)などの様々なタイプの処理が、実際のデバイスを作製するために必要とされ得る。装置126は、実際上、1つ又は複数の装置で実施される一連の様々な処理ステップを表すことができる。
【0028】
[0027] 公知のように、半導体デバイスの製造は、基板の層ごとに適切な材料及びパターンを用いてデバイス構造を構築するために、そのような処理を多数繰り返すことを必要とする。相応して、リソクラスタに到達した基板130は、新たに用意された基板とすることができ、又は基板130は、このクラスタで、又は全く別の装置ですでに処理された基板とすることができる。同様に、必要とされる処理に応じて、基板132は、装置126から出ると、次のパターン形成処理のために同じリソクラスタに戻すことができ、又はパターン形成処理のために、行き先を異なるクラスタにすることができ、又はダイシング及びパッケージ化のために送られる完成品とすることができる。
【0029】
[0028] 製品構造の各層は、プロセスステップの異なるセットを必要とし、各層で使用される装置126は、タイプが完全に異なることがある。さらに、装置126によって適用される処理ステップが名目上同じである場合でさえ、大型設備において、様々な基板に対してステップ126を実施するために、並行して動作するいくつかの同一と考えられる機械があり得る。これらの機械間の構成又は欠点の小さな相違は、この小さな相違が、様々な基板に異なる形で影響を及ぼすことを意味し得る。エッチング(装置122)などの比較的各層に共通であるステップでさえ、名目上同一であるが、スループットを最大化するために並行して動作するいくつかのエッチング装置によって実施されることがある。実際上、さらに、様々な層は、エッチングされる材料の細部と、例えば、異方性エッチングなどの特別な要件と、に応じて、様々なエッチングプロセス、例えば、化学エッチング、プラズマエッチングを必要とする。
【0030】
[0029] 上記のように、前の、及び/又は次のプロセスは、他のリソグラフィ装置で実施することができ、様々なタイプのリソグラフィ装置で実施することさえできる。例えば、解像度及びオーバーレイなどのパラメータに関して要求がきわめて厳しい一部の層は、デバイス製造プロセスにおいて、要求があまり厳しくない他の層よりも高度なリソグラフィツールで実施することができる。したがって、一部の層は、液浸タイプのリソグラフィツールで露光することができ、一方、他の層は、「ドライ」ツールで露光される。一部の層は、DUV波長で動作するツールで露光することができ、一方、他の層は、EUV波長の放射線を使用して露光される。
【0031】
[0030] リソグラフィ装置によって露光される基板が、正確且つ一貫的に露光されるために、露光された基板を検査して、基板層間のオーバーレイエラー、線太さ、クリティカルディメンジョン(CD)などの特性を測定するのが望ましい。相応して、リソセルLCが配置された製造設備は、メトロロジシステムMETも含み、メトロロジシステムMETは、リソセルで処理された基板Wの一部又はすべてを受け入れる。メトロロジの結果は、監視制御システム(SCS)138に直接的に、又は間接的に供給される。エラーが検出されると、特に、同じバッチの他の基板がそれでも露光される程度にすぐに、且つ素早くメトロロジを行うことができる場合に、次の基板の露光を調整することができる。また、すでに露光された基板は、歩留まりを改善するために剥がして再処理するか、又は廃棄することができ、それにより、欠陥があると分かっている基板に対するさらなる処理の実施を回避する。基板の一部のターゲット部分だけに欠陥がある場合に、良好であるターゲット部分に対してだけ、さらなる露光を実施することができる。
【0032】
[0031] 製造プロセスの所望の段階で、製品のパラメータの測定をするために設けられたメトロロジ装置140も
図1に示されている。最新のリソグラフィ製造設備のメトロロジ装置の一般的な例には、スキャトロメータ、例えば、角度分解スキャトロメータ又は分光スキャトロメータがあり、このスキャトロメータは、装置122でエッチングを行う前に、120の現像された基板の特性を測定するのに使用することができる。メトロロジ装置140を使用して、例えば、オーバーレイ又はクリティカルディメンジョン(CD)などの重要な性能パラメータが、現像されたレジストにおいて特定の精度要件を満たしていないことを明らかにすることができる。エッチングステップの前に、現像されたレジストを剥がし、リソクラスタによって基板120を再処理する機会が存在する。やはり公知のように、装置140からのメトロロジの結果142を使用して、リソクラスタでのパターン形成処理の高精度な性能を維持し、監視制御システムSCS及び/又は制御ユニットLACU106によって、長期にわたる小調整を行い、それにより、製品が仕様から外れる、及び再処理を必要とするリスクを最小限にすることができる。当然のことながら、メトロロジ装置140及び/又は他のメトロロジ装置(図示せず)は、処理済み基板132、134及び投入基板130の特性を測定するのに適用することができる。
【0033】
[0032] メトロロジ装置140は、必要に応じて、複合メトロロジシステムを構築することができる。最新のリソグラフィ製造設備のメトロロジ装置の一般的な例には、スキャトロメータ、例えば、角度分解スキャトロメータ又は分光スキャトロメータがあり、このスキャトロメータは、通常、装置122でエッチングを行う前に、現像された基板の特性を120で測定するのに使用することができる。
【0034】
[0033] リソグラフィ製造技術の各世代(通常、技術「ノード」と呼ばれる)は、CDなどの性能パラメータに対して厳密な仕様を有する。メトロロジにおける主要な問題の1つは、製品内のフィーチャのサイズがますます小さくなり、このより小さいフィーチャサイズは、メトロロジターゲットの構造にも反映されるべきである。相応して、メトロロジ装置140は、従来の可視又は紫外波長よりも短い波長の放射と共に動作するように設計された検査装置を含むことができる。特定の例として、1~10nm又は1~20nmの範囲の波長を有する軟x線(SXR)放射を使用することができるし、又は、より一般的には、1~100nm又は1~50nmの範囲の波長を有する極紫外EUV放射を使用することもできる。
【0035】
[0034] あらゆる用途に対して単一の検査装置を利用するのではなくて、実際上、様々な検査装置を使用することができる。複合メトロロジシステムは、様々な波長で機能するスキャトロメータと、その他のタイプの検査装置と、を含むことができるので、所与のターゲット構造に対して対象となる1つ又は複数のパラメータのより良好な全測定値を得るために、複合メトロロジシステム内で複数の種類の測定を行うことができる。
【0036】
[0035] 複合メトロロジシステム内の各検査装置は、特定の特性の放射用の特定の照明系を有することができる。組み合わせることができる装置のタイプのより詳細な例は、上記に説明した、係属中の国際特許出願第PCT/EP2016/080058号に提示されている。本開示において、メトロロジ装置140は、100nmよりも短い波帯の軟x線(SXR又はEUV)放射を使用する検査装置と想定される。このSXR検査装置は、複合メトロロジシステム内の検査装置の1つとして使用することができるが、必要に応じて、単独で使用することもできる。
【0037】
[0036]
図2は、単なる例として、斜入射でEUV/SXR放射を使用する分光スキャトロメータを含む検査装置302の概略的な物理構成を示している。検査装置の代替の形態は、より長い波長で動作する従来のスキャトロメータと同様に垂直又は垂直に近い入射で放射を使用する角度分解スキャトロメータの形態で設けることができる。検査装置302は、放射源310、照明系312、基板サポート316、検出系318、及びメトロロジ処理ユニット(MPU)320を含む。この例では、放射源310は、高調波発生(HHG)技術に基づくEUV又は軟x線放射の発生機を含む。そのような放射源は、例えば、KMLabs, Boulder Colorado, USA (http://www.kmlabs.com/)から入手可能である。放射源の主コンポーネントは、駆動レーザ330及びHHGガスセル332である。ガス供給部334は、適切なガスをガスセルに供給し、ガスは、任意選択で、電源336によってイオン化される。駆動レーザは、例えば、光増幅器を有するファイバ型レーザとすることができ、必要に応じて、最大で数メガヘルツのパルス繰返し数で、パルス当たり1ns(1ナノ秒)未満だけ持続できるパルス状の赤外放射を発生させる。赤外放射の波長は、例えば、1μm(1ミクロン)近辺とすることができる。レーザパルスは、第1の放射ビーム340としてHHGガスセル332に送られ、ガス中で、放射の一部分は、第1の放射よりも高い周波数に変換されて、1つ又は複数の所望の波長のコヒーレントの第2の放射を含むビーム342になる。
【0038】
[0037] 第2の放射は複数の波長を含むことができる。放射が単色の場合に、測定計算(例えば、再現)は簡単化することができるが、HHGを用いて複数の波長を有する放射を発生させることはより容易である。ガスセル332内のガス量はHHG空間を画定するが、空間は完全に閉じられる必要はなく、静的体積の代わりにガス流を使用することができる。ガスは、例えば、ネオン(Ne)又はアルゴン(Ar)などの希ガスとすることができる。N2、O2、He、Ar、Kr、Xeガスはすべて、単体か、又は混合物かのいずれかで対象となり得る。これらは、設計選択事項であり、同じ装置内で選択可能なオプションとすることさえできる。様々な波長は、例えば、様々な材料からなる構造の像を形成する場合に、様々なコントラストレベルをもたらす。金属構造又はシリコン構造を検査する場合に、例えば、(炭素系)レジストのフィーチャの像を形成するのに、又はそのような様々な材料の汚染を検出するのに使用されるものに合わせて様々な波長を選択することができる。1つ又は複数のフィルタデバイス344を設けることができる。例えば、薄膜アルミニウム(Al)などのフィルタは、基本IR放射が検査装置内をさらに進むのを遮断するように機能することができる。格子(図示せず)は、ガスセル内で発生したものの中から1つ又は複数の特定の高調波波長を選択するために設けることができる。ビーム路の一部又はすべては、真空環境内に収容することができ、SXR放射は、空中を移動するときに吸収されることに留意されたい。放射源310及び照明光学系312の様々なコンポーネントは、同じ装置内で様々なメトロロジ「レシピ」を実施するように調整可能である。例えば、様々な波長及び/又は偏光を選択可能にすることができる。
【0039】
[0038] 様々な波長により、検査下の構造の材料に応じて、下側層への所望の侵入レベルをもたらすことができる。最小デバイスフィーチャと最小デバイスフィーチャの中の欠陥とを解像する場合に、短い波長が好ましいと考えられる。例えば、1~20nm又は1~10nmの範囲の1つ又は複数の波長を選択することができる。半導体製造において一般的に対象となる材料から反射する場合に、5nm未満の波長には、臨界角がきわめて小さいという欠点がある。したがって、5nmを超える波長を選択することで、より高い入射角の強い信号が得られる。他方で、検査作業が、特定の材料の存在を検出する、例えば、汚染物を検出するためである場合に、最大で50nmまでの波長が有用であり得る。
【0040】
[0039] 放射源310から出て、フィルタを通ったビーム342は検査チャンバ350に入り、検査チャンバでは、対象となる構造を含む基板Wが、検査を行うために基板サポート316によって保持されている。対象となる構造はTの符号が付いている。検査チャンバ350内の雰囲気は、真空ポンプ352によってほぼ真空に維持されるので、EUV放射は、雰囲気中で過度の減衰なしに進むことができる。照明系312は、放射を集束ビーム356に集束させる機能を有し、例えば、上記の国際出願第PCT/EP2016/080058号に記載しているように、二次元的に湾曲したミラー、又は一次元的に湾曲した一連のミラーを含むことができる。集束は、対象となる構造上に投射される場合に、直径が10μm未満の円形又は楕円形のスポットSを得るために行われる。基板サポート316は、例えば、X-Y並進試料台及び回転試料台を含み、基板Wの任意の部分は、これらの試料台によって、所望する向きでビームの焦点に運ぶことができる。こうして、放射スポットSが、対象となる構造上に形成される。
【0041】
[0040] 反射放射360は、検出器318によって取り込まれ、ターゲット構造Tの特性の計算に使用するために、スペクトルがプロセッサ320に供給される。照明系312及び検出系318は、こうして検査装置を形成する。この検出装置は、米国特許出願公開第2016/282282A1号に記載された種類のSXR分光反射率計を含むことができる。1つ又は複数の次元の基板の傾斜も得ることができる。
【0042】
[0041] スポットSと所望の製品構造とのアライメント及び焦点を合わせる助けとするために、検査装置302は、メトロロジプロセッサ320の制御下で、補助放射を使用する補助光学部品を設けることもできる。メトロロジプロセッサ320は、並進試料台及び回転試料台を動作させる位置コントローラ372と通信することもできる。メトロロジプロセッサ320は、センサを介して、基板の位置及び向きに関する高精度なフィードバックを受け取る。センサ374は、例えば、ピコメートル程度の精度をもたらすことができる干渉計を含むことができる。検査装置302の動作時に、検出系318によって取り込まれたスペクトルデータ382は、メトロロジ処理ユニット320送られる。
【0043】
[0042] 説明したように、検査装置の代替形態は、例えば、回折に基づく非対称性測定を行うために、垂直入射又は垂直に近い入射でSXR放射を使用する。複合メトロロジシステム内に両方のタイプの検査装置を設けることができる。測定される性能パラメータには、オーバーレイ(OVL)、クリティカルディメンジョン(CD)、コヒーレント回折イメージング(CDI)、及びアット-リゾルーションオーバーレイ(at-resolution overlay、ARO)メトロロジがあり得る。SXR放射は、例えば、100nm未満の波長を有することができて、例えば、5~30nmの範囲の放射を使用する。放射は、特性的に狭帯域又は広帯域とすることができる。
【0044】
[0043] 今日の製造設備で使用される光学スキャトロメータと同様に、検査装置302は、リソセル内で処理されたレジスト材料内の構造を測定する(現像後検査又はADI(After Develop Inspection)として公知)ために、及び/又は、構造が硬質材料で形成された後、構造を測定する(エッチング後検査又はAEI(After Etch Inspection)として公知)ために、使用することができる。例えば、基板は、現像装置112、エッチング装置122、アニール装置124、及び/又は他の装置126で処理された後、メトロロジ装置302を使用して検査することができる。
【0045】
[0044]
図3は、高調波発生(HHG)源の動作原理を示している。そのような放射源では、高出力フェムト秒パルス状IRレーザ(駆動レーザ330)は、第1の放射ビーム340を発生させる。
図3に実線で概略的に示すように、ビーム340は、HHG発生空間内の点402で合焦している。ノズル404は、Ne、Ar、又は第1の放射と相互作用する他の原子を含むガスジェット406を送出する。焦点位置の周囲で第1の放射によって発生した大きな振動電場は、電子をガス原子から移動させる。再結合時に、エネルギ性光子が、ポンピング光と同期するが、高調波エネルギを伴って発生する。これは、第2の放射ビーム342(点線)をもたらす。対象となるSXR/EUV光子は、任意の媒体への非常に短い侵入深さを有するので、ガスジェットは、常に低圧に減圧される真空チャンバに配置される。HHG放射源装置の別のタイプでは、ガスは、ポンピング光と共に細長い光ガイド内に閉じ込められる。動作原理は、どちらの場合も同じである。
【0046】
[0045] HHG放射源に基づく検査装置を大量製造設備に適用するには、手動設定の手順によってもたらされるものに勝るHHG放射源装置のある程度の制御及び安定性と、既存の放射源の短い運転時間と、が必要である。ガスジェットに対するポンピング光集束の位置、形状、及び大きさ、さらには、ガスジェット自体の幾何形状、流量、圧力、及び安定性などの特性は、強力で安定した出力の望ましい放射を発生させるのに重要なパラメータであると考えられる。
【0047】
[0046]
図4は、HHG放射源装置の動作を悪化させることがある動作状態のいくつかの偏移を概略的に示している。
図4(a)では、ポンピング光は、ガスジェットからずれた点402’で集束しており、ガスジェット内の電場の最大振幅の低下をもたらし、結果として、HHGプロセスの不具合/効率低下をもたらす可能性がある。(b)で、ポンピング光は不完全に集束し、この場合も、電場の最大振幅の低下をもたらす。(c)で、ポンピング光は、ガスジェット内の点402”で集束しているが、設計位置402からずれている。ガスジェットの形態は、この点において異なることがあり、HHGプロセスの不具合/効率低下をもたらす可能性があり、及び/又は、第2の放射342が、照明系312に対して不正確に配置されることになる。(d)で、ポンピング放射は、望ましい位置で集束しているが、ガスジェットの状態が、例えば、誤った圧力又はノズルの摩耗により悪化し、この場合も、HHGプロセスの不具合/効率低下をもたらす可能性がある。これらの4つの例は、起こり得る偏移の一部に過ぎない。現在のところ、上記のパラメータの大部分は、発生したEUV光の(波長依存の)強度を評価しながら、手動で調整されている。
【0048】
[0047] 本開示は、EUV出力を安定化及び最適化する自動フィードバックループを用いて、産業上より利用可能な放射源装置の提供を可能にすることを目的とする。HHGプロセスから発生するイオンにさらされる光学コンポーネントの摩耗を含む、ノズル摩耗以外の摩耗状態も発生し得る。そのようなコンポーネントには、真空システム入射窓と、真空内部にある場合のポンピング光集束光学部品と、があり得る。「摩耗」状態と考えることができる他の状態には、ガス組成及びガス純度のばらつきがある。制御されるガス混合物を使用することができ、このガス混合物は、長期にわたって変化したり、又は、例えば、ガスが経済的な理由から再利用される場合に、不純物が蓄積したりすることがある。
【0049】
[0048] 再度
図2を参照して、本願は、(いくつかの実施形態では、複数のスペクトル成分に対する)放射ビーム356の波面を検出することで、HHG放射源装置及び照明系の動作状態を観測するための1つ又は複数のセンサを設けることを提案するものである。様々な実施形態が、それぞれ単なる例として説明される。図示した例では、波面センサ700は、ビーム誘導デバイス422を介して集束ビーム356の少なくとも一部分356’を受け入れる。すなわち、この例での波面センサは、照明系312の最後の合焦要素の下流の点で、第2の放射342の一部分を受け入れる。この方法では、波面センサを使用して、HHG発生空間の動作状態についての情報を得ることができるが、照明系312の特性も考慮に入れる。他の実施形態では、波面センサは、合焦要素より上流から放射342を受け入れることができるし、又は合焦要素は存在しなくてもよい。
【0050】
[0049] ビーム誘導デバイス422は、ビームの主要部分が、ターゲットT上にスポットSを形成し続けている間、ビーム356の一部分をセンサに分流するビームスプリッタとすることができる。この方法では、波面センサは、ターゲットの測定と同時に連続して動作することができる。他の実施形態では、ビーム誘導デバイス422は、ビーム356の通路内に断続的に配置される可動要素とすることができ、そのため、波面センサは、ターゲットの測定の合間にだけ動作し、ターゲットの測定は、第2の放射342の減少及び擾乱を最小限にして行われる。第2の放射342が、SXR又はEUV波帯の波長を有する例では、当然のことながら、透過型光学要素は設けるのが困難である。しかし、ビームスプリッタは、非常に薄い多層デバイス又は非常に薄い金属フィルムとして実装することができる。可動要素の例では、多層リフレクタ、又は金属面も想定することができる。
【0051】
[0050] 説明するように、波面センサ700は、放射ビーム356’の通路に配置された、凹部アレイ又は凹部付き薄膜フィルム710と、凹部アレイによって形成された2次元スポットパターンを取り込むための検出器又はイメージセンサ725と、を含む。凹部アレイの各凹部は窪みである。波面プロセッサ428は、スポットパターンを表す像信号(アナログ又はデジタルデータ)を検出器725から受け取り、スポットパターンの情報から波面情報WFを導出する。放射源装置及び照明系の動作状態を表す1つ又は複数の信号430(アナログ又はデジタルデータ)を生成することができる。
【0052】
[0051] 本明細書に開示するいくつかの実施形態の修正波面センサを使用して、波面情報WFがスペクトル的にも空間的にも分解される。波面情報は、自動フィードバック制御ループを構築して、放射源装置310の動作を制御するために、コントローラ432により使用することができる。それに代えて、又はそれに加えて、放射源装置の動作状態を表す信号は、例えば、摩耗状態の不良状態を検出し、動作を緊急に中断するために、又は保守作業のスケジュールを組むために、診断目的で監視することができる。それに代えて、又はそれに加えて、波面情報をメトロロジプロセッサ320で使用して、対象となるパラメータのより正確な測定値を引き出すようにスペクトルデータ382の処理に影響を及ぼすことができる。他のタイプのセンサをさらに使用して、動作状態に関するさらなる情報を得ることができる。
【0053】
[0052] 放射源310内で制御可能な動作パラメータの例が下記にさらに説明される。例として、
図2は、HHGセル332より上流の第1の放射340の通路で波面修正するための補償光学デバイス440を示している。本件の優先日に公開されていない、欧州特許第3296723号(参照により本明細書に組み込まれる)は、検査装置の照明系312の光学要素の「傾斜エラー」を補正するための、したがって、測定スポットのぼけを最小限にするための波面の補正について記載している。欧州特許第3296723号は、この傾斜エラーを補正する較正が1回限りの較正である実施形態について記載しており、補償光学デバイスが設定されると、さらなる調整を必要としないことが期待される。そのような実施形態では、較正ステップは、構築時に一度だけ行うことができる。他の実施形態では、較正ステップは、周期的に繰り返される必要があり得る。波面のリアルタイムの閉ループ制御を可能にするために、補償光学デバイス440は、プログラム可能な空間光変調器(SLM)とすることができる。言うまでもなく、ビーム送出システムの実際の実施例は、いくつかの光学要素を含み、簡略化した図面で示したような単一レンズではない。図面は、単に図解を簡略化するために、透過型SLMデバイスを示していることに留意されたい。出力がレーザビームであるために、実用的な実施例は、反射タイプのSLM(例えば、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)アレイ)を使用することができる。
【0054】
波面センサの背景
[0053]
図5は、従来のハルトマンタイプの波面センサの動作原理を示している。開口アレイ502は、放射ビームの通路に配置され、イメージセンサ504は、例えば、CCD又はCMOSイメージセンサである。開口アレイ502は、例えば、開口506が、次元X、Yで規定される平面内で規則的なアレイの形で離間した金属プレートを含む。波面センサに垂直にZ方向に接近した放射は、開口アレイを通り抜け、そのため、同様にX-Y平面に配置されたイメージセンサ504上にスポット508のアレイを形成する。放射ビームが完全に同位相の平行光線のみを含み、Z軸に完全に合致するように、放射ビームが理想的な平面状の波面を有する場合に、各スポットは、対応する開口506の真後ろに形成される。他方で、実際のビームは、図面に示す凸形波面510などの何らかの傾斜及び/又は湾曲形態を有する。この場合に、波面は、開口アレイ内の各位置において特定の態様で傾斜し、対応するスポット508は、その傾斜に応じた位置ずれを伴ってイメージセンサ504上に形成される。相対位置ずれは、スポットの絶対「ゼロ偏位」位置が未知の場合でさえ、観察及び測定することができる。
【0055】
[0054] イメージセンサ504の拡大した一部分が504aで示されており、1つのスポット508(白丸)を示し、さらに、同じスポットに対する基準位置508r(黒丸)を示している。イメージセンサ504は、実際のスポット508の基準位置508rからの偏位512が、開口アレイの各開口506ごとに、二次元的に検出及び定量化され得る十分な空間分解能(十分なピクセル密度)を有する光検出器要素(ピクセル)のアレイを含む。波面プロセッサ520は、イメージセンサ504から像データを受け取り、波面情報522を出力する。波面プロセッサ520は通常、適切なプログラム可能なプロセッサにプログラムを組み入れることで構築することができ、例えば、多段階で動作することができる。第1の処理段階524は、スポット508の位置を検出するために、イメージセンサ504からの像を解析する。第2の段階526は、開口アレイ内の各位置で波面510の局所傾斜を求めるために、スポット508の位置を基準位置508rと比較する。第3の段階528は、全波面のモデルを得るために、局所傾斜のアレイを統合及び補間する。この波面モデルは、波面情報の例として出力することができる。波面モデルは、例えば、ツェルニケ又は他の多項式表現を使用して、局所傾斜ベクトルのアレイとして、及び/又はパラメータ化モデルとして表すことができる。
【0056】
[0055]
図6は、公知のシャック-ハルトマン波面センサの一部を示している。このシャック-ハルトマン波面センサは、
図5に示すハルトマンセンサと全く同じ原理で動作し、同様の部分は、接頭辞「5」の代わりに接頭辞「6」を用いることを除いて同様の参照番号を有する。シャック-ハルトマンセンサの主要な相違は、単純な開口606のアレイの代わりに、ミニチュアレンズ606(小型レンズ又はマイクロレンズ)などの合焦要素のアレイ602が設けられていることである。これにより、取り込まれる光量の改善がもたらされ、イメージセンサ604上のスポット608の強度が高められる。取り込まれる光の増加によって、取得時間の短縮及び/又は達成される測定精度の向上がもたらされる。スポット位置として検出された局所的な波面傾斜は、1つの小さい開口におけるものではなく、合焦要素の領域にわたる傾斜の平均になる。波面は、このアレイの規模では比較的平滑であると想定される。
【0057】
[0056] なお、
図5に示す開口アレイ502は、示したように放射を透過する実際の開孔アレイによって構築されるが、同じ機能は、放射を局所的に反射する反射スポットのアレイで実施することもできる。どちらの実施例も本開示に対して有効であるが、それぞれは、実施の際にそれ自体の実用的な利点及び問題をもたらす。同様に、合焦要素606のアレイ602は、透過式の小型レンズによって従来通り構築できるが、成形した反射面によって構築することもできる。(反射型か、又は透過型のいずれかのフレネルゾーンプレートを使用する)回折による合焦は、原理的にさらに別のオプションである。反射オプションは、そのような波面センサが、屈折要素が容易に利用できないEUV/SXR波長用に設計された場合に、より実用的であり得る。しかし、これらの配置はいずれも理想的ではない(反射性小型レンズは、それ自体に問題がある)。提案されるフィルムベースの波面センサ(以下)は、EUV/SXR放射を使用する場合、中でもとりわけ、検出器上に集束させる課題に対処することを目的とする。
【0058】
[0057] 従来の波面センサについて留意すべきもう1つの点は、従来の波面センサが、単色イメージセンサ504、604を使用することである。したがって、様々な波面形状を有することができる様々なスペクトル成分の分解はない。スペクトル分解を付加する従来の試みは、単に低い空間分解能という犠牲を払って試行しているに過ぎず、EUV及びSXR波長などのすべての波長に対応していない。
【0059】
[0058]
フィルムベースの波面メトロロジデバイス
上記の課題を考慮して、HHG源によって生成されたものなどの、EUV放射(例えば、0.01~100nm、0.1~100nm、1~100nm、1~50nm、5~30nm、1~20nm又は10~20nmの波長)の波面を測定する課題の多くに対処する、フィルムベースの波面メトロロジデバイス又は波面センサが提案される。フィルムベースの波面センサの任意選択の実施形態はまた、(例えば、広帯域HHG源からの)広帯域EUV放射の異なる波長を別々に測定するのに十分なスペクトル分解能を提供する。提案されるフィルムベースの波面センサは、凹部アレイを含む、適切な材料の凹部付きフィルムを使用して、上記放射を検出面(例えば、検出器)又はその周辺に集束させる。検出面の周辺では、例えば、検出面から1cm以内又は1mm以内を含むことができる。
【0060】
[0059] (
図5に示すような)従来のハルトマンタイプの波面センサに関する1つの課題は、正確な波面特定を得るために、開口は全ビームサイズに対して小さい必要があることである。例えば、開口直径は、50マイクロメートルの範囲の直径に制限することができる。結果として、開口を透過する光量が非常に少ない。これにより、データ取得時間が長くなり、測定の精度が低くなる(例えば、検出器上のスポットの中心の特定が不正確である)。小型レンズアレイを使用してこのことに部分的に対処することは、既に説明したように、EUV/SXR放射を使用する場合、それ自体に問題がある。
【0061】
[0060] 従来のハルトマンセンサの別の欠点は、広帯域スペクトルを測定するために使用される場合、異なる波長に関係する検出スポットが、検出器上で重なり、検出スポットの重なりを解くことができないことである。説明したHHG源の放射源出力は、波長ごとに異なる波面特性を有することが予想される。このことは、従来のセンサを用いた正確な波面測定を妨げるだけではない。波長依存情報を使用して、代わりに失われる追加の有益な情報を提供することもできる。広帯域波面検出方法は、L. Freisem, G.S.M. Jansen, D. Rudolf, K.S.E. Eikema and S. Witte, Spectrally resolved single-shot wavefront sensing of broadband high-harmonic sources, Opt. Express 26, 6: 6860-6871 (2018)で説明されていた。この文献は、開口ごとの光を+1及び-1の回折次数に分散させるために開口アレイの各開口内に小さな透過格子又は位相格子を設けることを説明している。その結果、異なる波長に関係する回折次数がもはや重なり合わず、波長ごとの波面を求めることができる。しかし、格子を開口内に配置することによって、各開口を透過する光量がさらに低減される。色ごとに検出された回折次数は、単一の穴を透過したすべての光のほんのごく一部を含み、これは、広帯域光のほんの一部であり、格子の回折効果によるさらなる損失を伴う。
【0062】
[0061] 狭帯域であれ広帯域であれ、より多くの開口を開口アレイに設ける(開口密度を増加させる)ことによって、原則として、より良好な波面推定が提供される(特に、より高次の変動の検出が可能となる)。しかし、これはまた、検出器上のスポット間のクロストークに起因して、スポット位置を正確に求めることをより困難にする。このことは、各開口がすべての回折波長に対して検出器上に一連のスポットを提供するので、格子が開口内に設けられる場合に特に問題である。
【0063】
[0062] 提案されるフィルムベースの波面センサは、ハルトマン型センサの概念を用いて、開口ごとに且つ全体として収集される光量を増加させる。この手法は、測定される放射の特性及び/又は放射から求められる所望の特性に応じて、狭帯域構成(例えば、格子なし)又は広帯域構成(例えば、格子あり)で使用することができる。
【0064】
[0063]
図7は、波面705のメトロロジを実施するためのフィルムベースの波面センサ700を示している。
図7(a)は、凹部715のアレイを含む、凹部付き薄膜フィルム710を含むセンサ装置を示している。
図7(b)は、凹部付き薄膜フィルム710の断面の詳細を示している。各凹部715は、部分球状とするか、さもなければ、放射720を検出器725上に集束させるように最適化することができる。
図7(b)に示すように、各凹部715は、深さDと直径Wとを有し、凹部715は、ピッチPだけ離間して配置される。これらのパラメータの1つ、いくつか又はすべては、(例えば、測定される放射の特性及び/又は任意の特定の用途に応じて)波面メトロロジのために最適化することができる。例えば、各凹部の直径Wは、100μmよりも大きく、200μmよりも大きく、300μmよりも大きく、又は500μmよりも大きくすることができる。フィルムベースの波面センサ700の基本動作は、既に説明したハルトマンセンサと同じであり、すなわち、波面705は、入射放射が完全にコリメートされている場合の正常な位置に対する検出器725によって検出されたスポットの変位d、d’によって特徴付けられる。アレイ(凹部アレイ及び位置アレイなど)という用語は、規則的アレイと狭義に定義されるべきでないことに留意すべきである。このようなアレイは通常、略規則的であるが、これは必須ではない。これに関連してアレイという用語は、例えば、不規則アレイ(不規則パターン)、非直交アレイ、ランダムアレイ/配置などを包含すると理解されるべきである。
【0065】
[0064]
図7に示す実施形態では、凹部715のアレイは、凹部付き薄膜フィルム710の表面平面に且つ一側面に位置する。一側面とは、フィルムの上面側と底面側のいずれかを意味する。別の実施形態では、凹部715のアレイは、
図9(b)の例に示すように、多数の層を含み得る、凹部付き薄膜フィルム710のインターフェイス平面に且つ一側面又は両側面に位置することができる。別の実施形態では、凹部715のアレイは、
図9(c)の例に示すように、凹部付き薄膜フィルム710の表面平面又はインターフェイス平面に且つ両側面に位置することができる。ここでは、両側面とは、対向する2つの側面、すなわち、フィルムの上面側と底面側の両方を意味する。
【0066】
[0065] 凹部付き薄膜フィルム710は、検出器725上での集束効果を有する放射720の良好な透過のための適切な特性を有する材料又は多数の材料で構成されるべきである。したがって、材料は、最大の光学コントラストを提供するために1未満であり(n<1)且つできるだけ小さい実部と、使用される放射(例えば、1nm~100nm又は1nm~50nm又は1nm~20nm又は10nm~20nmのEUV/SXR放射)の透過及び垂直又は略垂直な入射角(例えば、垂線から20度未満、10度未満又は5度未満)のために最適化された虚部とを有する屈折率を有するべきである。屈折率の実部は小さいが無視できないので、凹部715の曲面で屈折が生じ、対象となる波長においてn<1であるので、凹状凹部は、放射720を検出器725上に集束させるための正レンズとして機能する。したがって、13.5nmの放射(例えば)に対して、例えば、0.999未満、0.99未満、0.98未満、0.97未満、0.96未満又は0.95未満のn値を有する材料が適切である。フィルムは、対象となる波長に対して実質的に透過性であるべきである。したがって、k値(消光係数)は、EUV波長において最小である、例えば、13.5nmの放射に対して0.4未満、0.2未満、0.15未満又は0.13未満であるべきである。関連する可能性がある別の因子は分散であり、分散は、放射が広帯域である場合に、すべての波長が同じ検出器平面上に集束されるように最小化されるべきである。分散は、狭帯域用途では、例えば、フィルタリングのために追加のアルミニウム層を使用する場合(以下に説明するように)又は狭帯域光源が使用される場合には、それほど重要ではない。
【0067】
[0066] 一実施形態では、屈折率の実部が1未満である波長範囲は、0.01~50ナノメートル、任意選択で1~50ナノメートル、任意選択で1~20nm、任意選択で8~22nm、任意選択で13~14nmである。
【0068】
[0067] 一実施形態では、フィルムは、1~50nm又は1~20nmの放射範囲の少なくとも一部に対して0.2未満の消光係数を有し、任意選択で、上記フィルムは、1~50nm又は1~20nmの放射範囲の少なくとも一部に対して0.1未満の消光係数を有し、任意選択で、上記フィルムは、1~50nm又は1~20nmの放射範囲の少なくとも一部に対して0.05未満の消光係数を有する。
【0069】
[0068] したがって、3つの主要パラメータは、
低分散、
できるだけ小さい屈折率(<1)、及び、
(少なくとも広帯域用途では)低吸収性である。
【0070】
[0069] 凹部付き薄膜フィルム710に適した材料は、例えば、MgO、Co、Ni、Cu、Zr、Zn、Ga、Ge、As、Cd、In、Pb、Bi、C、Y及びScであり、本開示の様々な態様は各々、これらの各材料の1つ又はこれらの材料の多数で構成される凹部付き薄膜フィルム710を含む。ここで、これらの材料のより詳細な検討について説明する。
【0071】
[0070] 低分散材料としては、MgO、Co、Ni、Cu、Zr、Zn、Ga、Ge、As、Cd、In、Pb及びBiが挙げられるが、これらの低分散材料のいくつかは、望ましい吸収性よりも高い吸収性又は1に非常に近い屈折率を有する(例えば、Ge)。これらの材料のうち、対象となる全波長範囲にわたって比較的低い吸収性(それゆえ、特に適した吸収性)を有する材料は、MgO、Zr、Zn、Ga、及びGeであり、一方、Cd、In、Sn、Ni、Cu、Co、Pb、及びBiは、範囲の下限(例えば、10nm)において極めて低いが、範囲の上限(例えば、20nm)に向かって著しく高まる吸収性を有する。それゆえ、これらの後者の例は、より小さい波長に対してのみの候補とすることができる。非常に低い吸収性及び適度に低い屈折率を有する、他の可能な候補としては、C、Y及びScが挙げられる。しかし、これらは極めて高い分散を有し、それゆえ、狭帯域用途にのみ実に適している。本文脈での低分散は、対象となる波長帯域に対してC、Y及びScの1つ又はすべてよりも低い分散を含むことができる。MgO及びGaは、低分散と低消光性の両方を有し、MgOは最小の屈折率を有する。Co、Ni、Cu、Zn、Cd、In及びPbは、低分散及び小さい屈折率を有する。Zr、As、C、Y及びScは、低い消光係数を有する。より狭い範囲では、Biを選択肢とすることができる。
【0072】
[0071] 低分散は、比率n_max/n_minとして定量化することができ、一方、n_max及びn_minは、それぞれ最大及び最小の屈折率である。一実施形態では、低分散は、2よりも小さく、任意選択で1.5よりも小さい。一実施形態では、低分散の範囲は、1~20nm、任意選択で10~20nmである。
【0073】
[0072] 一実施形態では、材料、例えばジルコニウムは、全波長範囲、例えば10~20nmに対して選択される材料としては不適格であり得るが、全波長領域の一部に対しては、材料、例えばジルコニウムは、依然として有効である。
【0074】
[0073]基準を満たす適切な被験材料は、ジルコニウム(Zr)である。このジルコニウムは、実現可能なフィルム厚(例えば、数百ナノメートルの総フィルム厚)に対してEUV放射の低吸収性(良好な透過率)を示す。一実施形態では、フィルム厚さは1μm未満である。一実施形態では、フィルム厚さは100nmである。一実施形態では、フィルム厚さは100nm未満である。したがって、後述の具体例では、ジルコニウムの凹部付き薄膜フィルム710を想定する。しかし、これは単なる例にすぎず、説明した基準を満たす任意の他の適切な材料を使用することができる。
【0075】
[0074] 一実施形態では、波長は1nmよりも短く、いくつかの材料では、屈折率は、1未満であるが、依然として1に近いものとすることができ、例えば、Zrの屈折率は、1nmにおいて0.999であり、0.1nmにおいて0.99999である。実際の実施は、この実施形態では比較的難しい。
【0076】
[0075] 焦点距離は、凹部の勾配に関係付けられ、したがって、凹部の深さD及び直径Wに関係付けられる。
図8は、13.5nmの放射について、D=400nmの凹部の有効焦点距離の推定値を開口直径Wの関数として示す、凹部直径W(mm)に対する有効焦点距離fe(mm)のプロット図である。見て分かるように、W=1mmである大きさの開口に対して焦点距離が100mm以内であるので、コンパクトな構成を得ることができる(検出器位置Lは、発散する入射ビームに対する焦点距離よりも大きくなる可能性があることに留意されたい)。厚さDは、開口の中心に対して75%の縁部で透過損失をもたらすが、この透過損失はまだ十分に許容できる。当然ながら、より高い透過率が望まれる場合には、より小さい開口直径Wとより小さい深さDとを選択することができる。それを文脈に即して説明すると、500μmの直径は、波面検出に現在使用されている典型的な比較できるハルトマンアレイの開口直径よりも10倍大きく、開口ごとに収集される放射の100倍の増加をもたらす。加えて、放射の集束は、典型的なハルトマンアレイの開口と比較して、凹部が互いにはるかに近接して位置決めされることを可能にし、より高密度のアレイ(より小さいピッチP)を提供する。これにより、より高次の波面収差を求めることが可能となる。一実施形態では、直径Wは、十分に実装された構成におけるピッチPに略等しい。そして、凹部アレイの全透過率は50%程度となる。
【0077】
[0076]
図9は、凹部付き薄膜フィルムの多数の異なる実施形態を示している。示し説明する代替的な凹部付きフィルムの各々は、
図7に示すフィルムベースの波面センサ700における凹部付き薄膜フィルム710の代わりに使用することができる。
図9(a)は、凹部付き薄膜フィルム710に、すなわち、フィルム710の凹部のない側に基板又は被覆730が適用される配置を示す。基板又は被覆730は、材料の単層又は複雑な多層を含むことができる。一実施形態では、そのような被覆は、機械的安定性を提供することができる。これを達成するのに適した材料は、Si3N4などの窒化ケイ素とすることができる。それに代えて又は加えて、基板又は被覆730は、帯域幅フィルタリングのために提供され得る。具体例として、18nm未満のすべての波長は、アルミニウム層によって遮断され、一方、ジルコニウムの凹部付きフィルム710は、20nmを超えるすべての波長を遮断する。それゆえ、被覆されたフィルムは、狭帯域通過フィルタとして作用し、広帯域光源を使用して狭帯域での波面メトロロジを可能にする。放射源の放射スペクトル特性及び所望の帯域幅フィルタリングに応じて、他の材料を使用できることは明らかである。
【0078】
[0077]
図9(b)及び
図9(c)は、異なる屈折率を有する別の材料(例えば、アルミニウム又はニオブ)の光学特性を使用して、凹部から生じる色収差を補正する、別の実施形態を示す。焦点距離は、ジルコニウムの屈折率分散による波長(色収差)に依存する。この他の材料の層735をジルコニウムの凹部付きフィルム710の上に(
図9(b))又は同様に凹部付き層740をジルコニウムの凹部付きフィルム710の下に(
図9(c))加えることによって、色収差は、追加材料の光学特性によって許容される程度まで最適化することができる。色収差を補償するためにそのような追加の層735、740に使用できる負の分散材料としては、In、Sn、Sb及びTeが挙げられる。
【0079】
[0078] 広帯域光源の波面に関する波長依存情報を得るために格子を使用するという既に説明した概念は、凹部付きフィルムの概念と組み合わせることができる。このことは、HHG源が本質的に広帯域であるので特に有益である。
図9(d)は、凹部付きフィルム710の各凹部715に回折格子745などの分散要素が設けられる配置を示す。この実施形態では、放射は、格子側から(
図9(d)に示すように下から)入射し、まず格子745で回折し、次いで、凹部715によって直ちに集束される、すなわち、凹部付きフィルム710は、
図7に示すものに対して反転されていることに留意すべきである。ジルコニウムでの分散は、異なる焦点距離をもたらすことも理解すべきである。しかし、検出器は、少なくとも部分的な集束が行われるように平均距離に配置することができる。集束のために、より低いスペクトル分解能が格子から必要とされ、したがって、格子はより大きなピッチを有することができ、及び/又はより高いスペクトルパワーを達成することができる。凹部ごとの各波長の回折角が小さいほど、様々な凹部からの回折次数が重なり合わない、より高い凹部密度(アレイごとのより多くの凹部)を可能にする。格子745は各々、振幅格子又は位相格子を含むことができることに留意されたい。
【0080】
適用例
[0079] ここで、多数の適用例について説明する。このセクションでは、放射源に関係するパラメータの監視及び/又は調整について詳細に説明する。しかし、これらは単なる例であり、提案されるフィルムベースの波面センサには他にも多くの可能な用途がある。他の用途は、例えば、照明光学系のアライメント及び/又は監視に関係し、本明細書における概念は、そのような用途での波長センサの出力の使用に等しく適用される。
【0081】
[0080] 上記の例のいずれかにおいて、フィルムベースの波面センサ700から得られる情報は、動作する放射源装置の様々なパラメータを観測及び/又は調整することができる。リアルタイムに観測できる(且つ自動で又は手動で調整できる)パラメータ及び状態の例には、
1)ポンピング光の方向と、
2)ポンピング光焦点の位置決めと、
3)ポンピング光の波面(例えば、空間光変調器440を修正する、又は再プログラミングすることによる)と、
4)ガス流設定、ノズル形状、及び他のガスジェットパラメータと、
5)ガスジェットノズル劣化と、
6)ガス組成及び純度と、
がある。
【0082】
[0081] この例の波面センサは、照明系312の集束装置より下流に配置され、照明系内のパラメータ及び状態は、別々にか、又は、放射源及び照明系の組み合わせのパラメータとしてか、のいずれかで観測することができる。
【0083】
[0082]
図10は、
図2の放射源装置及び検査装置の制御系の例示的なブロック図である。
図2のハードウェア図面の特定可能なコンポーネントは破線で示され、同じ参照符号を付けられている。例えば、駆動レーザ330、波面補償デバイス(SLM)440、及びガス406が示され、ポンピング光(第1の放射)430及び出力EUV放射(第2の放射)432が示されている。レーザビーム送出システム902が示されている。波面センサ700は、同時に、又は断続的にターゲットTに向けられるEUV放射356の少なくとも一部分356’を受け入れる。波面センサ700からの波面情報430は、フィードバックコントローラ432によって処理される。904、906、908、及び910で概略的示すハードウェア要素の動作パラメータは、フィードバック制御を実施し、放射源装置及び/又は照明系の動作を長期にわたって安定化するフィードバックプロセッサ432(又は別のフィードバックプロセッサ)によって調整される。
【0084】
[0083] 挙動の解析及び/又は経験的観察、並びに観測に基づいて、様々な機構をフィードバックコントローラに構築することができる。フィードバック動作の例には、以下のものがあり得る。
・駆動レーザ軸に沿った駆動レーザ集束レンズ及び/又はガスジェットの位置の移動は、発散度、空間コヒーレンス特性、及び/又は高調波のスペクトル幅の変化に応じて制御することができる。
・駆動レーザ集束レンズの横移動、又は入射駆動レーザビーム方向の角度は、波面傾斜によって示されるHHビームの方向の変化に応じて制御することができる。
・HHG相互作用領域のガス圧は、HHGビームの観測した強度及びスペクトル成分から導出された位相整合特性の変化に応じて制御することができる。
・駆動レーザ強度、例えば、ピーク強度は、HHG放射強度、及び、任意選択でスペクトル成分の変化に応じて制御することができる。
・駆動レーザビームの空間形状は、HHG放射ビームの発散度及び空間特性と、任意選択で強度との変化に応じて、(調整可能な開口か、又は空間光変調器440かのいずれかを通じて)変えることができる。
・レーザパルス形状及びパルス長は、HHG放射強度及びスペクトル成分の変化に応じて、レーザ増幅システムのパルスコンプレッサを変化させることによってか、ビームを発散させることによってか、又は空間光変調器440などのパルス成形デバイスによって変えることができる。
【0085】
[0084] ハードウェア制御の機能は、波面センサ信号から動作状態を導出するのと同じ処理ハードウェアで実施することができる。この処理ハードウェアは、波面プロセッサ自体及び/又はメトロロジプロセッサ320と統合することもできる。他の実施例では、観測信号の処理及び制御機能は、別々の処理ハードウェアで実施することができる。取り込んだ回折像信号がデジタル化されると、動作状態を導出するための、及び/又は適切なフィードバック制御動作を定めるための回折像信号の解析は、既定の応答、及び/又は適応性のある機械学習応答を用いて、適切なプログラミングによって実施することができる。
【0086】
[0085] やはり説明したように、放射源装置310及び/又は照明系312を制御するのに代えて、又はそれに加えて、波面情報は、912でメトロロジプロセッサ320に供給することができる。この場合に、この波面情報を使用して、ターゲットTの特性及び/又はリソグラフィプロセスの性能パラメータの計算を修正することができる。例えば、検出器318からの信号の処理は、波面形状及び/又は(測定された場合)放射ビーム356のスペクトル特性に関する特定の仮定に基づくことができる。例えば、ビームは、それぞれの波面形状及び強度を有するスペクトル成分の特定の混合物を含むと仮定することができる。ビームに交差する様々な位置での様々なスペクトル成分に対する実際の波面形状及び強度を示す波面情報が得られた場合に、対象となる特性の計算は、調整してより正確にすることができる。したがって、波面センサを使用して、放射源装置の安定性を改善する、又はメトロロジ装置によって行われる測定のロバスト性を改善する、又はその両方を改善することができる。
【0087】
[0086] したがって、実施形態は、検査装置のハードウェアコンポーネントに関連して、放射源装置の動作状態を求め、及び/又は、求めた状態に応じて、放射源装置を制御する方法を記述する1つ又は複数の一連の機械可読命令、及び/又は、関数型データを含むコンピュータプログラムを含むことができる。このコンピュータプログラムは、例えば、
図2~12の装置のメトロロジ処理ユニットMPU及び/又は図の監視制御システムSCS内で実行することができる。そのようなコンピュータプログラムが格納された非一時的データ記憶媒体(例えば、半導体メモリ、磁気ディスク、又は光ディスク)を設けることもできる。この場合に、既存の放射源装置は、すでに製造され、及び/又は、使用されており、修正実施形態は、プロセッサに本明細書で説明した方法の1つ又は複数を実行させるための更新したコンピュータプログラム製品を用意することで実施することができる。
【0088】
[0087] 本明細書では詳述しないレーザ放射送出システム及びHHG放射源の他のコンポーネントのさらなる修正があり得る。これらの修正の一部は、例えば、上記の欧州特許第3321739号に開示されている。他の修正は、国際公開第2017/108410号に開示されている。欧州特許第3296723号はすでに説明した。すべてのこれらの出願の内容は、参照により本明細書に援用され、それらの出願で説明した技術は、本開示の技術と組み合わせて使用することができる。
【0089】
[0088] 本開示は、特に、現在の技術開発の対象となる例として、10~20nmのEUV及びSXR放射を提示したが、例えば、10nm未満、1nm未満、場合によっては0.1nm未満の波長を有する「より硬質の」x線領域のより短い波長を使用することもできる。放射の反射による検査を例として説明したが、本開示の原理は、特に、より短いx線放射が基板全体を貫通できる透過型装置に適用することもできる。
【0090】
[0089]
図11は、
図1に示すタイプのリソグラフィ製造システムの制御における、検査装置302などの検査装置の適用例を示している。この場合に、ステップが列挙され、次いで、詳細に説明される。
S21:ウェハを処理して基板上に構造を形成する。
S22:基板全体にわたってCD及び/又は他のパラメータを測定する。
S23:メトロロジレシピを更新する。
S24:リソグラフィ及び/又はプロセスレシピを更新する。
【0091】
[0090] ステップS21で、リソグラフィ製造システムを使用して、基板全体にわたって構造を形成する。ステップ22で、メトロロジ装置140と、任意選択で、他のメトロロジ装置及び情報源と、を使用して、基板全体にわたる構造の特性を測定する。上記に説明した本開示の原理によれば、上記のように、放射源装置を観測及び制御することで発生したEUV又はSXR放射を使用して、1つ又は複数のターゲットの特性を測定する。
【0092】
[0091] ステップS23で、任意選択で、得られた測定結果を踏まえて、メトロロジ装置のメトロロジレシピ及び較正を更新する。メトロロジレシピは、最も信頼できる非対称特性に対して回折スペクトルのどの部分を比較すべきかを指定することができる。レシピは、例えば、SXR放射のスペクトル及び/又は偏光を制御するために、レーザ放射送出システムの設定を指定することもできる。レシピはまた、メトロロジ装置の精度を改善するために、スペクトル分解された波面情報をどのように使用すべきかを示すことができる。
【0093】
[0092] ステップS24で、オーバーレイ又は他の性能パラメータの測定値が望ましい値と比較され、リソグラフ装置及び/又はリソグラフ製造システム内の他の装置の設定を更新するために使用される。
【0094】
おわりに
[0093] EUV/SXR波長領域において小型レンズアレイとして機能する波面センサの修正形態が上記に開示された。波面センサは、高い透過率を提供し、それゆえ、高い精度で短い取得時間を提供する。波面センサは、波面次数の高い空間分解能を有し、また(任意選択で)スペクトル分解測定を提供する。提案される波面センサはまた、コンパクトな設計を有する。
【0095】
[0094] 波面センサは、放射源装置の改善された観測及び制御を支援することができる。波面センサは、メトロロジ装置が、放射源装置によって発生した放射ビームの品質に依存する場合に、測定のより正確な計算を支援することができる。十分に高速の測定は、例えば、大量製造において、オーバーレイ測定の時間尺度で完全なEUVビーム情報をもたらす。
【0096】
[0095] 上記の説明では、波面センサのためのメトロロジ用途のみを説明しているが、他の用途も想定することができる。例えば、リソグラフィ装置(露光装置又はスキャナ(例えば、EUV放射を用いて露光を行うもの))もまた、本明細書に開示される波面センサを利用することができる。
【0097】
[0096] スペクトル選択性を得るために、EUV分散計を追加する必要はなく、その理由は、格子がハルトマンマスクに組み込まれるからである。EUVでの高偏光感度の波面測定が可能になる。
【0098】
[0097] 本開示の原理は、任意の波長領域に適用できるが、特に、放射源の安定性が、必要とされる進化であり、干渉法などの光波面検出法が問題を含むEUV/軟X線領域に適用可能である。
【0099】
[0098] 原理から外れることなく、開口アレイ及び分散要素を透過式又は反射式にすることができる。反射で動作する変形型は、例えば、斜入射円錐回折構成を含むことができる。これは、製造性及びロバスト性の観点から利点を有し、回折ジオメトリ及びコントラストに対して完全に異なるパラメータ空間をもたらす。斜入射におけるEUV放射の円錐回折の解析は、論文、C. Braig, L. Fritzsch, T. Kae sebier, E.-B. Kley, C. Laubis, Y. Liu, F. Scholze, and A. Tue nnermann, “An EUV beamsplitter based on conical grazing incidence diffraction,” Opt. Express 20, 1825-1838 (2012)に提示されている。
【0100】
[0099] 波面処理の実施は簡単であり得る。単一波長に対応する回折スポットは、選択された数値法によって局所化され、その後、ハルトマン/シャック-ハルトマン波面センサ用の確立された従来の再構築ルーチンを通じて、各スペクトル成分に対する波面の再構築を進めることができる。
【0101】
[0100] 所与のマスク(開口アレイ)で特徴付けることができる波長領域、スペクトル分解能、及び波面曲率は、幾何学的パラメータ(穴径及び位置、格子ピッチ、カメラまでの距離、センサピクセルサイズなど)によって決まる。開口アレイに代えて、又は開口アレイに加えて、合焦要素を使用することができる。そのような合焦要素は、反射式の形態か、又は透過式の形態(波長容認)のいずれかの合焦要素とすることができ、同じ反射式又は透過式の形態は分散要素に適用される。スペクトル分解は、波長スペクトルをわずか2つのスペクトル成分、又は何百ものスペクトル成分に分割することで行うことができる。各スペクトル成分は、何が実用的か、及び所与の目的に何が必要とされるかに応じて、きわめて広い波長帯域によって、又はきわめて狭い帯域によって範囲を限定することができる。
【0102】
[0101] 任意選択で、センサは、例えば、所望のスペクトル領域及びスペクトル分解が、個々の穴/格子間の間隔が大きいことを必要とする場合に、波面の空間分解能を高めるために、ビームに対して走査することができる。波面センサの特有の空間分解能とは、他の走査構成と比較して、必要とされる走査範囲が狭いということである(ほぼ開口間の距離)。
【0103】
[0102] 開口アレイによる予測される回折のモデル化は、複雑な波面及び複雑なスペクトルを特性化する能力を高める。例えば、(開口の形状に関係する)あらゆるスポットの形状を理解することは、中心位置のより正確な特定を可能にする。
【0104】
[0103] 本開示の原理は、高調波発生源などのEUV源を用いるが、(空間フィルタにかけられた)プラズマ放電などのあまりコヒーレントでない放射源を用いても適用することができる。
【0105】
[0104] 偏光感度をこの手法に含めることもできる。格子回折効率が偏光依存である場合、格子のサブセットを直角方向に向けることで、波面の局所偏光状態をサンプリングすることができる。或いは、第2の測定のために、マスク又は開口アレイを画定する他のコンポーネントを90°回転させることができる。より複雑な形状及び向きを有する格子は、同様な効果を得るためと考えられる。言い換えると、これらの異なるサブセット/向きに対応するスポットの相対強度を測定することで、ビーム全体にわたる何らかの空間分解能と共に、放射ビームの偏光状態についての何らかの情報が得られる。格子の偏光感度はまた、格子ピッチ、マスク厚さ、及びマスク用材料の選択を調整することで導入することができる。
【0106】
[0105] ブレーズ格子を使用することで、一方の回折次数をなくすことができ、これは、センサの穴/格子のより高密度な実装(したがって、高い分解能)を可能にする。
【0107】
[0106] さらなる実施形態は、後続の番号付き条項において提供される。
1.放射ビームに交差する位置アレイでの波面の傾斜を測定する波面センサであって、上記波面センサは、上記位置アレイの各々に凹部を含む凹部アレイを有するフィルムを含み、上記凹部アレイの各凹部は、上記放射の集束を実施するように動作可能である、波面センサ。
2.上記凹部アレイは、上記フィルムの
表面平面、
インターフェイス平面、
一側面、及び、
両側面、
の少なくとも1つに配置される、条項1に記載の波面センサ。
3.上記フィルムは、上記波面を実質的に透過させるように動作可能である透過フィルムである、条項1又は2に記載の波面センサ。
4.上記フィルムは、任意選択で1~50nmの放射範囲の少なくとも一部に対して、1未満の屈折率の実部を有する、条項1~3の何れか一項に記載の波面センサ。
5.上記屈折率の上記実部は、1~50nmの放射範囲の少なくとも一部に対して0.99未満である、条項4に記載の波面センサ。
6.上記屈折率の上記実部は、1~50nmの放射範囲の少なくとも一部に対して0.97未満である、条項4に記載の波面センサ。
7.上記屈折率の上記実部は、1~50nmの放射範囲の少なくとも一部に対して0.96未満である、条項4に記載の波面センサ。
8.上記フィルムは、1~50nmの範囲の波長に対して最小消光係数を有し、任意選択で、上記フィルムは、1~50nmの放射範囲の少なくとも一部に対して0.2未満の消光係数を有する、条項1~7の何れか一項に記載の波面センサ。
9.上記フィルムは、1~50nmの放射範囲の少なくとも一部に対して0.1未満の消光係数を有する、条項8に記載の波面センサ。
10.上記フィルムは、1~50nmの放射範囲の少なくとも一部に対して0.05未満の消光係数を有する、条項8に記載の波面センサ。
11.上記フィルムは低分散を有する、条項1~10の何れか一項に記載の波面センサ。
12.上記フィルムは、1~50nm、任意選択で1~20nm、任意選択で10~20nmの放射範囲の少なくとも一部に対して、2よりも小さい、任意選択で1.5よりも小さい分散を有する、条項11に記載の波面センサ。
13.上記フィルムは、MgO、Co、Ni、Cu、Zr、Zn、Ga、Ge、As、Cd、In、Pb、Bi、C、Y及びScの少なくとも1つを含む、条項1~12の何れか一項に記載の波面センサ。
14.上記フィルムはジルコニウムで構成される、条項1~13の何れか一項に記載の波面センサ。
15.上記凹部の各々は凹状である、条項1~14の何れか一項に記載の波面センサ。
16.上記凹部の各々は部分球状である、条項1~15の何れか一項に記載の波面センサ。
17.上記フィルムは1μm未満の厚さを有する、条項1~16の何れか一項に記載の波面センサ。
18.上記フィルムは100nmの厚さを有する、条項1~17の何れか一項に記載の波面センサ。
19.上記フィルムは100nm未満の厚さを有する、条項1~18の何れか一項に記載の波面センサ。
20.各凹部の直径は100μmよりも大きい、条項1~19の何れか一項に記載の波面センサ。
21.各凹部の直径は300μmよりも大きい、条項1~20の何れか一項に記載の波面センサ。
22.各凹部の直径は500μmよりも大きい、条項1~21の何れか一項に記載の波面センサ。
23.各凹部の上記直径は、凹部間の間隔と実質的に等しい、条項1~22の何れか一項に記載の波面センサ。
24.上記凹部アレイの各凹部は、上記放射を検出面又は検出面の周辺に集束させるように動作可能である、条項1~23の何れか一項に記載の波面センサ。
25.上記検出面に位置する検出器をさらに含む、条項20に記載の波面センサ。
26.上記フィルムは、1つ又は複数の層を含む基板又は被覆を含む、条項1~25の何れか一項に記載の波面センサ。
27.上記1つ又は複数の層の少なくとも1つは、上記フィルムの機械的安定性のために最適化された材料を含む、条項22に記載の波面センサ。
28.上記フィルムの機械的安定性のために最適化された上記材料は、窒化ケイ素を含む、条項23に記載の波面センサ。
29.上記1つ又は複数の層の少なくとも1つは、特定のスペクトル帯域を遮断するように最適化された材料を含む、条項22~24の何れか一項に記載の波面センサ。
30.特定のスペクトル帯域を遮断するように最適化された上記材料は、アルミニウムを含む、条項25に記載の波面センサ。
31.上記基板又は被覆は、色収差を補正するように最適化される、条項22~26の何れか一項に記載の波面センサ。
32.色収差を補正するように最適化された上記基板又は被覆は、上記フィルムと異なる屈折率と、上記フィルムの上記凹部アレイに対応する補償凹部アレイとを含む、条項27に記載の波面センサ。
33.上記凹部アレイの上記凹部の各々は、上記放射ビームのスペクトル成分を異なる方向に向けるための分散要素を設けられる、条項1~32の何れか一項に記載の波面センサ。
34.上記分散要素は回折格子である、条項29に記載の波面センサ。
35.上記波面センサは、上記スペクトル成分の正及び負の回折次数の検出に基づいて、上記アレイ内の各位置での各スペクトル成分に対する波面傾斜を計算するように動作可能である、条項29又は30に記載の波面センサ。
36.放射ビームを発生させるように動作可能な放射源装置であって、
上記発生した放射ビームに交差する位置アレイでの波面の傾斜を少なくとも断続的に測定する、条項1~35の何れか一項に記載の波面センサと、
上記測定した波面傾斜に少なくとも部分的に基づいて、上記放射源装置の動作状態を求めるプロセッサと
をさらに含む、放射源装置。
37.上記プロセッサは、上記放射源装置の動作状態を求めるために、上記測定した波面傾斜を使用するように構成される、条項32に記載の放射源装置。
38.上記発生した放射ビームは、23nmよりも短い波長を含む、条項32又は33に記載の放射源装置。
39.上記プロセッサによって求められた上記動作状態に少なくとも部分的に応じて、上記放射源装置の少なくとも1つの動作パラメータ及び/又は上記照明光学系の少なくとも1つのアライメントパラメータを自動で調整するコントローラをさらに含む、条項32、33又は34の何れか一項に記載の放射源装置。
40.第1の放射と媒体との間の相互作用を引き起こし、それにより、高調波発生によって上記放射ビームを発生させるように構成される、条項35に記載の放射源装置。
41.媒体はガス状媒体である、条項36に記載の放射源装置。
42.調整される動作パラメータは、パルス強度又は持続時間ビーム幅、軸方向焦点位置、横方向焦点位置、或いは波面などの、第1の放射の放射源及び/又はビーム送出システムの動作パラメータである、条項36又は37に記載の放射源装置。
43.調整される動作パラメータは媒体のパラメータである、条項37又は38に記載の放射源装置。
44.媒体はガスジェットであり、調整される動作パラメータは、ガス送出システムの動作パラメータである、条項39に記載の放射源装置。
45.上記プロセッサは、求めた動作状態に少なくとも部分的に基づいて、診断情報を出力するように動作可能である、条項1~44のいずれか一項に記載の放射源装置。
46.媒体はガスジェットであり、診断情報は、放射源装置の一部の摩耗状態に関する、条項41に記載の放射源装置。
47.検査放射をターゲット構造に送出する照明系と、ターゲット構造と相互作用した後の上記検査放射を検出する検出系とを含む検査装置であって、照明系は、条項32~43のいずれか一項に記載の放射源装置を含み、発生した放射ビームは、上記検査放射として使用される、検査装置。
48.検査放射は、23nm未満の波長を含む、条項43に記載の検査装置。
49.検出した検査放射に基づいて、ターゲット構造の特性を求めるための処理装置をさらに含む、条項44に記載の検査装置。
50.上記処理装置は、ターゲット構造の求めた特性に少なくとも部分的に基づいて、リソグラフィプロセスの第1の性能パラメータを計算するようにさらに構成される、条項46に記載の検査装置。
51.上記処理装置は、波面センサの出力にさらに基づいて、ターゲット構造の上記特性及び/又は上記第1の性能パラメータを求めるように構成される、条項46又は43に記載の検査装置。
52.上記波面センサは、検査放射の一部分を連続して受け入れ、一方、検査放射の別の部分は、ターゲット構造と相互作用する、条項43~47のいずれか一項に記載の検査装置。
53.上記波面センサは、検査放射がターゲット構造と相互作用する間以外の時間に、検査放射の少なくとも一部分を断続的に受け入れるように構成される、条項43~47のいずれか一項に記載の検査装置。
54.上記波面センサは、上記照明系の合焦要素よりも下流の上記検査放射の少なくとも一部分を受け入れるように構成される、条項43~49のいずれか一項に記載の検査装置。
【0108】
[0107] メトロロジの用途では、上記のターゲット構造は、測定目的のために特別に設計及び形成されたメトロロジターゲットとすることができ、他の実施形態では、基板上に形成されたデバイスの機能部分であるターゲットの特性を測定することができる。多くのデバイスは、格子に似た規則的な周期構造を有する。本明細書で使用される「ターゲット」、「格子」、又はターゲットの「周期構造」という用語は、適用可能な構造が、実施される測定のために特別に提供されていることを必要としない。さらに、メトロロジターゲットのピッチは、測定ツールの光学系の分解能限界に近いものとすることができ、又はパターン形成プロセスによってターゲット部分Cに作製される典型的な製品フィーチャの寸法よりもはるかに大きくすることができる。実際には、格子のフィーチャ及び/又は間隔は、製品フィーチャと寸法が同様のより小さい構造を含むように作製することができる。
【0109】
[0108] 「メトロロジ装置/ツール/システム」又は「検査装置/ツール/システム」について特定の言及が行われたが、これらの用語は、同じ又は同様のタイプのツール、装置又はシステムを指すことができる。例えば、本発明の実施形態を含む検査又はメトロロジ装置は、基板上又はウェハ上の構造の特性を求めるために使用することができる。例えば、本発明の実施形態を含む検査装置又はメトロロジ装置は、基板の欠陥又は基板上若しくはウェハ上の構造の欠陥を検出するために使用することができる。そのような実施形態では、基板上の構造の対象となる特性は、構造の欠陥、構造の特定の部分がないこと、又は基板上若しくはウェハ上の不要な構造の存在に関係することができる。
【0110】
[0109] 光リソグラフィとの関連において、実施形態の使用について上記に特定の言及を行うことができたが、当然のことながら、本発明の実施形態は、他の用途、例えば、インプリントリソグラフィで使用することができ、状況が可能にする場合、光リソグラフィに限定されない。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイスのトポグラフィが、基板に形成されるパターンを画定する。パターニングデバイスのトポグラフィは、基板に供給されたレジスト層に押し付けることができ、レジストは、電磁放射、熱、圧力、又はそれらの組み合わせを加えることで硬化する。パターニングデバイスは、レジストが硬化した後、レジスト内にパターンを残したままレジストから引き離される。
【0111】
[0110] 特定の実施形態の前述の説明は、本発明の実施形態の一般的な性質を明らかにするので、他者は、当技術分野の技能の範囲内の知識を適用することで、過度の実験を行うことなく、本発明の一般概念から逸脱することなく、そのような特定の実施形態を容易に修正し、且つ/又はそのような特定の実施形態を様々な用途に適合させることができる。したがって、そのような適合及び修正は、本明細書に提示した教示及びガイダンスに基づいて、開示した実施形態の等価物の趣旨及び範囲内であることを意図されている。当然のことながら、本明細書における専門語又は用語は、例を用いて説明するためのものであり、限定するものではなく、本明細書の用語又は専門語は、教示及びガイダンスに照らして、同業者によって解釈されるべきである。
【0112】
[0111] 本発明の広さ及び範囲は、上記の例示的な実施形態のいずれかによって限定されるのではなくて、添付の特許請求の範囲及びその等価物によってのみ規定されるべきである。
【国際調査報告】