(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-08
(54)【発明の名称】チオカーボネートの調製方法
(51)【国際特許分類】
C07D 327/04 20060101AFI20220301BHJP
【FI】
C07D327/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021541191
(86)(22)【出願日】2020-01-17
(85)【翻訳文提出日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 EP2020051110
(87)【国際公開番号】W WO2020148421
(87)【国際公開日】2020-07-23
(32)【優先日】2019-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ティール,アンドル
(72)【発明者】
【氏名】ヴルム,トーマス マクリミリアン
(72)【発明者】
【氏名】テレス,ホアキム エンリケ
(72)【発明者】
【氏名】アーント,ヤン-ディルク
(57)【要約】
少なくとも1個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物を調製するための方法であって、a)少なくとも1個のハロヒドリン基を有する化合物C1を、出発原料として使用し、b)化合物C1をホスゲン又はアルキルクロロホルメートと反応させて、付加物C2を得て、c)付加物C2を、アニオン性硫黄を含む化合物と反応させて、少なくとも1個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物を得る、方法が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物を調製するための方法であって、
a)少なくとも1個のハロヒドリン基を有する化合物C1を、出発原料として使用し、
b)化合物C1をホスゲン又はアルキルクロロホルメートと反応させて、付加物C2を得て、
c)付加物C2を、アニオン性硫黄を含む化合物と反応させて、少なくとも1個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物を得る、
方法。
【請求項2】
化合物C1が1~1000個のハロヒドリン基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
a)式(Ia):
【化1】
[式中、R
1a~R
4aは互いに独立して、水素又は最大50個の炭素原子を有する有機基を表し、代替的にはR
2a、R
4a及びハロヒドリン基の2個の炭素原子は一緒になって、5~10員炭素環を形成することもでき、Halはハロゲン化物を表す]
の化合物C1を出発原料として使用し、
b)化合物C1を式(II):
【化2】
[式中、Xは、Clである又は基O-R
5であり、R
5はC
1~C
4アルキル基を表す]
の化合物と反応させて、式(IIIa):
【化3】
の付加物を得て、
c)式(IIIa)の付加物を、アニオン性硫黄を含む化合物と反応させて、式(IVa):
【化4】
[式中、R
1a~R
4aは上記の意味を有する]
のモノチオカーボネートにする、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
式(Ia)におけるR
1a~R
4aのうちの少なくとも1つが水素ではない、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
式(Ia)におけるR
1a~R
4aのうちの2つ及び/又は3つが水素を表し、R
1a~R
4aの他の基が有機基を表す、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
基R
1a~R
4aのうち水素ではないものが基CH
2-Cl、CH
2-Y-R
6又はCH
2-O-C(=O)-R
7を表し、R
6及びR
7が、最大30個の炭素原子を有する有機基であり、YがO又はSである、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
a)式(Ib):
【化5】
[式中、R
1b~R
4bは互いに独立して、水素又は50個までの炭素原子を有する有機基を表し、代替的にはR
2b、R
4b及びハロヒドリン基の2個の炭素原子は一緒になって、5~10員炭素環を形成することもでき、基R
1b~R
4bのうちの1つはZへの連結基であり、Halはハロゲン化物を表し、nは少なくとも2の整数を表し、Zはn価の有機基を表す]
の化合物C1を出発原料として使用し、
b)化合物C1を式(II):
【化6】
[式中、Xは、Clである又は基O-R
5であり、R
5はC
1~C
4アルキル基を表す]
の化合物と反応させて、式(IIIb):
【化7】
[式中、R
1b~R
4b、Z及びnは上記の意味を有する]
の付加物を得て、
c)式(IIIb)の付加物を、アニオン性硫黄を含む化合物と反応させて、少なくとも2個の環状モノチオカーボネート基を含む、式(IVb):
【化8】
[式中、R
1b~R
4b、Z及びnは上記の意味を有する]
の化合物にする、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
基R
1b~R
4bのうちの3つが水素を表し、R
1b~R
4bの残りの基がZへの連結基である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
連結基が、結合、又は基CH
2-若しくはCH
2-Y-若しくはCH
2-O-C(=O)-であり、YがO又はSである、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
Zが、50個までの炭素原子を有し、かつ酸素を含んでもよいn価の有機基であり、nが2~5の整数である、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
nが2である、請求項7から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
Zが、式(G1):
(V-O-)
mV
[式中、VはC
2~C
20アルキレン基を表し、mは少なくとも1の整数であり、2個の末端アルキレン基Vのそれぞれは、基R
1b~R
4bのうちの1つである連結基に結合している]
のポリアルコキシレン基である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
Zが、式(G2):
【化9】
[式中、Wは、最大10個の炭素原子を有する二価有機基であり、R
10~R
17は、互いに独立してH又はC
1~C
4アルキル基を表し、Wのパラ位にある2個の水素原子は、基R
1b~R
4bのうちの1つである連結基への結合に置き換えられる]
の基である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
Wが、
【化10】
の群から選択される、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、少なくとも1個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物を調製するための方法であって、
a)少なくとも1個のハロヒドリン基を有する化合物C1を、出発原料として使用し、
b)化合物C1をホスゲン又はアルキルクロロホルメートと反応させて、付加物C2を得て、
c)付加物C2を、アニオン性硫黄を含む化合物と反応させて、少なくとも1個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物を得る、
方法である。
【背景技術】
【0002】
環状モノチオカーボネートは、化学的化合物の合成に有用な出発原料である。しかし現在まで、環状モノチオカーボネートは、いかなる工業的な方法においても多量に使用されてこなかった。
【0003】
環状モノチオカーボネートを合成する異なる方法が、最新技術に記載されている。
【0004】
米国特許第3,349,100号に開示されている方法によると、アルキレンモノチオカーボネートは、エポキシドを硫化カルボニルと反応させることによって得られる。硫化カルボニルの利用可能性は限定されている。得られるアルキレンモノチオカーボネートの収率及び選択率は低い。
【0005】
ホスゲンを出発原料として使用する合成は、米国特許第2,828,318号から公知である。ホスゲンをヒドロキシメルカプタンと反応させる。モノチオカーボネートの収率は依然として低く、重合の副産物が観察される。
【0006】
米国特許第3,072,676号及び米国特許第3,201,416号の目的は、エチレンモノチオカーボネートの2工程調製方法である。第1の工程では、メルカプトエタノール及びクロロカルボキシレートを反応させて、ヒドロキシエチルチオカーボネートを得て、これを第2の工程において金属塩触媒の存在下で加熱して、エチレンモノチオカーボネートを形成する。
【0007】
米国特許第3,517,029号によると、アルキレンモノチオカーボネートは、メルカプトエタノール及びカーボネートジエステルをトリウムの触媒活性塩の存在下で反応させることによって得られる。
【0008】
Yoichi Taguchi et al., Bull. Chem. Soc. Jpn., 1988, 61, 921-925は、二硫化炭素及び2,2-ジメチルオキシランをトリメチルアミンの存在下で反応させることによるモノチオカーボネートの形成を開示する。
【0009】
Yutaka Nishiyama et al., Tetrahedron, 2006, 62, 5803-5807は、エポキシド、硫黄及び一酸化炭素を水素化ナトリウムの存在下で反応物として使用したモノチオカーボネートの形成を開示する。
【0010】
2015年8月13日に受理された寄稿であるM. Luo, X.-H. Zhang and D.J. Darensbourg, Catalysis Science & Technology, 2015(DOI: 10.1039/c5cy00977d)は、硫化カルボニルとエポキシドとのカップリング反応を介して得たいくつかの特定の環状モノチオカーボネートを開示する。
【0011】
Yi-Ming Wang, Bo Li, Hui Wang, Zhi-Chao Zhang and Xiao-Bing Lu, Appl. Organometal. Chem. 2012, 26, 614-618も、硫化カルボニルとエポキシドとのカップリング反応を介して得たいくつかの特定の環状モノチオカーボネートを開示する。
【0012】
欧州特許出願公開第2468791号の目的は、酸素及び硫黄を含む5員環式系(five membered cyclic ring system)を有する化合物を含むエポキシ組成物である。欧州特許出願公開第2468791号及び欧州特許出願公開第2468791号に引用されたN. Kihara et al., J. Org. Chem. 1995, 60, 473-475に開示されている化合物は、少なくとも2個の硫黄原子を含む5員環式系を有する化合物である。1個の硫黄原子を有する化合物は記述されていない。
【0013】
国際公開第2019/034469A1号は、少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物を、ホスゲンと反応させ、続いて、得られた付加物をアニオン性硫黄化合物と反応させることによる、少なくとも1個の環状モノチオカーボネート基を有する化合物の合成方法に関する。
【0014】
上記に記載された方法のうちで、それらの欠点のために工業的な重要性を得たものはなかった。これらの方法の多くは、利用可能性が低い、費用がかかる又は問題のある特性を持つ出発原料の使用を伴っている。さらに、得られる構造異性体の収率及び選択率、特に選択率は工業規模の生産にとってまだ十分ではない。その結果として、商業的な量でのチオカーボネートの利用可能性は、チオカーボネートが化学合成の中間体として極めて興味深いものであっても低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このことから、本発明の目的は、工業規模の生産に有用であるチオカーボネートを生成する方法を提供することであった。本方法は、高価な出発原料又は利用可能性が低い出発原料を伴うべきではない。本方法は、実施が容易であるべきであり、可能な限り経済的であるべきであり、高い収率及び選択率でチオカーボネートをもたらすべきある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、少なくとも1個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物を調製するための方法が見出された。
【0017】
本発明は、少なくとも1個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物を調製するための方法であって、
a)少なくとも1個のハロヒドリン基を有する化合物C1を、出発原料として使用し、
b)化合物C1をホスゲン又はアルキルクロロホルメートと反応させて、付加物C2を得て、
c)付加物C2を、アニオン性硫黄を含む化合物と反応させて、少なくとも1個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物を得る、
方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
5員環状モノチオカーボネート基は、5員を有する環系であり、そのうちの3つはモノチオカーボネート-O-C(=O)-S-のものであり、さらに2員は5員環を閉じる炭素原子である。
【0019】
方法
a)ハロヒドリン化合物
方法の出発化合物は、少なくとも1個のハロヒドリン基を有する化合物C1である。
【0020】
ハロヒドリン基は、一方がヒドロキシ基で置換され、他方がハロゲン化物で置換されている2個の近接炭素原子の基である(OH-C-C-H、Hがハロゲン化物である)。
【0021】
用語「ハロゲン化物」は、本明細書に使用されるとき、共有結合されたハロゲン原子の慣用名である。
【0022】
好ましくは、ハロヒドリン基はクロロヒドリン基である。
【0023】
ハロヒドリン基を有する化合物は、アルコール基を有する化合物のハロゲン化、好ましくは塩素化によって得ることができる。例は、式Cl-CH2-HCOH-CH2-Cl又はCl-CH2-HCCl-CH2-OHの化合物又はこの混合物をもたらす、2個の塩化物基を有する化合物へのグリセロールの塩素化である。
【0024】
ハロヒドリンを生成する別の方法は、ハロゲンを含む酸化剤によるオレフィンの酸化である。例は、クロロヒドリン基をもたらす、次亜塩素酸塩(ClO-)による炭素/炭素二重結合の酸化である。
【0025】
さらに、少なくとも1個のヒドロキシ基を有する化合物をエピクロロヒドリン(EPI)と反応させて、好ましくは以下のクロロヒドリンを得ることができる。
【0026】
【0027】
化合物C1は1個のハロヒドリン基のみを有する化合物であってもよく、そのような化合物は、通常低分子量の化合物であり、5000g/mol未満、特に1000g/mol未満、より特定的には500g/mol未満の分子量である。
【0028】
1個のハロヒドリン基を有する化合物は、例えば、2-クロロエタノール、2-クロロ-1-プロパノール、2,3-ジクロロ-1-プロパノール、1-クロロ-2-メチル-2-プロパノールである。
【0029】
化合物C1は、1個を超えるハロヒドリン基を含んでもよい。そのような化合物C1は、1個を超えるヒドロキシ基又は1個を超えるエチレン性不飽和炭素-炭素基を有する化合物から、これらの基を上記に記載されたハロヒドリン基に変換することによって得ることができる。ポリマー化合物C1は、基準であるポリスチレンに対するGPCによって決定される、例えば2,000,000まで、とりわけ500,000までの数平均分子量Mnを有することができる。
【0030】
化合物C1は、例えば、1000個まで、特に500個まで、好ましくは100個までのハロヒドリン基、好ましくはクロロヒドリン基を含むことができる。
【0031】
好ましい実施形態において、化合物C1は、1~100個、より好ましくは1~10個、最も好ましい実施形態において、1~3個、とりわけ1又は2個のハロヒドリン基、好ましくはクロロヒドリン基を有する化合物である。
【0032】
b)第1のプロセス工程、付加物の形成
第1のプロセス工程では、化合物C1をホスゲン又はアルキルクロロホルメートと反応させて、付加物C2を得る。好ましくは、ホスゲンと反応させる。ホスゲンという単語には、任意のホスゲン代替物が含まれ、ホスゲン代替物は、ホスゲンを遊離する化合物である。ホスゲン代替物は、例えばトリホスゲンである。
【0033】
下記に工程b)の反応が、1個のクロロヒドリン基を有する特定の化合物C1及びホスゲンを反応物として例示的に示されている。
【0034】
【0035】
代替的に好ましいものは、化合物C1をアルキルクロロホルメートと反応させる第1のプロセス工程である。下記に工程b)の反応が、1個のクロロヒドリン基を有する特定の化合物C1及びアルキルクロロホルメートを反応物として例示的に示されている。
【0036】
【0037】
化合物C1をホスゲン又はアルキルクロロホルメートと任意の化学量論比で反応させることができる。好ましくは、非常に大きな過剰量の化合物C1が回避され、そのような大きな過剰量は多量の未反応出発化合物をもたらし、これは、得られた生成物組成物(product composition)の処理の際に除去される必要がある。好ましくは、変換は塩基、例えば、第三級アミンの存在下で実施される。
【0038】
好ましくは、ホスゲン、それぞれ(respectively)クロロホルメートは、化合物C1のそれぞれのハロヒドリン基の1mol当たり0.1~5mol、特に0.5~2molの量で使用される。特に好ましい実施形態において、ホスゲン、それぞれ(respectively)クロロホルメートは、過剰量で使用される。
【0039】
少なくとも当モル量のホスゲン、それぞれ(respectively)クロロホルメートを用いると、未反応のままで残るハロヒドリン基を回避することができる。このことから、好ましい実施形態において、ホスゲン、それぞれ(respectively)クロロホルメートは、化合物C1のそれぞれのハロヒドリン基の1mol当たり0.9~5mol、より好ましくは1~2mol、特に1~1.5molの量で使用される。
【0040】
ホスゲン及びクロロホルメートは、好ましくは式(II)、
【0041】
【化4】
[式中、Xは、ホスゲンの場合ではClである又はクロロホルメートの場合では基O-R
5であり、R
5はC
1~C
4アルキル基を表す]
の化合物である。
【0042】
好ましい実施形態において、化合物C1をホスゲンと反応させる。
【0043】
この反応ではHClが遊離される。
【0044】
したがって、反応を好ましくは塩基、例えば第三級アミンの存在下で実施して、ハロゲン化水素酸(hydrohalogenic acid)の塩を形成し、それを反応混合物から単離することができる。
【0045】
化合物C1は、好ましくはホスゲン又はアルキルクロロホルメートに添加される。反応は発熱性なので、添加は、反応混合物の温度が所望の値に保持されるように、好ましくはゆっくりと行われる。好ましくは、反応混合物は添加の際に冷却される。
【0046】
好ましくは、反応混合物の温度は、-40~60℃、とりわけ5~50℃に保持される。
【0047】
低分子化合物C1は、通常液体であり、このことから追加の溶媒は必要とされない。好ましくは、溶媒は、21℃で固体である化合物C1の場合に使用される。適切な溶媒は、とりわけ非プロトン性溶媒、例えば芳香族炭化水素及び塩素化炭化水素を含む炭化水素、例えばトルエン、クロロベンゼン又はジクロロベンゼンである。
【0048】
固体化合物C1に好ましい溶媒は、追加の液体化合物C1である。固体化合物C1と一緒にした液体化合物C1は、プロセス工程b)及びc)に記載された反応を受ける。液体化合物から得た環状モノチオカーボネートは、通常は同様に液体であり、したがって、少なくとも1個のハロヒドリン基を有する固体化合物から得た、大部分のおそらく固体のモノチオカーボネートにとって溶媒としての機能も果たす。
【0049】
反応が完了すると、未反応ホスゲン又はクロロホルメートは蒸留によって混合物から除去され得る。得られる生成混合物は、少なくとも1個のβ-ハロ-アルキルクロロホルメート基(ホスゲンの場合)又は少なくとも1個のβ-ハロカーボネート基(アルキルクロロホルメートを使用する場合)を有する化合物C2を含む。次のプロセス工程が直後に続いてもよい。
【0050】
用語「化合物C2」及び「付加物C2」は、本明細書において互換的に使用され、同じ意味を有する。
【0051】
プロセス工程b)は、好ましくはホスゲンを用いて実施される。
【0052】
したがって、好ましい態様において、本発明は、少なくとも1個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物を調製するための方法であって、
a)少なくとも1個のハロヒドリン基を有する化合物C1を、出発原料として使用し、
b)化合物C1をホスゲンと反応させて、付加物C2を得て、
c)付加物C2を、アニオン性硫黄を含む化合物と反応させて、少なくとも1個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物を得る、
方法に関する。
【0053】
より好ましくは、少なくとも1個のクロロヒドリン基を有する化合物C1を、出発原料として使用する。
【0054】
c)第2のプロセス工程、環状モノチオカーボネート基の形成
第2のプロセス工程c)は、Na2S及びβ-クロロアルキルクロロホルメートを反応物として以下のように例示的に示すことができる。
【0055】
【0056】
プロセス工程b)にホスゲンを使用する場合、プロセス工程c)は通常1工程方法である。
【0057】
プロセス工程b)にアルキルクロロホルメートを使用する場合、プロセス工程c)は2工程方法であることが理解される。クロロ原子又はO-アルキル基のいずれかがSH基で置換され、その後の閉環工程により環状モノチオカーボネートが形成され得る。
【0058】
溶媒を工程c)で添加してもよい。適切な溶媒は、特に非プロトン性溶媒である。適切な溶媒は、例えば、芳香族炭化水素及び塩素化炭化水素を含む炭化水素、又は親水性非プロトン性溶媒、例えば、エーテル、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、ポリエーテル、例えばグリム、アセトニトリル、又はジメチルスルホキシドである。
【0059】
工程b)の生成混合物を、アニオン性硫黄を含む化合物と反応させる。アニオン性硫黄を含む化合物は、好ましくは塩である。
【0060】
アニオン性硫黄は、好ましくはS2-、式(Sp)2-のポリスルフィド、ここでpは2~200、好ましくは2~10の整数、又はHS1-である。
【0061】
塩のカチオンは、任意の有機又は無機カチオンであり得る。好ましくは無機カチオン、特に金属である。通常の金属カチオンは、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属、例えばナトリウム又はカリウムのカチオンである。
【0062】
好ましい塩は、Na2S、K2S、NaSH若しくはKSH、又はこれらの任意の水和物である。
【0063】
塩は、塩基性化合物、特に金属水酸化物、例えば特にNaOH又はKOHと組み合わせて使用することができる。そのような追加の塩基性化合物は、アニオンがSH-の塩の場合に好ましくは使用される。
【0064】
アニオン性硫黄を、硫黄から又は非イオン性形態で硫黄を含む化合物から出発して、その場で発生させることもできる。例えば、H2Sをアニオン性硫黄の供給源として使用することができる。塩基性化合物、例えばNaOH(上記を参照すること)の存在下、アニオン性硫黄はH2Sからその場で得られる。
【0065】
アニオン性硫黄を有する塩、それぞれ(respectively)、アニオン性硫黄をその場で発生させる化合物(まとめて、本明細書において硫黄化合物と呼ばれる)が、b)で得られる生成混合物に好ましくは添加される。硫黄化合物をそのまま、又は例えば適切な溶媒中、例えば水中の溶液として添加することができる。本発明の好ましい実施形態において、硫黄化合物は、溶媒、特に水に溶解され、その溶液が添加される。
【0066】
硫黄化合物が水中の溶液として添加される場合、有機及び水相を含む二相系が得られ、反応がそのような二相系において起こる。そうではなく一相系が望ましい場合、水及び有機相を再び合わせて1つの相にするための仲介役として作用する適切な溶媒を添加することができる。適切な溶媒は、親水性非プロトン性溶媒、例えば上記に列挙された親水性非プロトン性溶媒であり得る。
【0067】
反応は発熱性でもあるので、塩、それぞれ(respectively)塩の溶液の添加は、反応混合物の温度が所望の値に保持されるように、好ましくはゆっくりと行われる。好ましくは、反応混合物は添加の際に冷却される。
【0068】
好ましくは、反応混合物の温度は、-40~60℃、とりわけ-10~50℃に保持される。
【0069】
アルキルクロロホルメートを使用する場合、閉環工程(すなわち、塩を添加した後)は、一般に室温又は高温、例えば、60~140℃、好ましくは70~120℃で行われる。
【0070】
反応物を任意の順番で添加する又は組み合わせることができる。例えば、硫黄化合物を化合物C2に添加することができる又は化合物C2を、アニオン性硫黄を含む化合物に添加することができる。
【0071】
好ましくは、塩は、化合物C2のそれぞれのβ-クロロ-アルキルクロロホルメート基、それぞれ(respectively)化合物C2のβ-ハロ-アルキルクロロホルメートの1mol当たり0.5~2.0molの量で添加される。
【0072】
好ましくは、塩は、化合物C2のそれぞれのβ-クロロ-アルキルクロロホルメート基、それぞれ(respectively)化合物C2のβ-ハロ-アルキルクロロホルメートの1mol当たり1.0~2.0molの量で添加される。
【0073】
最も好ましい実施形態において、塩は、化合物C2のそれぞれのβ-クロロ-アルキルクロロホルメート基、それぞれ(respectively)化合物C2のβ-ハロ-アルキルクロロホルメートの1mol当たり1.0~1.3molの量で添加され、それは、大幅に過剰な量の塩を、すべてのβ-クロロ-アルキルクロロホルメート基、それぞれ(respectively)β-ハロ-アルキルクロロホルメート基の迅速で完全な反応を得るために必要としないからである。
【0074】
塩との反応により、β-ハロ-アルキルクロロホルメート基は5員環状モノチオカーボネート基に変換される。5員環系は3個の炭素原子、1個の酸素及び1個の硫黄から形成され、さらなる酸素が、環系の酸素と硫黄の間に位置する炭素原子に二重結合している。
【0075】
望ましい場合、第2のプロセス工程は、触媒の存在下で実施されてもよい。そのような触媒は、例えば、相間移動触媒、例えばアンモニウム塩、複素環式アンモニウム塩及びホスホニウム塩である。
【0076】
工程b)でアルキルクロロホルメートを使用する場合、閉環工程は、触媒、例えば、酸触媒、例えばp-トルエンスルホン酸又はメタンスルホン酸を用いて実施することができる。
【0077】
c)で得られる最終生成物を、親水性溶媒により、好ましくは水により抽出することによって処理してもよい。上記のアニオン性硫黄の塩が水溶液の形態で使用される場合、さらなる水は必要ない。有機相と水相が分離される。有機相は、好ましくは4~10のpH、特に少なくとも7のpHを有する水で洗浄され得る。有機層は、少なくとも1個の環状モノチオカーボネート基を有する化合物を含む。水相は未反応硫化物/硫化水素塩、及び/又はNa+Hal-、例えばNaClを含み、少なくとも部分的に任意の触媒が加わっている。
【0078】
任意の溶媒を蒸留により有機相から除去することができる。得られた、少なくとも1個の環状モノチオカーボネート基を有する化合物を蒸留によってさらに精製することができる、又はさらに精製することなく使用することができる。
【0079】
このように、少なくとも1個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物が上記の方法によって得られる。
【0080】
1個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物の調製
1個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物を調製するための好ましい方法は、
a)式(Ia):
【0081】
【化6】
[式中、R
1a~R
4aは互いに独立して、水素又は最大50個の炭素原子を有する有機基を表し、代替的にはR
2a、R
4a及びハロヒドリン基の2個の炭素原子は一緒になって、5~10員炭素環を形成することもでき、Halはハロゲン化物を表す]
の化合物C1を出発原料として使用し、
b)化合物C1を式(II):
【0082】
【化7】
[式中、Xは、Cl(ホスゲン)である又は基O-R
5であり、R
5はC
1~C
4アルキル基を表す(クロロホルメート)]
の化合物と反応させて、式(IIIa):
【0083】
【化8】
[式中、R
1a~R
4aは上記の意味を有する]
の付加物を得て、
c)式(IIIa)の付加物を、アニオン性硫黄を含む化合物と反応させて、式(IVa):
【0084】
【化9】
[式中、R
1a~R
4aは上記の意味を有する]
の環状モノチオカーボネートにすることを含む。
【0085】
Halは、フッ化物、塩化物、臭化物又はヨウ化物であり得る。好ましくは、Halは塩化物を表す。
【0086】
R1a~R4aのいずれかが有機基を表す場合、そのような有機基は、好ましくは30個までの炭素原子を有する有機基である。好ましくは、R2a、R4a及びハロヒドリン基の2個の炭素原子は5~10員炭素環を形成しない。
【0087】
R1a~R4aのいずれかが有機基を表す場合、そのような有機基は、炭素及び水素以外の元素を含んでもよい。特に、酸素、窒素、硫黄及び塩化物を含んでもよい。好ましい実施形態において、有機基は酸素又は塩化物を含むことができる。R1a~R4aは、酸素を、例えばエーテル、ヒドロキシ、アルデヒド、ケト又はカルボキシ基の形態で含むことができる。
【0088】
好ましくは、式(Ia)における、したがって式(IIIa)及び(IVa)におけるR1a~R4aのうちの少なくとも1つは、水素ではない。
【0089】
より好ましくは、式(Ia)における、したがって式(IIIa)及び(IVa)におけるR1a~R4aのうちの2つ及び/又は3つは水素を表し、R1a~R4aの残りの基は有機基を表す。
【0090】
最も好ましくは、式(Ia)における、したがって式(IIIa)及び(IVa)におけるR1a~R4aのうちの3つは水素を表し、R1a~R4aの残りの基は有機基を表す。
【0091】
好ましい実施形態において、R1a又はR2aが、有機基を表す残りの基である。
【0092】
好ましい実施形態において、残りの1個以上の基は、基CH2-Cl、CH2-Y-R6又はCH2-O-C(=O)-R7又はCH2-NR8R9を表し、R6~R9は、30個までの炭素原子、好ましくは20個までの炭素原子を有する有機基であり、YはO又はSである。
【0093】
特に、R6及びR7は、酸素を、例えばエーテル基の形態で含み得る脂肪族、脂環式又は芳香族基を表す。好ましい実施形態において、R6~R7は、直鎖又は分岐鎖のアルキル基、アルコキシ基、ポリアルコキシ基又はアルケニル基を表す。最も好ましい実施形態において、R6~R9は、直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を表す。
【0094】
特に、R8及びR9は、酸素を、好ましくはカルボニル基の形態で含み得る脂肪族、脂環式又は芳香族基を表す。好ましい実施形態において、R8は基C(=O)-R10を表し、R9は基C(=O)-R11を表し、下記の基
【0095】
【化10】
をもたらし、R
10及びR
11は互いに独立して、脂肪族、脂環式又は芳香族基であり得る炭化水素基を表し、又は代替的にはR
8及びR
9は一緒になって、脂肪族又は芳香族環系を形成する。
【0096】
本方法により得られる1個の5員環状モノチオカーボネート基を有する好ましい化合物として、下記を記述することができる。
【0097】
【0098】
プロセス工程b)及びc)に関連する本特許出願におけるすべての開示が、1個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物の上記の調製に当てはまる。
【0099】
従来技術から公知の環状モノチオカーボネートの生成方法は、通常、構造異性体の混合物をもたらす。本発明の方法を用いると、構造異性体の含有は回避される。
【0100】
1個を超える5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物の調製
1個を超える5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物の調製に関連する好ましい方法は、
a)式(Ib):
【0101】
【化12】
[式中、R
1b~R
4bは互いに独立して、水素又は50個までの炭素原子を有する有機基を表し、代替的にはR
2b、R
4b及びエポキシ基の2個の炭素原子は一緒になって、5~10員炭素環を形成することもでき、基R
1b~R
4bのうちの1つはZへの連結基であり、Halはハロゲン化物を表し、nは少なくとも2の整数を表し、Zはn価の有機基を表す]
の化合物C1を出発原料として使用し、
b)この化合物を式(II):
【0102】
【化13】
[式中、Xは、Clである又は基O-R
5であり、R
5はC
1~C
4アルキル基を表す]
の化合物と反応させて、式(IIIb):
【0103】
【化14】
[式中、R
1b~R
4b、Z、Hal及びnは上記の意味を有する]
の付加物を得て、
c)式(IIIb)の付加物を、アニオン性硫黄を含む化合物と反応させて、少なくとも2個のモノチオカーボネート基を含む、式(IVb):
【0104】
【化15】
[式中、R
1b~R
4b、Z及びnは上記の意味を有する]
の化合物にすることを含む。
【0105】
Halは、フッ化物、塩化物、臭化物又はヨウ化物であり得る。好ましくは、Halは塩化物を表す。
【0106】
R1b~R4bのいずれかが有機基を表す場合、そのような有機基は、好ましくは30個までの炭素原子を有する有機基である。さらに好ましい実施形態において、R2b及びR4bは、ハロヒドリン基の2個の炭素原子と一緒になって5~10員炭素環を形成しない。
【0107】
R1b~R4bのいずれかが有機基を表す場合、そのような有機基は、炭素及び水素以外の元素を含んでもよい。特に、酸素、窒素、硫黄及び塩化物を含んでもよい。好ましい実施形態において、有機基は酸素又は塩化物を含むことができる。R1b~R4bは、酸素を、例えばエーテル、ヒドロキシ、アルデヒド、ケト又はカルボキシ基の形態で含むことができる。
【0108】
基R1b~R4bのうちの1つは、Zへの連結基である。
【0109】
好ましくは、連結基は、単に結合、又は基CH2-、YがO若しくはSであるCH2-Y-、又は基CH2-O-C(=O)-、又はR20が脂肪族基、特に最大20個の炭素原子を有するアルキル基であるCH2-NR20-、又は基C(=O)-O-、又はR21が有機基、好ましくは20個までの炭素原子を有する炭化水素基である基R21-C(=O)-O-である。
【0110】
より好ましくは、連結基は、単に結合、又は基CH2-、基CH2-O-若しくは基CH2-O-C(=O)-である。
【0111】
最も好ましい実施形態において、連結基は基CH2-O-である。
【0112】
好ましくは、式(Ib)における、したがって式(IIIb)及び(IVb)における基R1b~R4bのうちの2つ又は3つは、水素である。
【0113】
最も好ましい実施形態において、基R1b~R4bのうちの3つは水素を表し、R1b~R4bの残りの基はZへの連結基である。
【0114】
最も好ましい実施形態において、基R1b又はR2bはZへの連結基である。
【0115】
連結基CH2-O-又はCH2-O-C(=O)-を用い、R1b~R4bのうちの3つが水素である好ましい実施形態を用いると、式(Ib)の括弧内の基は、下記式
【0116】
【0117】
【0118】
最も好ましい実施形態において、式(Ib)の括弧内の基は、上記のハロヒドリンエーテル基又はハロヒドリンエステル基である。
【0119】
R2b及びR4bがハロヒドリン基の2個の炭素原子と一緒になって5~10員炭素環を形成する実施形態において、上記に記述された連結基は、代替的に環系の炭素原子と結合していてもよい。
【0120】
nは、少なくとも2の整数を表す。例えば、nは2~1000、特に2~100、それぞれ(respectively)2~20の整数であり得る。
【0121】
好ましい実施形態において、nは2~5の整数であり、特にnは2又は3である。
【0122】
最も好ましい実施形態において、nは2である。
【0123】
Zは、n価の有機基を表す。nが大きい数、例えば、10~1000の場合、Zは、例えば重合又は共重合により、例えばエチレン性不飽和モノマーのラジカル重合、重縮合又は重付加により得られるポリマーのポリマー骨格であり得る。例えば、ポリエステル又はポリアミドのようなポリマーは、水又はアルコールの排除下での重縮合を介して得られ、例えばポリウレタン又はポリ尿素は重付加を介して得られる。
【0124】
式(Ib)の化合物は、例えば、エピクロロヒドリンを、ヒドロキシ及び/又はカルボキシ官能基を有するポリマーに付加することによって得られる、ハロヒドリン基を有するオリゴマー/ポリマーである。式(Ib)の化合物は、例えば、エピクロロヒドリンと、イミド官能基を有するオリゴマー/ポリマーとの縮合反応によって得られる、ハロヒドリン基を有するポリマーである。
【0125】
好ましい実施形態において、Zは、50個までの炭素原子、特に30個までの炭素原子を有し、かつ、炭素及び水素以外の元素を含むことができるn価の有機基であり、nは、2~5、とりわけ2又は3、最も好ましくは2の整数である。
【0126】
特に好ましい実施形態において、Zは、50個までの炭素原子、特に30個までの炭素原子を有し、かつ、炭素、水素及び任意選択で酸素のみを含み、さらなる元素を含まないn価の有機基であり、nは、2~5、とりわけ2又は3、最も好ましくは2の整数である。
【0127】
好ましい実施形態において、Zは、式(G1):
(V-O-)mV
[式中、VはC2~C20アルキレン基を表し、mは少なくとも1の整数である]のポリアルコキシレン基である。
【0128】
好ましくは、C2~C20アルキレン基は、C2~C4アルキレン基、特にエチレン又はプロピレンである。mは、例えば1~100、特に1~50の整数であり得る。末端アルキレン基Vは、基R1b~R4bのうちの1つ(上記を参照すること)である連結基に結合している。
【0129】
さらに好ましい実施形態において、Zは、式(G2):
【0130】
【化18】
[式中、Wは、最大10個の炭素原子を有する二価有機基であり、nは2であり、R
10~R
17は、互いに独立してH又はC1~C4アルキル基を表す]
の基である。好ましくは、R
10~R
17のうちの少なくとも6個は水素である。最も好ましい実施形態において、R
10~R
17のすべては水素である。
【0131】
Wのパラ位にある2個の水素原子は、基R1b~R4bのうちの1つ(上記を参照すること)である連結基への結合に置き換えられる。
【0132】
基Wは、例えば、
【0133】
【0134】
好ましくは、Wは、炭素及び水素のみからなる有機基である。
【0135】
最も好ましくは、Wは、
【0136】
【化20】
であり、これは、ビスフェノールAの構造に対応する。
【0137】
さらに好ましい実施形態において、Zは基G3であり、G3はアルキレン基、とりわけC2~C8アルキレン基を表し、そのようなアルキレン基の好ましい例は、エチレン(CH2-CH2)、n-プロピレン(CH2-CH2-CH2)、とりわけn-ブチレン(CH2-CH2-CH2-CH2)である。
【0138】
1個を超える5員環状モノチオカーボネート基を有する好ましい化合物の例は、特に、ハロヒドリン化合物のすべてのハロヒドリン基を5員環状モノチオカーボネート基に移動させることによって得られるものである。
【0139】
本発明は、少なくとも1個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物の非常に経済的で有効な生成方法を提供する。本方法は、工業規模の生産に適している。本方法は、高価な出発原料又は利用可能性が低い出発原料を伴わない。本方法は、少なくとも1個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物を、高い収率及び選択率でもたらす。
【0140】
[実施例]
GC分析:Agilent Technologies 7890 A Network GC System
カラム:DB1(Agilent)30m、Φ0.25mm、フィルム厚1μm
担体ガスHe、流速1.0mL/分、分割比50:1
Tプログラム:50℃~300℃、傾斜速度10℃/分、等温線30分
温度(射出システム)250℃
【0141】
2-クロロエチルクロロホルメートの調製、プロセス工程b)
【0142】
【0143】
合成は、2台の冷却器(-30℃及び-78℃(ドライアイス))、ホスゲンディップパイプ(dip pipe)、温度計及び滴下漏斗を備えた1Lの撹拌タンク反応器で実施した。ホスゲン(46.0g、0.5mol)を、ホスゲン還流が観察されるまで、10℃の温度で空の反応器に導入した。その後、2-クロロエタノール(161g、2.00mol)を、滴下漏斗を介して2時間かけて加えた。この間、記録される内部温度は10℃から14℃に変わり得る。2-クロロエタノールの添加の際、追加のホスゲン(404g、4.0mol)を同時に加えて、添加時間の全体にわたってホスゲン還流を確実にした。反応物の添加が完了した後、反応混合物を25℃でさらに2.5時間撹拌し、続いて、35℃での窒素ホスゲンフリー(nitrogen phosgene free)により2時間かけてホスゲンフリーにストリップした。ストリップした後、無色の油状物を97重量%の高い収率で得る。
【0144】
1,3-オキサチオラン-2-オンの調製、プロセス工程c)
【0145】
【0146】
2-クロロエチルクロロホルメート(20g、0.14mol)及びジクロロメタン(20mL)を、KPG三日月形撹拌機、滴下漏斗、温度計及び還流冷却器を備えた100mLの四つ口丸底フラスコに入れた。温度を5℃に維持しながらNa2S(1当量、15wt%の水溶液)をゆっくりと添加する前に、溶液を氷浴で0℃に冷却した。添加を完了した後、氷浴を取り外し、反応混合物を室温に温めた。1時間撹拌した後、相を分離し、水相をジクロロメタン(3×10mL)で抽出した。溶媒を、合わせた有機相から減圧下で除去した。粗1,3-オキサチオラン-2-オンを、GC分析に基づいて71面積%の純度で得た。
続く4mbar及び60~90℃の内部温度での分別真空蒸留により、所望の1,3-オキサチオラン-2-オンの主分画を透明な液体として純度>98%(7.5g、51%)で生じた。
【国際調査報告】