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特表2022-520177周波数選択コーティングを備える板ガラスユニット及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-29
(54)【発明の名称】周波数選択コーティングを備える板ガラスユニット及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01Q 15/14 20060101AFI20220322BHJP
   H01Q 1/32 20060101ALI20220322BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
H01Q15/14 B
H01Q1/32 A
H01Q1/22 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021545934
(86)(22)【出願日】2020-02-11
(85)【翻訳文提出日】2021-08-05
(86)【国際出願番号】 EP2020053468
(87)【国際公開番号】W WO2020165167
(87)【国際公開日】2020-08-20
(31)【優先権主張番号】19157029.0
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.3GPP
(71)【出願人】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507090421
【氏名又は名称】エージーシー フラット グラス ノース アメリカ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AGC FLAT GLASS NORTH AMERICA,INC.
【住所又は居所原語表記】11175 Cicero Dr. Suite 400, Alpharetta, GA 30022, U.S.A.
(71)【出願人】
【識別番号】518428303
【氏名又は名称】エージーシー ビードロス ド ブラジル エルティーディーエー
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ラドゥ, ザビエル
(72)【発明者】
【氏名】リベッセ, アンドレ
【テーマコード(参考)】
5J020
5J046
5J047
【Fターム(参考)】
5J020AA06
5J020BB01
5J020BD01
5J020BD04
5J046AA03
5J046AB17
5J046LA19
5J047AA03
5J047AB17
5J047EF01
5J047EF04
(57)【要約】
本発明は、RF放射に対する反射率が低いガラスパネルと、前記ガラスパネルに配置された、RF放射に対する反射率が高いコーティングシステムとを含む、改良された板ガラスユニット(1)を開示する。板ガラスユニットはまた、横軸X及び縦軸Zによって規定される平面Pに沿って延在し;横軸Xに沿って測定される幅DW、及び縦軸Zに沿って測定される長さDLを有し、板ガラスユニット上に帯域通過フィルターを生じる、コーティングシステムの少なくとも1つの周波数選択コーティング剥離部分(30)を含む。少なくとも1つの周波数選択コーティング剥離部分は、少なくとも1つのコーティング剥離要素を含み、決定された周波数が板ガラスユニットを通過できるようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- RF放射に対する反射率が低いガラスパネル(10)と、
- 前記ガラスパネルに配置された、RF放射に対する反射率が高いコーティングシステム(20)と、
- 横軸X及び縦軸Zによって規定される平面Pに沿って延在し;前記横軸Xに沿って測定される幅DW、及び前記縦軸Zに沿って測定される長さDLを有し、且つ少なくとも1つのコーティング剥離要素を含む、前記コーティングシステムの少なくとも1つの周波数選択コーティング剥離部分(30)と
を含む、板ガラスユニット(1)であって、
前記少なくとも1つのコーティング剥離要素は、少なくとも:
- 点Bが自由終端である第1のセグメントAB、
- 点Dが自由終端である第2のセグメントCD、
- サブセグメントAE、EB、CE及びEDを形成する、前記第1のセグメントABと前記第2のセグメントCDとの間の交点Eを含み、
- 前記サブセグメントEBの長さ
は、前記サブセグメントAEの長さ
よりも短く、且つ0よりも大きく

- 前記サブセグメントEDの長さ
は、前記サブセグメントCEの長さ
よりも短く、且つ0よりも大きい
ことを特徴とする、板ガラスユニット(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの周波数選択コーティング剥離部分は、複数のコーティング剥離要素を含む、請求項1に記載の板ガラスユニット。
【請求項3】
コーティング剥離要素は整列されて、周期的な構造を作る、請求項2に記載の板ガラスユニット。
【請求項4】
各コーティング剥離要素の少なくとも1つのセグメントが、隣接するコーティング剥離要素のセグメントに対して整列されて、周期的な構造を作る、請求項3に記載の板ガラスユニット。
【請求項5】
前記少なくとも1つのコーティング剥離要素は、さらに:
- 1つ以上の追加的なセグメントと、
- セグメント間の交点と
を含み、
各セグメントは、別のセグメントとの1つの交点を有し、及び各セグメントは最大2つの交点を有し、好ましくは、各セグメントは、2つの異なる他のセグメントとの2つの交点を有して、閉じた形状を形成する、請求項1~4のいずれか1項に記載の板ガラスユニット。
【請求項6】
前記少なくとも1つのコーティング剥離要素は、以下の2つの追加的なセグメント:
- 第3のセグメントFGであって、点Fは自由終端であり、且つ前記第3のセグメントFGと前記第2のセグメントCDとの間の交点Hが、サブセグメントFH、HG、CH、HE及びEDを形成し、前記サブセグメントHGの長さ
は、前記サブセグメントFHの長さ
よりも短く、且つ0よりも大きい
、第3のセグメントFG、及び
- 第4のセグメントIJであって、点Iは自由終端であり、且つ前記第4のセグメントIJと前記第3のセグメントFGとの間の交点Kは、サブセグメントIK、KJ、FK、KH及びHGを形成し、前記サブセグメントKJの長さ
は、前記サブセグメントIKの長さ
よりも短く、且つ0よりも大きい
、第4のセグメントIJ
を含み、中心サブセグメント及びラテラルサブセグメントを形成する、請求項2に記載の板ガラスユニット。
【請求項7】
中心サブセグメントを有するセグメントの中心サブセグメントの長さに、ラテラルサブセグメントのみを有するセグメントの最長ラテラルサブセグメントの長さが加えられた和の長さが、nλ/2に等しく、ここで、nは、0よりも大きい正の整数である
、請求項6に記載の板ガラスユニット。
【請求項8】
前記少なくとも1つのコーティング剥離要素は、前記点Iが自由終端である第4のセグメントIJと、前記第4のセグメントIJと前記第3のセグメントFGとの間の、サブセグメントIK、KJ、FK、KH及びHGを形成する交点Kと、前記第4のセグメントIJと前記第1のセグメントABとの間の、サブセグメントAL、LE、EB、IL、LK及びKJを形成する交点Lを含み、
前記サブセグメントKJの長さ
は、前記サブセグメントIKの長さ
よりも短く、且つ0よりも大きく
、前記サブセグメントKJの長さ
は、前記サブセグメントKLの長さ
よりも短く、且つ0よりも大きい
、請求項6に記載の板ガラスユニット。
【請求項9】
交点間のサブセグメントの前記長さの和はnλに等しく
、ここで、nは、0よりも大きい正の整数である、請求項8に記載の板ガラスユニット。
【請求項10】
2つのセグメントの交差によって形成される少なくとも1つの角度は、90°である、請求項1~9のいずれか1項に記載の板ガラスユニット。
【請求項11】
前記ガラスパネルは少なくとも1枚のガラスシートを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の板ガラスユニット。
【請求項12】
前記ガラスパネルは、スペーサによって分離された2枚のガラスシートを含む、請求項10に記載の板ガラスユニット。
【請求項13】
前記ガラスパネルは、少なくとも1つの中間層によって積層された2枚のガラスシートを含む、請求項10に記載の板ガラスユニット。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の板ガラスユニットを製造するための方法であって、
A. 前記複数のコーティング剥離要素の前記第1のセグメントを形成するために、レーザアブレーションによって、前記少なくとも1つの周波数選択コーティング剥離部分の一部分を除去するステップ、
B. 前記複数のコーティング剥離要素の前記第2のセグメントを形成するために、レーザアブレーションによって、前記少なくとも1つの周波数選択コーティング剥離部分の一部分を除去するステップ、
C. 少なくとも1つのコーティング剥離要素が3つ以上のセグメントを有する場合、前記少なくとも1つのコーティング剥離要素が最初の2つのセグメントに加えて有するセグメントの数と同じ数だけ、ステップBを繰り返すステップ
を含む、方法。
【請求項15】
請求項8~13のいずれか1項に記載の板ガラスユニットを製造するための方法であって、少なくとも1つの周波数選択コーティング剥離部分は、複数のコーティング剥離要素を含み、前記複数のコーティング剥離要素は、4つのセグメントと、4つの交点とを含み、4つのセグメントのうちの2つのセグメントは、前記X軸及び前記第1のコーティング剥離要素の1つの辺に対して実質的に平行であり、且つ残りの2つのセグメントは、最初の2つのセグメントに対して実質的に垂直であり、各セグメントは、3つのサブセグメント、即ち1つの中心サブセグメント及び2つのラテラルサブセグメントを有し、且つ各セグメントの各中心サブセグメントは、他の中心サブセグメントと実質的に同じ長さを有し、
前記方法は、以下のステップ:
A. 前記コーティング剥離要素のX軸方向の第1のセグメントを作るために、X軸方向の第1の中断線を形成するように、レーザアブレーションによって前記コーティングの一部分を除去するステップ、
B. 前記コーティング剥離要素のX軸方向の第2のセグメントを作るために、前記第1の中断線に隣接してX軸方向の第2の中断線を形成するように、レーザアブレーションによって前記コーティングの一部分を除去するステップ、
C. コーティング剥離要素のX軸方向の全セグメントを提供するために、前記ステップA及びBを繰り返すステップ、
D. 前記コーティング剥離要素のZ軸方向の第1のセグメントを作るために、Z軸方向の第1の中断線を形成するように、レーザアブレーションによって前記コーティングの一部分を除去するステップ、
E. 前記コーティング剥離要素のZ軸方向の第2のセグメントを作るために、前記第1の中断線に隣接してZ軸方向の第2の中断線を形成するように、レーザアブレーションによって前記コーティングの一部分を除去するステップ、
F. コーティング剥離要素のZ軸方向の全セグメントを提供するために、前記ステップD及びEを繰り返すステップ
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数選択コーティングを備える板ガラスユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、概して、コーティングしたガラスパネル上に、周波数選択透過特性を有する表面を提供し、且ついくつかの実施形態では、板ガラスシート上に、太陽光制御コーティングなどのコーティングシステムが付着されているような表面を提供することに関する。
【0003】
建築物及び自動車への用途のための板ガラスでは、無線周波(RF)の受信又は送信用のアンテナが一般に組み込まれている。これらは、例えば、板ガラスに付着された導電性フィルム又は板ガラスに取り付けられた金属線若しくは金属条片として実現されることができる。一般に、ポリマー中間層によって接合されている2枚以上のガラスシートを含む合わせ板ガラスでは、アンテナは、中間層内に、又は中間層に接触するガラス面上に置かれることができる。
【0004】
さらに、多くの場合、無線周波信号を放射及び/又は受信する追加的な機器が、車両又は建築物内で操作される。この機器が確実に機能するようにするために、板ガラスの透過率が十分であることが必要である。
【0005】
特に自動車への用途の板ガラスユニットは、主にガラスで形成されるが、ポリカーボネートなどの他の材料も知られている。従って、本出願を通して、ガラスへの言及は、限定とみなされるべきではない。
【0006】
建築物又は車両の内部での蓄熱を減少させるために、板ガラスユニットには、コーティングシステム、例えば太陽エネルギーを吸収又は反射する太陽光制御コーティングシステムがコーティングされることができる。特に暖かくてよく晴れた気候で使用するための板ガラス上には、太陽光制御フィルムを含むことが望ましい。なぜなら、太陽光制御フィルムは、エアコンディショニング又は他の温度調節法の必要性を低下させるからである。これにより、エネルギー消費を節約でき、且つ環境負荷を削減できる。
【0007】
しかしながら、そのようなコーティングシステムは、一般に導電性であり、且つRF放射に対する反射率が高い。これらの性質は、アンテナによる受信又は送信を妨げる。
【0008】
これは、コーティングシステムを、広帯域の無線周波信号に対する、効率の良い反射体にする。さらに、商業施設、自動車、列車などは、RF信号をさらにブロックする他の材料を使用する傾向にある。コンクリート、レンガ、モルタル、鋼、アルミニウム、屋根用タール、石こうボード、及び一部の種類の木材などの材料は全て、様々な程度のRF吸収をもたらす。その結果、多くのより新しい施設が、RF信号が建築物に入ったり又はそこから出たりするのを厳重に妨げている。
【0009】
とはいえ、RFデバイスは、特にセルラースマートフォン、タブレット、IoT(モノのインターネット(Internet of Things))デバイスが大規模に浸透していることから、現代の生活の重要な部分になってきており、室内受信可能範囲の電磁界が、30~40GHzまでの高スペクトルの周波数でも、建築物又は自動車内に深く侵入することが求められている。そのようなデバイスには、セルラー送受信機、無線ローカルエリアネットワーク(「Wi-Fi」)送受信機、グローバル・ポジショニング・システム(GPS)受信機、Bluetooth送受信機、及び、場合によっては、他のRF受信機(例えば、FM/AMラジオ、UHFなど)を含むことができる。そのようなデバイスの人気が高まってきているのにつれて、現代の商業ビルの圏内でRFベースの機能を使用できることの重要性が高まってきている。
【0010】
さらに、無線通信の速度を上げ且つその容量を増強するために、使用される周波数帯域が、第5世代の移動通信システム(5G)用の周波数帯域のように、より高くなってきている。それゆえ、移動体通信などに広帯域の周波数帯域を有する高周波電磁波が使用される場合でも、様々な周波数が板ガラスユニットを確実に透過できるようにするために、広帯域周波数選択面を有する必要がある。
【0011】
ITU-R IMT-2020規格は、広いチャンネル帯域幅で達成可能である20Gbpsまでの速度を要求しており、及びマッシブマイモ(massive MIMO)3GPP(3rd Generation Partnership Project)では、その5G通信規格のプロポーサルとして5G NR(New Radio)を提案しようとしている。5G NRは、6GHzを下回るより低い周波数、及び15GHzを上回るミリ波を含むことができる。しかしながら、4Gのハードウェア(非スタンドアローン)で5G NRソフトウェアを使用する早期のデプロイメントにおける速度及び待ち時間は、新しい4Gシステムよりもわずかに良好であるにすぎず、15%~50%良好であると推定された。それに加えて、IoTは、マッシブMTC(Machine Type Communication)ではなく、ロボット又は産業用デバイスが5G無線遠隔制御されるクリティカルMTC(critical MTC)に対して、可能な限り良好な室内受信可能範囲を要求する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の一実施形態の目的は、板ガラスユニットを通る、6GHzを下回るより低周波及び/又は15GHzを上回るミリ波などの特定の周波の透過を高めることができる、板ガラスユニットを提供することにある。中間のギャップ帯域では、最新のWARCの決定からモバイルアプリケーションに対しての利用は計画されていない。
【0013】
本発明の目的は、これらの問題、特に屋外から室内までの及び/又は室内から屋外までの侵入の問題を軽減すること、並びに6GHzを下回るより低周波及び/又は15GHzを上回るミリ波及び/又はそのようなアプリケーションに使用されるいずれかの他の周波数若しくは範囲の透過を高めることができる板ガラスユニットを提供して、建築物又は自動車の室内形状に依存して、H又はV偏光の双方に対する損失減衰レベルを、多くても-10デシベル(dB)に低下させることであり、且つ改良として意図している。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様によれば、本発明は、RF放射に対する反射率が低いガラスパネルと、前記ガラスパネルに配置された、RF放射に対する反射率が高いコーティングシステムとを含む、改良型の板ガラスユニットに関する。本発明は、例えば建築物又は自動車のニーズ及び地理的な位置に依存して、散乱性のある帯域通過フィルター、共鳴装置、マルチバンドフィルターのような異なるデバイスも実装するために、使用されることができる。板ガラスユニットはまた、横軸X及び縦軸Zによって規定される平面Pに沿って延在し;横軸Xに沿って測定される幅DW、及び縦軸Zに沿って測定される長さDLを有し、且つ板ガラスユニット上に帯域通過フィルターを作り出している、コーティングシステムの少なくとも1つの周波数選択コーティング剥離部分(30)を含む。
【0015】
少なくとも1つの周波数選択コーティング剥離部分は、決定された周波数が板ガラスユニットを通過できるようにする、少なくとも1つのコーティング剥離要素(decoated element)を含む。
【0016】
本発明の第1の態様において定義されているような解決法は、少なくとも1つのコーティング剥離要素が、少なくとも:
- 点Bが自由終端である第1のセグメントAB、
- 点Dが自由終端である第2のセグメントCD、
- サブセグメントAE、EB、CE及びEDを形成する、第1のセグメントABと第2のセグメントCDとの間の交点Eを含み:
- サブセグメントEBの長さ
は、サブセグメントAEの長さ
よりも短く、且つ0を上回り

- サブセグメントEDの長さ
は、サブセグメントCEの長さ
よりも短く、且つ0よりも大きい
ことに基づいている。
【0017】
好ましくは、各セグメントの最長サブセグメントの和は、nλ/2に等しく、ここで、nは、0よりも大きい正の整数である
【0018】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの周波数選択コーティング剥離部分は、複数のコーティング剥離要素を含む。
【0019】
いくつかの好ましい実施形態では、周波数選択コーティング剥離部分のコーティング剥離要素は整列されて、周期的な構造を作る。
【0020】
本発明によれば、整列されたコーティング剥離要素は、2つの隣接するコーティング剥離要素の少なくとも1点が単一線上にあることを意味する。
【0021】
いくつかの好ましい実施形態では、各コーティング剥離要素の少なくとも1つのセグメントは、隣接するコーティング剥離要素のセグメントに対して整列されて、周期的な構造を作る。
【0022】
本発明によれば、コーティング剥離要素の整列された各セグメントは、2つの隣接するコーティング剥離要素の前記各セグメントが実質的に単一線上にあることを意味する。
【0023】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのコーティング剥離要素は、さらに、1つ以上の追加的なセグメントと、セグメント間の交点とを含む。各セグメントは、別のセグメントとの1つの交点を有し、及び各セグメントは多くても2つの交点を有し、好ましくは、各セグメントは、2つの異なる他のセグメントとの2つの交点を有して、閉じた形状を形成する。
【0024】
好ましい実施形態では、少なくとも1つのコーティング剥離要素は、以下の2つの追加的なセグメント:
- 第3のセグメントFGであって、点Fは自由終端であり、且つ第3のセグメントFGと第2のセグメントCDとの間の交点Hは、サブセグメントFH、HG、CH、HE及びEDを形成し、サブセグメントHGの長さ
は、サブセグメントFHの長さ
よりも短く、且つ0よりも大きい
、第3のセグメントFG、及び
- 第4のセグメントIJであって、点Iは自由終端であり、且つ第4のセグメントIJと第3のセグメントFGとの間の交点Kは、サブセグメントIK、KJ、FK、KH及びHGを形成し、サブセグメントKJの長さ
は、サブセグメントIKの長さ
よりも短く、且つ0よりも大きい
、第4のセグメントIJ
を含み、中心サブセグメント及びラテラル(lateral)サブセグメントを形成する。
【0025】
好ましくは、中心サブセグメントを有するセグメントの中心サブセグメントの長さに、ラテラルサブセグメントのみを有するセグメントの最長ラテラルサブセグメントの長さが加えられた和の長さは、nλ/2に等しく、ここで、nは、0よりも大きい正の整数である。例えば、サブセグメントAE、EH、HK及びIKの長さは、
であり、ここで、nは、0よりも大きい正の整数である。
【0026】
本発明によれば、下記で説明するように、所望の周波数において低反射率を有するようにするために、複数のサブセグメント及び/又は複数の中心セグメントの長さは、nλ/2よりも小さくすることができ、ここで、nは、0よりも大きい正の整数である。なぜなら、本発明は、RF透明性を改善し、且つ周波数のシフトが起こる場合でも、所望の周波数辺りの帯域幅を拡大するためである。
【0027】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのコーティング剥離要素は、第4のセグメントIJを含み、ここで、点Iが自由終端であり、第4のセグメントIJと第3のセグメントFGとの間の交点Kは、サブセグメントIK、KJ、FK、KH及びHGを形成し、サブセグメントKJの長さ
は、サブセグメントIKの長さ
よりも短く、且つ0よりも大きく
、及び、第4のセグメントIJと第1のセグメントABとの間の交点Lは、サブセグメントAL、LE、EB、IL、LK及びKJを形成し、サブセグメントKJの長さ
は、サブセグメントKLの長さ
よりも短く、且つ0よりも大きい
。好ましくは、閉じた構造を形成する中心サブセグメント(交点間のサブセグメント)の長さの和は、nλに等しく
、ここで、nは、0よりも大きい正の整数である。
【0028】
いくつかの好ましい実施形態では、2つのセグメントの交差によって形成される少なくとも1つの角度は、90°である。
【0029】
いくつかの実施形態では、ガラスパネルは、少なくとも1枚のガラスシートを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、ガラスパネルは、スペーサによって分離された2枚のガラスシートを含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、ガラスパネルは、少なくとも1つの中間層によって積層された2枚のガラスシートを含む。
【0032】
本発明の別の側面によれば、本発明は、
A. 複数のコーティング剥離要素の第1のセグメントを形成するために、レーザアブレーションによって、少なくとも1つの周波数選択コーティング剥離部分の一部分を除去するステップ
B. 複数のコーティング剥離要素の第2のセグメントを形成するために、レーザアブレーションによって、少なくとも1つの周波数選択コーティング剥離部分の一部分を除去するステップ
C. 少なくとも1つのコーティング剥離要素が3つ以上のセグメントを有する場合、少なくとも1つのコーティング剥離要素が最初の2つのセグメントに加えて有するセグメントの数と同じ数だけ、ステップBを繰り返すステップ
を含む、本発明による板ガラスユニットを製造するための方法に関する。
【0033】
本発明のさらに別の側面によれば、本発明はまた、板ガラスユニットを製造するための方法に関し、少なくとも1つの周波数選択コーティング剥離部分は、複数のコーティング剥離要素を含み、複数のコーティング剥離要素は、4つのセグメントと、4つの交点とを含み、4つのセグメントのうちの2つのセグメントは、X軸及び第1のコーティング剥離要素の1つの辺に対して実質的に平行であり、且つ残りの2つのセグメントは、最初の2つのセグメントに対して実質的に垂直であり、各セグメントは、3つのサブセグメント(即ち1つの中心サブセグメント及び2つのラテラルサブセグメント)を有し、且つ各セグメントの各中心サブセグメントは、他の中心サブセグメントと実質的に同じ長さを有し、
方法は、以下のステップ:
A. コーティング剥離要素のX軸方向の第1のセグメントを作るために、X軸方向の第1の中断線(discontinued line)を形成するように、レーザアブレーションによってコーティングの一部分を除去するステップ、
B. コーティング剥離要素のX軸方向の第2のセグメントを作るために、第1の中断線に隣接してX軸方向の第2の中断線を形成するように、レーザアブレーションによってコーティングの一部分を除去するステップ、
C. コーティング剥離要素のX軸方向の全セグメントを提供するために、ステップA及びBを繰り返すステップ、
D. コーティング剥離要素のZ軸方向の第1のセグメントを作るために、Z軸方向の第1の中断線を形成するように、レーザアブレーションによってコーティングの一部分を除去するステップ、
E. コーティング剥離要素のZ軸方向の第2のセグメントを作るために、第1の中断線に隣接してZ軸方向の第2の中断線を形成するように、レーザアブレーションによってコーティングの一部分を除去するステップ、
F. コーティング剥離要素のZ軸方向の全セグメントを提供するために、ステップD及びEを繰り返すステップ
を含む、方法に関する。
【0034】
いくつかの好ましい実施形態では、ステップE及びFは、時間及びX軸方向のレーザ通路を最適にするために、ステップBの前に実行されることができる。
【0035】
いくつかの好ましい実施形態では、ステップE及びFは、時間及びZ軸方向のレーザ通路を最適にするために、ステップDの前に実行されることができる。
【0036】
本発明によれば、ステップA、B及びCがZ軸方向において行われてから、ステップD、E及びFがX軸方向において行われることができる。
【0037】
本発明は、特許請求の範囲又は説明の実施形態に列挙される特徴の考えられる全ての組み合わせに関することに留意されたい。
【0038】
以下の説明は、建築物の窓ユニットに関するが、本発明は、列車などの、自動車又は輸送機関の、取り付けられるべき窓のような他の分野にも適用可能とすることができることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
ここで、本発明のこの態様及び他の態様について、本発明の様々な例示的な実施形態を示す添付図面を参照して、より詳細に説明し、これらは、限定ではなく、説明のために提供される。図面は概略図であり、真の縮尺通りではない。図面は、本発明を何ら限定するものではない。例によって、さらなる利点を説明する。
【0040】
図1】本発明の例示的な実施形態による板ガラスユニットの概略図である。
【0041】
図2-7】本発明による周波数選択コーティング剥離部分のコーティング剥離要素の実施形態の概略図である。
【0042】
図8】本発明による複数の整列されたコーティング剥離要素からの概略図である。
【0043】
図9】ラテラルサブセグメント有り及びラテラルサブセグメント無しの、少なくとも1つのコーティング剥離要素のシミュレーション結果を示す図表である。
【0044】
図10-11】本発明による板ガラスユニットを製造するための方法の概略図である。
【0045】
図12】コーティング剥離深さのプロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
よりよく理解するために、図面の各構成部分の縮尺は、実際の縮尺とは異なることができる。本明細書では、3つの軸方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)にある3次元の直交座標系が使用され、周波数選択コーティング剥離部分の幅方向はX方向と規定され、厚さ方向はY方向と規定され、及び高さはZ方向と規定される。周波数選択コーティング剥離部分の底部から上部までの方向は+Z軸方向と規定され、及び反対方向は-Z軸方向と規定される。以下の説明では、+Z軸方向は上向きと呼ばれ、及び-Z軸方向は下向きと呼ばれてもよい。
【0047】
図1を参照して、本発明の第1の実施形態を説明する。
【0048】
図1に示すように、板ガラスユニット1は、RF放射に対する反射率が低いガラスパネル10と、前記ガラスパネルに配置された、RF放射に対する反射率が高いコーティングシステム20とを含む。板ガラスユニットは、さらに、横軸X及び縦軸Zによって規定される平面Pに沿って延在し;横軸Xに沿って測定される幅DW、及び縦軸Zに沿って測定される長さDLを有する、コーティングシステムの少なくとも1つの周波数選択コーティング剥離部分30を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、ガラスパネル10は、透き通るようにし、且つ光を通過させるようにするために、可視波に対しては少なくとも透明である。
【0050】
いくつかの好ましい実施形態では、ガラスパネル10は、少なくとも1枚のガラスシートを含む。
【0051】
いくつかの好ましい実施形態では、ガラスパネル10は、スペーサによって分離された少なくとも2枚のガラスシートを含み、このスペーサは、アルゴンのような気体によって充填される空間を生じることができるようにして、ガラスパネルの断熱性を高め、断熱性板ガラスパネルを作る。
【0052】
本実施形態では、長方形は、長方形や正方形だけでなく、長方形や正方形の角を面取りすることによって得られた形状も含む。平面図におけるガラスパネル10の形状は、長方形に限定されず、円形などとしてもよい。
【0053】
別の実施形態では、ガラスパネルは、騒音を低減させる及び/又は侵入安全性(penetration safety)を保証するために、合わせガラスパネルとすることができる。合わせ板ガラスは、ガラスパネル間に位置決めされた1つ以上の中間層によって維持されるガラスパネルを含む。用いられる中間層は、一般に、ポリビニルブチラール(PVB)又はエチレン酢酸ビニル(EVA)であり、その剛性は調整できる。これらの中間層は、破損したときでもガラスパネルを結合した状態に保って、ガラスが、大きく鋭い破片に割れるのを防止するようにする。
【0054】
いくつかの実施形態では、ガラスパネルが数枚のガラスシートを含むとき、異なる又は同じコーティングシステムが、異なるガラスシートの異なる面に置かれることができる。好ましくは、どのコーティングシステムも少なくとも1つの周波数選択面を有し、一層好ましくは、同じ少なくとも1つの周波数選択面の全てが、互いの前側にある。
【0055】
ガラスパネル10の材料として、例えば、ソーダ石灰シリカガラス、ホウケイ酸ガラス、若しくはアルミノケイ酸ガラスを述べることができ、又は特に自動車への用途には、他の材料、例えば熱可塑性ポリマー、ポリカーボネートが知られており、及び本出願を通して、ガラスへの言及は、限定とみなされるべきではない。
【0056】
ガラスパネル10は、フロート法、溶融法、リドロー法、プレス成形法、又は引上げ法などの公知の製造法によって製造されることができる。ガラスパネル10の製造法として、生産性及びコストの観点から、フロート法を使用することが好ましい。
【0057】
ガラスパネル10は、熱間又は冷間曲げなどの公知の方法による要件に従って、平らにも又は湾曲させることもできる。
【0058】
ガラスパネル10は、セキュリティ及び盗難防止要件の仕様に関して、処理、すなわち焼きなまし、強化(tempered)されることができる。
【0059】
ガラスシートは、透明ガラス、又は特定の組成のガラスによって若しくは例えば追加的なコーティングやプラスチック層を施すことによって色が付けられた、色ガラスとすることができる。
【0060】
数枚のガラスシートの場合には、いくつかの実施形態では、各ガラスシートは、見た目の美しさ、断熱性能、安全性などを改善するために、独立して処理及び/又は着色されることができる。
【0061】
ガラスパネル10の厚さは、用途の要件に従って設定される。
【0062】
ガラスパネル10は、公知の切断法を使用することによって、平面図において長方形に形成されることができる。ガラスパネル10の切断法として、例えば、ガラスパネル10の表面にレーザ光を照射して、ガラスパネル10の表面上のレーザ光の照射領域を切断してガラスパネル21に切断する方法、又はカッターホイールで機械的に切断する方法が使用されることができる。ガラスパネルは、用途、例えば風防ガラス、サイドライト(sidelite)、自動車のサンルーフ、列車のラテラル窓板ガラス(lateral glazing)、建築物の窓などに合うように、任意の形状を有することができる。
【0063】
さらに、板ガラスユニット1は、フレーム内に組み立てられることができるか、又はダブルスキンファサード、車体、若しくは板ガラスユニットを維持できる任意の他の手段に装着されることができる。いくつかのプラスチック要素が板ガラスパネルに取り付けられて、気密性及び/又は液密性を確実にもたらすか、板ガラスパネルの固定を保証するか、又は板ガラスパネルに外部要素を追加する。
【0064】
RF放射に対する反射率が低いことは、RF放射が、材料をほとんど透過することを意味し、RF放射に対する反射率が高いことは、RF放射が材料の表面でほとんど反射される及び/又は材料によって吸収され、及び減衰が20デシベル(dB)以上のレベルにあることを意味する。反射率が低いことは、10デシベル(dB)以下のレベルの減衰を意味する。RF放射に対する反射率が高いコーティングシステムは、コーティングシステムがRF放射に対して非透過であることを意味する。
【0065】
本発明によれば、コーティングシステム20は、例えば、板ガラスパネルの表面を加熱するために、建築物若しくは車両の内部の蓄熱を減少させるために、又は寒候期の間、内側の熱を保つために、機能性コーティングとすることができる。しかし、コーティングシステムは、薄くて、大部分は目には透明である。
【0066】
コーティングシステム20は、異なる材料の複数の層で作製されることができ、これらの層の少なくとも1つが導電性である。コーティングシステムは、板ガラスパネルの1つの主要な面の大部分にわたって導電性である。
【0067】
本発明のコーティングシステム20の放射率は、0.4以下、好ましくは0.2未満、特に0.1未満、0.05未満、又はさらには0.04未満である。本発明のコーティングシステムは、金属ベースの低放射性コーティングシステムを含むことができる;これらのコーティングは、一般に、赤外線放射反射材料に基づく、1つ以上、例えば2つ、3つ又は4つの機能性層と、少なくとも2つの誘電体コーティングとを含む、薄層のシステムであり、各機能性層は、誘電体コーティングによって囲まれている。本発明のコーティングシステムの放射率は、特に、少なくとも0.010とすることができる。機能性層は、一般的に、厚さが数ナノメートル、大部分は約5~20nmの複数の銀層である。誘電体層に関して、これらは透明であり、且つ伝統的に、各誘電体層は、金属酸化物及び/又は窒化物の1つ以上の層から作製される。これらの異なる層は、例えば、磁界支援型の陰極スパッタリング(magnetic field-assisted cathodic sputtering)などの、より一般的には「マグネトロンスパッタリング」と呼ばれる、真空蒸着技術によって堆積される。誘電体層に加えて、各機能性層は、バリア層によって保護されることができるか、又は湿潤層上への堆積によって改善されることができる。
【0068】
例えば、コーティングシステム20は、板ガラスユニット1を低放射率(low-E)板ガラスユニットに変えるために、板ガラスユニットに施される。これは、金属ベースのコーティングシステム、例えばlow-E又は加熱可能なコーティングシステムである。
【0069】
いくつかの実施形態では、コーティングシステム20は、例えば霜取り及び/又は曇り防止機能を追加するために板ガラスユニットに施される、加熱可能なコーティングとすることができる。
【0070】
コーティングシステムとして、例えば、導電性フィルムが使用されることができる。導電性フィルムとして、例えば、透明な誘電体、金属フィルム、及び透明な誘電性の、ITO、フッ素が添加された酸化スズ(FTO)などを連続的に積層することによって得られた積層フィルムが使用されることができる。金属フィルムとして、例えば、Ag、Au、Cu、及びAlからなる群から選択される少なくとも1種を主成分として含有するフィルムが使用されることができる。
【0071】
好ましくは、コーティングシステムは、板ガラスユニットの1つの面の大部分に、及び一層好ましくは板ガラスパネルの使用される全面に配置される。
【0072】
いくつかの実施形態では、エナメル層などのマスキング要素が、板ガラスユニットの周縁の一部に追加されることができる。
【0073】
このRFエネルギー反射の問題に対する単純な対処法は、RF放射に対する高反射率を有することを回避するために、コーティングシステムの一部分を除去することである。しかしながら、この対処法は、板ガラスユニットによって提供される太陽光制御の恩恵を減少させ、及び建築物内、車両内又は車内に位置する機器では、その領域は受け入れがたいほど大きい。それに加えて、コーティング剥離部分とコーティング自体との間の移行部が目で見えるため、通常、ユーザに受け入れられない。
【0074】
別の解決法では、コーティングシステムから複数の線を切り取って、周波数選択性である表面、すなわち、太陽エネルギーに対しては比較的高いが、電磁スペクトルのRF領域では比較的低い反射性/吸収性を有する表面を作り出すことである。切り取りは、レーザアブレーションによって行われてもよく、及び複数のスリットの間隔は、所望の周波数での選択性をもたらすように選択される。
【0075】
これらの問題を解決するために、本発明は、少なくとも1つのコーティング剥離要素を含む、コーティングシステムの少なくとも1つの周波数選択コーティング剥離部分に基づいている。
【0076】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの周波数選択コーティング剥離部分の寸法DW及びDLは、5~70cmであることができ、例えばDW×DL又はDL×DWは、10×5cm、10×10cm、15×15cm、40×20cm又は70×30cmであることができる。これらの寸法は、長方形に限定されず、どんな形状を有してもよい。寸法は、コーティング剥離要素が存在する区域を制限する。
【0077】
本発明によれば、コーティングシステムの少なくとも1つの周波数選択コーティング剥離部分は、コーティングシステムに作られることができる、交差するアブレーションされた通路(path)の一続き又はパターンとすることができるが、手つかずの(つまり、コーティングを剥離されていない)区域にコーティングシステムが残っており、コーティングシステムのごく一部の面積のみが板ガラスパネルから除去されているにすぎず、且つコーティングされたガラスのほとんどが、手つかずのままであって(つまり、コーティングを剥離されておらず)、コーティングシステムの性能を保っている。
【0078】
これらのアブレーションされた通路は、電気的に絶縁される複数の区域をコーティングシステムに生じるように作られて、板ガラスパネルは、その省エネルギー特性又は加熱可能特性のほとんどを保持できるようにする一方で、アブレーションされた通路が板ガラスパネルをRF信号が通過できるようにする。
【0079】
様々な実施形態では、通路は、複数のスポットを生じるパルスレーザによって、作られることができる。スポットの直径は約20~25μmであるため、各通路は、ほぼこの幅になる。代替的な実施形態では、異なるサイズのスポット(例えば、直径10~200ミクロン)及び通路が使用されてもよい。さらに、スポットは重なり合い、重なり合う量は約50面積%であることができる;代替的な実施形態では、重なり合う程度は異なっていることができる。いくつかの実施形態では、重なり合いは、例えば25%から90%超に及ぶことができる。アブレーションされた交差する通路のパターンは、異なっていることができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、コーティングシステムのコーティング剥離面積は、用途、板ガラスユニットにおいて使用される材料などに依存して、全コーティング面積の3%以下とすることができる。他の実施形態では、異なる割合が使用されてもよい(例えばコーティングシステムの全面積の5%以下が除去され、及びコーティングシステムの全面積の95%は手つかずで残されている)。他の実施形態では、コーティングシステムは、その表面の少なくとも1つの部分でコーティング剥離され、このコーティング剥離部分は、コーティングの2%未満に当たる。他の実施形態では、いくつかのコーティング剥離部分が存在することができ、及びコーティング剥離表面は、全コーティング面積の多くても3%である。
【0081】
より高い割合の面積をアブレーションすることによって、板ガラスユニットを通るRF信号の透過を改善することができるが、コーティングシステムをより広くアブレーションすることによって、板ガラスユニットの省エネルギー特性、加熱可能性能を減少させることに留意されたい。
【0082】
本発明によれば、及び図2に示すように、少なくとも1つのコーティング剥離要素32は、少なくとも:
- 点Bが自由終端である第1のセグメントAB、
- 点Dが自由終端である第2のセグメントCD、
- サブセグメントAE、EB、CE及びEDを形成する、第1のセグメントABと第2のセグメントCDとの交点Eを含み、サブセグメントEBの長さ
は、サブセグメントAEの長さ
よりも短く、且つ0よりも大きく
、及びサブセグメントEDの長さ
は、サブセグメントCEの長さ
よりも短く、且つ0よりも大きい
。好ましくは、各セグメントの最長サブセグメントの和は、nλ/2に等しく、ここで、nは、0よりも大きい正の整数である
。ラムダ(λ)は、板ガラスユニットとの境界面における所望のRF放射の波長である。本発明によれば、ラテラルサブセグメントが存在することによって、周波数のシフトによってRF帯域幅を拡大する。この周波数シフトに起因して、各セグメントの最長サブセグメントの和は、ガラスパネル、所望の周波数、ラテラルサブセグメントの長さなどに依存して、nλ/2とは異なることができる。
【0083】
本発明によれば、セグメントは、2つの別個の端点によって境界が定められた線の一部であり、及び直線セグメントとしても、又は正弦曲線のような線の一部などの曲線セグメントとしてもよい。
【0084】
本発明によれば、サブセグメントは、セグメントの一部であり、前記セグメントの2つの別個の端点によって境界が定められている。
【0085】
本発明によれば、自由終端は端点であり、この前記端点に交差する他のセグメントは全くない。
【0086】
本発明によれば、中心サブセグメントはセグメントの一部であり、これは、前記セグメントの2つの別個の端点によって境界が定められていて、これら前記2つの別個の端点は、他のセグメントとの交点である。
【0087】
本発明によれば、ラテラルサブセグメントは、セグメントの一部であり、これは、前記セグメントの2つの別個の端点によって境界が定められていて、これら前記2つの別個の端点のうちの一方が自由終端であり、且つ他方の別個の端点が別のセグメントとの交点である。
【0088】
好ましくは、コーティング剥離要素のどのセグメントも、2つの自由終端を有して、交差する場合には、ラテラルサブセグメントを生じる。
【0089】
本発明によれば、セグメント又はサブセグメントの長さは、2つの別個の端点間のセグメント又はサブセグメントの線を辿る距離であり、且つセグメント又はサブセグメント端点にわたって上線が引かれて書かれる。例えばセグメントXYの長さは
である。
【0090】
驚くことに、少なくとも1つのコーティング剥離要素のラテラルサブセグメントED及びEBは、通過帯域を拡大することによって、板ガラスユニットを通るRF放射の透過を改善する。
【0091】
本発明によれば、セグメントによって形成された角度は、セグメントが別個である限り、0°(含まれない)~360°(含まれない)まで変化することができる。つまり、0°、180°又は360°の倍数の角度は、別個のセグメント又は別個のサブセグメントを得るためには不可能である。
【0092】
本発明によれば、少なくとも1つのコーティング剥離要素の少なくとも2つのセグメントは、ラテラルサブセグメントを有する。好ましくは、全てのセグメントは、ラテラルサブセグメントを有して、通過帯域の幅を改善する。つまり、どのセグメントも、2つの自由終端を有する。
【0093】
本発明によれば、図3~7に示すように、少なくとも1つのコーティング剥離要素32は、1つ以上の追加的なセグメントGF、IJ及び/又はMNを含む。つまり、少なくとも1つのコーティング剥離要素は、少なくとも3つのセグメントを含む。各セグメントは、別のセグメントとの1つの交点を有する。つまり、2つのセグメントは、これら前記2つのセグメント間に交点を1つのみ有することができる。好ましくは、各セグメントは、最大2つの交点を有する。つまり、1つのセグメントは、最大2つの異なるセグメントと交差できる。
【0094】
いくつかの好ましい実施形態では、各セグメントは、2つの異なる他のセグメントとの2つの交点を有しており、多角形などの閉じた形状、例えば3つのセグメントを備える三角形、4つのセグメントを備える長方形、正方形、若しくは菱形、5つのセグメントを備える五角形、6つのセグメントを備えるハニカム、又は異なる形状、セグメントの長さ、及びセグメント間の角度を備える多角形を形成する。
【0095】
いくつかの実施形態では、図3に示すように、少なくとも1つのコーティング剥離要素32は、3つの中心サブセグメントKE、EH及びHKによって形成された三角形を有する。
【0096】
いくつかの好ましい実施形態では、コーティング剥離要素32の、閉じた構造を形成する、中心サブセグメントKE及びEH及びHKの長さはnλ/2に等しく、ここで、nは、0よりも大きい正の整数である。
【0097】
驚くことに、少なくとも1つのコーティング剥離要素のラテラルサブセグメントAK、FK、ED、BE、HG及びHCは、通過帯域を拡大することによって、板ガラスユニットを通るRF放射の透過を改善する。
【0098】
いくつかの実施形態では、図4に示すように、少なくとも1つのコーティング剥離要素32は4つのセグメントAB、CD、FG及びIJを有し、蛇のような形状を形成する。これらの実施形態では、2つのセグメントはそれぞれ、2つの交点(EとH、又はHとK)を有する。これら2つのセグメントはそれぞれ、中心セグメント(EH又はHK)と、2つのラテラルサブセグメント(DEとHC、又はGHとKF)とを有する。他の2つのセグメントはそれぞれ、1つの交点(E又はK)を有する。これら他の2つのセグメントはそれぞれ、2つのラテラルサブセグメント(AEとBE、又はJKとKI)を有する。
【0099】
いくつかの好ましい実施形態では、2つのラテラルサブセグメントのみを有する2つのセグメントの最長サブセグメントAE及びKIの長さ
に、2つの中心サブセグメントEH及びHKの長さ
を足したものは、nλ/2に等しく
、ここで、nは、0よりも大きい正の整数である。全体的に蛇のような形状である5つ以上のセグメントの場合、好ましくは、2つのラテラルサブセグメントのみを有する全セグメントの最長サブセグメントの長さに、全中心サブセグメントの長さを足したものは、nλ/2に等しく、ここで、nは、0よりも大きい正の整数である。
【0100】
驚くことに、少なくとも1つのコーティング剥離要素32のセグメントの最短ラテラルサブセグメント(DE、BE、GH、CH、JK及びFK)は、通過帯域を拡大することによって、板ガラスユニットを通るRF放射の透過を改善する。
【0101】
いくつかの実施形態では、図5に示すように、少なくとも1つのコーティング剥離要素32は、4つのセグメントAB、CD、FG及びIJを有し、四辺形を形成している。これらの実施形態では、セグメント間に4つの交点E、H、K及びLがある。これら4つのセグメントはそれぞれ、中心セグメント(LE、EH、HK又はKL)と、2つのラテラルサブセグメント(AL、IL、DE、EB、GH、CH、KJ又はKF)とを有する。本発明によれば、中心サブセグメントの長さは、セグメント間に形成される角度のように、異なってもよい。
【0102】
いくつかの好ましい実施形態では、コーティング剥離要素の、閉じた構造を形成する全中心サブセグメント(LE、EH、HK及びKL)の長さ
は、nλに等しく
、ここで、nは、0よりも大きい正の整数である。
【0103】
驚くことに、少なくとも1つのコーティング剥離要素32のセグメントの最短ラテラルサブセグメント(AL、IL、DE、EB、GH、CH、JK及びFK)は、通過帯域を拡大することによって、板ガラスユニットを通るRF放射の透過を改善する。
【0104】
いくつかの実施形態では、図6に示すように、少なくとも1つのコーティング剥離要素32は、4つのセグメントAB、CD、FG及びIJを有し、正方形を形成する。つまり、4つのセグメントのうちの2つのセグメントは実質的に平行である。これらの実施形態では、セグメント間に4つの交点E、H、K及びLがある。これら4つのセグメントはそれぞれ、中心セグメント(LE、EH、HK又はKL)と、2つのラテラルサブセグメント(AL、IL、DE、EB、GH、CH、KJ又はKF)とを有する。これらの実施形態では、中心サブセグメントの長さは実質的に等しく、及びセグメント間に形成される角度αは実質的に90°に等しい。
【0105】
いくつかの好ましい実施形態では、コーティング剥離要素の、閉じた構造を形成する全中心サブセグメント(LE、EH、HK及びKL)の長さ
は、nλに等しく
、ここで、nは、0よりも大きい正の整数である。
【0106】
驚くことに、少なくとも1つのコーティング剥離要素32のセグメントの最短ラテラルサブセグメント(AL、IL、DE、EB、GH、CH、JK及びFK)は、通過帯域を拡大することによって、板ガラスユニットを通るRF放射の透過を改善する。
【0107】
いくつかの実施形態では、図7に示すように、少なくとも1つのコーティング剥離要素32は、5つのセグメントAB、CD、FG、IJ及びMNを有し、五角形を形成する。これらの実施形態では、セグメント間に5つの交点E、H、K、L及びOがある。これら5つのセグメントはそれぞれ、中心セグメント(OE、EH、HK、KL又はOL)と、2つのラテラルサブセグメント(AO、NO、DE、EB、GH、HC、JK、FK、LM又はLI)とを有する。本発明によれば、中心サブセグメントの長さは、セグメント間に形成される角度のように、異なってもよいが、好ましくは中心サブセグメントの長さは実質的に同じ長さを有し、且つセグメント間に形成される角度は実質的に等しい。
【0108】
いくつかの好ましい実施形態では、コーティング剥離要素の、閉じた構造を形成する全中心サブセグメント(OE、EH、HK、KL及びOL)の長さ
は、nλに等しく
、ここで、nは、0よりも大きい正の整数である。
【0109】
驚くことに、少なくとも1つのコーティング剥離要素32のセグメントの最短ラテラルサブセグメント(AO、NO、DE、EB、GH、CH、JK、FK、ML及びIL)は、通過帯域を拡大することによって、板ガラスユニットを通るRF放射の透過を改善する。
【0110】
図8に示すように、1つの周波数選択コーティング剥離部分は、複数のコーティング剥離要素を含む。複数のコーティング剥離要素32間の接触はない。この実施形態では、コーティング剥離要素32は、4つのセグメント及び4つの交点を含んでいて、中心サブセグメントが等しい、正方形のような形状を作る。これら特定の実施形態では、コーティング剥離要素の1つのセグメントは、隣接するコーティング剥離要素のセグメントに対して実質的に平行である。好ましくは、ラテラルサブセグメントの長さが等しく、中心サブセグメントの長さも等しい。
【0111】
いくつかの実施形態では、コーティング剥離要素のセグメントは整列されている。つまり、整列されたセグメントは、実質的に同じ線(32v、32h)の上にあり、これにより製造時間を短縮する。さらに好ましくは、コーティング剥離要素の中心サブセグメントが長方形を表すとき、X軸(32v)及びZ軸(32h)における隣接するコーティング剥離要素のセグメントは、整列される。
【0112】
いくつかの実施形態では、板ガラスユニットは、コーティング上に2つ以上の周波数選択コーティング剥離部分を含む。各周波数選択コーティング剥離部分のコーティング剥離要素は、本発明によるRF放射に対する反射率が高いコーティングシステムを備える板ガラスパネルのRF透明性を改善するために異なる帯域幅を有することができるように、異なるサイズを有することができる。
【0113】
少なくとも1つのコーティング剥離部分のパターン全体の区域は、異なる実施形態ごとに異なることができる。複雑なコーティング剥離部分及び/又はコーティング剥離要素を使用して帯域幅を広げて、マルチバンドフィルターを成し遂げてもよい。
【0114】
いくつかの実施形態では、周波数選択コーティング剥離部分の複数のコーティング剥離要素は、同じ寸法を有する。つまり、周波数選択コーティング剥離部分の複数のコーティング剥離要素は、同じ周波数選択コーティング剥離部分では互いに実質的に同じである。
【0115】
いくつかの他の実施形態では、周波数選択コーティング剥離部分の複数のコーティング剥離要素の寸法は、帯域幅を拡大するために、互いに異なる。
【0116】
図9のシミュレーションは、本発明による特定の実施形態に関して行われた。板ガラスユニットは、コーティング剥離要素を含む1つの周波数選択コーティング剥離部分を含む。この要素は、図6に示すような1.5mmの中心サブセグメント、及び異なる長さのラテラルサブセグメントを備える正方形を有する。
【0117】
図9は、本発明による1.5mmの中心サブセグメント及び0.5mmのラテラルサブセグメントを備える少なくとも1つのコーティング剥離要素(黒い点のある黒の実線の曲線)、本発明による1.5mmの中心サブセグメント及び0.225mmのラテラルサブセグメントのある少なくとも1つのコーティング剥離要素(正方形のある黒の実線の曲線)、及び比較例として、ラテラルサブセグメントのない、1.5mmの辺の少なくとも1つのコーティング剥離要素(黒の破線の曲線)のシミュレーション結果を示す図表である。
【0118】
驚くことに、本発明による少なくとも1つのコーティング剥離要素のラテラルサブセグメントは、周波数のシフトを伴うラテラルサブセグメントのないコーティング剥離要素(破線の曲線)と比較して、ミリ波に対して帯域幅を広げる。10dBの損失レベルでは、1.5mmの中心サブセグメントを備える少なくとも1つのコーティング剥離要素を備える、本発明による板ガラスユニット(実線の曲線)は、約19GHz~27GHzの放射でRF透明であり、このうち、19~26GHzは、0.5mmのラテラルサブセグメントを備える少なくとも1つのコーティング剥離要素に対してであり、及び21.5~27GHzは、0.225mmのラテラルサブセグメントを備える少なくとも1つのコーティング剥離要素に対してである。本発明による板ガラスユニットは、少なくとも1つのコーティング剥離要素の寸法に依存して、6GHzを下回るより低周波及び/又は15GHzを上回るミリ波及び/又は建築物又は自動車の室内形状に依存して、H又はV偏光の双方の損失減衰レベルを、多くても-10デシベル(dB)に減少させるような用途において使用される任意の他の周波数若しくは周波数範囲の透過を高めることができ、且つ改良として意図している。
【0119】
驚くことに、ラテラルサブセグメントの長さが長いほど、帯域幅は大きくなる。0.225mmの長さは、約21.5GHz~27GHzのミリ波RF放射に関して、10dBの減衰で透過できるようにし、一方、0.5mmの長さは、約19GHz~26GHzのミリ波RF放射に関し、10dBの減衰での透過を可能にする。本発明による板ガラスユニットでの拡大した帯域幅は、それほどロバストではないアンテナでも使用できるようにする。つまり、アンテナは、所望の放出された周波数(及び/又は受信)に関して、ある一定の誤差範囲で放出するように設計されることができる。
【0120】
本発明によれば、コーティング剥離要素間の結合を回避するために、コーティング剥離要素32間には接触がない。コーティング剥離要素間のコーティングシステムは手つかずである。
【0121】
それに加えて、帯域幅を拡大することは、板ガラスユニットが、車、列車などの移動物体において使用される場合、ドップラー効果及び周波数のシフトに基づいて、内部で信号をより良好に受信できるようにする。
【0122】
本発明は、板ガラスユニットに異なる寸法の第1のコーティング剥離要素を備えるいくつかのコーティング剥離部分を有することができるようにし、板ガラスユニットを透過する広範囲の周波数をもたらし、且つ板ガラスユニットでの、使用される周波数範囲内のいずれのRF反射も回避することができるようにする。
【0123】
本発明はまた、
A. 複数のコーティング剥離要素の第1のセグメントを形成するために、レーザアブレーションによって、少なくとも1つの周波数選択コーティング剥離部分の一部分を除去するステップ
B. 複数のコーティング剥離要素の第2のセグメントを形成するために、レーザアブレーションによって、少なくとも1つの周波数選択コーティング剥離部分の一部分を除去するステップ
C. 少なくとも1つのコーティング剥離要素が3つ以上のセグメントを有する場合、少なくとも1つのコーティング剥離要素が、最初の2つのセグメントに加えて有するセグメントの数と同じ数だけステップBを繰り返すステップ
を含む、本発明による板ガラスユニットを製造するための方法に関する。
【0124】
図10に示すように、本発明のいくつかの実施形態では、レーザ100が、レーザビーム101を用いて、異なるステップ(A、B及びC)によって、少なくとも1つの周波数選択コーティング剥離部分を除去(アブレーション)し、少なくとも1つのコーティング剥離要素、好ましくは複数のコーティング剥離要素を作る。
【0125】
本発明によれば、図10及び11に示すように、いくつかの好ましい実施形態では、板ガラスユニットは:4つのセグメントと、4つの交点とを含み、4つのセグメントのうちの2つのセグメントは、X軸及び第1のコーティング剥離要素の1つの辺に対して実質的に平行であり、且つ残りの2つのセグメントは、最初の2つのセグメントに対して実質的に垂直であり、各セグメントは、3つのサブセグメント(即ち1つの中心サブセグメント及び2つのラテラルサブセグメント)を有し、且つ図8に示すように、各セグメントの各中心サブセグメントは他の中心サブセグメントと実質的に同じ長さを有する、複数のコーティング剥離要素を含む、少なくとも1つの周波数選択コーティング剥離部分を含み、
方法は、以下のステップ:
A. コーティング剥離要素のX軸方向の第1のセグメントを作るために、X軸方向の第1の中断線(discontinued line)を形成するように、レーザアブレーションによってコーティングの一部分を除去するステップ、
B. コーティング剥離要素のX軸方向の第2のセグメントを作るために、第1の中断線に隣接してX軸方向の第2の中断線を形成するように、レーザアブレーションによってコーティングの一部分を除去するステップ、
C. コーティング剥離要素のX軸方向の全セグメントを提供するために、ステップA及びBを繰り返すステップ、
D. コーティング剥離要素のZ軸方向の第1のセグメントを作るために、Z軸方向の第1の中断線を形成するように、レーザアブレーションによってコーティングの一部分を除去するステップ、
E. コーティング剥離要素のZ軸方向の第2のセグメントを作るために、第1の中断線に隣接してZ軸方向の第2の中断線を形成するように、レーザアブレーションによってコーティングの一部分を除去するステップ、
F. コーティング剥離要素のZ軸方向の全セグメントを提供するために、ステップD及びEを繰り返すステップ
を含む。
【0126】
レーザの通路だけでなくエネルギー消費及び時間消費も最適にするために、X軸方向又はZ軸方向の一方での全アブレーションステップは、連続したステップで行われ、その後、他方の軸(それぞれZ又はX軸)での全アブレーションステップが行われることができる。
【0127】
好ましくは、コーティング剥離要素のセグメントを作るために、レーザは、単一の通路においてスイッチをON-OFFして、異なるコーティング剥離要素の整列した全てのセグメントを作る。別の方法は、コーティングが手つかずである必要があるゾーンをマスキングすることである。
【0128】
図12は、ガラスシートに接触しているコーティングシステムの表面に向かい合っている表面20Aを有する、コーティングシステム20の厚さにおけるコーティング剥離深さのプロファイルを示す。コーティング剥離の厚さTCは、隔離したゾーンを作るために、コーティングの1つ又は複数の金属層の距離よりも深い。レーザは、第2のコーティング剥離要素の辺を作るためにON/OFF機能動作によって、斜面20Cを生じる。この斜面は、観察者の目に対して少なくとも1つのコーティング剥離要素をより目立たなくすることができる。好ましくは、少なくとも1つのコーティング剥離要素の1つ又は複数の交点は、斜面の後ろにあり、そこでは、コーティング剥離部分は、コーティングシステムの表面に対して実質的に平行であり、可能な限り目立たない、隔離した構造を有するようになる。
【0129】
本発明によれば、板ガラスユニットは、コーティング上に、板ガラスユニットのRF透明性を最大にするために、異なるサイズのコーティング剥離要素を備えるいくつかの周波数選択コーティング剥離部分を含むことができる。
【0130】
いくつかの実施形態では、同じ周波数選択コーティング剥離部分内に、1つ又はいくつかの部分を設ける場合、単一のコーティング剥離部分において異なる周波数に対するRF透明性を有するようにするために、異なる長さの異なるコーティング剥離要素を設けることが可能である。本発明によれば、例えば、単一のコーティング剥離部分において、いくつかのコーティング剥離要素がサブ6GHzに対するRF透明性を可能にし、いくつかの他のものが約28GHZに対するRF透明性を可能にし、及びおそらくはいくつかの他のものが約35GHzに対するRF透明性を可能にする。他の形態及び/又はRF透明性も、本発明によれば可能である。
【0131】
本発明によれば、板ガラスユニットは、RF信号がより良好に広がるようにするために、コーティング上に、同じ特性を備えるいくつかの周波数選択コーティング剥離部分を含むことができる。
【0132】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのアンテナを、板ガラスユニットを通して放射する及び/又は他のサイズの板ガラスユニットからの放射を受信するようにするために、少なくとも1つのアンテナは、周波数選択コーティング剥離部分の前側に配置されることができる。
【0133】
本発明による板ガラスユニットは、6GHzを下回るより低周波及び/又は15GHzを上回るミリ波及び/又は建築物又は自動車の室内形状に依存して、H又はV偏光の双方に対する損失減衰レベルを、多くても-10デシベル(dB)に減少させるような用途に使用される任意の他の周波数若しくは周波数範囲の透過を高めることができ、且つ改良として意図している一方で、コーティング性能を保ち、且つコーティング剥離の割合及びコーティングとコーティング剥離との間の見た目(aesthetic)を最小限にして、不可視性レベルを可能な限り高く保つ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】