(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-01
(54)【発明の名称】ピンリフター試験基板
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20220325BHJP
【FI】
H01L21/68 R
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021531577
(86)(22)【出願日】2018-12-03
(85)【翻訳文提出日】2021-07-29
(86)【国際出願番号】 US2018063652
(87)【国際公開番号】W WO2020117201
(87)【国際公開日】2020-06-11
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592010081
【氏名又は名称】ラム リサーチ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドーアティ・ジョン・イー.
(72)【発明者】
【氏名】ジン・チャンユー
(72)【発明者】
【氏名】アナンド・スシル
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA01
5F131BA17
5F131CA18
5F131CA53
5F131EB11
5F131EB72
5F131EB78
5F131EB79
5F131KA22
5F131KA54
5F131KA62
5F131KB09
5F131KB32
(57)【要約】
【解決手段】種々の実施形態は、基板がプロセスツール上の基板処理位置にある状態で、基板ピンリフターを現場で非侵襲的に検証することを提供するための装置を含む。本開示の主題はまた、基板をプロセスツールから取り外す前、または取り外している間の基板の予期せぬ動きを検証できる。例示的な実施形態において、ピンリフター試験基板は、複数のモーションセンサと、少なくとも1つの力センサとを有する。モーションセンサは、傾斜計および加速度計を含むセンサ種類から選択される少なくとも1種類のセンサを含む。ピンリフター試験基板上の記憶装置は、モーションセンサから受信したデータを記録する。記憶装置に代えて、または記憶装置に加えて、無線通信装置は、モーションセンサから受信したデータをリモート受信機に送信する。他の装置およびシステムが開示されている。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピンリフター試験基板システムであって、
傾斜計および加速度計を含むセンサ種類から選択される少なくとも1種類のセンサを含む複数のモーションセンサと、
ピンリフター試験基板が基板保持装置に載置されたときに複数の基板ピンリフターの対応する位置に近接して位置する1つまたは複数の力センサと、
前記複数のモーションセンサおよび前記1つまたは複数の力センサから受信したデータを送信するように構成された通信装置と、
前記通信装置に通信可能に連結され、前記複数のモーションセンサおよび前記1つまたは複数の力センサから受信したデータを記録するように構成された記憶装置と、
を含む、ピンリフター試験基板システム。
【請求項2】
請求項1に記載のピンリフター試験基板システムであって、
前記ピンリフター試験基板は、シリコンウエハと同一または同様の寸法を有する、
ピンリフター試験基板システム。
【請求項3】
請求項1に記載のピンリフター試験基板システムであって、
前記ピンリフター試験基板は、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、および各種のセラミックスを含む材料から選択される少なくとも1つの材料から形成される、
ピンリフター試験基板システム。
【請求項4】
請求項1に記載のピンリフター試験基板システムであって、
前記傾斜計は、前記ピンリフター試験基板の勾配または傾斜を判定するように構成されている、
ピンリフター試験基板システム。
【請求項5】
請求項1に記載のピンリフター試験基板システムであって、
前記傾斜計は、前記ピンリフター試験基板の局所的な凹みを判定するように構成されている、
ピンリフター試験基板システム。
【請求項6】
請求項1に記載のピンリフター試験基板システムであって、
前記傾斜計は、基板保持装置上の複数の基板ピンリフターの1つまたは複数が破損しているか否かを判定するように構成されている、
ピンリフター試験基板システム。
【請求項7】
請求項1に記載のピンリフター試験基板システムであって、
前記1つまたは複数の力センサは、前記ピンリフター試験基板から前記基板保持装置に対する接触力があるか否かを判定するように構成されている、
ピンリフター試験基板システム。
【請求項8】
請求項1に記載のピンリフター試験基板システムであって、
前記加速度計は、前記複数の基板ピンリフターに供給される空気圧が高すぎるか否かを判定するように構成されている、
ピンリフター試験基板システム。
【請求項9】
請求項1に記載のピンリフター試験基板システムであって、
前記加速度計は、前記複数の基板ピンリフターに供給される空気圧が低すぎるか否かを判定するように構成されている、
ピンリフター試験基板システム。
【請求項10】
請求項1に記載のピンリフター試験基板システムであって、
前記加速度計は、前記ピンリフター試験基板上の振動を測定するように構成されている、
ピンリフター試験基板システム。
【請求項11】
請求項1に記載のピンリフター試験基板システムであって、
前記通信装置は、前記複数のモーションセンサおよび前記1つまたは複数の力センサから受信したデータをリモート受信機に送信するように構成された無線通信装置である、
ピンリフター試験基板システム。
【請求項12】
請求項11に記載のピンリフター試験基板システムであって、
前記無線通信装置は、無線周波数送信機、Bluetooth送信機、赤外線(IR)送信機、および光通信送信機を含む少なくとも1種類の無線通信装置から選択される、
ピンリフター試験基板システム。
【請求項13】
請求項1に記載のピンリフター試験基板システムであって、
温度センサ、圧力センサ、および流量センサから選択されるセンサ種類を少なくとも含む少なくとも1つの追加センサをさらに含む、
ピンリフター試験基板システム。
【請求項14】
請求項13に記載のピンリフター試験基板システムであって、
前記温度センサは、前記ピンリフター試験基板の種々の位置から温度を判定するように構成された複数の温度センサを含む、
ピンリフター試験基板システム。
【請求項15】
請求項13に記載のピンリフター試験基板システムであって、
前記圧力センサは、前記ピンリフター試験基板の裏面に印加されるガス圧を判定するように構成された、
ピンリフター試験基板システム。
【請求項16】
請求項1に記載のピンリフター試験基板システムであって、
前記複数のモーションセンサ、前記1つまたは複数の力センサ、前記記憶装置、および前記通信装置は、前記ピンリフター試験基板上に直接組み立てられる、
ピンリフター試験基板システム。
【請求項17】
請求項1に記載のピンリフター試験基板システムであって、
前記複数のモーションセンサ、前記1つまたは複数の力センサ、前記記憶装置、および前記通信装置は、プリント回路基板上に組み立てられ、前記プリント回路基板はその後前記ピンリフター試験基板上に取り付けられる、
ピンリフター試験基板システム。
【請求項18】
基板処理システムであって、
複数の基板ピンリフターを有する基板保持装置と、
前記基板保持装置に通信可能に連結されたコントローラであって、
ロボットのエンドエフェクタを用いて、前記基板処理システムの少なくとも1つのプロセスチャンバ内の前記基板保持装置上にピンリフター試験基板を搬入することと、
前記ピンリフター試験基板上に取り付けられた、傾斜計および加速度計を含むセンサ種類から選択される少なくとも1種類のセンサを含む複数のモーションセンサと、複数の力センサとからデータを受信することと、
受信した前記データを前記ピンリフター試験基板から遠隔に位置する受信機に送信する工程と、受信した前記データを前記ピンリフター試験基板上に取り付けられた記憶装置に保存する工程とを含む工程から選択される少なくとも1種の工程を含む工程を実行することと、
を実行するように構成された実行可能な命令を有するコントローラと、
を含む、基板処理システム。
【請求項19】
請求項18に記載の基板処理システムであって、
受信した前記データを送信する工程は、無線で実行されるように構成された、
基板処理システム。
【請求項20】
請求項18に記載の基板処理システムであって、
前記コントローラは、
前記ピンリフター試験基板が前記データを受信している間、前記ロボットの前記エンドエフェクタを前記プロセスチャンバ内に維持することと、
前記複数の基板ピンリフターに対して、所定のパターンごとに所定のサイクル数、上昇したピンアップ位置への移動と、下降したピンダウン位置への移動とを行うよう命令することと、
前記複数の基板ピンリフターから受信した前記データを前記モーションセンサによって前記ピンリフター試験基板から遠隔に位置する前記受信機に無線で送信する工程と、受信した前記データを前記ピンリフター試験基板上に取り付けられた前記記憶装置に保存する工程とから選択される少なくとも1つの工程を含む工程を実行することと、
を実行するように構成された実行可能な命令をさらに含む、
基板処理システム。
【請求項21】
請求項18に記載の基板処理システムであって、
前記コントローラは、前記上昇した、ピンアップ位置、および前記下降した、ピンダウン位置から受信したデータに基づき、前記基板ピンリフターの1つまたは複数が故障しているか否かを判定するように構成された実行可能な命令をさらに含む、
基板処理システム。
【請求項22】
請求項18に記載の基板処理システムであって、
前記コントローラは、前記上昇したピンアップ位置および前記下降したピンダウン位置から受信したデータに基づき、前記基板ピンリフターに連結されたエアホースが故障しているか否かを判定するように構成された実行可能な命令をさらに含む、
基板処理システム。
【請求項23】
請求項18に記載の基板処理システムであって、
前記コントローラは、前記ピンリフター試験基板を前記基板保持装置上に載置した後、前記ピンリフター試験基板を用いた試験中、前記ロボットの前記エンドエフェクタを前記プロセスチャンバから退避させるように構成された実行可能な命令をさらに含む、
基板処理システム。
【請求項24】
請求項23に記載の基板処理システムであって、
前記コントローラは、前記プロセスチャンバへのアクセスドアを開位置に維持することと、受信した前記データを前記ピンリフター試験基板から前記ロボットに取り付けられた受信機に無線で送信することと、を実行するように構成された実行可能な命令をさらに含む、
基板処理システム。
【請求項25】
請求項18に記載の基板処理システムであって、
前記コントローラは、前記複数のモーションセンサから受信したデータに基づき、前記ピンリフター試験基板を前記プロセスチャンバから取り外した後の前記ピンリフター試験基板のダイナミックアライメントを監視するように構成された実行可能な命令をさらに含む、
基板処理システム。
【請求項26】
請求項18に記載の基板処理システムであって、
前記コントローラは、前記複数のモーションセンサから受信したデータに基づき、前記基板保持装置の傾斜角が、前記傾斜角に関する所定の値に基づく仕様範囲内であるか否かを判定するように構成された実行可能な命令をさらに含む、
基板処理システム。
【請求項27】
請求項18に記載の基板処理システムであって、
前記コントローラは、前記複数のモーションセンサから受信したデータに基づき、前記基板ピンリフターのすべてが、加速度に関する所定の許容値に基づき同様に加速しているか否かを判定するように構成された実行可能な命令をさらに含む、
基板処理システム。
【請求項28】
基板処理システムであって、
プロセスチャンバと、
複数の基板ピンリフターを有し、前記プロセスチャンバ内に位置した基板保持装置と、
基板を前記基板保持装置上に載置するように構成されたエンドエフェクタを有するロボットと、
前記ロボットの前記エンドエフェクタによって前記基板保持装置上に載置されるように構成されたピンリフター試験基板であって、
傾斜計および加速度計を含むセンサ種類から選択される少なくとも1種類のセンサを含む複数のモーションセンサと、
前記ピンリフター試験基板が基板保持装置上に載置されたときに前記複数の基板ピンリフターの対応する位置に近接して位置する1つまたは複数の力センサと、
前記複数のモーションセンサおよび前記1つまたは複数の力センサから受信したデータを送信するように構成された通信装置と、を含むピンリフター試験基板と、
前記複数のモーションセンサおよび前記1つまたは複数の力センサから受信したデータを記録するように構成された記憶装置と、
前記基板保持装置および前記エンドエフェクタを有する前記ロボットに通信可能に連結され、少なくとも前記ピンリフター試験基板に関する前記基板処理システムの動作を制御するように構成された実行可能な命令を含むコントローラと、
を含む、基板処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する主題は、半導体およびその関連分野において用いられる装置に関する。より具体的には、本開示の主題は、基板がプロセスツール上の基板処理位置にある状態で、現場で非侵襲的に基板ピンリフターを検証すること、ならびに基板ピンリフターおよび関連する基板保持装置の故障が基板のダイナミックアライメントに及ぼし得る影響を現場で非侵襲的に検証することに関する。したがって、本開示の主題は、基板ピンリフターの動作を検証できるとともに、基板をプロセスツールから取り外している間の基板の予期せぬ動きを検証できる。
【背景技術】
【0002】
種々の半導体プロセス装置(例えば、堆積ツールやエッチングツール)は通常、3つの圧力駆動ピンリフターを用いて、半導体基板(例えば、シリコンウエハ)を静電チャック(ESC)上に昇降する、もしくはESCから取り外す。ESCは、当業者には公知であり、例えば、プラズマベースの半導体処理および真空ベースの半導体処理に一般に用いられる。ESCは、半導体処理時に基板を取り付けて静電的に「固定」するために用いられるだけでなく、基板を冷却または加熱し、基板を平坦化して処理の均一性を高めるためにも用いられる。
【0003】
一般的な基板ピンリフターは、複数のピン(例えば、一般的には、金属、サファイア、または先端にサファイアが設けられた金属からなる3つのピン)と、基板ピンリフターを上昇させるための空気圧アクチュエータと、基板ピンリフターの高さを測定するための1つまたは複数の位置センサからなる。
【0004】
破損または動作不良のリフトピン、過大または過少な空気圧、位置合わせミスまたは誤較正が生じているピン位置センサなど、仕様外である基板ピンリフター内または基板ピンリフターに関連するいずれかの構成要素により、基板の取り扱いに支障が出ることになる。基板ピンリフターが正常に機能しない場合、基板が損傷する可能性があり、その結果、修理を行うためにプロセスツールのダウンタイムが発生するだけでなく、基板上の装置に起因する金銭的な損失が発生する可能性がある。
【0005】
一般的に、一連のチャック/デチャック工程は、以下に記載の工程を含む。ロボットアームのエンドエフェクタを備えた処理モジュール(PM)または処理チャンバ内に基板が搬送される。通常、3つの基板リフトピンは、上方に移動し、ピンが上昇位置または「アップ」位置にある状態で、ロボットアームから基板を受け取る。ロボットアームがプロセスチャンバから退避された後、基板リフトピンは、下降位置または「ダウン」位置に移動する。ピンは、ESCの上面の直下(例えば、通常わずか数十ミクロン)まで退避することにより、基板をESCのセラミック製の上面に載置したままにする。ESCは、ESCのセラミック表面内部に内蔵された電極に高電圧を印加することにより(導体クーロン力型ESCの場合、正負両方の電圧が印加される)、基板の「チャック」を開始する。プロセスが完了すると、ESCに印加された高電圧は、ゼロにリセットされ、すべての電荷が除去される。ピンは、「アップ」位置へと上昇して基板を持ち上げ、ロボットアームは、基板をプロセスチャンバから取り外す。
【0006】
基板ピンリフターが正常に機能しないことに加えて、電荷は、ESC表面またはその付近にトラップされることも多く、これにより、基板とESCとの間に残留吸着力が生じる。ピンが上昇すると、基板のデチャック工程中にこの残留吸着力によって、屈曲、傾斜、飛び上がり、横滑り、および半導体処理工程にとって有害となり得るその他の動きなど、基盤が望ましくない動きをする可能性がある。最悪の事態では、基板をESCから分離させている最中に基板が破損する可能性がある。
【0007】
基板ピンリフターは一般に、プロセスチャンバ(またはプロセスモジュール)が開状態のとき、手動で点検されている。プロセスチャンバを閉じて密閉した後、基板ピンリフターは、1つまたは複数の基板ピンリフター上のピンセンサを通じてのみ監視される。ピンセンサは、基板ピンリフターのうち特定の1つが上昇している(アップ位置にある)か下降している(ダウン位置にある)かどうかを監視することしかできない。ピンセンサは、1つまたは複数の基板ピンリフターが破損しているか、空気圧が正常か、または、故障が発生した(または、故障が発生しそうである)他の多くの事態のいずれかを判定することができない。例えば、基板ピンリフターの1つが破損している場合、ピンセンサは、ピンを作動させるために用いられるピストンの位置を検出することによって、この破損ピンが正常な位置にあると検出される可能性がある。しかしながら、この破損ピンにより、基板が誤った位置(例えば、一方の側が低くなる)に置かれてしまう可能性がある。したがって、基板が損傷(例えば、ロボットのエンドエフェクタによる損傷、またはロボットによって退避できないことによる損傷)する恐れがある。いずれの場合も、特に、基板工程またはフロントエンド(FEOL)をほぼすべて完了した完全実装された基板の場合に金銭的損失が生じる可能性がある。
【0008】
空気圧が正しくない場合、特に、空気圧が高すぎると、基板は、乱雑な扱いを受ける可能性もある(例えば、高加速力によって、
図1A~1Cに関して後述するように、基板のダイナミックアライメント(DA)に問題が生じる可能性がある)。総じて、基板の位置を現場で自動的に直接点検することは一般的に行われていない。
【0009】
したがって、本開示の主題は、基板がプロセスツール(例えば、基板処理システム)上の基板処理位置にある状態で、現場で非侵襲的に基板ピンリフターを検証することを提供する。また、本開示の主題は、プロセスツールからの基板の取り外し前または取り外し中における基板の予期せぬ動きも検証できる。
【0010】
この背景技術に記載の情報は、以下に開示の主題を当業者に提示するために提供されており、認められた先行技術と見なされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】
図1A~
図1Cは、チャックおよびデチャック工程、ならびにその結果生じる基板の横移動の例を示し、この横移動は、静電チャック(ESC)に対して、(1)デチャック工程中に基板またはESCの少なくとも1つに電荷が残留していること、もしくは(2)基板をESCから取り外すために用いられるピンリフターの1つまたは複数が故障していること、の少なくとも1つに起因する。
【
図1B】
図1A~
図1Cは、チャックおよびデチャック工程、ならびにその結果生じる基板の横移動の例を示し、この横移動は、静電チャック(ESC)に対して、(1)デチャック工程中に基板またはESCの少なくとも1つに電荷が残留していること、もしくは(2)基板をESCから取り外すために用いられるピンリフターの1つまたは複数が故障していること、の少なくとも1つに起因する。
【
図1C】
図1A~
図1Cは、チャックおよびデチャック工程、ならびにその結果生じる基板の横移動の例を示し、この横移動は、静電チャック(ESC)に対して、(1)デチャック工程中に基板またはESCの少なくとも1つに電荷が残留していること、もしくは(2)基板をESCから取り外すために用いられるピンリフターの1つまたは複数が故障していること、の少なくとも1つに起因する。
【0012】
【
図2A】
図2Aは、基板の一種、すなわちシリコンウエハの平面図を示す。
【0013】
【
図2B】
図2Bは、本明細書に開示の種々の実施形態に従う、ピンリフター試験基板(
図2Aのシリコンウエハと同一または同様の寸法を有する)の前面に配置されたセンサの例を示す。
【0014】
【
図2C】
図2Cは、本明細書に開示の種々の実施形態に従う、ピンリフター試験基板(
図2Aのシリコンウエハと同一または同様の寸法を有する)の裏面に配置されたセンサの例を示す図である。
【0015】
【
図3】
図3は、本明細書に開示の種々の実施形態に従う、処理ツールのプロセスチャンバ内に配置された
図2Bおよび
図2Cのピンリフター試験基板からデータを受信するための方法の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の主題は、添付の図面の種々の図に示されているように、いくつかの一般的かつ特定の実施形態を参照して詳細に説明されることになる。以下の説明では、本開示の主題を十分に理解できるように多くの特定の詳細が示されている。しかしながら、当業者にとって明らかなように、本開示の主題がこれらの特定の詳細の一部または全部がなくても実施されてもよい。他の例では、本開示の主題を曖昧にしないため、公知のプロセスステップまたは構造は、詳細に記載されていない。
【0017】
種々の実施形態において、ピンリフター試験基板は、以下に詳述するように、複数のセンサを有する基板であり、基板ピンリフターの種々の態様ならびに基板自体の動きを監視する。ピンリフター試験基板は、例えば、半導体装置の製造に用いられる通常の基板と実質的に同様または同一の全体形状を有している。特定の実施形態において、こうした通常の基板は、300mmまたは450mmの半導体(例えば、シリコン)ウエハであってもよい。ピンリフター試験基板は、通常の基板と同一の追跡特徴(例えば、レーザーマーキングおよびバーコード)および位置決め特徴(例えば、300mmのウエハ上のノッチ)を有することができる。ピンリフター試験基板は、標準的な搬送ロボットのロボットアームのエンドエフェクタによって、通常の基板と同一の位置に(基板ピンリフターの上方に)載置されている。
【0018】
したがって、本開示の主題は、直接測定および実際の基板処理工程中に生じ得る、基板の位置を提供する。したがって、本開示の主題は、現場で非侵襲的かつ自動的な基板ピンリフターのヘルスチェックを提供し、基板の損失を防止する、もしくはプロセスツールのダウンタイムを低減または最小化する。したがって、本開示の主題は、基板がプロセスツール上の基板処理位置にある状態で、現場で非侵襲的に基板ピンリフターを検証することを提供する。また、本開示の主題は、基板をプロセスツールから取り外している間の基板の予期せぬ動きも検証できる。
【0019】
種々の実施形態において、本明細書に開示のピンリフター試験基板は、例えば、種々のタイプのモーションセンサ、力センサ、およびデータ取得システムを含んでよい。以下に詳述するように、これらの構成要素の各々は、ピンリフター試験基板上に取り付けられる。
【0020】
ピンリフター試験基板上のモーションセンサの一機能の一例として、
図1A~1Cは、デチャック工程中に生じ得る基板の動きの例を示す。こうした基板の動きは、本開示のピンリフター試験基板の種々の実施形態を用いて監視および記録することができる。例えば、
図1A~1Cを参照すると、チャックおよびデチャック工程、ならびにその結果生じる基板の横移動の例が示されており、この横移動は、静電チャック(ESC)に対して、(1)デチャック工程中に基板またはESCの少なくとも1つに電荷が残留していること、もしくは(2)基板をESCから取り外すために用いられるピンリフターの1つまたは複数が故障していること、の少なくとも1つに起因する。
【0021】
図1Aのチャック工程を参照すると、シリコンウエハ101(または、後述のピンリフター試験基板)は、静電チャック(ESC)103上に載置されている。ESC103は、ESC103に電圧を印加するための少なくとも1つの電極105と、下降位置111Aに示される複数の基板ピンリフター(ピン)とを有する。下降位置111Aにおいて、ピンは通常、ESC103の最上面から数十ミクロン下方にある。しかしながら、チャック工程中にシリコンウエハ101がESC103の最上面に接触している、もしくはほぼ接触している限り、最上面から下方の正確な距離は、本開示の主題の性能または機能に影響しない。当業者であれば本開示を読んで理解したところに基づいて認識できるように、本開示の主題が半導体およびその関連分野において用いられる任意の種類の基板に等しく適用可能である。したがって、基板は、シリコンウエハのみに限定される必要はない。しかしながら、用語「シリコンウエハ」は、本開示の主題の種々の態様を説明するにあたり、本明細書においては単に明確さを目的として用いられることになる。
【0022】
高電圧は、電極105に印加され、次に電極105がその高電圧をESC103に供給する。印加された高電圧によって、シリコンウエハ101とESC103との間に反対の電荷が発生する。この例では、負の電荷109は、ESC103上に形成され、正の電荷107は、ESC103近傍のシリコンウエハ101の表面上に形成される(ウエハの電荷は、主にESC103近傍のシリコンウエハ101の最下部に再配分される)。その結果、電極105から印加された高電圧によって、シリコンウエハ101をESC103上に保持する静電力が発生する。
【0023】
通常のプロセスフローでは、シリコンウエハ101を静電力によってESC103にチャックした後、例えば、プロセスツール内のコントローラによって実行されるように、所望のプロセスレシピを開始する前に、ヘリウムガスが、(例えば、シリコンウエハ101の加熱および冷却用の熱伝導率を高めるために)シリコンウエハ101の裏面(すなわち、ウエハのESC103に近傍側)に供給される。当業者であれば理解されるように、ならびに以下で詳述するように、ピンリフター試験基板はまた、ヘリウムガスの圧力および流量を認識するように構成され得る。プロセスレシピの完了後、ヘリウムガスの流れが停止し、次にヘリウムが送出(排出)される。電極105の高電圧は、ゼロにリセットされ、理想的には、すべての電荷を除去する。
【0024】
図1Bを参照すると、ヘリウムが排出され、電極105の高電圧が0ボルトにリセットされた後、ピンは、下降位置111Aから上昇位置111Bに移動する。上昇位置111Bでは、ピンは、シリコンウエハ101を所定の「アップ」位置に持ち上げる。アップ位置では、ロボットアームは、プロセスチャンバ内に戻り、シリコンウエハ101を拾い上げ、取り外すことができる。
【0025】
しかしながら、
図1Bに示すように、シリコンウエハ101またはESC103の部分にまだ電荷が残留していると、シリコンウエハ101は、例えば、電荷トラップおよび電荷の移動を含む、残留引力により、ピンが上昇位置111Bにあると、適切にESC103の上方に持ち上がらない可能性がある。その結果、この引力により、シリコンウエハ101は、
図1Cに示すようにESC103に対して横移動および/または回転移動する可能性がある。この横シフトおよび/または回転シフトによって、ダイナミックアライメント(DA)オフセット113が生じる。総じて、ダイナミックアライメントは、シリコンウエハ101がプロセスチャンバ内外に移動する際のシリコンウエハ101の位置を測定する。DAオフセット113は、プロセス開始前のシリコンウエハ101とプロセス完了後のシリコンウエハ101(すなわち、プロセス前のDA-プロセス後のDA)との間の差である。DAオフセット113により、ウエハのデチャック精度を監視する。
【0026】
上で簡単に述べたように、摂氏数百度になり得るESCの動作温度において、ウエハのチャック工程中に、電荷は、ESC103の最上面にトラップされる可能性がある。トラップされた電荷は、残留電荷とも呼ばれる。さらに、シリコンウエハ101からの種々の放射も、シリコンウエハ101とESC103との間に生じる残留力の原因となり得る。これらの残留力によって、ウエハの屈曲、傾斜、飛び上がり、滑り、ひいては破損など、ウエハが望ましくない動きをする可能性がある。
【0027】
特定のデチャック不良の原因分析は、プロセス、ウエハの種類、ESCセラミック材料、セラミック温度、プロセス時間、バイアス電圧、プロセス化学物質、および他の要因に応じて複雑になり得る。例えば、当業者には公知であるが、半導体およびその関連分野で用いられるESCには主に、クーロン型チャックとジョンセン・ラーベック型チャックの2種類がある。これら2種類のチャックの大きな違いの1つは、デチャック工程に関する。クーロン型チャックでは、電極105の高電圧が0ボルトにリセットされると、ほぼ瞬時に大きな短絡電流が流れるが、短い時定数で(ミリ秒のオーダーで)指数関数的に減少する。しかしながら、ジョンセン・ラーベック型チャックでは、指数関数的に減衰しない小電流がはるかに長い時間(秒のオーダーで)持続するため、残留電荷が消散するまでの時間が必要となることから、デチャック時間がはるかに長くなる可能性がある。
【0028】
図2Aは、基板の一種、すなわちシリコンウエハ200の平面図である。シリコンウエハ200は、上述のESCデチャックプロセスの一環として説明されたシリコンウエハ101と同一または同様であってもよい。この具体的事例では、シリコンウエハ200は、300mmウエハと考えられてもよい。シリコンウエハ200は、ノッチ203を含むことが示されている。特定の例示的な実施形態において、シリコンウエハ200およびノッチ203の両方が、国際的なウエハ規格である、研磨単結晶シリコンウエハに関するSEMI M1-1107仕様書(国際半導体製造装置材料協会(SEMI(商標):Semiconductor Equipment and Materials International)のウェブサイトwww.semi.orgから入手可能)に従って形成されている。
【0029】
また、シリコンウエハ200は、シリコンウエハ200の底面に接触する3つの基板ピンリフターの相対位置に関する例示的な実施形態を示している。この例示的な実施形態において、3つの基板ピンリフターは、互いに120度ずれて位置し、各々がシリコンウエハ200の中心部から距離「r」だけ離間している。しかしながら、当業者であれば、4つ以上の基板ピンリフターを
図2Aに示した位置以外の位置で用いてよいことを認識するであろう。
【0030】
図2Bは、本明細書に開示の種々の実施形態に従う、ピンリフター試験基板210の前面に配置されたセンサの例を示す。この実施形態において、ピンリフター試験基板210は、
図2Aのシリコンウエハと同一または同様の寸法を有する。例えば、SEMI(商標)規格の仕様によれば、300mmシリコンウエハは、300mm±0.2mmの直径、775±25μmの厚さ、およびウエハノッチについて特定の寸法を有する(SEMI M1-1107を参照)。
【0031】
300mmシリコンウエハについて、SEMI規格の最大厚さが800μmであるが、プロセスチャンバの多くは、少なくとも厚さ2mmの基板まで対応することができ、一部のプロセスチャンバでは、厚さ5mmの基板まで許容できる。したがって、本明細書に記載の種々の実施形態において、ピンリフター試験基板の厚さは、ピンリフター試験基板を設計するための特定のプロセスチャンバに応じて、少なくとも最大2mm、または最大5mmとすることができる。また、標準的な300mmウエハの質量は、(シリコンウエハの正確な直径および厚さに応じて)約90グラムである。ピンリフター試験基板が標準的なシリコンウエハ(この例では、90グラムの300mmウエハ)よりも実質的に重い場合、約90グラムを実質的に上回るピンリフター試験基板の質量によって、基板ピンリフターの挙動が妨げられたり変化したりする可能性がある。したがって、ピンリフター試験基板の質量は、標準的な基板(例えば、90グラムの300mmシリコンウエハ)の質量に近くなるように選択されてよい。しかしながら、質量差は、許容可能であり、当業者には公知であるように、基板ピンリフターは、追加された質量に合わせて較正できるので、ピンリフター試験基板の質量は特定の試験用ツール上で補正可能である。
【0032】
しかしながら、本明細書にて提供された開示を読んで理解したところに基づいて、業者であれば、
図2Bのピンリフター試験基板210は、製作施設において使用されている実際の基板と同一または同様の任意の形状に従って形成してよいことを認識するであろう。例えば、
図2Bのピンリフター試験基板210は、200mmウエハ、450mmウエハ、150mm四方で厚さ6.35mm(約6インチ四方で厚さ0.25インチ)のフォトマスク(薄膜の有無にかかわらない)、フラットパネルディスプレイ(種々のサイズ)または、公知の任意の他の種類の基板の形状であってもよい。
【0033】
図2Bのピンリフター試験基板210は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、各種セラミックス(例えば、酸化アルミニウム(Al
2O
3))、もしくは本明細書に記載の物理的特性に従って、実質的に形成可能な任意の他の種類の材料を含む種々の材料から形成されてもよい。特定の例示的な実施形態において、
図2Bのピンリフター試験基板は、後述の種々のセンサの少なくとも一部を含む300mmシリコンウエハとすることができる。センサの少なくとも一部を含むこのようなウエハは、計装ウエハと見なされてもよい。
【0034】
一実施形態において、ピンリフター試験基板210は、ピンリフター試験基板210の上面201に形成された複数の異なる種類のセンサを含む。例えば、ピンリフター試験基板210は、各種モーションセンサ205A、205B、205C、記憶装置207、無線通信装置209、電力管理装置211、および電源213を含むことが示されている。
【0035】
一実施形態において、モーションセンサ205A、205B、205Cは、基板ピンリフターの位置またはその付近に配置される。モーションセンサ205A、205B、205Cは、ピンリフター試験基板210の上面201および/または底面221のいずれに配置されることも可能である。この特定の実施形態において、半導体ウエハには通常、3つの基板ピンリフターが使用されていることから、3つのモーションセンサ205A、205B、205Cがある。しかしながら、例えば、4つ以上の基板ピンリフターを使用するフラットパネルディスプレイとともに使用する場合は、4つ以上の基板ピンリフターであってもよい。
【0036】
モーションセンサ205A、205B、205Cの少なくとも1つは、傾斜計および加速度計を含む複数種類のセンサの1つを含んでもよい。当業者には公知であるように、傾斜計を用いて、ピンリフター試験基板210が水平であるか、勾配または傾斜があるか、もしくは局所的な凹み(例えば、しなりや撓み)があるかを判定できる。加速度計を用いて、ピンリフター試験基板210の加速度(例えば、直線および/または角度)を判定してもよい。例えば、加速度計を用いて、ピンリフター試験基板210がどれだけの速さで基板ピンリフター上に載置されるか、または、ESCからの引力によってピンリフター試験基板210を予期されたときに離脱できないことに起因してピンリフター試験基板210がどれだけの速さで基板ピンリフターから離脱されるかを判定できる。例えば、基板ピンリフターが上昇ウエハ位置(「アップ」位置)または下降位置(「ダウン」位置)のいずれかに移動している間、リフトピンの最大加速度は、1G(9.8m/sec
2)にもなり得る。この大きな加速度によって、
図1A~1Cを参照して上述したDAオフセットが生じる可能性がある。
【0037】
また、加速度計を用いて、ピンリフター試験基板210上の振動の測定できる。特定の例示的な実施形態において、モーションセンサ205A、205B、205Cの少なくとも1つは、例えば、
図1A~1Cを参照して上述したデチャック工程を検査するための圧電駆動型ダイヤフラムを備えてもよく、静電チャックにより印加される力を確認するためのMEMSベースの力センサ(または、ひずみゲージなど、関連技術分野で公知の他の種類の力センサ)を含んでもよい。
【0038】
種々の実施形態において、記憶装置207は、不揮発性記憶装置(例えば、フラッシュメモリ、相変化メモリなど)を備えてもよい。他の実施形態において、記憶装置207は、揮発性記憶装置であり、電源213によって給電されてもよい。
【0039】
無線通信装置209は、例えば、無線周波数トランシーバ、Bluetooth(登録商標)トランシーバ、赤外線(IR)および他の種類の光学通信トランシーバなどを含む、本技術分野で公知の各種の無線通信装置を含んでもよい。当業者であれば、本明細書にて提供された本開示を読んで理解したところに基づいて認識できるように、トランシーバは、送信機能のみを有してもよい。この場合、無線通信装置209は、送信機のみと考えられてもよい。
【0040】
特定の実施形態において、ピンリフター試験基板210は、無線通信装置209と記憶装置207の両方ではなく、いずれかを有してもよい。他の実施形態において、ピンリフター試験基板210は、無線通信装置209と記憶装置207の両方を有してもよい。以下で詳述するように、ピンリフター試験基板210の特定の用途においては、ピンリフター試験基板210をプロセスチャンバ内に配置してプロセスチャンバのアクセスドアを閉じた後にピンリフター試験基板210をロボットから取り外す場合(完全密閉されたプロセスチャンバの電磁遮蔽効果によって)、無線通信装置209が機能しなくなる可能性がある。この場合、記憶装置207を用いて、後処理のためにピンリフター試験基板210から入手可能なすべてのデータを記録する。
【0041】
電力管理装置211は、例えば、各種の集積回路(IC)電源管理装置を備えてもよい。電力管理装置211は、DC/DC変換回路(例えば、ピンリフター試験基板210上に取り付けられた種々の装置に種々のバイアス電圧を供給するため)などの機能、電源213用のバッテリ充電機能、電圧制御機能(例えば、記憶装置207用のチャージポンプを含む)、および関連技術分野で公知の他の機能を含むことができる。
【0042】
電源213は、種々の構成要素(例えば、無線通信装置209、必要に応じてデータを保持するための記憶装置207(例えば、揮発性記憶装置)、記憶装置207を読み取り、記憶装置207から書き込むためのセンスアンプなど)に給電するための各種のバッテリまたは関連エネルギー貯蔵技術を含んでもよい。
【0043】
図2Cを参照すると、本明細書に開示の種々の実施形態に従う、ピンリフター試験基板220の底面221に形成されたセンサの例が示されている。ピンリフター試験基板220は、力センサ223A、223B、223C、ならびに第1の追加センサ225Aおよび第2の追加センサ225Bを含むように示されている。後述するように、一実施形態において、第1の追加センサ225Aおよび第2の追加センサ225Bは、同種のセンサを備えてもよい。他の実施形態において、第1の追加センサ225Aおよび第2の追加センサ225Bは、異種のセンサを備えてもよい。
【0044】
一実施形態において、力センサ223A、223B、223Cは、基板ピンリフターの位置またはその付近に配置される。力センサ223A、223B、223Cは、ピンリフター試験基板210、220の上面201および/または底面221のいずれに配置されることもできる。この特定の実施形態において、半導体ウエハには通常3つの基板ピンリフターが用いられることから、3つの力センサ223A、223B、223Cがある。しかしながら、例えば、フラットパネルディスプレイとともに使用されると、4つ以上の基板ピンリフターがあってもよい。したがって、4つ以上の力センサがあってもよい。
【0045】
力センサ223A、223B、223Cの少なくとも1つは、
図2Bを参照して上述したMEMSベースのひずみゲージ(または、関連技術分野で公知の他の種類のひずみゲージ)などのひずみゲージを備えてもよい。
【0046】
第1の追加センサ225Aおよび第2の追加センサ225Bは、例えば、温度センサ、圧力センサ、および流量センサを含む1つまたは複数のセンサを備えてもよい。温度センサを用いて、ピンリフター試験基板210の種々の位置における温度の均一性を確認できる。圧力センサは、例えば、圧力トランスデューサアレイを含む各種のデジタル圧力トランスデューサ、および本技術分野で公知のピエゾメータを備えてもよく、例えば、基板がESCに取り付けられた際に基板の裏面に印加されるヘリウムの圧力を監視できる。同様に、流量センサは、例えば、層流流量計または熱線式風速計を備えてもよく、ピンリフター試験基板210、220の裏面または前面におけるガス流量を監視するのに使用できる。
【0047】
2つの追加センサのみが示されているが、当業者であれば、任意の数の追加センサが含まれてもよいことを理解するであろう。例えば、各温度センサは、ピンリフター試験基板220の底面221に埋め込まれた複数の熱電対または測温抵抗体(RTD、薄膜RTDを含む)を備えてもよい。
【0048】
種々の実施形態において、図には明示していないが、当業者であれば、本明細書にて提供された本開示を読んで理解したところに基づいて容易に理解できるように、
図2Aおよび2Bのピンリフター試験基板210、220はまた、ピンリフター試験基板210、220上に取り付けられたセンサおよび他の装置の各々に複数の制御機能を提供するマイクロプロセッサを含んでもよい。例えば、マイクロプロセッサを用いて、メモリのエンコードおよびデコード、メモリのパリティチェック、データ管理および通信管理、体積流量比から質量流量比への変換、ならびに当業者に公知の他の機能を提供してもよい。
【0049】
図3を参照すると、本明細書に開示の種々の実施形態に従う、処理ツールのプロセスチャンバ内に配置された
図2Bおよび2Cのピンリフター試験基板からデータを受信するための方法300の一例が示されている。当業者であれば理解できるように、ここで説明する方法ステップの一部またはすべては、例えば、プロセスツールのコントローラによって実行されてもよい。
【0050】
工程301にて、ロボットのエンドエフェクタによってピンリフター試験基板は、プロセスチャンバ内に搬入される。ピンリフター試験基板は、例えば、製品基板の実際のボートまたはFOUPより前にプロセスチャンバ(またはプロセスモジュール)内に搬入されてもよいし、後に搬入されてもよい。ピンリフター試験基板を用いて、定期的に(例えば、1シフト当たり1回、週に1回、通常の予防的保守スケジュールの一環としてなど)上述したプロセスツールの状態を確認してもよい。
【0051】
この特定の実施形態において、エンドエフェクタがピンリフター試験基板をプロセスチャンバ内の基板保持装置(例えば、ESC)上に載置すると、ロボットアームは、プロセスチャンバ内に留まる。したがって、ロボットは退避しない。
【0052】
工程303にて、基板ピンリフターは、所定のパターンごとに所定のサイクル数、(上昇したピンアップ位置へ)上方への移動および(下降したピンダウン位置へ)下方への移動を行うように(プロセスツールのユーザインタフェースを介して)命令される。例えば、所定のパターンは、各ピンを1つずつ連続して動かした後に、2つまたは3つのピンをまとめて動かすパターンであってもよい。
【0053】
工程305にて、ピンリフター試験基板上のセンサのうち種々のもの、例えば、モーションセンサおよび力センサは、モーションデータ(例えば、上下加速度、傾斜角など)および力データを含むデータを記憶装置207に記録する、および/または、無線通信装置209(
図2B参照)を介してリモート受信機に送信する。リモート受信機は、例えば、ロボットアーム上に配置されてもよいし、プロセスチャンバ外部の別の位置に配置されてもよい。
【0054】
工程307にて、すべての基板ピンリフターがダウン位置または下降位置に位置した後、ロボットは、ピンリフター試験基板を退避させ、プロセスチャンバ外へと移動させる。なお、この実施形態においては、ロボットは、試験中プロセスチャンバ内に留まる。したがって、ロボットのエンドエフェクタは、常にピンリフター試験基板の下方にある。そのため、例えば、基板ピンリフターの1つまたは複数が破損している場合であっても、ピンリフター試験基板をプロセスチャンバから取り外せなくなる恐れがない。ピンリフター試験基板(例えば、記憶装置207内)からデータを取得し、データを処理して、基板ピンリフターおよび関連構成要素(例えば、ESC)に関する問題を特定することができる。
【0055】
例えば、方法300を用いて、少なくとも以下の問題を特定できる。
・ESCに載置されたまたはESCから取り外されたときのピンリフター試験基板の横移動および/または回転移動に基づき、ピンリフター試験基板がDAに関して何らかの問題を示している。
・1つまたは複数の基板ピンリフターが破損している。
・ピンリフターに連結されたエアホースが破損している可能性がある。
・ピンリフター試験基板から基板保持装置(例えば、ESC)に対する接触力がない。
・基板ピンリフターに供給される空気圧が高すぎる(この場合、加速度が所期の上限範囲についての仕様を超えて増加し、さらに振動も増加する可能性がある)。
・加速度が所期の下限範囲についての仕様外の場合、空気圧が低すぎる。
・傾斜角が仕様に合っていない場合、または異なる位置における角度の差が仕様を超えている場合、基板ピンリフターが水平調整できていない。
・異なる位置における加速度の差が大きすぎるという判定に基づき、基板ピンリフターのすべてが(例えば、所定の許容値または仕様量に従って)同じように加速していない。
・位置センサからのデータが、ピンリフター試験基板のモーションデータから取得(および/または送信)されたデータに基づき再構築された移動シーケンスに比べて、ピンのサイクル動作の所定パターン(例えば、工程303にて適用されるパターン)と一致していないという判定に基づき、1つまたは複数の基板ピンリフターに設けられた位置センサが正常に機能していない。
【0056】
図3の方法の他の実施形態として、例えば、試験中にロボットをプロセスチャンバ内に留まるようプログラミングするのではなく、ユーザの利便性を考慮して、通常のウエハ操作ロボットプログラムも使用可能である。したがって、この実施形態においては、
図2Aおよび2Bのピンリフター試験基板による試験中、ロボットは、処理チャンバから退避される。しかしながら、ロボットを退避させることにより、例えば、1つまたは複数のピンリフター試験基板が正常に機能していない場合、例えば、ピンリフター試験基板をプロセスチャンバから取り外せなくなる恐れがある。また、この実施形態において、オフラインでの(
図2Bの記憶装置207からの)データ取得および処理または(例えば、プロセスチャンバ内にまだ留まっているロボットに取り付けられた)無線受信機への無線データ送信いずれにも依存せずに、リアルタイムの無線データストリームも使用可能な場合がある。これは、ピンリフター試験基板がプロセスチャンバ内にある状態でプロセスチャンバへのアクセスドアが閉じられた状態において、プロセスチャンバのファラデーケージ効果(例えば、電磁遮蔽効果)を克服できる場合に可能となる。
【0057】
種々の実施形態において、
図3の方法300はまた、基板ピンリフターの「ヘルステスト」を行ってピンリフター試験基板を取り外せなくなる恐れがほとんどまたはまったくないことを確かめるため、ロボットのエンドエフェクタを最初はプロセスチャンバ内に留まるようにプログラミングすることを含むこともできる。基板ピンリフターの状態が良好であることを確認した後、この実施形態の方法300は、ロボットをプロセスチャンバから退避するようにプログラミングし、ピンリフター試験基板をプロセスチャンバ内に残し、プロセスチャンバに真空を加え、追加の試験を行う。追加の試験は、例えば、ヘリウム流量試験、ヘリウム圧力試験、もしくはプロセスチャンバ内が真空状態であること、またはプロセスチャンバ内にロボットが残ることができないであろう状態であることを必要とする他の試験を含んでもよい。
【0058】
本明細書に含まれる主題は概して、半導体製造環境(製造工場)における「ツール」の工程を説明するまたは関するものである。このようなツールは、各種の堆積(ALD(原子層堆積)、CVD(化学蒸着)、PECVD(プラズマCVD)などのプラズマベースツールを含む)およびエッチングツール(例えば、反応性イオンエッチング(RIE)ツール)ならびに各種の熱炉(例えば、急速熱アニール酸化など)、イオン注入ツール、および種々の製造工場に設置され本技術分野で公知の他の各種のプロセス計測ツールを含むことができる。しかしながら、本開示の主題は、半導体環境に限定されず、ロボット組立、製造、および加工環境など、複数の機械ツール環境にて使用できる。
【0059】
当業者であれば本開示を読んで理解したところに基づいて認識できるように、本開示の主題の種々の実施形態がESCに加えて、他の種類の基板保持装置に使用されてもよい。例えば、半導体およびその関連分野で用いられる各種の洗浄、計測およびプロセスツールは、例えば、真空制御基板保持装置を用いる。例えば、各種の基板保持装置は、分子付着、ファンデルワールス力、静電力、および他の近距離接触力などの力によって基板が基板保持装置に接着または付着する問題を有する可能性がある。したがって、上述の通り、本開示の主題の種々の実施形態は、本明細書に記載の各種のプロセスツールおよび他の基板操作ツールの監視に使用できるピンリフター試験基板を提供する。
【0060】
本明細書全体を通して、複数の例は、単一の例として記載された構成要素、工程、または構造を実施してもよい。1つまたは複数の方法の個々の工程が別々の工程として図示および説明されているが、これら個々の工程の1つまたは複数を同時に行ってもよく、これらの工程が図示の順序で行われる必要はない。例示的な構成において別々の構成要素として提示されている構造および機能を、組み合わされた構造または構成要素として実施してもよい。同様に、単一の構成要素として提示されている構造および機能を、別々の構成要素として実施してもよい。これらおよび他の変更、変形、追加、および改善は、本明細書の主題の範囲内である。
【0061】
本明細書にて用いられる、「または(もしくは)」という用語は、包括的意味または排他的意味として解釈されてもよい。また、当業者であれば本開示を読んで理解したところに基づいて、他の実施形態を理解するでろう。さらに、当業者であれば本開示を読んで理解したところに基づいて容易に理解されるように、本明細書にて提供された技術および例の種々の組み合わせのすべてが種々の組み合わせに適用されてもよい。
【0062】
種々の実施形態が別々に述べられているが、これら別々の実施形態は、独立した技術または設計として見なされることを意図していない。上で示したように、種々の部分の各々は、相互に関係していてもよく、各々が本明細書に開示の他の実施形態と別々に用いられてもよいし、組み合わせて用いられてもよい。例えば、方法、工程およびプロセスの種々の実施形態を説明してきたが、これらの方法、工程およびプロセスは、別々に用いられてもよいし、様々に組み合わせて用いられてもよい。
【0063】
したがって、当業者であれば本明細書にて提供された本開示を読んで理解すれば明らかであるように、多くの変形および変更が可能である。例えば、種々の実施形態において、ならびに、
図2Aおよび2Bを参照して、種々のモーションセンサ、力センサ、記憶装置、および通信装置の各々をピンリフター試験基板上に直接組み立ててもよい。他の実施形態において、種々のモーションセンサ、力センサ、記憶装置、および通信装置の各々をプリント回路基板上に直接組み立てまたは形成した後、プリント回路基板をピンリフター試験基板上に取り付けてもよい。さらに他の実施形態において、種々のモーションセンサ、力センサ、記憶装置、および通信装置の一部をピンリフター試験基板上に直接組み立てるとともに、他の構成要素をプリント回路基板上に直接組み立てた後、プリント回路基板をピンリフター試験基板上に取り付けてもよい。
【0064】
さらに、本明細書に列挙されるものに加えて、本開示の範囲内に属する機能的に均等な方法および装置は、上記の説明から当業者にとって自明であろう。いくつかの実施形態の部分および特徴を、他の実施形態の部分および特徴に含めてもよいし、置き換えてもよい。このような変形および変更は、添付の特許請求の範囲内に属することが意図される。したがって、本開示は、特許請求の範囲に与えられる均等物の全範囲とともに、添付の特許請求の範囲の文言によってのみ限定されるべきである。また、本明細書において使用される専門用語は、特定の実施形態を説明する目的に過ぎず、限定することを意図したものではないことを理解されたい。
【0065】
本開示の要約書は、読者が技術的な開示内容の性質を素早く認識できるように提供される。要約書は、特許請求の範囲を解釈また限定するために使用されるものではないという理解のもとに提出される。さらに、上記の発明を実施するための形態において、種々の特徴が、開示の効率化を目的として、単一の実施形態に集約されている場合がある。この開示の方法は、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されないものとする。したがって、下記の特許請求の範囲は、各請求項がそれ自体別個の実施形態として、発明を実施するための形態に組み込まれる。
【国際調査報告】