(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-21
(54)【発明の名称】大流量管状バイパス
(51)【国際特許分類】
G01F 1/684 20060101AFI20220414BHJP
【FI】
G01F1/684 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021537832
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(85)【翻訳文提出日】2021-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2020007623
(87)【国際公開番号】W WO2020179562
(87)【国際公開日】2020-09-10
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】スミルノフ,アレクセイ ヴィ.
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,ライアン
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035EA01
2F035EA02
2F035EA04
2F035EA06
(57)【要約】
マスフローメータ、及び、マスフローメータを備えるマスフローコントローラが開示される。マスフローメータは、ガスの主流路と、主流路内に設けられた長さがLのバイパスとを備える。バイパスは、それぞれの長さがLである複数の連続した毛細管を有する連続した流れ区域を備える。バイパスは、また、バイパス内に(n-1)箇所(nは2以上の整数)の空間を形成するn個の流れ分画を備えており、流れ分画のそれぞれは複数の毛細管を有する。マスフローメータは、センサ管を有する少なくとも1つの熱式センサを備えており、センサ管は、流れ分画の少なくとも1つに跨って配置され、その流れ分画の少なくとも1つの周囲のガスの一部を分流させて、ガスの分流部分に応じて測定流量信号を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの主流路と、
それぞれの長さがLである複数の連続した毛細管を有する連続した流れ区域、及び、(n-1)箇所(nは2以上の整数)の空間を形成し、それぞれが複数の毛細管を有するn個の流れ分画を備える、前記主流路内に設けられた長さがLのバイパスと、
前記n個の流れ分画の少なくとも1つに跨って配置され、前記n個の流れ分画の少なくとも1つの周囲のガスの一部を分流させて、ガスの分流部分に応じて測定流量信号を提供するセンサ管を有する少なくとも1つの熱式センサと
を備えるマスフローメータ。
【請求項2】
前記センサ管は入口及び出口を備えており、前記入口は、前記入口と前記(n-1)箇所の空間のうちの1つとの間のガスの一部のための入口流路を提供するように前記バイパスに沿って配置されており、前記出口は、前記出口と前記(n-1)箇所の空間の下流側の1つとの間のガスの一部のための出口流路を提供するように配置されている、請求項1に記載のマスフローメータ。
【請求項3】
前記センサ管は入口及び出口を備えており、前記入口は、前記入口と前記(n-1)箇所の空間の下流側の1つとの間のガスの一部のための入口流路を提供するように前記バイパスに沿って配置されており、前記出口は、前記出口と前記バイパスの下流側との間のガスの一部のための出口流路を提供するように配置されている、請求項1に記載のマスフローメータ。
【請求項4】
前記n個の流れ分画のそれぞれは等しい長さを有する、請求項1に記載のマスフローメータ。
【請求項5】
前記n個の流れ分画及び前記連続した流れ区域は並列に配置されている、請求項1に記載のマスフローメータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施の形態は、概してマスフロー制御のためのシステム及び方法に関する。特に、限定はされないが、本開示の実施の形態は、マスフローコントローラバイパス設計に関する。
【背景技術】
【0002】
マスフローコントローラ(MFC)は、所望の場所(例えば、処理室)へのガスの流れを制御するために通常使用される装置である。
図11に示すように、MFC1100は、典型的には、センサ、この場合にはMFC1100を通過するガスの質量流量を測定するために使用される熱式センサ1130を備えている。熱式センサ1130は、MFC1100の主流路1115に接続されたセンサ管1120を通る流量を測定することにより、この質量流量の測定を行う。この流量測定値は、本適用による所望の流量を達成すべく弁1160を調節するコントローラ1150へ測定流量信号1140により通信される。
【0003】
図示するように、MFC1100はガスが流れるバイパス1110を備えており、適切に作動する場合、バイパス1110は、主流路1115とセンサ管1120とに一定の割合でガスを分配する。結果として、センサ管1120を通るガスの流量が、MFC1100の主流路1115を通って流れるガスの流量を示すことになる。
【0004】
大流量MFCは、典型的には、多数の小さな毛細管を有する大流量管状バイパスとしてのバイパス1110を実装している。適切に作動する場合、これらの毛細管を通るガスの流れは線状であるので、バイパス1110による圧力低下は流れに線形比例する。この圧力低下はセンサ管1120に適用され、バイパス1110及び主流路1115を通る流れに依然として線形比例するセンサ管1120を通る非常に小さな流れを生成する。
【発明の概要】
【0005】
一態様は、ガスの主流路と、主流路内の長さがLであるバイパスとを備えるマスフローメータとして特徴付けられる。それぞれの長さがLである複数の連続した毛細管を有する連続した流れ区域を、バイパスは備えている。バイパスは、また、バイパス内部に(n-1)箇所(nは2以上の整数)の空間を形成するn個の流れ分画を備えており、n個の流れ分画それぞれは複数の毛細管を有している。マスフローメータは、また、センサ管を有する少なくとも1つの熱式センサを備えており、センサ管は、n個の流れ分画の少なくとも1つの周囲のガスの一部を分流させてこのガスの分流部分に応じて測定流量信号を提供するために、その少なくとも1つの流れ分画を跨いて配置されている。
【0006】
別の態様は、ガスの主流路と、主流路内の長さがLであるバイパスとを備えるマスフローメータとして特徴付けられる。バイパスは、バイパスによる圧力低下dPを生成する手段と、バイパスによる圧力低下を分割して複数の圧力低下を提供する手段と、この複数の圧力低下の1つまたは複数に接続する手段とを備える。マスフローメータは、また、接続する手段に結合されたセンサ管を有する少なくとも1つの熱式センサを備えており、センサ管を通るガスの一部を分流すべく複数の圧力低下の1つに係るセンサ管を配置し、その少なくとも1つの熱式センサは、このガスの分流部分に応じて測定流量信号を提供するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態が実装されているマスフローコントローラ及びマスフローメータを示すブロック図である。
【
図4B】
図4Aに示されているバイパスの部材の正面図である。
【
図4C】
図4Aに示されているバイパスの別の部材の正面図である。
【
図5B】
図5Aに示されているバイパスの部材の正面図である。
【
図5C】
図5Aに示されているバイパスの別の部材の正面図である。
【
図6B】
図6Aに示されているバイパスの部材の正面図である。
【
図6C】
図6Aに示されているバイパスの別の部材の正面図である。
【
図7B】
図7Aに示されているバイパスの部材の正面図である。
【
図7C】
図7Aに示されているバイパスの別の部材の正面図である。
【
図8B】
図8Aに示されているバイパスの構成要素の等角図である。
【
図10A】
図9A~9Kに示されているバイパスを組み込んだマスフローメータの一部の等角断面図である。
【
図11】従来のマスフローコントローラのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の態様は、大流量管状バイパスの種々の実施の形態を含んでいる。大流量管状バイパスは、
図11の従来のマスフローコントローラ1100が解決できないいくつかの取り組むべき設計要求に直面していることに、出願人は気が付いた。例えば、毛細管の直径は、例えば1000未満であるような十分に小さいレイノルズ数を有する層流を確実にするために十分小さくなければならない。また、毛細管の長さ/直径の比は、「レイノルズ入口効果」を避けるために、例えば20を超えるように十分高くすべきである。しかしながら、多くのマスフローメータ及びマスフローコントローラを収容するハウジングの寸法は、毛細管の形状及び合計数を制約する。
【0009】
例えば、設計の制約は、従来のバイパス1110に比較的長い長さを有することを要求し、この比較的長い長さは、センサ管1120における望ましい最大の圧力低下よりも高い圧力低下を引き起こす。
【0010】
結果として、従来のバイパス1110の設計に係る圧力低下が、特に流量が100~200標準リットル毎分(standard liters per minute:SLM)より大きい場合には、センサ管1120における最適な圧力低下よりしばしば高くなる。したがって、センサ管1120を通る流れが非常に大きくなり過ぎると、流れと熱式センサ1130からの測定流量信号1140との間の線形比例性の消失などの熱式センサ1130における望ましくない作動条件が生じてしまう。
【0011】
ここで述べるように、本開示のいくつかの実施の形態は、熱式センサ(熱式センサ1130など)が最適の圧力低下より高い状態にさらされることを回避する。
【0012】
本開示の態様に目を向けると、
図1はMFC100のブロック図であり、MFC100は内部を流れるガスの質量流量を測定するために使用される熱式センサ130を備えている。従来のマスフローコントローラ1100の熱式センサ1130と同様に、熱式センサ130は、MFC100の主流路115に接続されたセンサ管120を通る流量を測定することにより、MFC100を通るガスの質量流量を測定する。この流量測定値は、本適用による所望の流量を達成すべく弁160を調節するコントローラ150へ測定流量信号140により通信される。
【0013】
図1には単一のMFC100が示されているが、いくつかの実施の形態では、マスフローメータ117はコントローラ150及び弁160とは別に分離して実現される。例えば、ガスが制御されずにマスフローメータ117を出ていくようにコントローラ150及び弁160を省いた構成にて、マスフローメータ117が実現されても良い。
【0014】
図1を参照すると、MFC100の各要素が同じ縮尺で示されていないことは認識すべきである。例えば、センサ管120の直径は、センサ管120を流れるガスの方向を示すために、他の要素の寸法(例えば、軸心方向に沿ったバイパス110の長さLなど)に比べて誇張されている。特に、センサ管120内への入口ガス流れ121(径方向に沿ったバイパス110からの流出)が示され、バイパス110の下流側に向かってセンサ管120から流出する出口ガス流れ122(反対の径方向に沿った主流路115内への戻り)が示されている。
【0015】
図11に示されている従来のMFC1100とは対照的に、
図1に示されているMFC100のセンサ管120は、バイパス110の一部のみを跨いで配置されている。全体的に、バイパス110は、MFC100を通る流れと熱式センサ130からの測定流量信号140との間に線形比例性を呈するようなセンサ管120を通る流量を生成するセンサ管120による圧力差分dPを提供しながら、バイパス110の毛細管(
図1に示さず)でガス流れが層状になるように、構造的に構成されている。
【0016】
より詳細には、バイパス110の多くの変形例は、100SLMより大きい流量である場合に主流路115とセンサ管120とに一定の割合でガスを分配でき、また、バイパス110のいくつかの変形例は、200SLMより大きい流量である場合に主流路115とセンサ管120とに一定の割合でガスを分配できる。結果として、比較的大きい流量であっても、センサ管120を通るガスの流量は、MFC100の主流路115を流れるガスの流量を示すことになる。
【0017】
全体的に、バイパス110の内部構造に関連する主流路115中でのバイパス110の位置は、バイパス110の長さLにわたって圧力低下dPを引き起こす。さらにここで述べるように、バイパス110に係る圧力低下を分割して複数の圧力低下を提供するための種々の手段が、バイパス110に実装されている。ここでさらに述べられるバイパス110の構成は、熱式センサ130のセンサ管120が複数の圧力低下のうちの1つに跨って配置されてセンサ管120を流れるガスの所望の部分を分流するように、分割された複数の圧力低下のうちの1つに接続するための手段を提供する。このガスの所望の部分は、例えば、熱式センサ130の動作範囲内でのガス流量値の範囲である。
【0018】
さらにここで述べるように、バイパス110の長さLに沿って延在する複数の連続した毛細管を有する連続した流れ区域を、バイパス110は備えている。さらに、バイパス110の変形例は、n個(nは2以上の整数)の圧力低下を生成するようにn個の流れ分画をバイパス110内に作成することによって、分割されても良く、この構成はバイパス110内に(n-1)箇所の空間を形成する。1または複数の空間は、熱式センサ130のセンサ管120のための接続空間として使用される。
【0019】
例えば、
図2は、
図1に示されているバイパス100を実現するために使用される2個の流れ分画(即ち、n=2)を有するバイパス210の断面図を示す。図示するように、バイパス210は、第1流れ分画202と、第2流れ分画203と、接続空間213として機能する単一の空間とを備えている。また、(測定領域211には流れない)ガスの一部をバイパス210の上流側から下流側に向けて運ぶ、長さLを有する複数の連続した毛細管を備える連続した流れ区域214も示されている。図示するように、n個の流れ分画202,203の毛細管212と、連続した流れ区域214とは並列に配置されている。
【0020】
全体として、
図2は、バイパス210を備えるマスフローメータの一部を示しており、バイパス210は、流れに直線的に依存するバイパス210における圧力低下dPを伴う層流との要求を満たすための直径及び長さを有する毛細管212を備えている。バイパス210における圧力低下dPがあまりにも大きすぎて熱式センサ130が最適に作動しない場合には、バイパス210の一部(例えば、第2流れ分画203)がバイパス210の測定領域211内の圧力分割器として使用され得る。これにより、バイパス210に係る全体の圧力低下dPの正しく半分となるセンサ管220に係る圧力低下であるセンサdPを生成する。
【0021】
測定領域211内の接続空間213が、バイパス210の中央に位置するので(即ち、第1流れ分画202及び第2流れ分画203が実質的に同じ長さであるので)、測定領域211内で全体の圧力低下dPを半分に分割する。図示するように、少なくとも1つの接続空間213は、ガスの分流部分のためにセンサ管220への入口流路を提供し、ガスの分流部分は、バイパス210の下流に向けてセンサ管220を流出する。接続空間213に係るセンサ管220とバイパス210の下流側との結合はセンサ管220により小さな圧力低下を与えるので、より最適なレベルに向けてセンサ管220を通るガスの流量を低下する。作動時に、バイパス210は、主流路115とセンサ管120とに一定の割合でガスを分配する。結果として、センサ管220を通るガスの流量は、MFC100の主流路115を流れるガスの流量を示す。
【0022】
センサ管220は、MFC100の熱式センサ130の一部をなす小さな孔の管体であっても良い。そして図示するように、センサ素子225,227がセンサ管220の外側に(例えば、巻き付けられて)結合している。一つの例示される実施の形態では、センサ素子225,227は測温抵抗素子(例えば、導線のコイル)であるが、他のタイプのセンサ(例えば、抵抗温度検出器(RTD)、熱電対)を利用しても良い。さらに、別の実施の形態は、異なるセンサ部材、センサからの信号を処理するための異なる構成を、本発明の範囲から逸脱しない限りで利用しても良い。
【0023】
図示するように、センサ素子225,227は、熱式センサ130に含まれるセンサ素子回路235に電気的に接続されている。一般的に、センサ素子回路235は、(センサ素子225,227からの信号に応じて)測定流量信号140を提供するように構成されている。この測定流量信号140は、センサ管120を通る流量を示しているため、MFC100の主流路115を通る流量を示している。より詳細には、測定流量信号140は、センサ素子225,227間の温度差に影響を及ぼすセンサ管220に沿った温度プロフィールにより定義される。例示として限定はされないが、センサ素子回路235は、当業者には良く知られているホイートストンブリッジ回路トポロジーを実装しても良い。測定流量信号140をデジタルドメインに変更して(弁160を制御するために)フィードバックループ内で測定流量信号140のアナログ形態またはデジタル形態を使用する、及び/または、MFC100の表示部(図示せず)を介して測定流量信号140の表示を操作者に提供するという処理技術に、当業者は精通している。
【0024】
図3に示す別の実施の形態では、バイパス310の測定領域311が、3つの流れ分画(n=3)、バイパス310の測定領域311内で3つの圧力低下と接続空間313として使用される2箇所の空間とを形成する第1流れ分画302,第2流れ分画303及び第3流れ分画304に分割され得る。ここで、接続空間313の一方は接続空間313の他方の上流側に位置する。図示するように、上流側の接続空間313は、センサ管220に入るガスの分流部分のために径方向に沿った入口流路を提供し、下流側の接続空間313は、センサ管220を出ていくガスの分流部分のために反対の径方向に沿った(センサ管220からの)出口流路を提供する。
【0025】
複数の接続位置はバイパス310にわたって均等に分散されており、結果として、バイパス310の測定領域311の第1流れ分画302,第2流れ分画303及び第3流れ分画304それぞれの内部における分画された毛細管の長さは同じになる。また、バイパス310の上流側から下流側にガスの一部を運ぶ長さLの複数の連続した毛細管を備える連続した流れ区域314も示されている。図示するように、n個の流れ分画302,303,304の毛細管212と、連続した流れ区域314とは並列に配置されている。
【0026】
測定領域311内の各毛細管区画の実質的な理想の長さは、各区画において実質的に等しい圧力低下を生成する。個々の毛細管区画における圧力低下と毛細管区画を通る流れとの間に局所的な非直線性が存在する場合でも、この実質的に同一の長さによって、バイパス310における全体の圧力低下dPを流れ分画の数にて等しくn分割できて、各毛細管区画において実質的に同一の圧力低下を得る。
【0027】
多くの実装例において、バイパス110が、軸方向に配列された複数の部材にて実現されても良い。例えば、バイパス410の側面図が
図4Aに示されており、このバイパス410は、
図4Bに示されているような円状断面を有する第1部材410Bと
図4Cに示されているような円状断面を有する第2部材410Cとを交互に配置して構成されている。第2部材410Cの断面の切り取られた部分は、バイパス410の測定領域411内の接続空間413として構成される空間を定める。
【0028】
図5A-5Cに示されている別の実施の形態では、測定領域511内の接続空間513として構成される各空間でのバイパス510の断面が、全体の円状断面における切り欠き515によって形成され得る。バイパス510の側面図が
図5Aに示されており、このバイパス510は、
図5Bに示されているような円状断面を有する第1部材510Bと
図5Cに示されているような切り欠き515が形成された円状断面を有する第2部材510Cとを交互に配置して構成されている。
【0029】
図6A-6Cは、測定領域611の軸対称な断面を考慮した別の態様のバイパス610を示している。接続空間613として構成される各空間でのバイパス610のこの断面は、バイパス610の第1部材610Bより小さい円状の断面を有している。バイパス610の測定領域611は、より小さい断面を有する(
図6Cに示されている)第2部材610Cの外縁と(
図6Bに示されている)第1部材610Bの外縁とによって定められるので、測定領域611はバイパス610の外環に沿って軸方向に及ぶ。
図6Aに示されている測定領域611のこの軸対称は、測定領域611がバイパス610の全体の流れ分配に過度に影響を及ぼすことを緩和する。
【0030】
図7A-7Cに示されている別の実施の形態では、各空間におけるバイパス710の断面が、中心孔に連通する接続空間713として機能する細いスリット715を含んでいる。よって、測定領域711は、主としてバイパス710の中心に配置されている。バイパス710の側面図が
図7Aに示されており、このバイパス710は、
図7Bに示されているような円状断面を有する第1部材710Bと
図7Cに示されているような細いスリット715が形成された円状断面を有する第2部材710Cとを交互に配置して構成されている。このような典型的な構成は、センサ管220への結合時の接続点としての機能を維持しながら、測定領域711による全体の流れ分配に対する影響を低減することを考慮している。
【0031】
本開示の別の態様にあっては、一定の流れ分配を提供するためにバイパス内のすべての毛細管が単一の直径を有することが望ましいにもかかわらず、測定領域及びバイパスの連続した流れ区域内の毛細管の直径が、作動要求に応じて変化し得る。
【0032】
例えば、
図8A及び8Bは、測定領域811内の毛細管の直径がバイパス810の連続した流れ区域814内の毛細管の直径より小さくなっている本開示の一態様を示す。
図8Aはバイパス810の組立図を示し、
図8Bはバイパス810の構成部材である第1部材810B及び第2部材810Cを示す。いくつかの場合には、バイパス810の測定領域811における流れに対する圧力低下の線形性を改善するために、より小さな直径を有する毛細管が使用され得る。このことは熱式センサの精度を向上できる。結果として、バイパス810の測定領域811内の毛細管の直径の大きさが、特定の適応の要求に合うように仕立てられ得る。同様に、接続空間813の寸法も、所定のセンサ管に適正に調和するように仕立てられ得る。
【0033】
一般的に、ここで開示される設計変更の何れにあっても、測定領域内の毛細管の直径が連続した流れ区域内の毛細管の直径と異なっていても良いことは認識されるべきである。例えば、
図1-7Cに示されているバイパスの設計が、
図8A及び8Bに示されている設計と同様に、連続した流れ区域よりも小さい管径を測定領域内で用いても良い。
【0034】
次に
図9Aを参照すると、さらに別のバイパス910の等角図が示されている。図示するように、バイパス910は、バイパス910の上流面である前面に入口を有し、バイパス910の外面に平行にその前面から下流面である後面(
図9Aに図示せず)まで走行する毛細管を備えている。このバイパス910では、外面940が、凹部942と、
図9Cに示されている4箇所の空間946のうちの1つに接続する開口944とを備えている。
【0035】
図9Bは、
図9Aに示されているバイパス910の正面図を示す。図示するように、バイパス910は、測定領域911と連続した流れ区域914とを備える。この設計では、測定領域911から連続した流れ区域914を隔離する壁948を、バイパス910が備えている。
【0036】
図9Cは
図9Bの断面A-Aに沿った断面図である。
図9Cは、5つの流れ分画である第1流れ分画902、第2流れ分画903、第3流れ分画904、第4流れ分画905、及び第5流れ分画906間の空隙にて形成される4箇所の空間946(空間946のうちの1つが接続空間913)を備える5つの圧力低下を有した測定領域911を示す。図示するように、測定領域911内の流れ分画のそれぞれは、バイパス910内を軸方向に沿って走行する複数の毛細管を備えている。また、
図9Cには、途中で遮断されることなく並列に軸方向に沿って走行する複数の毛細管を備える連続した流れ区域914が示されている。
【0037】
図9Dは、
図9Cの断面B-Bに沿ったバイパス910の断面図であり、第1流れ分画902の断面図である。図示するように、第1流れ分画902は、第1流れ分画902と第2流れ分画903との間にガスが流れるようにする測定領域911内の複数の毛細管にて作製されている。
【0038】
図9Eは、
図9Dに示す断面の中央の部分Hの詳細図を示す。必要とはされないが、バイパス910の毛細管950を形成するために同軸的に積層された多数の円状のエッチングしたシートにより、バイパス910が構成されていても良い。
図9Eに示すように、シートは孔を形成するようにエッチングされ、軸方向に積層されることによって、シートは毛細管を形成する。孔がない部分は、バイパス910内で測定領域911と連続した流れ区域914との間に壁948を形成するために使用される。バイパス910のシートは、耐腐食性ステンンレス鋼(例えば、316L)などの耐腐食性材料、またはハステロイ(登録商標)などの超合金から作製される。
【0039】
図9Fは、
図9Dに示されている断面の部分Jの詳細図を示す。図示するように、孔がない部分は、バイパス910の外表面940を形成する。
【0040】
次に
図9Gを参照すると、
図9Cの断面C-Cに沿った断面図が示されており、その図は、第1流れ分画902と第2流れ分画903との間に形成された空間946の一部を含んでいる。図示するように、空間946は、バイパス910のシートをエッチングして形成された鍵形状のスロットである。
図9Hは、
図9Gに示されている部分Kの詳細図を示す。
図9Gに示すような断面を有する複数のシートが集まって第1流れ分画902と第2流れ分画903との間に空間946を形成する。但し、複数のシートを集めることなくバイパス910が構成されても良いことは認識されるべきである。
【0041】
図9Iは、
図9Cの断面D-Dに沿った断面図を示し、第2流れ分画903と第3流れ分画904との間の空間946の一部を示している。
図9Iにおける断面は、
図9Iでの断面が凹部942を備えている点を除いて、
図9Gにおける断面と同様である。
【0042】
図9Jは、
図9Cの断面E-Eに沿った断面図を示し、第3流れ分画904の一部を示している。
図9Jにおける断面は、
図9Jでの断面がバイパス910のこの断面の頂部に示されている凹部942を備えている点を除いて、
図9Dにおける断面と同様である。
【0043】
図9Kは、
図9Cの断面F-Fに沿った断面図を示し、第4流れ分画905と第5流れ分画906との間に形成された接続空間913の一部を示している。
図9Kには、バイパスを組み込んだマスフローメータ1000の等角断面図である
図10Aに示すセンサ管1020への入口として機能する開口944が示されている。
図10Bは、
図10Aにおけるマスフローメータ1000の断面図である。
【0044】
図10Bの矢印で示すように、主流路1015を介してガスがマスフローメータ1000に流入し、そのガスの一部は、(長さがLである)連続した流れ区域914の毛細管を通って流れ、そのガスの残りは、n個(n=5)の流れ分画902,903,904,905,906と(n-1)箇所の空間946とを備える測定領域911を通って流れる。図示するように、熱式フローセンサ1030のセンサ管1020は第5流れ分画906に跨って配置されており、ガスの分流部分1080はセンサ管1020を介して第5流れ分画906の周囲を流れる。
【0045】
この実装例では、主流路1015とセンサ管1020との間のガスの実質的に一定の割合が維持される。さらに、n個の流れ分画は、(バイパス910の長さLにわたる)全体の圧力低下dPを分割して複数の圧力低下を提供する手段を供与し、複数の圧力低下のそれぞれは熱式センサ1030の作動範囲内にある。そしてより詳細には、第5流れ分画906における圧力低下は熱式センサ1030の作動範囲内にある。その結果、センサ管1020を通るガスの流量は、マスフローメータ1000の主流路1015を流れるガスの流量を示す。
【0046】
この実装例では、第5流れ分画906における圧力低下に接続する手段が、接続空間913を凹部942に接続する開口944によって提供されている。そして、バイパス910の凹部942は、マスフローメータ1000の本体1082とバイパス910との間に流れ用の空隙を形成し、この空隙は、凹状に形成された空隙とセンサ管1020の入口との間に結合された導管1070にガスを供給する。よって、開口944、凹部942、及び導管1070は、センサ管1020の入口と接続空間913との間のガスの分流部分のために入口流路を提供する。図示するように、マスフローメータ1000の本体1082を介した出口導管1072は、センサ管1020の出口をバイパス910の下流側に結合させて、センサ管1020を介して分流されたガスのための出口流路を提供する。
【0047】
明瞭化のために、
図10A及び10Bは熱式センサ1030の構成要素を示していないが、ガスの分流部分1080の流量を示す測定流量信号140を生成するために、(例えば、
図2を参照して説明したように)センサ管1020に結合して使用される種々のセンサ素子及びセンサ素子回路に、当業者は非常に精通している。
【0048】
開示した実施の形態について前述した説明は、当業者が本発明品を製造又は使用できるように提供される。これらの実施の形態に対する種々の変更は当業者にとって明らかであり、ここで定義される一般原則が、本発明の精神及び範囲を逸脱しないで他の実施の形態に適用されても良い。よって、本発明は、ここに示された実施の形態に限定されることを意図してはおらず、ここで開示された原理及び新規な特徴に一致する最も広い範囲に符合する。
【国際調査報告】