(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-21
(54)【発明の名称】HMDSO熱安定性のための方法
(51)【国際特許分類】
H05B 33/10 20060101AFI20220414BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220414BHJP
H05B 33/04 20060101ALI20220414BHJP
H05B 33/06 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
H05B33/10
H05B33/14 A
H05B33/04
H05B33/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021540804
(86)(22)【出願日】2019-10-01
(85)【翻訳文提出日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 US2019054124
(87)【国際公開番号】W WO2020149898
(87)【国際公開日】2020-07-23
(32)【優先日】2019-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ウー, ウェン-ハオ
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ジャージャン ジェリー
【テーマコード(参考)】
3K107
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC23
3K107CC45
3K107DD38
3K107DD39
3K107EE48
3K107EE49
3K107EE50
3K107FF15
3K107FF16
3K107GG03
3K107GG28
(57)【要約】
本開示の実施形態は、概して、有機発光ダイオード(OLED)デバイスを形成するための方法に関する。OLEDデバイスを形成することは、OLED構造が上に配置された基板上に第1のバリア層を堆積させることを含む。次いで、バッファ層の第1の副層が、第1のバリア層上に堆積される。バッファ層の第1の副層は、混合ガスプラズマで硬化される。第1の副層を硬化させることは、硬化が行われるプロセスチャンバ内で混合ガスプラズマから水を生成することを含む。第1の副層の堆積及び第1の副層の硬化を1回以上繰り返して、完成したバッファ層を形成する。次いで、完成したバッファ層上に第2のバリア層を堆積させる。
【選択図】
図3F
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機発光ダイオード(OLED)デバイスを形成するための方法であって、
OLED構造が配置された基板の領域上に第1のバリア層を堆積させること、
前記第1のバリア層上にバッファ層の第1の副層を堆積させること、
混合ガスプラズマで前記第1の副層を硬化させることであって、前記硬化が行われるチャンバ内で前記混合ガスプラズマから水を生成することを含む、前記第1の副層を硬化させること、
前記第1の副層の前記堆積及び前記第1の副層の前記硬化を1回以上繰り返して、完成したバッファ層を形成すること、並びに
前記完成したバッファ層上に第2のバリア層を堆積させることを含む、方法。
【請求項2】
前記完成したバッファ層が、フッ素化プラズマ重合ヘキサメチルジシロキサン(pp-HMDSO:F)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合ガスプラズマが、NH
3及びN
2O、H
2及びN
2O、H
2及びO
2、又はNH
3及びO
2を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の副層の前記堆積及び前記第1の副層の前記硬化の前記繰り返しの回数が、1回と15回の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の副層の前記堆積、前記第1の副層の前記硬化、並びに前記第1の副層の前記堆積及び前記第1の副層の前記硬化の前記繰り返しが、単一のプロセスチャンバの減圧環境内で実行され、前記単一のプロセスチャンバは、プラズマ化学気相堆積(PECVD)チャンバである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のバリア層と前記第2のバリア層とは、それぞれ個別に、SiN、SiON、SiO
2、Al
2O
3、又はAlNを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
単一のプロセスチャンバの減圧環境内でOLEDデバイスを形成するための方法であって、
OLED構造が配置された基板の領域上に第1のバリア層を堆積させること、
前記第1のバリア層上にバッファ層の第1の副層であって約0.05~0.2μmの間の厚さを有する第1の副層を堆積させること、
混合ガスプラズマで前記第1の副層を硬化させることであって、前記硬化が行われる前記単一のプロセスチャンバ内で前記混合ガスプラズマから水を生成することを含む、前記第1の副層を硬化させること、
前記第1の副層の前記堆積及び前記第1の副層の前記硬化を1回以上繰り返して、約0.5~1.5μmの間の厚さを有する完成したバッファ層を形成すること、並びに
前記完成したバッファ層上に第2のバリア層を堆積させることを含む、方法。
【請求項8】
前記完成したバッファ層が、フッ素化プラズマ重合ヘキサメチルジシロキサン(pp-HMDSO:F)を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記混合ガスプラズマが、NH
3及びN
2O、H
2及びN
2O、H
2及びO
2、又はNH
3及びO
2を含むか、或いは前記単一のプロセスチャンバがPECVDチャンバである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の副層の前記堆積及び前記第1の副層の前記硬化の前記繰り返しの回数が、1回と15回の間である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
単一のプロセスチャンバの減圧環境内でOLEDデバイスを形成するための方法であって、
基板の上にコンタクト層を形成すること、
前記コンタクト層の上にOLED構造を形成すること、
前記OLED構造の上に第1のバリア層を堆積させること、
前記第1のバリア層上にバッファ層の第1の副層を堆積させること、
混合ガスプラズマで前記第1の副層を硬化させることであって、前記硬化が行われる前記単一のプロセスチャンバ内で前記混合ガスプラズマから水を生成することを含む、前記第1の副層を硬化させること、
前記第1の副層の前記堆積及び前記第1の副層の前記硬化を1回以上繰り返して、完成したバッファ層を形成すること、並びに
前記完成したバッファ層上に第2のバリア層を堆積させることを含む、方法。
【請求項12】
前記完成したバッファ層が、フッ素化プラズマ重合ヘキサメチルジシロキサン(pp-HMDSO:F)を含むか、又は、前記第1のバリア層と前記第2のバリア層とが、それぞれ個別に、SiN、SiON、SiO
2、Al
2O
3、又はAlNを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記混合ガスプラズマが、NH
3及びN
2O、H
2及びN
2O、H
2及びO
2、又はNH
3及びO
2を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の副層は、約0.05~0.2μmの間の厚さを有し、前記完成したバッファ層は、約0.5~1.5μmの間の厚さを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記単一のプロセスチャンバが、PECVDチャンバである、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本開示の実施形態は、広くは、有機発光ダイオード(OLED)デバイスを形成するための方法に関し、特に、OLED構造をカプセル化するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] OLEDは、情報を表示するためのテレビジョンスクリーン、コンピュータモニタ、携帯電話、他の把持(hand-held)デバイスなどの製造に使用される。OLEDディスプレイは、液晶ディスプレイ(LCD)などと比較して、応答時間の高速化、視野角の大型化、高コントラスト化、軽量化、低電力化、フレキシブル基板へのアメナビリティ(amenability)の向上により、最近、ディスプレイ用途で大きな関心を集めている。
【0003】
[0003] OLED構造は、エレクトロルミネセンス効率の低下及び駆動電圧の増加を特徴とする限られた寿命を有し得る。OLED構造の劣化の主な理由は、水分又は酸素の侵入による非発光暗点(non-emissive dark spot)の形成である。このため、OLED構造は、典型的には、無機層の間に挟まれた有機層によってカプセル化される。有機層は、第2の無機層が実質的に均一な表面又は堆積を有するように、第1の無機層内の任意の空隙又は欠陥を充填するために利用される。
【0004】
[0004] したがって、OLED構造をカプセル化するための改善された方法及び装置が必要とされる。
【発明の概要】
【0005】
[0005] 本開示の実施形態は、広くは、OLEDデバイスを形成するための方法に関する。OLEDデバイスを形成することは、OLED構造が上に配置された基板上に第1のバリア層を堆積させることを含む。次いで、バッファ層の第1の副層が、第1のバリア層上に堆積される。バッファ層の第1の副層は、混合ガスプラズマ(mixed gas plasma)で硬化される。第1の副層を硬化させることは、硬化が行われるプロセスチャンバ内で混合ガスプラズマから水を生成することを含む。第1の副層の堆積及び第1の副層の硬化を1回以上繰り返して、完成したバッファ層を形成する。次いで、第2のバリア層が、完成したバッファ層上に堆積される。
【0006】
[0006] 一実施形態では、OLEDデバイスを形成するための方法が、OLED構造が上に配置された基板の領域上に第1のバリア層を堆積させること、第1のバリア層上にバッファ層の第1の副層を堆積させること、及び第1の副層を混合ガスプラズマで硬化させることを含む。第1の副層を硬化させることは、硬化が行われるチャンバ内で混合ガスプラズマから水を生成することを含む。該方法は、第1の副層の堆積及び第1の副層の硬化を1回以上繰り返して、完成したバッファ層を形成すること、及び完成したバッファ層上に第2のバリア層を堆積させることを更に含む。
【0007】
[0007] 別の一実施形態では、単一のプロセスチャンバの減圧環境内でOLEDデバイスを形成するための方法が、OLED構造が上に配置された基板の領域上に第1のバリア層を堆積させること、及び第1のバリア層上にバッファ層の第1の副層を堆積させることを含む。第1の副層は、約0.05~0.2μmの間の厚さを有する。該方法は、第1の副層を混合ガスプラズマで硬化させることを更に含む。第1の副層を硬化させることは、硬化が行われる単一のプロセスチャンバ内で混合ガスプラズマから水を生成することを含む。該方法は、第1の副層の堆積及び第1の副層の硬化を1回以上繰り返して、完成したバッファ層を形成することを更に含む。完成したバッファ層は、約0.5~1.5μmの間の厚さを有する。該方法は、完成したバッファ層上に第2のバリア層を堆積させることを更に含む。
【0008】
[0008] 更に別の一実施形態では、単一のプロセスチャンバの減圧環境内でOLEDデバイスを形成する方法が、基板の上にコンタクト層を形成すること、コンタクト層の上にOLED構造を形成すること、OLED構造の上に第1のバリア層を堆積させること、第1のバリア層上にバッファ層の第1の副層を堆積させること、及び第1の副層を混合ガスプラズマで硬化させることを含む。第1の副層を硬化させることは、硬化が行われる単一のプロセスチャンバ内で混合ガスプラズマから水を生成することを含む。該方法は、第1の副層の堆積及び第1の副層の硬化を1回以上繰り返して完成したバッファ層を形成すること、及び完成したバッファ層上に第2のバリア層を堆積させることを更に含む。
【0009】
[0009] 上述した本開示の特徴を詳細に理解できるように、一部が添付の図面に例示されている実施形態を参照しながら、上記に短く要約した本開示をより具体的に説明する。しかし、添付図面は例示的な実施形態のみを示すものであり、したがって、本開示の範囲を限定すると見なすべきではなく、その他の等しく有効な実施形態も許容され得ることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】[0010] 一実施形態による本明細書で説明される方法を実行するために使用され得るPECVD装置の概略断面図である。
【
図2】[0011] 一実施形態によるOLEDデバイスを形成するための方法のフロー図である。
【
図3A】[0012]
図3A~
図3Hは、一実施形態による
図2の方法の様々な段階中のOLEDデバイスの概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0013] 理解を容易にするために、図面に共通する同一の要素を指し示すために、可能な場合には、同一の参照番号を使用した。一実施形態の要素及び特徴は、更なる記述がなくとも、他の実施形態に有益に組み込まれ得ると考えられる。
【0012】
[0014] 本開示の実施形態は、概して、OLEDデバイスを形成するための方法に関する。OLEDデバイスを形成することは、OLED構造が上に配置された基板上に第1のバリア層を堆積させることを含む。次いで、バッファ層の第1の副層が、第1のバリア層上に堆積される。バッファ層の第1の副層は、混合ガスプラズマで硬化される。第1の副層を硬化させることは、硬化が行われるプロセスチャンバ内で混合ガスプラズマから水を生成することを含む。第1の副層の堆積及び第1の副層の硬化を1回以上繰り返して、完成したバッファ層を形成する。次いで、完成したバッファ層上に第2のバリア層を堆積させる。
【0013】
[0015]
図1は、本明細書で説明される動作を実行するために使用され得るプラズマ化学気相堆積(PECVD)装置101の概略断面図である。PECVD装置101は、1以上の膜を基板120上に堆積させることができるチャンバ100を含む。チャンバ100は、概して、壁102、底部104、及びシャワーヘッド106を含み、これらは集合的にプロセス空間を画定する。プロセス空間は、減圧環境であってもよい。基板支持体118が、プロセス空間内に配置される。プロセス空間は、スリットバルブ開口部108を通してアクセスされる。それによって、基板120が、チャンバ100の内外に移送され得る。基板支持体118を昇降させるために、基板支持体118はアクチュエータ116に結合され得る。リフトピン122が、基板支持体118を貫通して移動可能に配置されて、基板120を基板受け入れ面へ、及び基板受け入れ面から移動させる。基板支持体118はまた、所望の温度に基板支持体118を維持するための加熱要素124及び/又は冷却要素124も含み得る。基板支持体118はまた、基板支持体118の周辺部にRFリターン経路を提供するために、RFリターンストラップ126も含んでよい。
【0014】
[0016] シャワーヘッド106が、固定機構150によってバッキング板112に結合される。シャワーヘッド106は、1以上の固定機構150によってバッキング板112に結合されてよく、それは、たるみを防止し且つ/又はシャワーヘッド106の真直度/湾曲を制御するのに役立つ。
【0015】
[0017] ガス源132が、バッキング板112に結合されて、シャワーヘッド106内のガス通路を通して、ガスをシャワーヘッド106と基板120との間の処理領域に供給する。真空ポンプ110が、プロセス空間を所望の圧力に維持するためにチャンバ100に結合される。RF源128が、整合ネットワーク(match network)190を介して、バッキング板112及び/又はシャワーヘッド106に結合され、RF電流がシャワーヘッド106に供給される。RF電流は、シャワーヘッド106と基板支持体118との間に電場を生成し、それによって、プラズマが、シャワーヘッド106と基板支持体118との間のガスから生成され得る。
【0016】
[0018] 誘導結合遠隔プラズマ源130などの遠隔プラズマ源130も、ガス源132とバッキング板112との間に結合され得る。基板の処理と処理との間に、洗浄ガスが遠隔プラズマ源130に供給されてよく、それによって、遠隔プラズマが生成される。遠隔プラズマからのラジカルが、チャンバ100の構成要素を洗浄するために、チャンバ100に供給されてよい。洗浄ガスは、RF源128によって更に励起されてよく、シャワーヘッド106に供給され得る。
【0017】
[0019] シャワーヘッド106は、更に、シャワーヘッドサスペンション134によってバッキング板112に結合され得る。一実施形態では、シャワーヘッドサスペンション134が、可撓性の金属スカート(metal skirt)である。シャワーヘッドサスペンション134は、シャワーヘッド106が上に載置され得るリップ部136を有し得る。バッキング板112は、チャンバ壁102と結合された棚114の上面上に載置されてよく、チャンバ100を密封して、減圧環境を生成する。
【0018】
[0020]
図2は、一実施形態によるOLEDデバイスを形成するための方法200のフロー図である。
図3A~
図3Hは、
図2の方法200の種々の段階中のOLEDデバイス350の概略断面図を示している。
図3B~
図3Fは、
図3Aの拡大断面図を示している。方法200は、
図1のPECVD装置101と共に利用することができる。方法200は、予め形成されたOLED構造304が上に配置された基板300を提供することによって、動作202で開始する。基板300は、
図1の基板120であってよい。基板300は、コンタクト層302が上に配置されてよく、OLED構造304は、
図3Aで示されているように、コンタクト層302上に配置される。
【0019】
[0021] 動作204では、
図3Aで示されているように、OLED構造304が、マスク310によって保護されていない開口部312を通して露出されるように、マスク310が基板300の上に位置合わせされる。マスク310は、OLED構造304に隣接するコンタクト層302の部分306がマスク310によってカバーされ、それによって、その後に堆積される材料が部分306上に堆積しないように配置される。コンタクト層302の部分306は、OLEDデバイス350のための電気接点であり、したがって、その上に何らの材料をも堆積させるべきではない。マスク310は、INVAR(登録商標)などの金属材料から作製することができる。
【0020】
[0022] 動作206では、
図3Aで示されているように、第1のバリア層308が基板300上に堆積される。第1のバリア層308は、第1の部分308a及び第2の部分308bを有する。第1のバリア層308の第1の部分308aは、OLED構造304及びコンタクト層302の一部分を含む、マスク310によって露出された基板300の領域上に開口部312を通して堆積される。第1のバリア層308の第2の部分308bは、コンタクト層302の部分306を含む基板300の第2の領域をカバーするマスク310上に堆積される。第1のバリア層308は、窒化ケイ素(SiN)、酸窒化ケイ素(SiON)、二酸化ケイ素(SiO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、窒化アルミニウム(AlN)、又は他の適切な誘電体層などの誘電体層である。第1のバリア層308は、化学気相堆積(CVD)、PECVD、物理的気相堆積(PVD)、スピンコーティング、又は他の適切な技法などの適切な堆積技法によって堆積されてもよい。
【0021】
[0023] 動作208では、第1のバリア層308が基板300上に堆積された後で、
図3Bで示されているように、部分バッファ層316の第1の副層320が第1のバリア層308上に堆積される。部分バッファ層316の第1の副層320は、約0.05~0.2μmの厚さ322を有してよい。部分バッファ層316の第1の副層320は、マスク310によって露出された基板300の領域上のマスク310の開口部312を通して基板300上に堆積されてよく、第1のバリア層308の第1の部分308aをカバーする。
図3Bで示されている拡大断面図では示されていないが、部分バッファ層316の第1の副層320は、第1のバリア層308の第2の部分308bの上に堆積される。
【0022】
[0024] 部分バッファ層316は、
図1のチャンバ100のようなPECVDチャンバ内で堆積されたフッ素化プラズマ重合ヘキサメチルジシロキサン(pp-HMDSO:F)であってもよい。pp-HMDSO:F層の堆積は、1以上のフッ素含有ガス及びHMDSOガスをO
2又ははN
2Oガスと共に流すことによって実現される。フッ素含有ガスは、フッ化窒素(NF
3)、フッ化ケイ素(SiF
4)、フッ素ガス(F
2)、四フッ化炭素(CF
4)、又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。フッ素がドープされたプラズマ重合HMDSO層は、粒子被覆性能と表面平坦化効果が優れている。結果として生じる第1の副層320は、10原子パーセント未満のフッ素含有量を有する。
【0023】
[0025] pp-HMDSO:Fの堆積中、フッ素含有ガスとHMDSOガスとの流量の比率は、約0.25と約1.5との間であってもよい。フッ素が多すぎると、HMDSO内の炭素が取り出されることがある。一実施形態では、pp-HMDSO:FのPECVDは、以下の条件下で行われる。SiF4が125標準立方センチメートル/分(sccm)の流量を有し、HMDSOは300sccmの流量を有する。換言すれば、SiF4とHMDSOとの比率は、約0.40と約0.45との間である。プラズマは700Wで生成され、チャンバ圧力は約1800mTorrである。pp-HMDSO:Fは、摂氏約80度で堆積され、基板300とシャワーヘッド106との間の距離は、約500~1200ミルの間である。
【0024】
[0026] pp-HMDSO:Fを含むバッファ層316は、応力緩和、粒子コンフォーマリティ(particle conformality)、及び可撓性を含む特性を有することができる。pp-HMDSO:Fバッファ層316のこれらの特性は、pp-HMDSO:Fを含むバッファ層316が、第1のバリア層308内の欠陥を分離し、ならびに表面の不規則性を平坦化して滑らかな表面を形成することを可能にする。しかし、pp-HMDSO:Fバッファ層の形成工程により、pp-HMDSO:Fバッファ層は物理的に柔らかくなることがあり、これは、バリア層と積層されたときに集積化の問題(integration issue)を課すことになる。バリア層が柔らかいpp-HMDSO:Fバッファ層の上に積み重なると、しわのある表面が形成され、柔らかいpp-HMDSO:F層はその光透過率を失い、デバイスをトップエミッションOLEDデバイスとして不適切なものにする。
【0025】
[0027] 部分バッファ層316を硬化させ、しわのある表面が形成されるのを防止するために、部分バッファ層316のプラズマ硬化が利用される。動作210では、
図3Cで示されているように、部分バッファ層316の第1の副層320を硬化させて、部分バッファ層316の第1の硬化された副層324を形成する。
【0026】
[0028] 部分バッファ層316の硬化は、減圧環境下で行われる。一実施形態では、硬化が、バッファ層の第1の副層320の堆積と同じプロセスチャンバ内で実行される(すなわち、現場(in-situ)硬化工程)。硬化は、混合ガスプラズマ、又は硬化が行われるチャンバ内に水(H2O)を生成するように構成された、ガス状混合物から生成されたプラズマを使用して行われる。混合ガスプラズマは、凝縮硬化のために水を生成するように構成され、それは、チャンバの中に水分を導入する。混合ガスプラズマは、アンモニア(NH3)、亜酸化窒素(N2O)、水素(H2)、及び酸素(O2)の群から選択される2以上のガスを含んでもよい。例えば、混合ガスプラズマは、NH3及びN2O、H2及びN2O、H2及びO2、又はNH3及びO2を含むことができる。一実施形態では、混合ガスプラズマは、フッ化窒素(NF3)、フッ化ケイ素(SiF4)、フッ素ガス(F2)、及び/又は四フッ化炭素(CF4)などのフッ素を更に含むことができる。
【0027】
[0029] 混合ガスプラズマ中の混合ガスの比率は、基板300と、
図1のシャワーヘッド106などの処理チャンバのシャワーヘッドとの間隔に依存する。例えば、基板300とシャワーヘッド106との間隔が約650ミルである場合、1:1の比率のNH
3とN
2Oが、約10~15秒の硬化持続時間だけ利用されてもよい。別の一実施例では、基板300とシャワーヘッド106との間隔が約1000ミルである場合、3:1の比率のNH
3とN
2Oを、約30秒の硬化持続時間だけ利用することができる。したがって、硬化時間は、混合ガスプラズマ中の混合ガスの比率、及び基板300とシャワーヘッド106との間隔に依存する。したがって、硬化時間は、混合ガスプラズマの混合ガス間のより高い比率を補償するため、及び基板300とシャワーヘッド106とのより大きな間隔を補償するために増加されてもよい。第1の硬化された副層324は、バッファ層のうちの1以上の副層及びバリア層がその後その上に堆積されるときに、その可撓性及び光透過率を維持する。
【0028】
[0030] 動作212では、動作208及び動作210が、第1の硬化された副層324上に部分バッファ層316のうちの1以上の更なる副層を堆積させるために1回以上繰り返され、更なる副層を堆積させる前に、堆積された各副層を個別に硬化させる。例えば、
図3Dで示されているように、部分バッファ層316の第2の副層326が、第1の硬化された副層324上に堆積され、第1の硬化された副層324をカバーする。部分バッファ層316の第2の副層326は、約0.05~0.2μmの厚さ330を有することができる。第1の副層320の第1の厚さ322と第2の副層326の第2の厚さ330とは、同じ厚さであってもよく、又は第1の厚さ322と第2の厚さ330とが異なっていてもよい。
図3Dで示されている拡大断面図では示されていないが、部分バッファ層316の第2の副層326は、マスク310上に配置された第1のバリア層308の第2の部分308bの上に堆積される。
【0029】
[0031] 次いで、
図3Eで示されているように、部分バッファ層316の第2の副層326を硬化させて、部分バッファ層316の第2の硬化された副層328を形成する。次いで、
図3Fで示されているように、部分バッファ層316の1以上の更なる副層336が、一度に1つの副層で個別に堆積され、硬化されて、完成したバッファ層332を形成することができる。更なる副層336が堆積される毎に、更なる副層336は、別の更なる副層336が未だ堆積される前に硬化される。特段の記載がなければ、更なる副層336は、硬化された副層上にのみ堆積される。各更なる副層336は、1以上の更なる副層がその後その上に堆積されるときに、その可撓性及び光透過性を維持する。
【0030】
[0032] 完成したバッファ層332は、約0.5~1.5μmの厚さ334を有し得る。一実施形態では、1~15の更なる副層336を第1の硬化された副層324上に堆積させて、完成したバッファ層332を形成することができる。別の一実施形態では、完成したバッファ層332が、10の副層を含み、各副層は約0.1μmの厚さを有する。完成したバッファ層332は、バリア層がその後その上に堆積されるときに、その可撓性及び光透過率を維持する。
【0031】
[0033]
図3Gは、OLEDデバイス350上に堆積された完成したバッファ層332の縮小図を示している。
図3Gで示されているように、完成したバッファ層332は、第1の部分332a及び第2の部分332bを含む。完成したバッファ層332の第1の部分332aは、第1のバリア層308の第1の部分308aの上に堆積され、完成したバッファ層332の第2の部分332bは、第1のバリア層308の第2の部分308bの上に堆積される。
【0032】
[0034] 動作214では、
図3Hで示されているように、第2のバリア層314が基板300上に堆積され、OLED構造304上に形成された完成したバッファ層332及び第1のバリア層308をカバーする。第2のバリア層314は、完成したバッファ層332の第1の部分332aの上に堆積された第1の部分314aと、完成したバッファ層332の第2の部分332bの上に堆積された第2の部分314bとを含む。
【0033】
[0035] 第2のバリア層314は、第1のバリア層308と同様の誘電体層であってもよい。第2のバリア層314は、SiN、SiON、SiO2、又は他の適切な誘電体層などの誘電体層である。第2のバリア層314は、CVD、PVD、スピンコーティング、又は他の適切な技法などの適切な堆積技法によって堆積させることができる。
【0034】
[0036] バリア層の堆積、バッファ層の副層の堆積、及び本明細書で説明されるバッファ層の副層の硬化は、PECVDチャンバ100のような単一の堆積チャンバの減圧環境内で実行されてもよい。単一の堆積チャンバの減圧環境内で堆積及び硬化動作を実行することにより、減圧を壊す必要なしにOLEDデバイスを形成することが可能になり、これにより、様々な層の層間剥離が排除又は低減され、更に、汚染物質がプロセスチャンバ内に導入される危険性が排除又は低減される。
【0035】
[0037] プロセスチャンバのパージは、汚染のリスクを更に最小限に抑えるために、サイクルとサイクルとの間に実行されてもよい。一実施形態では、第1のバリア層が堆積される。その後、チャンバはパージされ、第1のバリア層の堆積に使用されるガスは、後続の工程のためにチャンバ内に存在しない。次に、バッファ層の複数の副層の各々が堆積され、個別に硬化される。次いで、チャンバは再びパージされ、バッファ層の複数の副層の堆積及び硬化に使用されるガスは、後続の工程のためにチャンバ内に存在しない。一実施態様では、バッファ層の副層が堆積されるたびに、副層を硬化させる前にチャンバをパージすることができる。このような実施態様では、次いで副層を硬化させ、バッファ層の更なる副層を堆積させる前に、チャンバをもう一度パージすることができる。したがって、副層が堆積されるたびに、チャンバをパージすることができ、副層が硬化されるたびに、チャンバを再びパージすることができる。最後に、第2のバリア層が堆積される。単一チャンバ工程は、複数チャンバ工程を使用する場合のチャンバの数(及び設備コスト)を低減させるだけでなく、サイクル時間を低減させる点で有利であり得る。
【0036】
[0038] 要約すると、2つのバリア層の間に挟まれた複数の副層を含むバッファ層を有するOLEDデバイスが形成される。バッファ層の副層の各々は、更なる副層を堆積する前に、個別に堆積され、硬化され、OLEDデバイスの様々な層の層間剥離を低減させ又は排除する。更に、バッファ層の副層は、単一のプロセスチャンバの減圧環境内で堆積され、硬化される。単一の堆積チャンバの減圧環境内で堆積及び硬化動作を実行することにより、減圧を壊す必要なしにOLEDデバイスを形成することが可能になり、これにより、様々な層の層間剥離が更に排除又は低減される。更に、汚染物質がプロセスチャンバに導入される危険性が排除されるか又は低減され、これにより、完成したバッファ層がその可撓性及び光透過率を維持することが可能になる。更に、単一の堆積チャンバの減圧環境内で堆積及び硬化動作を行うことにより、OLEDデバイスの形成方法が単純化され、処理量が増加する可能性があり、関連コストを低減する可能性がある。
【0037】
[0039] 以上の説明は本開示の実施形態を対象としているが、本開示の基本的な範囲から逸脱せずに本開示の他の実施形態及び更なる実施形態が考案されてよく、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲によって規定される。
【手続補正書】
【提出日】2021-09-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機発光ダイオード(OLED)デバイスを形成するための方法であって、
OLED構造が配置された基板の領域上に第1のバリア層を堆積させること、
前記第1のバリア層上にバッファ層の第1の副層を堆積させること、
混合ガスプラズマで前記第1の副層を硬化させることであって、
前記混合ガスプラズマは、(a)NH
3
及びN
2
O、(b)H
2
及びN
2
O、(c)H
2
及びO
2
、又は(d)NH
3
及びO
2
から構成される群から選択される少なくとも1つのペアであり、前記硬化が行われるチャンバ内で前記混合ガスプラズマから水を生成することを含む、前記第1の副層を硬化させること、
前記第1の副層の前記堆積及び前記第1の副層の前記硬化を1回以上繰り返して、完成したバッファ層を形成すること、並びに
前記完成したバッファ層上に第2のバリア層を堆積させることを含む、方法。
【請求項2】
前記完成したバッファ層が、フッ素化プラズマ重合ヘキサメチルジシロキサン(pp-HMDSO:F)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の副層の前記堆積及び前記第1の副層の前記硬化の前記繰り返しの回数が、1回と15回の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の副層の前記堆積、前記第1の副層の前記硬化、並びに前記第1の副層の前記堆積及び前記第1の副層の前記硬化の前記繰り返しが、単一のプロセスチャンバの減圧環境内で実行され、前記単一のプロセスチャンバは、プラズマ化学気相堆積(PECVD)チャンバである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のバリア層と前記第2のバリア層とは、それぞれ個別に、SiN、SiON、SiO
2、Al
2O
3、又はAlNを含む、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
単一のプロセスチャンバの減圧環境内でOLEDデバイスを形成するための方法であって、
OLED構造が配置された基板の領域上に第1のバリア層を堆積させること、
前記第1のバリア層上にバッファ層の第1の副層であって約0.05~0.2μmの間の厚さを有する第1の副層を堆積させること、
混合ガスプラズマで前記第1の副層を硬化させることであって、前記硬化が行われる前記単一のプロセスチャンバ内で前記混合ガスプラズマから水を生成することを含む、前記第1の副層を硬化させること、
前記第1の副層の前記堆積及び前記第1の副層の前記硬化を1回以上繰り返して、約0.5~1.5μmの間の厚さを有する完成したバッファ層を形成すること、並びに
前記完成したバッファ層上に第2のバリア層を堆積させることを含む、方法。
【請求項7】
前記完成したバッファ層が、フッ素化プラズマ重合ヘキサメチルジシロキサン(pp-HMDSO:F)を含む、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記混合ガスプラズマが、NH
3及びN
2O、H
2及びN
2O、H
2及びO
2、又はNH
3及びO
2を含むか、或いは前記単一のプロセスチャンバがPECVDチャンバである、請求項
6に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の副層の前記堆積及び前記第1の副層の前記硬化の前記繰り返しの回数が、1回と15回の間である、請求項
6に記載の方法。
【請求項10】
単一のプロセスチャンバの減圧環境内でOLEDデバイスを形成するための方法であって、
基板の上にコンタクト層を形成すること、
前記コンタクト層の上にOLED構造を形成すること、
前記OLED構造の上に第1のバリア層を堆積させること、
前記第1のバリア層上にバッファ層の第1の副層を堆積させること、
混合ガスプラズマで前記第1の副層を硬化させることであって、前記硬化が行われる前記単一のプロセスチャンバ内で前記混合ガスプラズマから水を生成することを含む、前記第1の副層を硬化させること、
前記第1の副層の前記堆積及び前記第1の副層の前記硬化を1回以上繰り返して、
約0,5μmから約1.5μmの間の厚さを有する完成したバッファ層を形成すること、並びに
前記完成したバッファ層上に第2のバリア層を堆積させることを含む、方法。
【請求項11】
前記完成したバッファ層が、フッ素化プラズマ重合ヘキサメチルジシロキサン(pp-HMDSO:F)を含むか、又は、前記第1のバリア層と前記第2のバリア層とが、それぞれ個別に、SiN、SiON、SiO
2、Al
2O
3、又はAlNを含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記混合ガスプラズマが、NH
3及びN
2O、H
2及びN
2O、H
2及びO
2、又はNH
3及びO
2を含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の副層は、約0.05~0.2μmの間の厚さを
有する、請求項
10に記載の方法。
【請求項14】
前記単一のプロセスチャンバが、PECVDチャンバである、請求項
10に記載の方法。
【請求項15】
前記完成したバッファ層は、約0.5μmから約1.5μmの間の厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【国際調査報告】