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  • 特表-窒化ケイ素の選択的堆積 図1
  • 特表-窒化ケイ素の選択的堆積 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-21
(54)【発明の名称】窒化ケイ素の選択的堆積
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/04 20060101AFI20220414BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20220414BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20220414BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
C23C16/04
C23C16/42
C23C16/455
H01L21/318 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021546688
(86)(22)【出願日】2020-02-12
(85)【翻訳文提出日】2021-10-04
(86)【国際出願番号】 US2020017960
(87)【国際公開番号】W WO2020167972
(87)【国際公開日】2020-08-20
(31)【優先権主張番号】62/805,644
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/808,020
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ハン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリックス, ブライアン シー.
(72)【発明者】
【氏名】コンド, エリック
(72)【発明者】
【氏名】バウム, トーマス エイチ.
【テーマコード(参考)】
4K030
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA02
4K030AA13
4K030AA18
4K030BA40
4K030BB14
4K030CA04
4K030CA12
4K030DA02
4K030EA03
4K030FA10
4K030HA01
4K030JA09
4K030JA10
4K030LA02
4K030LA15
5F058BC08
5F058BF07
5F058BF24
5F058BF30
5F058BF37
5F058BJ04
(57)【要約】
本発明の特定の実施形態は、低温原子層堆積法を利用して、ケイ素及び窒素を含有する材料(例えば、窒化ケイ素)を形成する。原子層堆積法は、四ヨウ化ケイ素(SiI)又は六ヨウ化二ケイ素(Si)を1つの前駆体として使用し、アンモニアなどの窒素含有材料を別の前駆体として使用する。二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素を堆積する選択的堆積が望ましい状況では、基板表面を最初にアンモニアプラズマで処理する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる組成の複数の表面を有するマイクロ電子デバイス基板上に窒化ケイ素を選択的に堆積するための方法であって、原子層堆積条件下において、約150℃~約400℃の温度及び約15Torr未満の圧力で、順次パルス化した四ヨウ化ケイ素又は六ヨウ化二ケイ素、及び窒素含有共反応物と前記基板とを接触させることを含む、方法。
【請求項2】
温度が約175℃~約350℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
温度が約200℃~約250℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基板をアンモニアプラズマで前処理するステップをさらに含み、その上に堆積される表面が、二酸化ケイ素、二酸化ゲルマニウム、SiCO、及びlow-k基板から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
温度が約200℃~約250℃であり、その上に堆積される基板が二酸化ケイ素以外である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記デバイス基板が、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化タンタル、及び窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、並びにそれらの組み合わせから選択され、窒化ケイ素の堆積を抑制した二酸化ケイ素基板、二酸化ゲルマニウム基板、SiCO基板、及びlow-k基板から選択される同じ基板上の他の表面と比較して、窒化ケイ素の堆積が強化された、いくつかの表面を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記デバイス基板が、窒化ケイ素基板、二酸化ケイ素基板、二酸化ゲルマニウム基板、SiCO基板、及びlow-k基板から選択され、窒化チタン、窒化タンタル、窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、及び酸化アルミニウム、並びにそれらの組み合わせから選択される同じ基板上の他の表面と比較して、窒化ケイ素の堆積が強化された、いくつかの表面を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記デバイス基板が、少なくとも1つの二酸化ケイ素表面及び少なくとも1つの酸化アルミニウム表面を含み、それによって前記窒化ケイ素が、前記少なくとも1つの酸化アルミニウム表面上に選択的に堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記デバイス基板が、少なくとも1つの二酸化ケイ素表面及び少なくとも1つの二酸化ジルコニウム表面を含み、それによって前記窒化ケイ素が、前記少なくとも1つの二酸化ジルコニウム表面に選択的に堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記デバイス基板が、少なくとも1つの二酸化ケイ素表面及び少なくとも1つの酸化アルミニウム表面を含み、それによって前記窒化ケイ素が、前記少なくとも1つの二酸化ケイ素表面上に選択的に堆積される、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記デバイス基板が、少なくとも1つの二酸化ケイ素表面及び少なくとも1つの二酸化ジルコニウム表面を含み、それによって前記窒化ケイ素が、前記少なくとも1つの二酸化ケイ素表面上に選択的に堆積される、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記デバイス基板が、少なくとも1つの二酸化ケイ素表面及び少なくとも1つの二酸化ハフニウム表面を含み、それによって前記窒化ケイ素が、前記少なくとも1つの二酸化ケイ素表面上に選択的に堆積される、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
窒素含有前駆体化合物が、アンモニア、ジメチルヒドラジン、t-ブチルヒドラジン、メチルヒドラジン、又はそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
Si源がProE-Vap中で気化のために加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
Si源が融点を超えて加熱され、キャリアガスで気化される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ電子デバイス上への窒化ケイ素の選択的堆積のための方法論に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ケイ素は、集積回路の製造に一般的に使用される。例えば、窒化ケイ素は、メモリセル、ロジックデバイス、メモリアレイなどの様々なマイクロ電子デバイスの製造において、絶縁材料として使用されることが多い。従来、窒化ケイ素膜は基板表面全体にわたって堆積されるものの、堆積は特定の領域においてのみ必要とされる場合がある。結果として、任意の不要な領域を除去するために、追加のリソグラフィ及びエッチングステップが利用される。製造の全体的なコストを低減するための手段として、関与するリソグラフィ及びエッチングステップの回数を低減することが非常に望ましい。さらに、窒化ケイ素が必要な場所にのみ選択的に堆積される場合、リソグラフィの誤差はコーティング領域の画定に影響を及ぼさない。
【発明の概要】
【0003】
窒化ケイ素の選択的堆積の使用は、窒化ケイ素を選択された所望の領域にのみ堆積させることを可能にすることによって、従来のパターニングステップを排除することができる。交互にALD又はパルスCVD様式で熱窒素源と交互にヨウ化ケイ素前駆体を使用すると、露出した二酸化ケイ素表面への堆積が非常に制限された状態で、既存の窒化物表面(例えば、窒化ケイ素又は窒化アルミニウム)及び金属酸化物表面(例えば、酸化アルミニウム又は酸化ジルコニウム)に優先的に窒化ケイ素を堆積させることができる。さらに、本発明者らは、アンモニアプラズマを用いて異なる酸化物表面を前処理することによって、四ヨウ化ケイ素及びアンモニアなどの窒素化合物を介して数ナノメートルの窒化ケイ素を二酸化ケイ素表面に選択的に堆積させることができ、同時にいくつかの「隣接する」金属酸化物表面(例えば、Al及びZrO)では堆積が達成されないか、又は限定的にしか達成されないことを見出した。したがって、この前処理ステップは、「選択的」窒化物成長の基礎である。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1図1は、図示のような様々な酸化物基板上への200℃での窒化ケイ素(SiI/NH)堆積の図である。オングストローム単位の厚さがサイクル数に対してプロットされている。
図2図2は、図示のような様々な酸化物表面上への200℃での窒化ケイ素(SiI/NH)堆積の図であり、各酸化物表面はアンモニウムプラズマを用いて前処理されている。オングストローム単位の厚さがサイクル数に対してプロットされている。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明は、様々なマイクロ電子デバイス基板上への窒化ケイ素層の選択的原子層堆積(ALD)のためのプロセスを提供する。本発明の目的のために、本発明者らは、ALDを、様々な反応物及び共反応物が空間又は時間において分離され、その結果、基板が共反応物とは別個に1つの反応物に交互に曝露される化学蒸着様式として定義する。第1の実施形態では、本発明は、異なる組成の複数の表面を有するマイクロ電子デバイス基板上に窒化ケイ素を選択的に堆積させるためのプロセスを提供し、前記プロセスは、原子層堆積条件下で、約150℃~約400℃の温度及び約15Torr未満の圧力で、前記基板を順次パルス化した四ヨウ化ケイ素又は六ヨウ化二ケイ素、並びに窒素含有共反応物と接触させることを含む。他の実施形態において、温度は、約175℃~約350℃、又は約200℃~約250℃である。選択的堆積は、窒化ケイ素膜が露出面の一部にある製造可能な速度で堆積し、他の表面が無視できるか又は容易に除去される量の窒化ケイ素を受ける場合に達成される。
【0006】
特定の実施形態では、マイクロ電子デバイス表面の1つは、窒化チタン、窒化アルミニウム、又は窒化ケイ素などの窒化物表面を含む。他の実施形態では、マイクロ電子デバイス表面の1つは、二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、二酸化ゲルマニウム、SiCO、又はlow-k表面などの誘電体表面を含む。いくつかの実施形態では、誘電体は二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、誘電体は多孔質材料である。いくつかの実施形態では、多孔質誘電体は、互いに接続された細孔を含有するが、他の実施形態では、細孔は互いに接続されていない。いくつかの実施形態では、誘電体は、約4.0未満の誘電値を有する絶縁体として定義されるlow-k材料を含む。いくつかの実施形態では、low-k材料の誘電値は、約3.5未満、約3.0未満、約2.5未満、又は約2.3未満である。いくつかの実施形態では、第2の表面はSi--O結合を含む。いくつかの実施形態では、第2の表面は、例えばプラズマ処理によって不活性化される。いくつかの実施形態では、第2の表面は非導電性表面である。特定の実施形態では、基板は第1の表面を含み、その一部は誘電体であり、その一部は金属相である。いくつかの実施形態では、表面の1つは二酸化ケイ素よりも誘電率が高い誘電体であり、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ランタニド、又はこれらの酸化物のいずれか若しくはすべての混合物である。
【0007】
特定の実施形態では、デバイス基板は、少なくとも1つの二酸化ケイ素表面及び少なくとも1つの酸化アルミニウム表面から構成され、それによって前記窒化ケイ素は、前記酸化アルミニウム表面上に選択的に堆積される。
【0008】
特定の実施形態では、デバイス基板は、少なくとも1つの二酸化ケイ素表面及び少なくとも1つの二酸化ジルコニウム表面から構成され、それによって前記窒化ケイ素は、前記少なくとも1つの二酸化ジルコニウム表面に選択的に堆積される。
【0009】
特定の実施形態では、デバイス基板は、少なくとも1つの二酸化ケイ素表面及び少なくとも1つの酸化アルミニウム表面から構成され、デバイス表面はアンモニアプラズマで前処理され、それによって前記窒化ケイ素は、前記少なくとも1つの二酸化ケイ素表面に選択的に堆積される。
【0010】
特定の実施形態では、デバイス基板は、少なくとも1つの二酸化ケイ素表面及び少なくとも1つの酸化ハフニウム表面から構成され、デバイス表面はアンモニアプラズマで前処理され、それによって前記窒化ケイ素は、前記少なくとも1つの二酸化ケイ素表面に選択的に堆積される。
【0011】
特定の実施形態では、デバイス基板は、少なくとも1つの二酸化ケイ素表面及び少なくとも1つの二酸化ジルコニウム表面から構成され、デバイス表面はアンモニアプラズマで前処理され、それによって前記窒化ケイ素は、前記少なくとも1つの二酸化ケイ素表面に選択的に堆積される。
【0012】
そのような実施形態では、「選択的に堆積させる」又は「選択性」という用語は、別の表面上に対するある表面上の窒化ケイ素の優先的な堆積を反映することを意図している。数値定義は、Gladfelter [Chem.Mater.5、1372(1993)]によって、2つの表面間の被覆率の差を、その2つの表面の被覆率の合計に正規化した値として与えられている。実際には、プロセスの選択性は、一般に、膜の厚さに依存する。本発明は、18Åにおいて90%を超える選択性を可能にする。他の実施形態では、窒化ケイ素が1つの表面上に別の表面よりも優先的に堆積することが、100Å超で95%を超える発生率で生じる。
【0013】
このALD方法論は、1つの「ケイ素」前駆体として四ヨウ化ケイ素(SiI)又は六ヨウ化二ケイ素(Si)を使用し、共反応物又は別の前駆体として窒素含有材料を使用する。窒素含有材料は、有機(例えば、t-ブチルヒドラジン)又は無機(例えば、NH)とすることができる。いくつかの実施形態では、窒素含有材料の混合物をALDの前駆体として利用してもよく、他の実施形態では、1つの窒素含有材料のみ(例えば、NHのみ、又はt-ブチルヒドラジンのみ)をALDの前駆体として利用してもよい。本明細書で使用される場合、「窒素含有材料」という用語は、純粋な(例えば、すべてNH又はすべてt-ブチルヒドラジンである)前駆体材料を指すために利用してもよく、又は窒素含有材料の混合物の一部として「窒素含有材料」を含有する前駆体を指してもよい。特定の実施形態では、ALDを使用して、ケイ素及び窒素を含む材料を形成することができる。そのような材料は、窒化ケイ素を含んでもよく、本質的に窒化ケイ素からなってもよく、若しくは窒化ケイ素からなってもよく、かつ/又は他の組成を有してもよい。
【0014】
本発明者らは、アンモニアプラズマによって異なる酸化物表面を前処理することによって、四ヨウ化ケイ素及びアンモニアなどの窒素化合物を介して数ナノメートルの窒化ケイ素を二酸化ケイ素表面に選択的に堆積させることができ、同時にいくつかの金属酸化物表面(例えば、Al及びZrO)では堆積が達成されないか、又は限定的しか達成されないことを見出した。窒化ケイ素の堆積が既存の窒化ケイ素、窒化アルミニウム、又は金属酸化物表面で優先的に行われること(かつ二酸化ケイ素表面では堆積が行われないこと)が望ましい場合、アンモニアプラズマによる前処理ステップは省略される。
【0015】
原子層堆積では、連続的な処理ステップは、一般に「パルス」又はサイクルと呼ばれる。したがって、ALDプロセスは、前駆体化学物質の制御された自己制限的な表面反応に基づいている。本発明は、完全に飽和した反応、又はより製造可能であれば、前駆体及び共反応体の単に別個のパルスで実施することができる。気相反応は、基板を前駆体に交互に順次接触させることによって実質的に回避される。これは、基板を異なる反応物及び共反応物の領域から移動させることによって、又はガス流を固定基板上で交互に送ることによって実施することができる。両方の場合において、気相反応物は、例えば、反応物パルス間に反応チャンバから過剰な反応物及び/又は反応物副生成物を除去することによって、時間的にかつ基板表面上で互いに分離される。いくつかの実施形態では、1つ以上の基板表面を、2つ以上の気相前駆体又は反応物と交互に順次接触させる。基板表面を気相反応物と接触させることは、反応物蒸気が基板表面と限られた時間接触することを意味する。言い換えれば、基板表面は、限られた時間、各気相反応物に曝露されると理解することができる。
【0016】
簡潔には、少なくとも第1の表面及び第2の異なる表面を含む基板を、一般に約0.5~15Torrの低い圧力で、150℃~400℃の範囲の適切な堆積温度まで加熱する。他の実施形態において、温度は、約175℃~350℃又は200℃~250℃である。堆積温度は、一般に、反応物の熱分解温度未満であるが、反応物の凝縮を回避し、所望の「選択的」表面反応の活性化エネルギーを提供するのに十分高い温度に維持される。例示的な表面には、ケイ素、チタン、及びアルミニウムの窒化物などの窒化物、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、及び酸化ジルコニウムなどの酸化物が含まれる。
【0017】
基板の表面は、気相の第1の反応物と接触する。特定の実施形態では、気相の第1の反応物のパルスが、基板を含有する反応空間に供給される。他の実施形態では、基板を、気相の第1の反応物を含有する反応空間に移動させる。条件は一般に、約1層以下の第1の反応物質の単層が自己制限的に基板表面に吸着されるように選択される。適切な接触時間は、特定の条件、基板及び反応器構成に基づいて当業者によって容易に決定することができる。過剰な第1の反応物及び反応副生成物は、存在する場合、例えば不活性ガスでパージすることによって、又は存在する第1の反応物を基板から除去することによって、基板表面から除去される。
【0018】
パージとは、例えばチャンバを真空ポンプで排気することによって、及び/又は反応器内のガスをアルゴン若しくは窒素などの不活性ガスで置換することによって、気相前駆体及び/又は気相副生成物を基板表面から除去することを意味する。特定の実施形態では、パージ時間は、約0.05~20秒、約1~10秒、又は約1~2秒である。しかし、超高アスペクト比の構造又は複雑な表面形態を有する他の構造を被覆する高度なコンフォーマルステップが必要な場合など、必要に応じて他のパージ時間を利用する可能性もある。
【0019】
基板の表面は、気相の第2のガス状反応物と接触する。特定の実施形態では、第2のガス状反応物のパルスが、基板を含有する反応空間に供給される。他の実施形態では、基板を、気相の第2の反応物を含有する反応空間に移動させる。過剰な第2の反応物及び表面反応のガス状副生成物は、存在する場合、基板表面から除去される。接触及び除去のステップは、所望の厚さの薄膜が基板の第1の表面上に選択的に形成されるまで繰り返され、各サイクルでは約1層以下の単層が残る。三元材料などのより複雑な材料を形成するためには、基板の表面を他の反応物と交互に順次接触させることを含む追加の段階を含む可能性がある。
【0020】
各サイクルの各段階は、一般に自己制限的である。過剰の反応物前駆体を各段階で供給して、影響を受けやすい構造表面を飽和させる。表面飽和は、すべての利用可能な反応部位(例えば、物理的サイズ又は「立体障害」制限を条件とする)の反応物占有を確実にし、したがって優れたステップ被覆率を確実にする。典型的には、材料の1層未満の分子層が各サイクルで堆積されるが、いくつかの実施形態では、サイクル中に1層より多くの分子層が堆積される。
【0021】
過剰な反応物を除去することは、反応空間の内容物の一部を排出すること、及び/又は反応空間をヘリウム、窒素、又は別の不活性ガスでパージすることを含むことができる。特定の実施形態では、パージは、反応空間に不活性キャリアガスを流し続けながら、反応性ガスの流れをオフにすることを含むことができる。別の実施形態では、パージステップは、表面から過剰な反応物質を除去するために真空ステップを利用することができる。
【0022】
本明細書に記載の堆積には、薄膜を成長させるために使用することができる反応器を使用することができる。そのような反応器には、ALD反応器、並びに前駆体を「パルス状」方式で供給するための適切な装置及び手段を備えたCVD反応器が含まれる。特定の実施形態によれば、シャワーヘッド型反応器を使用することができる。
【0023】
使用され得る好適な反応器の例としては、市販の装置、及び自作反応器が挙げられ、CVD及び/又はALDの当業者に公知である。
【0024】
本発明は、その特定の実施形態の以下の実施例によってさらに説明することができるが、これらの実施例は単に例示の目的で含まれ、特に明記しない限り本発明の範囲を限定することを意図しないことが理解されよう。
【実施例
【0025】
実験
実施例1
この実施例では、SiNは、基板の第3の異なる表面に対して、基板の第1及び第2の表面上に選択的に堆積された。この実施例では、基板の第1の表面は、ALDによって堆積されたAlを含み、基板の第2の表面は、ALD堆積されたZrOを含み、第3の異なる表面は、(研磨された単結晶ケイ素表面上に環境条件下で成長した)天然酸化ケイ素を含んでいた。
【0026】
SiN膜は、第1の前駆体として四ヨウ化ケイ素(SiI)を使用し、第2の前駆体としてNHを使用するALDプロセスによって選択的に堆積された。SiIをProE-Vapアンプルに収容し、100℃に加熱した。Nキャリアガスを固体SiIの表面上に流し、基板を有する加熱されたチャンバにSiI蒸気を運んだ。各堆積サイクルは、200℃の温度及び1.5Torrの反応チャンバ圧力で基板と共に行われた。各堆積サイクルは、10秒間のSiI蒸気パルス、10秒間の不活性Nパージ、10秒間のNHパルス及び10秒間の不活性Nパージを含んだ。図1を参照すると、100回の堆積サイクルからなるALDプロセスでは、高誘電率膜上に18Å堆積された際に、自然酸化ケイ素に対するAl及びZrO上に堆積されたSiN(いずれもALDによって堆積された)の選択比は、90%であった。
【0027】
実施例2
この実施例では、SiNは、基板の第2及び第3の異なる表面に対して、基板の第1の表面上に選択的に堆積された。基板の第1の表面は、天然酸化ケイ素を含んでいた。基板の第2の表面は、ALDによって堆積されたAlを含んでいた。第3の表面は、ALDによって堆積されたZrOを含んでいた。SiN堆積の前に、基板をNHプラズマ処理プロセスに供した。
【0028】
実施例1に記載したのと同じプロセスを用いて、第1の前駆体として四ヨウ化ケイ素(SiI)を使用し、第2の前駆体としてNHを使用するALDプロセスによってSiN膜を選択的に堆積させた。試料は、100から200の堆積サイクルからなるALDプロセスを使用して堆積させた。図2に示すように、第1のプラズマ処理された天然酸化ケイ素表面上に堆積された材料の厚さを測定し、第2及び第3の表面、すなわちプラズマ処理されたAl及びZrO上に堆積された材料の厚さと比較した。図2は、プラズマ処理された天然酸化ケイ素を含む第1の表面上のSiN堆積が、プラズマ処理されたAl及びZrO表面の両方に対して非常に高い選択性を有したことを示す。(選択性は95%超である)。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2021-10-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる組成の複数の表面を有するマイクロ電子デバイス基板上に窒化ケイ素を選択的に堆積するための方法であって、原子層堆積条件下において、約150℃~約400℃の温度及び約15Torr未満の圧力で、順次パルス化した四ヨウ化ケイ素又は六ヨウ化二ケイ素、及び窒素含有共反応物と前記基板とを接触させることを含む、方法。
【請求項2】
温度が約175℃~約350℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
温度が約200℃~約250℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基板をアンモニアプラズマで前処理するステップをさらに含み、その上に堆積される表面が、二酸化ケイ素、二酸化ゲルマニウム、SiCO、及びlow-k基板から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
温度が約200℃~約250℃であり、その上に堆積される基板が二酸化ケイ素以外である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記デバイス基板が、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化タンタル、及び窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、並びにそれらの組み合わせから選択され、窒化ケイ素の堆積を抑制した二酸化ケイ素基板、二酸化ゲルマニウム基板、SiCO基板、及びlow-k基板から選択される同じ基板上の他の表面と比較して、窒化ケイ素の堆積が強化された、いくつかの表面を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記デバイス基板が、少なくとも1つの二酸化ケイ素表面及び少なくとも1つの酸化アルミニウム表面を含み、それによって前記窒化ケイ素が、前記少なくとも1つの酸化アルミニウム表面上に選択的に堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記デバイス基板が、少なくとも1つの二酸化ケイ素表面及び少なくとも1つの二酸化ジルコニウム表面を含み、それによって前記窒化ケイ素が、前記少なくとも1つの二酸化ジルコニウム表面に選択的に堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
窒素含有前駆体化合物が、アンモニア、ジメチルヒドラジン、t-ブチルヒドラジン、メチルヒドラジン、又はそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
Si源がProE-Vap中で気化のために加熱される、請求項1に記載の方法。
【国際調査報告】