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  • 特表-破断可能な組立体用の保持デバイス 図1
  • 特表-破断可能な組立体用の保持デバイス 図2
  • 特表-破断可能な組立体用の保持デバイス 図3A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(54)【発明の名称】破断可能な組立体用の保持デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20220428BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
H01L27/12 B
H01L21/02 B
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555275
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(85)【翻訳文提出日】2021-09-28
(86)【国際出願番号】 FR2020050371
(87)【国際公開番号】W WO2020188171
(87)【国際公開日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】1902681
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598054968
【氏名又は名称】ソイテック
【氏名又は名称原語表記】Soitec
【住所又は居所原語表記】Parc Technologique des fontaines chemin Des Franques 38190 Bernin, France
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ランドル, ディディエ
(72)【発明者】
【氏名】コノンチュク, オレグ
(72)【発明者】
【氏名】ベン モハメド, ナディア
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA60
5F131CA09
5F131CA12
5F131EA05
5F131EB32
5F131EC42
5F131EC77
(57)【要約】
破断可能な組立体(1)の上部(7)と下部(8)との間に画定されている破断面に沿って分離することが意図されている破断可能な組立体(1)用の保持デバイス(100)であって、該破断可能な組立体(1)を実質的に水平の保持状態位置に吊り下げられた状態に保つように構成されている少なくとも2つの突出部(9)であり、上部の周囲面取り部(10)に当接して、上部(7)と下部(8)との間に配置されることが意図されている、少なくとも2つの突出部(9)と、破断可能な組立体(1)が分離された時に下部(8)を重力で受容して、該下部を、突出部(9)により保持されている上部(7)からある距離の所に保つために、突出部(9)の下方に、該突出部からある距離の所に配置されている支持体(15)とを備える、保持デバイス(100)。
【選択図】 図3C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
破断可能な組立体(1)の上部(7)と下部(8)との間に画定されている破断面(4)に沿って分離することが意図されている前記破断可能な組立体(1)用の保持デバイス(100)であって、
前記破断可能な組立体(1)を実質的に水平の保持状態位置に吊り下げられた状態に保つように構成されている少なくとも2つの突出部(9)であり、前記上部(7)の周囲面取り部(10)に当接して、前記上部(7)と前記下部(8)との間に配置されることが意図されている、少なくとも2つの突出部(9)と、
前記破断可能な組立体(1)が分離された時に前記下部(8)を重力で受容して、前記下部を、前記突出部(9)により保持されている前記上部(7)からある距離の所に保つために、前記突出部(9)の下方に且つ前記突出部からある距離の所に配置されている支持体(15)と、
を備える、保持デバイス(100)。
【請求項2】
前記支持体(15)と前記突出部(9)との間の前記距離が1.5mmと10mm、好ましくは2mmと5mmの間である、請求項1に記載の保持デバイス(100)。
【請求項3】
前記突出部(9)は柱(14)に配設されている、請求項1又は2に記載の保持デバイス(100)。
【請求項4】
少なくとも1つの突出部(9)が、前記破断可能な組立体(1)を前記保持状態位置に配置するために移動させられることが可能な、取外し可能な柱に配設されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の保持デバイス(100)。
【請求項5】
少なくとも3つの突出部(9)を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の保持デバイス(100)。
【請求項6】
前記破断面(4)において、前記破断可能な組立体(1)の分離を開始するための破断波を開始するための手段も備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の保持デバイス(100)。
【請求項7】
前記開始手段がブレードを備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の保持デバイス(100)。
【請求項8】
前記開始手段が、超音波を発することができる超音波デバイスを備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の保持デバイス(100)。
【請求項9】
前記支持体(15)が、前記下部(8)の後面(19)の近傍で前記下部(8)を受容し、前記下部(8)が前記下部の前記後面(19)により握持されることを可能にする陥凹部を備えることが意図されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の保持デバイス(100)。
【請求項10】
破断可能な組立体(1)を分離するための分離機器であって、筐体と、前記筐体内に配設されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の保持デバイス(100)とを備える、分離機器。
【請求項11】
前記筐体が、前記破断可能な組立体(1)を加熱処理するための且つ前記破断面(4)を脆化させるための炉の室である、請求項10に記載の分離機器。
【請求項12】
前記炉が、対流により、IR放射又はマイクロ波放射により、誘導により加熱するための手段を備える、請求項11に記載の分離機器。
【請求項13】
前記炉が枚葉式高速アニーリング炉である、請求項12に記載の分離機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、材料の処理、より具体的には、電子工学、光学、又は光電子工学用の基板に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、破断可能な組立体の上部と下部との間の破断面に沿って分離することが意図されている破断可能な組立体用の保持デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
Smart Cut(商標)法と呼ばれる、SOI「シリコンオンインシュレーター(Silicon On Insulator)」基板を製造する知られている方法が、次の
微小空洞を備え、且つ支持基板上へ移されることが意図されている表層の範囲を定める、埋設された壊れ易い平面を形成するために、供与体基質の所定の深さで軽量種のイオンを注入するステップであり、該供与体基質は、例えば、単結晶シリコンで作製されている、注入するステップと、
任意選択で表面酸化された、シリコンなどの支持基板上にこの供与体基質を組み立てるステップであり、該組立ては破断可能な組立体を形成する、組み立てるステップと、
支持基板及び移された表層(SOI基板)を備える第1の部分と、供与体基質の残部を備える第2の部分とに、埋設された壊れ易い平面に沿って破断可能な組立体を分離するために破断するステップと
を主に含む。
【0004】
この最後のステップの間に、脆化熱処理が、埋設された壊れ易い平面内に存在する微小空洞の合体及び加圧を促進し得る。この熱処理だけの影響下で、又は該熱処理後にかけられる追加の力により、破断波の開始及び埋設された壊れ易い平面に沿った伝播は、破断可能な組立体が2つの部分に分離されることを可能にする。
【0005】
この最後のステップは、従来、アニーリング炉内で実施され、該アニーリング炉の水平構造は図1に示されている。そのような炉は、石英管210内で複数の破断可能な組立体を同時に処理するように設計されている。
【0006】
従って、図1は、石英受け台などの容器110上に配設されている複数の破断可能な組立体1を示し、該破断可能な組立体は互いに平行に並べられている。該受け台110としては、可動掬い部(scoop)120上に配置されており、破断可能な組立体1が炉の管210内へ装填されること、及びアニーリングの最後に取り出されることを可能にする。
【0007】
図1で分かるように、破断可能な組立体1は垂直に配設される。即ち、破断可能な組立体1の各々の破断面は垂直である。
【0008】
破断可能な組立体1の垂直配置に因り、破断後、2つの部分は、実際、互いに非常に近接したままであり、互いに押し付けられてさえいる。各部分は、次いで、2つの部分が、特に摩擦により、それらの表面仕上げを損傷することなく分離されることを確実にするために、非常に注意深く握持されなければならない。この取扱いを実施するいくつかの方法が開発されている。欧州特許第1124674号又は欧州特許第1423244号の文献が特に言及され得る。
【0009】
欧州特許第1331663号が水平アニーリング炉の代替案を示している。本文献では、破断可能な組立体が垂直に配設されていないが、水平に配設されている。本文献は、取扱いロボットを使用して分離する前後に、破断可能な組立体を取り扱う可能性も記載している。
【0010】
発明者は、破断可能な組立体が水平に位置決めされた場合、破断中に一方の部分を他方に対して摺動させること、及び/又は分離から生じる各部分を握持するステップは、一方の部分の他方上での可能性のある相対運動及び摩擦に因り、2つの部分の対向面上に擦過を引き起こす可能性があると考えられることを述べている。組立体が剛性支持体上に載る場合、これは特に真である。分離後、最上部に配置されている基板は、該基板自体の重量の影響で、下方基板に接近する。2つの基板を分離する距離が短いほど、接触(及び従って損傷)の可能性が高まる。
【0011】
切断デバイス及び切断方法が、破断可能な組立体の破断から生じる2つの部分が高精度に分離されることを可能にする欧州特許第1385683号の文献から知られている。そのような方法は、破断可能な組立体を、固定された平坦なシャシー(chassis)上に水平に配置するステップを含み、該シャシーは、楔部(wedge)、及びこの移動支持体上で固定ブレード(blade)を移動させるための支持体も支持する。破断可能な組立体の外側面は該楔部に当接して隣接させられ、ブレードは、破断面において、破断可能な組立体の分離を開始することが意図されている。
【0012】
しかし、この文献は、分離が完了すると、破断可能な組立体から生じる部分の可能性の問題に対処しない。実際、そのようなデバイスでは、特に損傷又は汚染のリスクなしで各部分を握持し、各部分を取り扱い、各部分を移動させることができるように、各部分を互いからある距離の所に保つことが困難である可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許第1124674号
【特許文献2】欧州特許第1423244号
【特許文献3】欧州特許第1331663号
【特許文献4】欧州特許第1385683号
【特許文献5】FR3061988
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的が、破断後に水平の破断可能な組立体の2つの部分を分離するための最小限の侵襲を可能にし、前記部分が容易に取り扱われ、従って損傷又は汚染のリスクを制限することを可能にするデバイスを提案することにより、前述の欠点に少なくとも部分的に対処することである。
【0015】
この目的を達成するために、本発明の主題は、破断可能な組立体の上部と下部との間に画定されている破断面に沿って分離することが意図されている破断可能な組立体用の保持デバイスを提案し、該保持デバイスは、
破断可能な組立体を実質的に水平の保持状態位置に吊り下げられた状態に保つように構成されている少なくとも2つの突出部であり、上部の周囲面取り部(peripheral chamfer)に当接して、上部と下部との間に配置されることが意図されている、少なくとも2つの突出部と、
破断可能な組立体が分離された時に前記下部を重力で受容して、該下部を、突出部により保持されている上部からある距離の所に保つために、突出部の下方に且つ突出部からある距離の所に配置されている支持体と
を備える。
【0016】
そのようなデバイスは、破断可能な組立体の2つの部分が分離され、いかなる外部の取扱いにも頼ることなく、互いからある距離の所に保たれることを可能にし、その取扱いは、部分のどちらか一方に損傷を与えるか、又は部分を汚染する可能性がある。分離は、もっぱら下基板への重力の影響により実現される。
【0017】
そのようなデバイスには、破断可能な組立体の部分の各々の対向面とのいかなる接触ももたらさないという利点もある。破断可能な組立体の面にもたらされる接触又は応力が破断の質を低下させ、その結果として、移された層の均一性を低下させる可能性が高い。従って、本発明によるデバイスには、かなりの表面均一性を示す基板をもたらすという利点がある。
【0018】
単独で又は任意の技術的に実現可能な組合せに従って考慮される、本発明の他の有利な非制限的特徴によれば、
支持体と突出部との間の距離は1.5mmと10mm、好ましくは2mmと5mmの間であり、
突出部は柱に配設されており、
少なくとも1つの突出部が、破断可能な組立体を保持状態位置に配置するために移動させられることが可能な、取外し可能な柱に配設されており、
保持デバイスは少なくとも3つの突出部を備え、
保持デバイスは、破断面において、破断可能な組立体の分離を開始するための破断波を開始するための手段をさらに備え、
開始手段はブレードを備え、
開始手段は、超音波を発することができる超音波デバイスを備え、
支持体は、下部の後面の近傍で下部を受容し、下部が該下部の後面により握持されることを可能にする陥凹部を備えることが意図されている。
【0019】
本発明の主題は、破断可能な組立体を分離する分離機器にさらに関し、該分離機器は、筐体と、該筐体内に配設されている、前述されている保持デバイスとを備える。
【0020】
単独で又は任意の技術的に実現可能な組合せに従って考慮される、本発明の他の有利な非制限的特徴によれば、
筐体は、破断可能な組立体を加熱処理するための且つ破断面を脆化させるための炉の室であり、
炉は、対流により、IR放射又はマイクロ波放射により、誘導により加熱するための手段を備え、
炉は枚葉式高速アニーリング炉である。
【0021】
本発明のさらなる利点及び特徴が、添付図面を参照して、決して制限的でない実施形態の詳細な説明を読むと、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】先行技術のアニーリング炉の図である。
図2】破断可能な組立体の断面図である。
図3A】破断可能な組立体の分離前の、本発明による保持デバイスの側面断面図である。
図3B】本発明による保持デバイスの上面図である。
図3C】破断可能な組立体の分離後の、本発明による保持デバイスの側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
下記の説明を通して、本発明の本質を不必要に曖昧にする可能性があると考えられる、既知の機能及び要素の詳細な説明は省かれるであろう。
【0024】
図は、読み易くするために、必ずしも縮尺通りであるとは限らない概略描写である。特に、層の厚さは、これら層の横方向寸法に対して縮尺通りでなく、本発明による保持デバイスを形成する要素の寸法に対しても縮尺通りでない。
【0025】
本発明は、破断可能な組立体1用の保持デバイスに関する。そのような破断可能な組立体1の構造は図2に概略的に示されている。
【0026】
従来、破断可能な組立体1が、導入部において述べられているSmart Cut(商標)法で実施される。
【0027】
本方法では、例えば水素イオン及び/又はヘリウムイオンなどの軽量種を注入するステップが、主面3の近傍で供与体基質2において実施される。該供与体基質2は、単結晶シリコン又は任意の他の関心材料で作り出され得る。
【0028】
それ自体知られている方法において、且つ図2に示されているように、注入イオンの目的は、以下で「破断面4」と呼ばれる脆性埋設区域4を形成することである。この破断面4は、一方では、主面3の側に配置されている薄層5の範囲を定め、他方では、ネガティブ部(negative part)と呼ばれる供与体基質2の残部の範囲を定める。
【0029】
同様に周知されている、組立てに続くステップでは、供与体基質2の主面3は支持基板6の一面と組み立てられる。該支持基板6は、任意の関心材料、例えばシリコン、サファイア、ガラス、で作り出され得る。
【0030】
支持基板6上に供与体基質2を組み立てるステップは、支持基板6上での供与体基質2の分子接着による直接ボンディングを含み得る。例えば酸化ケイ素で作製されている中間層(図示せず)が、組立ての前に、基板2、6のうちの一方の面のうちの1つに形成され得る。
【0031】
この組立てステップの完了時、破断可能な組立体1は得られ、2つの関連基板を備え、支持基板6の面は供与体基質2の主面3に付着する。
【0032】
破断可能な組立体1は、該破断可能な組立体が水平状態位置に配置されると、上部7と下部8との間に画定されている破断面4を有し、該上部7は該下部8の上方に配置される。
【0033】
図2に示されている例では、上部7は供与体基質2のネガティブ部を備える。下部8としては、支持基板6と、移されることが意図されている薄層5とを備える。しかし、本発明はそのような構造に決して限定されず、上部7が支持基板6と薄層5との組立体を備え、下部8が供与体基質2のネガティブ部を備えると、完全に考えられる。
【0034】
Smart Cut(商標)タイプの方法の目的は、供与体基質2の薄層5を支持基板6上へ移すことである。前述されている通り、そのような移しが、従来、破断面4を脆化する加熱処理ステップに続いて実施され、次いで、破断波を伝播し、破断可能な組立体1の2つの部分7、8間の分離を引き起こすために、熱的な又は機械的な分離を開始するステップが実施される。分離という用語は、本願の範囲内で、結果的に2つの部分7、8の形成をもたらす、破断面の近傍における破断可能な組立体の引離しを意味する。
【0035】
図3Aは、本発明による保持デバイス100を描写する。直交するOxyz座標系が、Oxy面が水平であるように図3Aに示されている。保持デバイス100は、破断可能な組立体1を実質的に水平の保持状態位置に吊り下げられた状態に保つように構成されている少なくとも2つの突出部9を備える。
【0036】
本説明では、「吊り下げられた」という用語は、破断可能な組立体1が保持状態位置にある時、分離前、破断面4の反対側の下部8の面がいかなる支持体とも接触していないことを意味する。
【0037】
「実質的に水平の」という用語は、破断可能な組立体1が、プラスマイナス10°以下、好ましくはプラスマイナス5°以下である、水平面に対する傾斜で、水平状態位置にある即ちOxy面に平行であることを意味する。
【0038】
図3Aは、分離前、破断可能な組立体1が保持状態位置にある場合の該破断可能な組立体を示す。そのような保持状態位置では、突出部は、上部7の周囲面取り部10(図2に示されている)に当接して、破断可能な組立体1の上部7と下部8との間に配置されている。
【0039】
従来、基板が、例えば200mm又は300mmの直径を有する円形である状態で、下部7の周囲面取り部10、及びもし存在すれば、下部8の面取り部11は、破断可能な組立体1の周囲に円形溝部を形成する。
【0040】
各溝部9は、該溝部内に挿入されるように構成されている端部12を有する。該端部12は、破断可能な組立体1を保持状態位置に確実に保持するために、溝部内へ十分に深く導入されることが可能であるように十分に薄くなければならない。
【0041】
突出部9は斜面形状であり、方向(Oz)の該突出部の厚さは、端部12に至るまで、基部13から方向(Oy)に減少することが有利である。
【0042】
通常、方向(Oy)の溝部の深さは約250μmであり、その一方、溝部の外周の近傍での上部7と下部8との間の方向(Oz)の間隙は約300μmである。保持状態位置にある破断可能な組立体1の確実な保持を実現するために、端部12の厚さは、1mm未満、例えば200μm、であることが好ましい。斜面により形成される角度は約20°であり得る。
【0043】
溝部内へ最適に挿入されるために、端部12は、溝部の形状を補完する、Oxy面における形状を取り得る。例えば、溝部が円形である場合、端部12は凹円形形状を有することができ、該凹円形形状の曲率半径は溝部の曲率半径と同様である(図3B)。
【0044】
当然、本発明は、基板及び突出部の前述の形状に決して限定されない。例えば、基板、及び従って溝部が、多角形形状、例えば矩形、を有することが可能であり、その場合、端部12は、Oxy面において、直線状の形状を有し得る。突出部9が、方向(Oz)に、好ましくは1mm未満の、例えば200μmに等しい、一貫した厚さを有することも可能である。
【0045】
突出部9は、該突出部の基部13の近傍に、該突出部が所定の高さに且つ破断可能な組立体1の周囲の角度位置に保持されることを可能にする支持要素14に配設される。支持要素14は柱とすることができることが有利である。そのような構造は、特に多関節アームの使用のために、突出部9がデバイスを取り巻く壁上に配設されると考えられる仮説と比較して、突出部9間での破断可能な組立体1(分離前)及び2つの部分7、8(分離後)の取扱いを容易にする。
【0046】
突出部が配設される支持要素14の特質に関わらず、該支持要素14及び突出部9は、いかなる汚染も回避するために、Smart Cut(商標)法などの分離法に従来必要とされる要件に適合する清浄度レベルを有する材料から作製される。例えば、これら材料は、石英、炭化ケイ素、カプトン(Kapton)(登録商標)などのシリコン重合体又はある重合体から選択され得る。
【0047】
特に有利な方法では、少なくとも1つの突出部9が移動可能であり、その結果、該突出部は、破断可能な組立体が設置されると、取り除かれ得る。この目的のために、この突出部9は取外し可能な柱に固定され得る。破断可能な組立体1を保持デバイス100に設置する場合、破断可能な組立体1は、周囲面取り部10を前記突出部9上に配置するために、例えば多関節アームにより、その他の突出部9の周囲溝部に係合するために配置される。その後、取外し可能な柱は、移動可能な突出部9が周囲面取り部10に当接して隣接するまで移動させられることが可能であり、次いでこの位置に設定され、破断可能な組立体1を保持状態位置に配置する。
【0048】
第1の代替的実施形態によれば、Oxy面における突出部9の端部12の寸法は周囲面取り部10の外周の僅かであり得る。
【0049】
例えば、端部12の寸法は、周囲面取り部10の外周の約4分の1、3分の1、又はさらには半分であり得る。一般に、本第1の代替的実施形態では、2つの突出部9が、特に該2つの突出部が互いに対向して配設されている場合、破断可能な組立体1をその保持状態位置に保持するのに十分である。
【0050】
第2の特に有利な代替的実施形態によれば、Oxy面における突出部9の端部12の寸法は、周囲面取り部10の外周に対向して、ごく僅かである。
【0051】
「ごく僅か」という用語は、本説明において、端部12の寸法が周囲面取り部10の外周の4分の1未満、さらには周囲面取り部10の外周の10分の1未満であることを意味する。
【0052】
通常、Oxy面における端部12の寸法は10mmであり得る。
【0053】
そのような構造は、突出部9の空間要件を減らし、取扱い作業過程を容易にするために、突出部9が細い柱14に配設されることを可能にする。
【0054】
図3Bに示されている本代替的実施形態では、保持デバイス100は少なくとも3つの突出部9を備える。これは、破断可能な組立体1が、突出部9の小サイズに関わらず、その保持状態位置において安定したままであることを可能にする。例えば、保持デバイス100は、破断可能な組立体1を保持するために、3つの、4つの、5つの、さらには6つの突出部9を備え得る。
【0055】
保持デバイス100が5つ以上の突出部9を備える状態において、保持状態位置にある破断可能な組立体1の取扱い及び位置決めを容易にするために、取外し可能な柱に配設されている少なくとも2つの突出部9が移動可能であることが望ましい。
【0056】
よりよい安定性を実現するために、突出部9は、破断可能な組立体1の周囲に均等に角度位置決めされることが有利である。例えば、周囲面取り部10が円形である場合、図3Bに示されているように、突出部9は破断可能な組立体1の周囲に均等に分布されている。しかし、本発明はそのような分布に決して限定されない。
【0057】
既に述べられている通り、破断可能な組立体1は、上部7と下部8とを形成するために、破断面4に沿って分離することが意図されている。破断可能な組立体1の分離後の保持デバイス100の図が図3Cに示されている。上部7は、下部8の前面17に対向する、破断可能な組立体1の破断面4の近傍における分離から生じる前面16を備える。上部7は、該上部の前面16の反対側の後面18も備える。下部8は、該下部の前面17の反対側の後面19を同様に備える。
【0058】
本発明による保持デバイス100は、突出部9の下方に且つ該突出部9からある距離の所に配置されている支持体15を備える。
【0059】
「下方に」という用語は、本説明の範囲内で、支持体15が破断可能な組立体1と共に使用される場合、該支持体は、破断可能な組立体1が分離された時に下部8を重力で受容するために、突出部9に対して位置決めされることを意味する。換言すれば、破断可能な組立体1が分離すると、上部7と下部8とが破断面4の近傍で分離し、上部7は突出部9により保持されたままであり、その一方、下部8は、該下部の後面19が支持体15と接触するまで、重力により駆動される。
【0060】
「ある距離の所に」という用語は、支持体15と突出部9との間の距離は下部8の厚さより真に大きいことを意味し、その結果、保持状態位置において、破断可能な組立体1は支持体15と接触していない。従って、破断可能な組立体1と保持デバイス100との間の接触区域は突出部9に限定される。突出部9だけで破断可能な組立体1を保持することは、かけられる応力が最小化されることを可能にする。破断可能な組立体1と保持デバイス100との間の接触面を最小にすることが、破断中、破断可能な組立体1の各部分7、8が自由に変形できることを可能にする。破断時に下部8の前面17の印象を形成する、該下部の後面19との任意の接触に関して、これら接触を最小限にすることが、破断波の一様な伝播を促進する。
【0061】
「ある距離の所に」という用語は、破断可能な組立体1が分離された時、支持体15と突出部9との間の距離は、下部8が、突出部9により保持されている上部7から効率的に分離すること、及び2つの部分を互いからある距離の所に保つこと即ち2つの部分の前面16、17間にいかなる接触もないことを可能にするのに十分であることも意味する。
【0062】
支持体15と突出部9との間の距離は、該支持体と該突出部との間で接触するいかなるリスクもなく、部分7、8のどちらか1つが取り扱われ、引き出されることを可能にするのに十分であることが有利である。
【0063】
例として、突出部9と支持体15との間の距離は、500ミクロンと800ミクロンの間である、方向(Oz)の厚さを有する下部8のために、1.5mmと10mmの間、さらには2mmと5mmの間であるように選択される。
【0064】
支持体15は単一部品とすることができ、支持要素14の少なくとも一部に接続され得る。例えば、該支持体は、例えば円形であり、該支持要素と同じ材料で作製されていることが好ましい、支持要素14と一体的に設計されている平板とすることができる。
【0065】
特に有利な構造によれば、支持体15は、下部8が該下部の後面19で、例えば自動ロボットの多関節アームにより、握持されることを可能にする陥凹部を備える。そのような構造は、部分7、8のどちらか一方を損傷するか又は汚染する可能性が高い、2つの前面16、17間に配置されている区画内のいかなる介在も回避する。
【0066】
或いは、保持デバイス100は複数の支持体15を備えることができ、各支持体は、分離後に下部8を実質的に水平の状態位置に保持するために、突出部9に対向する複数の支持体15の面が平行であり且つ同じ高さにあるように、支持要素14に独立して接続されている。例えば、支持要素が柱14を含む場合、支持体15は柱14の基部とすることができ、前記突出部の下方で突出部9と同じ方向に延在し得る。本特定の実施形態では、下部8は、重力により、該下部の後面19が複数の支持体15と接触するまで駆動される。
【0067】
支持体15の形状は重要でなく、例えば矩形である。その形状は、可能な限り小型であるように且つ下部8の取扱いを妨げないように構成されていることが好ましい。
【0068】
同様に、支持体15の寸法は重要でなく、空間要件を制限し、下部8が該下部の後面19により握持されることを可能にするために、且つ支持要素14及び破断可能な組立体1を支持するのに十分強いように、破断可能な組立体1の寸法の関数として選択され得る。
【0069】
いずれの場合でも、快適な取扱いを可能にするために、分離後に破断可能な組立体1から生じる2つの部分7、8間の距離は1mmより長いことが好ましい。
【0070】
しかし、この距離は、下部8が支持体15と接触する時、該下部の落下の最後に該下部の損傷のリスクに晒さないように、過剰であってはならない。
【0071】
出願人は、破断可能な組立体1の分離に続いて下部8が落下する時に下部8の速度が減少することを可能にする物理的効果から利益を得るために超過されるべきでないことが特に有利である、約5mmの最大距離が存在したことを特に述べている。
【0072】
破断面4の近傍における2つの部分7、8の分離時、下部8は重力の影響下で支持体15に向かって引き寄せられる。下部8の後面19と支持体15との間に配置されている空間内の圧力は、次いで、破断面4を形成する空洞内のガス種の圧力に因り、2つの部分7、8間に配置されている空間内の圧力より低い大気圧に近づく。この圧力差も2つの部分7、8の分離を促進する。
【0073】
しかし、2つの部分7、8の突然の分離は、前記部分7、8間に配置されている空間内の低圧力につながり、その低圧力は、下部8の上方の圧力が下方の圧力より低い状態で、下部8の落下の速度を落とす。
【0074】
空気の粘性と組み合わせられた、2つの部分7、8を分離する近接した間隔は、これら2つの部分7、8間の空気の循環及び圧力の再均衡を制限し、それは、下部8が支持体15と接触するまで、該下部の落下の速度を落とすことを助ける。従って、このことは、下部8の後面19を損傷するリスクを低減する。
【0075】
その結果として、2つの前面16、17間の距離は、下部8の後面19が支持体15と接触している場合、支持体15上での下部8の制御された着地を促進する前述の効果を保つために、1mmと5mmの間であることが好ましい。
【0076】
下部8がSOI基板である場合には、該基板は、通常、200mm又は300mmの直径に関して、約700~800ミクロンの厚さである。
【0077】
決して制限的でなく、本発明による保持デバイス100は、破断可能な組立体1を分離するための分離機器の脈絡の範囲内で使用され得ることが有利である。
【0078】
保持デバイス100は、筐体、例えば、破断可能な組立体1を例えば100~500℃の温度範囲内で加熱処理することができる炉の室内に配設され得る。
【0079】
炉を加熱するための手段は、対流により、赤外線放射若しくはマイクロ波放射により、又は誘導により加熱するための手段であり得る。
【0080】
それ自体周知されているそのような熱処理は、破断面4が、破断面4内に含有されている微小空洞の合体及び加圧を促進することにより、脆化されることを可能にする。
【0081】
保持デバイス100は、破断可能な組立体1を非常に短い時間、通常は数秒~数分内で脆化させること及び/又は脆化温度にすることが可能であるように、枚葉式高速アニーリング炉内に配設されることが好ましい。そのような速度は破断可能な組立体1の迅速な分離を可能にし、分離機器のかなりの処理能力を可能にする。
【0082】
保持デバイス100は分離機器内に備えられる、且つ保持デバイス100は炉内に配置される可能性が高いと仮定して、支持要素14及び突出部9を形成する材料は、破断可能な組立体1の上部7及び下部8の汚染に関連する条件を満たすことに加えて、前述の温度に従って耐熱性を有さなければならない。特に、前述のリストから、支持要素14及び突出部9を形成する材料は、石英、炭化ケイ素、シリコン、又はカプトン(登録商標)から選択されることが好ましい。
【0083】
或いは、本発明による保持デバイス100は、脆化ステップが実施されると且つ破断が起こる前に、破断可能な組立体1を回収するために、炉内ではなく炉の出口に配設され得る。
【0084】
本発明による保持デバイス100は炉から完全に分離されることも可能であり、破断可能な組立体1の脆化は、保持デバイス100と無関係に、上流で実施される。
【0085】
本発明による保持デバイス100が配置され得る筐体は、処理の少なくともいくつかのために、制御された雰囲気、好ましくは非酸化性雰囲気を維持するための手段を備え得ることが有利である。2つの部分の少なくとも引離しの瞬間から適用される温度であった場合、2つの前面16、17が、著しい量の酸素を含有する雰囲気の場合よりも低温で滑らかにされることを、そのような非酸化性雰囲気が可能にすると考えられると、出願人は述べている。
【0086】
「非酸化性」という用語は、通常、10ppm未満の、特に二酸素中に又は水中に含有され得る酸素含有量を有する雰囲気であると理解される。従って、制御された雰囲気は中性雰囲気又は還元雰囲気であり得る。筐体内の非酸化性雰囲気は、(アルゴン若しくはヘリウムなどの)不活性ガス又は(水素などの)還元ガスの連続ガス流を循環させるための手段により得られ得る。
【0087】
非酸化性大気中で滑らかにするそのようなステップの効果は、FR3061988の文献に非常に詳細に記載されている。
【0088】
本発明の代替的実施形態によれば、保持デバイス100は、破断可能な組立体1の破断面4において破断波を開始するための手段を備え得る。
【0089】
第1の任意選択によれば、開始手段は、例えばブレードを備える、機械的開放要素により形成されている。該ブレードは、取外し可能な柱のうちの1つに配設され、突出部9のうちの1つを補完するか又は交換することができる。柱14の移動で、ブレードは2つの部分7、8間に挿入され、従って、破断面4に沿った破断波の伝播を開始することができる機械的応力をかけることができる。或いは、ブレードは多関節アームに固定されることが可能であり、該ブレードの移動は、突出部9を支持する柱14と無関係に制御され得る。
【0090】
ブレードは、破断可能な組立体1に侵入するのに十分に硬いが、部分7、8の前面16、17を損傷するいかなるリスクも回避するために硬すぎない、滑らかな材料で作製されている。例として、ブレードは、ポリ塩化ビニル(PVC)又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの材料から製造され得る。
【0091】
第2の任意選択によれば、開始手段は、超音波を発することができる超音波デバイスを備える。破断面4に向かって方向付けられた該超音波は、脆化された破断面4の微小空洞の内部で伝播し、破断波の伝播の開始を可能にする。
【0092】
当然、開始手段のための他の任意選択が検討され得る。
【0093】
前述の任意選択のいずれか1つによる破断波の機械的開始は、炉の内側又は外側で実施され得る。
【0094】
開始に続いて、破断波は破断面4内で自動伝播し、前述され且つ図3Cに示されているように、結果的に、破断可能な組立体1の2つの部分7、8への分離をもたらす。
【0095】
当然、本発明は、記載されている実施形態に限定されず、代替的実施形態が、特許請求の範囲により定められる本発明の範囲から逸脱することなく追加され得る。
【0096】
従って、破断可能な組立体が大気圧で分離されることを分離機器が可能にすると記載されているとしても、このことが筐体内で起こる場合、処理中に又は分離の瞬間から部分7、8の周囲に広がる雰囲気の圧力を制御するための手段を設けることが可能である。
【0097】
従って、筐体の圧力の低下が、2つの部分7、8間に配置されている空間と筐体の容積の残部との間の引離しの瞬間に続く複数の時点に存在する圧力差の減少をもたらす。下部8の落下の速度を落とす現象は、次いで、最小化される。そのような制御は、下部8と上部7との互いからの分離が加速されることを該制御が可能にするという点で、興味深い可能性がある。逆に、分離速度は、筐体内に広がる圧力の制御された増大により低下し得る。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
【国際調査報告】