(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-19
(54)【発明の名称】非対称真空断熱グレージングユニット
(51)【国際特許分類】
C03C 27/06 20060101AFI20220512BHJP
E06B 3/677 20060101ALI20220512BHJP
E06B 3/66 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
C03C27/06 101Z
C03C27/06 101H
E06B3/677
E06B3/66 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556479
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(85)【翻訳文提出日】2021-10-12
(86)【国際出願番号】 EP2020055862
(87)【国際公開番号】W WO2020187584
(87)【国際公開日】2020-09-24
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507090421
【氏名又は名称】エージーシー フラット グラス ノース アメリカ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AGC FLAT GLASS NORTH AMERICA,INC.
【住所又は居所原語表記】11175 Cicero Dr. Suite 400, Alpharetta, GA 30022, U.S.A.
(71)【出願人】
【識別番号】518428303
【氏名又は名称】エージーシー ビードロス ド ブラジル エルティーディーエー
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ベン トラド, アブデッラゼク
(72)【発明者】
【氏名】ワング, ミンウェイ
【テーマコード(参考)】
2E016
4G061
【Fターム(参考)】
2E016AA04
2E016AA05
2E016BA01
2E016BA02
2E016BA06
2E016BA07
2E016CA01
2E016CB01
2E016CC02
2E016CC03
2E016EA01
2E016EA02
2E016FA01
4G061AA01
4G061AA25
4G061BA01
4G061CB02
4G061CD02
4G061CD22
4G061DA09
4G061DA14
(57)【要約】
長手方向軸X及び垂直軸Zによって規定される平面Pに沿って延在し、1つの赤外反射塗膜が設けられ、300mm≦L≦4000mmの長さL及び300mm≦W≦1500mmの幅Wを有する真空断熱グレージングユニット(10)であって、内板面(12)及び外板面(13)を有し、厚さZ
1を有し、内板面に赤外反射塗膜を持つ第1のガラス板(1)であって、塗布された第1のガラス板はエネルギー吸収率EA
1を有する第1のガラス板(1)と、内板面(22)及び外板面(23)を有し、厚さZ
2を有する、第2のガラス板(2)であって、厚さは平面Pに垂直な方向で測定され、第2のガラス板(2)はエネルギー吸収率EA
2を有する第2のガラス板(2)と、第1のガラス板と第2のガラス板の間に位置決めされ、第1のガラス板と第2のガラス板の間の距離を維持し、ピッチλを有する配列を形成する離散スペーサー(3)のセットであって、ピッチλは、10mm~35mmである離散スペーサー(3)のセットと、第1及び第2のガラス板の周囲にわたって第1のガラス板と第2のガラス板の間の距離を密封する気密接合シール(4)と、第1及び第2のガラス板及び離散スペーサーのセットによって規定され、気密接合シールによって密閉されている内部体積Vであって、0.1ミリバール(mbar)未満の絶対圧力の真空がある内部体積Vとを含み、第1及び第2のガラス板の内板面は内部体積Vに面し、第1のガラス板は、第2のガラス板よりも厚く(Z
1>Z
2)、ΔEA≦0.0033ΔZ
2/mm
2-0.0468ΔZ/mm+0.7702(但し、ΔEA=EA
1-2*EA
2である)であり、Z
1≧5mm、Z
2≧3mm、ΔZ=Z
1-Z
2≧1mmであり、10mm≦λ≦35mmである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの赤外反射塗膜が設けられ、300mm≦L≦4000mmの長さL及び300mm≦W≦1500mmの幅Wを有する真空断熱グレージングユニット(10)であって、前記真空断熱グレージングユニットが、
a.内板面(12)及び外板面(13)を有し、厚さZ
1を有する第1のガラス板(1)であって、前記内板面に前記赤外反射塗膜を持ち、塗装された第1のガラス板(1)はエネルギー吸収率EA
1を有する、第1のガラス板(1)と、
b.内板面(22)及び外板面(23)を有し、厚さZ
2を有する第2のガラス板(2)であって、前記厚さは平面Pに垂直な方向で測定され、第2のガラス板(2)はエネルギー吸収率EA
2を有する、第2のガラス板(2)と、
c.前記第1のガラス板と前記第2のガラス板の間に位置決めされ、前記第1のガラス板と前記第2のガラス板の間の距離を維持し、ピッチλを有する配列を形成する離散スペーサー(3)のセットであって、前記ピッチλは10mm~35mmである、離散スペーサー(3)のセットと、
d.前記第1及び第2のガラス板の周囲にわたって前記第1のガラス板と前記第2のガラス板の間の前記距離を密封する気密接合シール(4)と、
e.前記第1及び第2のガラス板及び前記離散スペーサーのセットによって規定され、前記気密接合シールによって密閉されている内部体積Vであって、0.1ミリバール(mbar)未満の絶対圧力の真空がある内部体積Vと
を含み、
f.前記第1及び第2のガラス板の前記内板面は、前記内部体積Vに面し、
g.前記第1のガラス板は、前記第2のガラス板よりも厚く(Z
1>Z
2)、ΔEA≦0.0033ΔZ
2/mm
2-0.0468ΔZ/mm+0.7702(但し、ΔEA=EA
1-2*EA
2である)であり、Z
1≧5mm、Z
2≧3mmであり、ΔZ=(Z
1-Z
2)≧1mmであり、10mm≦λ≦35mmであること
を特徴とする、真空断熱グレージングユニット(10)。
【請求項2】
前記第1及び第2のガラス板のエネルギー吸収の重み付け差に関する条件ΔEA≦0.0084ΔZ
2/mm
2-0.1545ΔZ/mm+0.6966(但し、ΔEA=EA
1-2*EA
2である)を満たす場合、Z
2=3mmであり、10mm≦λ≦25mmであり、300mm≦L≦3000mmであり、300mm≦W≦1500mmである、請求項1に記載の真空断熱グレージングユニット。
【請求項3】
Z
2=4mmであり、10mm≦λ≦25mmであり、ΔEA≦-0.0214ΔZ/mm+0.5696であり、300mm≦L≦3000mmであり、300mm≦W≦1500mmである、請求項1に記載の真空断熱グレージングユニット。
【請求項4】
Z
2=5mmであり、10mm≦λ≦35mmであり、ΔEA≦0.0033ΔZ
2/mm
2-0.0468ΔZ/mm+0.7434であり、300mm≦L≦3000mmであり、300mm≦W≦1500mmである、請求項1に記載の真空断熱グレージングユニット。
【請求項5】
Z
2=6mmであり、10mm≦λ≦35mmであり、ΔEA≦0.0033ΔZ
2/mm
2-0.0468ΔZ/mm+0.7702であり、300mm≦L≦3000mmであり、300mm≦W≦1500mmである、請求項1に記載の真空断熱グレージングユニット。
【請求項6】
Z
2=4mmであり、25mm<λ≦30mmであり、ΔEA≦-0.0308ΔZ/mm+0.5294であり、300mm≦L≦3000mmであり、300mm≦W≦1500mmである、請求項1に記載の真空断熱グレージングユニット。
【請求項7】
前記赤外反射塗膜は、多くても0.04、好ましくは多くても0.02の放射率を与える金属ベースの機能低放射層を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の真空断熱グレージングユニット。
【請求項8】
前記第1及び第2のガラス板の前記外板面(13;23)のうち少なくとも1つは、積層組立体を形成する少なくとも1つのポリマー中間層によって、少なくとも1つのガラスシートに積層されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の真空断熱グレージングユニット。
【請求項9】
前記第1及び第2のガラス板の前記外板面(13;23)のうち少なくとも1つは、周辺スペーサー棒を介して真空断熱グレージングユニットの周囲に沿って第3のガラス板に連結されており、周縁シールによって密封されている断熱空洞を生成する、請求項1~8のいずれか一項に記載の真空断熱グレージングユニット。
【請求項10】
外部空間及び内部空間を規定する仕切りであって、前記仕切りは、請求項1~9のいずれか一項に記載の真空断熱グレージングユニットによって密閉されている開口部を含み、前記第1のガラス板は前記外部空間に面している、仕切り。
【請求項11】
外部空間及び内部空間を規定する仕切りの開口部を密閉するための、請求項1~9のいずれか一項に記載の真空断熱グレージングユニットの使用であって、前記第1のガラス板は前記外部空間に面している、真空断熱グレージングユニットの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低放射率塗膜が設けられ、負及び正の温度差によって引き起こされる低い応力レベルを有する真空断熱グレージングユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
真空断熱グレージング(VIG)ユニットは、このユニットの高性能断熱のために、推奨されている。真空断熱グレージングユニットは典型的に、真空が生成されている内部空間によって隔てられた少なくとも2つのガラス板で構成されている。一般的に、高性能断熱を達成するために、熱透過率Uは、U<1.2W/m2Kである。グレージングユニット内の絶対圧力は典型的に、0.1ミリバール(mbar)以下であり、一般的に、2つのガラス板のうち少なくとも1つを、低放射率塗膜で覆ってもよい。グレージングユニット内のこのような圧力を得るために、気密接合シールを2つのガラス板の周囲に配置し、真空を、ポンプによってグレージングユニット内に生成する。グレージングユニットの内部と外部との間の圧力差に起因して大気圧の下でグレージングユニットが陥没するのを防止するために、離散スペーサーが2つのガラス板の間に配置される。
【0003】
典型的なVIGユニットは、同じガラス厚を有する2つのガラス板で構成されている対称VIGユニットである。非柔軟性気密接合シールと一緒に真空断熱グレージングの高い断熱性は、建物の外部と内部との間に大きい温度差がある場合、より高い熱歪みを引き起こす。従って、特開2001316137A号公報は、同等の対称VIGユニットにおける熱歪みレベルよりも低い、強い日光の下の熱歪みレベルを達成するために、屋内側に設けられた内ガラス板が外ガラス板よりも厚い非対称真空断熱グレージングユニットを構成するように教示する。これらの非対称グレージングは、夏季状況における変形を減らすけれども、冬季状況で同等の対称VIGユニットよりも高い応力を受けるリスクにさらされる。
【0004】
特開2001316138A号公報は、耐衝撃性及び防音性能を向上させるために、屋外側に設けられた外ガラス板が内ガラス板よりも厚い反対非対称VIG構成を教示する。
【0005】
米国特許出願公開第2015/0354264A1号明細書は、十分な断熱性及び遮熱性を与えるために、外側ガラスの第2のガラス面、即ち、間隙部に面するように向けられた外側ガラスのガラス面に0.067以下の放射率を有する低放射率膜を有する二重グレージングガラスパネルの圧力の減少を教示する。低放射率膜は、好ましくはマグネトロンスパッタリングによって形成された、下誘電体層、金属層、犠牲層及び上誘電体層のスタックである。
【0006】
国際公開第2016/063007A1号パンフレットは、凝縮防止特性のために、外部接面に低放射率塗膜を有する真空断熱グレージングユニットを開示する。
【0007】
欧州特許出願公開第1630344A1号明細書は、真空断熱グレージングユニットのガラス板の内面に0.2未満の放射率の低放射率塗膜を設けるように教示する。簡便な低放射率塗膜の例は、誘電体/銀/犠牲/誘電体タイプのスパッタ塗膜スタック、又はドープ酸化スズ層に基づく化学蒸着塗膜である。VIGの断熱特性又は太陽光制御特性の最適化のために、塗膜の追加は更に関心をひくけれども、これらの塗膜は、VIGに与えられる熱応力を更に変化させる。
【0008】
しかしながら、1つ又は複数のガラス板が、低放射率太陽光制御又は断熱塗膜を持っており、外部環境と内部環境との間の温度差を受ける非対称VIGユニットにおいて温度に誘発された応力を抑制するという技術的問題にどの技術も対処していない。更に、このようなVIGユニットの柱位置における大気圧誘発応力、及び高性能断熱を維持しながら、この組み合わされ改善された熱及び圧力に誘発された応力レベルを実証する真空断熱グレージングユニットの更に小さい設計方法の技術的問題に対処する技術はない。
【0009】
内部が外部よりも寒い夏季状況、及び外部が内部よりも寒い冬季状況の両方で、特に冬季条件が夏季条件よりも厳しい状況で、赤外反射塗膜を持つVIGユニットの結合誘発応力及び生じる破損リスクを減らす技術的問題に対処する技術は実際にない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、内部体積に面する、第1のガラス板の内面上に赤外反射塗膜を持ち、内部が外部よりも寒い夏季状況、及び外部が内部よりも寒い冬季状況で、特に冬季条件が夏季条件よりも厳しい状況で、破損の低い全応力関連リスクを有する真空断熱グレージングを提供することにある。本発明における赤外反射塗膜は、断熱塗膜又は太陽光制御塗膜であってもよい。
【0011】
驚いたことに、発明者は、スペーサーの特定のピッチ、及び塗膜の特定の位置決め及びガラス板のエネルギー特性と一緒に、内及び外ガラス板に対する特定の寸法及び厚さの組み合わせは、内部が外部よりも寒い穏やかな夏季状況、及び外部が内部よりも寒い厳しい冬季状況の両方にさらされる真空断熱グレージングで、応力関連破損の全リスクが大幅に減少することになることを見出した。本発明の場合、非対称VIGは、低下した全誘発応力を有し、特定の実施形態において、応力は、冬季条件で、同等の対称VIGの応力よりも低いレベルまで低下する。同等の対称VIGは、第1及び第2のガラスシートの厚さが同じであることを除いて、全ての点で、特に、長さ、幅及び全厚の外部寸法の点で同一である。対称VIGは、市場で十分に確立されており、現場で新しい開発のための基準を当然形成する。対称VIGは、冬季条件で、最高結合誘発応力レベルに一般的に達することが知られている。従って、同等の対称VIGの最大結合誘発応力レベルは、達せられるのが冬季条件であろうと夏季条件であろうと、非対称VIGとの比較のために有用な基準値を形成する。本発明の特定の実施形態において、冬季条件及び夏季条件の両方における非対称VIGの全誘発応力値は、同等の対称VIGによって夏季条件又は冬季条件で許容される最大誘発応力レベルよりも低い。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、長手方向軸X及び垂直軸Zによって規定される平面Pに沿って延在し、長手方向軸Xに沿って測定される幅W、及び垂直軸Zに沿って測定される長さLを有する真空断熱グレージングユニットに関する。真空断熱グレージングユニットの長さLは、300mm~4000mmであり(300mm≦L≦4000mm)、真空断熱グレージングユニットの幅Wは、300mm~1500mmである(300mm≦W≦1500mm)。本発明の特定の好ましい実施形態において、応力を更に減らすために、Lは、300mm~3000mmである。真空断熱グレージングユニットは、
a.厚さZ1及びエネルギー吸収率EA1を有する第1のガラス板と、
b.厚さZ2及びエネルギー吸収率EA2を有する第2のガラス板と、
c.Z1は、5mm以上であり、
d.第1のガラス板の厚さZ1と第2のガラス板の厚さZ2の間の厚さ差ΔZは、1mm以上であり(ΔZ=Z1-Z2≧1mm)、
e.第1のガラス板と第2のガラス板の間に位置決めされ、第1のガラス板と第2のガラス板の間の距離を維持し、ピッチλを有する配列を形成する離散スペーサーのセットであって、ピッチλは、10mm~35mmである(10mm≦λ≦35mm)離散スペーサーのセットと、
f.第1及び第2のガラス板の周囲にわたって第1のガラス板と第2のガラス板の間の距離を密封する気密接合シール(4)と、
g.第1及び第2のガラス板及び離散スペーサーのセットによって規定され、気密接合シールによって密閉されている内部体積Vであって、0.1ミリバール(mbar)未満の絶対圧力の真空がある内部体積Vと、
h.第1のガラス板の内部体積に面する面の上の多くても0.4の放射率を有する赤外反射塗膜と
を含む。
【0013】
慣例によって、断熱グレージングユニットの板面の位置を説明するために、外側に面する板面(位置1)から開始し、内側に面する板面(二重グレージングにおける位置4)に向かう2つ以上のガラス板の面に番号を付ける。本発明の真空断熱グレージングユニットのために、VIGの板面の番号付けを、VIGを追加ガラス板と組み合わせる実施形態でも維持する。更に、厚さを、平面Pに垂直な方向で測定する。本発明のために、ガラスの厚さを、ミリメートル単位に四捨五入する。
【0014】
本発明の真空断熱グレージングユニットは、内部体積の方へ向かう第1の外ガラス板にある位置2における赤外反射塗膜を持つ。外ガラス板と内ガラス板との間のエネルギー吸収の重み付け差ΔEAが、多くても0.0033ΔZ2/mm2-0.0468Z/mm+0.7702である場合(つまり、ΔEA≦0.0033ΔZ2/mm2-0.0468ΔZ/mm+0.7702である場合)(但し、ΔEA=EA1-2*EA2)、低い全誘発応力が得られる。
【0015】
実施形態の他の態様及び利点は、記載の実施形態の原理を一例として示す添付図面と併せて下記の詳細な説明から明白になるであろう。
【0016】
これより、本発明のこの態様及び他の態様について、本発明の例示的な実施形態を示す添付図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態による非対称真空断熱グレージングユニットの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の目的は、外部環境と内部環境との間の高い正及び負の温度差にさらされた場合に熱的に誘発される応力が低く、断熱性を与え、寿命にわたって非常に持続可能であり、効率的でコスト効率の高い方法で製造可能な真空断熱グレージングユニット(以下、VIGと呼ばれる)を提供することにある。
【0019】
特に、本発明の目的は、高性能断熱又は太陽光制御、及び内部環境と外部環境との間の温度差及び大気圧の組み合わせによって誘発される応力抵抗性の改善を示す真空断熱グレージングユニット(以下、VIGと呼ばれる)を提供することにある。
【0020】
これらの目的は、非対称であり、即ち、第1のガラス板が第2のガラス板よりも厚く(Z1>Z2)、長さ(L)の範囲及び幅(W)の範囲を含む特定のサイズ、スペーサー間の特定の間隔(λ)、及び第2のガラス板の特定の厚さ(Z2)によって慎重に寸法決定され、第1のガラス板は、内部体積に面する赤外反射塗膜を有する真空断熱グレージングユニットが、第1及び第2のガラス板のエネルギー吸収の重み付け差に関する下記の条件を満たす場合に実現される。
ΔEA≦0.0033ΔZ2/mm2-0.0468ΔZ/mm+0.7702(但し、ΔEA=EA1-2*EA1)であり、
300mm≦L≦4000mmであり、
300mm≦W≦1500mmであり、
Z1≧5mmであり、Z2≧3mmであり、
ΔZ=Z1-Z2≧1mmであり、
10mm≦λ≦35mmである。
【0021】
建物の外側に面するようになっている第1のガラス板が厚ければ厚いほど、建物の内側に面するようになっている第2のガラス板は薄い。異なる厚さのこのような組み合わせは、位置1における第1の赤外反射塗膜及び位置2又は3における第2の赤外反射塗膜も用いて、冬季状況に関する応力を改善する。驚いたことに、夏季状況でも、位置2に赤外反射塗膜を持つこのような非対称VIGで、低誘発応力が得られる。これを実現するために、VIGの限界寸法を考慮して、第1及び第2のガラス板のエネルギー吸収率レベルを適合させることが重要であると実際に分かった。
【0022】
本発明は、特定の距離(典型的に、50μm~1000μm、好ましくは50μm~500μm、より好ましくは50μm~150μmの範囲)だけ離れて上記のガラス板を保持する離散スペーサーのセットを介して一緒に結合されている第1のガラス板及び第2のガラス板を典型的に含む真空断熱グレージングユニットに関する。これらのガラス板の間に、内部空間は、少なくとも1つの第1の空洞を含み、この空洞に、0.1ミリバール(mbar)未満の絶対真空があり、この空間は、この内部空間の周りのガラス板の周囲に配置された周辺気密接合シールで密閉されている。本発明の場合、スペーサーのピッチは、任意の所与のスペーサーを最近接スペーサーから隔てる最短距離を意味するものと理解される。好ましくは、スペーサーは、規則的なパターン(例えば、正方形、六角形、又は三角形のパターン)で、間隔を置いて配置される。
【0023】
図1に例示のように、真空断熱グレージングユニット(10)は、長手方向軸X及び垂直軸Yによって規定される平面Pに沿って延在する。
本発明のVIGは、
a.内板面(12)及び外板面(13)を有し、厚さZ
1を有する第1のガラス板(1)と、内板面(22)及び外板面(23)を有し、厚さZ
2を有する第2のガラス板(2)と、但し、厚さ(mm)は平面Pに垂直な方向に最も近くに測定される、
b.第1のガラス板と第2のガラス板の間に位置決めされ、第1のガラス板と第2のガラス板の間の距離を維持する離散スペーサー(3)のセットと、
c.第1のガラス板と第2のガラス板の周囲にわたって第1のガラス板と第2のガラス板の間の距離を密封する気密接合シール(4)と、
d.第1及び第2のガラス板及び離散スペーサーのセットによって規定され、気密接合シールによって密閉されている内部体積Vであって、0.1ミリバール(mbar)未満の絶対圧力の真空がある内部体積Vと
を含む。
【0024】
本発明の真空断熱グレージングユニットは、以下、「非対称VIG」と呼ばれる。
【0025】
VIGの内部で、第1のガラス板は、内板面(12)及び外板面(13)を有する。第2のガラス板は、内板面(22)及び外板面(23)を有する。内板面は、非対称VIGの内部体積Vに面している。外板面は、例えば、建物の外側及び内側に面している。
【0026】
図1に例示のように、本発明の非対称VIGの第1のガラス板(1)の内板面(12)に、赤外反射塗膜(以下、IR-塗膜と呼ばれる)を設ける。
【0027】
本発明のIR-塗膜(5)は、0未満の放射率を有する。特に、0.1未満、0.05未満、又は更に0.04未満の放射率を有してもよい。本発明のIR-塗膜は、金属ベースの低放射IR-塗膜を含んでもよく、これらの塗膜は典型的に、赤外放射反射材料に基づく1つ又は複数(例えば、2つ、3つ又は4つ)の機能層、及び少なくとも2つの誘電体塗膜を含む薄層のシステムであり、各機能層は、誘電体塗膜で囲まれている。本発明のIR-塗膜は、特に、少なくとも0.010の放射率を有してもよい。機能層は一般的に、数ナノメートル(主に、約5nm~20nm)の厚さを有する銀の層である。誘電体層に関して、誘電体層は透明であり、各誘電体層は従来、金属酸化物及び/又は窒化物の1つ又は複数の層から構成されている。これらの異なる層を、例えば、真空蒸着技法(例えば、「マグネトロンスパッタリング」とより一般的に呼ばれる磁場支援陰極スパッタリング)によって蒸着させる。誘電体層に加えて、各機能層を、障壁層によって保護してもよく、又は湿潤層上の蒸着によって改善してもよい。
【0028】
本発明におけるIR-塗膜は、例えば、大きいグレージング面を有する密閉空間における過熱のリスクを減らすことができる、従って、夏に空調に対して考慮されるべき電力負荷を減らすことができる太陽光防止又は太陽光制御特性を有してもよい。この場合、グレージングは、最小限の量の全太陽エネルギー放射線が通過することができる必要があり、即ち、最低限の日射透過率(SF又はg)を有する必要がある。建物内で十分なレベルの照明を与えるために、グレージングは、特定のレベルの光透過(LT)を保証することが非常に望ましいことが多い。これらの多少矛盾する要件は、日射透過率に対する光透過の比によって規定される高い感度(S)を有するグレージングユニットを得る要望を示す。更に、本発明におけるIR-塗膜は、より長い波長の赤外線放射を介して建物の熱損失を減らすように調整された低放射率を有する断熱塗膜であってもよい。従って、IR-塗膜は、グレージング面の断熱性を改善し、寒冷期間におけるエネルギー損失及び暖房コストを減らす。
【0029】
特定の実施形態
ガラス板厚、ピッチ範囲及び寸法の組み合わせの下記の特定の実施形態は、同じ全厚の同等の対称真空断熱グレージングにおいて夏季又は冬季条件で誘発される最大結合応力レベルよりも低い、冬季及び夏季条件の両方における結合誘発応力レベルを与えると分かった。EA1及びEA2は、第1及び第2のガラス板のエネルギー吸収率をそれぞれ示す。
【0030】
特に、夏季条件における本発明の応力抵抗性を、同等の対称VIGと比較して評価する。本発明のために、非対称VIGの同等の対称VIGは、同じ全厚Z1+Z2(但し、第1のガラス板の厚さは、第2のガラス板の厚さと同じである(Z1=Z2))を有するW、L、λの全ての値を有するVIGである。
【0031】
特に、第1及び第2のガラス板のエネルギー吸収の重み付け差に関する以下の条件(ΔEA≦0.0084ΔZ2/mm2-0.1545ΔZ/mm+0.6966(但し、ΔEA=EA1-2*EA2である)、300mm≦L≦3000mm、300mm≦W≦1500mm、Z1≧5mm、ΔZ=Z1-Z2≧1mmである)を満たす場合、Z2=3mmであり、10mm≦λ≦25mmである真空断熱グレージングに対して、冬季及び夏季条件の両方で、同じ全厚の同等の対称真空断熱グレージングで誘発される最大結合応力レベルよりも低い結合誘発応力レベルに達する。
【0032】
特に、第1及び第2のガラス板のエネルギー吸収の重み付け差に関する条件(ΔEA≦-0.0214ΔZ/mm+0.5696(但し、ΔEA=EA1-2*EA2である)、300mm≦L≦3000mm、300mm≦W≦1500mm、Z1≧5mm、ΔZ=Z1-Z2≧1mmである)を満たす場合、Z2=4mmであり、10mm≦λ≦25mmである真空断熱グレージングに対して、冬季及び夏季条件の両方で、同じ全厚の同等の対称真空断熱グレージングで誘発される最大結合応力レベルよりも低い結合誘発応力レベルに達する。
【0033】
特に、第1及び第2のガラス板のエネルギー吸収の重み付け差に関する条件(ΔEA≦0.0033ΔZ2/mm2-0.0468ΔZ/mm+0.7434(但し、ΔEA=EA1-2*EA2である)、300mm≦L≦3000mm、300mm≦W≦1500mm、Z1≧5mm、ΔZ=Z1-Z2≧1mmである)を満たす場合、Z2=5mmであり、10mm≦λ≦35mmである真空断熱グレージングに対して、冬季及び夏季条件の両方で、同じ全厚の同等の対称真空断熱グレージングで誘発される最大結合応力レベルよりも低い結合誘発応力レベルに達する。
【0034】
特に、第1及び第2のガラス板のエネルギー吸収の重み付け差に関する条件(ΔEA≦0.0033ΔZ2/mm2-0.0468ΔZ/mm+0.7702(但し、ΔEA=EA1-2*EA2である)、300mm≦L≦3000mm、300mm≦W≦1500mm、Z1≧5mm、ΔZ=Z1-Z2≧1mmである)を満たす場合、Z2=6mmであり、10mm≦λ≦35mmである真空断熱グレージングに対して、冬季及び夏季条件の両方で、同じ全厚の同等の対称真空断熱グレージングで誘発される最大結合応力レベルよりも低い結合誘発応力レベルに達する。
【0035】
特に、第1及び第2のガラス板のエネルギー吸収の重み付け差に関する条件(ΔEA≦-0.0308ΔZ/mm+0.5294(但し、ΔEA=EA1-2*EA2である)、300mm≦L≦3000mm、300mm≦W≦1500mm、Z1≧5mm、ΔZ=Z1-Z2≧1mmである)を満たす場合、Z2=4mmであり、25mm≦λ≦30mmである真空断熱グレージングに対して、冬季及び夏季条件の両方で、同じ全厚の同等の対称真空断熱グレージングで誘発される最大結合応力レベルよりも低い結合誘発応力レベルに達する。
【0036】
本発明の一実施形態において、非対称VIGの第1のガラス板の厚さZ1は、5mm以上(Z1≧5mm)であってもよく、好ましくは、6mm以上(Z1≧6mm)、好ましくは8mm以上(Z1≧8mm)であってもよい。典型的に、第1のガラス板の厚さZ1は、12mm以下、好ましくは10mmである。別の実施形態において、非対称VIGの第2のガラス板の厚さZ2は、典型的に、3mm以上(Z2≧3mm)であってもよく、好ましくは、4mm以上(Z2≧4mm)、好ましくは5mm以上(Z2≧5mm)であってもよい。典型的に、第2のガラス板の厚さZ2は、10mm以下、好ましくは8mm以下である。しかし、本発明の非対称VIGの機械抵抗を改善するために、第2のガラス板の厚さZ2を最小限にしておくことが好ましい。
【0037】
本発明の別の実施形態において、本発明は、内部空間のうち少なくとも1つで部分真空を生成するという条件で、断熱又は非断熱内部空間に境界をつけるガラス板(2つ又は3つ以上)を含む任意のタイプのグレージングユニット(多重グレージングユニットとも呼ばれる)にも当てはまる。従って、一実施形態において、本発明の非対称VIGの機械的性能を向上させるために、第3の追加ガラス板を、周辺スペーサー棒を介してVIGの周囲に沿って第1及び第2のガラス板の外板面(13及び/又は23)のうち少なくとも1つに連結し、周縁シールによって密封されている断熱空洞を生成することができる。第3のガラス板と外板面のうち少なくとも1つとの間に特定の距離で維持されるこの周辺スペーサー棒は、第1及び第2のガラス板のうち1つに面する。典型的に、このスペーサー棒は、乾燥剤を含み、6mm~20mm、好ましくは9mm~15mmの厚さを典型的に有する。一般的に、この第2の内部体積に、空気、乾燥空気、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、六フッ化硫黄(SF6)、二酸化炭素、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される所定の気体を充填する。この所定の気体は、熱伝達を防止するのに効果的であり、及び/又は、音響透過を減らすために使用されてもよい。
【0038】
内部空間及び外部空間を隔てる仕切り内の開口部を密閉するために非対称VIGを使用する場合、第3のガラス板は外部空間に面することが好ましい。更に、表面のうち少なくとも1つの上の少なくとも熱分解TCOベースの塗膜を第3のガラス板に設けることが好ましい。このような特定のグレージングユニットは、放射率性能を向上させ、及び/又は凝縮の形成を減らしながら、より高い機械的性能を与える。特に、安全上の理由で、内部環境に面する第2のガラス板の外面(23)を、積層組立体を形成する少なくとも1つのポリマー中間層によって少なくとも1つのガラスシートに更に積層してもよい。
【0039】
本発明の一実施形態において、安全上及び安全保護の理由で、第1及び第2のガラス板の外板面(13及び/又は23)のうち少なくとも1つを、積層組立体を形成する少なくとも1つのポリマー中間層によって少なくとも1つの追加ガラスシートに更に積層してもよい。
【0040】
積層組立体の内部で、好ましくは、少なくとも1つの追加ガラスシートは、0.5mm以上(ZS≧0.5mm)の厚さZSを有する。厚さは、平面Pに垂直な方向で測定される。少なくとも1つのポリマー中間層は、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリイソブチレン(PIB)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステル、共重合ポリエステル、組立体ポリアセタール、シクロオレフィンポリマー(COP)、イオノマ-、及び/又は、ガラス積層体を製造する当技術分野で知られている紫外線活性接着剤などを含む群から選択される材料を含む透明又は半透明ポリマー中間層である。その上、これらの材料の任意の適合する組み合わせを用いた混合材料も適している。
【0041】
窓又はドアの性能を向上させるために、防音積層ガラスを有する強化防音材は、本概念にも適合する。このような場合、ポリマー中間層は、2つのポリビニルブチラール膜の間に挿入された少なくとも1つの追加防音材料を含む。エレクトロクロミック、サーモクロミック、フォトクロミック又は太陽光発電素子を有するガラス板は、本発明にも適合する。
【0042】
本発明の非対称VIGの第1及び第2のガラス板を、フロート透明、超透明又は着色ガラス技術の中から選択することができる。ここで、用語「ガラス」は、任意のタイプのガラス又は同等の透明材料(例えば、無機ガラス又は有機ガラス)を意味するものとする。使用される無機ガラスは関係なく、1つ又は複数の既知のタイプのガラス(例えば、ソーダ石灰シリカ、アルミノケイ酸塩又はホウケイ酸塩、結晶及び多結晶ガラス)であってもよい。ガラス板は、フローティング工程、引き抜き工程、圧延工程、又は溶融ガラス組成から開始するガラス板を製造するために知られている任意の他の工程によって得られる。任意選択的に、ガラス板を、エッジ研磨することができる。エッジ研磨は、鋭いエッジを、真空断熱グレージングで、特にグレージングのエッジと接触することがある人にとって非常に安全である滑らかなエッジにする。好ましくは、本発明によるガラス板は、ソーダ石灰シリカガラス、アルミノケイ酸塩ガラス又はホウケイ酸塩ガラスの板である。より好ましくは、より低い製造コストの理由で、本発明によるガラス板は、ソーダ石灰シリカガラスである。典型的に、本発明の第1及び第2のガラス板は、焼鈍ガラス板である。好ましくは、本発明の非対称VIGの第1及び第2のガラス板に対する組成は、ガラスの全重量に対して表される重量パーセントで下記の成分を含む(表1、組成A)。より好ましくは、ガラス組成(表1、組成B)は、ガラスの全重量に対して表される重量パーセントで下記の成分を含む組成の基材ガラスマトリックスを有するソーダ石灰ケイ酸塩ガラスである。
【0043】
【0044】
本発明の非対称VIGの第1及び第2のガラス板に対する他の特定のガラス組成は、ガラスの全重量に対して表される重量パーセントで表2の下記の成分を含む。
【0045】
【0046】
特に、本発明による組成に対する基材ガラスマトリックスの例は、PCT特許出願の国際公開第2015/150207A1号パンフレット、国際公開第2015/150403A1号パンフレット、国際公開第2016/091672A1号パンフレット、国際公開第2016/169823A1号パンフレット及び国際公開第2018/001965A1号パンフレットにおける出版物に記載されている。
【0047】
第2及び第1のガラス板は、同じ寸法又は異なる寸法及び形状、従って、段付きVIGであることができる。本発明の好ましい実施形態において、第1及び第2のガラス板は、第1及び第2の周縁をそれぞれ含み、第1の周縁は第2の周縁から埋め込まれ、又は第2の周縁は第1の周縁から埋め込まれる。この構成により、気密接合シールの強度を強化することができる。
【0048】
一実施形態において、より高い機械的性能をVIGに与えるために、及び/又はVIGの安全性を更に向上させるために、本発明の第1及び/又は第2のガラス板に圧縮応力を熱的に又は化学的に加えることが考えられる。この場合、熱誘発負荷に対する同じ抵抗を与えるために、第1及び第2のガラス板の両方を同じ圧縮応力印加処理によって処理することが必要とされる。従って、圧縮応力印加処理がガラス板で行われる場合、第1のガラス板及び第2のガラス板は両方とも、熱強化ガラス板であること、又は第1のガラス板及び第2のガラス板は両方とも、熱的に強化されたガラス板であること、又は第1のガラス板及び第2のガラス板は両方とも、化学的に強化されたガラス板であることが必要とされる。
【0049】
圧縮された状態でガラス面を置き、張力がかかった状態でガラスコアを置く制御加熱及び冷却の方法を用いて、熱強化ガラスを熱処理する。この熱処理方法は、焼鈍ガラスよりも大きく、熱的に強化された安全ガラスよりも小さい曲げ強度を有するガラスを与える。
【0050】
圧縮された状態でガラス面を置き、張力がかかった状態でガラスコアを置く制御高温加熱及び急速冷却の方法を用いて、熱的に強化されたガラスを熱処理する。このような応力により、ガラスに衝撃が与えると、ガラスは、ギザギザの破片に裂ける代わりに、壊れて小さい粒状粒子になる。粒状粒子は、居住者を負傷させたり物体を損傷するおそれが少ない。
【0051】
ガラス製品の化学強化は、ガラスの表面層におけるより小さいアルカリナトリウムイオンを、より大きいイオン(例えば、アルカリカリウムイオン)と交換することを含む、熱誘発イオン交換である。より大きいイオンが、ナトリウムイオンによって以前に占有された小さい場所に「食い込む」ので、表面圧縮応力がガラスで増加する。このような化学処理は一般的に、温度及び時間の正確な制御で、より大きいイオンの1つ又は複数の溶融塩を含むイオン交換溶融槽にガラスを浸すことによって実行される。例えば、Asahi Glass Co.からの製品範囲Dragon Trail(登録商標)、又はCorning Inc.からの製品範囲Gorilla(登録商標)からのアルミノケイ酸塩タイプのガラス組成は、化学焼き戻しに対して非常に効果的であることも知られている。
【0052】
図1に示すように、本発明の真空断熱グレージングユニットは、内部体積Vを維持するように第1のガラス板と第2のガラス板(1、2)の間に挟まれた柱とも呼ばれる複数の離散スペーサー(3)を含む。本発明に従って、離散スペーサーは、第1のガラス板と第2のガラス板の間に位置決めされ、第1のガラス板と第2のガラス板の間の距離を維持し、10mm~35mmのピッチλ(10mm≦λ≦35mm)を有する配列を形成する。ピッチは、離散スペーサー間の間隔を意味する。好ましい実施形態において、ピッチは、20mm~35mmである(20mm≦λ≦35mm)。本発明内の配列は典型的に、正三角形、正方形又は正六角形の方式、好ましくは正方形の方式に基づく規則的な配列である。
【0053】
離散スペーサーは、様々の形状(例えば、円筒形、球形、糸状、砂時計形、C形、十字形、角柱形など)を有することができる。小さい柱、即ち、一般的に、外周によって規定されるガラス板に対する接触面(5mm2以下、好ましくは3mm2以下、より好ましくは1mm2以下)を有する柱を使用することが好ましい。これらの値は、審美的に個別的であるけれども、優れた機械抵抗を示し得る。離散スペーサーは典型的に、高温処理(例えば、燃焼及び焼き付け)に耐えることができ、ガラス板を製造した後に気体をほとんど放出しない、ガラス板の表面から加えられた圧力に対して耐えられる強度を有する材料で構成されている。このような材料は、好ましくは、硬質金属材料、石英ガラス又はセラミック材料、特に、金属材料(例えば、鉄、タングステン、ニッケル、クロム、チタン、モリブデン、炭素鋼、クロム鋼、ニッケル鋼、ステンレス鋼、ニッケルクロム鋼、マンガン鋼、クロムマンガン鋼、クロムモリブデン鋼、ケイ素鋼、ニクロム、ジュラルミンなど)、又はセラミック材料(例えば、コランダム、アルミナ、ムライト、マグネシア、イットリア、窒化アルミニウム、窒化ケイ素など)である。
【0054】
図1に示すように、本発明の真空断熱グレージング(10)のガラス板(1、2)の間に画定される内部体積Vを、この内部空間の周りのガラス板の周囲に配置された気密接合シール(4)で密閉する。この気密接合シールは、不透過性で硬質である。例えば、ここで使用され、特に指示がない限り、用語「不透過性」は、空気、又は大気に存在する任意の他の気体に対して不透過性であることを意味するものとする。
【0055】
様々な気密接合シール技術が存在する。第1のタイプのシール(最も普及している)は、グレージングユニットのガラスパネルのガラスの融点よりも融点が低いはんだガラスに基づくシールである。このタイプのシールの使用は、はんだガラスを実施するのに必要な熱サイクルによって劣化しない層、即ち、多分250℃もある高い温度に耐えることができる層に低放射率層の選択を制限する。更に、このタイプのはんだガラスベースのシールは、わずかしか変形可能でないので、吸収されるべき大きい温度差をこのパネルに受けた場合、グレージングユニットの内側ガラスパネルとグレージングユニットの外側ガラスパネルとの間の膨張差の影響を許容しない。従って、非常に大きい応力が、グレージングユニットの周囲に生成され、グレージングユニットのガラスパネルの破損を引き起こすことがある。
【0056】
第2のタイプのシールは、金属シール、例えば、はんだ付け可能材料(例えば、軟質スズ合金はんだ)の層で少なくとも部分的に覆われた結合下層を介してグレージングユニットの周囲にはんだ付けされた薄い厚さ(<500μm)の金属片を含む。この第1のタイプのシールに対するこの第2のタイプのシールの1つの大きい利点は、2つのガラスパネルの間に生成される膨張差を部分的に吸収するために、部分的に変形させることができることである。ガラスパネルによって様々なタイプの結合下層がある。
【0057】
特許出願の国際公開第2011/061208A1号パンフレットは、真空断熱グレージングユニットに対する第2のタイプの周辺不透過性シールの実施形態の1つの例を記載する。この実施形態において、シールは、ガラス板の周囲に設けられた接着バンドにはんだ付け可能材料によってはんだ付けされた、例えば銅製の金属片である。
【0058】
本発明の非対称VIG内で第1及び第2のガラス板及び離散スペーサーのセットによって規定され、気密接合シールによって密閉されている内部体積Vの内部に、0.1ミリバール(mbar)未満、好ましくは0.01ミリバール(mbar)未満の絶対圧力の真空が生成される。
【0059】
本発明の非対称VIGの内部体積は、気体、例えば、空気、乾燥空気、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、六フッ化硫黄(SF6)、二酸化炭素、又はこれらの組み合わせ(但し、これらに限定されない)を含むことができる。内部体積内の気体の存在のために、この従来の構造を有する断熱パネルを通るエネルギーの伝達は、単一ガラス板と比較して減少する。
【0060】
内部体積の任意の気体を送出してもよく、従って、真空グレージングユニットを製造する。真空断熱グレージングユニットを通るエネルギー伝達は、真空によって大幅に減少する。グレージングユニットの内部空間に真空を生成するために、内部空間を外部と連通させる中空ガラス管を一般的に、ガラス板のうち1つの主面に設ける。従って、ガラス管の外端に接続されたポンプによって内部空間に存在する気体を送出することによって、部分真空を内部空間に生成する。
【0061】
真空断熱グレージングユニットで所与の真空レベルを当分の間維持するために、ゲッターをグレージングユニットで使用してもよい。具体的には、グレージングパネルを構成するガラス板の内面は、ガラスに予め吸収される気体を時間と共に放出してもよく、これによって、真空断熱グレージングパネルにおける内圧を増加させ、従って、真空性能を低下させる。一般的に、このようなゲッターは、ジルコニウム、バナジウム、鉄、コバルト、アルミニウムなどの合金で構成され、薄層(厚さが数ミクロン)の形、又は見えないように(例えば、外部エナメル、又は周辺不透過性シールの一部によって隠される)、グレージングパネルのガラス板の間に置かれたブロックの形で付着される。ゲッターは、室温で不動態化層をゲッターの表面に形成する。従って、不動態化層を消失させ、その結果、合金ゲッタリング特性を活性化するために、加熱される必要がある。ゲッターは、「熱活性化される」と言われる。
【0062】
【実施例】
【0063】
破損リスクを評価するために、内部体積Vにおける真空による大気圧応力、及びグレージングの両側の温度差による熱誘発応力に起因する結合応力を計算した。
【0064】
VIGの2つの板の間に維持される真空のために、大気圧は、各柱位置におけるVIGのガラス板の外面で永久引張応力を引き起こす。小さい柱に対して、ガラス板の外面で柱によって誘発される引張応力は、柱の外周のサイズと無関係であることが、当業者によって知られている。小さい柱は、一般的に、柱の外周によって規定されるガラス板に対する接触面(5mm2以下、好ましくは3mm2以下、より好ましくは1mm2以下)を有する柱を意味する。
【0065】
それらの場合、及び正三角形、正方形又は正六角形の方式に基づく規則的な配列の場合、引張応力とも呼ばれるこの大気圧誘発応力を、次式σp≦0.11×λ2/Z2[MPa](但し、λ[m]及びZ[m]はそれぞれ、スペーサー間のピッチ、及びガラス板の厚さである)によってガラス板に対して計算することができる。「ピッチ」は、任意のスペーサーを隣接スペーサーから隔てる最短距離を意味するものと理解される。特に、正方形に基づく規則的な配列の場合、引張応力は、最大であり、従って、次式σp=0.11×λ2/Z2[MPa]に従う。
【0066】
最大大気圧応力(σp1及びσp2)を、VIGの第1及び第2のガラスシートの各々に対して計算する。
【0067】
VIGのガラス板の外面に対する熱誘発引張応力は、第1のガラス板(1、T1)と第2のガラス板(2、T2)との間の温度差があるとすぐに、発生し、T1とT2との間の差の増加に伴って増加する。温度差(ΔT)は、第1のガラス板(1)に対して計算される平均温度T1と第2のガラス板(2)に対して計算される平均温度T2との間の絶対差である。ガラス板の平均温度を、例えば、当業者によって知られている数値シミュレーションから計算してもよい。本発明の場合、ISO15099と一致する米国窓割り評価協議会(American National Fenestration Rating Council)NFRCによって提案された方法に基づいている計算ソフトウェア「Window 7.4」を用いて、2つのガラス板の間の温度差を計算した。ガラス板間のこのような絶対温度差が30℃に達する場合、更に、絶対温度差が過酷な条件で40℃を超える場合、熱誘発応力は、VIGの破損を引き起こすことがある。内部環境の温度は典型的に、20℃~25℃である一方、外部環境の温度は、冬に-20℃から夏に+35℃にまで及ぶことがある。従って、内部環境と外部環境との間の温度差は、過酷な条件で40℃を超えることがある。従って、第1のガラス板(1)に対して計算される平均温度T1と第2のガラス板(2)に対して計算される平均温度T2との間の温度差(ΔT)も、40℃を超えることがある。数値シミュレーションを使用して、VIGの各ガラス板の外面に誘発される最大熱応力σTを計算する。商用ソフトウェアAbaqus2017(ABAQUSで以前言及された)による有限要素解析(FEA)モデルは、異なる温度条件にさらされた場合にVIGの挙動をシミュレートするように構成されている。ガラス厚の上の5つの統合点を有するC3D8R要素を用いてガラス板を噛み合わせた状態で、計算を達成した。使用される全体的なメッシュサイズは、1cmであった。本発明のΔTを達成するために、初期及び均一温度を両方のガラス板に与え、次に、均一温度の変化をガラス板の一方に与えながら、他方のガラス板を初期温度に維持する。2つの接触ガラス面の等変位を強要するために、機械的連結を、2つのガラス板の間に与えた。組立体の剛体運動を防止するために、他の境界条件を設定している。自由な非拘束エッジを有する全グレージングに対して、計算を実行した。
【0068】
本発明のために使用される厳しい冬季温度条件は、外部と内部との間の最大温度差(40℃)を考えると、-20℃の外部空気温度、20℃の内部空気温度であった。
【0069】
熱誘発応力及び大気圧応力はガラス板で同時に発生するので、熱誘発応力及び大気圧誘発応力の結合である結合応力(σc)を、VIGを寸法決定する場合に考慮する必要があると、発明者は分かった。用語「結合誘発応力」又は「誘発応力の結合」は、熱誘発応力及び大気圧誘発応力の合計(σc=σp+σT)を意味するものとする。結合応力を、選択冬季条件σcw及び選択夏季条件σcsに対して計算することができる。
【0070】
冬季条件で、より厚い第1のガラス板及びより薄い第2のガラス板を有するVIGが非対称である場合、第1のガラス板の結合冬季応力(σcw1=σp1+σTw1)と第2のガラス板の結合冬季応力(σcw2=σp2+σTw2)との間の最高値σcwmax=max(σcw1、σcw2)である最高結合冬季応力σcwmaxが減少すると分かった。特に、下記の寸法基準を守る非対称VIGに対して、最高結合冬季応力は、同じ全厚を有する同等の対称VIGの最高結合冬季応力よりも低い。
300mm≦L≦4000mm
300mm≦W≦1500mm
Z1≧5mm、Z2≧3mm
ΔZ=Z1-Z2≧1mm、及び
10mm≦λ≦35mm
【0071】
本発明のために使用される穏やかな夏季温度条件は、32℃の外部空気温度、24℃の内部空気温度、及び783W/m2の太陽束であった。
【0072】
夏季条件で、最高結合夏季応力σcsmaxは、第1のガラス板の結合夏季応力(σcs1=σp1+σTs1)と第2のガラス板の結合夏季応力(σcs2=σp2+σTs2)との間の最高値(σcsmax=max(σcs1、σcs2))である。夏季条件で、許容できるために、非対称VIGにおける最高結合夏季応力σcsmaxは、同等の対称VIGのσcwmax又はσcsmaxである最大結合誘発応力以下であるべきであると分かった。この関係を守る場合、厳しい冬季条件及び穏やかな夏季条件の両方における結合大気圧及び熱誘発応力による破損リスクは、同等の対称VIGの場合よりも非対称VIGの場合の方が高くない。
【0073】
第1及び第2のガラス板のエネルギー吸収率、及びL、W及びλのパラメータ範囲の異なるセットに対する第1及び第2のガラス板の厚さのバランスをとることによって、この結合誘発応力限界を守る非対称VIGを実行することができると分かった。
【0074】
本発明の下記の特定の実施形態A~Eにおいて、非対称VIGは、下記の関係を守る。
σcw2(非対称VIG)<σcw2(同等の対称VIG)、及び
σcs1(非対称VIG)≦σcw2(同等の対称VIG)
【0075】
実施形態A: 第1及び第2のガラス板のエネルギー吸収の重み付け差に関する以下の条件(ΔEA≦0.0084ΔZ2/mm2-0.1545ΔZ/mm+0.6966(但し、ΔEA=EA1-2*EA2)(但し、300mm≦L≦3000mm、300mm≦W≦1500mm、Z1≧5mm、ΔZ=Z1-Z2≧1mmである))を満たす場合、Z2=3mmであり、10mm≦λ≦25mmである非対称VIG。
【0076】
実施形態B: 第1及び第2のガラス板のエネルギー吸収の重み付け差に関する条件(ΔEA≦-0.0214ΔZ/mm+0.5696(但し、ΔEA=EA1-2*EA2)(但し、300mm≦L≦3000mm、300mm≦W≦1500mm、Z1≧5mm、ΔZ=Z1-Z2≧1mmである))を満たす場合、Z2=4mmであり、10mm≦λ≦25mmである非対称VIG。
【0077】
実施形態C: 第1及び第2のガラス板のエネルギー吸収の重み付け差に関する条件(ΔEA≦0.0033ΔZ2/mm2-0.0468ΔZ/mm+0.7434(但し、ΔEA=EA1-2*EA2)(但し、300mm≦L≦3000mm、300mm≦W≦1500mm、Z1≧5mm、ΔZ=Z1-Z2≧1mmである))を満たす場合、Z2=5mmであり、10mm≦λ≦35mmである非対称VIG。
【0078】
実施形態D: 第1及び第2のガラス板のエネルギー吸収の重み付け差に関する条件(ΔEA≦0.0033ΔZ2/mm2-0.0468ΔZ/mm+0.7702(但し、ΔEA=EA1-2*EA2)(但し、300mm≦L≦3000mm、300mm≦W≦1500mm、Z1≧5mm、ΔZ=Z1-Z2≧1mmである))を満たす場合、Z2=6mmであり、10mm≦λ≦35mmである非対称VIG。
【0079】
実施形態E: 第1及び第2のガラス板のエネルギー吸収の重み付け差に関する条件(ΔEA≦-0.0308ΔZ/mm+0.5294(但し、ΔEA=EA1-2*EA2)(但し、300mm≦L≦3000mm、300mm≦W≦1500mm、Z1≧5mm、ΔZ=Z1-Z2≧1mmである))を満たす場合、Z2=4mmであり、25mm≦λ≦30mmである非対称VIG。
【0080】
実際に、非対称VIGの第1及び第2のガラス板のエネルギー吸収率のこれらの限界は、結合応力レベルを所要限界にする第1及び第2のガラス板の温度差を引き起こすことを見出した。
【0081】
夏季条件の場合、ガラス板のエネルギー吸収率と得られる温度差との間に相関関係があると、発明者は分かった。VIGの第1のガラス板の内面に位置決めされた上述の塗膜の例に基づいて、下記の関係を確立した。
ΔT/℃=37.384×ΔEA+6.2068; ΔEA=EA1-2*EA2及びΔT=T1-T2
ガラス板がVIGにある場合のガラス板に対して、EN410:2011を参照して規格ISO15099に従って、ガラス板のエネルギー吸収率EAを判定する。EAの計算に対して、柱を考慮しない。
【0082】
これらの応力計算を、多くのガラス寸法、厚さ及び赤外反射塗膜に対して実行した。特に、旭硝子株式会社(Asahi Glass Company(AGC))によって商品化された下記の赤外反射塗膜(Stopray Ultra 50(U50)、Stopray Vision 50 (V50)、I-plus Top 1.1(I+)、Stopray Vision 40 (V40)、Stopray Vision 72及びEnergy N (EN))を使用した。これらの塗膜は全て、0.4未満の放射率を与える。計算に対して、グレージングを、全エッジで自由及び非拘束であると考える。
【0083】
大部分のガラス板は、ソーダ石灰透明ガラスPlanibel Clearlite(CL)を使用した。幾つかのガラス板は、ソーダ石灰超透明低鉄ガラスPlanibel Clearvision(CV)、及びDark Grey Glass(DG)を使用した。
【0084】
比較例に、「C.Ex.」とラベルを付け、本発明による実施例に、「Ex.」とラベルを付ける。
【0085】
実施例及び比較例において、ガラスシートの間の空間は、100μmであり、柱の配列は、規則的な正方形配列であり、サイズW×Lは、1.5m×3mである。
【0086】
【0087】
下記の表5は、上述の表4の実施例及び比較例に対して、本発明による最大許容ΔEA、及びそれぞれの実施例又は比較例の計算ΔEAを示す。比較例は、非常に高いΔEA値、従って、より高い破損リスクを示し、比較例のΔEA値は、本発明に従って許容されるΔEA値よりも高い。特に、実施例Ex.2~13は、対応する同等の対称真空断熱グレージングよりも低い破損リスクを示す。
【0088】
【0089】
下記の表6は、夏季条件及び冬季条件において実施例及び比較例で得られた誘発応力を示す。柱の上の第1又は第2のガラス板の圧力誘発応力をそれぞれ、σp1及びσp2で示す。冬季温度応力をそれぞれ、σTw1及びσTw2で示し、夏季温度応力をそれぞれ、σTs1及びσTs2で示す。結合夏季応力をそれぞれ、σcs1(σcs1=σp1+σTs1)及びσcs2(σcs2=σp2+σTs2)で示し、結合冬季応力をそれぞれ、σcw1(σcw1=σp1+σTw1)及びσcw2(σcw2=σp2+σTw2)で示す。最高結合冬季応力及び最高結合夏季応力をそれぞれ、σcwmax(σcwmax=max(σcw1+σcw2))及びσcsmax(σcsmax=max(σcs1+σcs2))で示す。夏季条件又は冬季条件で発生する最高結合誘発応力を、σcmaxで示す。全応力に対する測定単位は、MPaである。各実施例に対する最大結合応力値は、強調され、従って、σcmaxに対応する。
【0090】
下記の表6で分かるように、対称VIGにおいて、ほとんど例外なく、第2のガラス板の冬季条件で最高結合応力値に達する。任意の条件で達せられる最大応力値は、非対称VIGを同等の対称VIGと比較する基準点として役立つ。更に、より厚い第1のガラス板及びより薄い第2のガラス板を有するVIGが非対称である場合、最高結合冬季応力σcwmaxが減少すると分かった。特に、寸法基準(300mm≦L≦4000mm、300mm≦W≦1500mm、Z1≧5mm、Z2≧3mm、ΔZ=Z1-Z2≧1mm、及び10mm≦λ≦35mm)を守る非対称VIGに対して、最高結合冬季応力は、同じ全厚を有する同等の対称VIGの最高結合冬季応力よりも低い。
【0091】
更に、下記の表6で分かるように、夏季条件で、非対称VIGの最高結合夏季応力σcsmaxは、同等の対称VIGの最高結合夏季応力よりも高い。本発明の特定の実施形態、即ち、アスタリスクが付けられた実施例において、本発明の実施例における最高結合夏季応力σcsmaxは、許容できると分かった。最高結合夏季応力σcsmaxは、同等の対称VIGの最高結合応力(冬季又は夏季)、即ち、同等の対称VIGにおける第2のガラス板の結合冬季応力σcw2以下である。
【0092】
【国際調査報告】