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特表2022-526601ケラチン物質を処理するための剤の安定性の向上
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-25
(54)【発明の名称】ケラチン物質を処理するための剤の安定性の向上
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20220518BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20220518BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20220518BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
A61K8/25
A61K8/86
A61K8/891
A61Q5/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559136
(86)(22)【出願日】2020-02-05
(85)【翻訳文提出日】2021-10-04
(86)【国際出願番号】 EP2020052805
(87)【国際公開番号】W WO2020200543
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】102019204801.3
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】ヤイザー,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーザー,ガブリエレ
(72)【発明者】
【氏名】シューマッハー,ウルリケ
(72)【発明者】
【氏名】コロンコ,クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】レヒナー,トルステン
(72)【発明者】
【氏名】シェープゲンス,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ノヴォトニィ,マルク
(72)【発明者】
【氏名】マティアシク,カーステン
(72)【発明者】
【氏名】クリーナー,カロリーネ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB171
4C083AB172
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD162
4C083BB22
4C083BB24
4C083CC36
4C083DD06
4C083DD27
4C083DD28
4C083DD31
4C083EE26
4C083EE28
(57)【要約】
本発明の目的は、ケラチン物質、特にヒトの毛髪を処理するための方法であって、ケラチン物質に以下を塗布することを含む方法である:
・第1の組成物(A)であって、前記組成物(A)の総重量に対して、
(A1)10重量%未満の水、および
(A2)1以上の有機C-Cアルコキシシランおよび/またはそれらの縮合生成物を含む組成物、並びに
・第2の組成物(B)であって、
(B1)水、および
(B2)式(AG-I):
〔式中、
xは、0~800の整数を表し、
yは、0~800の整数を表し、
Ra、Rbは、互いに独立して、水素原子、C-Cアルキル基またはヒドロキシ-C-Cアルキル基を表し、
Rcは、水素原子、C-Cアルキル基、フェニル基またはベンジル基を表す、
但し、x+yは少なくとも1である〕
で示される1以上のアルキレングリコールを含む組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン物質、特にヒトの毛髪を処理するための方法であって、以下:
・第1の組成物(A)であって、前記組成物(A)の総重量に対して、
(A1)10重量%未満の水、および
(A2)1以上の有機C-Cアルコキシシランおよび/またはそれらの縮合生成物を含む組成物、並びに
・第2の組成物(B)であって、
(B1)水、および
(B2)式(AG-I):
【化1】
〔式中、
xは、0~800の整数を表し、
yは、0~800の整数を表し、
Ra、Rbは、互いに独立して、水素原子、C-Cアルキル基またはヒドロキシ-C-Cアルキル基を表し、
Rcは、水素原子、C-Cアルキル基、フェニル基またはベンジル基を表す、
但し、x+yは少なくとも1である〕
で示される1以上のアルキレングリコールを含む組成物
を、ケラチン物質に塗布することを含む、方法。
【請求項2】
第1の組成物(A)が、該組成物(A)の総重量に対して、0.01~9.5重量%、好ましくは0.01~8.0重量%、より好ましくは0.01~6.0重量%、最も好ましくは0.01~4.0重量%の水(A1)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の組成物(A)が、式(S-I)および/または(S-II):
式(S-I):
【化2】
〔式中、
・R、Rは独立して、水素原子またはC-Cアルキル基を表し、
・Lは直鎖または分岐二価C-C20アルキレン基であり、
・R、Rは独立して、C-Cアルキル基を表し、
・aは1~3の整数を表し、
・bは3-aの整数である〕
式(S-II):
【化3】
〔式中、
・R、R'、R''、R、R'およびR''は独立して、C-Cアルキル基を表し、
・A、A'、A''、A'''およびA''''は独立して、直鎖または分岐C-C20二価アルキレン基を表し、
・RおよびRは独立して、水素原子、C-Cアルキル基、ヒドロキシ-C-Cアルキル基、C-Cアルケニル基、アミノ-C-Cアルキル基、または、式(S-III)の基:
【化4】
(・cは1~3の整数を表し、
・dは3-cの整数を表し、
・c'は1~3の整数を表し、
・d'は3-c'の整数を表し、
・c''は1~3の整数を表し、
・d''は3-c''の整数を表し、
・eは0若しくは1を表し、
・fは0若しくは1を表し、
・gは0若しくは1を表し、
・hは0若しくは1を表し、
・ただし、e、f、gおよびhのうちの少なくとも1つは0と異なる)
を表す〕
で示される1以上の有機C-Cアルコキシシラン(A2)および/またはそれらの縮合生成物を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第1の組成物(A)が、
・(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、
・(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、
・(2-アミノエチル)トリエトキシシラン、
・(2-アミノエチル)トリメトキシシラン、
・(3-ジメチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、
・(3-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、
・(2-ジメチルアミノエチル)トリエトキシシラン、
・(2-ジメチルアミノエチル)トリメトキシシラン
からなる群から選択される少なくとも1つの式(S-I)で示されるC-C有機アルコキシシラン(A2)および/またはそれらの縮合生成物を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
第1の組成物(A)が、式(S-IV):
【化5】
〔式中、
・RはC-C12アルキル基を表し、
・R10はC-Cアルキル基を表し、
・R11はC-Cアルキル基を表し、
・kは1~3の整数であり、
・mは3-kの整数を表す〕
で示される1以上の有機C-Cアルコキシシラン(A2)および/またはそれらの縮合生成物を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第1の組成物(A)が、
・メチルトリメトキシシラン
・メチルトリエトキシシラン
・エチルトリメトキシシラン
・エチルトリエトキシシラン
・ヘキシルトリメトキシシラン
・ヘキシルトリエトキシシラン
・オクチルトリメトキシシラン
・オクチルトリエトキシシラン
・ドデシルトリメトキシシラン、
・ドデシルトリエトキシシラン
からなる群から選択される少なくとも1つの式(S-I)で示されるC-C有機アルコキシシラン(A2)および/またはそれらの縮合生成物を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
第1の組成物(A)が、該組成物(A)の総重量に対して、30.0~85.0重量%、好ましくは35.0~80.0重量%、より好ましくは40.0~75.0重量%、さらにより好ましくは45.0~70.0重量%、最も好ましくは50.0~65.0重量%の総量で、1以上の有機C-Cアルコキシシラン(A2)および/またはそれらの縮合生成物を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
第1の組成物(A)が、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンおよびデカメチルシクロペンタシロキサンからなる群からの少なくとも1つの化粧品成分を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
第1の組成物(A)が、該組成物(A)の総重量に対して、10.0~50.0重量%、好ましくは15.0~45.0重量%、より好ましくは20.0~40.0重量%、さらにより好ましくは25.0~35.0重量%、最も好ましくは31.0~34.0重量%のヘキサメチルジシロキサンを含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
第2の組成物(B)が、該組成物(B)の総重量に対して、0.1~60.0重量%、好ましくは0.1~40.0重量%、より好ましくは0.1~20.0重量%、さらにより好ましくは1.0~10.0重量%、最も好ましくは1.0~5.0重量%の水(B1)を含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
第2の組成物(B)が、式(AG-I)中、
xが、1~800の整数、好ましくは1~400の整数、より好ましくは2~200の整数、さらにより好ましくは4~150の整数、最も好ましくは4~60の整数であり、
yが、数0を表し、
Rcが、水素原子を表す、
式(AG-I)で示される1以上のアルキレングリコール(B2)を含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
第2の組成物(B)が、式(AG-I)中、
xが、数0を表し、
yが、1~800の整数、好ましくは1~400の整数、より好ましくは1~200の整数、さらにより好ましくは1~50の整数、最も好ましくは数1であり、
Ra、Rbが、互いに独立して、水素原子、C-Cアルキル基またはヒドロキシ-C-Cアルキル基を表し、
Rcが、水素原子またはC-Cアルキル基を表す、
式(AG-I)で示される1以上のアルキレングリコール(B2)を含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
第2の組成物(B)が、式(AG-I)中、
xが、数0を表し、
yが、数1を表し、
Ra、Rbが、水素原子を表し、
Rcが、フェニル基またはベンジル基を表す、
式(AG-I)で示される1以上のアルキレングリコール(B2)を含むことを特徴とする、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
第2の組成物(B)が、該組成物(B)の総重量に対して、5.0~95.0重量%、好ましくは10.0~95.5重量%、より好ましくは30.0~95.0重量%、さらにより好ましくは50.0~95.0重量%、最も好ましくは70.0~95.0重量%の総量で、1以上の式(AG-I)で示されるアルキレングリコール(B2)を含むことを特徴とする、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
塗布直前に第1の組成物(A)と第2の組成物(B)とを混合することによって調製された組成物を、ケラチン物質に塗布することを特徴とする、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
顔料および/または直接染料からなる群から選択される少なくとも1つの着色化合物を含む第3の組成物(C)をケラチン物質に塗布する、請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
塗布直前に第1の組成物(A)を、第2の組成物(B)および第3の組成物(C)と混合することによって得られる組成物をケラチン物質に塗布することを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第1工程において、塗布直前に第1の組成物(A)と第2の組成物(B)とを混合することによって調製される組成物をケラチン物質に塗布し、第2工程において、第3の組成物(C)を前記ケラチン物質に塗布することを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの被膜形成ポリマーを含む第4の組成物をケラチン物質に塗布する、請求項1~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
組成物(B)および/または組成物(C)が、着色金属酸化物、金属水酸化物、金属酸化物水和物、ケイ酸塩、金属硫化物、錯体金属シアン化物、金属硫化物、ブロンズ顔料の群、および/または、少なくとも1つの金属酸化物および/または金属酸塩化物でコーティングされた着色雲母若しくは雲母ベース顔料の群から選択される無機顔料の群からの少なくとも1つの着色化合物を含むことを特徴とする、請求項1~18のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
組成物(B)および/または組成物(C)が、カルミン、キナクリドン、フタロシアニン、ソルガム、カラーインデックス番号CI42090、CI69800、CI69825、CI73000、CI74100、CI74160を有する青色顔料、カラーインデックス番号CI11680、CI11710、CI15985、CI19140、CI20040、CI21100、CI21108、CI47000、CI47005を有する黄色顔料、カラーインデックス番号CI61565、CI61570、CI74260を有する緑色顔料、カラーインデックス番号CI11725、CI15510、CI45370、CI71105を有するオレンジ顔料、カラーインデックス番号CI12085、CI12120、CI12370、CI12420、CI12490、CI14700、CI15525、CI15580、CI15620、CI15630、CI15800、CI15850、CI15865、CI15880、CI17200、CI26100、CI45380、CI45410、CI58000、CI73360、CI73915および/またはCI75470を有する赤色顔料からなる群から選択される有機顔料の群からの少なくとも1つの着色化合物を含むことを特徴とする、請求項1~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
組成物(B)および/または組成物(C)が、アニオン性、非イオン性、および/またはカチオン性直接染料からなる群から選択される少なくとも1つの着色化合物を含むことを特徴とする、請求項1~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
ケラチン物質を処理するためのキットであって、別々にパッケージグされた、
・第1の組成物(A)を含む第1の容器、および
・第2の組成物(B)を含む第2の容器、
を含み、前記組成物(A)および(B)は請求項1~14のいずれかに記載される、キット。
【請求項24】
別々にパッケージングされた、
・第3の組成物(C)を含む第3の容器
を含み、前記第3の組成物(C)は請求項16~21のいずれかに記載される、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
別々にパッケージングされた、
・少なくとも1つの被膜形成ポリマーを含む第4の組成物(D)を含む第4の容器
を含む、請求項23または24に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、化粧品の分野であり、2つの組成物(A)および(B)の使用を含む、ケラチン物質、特にヒトの毛髪の処理のための方法に関する。組成物(A)は、少なくとも1つのC-C有機アルコキシシランを含む低水分調製物であり、組成物(B)は、特定の式で示される少なくとも1つの特定のアルキレングリコールを含む。
【0002】
本発明の第2の目的は、2つのパッケージユニットに別々にパッケージされた上記の2つの組成物(A)および(B)を含む、ケラチン物質を染色するためのキット(kit-of-parts)である。
【背景技術】
【0003】
ケラチン繊維、とりわけ毛髪の形状や色を変えることは、今日の化粧品の重要な領域である。髪色を変えるために、専門家はカラーリング要件に応じてさまざまな染色システムを知っている。酸化染料は通常、良好な堅牢性と良好な白髪隠し効果を有する永久的で強力な染色に使用される。そのような染料は通常、酸化染料の前駆体、いわゆる顕色成分と発色成分を含み、過酸化水素などの酸化剤の影響下で互いに実際の染料を形成する。酸化染料は、非常に長持ちする染色仕上がりを特徴とする。
【0004】
直接染料を使用する場合、既製の染料が着色剤から毛髪繊維に拡散する。酸化的染毛剤と比較して、直接染料で得られる染色は、色持ちの期間が短く、より速く洗い流される。直接染料による染色は通常5~20回の洗髪にわたって毛髪に残存する。
【0005】
着色顔料の使用は、毛髪および/または皮膚の色を短期的に変えるためのものとして知られている。着色顔料は一般に不溶性の着色物質と理解されている。これらの着色顔料は、小粒子の形態で染料調製物中に未溶解の状態で存在し、毛髪繊維および/または皮膚表面に外側から沈着するだけにすぎない。したがって、通常、界面活性剤含有洗浄剤で数回洗うことによって、残留することなく再度除去することができる。このタイプのさまざまな製品は、ヘアマスカラという名称で市場において入手可能である。
【0006】
ユーザーが特に長持ちする染色を望む場合、これまでは酸化染料の使用が唯一の選択肢であった。しかし、幾多の最適化の試みにもかかわらず、酸化的染毛剤では不快なアンモニアやアミンの臭いを完全に回避することができない。酸化染料の使用に伴う毛髪のダメージも、やはりユーザーの毛髪に悪い影響を及ぼす。
【0007】
欧州特許第2168633号は、顔料を用いて長持ちする染毛剤を製造するという課題に対処している。この特許は、顔料、有機ケイ素化合物、疎水性ポリマーおよび溶媒の組み合わせを使用することによって、洗髪に対して特に耐性のある着色を毛髪にもたらすことが可能であることを教示している。
【0008】
欧州特許第2168633号で使用されている有機ケイ素化合物は、アルコキシシランの類の反応性化合物である。これらのアルコキシシランは、水の存在下で高速で加水分解し、それぞれの場合に使用されるアルコキシシランおよび水の量に応じて、加水分解生成物および/または縮合生成物を形成する。この反応で使用される水の量が加水分解生成物または縮合生成物の特性に対して与える影響は、例えば国際公開第2013068979号に記載されている。
【0009】
これらのアルコキシシランまたはその加水分解生成物若しくは縮合生成物がケラチン物質に塗布されると、ケラチン物質上に被膜またはコーティングが形成され、ケラチン物質を完全に包み込み、これによりケラチン物質の特性に強く影響を与える。適用できる領域としては、ケラチン繊維の永久的なスタイリングや永久的な形状変更が挙げられる。この方法では、ケラチン繊維は所望の形状に機械的に成形され、次いで、上記コーティングを形成することによってこの形状に固める。別の特に好適な用途は、ケラチン物質の着色である。この用途では、コーティングまたは被膜は、着色化合物、例えば顔料の存在下で形成される。顔料で着色された被膜は、ケラチン物質またはケラチン繊維上に残留し、驚くほど耐洗浄性のある染色がもたらされる。
【0010】
アルコキシシラン系の染色原理の大きな利点は、このクラスの化合物の高い反応性により、非常に速いコーティングが可能になることである。これは、極めて良好な染色結果がわずか数分の非常に短い塗布時間で達成できることを意味する。しかし、これらの利点にくわえて、アルコキシシランの高い反応性にはいくつかの欠点もある。
【0011】
その高い反応性に起因して、有機アルコキシシランは、大量の水と一緒に調製することができない。その理由は、過剰な水が直ちに加水分解とそれに続く重合を開始するからである。水性媒体中でアルコキシシランを保存する間に起こる重合は、水性調製物の増粘またはゲル化として現れる。これにより、調製物が非常に高粘度になってゲル化し、もはやケラチン物質にむらなく塗布することができなくなる。さらに、多量の水の存在下でのアルコキシシランの保存は、その反応性の消失を伴い、その結果ケラチン物質上での耐性コーティングの形成ももはや不可能である。
【0012】
これらの理由から、有機アルコキシシランを無水または無水環境で保存し、対応する調製物を別個の容器で調製することが必要である。アルコキシシランは、その反応性が高いため、水だけでなく他の化粧品成分とも反応する可能性がある。したがって、望ましくない反応をすべて避けるために、アルコキシシランを含有する調製物は、他の成分を含有しないか、またはアルコキシシランに対して化学的に不活性であることがわかっている選ばれた成分のみを含有することが好ましい。したがって、調製物中のアルコキシシランの濃度は、比較的高くなるように選択されることが好ましい。比較的高い濃度でアルコキシシランを含有する低水分調製物は、「シランブレンド」と呼ばれることもある。
【0013】
ケラチン物質に塗布する場合、現在ユーザーは、この比較的高濃度のシランブレンドを、すぐに使える状態の混合物に変換しなければならない。この即用の混合物においては、一方では有機アルコキシシランの濃度が低下し、他方では塗布混合物は、コーティングをもたらす重合を誘発する水(または代替的な成分)をより高い割合で含む。
【0014】
重合速度、すなわちコーティングがケラチン物質に形成される速度を、塗布条件に最適に適合させることは、極めて大きな課題であることがわかっている。
【0015】
例えば、ヒトの毛髪に塗布する場合、重合速度が速すぎると、全ての毛髪部分が処理される前に重合が完了してしまう。したがって、重合が速すぎると、頭部全体の処理が不可能になる。染色過程において、速すぎる重合は、極端に不均一な色の結果として現れるため、最後に処理された毛髪部分は、不十分に着色されるに過ぎない。
【0016】
一方、重合が遅すぎると、時間的な制約なしに毛髪の全範囲を処理できるが、これは塗布時間を長くする。したがって、重合が遅すぎると、最短の塗布時間で洗浄堅牢性のある着色を形成するというこの染色技術の大きな利点が効力を生じない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】欧州特許第2168633号明細書
【特許文献2】国際公開第2013/068979号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本願の目的は、有機アルコキシシランの重合の速度を使用条件、特にヒトの頭部に塗布する際に一般的な条件に適合させることができる、ケラチン物質を処理するための方法を見出すことであった。言い換えると、塗布時間を過度に長くすることなく頭部全体の処理を可能にするのに十分に長い有機アルコキシシランの反応性を維持することになる方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0019】
驚くべきことに、2つの組成物(A)および(B)をケラチン物質に塗布する方法でケラチン物質が処理されると、この課題を完全に解決できることが見出された。第1の組成物(A)は前述の低水分シランブレンドである。第2の組成物(B)は含水性であり、式(AG-I)で示される少なくとも1つの特定のアルキレングリコールを含む。塗布中に、組成物(A)と(B)は互いに接触する。この接触は(A)と(B)を事前に混合することによって、またはケラチン物質への(A)と(B)の連続的な塗布によって行うことができる。
【0020】
本発明の第1の目的は、ケラチン物質、特にヒトの毛髪を処理するための方法であって、以下:
・第1の組成物(A)であって、前記組成物(A)の総重量に対して、
(A1)10重量%未満の水、および
(A2)1以上の有機C-Cアルコキシシランおよび/またはそれらの縮合生成物を含む組成物、並びに
・第2の組成物(B)であって、
(B1)水、および
(B2)式(AG-I):
【化1】
〔式中、
xは、0~800の整数を表し、
yは、0~800の整数を表し、
Ra、Rbは、互いに独立して、水素原子、C-Cアルキル基またはヒドロキシ-C1-C6アルキル基を表し、
Rcは、水素原子、C-Cアルキル基、フェニル基またはベンジル基を表す、
但し、x+yは少なくとも1である〕
で示される1以上のアルキレングリコールを含む組成物
を、ケラチン物質に塗布することを含む。
【発明の効果】
【0021】
水含有組成物(B)に含まれる特定のアルキレングリコール(B2)は、組成物(A)と接触すると、有機C-Cアルコキシシラン(A2)の重合速度を低下させることが示されている。驚くべきことに、有機C-Cアルコキシシラン(A2)の反応性は、頭髪全体の染毛方法において一般的な塗布条件に最適に適合させることができた。
【0022】
2つの組成物(A)および(B)をケラチン物質、特にヒトの毛髪の染色方法で使用したとき、特に均一性の程度が高い着色がこの方法で可能であった。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<ケラチン物質の処理>
ケラチン物質としては、毛髪、皮膚、爪(手の爪および/または足の爪など)が挙げられる。さらに、羊毛、毛皮、羽毛もケラチン物質の定義に含まれる。
【0024】
好ましくは、ケラチン物質は、ヒトの毛髪、ヒト皮膚並びにヒトの爪、特に指の爪および足の爪であると理解される。ケラチン物質は、特にヒトの毛髪であると理解される。
【0025】
ケラチン物質を処理するための剤とは、例えば、ケラチン物質を着色するための剤、ケラチン物質、特にケラチン繊維を再形成若しくは成形するための剤、またはケラチン物質をコンディショニングまたはケアするための剤を意味すると理解される。本発明による方法によって調製された剤は、ケラチン物質を染色するため、特に好ましくはヒトの毛髪であるケラチン繊維を染色するために特に適している。
【0026】
「着色剤」という用語は、本発明の文脈において、サーモクロミックおよびフォトクロミック染料、顔料、マイカ、直接染料および/または酸化染料などの着色化合物の使用によって生じる、ケラチン物質、特に毛髪の着色を指すのに使用される。この染色プロセスにおいて、上記着色化合物は、ケラチン物質の表面上に特に均質で滑らかな被膜で沈着する、またはケラチン繊維内に拡散する。その被膜は、有機アルコキシシランのオリゴマー化またはポリマー化によって、また着色化合物と、有機ケイ素化合物および場合により被膜形成ポリマーなどの他の成分との相互作用によってインサイチュで形成される。
【0027】
<組成物(A)中の水分含量(A1)>
本発明による方法は、第1の組成物(A)をケラチン物質に塗布することを特徴とする。
【0028】
十分に高い保存安定性を確保するために、組成物(A)は、水分が少ない、好ましくは実質的に水を含まないことを特徴とする。したがって、組成物(A)は、組成物(A)の総重量に対して、10重量%未満の水を含有する。
【0029】
10重量%未満の水分含量により、組成物(A)は長期にわたる保存において安定している。しかし、保存安定性をさらに向上させ、有機C-Cアルコキシシラン(A2)の十分に高い反応性を確保するために、組成物(A)中の水分含量をさらに下げることが特に好ましいことが見出されている。この理由から、第1の組成物(A)は、組成物(A)の総重量に対して、好ましくは0.01~9.5重量%、より好ましくは0.01~8.0重量%、さらに好ましくは0.01~6.0重量%、最も好ましくは0.01~4.0重量%の水(A1)を含む。
【0030】
1つの特に好ましい態様において、本発明による方法は、第1の組成物(A)が、組成物(A)の総重量に対して、0.01~9.5重量%、好ましくは0.01~8.0重量%、より好ましくは0.01~6.0重量%、最も好ましくは0.01~4.0重量%の水(A1)を含むことを特徴とする。
【0031】
<組成物(A)中の有機C-Cアルコキシシラン(A2)および/またはその縮合生成物>
組成物(A)は、1以上の有機C-Cアルコキシシラン(A2)および/またはその縮合生成物を含有することを特徴とする。
【0032】
有機C-Cアルコキシシランは、有機非重合性ケイ素化合物であり、好ましくは1、2または3個のケイ素原子を含有するシランの群から選択される。
【0033】
有機ケイ素化合物は、別称オルガノシリコン化合物として知られ、ケイ素-炭素(Si-C)の直接結合を有する、または炭素が酸素、窒素若しくは硫黄原子を介してケイ素原子に結合している化合物である。本発明による有機ケイ素化合物は、好ましくは1~3個のケイ素原子を含む化合物である。有機ケイ素化合物は、好ましくは1または2個のケイ素原子を含む化合物である。
【0034】
IUPACの規則によれば、シランという用語は,ケイ素骨格および水素に基づく化学化合物の群を意味する。有機シランでは、水素原子が、完全にまたは部分的に、(置換)アルキル基および/またはアルコキシ基などの有機基で置き換えられている。
【0035】
特徴として、本発明のC-Cアルコキシシランは、ケイ素原子に直接結合した少なくとも1つのC-Cアルコキシ基を有する。したがって、本発明によるC-Cアルコキシシランは、少なくとも1つの構造単位R'R''R'''Si-O-(C-Cアルキル)を含み、ラジカルR'、R''およびR'''は、ケイ素原子の3つの残存する結合原子価を表す。
【0036】
ケイ素原子に結合した1つまたは複数のC-Cアルコキシ基は、非常に反応性が高く、水の存在下で高速で加水分解され、その反応速度は、とりわけ1分子あたりの加水分解性基の数に依存する。加水分解可能なC-Cアルコキシ基がエトキシ基である場合、有機ケイ素化合物は、好ましくは構造単位R'R''R'''Si-O-CH-CHを含有する。残基R'、R''およびR'''は、ここでもケイ素原子の3つの残りの自由原子価を表す。
【0037】
少量の水の添加でも、最初に加水分解が起こり、次いで有機アルコキシシラン間の縮合反応が起こる。このため、有機アルコキシシラン(A2)とその縮合生成物がともに組成物中に存在し得る。
【0038】
縮合生成物は、水の脱離および/またはC-Cアルカノールの脱離を伴う少なくとも2つの有機C-Cアルコキシシランの反応によって形成される生成物であると理解される。
【0039】
例えば、縮合生成物は、二量体だけでなく三量体やオリゴマーであってもよく、縮合生成物はモノマーと平衡している。
【0040】
加水分解で使用または消費される水の量に応じて、平衡はモノマーのC-Cアルコキシシランから縮合生成物へとシフトする。
【0041】
非常に好ましい態様では、本発明による方法は、組成物(A)が、1、2または3個のケイ素原子を有するシランから選択される1以上の有機C-Cアルコキシシラン(A2)を含み、有機ケイ素化合物は1以上の塩基性化学官能基をさらに含むことを特徴とする。
【0042】
この塩基性基は、例えば、アミノ基、アルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基であることができ、好ましくはリンカーを介してケイ素原子に結合している。好ましくは、塩基性基は、アミノ基、C-Cアルキルアミノ基またはジ(C-C)アルキルアミノ基である。
【0043】
本発明による非常に好ましい方法は、組成物(A)が、1、2または3個のケイ素原子を有するシランの群から選択される1以上の有機C-Cアルコキシシラン(A2)を含み、C-Cアルコキシシランが、1以上の塩基性化学官能基をさらに含むことを特徴とする。
【0044】
本発明による方法において、式(S-I)および/または(S-II)のC-Cアルコキシシランを使用したとき、特に良好な結果が得られた。先述のように、微量の水分で加水分解/縮合はもう始まるので、式(S-I)および/または(S-II)のC-Cアルコキシシランの縮合生成物もこの態様に包含される。
【0045】
別の非常に好ましい態様において、本発明による方法は、第1の組成物(A)が、
式(S-I)および/または(S-II):
式(S-I):
【化2】
〔式中、
・R、Rは独立して、水素原子またはC-Cアルキル基を表し、
・Lは直鎖または分岐二価C-C20アルキレン基であり、
・R、Rは独立して、C-Cアルキル基を表し、
・aは1~3の整数を表し、
・bは3-aの整数である〕
式(S-II):
【化3】
〔式中、
・R、R'、R''、R、R'およびR''は独立して、C-Cアルキル基を表し、
・A、A'、A''、A'''およびA''''は独立して、直鎖または分岐C-C20二価アルキレン基を表し、
・RおよびRは独立して、水素原子、C-Cアルキル基、ヒドロキシ-C-Cアルキル基、C-Cアルケニル基、アミノ-C-Cアルキル基、または、式(S-III)の基:
【化4】
(・cは1~3の整数を表し、
・dは3-cの整数を表し、
・c'は1~3の整数を表し、
・d'は3-c'の整数を表し、
・c''は1~3の整数を表し、
・d''は3-c''の整数を表し、
・eは0若しくは1を表し、
・fは0若しくは1を表し、
・gは0若しくは1を表し、
・hは0若しくは1を表し、
・ただし、e、f、gおよびhのうちの少なくとも1つは0と異なる)
を表す〕
で示される1以上の有機C-Cアルコキシシラン(A2)および/またはそれらの縮合生成物を含むことを特徴とする。
【0046】
式(S-I)および(S-II)の化合物中の置換基R、R、R、R、R、R'、R''、R、R'、R''、R、R、L、A、A'、A''、A'''およびA''''を以下に例示する。
【0047】
-Cアルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチルおよびn-ヘキシル基が挙げられる。プロピル、エチル、メチルが好ましいアルキル基である。C-Cアルケニル基の例としては、ビニル、アリル、ブト-2-エニル、ブト-3-エニル、およびイソブテニルが挙げられ、好ましいC-Cアルケニル基としてはビニルおよびアリルが挙げられる。ヒドロキシ-C-Cアルキル基の好ましい例としては、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシプロピル、4-ヒドロキシブチル、5-ヒドロキシペンチルおよび6-ヒドロキシヘキシル基が挙げられ、2-ヒドロキシエチル基が特に好ましい。アミノ-C-Cアルキル基の例としては、アミノメチル基、2-アミノエチル基、3-アミノプロピル基が挙げられる。2-アミノエチル基が特に好ましい。直鎖二価C-C20アルキレン基の例としては、例えば、メチレン基(-CH-)、エチレン基(-CH-CH-)、プロピレン基(-CH-CH-CH-)、およびブチレン基(-CH-CH-CH-CH-)が挙げられる。プロピレン基(-CH-CH-CH-)が特に好ましい。C原子3個の鎖長からは、二価アルキレン基も分岐し得る。分岐C-C20の二価アルキレン基の例としては、(-CH-CH(CH)-)および(-CH-CH(CH)-CH-)が挙げられる。
【0048】
式(S-I):
【化5】
の有機ケイ素化合物では、RおよびRは独立して、水素原子またはC-Cアルキル基を表す。最も好ましくはRおよびRはともに水素原子である。
【0049】
有機ケイ素化合物の中央部分には、直鎖または分岐二価C-C20アルキレン基を表す構造単位またはリンカー-L-が存在する。二価C-C20アルキレン基は、代替的に二価または二価C-C20アルキレン基と呼ばれることがあり、これは各-L-基が2つの結合を形成しうることを意味する。
【0050】
好ましくは、-L-が直鎖状二価C-C20アルキレン基を表す。-L-が直鎖状二価C-Cアルキレン基を表す場合がより好ましいであろう。-L-が、メチレン基(-CH-)、エチレン基(-CH-CH-)、プロピレン基(-CH-CH-CH-)またはブチレン基(-CH-CH-CH-CH-)を表す場合が特に好ましいであろう。Lがプロピレン基(-CH-CH-CH-)を表す場合が極めて好ましいであろう。
【0051】
本発明による式(S-I):
【化6】
の有機ケイ素化合物は、それぞれ、ケイ素含有基-Si(OR(Rを一つの末端に有する。
【0052】
末端構造単位-Si(OR(Rでは、RおよびRは独立してC-Cアルキル基を表し、特に好ましくはRおよびRは独立してメチル基またはエチル基を表す。
【0053】
この場合、aは1~3の整数を表し、bは3-aの整数を表す。aが数3を表す場合、bは0である。aが数2を表す場合、bは1となる。aが数1を表す場合、bは2となる。
【0054】
組成物(A)が、基R、Rが互いに独立してメチル基またはエチル基を表す式(S-I)の有機C-Cアルコキシシランを少なくとも1つ含有する場合に、特に良好な特性をもつケラチン処理剤が調製できた。
【0055】
さらに、組成物(A)が、残基のaが数の3を表す式(S-I)の有機C-Cアルコキシシランを少なくとも1つ含有する場合に、洗浄堅牢性が最良の着色を得ることができた。この場合、残りのbは数0を表す。
【0056】
別の好ましい態様では、本発明による方法は、組成物(A)が、1以上の式(S-I)の有機C-Cアルコキシシランを含むことを特徴とし、
式中、
・R、Rは独立してメチル基またはエチル基を表し、
・aは数字の3を表し、
・bは数字の0を表す。
【0057】
別の好ましい態様では、本発明による方法は、組成物(A)が式(S-I):
【化7】
〔式中、
・R、Rはともに水素原子を表し、
・Lは、直鎖状の二価C-Cアルキレン基、好ましくはプロピレン基(-CH-CH-CH-)またはエチレン基(-CH-CH-)であり、
・Rはエチル基またはメチル基を表し、
・Rはメチル基またはエチル基を表し、
・aは数3を表し、
・bは数字の0を表す〕
で示される、少なくとも1以上の有機C-Cアルコキシシランを含むことを特徴とする。
【0058】
本発明による問題を解決するのに特に適した式(I)の有機ケイ素化合物は以下のものである。
・(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン
【化8】
・(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン
【化9】
・(2-アミノエチル)トリエトキシシラン
【化10】
・(2-アミノエチル)トリメトキシシラン
【化11】
・(3-ジメチルアミノプロピル)トリエトキシシラン
【化12】
・(3-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン
【化13】
・(2-ジメチルアミノエチル)トリエトキシシラン
【化14】
・(2-ジメチルアミノエチル)トリメトキシシラン
【化15】
【0059】
さらなる好ましい態様において、本発明による方法は、第1の組成物(A)が、
・(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン
・(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン
・(2-アミノエチル)トリエトキシシラン
・(2-アミノエチル)トリメトキシシラン
・(3-ジメチルアミノプロピル)トリエトキシシラン
・(3-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン
・(2-ジメチルアミノエチル)トリエトキシシラン
・(2-ジメチルアミノエチル)トリメトキシシラン
からなる群から選択される少なくとも1つの式(S-I)で示されるC-C有機アルコキシシラン(A2)および/またはそれらの縮合生成物を含むことを特徴とする。
【0060】
上記式(I)の有機ケイ素化合物は市販されている。
例えば、(3-アミノプロピル)トリメトキシシランは、Sigma-Aldrichから購入することができる。(3-アミノプロピル)トリエトキシシランもまた、Sigma-Aldrichから市販されている。
【0061】
本発明による方法の別の態様では、組成物(A)はまた、式(S-II):
【化16】
で示される1以上の有機C-Cアルコキシシランを含み得る。
【0062】
本発明による式(S-II)の有機ケイ素化合物は、それぞれその両端にケイ素含有基(RO)(RSi-および-Si(R')d'(OR')c'を有する。
【0063】
式(S-II)の分子の中央部分には、原子団-(A)-および-[NR-(A')]-および[O-(A'')]-および[NR-(A''')]-が存在する。ここで、残基のe、f、gおよびhのぞれぞれは互いに独立して、0または1の数を表しうる。但し、残基のe、f、gおよびhのうち少なくとも1つは0と異なる。言い換えると、本発明による式(II)の有機ケイ素化合物は、-(A)-および[NR-(A')]-および-[O-(A'')]-および-[NR-(A''')]-からなる群から選択される少なくとも1つの基を含む。
【0064】
2つの末端構造単位(RO)(RSi-およびSi(R')d'(OR')c'では、残基R5、R5'、R5''はそれぞれ独立してC-Cアルキル基を表す。R6、R6'およびR6''残基はそれぞれ独立してC-Cアルキル基を表す。
【0065】
ここで、cは1~3の整数を表し、dは3-cの整数を表す。cが数3を表す場合、dは0に等しい。cが数2を表す場合、dは1に等しい。cが数1を表す場合、dは2に等しい。
【0066】
同様に、c'は1~3の整数を表し、d'は3-cの整数を表す。c'が数3を表す場合、d'は0である。c'が数2を表す場合、dは1に等しい。c'が数1を表す場合、d'は2である。
【0067】
残基cおよびc'がともに数3を表す場合、最良の洗浄堅牢度の値を有する着色を得ることができた。この場合、dとd'はともに数0を表す。
【0068】
別の好ましい態様において、本発明による方法は、組成物(A)が、式(S-II):
【化17】
〔式中、
・RおよびR'は独立してメチル基またはエチル基を表し、
・cおよびc'はともに数字の3を表し、
・dおよびd'はともに数字の0を表す〕
で示される1以上の有機C-Cアルコキシシランを含むことを特徴とする。
【0069】
cおよびc'がともに3であり、dおよびd'がともに0である場合、本発明による有機ケイ素化合物は、式(S-IIa):
【化18】
に相当する。
【0070】
残基e、f、gおよびhは独立して、0または1の数を表し得る。e、f、gおよびhのうち少なくとも1つは0とは異なる。したがって、略称e、f、gおよびhは、-(A)-および[NR-(A')]-および-[O-(A'')]-および[NR-(A''')]-のうちのどの原子団が式(II)の有機ケイ素化合物の中央部分に存在するかを決める。
【0071】
これに関連して、ある特定の基の存在は、洗浄可能な染色結果を達成するという点で特に有利であることがわかった。残基e、f、gおよびhのうち少なくとも2つが数1を表すとき、特に良好な結果が得られた。とりわけ好ましいeおよびfはともに数1を表す。さらに、gおよびhはともに数0を表す。
【0072】
eおよびfがともに1であり、gおよびhがともに0であるとき、本発明による有機ケイ素化合物は(S-IIb):
【化19】
に相当する。
【0073】
A、A'、A''、A'''およびA''''は独立して、直鎖または分岐状のC-C20の二価アルキレン基を表す。好ましくは、A、A'、A''、A'''およびA''''は独立して、直鎖二価C-C20アルキレン基を表す。さらに好ましくは、A、A'、A''、A'''およびA''''は独立して、直鎖二価C-Cアルキレン基を表す。
【0074】
二価C-C20アルキレン基は、代替的に二価C-C20アルキレン基と呼ばれることがあり、これはA、A'、A''、A'''およびA''''の各基が2つの結合を形成しうることを意味する。
【0075】
A、A'、A''、A'''およびA''''が独立して、メチレン基(-CH-)、エチレン基(-CH-CH-)、プロピレン基(-CH-CH-CH-)またはブチレン基(-CH-CH-CH-CH-)を表す場合が特に好ましいであろう。基A、A'、A''、A'''およびA''''がプロピレン基(-CH-CH-CH-)を表す場合、極めて好ましいであろう。
【0076】
残基のfが数1を表すとき、本発明による式(II)の有機ケイ素化合物は構造基-[NR-(A')]-を含む。
【0077】
残基のhが数1を表すとき、本発明による式(II)の有機ケイ素化合物は構造基-[NR-(A''')]-を含む。
【0078】
式中、RおよびRは独立して、水素原子、C-Cアルキル基、ヒドロキシ-C-Cアルキル基、C-Cアルケニル基、アミノ-C-Cアルキル基または式(S-III):
【化20】
の基を表す。
【0079】
たいへん非常に好ましくは、RおよびRは独立して、水素原子、メチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-アルケニル基、2-アミノエチル基または式(S-III)の基を表す。
【0080】
残基のfが数1を表し、残基のhが数0を表す場合、本発明による有機ケイ素化合物は、原子団[NR-(A')]を含むが、原子団-[NR-(A''')]を含まない。基Rが式(III)の基を表す場合、有機ケイ素化合物は3つの反応性シラン基を含む。
【0081】
別の好ましい態様において、本発明による方法は、組成物(A)が、式(S-II):
【化21】
〔式中、
・eおよびfはともに数1を表し、
・gおよびhはともに数0を表し、
・AおよびA'は独立して、直鎖二価C-Cアルキレン基を表し、
・Rは水素原子、メチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-アルケニル基、2-アミノエチル基または式(S-III)の基を表す〕
で示される1以上の有機C-Cアルコキシシラン(A2)を含むことを特徴とする。
【0082】
さらなる好ましい態様において、本発明による方法は、組成物(A)が、式中、
・eおよびfがともに数1を表し、
・gおよびhがともに数0を表し、
・AおよびA'が独立して、メチレン基(-CH-)、エチレン基(-CH-CH-)またはプロピレン基(-CH-CH-CH)を表し、
・Rが水素原子、メチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-アルケニル基、2-アミノエチル基または式(S-III)の基を表す、式(S-II)の1以上の有機C-Cアルコキシシラン(A2)を含むこと特徴とする。
【0083】
本発明による課題を解決するのによく適した式(S-II)で示される有機ケイ素化合物は、以下である。
・3-(トリメトキシシリル)-N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1-プロパンアミン
【化22】
・3-(トリエトキシシリル)-N-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1-プロパンアミン
【化23】
・N-メチル-3-(トリメトキシシリル)-N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1-プロパンアミン
【化24】
・N-メチル-3-(トリエトキシシリル)-N-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1-プロパンアミン
【化25】
・2-[ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミノ]-エタノール
【化26】
・2-[ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]アミノ]エタノール
【化27】
・3-(トリメトキシシリル)-N,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1-プロパンアミン
【化28】
・3-(トリエトキシシリル)-N,N-ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1-プロパンアミン
【化29】
・N1,N1-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2-エタンジアミン
【化30】
・N1,N1-ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2-エタンジアミン
【化31】
・N,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-2-プロペン-1-アミン
【化32】
・N,N-ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-2-プロペン-1-アミン
【化33】
【0084】
上記の式(S-II)の有機ケイ素化合物は市販されている。
【0085】
CAS番号82985-35-1を有するビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンは、Sigma-Aldrichから購入することができる。
【0086】
CAS番号13497-18-2を有するビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]アミンは、例えば、Sigma-Aldrichから購入することができる。
【0087】
N-メチル-3-(トリメトキシシリル)-N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1-プロパンアミンは、別称ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-N-メチルアミンと呼ばれ、Sigma-AldrichチまたはFluorochemから商業的に購入することができる。
【0088】
CAS番号18784-74-2を有する3-(トリエトキシシリル)-N,N-ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1-プロパンアミンは、例えば、FluorochemまたはSigma-Aldrichから購入することができる。
【0089】
別の好ましい態様において、本発明による方法は、組成物(A)が、
・3-(トリメトキシシリル)-N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1-プロパンアミン、
・3-(トリエトキシシリル)-N-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1-プロパンアミン、
・N-メチル-3-(トリメトキシシリル)-N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1-プロパンアミン、
・N-メチル-3-(トリエトキシシリル)-N-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1-プロパンアミン、
・2-[ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミノ]-エタノール、
・2-[ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]アミノ]エタノール、
・3-(トリメトキシシリル)-N,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1-プロパンアミン、
・3-(トリエトキシシリル)-N,N-ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1-プロパンアミン、
・N1,N1-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2-エタンジアミン、
・N1,N1-ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2-エタンジアミン、
・N,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-2-プロペン-1-アミンおよび/または
・N,N-ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-2-プロペン-1-アミン
からなる群から選択される1以上の式(S-II)で示される有機C-Cアルコキシシランおよび/またはその縮合生成物を含むことを特徴とする。
【0090】
さらなる染色実験において、少なくとも1つの式(S-IV):
【化34】
で示される有機C-Cアルコキシシラン(A2)が本発明による方法で使用される場合に、非常に有利であることもわかった。
【0091】
式(S-IV)の化合物は、1、2または3個のケイ素原子を有するシランから選択される有機ケイ素化合物であり、該有機ケイ素化合物は1分子あたり1以上の加水分解性基を含む。
【0092】
式(S-IV):
【化35】
〔式中、
・RはC-C12アルキル基を表し、
・R10はC-Cアルキル基を表し、
・R11はC-Cアルキル基を表し、
・kは1~3の整数であり、
・mは3-kの整数を表す〕
で示される有機ケイ素化合物はまた、アルキル-C-C6-アルコキシ-シラン型のシランと呼ばれることもある。
【0093】
さらなる態様において、本発明による特に好ましい方法は、第1の組成物(A)が式(S-IV):
【化36】
〔式中、
・RはC-C12アルキル基を表し、
・R10はC-Cアルキル基を表し、
・R11はC-Cアルキル基を表し、
・kは1~3の整数であり、
・mは3-kの整数を表す〕
で示される1以上の有機C-Cアルコキシシラン(A2)および/またはそれらの縮合生成物を含むことを特徴とする。
【0094】
式(S-IV)の有機C-Cアルコキシシランでは、R基はC-C12アルキル基を表す。このC-C12アルキル基は飽和しており、直鎖であっても分岐状であってもよい。好ましくは、Rは直鎖C-Cアルキル基を表す。好ましくは、Rはメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、またはn-ドデシル基を表す。とりわけ好ましくは、Rはメチル基、エチル基またはn-オクチル基を表す。
【0095】
式(S-IV)の有機ケイ素化合物では、基R10はC-Cアルキル基を表す。特に好ましくは、R10はメチル基またはエチル基を表す。
【0096】
式(S-IV)の有機ケイ素化合物では、基R11はC-Cアルキル基を表す。特に、R11はメチル基またはエチル基を表す。
【0097】
さらに、kは1~3の整数を表し、mは3-kの整数を表す。kが数3を表す場合、mは0に等しい。kが数2を表す場合、mは1に等しい。kが数1を表す場合、mは2に等しい。
【0098】
組成物(A)が、残基のkが数3を表す式(S-IV)の少なくとも1つの有機C-Cアルコキシシラン(A2)を含有する場合、洗浄堅牢性が最良の着色が得られた。この場合、残りのmは数0を表す。
【0099】
本発明による課題を解決するのに特に適した式(S-IV)の有機ケイ素化合物は以下である。
・メチルトリメトキシシラン、
【化37】
・メチルトリエトキシシラン、
【化38】
・エチルトリメトキシシラン、
【化39】
・エチルトリエトキシシラン、
【化40】
・n-プロピルトリメトキシシラン(プロピルトリメトキシシランとしても知られる)、
【化41】
・n-プロピルトリエトキシシラン(プロピルトリエトキシシランとしても知られる)、
【化42】
・n-ヘキシルトリメトキシシラン(ヘキシルトリメトキシシランとも呼ばれる)、
【化43】
・n-ヘキシルトリエトキシシラン(ヘキシルトリエトキシシランとも呼ばれる)、
【化44】
・n-オクチルトリメトキシシラン(オクチルトリメトキシシランとしても知られる)、
【化45】
・n-オクチルトリエトキシシラン(オクチルトリエトキシシランとしても知られる)、
【化46】
・n-ドデシルトリメトキシシラン(ドデシルトリメトキシシランとも呼ばれる)、および/または
【化47】
・n-ドデシルトリエトキシシラン(ドデシルトリエトキシシランとも呼ばれる)
【化48】
【0100】
さらなる好ましい態様において、本発明による方法は、第1の組成物(A)が、
・メチルトリメトキシシラン
・メチルトリエトキシシラン
・エチルトリメトキシシラン
・エチルトリエトキシシラン
・ヘキシルトリメトキシシラン
・ヘキシルトリエトキシシラン
・オクチルトリメトキシシラン
・オクチルトリエトキシシラン
・ドデシルトリメトキシシラン
・ドデシルトリエトキシシラン
からなる群から選択される少なくとも1つの式(S-IV)のC-C有機アルコキシシラン(A2)および/またはそれらの縮合生成物を含むことを特徴とする。
【0101】
対応する加水分解生成物または縮合生成物は、例えば以下の化合物である。
式(S-I)のC-Cアルコキシシランの水による加水分解(3-アミノプロピルトリエトキシシランの例を用いた反応スキーム):
【化49】
使用される水の量に応じて、加水分解反応は、使用されるC-Cアルコキシシラン1つあたり数回行うことも可能である。
【化50】
または
【化51】
式(S-IV)のC-Cアルコキシシランの水による加水分解(メチルトリメトキシシランの例を用いた反応スキーム):
【化52】
使用される水の量に応じて、加水分解反応は、使用されるC-Cアルコキシシラン1つあたり数回行うことも可能である。
【化53】
または
【化54】
【0102】
考えられる縮合反応は、例えば以下である((3-アミノプロピル)トリエトキシシランとメチルトリメトキシシランの混合物で示される)。
【化55】
および/または
【化56】
および/または
【化57】
および/または
【化58】
および/または
【化59】
および/または
【化60】
および/または
【化61】
【0103】
上記の例示的な反応スキームでは、いずれの場合も二量体への縮合を示しているが、いくつかのシラン原子をもつオリゴマーへのさらなる縮合も可能であり、また好ましい。
【0104】
これらの縮合反応に、式(S-I)のC-C-アルコキシシランが部分的に加水分解されたものと完全に加水分解されたものの両方が関与でき、未反応の式(S-I)のC-C-アルコキシシランが部分的に加水分解されたものまたは完全に加水分解されたものとも縮合する。この場合は、式(S-I)のC-Cアルコキシシランは、それ自体と反応する。
【0105】
さらに、式(S-I)のC-C-アルコキシシランが部分的に加水分解されたものと完全に加水分解されたものの両方が縮合反応に関与でき、未反応の、または部分的に若しくは完全に加水分解された式(S-IV)のC-C-アルコキシシランと縮合する。この場合は、式(S-I)のC-Cアルコキシシランは、式(S-IV)のC-Cアルコキシシランと反応する。
【0106】
さらに、式(S-IV)のC-C-アルコキシシランが部分的に加水分解されたものと完全に加水分解されたものの両方が縮合反応に関与でき、未反応の、または部分的に若しくは完全に加水分解された式(S-IV)のC-C-アルコキシシランと縮合する。この場合は、式(S-IV)のC-Cアルコキシシランは、それ自体と反応する。
【0107】
本発明による組成物(A)は、1以上の有機C-Cアルコキシシラン(A2)をさまざまな割合で含むことができる。これは、ケラチン物質上のシランコーティングの所望の厚さおよび処理されるケラチン物質の量に応じて、当業者によって決定される。
【0108】
組成物(A)が、その総重量に対して、30.0~85.0重量%、好ましくは35.0~80.0重量%、より好ましくは40.0~75.0重量%、さらにより好ましくは45.0~70.0重量%、非常に好ましくは50.0~65.0重量%の総量で、1以上の有機C-C-アルコキシシラン(A2)および/またはその縮合生成物を含有する場合、使用時の染色結果が非常に良好で、特に貯蔵安定な調製物を得ることができた。
【0109】
さらなる態様において、非常好ましい方法は、第1の組成物(A)が、組成物(A)の総重量に対して、30.0~85.0重量%、好ましくは35.0~80.0重量%、より好ましくは40.0~75.0重量%、さらにより好ましくは45.0~70.0重量%、非常に好ましくは50.0~65.0重量%の総量で、1以上の有機C-Cアルコキシシラン(A2)および/またはその縮合生成物を含むことを特徴とする。
【0110】
<組成物(A)中の他の化粧品成分>
原則として、組成物(A)はまた、1以上のさらなる化粧品成分を含み得る。
【0111】
組成物(A)中に任意に使用し得る化粧品成分は、製品にさらなる有益な特性を付与するための任意の好適な成分でありうる。例えば、組成物(A)は、溶媒、増粘または被膜形成ポリマー、非イオン性、カチオン性、アニオン性または双性イオン性/両性界面活性剤からなる群からの界面活性化合物、顔料、直接染料、酸化染料前駆体からなる群からの着色化合物、C-C30脂肪アルコール、炭化水素化合物、脂肪酸エステルからなる群からの脂肪成分、pH調整剤からなる群に属する酸および塩基、香料、保存料、植物抽出物並びにタンパク質加水分解物を含有することができる。
【0112】
これらの他の物質の選択は、剤の所望の特性に応じて当業者によって行われる。他の任意の成分とそれらの成分の使用量については、当業者に既知の関連マニュアルを明示的に参照する。
【0113】
しかし、前述のように,有機C~Cアルコキシシラン(A2)は、水だけでなく、他の化粧品成分とも反応し得る。したがって、これらの望ましくない反応を避けるために、アルコキシシランを含む調製物(A)は、好ましくは他の成分を含有しない、またはアルコキシシランに対して化学的に不活性であることがわかっている選択された成分のみを含有する。これに関連して、組成物(A)において、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンおよび/またはデカメチルシクロペンタシロキサンからなる群から選択される化粧品成分を使用することが、特に好ましいことがわかった。
【0114】
別の特に好ましい態様では、本発明による方法は、第1の組成物(A)が、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンおよびデカメチルシクロペンタシロキサンからなる群から選択される少なくとも1つの化粧品成分を含むことを特徴とする。
【0115】
ヘキサメチルジシロキサンはCAS番号107-46-0であり、例えば、Sigma-Aldrichから商業的に購入することができる。
【化62】
【0116】
オクタメチルトリシロキサンはCAS番号107-51-7であり、やはりSigma-Aldrichから市販されている。
【化63】
【0117】
デカメチルテトラシロキサンはCAS番号141-62-8であり、やはりSigma-Aldrichから市販されている。
【化64】
【0118】
ヘキサメチルシクロトリシロキサンはCAS番号541-05-9である。
【0119】
オクタメチルシクロテトラシロキサンはCAS番号556-67-2である。
【0120】
デカメチルシクロペンタシロキサンはCAS番号541-02-6である。
【0121】
組成物(A)におけるヘキサメチルジシロキサンの使用が特に好ましいことが分かった。特に好ましくは、ヘキサメチルジシロキサンは、組成物(A)の総重量に対して、10.0~50.0重量%、好ましくは15.0~45.0重量%、さらに好ましくは20.0~40.0重量%、一層さらに好ましくは25.0~35.0重量%、最も好ましくは31.0~34.0重量%の量で組成物(A)に存在する。
【0122】
さらなる特に好ましい態様において、本発明による装置は
【0123】
方法は、第1の組成物が(A)が、組成物(A)の総重量に対して、10.0~50.0重量%、好ましくは15.0~45.0重量%、さらに好ましくは20.0~40.0重量%、一層さらに好ましくは25.0~35.0重量%、非常に好ましくは31.0~34.0重量%のヘキサメチルジシロキサンを含有することを特徴とする。
【0124】
<組成物(B)の水分含量(B1)>
本発明による方法の特徴は、第2の組成物(B)をケラチン物質、特にヒトの毛髪に適用することである。
【0125】
ケラチン物質に適用されると、組成物(A)および(B)は接触し、この接触は、2つの組成物(A)および(B)の事前の混合によって確立されることが特に好ましい。(A)と(B)を混合すると、即用のケラチン処理剤が得られる。すなわち、安定しているまたは保存可能であるシランブレンド(A)は、(B)との接触によってその反応性形態に変換される。組成物(A)と(B)の混合は、アルコキシ-シランモノマーまたはアルコキシ-シランオリゴマーに由来する重合反応を開始し、それが最終的にケラチン物質上の被膜またはコーティングの形成をもたらす。
【0126】
有機C-Cアルコキシシランと接触する水が多ければ多いほど、重合反応の程度が大きくなる。例えば、組成物(B)が多くの水を含有する場合、低水分組成物(A)にすでに存在していたモノマーまたはオリゴマーのシラン縮合物は、今度は重合して、より高い分子量または高分子量のポリマーを形成する。次いで、高分子量のシランポリマーはケラチン物質上に被膜を形成する。このため、水(B1)は、組成物(B)の発明の必須成分である。
【0127】
組成物(B)中の水の量は、塗布時のC-C有機アルコキシシラン(A2)の重合速度を決定するのに役立ち得る。頭部全体を染色する際に、均一な色の仕上がりを確保するために、重合速度、すなわちコーティングが形成される速度が速すぎてはならない。このため、組成物(B)において水の量が多すぎないように選択することが特に好ましいことがわかった。
【0128】
組成物(B)が、組成物(B)の総重量に対して、0.1~60.0重量%、好ましくは0.1~40.0重量%、より好ましくは0.1~20.0重量%、さらにより好ましくは1.0~10.0重量%、非常に特に好ましくは1.0~5.0重量%の水(B1)を含有する場合に、頭部全体に特に均一な着色を得ることができた。
【0129】
別の特に好ましい態様において、本発明による方法は、第2の組成物(B)が、組成物(B)の総重量に対して、0.1~60.0重量%、好ましくは0.1~40.0重量%、より好ましくは0.1~20.0重量%、さらにより好ましくは1.0~10.0重量%、非常に特に好ましくは1.0~5.0重量%の水(B1)を含有することを特徴とする。
【0130】
<組成物(B)における式(AG-I)のアルキレングリコール>
また、組成物(B)は、式(AG-I):
【化65】
〔式中、
xは、0~800の整数を表し、
yは、0~800の整数を表し、
Ra、Rbは、互いに独立して、水素原子、C-Cアルキル基またはヒドロキシ-C-Cアルキル基を表し、
Rcは、水素原子、C-Cアルキル基、フェニル基またはベンジル基を表す、
但し、x+yは少なくとも1である〕
で示される
で示される少なくとも1つのアルキレングリコール(B2)を含有することを特徴とする。
【0131】
驚くべきことに、式(AG-I)で示される少なくとも1つの特定のアルキレングリコールの使用により、有機C-Cアルコキシシランの反応速度が、頭部全体にわたって均一な着色を可能にするように最適化されることが見出された。
【0132】
式(AG-I)のアルキレングリコールは、少なくとも1つのヒドロキシ基を有するプロトン性物質である。この理論に縛られることなく、アルキレングリコールは、そのヒドロキシル基を介してC-Cアルコキシシランと反応できるが、アルキレングリコール(AG-I)とC-Cアルコキシシランとの間の反応は、水とC-Cアルコキシシランとの間の類似の反応よりもゆっくりであると考えられている。要するに、このようにしてC-Cアルコキシシランの加水分解および/または縮合反応は減少する。
【0133】
式(AG-I)の化合物中の置換基Ra、Rb、Rcを以下に例示する。
-Cアルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチルおよびn-ヘキシル基などが挙げられる。プロピル、エチルおよびメチルが好ましいアルキル基である。ヒドロキシ-C-C-アルキル基の好ましい例としては、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、4-ヒドロキシブチル基、5-ヒドロキシペンチル基、および6-ヒドロキシヘキシル基が挙げられ、ヒドロキシメチル基および2-ヒドロキシエチル基が特に好ましい。
【0134】
基Ra、RbおよびRc並びにxおよびyを変化させることによって、アルキレングリコール(AG-I)の極性を調整することができ、C-Cアルコキシシランの重合速度を、選択した塗布条件に特に良好に適合させることができる。
【0135】
式(AG-I)のアルキレングリコール(B2)では、xは0~800の整数であり得る。
一態様において、xが1~800の整数、好ましくは1~400の整数、より好ましくは2~200の整数、さらにより好ましくは4~150の整数、最も好ましくは4~60の整数であるとき、特に良好な結果が得られた。
【0136】
基yは0~800の整数を表し得る。この態様に関しては、yが数0を表すことがさらに特に好ましい。yが0のとき、式(AG-I)のアルキレングリコールの基RaおよびRbは存在しない。
【0137】
基Rcは、水素原子、C-Cアルキル基、フェニル基またはベンジル基を表すことができる。この態様に関しては、Rcが水素原子を表すとき、さらに特に好ましい。
【0138】
非常に好ましい態様において、本発明による方法は、第2の組成物(B)が、式(AG-I)中、
xが、1~800の整数、好ましくは1~400の整数、より好ましくは2~200の整数、さらにより好ましくは4~150の整数、最も好ましくは4~60の整数であり、
yが、数0を表し、
Rcが、水素原子を表す、
式(AG-I)で示される1以上のアルキレングリコール(B2)を含むことを特徴とする。
【0139】
この態様の非常に好ましいアルキレングリコール(B2)は、式(AG-Ia):
【化66】
〔式中、
xは、1~800の整数、好ましくは1~400の整数、より好ましくは2~200の整数、さらにより好ましくは4~150の整数、最も好ましくは4~60の整数である〕
で示される化合物である。
【0140】
特に好ましい式(AG-Ia)の化合物はポリエチレングリコールとしても知られている。すべてのポリエチレングリコールの重要な特性は、それらの水との混和性である。
【0141】
平均分子量が200g/mol~400g/molのポリエチレングリコールは、室温では不揮発性の液体である。PEG600は融点範囲が17~22℃であり、したがってペースト様の稠度である。分子量が3000g/molを超えると、PEGは固体物質であり、フレークやパウダーとして市場に出ている。
【0142】
明示的に非常に好ましい式(AG-Ia):
【化67】
〔式中、xは6、7、8、9または10に等しい〕
のアルキレングリコール(B2)として、例えば、化合物PEG-6、PEG-7、PEG-8、PEG-9およびPEG-10を挙げることができる。
【0143】
特に好ましいポリエチレングリコールは、例えばPEG-8である。PEG-8は、8個のエチレングリコール単位(x=8)を含み、平均分子量が400g/molであり、CAS番号25322-68-3である。PEG-8はPEG400としても知られ、例えばAPSから市販されている。
【0144】
さらに、明示的に非常に好ましい式(AG-Ia):
【化68】
〔式中、xは30、31、32、33、34または35に等しい〕
のアルキレングリコール(B2)として、例えば、化合物PEG-30、PEG-31、PEG-32、PEG-33、PEG-34およびPEG-35を挙げることができる。
【0145】
別の非常に好ましいポリエチレングリコールは、例えばPEG-32である。PEG-32は、32個のエチレングリコール単位(x=32)を含み、平均分子量が1500g/molであり、CAS番号25322-68-3である。PEG-32はPEG1500としても知られ、例えばClariantから商業的に購入することができる。
【0146】
他の式(AG-I)のアルキレングリコール(B2)も、本発明による課題を解決するのに非常に適していることが判明した。さらに、式(AG-I)のアルキレングリコール(B2)であって、
xが、数0を表し、
yが、1~800の整数、好ましくは1~400の整数、より好ましくは1~200の整数、さらにより好ましくは1~50の整数、最も好ましくは数1であり、
Ra、Rbが、互いに独立して、水素原子、C-Cアルキル基またはヒドロキシ-C-Cアルキル基を表し、
Rcが、水素原子またはC-Cアルキルを表す
アルキレングリコールが特に好ましい。
【0147】
非常に好ましい態様において、本発明による方法は、第2の組成物(B)が、式(AG-I)中、
xが、数0を表し、
yが、1~800の整数、好ましくは1~400の整数、より好ましくは1~200の整数、さらにより好ましくは1~50の整数、最も好ましくは数1であり、
Ra、Rbが、互いに独立して、水素原子、C-Cアルキル基またはヒドロキシ-C-Cアルキル基を表し、
Rcが、水素原子またはC-Cアルキルを表す、
式(AG-I)で示される1以上のアルキレングリコール(B2)を含むことを特徴とする。
【0148】
この態様の非常に好ましいアルキレングリコール(B2)は、式(AG-Ib):
【化69】
〔式中、
yは、1~800の整数、好ましくは1~400の整数、より好ましくは1~200の整数、さらにより好ましくは1~50の整数、最も好ましくは数1であり、
Ra、Rbは、互いに独立して、水素原子、C-Cアルキル基またはヒドロキシ-C-Cアルキル基を表し、
Rcは、水素原子またはC-Cアルキルを表す〕
の化合物である。
【0149】
特に好ましい、式(AG-Ib):
〔式中、
yは1に等しく、
Raは水素であり、
Rbは水素であり、
Rcは水素である〕
で示されるアルキレングリコール(B2)は、エチレングリコールである。
【0150】
エチレングリコールは、1,2-エタンジオールとしても知られ、CAS番号107-21-1である。
【0151】
特に好ましい、式(AG-Ib):
〔式中、
yは1に等しく、
Raはメチル基であり、
Rbは水素であり、
Rcは水素である〕
で示されるアルキレングリコール(B2)は、1,2-プロピレングリコールである。
【0152】
1,2-プロピレングリコールは、別称1,2-プロパンジオールとしても知られ、CAS番号57-55-6[(RS)-1,2-ジヒドロキシプロパン]、同4254-14-2[(R)-1,2-ジヒドロキシプロパン]および同4254-15-3[(S)-1,2-ジヒドロキシプロパン]である。
【0153】
別の特に好ましい、式(AG-Ib):
〔式中、
yは1に等しく、
Raはヒドロキシメチル基であり、
Rbは水素であり、
Rcは水素である〕
で示されるアルキレングリコール(B2)は、グリセリンである。
【0154】
グリセリンは、1,2,3-プロパントリオールとしても知られ、CAS番号は56-81-5である。
【0155】
他の好ましい、式(AG-Ib):
〔式中、
yは1に等しく、
Raは水素であり、
Rbは水素であり、
RcはC-Cアルキル基である〕
で示されるアルキレングリコール(B2)は、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルである。
【0156】
他の式(AG-I)のアルキレングリコール(B2)も、本発明による課題を解決するのに非常に適していることが判明した。さらに、式(AG-I)のアルキレングリコール(B2)であって、
xが、数0を表し、
yが、数1を表し、
Ra、Rbが、ともに水素原子を表し、
Rcが、フェニル基を表す
アルキレングリコールが特に好ましい。
【0157】
非常に好ましい態様では、本発明による方法は、第2の組成物(B)が、式(AG-I):
〔式中、
xが、数0を表し、
yが、数1を表し、
Ra、Rbが、水素原子を表し、
Rcが、フェニル基またはベンジル基を表す〕
で示される1つ以上のアルキレングリコール(B2)を含むことを特徴とする。
【0158】
この態様の非常に好ましいアルキレングリコール(B2)は、式(AG-Ic):
【化70】
〔式中、Rcは、フェニル基またはベンジル基を表す〕
の化合物である。
【0159】
特に好ましい、Rcがフェニル基である式(AG-Ic)で示されるアルキレングリコール(B2)は、フェノキシエタノールである。フェノキシエタノールはCAS番号122-99-6である。
【0160】
上記の式(AG-I)のアルキレングリコール(B2)はすべて、AldrichまたはFlukaなどのさまざまな化学メーカーから市販されている。
【0161】
式(AG-I)のアルキレングリコール(B2)の適切な量を選択することによって、C1-C6アルコキシシランに由来するフィルム形成の速度が、特に強く共に決定される。このため、1以上のアルキレングリコール(B2)をとりわけ特定の量の範囲で使用することが特に好ましいことがわかった。
【0162】
第2の組成物(B)が、組成物(B)の総重量に対して、5.0~95.0重量%、好ましくは10.0~95.0重量%、より好ましくは30.0~95.0重量%、さらにより好ましくは50.0~95.0重量%、非常に好ましくは70.0~95.0重量%の総量で1以上の式(AG-I)のアルキレングリコール(B2)を含む場合、特に好ましい。
【0163】
別の特に好ましい態様では、本発明による方法は、第2の組成物(B)が、組成物(B)の総重量に対して、5.0~95.0重量%、好ましくは10.0~95.0重量%、より好ましくは30.0~95.0重量%、さらにより好ましくは50.0~95.0重量%、非常に好ましくは70.0~95.0重量%の総量で1以上の式(AG-I)のアルキレングリコール(B2)を含むことを特徴とする。
【0164】
<組成物(B)中の他の化粧品成分>
組成物(B)は、1以上の他の化粧品成分をさらに含んでいてもよい。
【0165】
組成物(B)に任意に使用できる化粧品成分は、製品にさらなる有益な特性を付与するための任意の好適な成分であり得る。例えば、組成物(A)は、溶媒、増粘または被膜形成ポリマー、非イオン性、カチオン性、アニオン性または双性イオン/両性界面活性剤からなる群からの界面活性化合物、顔料、直接染料、酸化染料前駆体からなる群からの着色化合物、C-C30脂肪アルコール、炭化水素化合物、脂肪酸エステルからなる群からの脂肪成分、pH調整剤からなる群に属する酸および塩基、香料、保存料、植物抽出物並びにタンパク質加水分解物を含有することができる。
【0166】
本発明による方法がケラチン物質を着色する方法である場合、組成物(B)は、非常に好ましくは顔料および/または直接染料からなる群から選択される少なくとも1つの着色化合物を含むことができる。
【0167】
これらの他の物質の選択は、剤の所望の特性に応じて当業者によって行われる。その他の任意の成分とその成分の使用量については、当業者に既知の関連マニュアルを明示的に参照する。
【0168】
<本発明の方法における組成物のpH値>
さらなる実験において、組成物(A)および/または(B)のpH値は、使用中に起こる上記の加水分解または縮合反応に対して影響を及ぼしうることが見出されている。特にアルカリ性のpH値はオリゴマー段階で縮合を停止することがわかった。反応混合物がより酸性であるほど、縮合がより強く進行すると思われ、縮合中に形成されるシラン縮合物の分子量がより大きくなる。このため、組成物(A)および/または(B)は、pHが7.0~12.0、好ましくは7.5~11.5、より好ましくは8.5~11.0、最も好ましくは9.0~11.0であることが好ましい。
【0169】
組成物(A)の水分含量は最大で10.0重量%であり、好ましくはさらに低く設定される。いくつかの態様においては、組成物(B)の水分含量も低くなるよう選択され得る。とりわけ、水分含量が非常に低い組成物の場合、従来技術から公知の通常の方法(組合せ電極を介したガラス電極またはpH指示薬紙によるpH値測定)を用いたpH値の測定は困難なことが判明し得る。このため、本発明によるpH値は、1:1の重量比で蒸留水と混合またはそれに希釈した後に得られるものである。
【0170】
したがって、対応するpHは、例えば50gの本発明の組成物を50gの蒸留水と混合した後に測定される。
【0171】
別の特に好ましい態様において、本発明による方法は、組成物(A)および/または(B)が、1:1の重量比で蒸留水に希釈された後、pHが7.0~11.5、より好ましくは8.5~11.0、最も好ましくは9.0~11.0であることを特徴とする。
【0172】
このアルカリ性のpHを調整するために、反応混合物にアルカリ化剤および/または酸性化剤を添加することが必要な場合がある。本発明でのpH値は、22℃の温度で測定されるpH値である。
【0173】
例えば、アンモニア、アルカノールアミンおよび/または塩基性アミノ酸が、アルカリ化剤として使用することができる。
【0174】
アルカノールアミンは、少なくとも1つのヒドロキシル基をもつC-Cアルキル主鎖を有する第一級アミンから選択することができる。好ましいアルカノールアミンは、2-アミノエタン-1-オール(モノエタノールアミン)、3-アミノプロパン-1-オール、4-アミノブタン-1-オール、5-アミノペンタン-1-オール、1-アミノプロパン-2-オール、1-アミノブタン-2-オール、1-アミノペンタン-2-オール、1-アミノペンタン-3-オール、1-アミノペンタン-4-オール、3-アミノ-2-メチルプロパン-1-オール、1-アミノ-2-メチルプロパン-2-オール、3-アミノプロパン-1,2-ジオール、2-アミノ-2-メチルプロパン-1,3-ジオールによって形成される群から選択される。
【0175】
本発明では、アミノ酸は、その構造中に少なくとも1つのプロトン化性アミノ基および少なくとも1つの-COOHまたは1つの-SOH基を含有する有機化合物である。好ましいアミノ酸は、アミノカルボン酸であり、とりわけα-(アルファ)-アミノカルボン酸およびω-アミノカルボン酸であり、ω-アミノカルボン酸が特に好ましい。
【0176】
本発明によれば、塩基性アミノ酸は、等電点pIが7.0より大きいアミノ酸である。
【0177】
塩基性α-アミノカルボン酸は少なくとも1つの不斉炭素原子を含有する。本発明の文脈では、考えられ得る両方のエナンチオマーが、特定の化合物またはそれらの混合物として等しく使用でき、とりわけラセミ体として使用することができる。しかし、天然状態で好ましい異性体形態、通常、L体を使用することが特に有利である。
【0178】
塩基性アミノ酸は、アルギニン、リジン、オルニチンおよびヒスチジン、とりわけ好ましくはアルギニンおよびリシンによって形成される群から選択される。したがって、別の特に好ましい態様では、本発明による剤は、アルカリ化剤が、アルギニン、リジン、オルニチンおよび/またはヒスチジンの群からの塩基性アミノ酸であることを特徴とする。
【0179】
さらに、無機アルカリ化剤も使用することができる。本発明に従って使用可能な無機アルカリ化剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムからなる群から選択されることが好ましい。
【0180】
非常に好ましいアルカリ化剤は、アンモニア、2-アミノエタン-1-オール(モノエタノールアミン)、3-アミノプロパン-1-オール、4-アミノブタン-1-オール、5-アミノペンタン-1-オール、1-アミノプロパン-2-オール、1-アミノブタン-2-オール、1-アミノペンタン-2-オール、1-アミノペンタン-3-オール、1-アミノペンタン-4-オール、3-アミノ-2-メチルプロパン-1-オール、1-アミノ-2-メチルプロパン-2-オール、3-アミノプロパン-1,2-ジオール、2-アミノ-2-メチルプロパン-1,3-ジオール、アルギニン、リジン、オルニチン、ヒスチジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムである。
【0181】
上記のアルカリ化剤に加えて、当業者は、pH値を微調整するための一般的な酸性化剤についても熟知している。本発明によれば、好ましい酸性化剤は、クエン酸、酢酸、リンゴ酸または酒石酸などの食用酸および希釈鉱酸である。
【0182】
<組成物(A)および(B)の使用>
本発明による方法は、組成物(A)と(B)の両方をケラチン物質に塗布することを含む。組成物(A)および(B)がケラチン物質上で互いに接触することは、この方法にとって不可欠である。前述のように、その接触は、(A)と(B)をあらかじめ混合することまたは(A)と(B)をケラチン物質に連続して塗布することのいずれによっても可能である。
【0183】
本発明に至る研究により、アルキレングリコール(B2)を含む水含有組成物(B)は、特に組成物(A)および(B)が使用前に一緒に混合された場合に、低水分シランブレンド(すなわち組成物(A))に対して最適な影響を及ぼし得ることが示されている。
【0184】
この混合は、例えば撹拌または振盪によって行うことができる。2つの組成物(A)および(B)を2つの容器で別々に調製し、次いで使用前に、組成物(A)の全量をその容器から第2の組成物(B)が入っている容器に移すことが、特に有利である。
【0185】
非常に好ましい態様において、本発明による方法は、第1の組成物(A)を第2の組成物(B)と混合することによって塗布直前に調製された組成物がケラチン物質に塗布されることを特徴とする。
【0186】
2つの組成物(A)および(B)は異なる割合で一緒に混合することができる。
【0187】
特に好ましくは、組成物(A)は、組成物(B)との混合によって準希釈され、比較的高濃度の低水分シランブレンドの形態で使用される。このため、組成物(A)を重量基準で過剰な組成物(B)と混合することが特に好ましい。例えば、1重量部の(A)を20重量部の(B)と混合してもよく、1重量部の(A)を10重量部の(B)と混合してもよく、または1重量部の(A)を5重量部の(B)と混合してもよい。
【0188】
非常に好ましい態様では、本発明による方法は、第1の組成物(A)と第2の組成物(B)を1:5~1:20の量比(A)/(B)で混合することによって塗布直前に調製された組成物を、ケラチン物質に塗布することを特徴とする。
【0189】
原則として、組成物(A)を組成物(B)に対して重量基準で過剰に使用することも可能である。例えば、20重量部の(A)を1重量部の(B)と混合してもよく、10重量部の(A)を1重量部の(B)と混合してもよく、または5重量部の(A)を1重量部の(B)と混合してもよい。
【0190】
さらに、組成物(A)と(B)をケラチン物質に連続して塗布し、その結果(A)と(B)の接触がケラチン物質上でのみ起こるようにすることも考えられる。この態様において、好ましくは組成物(A)と(B)の塗布の間にケラチンマトリックスの洗浄は行わず、すなわち、水または水および界面活性剤によるケラチンマトリックスの処理は行わない。
【0191】
1態様において、組成物(A)および(B)の両方のみが使用され得る。特に、ケラチン物質を染色するために本発明による方法を使用する場合、2つの組成物(A)と(B)だけでなく、さらに少なくとも1つの第3の組成物(C)がケラチン物質に塗布される場合も特に好ましいことがある。
【0192】
ケラチン物質を着色する方法において、第3の組成物(C)は、例えば、顔料および/または直接染料からなる群から選択される少なくとも1つの着色化合物を含む組成物であり得る。
【0193】
さらなる態様において、非常に好ましいのは、以下がケラチン物質に塗布される本発明による方法である。
・以下を含む第3の組成物(C)
顔料および/または直接染料からなる群から選択される少なくとも1つの着色化合物。
【0194】
3つの組成物(A)、(B)および(C)を使用する種々の態様が本発明によるものである。
【0195】
1態様において、塗布前に3つの組成物(A)、(B)および(C)の混合物を調製し、次いでこの混合物をケラチン物質に塗布することが特に好ましい。
【0196】
特に好ましい態様において、本発明による方法は、第1の組成物(A)を第2の組成物(B)および第3の組成物(C)と混合することによって使用直前に得られた組成物をケラチン物質に塗布することを特徴とし、第3の組成物(C)は、顔料および/または直接染料からなる群から選択される少なくとも1つの着色化合物を含む。
【0197】
ケラチン物質を着色する場合、第1の組成物(A)と第2の組成物(B)を混合することによって使用直前に混合物を調製し、この(A)と(B)の混合物をケラチン物質に塗布することが特に好ましいこともある。次いで、着色化合物を含有する第3の組成物(C)をケラチン物質に加えることができる。
【0198】
非常に好ましい態様の枠組み内では、本発明による方法は、第1の組成物(A)を第2の組成物(B)と混合することによって塗布直前に得られた組成物をケラチン物質に塗布し、続いて組成物(C)をケラチン物質に塗布することを特徴とする。
【0199】
言い換えると、本発明による特に好ましい方法は、第1工程において、第1の組成物(A)と第2の組成物(B)を混合することによって塗布直前に調製された組成物をケラチン物質に塗布し、第2工程において、第3の組成物(C)をケラチン物質に塗布することを特徴とする。
【0200】
組成物(A)および(B)-または(A)、(B)および(C)-に加えて、本発明による方法の一部として、第4の組成物(D)をケラチン物質に塗布してもよい。第4の組成物(D)の塗布は、先に得られた着色を再封止するために染色方法において特に好ましい。このシーリングのために、組成物(D)は、例えば少なくとも1つの被膜形成ポリマーを含有することができる。
【0201】
言い換えると、さらに本発明による非常に好ましい方法は、以下がケラチン物質に塗布されるものである。
・以下を含む第4の組成物(D)
少なくとも1つの被膜形成ポリマー。
【0202】
<着色化合物>
本発明の方法により調製された剤を染色方法で使用する場合、1以上の色付与化合物を用いてもよい。
【0203】
特に、調製物(B)および/または場合により含まれる調製物(C)は、さらに少なくとも1つの色付与化合物を含んでいてもよい。
【0204】
1以上の着色化合物は、好ましくは顔料、直接染料、酸化染料、フォトクロミック染料およびサーモクロミック染料、より好ましくは顔料および/または直接染料から選択される。
【0205】
本発明の意味の範囲内の顔料とは、25℃での水への溶解度が0.5g/L未満、好ましくは0.1g/L未満、さらにより好ましくは0.05g/L未満の着色化合物である。水への溶解度は、例えば下記の方法で測定できる。0.5gの顔料をビーカーに入れて秤量する。攪拌子を加える。次いで1リットルの蒸留水を加える。この混合物をマグネチックスターラーで撹拌しながら25℃まで1時間加熱する。この時間のあと、顔料の未溶解成分が混合物中に見える場合、顔料の溶解度は0.5g/L未満である。顔料と水の混合物が、細かく分散し得る顔料の強度が高いために目視で評価できない場合、混合物を濾過する。未溶解の顔料の一部が濾紙上に残った場合、顔料の溶解度は0.5g/L未満である。
【0206】
好適な着色顔料は、無機および/または有機由来であり得る。
【0207】
好ましい態様において、本発明による剤は、無機および/または有機顔料の群からの少なくとも1つの着色化合物を含有することを特徴とする。
【0208】
好ましい着色顔料は、合成または天然の無機顔料から選択される。天然由来の無機着色顔料は、例えば、チョーク、黄土、アンバー、緑土、バーントテラ・ディ・シエナ、またはグラファイトから作ることができる。さらに、酸化鉄ブラックなどの黒色顔料、ウルトラマリンまたは酸化鉄レッドなどの有色顔料、および蛍光または燐光顔料も無機着色顔料として使用することができる。
【0209】
特に好適なのは、着色金属酸化物、水酸化物および酸化物水和物、混相顔料、硫黄含有ケイ酸塩、ケイ酸塩、金属硫化物、錯体金属シアン化物、金属硫化物、クロム酸塩並びに/またはモリブデン酸塩である。特に、好ましい着色顔料は、黒色酸化鉄(CI77499)、黄色酸化鉄(CI77492)、赤色および茶色酸化鉄(CI77491)、マンガンバイオレット(CI77742)、ウルトラマリン(アルミニウムスルホケイ酸ナトリウム、CI77007、ピグメントブルー29)、酸化クロム水和物(CI77289)、アイアンブルー(フェロシアン化第二鉄、CI77510)および/またはカルミン(コチニール)である。
【0210】
本発明によれば、また特に好ましい顔料の群からの着色化合物は、着色された真珠光沢顔料である。これらは通常、雲母および/または雲母ベースであり、1以上の金属酸化物でコーティングされ得る。雲母は、層状ケイ酸塩に属する。これらのケイ酸塩の最も重要な代表的なものは、白雲母、金雲母、ソーダ雲母、黒雲母、リチア雲母および真珠雲母である。金属酸化物と組み合わせて真珠光沢顔料を作るには、雲母、主に白雲母または金雲母が金属酸化物でコーティングされる。
【0211】
特に好ましい態様において、本発明による方法は、組成物(B)および/または組成物(C)が、着色金属酸化物、金属水酸化物、金属酸化物水和物、ケイ酸塩、金属硫化物、錯体金属シアン化物、金属硫化物、ブロンズ顔料の群から選ばれる無機顔料並びに/または少なくとも1つの金属酸化物および/若しくは金属オキシ塩化物でコーティングされた着色雲母若しくは雲母ベース顔料から選ばれる少なくとも1つの着色化合物を含むことを特徴とする。
【0212】
天然の雲母に代わるものとして、1以上の金属酸化物で被覆した合成雲母を真珠光沢顔料として使用することもできる。とりわけ好ましい真珠光沢顔料は、天然または合成の雲母(マイカ)をベースとし、1以上の上記金属酸化物でコーティングされている。それぞれの顔料の色は、金属酸化物の層の厚さを変えることによって変化させることができる。
【0213】
さらなる好ましい態様において、本発明による剤は、それが、着色金属酸化物、金属水酸化物、金属酸化物水和物、ケイ酸塩、金属硫化物、錯体金属シアン化物、金属硫化物、ブロンズ顔料の群から選ばれる顔料の群から、かつ/または少なくとも1つの金属酸化物および/若しくは金属オキシ塩化物でコーティングされた雲母-若しくは雲母ベース着色化合物から選ばれる少なくとも1つの着色化合物を含むことを特徴とする。
【0214】
別の好ましい態様では、本発明による組成物(B)および/または組成物(C)は、それが、二酸化チタン(CI77891)、黒色酸化鉄(CI77499)、黄色酸化鉄(CI77492)、赤および/若しくは褐色酸化鉄(CI77491、CI77499)、マンガンバイオレット(CI77742)、ウルトラマリン(アルミニウムスルホケイ酸ナトリウム、CI77007、ピグメントブルー29)、酸化クロム水和物(CI77289)、酸化クロム(CI77288)並びに/またはアイアンブルー(フェロシアン化第二鉄、CI77510)からなる群から選択される1以上の金属酸化物でコーティングされる雲母または雲母ベース顔料から選択される少なくとも1つの着色化合物を含むことを特徴とする。
【0215】
特に好適な着色顔料の例は、商品名Rona(登録商標)、Colorona(登録商標)、Xirona(登録商標)、Dichrona(登録商標)およびTimiron(登録商標)でMerckから、Ariabel(登録商標)およびUnipure(登録商標)でSensientから、Prestige(登録商標)でEckart Cosmetic Colorsから、およびSunshine(登録商標)でSunstarから市販されているものである。
【0216】
商品名Colorona(登録商標)を有する特に非常に好ましい着色顔料は、例えば:
Colorona Copper,Merck,雲母,CI77491(酸化鉄)
Colorona Passion Orange,Merck,雲母,CI77491(酸化鉄)、アルミナ
Colorona Patina Silver,Merck,雲母,CI77499(酸化鉄)、CI77891(二酸化チタン)
Colorona RY,Merck,CI77891(二酸化チタン)、雲母,CI75470(CARMINE)
Colorona Oriental Beige,Merck,雲母,CI77891(二酸化チタン)、CI77491(酸化鉄)
Colorona Dark Blue,Merck,雲母、二酸化チタン、フェロシアン化第二鉄
Colorona Chameleon,Merck,CI77491(酸化鉄)、雲母
Colorona Aborigine Amber,Merck,雲母,CI77499(酸化鉄)、CI77891(二酸化チタン)
Colorona Blackstar Blue,Merck,CI77499(酸化鉄)、雲母
Colorona Patagonian Purple,Merck,雲母,CI77491(酸化鉄)、CI77891(二酸化チタン)、CI77510(フェロシアン化第二鉄)
Colorona Red Brown,Merck,雲母,CI77491(酸化鉄)、CI77891(二酸化チタン)
Colorona Russet,Merck,CI77491(二酸化チタン)、雲母,CI77891(酸化鉄)
Colorona Imperial Red,Merck,雲母、二酸化チタン(CI77891)、D&C RED NO.30(CI73360)
Colorona Majestic Green,Merck,CI77891(二酸化チタン)、雲母,CI77288 (酸化クロムグリーン)
Colorona Light Blue,Merck,雲母、二酸化チタン(CI77891)、フェロシアン化第二鉄(CI77510)
Colorona Red Gold,Merck,雲母,CI77891(二酸化チタン)、CI77491(酸化鉄)
Colorona Gold Plus MP 25,Merck,雲母、二酸化チタン(CI77891)、酸化鉄(CI77491)
Colorona Carmine Red,Merck,雲母、二酸化チタン、カルミン
Colorona Blackstar Green,Merck,雲母,CI77499(酸化鉄)
Colorona Bordeaux,Merck,雲母,CI77491(酸化鉄)
Colorona Bronze,Merck,雲母,CI77491(酸化鉄)
Colorona Bronze Fine,Merck,雲母,CI77491(酸化鉄)
Colorona Fine Gold MP 20,Merck,雲母,CI77891(二酸化チタン)、CI77491(酸化鉄)
Colorona Sienna Fine,Merck,CI77491(酸化鉄)、雲母
Colorona Sienna,Merck,雲母,CI77491(酸化鉄)
Colorona Precious Gold,Merck,雲母,CI77891(二酸化チタン)、シリカ、CI77491(酸化鉄)、酸化スズ
Colorona Sun Gold Sparkle MP 29,Merck,雲母、二酸化チタン、酸化鉄、雲母,CI77891、CI77491(EU)
Colorona Mica Black,Merck,CI77499(酸化鉄)、雲母,CI77891(二酸化チタン)
Colorona Bright Gold,Merck,雲母,CI77891(二酸化チタン)、CI77491(酸化鉄)
Colorona Blackstar Gold,Merck,雲母,CI77499(酸化鉄)
【0217】
商品名Xirona(登録商標)を有する他の特に好ましい着色顔料は、例えば:
Xirona Golden Sky,Merck,シリカ、CI77891(二酸化チタン)、酸化スズ
Xirona Caribbean Blue,Merck,雲母,CI77891(二酸化チタン)、シリカ、酸化スズ
Xirona Kiwi Rose,Merck,シリカ、CI77891(二酸化チタン)、酸化スズ
Xirona Magic Mauve,Merck,シリカ、CI77891(二酸化チタン)、酸化スズ
である。
【0218】
また、商品名Unipure(登録商標)を有する特に好ましい着色顔料は、例えば:
Unipure Red LC 381 EM,Sensient CI77491(酸化鉄)、シリカ
Unipure Black LC 989 EM,Sensient,CI77499(酸化鉄)、シリカ
Unipure Yellow LC 182 EM,Sensient,CI77492(酸化鉄)、シリカ
である。
【0219】
さらなる態様では、本発明による組成物または調製物は、有機顔料からなる群から選択される1以上の着色化合物も含むことができる。
【0220】
本発明による有機顔料は、例えば、ニトロソ、ニトロ-アゾ、キサンテン、アントラキノン、イソインドリノン、キナクリドン、ペリノン、ペリレン、ジケト-ピロロピオロール、インディゴ、チオインジド、ジオキサジンおよび/またはトリアリールメタン化合物の群から選択できる、対応する不溶性の有機染料またはカラーラッカーである。
【0221】
特に好適な有機顔料は、例えば、カルミン、キナクリドン、フタロシアニン、ソルガム、カラーインデックス番号CI42090、CI69800、CI69825、CI73000、CI74100、CI74160を有する青色顔料、カラーインデックス番号CI11680、CI11710、CI15985、CI19140、CI20040、CI21100、CI21108、CI47000、CI47005を有する黄色顔料、カラーインデックス番号CI61565、CI61570、CI74260を有する緑色顔料、カラーインデックス番号CI11725、CI15510、CI45370、CI71105をもつオレンジ顔料、カラーインデックス番号CI12085、CI12120、CI12370、CI12420、CI12490、CI14700、CI15525、CI15580、CI15620、CI15630、CI15800、CI15850、CI15865、CI15880、CI17200、CI26100、CI45380、CI45410、CI58000、CI73360、CI73915および/またはCI75470を有する赤色顔料である。
【0222】
さらなる特に好ましい態様では、本発明による方法は、組成物(B)および/または組成物(C)が、カルミン、キナクリドン、フタロシアニン、ソルガム、カラーインデックス番号CI42090、CI69800、CI69825、CI73000、CI74100、CI74160を有する青色顔料、カラーインデックス番号CI11680、CI11710、CI15985、CI19140、CI20040、CI21100、CI21108、CI47000、CI47005を有する黄色顔料、カラーインデックス番号CI61565、CI61570、CI74260を有する緑色顔料、カラーインデックス番号CI11725、CI15510、CI45370、CI71105をもつオレンジ顔料、カラーインデックス番号CI12085、CI12120、CI12370、CI12420、CI12490、CI14700、CI15525、CI15580、CI15620、CI15630、CI15800、CI15850、CI15865、CI15880、CI17200、CI26100、CI45380、CI45410、CI58000、CI73360、CI73915および/またはCI75470を有する赤色顔料からなる群から選択される有機顔料の群からの少なくとも1つの着色化合物を含むことを特徴とする。
【0223】
さらに、有機顔料はカラーラッカーであってもよい。本発明の意味で、カラーラッカーという用語は、吸収された染料の層を含む粒子を意味し、粒子と染料の単位は上記の条件下で不溶性である。粒子は、例えば無機物質であることができ、アルミニウム、シリカ、ホウケイ酸カルシウム、ホウケイ酸アルミニウムカルシウムであること、またはアルミニウムであることさえできる。
【0224】
例えば、アリザリンカラーワニスを使用することができる。
【0225】
光および温度に対する耐性が優れているので、本発明による手段では上記顔料の使用が特に好ましい。さらに、使用される顔料が一定の粒径を有する場合も好ましい。この粒子径は、一方では形成されたポリマーフィルムにおける顔料の均一な分布をもたらし、他方では化粧品の塗布後のぼさぼさの髪または肌荒れ感を回避する。したがって、本発明によれば、少なくとも1つの顔料が、1.0~50μm、好ましくは5.0~45μm、好ましくは10~40μm、特に14~30μmの平均粒子径D50を有する場合に有利である。平均粒子径D50は、例えば、動的光散乱法(DLS)を用いて測定することができる。
【0226】
1以上の顔料は、いずれの場合も本発明による組成物または調製物の総重量に対して0.001~20重量%、特に0.05~5重量%の量で使用することができる。
【0227】
着色化合物として、本発明による組成物はまた、1以上の直接染料も含むことができる。直接作用染料は、毛髪上に直接塗る染料であり、色を形成するための酸化的プロセスを必要としない。直接染料は通常、ニトロフェニレンジアミン、ニトロアミノフェノール、アゾ染料、アントラキノン、トリアリールメタン染料またはインドフェノールである。
【0228】
本発明の意味の範囲内で、直接染料は、25℃で水(760mmHg)への溶解度が0.5g/Lより大きく、したがって、顔料とはみなされない。好ましくは、本発明の意味で直接染料は、25℃で水(760mmHg)への溶解度が1.0g/Lより大きい。より好ましくは、本発明の意味で直接染料は、25℃で水(760mmHg)への溶解度が1.5g/Lより大きい。
【0229】
直接染料は、アニオン性、カチオン性および非イオン性直接染料に分けることができる。
【0230】
さらなる好ましい態様では、本発明による剤は、少なくとも1つのアニオン性、カチオン性および/または非イオン直接染料を、着色化合物として含むことを特徴とする。
【0231】
さらなる好ましい態様では、本発明による方法は、組成物(B)および/または組成物(C)が、アニオン性、非イオン性、および/またはカチオン性直接染料からなる群から選択される少なくとも1つの着色化合物を含むことを特徴とする。
【0232】
好適なカチオン性直接染料としては、ベーシックブルー7、ベーシックブルー26、ベーシックバイオレット2およびベーシックバイオレット14、ベーシックイエロー57、ベーシックレッド76、ベーシックブルー16、ベーシックブルー347(カチオンブルー347/ダイスター)、HC青16、ベーシックブルー99、ベーシックブラウン16、ベーシックブラウン17、ベーシックイエロー57、ベーシックイエロー87、ベーシックオレンジ31、ベーシックレッド51、ベーシックレッド76が挙げられる。
【0233】
非イオン性直接染料として、非イオン性ニトロおよびキノン染料並びに中性アゾ染料を使用することができる。好適な非イオン性直接染料は、以下の国際呼称または商品名HC黄2、HC黄4、HC黄5、HC黄6、HC黄12、HC橙1、ディスパースオレンジ3、HC赤1、HC赤3、HC赤10、HC赤11、HC赤13、HC赤BN、HC青2、HC青11、HC青12、ディスパースブルー3、HC紫1、ディスパースバイオレット1、ディスパースバイオレット4、ディスパースブラック9で列挙されている既知化合物、並びに1,4-ジアミノ-2-ニトロベンゼン、2-アミノ-4-ニトロフェノール、1,4-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-アミノ-2-ニトロベンゼン、3-ニトロ-4-(2-ヒドロキシエチル)-アミノフェノール2-(2-ヒドロキシエチル)アミノ-4,6-ジニトロフェノール、4-[(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-3-ニトロ-1-メチルベンゼン、1-アミノ-4-(2-ヒドロキシエチル)-アミノ-5-クロロ-2-ニトロベンゼン、4-アミノ-3-ニトロフェノール、1-(2’-ウレイドエチル)アミノ-4-ニトロベンゼン、2-[(4-アミノ-2-ニトロフェニル)アミノ]安息香酸、6-ニトロ-1,2,3,4-テトラヒドロキノキサリン、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、ピクラミン酸およびその塩、2-アミノ-6-クロロ-4-ニトロフェノール、4-エチルアミノ-3-ニトロ安息香酸並びに2-クロロ-6-エチルアミノ-4-ニトロフェノールである。
【0234】
アニオン性直接染料は酸性染料とも呼ばれる。酸性染料は、少なくとも1つのカルボン酸基(-COOH)および/または1つのスルホン酸基(-SOH)を有する直接染料である。pHに依存して、カルボン酸基またはスルホン酸基のプロトン化された形態(-COOH、-SOH)は、それらの脱プロトン化された形態(-COO、-SO で存在)と平衡している。pHが下がると、プロトン化した形の割合が増える。直接染料がその塩の形態で使用される場合、カルボン酸基またはスルホン酸基は脱プロトン化された形態で存在し、電気的中性を維持するために対応する化学量論的に等価なカチオンで中和される。本発明による酸性染料はまた、それらのナトリウム塩および/またはそれらのカリウム塩の形態で使用することもできる。
【0235】
本発明の意味の範囲内の酸性染料は、25℃(760mmHg)での水への溶解度が0.5g/Lをより大きく、したがって顔料とはみなされない。好ましくは、本発明の意味の範囲内の酸性染料は、25℃(760mmHg)での水への溶解度が1.0g/Lより大きい。
【0236】
酸性染料のアルカリ土類塩(カルシウム塩やマグネシウム塩など)またはアルミニウム塩は、溶解度が、対応するアルカリ塩よりも低いことが多い。これらの塩の溶解度が0.5g/L(25℃、760mmHg)未満の場合、それらの塩は直接染料の定義には該当しない。
【0237】
酸性染料の本質的な特徴は、アニオン性の電荷を形成する能力であり、これに関与するカルボン酸基またはスルホン酸基は通常、異なる発色団系に連結される。好適な発色団系は、例えば、ニトロフェニレンジアミン、ニトロアミノフェノール、アゾ染料、アントラキノン染料、トリアリールメタン染料、キサンテン染料、ローダミン染料、オキサジン染料および/またはインドフェノール染料の構造に見ることができる。
【0238】
例えば、以下の群からの1以上の化合物を特に好適な酸性染料として選択することができる。アシッドイエロー1(D&Cイエロー7、シトロニンA、Ext.D&Cイエロー7、ジャパンイエロー403、CI10316、COLIPA番号B001)、アシッドイエロー3(COLIPA番号C54、D&Cイエロー10、キノリンイエロー、E104、食用黄色13号)、アシッドイエロー9(CI13015)、アシッドイエロー17(CI18965)、アシッドイエロー23(COLIPA番号C29、コヴァキャップ(Covacap)ジョーヌW1100(LCW)、シコビット(Sicovit)タートラジン(Tartrazine)85 E102(BASF)、タートラジン、食用黄色4号、ジャパンイエロー4、FD&Cイエロー5、アシッドイエロー36(CI13065)、アシッドイエロー121(CI18690)、アシッドオレンジ6(CI14270)、アシッドオレンジ7(2-ナフトールオレンジ、オレンジII、CI15510、D&Cオレンジ4、COLIPA番号C015)、アシッドオレンジ10(C.I.16230;オレンジGナトリウム塩)、アシッドオレンジ11(CI45370)、アシッドオレンジ15(CI50120)、アシッドオレンジ20(CI14600)、アシッドオレンジ24(ブラウン1;CI20170;KATSU201;ナトリウム塩を含まない(nosodiumsalt);茶色201号;レゾルシンブラウン;アシッドオレンジ24;ジャパンブラウン201;D&Cブラウン1)、アシッドレッド14(C.I.14720)、アシッドレッド18(E124、赤色18号;CI16255)、アシッドレッド27(E123、CI16185、C-Rot46、リアルレッドD、FD&Cレッド2、食用赤色9号、ナフトールレッドS)、アシッドレッド33(レッド33、フクシャ(Fuchsia)レッド、D&Cレッド33、CI17200)、アシッドレッド35(CI18065)、アシッドレッド51(CI45430、パイロジン(Pyrosin)B、テトラヨードフルオレセイン、エオシン J、ヨーデオシン)、アシッドレッド52(CI45100、食用赤色106号、ソーラー(Solar)ローダミンB、アシッドローダミンB、赤色106号、ポンタシルブリリアントピンク)、アシッドレッド73(CI27290)、アシッドレッド87(エオシン、CI45380)、アシッドレッド92(COLIPA番号C53、CI45410)、アシッドレッド95(CI45425、エリスロシン、シマシッド(Simacid)エリスロシンY)、アシッドレッド184(CI15685)、アシッドレッド195、アシッドバイオレット43(Jarocolバイオレッド43、Ext.D&Cバイオレッド2、C.I.60730、COLIPA番号C063)、アシッドバイオレット49(CI42640)、アシッドバイオレット50(CI50325)、アシッドブルー1(パテントブルー(Patent Blue)、CI42045)、アシッドブルー3(パテントブルーV、CI42051)、アシッドブルー7(CI42080)、アシッドブルー104(CI42735)、アシッドブルー9(E133、パテントブルーAE、アミドブルーAE、エリオグラウシンA、CI42090、C.I.食用青色2号)、アシッドブルー62(CI62045)、アシッドブルー74(E132、CI73015)、アシッドブルー80(CI61585)、アシッドグリーン3(CI42085、食用緑色1号)、アシッドグリーン5(CI42095)、アシッドグリーン9(C.I.42100)、アシッドグリーン22(C.I.42170)、アシッドグリーン25(CI61570、ジャパングリーン201、D&Cグリーン5)、アシッドグリーン50(ブリリアントアシッドグリーンBS、C.I.44090、アシッドブリリアントグリーンBS、E142)、アシッドブラック1(黒色401号、ナフタレンブラック10B、アミドブラック10B、CI20470、COLIPA番号B15)、アシッドブラック52(CI15711)、食用黄色8号(CI14270)、食用青色5号、D&Cイエロー8、D&Cグリーン5、D&Cオレンジ10、D&Cオレンジ11、D&Cレッド21、D&Cレッド27、D&Cレッド33、D&Cバイオレッド2および/またはD&Cブラウン1。
【0239】
例えば、アニオン性直接染料の水への溶解度は以下のようにして測定できる。0.1gのアニオン性直接染料をビーカーに入れる。攪拌子を加える。次いで100mlの水を加える。この混合物をマグネチックスターラー上で撹拌しながら25℃に加熱する。それを60分間攪拌する。次いで、水性混合物を目視で評価する。依然として溶解していない残留物が存在する場合、水の量を、例えば10mlずつ増やす。使用した染料の量が完全に溶けるまで水を加える。染料の強度が高いために、染料-水の混合物を目視で評価できない場合は、混合物を濾過する。未溶解の染料の一部が濾紙に残る場合は、より多量の水を用いて溶解性試験を繰り返す。0.1gのアニオン性直接染料が25℃で水100mlに溶けた場合、その染料の溶解度は1.0g/Lである。
【0240】
アシッドイエロー1は、8-ヒドロキシ-5,7-ジニトロ-2-ナフタレンスルホン酸二ナトリウム塩と呼ばれ、水への溶解度が少なくとも40g/L(25℃)である。
【0241】
アシッドイエロー3は、2-(2-キノリル)-1H-インデン-1,3(2H)-ジオンのモノ酸とジスルホン酸のナトリウム塩の混合物であり、水への溶解度が20g/L(25℃)である。
【0242】
アシッドイエロー9は、8-ヒドロキシ-5,7-ジニトロ-2-ナフタレンスルホン酸の二ナトリウム塩であり、水への溶解度が40g/L(25℃)を超える。
【0243】
アシッドイエロー23は、4,5-ジヒドロ-5-オキソ-1-(4-スルホフェニル)-4-((4-スルホフェニル)アゾ)-1H-ピラゾール-3-カルボン酸の三ナトリウム塩であり、25℃で水によく溶ける。
【0244】
アシッドオレンジ7は、4-[(2-ヒドロキシ-1-ナフチル)アゾ]ベンゼンスルホン酸のナトリウム塩である。その水への溶解度は7g/L(25℃)より大きい。
【0245】
アシッドレッド18は、7-ヒドロキシ-8-[(E)-(4-スルホナト-1-ナフチル)-ジアゼニル)]-1,3-ナフタレンジスルホネートの三ナトリウム塩であり、その水溶性は20重量%より大きい水への高溶解度を有する。
【0246】
アシッドレッド33は、5-アミノ-4-ヒドロキシ-3-(フェニルアゾ)-ナフタレン-2,7-ジスルホン酸二ナトリウム塩であり、その水への溶解度は2.5g/L(25℃)である。
【0247】
アシッドレッド92は、3,4,5,6-テトラクロロ-2-(1,4,5,8-テトラブロモ-6-ヒドロキシ-3-オキサンテン-9-イル)安息香酸の二ナトリウム塩であり、その水への溶解度は10g/L(25℃)より大きい。
【0248】
アシッドブルー9は、2-({4-[N-エチル(3-スルホナトベンジル)]アミノ}フェニル}4-[(N-エチル(3-スルホナトベンジル)イミノ]-2,5-シクロヘキサジエン-1-イリデン}メチル)-ベンゼンスルホネートの二ナトリウム塩であり、水への溶解度は20重量%(25℃)より大きい。
【0249】
さらに、サーモクロミック染料も使用することができる。サーモクロミズムは、物質が温度に依存して可逆的または非可逆的にその色を変える性質である。これは、強度および/または波長の最大値を変えることによって行うことができる。
【0250】
最後に、フォトクロミック染料も使用することが可能である。フォトクロミズムとは、光、とりわけ紫外線の照射に依存して可逆的または非可逆的にその色を変化させる特性を含む。これは、強度および/または波長の最大値を変えることによって行うことができる。
【0251】
<被膜形成ポリマー>
上記調製物、特に調製物(B)、(C)および(D)、非常に好ましくは、調製物(D)は少なくとも1つの被膜形成ポリマーを含み得る。
【0252】
ポリマーは、分子量が少なくとも1000g/mol、好ましくは少なくとも2500g/mol、特に好ましくは少なくとも5000g/molの高分子であり、同一の繰り返し有機単位からなる。本発明のポリマーは、1種類のモノマーの重合によって製造された合成ポリマーであってもよく、互いに構造的に異なる、異なる種類のモノマーの重合によって製造された合成ポリマーであってもよい。ポリマーが1種類のモノマーを重合することによって製造される場合、それはホモポリマーと呼ばれる。構造的に異なるモノマーの種類が重合に使用される場合、得られるポリマーはコポリマーと呼ばれる。
【0253】
ポリマーの最大分子量は、重合度(重合されたモノマーの数)とバッチサイズに依存し、重合方法によって決まる。本発明では、被膜形成疎水性ポリマー(c)の最大分子量は、10g/mol以下、好ましくは10g/mol以下、特に好ましくは10g/mol以下であることが好ましい。
【0254】
本発明の意味において、被膜形成ポリマーは、基材、例えばケラチン物質またはケラチン繊維上に被膜を形成することができるポリマーである。被膜の形成は、例えば、ポリマーで処理されたケラチン物質を顕微鏡で見ることによって示すことができる。
【0255】
被膜形成ポリマーは、親水性であっても、疎水性でもあってもよい。
【0256】
第1の態様において、調製物(B)、(C)および/または(D)において、特に調製物(D)において、少なくとも1つの疎水性被膜形成ポリマーを使用することが好ましいことがある。
【0257】
疎水性ポリマーは、25℃(760mmHg)での水への溶解度が1重量%未満であるポリマーと定義される。
【0258】
被膜成形疎水性ポリマーの水への溶解度は、例えば以下のように測定できる。1.0gのポリマーをビーカーに入れる。水で100gにする。攪拌子を加え、混合物をマグネチックスターラー上で撹拌しながら25℃に加熱する。それを60分間撹拌する。次いで、水性混合物を目視で評価する。ポリマー-水の混合物がその混合物の濁度が高いために目視で評価できない場合は、混合物を濾過する。未溶解のポリマーの一部が濾紙の上に残る場合、ポリマーの溶解度は1重量%未満である。
【0259】
これらのポリマーとしは、アクリル酸系ポリマー、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレア、セルロースポリマー、ニトロセルロースポリマー、シリコーンポリマー、アクリルアミド系ポリマーおよびポリイソプレンが挙げられる。
【0260】
特によく適した被膜形成疎水性ポリマーは、例えば、アクリル酸のコポリマー、メタクリル酸のコポリマー、アクリル酸エステルのホモポリマーまたはコポリマー、メタクリル酸エステルのホモポリマーまたはコポリマー、アクリル酸アミドのホモポリマーまたはコポリマー、メタクリル酸アミドのホモポリマーまたはコポリマー、ビニルピロリドンのコポリマー、ビニルアルコールのコポリマー、酢酸ビニルのコポリマー、エチレンのホモポリマーまたはコポリマー、プロピレンのホモポリマーまたはコポリマー、スチレンのホモポリマーまたはコポリマー、ポリウレタン、ポリエステルおよび/またはポリアミドの群からのポリマーである。
【0261】
さらなる好ましい態様では、本発明による組成物は、アクリル酸のコポリマー、メタクリル酸のコポリマー、アクリル酸エステルのホモポリマーまたはコポリマー、メタクリル酸エステルのホモポリマーまたはコポリマー、アクリル酸アミドのホモポリマーまたはコポリマー、メタクリル酸アミドのホモポリマーまたはコポリマー、ビニルピロリドンのコポリマー、ビニルアルコールのコポリマー、酢酸ビニルのコポリマー、エチレンのホモポリマーまたはコポリマー、プロピレンのホモポリマーまたはコポリマー、スチレンのホモポリマーまたはコポリマー、ポリウレタン、ポリエステルおよび/またはポリアミドからなる群から選択される少なくとも1つの被膜形成疎水性ポリマー(c)を含むことを特徴とする。
【0262】
合成ポリマー、フリーラジカル重合によって得られるポリマーまたは天然ポリマーからなる群から選択される被膜形成疎水性ポリマーは、本発明による課題を解決するのに特に適していることが判明している。
【0263】
他の特によく適した被膜形成疎水性ポリマーは、シクロオレフィン、ブタジエン、イソプレンなどのオレフィンまたはスチレン、ビニルエーテル、ビニルアミド、少なくとも1つのC-C20アルキル基、アリール基またはC-C10ヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のエステルまたはアミドのホモポリマーまたはコポリマーから選択することができる。
【0264】
さらなる被膜形成疎水性ポリマーは、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート)、イソペンチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート)、イソブチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、および/またはそれらの混合物のホモ-ポリマーまたはコポリマーから選択することができる。
【0265】
さらなる被膜形成疎水性ポリマーは、(メタ)アクリルアミドのホモポリマーまたはコポリマー、N-アルキル-(メタ)アクリルアミド、特にN-エチル-アクリルアミド、N-tert-ブチル-アクリルアミド、N-オクチル-アクリルアミドなど、C2-C18アルキル基を含有するもの、N-ジ(C1-C4)アルキル-(メタ)アクリルアミドから選択することができる。
【0266】
他の好ましいアニオン性コポリマーは、例えばINCI名称アクリレーツコポリマーで販売されているアクリル酸、メタクリル酸またはそれらのC-Cアルキルエステルのコポリマーである。好適な市販品は、例えば、ローム・アンド・ハース製のAculyn(登録商標)33である。しかし、アクリル酸、メタクリル酸またはそれらのC1-C6アルキルエステル、およびエチレン性不飽和酸とアルコキシル化脂肪アルコールのエステルのコポリマーも好ましい。好適なエチレン性不飽和酸は、特にアクリル酸、メタクリル酸およびイタコン酸であり、好適なアルコキシル化脂肪アルコールは、特にステアレス-20またはセテス-20である。
【0267】
市場にある非常に特に好ましいポリマーは、例えばAculyn(登録商標)22(アクリレーツ/ステアレス-20メタクリレートコポリマー)、Aculy(登録商標)28(アクリレーツ/ベヘネス-25メタクリレートコポリマー)、Structure2001(登録商標)(アクリレーツ/ステアレス-20イタコネートコポリマー)、ストラクチャー3001(登録商標)(アクリレーツ/セテス-20イタコネートコポリマー)、Structure Plus(登録商標)(アクリレーツ/アミノアクリレーツC10-30アルキルPEG-20イタコネートコポリマー)、Carbopol(登録商標)1342、1382、Ultrez20、Ultrez21(アクリレーツ/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマー)、Synthalen W2000(登録商標)(アクリレーツ/パルメス-25アクリレートコポリマー)またはRohme und Haasが販売するSoltex OPT(アクリレーツ/C12-22アルキルメタクリレートコポリマー)である。
【0268】
ビニルモノマーをベースとする好適なポリマーとしては、例えば、N-ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタム、ビニル-(C1-C6)アルキル-ピロール、ビニル-キサゾール、ビニル-チアゾール、ビニルピリミジン、ビニルイミダゾールのホモポリマーおよびコポリマーを挙げることができる。
【0269】
さらに、NATIONAL STARCHによって商品名AMPHOMER(登録商標)もしくはLOVOCRYL(登録商標)47で市販されているような、コポリマーのオクチルアクリルアミド/アクリレート/メタクリル酸ブチルアミノエチルコポリマー、またはNATIONAL STARCHによって商品名DERMACRYL(登録商標)LTおよびDERMACRYL(登録商標)79で販売されているアクリレート/オクチルアクリルアミドのコポリマーが特に好適である。
【0270】
オレフィンをベースとする好適なポリマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、イソプレンおよびブタジエンのホモポリマーおよびコポリマーを挙げることができる。
【0271】
別の態様では、スチレンまたはスチレンの誘導体の少なくとも1つのブロックを含むブロックコポリマーを被膜形成疎水性ポリマーとして使用することができる。これらのブロックコポリマーは、スチレン/エチレン、スチレン/エチレン/ブチレン、スチレン/ブチレン、スチレン/イソプレン、スチレン/ブタジエンなどのスチレンブロックにくわえて、1以上の他のブロックを含有するコポリマーであることができる。そのようなポリマーは、BASFによる商品名「Luvitol HSB」で商業的に流通している。
【0272】
さらに、調製物(B)、(C)および/または(D)、特に調製物(D)が、アクリル酸のホモポリマーおよびコポリマー、メタクリル酸のホモポリマーおよびコポリマー、アクリル酸エステルのホモポリマーおよびコポリマー、メタクリル酸エステルのホモポリマーおよびコポリマー、アクリル酸アミドのホモポリマーおよびコポリマー、メタクリル酸アミドのホモポリマーおよびコポリマー、ビニルピロリドンのホモポリマーおよびコポリマー、ビニルアルコールのホモポリマーおよびコポリマー、酢酸ビニルのホモポリマーおよびコポリマー、エチレンのホモポリマーおよびコポリマー、プロピレンのホモポリマーおよびコポリマー、スチレンのホモポリマーおよびコポリマー、ポリウレタン、ポリエステルおよびポリアミドからなる群から選択される少なくとも1つの被膜形成ポリマーを含有した場合に、強力で洗浄堅牢性のある染色を得ることが可能であった。
【0273】
さらなる好ましい態様では、本発明による方法は、調製物(B)、(C)および/または(D)、最も特に調製物(D)が、アクリル酸のホモポリマーおよびコポリマー、メタクリル酸のホモポリマーおよびコポリマー、アクリル酸エステルのホモポリマーおよびコポリマー、メタクリル酸エステルのホモポリマーおよびコポリマー、アクリル酸アミドのホモポリマーおよびコポリマー、メタクリル酸アミドのホモポリマーおよびコポリマー、ビニルピロリドンのホモポリマーおよびコポリマー、ビニルアルコールのホモポリマーおよびコポリマー、酢酸ビニルのホモポリマーおよびコポリマー、エチレンのホモポリマーおよびコポリマー、プロピレンのホモポリマーおよびコポリマー、スチレンのホモポリマーおよびコポリマー、ポリウレタン、ポリエステルおよびポリアミドからなる群から選択される少なくとも1つの被膜形成ポリマーを含有することを特徴とする。
【0274】
第1の態様では、少なくとも1つの親水性被膜形成ポリマーを、調製物(B)、(C)および/または(D)、とりわけ調製物(D)に使用することが好ましいことがある。
【0275】
親水性ポリマーは、1重量%より大きい、好ましくは2重量%より大きい25℃(760mmHg)での水への溶解度がポリマーとして定義される。
【0276】
被膜形成親水性ポリマーの水への溶解度は、例えば以下のようにして測定できる。1.0gのポリマーをビーカーに入れる。水で100gにする。攪拌フィッシュを加え、混合物をマグネチックスターラー上で撹拌しながら25℃に加熱する。それを60分間撹拌する。次いで、水性混合物を目視で評価する。完全に溶解したポリマーは、肉眼で均一に見える。ポリマー-水の混合物がその混合物の濁度が高いために目視で評価できない場合は、混合物を濾過する。濾紙の上に未溶解のポリマーが残らない場合、ポリマーの溶解度は1重量%より大きい。
【0277】
非イオン性、アニオン性およびカチオン性ポリマーを被膜形成親水性ポリマーとして使用することができる。
【0278】
好適な被膜形成親水性ポリマーは、例えば、ポリビニルピロリドン(コ)ポリマー、ポリビニルアルコール(コ)ポリマー、酢酸ビニル(コ)ポリマー、カルボキシビニル(コ)ポリマー、アクリル酸(コ)ポリマー、メタクリル酸(コ)ポリマー、天然ガム、多糖および/またはアクリルアミド(コ)ポリマーの群から選択することができる。
【0279】
さらに、ポリビニルピロリドン(PVP)および/またはビニルピロリドン含有コポリマーを被膜形成親水性ポリマーとして使用することが特に好ましい。
【0280】
別の特に好ましい態様において、本発明による剤は、(c)ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリビニルピロリドンのコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの被膜形成親水性ポリマーを含有することを特徴とする。
【0281】
本発明による剤が、ポリビニルピロリドン(PVP)を被膜形成親水性ポリマーとして含む場合、さらに好ましい。驚くべきことに、PVP(b9を含有する剤で得られた着色の洗浄堅牢度も非常に良好であった。
【0282】
特によく適したポリビニルピロリドンは、例えば、BASF SEから品名Luviskol(登録商標)K、とりわけBASF SEからLuviskol(登録商標)K90またはルビスコール(登録商標)K85で入手可能である。
【0283】
PVP K30は、Ashland(ISP、POIケミカル)によって販売されており、これも、別の明示的に非常によく適したポリビニルピロリドン(PVP)として使用することができる。PVP K30は、冷水によく溶けるポリビニルピロリドンであり、CAS番号9003-39-8である。PVP K30の分子量は約40000g/molである。
【0284】
他の特に好適なポリビニルピロリドンは、商品名ルビテック(LUVITEC)K17、ルビテックK30、ルビテックK60、ルビテックK80、ルビテックK85、ルビテックK90およびルビテックK115で知られる物質であり、BASFから入手可能である。
【0285】
ポリビニルピロリドンのコポリマーの群からの被膜形成親水性ポリマーの使用も、特に良好で洗浄堅牢性のある色の仕上がりをもたらしている。
【0286】
商標Luviskol(登録商標)(BASF)で販売されているものなどのポリビニルピロリドン-ビニルエステルコポリマーが、特に好適な被膜形成親水性ポリマーである。ルビスコール(登録商標)VA64およびLuviskol(登録商標)VA73は、ともにビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマーであり、特に好ましい非イオン性ポリマーである。
【0287】
ビニルピロリドン含有コポリマーのなかで、スチレン/VPコポリマーおよび/またはビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーおよび/またはVP/DMAPAアクリレーツコポリマーおよび/またはVP/ビニルカプロラクタム/DMAPAアクリレーツコポリマーが、化粧品組成物において特に好ましい。
【0288】
ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーは、BASF SEによって品名Luviskol(登録商標)VAで販売されている。例えば、VP/ビニルカプロラクタム/DMAPAアクリレーツコポリマーは、商品名アAquaflex(登録商標)SF-40でアシュランド社によって販売されている。例えば、VP/DMAPAアクリレーツコポリマーは、アシュランドによって品名Styleze CC-10で販売され、非常に好ましいビニルピロリドン含有コポリマーである。
【0289】
ポリビニルピロリドンの他の好適なコポリマーは、N-ビニルピロリドンを、V-ビニルホルムアミド、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン、アクリルアミド、ビニルカプロラクタム、ビニルカプロラクトンおよび/またはビニルアルコールからなる群からの少なくとも1つのさらなるモノマーと反応させることによって得られるものでもあることができる。
【0290】
別の特に好ましい態様では、本発明による薬剤は、それが、ポリビニルピロリドン(PVP)、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ビニルピロリドン/スチレンコポリマー、ビニルピロリドン/エチレンコポリマー、ビニルピロリドン/プロピレンコポリマー、ビニルピロリドン/ビニルカプロラクタムコポリマー、ビニルピロリドン/ビニルホルムアミドコポリマーおよび/またはビニルピロリドン/ビニルアルコールコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの被膜形成親水性ポリマーを含むことを特徴とする。
【0291】
ビニルピロリドンの別の有用なコポリマーは、INCI名称マルトデキストリン/VPコポリマーで知られるポリマーである。
【0292】
さらに、非イオン性被膜形成親水性ポリマーが被膜形成親水性ポリマーとして用いられた場合、非常に良好な洗浄堅牢性をもつ強力に染色されたケラチン物質、特に毛髪を得ることができた。
【0293】
第1の態様では、調製物(B)、(C)および/または(D)、特に調製物(D)が、少なくとも1つの非イオン性被膜形成親水性ポリマーを含む場合、好ましいことがある。
【0294】
本発明によれば、非イオン性ポリマーは、プロトン性溶媒(水などの)において、標準的な条件下で、電子中性を維持しながら対イオンによって補償されなければならない、恒久的なカチオン性基またはアニオン性基の含む構造単位をもたないポリマーであると理解される。カチオン性基には、例えば、四級化されたアンモニウム基は含まれるが、プロトン化されたアミンは含まれない。アニオン性基には、カルボン酸基およびスルホン酸基が含まれる。
【0295】
特に好ましいのは、非イオン性被膜形成親水性ポリマーとして、以下からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含有する生成物である。
・ポリビニルピロリドン
・N-ビニルピロリドンと2~18個の炭素原子を有するカルボン酸のビニルエステルのコポリマー、特にN-ビニルピロリドンと酢酸ビニルのコポリマー
・N-ビニルピロリドンとN-ビニルイミダゾールとメタクリルアミドのコポリマー
・N-ビニルピロリドンとN-ビニルイミダゾールとアクリルアミドのコポリマー
・N-ビニルピロリドンとN,N-ジ(C1-C4)-アルキルアミノ-(C2-C4)-アルキルアクリルアミドのコポリマー
【0296】
N-ビニルピロリドンと酢酸ビニルのコポリマーが使用された場合、モノマーのN-ビニルピロリドンに含有される構造単位の、モノマーの酢酸ビニルを含有するポリマーの構造単位に対するモル比が、20:80~80:20、特に30:70~60:40の範囲である場合、やはり好ましい。ビニルピロリドンと酢酸ビニルの好適なコポリマーは、例えば、商標Luviskol(登録商標)VA37、Luviskol(登録商標)VA55、Luviskol(登録商標)VA64およびLuviskol(登録商標)VA73でBASF SEから入手可能である。
【0297】
別の特に好ましいポリマーは、INCI名称VP/メタクリルアミド/ビニルイミダゾールコポリマーから選択され、BASF SEから商品名Luviset Clearで入手可能である。
【0298】
別の特に好ましい非イオン性被膜形成親水性ポリマーは、N-ビニルピロリドンとN,N-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドのコポリマーであり、INCI名称VP/DMAPAアクリレーツコポリマー、例えばISPによる商品名スタイリーゼ(登録商標)CC10で販売されている。
【0299】
本発明によるカチオン性ポリマーは、N-ビニルピロリドンと、N-ビニルカプロラクタム、N-(3-ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、3-(メタクリロイルアミノ)プロピル-ラウリル-ジメチルアンモニウムクロリドとのコポリマー(INCI名称ポリクオタニウム-69であり、ISPによって商品名AquaStyle(登録商標)300(エタノールと水混合物中の28~32重量%の活性物質、分子量350000)で販売されている。
【0300】
他の好適な被膜形成親水性ポリマーとしては、以下が挙げられる。
・名称Luviquat(登録商標)FC370、FC550およびINCI名称ポリクオタニウム-16およびFC905およびHM552で供給されているポリビニルピロリドン-ビニルイミダゾリウムメトクロリドコポリマー、
・アクリル酸エステルおよびアクリル酸アミドとともに、第3の成分として、例えば品名アクアフレックス(登録商標)SF40で市販されているポリビニルピロリドン-ビニルカプロラクタム-アクリレートターポリマー。
【0301】
ポリクオタニウム-11は、硫酸ジエチルと、ビニルピロリドンとジメチルアミノエチルメタクリレートのコポリマーとの反応生成物である。好適な市販品は、品名Dehyquart(登録商標)CC11およびルビカット(登録商標)PQ11PNでBASF SEから、またはGafquat440、Gafquat734、Gafquat755若しくはGafquat755Nでアシュランド社から入手可能である。
【0302】
ポリクオタニウム-46は、ビニルカプロラクタムとビニルピロリドンと、メチルビニルイミダゾリウムメトサルフェートとの反応生成物であり、例えば品名ルビカット(登録商標)HoldでBASF SEから入手可能である。ポリクオタニウム-46は、化粧品組成物の総重量に対して1~5重量%の量で使用される。ポリクオタニウム-46をカチオン性グアー化合物と組み合わせて使用することが好ましい。ポリクオタニウム-46は、カチオン性グアー化合物およびポリクオタニウム-11と組み合わせて使用されることがさらに非常に好ましい。
【0303】
好適なアニオン性被膜形成親水性ポリマーは、例えば、アクリル酸ポリマーであることができ、それらは非架橋形態でも架橋形態でもよい。このような生成物は、商品名カーボポール980、981、954、2984および5984でルーブリゾール(Lubrizol)によって、またはシンタレンMおよびシンタレンKで3Vシグマ(3V Sigma)(サンケミカルズ(The Sun Chemicals)、Inter Harz)によって商業的に販売されている。
【0304】
天然ガムの群からの好適な被膜形成親水性ポリマーの例は、キサンタンガム、ゲランガム、カロブガムである。
【0305】
多糖ポリサッカライドからの好適な被膜形成親水性ポリマーの例は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースである。
【0306】
アクリルアミドの群からの好適な被膜形成親水性ポリマーは、例えば、(メチ)アクリルアミド-C1-C4-アルキルスルホン酸またはその塩のモノマーから作られるポリマーである。対応するポリマーは、ポリアクリルアミドメタンスルホン酸、ポリアクリルアミドエタンスルホン酸、ポリアクリルアミドプロパンスルホン酸、ポリ2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ポリ-2-メチルアクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸および/またはポリ-2-メチルアクリルアミド-n-ブタンスルホン酸のポリマーから選択することができる。
【0307】
ポリ(メタ)アリールアミド-C1-C4-アルキルスルホン酸の好ましいポリマーは、架橋され、少なくとも90%中和されている。これらのポリマーは架橋されていてもいなくてもよい。
【0308】
ポリ-2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のタイプの、架橋され、完全にまたは部分的に中和されたポリマーは、INCI名称「アンモニウムポリアクリルアミド-2-メチルプロパンスルホンネート」または「アンモニウムポリアクリロイルジメチルタウラミド」で知られている。
【0309】
このタイプの別の好ましいポリマーは、Clamantから商品名Hostacerin AMPSで販売されている架橋ポリ-2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ポリマーであり、これはアンモニアで部分的に中和されている。
【0310】
さらなる明示的に非常に好ましい態様では、本発明による方法は、調製物(B)、(C)および/または(D)、より具体的に調製物(D)が、少なくとも1つのアニオン性被膜形成ポリマーを含むことを特徴とする。
【0311】
これに関連して、調製物(B)、(C)および/または(D)、特に調製物(D)が、少なくとも1つの式(P-I)の構造単位および少なくとも1つの式(P-II)の構造単位を含む少なくとも1つの被膜形成ポリマーを含有する場合に、最良の結果が得られた。
【化71】
【化72】
〔式中、Mは、水素原子またはアンモニウム(NH4)、ナトリウム、カリウム、1/2マグネシウムまたは1/2カルシウムを表す〕
【0312】
さらなる好ましい態様において、本発明による方法は、調製物(B)、(C)および/または(D)、特に調製物(D)が、
少なくとも1つの式(P-I)の構造単位および少なくとも1つの式(P-II)の構造単位を含む少なくとも1つの被膜形成ポリマーを含有することを特徴とする。
【化73】
【化74】
〔式中、Mは、水素原子またはアンモニウム(NH4)、ナトリウム、カリウム、1/2マグネシウムまたは1/2カルシウムを表す〕
【0313】
Mが水素原子を表すとき、式(P-I)の構造単位はアクリル酸単位に基づく。
【0314】
Mがアンモニウム対イオンを表すとき、式(P-I)の構造単位はアクリル酸のアンモニウム塩に基づく。
【0315】
Mがナトリウム対イオンを表すとき、式(P-I)の構造単位はアクリル酸のナトリウム塩に基づく。
【0316】
Mがカリウム対イオンを表すとき、式(P-I)の構造単位はアクリル酸のカリウム塩に基づく。
【0317】
Mが半当量のマグネシウム対イオンを表すとき、式(P-I)の構造単位はアクリル酸のマグネシウム塩に基づく。
【0318】
Mが半当量のカルシウム対イオンを表すとき、式(P-I)の構造単位はアクリル酸のカルシウム塩に基づく。
【0319】
本発明による被膜形成ポリマーは、本発明による調製物(B)、(C)および/または(D)において、ある特定の範囲の量で使用されることが好ましい。これに関連して、調製物が、いずれの場合もその総重量に対して、0.1~18.0重量%、好ましくは1.0~16.0重量%、より好ましくは5.0~14.5重量%、非常に好ましくは8.0~12.0重量%の総量で1以上の被膜形成ポリマーを含有することが、本発明による課題を解決するのに特に好ましいことが示されている。
【0320】
さらなる好ましい態様において、本発明による方法は、調製物(B)、(C)および/または(D)が、それぞれの総重量に対して、0.1~18.0重量%、好ましくは1.0~16.0重量%、より好ましくは5.0~14.5重量%、非常に好ましくは8.0~12.0重量%の総量で1以上の被膜形成ポリマーを含有することを特徴とする。
【0321】
<多成分パッケージユニット(キット)>
ユーザーの利便性を高めるために、塗布方法、特に染色方法に必要なすべての準備物が、多成分のパッケージユニット(キット)の形態でユーザーに提供される。
【0322】
したがって、本発明の第2の主題は、互いに別々に完全にパッケージされた、ケラチン物質を処理するための多成分パッケージユニット(キット)である。
・第1の組成物(A)を含む第1の容器および
・第2の組成物(B)を含む第2の容器。ここで、組成物(A)および(B)は、本発明の第1の主題の説明において既に詳細に開示されている。
【0323】
さらに、本発明による多成分パッケージユニットは、化粧品調製物(C)を含有する第3のパッケージユニットをさらに含むことができる。調製物(C)は、上記のように、特に好ましくは少なくとも1つの色付与化合物を含有する。
【0324】
非常に好ましい態様では、本発明による多成分パッケージユニット(キット)は、別々に組み立てられた、
・本発明の第1の主題の説明において既に詳細に開示されている第3の組成物(C)を含む第3の容器
を含む。
【0325】
さらに、本発明による多成分パッケージユニットは、化粧品調製物(D)を含有する第4のパッケージユニットをさらに含むことができる。調製物(D)は、上記のように、特に好ましくは少なくとも1つの被膜形成ポリマーを含有する。
【0326】
非常に好ましい態様において、本発明による多成分パッケージユニット(キット)は、別々に組み立てられた、
・本発明の第1の主題の説明において既に詳細に開示されている第4の組成物(C)を含む第4の容器
を含む。
【0327】
本発明による多成分パッケージユニットの他の好ましい態様に関して、同じことが必要な変更を加えて本発明による手順に準用される。
【実施例
【0328】
1 シランブレンド(組成物(A))の調製
加熱/冷却可能な外側シェルを備え、容量が10リットルの反応器に、4.67kgのメチルトリメトキシシラン(34.283mol)を入れた。次いで、攪拌しながら、1.33kgの(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(6.008mol)を加えた。この混合物を30℃で撹拌した。続いて、外部冷却下で反応混合物の温度を30℃に保ちつつ、激しく撹拌しながら670mlの蒸留水(37.18mol)を滴下して加えた。水の添加が完了した後、さらに10分間撹拌を続けた。次いで、280mbarの真空にし、反応混合物を44℃の温度に加熱した。いったん反応混合物が44℃の温度に達すると、反応中に放出されたエタノールおよびメタノールを190分かけて蒸留した。蒸留の過程において真空度を200mbarに下げた。蒸留したアルコールを冷却したレシーバーに集めた。次いで、反応混合物を室温まで冷却した。次いで、このように得られた混合物に、3.33kgのヘキサメチルジシロキサンを撹拌しながら滴下した。それを10分間撹拌した。いずれの場合も、100mlのシランブレンドを、容量が100mlで密封シール付きスクリューキャップを備えたボトルに充填した。充填後、ボトルをしっかりと密封した。水分含量は2.0重量%未満であった。
【0329】
2 組成物(B)の調製
下記の組成物を調製した(別段の記載がない限り、数値はすべて単位が重量%である)。
【0330】
【表1】
【0331】
3 組成物(C)および(D)の調製
下記の組成物を調製した(別段の記載がない限り、数値はすべて単位が重量%である)。
【0332】
【表2】
【0333】
【表3】
【0334】
5 塗布
それぞれ1.5gの組成物(A)、20.0gの組成物(B)および1.5gの組成物(C)を混合して、即用の組成物を調製した。組成物(A)、(B)および(C)をそれぞれ1分間振盪した。次いで、この即用の薬剤で2本の毛束をそれぞれ染色した。
【0335】
振盪終了3分後、即用の組成物を第1の毛束(毛束1)に塗布し、1分間作用させ、次いですすぎ流した。振盪終了10分後、即用の組成物を第2の毛束(毛束2)に塗布し、1分間作用させ、次いですすぎ流した。続いて、組成物(D)を各毛束に塗布し、1分間作用させた後、次いでまた水ですすいだ。
【0336】
染色した2つの毛束をそれぞれ乾燥させ、昼光色のランプの下、目視で比較した。
【0337】
【表4】
【国際調査報告】