IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハーの特許一覧

<>
  • 特表-表面形状を干渉測定する計測法 図1
  • 特表-表面形状を干渉測定する計測法 図2
  • 特表-表面形状を干渉測定する計測法 図3
  • 特表-表面形状を干渉測定する計測法 図4
  • 特表-表面形状を干渉測定する計測法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-27
(54)【発明の名称】表面形状を干渉測定する計測法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/18 20060101AFI20220520BHJP
   G01B 9/02 20220101ALI20220520BHJP
   G01M 11/00 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
G02B5/18
G01B9/02
G01M11/00 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557149
(86)(22)【出願日】2020-03-17
(85)【翻訳文提出日】2021-11-02
(86)【国際出願番号】 EP2020057241
(87)【国際公開番号】W WO2020193277
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】102019204096.9
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100205833
【弁理士】
【氏名又は名称】宮谷 昂佑
(72)【発明者】
【氏名】ハンズ-マイケル ステパン
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン フックス
(72)【発明者】
【氏名】ヨッヘン へッツラー
【テーマコード(参考)】
2F064
2G086
2H249
【Fターム(参考)】
2F064AA09
2F064CC04
2F064GG12
2F064GG22
2F064GG49
2G086EE06
2G086EE12
2H249AA03
2H249AA13
2H249AA25
2H249AA50
2H249AA55
2H249AA64
2H249AA65
2H249AA68
(57)【要約】
被検物(14)の表面(12)の形状を干渉測定する計測法は、光学表面の所望形状に少なくとも部分的に適合した波面を有する第1の被検波(34)を生成するために入力波(18)のビーム経路に第1の回折光学素子(30、130、230)を配置するステップと、被検物(14)の表面(12)との相互作用後の第1の被検波により生成された第1のインターフェログラムを検出するステップと、光学表面(12)の所望形状に少なくとも部分的に適合した波面を有する追加被検波を生成するために入力波のビーム経路に第1の回折光学素子の代わりに追加回折光学素子(32、232)を配置するステップであり、第1の回折光学素子及び追加回折光学素子は各回折構造の構成が異なるステップと、被検物(14)の表面(12)との相互作用後の追加被検波により生成された追加インターフェログラムを取得するステップと、2つのインターフェログラムを計算合成することにより被検物の表面の形状を測定するステップとを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物の表面の形状を干渉測定する計測法であって、
光学表面の所望形状に少なくとも部分的に適合した波面を有する第1の被検波を生成するために入力波のビーム経路に第1の回折光学素子を配置するステップと、
前記被検物の前記表面との相互作用後の前記第1の被検波により生成された第1のインターフェログラムを取得するステップと、
前記光学表面の前記所望形状に少なくとも部分的に適合した波面を有する追加被検波を生成するために前記入力波のビーム経路に前記第1の回折光学素子の代わりに追加回折光学素子を配置するステップであり、前記第1の回折光学素子及び前記追加回折光学素子は各回折構造の構成が異なるステップと、
前記被検物の前記表面との相互作用後の前記追加被検波により生成された追加インターフェログラムを取得するステップと、
2つの前記インターフェログラムを計算合成することにより前記被検物の前記表面の形状を測定するステップと
を含む計測法。
【請求項2】
請求項1に記載の計測法において、
2つの回折光学素子は、前記被検物上の同じ場所に対応する各回折構造の線密度が前記2つの回折光学素子間でミリメートル当たり10本以上異なるという点で、少なくとも異なる計測法。
【請求項3】
請求項2に記載の計測法において、
前記2つの回折光学素子は、前記被検物上の同じ場所に対応する各回折構造の前記線密度が前記2つの回折光学素子間でミリメートル当たり100本以上異なるという点で、少なくとも異なる計測法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の計測法において、
該計測法は、前記入力波を供給する放射源と、前記2つの回折光学素子の一方をそれぞれ保持する第1の保持デバイスと、前記被検物を保持する第2の保持デバイスとを備えた計測装置により実行され、前記第1のインターフェログラムの取得後に前記計測装置の構成が変更され、前記追加インターフェログラムは変更された構成で取得される計測法。
【請求項5】
請求項4に記載の計測法において、
前記計測装置の前記構成の変更中に、前記保持デバイスの少なくとも一方を操作することにより、該当する回折光学素子と前記被検物との間の変更相対位置が設定される計測法。
【請求項6】
請求項5に記載の計測法において、
前記相対位置の変更は、前記該当する回折光学素子と前記被検物との間の相対傾斜位置の変更を含む計測法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の計測法において、
前記相対位置の変更は、前記該当する回折光学素子と前記被検物との間の並進運動を含む計測法。
【請求項8】
請求項4~7のいずれか1項に記載の計測法において、
前記計測装置は、前記入力波から分離された参照波を反射する参照素子を含み、該参照素子は、前記計測装置の前記構成の変更時に傾斜させられる計測法。
【請求項9】
請求項4~8のいずれか1項に記載の計測法において、
前記計測装置は、前記該当する回折光学素子への入射前に前記入力波を偏向させる偏向ミラーを含み、該偏向ミラーは、前記計測装置の前記構成の変更後に傾斜させられる計測法。
【請求項10】
請求項4~9のいずれか1項に記載の計測法において、
前記計測装置の前記構成の変更時に前記入力波の波長が変更される計測法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の計測法において、
前記回折光学素子は、相互に重なり合うように配置された少なくとも2つの回折構造パターンをそれぞれが有する計測法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の計測法において、
前記回折光学素子は、請求項15に記載の方法により決定される設計を有する位相格子を含む計測法。
【請求項13】
被検物の表面の形状を干渉測定する計測装置であって、
入力波を供給する放射源と、
各被検波を生成するために前記入力波のビーム経路に第1の回折光学素子又は追加回折光学素子を配置するための第1の保持デバイスと、
前記各被検波のビーム経路で前記被検物を保持する第2の保持デバイスと、
前記第1の回折光学素子が前記入力波のビーム経路に配置されたときに生成される第1のインターフェログラムを前記追加回折光学素子が前記入力波のビーム経路で生成されたときに生成される追加インターフェログラムと計算合成することにより、前記被検物の前記表面の形状を測定するよう構成された評価デバイスと
を備えた計測装置。
【請求項14】
位相格子を設計する方法であって、
指定の境界条件に基づき、入力波の放射を受けて被検波を生成するようそれぞれ構成された位相格子の複数の異なる設計を生成するステップと、
生成された設計のそれぞれについて、各設計に対応するインターフェログラムに含まれる妨害点の位置を求めるステップであり、各インターフェログラムは、前記各設計に割り当てられた前記被検波により計測装置において生成され得るステップと、
前記生成された設計のうち少なくとも2つそれぞれの前記インターフェログラムにおける同じ位置の妨害点を特定するステップと、
他の組み合わせと比べた同じ位置の特定された妨害点の数を考慮して、前記生成された設計のうち少なくとも2つの組み合わせを選択するステップと
を含む方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、
前記生成された設計の1つにおける妨害点のうち少なくとも1つは、前記入力波から前記被検波の隣で前記妨害点に割り当てられた前記位相格子の点において生成される妨害波により生成され、該妨害波は、前記被検波の伝播方向に対応する伝播方向及び前記被検波の波面とは異なる波面を有する方法。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の方法において、
前記設計は、複素符号化位相格子に関係し、それぞれが相互に重なり合うように配置された少なくとも2つの回折構造パターンを有する方法。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の方法において、
前記被検波の生成時とは異なるタイプの前記入力波と前記回折構造パターンとの相互作用により、前記妨害波は、前記被検波の波面とは異なる波面を有する方法。
【請求項18】
請求項14~17のいずれか1項に記載の方法において、
既知の製造誤りにより生じる前記被検波の波面誤差を特徴付ける誤差バジェットが、前記生成された設計それぞれについて計算され、前記生成された設計の計算された誤差バジェットは、前記生成された設計のうち少なくとも2つの組み合わせの選択時にも考慮される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年3月26日の独国特許出願第1の0 2019 204 096.9号の優先権を主張する。この特許出願の全開示を参照により本願に援用する。
【0002】
本発明は、被検物の光学表面の形状を干渉測定する計測法及び計測装置に関する。本発明は、位相格子を設計する方法にも関する。例えば、マイクロリソグラフィ光学素子が被検物として計測される。構造のさらなる小型化が必要とされる結果として、マイクロリソグラフィで用いる光学素子の光学特性にはさらに厳しい要求が課される。したがって、これらの光学素子の光学表面形状は、可能な限り高精度に測定されなければならない。
【背景技術】
【0003】
サブナノメータ範囲までの光学表面の高精度干渉計測については、回折光学素子が入力波から被検波及び参照波を生成する干渉計測装置及び計測法が、例えば特許文献1から既知である。被検波の波面は、被検物の所望の表面に全ての場所で垂直入射し且つ反射して逆行するように、回折光学素子により所望の表面に適合させることができる。続いて、反射した被検波及び参照波の重畳により形成されたインターフェログラムを用いて、被検物の所望形状からの偏差を求めることができる。
【0004】
これらの既知の計測装置及び計測法に関する1つの問題は、計測誤差が回折光学素子により引き起こされる結果として、表面形状の測定時の計測精度が低下することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/188620号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記問題を解決すると共に、特に表面形状の測定時の計測精度を向上させる、冒頭で述べたタイプの計測法及び計測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、例えば以下で説明する被検物の表面の形状を干渉測定する計測装置により、本発明に従って達成することができる。この計測法は、光学表面の所望形状に少なくとも部分的に適合した波面を有する第1の被検波を生成するために入力波のビーム経路に第1の回折光学素子を配置するステップと、被検物の表面との相互作用後の第1の被検波により生成された第1のインターフェログラムを取得するステップと、光学表面の所望形状に少なくとも部分的に適合した波面を有する追加被検波を生成するために入力波のビーム経路に第1の回折光学素子の代わりに追加回折光学素子を配置するステップとを含み、第1の回折光学素子及び追加回折光学素子は、各回折構造の構成が異なる。さらに、この計測法は、被検物の表面との相互作用後の追加被検波により生成された追加インターフェログラムを取得するステップと、2つのインターフェログラムを計算合成することにより被検物の表面の形状を測定するステップとを含む。換言すれば、2つのインターフェログラムは、同時にではなく順次に生成される。第1の回折光学素子及び第2の回折光学素子は、回折効果が異なり、すなわち同一の構造ではない。
【0008】
本発明による解決手段は、計測装置内で、1つ又は複数の妨害点においてインターフェログラムを改竄する妨害放射線が生じ得るという知見に基づく。よって、このような妨害放射線は、本明細書において妨害開始点とも称する回折光学素子の特定の場所で発生し得る。回折光学素子で発生した妨害放射線を以下で妨害波とも称する。この場合、各伝播方向が被検波の伝播方向に対応し且つ各波面が被検波の波面とは異なる妨害波が生成され得る。さらに、伝播方向が被検波の伝播方向とは異なるにも関わらず、おそらく回折光学素子でのさらなる偏向に起因してインターフェログラムで妨害点を発生させる妨害波が、回折光学素子で生成され得る。加えて、回折光学素子での正反射によっても妨害波が生成され得る。さらに、計測法の実行に用いる計測装置内の反射経路により、回折光学素子とは無関係に妨害放射線が生じ得る。このような反射経路は、レンズ素子での二重反射から生じ得る。
【0009】
本発明による追加回折光学素子を入力波のビーム経路に配置し、それにより生成された追加インターフェログラムを取得することにより、妨害放射線により発生する計測誤差の少なくとも大部分を計算的に除去し、したがって表面形状の測定時の計測精度を向上させることが可能となる。
【0010】
さらに別の実施形態によれば、2つの回折光学素子は、被検物上の同じ場所に対応する各回折構造の線密度が2つの回折光学素子間でミリメートル当たり10本以上異なるという点で、少なくとも異なる。換言すれば、被検物上の同じ場所に対応する第1の回折光学素子の各回折構造の線密度は、追加回折光学素子の線密度よりもミリメートル当たり10本以上多いか又は少ない。さらに別の実施形態によれば、2つの回折光学素子は、被検物上の同じ場所に対応する各回折構造の線密度が2つの回折光学素子間でミリメートル当たり100本以上異なるという点で、少なくとも異なる。
【0011】
さらに別の実施形態によれば、計測法は、入力波を供給する放射源と、2つの回折光学素子の一方をそれぞれ保持する第1の保持デバイスと、被検物を保持する第2の保持デバイスとを備えた計測装置により実行され、第1のインターフェログラムの取得後に計測装置の構成が変更され、追加インターフェログラムは変更された構成で取得される。これは、2つのインターフェログラムが計測装置の異なる構成で取得されることを意味する。
【0012】
さらに別の実施形態によれば、計測装置の構成の変更中に、保持デバイスの少なくとも一方を操作することにより、該当する回折光学素子と被検物との間の変更相対位置が設定される。操作は、保持デバイスの少なくとも一方の対応する調整を含み、この調整は手動又は自動で実行することができる。
【0013】
さらに別の実施形態によれば、相対位置の変更は、該当する回折光学素子と被検物との間の相対傾斜位置の変更を含む。一変形実施形態によれば、相対傾斜位置の変更は、特に伝播方向に対して横方向に配置された傾斜軸周りで該当する回折光学素子を傾斜させることを含む。さらに別の変形実施形態によれば、相対傾斜位置の変更は、被検物を傾斜させることを含む。2つのインターフェログラムの計算合成時に、一実施形態によれば、被検物の傾斜から生じる被検物の表面の変形と、計測装置内のビーム経路の関連の変化がモデリングされる。これは、有限要素モデリングにより行うことができる。
【0014】
さらに別の実施形態によれば、相対位置の変更は、該当する回折光学素子と被検物との間の並進運動を含む。特に、並進運動は被検物の変位を含み、すなわち、第2の保持デバイスは、被検物が並進運動を実行するように操作される。
【0015】
さらに別の実施形態によれば、計測装置は、入力波から分離された参照波を反射する参照素子を含み、参照素子は、計測装置の構成の変更時に傾斜させられる。参照素子は、対応する回折光学素子で入力波から分離された参照波の後方反射用のミラーであり得る。さらに、参照素子は、参照波を入力波から反射により分離するよう構成されたフィゾー素子として知ら得るものでもあり得る。各参照波は、対応する被検波と重畳されて対応するインターフェログラムを生成する。傾斜は、特に入力波のビーム経路に対して横方向に配置された傾斜軸回りで行われる。回折光学素子で参照波が入力波から分離される場合、傾斜はさらに、入力波の伝播方向と回折光学素子での分離後の参照波の伝播方向とにより規定される平面に対して横方向に配置される傾斜軸周りで特に行われる。
【0016】
さらに別の実施形態によれば、計測装置は、該当する回折光学素子への入射前に入力波を偏向させる偏向ミラーを備え、偏向ミラーは、計測装置の構成の変更後に傾斜させられる。回折光学素子で参照波が入力波から分離される場合、傾斜は、入力波の伝播方向と回折光学素子での分離後の参照波の伝播方向とにより規定される平面に対して横方向に配置される傾斜軸周りで特に行われる。
【0017】
さらに別の実施形態によれば、計測装置の構成の変更時に入力波の波長が変更される。
【0018】
さらに別の実施形態によれば、回折光学素子は、相互に重なり合うように配置された少なくとも2つの回折構造パターンをそれぞれが有する。回折構造パターンの一方は、被検波を生成するよう設計することができ、他方の回折構造パターンは、参照波を生成するよう設計することができる。2つの重なり合った回折構造パターンを有するこのような回折光学素子は、複素符号化位相格子を含み得る。
【0019】
上記目的はさらに、被検物の表面の形状を干渉測定する計測装置により、本発明に従って達成することができる。計測装置は、入力波を供給する放射源と、各被検波を生成するために入力波のビーム経路に第1の回折光学素子又は追加回折光学素子を配置するための第1の保持デバイスと、各被検波のビーム経路で被検物を保持する第2の保持デバイスと、第1の回折光学素子が入力波のビーム経路に配置されたときに生成される第1のインターフェログラムを追加回折光学素子が入力波のビーム経路で生成されたときに生成される追加インターフェログラムと計算合成することにより、被検物の表面の形状を測定するよう構成された評価デバイスとを備える。
【0020】
上述のように、追加インターフェログラムは、追加回折光学素子が入力波のビーム経路に配置されたときに生成される。ここでは第1の回折光学素子の代わりに、入力波のビーム経路への追加回折光学素子の配置が行われる。2つのインターフェログラムは、被検物の表面との相互作用後に各回折光学素子により生成された被検波で生成される。各被検波は、いずれの場合も、光学表面の所望形状に少なくとも部分的に適合した波面を有する。
【0021】
本発明による計測法の実施形態、例示的な実施形態、及び変形実施形態等に関して指定された上記の特徴は、本発明による計測装置に当てはめることができる。本発明による実施形態のこれら及び他の特徴は、図の説明及び特許請求の範囲において説明される。個々の特徴は、本発明の実施形態として別個に又は組み合わせて実施することができる。さらに、これらの特徴は、独立して保護可能であり且つ適切な場合は本願の係属中又は測定後にのみ保護が求められる有利な実施形態を表すことができる。
【0022】
さらに、本発明によれば、指定の境界条件に基づき、入力波の放射を受けて被検波を生成するようそれぞれ構成された位相格子の複数の異なる設計を生成する方法が提供される。さらに、本発明による設計法は、生成された設計のそれぞれについて、各設計に対応するインターフェログラムに含まれる妨害点の位置を求めるステップであり、各インターフェログラムは、各設計に割り当てられた被検波により計測装置において生成され得るステップを含む。さらに、本発明による設計法は、生成された設計のうち少なくとも2つそれぞれのインターフェログラムにおける同じ位置の妨害点を特定するステップと、他の組み合わせと比べた同じ位置の妨害点の数を考慮して、生成された設計のうち少なくとも2つの組み合わせを選択するステップとを含む。妨害点は、対応する妨害点における波面が被検波とは異なる妨害放射線により生じる。対応するインターフェログラムにおける妨害点の位置は、シミュレーションに基づき且つ/又は実験的に求められる。
【0023】
特に、生成された設計のうち、同じ位置における妨害点の数が他の生み合わせの同じ位置における妨害点の数よりも少ない少なくとも2つの設計の組み合わせが選択される。例えば、生成された設計のうち少なくとも2つの組み合わせは、同じ位置における妨害点の数が最小になるように選択され得る。換言すれば、この実施形態において、同じ位置における妨害点の数は、選択された組み合わせの方が全ての他の組み合わせよりも少ない。
【0024】
一実施形態によれば、生成された設計のうち少なくとも2つの組み合わせは、同じ位置における妨害点の数が指定の閾値未満であるように選択され得る。
【0025】
設計法のさらに別の実施形態によれば、生成された設計の1つにおける妨害点のうち少なくとも1つは、入力波から被検波の隣でその妨害点に割り当てられた位相格子の点において生成される妨害波により生成され、妨害波は、被検波の伝播方向に対応する伝播方向及び被検波の波面とは異なる波面を有する。特に、生成された設計の全妨害点は、このタイプの各妨害波により生成される。インターフェログラムの妨害点に割り当てられた位相格子の点を、本明細書において妨害開始点とも称する。
【0026】
妨害波の伝播方向が被検波の伝播方向と一致するという記載は、相互の伝播方向の差が非常に小さいので、該当する設計を用いて製造された回折素子を干渉法による表面形状測定に用いる場合、妨害波が被検波により生成されたインターフェログラムにおける対応する位置に入射し、したがってこのインターフェログラムのみに基づいたこの場所での計測を改竄することを意味する。
【0027】
設計法の一実施形態によれば、設計は、複素符号化位相格子に関係し、それぞれが相互に重なり合うように配置された少なくとも2つの回折構造パターンを有する。異なる設計とは、設計それぞれの構造パターンの少なくとも一方の構成が相互に異なることを意味すると理解されたい。
【0028】
設計法のさらに別の実施形態によれば、被検波の生成時とは異なるタイプの入力波と回折構造パターンとの相互作用により、妨害波は、被検波の波面とは異なる波面を有する。特に、妨害波は、被検波に対して位相シフトを有する。これは、少なくとも2つの重なり合った回折構造パターンとの入力波の相互作用が、妨害波の生成時と被検波の生成時とで異なることを意味する。一実施形態によれば、回折構造パターンは、被検波の生成とは異なる重みを付けた妨害波の生成に関与し、重みはゼロでもあり得る。
【0029】
例えば、2つの重なり合った構造パターンを有する設計の場合、第1の構造パターンで+1次の回折次数により被検波が生成され得る。その場合、例えば第1の構造パターンで+2次の回折次数により生成された波を第2の回折構造で-1次の回折次数により生成された波と重畳させることにより、同じ伝播方向を有する妨害波が形成され得る。
【0030】
別の例によれば、3つの相互に重なり合った構造パターンを有する設計の場合、第1の構造パターンで+1次の回折次数により被検波が同じく生成され得る。その場合、例えば第1の構造パターンで+1次の回折次数により生成された波を第2の構造パターンで-1次の回折次数により生成された波及び第3の構造パターンで+1次の回折次数により生成された波と重畳させることにより、同じ伝播方向を有する妨害波が形成され得る。
【0031】
一実施形態によれば、妨害波は、被検波の強度の10-6以上、特に10-5以上、10-4以上、10-3以上、10-2以上の強度を有する。
【0032】
設計法のさらに別の実施形態によれば、既知の製造誤りにより生じる被検波の波面誤差を特徴付ける誤差バジェットが、生成された設計それぞれについて計算され、生成された設計の計算された誤差バジェットも、生成された設計のうち少なくとも2つの組み合わせの選択時に考慮される。既知の製造誤りは、該当する設計に基づき製造された位相格子の製造誤りに関係する。特に、同じ位置における妨害点の数を最小化するという目的は、選択された設計の誤差バジェットをできる限り小さく保つという目的に対して比較検討される。これは、例えば、適当な目的関数に基づく最適化計算により行うことができる。
【0033】
本発明による計測法の一実施形態によれば、回折光学素子は、上述の実施形態の1つにおける設計法により設計が決定される位相格子を含む。特に、計測法は、位相格子のうち少なくとも2つの設計の組み合わせを決定する設計法のステップを含み、これらの設計を用いて、第1の回折光学素子及び追加回折光学素子が製造される。
【0034】
本発明の上記及びさらに他の有利な特徴を、添付の概略図を参照して以下の本発明による例示的な実施形態の詳細な説明において説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】被検波及び参照波を生成するための回折光学素子の第1の実施形態を有する、被検物の光学表面の形状を干渉測定する本発明による計測装置の第1の例示的な実施形態を示す。
図2図1に示す計測装置により記録されたインターフェログラムの妨害点分布を示す。
図3】付加的な較正ミラーを有する図1に示す計測装置で用いられる回折光学素子のさらに別の実施形態を示す。
図4】被検波を生成するための回折光学素子を有する、被検物の光学表面の形状を干渉測定する本発明による計測装置のさらに別の例示的な実施形態を示す。
図5図1図4に示す計測装置で用いられる回折光学素子の位相格子を設計する方法を示すフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に記載する例示的な実施形態又は実施形態若しくは変形実施形態において、相互に機能的又は構造的に同様である要素には、できる限り同一又は同様の参照符号が設けられる。したがって、特定の例示的な実施形態の個々の要素の特徴を理解するには、本発明の他の例示的な実施形態の説明又は概説を参照されたい。
【0037】
説明を容易にするために、直交xyz座標系を図示し、この座標系から図示のコンポーネントの各位置関係が明らかである。図1において、y方向は図の平面に対して垂直に当該図に向かって延び、x方向は右側に延び、z方向は上方に延びる。
【0038】
図1は、被検物14の光学表面12の形状を干渉測定する計測装置10の例示的な実施形態を示す。計測装置10を用いて、特に所望形状からの表面12の実際形状の偏差を求めることができる。用意される被検物14は、例えば、100nm未満の波長、特に約13.5nm又は約6.8nmの波長のEUV放射線を反射する非球面を有するEUVマイクロリソグラフィ用の投影レンズのミラーであり得る。ミラーの非球面は、各回転対称非球面からの偏差が5μmを超え且つ各球面からの偏差が1mm以上の自由曲面を有し得る。
【0039】
計測装置10は、十分にコヒーレントな計測放射線を入力波18として供給する放射源16を含む。この例示的な実施形態において、放射源16は、出射面22を有する導波路20を含む。導波路22は、例えばレーザの形態の放射線発生モジュール(図1には図示せず)に接続される。例として、この目的で、約633nmの波長を有するヘリウムネオンレーザを設けることができる。しかしながら、照明放射線は、電磁放射線の可視又は非可視波長域の異なる波長を有することもできる。一実施形態において、放射源16の波長は変えることができ、これを波長調整コントローラ24により図1に示す。導波路20を有する放射源16は、計測装置に用いることができる放射源の一例を表すにすぎない。代替的な実施形態において、導波路20ではなく、レンズ素子、ミラー素子等を有する光学装置を適当な入力波18の供給用に設けることができる。
【0040】
計測装置10はさらに、偏向ミラー26及び第1の保持デバイス28を備える。偏向ミラー26は、第1の保持デバイス28により保持された回折光学素子へ入力波18を偏向させる働きをする。図1において、これは、参照符号30で示す第1の回折光学素子である。これは保持デバイス28から取り外すことができ、代わりに第2の回折光学素子32又は追加回折光学素子を保持デバイス28に配置することができる。
【0041】
保持デバイス28により保持された対応する回折光学素子、図1では回折光学素子30を用いて、入力波18から被検波34及び参照波36が生成される。さらに、計測装置10は、参照波36を反射して戻り参照波36rにする反射光学素子として設計された参照素子38を備える。参照素子38は、第3の保持デバイス78に取り付けられる。回折光学素子30は、複素符号化CGHの形態で設計されて回折構造40を含み、回折構造40は、図1に示す実施形態によれば平面内で相互に重なり合って配置された2つの回折構造パターンを形成する。したがって、図1に示す回折光学素子30は、2重複素符号化計算機ホログラム(CGH)とも称する。代替として、回折構造は、平面内に相互に重なり合って配置された3つ以上の回折構造パターン、例えば図3を参照して以下でより詳細に説明するように、相互に重なり合って配置された5つの回折構造パターンを形成する場合もある。したがって、図3に示す回折光学素子130は、5重複素符号化CGHとも称する。
【0042】
図1に示す回折光学素子30の2つの回折構造パターンは、例えば、下部格子の形態の第1の構造パターン及び上部格子の形態の第2の回折構造パターンにより形成され得る。回折構造パターンの一方は、被検波34を生成するよう構成され、被検波34は、第2の保持デバイス42により保持された被検物14に指向され、光学表面12の所望形状に少なくとも部分的に適合した波面で構成される。被検波34は、被検物14の光学表面12で反射され、戻り被検波34rとして回折光学素子30へ戻る。光学表面12の所望形状に適合した波面により、被検波34は光学表面12上の全ての場所に実質的に垂直入射し、反射して逆行する。
【0043】
他方の回折構造パターンは、参照波36を生成し、参照波36は参照素子38に指向され、平面波面を有する。代替的な例示的な実施形態では、複素符号化CGHの代わりに、回折構造又は別の光学格子を有する単純符号化CGHを用いることができる。被検波34は、例えば1次の回折次数で生成することができ、参照波36は、回折構造で0次又は任意の他の回折次数で生成することができる。参照素子38は、平面波面を有する参照波36の後方反射用の平面ミラーの形態で設計される。別の実施形態において、参照波36は球面波面を有することができ、参照素子38は球面ミラーとして設計することができる。
【0044】
表面12から戻る被検波34rは、回折光学素子30を再度通過し、その過程で再度回折される。この場合、戻り被検波34rは、略球面波に変換し戻され、その波面は、所望形状からの被検物の表面12の偏差により、それに対応した球面波面からの偏差を有する。参照素子38により反射された戻り参照波36rも、回折光学素子30を再度通過し、その過程で再度回折される。この場合、戻り参照波36rは、球面波に変換し戻される。平面波面を有する入力波18を生成するためのコリメータを入力波18のビーム経路に有する代替的な実施形態では、参照波36rの波面を回折光学素子30により適合させる必要がない。
【0045】
したがって、回折光学素子30は、戻り被検波34rを戻り参照波36rと重畳させる働きもする。計測装置10はさらに、入力波18のビーム経路から戻り被検波34rと戻り参照波36rとの組み合わせを導くビームスプリッタ46を有する取得デバイス44と、被検波34rを参照波36rと重畳させることにより生成されたインターフェログラムを取得する干渉計カメラ48とを含む。
【0046】
戻り被検波34r及び戻り参照波36rは、収束ビームとしてビームスプリッタ46に入射し、それにより干渉計カメラ48の方向に反射される。両方の収束ビームが干渉計カメラ48の接眼レンズ50を通過し、干渉計カメラ48の2次元分解検出器62に最終的に入射する。放射源16に波長調整コントローラ24が設けられている本実施形態において、接眼レンズ50はミラーとして構成される。波長が調整可能でない代替的な実施形態において、接眼レンズをレンズ素子として構成することもできる。検出器48は、例えばCCDセンサとして設計されることができ、干渉波により生成されたインターフェログラムを取得する。波34r及び36rの収束ビームの焦点に、迷放射線を低減するための空間フィルタとして絞り(図1には図示せず)を配置することができる。
【0047】
さらに、計測装置10は、検出器48により記録された少なくとも2つのインターフェログラムから被検物14の光学表面12の実際形状を測定する評価デバイス54を備える。最初に、第1の回折光学素子30が第1の保持デバイス28に配置されたときに検出器48で生成される第1のインターフェログラムと、以下でより詳細に説明するように第2の回折光学素子32及び必要な場合は追加回折光学素子を第1の保持デバイス28に配置して検出器48で生成される少なくとも1つの追加インターフェログラムとが、計算合成される。続いて、評価デバイス54は、計算合成されたインターフェログラムから光学表面12の実際形状を測定する。代替として又は追加として、計測装置10は、外部の評価ユニットによりネットワークを介して記憶又は伝送されたインターフェログラムによる表面形状の測定を可能にするために、データメモリ又はネットワークとのインタフェースを含み得る。
【0048】
検出器48により記録されたインターフェログラムは、通常は妨害点分布を有する。図1は、第1の回折光学素子30により記録された第1のインターフェログラムのこのような妨害点分布56-1の例を示す。黒色点状領域は、インターフェログラムの妨害点58を表す。妨害点58は、対応する妨害点58において被検波34とは異なる波面を有する妨害放射線に起因して生じる。
【0049】
妨害点58の原因となる妨害放射線は、回折光学素子30で生成され得るものであり、その場合、妨害放射線を本明細書において妨害波60と称する。
【0050】
第1の範疇の妨害波60を、2つの妨害開始点57-1及び57-2を用いて図1に示す。妨害開始点57-1及び57-2は、各伝播方向が被検波34の伝播方向に対応し且つ各波面が被検波34の波面とは異なる妨害波60(例では妨害波60-1及び60-2)がそれぞれ、入力波18から光学表面12に指向された被検波34の隣で生成される回折光学素子30上の位置を意味すると理解されたい。
【0051】
妨害点58-1及び58-2、すなわち妨害開始点57-1及び57-2に対応する検出器48により記録されたインターフェログラムの場所では、被検波34r及び参照波36rのみの所望の重畳ではなく、3つの波、正確には被検波34r、参照波36r、及び各妨害波60-1又は60-2が重畳する。インターフェログラムの対応する場所で計測された強度に妨害波60が寄与するので、この場所の計測は改竄され、すなわちこの場所の計測は使用不可能である。したがって、妨害点を「ブラインドスポット」と称することもできる。精度要件に応じて、対応する妨害波60の強度が前述の場所の被検波34rの強度の10-6以上、特に10-5以上、10-4以上、10-3以上、又は10-2以上になるとすぐに使用不可能とみなされる。
【0052】
一実施形態によれば、妨害波60の1つ又は複数は、被検波34の生成時とは異なるタイプの、妨害点58における入力波18と回折構造40の回折構造パターンとの相互作用により生じ得る。図1に示す2重複素符号化CGHを参照すると、妨害波60は、例えば、回折構造40の全ての他の場所と同様に、被検波34が第1の構造パターンで+1次の回折次数(第2の構造パターンでは回折なし、つまり0次の回折次数)により生成される1つ又は複数の妨害点58において、第1の構造パターンで+2次の回折次数の入力波18の回折と同時に第2の構造パターンで-1次の回折次数の回折による構造パターンの適当な構成で生成され得る。上述のように、このような妨害波は、被検波34と同じ伝播方向だが異なる波面を有する。
【0053】
第2の範疇の妨害波60、すなわち回折光学素子30で生じる妨害放射線を、妨害開始点57-3から出る妨害波60-3として図1に例として示す。妨害波60-1及び60-2とは対照的に、この妨害波は、対応する放射線経路の被検波34の伝播方向とは異なる伝播方向を有する。したがって、被検物14の光学表面12での反射後に、妨害波60-3は傾斜した経路で回折光学素子30に戻ることで、妨害開始点57-3とは異なる点61-3で回折光学素子30に入射する。妨害波偏向点61-3とも称するこの点では、妨害波60-3は、通常はこの点での戻り被検波34rの場合とは偏向が異なり、正確には、妨害波60-3がその後の過程で偏向ミラー26、ビームスプリッタ46、接眼レンズ50を経て検出器52まで延びるビーム経路内にあるように偏向される。図1に示す例示的な図示では、妨害波60-3は、妨害点58-3の場所で検出器52に入射する。
【0054】
第3の範疇によれば、回折光学素子30で生じる妨害放射線は、回折光学素子30での入力波18の正反射による妨害波の形態で生じ得る。さらに別の変形実施形態によれば、インターフェログラムにおける妨害放射線を発生させる妨害点は、計測装置10内の反射経路に基づき回折光学素子とは無関係に形成されることもできる。このような反射経路は、ミラーに加えて二重反射が起こり得る1つ又は複数のレンズ素子も備えた計測装置で特に該当する。
【0055】
回折光学素子130が5重複素符号化CGHとして構成された図3に示す実施形態において、妨害波60を生成する回折次数の複数の組み合わせが考えられる。一例によれば、妨害波60は、第1の構造パターンで+1次の回折次数と同時に第3の構造パターンで-1次の回折次数及び第4の構造パターンで+1次の回折次数(第4及び第5の構造パターンでは回折なし、すなわち、要するに[1,0,―1,1,0])の入力波18の回折により生成され得る。
【0056】
概して、図1を参照して上述した妨害放射線は、被検波34の伝播方向とは異なる伝播方向を有する妨害波の形態、回折光学素子で正反射された妨害波の形態、又は計測装置内の反射経路により引き起こされた妨害放射線の形態でも生成され得る。
【0057】
上述のように、被検物14の光学表面12の実際形状を測定するために、2つのインターフェログラムが計算合成される。この目的で、第1の回折光学素子30により生成された第1のインターフェログラムの上記記録後に、第2の回折光学素子32が第1の回折光学素子30の代わりに入力波18のビーム経路に配置される。換言すれば、第1の回折光学素子30が保持デバイス28から取り外され、第2の回折光学素子32が保持デバイス28に配置される。
【0058】
第2の回折光学素子32は、第1の回折光学素子30に非常に似ているが、その回折構造40の構成がある程度異なる。第2の回折光学素子32の回折構造40も同様に、2つの回折構造パターンを含み、第1の構造パターンは、光学表面12の所望形状に少なくとも部分的に適合した波面を有する被検波34を生成するよう構成され、第2の回折構造パターンは、参照波36を生成するよう構成される。第2の回折光学素子32により生成された被検波34及び参照波36は、第1の回折光学素子30により生成された対応する波34及び36とは伝播方向がごくわずかに異なる。ここで、被検物14の光学表面12又は参照素子38の同じ点に関連する波が相互に比較される。換言すれば、被検波34及び/又は参照波36の伝播方向は相互にわずかに異なり、すなわち、対応する回折光学素子30又は32からの被検波34、参照波36、又は被検波34及び参照波36の両方の対応する放射角はわずかに異なる。一実施形態によれば、伝播方向の差は0.3°以上、特に3°以上である。被検波34及び参照波36に関する放射角の変化の代わりに又はそれに加えて、第2の回折光学素子32がもたらす変化が、被検波34の伝播方向に関する回転にも関係し得る。
【0059】
第2の回折光学素子32の放射挙動が変わることにより、計測装置10の構成は、対応するインターフェログラムの取得前のビーム経路の変化に適合される。これは、以下で説明する計測装置10の構成変更の1つ又は複数により達成することができる。この目的で、第1の保持デバイス28は、回折光学素子30又は32の傾斜位置を、相互に直交し且つ入力波18の照射方向に対して横方向に位置合わせされた2つの傾斜軸62及び64周りで変えるよう構成される。
【0060】
さらに、第2の保持デバイス42は、被検物14を全6剛体自由度で移動させる、すなわち被検物14の傾斜位置を3つの相互に直交する傾斜軸66、68、及び70で変えると共に被検物14を3つの直交するように位置合わせされた並進方向72、74、及び76に沿って変位させるよう構成される。さらに、第3の保持デバイス78は、参照素子38の傾斜位置を、相互に直交し且つ参照波36の照射方向に対して横方向に位置合わせされた2つの傾斜軸80及び82で変えるよう構成される。さらに、偏向ミラー26は、入力波18の照射方向に対して垂直に位置合わせされた少なくとも1つの傾斜軸84周りで傾斜可能に配置される。
【0061】
既に上述したように、放射源16には波長調整コントローラ24が設けられる。入力波18の波長を変えることにより、回折光学素子30及び32からの波34及び36の放射角を変えることができ、これらの放射角に関する回折光学素子30と32との間のずれを補償することができる。したがって、波長の変更も同様に、計測装置10の上記可能な構成変更に該当する。
【0062】
上述の傾斜及び並進自由度によりもたらすことができる構成変更は、回折光学素子30又は32と被検物14との間での、特に相対傾斜位置を変更し且つ/又は並進運動を行うことによる変更相対位置の設定を含む。これらの構成変更はさらに、参照素子38及び/又は偏向ミラー26の傾斜を含み得る。
【0063】
図1に既に示した第1の回折光学素子30による検出器48で記録されたインターフェログラムの妨害点分布56-1の例を、図2の左上に示す。既に上記したように、これに含まれる妨害点は、数学的な意味での点ではなく点状領域である。妨害点分布56-1で妨害点58が累積的に占める面積は、本例ではインターフェログラムの総面積の3.37%であり、すなわち妨害点の割合は3.37%である。
【0064】
妨害点分布56-1に加えて、図2は、上述のような、計測装置10の構成を適宜変更した第2の回折光学素子32により記録された第2のインターフェログラムの妨害点分布56-2の例を示す。第2のインターフェログラムの妨害点割合は、本例では3.26%である。しかしながら、第2のインターフェログラムの妨害点58は、第1のインターフェログラムとは分布が異なり、これは2つのインターフェログラムの組み合わせから妨害点分布、すなわち「ブラインドスポット」の割合がわずか0.10%である妨害点分布56-4が得られることを意味する。
【0065】
さらに、図2は、計測装置10の構成を適宜変更した、上述の基準に従った最初の2つの2つの回折光学素子30及び32とはある程度異なる第3の回折光学素子により第3のインターフェログラムも記録される場合を示す。第3のインターフェログラムの妨害点分布56-3は、本例では妨害点割合が3.46%である。3つ全てのインターフェログラムが合成される場合、得られる妨害点分布56-5の妨害点割合は0.01%未満となる。
【0066】
被検物14の光学表面12の実際形状を測定するための複数のインターフェログラムの上記計算合成により、合成インターフェログラムにおける妨害点割合の上記低減に従った形状測定の結果に対する妨害点58に起因する誤差の影響が減る。したがって、形状測定の精度がそれに応じて向上する。
【0067】
既に上述したように、図3は、第1の回折光学素子30の代わりに図1に示す計測装置10で用いることができる5重複素符号化CGHの形態の、又は第2の回折光学素子32等の追加回折光学素子の代わりに前述の基準に従ってある程度変更された形状の、回折光学素子130を示す。図1に示す計測装置10での回折光学素子130の使用時には、3つの較正ミラー102、104、及び106がさらに設けられる。回折光学素子130又は計測装置10を較正するために、較正ミラー102、104、及び106は、被検物14の代わりに配置されて順次に計測される。
【0068】
回折光学素子130の回折構造140は、平面内で相互に重なり合うように配置された5つの回折構造パターンを形成する。計測対象の被検物14の表面12に指向された被検波34及び参照素子38に指向された参照波36に加えて、回折構造140は、3つの較正波108、110、及び112を生成する。較正波108、110、112は、較正ミラー102、104、及び106の1つにそれぞれ指向され、本実施形態では、各較正ミラーの形状に適合した波面を有する球面波として全てが形成される。他の実施形態において、球面波に加えて又はその代わりに、平面波を較正波として用いることもできる。
【0069】
検出器52により、対応する較正ミラー102、104、及び106でそれぞれ反射した後の較正波108、110、及び112の重畳により、戻り参照波36rで発生した較正干渉パターンが記録される。較正干渉パターンの評価により、回折光学素子130の回折構造140の形態誤差及び/又は配置誤差を求め、それに対応して、戻り被検波34rと戻り参照波36rとの重畳により生成されたインターフェログラムの評価による光学表面12の形状の測定時にこれを考慮に入れることができる。
【0070】
図4は、被検物14の光学表面12の形状を干渉測定する計測装置10のさらに別の実施形態を示す。図4に示す計測装置10は、図1に示す計測装置とは異なり、反射光学素子として設計された参照素子38の代わりにフィゾー素子の形態の参照素子238が設けられ、参照波36及び被検波34の両方を生成する回折光学素子30又は32の代わりに被検波34を生成する回折構造240を有する回折光学素子230又は232が配置される。フィゾー素子は、入力波18のビーム経路に、すなわち回折光学素子230又は232の上流に配置され、入力波18からの放射線の一部を戻り参照波36rとして反射するよう構成される。よって、図4に示す計測装置10は、フィゾー干渉計として構成される。
【0071】
参照素子238は、第3の保持デバイス78に取り付けられ、したがって相互に直交し且つ入力波18の照射方向に対して横方向に位置合わせされた2つの傾斜軸80及び82周りで傾斜することができる。この傾斜は、その場合、光がフィゾー面に垂直入射し続けるように偏向ミラー26の傾斜と同時に行われなければならない。図4に示す計測装置10の動作モードは、図1に示す計測装置10の動作モードと類似しており、すなわち、計測装置10の構成を変更して2つの回折光学素子230及び232により記録されたインターフェログラムを計算合成して、被検物14の光学表面12の形状を測定する。回折光学素子230及び232は、特に複素符号化CGHとして構成することができ、例えば、被検波34の隣で較正波を生成するために図3に示す回折光学素子130と同様に設計することができる。
【0072】
図5は、図1又は図4に示す計測装置10が用いる回折光学素子30及び32又は230及び232及び場合によってはさらなる回折光学素子の組み合わせ用の位相格子を設計する方法を、フローチャートを用いて示す。特に、これらは、少なくとも2つの相互に重なり合った回折構造パターンをそれぞれが有する複素符号化位相格子の設計である。設計法の第1のステップS1において、指定の境界条件に基づき、コンピューティングデバイスで回折光学素子用の位相格子の複数の異なる設計を生成する。生成された位相格子は、それぞれがその位相格子に放射された入力波18から図1に示す被検波34を生成するよう構成される。
【0073】
設計法の第2のステップS2において、生成された設計のそれぞれについて、各設計に対応するインターフェログラムに含まれる妨害点58の位置を生成し、各インターフェログラムは、各設計に割り当てられた被検波34により計測装置10で生成することができる。
【0074】
複素符号化位相格子の場合、妨害点58は、図1及び図3を参照して上述したように、位相格子の個々の回折構造パターンで異なる回折次数で回折した波が被検波34と同じ伝播方向を有する波になるように重畳する場所に対応し得る。換言すれば、妨害点58に対応する位相格子の場所57において、被検波34の生成時とは異なるタイプの入力波18と回折構造パターンとの相互作用により被検波34の波面とは異なる波面を有する各妨害波60が生成され得る。
【0075】
設計法の任意の第3のステップS3において、各設計に基づく回折光学素子の製造時に既知の誤りにより生じる被検波34の波面誤差を特徴付ける誤差バジェットを、生成された設計のそれぞれについて計算する。
【0076】
設計法の第4のステップS4において、同じ位置の妨害点を、生成された設計のうち少なくとも2つそれぞれのインターフェログラムにおいて特定する。設計法の後続の第5のステップS5において、同じ位置の特定された妨害点の数を考慮して、生成された設計のうち少なくとも2つの組み合わせを選択する。特に、同じ位置の妨害点の数が他の組み合わせの同じ位置の妨害点の数よりも少ない設計の組み合わせが選択される。例えば、設計の組み合わせは、同じ位置の妨害点の数が最小になるように選択され得る。一実施形態によれば、同じ位置の妨害点の数が指定の閾値未満である設計の組み合わせが選択される。ステップS3に従って誤差バジェットが計算された場合、計算された誤差バジェットも設計の組み合わせの選択時に考慮することができる。
【0077】
上記の例示的な実施形態、実施形態、又は変形実施形態の説明は、例として示すと理解されたい。それにより行われる開示は、第1に当業者が本発明及びそれに関連する利点を理解できるようにし、第2に当業者の理解では自明でもある記載の構造及び方法の変更及び修正を包含する。したがって、添付の特許請求の範囲の記載に従って本発明の範囲内に入る限りの全てのそのような変更及び修正、並びに等価物は、特許請求の範囲の保護の対象となることが意図される。
【符号の説明】
【0078】
10 計測装置
12 光学表面
14 被検物
16 放射源
18 入力波
20 導波路
22 出射面
24 波長調整コントローラ
26 偏向ミラー
28 第1の保持デバイス
30 第1の回折光学素子
32 第2の回折光学素子
34 被検波
34r 戻り被検波
36 参照波
36r 戻り参照波
38 参照素子
40 回折構造
42 第2の保持デバイス
44 取得デバイス
46 ビームスプリッタ
48 干渉計カメラ
50 接眼レンズ
52 検出器
54 評価ユニット
56-1 第1のインターフェログラムの妨害点分布
56-2 第2のインターフェログラムの妨害点分布
57 妨害開始点
58 妨害点
60 妨害波
61-3 妨害波偏向点
62 第1の保持デバイスの第1の傾斜軸
64 第1の保持デバイスの第2の傾斜軸
66 第2の保持デバイスの第1の傾斜軸
68 第2の保持デバイスの第2の傾斜軸
70 第2の保持デバイスの第3の傾斜軸
72 第2の保持デバイスの第1の並進デバイス
74 第2の保持デバイスの第2の並進デバイス
76 第2の保持デバイスの第3の並進デバイス
78 第3の保持デバイス
80 第3の保持デバイスの第1の傾斜軸
82 第3の保持デバイスの第2の傾斜軸
84 偏向ミラーの傾斜軸
102 第1の較正ミラー
104 第2の較正ミラー
106 第3の較正ミラー
108 第1の較正波
110 第2の構成波
112 第3の構成波
130 第1の回折素子
140 回折構造
230 第1の回折光学素子
232 第2の回折光学素子
238 参照素子
240 回折構造
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2021-11-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相格子を設計する方法であって、
指定の境界条件に基づき、入力波の放射を受けて被検波を生成するようそれぞれ構成された位相格子の複数の異なる設計を生成するステップと、
生成された設計のそれぞれについて、各設計に対応するインターフェログラムに含まれる妨害点の位置を求めるステップであり、各インターフェログラムは、前記各設計に割り当てられた前記被検波により計測装置において生成され得るステップと、
前記生成された設計のうち少なくとも2つそれぞれの前記インターフェログラムにおける同じ位置の妨害点を特定するステップと、
他の組み合わせと比べた同じ位置の特定された妨害点の数を考慮して、前記生成された設計のうち少なくとも2つの組み合わせを選択するステップと
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記生成された設計の1つにおける妨害点のうち少なくとも1つは、前記入力波から前記被検波の隣で前記妨害点に割り当てられた前記位相格子の点において生成される妨害波により生成され、該妨害波は、前記被検波の伝播方向に対応する伝播方向及び前記被検波の波面とは異なる波面を有する方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、
前記設計は、複素符号化位相格子に関係し、それぞれが相互に重なり合うように配置された少なくとも2つの回折構造パターンを有する方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の方法において、
前記被検波の生成時とは異なるタイプの前記入力波と前記回折構造パターンとの相互作用により、前記妨害波は、前記被検波の波面とは異なる波面を有する方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法において、
既知の製造誤りにより生じる前記被検波の波面誤差を特徴付ける誤差バジェットが、前記生成された設計それぞれについて計算され、前記生成された設計の計算された誤差バジェットは、前記生成された設計のうち少なくとも2つの組み合わせの選択時にも考慮される方法。
【請求項6】
被検物の表面の形状を干渉測定する計測法であって、
光学表面の所望形状に少なくとも部分的に適合した波面を有する第1の被検波を生成するために入力波のビーム経路に第1の回折光学素子を配置するステップと、
前記被検物の前記表面との相互作用後の前記第1の被検波により生成された第1のインターフェログラムを取得するステップと、
前記光学表面の前記所望形状に少なくとも部分的に適合した波面を有する追加被検波を生成するために前記入力波のビーム経路に前記第1の回折光学素子の代わりに追加回折光学素子を配置するステップであり、前記第1の回折光学素子及び前記追加回折光学素子は各回折構造の構成が異なるステップと、
前記被検物の前記表面との相互作用後の前記追加被検波により生成された追加インターフェログラムを取得するステップと、
2つの前記インターフェログラムを計算合成することにより前記被検物の前記表面の形状を測定するステップと
を含む計測法。
【請求項7】
請求項6に記載の計測法において、
2つの回折光学素子は、前記被検物上の同じ場所に対応する各回折構造の線密度が前記2つの回折光学素子間でミリメートル当たり10本以上異なるという点で、少なくとも異なる計測法。
【請求項8】
請求項7に記載の計測法において、
前記2つの回折光学素子は、前記被検物上の同じ場所に対応する各回折構造の前記線密度が前記2つの回折光学素子間でミリメートル当たり100本以上異なるという点で、少なくとも異なる計測法。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか1項に記載の計測法において、
該計測法は、前記入力波を供給する放射源と、前記2つの回折光学素子の一方をそれぞれ保持する第1の保持デバイスと、前記被検物を保持する第2の保持デバイスとを備えた計測装置により実行され、前記第1のインターフェログラムの取得後に前記計測装置の構成が変更され、前記追加インターフェログラムは変更された構成で取得される計測法。
【請求項10】
請求項9に記載の計測法において、
前記計測装置の前記構成の変更中に、前記保持デバイスの少なくとも一方を操作することにより、該当する回折光学素子と前記被検物との間の変更相対位置が設定される計測法。
【請求項11】
請求項10に記載の計測法において、
前記相対位置の変更は、前記該当する回折光学素子と前記被検物との間の相対傾斜位置の変更を含む計測法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の計測法において、
前記相対位置の変更は、前記該当する回折光学素子と前記被検物との間の並進運動を含む計測法。
【請求項13】
請求項9~12のいずれか1項に記載の計測法において、
前記計測装置は、前記入力波から分離された参照波を反射する参照素子を含み、該参照素子は、前記計測装置の前記構成の変更時に傾斜させられる計測法。
【請求項14】
請求項9~13のいずれか1項に記載の計測法において、
前記計測装置は、前記該当する回折光学素子への入射前に前記入力波を偏向させる偏向ミラーを含み、該偏向ミラーは、前記計測装置の前記構成の変更後に傾斜させられる計測法。
【請求項15】
請求項9~14のいずれか1項に記載の計測法において、
前記計測装置の前記構成の変更時に前記入力波の波長が変更される計測法。
【請求項16】
請求項6~15のいずれか1項に記載の計測法において、
前記回折光学素子は、相互に重なり合うように配置された少なくとも2つの回折構造パターンをそれぞれが有する計測法。
【請求項17】
請求項6~16のいずれか1項に記載の計測法において、
前記回折光学素子は、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法により決定される設計を有する位相格子を含む計測法。
【請求項18】
被検物の表面の形状を干渉測定する計測装置であって、
入力波を供給する放射源と、
各被検波を生成するために前記入力波のビーム経路に第1の回折光学素子又は追加回折光学素子を配置するための第1の保持デバイスと、
前記各被検波のビーム経路で前記被検物を保持する第2の保持デバイスと、
前記第1の回折光学素子が前記入力波のビーム経路に配置されたときに生成される第1のインターフェログラムを前記追加回折光学素子が前記入力波のビーム経路で生成されたときに生成される追加インターフェログラムと計算合成することにより、前記被検物の前記表面の形状を測定するよう構成された評価デバイスと
を備えた計測装置。
【国際調査報告】