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特表2022-526933改善された計量用自己モアレ格子デザイン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-27
(54)【発明の名称】改善された計量用自己モアレ格子デザイン
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20220520BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
G01B11/00 H
G02B5/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557316
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(85)【翻訳文提出日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 US2020023741
(87)【国際公開番号】W WO2020197950
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】62/823,342
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レビンスキ ウラジミール
(72)【発明者】
【氏名】ヨエル フェラー
【テーマコード(参考)】
2F065
2H249
【Fターム(参考)】
2F065AA02
2F065AA07
2F065BB28
2F065FF06
2F065LL41
2H249AA12
2H249AA50
2H249AA55
2H249AA61
2H249AA66
(57)【要約】
計量用格子であって、ピッチPを有する複数個のユニットが備わる周期構造を有し、それら複数個のユニットのうち少なくとも1個のユニットが、そのピッチPより小さい第1サブピッチP1を有する少なくとも1個の第1周期サブ構造と、当該少なくとも1個のユニット内で第1周期サブ構造に対し横並び配列及び分離されている少なくとも1個の第2周期サブ構造と、を有し、その第2周期サブ構造が、ピッチPより小さく且つ第1サブピッチP1とは異なる第2サブピッチP2を有し、少なくとも一通りのモアレピッチP=P1・P2/(P2-P1)がもたらされるようP1及びP2が選定されていて、ピッチPが第1サブピッチP1及び第2サブピッチP2の整数倍であるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計量用の格子であって、
ピッチPを有する複数個のユニットが備わる周期構造を備え、それら複数個のユニットのうち少なくとも1個のユニットが、
前記ピッチPより小さい第1サブピッチP1を有する少なくとも1個の第1周期サブ構造と、
前記少なくとも1個のユニット内で前記第1周期サブ構造に対し横並び配列且つ分離されている少なくとも1個の第2周期サブ構造と、を備え、その第2周期サブ構造が、前記ピッチPより小さく且つ前記第1サブピッチP1とは異なる第2サブピッチP2を有し、少なくとも一通りのモアレピッチP=P1・P2/(P2-P1)がもたらされるようP1及びP2が選定されていて、当該ピッチPが当該第1サブピッチP1及び当該第2サブピッチP2の整数倍である格子。
【請求項2】
請求項1に係る格子であって、P1及びP2が半導体デバイス類似ピッチである格子。
【請求項3】
請求項2に係る格子であって、P/Pが1に実質的に等しい格子。
【請求項4】
請求項2に係る格子であって、P/Pが2に実質的に等しい格子。
【請求項5】
請求項1に係る格子であって、P≧200nmである格子。
【請求項6】
請求項5に係る格子であって、P1及びP2が200nm未満である格子。
【請求項7】
請求項1に係る格子であって、前記第1及び第2周期サブ構造が共通軸沿いにあり、P1及びP2がその共通軸沿いで定義される格子。
【請求項8】
半導体デバイスの層間位置ずれを計測するための計量ターゲットであって、少なくとも2個の格子を備え、当該少なくとも2個の格子のうち少なくとも1個が請求項1の格子を構成していて、当該少なくとも2個の格子が相互積層構成の態で配列されている計量ターゲット。
【請求項9】
請求項8に係る計量ターゲットであって、前記少なくとも2個の格子が同じモアレピッチを呈する計量ターゲット。
【請求項10】
請求項8に係る計量ターゲットであって、前記少なくとも2個の格子が相異なるモアレピッチを呈する計量ターゲット。
【請求項11】
計量用の格子を形成する方法であって、
ピッチPを有する複数個のユニットが備わる周期構造を準備し、但しそれら複数個のユニットのうち少なくとも1個のユニットを、
前記ピッチPより小さい第1サブピッチP1を有する少なくとも1個の第1周期サブ構造と、
前記少なくとも1個のユニット内で前記第1周期サブ構造に対し横並び配列且つ分離されている少なくとも1個の第2周期サブ構造と、を備えるものとし、その第2周期サブ構造を、前記ピッチPより小さく且つ前記第1サブピッチP1とは異なる第2サブピッチP2を有するものとし、少なくとも一通りのモアレピッチP=P1・P2/(P2ーP1)がもたらされるようP1及びP2を選定し、当該ピッチPを当該第1サブピッチP1及び当該第2サブピッチP2の整数倍とする方法。
【請求項12】
請求項11に係る方法であって、P1及びP2が半導体デバイス類似ピッチである方法。
【請求項13】
請求項12に係る方法であって、P/Pが1に実質的に等しい方法。
【請求項14】
請求項12に係る方法であって、P/Pが2に実質的に等しい方法。
【請求項15】
請求項11に係る方法であって、P≧200nmである方法。
【請求項16】
請求項15に係る方法であって、P1及びP2が200nm未満である方法。
【請求項17】
請求項11に係る方法であって、更に、共通軸沿いに存することとなるよう前記第1及び第2周期サブ構造を配列し、P1及びP2をその共通軸沿いで定義する方法。
【請求項18】
請求項11に係る方法であって、更に、半導体デバイスの層間位置ずれを計測するための計量ターゲットが形成されるよう少なくとも2個の格子を相互積層構成の態で配列し、当該少なくとも2個の格子のうち少なくとも1個を、請求項11の格子を構成するものとする方法。
【請求項19】
請求項18に係る方法であって、前記少なくとも2個の格子が同じモアレピッチを呈する方法。
【請求項20】
請求項18に係る方法であって、前記少なくとも2個の格子が相異なるモアレピッチを呈する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は総じて計量に関し、より具体的には計量用格子に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願への相互参照)
ここに、「OVL計測用自己モアレターゲット設計の新規手法」(NEW APPROACH FOR SELF-MOIRE TARGET DESIGN FOR OVL MEASUREMENT)と題する2019年3月25日付米国仮特許出願第62/823342号を参照し、参照によりその開示内容を繰り入れ且つそれに基づく優先権を主張する。
【0003】
更に、本発明の主題に関連する以下の特許を参照し、参照によりその開示内容を繰り入れる:
共に「非分解デバイス類似ピッチ計測用自己モアレターゲット設計原理」(SELF-MOIRE TARGET DESIGN PRINCIPLES FOR MEASURING UNRESOLVED DEVICE-LIKE PITCHES)と題し、本発明のそれと同じ譲受人に譲受されている2016年5月19日出願の特許文献1及び2017年12月1日出願の特許文献2。
【0004】
本件技術分野では様々な種類の計量用格子が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第9,864,209号明細書
【特許文献2】米国特許第10,101,592号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の狙いは、新規で速やかな印刷が可能な計量ターゲット用格子を提供し高度に正確な計測を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに、本発明のある好適実施形態によれば、計量用の格子であって、ピッチPを有する複数個のユニットが備わる周期構造を備え、それら複数個のユニットのうち少なくとも1個のユニットが、ピッチPより小さい第1サブピッチP1を有する少なくとも1個の第1周期サブ構造と、当該少なくとも1個のユニット内で当該第1周期サブ構造に対し横並び配列且つ分離されている少なくとも1個の第2周期サブ構造と、を有し、その第2周期サブ構造が、ピッチPより小さく且つ第1サブピッチP1とは異なる第2サブピッチP2を有し、少なくとも一通りのモアレピッチP=P1・P2/(P2-P1)がもたらされるようP1及びP2が選定されていて、ピッチPが第1サブピッチP1及び第2サブピッチP2の整数倍である格子が、提供される。
【0008】
好ましくは、P1及びP2を半導体デバイス類似ピッチとする。
【0009】
本発明のある好適実施形態によれば、P/Pが1に実質的に等しいものとされる。
【0010】
或いは、P/Pが2に実質的に等しいものとされる。
【0011】
好ましくはP≧200nmとする。更に好ましくは、P1及びP2を200nm未満とする。
【0012】
好ましくは、第1及び第2周期サブ構造を共通軸に沿い設け、P1及びP2をその共通軸沿いで定義する。
【0013】
好ましいことに、半導体デバイスの層間位置ずれを計測するための計量ターゲットであって、少なくとも2個の格子を有し、当該少なくとも2個の格子のうち少なくとも1個が本発明の好適実施形態の格子を構成していて、当該少なくとも2個の格子が相互積層構成の態で配列されている計量ターゲットも、提供される。
【0014】
好ましくは、それら少なくとも2個の格子を、同じモアレピッチを呈するものとする。
【0015】
或いは、それら少なくとも2個の格子を、相異なるモアレピッチを呈するものとする。
【0016】
更に、本発明の別の好適実施形態によれば、計量用の格子を形成する方法であって、ピッチPを有する複数個のユニットを有する周期構造を準備し、但しそれら複数個のユニットのうち少なくとも1個のユニットを、ピッチPより小さい第1サブピッチP1を有する少なくとも1個の第1周期サブ構造と、当該少なくとも1個のユニット内で第1周期サブ構造に対し横並び配列且つ分離されている少なくとも1個の第2周期サブ構造と、を有するものとし、その第2周期サブ構造を、ピッチPより小さく且つ第1サブピッチP1とは異なる第2サブピッチP2を有するものとし、少なくとも一通りのモアレピッチP=P1・P2/(P2-P1)がもたらされるようP1及びP2を選定し、ピッチPを第1サブピッチP1及び第2サブピッチP2の整数倍とする方法が、提供される。
【0017】
本発明の方法のある好適実施形態によれば、P1及びP2が半導体デバイス類似ピッチとされる。
【0018】
好ましくは、P/Pを1に実質的に等しくする。或いは、P/Pを2に実質的に等しくする。
【0019】
好ましくはP≧200nmとする。更に好ましくは、P1及びP2を200nm未満とする。
【0020】
好ましくは、更に、共通軸沿いに存することとなるよう第1及び第2周期サブ構造を配列する方法とし、P1及びP2をその共通軸沿いで定義する。
【0021】
好ましくは、更に、半導体デバイスの層間位置ずれを計測するための計量ターゲットが形成されるよう少なくとも2個の格子を相互積層構成の態で配列する方法とし、当該少なくとも2個の格子のうち少なくとも1個を、本発明の方法によりもたらされる格子とする。
【0022】
好ましくは、それら少なくとも2個の格子を、同じモアレピッチを呈するものとする。
【0023】
或いは、それら少なくとも2個の格子を、相異なるモアレピッチを呈するものとする。
【0024】
後掲の詳細記述並びに以下の図面から、本発明についてより理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の好適実施形態に従い構成され動作する計量計測用格子の模式的概略上面図である。
図2図1に示されている種類の格子の一部分を形成するユニットの模式的概略上面図である。
図3】本発明の別の好適実施形態に従い構成され動作する相互積層格子を有する計量ターゲットの模式的概略側面図である。
図4】本発明の更に別の好適実施形態に従い構成され動作する相互積層格子を有する計量ターゲットの模式的概略側面図である。
図5図1図4のうち何れかに示されている種類の格子を用いる計量方法を描いた概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
まず、本発明の好適実施形態に従い構成され動作する計量計測用格子の模式的概略上面図たる図1と、図1に示されている種類の格子の一部分を形成するユニットの模式的概略上面図たる図2とを参照する。
【0027】
図1及び図2に見られる通り、提供される格子100は、複数個の反復ユニット104により形成された周期パターン化構造102を備えている。ここでは、例示により、格子100のうち、一見して互いにそっくりな2個のユニット104全体が収まる部分が示されている。格子100は半導体デバイス上への形成向けに好適に適合化されているので、そのデバイス上に形成されている格子から得られる計測結果に基づき、そのデバイスに関する計量計測を容易に行うことができる。そうした計量計測には撮像計測、モアレ干渉依拠計測、スキャタロメトリ(散乱計測法)依拠計測その他の種類の計測が含まれうる。察せられる通り、デバイスのデザインルールピッチが通常は光学計測ツールにより分解(解像)されないスケールのものであるので、こうした計測は、デバイスそれ自体に対し直接にではなく、格子100等の構造を対象にして実行される。とりわけ好適なことに、図3及び図4を参照して後に詳述する通り、複数個の格子層を備えるターゲットに格子100を組み込み、半導体デバイスの製造に際し層間位置ずれの計測に用いることができる。
【0028】
ピッチPを有する周期構造102が諸ユニット104により好適に形成されている。ピッチPは、好適なことに、米国カリフォルニア州所在のKLA Corporationから商業的に入手可能なArcher(商標)ファミリのツール、例えばA700(商品名)及びATL100(商品名)等、標準的な光学計測ツールにより分解可能な大きさである。例えば、ピッチPを数百又は数千ナノメートルのオーダとすることができる。本発明のある好適実施形態によれば、ピッチPを200~4500nmの範囲内とすることができる。本発明の別の好適実施形態によれば、ピッチPを1200~2500nmの範囲内とすることができる。こうしたピッチは、通常、その上に格子100が形成される半導体デバイスのデバイスデザインルールのピッチよりも、かなり大きい。
【0029】
図2にて最もはっきりと見受けられる通り、ユニット104のうち少なくとも1個のユニットが、少なくとも1個の第1周期サブ構造110と、それに対し整列されている少なくとも1個の第2周期サブ構造112とを備えている。ここでは例示により格子100の各ユニット104が示されており、第1周期サブ構造110及び第2周期サブ構造112がその内部に備わっている。第1及び第2の周期サブ構造110及び112は、好適にも、ユニット104のほぼ全体に沿い併設されユニット104が画定されるよう、共通軸114に沿い横並び構成の態で配列されている。第1及び第2の周期サブ構造110及び112は、相互分離されていて非交絡又は重複的な構成の態で好適に横並び配列されている。
【0030】
第1周期サブ構造110は好適にも第1サブピッチP1を有しており、第2周期サブ構造112は好適にも第2サブピッチP2、但しP1とは異なるそれを有している。サブピッチP1及びP2は好適にもピッチPよりかなり小さく、またひときわ好適にもデバイス類似ピッチとされており、従って、格子100が併用される半導体デバイスのデバイスデザインルールピッチとピッチP1及びP2とが好適にも同じオーダの大きさとなっている。例えば、P1及びP2を10nmから200nm未満までの間とすることができる。先に説明した通り、それらがサイズ的にデバイスデザインルールピッチに類似しているため、第1及び第2のサブピッチP1及びP2それ自体は、光学ツールでは直に分解されない。しかしながら、第1及び第2のサブピッチP1及びP2を適宜選定することで、
【数1】
に従う少なくとも一通りのモアレピッチPであり、光学ツールにより好適にも計測可能且つ分解可能なものが、もたらされるようにすることができる。即ち、サブピッチP1及びP2が小さすぎて光学ツールでは計測できないにもかかわらず、それらピッチの組合せによりもたらされるモアレピッチは計測可能であり、それに由来する信号に基づき情報を得ることができる。
【0031】
本発明の好適な実施形態によれば、パターン102のピッチPがP1の整数倍となり、P2の整数倍となり、且つそれぞれパターン102内にあるサブ構造110及び112のサブピッチP1及びP2の組合せによりもたらされ等式(1)により定まるモアレピッチPの整数倍となるよう、P、P1及びP2が選定される。本発明の発明者が見出したところによれば、P/P1及びP/Pが整数に等しいという関係が満たされている場合に、パターン102により画定される層にてP/P2が整数に等しいという条件が満たされると、第1及び第2のサブ構造110及び112上での散乱によって、ピッチP1及びP2を有する二通りのエバネッセントモードが発生する。これらのモードは、パターン102により画定される層の外側ではエバネッセント(消衰的)である。逆に、その層内では、それら二通りのモードの振幅が0次伝搬電界の振幅に比肩するので、パターン102により画定される層内の電界Eでありパターン102内サブピッチP1及びP2に起因するものを、
【数2】
に従い記述することができる;但し、a,bは順にP1,P2に係る振幅係数である。
【0032】
故に、第1サブピッチP1を有する第1サブ構造110に発するモードが第2サブピッチP2を有する第2サブ構造112により再散乱されること、並びにそれとは主客逆の再散乱によって、「自己モアレ」モードが発生し、等式(1)により記述されるモアレピッチ並びにa・b-1及びa-1・bに比例する振幅を有する諸次回折波が、そのターゲット全体に亘り伝搬することとなる。この振幅は、0次電界の振幅に比肩するオーダの大きさとなりうる。もたらされるモアレピッチは光学ツールにより計測可能であり分解されるので、半導体デバイスの位置ずれに関する計測を、格子100のパターン102を形成しているサブ構造110及び112のピッチが非分解であるにもかかわらず、格子100を有するターゲットを用い実行することができる。
【0033】
デバイス類似ピッチを有する非分解周期構造を備え、そのデバイス類似ピッチの大きさがデバイスデザインルールピッチのオーダの格子であり、しかし分解計測可能なモアレピッチがそのデバイス類似ピッチがもとで生じる格子を、本発明の好適実施形態に従い提供することは、非常に有益なことである。格子サブ構造のピッチがデバイス類似ピッチであることが計量計測の正確性の改善につながり、デバイスデザインルールのそれよりかなり大きなオーダの大きさのピッチを有するターゲットに基づき得られる計量計測値よりも、実デバイスへの関連性が高い計量計測値がもたらされることとなる。
【0034】
本発明の好適実施形態の際立った長所は、パターン102を構成するユニット104の長手方向差し渡しが定まるよう、少なくとも第1及び第2のサブ構造110及び112を単純な横並び構成、好ましくはコリニアな構成の態で配列してあり、その配列内で第1及び第2のサブ構造110及び112が相互分離されていて非交絡又は重複的となっていることである。この配列は先に詳述した通り本発明の発明者による発見に基づくものであり、それによれば、パターン102のピッチPがその内部のサブ構造110及び112の第1及び第2サブピッチ双方の整数倍である場合に、二重散乱を被りモアレモードをもたらすエバネッセントモードが発生する。ユニット104を形成する第1及び第2のサブ構造110及び112の直線配列は、迅速に印刷可能であり大きなフィーチャ間ギャップを伴わないものであり、これはプロセス互換性及び正確性の良好化につながる。更に、第1及び第2のサブ構造110及び112間で効率的な再散乱が生じるので、本件技術分野で既知な従来型光学ツールにより計測可能なモアレモードがもたらされることとなる。
【0035】
図1及び図2ではピッチP、P1及びP2が等縮尺で示されておらず、相異なる様々なピッチのスケール間差異を明瞭に差別化すべく高度に模式的な要領で描かれている。
【0036】
更に、本発明は、各ユニット内に2個のサブ構造しかないもの、例えばここで図示したサブ構造110及び112しかないものには限られない。寧ろ、パターン102のピッチがその内部の各周期サブ構造のサブピッチの整数倍である、という条件を各サブ構造のピッチが満たしていれば、総パターン102を構成する各ユニット内により多数のサブ構造があってもよい。
【0037】
好適なことに、格子100は、パターン102の各ユニット104のピッチPを二部分に分割することで、設計することができる。それに対し光学計測を実行する際に格子100から生じる信号の分析の容易さからすると、ユニット104のピッチPを二等分するのが望ましい。とはいえ、格子100を対象にして実行される具体的な計測の性質によっては、ピッチPを2個超の部分に分割しそのうち2個以上の部分を相等しくないものにすることもありうる。
【0038】
第1及び第2のサブ構造110及び112は、好適なことに、ピッチPを有するユニット104の各分割部分内でそれぞれ対称配置されている。第1サブ構造110の中心及び第2サブ構造112の中心により、ユニット104における第1及び第2の対称中心が形成されている。それに対し光学計測を実行する際にその格子100から生じる信号の対称中心を、第1及び第2のサブ構造110及び112の対称中心のうち一方に対応付けるため、P/Pを1又は2に等しく設定するのが望ましい。これにより、その信号の分析が簡略化され、それに含まれる不明瞭さが低減される。とはいえ、本発明の実施形態によってはP/Pが2超の整数に等しいものとされうる。
【0039】
例えば、P1を、リソグラフィデザインルールピッチに等しい90nmに設定することができる。必要な計測信号ピッチは等式(1)により与えられるモアレピッチに等しいので、P2は、等式(1)を変形して得られる
【数3】
に基づき設定すればよく、格子100のパターン102のピッチはP=P又はP=2Pに従い設定するのが望ましい。
【0040】
本発明の格子例えば格子100を複数個、互いに又は他の格子デザインに対し積層配置することで、その製造に際し半導体デバイスの諸層間の位置ずれの計測を実施するのに役立つターゲットを、形成することができる。
【0041】
ここで、図3に、本発明の好適実施形態に従い構成され動作する計量ターゲットの例示的積層実施形態300を示す。図3に見られる通り、積層ターゲット300を、半導体デバイスの第1層302及び第2層304上に形成することができる。格子100のデザインに全体として似たタイプの第1ターゲット層310が第1層302上に好適に形成されており、やはり格子100のデザインに全体として似たタイプであるが第1ターゲット層310のそれらとは設計パラメタが異なる第2ターゲット層312が、第2層304上に好適に形成されている。
【0042】
格子100のそれに似た格子デザインをそれぞれ有する第1及び第2の格子層による積層ターゲット300の形成は一例に過ぎず、これに代え、ターゲット300を、格子100のそれに似た格子デザインを有するターゲット層1個を備えると共に、格子100のそれとは似ていないが本件技術分野に習熟した者(いわゆる当業者)には周知な様々な種類がある従来型の周期格子デザインに似た格子デザインを有する別のターゲット層を備えるものと、することもできる。
【0043】
第1ターゲット層310は、好適にも、ピッチPL1を有する複数個の反復ユニット324により形成された周期パターン化構造322を備えている。ここでは、例示により、ターゲット300のうち、ユニット324が丸ごと1個収まる部分が示されている。とはいえ、察せられる通り、第1ターゲット層310内により多数のユニット、例えば5個又は6個のユニットがあってもよい。
【0044】
ユニット324のうち少なくとも1個が、好適にも、少なくとも1個の第1周期サブ構造330と、それに対し整列している少なくとも1個の第2周期サブ構造332とを備えている。ここでは例示によりユニット324が示されており、その内部には第1周期サブ構造330及び第2周期サブ構造332が備わっている。第1及び第2の周期サブ構造330及び332は、好適にも、ユニット324のほぼ全体に沿い併設されユニット324が画定されるよう、共通軸に沿い横並び構成の態で配列されている。第1及び第2の周期サブ構造330及び332は、好適にも相互分離されていて非交絡又は重複的な構成の態で、横並び配列されている。
【0045】
第1周期サブ構造330は好適にも第1サブピッチP1を有しており、第2周期サブ構造332は、好適にも、P1とは異なる第2サブピッチP2を有している。サブピッチP1及びP2は好適にもピッチPL1よりかなり小さく、とりわけ好適なことに、ターゲット300が併用される半導体デバイスのデバイスデザインルールピッチと同じオーダの大きさのデバイス類似ピッチである。先に説明した通り、デバイスデザインルールピッチとサイズ的に類似しているため、第1及び第2のサブピッチP1及びP2自体は、光学ツールにより直に分解することができない。しかしながら、ピッチPL1と第1及び第2のピッチP1及びP2とを適宜選定することで、
【数4】
に従い、パターン322につき、少なくとも一通りの第1モアレピッチPm1が生じるようにすることができる。この場合に、第1モアレピッチPm1を、例えば準法線照明並びに約0.7の数値開口という条件下で、光学システムにより分解されえないオーダの大きさとすることができる。例えば、第1モアレピッチPm1を500~600nmのオーダとすることができる。これに代え、第1モアレピッチPm1を、計測可能なモアレパターンが生じるオーダの大きさとすることもできる。本発明のとりわけ好適な実施形態によれば、PL1、P1及びP2を適宜選定することで、パターン322のピッチPL1をP1の整数倍とし、P2の整数倍とし、且つそれぞれパターン322内にあるサブ構造330及び332のピッチP1及びP2の組合せによりもたらされ等式(4)により定義されるモアレピッチPm1の整数倍とすることができる。
【0046】
第2ターゲット層312は、好適にもピッチPL1とは異なるピッチPL2を有する複数個の反復ユニット344により形成された周期パターン化構造342を、好適にも備えている。ここでは、例示により、ターゲット300のうち、ユニット344丸ごと1個が収まり且つその隣のユニット344の半端部分が収まる部分が示されている。とはいえ、察せられる通り、パターン342内により多数のユニット、例えば5個又は6個のユニットがあってもよい。
【0047】
ユニット344うち少なくとも1個が、好適にも、少なくとも1個の第1周期サブ構造350と、それに対し整列している少なくとも1個の第2周期サブ構造352とを備えている。ここでは例示によりユニット344が示されており、その内部に第1周期サブ構造350及び第2周期サブ構造352が備わっている。第1及び第2の周期サブ構造350及び352は、好適にも、ユニット344のほぼ全体に沿い併設されユニット344が画定されるよう、共通軸に沿い横並び構成の態で配列されている。第1及び第2の周期サブ構造350及び352は、好適にも、相互分離されていて非交絡又は重複的な構成の態で、横並び配列されている。
【0048】
第1周期サブ構造350は好適にも第3サブピッチP3を有しており、第2周期サブ構造352は、好適にも、P3とは異なる第4サブピッチP4を有している。ピッチP3及びP4は好適にもピッチPL2よりかなり小さく、とりわけ好適なことに、ターゲット300が併用される半導体デバイスのデバイスデザインルールピッチと同じオーダの大きさのデバイス類似ピッチである。例えば、P1、P2、P3及びP4を約30nm付近とすることができる。先に説明した通り、デバイスデザインルールピッチとサイズ的に類似しているため、第3及び第4のピッチP3及びP4自体は、光学ツールにより直に分解されない。しかしながら、ピッチPL2と第3及び第4のピッチP3及びP4とを適宜選定することで、
【数5】
に従い、パターン342につき、少なくとも一通りの第2モアレピッチPm2が生じるようにすることができる。この場合に、第2モアレピッチPm2を、第1モアレピッチPm1とは異なるものにし、光学システムにより分解されえないものとすることができる。本発明のとりわけ好適な実施形態によれば、PL2、P3及びP4を適宜選定することで、パターン342のピッチPL2をP3の整数倍とし、P4の整数倍とし、且つそれぞれパターン342内にあるサブ構造350及び352のピッチP3及びP4の組合せによりもたらされ等式(5)により定義される第2モアレピッチPm2の整数倍とすることができる。
【0049】
第1及び第2のターゲット層310及び312により生成される回折次数間の相互作用による、積層ターゲット300の総モアレピッチPmTを与える式は、
【数6】
であり、この総モアレピッチPmTは好適にも光学ツールにより計測及び分解することができる。即ち、ピッチP1、P2、P3及びP4が小さすぎて光学ツールでは計測できないにもかかわらず、それらピッチの組合せによりもたらされるモアレピッチは計測可能であり、それに由来する信号に基づき、デバイス位置ずれに関する情報を得ることができる。
【0050】
デバイス類似ピッチを有する非分解周期構造が備わる層を少なくとも1個備え、そのデバイス類似ピッチの大きさがデバイスデザインルールピッチのオーダであり、しかし分解計測可能な総モアレピッチがそのデバイス類似ピッチがもとで諸ターゲット層により生じる積層ターゲットを、本発明の好適実施形態に従い提供することは、非常に有益なことである。ターゲットのサブ構造がデバイス類似ピッチであることはデバイス製造の際の位置ずれ計測の正確性の改善につながり、デバイスデザインルールのそれよりかなり大きなオーダの大きさのピッチを有するターゲットに基づき得られる位置ずれ値よりも、実デバイスへの関連性が高い位置ずれ値がもたらされることとなる。
【0051】
本発明の好適実施形態の長所は、ターゲット300の各ターゲット層のパターンを構成する諸ユニットの長手方向差し渡しがそれぞれ定まるよう、サブ構造330及び332並びに350及び352それぞれを単純な横並び構成、好ましくはコリニアな構成の態で配列してあり、その配列内で各ユニット内のサブ構造が相互分離されていて非交絡又は重複的となっていることである。この配列は、迅速に印刷可能であり大きなフィーチャ間ギャップを伴わないものであり、これはプロセス互換性及び正確性の良好化につながる。更に、第1及び第2のターゲット層310及び312間で効率的な再散乱が生じるので、本件技術分野で既知な従来型光学ツールにより計測可能な計測可能モアレモードが生じることとなる。
【0052】
図3ではピッチPL1、PL2、P1、P2、P3及びP4が等縮尺で示されておらず、相異なる様々なピッチのスケール間の差異を明瞭に差別化すべく高度に模式的な表現形態で描かれている。
【0053】
更に、本発明は、2個の層例えば第1及び第2の層310及び312しか含まれていないものに限られず、ターゲット300の設計条件次第では付加的な層が備わることもある。
【0054】
加えて、第1層310内サブ構造と第2層312内サブ構造との間の相互作用を無視しうるため、それらサブ構造を任意の好適な空間的配列に従い相互配列することができるので、図3に描かれている通り整列させる必要はない。
【0055】
理解し得る通り、積層ターゲット300が、必ずしも、相異なるモアレピッチを呈する諸層を備える必要はない。ある種のスキャタロメトリ依拠計量システムでは、そのいくつかの側面においてターゲット300に総じて似ているが、それに備わる2個以上の層のモアレピッチが実質的に等しい積層ターゲットを実現することが、有益たりうる。これに加え又は代え、それらの層のうち1個を、そのターゲット内の他の層のモアレピッチと実質的に等しいピッチを有する従来型周期ターゲットを備えるものと、することもできる。
【0056】
そうしたターゲットの一例を図4に示す。ここに、図4には、本発明の好適実施形態に従い構成され動作する付加的なターゲット400であり、スキャタロメトリ依拠計量システムにてとりわけ役立つものが、描かれている。図4に見られる通り、積層ターゲット400は、半導体デバイスの第1層402及び第2層404上に形成することができる。第1層402はピッチPL1を有する複数個の反復ユニットを備えるものとすることができ、第2層404はピッチPL2を有する複数個の反復ユニットを備えるものとすることができる。第1層402及び第2層404内の各反復ユニットは、第1サブピッチP1を有する第1サブ構造410と、第2サブピッチP2を有する第2サブ構造412とを、備えるものとすることができる。この例示では、第1層402内と第2層404内とで第1及び第2のサブ構造410及び412が互いに反転している。しかしながら、こうすることは必須ではない。
【0057】
互いに反転配列されているにせよ、第1及び第2の層402及び404は同じサブ構造を備えるものであるので、それら二層のモアレピッチは同一であり、ターゲット400はスキャタロメトリ依拠計量システムにてひときわ役立つものとなる。
【0058】
次に図5、即ち図1図4のうち何れかの格子を少なくとも1個備えるターゲットを用い半導体デバイス製造時に位置ずれを計測する方法を描いた概略フローチャートを参照する。
【0059】
図5に見られる通り、半導体デバイス製造時位置ずれ計測方法500は第1ステップ502、即ち格子が備わる少なくとも1個の層を有するターゲットを有し、デバイス類似非分解ピッチを有するサブフィーチャがその格子に備わる半導体デバイスを準備するステップを以て、始めることができる。とりわけ好ましくは、その格子層を、ピッチPを有する反復パターンが備わるものとし、その反復パターンの各ユニットを、互いに異なるデバイス類似ピッチを有する少なくとも2個のサブ構造が備わるものとし、それらサブ構造を、各ユニットが画定されるよう横並びの相互分離的な構成の態で配列する。好ましいことに、それら少なくとも2個のサブ構造のピッチが互いに異なるデバイス類似ピッチであるため、光学ツールにより分解されるモアレピッチがもたらされる。
【0060】
第2のステップ504に見られる通り、次いでそのターゲットを照明することで、そのターゲットのサブフィーチャによりもたらされた分解モアレピッチに由来するモアレパターンを、発現させることができる。
【0061】
第3のステップ506に見られる通り、次いで、得られたモアレパターンを分析することで、そのターゲットが組み込まれている半導体デバイスにおける位置ずれ関連情報を、導出することができる。
【0062】
いわゆる当業者には理解し得る通り、本発明は、具体的に図示され上述されたものには限られない。本発明の技術的範囲は、上述した様々な特徴のコンビネーション及びサブコンビネーションの双方並びにその修正物であり、何れも従来技術に属していないものを包含する。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】