(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-08
(54)【発明の名称】供試標本の電気特性を計測する方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/26 20200101AFI20220601BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20220601BHJP
H01L 43/12 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
G01R31/26 J
H01L21/66 B
H01L43/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559038
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(85)【翻訳文提出日】2021-11-26
(86)【国際出願番号】 US2020023232
(87)【国際公開番号】W WO2020205236
(87)【国際公開日】2020-10-08
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カグリアニ アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】オスターベルグ フレデリック ウエスターガード
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ チア-ハング
【テーマコード(参考)】
2G003
4M106
5F092
【Fターム(参考)】
2G003AA10
2G003AG03
4M106AA01
4M106AD08
4M106AD22
4M106DD03
4M106DH51
5F092AA20
5F092AB06
5F092AC11
5F092GA01
(57)【要約】
本方法は、例えば埋込MRAMメモリにて用いられる磁気トンネル接合の電気特性を計測するのに用いることができる。本方法で用いるのは複数個のプローブチップを有する多点プローブであり、それを供試標本の指定エリア、特に供試標本の試験対象部分から電気的に絶縁されているエリアに接触させる。電気的接続手段は、その磁気トンネル接合の下方に配置しその指定エリアに通じさせる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層供試標本例えば磁気トンネル接合の電気特性を計測する方法であって、
前記多層供試標本であり、少なくとも第1層及び第2層が備わるスタックを有し且つそのスタックが電気絶縁層の上方にある多層供試標本を準備し、
計測回路との第1接続用に、前記電気絶縁層の上方に第1供試標本端子を設け、
前記計測回路との第2接続用に、前記電気絶縁層の上方に第2供試標本端子を設け、
前記第1供試標本端子、前記第2供試標本端子及び前記スタックを互いに電気絶縁し、
前記電気絶縁層に埋め込まれた第1導電路であり、前記第1供試標本端子及び前記スタックを電気的に相互接続する第1導電路を設け、且つ
前記電気絶縁層に埋め込まれた第2導電路であり、前記第2供試標本端子及び前記スタックを電気的に相互接続する第2導電路を設ける方法であり、
更に、
前記計測回路であり第1計測端子及び第2計測端子を有する計測回路を準備し、
前記第1計測端子を前記第1供試標本端子に接触させ、
前記第2計測端子を前記第2供試標本端子に接触させ、且つ
前記計測回路により前記スタックの前記電気特性を計測する方法。
【請求項2】
請求項1に係る方法であって、前記多層供試標本が磁気抵抗ランダムアクセスメモリ用の半導体ウェハである方法。
【請求項3】
請求項1又は2に係る方法であって、前記スタックが磁気トンネル接合を構成する方法。
【請求項4】
請求項1~3のうち何れかに係る方法であって、前記第1層が強磁性シートである方法。
【請求項5】
請求項1~4のうち何れかに係る方法であって、前記第2層が強磁性シートである方法。
【請求項6】
請求項1~5のうち何れかに係る方法であって、前記スタックが、前記第1層・前記第2層間に挟まれた中間層を有する方法。
【請求項7】
請求項6に係る方法であって、前記中間層が、前記第1層・前記第2層間で電子をトンネリングさせるための電気絶縁体である方法。
【請求項8】
請求項1~7のうち何れかに係る方法であって、前記第1供試標本端子が少なくとも3個の層を有する方法。
【請求項9】
請求項1~8のうち何れかに係る方法であって、前記第2供試標本端子が少なくとも3個の層を有する方法。
【請求項10】
請求項1~9のうち何れかに係る方法であって、前記第1導電路が前記電気絶縁層内で平面的に延びている方法。
【請求項11】
請求項1~10のうち何れかに係る方法であって、前記第1供試標本端子・前記第1導電路間に第1ビアを設ける方法。
【請求項12】
請求項11に係る方法であって、前記スタック・前記第1導電路間に第2ビアを設ける方法。
【請求項13】
請求項1~12のうち何れかに係る方法であって、
前記第1計測端子を構成する第1プローブチップと前記第2計測端子を構成する第2プローブチップとを有する試験プローブを準備し、
前記第1プローブチップを前記第1供試標本端子に接触させ、且つ
前記第2プローブチップを前記第2供試標本端子に接触させる方法。
【請求項14】
自多層供試標本の電気特性を埋込計測するための多層供試標本であって、
少なくとも第1層及び第2層を有していて電気絶縁層の上方にあるスタックと、
計測回路との第1接続用であり前記電気絶縁層の上方にある第1供試標本端子と、
計測回路との第2接続用であり前記電気絶縁層の上方にある第2供試標本端子と、
を備え、
前記第1供試標本端子、前記第2供試標本端子及び前記スタックが互いに電気絶縁されており、
更に、
前記電気絶縁層に埋め込まれた第1導電路であり、前記第1供試標本端子及び前記スタックを電気的に相互接続する第1導電路と、
前記電気絶縁層に埋め込まれた第2導電路であり、前記第1導電路及び前記第2導電路と前記スタックとの協働により前記第1供試標本端子・前記第2供試標本端子間に前記電気特性を計測する回路が形成されるよう、前記第2供試標本端子及び前記スタックを相互接続する第2導電路と、
を備える多層供試標本。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電層及び少なくとも1個のトンネリング障壁で構成された多層スタック、例えば磁気トンネル接合(MTJ)等、供試標本の少なくとも一通りの電気特性の計測に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、微視的多点プローブは、例えば磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)ウェハを対象にして面内電流トンネリング計測を行いその供試標本の様々な電気特性を判別するため、即ちそのウェハが仕様に準拠しているかを試験するため用いられている。
【0003】
電気特性たりうるものには、抵抗面積積、トンネリング障壁の上方にある第1導電シートのシート抵抗、トンネリング障壁の下方にある第2シート(下シート)のシート抵抗、並びに磁気トンネリング抵抗がある。
【0004】
供試標本のうち、何個かのトンネリング障壁及び導電シートが内在していてそれらが互いに重ね合わされているものでは、複数通りの抵抗面積積を定義することができる。複数個のトンネリング障壁が内在している標本を、単一障壁数学モデルによりモデル化することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0097063号
【特許文献2】米国特許出願公開第2016/0320430号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ウェハの上方に多点プローブを配置し、そのプローブの電極のチップ(尖端)をそのウェハの上面に接触させる、という典型的な方法では、例えば単一トンネリング障壁モデルの場合、上シートのシート抵抗が下シートのシート抵抗より低いと誤計測が発生することがある。
【0007】
本発明の目的は、計測の改善を達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上掲の目的及び効果、並びに数多な他の諸目的及び諸効果であり、本発明についての記述から明らかになるそれは、本発明の第1態様によれば、多層供試標本例えば磁気トンネル接合の電気特性を計測する方法であって、前記多層供試標本であり、少なくとも第1層及び第2層が備わるスタックを有し且つそのスタックが電気絶縁層の上方にある多層供試標本を準備し、計測回路との第1接続用に、前記電気絶縁層の上方に第1供試標本端子を設け、前記計測回路との第2接続用に、前記電気絶縁層の上方に第2供試標本端子を設け、前記第1供試標本端子、前記第2供試標本端子及び前記スタックを互いに電気絶縁し、前記電気絶縁層に埋め込まれた第1導電路であり、前記第1供試標本端子及び前記スタックを電気的に相互接続する第1導電路を設け、且つ前記電気絶縁層に埋め込まれた第2導電路であり、前記第2供試標本端子及び前記スタックを電気的に相互接続する第2導電路を設ける方法であり、更に、前記計測回路であり第1計測端子及び第2計測端子を有する計測回路を準備し、前記第1計測端子を前記第1供試標本端子に接触させ、前記第2計測端子を前記第2供試標本端子に接触させ、且つ前記計測回路により前記スタックの前記電気特性を計測する方法、により獲得される。
【0009】
電気的な(electric)、電子的な(electronic)、電気的に(electrically)、なる語は互換的であると理解されたい。
【0010】
計測回路との第3接続用に、前記電気絶縁層の上方に第3供試標本端子を設けてもよい。そして第3計測端子をその第3供試標本端子に接触させてもよい。
【0011】
計測回路との第4接続用に、前記電気絶縁層の上方に第4供試標本端子を設けてもよい。そして第4計測端子をその第4供試標本端子に接触させてもよい。
【0012】
前記電子特性を埋込計測するための埋込手段/フィーチャを前記供試標本に設け又は埋め込んでもよい;なお、埋込計測とは、供試標本の微細加工中にその供試標本内に埋め込まれたフィーチャによりその電子特性を計測すること、という意味である。
【0013】
前記埋込手段を、前記2個の端子と、前記スタック及び端子の下方にある前記導電路とにより、構成してもよい。
【0014】
前記スタックの下方にある前記電気絶縁層により、そのスタックを支持してもよい。同様に、その電気絶縁層により前記供試標本端子を支持してもよい。
【0015】
前記第1層を導電素材で作成してもよく、前記第2層をも導電素材で作成してもよい。
【0016】
これに代え、それら二層のうち一層(好ましくは前記第2層、例えば前記第1層の下方にある層)を、電気絶縁体で構成してもよい。
【0017】
前記第1層及び/又は前記第2層それぞれを複数個の層/シートに分割してもよい。
【0018】
前記スタックが三層スタックとなるよう前記第1層・前記第2層間に電気絶縁体を挟み、その電気絶縁体によりトンネリング障壁/層を構成してもよい。
【0019】
前記多層供試標本を、複数個の導電層及びトンネリング層を有する半導体ウェハとしてもよい。
【0020】
前記多層供試標本を例えば磁気抵抗ランダムアクセスメモリとし、各メモリセルを磁気トンネル接合により構成し、各接合をピラーにより構成してもよい。
【0021】
前記第1(導電)層・前記第2(導電)層間に高接触抵抗障壁、例えばショットキ障壁があってもよい。
【0022】
前記スタックが、前記半導体ウェハの所望目的のダイに係る電子回路を備えていてもよく、例えばその2個の層がメモリ目的又はセンサ目的のものであってもよい。
【0023】
前記ウェハについては、そのウェハの微細加工プロセスにて微細電子デバイスが構築される基板のことであると理解されたい。
【0024】
その微細電子回路が、前記所望目的を指向する電子部品及びその電子部品を制御する回路又は部材、例えばメモリセル及びそのメモリセル用のスイッチを、備えるものであってもよい。
【0025】
前記ウェハはエッチング及び/又は層成長により製造すればよく、通常のウェハ製造方法ではこれが多数の工程にて反復されうる。
【0026】
前記計測回路を、前記第1計測端子及び前記第2計測端子を前記供試標本の方に動かす可動プローブを有するものとし、それにより前記第1計測端子・前記第1供試標本端子間及び前記第2計測端子・前記第2供試標本端子間の接触が確立されうるようにしてもよい。
【0027】
前記第1供試標本端子及び第2供試標本端子それぞれにより前記2個の計測端子それぞれ向けのランディングパッドを構成し、計測端子がその上にランディングした態で計測端子を供試標本端子に(電気的に)接触させうるようにしてもよい。
【0028】
前記第1及び第2供試標本端子それぞれを、各供試標本端子をエッチングすることによりアイランドとして、即ち前記半導体ウェハのうちその供試標本端子に割り当てられているエリアの周囲をエッチングして突出構造を残すことにより、前記半導体ウェハの製造中に作成してもよい。
【0029】
前記エッチングにより(例えばMTJスタックを構成する)三層スタックを縦貫させることで、前記供試標本それ自体を、前記ウェハのエッチングが施されていない残り部分と同じく3個の層を有するものとしてもよい。
【0030】
これに代え、その供試標本端子向けに指定されているエリア内でしかその端子の素材が堆積されない/成長しないよう、供試標本端子を作成してもよい。
【0031】
前記供試標本端子を前記供試標本のスクライブラインの内輪、即ち前記電子回路を構成する集積回路を有する個別ダイへとその供試標本を分かつラインの内輪に、配置してもよい。
【0032】
前記スクライブラインは、通常、ダイのダイシングに備え、長方形グリッドをなすよう即ちグリッド線同士が直交するよう配置される。
【0033】
スクライブラインの幅は20~200μm、例えば75~125μm、或いは例えば100μmにすればよい。
【0034】
前記供試標本端子を前記ダイの電子回路/集積回路と同時に作成してもよく、その場合はダイのエリアとスクライブラインとを前記第1層の素材に対し同一工程にて露出させる。第2の工程にて供試標本端子同士を絶縁すればよい。
【0035】
即ち、供試標本端子の第1層と前記スタックの第1層が同じ平面内にあってもよい。
【0036】
幾つかの供試標本端子、例えば4個の供試標本端子を隣り合わせに配置してもよい。それらのピッチ(それらの間の距離)を例えば多点プローブのピッチと整合させてもよく、例えば前記第2供試標本端子を前記第1供試標本端子の隣にしてもよい。第3供試標本端子をその第2供試標本端子の隣に配置してもよく、第4供試標本端子をその第3供試標本端子の隣に配置してもよい。それら4個の供試標本端子を互いに直線的に配置することで、供試標本端子からなるローを構成してもよい。
【0037】
前記電気絶縁層はそれより上の諸層を支持するものであり、電気配線の埋め込み、即ち前記ウェハの相異なる部分間の電気的相互接続にも用いることができる。そのウェハを通じた電気的相互接続用に、幾つかのそうした金属化層を設ければよい。
【0038】
前記電気配線例えば前記第1導電路及び前記第2導電路は、前記ウェハの製造中に、前記電気絶縁層上に堆積された銅ラインとして作成すればよく、その後に当該電気絶縁層の素材を更に堆積させることでそれら導電路を埋め込めばよい。
【0039】
層間電気的接続をある層から別の層に至る方向に延びる垂直(縦方向)ビア、即ち前記ウェハが水平(横方向)面上にあるときに垂直方向沿いとなるビアにより、作成してもよい。即ち、第1ビアにより前記第1導電路と前記第1供試標本端子とを相互接続してもよい。そうしたビアを、タングステン、銅、窒化銅、タンタル、窒化タンタル、コバルト、ルテニウムで作成してもよい。2個以上の別々なビアを用いその導電路の垂直部分を確立し、それにより供試標本端子及び試験対象スタックを相互接続してもよく、その導電路が2個の垂直経路部分(それぞれその供試標本端子の下方と前記スタックの下方にあるもの)及び1個の水平部分を有していてもよい。両垂直部分を、単一のビアに代え複数個のビアにより構成してもよい。
【0040】
前記電気絶縁層を、その層内の電気配線により回路経路が定まり、定まったその回路経路に電流が流れ閉じ込められるよう、電気絶縁素材で作成してもよい。
【0041】
別々の供試標本端子に至る2本の導電路により、第1供試標本端子から前記MTJスタックへと電源電流を導き第2供試標本端子へと返戻電流を導く回路を、そのMTJスタックとの協働で構成してもよい。
【0042】
本発明の第2態様によれば、上掲の目的及び効果は、自多層供試標本の電気特性を埋込計測するための多層供試標本であって、少なくとも第1層及び第2層を有していて電気絶縁層の上方にあるスタックと、計測回路との第1接続用であり前記電気絶縁層の上方にある第1供試標本端子と、計測回路との第2接続用であり前記電気絶縁層の上方にある第2供試標本端子と、を備え、前記第1供試標本端子、前記第2供試標本端子及び前記スタックが互いに電気絶縁されており、更に、前記電気絶縁層に埋め込まれた第1導電路であり、前記第1供試標本端子及び前記スタックを電気的に相互接続する第1導電路と、前記電気絶縁層に埋め込まれた第2導電路であり、前記第1導電路及び自第2導電路と前記スタックとの協働により前記第1供試標本端子・前記第2供試標本端子間に前記電気特性を計測する回路が形成されるよう、当該第2供試標本端子及び前記スタックを相互接続する第2導電路と、を備える多層供試標本、により獲得される。
【0043】
以下、添付図面を参照し例示により本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【発明を実施するための形態】
【0045】
なお、本発明は、後述のそれとは異なる形態にて実施しうるので、本願中で説明される何れの例にであれ限定されるものと解されるべきではない。寧ろ、何れの例も本件開示を一貫した完全なものにするため提示されており、本発明の技術的範囲を本件技術分野に習熟した者(いわゆる当業者)に遺漏なく届けるものである。
【0046】
全体を通じ、同様の参照符号により類似部材を参照する。そのため、各図の記述との関連で類似要素を詳説してはいない。
【0047】
【0048】
供試標本10は5個の層を有しており、そのうち上側の三層が磁気トンネル接合(MTJ)、即ちMTJスタックを構成している。
【0049】
供試標本は、少なくとも2個の導電層及びその間に挟まれたトンネリング電気絶縁層、例えばMTJを備える半導体ウェハを構成するものとすることができる。
【0050】
MTJスタックの上層12は、強磁性素材を含有していてもいなくてもよいが、導電性とする。
【0051】
上層の磁化方向は可変である。
【0052】
中間層14は、MTJスタックの上層・下層16間に挟まれている。
【0053】
中間層は薄い電気絶縁体であり、その厚みは、電子がそれを通じトンネリングし得ないほど大きくはない;即ちこの中間層はトンネリング障壁層である。
【0054】
下層16も、強磁性素材を含有していてもいなくてもよいが、導電性とする。
【0055】
これに代え、上層の磁化が永久磁化であってもよく、下層の磁気モーメントの方向が可変であってもよい。双方の層を、その磁気モーメントの方向が可変なものとしてもよい。
【0056】
そのスタックに鎖交する電位を印加したときのスタックの抵抗値は、その上層及び下層の磁化が平行かそれとも非平行かに依存しうるのであり、それらが平行な場合のトンネリング障壁は磁化が非平行な場合よりも低くなる。
【0057】
上層は平坦な上面を有する態で描かれており、諸層は互いに平行なものとして総じて描かれている。
【0058】
そのスタックを、2個以上の導電層及び1個の障壁を有するものとし、それに備わる幾つかの電気特性が計測されるようにしてもよい。
【0059】
また、供試標本の諸層に、MRAMセルに係るそれとは別の機能を持たせてもよい。例えば、スタックに備わる層を二層のみとし、その目的をセンサとしてもよい。
【0060】
図1では、三層のスタックが7個のアイランド、即ち1本のロー上で隣り合う6個の小アイランド並びに孤立した1個の大アイランド(例えばMRAM又はセンサ目的のMTJスタック28を構成する供試アイランド)として示されている。これは、それらアイランドが互いに電気絶縁されたものになるよう、即ちそれらアイランドが互いに電気接続されないよう、それらスタック層をエッチングした結果である。
【0061】
これらの層が除去された部分に、酸化物素材その他の素材により構成される電気絶縁体を作成することで、アイランド相互間空間及びアイランド・MTJスタック間空間が電気絶縁素材で満たされるようにしてもよい。
【0062】
6個の小アイランドは6個の供試標本端子を構成しており、その目的は第1ランディングパッド26等のランディングパッドを提供すること等にある;その第1ランディングパッド26上には第1ランディングエリアたる露出面30があり、薄い酸化物層で覆われうることを除けば、その上は別の層で覆われていない。
【0063】
供試標本端子はどのような平面内形状であってもよい。
図1には長方形の形状/エリアが示されているが、その形状が円、卵形、楕円形、多角形又は不規則形状であってもよい。
【0064】
各ランディングパッドの各ランディングエリアはプローブチップをランディングさせるためのものであり、プローブチップをそのランディングエリアに接触させることで、計測ルーチン中に、そのランディングパッドに電気信号を注入することや、電気計測信号をピックアップすることができる。このように、供試標本上にはプローブ用及びプローブ計測実行用の端子が設けられている。
【0065】
供試標本がその計測装置内で正しく配置されているときに供試標本端子の位置が計測端子の固定位置と整列する計測装置である場合、プローブを用いるのに代え、供試標本を計測装置内に差し込んでもよい。
【0066】
大アイランド28は試験する必要があるMRAMセルのそれとそっくりなもの、具体的にはそのMTJスタックの一通り又は複数通りの電気特性がそっくりなものとすればよい。
【0067】
MTJスタックの下方には第1電気絶縁層18を構成する第4層、即ち電流路の制御無しでその層内に電流を自在に流すことを想定していない層がある。
【0068】
その第4電気絶縁層の下方には、第2電気絶縁層24を構成する第5層がある。
【0069】
第1電気絶縁層及び第2電気絶縁層を1個の電気絶縁層として作成してもよい。
【0070】
第1電気絶縁層はビア、例えばその層を厚み方向に縦貫する第1ビア22を有している。
【0071】
アイランドのローを構成する6個のアイランドの下方には、それぞれ1個のビアが描かれている。
【0072】
大アイランドの下方にも6個のビア、例えば第2ビア34が示されており、それらは皆、MTJスタックの下層の下面に接触するに至っている。
【0073】
第2電気絶縁層内には6本のコバーレーン、即ち製造工程のうち一つで堆積された銅がある(銅以外の導電素材を用いてもよい)。
【0074】
それら銅レーンにより導電路、例えば第1導電路24が構成されている。
【0075】
端子と試験が求められている供試標本の個別部分との間の電気的接続に関しては、熟考したところによれば、ビアを省略できることがある。例えば、供試標本端子と供試アイランドとが隣り合っている場合、電気的接続を確立する必要があるのは、その供試標本の分離/エッチド部分の下方だけである。
【0076】
導電路は諸層に対し平行に延びており、各導電路により、ランディングパッドのうち1個に係るビアと、MTJスタックと接触しているビアのうち1個とが、相互接続されている。
【0077】
電気絶縁層のうち一つを、例えばスイッチ等といった制御用電子回路に至る電気的接続に用いてもよい。スイッチ自体は第6層、例えばその電気絶縁層より下にある層内に配置すればよい。
【0078】
ランディングパッドを必ずしも3個のMTJ層により構成しなくてもよい。これに代え、第1電気絶縁層上にアイランドとして生成例えば堆積された半導体素材を以てランディングパッドとし、それによって、プローブチップからの電気信号が、個別のランディングパッドに下側から接触するビアへと伝達されるようにしてもよい。
【0079】
【0080】
図2中の供試標本は
図1との関連で言及した供試標本に対応しているが、その供試標本の上方に既にプローブが配置されている。
【0081】
図示の供試標本は非展開状態である。上側三層の下方にあるビア及び導電路が破線で描かれている。
【0082】
このプローブは、互いに平行に延びる6本のカンチレバー(片持ち梁)アームを有している。各カンチレバーアームの端部にはプローブチップ、例えば第1プローブチップ32がある。
【0083】
個々のプローブチップを対応する個々のランディングパッドのランディングエリアに接触させてあり、例えば第1プローブチップ32は、下側から第1ビア22が接触している第1ランディングパッド26と接触している。
【0084】
電気特性の計測のための接触であるので、この接触はそれらプローブチップ・ランディングパッド間に電気的接触が生じる接触である;即ち、電気的接触が確立されうるよう、そのランディングパッド上によく生じる酸化物層に、そのプローブチップを食い込ませることができる。
【0085】
プローブチップを、ランディングエリアを構成する面上に単に座すにとどまらず、ある小距離だけランディングパッドに食い込ませることができる。
【0086】
第1導電路は第1ビアからMTJスタック28まで、即ちそのMTJスタックの下方の一点まで延びている。
【0087】
それらビア及び導電路により、あるプローブチップから別のプローブチップに至る回路経路を完成させることで、電流をその回路経路内に注入してMTJスタック内へ、更に第2プローブチップへと通じさせることができる。
【0088】
カンチレバーアームのうち4本は四点計測(四端子センシング)用のものである。それらのうち2本は電流注入用、他の2本は電圧計測用である。
【0089】
5本目のカンチレバーアームを距離計測用のものとし、それによりプローブチップ・ランディングパッド間距離をプローブチップのランディング中に制御してもよい。
【0090】
【0091】
図3a中の供試標本は
図1との関連で言及した供試標本に対応しているが、試験すべきMTJスタックにつながるビアを縦断する断面となっている。
【0092】
図3bには
図3a中のビアのうち1個、即ち
図3aに示した供試標本のうち一部分の拡大外観が示されている。
【0093】
この拡大外観には、そのMTJスタックの上層12、中間層14及び下層16が現れている。第2ビア34が、第1導電路24からMTJスタック28の下層16へと垂直に延びている。
【0094】
【0095】
図4a中の供試標本は
図1との関連で言及した供試標本に対応しているが、導電路のうち一つを縦断する断面となっており、またその断面が
図3bの断面に直交する平面に沿っている。
【0096】
図4bには
図4a中のビアのうち1個、即ち
図4aに示した供試標本のうち一部分の拡大外観が示されている。
【0097】
その拡大外観には、そのMTJスタックの上層12、中間層14及び下層16が現れている。
【0098】
第2ビア34が、第1導電路24からMTJスタック28の下層16へと垂直に延びている。
【0099】
導電路24が第1ビア22・第2ビア34間に延設されている。
【0100】
以下は、本発明の詳細記述並びに本発明の詳細記述にて参照された図面にて用いた参照符号のリストである。
【符号の説明】
【0101】
10 供試標本、12 上層、14 中間層、16 下層、18 第1電気絶縁層、20 第2電気絶縁層、22 第1ビア、24 第1導電路、26 第1ランディングパッド、28 MTJスタック、30 第1ランディングエリア、32 プローブチップ、34 第2ビア。
【国際調査報告】